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特開2024-115969貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法
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  • 特開-貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115969
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240820BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240820BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240820BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240820BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240820BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02F1/13 101
B05C5/02
B05C11/10
C09J5/00
C09J201/00
G02F1/1333
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021911
(22)【出願日】2023-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小梶 英之
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
4F041
4F042
4J040
【Fターム(参考)】
2H088FA18
2H088FA30
2H088HA05
2H088MA20
2H189AA64
2H189FA92
2H189HA16
2H189LA02
2H189LA07
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA22
4F041BA34
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA12
4F042DF09
4F042DF34
4F042DH09
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA25
4J040PB19
(57)【要約】
【課題】個体差を有する部材を貼合せた場合でも製造された貼合済部材の総厚さを一定にできる貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法を提供する。
【解決手段】貼合済部材製造装置1は、第1及び第2の保持具31、32と、距離調節装置35と、液状の樹脂83を供給する樹脂供給装置25と、第1及び第2の部材81、82の厚さに関する値を測定する測定器21と、第1の接合面91及び/又は前記第2の接合面92に供給される樹脂83の量を調節する制御装置50とを備える。制御装置50は、あらかじめ設定された貼合済部材の厚さである総厚さから測定器21で測定された第1の部材81の厚さ及び第2の部材82の厚さを差し引いて求められる樹脂83の厚さに相当する量の液状の樹脂83を、第1の接合面91及び第2の接合面92の少なくとも一方に供給するように、樹脂供給装置25を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の第1の接合面と、第2の部材の第2の接合面とを、樹脂を介して貼り合わせた貼合済部材を製造する装置であって、
前記第1の部材を保持する第1の保持具と、
前記第2の部材を保持する第2の保持具と、
前記第1の保持具と前記第2の保持具との間の距離を変化させる距離調節装置と、
前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に液状の前記樹脂を供給する樹脂供給装置と、
前記第1の部材の厚さに関する値を測定すると共に前記第2の部材の厚さに関する値を測定する測定器と、
前記樹脂供給装置から前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量を調節する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、あらかじめ設定された前記貼合済部材の厚さである総厚さから前記測定器で測定された前記第1の部材の厚さ及び前記第2の部材の厚さを差し引いて求められる前記樹脂の厚さに相当する量の液状の前記樹脂を、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給するように、前記樹脂供給装置を制御する、
貼合済部材製造装置。
【請求項2】
第1の基準厚さの前記第1の部材と、第2の基準厚さの前記第2の部材と、第3の基準厚さの前記樹脂と、を有する前記貼合済部材を標準状態の前記貼合済部材とし、前記標準状態の前記貼合済部材の前記総厚さを基準厚さとしたときに、
前記制御装置は、前記基準厚さと、前記標準状態の前記貼合済部材の前記樹脂の量と、があらかじめ記憶されていると共に、前記測定器で測定された前記第1の部材の厚さに関する値及び前記第2の部材の厚さに関する値に基づいて、前記第1の部材の厚さの前記第1の基準厚さに対する差及び前記第2の部材の厚さの前記第2の基準厚さに対する差から、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対する、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の増減量を算出し、算出した前記増減量を、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対して増減させた量の液状の前記樹脂を供給するように、前記樹脂供給装置を制御する、
請求項1に記載の貼合済部材製造装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記貼合済部材となったときの前記樹脂の厚さの前記第3の基準厚さからの変化量と、前記増減量と、の関係があらかじめ記憶されていると共に、前記増減量の算出は、前記基準厚さの前記貼合済部材とするための前記樹脂の厚さの前記第3の基準厚さからの変化量を算出し、算出した前記変化量に対応する前記増減量を、あらかじめ記憶されている関係を参照することで行う、
請求項2に記載の貼合済部材製造装置。
【請求項4】
前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に対する前記樹脂供給装置の位置を相対的に移動させる移動装置を備え、
前記制御装置は、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量の調節を、前記樹脂供給装置からの液状の前記樹脂の吐出流量及び前記移動装置の移動速度の少なくとも一方を調節することにより行う、
請求項1に記載の貼合済部材製造装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量の調節を、前記移動装置の移動速度を一定にした状態で、前記樹脂供給装置からの液状の前記樹脂の吐出流量を調節することにより行う、
請求項4に記載の貼合済部材製造装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の貼合済部材製造装置を用いて前記貼合済部材を製造する方法であって、
前記第1の部材の厚さの前記第1の基準厚さに対する差を特定する工程と、
前記第2の部材の厚さの前記第2の基準厚さに対する差を特定する工程と、
前記樹脂供給装置によって、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に液状の前記樹脂を供給する工程と、
前記第1の接合面と前記第2の接合面とを対向させて、前記第1の保持具に保持された前記第1の部材と前記第2の保持具に保持された前記第2の部材との距離を前記距離調節装置によって近づけて、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記樹脂を介して貼り合わせる工程と、を備え、
前記樹脂を供給する工程は、前記制御装置が前記樹脂供給装置を制御することにより、前記制御装置が算出した前記増減量を、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対して増減させた量の液状の前記樹脂を供給する、
貼合済部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法に関し、特に貼り合わせ後の総厚さを一定にすることができる貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイやウェアラブルデバイスの製造においては、接着剤等の樹脂を介して、2つの部材(例えば液晶基板と保護ガラス)を貼り合わせることが行われる。2つの部材を貼り合わせる際、貼り合わせ後の2つの部材に挟まれる接着剤(樹脂)があらかじめ決められた厚さになるように、貼り合わせる部材に接着剤(樹脂)を塗布することとしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6105109号公報(段落0020等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、貼り合わせ後の2つの部材に挟まれる接着剤(樹脂)をあらかじめ決められた厚さにする場合のほか、貼り合わせ後の部材全体をあらかじめ決められた厚さにする(総厚さ一定にする)ことが求められる場合が生じてきている。しかしながら、貼り合わせる2つの部材は製造時に個体差が生じる場合があり、貼り合わせる部材が個体差を有する状態で接着剤(樹脂)をあらかじめ決められた厚さにするように当該部材に塗布すると、総厚さが一定にならないという問題が生じる。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、貼り合わせる部材が個体差を有する場合であっても、製造された貼合済部材の厚さをあらかじめ決められた厚さにすることができる貼合済部材製造装置及び貼合済部材の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る貼合済部材製造装置は、第1の部材の第1の接合面と、第2の部材の第2の接合面とを、樹脂を介して貼り合わせた貼合済部材を製造する装置であって、前記第1の部材を保持する第1の保持具と、前記第2の部材を保持する第2の保持具と、前記第1の保持具と前記第2の保持具との間の距離を変化させる距離調節装置と、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に液状の前記樹脂を供給する樹脂供給装置と、前記第1の部材の厚さに関する値を測定すると共に前記第2の部材の厚さに関する値を測定する測定器と、前記樹脂供給装置から前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量を調節する制御装置と、を備え、前記制御装置は、あらかじめ設定された前記貼合済部材の厚さである総厚さから前記測定器で測定された前記第1の部材の厚さ及び前記第2の部材の厚さを差し引いて求められる前記樹脂の厚さに相当する量の液状の前記樹脂を、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給するように、前記樹脂供給装置を制御する。
【0007】
このように構成すると、貼合済部材の総厚さがあらかじめ設定された値になるように供給する液状の樹脂の量を調節しているので、第1の部材及び第2の部材の厚さにかかわらず貼合済部材の総厚さをあらかじめ設定された値にすることができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る貼合済部材製造装置は、上記本開示の第1の態様に係る貼合済部材製造装置において、第1の基準厚さの前記第1の部材と、第2の基準厚さの前記第2の部材と、第3の基準厚さの前記樹脂と、を有する前記貼合済部材を標準状態の前記貼合済部材とし、前記標準状態の前記貼合済部材の前記総厚さを基準厚さとしたときに、前記制御装置は、前記基準厚さと、前記標準状態の前記貼合済部材の前記樹脂の量と、があらかじめ記憶されていると共に、前記測定器で測定された前記第1の部材の厚さに関する値及び前記第2の部材の厚さに関する値に基づいて、前記第1の部材の厚さの前記第1の基準厚さに対する差及び前記第2の部材の厚さの前記第2の基準厚さに対する差から、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対する、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の増減量を算出し、算出した前記増減量を、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対して増減させた量の液状の前記樹脂を供給するように、前記樹脂供給装置を制御する。
【0009】
このように構成すると、第3の基準厚さの樹脂における樹脂の量からの増減量を算出して液状の樹脂を供給するので、供給する液状の樹脂の量を簡便に調節することができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る貼合済部材製造装置は、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係る貼合済部材製造装置において、前記制御装置は、前記貼合済部材となったときの前記樹脂の厚さの前記第3の基準厚さからの変化量と、前記増減量と、の関係があらかじめ記憶されていると共に、前記増減量の算出は、前記基準厚さの前記貼合済部材とするための前記樹脂の厚さの前記第3の基準厚さからの変化量を算出し、算出した前記変化量に対応する前記増減量を、あらかじめ記憶されている関係を参照することで行う。
【0011】
このように構成すると、第1の部材の第1の基準厚さに対する差及び第2の部材の第2の基準厚さに対する差からあるべき樹脂の厚さを算出することで、供給する樹脂の増減量を算出することができ、増減量算出の際の負荷を軽減することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る貼合済部材製造装置は、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る貼合済部材製造装置において、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に対する前記樹脂供給装置の位置を相対的に移動させる移動装置を備え、前記制御装置は、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量の調節を、前記樹脂供給装置からの液状の前記樹脂の吐出流量及び前記移動装置の移動速度の少なくとも一方を調節することにより行う。
【0013】
このように構成すると、第1の接合面及び/又は第2の接合面に供給する樹脂の量を、状況に応じて細かく調節することができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る貼合済部材製造装置は、上記本開示の第4の態様に係る貼合済部材製造装置において、前記制御装置は、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に供給する液状の前記樹脂の量の調節を、前記移動装置の移動速度を一定にした状態で、前記樹脂供給装置からの液状の前記樹脂の吐出流量を調節することにより行う。
【0015】
このように構成すると、第1の接合面及び/又は第2の接合面に不規則な軌跡で樹脂を供給する場合に樹脂の供給量の調節がしやすくなる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る貼合済部材の製造方法は、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る貼合済部材製造装置を用いて前記貼合済部材を製造する方法であって、前記第1の部材の厚さの前記第1の基準厚さに対する差を特定する工程と、前記第2の部材の厚さの前記第2の基準厚さに対する差を特定する工程と、前記樹脂供給装置によって、前記第1の接合面及び前記第2の接合面の少なくとも一方に液状の前記樹脂を供給する工程と、前記第1の接合面と前記第2の接合面とを対向させて、前記第1の保持具に保持された前記第1の部材と前記第2の保持具に保持された前記第2の部材との距離を前記距離調節装置によって近づけて、前記第1の部材と前記第2の部材とを前記樹脂を介して貼り合わせる工程と、を備え、前記樹脂を供給する工程は、前記制御装置が前記樹脂供給装置を制御することにより、前記制御装置が算出した前記増減量を、前記標準状態の前記貼合済部材が有する前記樹脂の量に対して増減させた量の液状の前記樹脂を供給する。
【0017】
このように構成すると、第1の部材及び/又は第2の部材の厚さが基準の厚さとは異なる場合であっても一定の厚さの貼合済部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、貼合済部材の総厚さがあらかじめ設定された値になるように供給する液状の樹脂の量を調節しているので、第1の部材及び第2の部材の厚さにかかわらず貼合済部材の総厚さをあらかじめ設定された値にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態に係る貼合済部材製造装置の概略構成図である。
図2】一実施の形態に係る貼合済部材製造装置で製造される貼合済部材の側面図である。
図3】一実施の形態に係る貼合済部材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず図1を参照して、一実施の形態に係る貼合済部材製造装置1を説明する。図1は、貼合済部材製造装置1の概略構成図である。貼合済部材製造装置1は、第1の部材(以下「第1部材81」という)と第2の部材(以下「第2部材82」という)とを、樹脂83を介して貼り合わせた貼合済部材を製造する装置である。ここで、貼合済部材製造装置1の説明に先立って、貼合済部材製造装置1で製造される貼合済部材を説明する。
【0022】
図2は、貼合済部材製造装置1で製造される貼合済部材80の側面図である。貼合済部材80は、第1部材81と第2部材82とが、樹脂83を介して貼り合わせられた部材である。第1部材81及び第2部材82は、例えば、液晶ディスプレイ等の基板やレンズ等であり得る。第1部材81として、液晶モジュールを適用してもよい。第1部材81としての液晶モジュールは、矩形の平板状に形成されていてもよい。第1部材81は、平板状の一方の表面が、樹脂83を介して第2部材82と接合する第1の接合面(以下「第1接合面91」という)になっている。第1部材81は、本実施の形態では、第1接合面91及びその反対側の裏面共に平坦に形成されている。第2部材82として、液晶を保護するカバーガラスを適用してもよい。第2部材82としてのカバーガラスは、矩形の平板状に形成されていてもよい。第2部材82は、平板状の一方の表面が、樹脂83を介して第1部材81と接合する第2の接合面(以下「第2接合面92」という)になっている。第2部材82は、本実施の形態では、第2接合面92及びその反対側の裏面共に平坦に形成されている。樹脂83は、接着剤として機能するものであってもよい。樹脂83は、本実施の形態では、第1部材81及び/又は第2部材82に塗布されるときは流動性を有する所定の粘度の液体状となっており、第1部材81と第2部材82とを貼り合わせて増粘措置が施されると硬化する特性を有している。樹脂83は、外力が加わったときに流動し、外力を除去したときに静止する特性を有していてもよく、所定の粘度が、例えば100~5000mPa・sであってもよい。増粘措置としては、樹脂83の性質に応じて、紫外線を照射する、加熱する、時間経過を待つ、等が挙げられる。樹脂83は、貼合済部材80の状態では、第1部材81と第2部材82とを貼り付けると共に、第1部材81と第2部材82との間隔を適切な間隔に保持する中間層の役割をするものである。
【0023】
貼合済部材80において、第1部材81、第2部材82、樹脂83の厚さを、それぞれ、第1厚さT1、第2厚さT2、第3厚さT3といい、貼合済部材80全体の厚さを総厚さTということとする。第1厚さT1及び第2厚さT2は、それぞれ、第1部材81及び第2部材82の製造時点で決まる。第3厚さT3は、概ね、第1部材81と第2部材82とを貼り合わせる前の樹脂83の供給量に応じて決まる。総厚さTは、第1厚さT1と第2厚さT2と第3厚さT3との合計であり、第1厚さT1、第2厚さT2、及び第3厚さT3が決定することによって決まる。第1厚さT1、第2厚さT2、及び第3厚さT3は、それぞれ、設計上の値(貼合済部材80として理想的な値)がある。第1厚さT1、第2厚さT2、第3厚さT3の設計上の値を、それぞれ、第1の基準厚さ(以下「第1基準厚さTB1」という)、第2の基準厚さ(以下「第2基準厚さTB2」という)、第3の基準厚さ(以下「第3基準厚さTB3」という)ということとする。また、第1部材81、第2部材82、樹脂83が、それぞれ、第1基準厚さTB1、第2基準厚さTB2、第3基準厚さTB3である貼合済部材80の状態を「標準状態」ということとする。また、標準状態の貼合済部材80の総厚さTを「基準厚さTB」ということとする。貼合済部材80を製造する際は、第1基準厚さTB1の第1部材81と第2基準厚さTB2の第2部材とを貼り合わせるのが好ましい。第1厚さT1及び第2厚さT2がそれぞれ常に第1基準厚さTB1及び第2基準厚さTB2であれば、供給する樹脂83の量を一定にすることで、総厚さTを常に基準厚さTBにすることができる。しかしながら、第1部材81及び/又は第2部材82は、製造誤差等の事情により、それぞれ、第1基準厚さTB1、第2基準厚さTB2になっていない場合がある。このような状況において総厚さTを一定にすること(典型的には基準厚さTBにすること)が求められる場合、第3基準厚さTB3に相当する量の樹脂83を第1部材81及び/又は第2部材82に供給すると、総厚さTが一定にならない場合がある。貼合済部材製造装置1(図1参照)は、第1部材81及び/又は第2部材82がそれぞれ第1基準厚さTB1及び第2基準厚さTB2になっていない場合でも、総厚さTを一定にすることができるものである。
【0024】
図1に戻って貼合済部材製造装置1の説明を続ける。貼合済部材製造装置1は、載置台11と、移動装置15と、測定器21と、樹脂供給装置25と、貼合装置30と、制御装置50とを備えている。載置台11は、第1部材81及び/又は第2部材82を、厚さを測定するため及び/又は樹脂83を塗布するために、載置するための台である。載置台11は、典型的には、平面視において、第1部材81及び第2部材82のうち大きい方を包含する大きさの表面を有する板状に形成されている。載置台11は、第1部材81及び第2部材82が載置される面が載置面12となっている。載置面12は、載置される第1部材81及び第2部材82に適合する形状になっており、本実施の形態では平面に形成されている。載置台11は、典型的には、載置面12が上向きで水平になるように配置されている。
【0025】
移動装置15は、載置台11を移動させる装置である。移動装置15は、送り装置16と、調節装置17とを有している。送り装置16は、載置台11を、貼合装置30に対して接近し及び離れる方向(以下「搬送方向C」という)かつ水平に、往復直線移動させるものである。送り装置16は、搬送方向Cに延びるレール(不図示)と、レール上を搬送方向Cに移動可能な移動部材(不図示)とを筐体の内部に有しており、この移動部材に調節装置17が取り付けられている。調節装置17は、載置台11を、搬送方向Cに対して直交する方向かつ水平に、往復移動させるものである。調節装置17が載置台11を移動させる距離は、典型的には第1部材81又は第2部材82の幅に相当する距離である。調節装置17は、駆動機構(不図示)を内部に有しており、この駆動機構に載置台11が取り付けられている。
【0026】
測定器21は、本実施の形態では、載置台11に載置されている第1部材81及び第2部材82の厚さを測定する機器である。測定器21は、典型的には非接触光学式のものが用いられる。測定器21は、搬送方向Cに移動する載置台11に載置されている第1部材81又は第2部材82の軌道の鉛直上方に設けられている。測定器21は、典型的には、貼合済部材製造装置1のフレーム(不図示)に固定されている。測定器21は、移動装置15が作動して載置台11に対して相対的に移動することにより、載置台11に載置されている第1部材81又は第2部材82の複数の点の厚さを測定することができる。なお、測定器21は、1点の厚さを測定するものを複数設けてもよく、あるいは複数の点を測定可能なものを採用してもよい。例えば、1点の厚さを測定する測定器21を、搬送方向Cに水平に直交する方向に配列すると、載置台11を搬送方向Cに移動させるだけで、第1部材81又は第2部材82の広範囲の点の厚さを測定することができる。
【0027】
樹脂供給装置25は、載置台11に載置されている第1部材81及び/又は第2部材82に液状の樹脂83を供給する装置である。ここでいう液状は、外力が加わったとき又は外力が加わっていない状態で流動性を有することを意味している。樹脂供給装置25は、ノズル26と、樹脂供給器27と、樹脂流路28とを有している。ノズル26は、第1部材81又は第2部材82に向けて液状の樹脂83を吐出するものである。ノズル26は、本実施の形態では、ダイコートのためのダイヘッドが用いられている。ノズル26は、載置台11に対向する面に、液状の樹脂83が吐出されるスリット状の吐出口が形成されている。ノズル26は、典型的には、スリット状の吐出口が搬送方向Cに対して直交する方向かつ水平に延びるような向きで、搬送方向Cに移動する載置台11に載置されている第1部材81又は第2部材82の軌道の鉛直上方に設けられている。ノズル26は、典型的には、測定器21と貼合装置30との間で、貼合済部材製造装置1のフレーム(不図示)に固定されている。ノズル26は、移動装置15が作動して載置台11に対して相対的に移動することにより、載置台11に載置されている第1部材81の広範囲又は第2部材82の広範囲に、液状の樹脂83を供給することができる。樹脂供給器27は、液状の樹脂83を貯留する樹脂タンク(不図示)を有している。樹脂供給器27は、また、貯留されている液状の樹脂83をノズル26に向けて圧送する圧送機(不図示)を有している。圧送機として、ポンプを用いることができる。樹脂供給器27が有する圧送機は、樹脂83の吐出圧力を変えることで、樹脂83の吐出流量を変えることができるように構成されている。なお、樹脂83の吐出圧力は、ポンプに代えて油圧又は空気圧によって変化させる構成としてもよい。樹脂供給器27は、樹脂流路28を介してノズル26と接続されており、樹脂流路28を介して液状の樹脂83をノズル26に供給することができるように構成されている。
【0028】
貼合装置30は、第1部材81と第2部材82との貼り合わせを行う装置である。貼合装置30は、ボトムプレート31と、リフトピン32と、プレスプレート33と、昇降装置35とを有している。ボトムプレート31は、本実施の形態では、第1部材81を保持するものであり、第1の保持具に相当する。ボトムプレート31は、典型的には、平面視において、第1部材81の第1接合面91を包含する大きさの表面をもつ厚板状に形成されている。ボトムプレート31は、本実施の形態では第1部材81が接する表面が平坦に形成されていると共に、第1部材81を吸着保持するための通気孔(不図示)が複数形成されている。ボトムプレート31は、表面に形成された通気孔(不図示)が配管(不図示)を介して真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプの作動によって通気孔が負圧になることで、第1部材81を吸着保持することができるようになっている。
【0029】
リフトピン32は、本実施の形態では、第2部材82を保持するものであり、第2の保持具に相当する。リフトピン32は、筒状部材の複数で構成されている。リフトピン32は、各筒状部材が鉛直方向に延びる向きで、ボトムプレート31の鉛直上方に設けられている。リフトピン32は、各筒状部材の両端が開口しており、上端が配管(不図示)を介して真空ポンプ(不図示)に接続されている。リフトピン32は、各筒状部材の下端に第2部材82の面を接触させた状態で真空ポンプを作動させることにより、各筒状部材の内部が負圧になって、第2部材82を吸着保持することができるようになっている。
【0030】
プレスプレート33は、第2部材82を第1部材81に押し付けるものである。プレスプレート33は、典型的には、平面視において、第2部材82の第2接合面92を包含する大きさの表面を持つ板状に形成されている。プレスプレート33は、本実施の形態では第2部材82が接する表面が平坦に形成されていると共に、リフトピン32が貫通するための貫通孔が形成されている。プレスプレート33は、本実施の形態では、第2部材82が接する表面が、ボトムプレート31の表面と平行になるように配置されている。この状態のプレスプレート33の表面に対して、リフトピン32の各筒状部材が垂直に延びるようになっている。プレスプレート33は、駆動機構(不図示)により、リフトピン32の各筒状部材が延びる方向に往復移動することができるように構成されている。
【0031】
昇降装置35は、ボトムプレート31を上下に移動させるものである。昇降装置35は、ボトムプレート31の下部に設けられている。昇降装置35は、内蔵されたモータを有する昇降機構(不図示)の作動により、上下に移動することができるようになっている。昇降装置35は、昇降機構が作動して上下に移動することにより、接続されているボトムプレート31を上下に移動することでき、これによってボトムプレート31とリフトピン32との間の距離を変化させることができる。このように、昇降装置35は、距離調節装置に相当する。各構成要素が上述のように構成された貼合装置30は、接近してきた載置台11から、ロボットハンド(不図示)によって第1部材81及び第2部材82を順次受け取って、第1部材81と第2部材82とを樹脂83を介して貼り合わせることができるように構成されている。なお、貼合装置30は、ボトムプレート31、リフトピン32の各筒状部材の少なくとも下部、プレスプレート33、及び昇降装置35の少なくとも上部を収容するチャンバを有していてもよい。貼合装置30は、チャンバを設ける場合は第1部材81及び第2部材82を受け取るときは開き、第1部材81と第2部材82との貼り合わせを行うときは気密に閉じるように、開閉可能に構成されているとよい。
【0032】
制御装置50は、貼合済部材製造装置1の動作を制御する機器である。制御装置50は、動作制御部51と、受信部52と、記憶部53と、演算部54とを有している。これらの各部は、本実施の形態では説明の便宜上機能で区別して表しているが、典型的には制御装置50内に渾然一体に構成されており、あるいはこれらの各部のうちの1つ又は複数の部分が物理的に分かれて構成されていてもよい。
【0033】
動作制御部51は、貼合済部材製造装置1を構成する各装置及び機器の動作を制御する部分である。動作制御部51は、移動装置15と制御信号線(有線又は無線。以下同じ。)で接続されており、載置台11を搬送方向C及び搬送方向Cに水平に直交する方向に任意の速度で移動させることができるように構成されている。また、動作制御部51は、測定器21と制御信号線で接続されており、測定器21による厚さの測定の開始を制御することができるように構成されている。また、動作制御部51は、樹脂供給装置25と制御信号線で接続されており、ノズル26からの液状の樹脂83の吐出の有無及び吐出流量を制御することができるように構成されている。また、動作制御部51は、貼合装置30と制御信号線で接続されており、ボトムプレート31及びリフトピン32の吸着の有無、並びにプレスプレート33及び昇降装置35の上下動を制御することができるように構成されている。
【0034】
受信部52は、測定器21で測定された値を信号として受信する部分である。受信部52は、測定器21と制御信号線で接続されており、測定器21から測定値の信号を受信することができるように構成されている。なお、受信部52が受信する測定値の信号は、測定器21と動作制御部51とを接続している制御信号線を利用して、動作制御部51を介して受信することとしてもよい。この場合は、測定器21と受信部52とを接続する制御信号線を設けなくて済む。
【0035】
記憶部53は、貼合済部材製造装置1の動作に必要なデータがあらかじめ記憶された部分である。記憶部53には、製造したい貼合済部材80の大きさ及び種類ごとに、第1基準厚さTB1、第2基準厚さTB2、第3基準厚さTB3、及び基準厚さTBが記憶されている。また、記憶部53には、製造したい貼合済部材80の大きさ及び種類ごとに、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量[g]が記憶されている。また、記憶部53は、製造したい貼合済部材80の大きさ及び種類ごとに、樹脂83の厚さである第3厚さT3と第3基準厚さTB3との差と、その差に対応する、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量からの増減量[g]との関係が記憶されている。この関係の具体例として、第3厚さT3が第3基準厚さTB3に対して5μm増加(減少)するごとに、その第3厚さT3の樹脂83の量が8mg増加(減少)するように、ステップ状に増減させることを挙げることができる。
【0036】
演算部54は、測定器21で測定した第1部材81の第1厚さT1及び第2部材82の第2厚さT2に基づいて、総厚さTを基準厚さTBとするための樹脂83の第3厚さT3を算出するように構成されている。演算部54は、受信部52が測定器21から受信した厚さの値を受信部52から受け取ることができるように構成されている。また、演算部54は、算出した第3厚さT3に対応する樹脂83の増減量を、記憶部53に記憶されている関係を参照することで特定するように構成されている。また、演算部54は、特定した樹脂83の増減量を、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量に対して増減し、得られた樹脂83の量を、動作制御部51に伝えるように構成されている。動作制御部51は、演算部54から指定された量の樹脂83がノズル26から吐出されるように、ノズル26の動作を制御するようになっている。
【0037】
次に図3を参照して、貼合済部材80の製造方法を説明する。図3は、貼合済部材80の製造の手順を示すフローチャートである。以下に説明する貼合済部材80の製造方法は、これまで説明してきた貼合済部材製造装置1を用いて実行される。以下の貼合済部材製造装置1を用いた貼合済部材80の製造方法の説明は、貼合済部材製造装置1の作用の説明を兼ねている。以下の説明において、貼合済部材製造装置1の構成、並びに貼合済部材80及びその構成要素に言及しているときは、適宜図1及び図2を参照することとする。
【0038】
貼合済部材製造装置1の停止中は、典型的には載置台11が部材載置位置(本実施の形態では貼合装置30から離れた位置)にあるが、貼合済部材製造装置1を起動したときに載置台11が部材載置位置に移動することとしてもよい。本実施の形態では、貼合済部材80の製造を開始したら、まず、第2部材82を載置台11に載置する(S1)。このとき、典型的には第2接合面92が上方を向くように(第2接合面92の反対側の面が載置面12に接するように)第2部材82を載置台11に載置するが、第2接合面92が載置面12に接するように第2部材82を載置台11に載置してもよい。
【0039】
第2部材82を載置台11に載置したら、第2部材82の厚さである第2厚さT2の、第2基準厚さTB2からの差(=T2-TB2)を特定する(S2)。以下、第2厚さT2の第2基準厚さTB2からの差(T2-TB2)を「第2差分」ということとする。第2差分を特定するには、まず、第2部材82の厚さを測定する。第2部材82の厚さの測定は、動作制御部51の指令で作動した移動装置15が載置台11を測定器21の下方に移動させて、測定器21が第2部材82の厚さを検知することで行われる。第2部材82の厚さの測定は、典型的には第2部材82の複数の点について行われる。測定器21が測定した第2部材82の厚さは、制御装置50の受信部52に送信され、その後演算部54に転送される。第2部材82は、典型的には厚さが一様であるため、複数の測定点における厚さの値は同じになるが、複数の測定点の厚さが異なる場合は、本実施の形態では測定した厚さの平均を当該第2部材82の第2厚さT2として取り扱うこととしている。なお、第2部材82の複数の点について厚さを測定することに代えて、第2部材82のあらかじめ決められた基準となる1つの位置の厚さを測定し、これを第2厚さT2として取り扱うこととしてもよい。演算部54は、第2厚さT2の値を取得したら、記憶部53に記憶されている第2基準厚さTB2を参照し、第2差分(T2-TB2)を算出する。
【0040】
第2差分を特定したら、第2部材82をリフトピン32に吸着保持させる(S3)。このとき、典型的には、載置台11を移動装置15によって貼合装置30に可能な限り近接した位置に移動させた後、ロボットハンド(不図示)によって載置台11に載置されている第2部材82をリフトピン32に移送する。ロボットハンド(不図示)は、第2接合面92の反対側の面がリフトピン32の下端に接するように第2部材82をリフトピン32に移送する。貼合装置30では、リフトピン32の下端に第2部材82が接したら、動作制御部51が真空ポンプ(不図示)を作動させ、これによって第2部材82がリフトピン32に吸着保持される。第2部材82が載置台11からリフトピン32に移送されたら、動作制御部51は移動装置15を作動させて、載置台11を部材載置位置に移動させる。
【0041】
次に、第1部材81を載置台11に載置する(S4)。このとき、第1接合面91が上方を向くように(第1接合面91の反対側の面が載置面12に接するように)第1部材81を載置台11に載置する。第1部材81を載置台11に載置したら、第1部材81の厚さである第1厚さT1の、第1基準厚さTB1からの差(=T1-TB1)を特定する(S5)。以下、第1厚さT1の第1基準厚さTB1からの差(T1-TB1)を「第1差分」ということとする。第1差分を特定するには、まず、第1部材81の厚さを測定する。第1部材81の厚さの測定は、第2部材82の厚さの測定と同じ要領で、測定器21を用いて、第1部材81の複数の点について又は第1部材81のあらかじめ決められた基準となる1つの位置について、行われる。測定器21が測定した第1部材81の厚さは、制御装置50の受信部52に送信され、その後演算部54に転送される。演算部54は、第2差分(T2-TB2)を算出したのと同じ要領で、受信部52から受け取った第1部材81の厚さに基づいて第1厚さT1を取得し、さらに記憶部53に記憶されている第1基準厚さTB1を参照して、第1差分(T1-TB1)を算出する。
【0042】
第1差分を特定したら、第1接合面91に液状の樹脂83を塗布する(S6)。第1接合面91への液状の樹脂83の塗布は、第1接合面91への液状の樹脂83の供給の一形態である。第1接合面91に液状の樹脂83を塗布するには、動作制御部51の指令により、移動装置15の作動で移動する載置台11に載置された第1部材81がノズル26の可能を通過する際に、ノズル26の吐出口から液状の樹脂83を吐出させる。このとき、製造される貼合済部材80の総厚さTを基準厚さTBにするべく、演算部54は、あらかじめ、第1部材81に供給する液状の樹脂83の量を特定しておく。第1部材81に供給する液状の樹脂83の量の特定は、本実施の形態では、以下の要領で行われる。
【0043】
まず、前述の工程(S2、S5)において既に特定している第2差分と第1差分とについて、和を求める。ここで求めた和が、この貼合済部材80の第3厚さT3の、第3基準厚さTB3からの「減少分」となる。このように定義するのは、総厚さTを基準厚さTBと等しくする場合、第2差分と第1差分との和が正の値の場合は、その分だけ第3厚さT3を第3基準厚さTB3から小さくする必要があるためである。他方、第2差分と第1差分との和が負の値の場合、「減少分」が負の値ということになり、これは、実質的には第3厚さT3の第3基準厚さTB3からの増加分を意味することとなる。このことは、第2差分と第1差分との和が負の値の場合、その分だけ第3厚さT3を第3基準厚さTB3から大きくする必要があることと整合する。第2差分と第1差分との和を求めて、第3厚さT3の第3基準厚さTB3からの減少分を特定したら、本実施の形態では、記憶部53に記憶されている第3厚さT3の減少分と樹脂83の量の増減量との関係から、供給すべき樹脂83の増減量を求める。ここで、第3厚さT3の減少分が正の値の場合と負の値の場合を総称したものが、第3厚さT3と第3基準厚さTB3との差に相当する。第3厚さT3の減少分(第3厚さT3と第3基準厚さTB3との差)が正の値の場合、供給する樹脂83の量を減少させることになる。他方、第3厚さT3の減少分が負の値の場合、供給する樹脂83の量を増加させることになる。このように求めた樹脂83の増減量を、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量に対して調整した量が、あらかじめ特定しておくべき第1部材81に供給する液状の樹脂83の量となる。なお、本実施の形態では、ノズル26に対する載置台11の移動速度を一定にして、ノズル26から吐出する液状の樹脂83の流量を調節することで、第1部材81に供給する液状の樹脂83の量を調節することとする。
【0044】
上述の、第1部材81に供給する液状の樹脂83の量の特定について、具体例を挙げて説明する。なお、ここで行う具体例の説明は、理解を容易にするために具体的な数値に言及しているものであり、記載する数値に限定されるものではないことはいうまでもない。測定器21で測定された値に基づく第2厚さT2が1.021mm、記憶部53に記憶されている第2基準厚さTB2が1.000mmの場合、第2差分(T2-TB2)は、1.021mm-1.000mm=0.021mmとなる。測定器21で測定された値に基づく第1厚さT1が0.992mm、記憶部53に記憶されている第1基準厚さTB1が1.000mmの場合、第1差分(T1-TB1)は、0.992mm-1.000mm=-0.008mmとなる。これらから、第2差分と第1差分との和は、0.021mm+(-0.008mm)=0.013mmとなる。この0.013mm(=13μm)は、第3厚さT3の第3基準厚さTB3からの減少分に相当する。記憶部53に記憶されている、第3厚さT3と第3基準厚さTB3との差と樹脂83の量の増減量との関係が、第3厚さT3の増減5μm以内ごとに樹脂83を8mg増減させることである場合、ここの例では樹脂83の減少量は8mg×3=24mgとなる。なお、8mgを3倍しているのは、13μm/5μm=2.6を切り上げたものである。そして、記憶部53に記憶されている、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量が356.7mgの場合、増減調節後の供給する樹脂83の量は、356.7mg-24mg=332.7mgとなる。このように、ここで示した具体例では、あらかじめ特定しておくべき第1部材81に供給する液状の樹脂83の量は、332.7mgとなる。ノズル26に対する載置台11の移動速度に対して、第1部材81の必要な部分に液状の樹脂83を供給するのに12.3秒要する場合、ノズル26からの液状の樹脂83の供給流量は、332.7mg/12.3s≒27mg/sとなる。参考に、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の供給流量は、356.7mg/12.3s=29mg/sとなる。したがって、この具体例の場合は、液状の樹脂83を塗布する工程(S6)において、ノズル26からの液状の樹脂83の供給流量の設定値を29mg/sから27mg/sに変更することで、総厚さTが基準厚さTBと等しい貼合済部材80を得ることができる。
【0045】
第1接合面91に液状の樹脂83を塗布したら(S6)、第1部材81をボトムプレート31に吸着保持させる(S7)。このとき、典型的には、載置台11を移動装置15によって貼合装置30に可能な限り近接した位置に移動させた後、ロボットハンド(不図示)によって載置台11に載置されている第1部材81をボトムプレート31に移送する。ロボットハンド(不図示)は、液状の樹脂83が塗布された第1接合面91が上方を向いた状態を維持しながら、第1部材81をボトムプレート31に移送する。貼合装置30では、ボトムプレート31の上面に第1部材81が接したら、動作制御部51が真空ポンプ(不図示)を作動させ、これによって第1部材81がボトムプレート31に吸着保持される。第1部材81がボトムプレート31に吸着保持されることにより、ボトムプレート31の鉛直上方に配置されたリフトピン32に吸着保持されている第2部材82の第2接合面92と、第1部材81の第1接合面91とが、対向することになる。
【0046】
第2接合面92と第1接合面91とが対向するようになったら、動作制御部51が昇降装置35を作動させて、ボトムプレート31を上昇させる(S8)。これにより、ボトムプレート31に吸着保持された第1部材81とリフトピン32に吸着保持された第2部材82とが近づく。本実施の形態では、第1部材81に供給されている液状の樹脂83が、第2接合面92に接するまで、ボトムプレート31を上昇させることとしている。ボトムプレート31を上昇させたら、動作制御部51がリフトピン32の真空ポンプ(不図示)の作動を停止してリフトピン32による第2部材82の吸着保持を解放すると共に駆動機構(不図示)を作動させて、プレスプレート33を下降させる(S9)。これにより、第2部材82が第1部材81に向けて押圧され、第1部材81と第2部材82との貼り合わせが行われる。このとき、第1部材81と第2部材82とに挟まれている樹脂83に増粘措置を施して、この樹脂83を硬化させることとするとよい。第1部材81と第2部材82とが貼り合わせられることにより、第1部材81と第2部材82と樹脂83とが一体になった貼合済部材80になる。
【0047】
第1部材81と第2部材82とが貼り合わせられたら、動作制御部51は、プレスプレート33の駆動機構(不図示)の作動を停止させた後、ボトムプレート31を下降させる(S10)。これにより、貼合済部材80は、リフトピン32から離れて、ボトムプレート31の上面に載置された状態となる。貼合済部材80がリフトピン32から離れたら、貼合済部材80をボトムプレート31から取り出す(S11)。これで、1つの貼合済部材80を得ることができる。引き続き次の貼合済部材80を製造する場合は、上述のフローを繰り返せばよい。
【0048】
以上で説明したように、本実施の形態に係る貼合済部材製造装置1によれば、第1差分と第2差分との和を、第3厚さT3の第3基準厚さTB3からの減少分とし、この減少分を第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量に対して調整した量の樹脂83を供給する。したがって、第1厚さT1が第1基準厚さTB1と相違する及び/又は第2厚さT2が第2基準厚さTB2と相違する場合であっても、貼合済部材80の総厚さTを基準厚さTBに等しくすることができる。
【0049】
以上の説明では、載置台11及び測定器21を第1部材81及び第2部材82に兼用とし、載置台11に第1部材81及び第2部材82を順番に載置して、測定器21によって第1部材81及び第2部材82の厚さを順番に測定することとした。しかしながら、載置台11が、第1部材81のための第1の載置台と第2部材82のための第2の載置台とを有し、測定器21が、第1部材81のための第1の測定器と第2部材82のための第2の測定器とを有することとしてもよい。このようにすると、第1部材81及び第2部材82それぞれの厚さを同時に測定することができ、貼合済部材80の製造に要する時間を短縮することができる。他方、載置台11及び測定器21の組みを1つとして第1部材81及び第2部材82の兼用とすると、2組目の載置台11及び測定器21を設けなくて済み、スペースの拡大を抑制して、装置の小型化を図ることができる。
【0050】
以上の説明では、測定器21及びノズル26が固定されていて、第1部材81又は第2部材82が載置された載置台11を移動させることにより、第1部材81又は第2部材82に対して複数位置の厚さ測定及び樹脂83の塗布を行うことができるとした。しかしながら、載置台11を固定して、測定器21及びノズル26を移動させる構成としてもよく、載置台11と測定器21及びノズル26とを相互に移動させる構成としてもよい。
【0051】
以上の説明では、第1部材81及び第2部材82に対して厚さの測定及び樹脂83の塗布が行われる際に利用される載置台11と、第1部材81と第2部材82とを貼り合わせる際に利用される貼合装置30とが、別の構成であることとした。しかしながら、第1の保持具及び第2の保持具のそれぞれに第1部材81及び第2部材82を保持させて、第1部材81及び第2部材82の厚さ測定、液状の樹脂83の塗布を行い、第1の保持具又は第2の保持具を反転させて貼り合わせを行うこととしてもよい。このようにすると、載置台11から貼合装置30へ第1部材81及び第2部材82を移送する装置(例えばロボットハンド)を設けなくて済む。他方、厚さの測定及び樹脂83の塗布が行われる際に利用される載置台11と、貼合装置30とを別構成とすると、第1の保持具及び/又は第2の保持具を反転させる構成を設けなくて済み、装置構成の複雑化を抑制することができる。
【0052】
以上の説明では、測定器21が第1部材81の厚さ及び第2部材82の厚さを測定し、これらの測定された厚さ並びに記憶部53に記憶された第1基準厚さTB1及び第2基準厚さTB2から、演算部54が第1差分及び第2差分を特定することとした。しかしながら、第1部材81及び第2部材82の厚さが一様の場合は、測定器21が、第1差分及び第2差分を直接測定することとしてもよい。この場合、固定された測定器21に、第1基準厚さTB1の第1部材81の表面までの距離及び第2基準厚さTB2の第2部材82の表面までの距離を基準距離(±0mm)として設定しておく。そして、測定器21が第1部材81(第2部材82)の表面までの距離を測定して、基準距離よりも長い場合は正の値、基準距離よりも短い場合は負の値を検出するようにすれば、測定器21で測定した値をそのまま第1差分(第2差分)とすることができる。
【0053】
以上の説明では、第1部材81又は第2部材82に供給する液状の樹脂83の増減量を、ステップ状に変化させることとしたが、連続的に(正比例で)変化させることとしてもよい。液状の樹脂83の増減量を連続的に変化させる場合、演算部54は、第2差分と第1差分との和を求めて、第3厚さT3の第3基準厚さTB3からの差分を特定したら、この厚さの差分に対応する樹脂83の量の増減分の情報を、記憶部53から得る。このようにして得た樹脂83の量の増減分を、第3基準厚さTB3のときの樹脂83の量に対して正比例で調節して、第1部材81又は第2部材82に供給する液状の樹脂83の量とすればよい。そして、第1部材81又は第2部材82に供給する決定した液状の樹脂83の量に応じて、ノズル26から供給される液状の樹脂83の流量を調節すればよい。このように液状の樹脂83の増減量を連続的に変化させる場合、より精度の高い樹脂83の量の調節が可能となる。しかしながら、ここまで細かく調節する重要性が高くない場合は、ステップ状に変化させることとして、演算負担を軽減させることが好ましい。
【0054】
以上の説明では、供給する樹脂83の量を増減する際に、ノズル26からの液状の樹脂83の吐出流量を変化させることとしたが、ノズル26からの液状の樹脂83の吐出流量を変化させずに載置台11に対するノズル26の相対的な移動速度を変化させてもよい。あるいは、ノズル26からの液状の樹脂83の吐出流量と、載置台11に対するノズル26の相対的な移動速度と、の双方を同時に変化させてもよい。
【0055】
以上の説明では、第1差分及び第2差分を特定した後に第3基準厚さTB3に対する第3厚さT3の増減量を特定し、この特定した樹脂83の厚さの増減量から供給すべき樹脂83の増減量を求め、この量の増減分を調整して供給する液状の樹脂83の量とした。しかしながら、測定した第1部材81及び第2部材82の厚さを基準厚さTBから差し引いて、基準厚さTBと等しい総厚さTの貼合済部材80とする際の樹脂83の厚さを特定し、この厚さとするのに必要な量の樹脂83を算出することとしてもよい。
【0056】
以上の説明では、本開示の実施の形態に係る貼合済部材製造装置及びはんだ貼合済部材の製造方法を、一例として主に図1乃至図3を用いて説明したが、各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1 貼合済部材製造装置
11 載置台
15 移動装置
21 測定器
25 樹脂供給装置
31 ボトムプレート(第1の保持具)
32 リフトピン(第2の保持具)
35 昇降装置(距離調節装置)
50 制御装置
80 貼合済部材
81 第1部材
82 第2部材
83 樹脂
91 第1接合面
92 第2接合面
図1
図2
図3