IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2024-115950蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。
<>
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図1
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図2
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図3
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図4
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図5
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図6
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図7
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図8
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図9
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図10
  • 特開-蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115950
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20240820BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240820BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240820BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240820BHJP
   H01M 10/654 20140101ALI20240820BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20240820BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240820BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M50/103
H01M50/15
H01M10/647
H01M50/176
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/654
H01G11/14
H01G11/78
H01G11/84
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021876
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H028
5H029
5H031
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078HA05
5E078HA12
5E078HA25
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD13
5H028AA08
5H028BB05
5H028CC08
5H028CC12
5H028CC24
5H028EE01
5H029AK01
5H029AL01
5H029AM03
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029DJ04
5H029EJ01
5H031AA08
5H031BB03
5H031CC01
5H031EE01
5H031KK01
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの放熱効率を向上と、ケース本体内部の異物の混入の抑制を両立した蓄電デバイス及び蓄電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】
本開示の蓄電デバイス100は、一対の対向する幅広面20aを有する電極体20と、幅広な矩形状の第1面12aと、一対の対向する第2面12b、12cと、一対の対向する第3面12d、12eと、開口12hを有するケース本体12と、開口12hを封口する幅広な矩形状の封口板14と、を有するケース10と、放熱部材70を備える。ここで、放熱部材70は、電極体20の幅広面20aに接触しながら配置された放熱板72と、該放熱板72の一方の端部からケース10の内面に沿って開口12hに向かって延びる第1側壁74と、を備えており、第1側壁74とケース10の第2面12cおよび/または第3面とを接合する金属接合部80を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極を備える電極体であって、一対の対向する幅広面を有する電極体と、
前記電極体を複数収容する六面体形状のケースであって、幅広な矩形状の第1面および該第1面に対向する開口と、前記第1面の周縁から前記開口に向かって延びる一対の対向する第2面と、前記第1面の外縁から前記開口に向かって延びる一対の対向する第3面を有するケース本体と、前記開口を封口し、前記第1面に対向する幅広な矩形状の封口板と、を有するケースと、
前記ケース内に収容される放熱部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
ここで、前記放熱部材は、
前記電極体の前記幅広面に接触しながら配置された放熱板と、
前記放熱板の一方の端部から前記ケースの内面に沿って前記開口に向かって延びる第1側壁と、を備えており、
前記第1側壁と前記ケースの前記第2面および/または前記第3面とを接合する金属接合部を有する、
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記電極体と電気的に接続される端子と、
前記第2面の一方のみに前記端子が挿通される貫通孔と、を更に備えており、
前記第1側壁は、前記第3面および前記貫通孔を有しない方の前記第2面の内面に沿って配置される、
請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記放熱部材は、前記放熱板の一方の端部から前記ケースの内面に沿って前記第1面に向かって延びる第2側壁を更に有する、
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記放熱板の面にリブを有する、
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記放熱板の厚み方向において線対称である、
請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
正極と負極を備える電極体であって、一対の対向する幅広面を有する電極体と、
前記電極体を複数収容する六面体形状のケースであって、幅広な矩形状の第1面および該第1面に対向する開口と、前記第1面の周縁から前記開口に向かって延びる一対の対向する第2面と、前記第1面の周縁から前記開口に向かって延びる一対の対向する第3面を有するケース本体と、前記開口を封口し、前記第1面に対向する幅広な矩形状の封口板と、を有するケースと、
放熱板と、前記放熱板の一方の端部から内面に沿って前記開口方向に延びる第1側壁と、を有する放熱部材と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電極体の前記幅広面と前記第1面とが対向するように、前記電極体を前記ケース本体に収容する電極体収容工程と、
前記放熱板が、いずれか1つの前記電極体の前記幅広面とが接触し、かつ、前記第1側壁と、前記第2面および/または前記第3面の内面とが接触し、前記第1側壁の端部が前記開口に向くように前記放熱部材を配置する放熱部材配置工程と、
前記放熱部材配置工程後に、前記第1側壁と前記第2面および/または前記第3面の内面とを溶接する放熱部材溶接工程と、
を含む蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記放熱部材溶接工程後に、スパッタを回収するスパッタ回収工程をさらに含む、
請求項6に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1側壁を前記ケースの内面に押し付けながら前記放熱部材溶接工程を行う、
請求項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記蓄電デバイスは、前記電極体と電気的に接続される端子と、
前記第2面の一方のみに前記端子が挿通される貫通孔と、を更に有しており、
前記放熱熱部材配置工程において、前記第1側壁は、前記第3面および前記貫通孔を有しない前記第2面の内面に沿って配置され、
前記放熱部材溶接工程において、前記第1側壁の全ての面に対して溶接接合を行う、
請求項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記放熱部材は、前記放熱板の厚み方向に見て線対称である、
請求項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の対向する幅広面を有する電極体と、該電極体を収容するケースと、上記電極体と電気的に接続される端子と、を備えた蓄電デバイスが知られる。近年、蓄電デバイスは、その普及に伴い、更なる高出力化が求められている。これに関連して、例えば、特許文献1および特許文献2には、電極体(積層体または電極組立体)から発生する熱を放出するための放熱板(放熱部材)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-287487号公報
【特許文献2】特開2016-31851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2にあるように放熱部材とケースを接合する際、上記した従来技術(特許文献1および2)において用いられるケース(容器)を用いた場合、開口が狭いため、溶接治具の干渉やスパッタの飛散等の課題が生じる。従って、上記技術には改善の余地が見られた。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電デバイスおよび蓄電デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される蓄電デバイスは、正極と負極を備える電極体であって、一対の対向する幅広面を有する電極体と、上記電極体を複数収容する六面体形状のケースであって、幅広な矩形状の第1面および該第1面に対向する開口と、上記第1面の周縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第2面と、上記第1面の外縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第3面を有するケース本体と、上記開口を封口し、上記第1面に対向する幅広な矩形状の封口板と、を有するケースと、上記ケース内に収容される放熱部材と、を備える蓄電デバイスであって、ここで、上記放熱部材は、上記電極体の上記幅広面に接触しながら配置された放熱板と、上記放熱板の一方の端部から上記ケースの内面に沿って上記開口に向かって延びる第1側壁と、を備えており、上記第1側壁と上記ケースの上記第2面および/または上記第3面とを接合する金属接合部を有する。
【0007】
かかる構成によると、放熱部材は第1側壁を有することにより、ケースと放熱部材との接地面積が広くなり、放熱部材の熱をケースへ伝導することができる。そして、第1側壁とケースの第2面および/または第3面とを接合する金属接合部を有することにより、より好適に放熱部材の熱をケースへ伝導することができる。さらに、上記したケース本体は幅広な矩形状の開口を有するため、上記の放熱部材を容易にケース本体内部に配置(収容)することができる。また、金属接合部形成時において、レーザ光の照射距離を短縮することができる。これにより、金属接合部形成時における、スパッタの飛散を抑制することができる。従って、ここに開示される蓄電デバイスによれば、蓄電デバイスの放熱効率を向上させつつ、ケース本体内部の異物の混入を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図3中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図3は、図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電極体の模式図である。
図5図5は、第1実施形態に係る放熱部材を示す斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係る放熱部材の背面を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係る放熱部材のケース本体内での配置を説明する模式図である。
図8図8は、第2実施形態に係る蓄電デバイスの図3対応図である。
図9図9は、第2実施形態に係る放熱部材を示す斜視図である。
図10図10は、一実施形態に係る蓄電デバイスの製造方法を示すフロー図である。
図11図11は、変形例に係る放熱部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらここに開示される技術に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれるとともに、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0010】
本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電を行なうことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一般にリチウムイオン電池やリチウム二次電池などと称される電池の他、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなどが包含される。二次電池とは、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。ここでは、蓄電デバイスの一形態として、リチウムイオン二次電池を例示する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、図3中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図2では、ケース10内部の断面のうち、電極体20は外形図で示している。図3では、説明の便宜上、負極タブ24tの枚数を11枚で表しているが、これに限定されない。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下(重力方向)を表す。また、図面中の符号Xは、蓄電デバイス100の短辺方向(厚み方向ともいう。)を示し、符号Yは、蓄電デバイス100の長辺方向を示し、符号Zは、鉛直方向(高さ方向ともいう。)を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電デバイス100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図1図2に示すように、蓄電デバイス100は、ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに電解液を備えている。蓄電デバイス100は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることが好ましい。
【0013】
ケース10は、例えば、電極体20を収容する六面体形状の部材である。図1図2に示すように、ケース10は、ケース本体12と、封口板14とを備えている。ケース10は、典型的には、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属製である。
【0014】
ケース本体12は、例えば、電極体20を内部に収容する、ケース10の本体である。ケース本体12は、図1図2に示すように、開口12hと、第1面12aと、一対の対向する第2面12b,12cと、一対の対向する第3面12d,12eを有している。この実施形態では、第1面12aは、幅広な矩形状であり、開口12hに対向している。一対の第2面12b,12cは、第1面12aの一対の対向する周縁(ここでは、第1面12aの長辺。)から延びており、第2面12b,12cは互いに対向している。図1図2に示すように、下側の第2面12cは、蓄電デバイス100の底面を構成する。また、上側の第2面12bは、この底面に対向する上面であり、ここでは正極端子30および負極端子40の取付面である。また、一対の第3面12d,12eは、第1面12aの一対の対向する周縁(ここでは、第1面12aの短辺)から延びており、第3面12d,12eは互いに対向している。ケース本体12の形状やサイズは、例えば、ケース本体12に収容する電極体20のサイズ、個数などに併せて適宜変更することができる。なお、本明細書において、「矩形状」とは、直線状の長辺と短辺とが曲線を介して互いに接合している形状、長辺および短辺の少なくとも一方が直線状ではなく、湾曲したり、凹凸になっていたり、屈曲して複数の直線あるいは曲線から構成されている形状、等を包含する。
【0015】
開口12hは、例えば、封口板14が装着される部位である。ここでは、開口12hは、一対の第2面12b,12cの上縁と、一対の第3面12d,12eの上縁とで囲まれることによって形成されており、幅広な矩形状である。ケース本体12の開口12hに封口板14を嵌めこみ、封口板14の周縁が溶接されることによって、ケース本体12と封口板14とが一体化され、ケース10が気密に封止される。
【0016】
図2に示すように、第2面12bには、排出弁15と、注液孔16と、貫通孔18,19、が設けられている。排出弁15は、例えば、薄肉部である。ここでは、排出弁15は、ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。注液孔16は、ケース本体12に封口板14を組み付けた後、ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔16は、ここでは、電解液の注液後に封止部材16aによって封止されている。貫通孔18は、正極端子30が取り付けられる(挿通される)部位である。貫通孔19は、負極端子40が取り付けられる(挿通される)部位である。なお、第2面12cは、ここに開示される「貫通孔を有しない方の第2面」の一例である。
【0017】
封口板14は、開口12hを封口する平板状の部材である。このため、封口板14の形状は、開口12hの形状に応じた形状であるとよい。ここでは、封口板14は、幅広な矩形状である。ここでは、封口板14が開口12hに取り付けられると、封口板14は、第1面12aに対向する。
【0018】
電解液としては、従来公知において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒(有機溶媒)に支持塩(電解質塩)を溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0019】
正極端子30は、電極体20の正極22と電気的に接続される部材である。図2に示されているように、正極端子30は、貫通孔18に挿通され、ケース本体12の外側に露出している。ここでは、正極端子30は、正極第1導電部材31と、正極第2導電部材32とを有している。この実施形態では、正極第1導電部材31は、軸部31aとベース部31bとを有している。軸部31aは、例えば、円筒状であり、貫通孔18と正極第2導電部材32の貫通孔に挿通される部位である。ベース部31bは、例えば、平板状であり、ケース本体12の外側表面(ここでは、第2面12b)に沿って配置される部位である。正極第2導電部材32は、例えば、平板状であり、スタックを構築する際に、バスバーと接続される部位である。この実施形態では、正極第2導電部材32は、矩形状である。正極第1導電部材31と正極第2導電部材32とは、ケース10の外側において相互に接続されている。正極第1導電部材31は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。正極第2導電部材32は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で構成される。なお、正極端子30は、ここに開示される「端子」の一例である。
【0020】
負極端子40は、電極体20の負極24と電気的に接続される部材である。図2に示されているように、負極端子40は、貫通孔19に挿通され、ケース本体12の外側に露出している。ここでは、負極端子40は、負極第1導電部材41と、負極第2導電部材42とを有している。負極第1導電部材41は、例えば、銅または銅合金で構成される。負極端子40は、例えば、正極端子30と同様の構成を有してよい。このため、負極端子40の構成についての説明は、ここでは省略する。なお、負極端子40は、ここに開示される「端子」の一例である。
【0021】
正極集電体50は、例えば、正極タブ22tと正極端子30とを電気的に接続する部材である。正極集電体50は、板状の導電部材である。図2に示されているように、正極集電体50は、ケース本体12の内側表面(ここでは、第2面12bの内側)に沿って、第2面12bの長辺方向に延びている。正極集電体50の一方の端部(図2の右側端部)には、正極タブ22t(ここでは、正極タブ群)が接続されている。また、正極集電体50の他方の端部(図2の左側端部)には、貫通孔50hを有する。正極集電体50の貫通孔50hには、正極端子30の軸部31aの下端部が挿通されて、かしめられている。正極集電体50は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。
【0022】
負極集電体60は、負極タブ24tと負極端子40とを電気的に接続する部材である。負極集電体60は、例えば、板状の導電部材である。図2に示されているように、負極集電体60は、ケース本体12の内側表面(ここでは、第2面12bの内側)に沿って、第2面12bの長辺方向に延びている。負極集電体60の一方の端部(図2の左側端部)には、負極タブ24t(ここでは、負極タブ群)が接続されている。また、負極集電体60の他方の端部(図2の右側端部)には、貫通孔60hを有する。負極集電体60の貫通孔60hには、負極端子40の下端部が挿通されて、かしめられている。負極集電体60は、例えば、銅または銅合金で構成される。
【0023】
蓄電デバイス100では、種々の絶縁部材が用いられている。例えば、図2に示されているように、ケース10の外側において、正極端子30の正極第2導電部材32と第2面12bとの間、ならびに、負極端子40の負極第2導電部材42と第2面12bとの間には、外部絶縁部材91が配置されている。また、ケース10の外側において、正極第1導電部材31と第2面12bとの間、ならびに、負極第1導電部材41と第2面12bとの間には、ガスケット92が配置されている。また、ケース10の内側において、正極集電体50と第2面12bとの間、ならびに、負極集電体60と第2面12bとの間には、内部絶縁部材93が配置されている。ガスケット92は、ここではケース本体12と正極端子30および負極端子40とを絶縁すると共に、貫通孔18、19をシール(閉鎖)する機能を有する。
【0024】
外部絶縁部材91、ガスケット92、内部絶縁部材93には、耐薬品性や耐候性に優れた材料が用いられるとよい。ガスケット92や内部絶縁部材93は、電気絶縁性を有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等で構成されていてもよい。ガスケット92および内部絶縁部材93は、例えば、インサート成型により一体化していてもよい。
【0025】
電極体20は、正極22と負極24とを有する、蓄電デバイス100の発電要素である。図4は、第1実施形態に係る電極体20の模式図である。図4に示すように、電極体20は、ここでは長尺なシート状の正極22と長尺なシート状の負極24とがセパレータ23を介在させつつ、シート長手方向LDに捲回された、捲回電極体である。電極体20は、例えば、正極22と負極24とセパレータ23とを捲回して筒状体とし、かかる筒状体をプレス成形することによって作製されうる。電極体20は、扁平形状であり、一対の幅広面20aを有する(図2および図3参照)。1つのケース本体12の内部に配置される電極体20の数は、複数であれば特に限定されない。図3に示すように、ここでは、4個の電極体20がケース本体12の内部に配置されている。
【0026】
図2および図3に示すように、電極体20は、電極体20の幅広面20aと第1面12aとが対向するようにケース本体12に収容されている。この実施形態では、電極体20の捲回軸WLは、第1面12aと第3面12d,12eと封口板14と略平行になり、かつ、第2面12b,12cと略垂直である。また、電極体20の幅広面20aは、第1面12aと封口板14とに対向している。また、電極体20の一方の端面は第2面12bと対向しており、他方の端面は第2面12cと対向している。電極体20の端面は、ここでは、正極22と負極24とセパレータ23との積層面であり、開放面である。なお、電極体20は、絶縁性の樹脂シートから構成される図示しない電極体ホルダに覆われた状態でケース10の内部に収容されてもよい。
【0027】
図4に示すように、正極22は、長尺な帯状の正極集電箔22c(例えばアルミニウム箔)と、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極22の捲回軸方向WDにおける一方の側縁部には、必要に応じて、保護層22pが設けられていてもよい。なお、正極活物質層22aの構成材料と保護層22pの構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0028】
正極集電箔22cの捲回軸方向WDの一方の端部(図4の上端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、捲回軸方向WDの一方の端部(図5の上端部)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、正極22の長手方向LDに沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極集電箔22cの一部であり、正極集電箔22cの正極活物質層22aが形成されていない部分(活物質層未形成部)である。図4に示された実施形態では、正極タブ22tの基端側には、保護層22pが設けられている。この実施形態では、複数の正極タブ22tは、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。正極タブ22tの形状やサイズは、例えば正極端子30に接続される状態を考慮し、その形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の正極タブ22tは捲回軸方向WDの一方の端部(図4の上端部)で積層され、正極タブ群を構成する。このため、各々の正極タブ22tの高さ(捲回軸方向WDにおける長さ)と、各々の正極タブ22tの幅(長手方向LDにおける長さ)とは、同じでなくてもよい。
【0029】
図4に示すように、負極24は、長尺な帯状の負極集電箔24c(例えば銅箔)と、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aとを有する。なお、負極活物質層24aの構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0030】
負極集電箔24cの捲回軸方向WDの一方の端部(図4の上端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、捲回軸方向WDの一方の端部(図4の上端部)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、負極24の長手方向LDに沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、負極集電箔24cの一部であり、負極集電箔24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(活物質層未形成部)である。この実施形態では、複数の負極タブ24tは、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。負極タブ24tの形状やサイズは、例えば負極端子40に接続される状態を考慮し、その形成位置等によって、適宜調整することができる。例えば、複数の負極タブ24tは捲回軸方向WDの一方の端部(図4の上端部)で積層され、負極タブ群を構成する。このため、各々の負極タブ24tの高さ(捲回軸方向WDにおける長さ)と、各々の負極タブ24tの幅(長手方向LDにおける長さ)とは、同じでなくてもよい。
【0031】
蓄電デバイス100は、ここでは、電極体20の上方に正極タブ22tと負極タブ24tとが位置する、所謂、上タブ構造である。ただし、蓄電デバイス100は、電極体20の左右に正極タブ22tと負極タブ24tとが設けられている、所謂、横タブ構造であってもよい。
【0032】
セパレータ23は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ23は、この実施形態では、電極体20の外表面を構成している。セパレータ23としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが用いられる。
【0033】
図4に示すように、電極体20では、セパレータ23の下端P3が最も下側であり、次いで負極24の下端P2があり、正極22の下端P1が最も上側にある。各シートの幅(図4では、捲回軸方向WDにおける長さ。ただし、正極タブ22tおよび負極タブ24tを除く。)は、セパレータ23、負極24、正極22の順に大きい。
【0034】
ここに開示される蓄電デバイス100は、放熱部材70および金属接合部80を有することを特徴とする。図5は、第1実施形態に係る放熱部材70を示す斜視図である。図6は、第1実施形態に係る放熱部材70の背面を示す斜視図である。図7は、第1実施形態に係る放熱部材70のケース本体12内での配置を説明する模式図である。図7では、説明の便宜上、電極体20について図示しない。放熱部材70は、ここでは、放熱板72と、第1側壁74を有する。なお、放熱板72と、第1側壁74とは一体成形によって構成されてもよく、溶接等を用いて構成されてもよい。
【0035】
放熱板72は、電極体20より発生した熱を放熱する部材である。放熱板72は、積層方向において、電極体20の幅広面20aと重なり合う領域を有する。放熱板72は、電極体20の幅広面20aに接触しながら配置される。ここでは、図3に示すように、放熱板72のうち、封口板14と対向する面は、前側から2番目に配置された電極体20の一方の幅広面20aと接触する。一方で、放熱板72のうち、第1面12aと対向する面は、前側から3番目に配置された電極体20の一方の幅広面20aと接触する。かかる接触により、電極体20で生じた熱を、放熱板72を通じて放熱部材70に伝導することができる。ここでは、電極体20のうち、外表面を構成するセパレータ23が放熱板72と当接する。
【0036】
いくつかの好ましい態様では、放熱板72の面にリブ85を有する。図5および図6に示すように、ここでは、放熱板72の前面及び背面には、リブ85が櫛歯状に配置されている。ここでは、リブ85は、複数の凸部86と複数の凹部87を有する。複数の凸部86と複数の凹部87は、互いに間隔を空けて配置される。かかる構成によれば、凹部87を介して電極体20の幅広面20aに外気を接触させることができるため、放熱効率をさらに向上させることができる。リブ85は、放熱板72の片面に有してもよいし、両面に有してもよい。ここでは、図5に示すように、放熱板72のうち開口に対向する面に、リブ85が配置されている。そして、図6に示すように、放熱板72のうち第1面12aに対向する面にもリブ85が配置されている。これにより、より好適に電極体20の放熱効率を向上させることができる。但し、リブ85は必須ではなく、放熱板72は、表面に凹凸がない平板状であってもよい。
【0037】
第1側壁74は、放熱部材70の熱をケース本体12へ伝導する部材である。第1側壁74は放熱板72の一方の端部からケース10の内面に沿って開口12hに向かって延びる。ここでは、放熱部材70は第1側壁74(74c,74d,74e)を有する。図3に示すように、第1側壁74cは第2面12cの内面に接触しながら開口12hに向かって延びる。図示は省略するが、同様に、第1側壁74dは第3面12dの内面に、第1側壁74eは第3面12eの内面に、それぞれ接触しながら開口12hに向かって延びる。かかる接触により、放熱部材70の熱を、第1側壁74を通じて第2面12c、第3面12d、12eへと伝導することができる。第1実施形態における放熱部材70のように、第3面12d,12eおよび第2面12c(即ち、貫通孔18,19を有しない面。)に沿って第1側壁74が配置されることが好ましい。これにより、第1側壁74とケース10との接地面積をより広く確保することができるため、より好適に放熱部材70の熱をケース10へと伝導することができる。ただし、放熱部材70は、第2面12c、第3面12d、12eのうち少なくともいずれか1つの面に沿って延びる(いずれか1つの面と接する。)第1側壁74を有していればよい。かかる場合においても、本開示における効果を奏することができる。
【0038】
第1側壁74は、ここでは平板状である。ただし、これに限定されず、例えば、ケース本体12の内面に凹凸等を有する場合、ケース本体12の内面の形状にあわせて第1側壁74の形状を変更してもよい。これにより、好適に第1側壁74とケース本体12の内面とが接することができ、好適に放熱部材70の熱をケース本体12へ伝導することができる。ケース本体12は幅広な矩形状の開口12hを有するため、第1側壁74が平板状でない場合も、放熱部材70をケース本体12内部に配置することができる。
【0039】
放熱部材70の材質は、熱伝導性の高い金属、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)などが採用され得る。中でも、後述する金属接合部80を好適に構成する観点から、ケース本体12と同じ材質であることが好ましい。また、放熱部材70の寸法について、放熱部材70をケース本体12内部に収容でき、かつ、第1側壁が、ケース本体12の内面と接することができればよい。
【0040】
図3に示すように、ここでは、放熱部材70は、蓄電デバイス100の厚み方向に見て、ケース10の中央に配置される。換言すれば、蓄電デバイスの1の厚み方向に見て、放熱板72の前側に配置される電極体20の個数(ここでは2個。)と、放熱板72の後ろ側に配置される電極体20の個数(ここでは2個。)は同じである。これにより、電極体20から発生する熱をより均等に放熱することができる。しかし、これに限定されず、放熱部材70は、放熱板72のいずれの面(即ち、前面及び背面)も電極体20の幅広面20aと接触しながら配置(換言すれば、複数の電極体20の間に放熱板72が配置される。)されていればよい。
【0041】
図3および図7に示すように、蓄電デバイス100は、金属接合部80を有する。金属接合部80は、放熱部材70の第1側壁74と、ケース10との接合部である。図3に示すように金属接合部80は、第1側壁74を第1側壁74の壁厚み方向(ここでは、下方向。)に貫通し、ケース10(ケース本体12)まで達するようにして形成される。金属接合部80は、連続的、または、間欠的に形成されている。図7に示すように、ここでは、金属接合部80は、間欠的に形成されており、第1側壁74cと第2面12c、第1側壁74dと第3面12d、そして、第1側壁74eと第3面12eとをそれぞれ接合している。本実施例に係る蓄電デバイス100は、金属接合部80を有することにより、放熱部材70の熱を、第1側壁74を通じてより効率よくケース10に伝導することができる。従って、蓄電デバイス100の放熱効率を向上させることができる。金属接合部80の形成方法は、例えば、溶接(例えば、レーザ溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等)が採用し得、レーザ溶接が好適に採用し得る。
【0042】
放熱部材70が複数の第1側壁74を有する場合、全ての第1側壁74に金属接合部80を形成することが好ましい。これにより、放熱部材70の熱を、第1側壁74を通じてより効率よくケース10に伝導することができる。しかし、これに限定されず、金属接合部80は、第1側壁74のうち、少なくとも1つの第1側壁74に形成されていればよい。この場合も、蓄電デバイス100の放熱効果を向上させることができる。
【0043】
従来技術(特許文献1および2を参照。)に用いられるケースに対し、上述の通り、本開示のケース本体12は幅広な矩形状の開口12hを有する。このため、上記したような放熱部材70を容易にケース本体12内部に配置(収容)することができる。また、上記したような開口12hを有することにより、金属接合部80形成時において、レーザ光の照射距離(レーザヘッドから金属接合部80までの最短距離。)を短縮することができる。これにより、金属接合部80形成時における、スパッタの飛散を抑制することができる。また、スパッタが発生した場合についても、スパッタの回収が容易となる。従って、ここに開示される蓄電デバイス100によれば、蓄電デバイス100の放熱効率を向上させつつ、ケース本体12内部の異物の混入を好適に抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る蓄電デバイス200の図3対応図である。図9は、第2実施形態に係る放熱部材270を示す斜視図である。図8に示すように、ここに開示される蓄電デバイス200では、放熱部材70に代えて放熱部材270を備える点以外については、上記した第1実施形態に係る蓄電デバイス100と同様であってよい。
【0045】
放熱部材270は、図9に示すように、放熱板72に代えて放熱板272、第1側壁74(74c、74d、74e)に代えて第1側壁274(274c、274d、274e)を備え、更に第2側壁276(276c、276d、276e)を備えている。なお、放熱部材270の材質、ケース10内における配置箇所等は、第1実施形態の放熱部材70と同様であってよい。また、放熱板272および第1側壁274の構成については、第1実施形態の放熱部材70で同様であってよいため詳細な説明を省略する。
【0046】
第2側壁276は、放熱板272の一方の端部から、ケース10の内面に沿って第1面12aに向かって(ここでは後側に向かって。)延びる部材である。図8に示すように、第2側壁276cは第2面12cの内面に接触しながら第1面12aに向かって延びる。図示は省略するが、同様に、第2側壁276dは第3面12dの内面に、第2側壁276eは第3面12eの内面に、それぞれ接触しながら第1面12aに向かって延びる。第2側壁276を備えることにより、放熱部材270とケース10との接地面積をより広くすることができる。従って、より好適に放熱部材270の熱をケース10へと伝導することができる。図8に示すように、第2側壁276には、金属接合部80は形成されていない一方、第1側壁274(ここでは、第1側壁274c)に金属接合部80が形成されている。
【0047】
図8および図9に示すように、ここでは、放熱部材270は、放熱板272の厚み方向(X方向)において線対称である。詳述すれば、放熱部材270の第1側壁274(274c、274d、274e)と第2側壁276(276c、276d、276e)は、放熱板272を対称軸として、線対称になるように配置される。これにより、蓄電デバイス200の製造時において、放熱部材270の前後の区別確認が不要となる。従って、より効率よく蓄電デバイス200の提供が可能となる。なお、ここに開示される技術における「線対称」は、例えば、寸法公差の範囲内における誤差等、実質的に線対称である場合も包含する。
【0048】
<蓄電デバイス100の製造方法>
ここに開示される技術の他の側面として、蓄電デバイス100の製造方法が提供される。蓄電デバイス100の製造方法は、上記したようなケース10および放熱部材70を用いて、電極体収容工程と、放熱部材配置工程と、放熱部材溶接工程と、を行うことで特徴付けられる。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよいし、それ以外の製造プロセスは従来同様であってよい。図10は、一実施形態に係る蓄電デバイス100の製造方法を示すフロー図である。本実施形態では、蓄電デバイス100は、上記したようなケース10(ケース本体12および封口板14)と、複数の電極体20(ここでは4個の電極体20。)と、放熱部材70と電解液と、正極端子30と、負極端子40と、を用意し、電極体収容工程S10と、放熱部材配置工程S20と、放熱部材溶接工程S30と、スパッタ回収工程S40と、タブ接合工程S50と、封口板封止工程S60と、注液工程S70と、を典型的にはこの順序で含む製造方法によって製造することができる。
【0049】
(電極体収容工程S10)
電極体収容工程S10では、電極体20をケース本体12内に収容する。この時、電極体20の幅広面20aと第1面12aとが対向するように、電極体20をケース本体12に収容する。なお、ここに開示される蓄電デバイス100の製造方法においては、複数回に分けて電極体収容工程S10を実施することができる。本実施形態では、4個の電極体20のうち、まず2個の電極体20について、電極体収容工程を行う。その後、放熱部材配置工程S20、放熱部材溶接工程S30、スパッタ回収工程S40およびタブ接合工程S50を経て、残りの2個の電極体20について、電極体収容工程を行う。なお、電極体収容工程S10に先んじて、正極端子30と負極端子40と正極集電体50と負極集電体60と種々の絶縁部材とを、ケース本体12の第2面12bに取り付けておくことが好ましい。
【0050】
(放熱部材配置工程S20)
放熱部材配置工程S20では、放熱部材70をケース本体12内部に配置する。この時、放熱板72が、ケース本体12に収容されたいずれか1つの電極体20の幅広面20aと接触し、かつ、第1側壁74と、第2面12cおよび/または前記第3面12d,12eの内面とが接触し、第1側壁74の端部が開口12hに向くように放熱部材70を配置する(図7参照)。
【0051】
いくつかの好ましい態様において、放熱部材配置工程S20では、放熱部材70に代えて、放熱部材270を用いることができる。放熱部材270は放熱板272の厚み方向において線対称であるため、放熱部材270を用いた場合、上述の通り、放熱部材270の前後の区別確認が不要となる。従って、容易に放熱部材配置工程S20を実施することができる。
【0052】
(放熱部材溶接工程S30)
放熱部材溶接工程S30では、放熱部材70の第1側壁74とケース本体12の第2面12cおよび/または第3面12d、12eの内面を溶接する。放熱部材溶接工程S30は、放熱部材配置工程S20の後に行う。例えば、放熱部材溶接工程S30では、放熱部材70の第1側壁74(詳述すれば、第1側壁74の外側面。)とケース本体12の内面とが接触した状態で、第1側壁74に対してレーザ照射を行う。これにより、上記したような金属接合部80を形成する。
【0053】
放熱部材溶接工程S30においては、第1側壁74をケース10の内面に押し付けながら金属接合部80を形成することが好ましい。詳述すると、第1側壁74のうち、金属接合部80を形成しようとする壁部に対し、第1側壁74と、該第1側壁74と接触するケース本体12(第2面12c、第3面12d、第3面12e)とが密接になるように第1側壁74を押し付ける。かかる状態を保持しながら第1側壁74にレーザを照射し、金属接合部80を形成する。これにより、第1側壁74とケース本体12が密接した状態で金属接合部80によって接合される。従って、より好適に放熱部材70の熱をケース10へ伝導することができる。即ち、より放熱効率が向上した蓄電デバイス100の提供が実現される。なお、第1側壁74を押し付ける手段及び該押し付け操作に用いる治具について、溶接の妨げにならない限り、特に制限されない。
【0054】
(スパッタ回収工程S40)
いくつかの好適な実施形態において、スパッタ回収工程S40を行うことができる。スパッタ回収工程S40では、従来公知の方法、例えば吸引機構等が採用し得る。本実施形態で用いるケース本体12は、幅広な矩形状の開口12hを有する。これにより、ケース10内部のスパッタを好適に回収することができ、より好適に異物混入を抑制した蓄電デバイス100を製造することができる。
【0055】
(タブ接合工程S50)
タブ接合工程S50では、複数の正極タブ22tと正極集電体50、および、複数の負極タブ24tと負極集電体60を電気的に接合する。これにより、電極体20は、正極集電体50と負極集電体60を通じて、正極端子30および負極端子40と電気的に接続される。タブ接合工程S50にて用いられる接合手段は、従来公知の手段を採用してよく、例えば、レーザ溶接等が採用し得る。本実施例では、タブ接合工程S50の後、ケース本体12の厚み方向(X方向)において、放熱板72より開口12h側(前側)に配置予定の電極体20について、電極体収容工程S10を行う。
【0056】
(封口板封止工程S60)
封口板封止工程S60では、ケース本体12の開口12hと封口板14によって封止する。詳述すれば、ケース本体12の開口12hに封口板14を嵌めこみ、ケース本体12の開口12hの縁部に封口板14を接合して、開口12hを封止する。封口板封止工程S60では、ケース本体12と封口板14とが溶接接合されることが好ましい。ケース本体12と封口板14との溶接接合は、例えば、レーザ溶接等で行うことができる。
【0057】
(注液工程S70)
注液工程S70では、注液孔16から電解液をケース10内部に注入する。その後、注液孔16を封止部材16aで塞ぐことにより、ケース10を密閉する。以上のようにして、蓄電デバイス100を製造することができる。
【0058】
蓄電デバイス100は各種用途に利用可能であるが、蓄電デバイス100の容量の大容量化が要求される用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0059】
以上、ここに開示される技術におけるいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。ここに開示される技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0060】
<変形例>
例えば、第2の実施形態に係る放熱部材270では、放熱部材270の第1側壁274(274c、274d、274e)と第2側壁276(276c、276d、276e)は、放熱板272を対称軸として、線対称になるように配置された。しかしこれに限定されない。図11は、変形例に係る放熱部材370を示す斜視図である。放熱部材370では、放熱板272に代えて放熱板372を備え、第1側壁274に代えて第1側壁374を備え、第2側壁276に代えて第2側壁376を備える。図11に示すように、放熱板372および第1側壁374の構成は、放熱部材270と同様であるが、放熱部材370の第2側壁376は、放熱部材370のうち1辺から延びる第2側壁376cを有する。換言すれば、放熱部材370の第2側壁376は、放熱部材270の第2側壁276d、276eに相当する側壁を有していない。従って、上記したような放熱部材370は、放熱板372の厚み方向(X方向)において線対称ではない。このような場合においても、蓄電デバイス100の放熱効果を向上させることができる。
【0061】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極と負極を備える電極体であって、一対の対向する幅広面を有する電極体と、上記電極体を複数収容する六面体形状のケースであって、幅広な矩形状の第1面および該第1面に対向する開口と、上記第1面の周縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第2面と、上記第1面の外縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第3面を有するケース本体と、上記開口を封口し、上記第1面に対向する幅広な矩形状の封口板と、を有するケースと、上記ケース内に収容される放熱部材と、備える蓄電デバイスであって、ここで、上記放熱部材は、上記電極体の上記幅広面に接触しながら配置された放熱板と、上記放熱板の一方の端部から上記ケースの内面に沿って上記開口に向かって延びる第1側壁と、を備えており、上記第1側壁と上記ケースの上記第2面および/または上記第3面とを接合する金属接合部を有する、蓄電デバイス。
項2:上記電極体と電気的に接続される端子と、上記第2面の一方のみに上記端子が挿通される貫通孔と、を更に備えており、上記第1側壁は、上記第3面および上記貫通孔を有しない方の上記第2面の内面に沿って配置される、項1に記載の蓄電デバイス。
項3:上記放熱部材は、上記放熱板の一方の端部から上記ケースの内面に沿って上記第1面に向かって延びる第2側壁を更に有する、項1または2に記載の蓄電デバイス。
項4:上記放熱板の面にリブを有する、項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
項5:上記放熱部材は、上記放熱板の厚み方向において線対称である、項3または4に記載の蓄電デバイス。
項6:正極と負極を備える電極体であって、一対の対向する幅広面を有する電極体と、上記電極体を複数収容する六面体形状のケースであって、幅広な矩形状の第1面および該第1面に対向する開口と、上記第1面の周縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第2面と、上記第1面の周縁から上記開口に向かって延びる一対の対向する第3面を有するケース本体と、上記開口を封口し、上記第1面に対向する幅広な矩形状の封口板と、を有するケースと、放熱板と、上記放熱板の一方の端部から内面に沿って上記開口方向に延びる第1側壁と、を有する放熱部材と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記電極体の上記幅広面と上記第1面とが対向するように、上記電極体を上記ケース本体に収容する電極体収容工程と、上記放熱板が、いずれか1つの上記電極体の上記幅広面とが接触し、かつ、上記第1側壁と、上記第2面および/または上記第3面の内面とが接触し、上記第1側壁の端部が上記開口に向くように上記放熱部材を配置する放熱部材配置工程と、上記放熱部材配置工程後に、上記第1側壁と上記第2面および/または上記第3面の内面とを溶接する放熱部材溶接工程と、を含む蓄電デバイスの製造方法。
項7:上記放熱部材溶接工程後に、スパッタを回収するスパッタ回収工程をさらに含む、項6に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項8:上記第1側壁を上記ケースの内面に押し付けながら上記放熱部材溶接工程を行う、項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項9:上記蓄電デバイスは、上記電極体と電気的に接続される端子と、上記第2面の一方のみに上記端子が挿通される貫通孔と、を更に有しており、上記放熱熱部材配置工程において、上記第1側壁は、上記第3面および上記貫通孔を有しない上記第2面の内面に沿って配置され、上記放熱部材溶接工程において、上記第1側壁の全ての面に対して溶接接合を行う、項6~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項10:上記放熱部材は、上記放熱板の厚み方向に見て線対称である、項6~9のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0062】
10 ケース
12 ケース本体
12a 第1面
12b、12c 第2面
12d、12e 第3面
12h 開口
14 封口板
18、19 貫通孔
20 電極体
22 正極
22t 正極タブ
23 セパレータ
24 負極
24t 負極タブ
30 正極端子
40 負極端子
70、270、370 放熱部材
72、272、372 放熱板
74、274、374 第1側壁
76、276、376 第2側壁
80 金属接合部
85 リブ
86 凸部
87 凹部
92 ガスケット
93 内部絶縁部材
100、200 蓄電デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11