(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115958
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】表示体、表示体の加工方法、および表示体の認証方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/324 20140101AFI20240820BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20240820BHJP
B42D 25/435 20140101ALI20240820BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/328 100
B42D25/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021891
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】香田 祖光
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB03
2C005JB03
2C005JB09
2C005KA02
2C005LB07
(57)【要約】
【課題】目視確認によってのみ偽造、模造防止を実現するだけでなく、機械的な偽造、模造防止を組み合わせることで、偽造や模造を好適に抑止できる表示体を提供すること。
【解決手段】実施形態の表示体は、第1領域に、第1識別情報と、第1識別情報とは異なる第2識別情報とが形成され、第2領域に、機械判定可能な第3識別情報が形成され、第1領域と第2領域との全面、または一部分に、レリーフ形成層および反射層を含み、第1識別情報および第3識別情報は、反射層の部分的除去により形成され、第2識別情報は、レリーフ形成層が有する光位相変調構造による光学効果によって発現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを含む表示体であって、
前記第1領域に、第1識別情報と、前記第1識別情報とは異なる第2識別情報とが形成され、
前記第2領域に、機械判定可能な第3識別情報が形成され、
前記第1領域と前記第2領域との全面、または一部分に、レリーフ形成層および反射層を含み、
前記第1識別情報および前記第3識別情報は、前記反射層の部分的除去により形成され、
前記第2識別情報は、前記レリーフ形成層が有する光位相変調構造による光学効果によって発現する
ことを特徴とする、表示体。
【請求項2】
前記反射層の部分的除去は、前記反射層へのエネルギービーム照射によって行われる
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第1領域に、所定間隔で複数のマークを形成した
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
基材を備え、
前記基材に、前記第1領域と前記第2領域とを、少なくとも一部が重なるように配置した
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
【請求項5】
基材を備え、
前記基材に、前記第1領域と前記第2領域とを、互いに離間するように配置した
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
【請求項6】
前記光学効果は、前記光位相変調構造による回折、干渉、吸収、散乱、および偏光のうち少なくとも何れかを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
【請求項7】
請求項2に記載の表示体を加工する方法であって、
前記第1領域への前記エネルギービーム照射により、前記反射層を部分的に除去することによって、前記第1識別情報を形成するプロセスと、
前記第2領域への前記エネルギービーム照射により、前記反射層を部分的に除去することによって、前記第3識別情報を形成するプロセスと
を含むことを特徴とする、加工方法。
【請求項8】
前記第1領域に、規則的にマークを配置するプロセスをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の加工方法。
【請求項9】
前記第1領域に前記第1識別情報を形成した後、前記第1領域から前記マークを除去することを特徴とする、請求項8に記載の加工方法。
【請求項10】
請求項1に記載の表示体を認証する方法であって、
前記表示体に対する認証アクションが発生すると、前記第3識別情報を取得するプロセスと、
前記取得された第3識別情報に基づいて、前記表示体の真偽判定を行うプロセスと、
前記真偽判定が行われた後、前記第3識別情報に対する追加工によって、前記第3識別情報から派生する第4識別情報を取得するプロセスと
を含むことを特徴とする、認証方法。
【請求項11】
前記追加工は、前記第2領域に対するエネルギービーム照射により実行される
ことを特徴とする、請求項10に記載の認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判定や偽造防止に関わる表示体、および表示体の加工方法、ならびに表示体の認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報を含む表示体として、パスポートや運転免許証などの各種ID(IDentifICation)カードが知られている。IDカードには、目視による個人情報の識別を行うために、顔画像や文字情報が表示されているものが多い。個人情報が単純に表示体上に印刷されているだけであると、容易に改ざんや偽造ができてしまう。
【0003】
表示体の偽造防止方法として、特許文献1には、ホログラム転写箔を表示体に付与することで、表示体の改ざん防止性を向上させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、蛍光発光材料を用いて、可視光観察では透明で視認できないが、紫外光観察では視認できるように個人情報を付与することが記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の偽造防止技術は、既に広く知られていることに加え、単純な虹色の回折光を射出するホログラムであれば、容易に偽造されてしまう。
【0006】
また、特許文献1、および特許文献2それぞれの偽造防止技術は、いずれにおいても固定情報は表示、表現できるが、オンデマンドあるいは動的な情報を形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-67592号公報
【特許文献2】特許第3198324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明の第1の目的は、目視確認によってのみ偽造、模造防止を実現するだけでなく、機械的な偽造、模造防止を組み合わせることで、偽造や模造を好適に抑止できる表示体、および表示体の加工方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、そのような表示体を用いることによって、偽造や模造を容易に発見できる認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0011】
第1の態様は、第1領域と第2領域とを含む表示体であって、第1領域に、第1識別情報と、第1識別情報とは異なる第2識別情報とが形成され、第2領域に、機械判定可能な第3識別情報が形成され、第1領域と第2領域との全面、または一部分に、レリーフ形成層および反射層を含み、第1識別情報および第3識別情報は、反射層の部分的除去により形成され、第2識別情報は、レリーフ形成層が有する光位相変調構造による光学効果によって発現することを特徴とする、表示体である。
【0012】
第2の態様は、反射層の部分的除去は、反射層へのエネルギービーム照射によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の表示体である。
【0013】
第3の態様は、第1領域に、所定間隔で複数のマークを形成したことを特徴とする、請求項1に記載の表示体である。
【0014】
第4の態様は、基材を備え、基材に、第1領域と第2領域とを、少なくとも一部が重なるように配置したことを特徴とする、請求項1に記載の表示体である。
【0015】
第5の態様は、基材を備え、基材に、第1領域と第2領域とを、互いに離間するように配置したことを特徴とする、請求項1に記載の表示体である。
【0016】
第6の態様は、光学効果は、光位相変調構造による回折、干渉、吸収、散乱、および偏光のうち少なくとも何れかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示体である。
【0017】
このような本発明の上記態様に係る表示体によれば、第1識別情報、第2識別情報として、オンデマンドあるいは動的な情報を形成することが可能となる。また、目視確認可能な第2識別情報を表示することも可能となる。そして、これら識別情報の組み合わせにより、表示体の真偽判定が可能となる。さらには、マークを形成しておくことで、マークの座標位置を取得することにより、オンデマンド加工時の加工位置精度を向上させることも可能となる。
【0018】
次に、第7の態様は、請求項2に記載の表示体を加工する方法であって、第1領域へのエネルギービーム照射により、反射層を部分的に除去することによって、第1識別情報を形成するプロセスと、第2領域へのエネルギービーム照射により、反射層を部分的に除去することによって、第3識別情報を形成するプロセスとを含むことを特徴とする、加工方法である。
【0019】
第8の態様は、第1領域に、規則的にマークを配置するプロセスをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の加工方法である。
【0020】
第9の態様は、第1領域に第1識別情報を形成した後、第1領域からマークを除去することを特徴とする、請求項8に記載の加工方法である。
【0021】
このような本発明の上記態様に係る加工方法によれば、表示体において、第1識別情報、第2識別情報としてオンデマンドあるいは動的な情報を形成することが可能となる。また、マークの座標位置を取得することができ、それら座標位置を利用してオンデマンド加工時の加工位置精度を向上させることが可能である。このように、オンデマンド加工後にマークを除去することで、高精度な追加工を困難とすることが可能となる。
【0022】
第2の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0023】
第10の態様は、請求項1に記載の表示体を認証する方法であって、表示体に対する認証アクションが発生すると、第3識別情報を取得するプロセスと、取得された第3識別情報に基づいて、表示体の真偽判定を行うプロセスと、真偽判定が行われた後、第3識別情報に対する追加工によって、第3識別情報から派生する第4識別情報を取得するプロセスとを含むことを特徴とする、認証方法である。
【0024】
第11の態様は、追加工は、第2領域に対するエネルギービーム照射により実行されることを特徴とする、請求項10に記載の認証方法である。
【0025】
このような本発明の上記態様に係る認証方法によれば、表示体への認証アクションごとに第3識別情報が加工されて新たに第4識別情報となり、動的に識別情報が変化していく。こうすることで、表示体の偽造防止耐性をより向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、目視確認によってのみ偽造、模造防止を実現するだけでなく、読取装置等を用いた機械的な偽造、模造防止を組み合わせることで、偽造や模造を好適に抑止できる表示体、および表示体の加工方法を提供できる。
【0027】
また、そのような表示体を用いることによって、偽造や模造を容易に発見できる認証方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の別の例を示す(a)平面図および(b)表示体の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の別の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、(a)第1領域の全体平面図と、(b)、(c)例示的な部分拡大平面図である。
【
図6】
図6は、多数の除去領域が2次元配列された第2領域の部分平面図である。
【
図7】
図7は、規則的にマークが配置された第1領域の平面図である。
【
図8】
図8は、表示体および情報表示媒体に対する第1識別情報および第3識別情報の形成のためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、表示体が搭載された情報表示媒体の認証時の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、表示体が搭載された情報表示媒体の認証、真偽判定を行う判定装置の一例を示す概念図である。
【
図11】
図11は、判定装置の電子回路構成の一例を示すハードウェアブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明や、重複した説明は適宜省略する。
【0030】
(表示体の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の一例を示す平面図である。
【0031】
情報表示媒体100は、基材10に表示体20が配置されてなる。
【0032】
図1は、基材10にさらに、情報表示媒体100の所有者情報11、および所有者画像情報12が表示される例を示している。
【0033】
所有者情報11は、情報表示媒体100の所有者に関する氏名、住所、生年月日、性別、出身国、出身地、個人識別番号、発行番号、発行日、登録情報、機械可読情報などといった所有者に関わる文字、数字、記号情報として形成されていることが望ましい。
【0034】
所有者画像情報12は、
図1のように情報表示媒体100の所有者の顔画像として形成されていてもよいし、情報表示媒体100の所有者の指紋画像や虹彩画像などで形成されていてもよい。
【0035】
所有者画像情報12はさらに、所有者情報11を1次元コードや2次元コードに変換することで得られる画像情報で形成されていてもよい。
【0036】
また
図1では、所有者情報11および所有者画像情報12は、情報表示媒体100においてそれぞれ1箇所ずつ形成されているが、各情報11,12が、情報表示媒体100における複数箇所に形成されていてもよい。また、複数箇所に形成される場合、各箇所において所有者情報11あるいは所有者画像情報12のすべて、あるいは一部と、同一な情報が形成されていてもよい。
【0037】
表示体20は、第1領域21と第2領域22とを含む。
図1では、第1領域21は、角丸形状であり、第2領域22は、四角形状となっているが、これは一例であって、例えば、第1領域21、第2領域22ともに丸形状、楕円形状、多角形形状とするなど、第1領域21、第2領域22ともに任意の形状とできる。つまり、第1領域21、第2領域22ともに、直線形状、曲線形状およびそれらの組み合わせによって実現できる。
【0038】
また、
図1に示す例では、第2領域22は、第1領域21と一部が重なるように配置されている。しかしながら、第1領域21と第2領域22とは完全に重なるように配置されてもよいし、距離を開けずに、つまり接触して隣接して配置されていてもよいし、あるいは距離を開けて配置されていてもよい。更には、第1領域21を取り囲むように第2領域22が形成されていてもよい。
【0039】
図2は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の別の例を示す(a)平面図および(b)表示体の部分拡大図である。
【0040】
図2に示す例は、表示体20において、第1領域21に第1識別情報23が形成されている場合を示している。
図2では、第1識別情報23として、所有者画像情報12と同じ画像が形成されている場合を例示しているが、異なる情報が形成されていてもよい。例えば、第1識別情報23を、情報表示媒体100の所有者の生年月日や発行番号、発行日などの文字、数字情報とすることもできる。
【0041】
図2(b)では、
図2(a)とは異なり、表示体20において、第1領域21が、第1識別情報23の形状に合わせて形成されている例を示している。こうすることで、第1領域21を明確に際立たせることが可能となり、第1識別情報23の視認性も向上する。なお、
図2(b)では第2領域22は第1領域21と重なっていないが、
図2(a)に例示するように、第2領域22が第1領域21と重なって形成されていてもよい。
【0042】
図3は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の一例を示す断面図である。
【0043】
図3は、
図1に示す情報表示媒体100のA-A線に沿った断面図に相当し、
図3には、基材10上に、表示体20が配置されていることが示されている。
【0044】
基材10は、ベース基材15と、ベース基材15に埋め込まれた情報層13とからなる。
【0045】
情報層13は、
図1に例示される所有者情報11および所有者画像情報12を含む。
【0046】
なお、
図3に示す例では、情報層13は、ベース基材15の界面に形成されているが、ベース基材15の内部に形成されていてもよい。ベース基材15の内部に形成される場合、情報層13は、ベース基材15へ、パルスレーザーなどのレーザーによるエネルギービームを照射することで形成可能である。
【0047】
図3に例示されるように情報層13をベース基材15の界面に形成する場合、一般的な印刷手法で形成可能である。また、上述のようにパルスレーザーなどのレーザーによるエネルギービーム照射によって、ベース基材15の界面に、情報層13を形成してもよい。また、情報層13に含まれる所有者情報11および所有者画像情報12は、それぞれベース基材15の界面あるいは内部に形成されていてもよいし、それぞれ異なる位置に形成されてもよい。
【0048】
ベース基材15の材料は、例えばポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂を用いることで、パルスレーザーなどのレーザーによるエネルギービーム照射によって、熱でポリカーボネート樹脂が炭化するため、ベース基材15の内部に情報層13を形成することが可能となる。そのため、ベース基材15は、エネルギービーム照射により印字できる材料、あるいは印刷できる材料からなることが望ましい。
【0049】
エネルギービームとしては、上述のようにパルスレーザーのようなレーザーを用いることができる。特に、赤外線波長領域のレーザー、パルスレーザーが望ましいが、紫外線波長領域のレーザー、パルスレーザーであってもよい。エネルギービーム照射対象物の吸収がある波長領域のレーザーが好適である。さらに、フェムト秒レーザーをエネルギービームとして利用し、多光子吸収現象を利用して材料の吸収を促し、印字、印刷するようにしてもよい。
【0050】
表示体20は、レリーフ形成層31と光反射層32とからなる積層体30によって形成される。
図3は、光反射層32の一部が、エネルギービーム照射により部分的に除去されることによって、除去領域33が形成されている場合を示している。
図3のように、光反射層32のみが除去されることが望ましいが、レリーフ形成層31がエネルギービーム照射により同時に破壊されてもよい。
【0051】
複数の除去領域33の組み合わせにより、第1領域21において第1識別情報23が形成される。
【0052】
図3において、積層体30はレリーフ形成層31と光反射層32のみで形成されているが、レリーフ形成層31において、光反射層32が形成されていない側の界面(
図3におけるレリーフ形成層31の上面)に、表示体20を保護する保護層(後述する
図4の保護層16)を形成してもよい。
【0053】
また、光反射層32とベース基材15あるいは情報層13との界面において、表示体20をベース基材15、または情報層13と密着させるための接着層を設けてもよい。さらには、各層の密着性を向上させるために、各層間にプライマー層等を設けてもよい。
【0054】
レリーフ形成層31には、光位相変調構造が形成されている。光位相変調構造としては、レリーフホログラム構造、計算機ホログラム構造(フーリエ変換ホログラム構造やキノフォーム構造)などが挙げられる。これら構造により、光の位相が変調され、回折、干渉、吸収、散乱、偏光などが光学効果として発現される。この光学効果は、第1領域21に発現する第2識別情報として利用される。
【0055】
従来、レリーフ形成層31により、光を回折させ、虹色表現を有することで偽造防止性を保証する技術が採用されていたが、この技術は、上述したように、既に広く知られており、偽造防止効果が低くなっている。そこで、レリーフ形成層31には、前述した第2識別情報として立体的な再生像を適用することが可能な計算機ホログラム構造が利用されることが望ましい。また、リップマン型の体積ホログラムをレリーフ形成層31として形成してもよい。これらリップマン型ホログラム、計算機ホログラムは、再生像を形成するための光学位相情報を微細構造としてフィルム状に形成可能である。
【0056】
ホログラム構造がリップマン型の体積ホログラムである場合、光応答性のフォトポリマーに対し、実現したい第2識別情報に対応する再生像の物体光と、その物体光を再生するための参照光を照射し、その干渉縞をフォトポリマーに記録させることで形成される。
【0057】
なお、第2識別情報からの物体光の光学位相情報を予め計算機にて計算し、その光学位相情報を空間光位相変調器にて表示させ、その空間光位相変調器を透過あるいは反射した光を物体光とし、リップマン型の体積ホログラムを形成してもよい。
【0058】
ホログラム構造が計算機ホログラムである場合、実現したい第2識別情報を形成するための光学位相情報を、予め計算機にて計算し、その光学位相情報を実現するための微細凹凸構造をレーザー描画装置、あるいは電子線描画装置、イオンビーム描画法を用いて形成し、その微細凹凸構造を原版として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂が塗工されたフィルム材料に押し当て複製することで、ホログラムフィルムを得られる。この場合、レリーフ形成層31として、上記のような熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるは光硬化性樹脂が対応する。
【0059】
ホログラムフィルムに形成された微細凹凸構造から形成される再生像を形成する回折光の明るさを向上させるため、微細凹凸構造を形成したホログラムフィルムに対し、アルミ(Al)や金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)といった金属材料を光反射層32として形成することが望ましい。こうすることで、第2識別情報を実現する再生像の明るさが向上し、目視観察時に明確に視認でき、真偽判定がより判別しやすくなる。
【0060】
また、光反射層32としては、金属材料だけでなく、二酸化チタン(TiO2)やジルコニア(ZrO2)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化アルミニウム(Al2O3)といった光透過性のある無機材料を形成してもよい。こうすることで、表示体20と情報層13とが重畳した際、表示体20を通して情報層13を目視観察することが可能となる。
【0061】
これら光反射層32は、真空蒸着法やスパッタリング法といったドライコーティング技術を用いることで形成される。また、無機材料を形成する場合には、上述のドライコーティング技術に加え、ゾルゲル法などのウェットコーティング技術を用いる。
【0062】
図4は、本発明の実施形態に係る表示体が搭載された情報表示媒体の別の例を示す断面図である。
【0063】
図4に示す情報表示媒体100Aは、表示体20がある側の界面(すなわち、図中上面)に保護層16を設けた点が、
図3に示す情報表示媒体100とは異なる。
【0064】
このような保護層16を設けることで、表示体20を保護することが可能となる。また、表示体20を内包できるので、表示体20へ形成されている除去領域33、第1識別情報23、さらには情報層13への追加工や改ざん防止も可能となる。例えば、情報表示媒体100Aおよび表示体20に対する偽造模造時に破壊行為があった場合、同時に表示体20および情報層13も破壊されることになるので、偽装模造行為があったことを容易に判定できる。
【0065】
図5は、(a)第1領域の全体平面図と、(b)、(c)例示的な部分拡大平面図である。
【0066】
図5(b)および
図5(c)は、
図5(a)の一部の部分拡大平面図である。
図5(b)、
図5(c)には、第1領域21を形成するセル領域21a,21b,21c,21dに、光反射層32が除去された除去領域33が形成された状態が例示されている。
【0067】
ここで、
図5(b)では、除去領域33の形状が直線と曲線との組み合わせで形成されているが、
図5(c)では、除去領域33の形状が曲線のみで形成されている。
【0068】
図5(b)のような直線と曲線との組み合わせで形成される形状の除去領域33は、エネルギービームを連続的に照射することによって形成される。一方、
図5(c)のような曲線のみで形成される形状の除去領域33は、エネルギービームを非連続的に照射することによって形成される。
【0069】
なお、非連続的な照射であっても、その照射位置の間隔が狭ければ、
図5(c)のような直線的な除去領域33を形成できる。また、完全に非連続的な照射パターンによって除去領域33を形成することもできる。
【0070】
図5(b)および
図5(c)に例示するように、セル領域21a,21b,21c,21dそれぞれにおいて、異なる光位相変調構造が形成されている場合、除去領域33の形成面積変化により、それぞれの光位相変調構造により形成される光学効果の変調を実現することが可能である。また、セル領域21a,21b,21c,21dそれぞれにおいて連続的な光位相変調構造が形成されている場合においても、除去領域33を形成することで、第1識別情報23の諧調表現や変調表現が可能となる。
【0071】
セル領域21a,21b,21c,21dそれぞれにおいて、異なる光位相変調構造の例として、各セル領域21a,21b,21c,21dにおいて光位相変調構造により特定の呈色を有する立体再生像を形成する場合がある。例えば、セル領域21aでは赤、セル領域21bでは緑、セル領域21cでは青の呈色を有する立体再生像を形成するような光位相変調構造が形成されている場合、各セル領域21a,21b,21c,21dに形成する除去領域33の面積によって、赤、青、緑の呈色強度を変調できる。これにより、第1識別情報23の色階調表現が可能となる。
【0072】
また、
図5(b)、
図5(c)では、除去領域33およびセル領域21a,21b,21c,21dを図中縦長に形成しているが、これは一例であって、例えば、後述する
図6(d)に示すように、横長に形成してもよい。また、
図5(b)、
図5(c)のように長軸方向(図中縦方向)にセル領域21a,21b,21c,21dを区切らなくてもよく、セル領域21a,21b,21c,21dを連続して形成してもよい。
【0073】
除去領域33は、短軸方向(図中横方向)の長さが、10μm以上、500μm以下であることが望ましい。より好ましくは、50μm以上、300μm以下であることが望ましい。短軸方向の長さは、照射するエネルギービームの種類によって異なる。エネルギービームとして、フェムト秒レーザーを利用した場合、非常に高解像度で光反射層32を除去することが可能となる。
【0074】
図6は、多数の除去領域が2次元配列された第2領域の部分平面図である。
【0075】
第2領域22に形成される多数の除去領域33の2次元配列によって、コード情報を実現することができる。
【0076】
除去領域33は、第2領域22において、光反射層32が除去されることによって、あるいは光反射層32とレリーフ形成層31との両方が除去されることによって形成される。
【0077】
図6(a)は、表示体20あるいは情報表示媒体100の発行時点における第2領域22の部分平面図の一例である。
【0078】
情報表示媒体100,100Aは、
図6(a)に例示されるように、第2領域22に形成された多数の除去領域33の2次元配列によって実現されるコード情報を、第3識別情報として使用することができる。
【0079】
情報表示媒体100,100Aはさらに、
図6(b)に例示されるように、第2領域22に、
図6(a)に例示される除去領域33に加えて、除去領域33’を追加工することができる。これによって、除去領域33と除去領域33’との組み合わせによる2次元配列によって、第3識別情報から派生する新たなコード情報を実現し、このコード情報を、第4識別情報として使用することができる。
【0080】
情報表示媒体100,100Aはさらにまた、
図6(c)に例示されるように、第2領域22に、
図6(b)に例示される除去領域33、33’に加えて、除去領域33’’を追加工することができる。これによって、除去領域33,33’と除去領域33’’との組み合わせによる2次元配列によって、第4識別情報から派生する新たなコード情報を実現し、このコード情報を、第5識別情報として使用することができる。
【0081】
このようにして、以後、情報表示媒体100,100Aに対して真偽判定あるいは認証判定が行われる毎に、除去領域33の追加工を繰り返すことによって、第3識別情報を起点として派生する新たな識別情報を順次形成することができる。
【0082】
こうすることで、情報表示媒体100,100Aがどのような経緯で認証されたか、あるいは何度認証に利用されたのか、どこで認証されたのかといった情報をオンデマンドで記録することが可能となる。つまり、情報表示媒体100,100Aに、時系列情報を、物理的に記録することが可能となる。
【0083】
なお、
図6(a)~(c)では、除去領域33,33’,33’’は、第2領域22の部分平面図において、円形状に見える。しかしながら、これは一例であって、円形状に限定される訳ではなく、
図5(b)を用いて説明したように、直線と曲線との組み合わせからなる任意の形状としたり、
図5(c)を用いて説明したように、曲線からなる任意の形状ともできる。
【0084】
図6(d)は、楕円形状の除去領域33に、除去領域33’を追加工する例を示している。
【0085】
図6(a)~(c)に示す例では、除去領域33’は、除去領域33と離間して設けられた例を示しているが、除去領域33’は、
図6(d)に例示されるように、除去領域33につながるように形成してもよい。
【0086】
図6(d)に例示する第2領域22では、除去領域33によって、第3識別情報として使用されるコード情報を実現し、除去領域33にさらに除去領域33’を追加することによって、第4識別情報として使用されるコード情報を実現することができる。
【0087】
図6(e)は、除去領域33の一例の拡大平面図である。
図6(e)に示すように、第2領域22に形成されている除去領域33の端部34は、ミクロに観察すると、エネルギービーム照射により、端部34が滑らかになっていない場合もある。このようにランダムに形成される端部34の形状を、第3識別情報、第4識別情報、第5識別形状、・・・としてもよい。端部34の形状は、各除去領域33によってランダムに決定される形状であるため、この形状を識別情報として利用することで、耐偽造性をより高めることが可能となる。
【0088】
図7は、規則的にマークが配置された第1領域の平面図である。
【0089】
表示体20は、
図3のようにベース基材15に貼付される場合、または、
図4のようにベース基材15と保護層16との間に内装される場合、いずれにおいても伸縮や回転などのゆがみが発生する。そのゆがみが、エネルギービーム照射によるオンデマンド加工時にオンデマンド加工位置合わせ精度の低下につながる。そこで、第1領域21には、
図7に例示されるように、規則的にマーク40が配置される。
図7に示す例では、図中X方向およびY方向にそれぞれ一定ピッチでマーク40が配置されている。
【0090】
マーク40を第1領域21にあらかじめ形成しておくことで、表示体20がベース基材15へ貼付、あるいはベース基材15と保護層16に内装される場合、どれほどゆがみが発生したのかを、マーク40の位置情報を取得することで推測することが可能となる。
【0091】
また、マーク40は、第1領域21に第1識別情報23を形成した後、そのまま残しておいてもよいが、第1領域21から除去することが好ましい。除去することで、第1識別情報23の視認性向上につながるとともに、偽造模造者による表示体20および第1領域21への高精度に位置合わせされた追加工を防止することが可能となる。
【0092】
マーク40の大きさとしては、幅50μm以上、1000μm以下が望ましい。これは、目視観察時にマーク40が見えない大きさとしたいためである。一方、目視観察時にマーク40が見えてもよい場合、マーク40の大きさは、第1識別情報23の邪魔にならない程度とする必要がある。
【0093】
図8は、表示体および情報表示媒体に対する第1識別情報および第3識別情報の形成のためのフローチャートである。
【0094】
特に、
図8(a)は、表示体20へ第1識別情報23を形成するプロセス200と、表示体20へ第3識別情報を形成するプロセス201とを含むフローチャートである。なお、プロセス200とプロセス201との順序を逆にしてもよい。
【0095】
図8(b)は、
図8(a)に示すプロセス200の前に、プロセス202を、
図8(a)に示すプロセス201の後に、プロセス203を追加したフローチャートである。
【0096】
プロセス202では、情報表示媒体100に形成されている個別情報、例えば、情報層13に含まれる所有者情報11や所有者画像情報12が取得される。これによって、第1識別情報23と情報層13の情報とを紐づけて形成しやすくなる。
【0097】
また、第1識別情報23中に、情報層13に記載の文字、数字情報の暗号化情報や、1次元、2次元コード情報を形成することもできる。暗号化は、公開鍵暗号方式であることが望ましい。また、ハイブリッド暗号方式であってもよい。また、暗号化の際にハッシュ関数が利用されていてもよい。
【0098】
プロセス203では、データベースへ情報が蓄積される。プロセス203において、上述の情報層13を含む個別情報、第1識別情報23、および第3識別情報をそれぞれ紐づけて、特定のデータベースに蓄積することで、表示体20および情報表示媒体100が模造、偽造、改ざんされた場合、データベースと照合することで、真偽判定できる。
【0099】
データベースへ蓄積する情報としては、表示体20あるいは情報表示媒体100の製造時に割り振られる製造番号やロット番号、通し番号などとできる。また、例えば情報表示媒体100がパスポートであった場合は、パスポート番号、運転免許証であった場合には免許証番号など、独自に割り振られている番号とも紐づけてもよい。
【0100】
図8(c)は、
図8(a)に示すプロセス200の前に、プロセス205を、
図8(a)に示すプロセス201の後に、プロセス206を追加したフローチャートである。
【0101】
プロセス205では、表示体20へ形成されている各マーク40の位置情報が取得される。マーク40の位置情報をあらかじめ取得しておくことで、表示体20のゆがみ量を推測でき、第1識別情報23を形成する際、高精度に位置合わせされた識別情報を形成することが可能となる。
【0102】
プロセス206では、表示体20に形成されているマーク40が除去される。
【0103】
また、マーク40を除去する際、第1識別情報23を形成する除去領域33と組み合わせ、マーク40が形成されていたことをカモフラージュしてもよい。また、完全にマーク40を除去するのではなく、一部が残存していてもよい。マーク40を除去する狙いとしては、上述のように高精度に位置合わせされた追加工を防止するためであり、高精度な追加工を防げればよい。
【0104】
プロセス206はオプションであり、実施しなくても、すなわち、マーク40を除去しなくてもよい。
【0105】
なお、
図8(b)、(c)に示すフローチャートは、一例であり、最終的に表示体20および情報表示媒体100を取得できるのであれば、
図8(a)のプロセス200とプロセス201との順序を逆にしてもよいのと同様に、
図8(b)、(c)に示すフローチャートもまた、各プロセスの順序を前後させてもよい。
【0106】
(認証方法)
次に、表示体が搭載された情報表示媒体の認証方法について説明する。
【0107】
図9は、表示体が搭載された情報表示媒体の認証時の流れを示すフローチャートである。
【0108】
表示体20が搭載された情報表示媒体100に対する認証アクション(偽造防止検証を含む)が発生する(プロセス600)と、認証アクションがきっかけとなり、表示体20に記録されている個別情報が取得される(プロセス601)。
【0109】
プロセス601では、第1識別情報23を個別情報として取得してもよいし、光学効果によって生じる第2識別情報を個別情報としてもよい。
【0110】
プロセス602では、例えば
図6(a)に示すように、除去領域33の2次元配列によって実現されるコード情報である第3識別情報が取得される。
【0111】
プロセス603では、プロセス602で取得された第3識別情報に基づいて、情報表示媒体100の、すなわち表示体20の真偽判定が行われる。
【0112】
プロセス604では、真偽判定が行われた後、真偽判定の結果を踏まえ、例えば
図6(b)に示すように、表示体20の第2領域22に、第3識別情報に対する追加工が行なわれる。
図6(b)には、追加工によって、第2領域22に除去領域33’が追加された例が示されている。追加工は、例えば、第2領域22に対するエネルギービーム照射により実行される。
【0113】
プロセス605では、この追加工によって、第2領域22に、第3識別情報から派生する第4識別情報が形成される。第4識別情報は、
図6(b)に示す例では、除去領域33、33’の2次元配列によって実現されるコード情報である。
【0114】
プロセス606では、第4識別情報が、データベースに蓄積される。なお、データベースには、第3識別情報が既に蓄積されている。
【0115】
第4識別情報は、第3識別情報から派生している。つまり、第3識別情報から第4識別情報への変化分は、時系列情報に相当する。
【0116】
この情報表示媒体100に対して次回の認証アクション(偽造防止検証を含む)が発生する(プロセス600)と、前述同様に処理がなされ、プロセス604では、
図6(c)に示すように、第4識別情報(除去領域33,33’)に対する追加工(除去領域33’’)が行なわれ、第2領域22に、第4識別情報から派生する第5識別情報が形成され、プロセス606では、第4種別情報からの時系列情報を含む第5識別情報が、データベースに蓄積される。
【0117】
以上説明したように、実施形態に係る表示体20が搭載された情報表示媒体100では、認証および真偽判定が行われる毎に、追加工により第4識別情報、第5識別情報、・・・を順次形成、取得し、データベースへ蓄積することで、時系列情報を形成、蓄積することが可能となる。
【0118】
なお、
図9に示した各プロセスは、最終的に時系列情報を保持する第4識別情報、第5識別情報、・・・が形成されるのであれば、プロセス600~603については、順番が前後していてもよいし、またプロセス600~603の途中に、別のプロセスを適宜追加することも可能である。
【0119】
情報表示媒体100にICチップやメモリ部が搭載されている場合、個別情報やマーク情報、ICチップやメモリに各識別情報を記録しておき、
図8および
図9に示すフローチャートにおいて、これら各識別情報のデジタルデータを取得し、各プロセスを実行してもよいし、デジタルデータを読み取るプロセスを追加してもよい。
【0120】
また、各識別情報を形成したのち、識別情報をデジタルデータとしてICチップやメモリに記録してもよい。
【0121】
こうすることで、デジタルデータとアナログデータとの両方から認証、真偽判定を行えるため、どちらか片方のデータが紛失されても、記録情報のログをたどることができるので、情報の耐タンパー性が向上する。
【0122】
第3識別情報、第4識別情報、第5識別情報、・・・は、時系列情報あるいは認証、真偽判定の有無を含む情報を形成している。そのため、第3識別情報、第4識別情報、第5識別情報、・・・をブロックチェーン技術と紐づけ、各識別情報をブロックとして記録し、保管し、管理することもできる。こうすることで、表示体20および情報表示媒体100へ記録されていたブロックの内容とは異なる認証、真偽判定があった場合、即座にその表示体20が搭載された情報表示媒体100が、偽造、模造品であると判定できる。
【0123】
ブロックには、情報表示媒体100に形成されている情報層13の情報を含めることができる。
【0124】
また、ブロックを形成する際、複数の判定装置(後述する)によるプルーフオブワークがなされることで、より複雑なハッシュ値を含むブロックを形成し、ブロックチェーンとして管理してもよいし、データベースへ蓄積してもよい。
【0125】
こうすることで、より高い偽造防止耐性を構築できる。
【0126】
なお、生成されたブロックは、情報表示媒体100に搭載されているICチップやメモリに記録されてもよいし、判定装置(後述する)にそれぞれ記録されてもよい。また、データベースに記録されていてもよい。
【0127】
(判定装置)
次に、表示体が搭載された情報表示媒体の認証、真偽判定を行う判定装置について説明する。
【0128】
図10は、表示体が搭載された情報表示媒体の認証、真偽判定を行う判定装置の一例を示す概念図である。
【0129】
図11は、判定装置の電子回路構成の一例を示すハードウェアブロック線図である。
【0130】
判定装置400は、情報表示媒体100の表示体20を撮像し、前述した認証方法を実施することによって、情報表示媒体100の表示体20の認証、真偽判定を行う。
【0131】
判定装置400の内部には、電子回路500と、エネルギービーム照射装置520とが組み込まれている。
【0132】
エネルギービーム照射装置520は、認証、真偽判定結果を踏まえ、表示体20の第2領域22に除去領域33(33’、33’’)を形成するためのエネルギービームを、表示体20へ照射する。これによって、前述したように第4識別情報(第5識別情報、・・・・)を形成する。
【0133】
電子回路500は、判定装置400の制御と、判定処理に係る情報処理を制御する情報処理制御部501を含む。
【0134】
情報処理制御部501は、撮像部502により撮像された画像に対する真偽判定のための処理を行う部位であって、CPU等を含む主制御部504、電源部505、通信部510、記憶部508、および操作部509を含む。記憶部508は、ROM506およびRAM507を含む。操作部509は、例えばキーボードやマウスとすることができ、ユーザは、操作部509から、判定装置400へ操作情報を入力することができる。
【0135】
判定装置400はさらに、表示体20を撮像し、撮像結果を電気信号に変換する撮像部502と、情報表示媒体100に光を照射する光源部503とを備えている。光源部503によって、撮像部502は、表示体20の第2領域22における除去領域33の有無を明確に撮像しやすくなる。
【0136】
バス511は、これら各種機能部位を、電気的に相互接続して、データ等の転送を行う。
【0137】
光源部503による光の照射角度を、情報表示媒体100の法線方向に対して45度とし、撮像部502を、情報表示媒体100の法線方向に沿って設置することで、撮像部502は、除去領域33の有無を強調した画像を撮像できる。
【0138】
撮像部502は、第4識別情報(第5識別情報、・・・・)を撮影すると、撮像結果を出力する。
【0139】
ROM506は、不揮発性のメモリであり、プログラム等の基本的な情報が格納されている。また、RAM507は、揮発性のメモリであり、主制御部504がプログラム及びデータを読み込んで実行するワークメモリであり、撮像部502より取得したデータや所定の変換処理を施したデータ等の各種情報の格納を行う。また必要に応じて外部の端末で処理されたデータ等の格納も行なう。なお、RAM507はフラッシュメモリや外付け可能なメモリ媒体等でも良い。
【0140】
このような判定装置400があることで、オンラインでもオフラインでも、表示体20、あるいは表示体20を搭載された情報表示媒体100の真偽判定が可能となる。なお、情報処理制御部501は、通信機能を有する通信部510を含んでおり、通信部510によって、前述したデータベースと通信することができる。
【0141】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0142】
10 基材
11 所有者情報
12 所有者画像情報
13 情報層
15 ベース基材
16 保護層
20 表示体
21 第1領域
21a,21b,21c,21d セル領域
22 第2領域
23 第1識別情報
30 積層体
31 レリーフ形成層
32 光反射層
33,33’,33’’ 除去領域
34 端部
40 マーク
100,100A 情報表示媒体
400 判定装置
500 電子回路
501 情報処理制御部
502 撮像部
503 光源部
504 主制御部
505 電源部
508 記憶部
509 操作部
510 通信部
511 バス
520 エネルギービーム照射装置