(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115972
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】スイッチング素子
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240820BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 658E
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021914
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 巨裕
(57)【要約】
【課題】 電界緩和領域を有するスイッチング素子のオン抵抗を低減する。
【解決手段】 スイッチング素子であって、n型のソース領域と、p型のボディ領域と、各々が対応する前記トレンチの底面でゲート絶縁膜に接するp型の複数の電界緩和領域と、前記各電界緩和領域を前記ボディ領域に接続するp型の接続領域と、前記トレンチ間領域から前記各電界緩和領域の間に位置する間隔領域を通って前記各電界緩和領域よりも下側の領域まで分布しているn型のドリフト領域、を有する。前記間隔領域内の前記ドリフト領域が、第1電界緩和領域の側面に接する第1高濃度n型領域と、第2電界緩和領域の側面に接する第2高濃度n型領域と、前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域の間に配置されているとともに前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する低濃度n型領域、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子であって、
表面に複数のトレンチが設けられた半導体基板と、
前記各トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、
前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されたゲート電極、
を有し、
前記半導体基板が、
前記各トレンチの間に位置するトレンチ間領域内に配置されており、前記ゲート絶縁膜に接するn型のソース領域と、
前記トレンチ間領域内に配置されており、前記ソース領域の下側に配置されており、前記ゲート絶縁膜に接するp型のボディ領域と、
各々が対応する前記トレンチの底面で前記ゲート絶縁膜に接するp型の複数の電界緩和領域と、
前記各電界緩和領域を前記ボディ領域に接続するp型の接続領域と、
前記ボディ領域の下側に配置されており、前記トレンチ間領域から前記各電界緩和領域の間に位置する間隔領域を通って前記各電界緩和領域よりも下側の領域まで分布しており、前記各電界緩和領域の底面に接しており、前記トレンチ間領域内で前記ゲート絶縁膜に接しており、前記間隔領域内で前記間隔領域の両側に位置する2つの前記電界緩和領域のうちの一方である第1電界緩和領域の側面に接しており、前記間隔領域内で前記間隔領域の両側に位置する2つの前記電界緩和領域のうちの他方である第2電界緩和領域の側面に接しているn型のドリフト領域、
を有し、
前記間隔領域内の前記ドリフト領域が、
前記第1電界緩和領域の側面に接する第1高濃度n型領域と、
前記第2電界緩和領域の側面に接する第2高濃度n型領域と、
前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域の間に配置されているとともに前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する低濃度n型領域、
を有する、
スイッチング素子。
【請求項2】
前記ドリフト領域の下側に配置されており、前記ドリフト領域よりも高いn型不純物濃度を有しているn型のドレイン領域をさらに有し、
前記各電界緩和領域が、対応する前記トレンチの前記底面から前記ドレイン領域まで伸びている、
請求項1に記載のスイッチング素子。
【請求項3】
前記第1高濃度n型領域が、前記各トレンチの前記底面を含む深さ範囲に設けられており、
前記第2高濃度n型領域が、前記各トレンチの前記底面を含む深さ範囲に設けられており、
前記ドリフト領域が、前記低濃度n型領域から前記第1高濃度n型領域及び前記第2高濃度n型領域よりも下側まで伸びる下部低濃度n型領域を有しており、
前記下部低濃度n型領域が、前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有し、
前記第1高濃度n型領域よりも下側の前記第1電界緩和領域の前記側面に、前記下部低濃度n型領域が接しており、
前記第2高濃度n型領域よりも下側の前記第2電界緩和領域の前記側面に、前記下部低濃度n型領域が接している、
請求項2に記載のスイッチング素子。
【請求項4】
前記第1高濃度n型領域及び前記第2高濃度n型領域よりも下側の位置において、幅方向に沿って前記電界緩和領域のp型不純物濃度を積分した値が、幅方向に沿って前記下部低濃度n型領域のn型不純物濃度を積分した値の-10%以上かつ+10%以下の値である、請求項3に記載のスイッチング素子。
【請求項5】
前記低濃度n型領域が、第1低濃度n型領域であり、
前記間隔領域が、前記第1高濃度n型領域から前記第2高濃度n型領域まで伸びているとともに前記第1低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有する第3高濃度n型領域を有しており、
前記第1低濃度n型領域が、前記第3高濃度n型領域に対して下側から接しており、
前記ドリフト領域が、前記トレンチ間領域内に配置されており、前記第3高濃度n型領域に対して上側から接しており、前記第1高濃度n型領域、前記第2高濃度n型領域及び前記第3高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する第2低濃度n型領域を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のスイッチング素子。
【請求項6】
前記ドリフト領域が、
前記第1高濃度n型領域、前記第2高濃度n型領域及び前記第3高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する第3低濃度n型領域と、
前記第1低濃度n型領域、前記第2低濃度n型領域及び前記第3低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有する第4高濃度n型領域と、
前記第1低濃度n型領域、前記第2低濃度n型領域及び前記第3低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有する第5高濃度n型領域、
を有し、
前記第4高濃度n型領域が、前記第1電界緩和領域の底面に接しており、
前記第5高濃度n型領域が、前記第2電界緩和領域の底面に接しており、
前記第3低濃度n型領域が、前記第1低濃度n型領域、前記第4高濃度n型領域及び前記第5高濃度n型領域の下側に配置されている、
請求項5に記載のスイッチング素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子に関する。
【0002】
特許文献1に開示のスイッチング素子は、トレンチ型のゲート電極を有している。このスイッチング素子では、ドリフト領域の内部にp型の複数の電界緩和領域が設けられている。各電界緩和領域は、対応するトレンチの底面でゲート絶縁膜に接している。電界緩和領域によって、トレンチの底面近傍における電界集中が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスイッチング素子がオンすると、トレンチ近傍にチャネルが形成され、チャネルを通って電子が流れる。チャネルを通過した電子は、電界緩和領域の間の間隔領域を通過する。すなわち、間隔領域は、電流経路の一部を構成している。スイッチング素子のオン状態においては、各電界緩和領域からドリフト領域に微小幅の空乏層が広がっている。電子は空乏層を避けて流れるので、空乏層によって間隔領域内の電流経路が狭められる。このため、特許文献1のスイッチング素子のオン抵抗が高い。特に、スイッチング素子を微細化すると、間隔領域の幅がより狭くなり、オン抵抗が高くなる問題がより顕著となる。本明細書では、電界緩和領域を有するスイッチング素子のオン抵抗を低減する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するスイッチング素子は、表面に複数のトレンチが設けられた半導体基板と、前記各トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、前記各トレンチ内に配置されているとともに前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されたゲート電極、を有する。前記半導体基板が、ソース領域、ボディ領域、複数の電界緩和領域、接続領域及びドリフト領域を有する。前記ソース領域は、前記各トレンチの間に位置するトレンチ間領域内に配置されており、前記ゲート絶縁膜に接するn型領域である。前記ボディ領域は、前記トレンチ間領域内に配置されており、前記ソース領域の下側に配置されており、前記ゲート絶縁膜に接するp型領域である。複数の前記電界緩和領域は、各々が対応する前記トレンチの底面で前記ゲート絶縁膜に接するp型領域である。前記接続領域は、前記各電界緩和領域を前記ボディ領域に接続するp型領域である。前記ドリフト領域は、前記ボディ領域の下側に配置されており、前記トレンチ間領域から前記各電界緩和領域の間に位置する間隔領域を通って前記各電界緩和領域よりも下側の領域まで分布しており、前記各電界緩和領域の底面に接しており、前記トレンチ間領域内で前記ゲート絶縁膜に接しており、前記間隔領域内で前記間隔領域の両側に位置する2つの前記電界緩和領域のうちの一方である第1電界緩和領域の側面に接しており、前記間隔領域内で前記間隔領域の両側に位置する2つの前記電界緩和領域のうちの他方である第2電界緩和領域の側面に接しているn型領域である。前記間隔領域内の前記ドリフト領域が、前記第1電界緩和領域の側面に接する第1高濃度n型領域と、前記第2電界緩和領域の側面に接する第2高濃度n型領域と、前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域の間に配置されているとともに前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する低濃度n型領域、を有する。
【0006】
このスイッチング素子では、間隔領域内のドリフト領域が、各電界緩和領域(すなわち、第1電界緩和領域と第2電界緩和領域)の側面に接する位置にn型不純物濃度が高い高濃度n型領域(すなわち、第1高濃度n型領域と第2高濃度n型領域)を有している。第1高濃度n型領域と第2高濃度n型領域の間に低濃度n型領域が配置されている。スイッチング素子のオフ状態では、ドリフト領域と各電界間緩和領域の間に印加される電圧が高いので、空乏層が高濃度n型領域を超えて低濃度n型領域まで伸展し、間隔領域全体が空乏化される。したがって、このスイッチング素子は、高い耐圧を有している。また、スイッチング素子のオン状態では、ドリフト領域と各電界間緩和領域の間に印加される電圧が低いので、各高濃度n型領域によって各電界緩和領域から間隔領域への空乏層の伸展が抑制される。したがって、間隔領域に広い電流経路を確保することができる。このため、このスイッチング素子のオン抵抗は低い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1のスイッチング素子のトレンチに交差する方向における断面図。
【
図2】実施例1のスイッチング素子のトレンチに沿う方向における断面図。
【
図3】実施例1のスイッチング素子の間隔領域とその周辺の拡大図。
【
図4】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図5】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図6】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図7】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図8】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図9】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【
図10】実施例1のスイッチング素子の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子は、前記ドリフト領域の下側に配置されており、前記ドリフト領域よりも高いn型不純物濃度を有しているn型のドレイン領域をさらに有していてもよい。前記各電界緩和領域が、対応する前記トレンチの前記底面から前記ドレイン領域まで伸びていてもよい。
【0009】
この構成によれば、スイッチング素子の耐圧を向上させることができる。
【0010】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記第1高濃度n型領域が、前記各トレンチの前記底面を含む深さ範囲に設けられてもよい。前記第2高濃度n型領域が、前記各トレンチの前記底面を含む深さ範囲に設けられていてもよい。前記ドリフト領域が、前記低濃度n型領域から前記第1高濃度n型領域及び前記第2高濃度n型領域よりも下側まで伸びる下部低濃度n型領域を有していてもよい。前記下部低濃度n型領域が、前記第1高濃度n型領域と前記第2高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有していてもよい。前記第1高濃度n型領域よりも下側の前記第1電界緩和領域の前記側面に、前記下部低濃度n型領域が接していてもよい。前記第2高濃度n型領域よりも下側の前記第2電界緩和領域の前記側面に、前記下部低濃度n型領域が接していてもよい。
【0011】
この構成によれば、スイッチング素子の耐圧をより効果的に向上させることができる。
【0012】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記第1高濃度n型領域及び前記第2高濃度n型領域よりも下側の位置において、幅方向に沿って前記電界緩和領域のp型不純物濃度を積分した値が、幅方向に沿って前記下部低濃度n型領域のn型不純物濃度を積分した値の-10%以上かつ+10%以下の値であってもよい。
【0013】
この構成によれば、スイッチング素子の耐圧をより効果的に向上させることができる。
【0014】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記低濃度n型領域が、第1低濃度n型領域であってもよい。前記間隔領域が、前記第1高濃度n型領域から前記第2高濃度n型領域まで伸びているとともに前記第1低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有する第3高濃度n型領域を有していてもよい。前記第1低濃度n型領域が、前記第3高濃度n型領域に対して下側から接していてもよい。前記ドリフト領域が、前記トレンチ間領域内に配置されており、前記第3高濃度n型領域に対して上側から接しており、前記第1高濃度n型領域、前記第2高濃度n型領域及び前記第3高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有する第2低濃度n型領域を有していてもよい。
【0015】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記ドリフト領域が、第3低濃度n型領域と第4高濃度n型領域と第5高濃度n型領域を有していてもよい。前記第3低濃度n型領域は、前記第1高濃度n型領域、前記第2高濃度n型領域及び前記第3高濃度n型領域よりも低いn型不純物濃度を有していてもよい。前記第4高濃度n型領域は、前記第1低濃度n型領域、前記第2低濃度n型領域及び前記第3低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有していてもよい。前記第5高濃度n型領域は、前記第1低濃度n型領域、前記第2低濃度n型領域及び前記第3低濃度n型領域よりも高いn型不純物濃度を有していてもよい。前記第4高濃度n型領域が、前記第1電界緩和領域の底面に接していてもよい。前記第5高濃度n型領域が、前記第2電界緩和領域の底面に接していてもよい。前記第3低濃度n型領域が、前記第1低濃度n型領域、前記第4高濃度n型領域及び前記第5高濃度n型領域の下側に配置されていてもよい。
【実施例0016】
図1に示す実施例1のスイッチング素子10は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)である。スイッチング素子10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiC(すなわち、炭化ケイ素)により構成されている。なお、半導体基板12が、Si、GaN等の他の半導体材料により構成されていてもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向に対して直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ14が設けられている。上面12aにおいて、各トレンチ14は、y方向に直線状に伸びている。複数のトレンチ14は、x方向に間隔を空けて配置されている。なお、以下では、一対のトレンチ14によって挟まれた各半導体領域を、トレンチ間領域という。
【0017】
各トレンチ14の内面は、ゲート絶縁膜16によって覆われている。各トレンチ14内に、ゲート電極18が配置されている。ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極18の上面は、層間絶縁膜20によって覆われている。半導体基板12の上部に、ソース電極22が配置されている。ソース電極22は、層間絶縁膜20と上面12aを覆っている。層間絶縁膜20によって、ソース電極22はゲート電極18から絶縁されている。半導体基板12の下部に、ドレイン電極24が配置されている。ドレイン電極24は、半導体基板12の下面12bを覆っている。
【0018】
半導体基板12は、複数のソース領域30、複数のコンタクト領域32、ボディ領域34、複数の電界緩和領域36、ドリフト領域40、及び、ドレイン領域48を有している。
【0019】
複数のソース領域30は、n型不純物濃度が高いn型領域である。各ソース領域30は、対応するトレンチ間領域内に配置されている。各トレンチ間領域内におけるソース領域30の配置は任意であるが、本実施例では各トレンチ間領域に2つのソース領域30が設けられている。各ソース領域30は、ソース電極22にオーミック接触している。各ソース領域30は、対応するトレンチ14の側面の上端部において、ゲート絶縁膜16に接している。
【0020】
複数のコンタクト領域32は、p型不純物濃度が高いp型領域である。各コンタクト領域32は、対応するトレンチ間領域内に配置されている。各トレンチ間領域内におけるコンタクト領域32の配置は任意であるが、本実施例では各トレンチ間領域に1つのコンタクト領域32が設けられている。各コンタクト領域32は、ソース領域30の隣に配置されている。各コンタクト領域32は、ソース電極22にオーミック接触している。
【0021】
ボディ領域34は、コンタクト領域32よりも低いp型不純物濃度を有するp型領域である。ボディ領域34は、半導体基板12の横方向に広く分布している。ボディ領域34は、複数のトレンチ間領域に跨って分布している。ボディ領域34は、ソース領域30とコンタクト領域32の下側に配置されている。ボディ領域34は、ソース領域30とコンタクト領域32に対して下側から接している。ボディ領域34は、各ソース領域30の下側のトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。
【0022】
複数の電界緩和領域36は、p型領域である。各電界緩和領域36は、ボディ領域34よりも高いとともにコンタクト領域32よりも低いp型不純物濃度を有している。各電界緩和領域36は、対応するトレンチ14の底面においてゲート絶縁膜16に接している。
図2は、トレンチ14を含む位置においてy方向とz方向に沿ってスイッチング素子10を切断した断面を示している。
図2に示すように、各電界緩和領域36は、トレンチ14の底面に沿ってy方向に直線状に伸びている。トレンチ14の長手方向の端部には、トレンチ14の側面に沿ってz方向に伸びるp型の接続領域38が設けられている。各トレンチ14に対して少なくとも1つの接続領域38が設けられている。接続領域38は、電界緩和領域36とボディ領域34を接続している。したがって、電界緩和領域36は、接続領域38、ボディ領域34及びコンタクト領域32を介してソース電極22に電気的に接続されている。このため、各電界緩和領域36の電位は、ソース電極22の電位とほぼ等しい。なお、他の実施例では、接続領域38が他の位置に設けられていてもよい。
図1に示すように、各電界緩和領域36の幅(すなわち、x方向における寸法)は、その上部のトレンチ14の幅よりも広い。このため、各電界緩和領域36は、トレンチ14の底面近傍の側面でもゲート絶縁膜16に接している。
【0023】
ドリフト領域40は、ソース領域30よりも低いn型不純物濃度を有するn型領域である。各図では、ドリフト領域40をグレーハッチングにより示している。ドリフト領域40は、ボディ領域34の下側に配置されている。ドリフト領域40は、各トレンチ間領域内から各電界緩和領域36の下側の領域まで分布している。各トレンチ間領域内では、ドリフト領域40は、ボディ領域34に対して下側から接している。各トレンチ間領域内では、ドリフト領域40は、ボディ領域34の下側のトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。ドリフト領域40は、トレンチ間領域から一対の電界緩和領域36の間の領域(以下、間隔領域という)を通って各電界緩和領域36よりも下側の領域まで伸びている。間隔領域内のドリフト領域40は、その両側に位置する2つの電界緩和領域36の側面に接している。各電界緩和領域36よりも下側の領域では、ドリフト領域40は、半導体基板12の横方向に広く分布している。すなわち、各電界緩和領域36よりも下側の領域では、ドリフト領域40は、複数のトレンチ14の下部に跨って分布している。ドリフト領域40は、各電界緩和領域36の底面に接している。
【0024】
ドレイン領域48は、ドリフト領域40よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドレイン領域48は、ドリフト領域40の下側に配置されている。ドレイン領域48は、ドリフト領域40に対して下側から接している。ドレイン領域48は、ドレイン電極24にオーミック接触している。
【0025】
図3は、1つの間隔領域とその周辺の拡大断面図である。
図3に示すように、ドリフト領域40は、第1低濃度n型領域41、第2低濃度n型領域42、第3低濃度n型領域43及び高濃度n型領域44を有している。高濃度n型領域44は、第1低濃度n型領域41、第2低濃度n型領域42及び第3低濃度n型領域43よりも高いn型不純物濃度を有している。高濃度n型領域44のn型不純物濃度は、ソース領域30及びドレイン領域48のn型不純物濃度よりも低い。
【0026】
第2低濃度n型領域42は、トレンチ間領域内に配置されている。第2低濃度n型領域42は、第1低濃度n型領域41及び第3低濃度n型領域43よりも高いn型不純物濃度を有している。第2低濃度n型領域42は、ボディ領域34に対して下側から接している。第2低濃度n型領域42は、ボディ領域34の下側の各トレンチ14の側面でゲート絶縁膜16に接している。第2低濃度n型領域42は、各電界緩和領域36の上面に接している。
【0027】
高濃度n型領域44は、厚みが薄い層状の領域であり、第2低濃度n型領域42の底面、各電界緩和領域36の側面、及び、各電界緩和領域36の底面に沿って伸びている。高濃度n型領域44は、第1高濃度n型領域44a、第2高濃度n型領域44b、第3高濃度n型領域44c、第4高濃度n型領域44d及び第5高濃度n型領域44eを有している。
【0028】
第1高濃度n型領域44a、第2高濃度n型領域44b及び第3高濃度n型領域44cは、間隔領域内に配置されている。なお、以下では、間隔領域の両側に配置されている2つの電界緩和領域36の一方を第1電界緩和領域36aといい、間隔領域の両側に配置されている2つの電界緩和領域36の他方を第2電界緩和領域36bという。第1高濃度n型領域44aは、第1電界緩和領域36aの側面を覆っている。第2高濃度n型領域44bは、第2電界緩和領域36bの側面を覆っている。第3高濃度n型領域44cは、第2低濃度n型領域42の底面を覆っている。言い換えると、第2低濃度n型領域42は、第3高濃度n型領域44cに対して上側から接している。第3高濃度n型領域44cの一端は第1高濃度n型領域44aの上端に接続されており、第3高濃度n型領域44cの他端は第2高濃度n型領域44bの上端に接続されている。すなわち、第3高濃度n型領域44cは、第1高濃度n型領域44aから第2高濃度n型領域44bまで伸びている。
【0029】
第4高濃度n型領域44d及び第5高濃度n型領域44eは、各電界緩和領域36の下側に配置されている。第4高濃度n型領域44dは、第1電界緩和領域36aの底面を覆っている。第4高濃度n型領域44dの一端は、第1高濃度n型領域44aの下端に接続されている。第4高濃度n型領域44dの他端は、隣の間隔領域(すなわち、
図3の左端に位置する間隔領域)内に設けられた第2高濃度n型領域44bの下端に接続されている。第5高濃度n型領域44eは、第2電界緩和領域36bの底面を覆っている。第5高濃度n型領域44eの一端は、第2高濃度n型領域44bの下端に接続されている。第5高濃度n型領域44eの他端は、隣の間隔領域(すなわち、
図3の右端に位置する間隔領域)内に設けられた第1高濃度n型領域44aの下端に接続されている。
【0030】
図3に示す構造がx方向に繰り返し設けられていることで、高濃度n型領域44は屈曲しながらx方向に伸びている。
【0031】
第1低濃度n型領域41は、間隔領域内に配置されている。第1低濃度n型領域41は、第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bの間に配置されている。第1低濃度n型領域41は、第1高濃度n型領域44aの側面と第2高濃度n型領域44bの側面を覆っている。第1低濃度n型領域41は、第3高濃度n型領域44cの底面を覆っている。すなわち、第1低濃度n型領域41は、第3高濃度n型領域44cに対して下側から接している。
【0032】
第3低濃度n型領域43は、間隔領域よりも下側に配置されている。第3低濃度n型領域43は、第1低濃度n型領域41、第4高濃度n型領域44d及び第5高濃度n型領域44eの下側に配置されている。第3低濃度n型領域43は、複数の間隔領域と複数の電界緩和領域36の下部に跨って分布している。第3低濃度n型領域43は、各間隔領域内に設けられた各第1低濃度n型領域41と繋がっている。また、第3低濃度n型領域43は、各第4高濃度n型領域44dの底面及び各第5高濃度n型領域44eの底面を覆っている。
図1に示すように、第3低濃度n型領域43は、ドレイン領域48に対して上側から接している。
【0033】
次に、スイッチング素子10の動作について説明する。スイッチング素子10は、モータ等の負荷に対して直列に接続されて使用される。ドレイン電極24にはソース電極22よりも高い電位が印加される。ゲート電極18の電位は制御回路によって制御される。ゲート電極18にゲート閾値よりも高い電位が印加されると、ボディ領域34内のゲート絶縁膜16近傍の領域にチャネルが形成される。チャネルによってソース領域30と第2低濃度n型領域42が接続される。すると、ソース領域30からチャネル、第2低濃度n型領域42、第3高濃度n型領域44c、第1低濃度n型領域41及び第3低濃度n型領域43を介してドレイン領域48へ電子が流れる。すなわち、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極18の電位をゲート閾値以下の電位まで引き下げると、チャネルが消失し、電子の流れが停止する。すなわち、スイッチング素子10がオフする。
【0034】
上述したように、各電界緩和領域36の電位はソース電極22の電位と略等しい。また、ドリフト領域40はドレイン領域48を介してドレイン電極24に接続されているので、ドリフト領域40の電位はドレイン電極24の電位と略等しい。したがって、電界緩和領域36とドリフト領域40との界面のpn接合には、ドレイン電極24とソース電極22の間に印加されている電圧(以下、ドレイン-ソース間電圧という)とほぼ等しい電圧が印加される。pn接合に電圧が印加されることで、各電界緩和領域36からドリフト領域40に空乏層が伸びる。ドリフト領域40のうちの各電界緩和領域36の側面と底面に接する位置には、高濃度n型領域44が設けられている。高濃度n型領域44によって空乏層の伸展が抑制される。スイッチング素子10のオン状態においては、ドレイン-ソース間電圧は低電圧(例えば、2V程度)であるので、空乏層は高濃度n型領域44を超えて伸びることができない。すなわち、スイッチング素子10のオン状態においては、電界緩和領域36から伸びる空乏層は、第1低濃度n型領域41まで達しない。したがって、第1低濃度n型領域41の全体が電流経路となる。間隔領域内に広い電流経路が確保されるので、スイッチング素子10のオン抵抗は低い。
【0035】
また、スイッチング素子10のオン状態において、負荷が短絡し、ドレイン-ソース間電圧が急激に高くなる場合がある。この場合、ドレイン-ソース間電圧は例えば600V程度まで上昇する。すると、高電圧が電界緩和領域36とドリフト領域40との界面のpn接合に印加される。このように高電圧がpn接合に印加されると、電界緩和領域36から伸びる空乏層が高濃度n型領域44を超えて第1低濃度n型領域41まで伸展する。このため、第1低濃度n型領域41の全体が高速で空乏化される。このように、短絡が生じると第1低濃度n型領域41の全体が高速で空乏化されるので、スイッチング素子10に高い短絡電流が流れることが抑制される。このため、スイッチング素子10は高い短絡耐量を有している。
【0036】
また、スイッチング素子10がターンオフすると、ドレイン-ソース間電圧が上昇する。この場合、ドレイン-ソース間電圧は例えば600V程度まで上昇する。すると、ボディ領域34及び電界緩和領域36からドリフト領域40に空乏層が伸び、ドリフト領域40の略全体が空乏化される。特に、ターンオフによってドレイン-ソース間電圧が上昇すると、電界緩和領域36から伸びる空乏層が高濃度n型領域44を超えて第1低濃度n型領域41まで伸展する。このため、第1低濃度n型領域41の全体が高速で空乏化される。このように、スイッチング素子10がターンオフすると第1低濃度n型領域41の全体が高速で空乏化されるので、トレンチ14の下端周辺での電界集中が抑制される。したがって、スイッチング素子10は高い耐圧を有する。
【0037】
以上に説明したように、実施例1の構造によれば、短絡耐量が高く、耐圧が高く、オン抵抗が低いスイッチング素子10を実現することができる。
【0038】
なお、上記のように高電圧の印加時に空乏層が高濃度n型領域44を超えて第1低濃度n型領域41まで伸展するようにするために、下記の数式を満たすように各領域の濃度と厚さを設定することができる。
Vmax>(q・Nd・(Na+Nd)・W2)/8・ε・Na
なお、Vmaxは電界緩和領域36とドリフト領域40の間に印加される最大電圧である。qは電気素量である。Ndは第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bのn型不純物濃度である。Naは電界緩和領域36のp型不純物濃度である。Wは第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bの厚さ(すなわち、x方向の寸法)である。εは間隔部を構成する材料(すなわち、SiC)の誘電率である。
【0039】
次に、スイッチング素子10の製造方法について説明する。まず、
図4に示すように、ドレイン領域48により構成された半導体基板上に低濃度のn型層43aをエピタキシャル成長させる。次に、
図5に示すように、n型層43aの上面を部分的にエッチングすることにより、n型層43aの上面に凹凸を形成する。n型層43aの凸部が第1低濃度n型領域41であり、それよりも下側の部分が第3低濃度n型領域43である。次に、
図6に示すように、n型層43aの上面に、凹凸に沿って高濃度n型領域44をエピタキシャル成長させる。次に、
図7に示すように、高濃度n型領域44の上部に電界緩和領域36をエピタキシャル成長させ、その後、電界緩和領域36をエッチバックすることで凹部内に電界緩和領域36を残存させる。次に、
図8に示すように、半導体基板の上面に第2低濃度n型領域42とボディ領域34を順にエピタキシャル成長させる。次に、
図9に示すように、ボディ領域34に対してイオン注入を実施することによって、コンタクト領域32とソース領域30を形成する。次に、
図10に示すように、半導体基板の上面に各電界緩和領域36に達するトレンチ14を形成し、各トレンチ14内にゲート絶縁膜16とゲート電極18を形成する。その後、層間絶縁膜20、ソース電極22、ドレイン電極24等を形成することで、
図1に示すスイッチング素子10が完成する。
【0040】
なお、実施例1では、高濃度n型領域44が、第1高濃度n型領域44a、第2高濃度n型領域44b、第3高濃度n型領域44c、第4高濃度n型領域44d及び第5高濃度n型領域44eを有していた。しかしながら、
図11に示すように、高濃度n型領域44が、第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bを有しており、第3高濃度n型領域44c、第4高濃度n型領域44d及び第5高濃度n型領域44eを有さなくてもよい。このような構成でも、スイッチング素子のオン状態において空乏層が間隔領域内の第1低濃度n型領域41まで伸展することを抑制でき、スイッチング素子のオン抵抗を低減できる。
実施例2のスイッチング素子100でも、オン状態において第1低濃度n型領域41(すなわち、第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bの間の低濃度n型領域)に空乏層が達しないので、低いオン抵抗を実現できる。また、短絡状態またはオフ状態では、第1低濃度n型領域41が空乏化されるので、高い短絡耐量と耐圧を実現できる。
また、実施例2のスイッチング素子100では、ドリフト領域40と電界緩和領域36によってスーパージャンクション構造が構成されている。したがって、スイッチング素子100の耐圧をより向上させることができる。特に、積分値Ipが積分値Inと略等しいので、スイッチング素子100のオフ状態において、高濃度n型領域44の下端よりも下側の範囲で電界緩和領域36と下部低濃度n型領域45の略全体に空乏層が広がる。このため、スイッチング素子100の内部で電界集中が生じ難く、スイッチング素子100の耐圧をより効果的に向上させることができる。
なお、実施例2において、高濃度n型領域が、第3高濃度n型領域44cを有さなくてもよい。すなわち、高濃度n型領域が、第1高濃度n型領域44aと第2高濃度n型領域44bによって構成されていてもよい。このような構成でも、スイッチング素子のオン状態において空乏層が間隔領域内の第1低濃度n型領域41まで伸展することを抑制でき、スイッチング素子のオン抵抗を低減できる。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。