(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115971
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240820BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021913
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC17
3D131BC44
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB18Z
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB38V
3D131EB38W
3D131EB38X
3D131EB38Z
3D131EB43X
(57)【要約】
【課題】 ノイズ性能を維持しつつ、マッド性能を向上する。
【解決手段】 少なくとも1本の溝3が設けられたタイヤ1である。溝3は、一対の溝壁4を含んでいる。一対の溝壁4の少なくとも一方は、溝深さ方向に延びる複数の深さ方向面8と、溝幅方向にのびる複数の幅方向面9とを交互に含む階段状部6を含んでいる。複数の深さ方向面8は、踏面2aから延びる第1深さ方向面8aと、そのタイヤ半径方向内側に続く第2深さ方向面8bとを含んでいる。第2深さ方向面8bでの溝幅Wbは、第1深さ方向面8aでの溝幅Waよりも小さい。第2深さ方向面8bの溝深さ方向の長さHbが第1深さ方向面8aの溝深さ方向の長さHaよりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、少なくとも1本の溝が設けられており、
前記溝は、前記トレッド部の踏面からタイヤ半径方向の内側に延びる一対の溝壁を含み、
前記一対の溝壁の少なくとも一方は、溝深さ方向に延びる複数の深さ方向面と、溝幅方向にのびる複数の幅方向面とを交互に含む階段状部を含み、
前記複数の深さ方向面は、前記踏面から延びる第1深さ方向面と、そのタイヤ半径方向内側に続く第2深さ方向面とを含み、
前記第2深さ方向面での溝幅は、前記第1深さ方向面での溝幅よりも小さく、
前記第2深さ方向面の溝深さ方向の長さが前記第1深さ方向面の溝深さ方向の長さよりも小さい、
タイヤ。
【請求項2】
前記一対の溝壁の両方は、前記階段状部を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記溝の溝中心線と直交する横断面において、前記複数の深さ方向面は、トレッド接線に対して85~95度の角度を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数の深さ方向面は、前記第2深さ方向面のタイヤ半径方向内側に続く第3深さ方向面を含み、
前記第3深さ方向面での溝幅は、前記第2深さ方向面での溝幅よりも小さく、
前記第3深さ方向面の溝深さ方向の長さが前記第2深さ方向面の溝深さ方向の長さよりも小さい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の深さ方向面は、タイヤ半径方向の最も内側に位置する最内側深さ方向面を含み、
前記最内側深さ方向面での溝幅は、前記複数の深さ方向面での各溝幅の中で最も小さく、
前記最内側深さ方向面での溝幅は、前記第1深さ方向面での溝幅の30%~50%である、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の幅方向面のそれぞれの幅は、1~2mmである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部の平面視において、前記溝は、前記踏面上でジグザグ状に延びる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記溝は、タイヤ周方向に延びる周方向溝である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に横溝が設けられた空気入りタイヤが記載されている。前記横溝の溝壁部は、トレッド部の踏面に沿った1~3個の横面を含んだ階段状部を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、泥に対するせん断力を高めて、マッド性能を向上することが求められている。例えば、溝の溝容積を大きくすることで、前記せん断力を大きくすることが知られている。しかしながら、単に、溝容積を大きくしただけでは、ノイズ性能が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ノイズ性能を維持しつつ、マッド性能を向上させることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、少なくとも1本の溝が設けられており、前記溝は、前記トレッド部の踏面からタイヤ半径方向の内側に延びる一対の溝壁を含み、前記一対の溝壁の少なくとも一方は、溝深さ方向に延びる複数の深さ方向面と、溝幅方向にのびる複数の幅方向面とを交互に含む階段状部を含み、前記複数の深さ方向面は、前記踏面から延びる第1深さ方向面と、そのタイヤ半径方向内側に続く第2深さ方向面とを含み、前記第2深さ方向面での溝幅は、前記第1深さ方向面での溝幅よりも小さく、前記第2深さ方向面の溝深さ方向の長さが前記第1深さ方向面の溝深さ方向の長さよりも小さい、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用することで、ノイズ性能を維持しつつ、マッド性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すトレッド部の溝の横断面図である。
【
図4】(A)は、角度θが90度を超える階段状部を有する溝の横断面図、(B)は、(A)の溝が接地したときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤ1を正規リム(図示省略)に装着して正規内圧を充填し、かつ、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。
【0011】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2に設けられた溝3の横断面図である。
図2は、溝3の斜視断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、例えば、自動二輪車用又は重荷重用の空気入りタイヤ、さらに、内部に圧縮空気が充填されない非空気式タイヤに用いられてもよい。
図1は、より詳しくは、溝3の溝中心線3cと直交する横断面図である。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、トレッド部2には、少なくとも1本の溝3が設けられている。溝3は、トレッド部2の踏面2aからタイヤ半径方向の内側に延びる一対の溝壁4、4を含んでいる。踏面2aは、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときに前記平面と接地する領域である。また、前記平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置がトレッド端Te(
図5に示す)である。
【0015】
一対の溝壁4、4の少なくとも一方は、溝深さ方向に延びる複数の深さ方向面8と、溝幅方向にのびる複数の幅方向面9とを交互に含む階段状部6を含んでいる。このような階段状部6は、泥濘地を走行する際、泥を強く押し固め、かつ、これをせん断することで、せん断力を高める。溝3は、踏面2a上を延びる一対の溝縁3eを含んでいる。溝縁3eは、踏面2aと後述する第1深さ方向面8aとが交差するエッジである。前記「溝幅方向」は、本明細書では、溝縁3e、3e間の最短距離を形成する直線の方向である。また、「溝中心線3c」は、前記最短距離の中点を繋いで形成される線分である。
【0016】
複数の深さ方向面8は、踏面2aから延びる第1深さ方向面8aと、そのタイヤ半径方向内側に続く第2深さ方向面8bとを含んでいる。そして、第2深さ方向面8bでの溝幅Wbは、第1深さ方向面8aでの溝幅Waよりも小さい。これにより、溝3の溝容積が過度に大きくなることが抑えられ、ノイズ性能の悪化が抑制される。「深さ方向面8での溝幅」は、本明細書では、各深さ方向面8のタイヤ半径方向の各外端8eでの溝幅である。
【0017】
第2深さ方向面8bの溝深さ方向の長さHbは、第1深さ方向面8aの溝深さ方向の長さHaよりも小さい。これにより、せん断力への寄与が大きい踏面2a側の第1深さ方向面8aでの溝容積が大きくなるので、高いせん断力を発揮することができる。したがって、本発明のタイヤ1は、ノイズ性能を維持しつつ、マッド性能を向上することができる。特に限定されるものではないが、第1深さ方向面8aの長さHaと第2深さ方向面8bの長さHbとの比(Ha/Hb)は、1.3以上が望ましく、1.4以上がさらに望ましく、1.7以下が望ましく、1.6以下がさらに望ましい。なお、第2深さ方向面8bの長さHbと、後述する第3深さ方向面8cの溝深さ方向の長さHcとの比(Hb/Hc)は、比(Ha/Hb)と同じである。
【0018】
本実施形態では、一対の溝壁4、4の両方が階段状部6を含んでいる。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。なお、階段状部6は、一対の溝壁4、4のいずれか一方に設けられた場合でも、せん断力を高める効果を発揮する(図示省略)。
【0019】
幅方向面9は、第1深さ方向面8aと第2深さ方向面8bとを繋ぐ第1幅方向面9aと、第2深さ方向面8bと第3深さ方向面8cとを繋ぐ第2幅方向面9bとを含んでいる。各幅方向面9は、本実施形態では、トレッド接線Taに沿って延びている。
【0020】
図3は、溝3の溝中心線3cと直交する横断面図である。
図3に示されるように、複数の深さ方向面8は、トレッド接線Taに対して85~95度の角度θを有するのが望ましい。角度θが85度以下の場合、接地時に溝3内から泥が吐き出され易くなり、泥を強固に押し固めることができず、せん断力を高められないおそれがある。角度θが95度を超える場合、深さ方向面8の外端8e部分の剛性が小さくなり、その部分に損傷が生じてマッド性能が低下するおそれがある。
図4(A)は、角度θが90度以上の溝3の横断面図である。
図4(B)は、
図4(A)の溝3が接地したときの状態を示す図である。
図4に示されるように、溝3がタイヤ周方向に対して傾斜している場合、溝3が接地すると、回転方向Rの先着側の溝壁4fが後着側の溝壁4rに近づくように変形する。とりわけ、角度θが90度を超えると、深さ方向面8が泥をタイヤ半径方向内側に押圧するので、より多くの泥が捉えられかつ強固に押し固められる。これにより、大きなせん断力が得られる。このような観点より、角度θは、90度を超え、かつ、95度以下がさらに望ましい。トレッド接線Taは、本明細書では、両深さ方向面8の外端8e、8eを結ぶ直線である。
【0021】
図3に示されるように、複数の深さ方向面8は、本実施形態では、第2深さ方向面8bのタイヤ半径方向内側に続く第3深さ方向面8cをさらに含んでいる。そして、第3深さ方向面8cでの溝幅Wcは、第2深さ方向面8bでの溝幅Wbよりも小さい。これにより、溝3の溝容積が過度に大きくなることがさらに抑えられる。
【0022】
第3深さ方向面8cの溝深さ方向の長さHcは、第2深さ方向面8bの溝深さ方向の長さHbよりも小さく形成されている。これにより、せん断力への寄与が相対的に大きい踏面2a側の第2深さ方向面8bでの溝容積を大きくすることができる。
【0023】
複数の深さ方向面8は、タイヤ半径方向の最も内側に位置する最内側深さ方向面8nを含んでいる。そして、最内側深さ方向面8nでの溝幅Wnは、複数の深さ方向面8での各溝幅Wの中で最も小さく形成されている。これにより、溝3の溝容積が過度に大きくなることを有効に抑えることができる。本実施形態の最内側深さ方向面8nは、第3深さ方向面8cである。なお、階段状部6は、例えば、溝深さ方向に2~3つの深さ方向面8を有するのが望ましい。
【0024】
最内側深さ方向面8nでの溝幅Wnは、第1深さ方向面8aでの溝幅Wa(
図1に示す)の30%以上が望ましく、35%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。溝幅Wnが溝幅Waの30%以上であるので、最内側深さ方向面8nでの溝容積が確保されて、せん断力が高く維持される。溝幅Wnが溝幅Waの50%以下であるので、溝3全体の溝容積の増加が抑制されてノイズ性能が維持される。
【0025】
複数の幅方向面9のそれぞれの幅Lは、1~2mmであるのが望ましい。幅Lが1mm以上であるので、泥を押し固める効果が発揮される。幅Lが2mm以下であるので、各深さ方向面8での溝幅Wの低下が抑えられて、溝容積を確保することができる。幅Lは、溝幅方向の長さである。
【0026】
溝3は、本実施形態では、最内側深さ方向面8nに繋がって溝3の溝深さDを確定する溝底3sを含んでいる。また、階段状部6は、深さ方向面8と幅方向面9とが入隅状で接続される複数の外側コーナ部11と、最内側深さ方向面8nと溝底3sとが入隅状で接続される内側コーナ部12とを含んでいる。内側コーナ部12は、本実施形態では、タイヤ半径方向の内側に向かって凸の円弧状に形成されている。外側コーナ部11は、例えば、内側コーナ部12の曲率半径r2よりも小さな曲率半径r1の円弧状、又は、深さ方向面8と幅方向面9とが突き合わされた突合せ状に形成されている。内側コーナ部12は、接地時に、大きな荷重が作用するところである。このような内側コーナ部12を相対的に大きな曲率半径r2の円弧状とすることで、溝3の損傷を抑えることができるので、マッド性能を長く維持することができる。外側コーナ部11は、泥に対するせん断力を高めることができる。
【0027】
このような階段状部6が設けられる溝3の溝幅Waは、例えば、8mm以上が望ましく、9mm以上がさらに望ましく、13mm以下が望ましく、11mm以下がさらに望ましい。また、階段状部6が設けられる溝3の溝深さDは、例えば、8mm以上が望ましく、10mm以上がさらに望ましく、15mm以下が望ましく、13mm以下がさらに望ましい。
【0028】
図5は、本実施形態のトレッド部2の平面図である。
図2に示されるように、トレッド部2は、複数本の溝3が設けられている。複数本の溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向に延びる周方向溝3Aと、タイヤ軸方向に延びる横溝3Bとを含んでいる。
【0029】
周方向溝3Aは、例えば、タイヤ周方向に連続して延びており、タイヤ赤道Cの両側に配される一対のクラウン周方向溝13と、クラウン周方向溝13とトレッド端Teとの間に配される一対のショルダー周方向溝14とを含んでいる。クラウン周方向溝13及びショルダー周方向溝14は、それぞれ、タイヤ周方向に延びる第1部分15と、第1部分15よりもタイヤ軸方向内側に位置してタイヤ周方向に延びる第2部分16と、第1部分15と第2部分16とを繋ぐ第3部分17とを含んでいる。第3部分17は、例えば、タイヤ周方向に対して傾斜している。クラウン周方向溝13は、第1部分15のタイヤ周方向の長さL1が第2部分16のタイヤ周方向の長さL2よりも大きく形成されている。ショルダー周方向溝14は、第1部分15のタイヤ周方向の長さL3と第2部分16のタイヤ周方向の長さL4とが同じとされている。周方向溝3Aは、このような態様に限定されるものではない。
【0030】
横溝3Bは、ショルダー周方向溝14とトレッド端Teとを繋ぐショルダー横溝20を含んでいる。ショルダー横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に沿って直線状に延びている。ショルダー横溝20は、本実施形態では、周方向溝3Aの溝幅WAよりも大きな溝幅WBを有している。ショルダー横溝20の溝幅WBは、周方向溝3Aの溝幅WAの1.5~2.5倍とされている。ショルダー横溝20のタイヤ軸方向の長さLAは、トレッド幅TWの15%~25%とされている。横溝3Bは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ショルダー周方向溝14とクラウン周方向溝13とを繋ぐミドル横溝を含んでもよいし、クラウン周方向溝13、13同士を繋ぐクラウン横溝を含んでもよい(図示省略)。
【0031】
一般に、マッド性能を高めるためには、トレッド端Teに隣接部分のトラクションを高めるのが望ましい。このため、ショルダー横溝20による泥に対するせん断力を大きくすることを目的として、階段状部6は、ショルダー横溝20の一対の溝壁21、21に設けるのが望ましい。なお、階段状部6は、例えば、ショルダー横溝20のみならず、図示しないミドル横溝又はクラウン横溝に設けられてもよい。これにより、マッド性能がさらに高められる。また、階段状部6は、例えば、ショルダー横溝20に設けられず、ミドル横溝又はクラウン横溝に設けられてもよい。このような態様でも、マッド性能を向上することができる。さらに、階段状部6は、例えば、クラウン周方向溝13やショルダー周方向溝14に設けられてもよい。また、階段状部6は、クラウン周方向溝13又はショルダー周方向溝14の第3部分17のみに設けられてもよいし、第1部分15又は第2部分16のみに設けられてもよい。
【0032】
図6は、他の実施形態の溝3の斜視図である。
図6に示されるように、この実施形態の溝3は、トレッド部2の平面視において、踏面2a上でジグザグ状に延びている。このような態様では、泥を掴む効果が高く、泥に対するせん断力を大きくできるとともに、ノイズ性能を高めることができる。
【0033】
この実施形態では、溝3の溝縁3eのジグザグのピッチp1と、深さ方向面8のジグザグのピッチp2及び幅方向面9のジグザグのピッチp3とが同じで形成されている。
【0034】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0035】
図1の階段状部及び
図5の基本パターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤのマッド性能及びノイズ性能についてテストがされた。各テストタイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:265/65R18
内圧(kPa):230(全輪)
階段状部が設けられた溝:ショルダー横溝
【0036】
<マッド性能>
各テストタイヤが、下記の車両の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、泥濘地のテストコースでこの車両を走行させた。テストドライバーは、このときのハンドル応答性、トラクション及びグリップ等に関する走行特性を官能により評価した。結果は、比較例を100とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。
車両:排気量2500ccの4輪駆動の乗用車(SUV)
【0037】
<ノイズ性能>
上記車両を用い、テストドライバーがドライアスファルト路面を時速70km/hで走行した。テストドライバーは、そのときの騒音を官能により評価した。結果は、比較例を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど騒音性能に優れている。
テストの結果が表1に示される。
【0038】
【0039】
テストの結果、実施例のタイヤは、ノイズ性能が維持されつつマッド性能が向上していることが確認できた。
【0040】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0041】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、少なくとも1本の溝が設けられており、
前記溝は、前記トレッド部の踏面からタイヤ半径方向の内側に延びる一対の溝壁を含み、
前記一対の溝壁の少なくとも一方は、溝深さ方向に延びる複数の深さ方向面と、溝幅方向にのびる複数の幅方向面とを交互に含む階段状部を含み、
前記複数の深さ方向面は、前記踏面から延びる第1深さ方向面と、そのタイヤ半径方向内側に続く第2深さ方向面とを含み、
前記第2深さ方向面での溝幅は、前記第1深さ方向面での溝幅よりも小さく、
前記第2深さ方向面の溝深さ方向の長さが前記第1深さ方向面の溝深さ方向の長さよりも小さい、
タイヤ。
[本発明2]
前記一対の溝壁の両方は、前記階段状部を含む、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記溝の溝中心線と直交する横断面において、前記複数の深さ方向面は、トレッド接線に対して85~95度の角度を有する、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記複数の深さ方向面は、前記第2深さ方向面のタイヤ半径方向内側に続く第3深さ方向面を含み、
前記第3深さ方向面での溝幅は、前記第2深さ方向面での溝幅よりも小さく、
前記第3深さ方向面の溝深さ方向の長さが前記第2深さ方向面の溝深さ方向の長さよりも小さい、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記複数の深さ方向面は、タイヤ半径方向の最も内側に位置する最内側深さ方向面を含み、
前記最内側深さ方向面での溝幅は、前記複数の深さ方向面での各溝幅の中で最も小さく、
前記最内側深さ方向面での溝幅は、前記第1深さ方向面での溝幅の30%~50%である、本発明4に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記複数の幅方向面のそれぞれの幅は、1~2mmである、本発明1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明7]
前記トレッド部の平面視において、前記溝は、前記踏面上でジグザグ状に延びる、本発明1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明8]
前記溝は、タイヤ軸方向に延びる横溝である、本発明1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明9]
前記溝は、タイヤ周方向に延びる周方向溝である、本発明1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。