IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図1
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図2
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図3
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図4
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図5
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図6
  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、金型 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115951
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ付きケース、金型
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/06 20060101AFI20240820BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240820BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240820BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B65D83/06 E
B29C33/42
B29C45/26
B29C45/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021881
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】三田 とも子
(72)【発明者】
【氏名】前川 政貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG28
4F202AG30
4F202AH56
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
(57)【要約】
【課題】薄肉でありながら、内側面に形成された構造物に起因するヒケや膨れが発生しないヒンジキャップ付きケースを提供する
【解決手段】本発明は、共に略矩形でトレイ状である底部材2及び蓋部材3が互いに嵌合してなる樹脂製のヒンジキャップ付きケース1である。底部材及び蓋部材はいずれも、底板部23と、底板部23の周縁から立ち上がる側板部24とを備え、底部材及び蓋部材の少なくとも一方の底板部23の厚さが0.70mm以下であり、底部材及び蓋部材はいずれも、その内側面に、底板部23から突出する構造物25,27,28を側板部24から離れた位置に有しており、当該構造物は底部材2及び蓋部材3が互いに嵌合するための嵌合構造物25を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に略矩形でトレイ状である底部材及び蓋部材が互いに嵌合してなる樹脂製のヒンジキャップ付きケースであって、
前記底部材及び前記蓋部材はいずれも、底板部と、前記底板部の周縁から立ち上がる側板部とを備え、
前記底部材は、前記側板部の一部にヒンジキャップを有しており、
前記底部材及び前記蓋部材の少なくとも一方の前記底板部の厚さが0.70mm以下であり、
前記底部材及び前記蓋部材はいずれも、その内側面に、前記底板部から突出する構造物を前記側板部から離れた位置に有しており、
前記構造物は、前記底部材及び前記蓋部材が互いに嵌合するための嵌合構造物を含む、ヒンジキャップ付きケース。
【請求項2】
前記底部材及び前記蓋部材の少なくとも一方において、前記構造物は、嵌合に寄与しない部分をなす非嵌合構造物を含む、請求項1記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項3】
前記構造物は、筒状、柱状、又は板状である、請求項2記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項4】
前記嵌合構造物の高さは、前記底部材及び前記蓋部材の前記底板部同士の距離の30%~100%である、請求項1記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のヒンジキャップ付きケースを製造するための金型であって、
キャビティが前記底部材又は前記蓋部材の形状に対応する形状である、金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップ付きケース及び金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清涼用粒状物等を入れて小出し使用するためのヒンジキャップ付きケースが知られている(例えば特許文献1,2)。これらはトレイ状の底部材と蓋部材とが互いに嵌合してなるカード型のケースであり、底部材と一体成形されたヒンジキャップを開閉できる構造となっている。これらは部品点数が少なく低コストであり、携帯性に優れ、かつ、耐圧強度が高いという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-256692号公報
【特許文献2】特開2005-47626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のヒンジキャップ付きケースは樹脂からなるものであり、その内側面には、嵌合のためのボス及びピン、並びに、清涼用粒状物を開口部へと案内する案内壁等の構造物が形成されている。これらの構造物が底部材又は蓋部材の側板部に接触して存在する場合、その側板部の外側面にヒケや膨れが発生する虞がある。近年、環境への配慮から樹脂の使用を低減することが望ましいという社会的な要請があり、これに従って薄肉化した場合、そのようなヒケや膨れが一層発生しやすくなる。ヒケや膨れが発生すると外観不良となり、嵌合時の物理的障害にもなり得る。
【0005】
そこで本発明は、薄肉でありながら、内側面に形成された構造物に起因するヒケや膨れが発生しないヒンジキャップ付きケースを提供することを目的とする。また、そのようなヒンジキャップ付きケースを製造するための金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共に略矩形でトレイ状である底部材及び蓋部材が互いに嵌合してなる樹脂製のヒンジキャップ付きケースであって、底部材及び蓋部材はいずれも、底板部と、底板部の周縁から立ち上がる側板部とを備え、底部材は、側板部の一部にヒンジキャップを有しており、底部材及び蓋部材の少なくとも一方の底板部の厚さが0.70mm以下であり、底部材及び蓋部材はいずれも、その内側面に、底板部から突出する構造物を側板部から離れた位置に有しており、構造物は、底部材及び蓋部材が互いに嵌合するための嵌合構造物を含む、ヒンジキャップ付きケースを提供する。
【0007】
このヒンジキャップ付きケースは、トレイ状である底部材又は蓋部材のなかでも広い面積を占める底板部の厚さが0.70mm以下となっている。この厚さは従来のヒンジキャップ付きケースと比べて薄いものであるので、製造するのに従来のものよりも材料が少なく済む。また、このヒンジキャップ付きケースは、底部材及び蓋部材のいずれにおいても、その内側面に、底板部から突出する構造物を側板部から離れた位置に有している。底部材と蓋部材とが嵌合するための構造物も側板部から離れた位置にあるので、側板部の内側面に接触する構造物が存在せず、これにより側板部にヒケや膨れが生じにくくなっている。
【0008】
本発明では、底部材及び蓋部材の少なくとも一方において、構造物は、嵌合に寄与しない部分をなす非嵌合構造物を含んでいてもよい。そして、構造物は、筒状、柱状、又は板状であってもよい。
【0009】
嵌合構造物の高さは、底部材及び蓋部材の底板部同士の距離の30%~100%であってもよい。
【0010】
また、本発明は、上記のヒンジキャップ付きケースを製造するための金型であって、キャビティが底部材又は蓋部材の形状に対応する形状である金型を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄肉でありながら、内側面に形成された構造物に起因するヒケや膨れが発生しないヒンジキャップ付きケースを提供することができる。また、そのようなヒンジキャップ付きケースを製造するための金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るヒンジキャップ付きケースの斜視図である。
図2】底部材を内面側から見た平面図である。
図3】(A)は、図2のIIIA-IIIA線で切った端面図である。(B)は、図2のIIIB-IIIB線で切った断面図である。
図4】蓋部材を内面側から見た平面図である。
図5】(A)は、図4のVA-VA線で切った端面図である。(B)は、図4のVB-VB線で切った断面図である。
図6】ヒンジキャップ付きケースの側面近傍を示す端面図である。
図7】(A)~(D)はいずれも、本発明の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態のヒンジキャップ付きケースは、内容物(例えば清涼用粒状物)を入れて小出し使用するためのカード型のケースである。
【0014】
<ヒンジキャップ付きケース>
図1図5に示されているとおり、本実施形態のヒンジキャップ付きケース(以下、単に「ケース」と呼ぶことがある)1は、トレイ状の底部材2及び蓋部材3が互いに嵌合してなるものである。ケース1は平面視で略矩形(ここでは角丸長方形)をなしており、その片側の長辺部分に開口部5を有している。底部材2には、薄肉で折り曲げ可能なヒンジ21を介してヒンジキャップ22が一体成形されており、これにより開口部5を閉じることができる。なお、本明細書において、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合している方向を「厚さ方向」と呼び、これに垂直な任意の方向を「幅方向」と呼ぶ。
【0015】
ケース1の寸法は任意である。寸法の例として、以下の二通りが挙げられる。
寸法Aタイプ:角丸長方形の長辺方向の長さは55mm以上100mm以下であってもよく、60mm以上90mm以下であってもよく、70mm以上85mm以下であってもよい。角丸長方形の短辺方向の長さは30mm以上70mm以下であってもよく、40mm以上60mm以下であってもよく、45mm以上55mm以下であってもよい。ケース1の厚さは、5mm以上9mm以下であってもよく、6mm以上8mm以下であってもよい。
寸法Bタイプ:角丸長方形の長辺方向の長さは60mm以上120mm以下であってもよく、70mm以上110mm以下であってもよく、80mm以上100mm以下であってもよい。角丸長方形の短辺方向の長さは30mm以上70mm以下であってもよく、40mm以上60mm以下であってもよく、50mm以上55mm以下であってもよい。ケース1の厚さは、9mm以上13mm以下であってもよく、10mm以上12mm以下であってもよい。
【0016】
底部材2及び蓋部材3もそれぞれ略矩形(角丸長方形)をなしているが、開口部5を形成する部分は、当該矩形の内側へ凹んだ凹部となっている。底部材2及び蓋部材3は共に、幅方向に広がる底板部23,33と、底板部23,33の周縁から厚さ方向に立ち上がって延びる側板部24,34とを有している。側板部24,34は、ケース1の開口部5となる部分を除いて、底板部23,33の周縁に沿って連続している。
【0017】
底部材2の底板部23はその内面(内側面)において、種々の構造物を有している。構造物は、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合するための構造物(嵌合構造物)と、嵌合に寄与しない部分をなす構造物(非嵌合構造物)とに分類される。
【0018】
底部材2の底板部23はその内面において、四つの角丸部それぞれに近い四箇所と、開口部5がある側の長辺に沿った部分であって当該長辺の中央よりも開口部5側に寄った箇所との合計五箇所に円筒形状のボス25(25a,25b,25c,25d,25e)が形成されている。ボス25は底板部23から垂直に突出しており、いずれも側板部24から幅方向に離れた位置に形成されている。ボス25は、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合するための嵌合構造物である。
【0019】
例えばボス25dは、図3(B)に示されているとおり、厚さ方向に突設された中空の円筒であり、隔壁(円筒を形成している壁)で仕切られることでその中空部分がボス穴となっている。ボス穴の深さはボス25dの高さに一致している。この構造はいずれのボス25にも共通している。隔壁の厚さTについては後述する。
【0020】
ボス25と側板部24との離間距離は、0.6mm~4.5mmであってもよく、0.7mm~3.0mmであってもよく、0.8mm~1.5mmであってもよい。ここで「離間距離」とは、ボス25の外周面と側板部24との最短距離をいう。離間距離がこの程度であると、ボス25の形成時において何らかの不良が発生した場合に側板部24への影響が抑えられる。
【0021】
底部材2の底板部23はその内面において、中央部に支柱27が形成されている。支柱27は底板部23から垂直に突出している。支柱27は、底部材2と蓋部材3との嵌合に寄与しない非嵌合構造物である。その頂部は蓋部材3の底板部33に接触していていてもよく、接触していなくてもよい。ケース1の厚さ方向に荷重が掛ったときに、支柱27の頂部が蓋部材3の底板部33に当接して荷重に抵抗することができる。
【0022】
底板部23の角丸部のうち、開口部5に最も近い角丸部の近くには、内容物を開口部5へ案内する案内リブ28が設けられている。案内リブ28は、底板部23から垂直に突出する板状の壁であり、ボス25aと一体となっている。案内リブ28は、ボス25aの円筒形状をその軸線方向から視たときに円の接線の一部を構成するようにしてボス25aから直線的に延び、ケース1の短辺をなす側板部24に接しない程度の位置にまで延在している。案内リブ28と側板部24との離間距離は、ボス25と側板部24との離間距離と同様であってよい。この一体化されたボス25aと案内リブ28との複合体において、ボス25aが嵌合構造物であり、案内リブ28が非嵌合構造物である。
【0023】
他方、蓋部材3の底板部33はその内面において、底部材2の底板部23に形成されているボス25(25a,25b,25c,25d,25e)のそれぞれに対応する位置にピン35(35a,35b,35c,35d,35e)が形成されている。
【0024】
例えばピン35dは、図5(B)に示されているとおり、厚さ方向に突設された中空の円筒であり、隔壁(円筒を形成している壁)で仕切られることでその全体として棒状となっている。円筒の外径はボス25dの内径と略同一で、ボス穴に嵌合するようになっている。この構造はいずれのピン35にも共通している。
【0025】
蓋部材3の底板部33はその内面において、側板部34に沿った位置にガイド39が形成されている。ガイド39は、開口部5を有する側の長辺に沿って二箇所、他の長辺に沿って三箇所、短辺のうち開口部5に近い側の短辺に一箇所、他の短辺に二箇所の合計八箇所に形成されている。各ガイド39は底板部23から垂直方向へ盛り上がって形成されており、いずれも側板部34から僅かに離れた位置に存在する。ガイド39は、底部材2と蓋部材3との嵌合に寄与しない非嵌合構造物である。ケース1において、底部材2の段上げ部24aに対して内側近傍に位置して、嵌合状態が過度にずれることを防止する(図6参照)。
【0026】
底部材2は、その底板部23において、肉厚が薄くされた薄肉凹部26を有している。薄肉凹部26は、長辺方向に延びる平面視長方形の形状で三本並んで形成されている。蓋部材3も、その底板部33において、同様にして形成されている薄肉凹部36を有している。これらの薄肉凹部26,36は、後述する射出成形において反りの発生を抑制するための肉盗み部にあたるものである。薄肉凹部26,36の部分における厚さ(T,T)については後述する。
【0027】
底板部23が有する薄肉凹部26の合計面積、及び、底板部33が有する薄肉凹部36の合計面積は、底部材2及び蓋部材3のそれぞれの内面のうち幅方向に広がっている底板部23,33の内面の面積(薄肉凹部の部分と薄肉凹部ではない部分との合計面積)を100%として、10%~80%であってもよく、15%~70%であってもよく、20%~60%であってもよい。
【0028】
図3に示されているとおり、底部材2の側板部24はその端部において段がついており、内周面に沿って段上げ部24aと段下げ部24bとに分かれている。段上げ部24aと段下げ部24bは、少なくとも一方が、底部材2と蓋部材3とが互いに嵌合する際に蓋部材3の側板部34に当接して、底部材2と蓋部材3とを密閉する役割を果たす。ここで段上げ部24aの先端は、図6に示されているとおり、蓋部材3の側板部34とガイド39の間に位置することになる。
【0029】
ケース1は、ボス25とピン35とが嵌合することによって底部材2と蓋部材3とが合わせられて形状が固定されている。図6に示されているとおり、底部材2の側板部24と蓋部材3の側板部34とがケース1の側面を構成している。ここで、底部材2の底板部23の内面と蓋部材3の側板部34の内面との距離Lは、充填する内容物の厚さよりも大きい必要がある。例えば、上記「寸法Aタイプ」では、距離Lは、5.0mm~6.0mmであってもよく、5.2mm~5.8mmであってもよい。上記「寸法Bタイプ」では、7.0mm~9.0mmであってもよく、7.5mm~8.5mmであってもよい。
【0030】
構造物の高さについて説明する。ボス25及びピン35の高さは、距離Lの30%~100%であってもよく、40%~90%であってもよく、50%~80%であってもよい。ただし、ボス25及びピン35は互いに嵌合する必要があるので、これらの高さの合計は距離Lよりも大きい必要がある。
【0031】
ガイド39の高さは、距離Lの5%~40%であってもよく、10%~35%であってもよく、20%~30%であってもよい。ガイド39の高さは、1.0mm~2.0mmであってもよく、1.3mm~1.7mmであってもよい。
【0032】
各部の厚さについて説明する。底板部23,33のうち、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さTは0.70mm以下である。この厚さTは0.65mm以下であってもよく、0.60mm以下であってもよく、0.55mm以下であってもよく、0.50mm以下であってもよく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。厚さTの具体的な範囲としては、0.50mm~0.70mmであってもよく、0.55mm~0.65mmであってもよく、0.58mm~0.63mmであってもよい。薄肉凹部26,36における厚さTは、0.50mm以下であってもよく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。厚さTの具体的な範囲としては、0.35mm~0.55mmであってもよく、0.40mm~0.53mmであってもよく、0.44mm~0.52mmであってもよい。また、厚さの割合としては、薄肉凹部26,36における厚さTは、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さTの80%以下であり、75%以下であってもよく、70%以下であってもよい。T及びTがこれらの数値範囲を満たす値であることで、ショートショットが発生するとしたら薄肉凹部の部分に発生しやすくなる。薄肉凹部26,36における厚さTは、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さTの40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。
【0033】
あるいは、薄肉凹部26,36における厚さTは、薄肉凹部26,36ではない部分の厚さTの70%~80%であってもよく、71%~79%であってもよく、72%~78%であってもよい。この値が70%~80%であることにより、ショートショットの発生位置を薄肉凹部26,36の位置に誘導することができ外観検査が容易になることに加え、ショートショットの発生そのものが抑制されやすい。
【0034】
側板部24,34の厚さT図3(A))は、段上げ部24aが形成されている部分を除き、底板部23,33の薄肉凹部26,36ではない部分の厚さTと同一であってよい。あるいは、側板部24,34の厚さTは、段上げ部24aが形成されることを考慮して、底板部23,33の厚さTの110%~180%であってもよく、130%~150%であってもよい。あるいは、側板部24,34の厚さTは、段上げ部24aが形成されることを考慮して、底板部23,33の厚さTの250%~350%であってもよく、270%~300%であってもよい。厚さTの具体的な範囲としては、1.50mm~2.00mmであってもよく、1.60mm~1.90mmであってもよく、1.65mm~1.80mmであってもよい。
【0035】
ボス25dにおいて、ボス穴の内外を仕切っている隔壁の厚さTは、0.60mm~1.00mmであってもよく、0.60mm~0.90mmであってもよく、0.80mm~0.90mmであってもよく、0.60mm~0.80mmであってもよい。また、当該隔壁の厚さTは、底板部23のうち薄肉凹部26ではない部分の厚さTの90%~150%であってもよく、100%~140%であってもよく、110%~130%であってもよい。なお、この値はボス25d以外のボス25においても同様である。
【0036】
案内リブ28の厚さは、ボス25dの隔壁の厚さTと同様である。あるいは、案内リブ28の厚さは、ボス25dの隔壁の厚さTと異なっていてもよい。いずれにしても、案内リブ28の厚さは蓋部材3と底部材2の嵌合時の障害にならないことが好ましい。
【0037】
底部材2及び蓋部材3を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましい。また、バイオマス由来のポリエチレン樹脂を用いてもよい。これらの材料は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。このときの混合比は例えば、重量比として、ポリプロピレン樹脂:バイオマス由来ポリエチレン樹脂=60~80:20~40である。
【0038】
ケース1を射出成形により形成する場合、熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、射出成形においてショートショットの発生を抑制しやすい傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる成形物を製造できる傾向にある。このメルトフローレートは50g/10分以下であってもよい。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0039】
蓋部材3と底部材2とが互いに嵌合することで、ケース1が構成される。嵌合する際は、図3(B)及び図5(B)で説明すれば、ピン35c,35dの外周面とボス25c,25dの内周面とが接触して摩擦を生じて嵌合する。これと併せて、側板部24の段上げ部24aが側板部34の内側へ入り込んで底部材2と蓋部材3とが閉じられる。
【0040】
ケース1は、底部材2及び蓋部材3のなかでも広い面積を占める底板部23,33の厚さが0.70mm以下となっており、従来のヒンジキャップ付きケースと比べて薄いので、製造するのに従来のものよりも材料が少なく済む。また、底部材2及び蓋部材3は薄肉凹部26,36を有しているので、材料が一層少なく済む。また、ボス25を形成している隔壁の厚さが底板部23,33の厚さよりも比較的厚いので、ケース1の厚さ方向にかかる圧力に耐えることができ、かつ、適切な嵌合力を有することができる。
【0041】
また、ケース1は、底部材2及び蓋部材3のいずれにおいても、その内側面に形成されている構造物(ボス25、ピン35、案内リブ28、ガイド39)が側板部24,34から離れた位置に存在しているので、これにより構造物に起因して側板部24,34にヒケや膨れが生じることが防止されている。従来は構造物が側板部に接触して設けられていたために、ヒケや膨れが生じているものがみられた。側板部が外側に膨れた場合は外観不良や嵌合障害となり、内側に膨れた場合は内容物の充填障害、移動障害や嵌合障害になる。本実施形態のケース1ではこれらが改善されている。
【0042】
<製造方法>
底部材2及び蓋部材3の製造方法を説明する。これらの製造方法としては、樹脂成形としての通常の射出成形をしてもよく、超臨界流体を用いる射出成形をしてもよい。樹脂のMFRが小さい場合は特に、樹脂の流動性を高められる超臨界流体を用いる射出成形が好ましい。以下、超臨界流体を用いる射出成形について説明する。
【0043】
本実施形態の製造方法は以下の工程を含む。
(A)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する工程。
(D)成形物を金型から回収する工程。
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(例えば特許6085729号公報、特許6430684号公報を参照する)。
【0044】
以下、超臨界流体として二酸化炭素を用いた例で説明する。
[(A)工程]
はじめに、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料としては、上で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0045】
樹脂材料100質量部に対して1~3質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加する。二酸化炭素の量が1質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、二酸化炭素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の二酸化炭素に起因する発泡を促すことで成形物の内部に空隙を形成することができる。他方、二酸化炭素の量が3質量部以下であることで、(C)工程における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0046】
溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、樹脂材料の融点又はMFRに応じて設定すればよい。ポリプロピレン樹脂を使用する場合、この温度は200~250℃であることが好ましく、210~230℃程度であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂を使用する場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0047】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0048】
[(B)工程]
製造するケース1の底部材2及び蓋部材3の形状に対応する金型を用意する。この金型は、製造するケース1の薄肉凹部26,36内における底板部23,33の厚さが、薄肉凹部26,36以外の部分における底板部23,33の厚さの80%以下である形状に対応する形状をなしている。そして、(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
【0049】
射出圧力の最大値は、200MPaであることが好ましく、160MPaであることが好ましい。
【0050】
キャビティのゲートの位置は、底部材2及び蓋部材3それぞれの薄肉凹部26,36ではない位置に設けることが好ましい。特に、ヒンジキャップ22を有する底部材2では、ヒンジキャップ22の形成のために、ヒンジキャップ22に近い側にゲートを位置させることが好ましい。より具体的には、ケース1の長辺方向においてヒンジキャップ22側へ寄った位置、かつ、ケース1の短辺方向においてヒンジキャップ22側へ寄った位置が好ましい。
【0051】
キャビティのガスベントの位置は、成形品にパーティングラインが生じる位置のいずれかに設けることが好ましい。本実施形態で用いる金型は、底部材及び蓋部材のいずれにおいても、パーティングラインが側板部の周囲を一周するように設計することが好ましい。
【0052】
射出された樹脂はキャビティ内を進入する。このとき、例えば底板部を構成する部分よりも側板部を構成する部分のほうが厚さが大きい場合は、側板部を構成する部分のほうが樹脂が速く進入する。したがって、側板部を構成する部分が先に充填が完了しやすく、側板部から内側に離れた位置が最終充填部分になりやすい。特に本実施形態では薄肉凹部となる部分の厚さが小さいので、この部分の樹脂の進入速度が遅く、最終充填部分になりやすい。
【0053】
[(C)工程]
上記(B)工程後、キャビティを15~80MPaの圧力条件で保圧するとともに、冷却する。この圧力が15MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、80MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは15~30MPaである。あるいは、40~70MPaとしてもよい。保圧時間は、例えば0.1~1.0秒とすればよい。
【0054】
薄肉の部分を作製する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビティに充填された溶融樹脂組成物が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビティの容積を拡大させる工程である(特許6085729号公報参照)。
【0055】
[(D)工程]
金型内の成形物(底部材又は蓋部材)の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形物を金型から回収する。本実施形態においては、(C)工程で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、本実施形態の成形物には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。ただし、肉眼では目視できない程度の小さな空隙が存在しないわけではない。本実施形態の成形物は、空隙による軽量化よりも、薄肉化による軽量化を主に目指したものであると言うことができる。
【0056】
以上の製造方法によって製造した底部材と蓋部材とを嵌合させることで、ヒンジキャップ付きケースを得られる。本実施形態のヒンジキャップ付きケースを構成する底部材及び蓋部材は従来よりも肉厚が薄いので、従来よりも樹脂の使用量が低減された成形物を製造することができる。
【0057】
また、超臨界流体を用いた製造では、厚さが変化するところで発泡しやすい。例えば、樹脂が底板部からボスやピンの場所に進入する場合に、側板部とボス又はピンとの厚さが異なれば、そこで圧力差が生じて発泡が顕著に生じ得る。成形品として、仮にボスやピンの構造物が側板部に接して設けられていたとすれば、側板部の外側にヒケや膨れが生じる原因となる。そして当該構造物が発泡していると、尚更、側板部にヒケや膨れが生じる原因となる。これに対して本実施形態で製造する底部材及び蓋部材は、いずれも、内面側に有している構造物が全て側板部から離れた位置に存在するので、構造物で発泡が顕著に生じた場合であっても、側板部にヒケや膨れが生じない。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では案内リブ28の形状として、ボス25aの円筒形状を構成する円の接線の一部を構成する直線である形状を示したが、図7(A)~(D)に示されているように、他の形状であってもよい。
【0059】
図7(A)に示されている態様では、ボス25aと一体化している案内リブ28が、ボス25aを起点として側板部24へ向かって延在している点では上記実施形態と同様であるが、起点の位置、及び、案内リブ28の延在方向が、上記実施形態の「接線」の態様とは異なっている。図7(B)に示されている態様では、上記実施形態に示された案内リブ28に加え、開口部5側へ延びる案内リブ28も存在している。図7(C)に示されている態様では、案内リブ28がボス25aを始点として側板部24から遠ざかる方向に延びた後、直角に折れ曲がって側板部24のほうへ延びている。この態様では、案内リブ28は側板部24から遠ざかる方向に延びている途中で分岐して側板部24のほうへ延びる部分も有している。途中から分岐して延びている部分は、内容物を充填する際に当該領域に内容物が嵌り込まないようにする役割を果たす。図7(D)に示されている態様では、案内リブ28がボス25aから独立して存在している。案内リブ28が短辺の側板部24の近傍から開口部5の近傍まで曲線的に延びている。図7(A)~(D)に示されたいずれの態様も、案内リブ28は側板部24に接触していない。
【0060】
また、上記実施形態では底部材2に案内リブ28が形成されている態様を示したが、案内リブ28は蓋部材3側に形成されていてもよい。図2に示されている案内リブ28が存在する位置に対応する蓋部材3側の位置に案内リブ28が存在すれば、底部材2と蓋部材3とを嵌合してケース1としたときに、上記実施態様と略同一の案内リブ28の位置関係が実現する。
【0061】
また、上記実施形態では底部材2にボス25を、蓋部材3にピン35をそれぞれ設ける態様を示したが、底部材にピンを、蓋部材にボスをそれぞれ設ける態様としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ボス25とピン35の摩擦力で嵌合する態様を示したが、嵌合力をより高めるために、ボス25の内周面に周方向に延びる筋状の縮径部を、ピン35の外周面に周方向に延びる筋状の拡径部をそれぞれ形成し、嵌合時に当該縮径部と当該拡径部とがボス穴内で互いにすれ違うことで嵌合する態様にしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、非嵌合構造物の一つとして、ケース1の厚さ方向の荷重に抵抗する支柱27が形成された態様を示したが、支柱27は円柱形状又は円筒形状である必要はなく、任意の形状の筒状、柱状、又は板状であってもよく、案内リブ28のように線状に延びる態様であってもよい。この場合、内容物の動きを制御する形状であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、清涼用粒状物等を入れて小出し使用するための容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…ケース、2…底部材、3…蓋部材、5…開口部、21…ヒンジ、22…ヒンジキャップ、23,33…底板部、24,34…側板部、24a…段上げ部、24b…段下げ部、25(25a,25b,25c,25d,25e)…ボス、26,36…薄肉凹部、27…支柱、28…案内リブ、35(35a,35b,35c,35d,35e)…ピン、39…ガイド、T…底板部の薄肉凹部ではない部分の厚さ、T…底板部の薄肉凹部における厚さ、T…ボスの隔壁の厚さ、T…側板部の厚さ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7