(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115939
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】発酵ビールテイスト飲料の製造方法、及び発酵ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 7/04 20060101AFI20240820BHJP
C12C 11/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C12C7/04
C12C11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021860
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小杉 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 千晶
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千鶴
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128AC20
4B128AG09
4B128AS02
4B128AS08
4B128AS18
4B128CP01
4B128CP23
4B128CP39
(57)【要約】
【課題】麦芽を原料として使用していながらも、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量を効率的に低減できる発酵ビールテイスト飲料の製造方法、及びプリン体含有量が低減された発酵ビールテイスト飲料を提供すること。
【解決手段】仕込工程と発酵工程とを少なくとも備える発酵ビールテイスト飲料の製造方法であって、仕込工程が、麦芽を含む原料を糖化して麦汁を得ることを含み、麦汁中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.2以上であり、発酵工程が、麦汁を発酵させて発酵後液を得ることを含み、発酵後液中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外のプリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.8以下である、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕込工程と発酵工程とを少なくとも備える発酵ビールテイスト飲料の製造方法であって、
前記仕込工程が、麦芽を含む原料を糖化して麦汁を得ることを含み、
前記麦汁中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.2以上であり、
前記発酵工程が、前記麦汁を発酵させて発酵後液を得ることを含み、
前記発酵後液中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外のプリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.8以下である、前記製造方法。
【請求項2】
前記発酵後液に活性炭を添加して活性炭処理を行う工程を更に備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発酵ビールテイスト飲料の麦芽比率が50質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記発酵工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記仕込工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)が、0.5以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
総プリン体含有量(mg/100mL)が2.5以下であり、総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下である、発酵ビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵ビールテイスト飲料の製造方法、及び発酵ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の上昇からプリン体含有量が低減されたビールテイスト飲料の需要が高まっている。プリン体含有量が低減されたビールテイスト飲料の製造方法に関しては、これまでに様々な方法が開示されている。
【0003】
プリン体含有量が低減されたビールテイスト飲料の製造方法として、例えば特許文献1には、発酵原料と水とを含む混合物を調製し、当該混合物を煮沸処理した後、ろ過して発酵原料液を調製する仕込工程と、発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程と、を有し、前記混合物が植物由来のタンパクを含有しており、前記発酵工程中の発酵液にプリンヌクレオシダーゼを混合し、発酵工程後に得られた発酵液中のプリン体濃度が、煮沸処理後の前記発酵原料液中のプリン体濃度の70%以下であり、製造された発酵アルコール飲料の真正エキスに占めるタンパク質の割合([タンパク質含有量(g/100g)]/[真正エキス(%)])が、0.06以上であることを特徴とする、発酵アルコール飲料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される製造方法は、麦芽由来成分を原料として使用しないことが好ましいものであり、麦芽を原料として使用した場合でもプリン体含有量を効率的に低減できる発酵ビールテイスト飲料の製造方法の検討が充分に行われているとはいえない。
【0006】
そこで、本発明は、麦芽を原料として使用していながらも、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量を効率的に低減できる発酵ビールテイスト飲料の製造方法、及びプリン体含有量が低減された発酵ビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る製造方法は、仕込工程と発酵工程とを少なくとも備える発酵ビールテイスト飲料の製造方法であって、上記仕込工程が、麦芽を含む原料を糖化して麦汁を得ることを含み、上記麦汁中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.2以上であり、上記発酵工程が、前記麦汁を発酵させて発酵後液を得ることを含み、上記発酵後液中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外のプリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.8以下である、製造方法に関する。
【0008】
本明細書において、「総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比」を「プリン塩基以外/総プリン体比」ともいう。本発明に係る製造方法は、仕込工程で得られる麦汁、及び発酵工程で得られる発酵後液中のプリン塩基以外/総プリン体比を特定の範囲内に制御するものであるため、麦芽を原料として使用していながらも、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量を効率的に低減できる。
【0009】
上記製造方法は、上記発酵後液に活性炭を添加して活性炭処理を行う工程を更に備えていてもよい。活性炭処理により、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量をより低減することができる。
【0010】
上記発酵ビールテイスト飲料の麦芽比率は50質量%以上であってもよい。本発明に係る製造方法は、麦芽を原料として使用していながらも、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量を効率的に低減できることから、麦芽比率を高くすることができる。
【0011】
上記製造方法は、上記発酵工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含んでいてもよい。
【0012】
上記製造方法は、上記仕込工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含まなくてもよい。
【0013】
上記製造方法において、上記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)が、0.5以下であってもよい。
【0014】
上記製造方法において、上記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下であってもよい。
【0015】
本発明はまた、総プリン体含有量(mg/100mL)が2.5以下であり、総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下である、発酵ビールテイスト飲料にも関する。
【0016】
本発明は、例えば、以下の各発明を包含する。
[1]
仕込工程と発酵工程とを少なくとも備える発酵ビールテイスト飲料の製造方法であって、
上記仕込工程が、麦芽を含む原料を糖化して麦汁を得ることを含み、
上記麦汁中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.2以上であり、
上記発酵工程が、前記麦汁を発酵させて発酵後液を得ることを含み、
上記発酵後液中の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外のプリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.8以下である、上記製造方法。
[2]
上記発酵後液に活性炭を添加して活性炭処理を行う工程を更に備える、[1]に記載の製造方法。
[3]
上記発酵ビールテイスト飲料の麦芽比率が50質量%以上である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
上記発酵工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する工程を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
上記仕込工程が、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する工程を含まない、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
上記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)が、0.5以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
上記発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
総プリン体含有量(mg/100mL)が2.5以下であり、総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比が、0.7以下である、発酵ビールテイスト飲料。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、麦芽を原料として使用していながらも、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量を効率的に低減できる発酵ビールテイスト飲料の製造方法、及びプリン体含有量が低減された発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料としては、これに限られるものではないが、例えば、酒税法(令和二年法律第八号)上の「発泡性酒類」(ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)に分類されるものが挙げられる。その他の発泡性酒類には、「その他の醸造酒(発泡性)(2)」及び「リキュール(発泡性)(2)」が含まれる。また、ビールテイスト飲料としては、酒税法上の発泡性酒類には属さない飲料及び清涼飲料水(例えば、ノンアルコールビールテイスト飲料)も挙げることができる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、上記例示したものに限られない。「発酵ビールテイスト飲料」とは、酵母等による発酵を経て製造されるビールテイスト飲料を意味する。
【0020】
本明細書において、「プリン体」とは、プリン塩基、及び酸加水分解によりプリン塩基を遊離することのできる化合物(プリン体化合物)の総称を意味する。プリン体化合物としては、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド等が挙げられる。また、プリン塩基とは、アデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンを意味する。
【0021】
本明細書において、「総プリン体含有量」とは、酸処理を施したサンプル(麦汁、発酵後液等)中のプリン塩基含有量を測定した値である。すなわち、総プリン体含有量は、サンプル中に元々存在していたプリン塩基と、酸処理によりプリン体化合物から遊離したプリン塩基との合計含有量である。
【0022】
本明細書において、「プリン塩基以外の総プリン体含有量」とは、総プリン体含有量から、サンプル中に元々存在していたプリン塩基含有量を引いた値である。サンプル中に元々存在していたプリン塩基含有量は、酸処理を施していないサンプル中のプリン塩基含有量を測定することで求めることができる。
【0023】
本明細書において、「総プリン体含有量(mg/100mL)に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)の比」(プリン塩基以外/総プリン体比)は、下記式で算出される値である。
(式)プリン塩基以外/総プリン体比=プリン塩基以外の総プリン体含有量(mg/100mL)/総プリン体含有量(mg/100mL)
【0024】
酸処理は、サンプル(例えば、麦汁、発酵後液)に70%過塩素酸水溶液を10v/v%となるように添加し、100℃に設定したヒートブロック上で1.5時間インキュベートすることにより行うことができる。
【0025】
プリン塩基含有量は、高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(HPLC-MS)によりアデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンそれぞれの含有量を測定し、これらを合算することで求めることができる。
【0026】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、少なくとも仕込工程と発酵工程を備えるものである。
【0027】
仕込工程は、プリン塩基以外/総プリン体比が0.2以上である麦汁(発酵前液)を得る工程である。
【0028】
仕込工程で得られる麦汁のプリン塩基以外/総プリン体比は、発酵ビールテイスト飲料中の総プリン体含有量をより効率的に低減できるという観点から、0.3以上、0.4以上、0.5以上、又は0.55以上であってもよい。また、仕込工程で得られる麦汁のプリン塩基以外/総プリン体比は、1以下、0.8以下、0.7以下、又は0.6以下であってもよい。
【0029】
仕込工程は、麦芽を含む原料を糖化して麦汁を得ることを含む。仕込工程は、例えば、麦芽を含む原料を糖化して糖化液(麦汁)を得ること、得られた麦汁をろ過すること、ろ過した麦汁を煮沸すること、煮沸後の麦汁中の固形分を除去すること(例えば、ワールプールで固形分を除去すること)、固形分を除去した麦汁を冷却して冷麦汁を得ることをこの順に含んでいてもよい。
【0030】
仕込工程は、例えば、麦芽を含む原料及び仕込水を仕込んだ後、50~76℃に温度を調節して、当該温度を保持するものであってよい。具体的には、例えば、1~200分、50~76℃で温度を保持する。これにより、例えば、麦芽を含む原料の糖化が進んだり、可溶性成分が溶出したりして、酵母の代謝に必要な成分を含む糖化液が得られる。得られた糖化液は、そのまま麦汁として使用してもよいし、ろ過、煮沸、固形分の除去及び冷却を経た後、麦汁として使用してもよい。
【0031】
麦芽を含む原料中の麦芽比率(水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合)は、0質量%超100質量%以下であってよい。麦芽比率は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上であってよく、本発明の効果がより顕著に奏されるという観点から、50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であることが好ましい。また、麦芽を含む原料中の麦芽比率は、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0032】
仕込工程は、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含んでいてもよい。本明細書において、「原料液」とは、発酵ビールテイスト飲料の製造過程における液の総称である。例えば、仕込工程における原料液には、麦芽を含む原料及び仕込水を混合した液、糖化液(麦汁)、煮沸後の麦汁、固形分を除去した後の麦汁、冷麦汁が含まれる。また、例えば、発酵工程における原料液には、発酵前液(麦汁)、発酵中の液、発酵後液が含まれる。
【0033】
本明細書において、ヌクレオシダーゼ活性とは、プリン体化合物に存在するプリン塩基を遊離させる活性を意味する。ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素としては、主活性としてヌクレオシダーゼ活性を有するものだけでなく、副活性としてヌクレオシダーゼ活性を有するものも含まれる。ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0034】
仕込工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、麦汁のプリン塩基以外/総プリン体比を0.2以上に調整するのが容易になることから、添加量は少ない方が好ましく、また添加しないことがより好ましい。ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液中の麦芽の質量を基準として、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.001質量%以下、又は0質量%であってもよい。また、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料中の麦芽の質量を基準として、0質量%超、0.0001質量%以上、0.0005質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液中の麦芽の質量を基準として、0.6U/g以下、0.4U/g以下、0.2U/g以下、0.1U/g以下、0.05U/g以下、0.01U/g以下、0.005U/g以下、0.001U/g以下、又は0U/gであってもよい。また、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液中の麦芽の質量を基準として、0U/g超、0.0001U/g以上、0.0003U/g以上、0.0005U/g以上、又は0.007U/g以上であってもよい。
【0035】
仕込工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して、39U/L以下、35U/L以下、30U/L以下、25U/L以下、20U/L以下、15U/L以下、10U/L以下、5U/L以下、1U/L以下、又は0U/Lであってもよい。また、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して、0U/L超、0.5U/L以上、1U/L以上、又は5U/L以上であってもよい。
【0036】
本明細書において、ヌクレオシダーゼ活性の1ユニット(U)は、温度40℃、pH5.0、反応時間10分の条件下で反応させたときに、1μmol/分(10分間の平均値)でヒポキサンチンを生成する酵素量と定義する。
【0037】
仕込工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、添加対象となる原料液は、麦芽を含む原料及び仕込水を混合した液、糖化液(麦汁)、煮沸後の麦汁、固形分を除去した後の麦汁、冷麦汁のいずれであってもよいが、例えば、麦芽を含む原料及び仕込水を混合した液であってよい。
【0038】
仕込工程がヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含み、かつ後述の発酵工程がヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含む場合、仕込工程におけるヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、発酵工程におけるヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量を100とした場合、10以下、5以下、1以下、0.5以下、0.1以下、0.05以下、又は0.001以下であってもよい。
【0039】
糖化液(麦汁)を煮沸する際、糖化液(麦汁)にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0040】
煮沸後の麦汁中の固形分の除去は、例えば、煮沸後の麦汁に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸により生じた熱凝固物、煮沸の際にホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。固形分の除去は、ワールプール中で実施してよい。また、固形分の除去の際、煮沸後の麦汁中に上述したホップを添加してもよい。
【0041】
固形分を除去した麦汁の冷却は、酵母による発酵が可能な温度まで麦汁を冷却して発酵前液(冷麦汁)を得る。
【0042】
発酵工程は、プリン塩基以外/総プリン体比が0.8以下である発酵後液を得る工程である。
【0043】
発酵工程で得られる発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比は、発酵ビールテイスト飲料中のプリン体含有量をより効率的に低減できるという観点から、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、又は0.2以下であってもよい。また、発酵後液中のプリン塩基以外/総プリン体比は、0.01以上、0.05以上、又は0.1以上であってもよい。
【0044】
発酵工程は、発酵前液(麦汁)を発酵させて発酵後液を得ることを含む。発酵工程は、例えば、麦汁に酵母を接種してアルコール発酵を行って発酵後液を得るものであってよい。使用する酵母は、通常のビール酵母であってよい。発酵工程は、例えば、酵母を接種した麦汁を8~25℃で1~14日間発酵させるものであってよい。
【0045】
発酵工程は、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加することを含むものであってよい。これにより、発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比を特定の範囲内に調整することが容易になる。
【0046】
発酵工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して0.001質量%以上、0.002質量%以上、0.003質量%以上、0.004質量%以上、0.005質量%以上、0.006質量%以上、0.007質量%以上、0.008質量%以上、0.009質量%以上、0.01質量%以上、0.011質量%以上、0.012質量%以上、0.013質量%以上、0.014質量%以上、又は0.015質量%以上であってもよい。また、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.04質量%以下、0.03質量%以下、0.028質量%以下、0.026質量%以下、0.024質量%以下、0.022質量%以下、0.02質量%以下、0.018質量%以下、0.016質量%以下、又は0.015質量%以下であってもよい。
【0047】
発酵工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して、1U/L以上、2U/L以上、3U/L以上、4U/L以上、5U/L以上、6U/L以上、7U/L以上、8U/L以上、9U/L以上、10U/L以上、15U/L以上、20U/L以上、25U/L以上、30U/L以上、40U/L以上、50U/L以上、100U/L以上、又は150U/L以上であってもよい。また、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、例えば、原料液全量に対して、800U/L以下、700U/L以下、600U/L以下、500U/L以下、400U/L以下、300U/L以下、200U/L以下、100U/L以下、60U/L以下、50U/L以下、40U/L以下、30U/L以下、又は20U/L以下であってもよい。
【0048】
発酵工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液に添加する場合、添加対象となる原料液は、発酵前液(麦汁)、発酵中の液、発酵後液のいずれであってもよいが、発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比を特定の範囲内に調整することが容易になるという観点から、発酵前液(麦汁)であるのが好ましい。発酵工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を発酵前液(麦汁)に添加する場合、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素による反応は、酵母による発酵と並行して行ってもよく、酵母による発酵の前に行ってもよいが、発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比を特定の範囲内に調整することが容易になるという観点から、酵母による発酵と並行して行うのが好ましい。
【0049】
発酵工程において、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を反応させる際の反応温度は、特に制限されないが、ヌクレオシダーゼ活性を有する酵素の失活を抑制でき、発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比を特定の範囲内に調整することが容易になるという観点から、40℃以下が好ましく、30℃以下、20℃以下、又は15℃以下がさらに好ましい。また、発酵工程におけるヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を反応させる際の反応時間は、同様の観点から、5時間以上が好ましく、10時間以上、15時間以上、20時間以上、又は24時間以上がさらに好ましい。
【0050】
後述の実施例に示すとおり、仕込工程においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液(麦芽を含む原料及び仕込水を混合した液)に添加することを含まず、発酵工程においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液(発酵前液(麦汁))に添加することを含む場合は、発酵後液のプリン塩基以外/総プリン体比をより効率的に低減させることができる。この理由について、本発明者らは、発酵前の麦汁において、プリン塩基以外/総プリン体比が小さい、つまりプリン塩基が多いことで、酵母のプリン体代謝経路に何らかのカタボライトリプレッションが生じ、プリン塩基以外のプリン体からプリン塩基への変換が抑制されるのではないかと推察している。
【0051】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液を熟成、冷却する工程、及び発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0052】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)等を行ってもよい。
【0053】
本実施形態に係る製造方法は、発酵工程後、発酵後液に活性炭を添加して活性炭処理を行う工程(以下、「活性炭処理工程」ともいう。)を更に備えていてもよい。活性炭処理工程を備えることにより、発酵ビールテイスト飲料中の総プリン体含有量を更に低減することができる。活性炭処理は、発酵後液に活性炭を添加すればよく、発酵工程直後に実施してもよく、発酵後液を熟成、冷却する工程、又は発酵後液をろ過する工程の後に実施してもよい。活性炭処理工程は、活性炭処理後に活性炭を除去することを含んでいてよい。活性炭の除去は、常法により実施することができる。例えば、活性炭の除去は、ろ過、遠心分離等により実施することができる。
【0054】
活性炭処理に使用する活性炭の平均細孔直径は、4.5nm以下、3.6nm以下、3.0nm以下、2.8nm以下、2.4nm以下、又は、2.0nm以下であってもよい。上記活性炭の平均細孔直径は1.0nm以上、1.2nm以上、1.5nm以上、又は、1.8nm以上であってもよい。活性炭の平均細孔直径は、1.0nm以上3.6nm以下であることが好ましく、1.8nm以上2.0nm以下であることがより好ましい。
【0055】
平均細孔直径は、具体的には、BET法により測定される比表面積(A)及び全細孔容積(V)から下記式(1)に基づいて算出される。
式(1)平均細孔直径=4×[細孔容積(V)]/[比表面積(A)]
【0056】
上記活性炭の原料(活性炭原料)は、例えば、やし(やし殻)、木質(木材)等が挙げられる。
【0057】
上記活性炭の細孔容積は1.3mL/g以上2.2mL/g以下であることが好ましい。上記活性炭の細孔容積は、1.5mL/g以上、1.6mL/g以上、1.7mL/g以上、又は1.8mL/g以上であってもよく、3.6mL/g以下、2.8mL/g以下、2.2mL/g以下、又は1.9mL/g以下であってもよい。活性炭の細孔容積は、BET法により測定することができる。
【0058】
上記活性炭の比表面積は1700m2/g以下であってよく、1600m2/g以下であってもよい。活性炭の比表面積は、1000m2/g以上、又は1100m2/g以上であってもよい。活性炭の比表面積は、BET法により測定することができる。
【0059】
上記活性炭の平均粒径は10μm以上100μm以下、又は40μm以上70μm以下であってよい。平均粒径は「JIS K 1474:2014 活性炭試験方法 7.5 有効径,均等係数及び平均粒径」に準拠して測定することができる。
【0060】
上記活性炭の添加量は、例えば、発酵後液全量に対して、0.01質量%以上0.2質量%以下、又は、0.03質量以上0.07質量%以下であってよい。
【0061】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量は、例えば、2.5mg/100mL以下、2.0mg/100mL以下、1.5mg/100mL以下、1.0mg/100mL以下、0.7mg/100mL以下、又は0.5mg/100mL以下であってもよい。また、本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のプリン体含有量は、例えば、0.01mg/100mL以上、0.05mg/100mL以上、又は0.1mg/100mL以上であってよい。
【0062】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のプリン塩基以外/総プリン体比は、例えば、0.7以下、0.69以下、0.68以下、0.67以下、0.66以下、0.65以下、0.64以下、0.63以下、0.62以下、0.61以下、0.60以下、又は0.59以下であってもよい。また、本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のプリン塩基以外/総プリン体比は、例えば、0.59以上、0.60以上、0.61以上、0.62以上、0.63以上、0.64以上、又は0.65以上であってもよい。
【0063】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるビールテイストノンアルコール飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0064】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料が発酵ビールテイストアルコール飲料である場合、アルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、3.5v/v%以上、4v/v%以上、4.5v/v%以上、5v/v%以上、5.5v/v%以上、6.0v/v%以上又は6.5v/v%以上であってもよい。また、発酵ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6.5v/v%以下、6v/v%以下、5.5v/v%以下、5v/v%以下、4.5v/v%以下、4v/v%以下、3.5v/v%以下、又は3v/v%以下であってもよい。
【0065】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料が発酵ビールテイストノンアルコール飲料である場合、アルコール度数は、特に制限されないが、1v/v%未満であればよく、0.9v/v%以下、0.8v/v%以下、0.7v/v%以下、0.6v/v%以下、0.5v/v%以下、0.4v/v%以下、0.3v/v%以下、0.2v/v%以下、0.1v/v%以下、又は0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。また、発酵ビールテイストノンアルコール飲料のアルコール度数は、0.1v/v%以上、0.2v/v%以上、0.3v/v%以上、0.4v/v%以上、0.5v/v%以上であってもよい。
【0066】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3.6 ビール、アルコール(アルコライザー法)」又は「8.3.7 ヘッドスペースGC-FID法」に記載の方法によって測定することができる。
【0067】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、0.0以上50.0以下であってよい。本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のBUは、例えば、40.0以下、30.0以下、20.0以下、又は15.0以下であってよく、1.0以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、又は10.0以上であってよい。本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料の苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲で適宜設定することができる。
【0068】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される苦味料、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等のその他原料を含んでいてもよい。苦味料としては、上記のホップの他、例えば、イソα酸、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、キナ抽出物等が挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、DL-リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0069】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度であってもよく、0.25MPa(2.55kg/cm2)程度としてもよい。
【0070】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【実施例0071】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0072】
(試験例1:麦汁の製造及び総プリン体含有量の評価)
仕込水、表1に示すとおりの量の麦芽、糖類、及びヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を使用して、常法に従いサンプル1-1~1-3の麦汁を製造した(仕込工程)。
【0073】
製造した麦汁中のプリン塩基含有量を、高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(HPLC-MS)によりアデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンそれぞれの含有量を測定し、これらを合算することで求めた。また、麦汁を酸処理に供した後、同様に高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(HPLC-MS)によりアデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンそれぞれの含有量を測定し、これらを合算することで総プリン体含有量を求めた。酸処理は、サンプル(例えば、麦汁、発酵後液)に70%過塩素酸水溶液を10v/v%添加し、100℃に設定したヒートブロック上で1.5時間インキュベートすることにより行った。両測定結果から、プリン塩基以外の総プリン体含有量を算出した。なお、表1中の総プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外の総プリン体含有量は、原麦汁エキスを6.4質量%とした場合の値を示す。また、表1中の「0.01」は、各プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外のプリン体含有量が、0.01以下であることを示す。結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1に示すとおり、仕込工程においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を原料液(原料及び仕込水を混合した液)に添加することで、麦汁中のプリン塩基以外の総プリン体含有量が低減した(麦汁中のプリン塩基の含有量が増加した。)。また、仕込工程においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を添加しないサンプル1-1及び1-4の麦汁は、プリン塩基以外/総プリン体比が0.2以上であった。
【0076】
(試験例2:発酵後液の製造及び総プリン体含有量の評価)
試験例1で得られた麦汁に対し、表2に示すとおりの量のヌクレオシダーゼ活性を有する酵素、及び酵母を添加して発酵させ、サンプル2-1~2-4の発酵後液を製造した(発酵工程)。製造した発酵後液において、試験例1と同様にして、総プリン体含有量、プリン塩基以外の総プリン体含有量、及びプリン塩基以外/総プリン体比を求めた。なお、表2中の総プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外の総プリン体含有量は、原麦汁エキスを6.4質量%とした場合の値を示す。また、表2中の「0.01」は、各プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外のプリン体含有量が、0.01以下であることを示す。結果を表2に示す。
【0077】
【0078】
仕込工程及び発酵工程の両方においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を添加していないサンプル2-1は、プリン塩基以外/総プリン体比が0.8超であった。一方、仕込工程及び発酵工程のいずれか又は両方においてヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を添加したサンプル2-2~2-4は、プリン塩基以外/総プリン体比が0.8以下であった。仕込工程と発酵工程でヌクレオシダーゼを添加したサンプル2-3よりも、発酵のみでヌクレオシダーゼを添加したサンプル2-4の方がよりプリン塩基以外/総プリン体比が低くなった。なお、総プリン体含有量はサンプル2-3よりもサンプル2-4の方が高かった。さらに、発酵工程でのみヌクレオシダーゼ活性を有する酵素を添加したサンプル2-4においてのみ、麦汁のサンプルと比較してプリン塩基以外/総プリン体比が低減していた。
【0079】
(試験例3:発酵ビールテイスト飲料の製造及び総プリン体含有量の評価)
試験例2において得たサンプル2-1~2-4の発酵後液に対し、活性炭(大阪ガスケミカル社製)を表3に示す量添加して活性炭処理を行った(活性炭処理工程)。活性炭処理後の溶液をろ過して、サンプル3-1~3-4の発酵ビールテイスト飲料を製造した。製造した発酵ビールテイスト飲料において、試験例1と同様にして、総プリン体含有量、プリン塩基以外の総プリン体含有量、及びプリン塩基以外/総プリン体比を求めた。なお、表3中の総プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外の総プリン体含有量は、原麦汁エキスを6.4質量%とした場合の値を示す。また、表3中の「0.01」は、各プリン体含有量、プリン塩基含有量、及びプリン塩基以外のプリン体含有量が、0.01以下であることを示す。結果を表3に示す。
【0080】
【0081】
表3に示すとおり、サンプル3-4の発酵ビールテイスト飲料は、サンプル3-1~3-3の発酵ビールテイスト飲料よりも総プリン体含有量が低減されていた。また、発酵後液中の総プリン体含有量はサンプル2-3よりもサンプル2-4の方が高かったにもかかわらず、サンプル3-4の発酵ビールテイスト飲料の総プリン体含有量は、サンプル3-3よりも低かった。
【0082】
試験例1~3の結果から、麦汁中の総プリン体含有量に対するプリン塩基以外の総プリン体含有量の比を0.2以上に調整し、発酵後液中の総プリン体含有量に対するプリン塩基以外のプリン体含有量の比を0.8以下に調整することにより、効率的に発酵ビールテイスト飲料中の総プリン体含有量を低減できることが示された。