(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011595
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】洗米排水供給装置
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B02B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113729
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅己
(72)【発明者】
【氏名】波光 勉
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043FA08
(57)【要約】
【課題】洗米処理などの穀物を処理する設備(搬送元)において、穀物の成分を含む排水を、簡易な構成で、効率良く養豚場等(搬送先)へ搬出・移送する技術を提供する。
【解決手段】洗米排水供給装置10は、洗米設備に搬入・搬出される移動タンク100に洗米排水を供給する構造であって、移動タンク100に洗米排水を供給する供給部31と、移動タンク100がセットされる枠体21と、枠体21に設けられて供給部31を移動タンク100に接続する接続位置と、供給部31を移動タンク100から退避させる退避位置とに動作させる動作部41とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗米設備に搬入・搬出される移動タンクに洗米排水を供給する構造であって、
前記移動タンクに前記洗米排水を供給する供給部と、
前記移動タンクがセットされる枠体と、
前記枠体に設けられて、前記供給部を前記移動タンクに接続する接続位置と、前記供給部を前記移動タンクから退避させる退避位置とに動作させる動作部とを備える、洗米排水供給装置。
【請求項2】
前記動作部は、上下方向に伸縮するアクチュエータ機構である、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項3】
前記供給部は、前記洗米排水が放出される供給口と、前記退避位置で前記供給口の直下に位置して前記供給口から液だれして落下する洗米排水を収集する受け部材とを有する、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項4】
前記枠体内にセットされる前記移動タンクの重量を計測する重量計をさらに備える、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記移動タンクに貯留する洗米排水の水面の高さ位置を検知するセンサを有する、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項6】
前記供給部と接続し、前記洗米排水に薬剤を添加する薬剤添加部をさらに備える、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項7】
前記供給部は、前記洗米排水を上方から下方に流し、次に向きを変えて横方向に放出させる供給路および供給口を有する、請求項1に記載の洗米排水供給装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の複数の前記洗米排水供給装置と、
前記洗米設備から分岐して延び前記複数の洗米排水供給装置の前記供給部にそれぞれ接続する分岐配管と、
前記分岐配管に設けられ、前記洗米設備と前記複数の洗米排水供給装置のうちの1と連通し、残りの前記洗米排水供給装置までの配管を遮断する切り換え弁とを具備する、洗米排水供給設備。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の前記洗米排水供給装置と、前記移動タンクとを具備し、
前記移動タンクの下部には、フォークリフトのフォークが抜き差しされる開口が形成される、洗米排水供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗米設備・無洗米製造設備等の洗米排水供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
洗米設備として従来、例えば特許第4239147号公報(特許文献1)に記載されるように、精白米を水中で搗精し、水中搗精した米を遠心脱水する無洗米製造装置が知られている。搗精によって発生する洗米排水は、米糠等の栄養分を含み、リサイクル資材としての価値を有する。
【0003】
そこで特開2012-120972号公報(特許文献2)に記載されるように、無洗米製造装置から排出される洗米排水をタンクに貯留し、タンク内を減圧脱水処理することにより、洗米排水を濃縮して固形分を高める濃縮工程と、濃縮工程で脱水した回収水の一部又は全部を浄化設備で廃棄処理する廃棄処理工程と、濃縮工程で得られた濃縮液を飼料等として再利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4239147号公報
【特許文献2】特開2012-120972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで加水式の無洗米製造装置や洗米装置を具備する精米工場や炊飯工場は、人間が摂取する食品を取扱うため、消費地に近い市街地に立地している。その一方、養豚場や畜産施設など、洗米排水を飼料等として再利用する施設は、飼育に適した郊外に立地する。そこで洗米排水は移動タンク(通いタンクともいう)に詰め替えられ、トラックなどの車両で、洗米設備から遠く離れた畜産施設へ移送される必要がある。
【0006】
工場としての規模を備える洗米設備では1日あたり数百リットルもの大量の洗米排水が発生するため、洗米排水の移送に要する作業負担を軽減し、洗米排水を効率良く洗米設備から搬出することが要求される。また洗米排水は栄養分に富むことを鑑みると、再利用されるまでの品質維持に配慮しなければならず、搬出する際に塵埃等の異物が混入しないよう注意しなければならない。また搬出の際に洗米排水をこぼしたりして周囲を汚染しないよう衛生面でも配慮しなければならない。
【0007】
しかしながら上述した特許文献には、移動タンクを用いて洗米排水を洗米設備から畜産施設等の再利用施設へ移送するための具体的な構造について何ら開示されていない。一方でコスト面を鑑みると、過度の自動化および設備投資は回避したい。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、洗米処理などの穀物を処理する設備(搬送元)において、穀物の成分を含む排水を、簡易な構成で、効率良く養豚場等(搬送先)へ搬出・移送する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明による洗米排水供給装置は、洗米設備に搬入・搬出される移動タンクに洗米排水を供給する構造であって、移動タンクに洗米排水を供給する供給部と、移動タンクがセットされる枠体と、枠体に設けられて供給部を移動タンクに接続する接続位置と、供給部を移動タンクから退避させる退避位置とに動作させる動作部とを備える。かかる本発明によれば、洗米排水を、簡易な構成で、効率良く移動タンクに詰めることができる。
【0010】
本発明の一局面として動作部は、上下方向に伸縮するアクチュエータ機構である。アクチュエータ機構は特に限定されないが、例えばエアシリンダおよびピストンである。
【0011】
本発明の好ましい局面として供給部は、洗米排水が放出される供給口と、退避位置で供給口の直下に位置して該供給口から液だれして落下する洗米排水を収集する受け部材とを有する。かかる局面によれば、洗米排水の液だれによって洗米排水供給装置が汚染されることが防止され、衛生的である。
【0012】
本発明のさらに好ましい局面として供給部は、当該供給部に対する第1位置および第2位置のいずれかに変位する部材であって接続位置で移動タンクに当接して第1位置にされ、退避位置で移動タンクから離れて第2位置にされる位置検出部材と、位置検出部材および受け部材と連結し、第2位置に連動して受け部材を供給口の直下に待機させ、第1位置に連動して受け部材を引き起こすリンク機構とをさらに有する。かかる局面によれば、受け部材に収集された洗米排水を移動タンクに投入することができる。
【0013】
本発明の他の局面として、枠体内にセットされる移動タンクの重量を計測する重量計をさらに備える。
【0014】
本発明の一局面として、供給部は移動タンクに貯留する洗米排水の水量を検知するセンサを有する。かかる局面によれば、移動タンクの満量を自動で検知することができる。
【0015】
本発明の一局面として、供給部と接続し、洗米排水に薬剤を添加する薬剤添加部をさらに備える。
【0016】
本発明の一局面として供給部は、洗米排水を上方から下方に流し、次に向きを変えて横方向に放出させる供給路および供給口を有する。
【0017】
本発明の洗米排水供給設備は、上述した本発明の前記洗米排水供給装置を複数具備するほか、洗米設備から分岐して延び複数の洗米排水供給装置の供給部にそれぞれ接続する分岐配管と、分岐配管に設けられて洗米設備と複数の洗米排水供給装置のうちの1と連通し、残りの洗米排水供給装置までの配管を遮断する切り換え弁とを具備する。かかる本発明によれば、1の洗米排水供給装置にセットされる移動タンクが洗米排水で満了になると、他の洗米排水供給装置にセットされる移動タンクへ切り換えればよく、洗米工程を中断する必要が無くなり、洗米効率が向上する。
【0018】
本発明の洗米排水供給設備は、上述した洗米排水供給装置と、移動タンクとを具備し、移動タンクの下部には、フォークリフトのフォークが抜き差しされるフォーク開口が形成される。フォーク開口は移動タンクの底部に形成される長孔であってもよいし、あるいは切り欠きや段差であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明によれば、洗米処理などの穀物を処理する設備(搬送元)において、穀物の成分を含む排水を、簡易な構成で、効率良く養豚場等(搬送先)へ搬出・移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態になる洗米排水供給装置を示す全体斜視図である。
【
図2】同実施形態の洗米排水供給部を取り出して示す拡大斜視図である。
【
図3】洗米排水供給部の供給口を示す拡大斜視図である。
【
図6】
図4中、洗米排水供給部を示す側面図である。
【
図7】退避位置から接続位置までの途中の位置における供給口を示す側面図である。
【
図8】退避位置から接続位置までの途中の位置における供給口を示す側面図である。
【
図9】
図5中、洗米排水の供給口を示す側面図である。
【
図10】
図4中、洗米排水の供給口を示す図である。
【
図12】本実施形態の洗米排水供給システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になる洗米排水供給装置を示す全体斜視図である。洗米排水供給装置10は、無洗米製造装置や洗米設備(図略)を具備する洗米工場に設けられ、無洗米製造時又は洗米時に発生する洗米排水を、洗米工場の外へ搬出したりするための構造である。洗米排水供給装置10は、移動タンク100がセットされる枠体21と、移動タンク100に洗米排水を供給する供給部31と、移動タンク100に供給部31を接続ないし接続解除する動作部41とを備える。
【0022】
枠体21によって規定されるセット位置11には、空状態の移動タンク100が搬入・載置される。移動タンク100がセット位置11で位置決めされると、移動タンク100の上面に設けられるタンク入口101が、供給部31の直下に待機する。洗米排水供給装置10は、供給部31を変位させてタンク入口101に接続し、移動タンク100に洗米排水を供給して満状態にする。満状態の移動タンク100はフォークリフト(図略)によってセット位置11から搬出される。以下この工程を繰り返す。
【0023】
移動タンク100は、フォークリフトのフォークに適合する所定の規格寸法にされる。移動タンク100は略立方体に形成され、一例として定格容量は1000Lであり、通常は800L~900Lの範囲内で洗米排水が投入される。
図1を参照して、移動タンク100の下部には、フォークが抜き差しされるフォーク開口102,102が形成される。フォーク開口102は周知のフォークリフト用パレットと共通する規格寸法を備える。本実施形態のフォーク開口102は断面長孔形状であるが、図示しない変形例としてフォーク開口102は、移動タンク100の底面に形成されてフォークに対応して真っ直ぐに延びる溝部であってもよい。
【0024】
セット位置11は移動タンク100に対応する形状、例えば正方形等の矩形であり、枕木12を有する。枕木12は、セット位置11の縁部に設けられ、セット位置11の四辺のうちの三辺と平行に延びる。本実施形態の枕木12は、コの字状に配列され、移動タンク100を搬入および搬出する側(以下、正面側ともいう)には枕木12が配置されない。枕木12は、下方から移動タンク100を支持する。フォークリフトのオペレーターは、枠体21および枕木12を目印にして、移動タンク100をセット位置11に位置決め可能である。
【0025】
枠体21は、セット位置11を跨ぐように立設され、4本の柱13~16と、横梁17,18と、縦梁19,20と、横架材22を有する。柱13~16は、セット位置11の四辺のうちの対向する2辺の外側近傍に2本ずつ立設される。横梁17,18は、セット位置11を横切るように互いに平行に延び、各端が柱13~16の上端と結合する。縦梁19,20は、セット位置11の四辺のうちの対向する2辺と平行に延び、各端が柱13~16の上端と結合する。横梁17,18および縦梁19,20は、セット位置11の直上で矩形を構成する。複数の横架材22は、セット位置11の直上に配置され、2本の横梁17,18間に架設される。
【0026】
このように枠体21は、セット位置11を跨ぐように立設される門型構造である。移動タンク100は、セット位置11の4辺のうち縦梁19,20と略平行な辺を除いた残りの2辺のいずれかを通過して、枠体21の正面側から、あるいは背面側から、セット位置11に搬入および搬出される。
【0027】
本実施形態は、枠体21内のセット位置11に載置される移動タンク100の重量を計測する重量計(図略)を備える。重量計により移動タンク100内の液重量を計測可能である。
【0028】
動作部41は、2本の横架材22に下方から支持される基部42と、基部42の中央部分に立設される架台43と、架台43に保持されるアクチュエータ機構44とを備える。アクチュエータ機構44は例えば、上下方向に延びるシリンダと、シリンダの下端から進退動するピストンロッドとを含むエアシリンダ、あるいはその他の流体圧シリンダである。かかるピストンロッドの先端(下端)には供給部31が取付固定される。そして供給部31は、アクチュエータ機構44によって上下方向に変位し、移動タンク100のタンク入口101に接続する接続位置と、移動タンク100から上方へ離れる退避位置に選択的にされる。供給部31は可撓性を有するホース38を介して供給ポート39と接続する。供給ポート39は、横架材22に取付固定され、図示しない洗米設備で発生した洗米排水を供給部31に供給する。
【0029】
枠体21に隣り合う位置には、薬剤添加部51が設置される。薬剤添加部51はポンプ52およびpH調整液タンク53を有する。pH調整液タンク53は、ポンプ52および管54を介して、枠体21に支持される供給ポート39に接続される。ポンプ52は、pH調整液タンク53内の薬剤を汲み上げて、供給ポート39を流れる単位量の洗米排水に所定量の薬剤を添加する。これにより供給部31を流れる洗米排水は適切なpH値とされる。そして移動タンク100内の洗米排水は、その品質保持期間を長くされる。本実施形態のpH調整液タンク53は移動タンク100と同じ寸法規格にされる。
【0030】
図2は本実施形態の供給部31および動作部41を取り出し拡大して示す斜視図であり、
図1を正面寄り方向とすれば、
図1とは異なる方向(背面寄り)からみた状態を表す。
図3は、本実施形態の供給部31を取り出して示す斜視図であり、
図1および
図2とは異なる方向(下方から見上げる方向)にみた状態を表す。
図4および
図5は本実施形態の供給部31および動作部41を取り出し拡大して示す背面図であり、
図4が供給部31の退避位置UPを表し、
図5が供給部31の接続位置DOWNを表す。供給部31は、供給路32とセンサ33と蓋34と受け部材35とリンク機構36とブラケット37を有する。
【0031】
図6~
図9は供給路32に関する動作説明図である。
図10は供給路32の正面図であり、
図6および
図7中の矢X方向にみた状態を表す。
図11は供給路32の断面図であり、
図10中のXI-XIで供給路32を切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。供給路32は硬質パイプであり、ホース38に接続される略水平な上流側区間32b(
図2)と、上流側区間32bから向きを変えて下方に延びる中途区間32cと、中途区間32cからさらに延びる下流端である供給口32dを含む。
【0032】
図11に示すように上流側区間32bは、供給路32下流端の供給口32dよりも背面側へ延在する。なお紙面の都合で、
図11中、上流側区間32bは中途区間32cと接続する一方側部分のみ図示され、他方側部分が図略される。図略される他方側部分は、動作部41(
図2)に連結される。供給路32下流端の供給口32dは、背面側へ水平あるいは斜めに指向する。本実施形態の供給口32dは先細のノズルである。
【0033】
図11を参照して、鍔状の蓋34は、中心に貫通孔34cを有し、貫通孔34cに中途区間32cを通される。また蓋34の貫通孔34cには被ガイド部34dが設けられる。被ガイド部34dは中途区間32cによって中途区間32cの長手方向(上下方向)に案内されて、これにより蓋34は供給部31において上下方向に変位可能とされる。なお蓋34は、図示しない弾性部材によって相対的に下方の第1位置L1に付勢される。蓋34の変位については後述する。
【0034】
中途区間32cのうち第1位置L1よりも下方の部位にはボルトおよびナット等によってブラケット37が取付固定される。ブラケット37は中途区間32cと平行に延び、センサ33および受け部材35を支持する。センサ33は供給口32dと隣り合って設けられ、下向きに指向する。供給口32dがタンク入口101から移動タンク100内に差し込まれると、センサ33はタンク100内の液面と対向し、液面の水位を測定することができる。したがって移動タンク100から洗米排水が溢れることを防止可能である。
【0035】
受け部材35は、下端にコップ部35cを有し、上端部をピン37dでブラケット37に枢支される。供給部31が退避位置(
図4)にされ、蓋34が供給部31に対して相対的に下方の第1位置L1にある間、受け部材35は供給口32dの直下に位置する。具体的にはコップ部35cが供給口32dの直下に位置し、上向きに開口して、供給口32dから液だれして落下する洗米排水を受け止めるようにして収集する。またコップ部35cの側壁の上縁35fは供給口32dの少なくとも一部を覆う。これにより供給口32dから流速を伴って横方向へ放出される液だれも、コップ部35cで受け止めることができる。本実施形態の上縁35fは供給口32dの下部を覆うが、図示しない変形例としてコップ部35cの側壁が供給口32dの全てを覆うものであってもよいし、あるいはコップ部35cの側壁が供給口32dに密着してこれを封止するものであってもよい。
【0036】
図6に示すリンク機構(リンク)36は、上端を被ガイド部34dにピン36bで連結され、下端を受け部材35にピン36dで連結される。ピン36b,36dは、ピン37dから離れた位置で、ピン37dと平行に配置される。リンク機構36は蓋34と受け部材35を連係する。供給部31において蓋34が相対的に下方の第1位置L1および相対的に上方の第2位置L2間で変位すると、リンク機構36によって受け部材35が連動する。
【0037】
次に受け部材35の動作につき説明する。
【0038】
図6~
図9の動作説明図に関し、
図6は供給部31の退避位置(
図4)に対応し、
図4中の矢VI方向にみた状態を表す。
図9は供給部31の接続位置(
図5)に対応し、
図5中の矢IX方向にみた状態を表す。
図7および
図8は途中の状態に対応する。
【0039】
図4に示すようにピストンロッド46がシリンダ45に引き込まれて供給部31がタンク入口101から離れた退避位置で、
図6に示すように蓋34は、タンク入口101と当接せず、相対的に下方の第1位置L1に付勢される。ブラケット37は下方から被ガイド部34dに当接し、被ガイド部34dの下限を規定する。かかる下限は蓋34の第1位置L1に対応する。
【0040】
図5に示すようにシリンダ45下端からピストンロッド46が進出すると、供給部31全体が下降する。そうするとまず蓋34がタンク入口101を構成するリブに当接する。当該リブはタンク100上面に立設される。
【0041】
蓋34の外径はタンク入口101の内径よりも大きい。このため供給部31が下降しても蓋34のみがタンク入口101で下降を阻止される。
図8を参照して、蓋34以外の供給部31が矢Gで示すように下降を続ける。そうすると蓋34が相対的に上方へ押し上げられ、リンク機構36が受け部材35を引き起こし、受け部材35がピン36dを中心として矢H方向に回動起立する。
【0042】
続いて供給部31が下方に変位して接続位置(
図5)にされると、
図9に示すように蓋34がタンク入口101に押し上げられて相対的に上方の第2位置L2にされる。蓋34はタンク入口101に係止して、上方からタンク入口101に密着する。タンク入口101の外径側には同心円状の外径側リブ103がさらに立設される。外径側リブ103の径も蓋34の径よりも小さく、外径側リブ103の上縁も蓋34の下面に当接する。内径側のタンク入口101(および外径側リブ103)と蓋34の当接によって、異物の移動タンク100内への侵入が阻止される。なお変形例として、タンク入口101には、
図5に示すように入口径が小さな場合の他、入口径が大きな場合があってもよい。入口径の大きな場合、外径側リブ103がタンク入口を画成する。
【0043】
供給部31の接続位置で、蓋34よりも下方に配置される供給口32d、センサ33、受け部材35、リンク機構36、およびブラケット37がタンク内に挿入される。また蓋34は、タンク入口101の縁によって上方へ押し上げられて相対的に上方の第2位置L2に保持される。そうすると受け部材35は供給口32dから離れて正面側(
図9の紙面左側)に回り込み、供給口32dは完全に開放される。
【0044】
リンク機構36に引き起こされたコップ部35cは、移動タンク100内で供給口32dの開口方向とは反対側に回り込むとともに、当該コップ部35cが横倒しにされる。上縁35fが設けられるコップ部35cの側壁は、コップ部35cの底壁から斜め下へ傾斜することから、コップ部35cの底壁に溜まった洗米排水は、すべて移動タンク100内に落下する。
【0045】
供給部31が接続位置にされると、管状の供給路32を流れる洗米排水は、供給口32dから放出される。供給口32dは真下に指向するのではなく、横向きに指向することから、放出された洗米排水は放物線を描きながら落下し、移動タンク100内の側壁に到達するか、あるいは側壁近傍の液面に到達する。本実施形態によれば、到達した飛沫の跳ね返りを少なくすることができ、供給部31が飛沫で汚染され難くされる。
【0046】
図9に示すように蓋34は、供給部31において相対的に第1位置L1から第2位置L2に移動されることにより、供給部31全体が接続位置DOWNにあること、供給部31の絶対的な位置を検出する。なお蓋34が第2位置L2ではないとき、例えば第1位置にあるとき、供給部31全体が
図6に示す退避位置UPにあるか、あるいは
図7に示す途中の位置にあることを検出する。
【0047】
ところで本実施形態の洗米排水供給装置10は、通いタンク式の移動タンク100を利用し、移動タンク100上部のタンク入口101に着脱して洗米排水を供給する供給部31を備える。これにより、移動タンク100で洗米排水を家畜飼育場に直接搬送して、洗米設備側では洗米排水の濃縮等の処理を行わず、洗米排水を飼料の一品として活用でき、かつ、その際の搬送作業性が、供給部31をタンク入口101に着脱する作業だけで良いので、残りの作業はフォークリフト、トラック等で機械化され、搬送作業負担が減って作業性が非常に向上する。また、
図1に示す洗米設備側では減圧脱水装置等が不要で設備投資コストも低く、減圧脱水装置等の設置スペースも不要になる。また、前述のように、搬送作業が単純で簡単であるため、洗米(精米)工場の作業者以外の養豚場などの飼料業者でも作業を行うことができ、洗米(精米)工場側の作業員の配置を不要にすることもでき、手間いらずで、無洗米又は洗米の本業生産が向上し、お互いの業者において有益になる。
【0048】
また本実施形態の洗米排水供給装置10は、移動タンク100の上方に設置され、移動タンク100のタンク入口101に向かって昇降し供給部31の着脱を可能にする動作部41と、タンク入口101から移動タンク100内に挿入されて洗米排水の供給を可能する供給路32を有する。動作部41は、例えば、アクチュエータ機構44に重畳して、作業員に操作されるセレクトスイッチや、押しボタンを有し、供給路32を自動で上下動させるとよい。これにより作業者が供給路32を直接握って着脱しなくて済み、作業性が向上する。あるいは動作部41に代えて手動方式、例えばレバー機構等で、供給路32を上下させてもよい。
【0049】
また本実施形態の供給部31は、移動タンク100内に挿入されて、移動タンク100内の洗米排水の液量を検知するセンサ33を有することから、移動タンク100の満量を自動検知することができる。
【0050】
また本実施形態は、移動タンク100下方のセット位置11に設けられ、移動タンク100内の洗米排水の重量を検知する重量計(図略)を備える。これにより移動タンク100の満量を自動検知することができる。なお重量計に代えてセンサ33で移動タンク100内の満量を検知してもよい。
【0051】
また本実施形態の受け部材35は、接続位置の時に、供給路32の供給口32dから離れるように移動することから、供給口32dから放出される洗米排水は流れを受け部材35によって邪魔されることなく、移動タンク100内に洗米排水を供給することができる。一方、受け部材35は、退避位置の時に、供給口32dの直下に待機して、供給路32の供給口32dから液だれして落下する洗米排水をすべて受けることから、退避位置のとき、つまり移動タンク100を入れ替える際に液だれによる不衛生化を防止することができる。これにより移動タンク100を入れ替え作業するときに、供給部31の下方に液だれが生じて、食品を加工する無洗米製造の環境において菌の発生や虫の発生によるコンタミ等の不衛生化を予防でき、液だれの清掃作業も行う必要もない。
【0052】
また本実施形態の移動タンク100は、その下部にフォークリフトの爪を篏合できるフォーク開口102を有する。
【0053】
また本実施形態の洗米排水供給装置10は、栄養分を含む水の保存性を維持する物質(例えばpH調製液、顆粒薬材など)を供給可能な薬剤添加部51(ph調製液タンク53)を備える。これにより、洗米排水の保存性が向上する。
【0054】
また本実施形態の洗米(精米)工場は、
図12に示すように洗米排水供給装置10、10・・・・を複数具備し、無洗米製造装置(図略)又は洗米装置(図略)と複数の洗米排水供給装置10とを接続する洗米排水移送管61に切換え弁62~64を設けるとよい。これにより、無洗米生産量の多い工場において、1の移動タンク100の満量に伴い、切換え弁62~64を別な空の移動タンク100の方に切換えておくことで、移動タンク100の入れ換え作業ができるので、無洗米製造装置の運転を停止する生産ロス時間を削減して、連続生産を可能にでき、洗米工程の効率が向上する。
【0055】
ここで切換え弁62~64は、
図12に示すように個々のセレクトスイッチ66~68によって切り換わるよう構成されていてもよいし、あるいはセレクトスイッチを設けることなく上述した重量計やセンサ33と連動させて自動切換えする構成にしてもよい。移動タンク100の切換えバリエーションとしては、例えば
図12に示すように2方向に分岐し、さらに2方向に分岐するように、2個単位で増設可能とし、洗米の作業量に応じて、適宜、自動で移動タンク100の切り替えを行う。例えば、一日の無洗米生産において、洗米排水を、複数の通いタンクに切り換えて貯留しておき、一日の生産の終わりに、満量の移動タンク100と空の移動タンク100と入れ換えるようにしてもよい。
【0056】
本実施形態の移動タンク100によれば、洗米排水の保存性が向上するため、満量の移動タンク100を洗米工場にストックしておき、まとめて搬送できるため、搬送コストも低減できる。例えば、無洗米加工量に応じて、1週間に1回、4個等複数の移動タンク100,100・・・を効率的に回収サイクルできる。
【0057】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、食品製造加工設備において有利に利用される。
【符号の説明】
【0059】
10 洗米排水供給装置、 11 セット位置、 12 枕木、
21 枠体、 31 供給部、 32 供給路、 32d 供給口、 33 センサ、 34 蓋(検出部材)、 35 受け部材、
36 リンク機構、 37 ブラケット、 38 ホース、
39 供給ポート、 41 動作部、 44 アクチュエータ機構、
51 薬剤添加部、 61 洗米排水移送管、
100 移動タンク、 101 タンク入口、 102 フォーク開口。