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特開2024-115973遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法
<図1>
  • 特開-遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115973
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20200101AFI20240820BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08J7/04 A CEZ
C08J3/12 CER
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021915
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4F006
4F070
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AB72
4F006BA03
4F006BA07
4F070AA12
4F070AC04
4F070AE03
4F070AE06
4F070DB03
4F070DC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第一に、遮光性を有する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法を見出す。第二に、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する包括する成形方法に従って、様々な材質からなる原料を用いて、様々な形状からなる成形体を成形する方法を見出す。第三に、熱可塑性エラストマーの成形体に、遮光性以外の性質が付与できる。
【解決手段】成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆い、原料同士が接合した原料の集まりを作成する。原料の融点を超える温度に昇温した成形機ないしは金型に原料の集まりを充填し、原料を熱融解させ、熱融解した原料の集まりに、成形機ないしは金型によって圧縮応力を継続して加え、熱融解した原料の集まりの空隙が、熱融解した原料の変形によって埋められ、さらに、変形した原料同士が接合し、成形機内ないしは金型内に、接合した原料の集まりからなる成形体を成形する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒の性質を持つアルコールの予め決めた重量からなる該アルコールと、該アルコールの重量より少ない重量からなるカーボンブラックの集まりを容器に投入し、前記アルコールを攪拌し、前記カーボンブラックの集まりが前記アルコール中に浸漬した第一の懸濁液を作成する、この後、該第一の懸濁液の表面全体を覆う板材を、該第一の懸濁液の上に被せる、さらに、該板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、前記アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりを粉砕する、さらに、前記板材を前記第一の懸濁液から引き上げ、前記容器を加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、前記容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記粉砕したカーボンブラックの集まりを前記アルコール中で再配列させる、この後、前記板材を前記第一の懸濁液に再度被せ、該板材の表面全体に前記圧縮荷重を再度均一に加え、前記アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりの粉砕をさらに進める、さらに、前記板材を前記第一の懸濁液から再度引き上げ、前記容器に前記3方向の振動加速度を再度繰り返し加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に前記圧縮荷重を加えた際に、該板材に反発力が発生した時点で、前記アルコール中に浸漬した前記カーボンブラックの集まりにおける粉砕が完了したと判断し、前記一対の処理を停止する、この後、前記板材を前記容器から取り出す第一の工程と、
前記容器内にホモジナイザー装置を配置させ、該ホモジナイザー装置を、前記粉砕が完了したカーボンブラックの集まりが、前記アルコール中に浸漬した懸濁液中で稼働させ、前記アルコールを介して、前記粉砕が完了したカーボンブラックの集まりに衝撃を繰り返し加え、該粉砕が完了したカーボンブラックの集まりにおけるアグリゲートの絡み合いを、前記アルコールを介して分離させ、該アルコールを介して前記アグリゲート同士が絡み合った該アグリゲートの集まりからなる第二の懸濁液を作成する第二の工程と、
熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の集まりを、前記容器内の第二の懸濁液の重量より少ない重量からなる該原料として秤量し、該秤量した原料を前記容器内に投入し、該原料の集まりを撹拌し、該原料の集まりを、前記第二の懸濁液中に浸漬させる、さらに、該容器を前記加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、該容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記原料の集まりを、前記第二の懸濁液中で再配列させる、これによって、該原料の集まりの集積度が、前記第二の懸濁液中で高まるとともに、該原料の表面全体に、前記アルコールの粘度に応じた厚みで前記第二の懸濁液が吸着した該原料の集まりが、前記容器内に作成される第三の工程と、
前記容器内の原料の集まりの一部を新たな容器に移し、該新たな容器を前記加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、該新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記原料の集まりを、前記第二の懸濁液中で再配列させ、該第二の懸濁液中における前記原料の集まりの集積度を高める、さらに、該新たな容器を真空チャンバー内に移し、該真空チャンバーを密閉した後に、真空ポンプを稼働させ、前記真空チャンバー内の圧力を、該真空チャンバー内で前記アルコールが持つ蒸気圧より低い圧力に減圧させ、前記原料の表面を覆う前記第二の懸濁液から、前記アルコールを気化させ、該原料の表面全体に、前記アグリゲートの集まりを析出させる第四の工程と、
前記新たな容器を前記真空チャンバーから取り出し、該新たな容器内の前記原料の集まりの表面全体を覆う新たな板材を、該原料の集まりの上に被せる、さらに、該新たな板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、前記アグリゲートの集まりで表面が覆われた原料の集まりを圧縮する、これによって、該アグリゲート同士が摩擦圧接で接合するとともに、該摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、前記原料の表面に摩擦圧接で接合し、さらに、隣接する原料の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合し、該隣接する原料同士が、前記摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合され、該接合した原料の集まりを前記新たな容器内に作成する、この後、該新たな容器の底面の複数個所に同一の大きさからなる衝撃加速度を同時に加え、前記接合した原料の集まりを前記新たな容器の底面から引き剥がし、さらに、前記新たな板材の表面の複数個所に前記衝撃加速度と同じ大きさの衝撃加速度を同時に加え、前記接合した原料の集まりを、前記新たな板材の表面から引き剥がし、該接合した原料の集まりを取り出す第五の工程とからなり、
前記した5つの工程における全ての処理を連続して実施する方法が、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【請求項2】
請求項1に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
請求項1に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールが、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノールないしは1-ブタノールからなるいずれか1種類のアルコールであり、該いずれか1種類のアルコールを、請求項1に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールとして用い、請求項1に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【請求項3】
請求項1に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
請求項1に記載したカーボンブラックがケッチェンブラックであり、該ケッチェンブラックを、請求項1に記載したカーボンブラックとして用い、請求項1に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【請求項4】
請求項1に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
請求項1に記載したカーボンブラックがアセチレンブラックであり、該アセチレンブラックを、請求項1に記載したカーボンブラックとして用い、請求項1に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【請求項5】
遮光性と放熱性と導電性とを兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法は、
6段落に記載した5つの工程における全ての処理を連続して実施し、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する、この後、熱可塑性エラストマーの成形体を連続して成形する場合は、前記原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、該原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に連続して充填する、また、熱可塑性エラストマーの成形体を、同一の成形体として繰り返し成形する場合は、前記原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、一定の時間間隔をおいて、同一の重量からなる該原料の集まりとして、該原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に充填する、さらに、前記成形機内で、ないしは、前記金型内で、前記充填した原料の集まりを、予め決めた時間加熱を継続し、さらに、前記加熱した原料の集まりに、予め決めた大きさからなる応力を一定時間加える、これによって、前記原料が熱融解し、さらに、該熱融解した原料が変形し、該原料の変形が停止しても、前記応力が前記変形した原料に継続して加わるため、隣接する前記変形した原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合する、これによって、前記変形した原料の表面が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりで満遍なく覆われるとともに、該変形した原料同士が、該原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の接合を介して接合され、該変形した原料同士が接合した該原料の集まりが、前記成形機内ないしは前記金型内に形成される、この後、該成形機ないしは該金型を冷却させ、前記変形した原料の集まりが固化すると、該固化した原料同士が、前記摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の接合を介して接合され、該固化した原料同士が接合した該固化した原料の集まりからなる成形体が、前記成形機内ないしは前記金型内に成形される、遮光性と放熱性と導電性とを兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートの集まりで覆い、該原料を用い、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する成形方法に従って、遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法に関わる。なお、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料は、ペレット、クラムないしは粉体から構成される。
このため、最初に、カーボンブラックのアグリゲートの集まりを、20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒である性質を持つアルコールに分散した懸濁液を作成する。次に、原料の表面全体を懸濁液で満遍なく覆う。さらに、真空チャンバー内において、懸濁液で覆われた原料の集まりから、アルコールを気化させ、原料の表面に、アグリゲートの集まりを重なり合って析出させる。この後、アグリゲートの集まりで覆われた原料の集まりを均等に圧縮し、原料同士を接合する。この接合した原料の集まりを用い、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法に従って、遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する。
なお、カーボンブラックの全光線透過率が0%と小さく、原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆い、該原料の集まりを用い、従来の熱可塑性エラストマーの成形体の成形方法で成形すると、成形体は優れた遮光性を持つ。従って、成形体に紫外線が連続して照射しても、成形体は劣化しにくい。また、カーボンブラックは、黒体の熱放射との比率である熱放射率が0.95-0.97と高い。このため、成形体は優れた放熱性を持つ。さらに、カーボンブラックの比抵抗は、金属の比抵抗より6桁大きいが、熱可塑性エラストマーの比抵抗より13桁小さく、カーボンブラックの導電性に基づき、成形体は、導電性、電磁波シールド性、帯電防止の機能を兼備する。また、炭素粒子の集まりからなるアグリゲートは耐食性に優れるため、成形体に優れた耐食性を付与する。このため、本発明による熱可塑性エラストマーの成形体は、様々な新たな用途に用いることができる。
【0002】
いっぽう、本発明者は、遮光性と放熱性と導電性を兼備する合成樹脂の成形体を成形する方法に関わる発明を、特願2023-011433として既に出願している。この先願は、20℃における粘度が2-3mPa・秒である第一の性質と、合成樹脂の成形が始まる温度より沸点が低い第二の性質を兼備するアルコールを介して、アグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりを作成し、合成樹脂のペレットの表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆い、該ペレットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、従来の合成樹脂の成形体の成形法で成形体を成形する。
これに対し、本発明は、遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を、従来の成形方法で成形する。熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に、最初に、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料を熱融解させる。いっぽう、熱可塑性エラストマーの中には、融点がアルコールの沸点より低い熱可塑性エラストマーが存在する。このため、先願のように、成形機ないしは金型に充填した原料の集まりから、アルコールを気化させることができない熱可塑性エラストマーが存在する。また、原料を、成形機ないしは金型に充填する以前に、懸濁液で覆われた原料の集まりから、アルコールを気化させると、アグリゲートの集まりが原料の表面に積み重なって析出するが、アグリゲート同士が接触しただけであるため、アグリゲートの集まりと原料との接合力と、アグリゲート同士の接合力との双方の接合力が極めて小さく、原料の集まりを成形機ないしは金型に充填する際に、原料の表面に析出したアグリゲートの集まりが、原料の表面から脱落する。このため、懸濁液で覆われた原料の集まりを容器に充填し、この容器を真空チャンバー内に配置させ、真空チャンバー内の圧力を、アルコールの蒸気圧より低い圧力に低下させ、懸濁液からアルコールを気化させ、原料の表面に、アグリゲートの集まりを重なり合って析出させる。さらに、容器内の原料の集まりを均等に圧縮し、原料同士を接合する。これによって、アグリゲートの集まりで覆われた原料同士が、表面を覆ったアグリゲートの集まり同士の摩擦圧接による接合によって接合する。接合した原料の集まりは、成形機ないしは金型に充填できる。この結果、接合した原料の集まりを用い、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法に従って、熱可塑性エラストマーの成形体が成形できる。
【背景技術】
【0003】
本発明に最も近い従来技術に、合成樹脂に遮光性を付与させる技術がある。
例えば、特許文献1は、合成樹脂の容器の外側を、多数の気泡からなる発泡体で覆うことで、合成樹脂の容器に遮光性をもたらす特許である。しかしながら、多数の気泡からなる発泡体が、何故遮光性をもたらすかに関わる記載が全くない。
特許文献2に、押し出しブロー成形によって合成樹脂の容器を成形し、容器本体の内面に、遮光層を設けるとの記載があるが、遮光層の具体的な記載がない。このため、何故遮光層が遮光性をもたらすかに関わる記載が全くない。
いっぽう、合成樹脂に限らず、高分子材料は、紫外線によって高分子の分子構造が破壊され、高分子材料が劣化することが知られている。しかし、特許文献1には、遮光性と発泡体との関係が、特許文献2には、遮光性と遮光層の構成について、一切記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-119649号公報
【特許文献2】特開2020-183281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、第一に、遮光性を有する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法を見出す。第二に、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法に従って、遮光性を有する熱可塑性エラストマーの成形体を、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる様々な原料を用いて、様々な形状からなる熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法を見出す。第三に、熱可塑性エラストマーの成形体に、遮光性以外の性質が付与できる。これら3つの課題が、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒の性質を持つアルコールの予め決めた重量からなる該アルコールと、該アルコールの重量より少ない重量からなるカーボンブラックの集まりを容器に投入し、前記アルコールを攪拌し、前記カーボンブラックの集まりが前記アルコール中に浸漬した第一の懸濁液を作成する、この後、該第一の懸濁液の表面全体を覆う板材を、該第一の懸濁液の上に被せる、さらに、該板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、前記アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりを粉砕する、さらに、前記板材を前記第一の懸濁液から引き上げ、前記容器を加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、前記容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記粉砕したカーボンブラックの集まりを前記アルコール中で再配列させる、この後、前記板材を前記第一の懸濁液に再度被せ、該板材の表面全体に前記圧縮荷重を再度均一に加え、前記アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりの粉砕をさらに進める、さらに、前記板材を前記第一の懸濁液から再度引き上げ、前記容器に前記3方向の振動加速度を再度繰り返し加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に前記圧縮荷重を加えた際に、該板材に反発力が発生した時点で、前記アルコール中に浸漬した前記カーボンブラックの集まりにおける粉砕が完了したと判断し、前記一対の処理を停止する、この後、前記板材を前記容器から取り出す第一の工程と、
前記容器内にホモジナイザー装置を配置させ、該ホモジナイザー装置を、前記粉砕が完了したカーボンブラックの集まりが前記アルコール中に浸漬した懸濁液中で稼働させ、前記アルコールを介して、前記粉砕が完了したカーボンブラックの集まりに衝撃を繰り返し加え、該粉砕が完了したカーボンブラックの集まりにおけるアグリゲートの絡み合いを、前記アルコールを介して分離させ、該アルコールを介して前記アグリゲート同士が絡み合った該アグリゲートの集まりからなる第二の懸濁液を作成する第二の工程と、
熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の集まりを、前記容器内の第二の懸濁液の重量より少ない重量からなる前記原料として秤量し、該秤量した原料を前記容器内に投入し、該原料の集まりを撹拌し、該原料の集まりを、前記第二の懸濁液中に浸漬させる、さらに、該容器を前記加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、該容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記原料の集まりを、前記第二の懸濁液中で再配列させる、これによって、該原料の集まりの集積度が、前記第二の懸濁液中で高まるとともに、該原料の表面全体に、前記アルコールの粘度に応じた厚みで前記第二の懸濁液が吸着した該原料の集まりが、前記容器内に作成される第三の工程と、
前記容器内の原料の集まりの一部を新たな容器に移し、該新たな容器を前記加振機の加振台の上に配置させ、該加振機を稼働し、該新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記原料の集まりを、前記第二の懸濁液中で再配列させ、該第二の懸濁液中における前記原料の集まりの集積度を高める、さらに、該新たな容器を真空チャンバー内に移し、該真空チャンバーを密閉した後に、真空ポンプを稼働させ、前記真空チャンバー内の圧力を、該真空チャンバー内で前記アルコールが持つ蒸気圧より低い圧力に減圧させ、前記原料の表面を覆う前記第二の懸濁液から、前記アルコールを気化させ、該原料の表面全体に、前記アグリゲートの集まりを析出させる第四の工程と、
前記新たな容器を前記真空チャンバーから取り出し、該新たな容器内の前記原料の集まりの表面全体を覆う新たな板材を、該原料の集まりの上に被せる、さらに、該新たな板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、前記アグリゲートの集まりで表面が覆われた原料の集まりを圧縮する、これによって、該アグリゲート同士が摩擦圧接で接合するとともに、該摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、前記原料の表面に摩擦圧接で接合し、さらに、隣接する原料の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合し、該隣接する原料同士が、前記摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合され、該接合した原料の集まりを前記新たな容器内に作成する、この後、該新たな容器の底面の複数個所に同一の大きさからなる衝撃加速度を同時に加え、前記接合した原料の集まりを前記新たな容器の底面から引き剥がし、さらに、前記新たな板材の表面の複数個所に前記衝撃加速度と同じ大きさの衝撃加速度を同時に加え、前記接合した原料の集まりを、前記新たな板材の表面から引き剥がし、該接合した原料の集まりを取り出す第五の工程とからなり、
前記した5つの工程における全ての処理を連続して実施する方法が、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【0007】
つまり、以下に説明する極めて簡単な5つの工程における全ての処理を連続して実施すると、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体が、カーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりが作成できる。ここで、5つの工程における全ての処理と、処理の作用効果を説明する。なお、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料は、ペレット、クラムないしは粉体から構成される。
第一の工程は、粉砕したカーボンブラックの集まりが、アルコールに浸漬した懸濁液を作成する工程である。最初に、カーボンブラックの集まりと、カーボンブラックの集まりの重量より重量が多いアルコールを容器に投入し、該アルコールを攪拌し、カーボンブラックの集まりがアルコール中に浸漬した第一の懸濁液を作成する。つまり、アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりを圧縮することで、カーボンブラックの集まりが容易に粉砕できる。この後、第一の懸濁液の表面全体を覆う板材を、第一の懸濁液の上に被せ、板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、アルコールに浸漬したカーボンブラックの集まりを粉砕する。さらに、板材を第一の懸濁液から引き上げ、容器を加振機の加振台の上に配置させ、加振機を稼働し、容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を、容器の大きさに応じて、2-3Gの振動加速度として繰り返し加え、粉砕したカーボンブラックの集まりを、アルコール中で再配列させる。つまり、カーボンブラックの集まりにおいて、カーボンブラックの大きさにバラツキがあり、破砕されたカーボンブラックの大きさにもバラツキがある。このため、破砕されたカーボンブラックの集まりに空隙が形成される。この空隙を埋めるため、粉砕したカーボンブラックの集まりに3方向の振動加速度を繰り返し加え、粉砕したカーボンブラックの集まりをアルコール中で再配列させる。再配列させたカーボンブラックの集まりに、再度圧縮荷重を加えると、全てのカーボンブラックの粉砕が進み、粉砕したカーボンブラックの大きさが均等に近づく。さらに、板材を第一の懸濁液に再度被せ、板材の表面全体に前記圧縮荷重を再度均一に加え、カーボンブラックの集まりの粉砕を、アルコール中でさらに進める。さらに、板材を第一の懸濁液から再度引き上げ、容器に前記3方向の振動加速度を再度繰り返し加える。こうした圧縮荷重を加える処理と振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、板材に圧縮荷重を加えた際に、板材に反発力が発生した時点で、アルコール中に浸漬したカーボンブラックの集まりにおける粉砕が完了したと判断し、一対の処理を停止する。この後、板材を容器から取り出す。つまり、板材の圧縮によるカーボンブラックの粉砕が限界になると、粉砕したカーボンブラックを圧縮しても、微細になったカーボンブラックに圧縮応力が加わっても、カーボンブラックの粉砕が行われず、板材に反発力が発生する。この時点で、カーボンブラックの集まりの粉砕が完了したと判断する。この結果、カーボンブラックは、当初の大きさの1/25程度に近い大きさまで粉砕される。
なお、次の理由から、1.0-3.0mPa・秒の粘度の幅を持つアルコールを用いた。熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料は、ペレットが最も平均粒子径が大きく、これに対し、粉体が最も平均粒子径が小さい。このため、原料の平均粒子径が相対的に小さい場合は、相対的に粘度が低いアルコールを用いて懸濁液を作成し、該懸濁液で原料の表面を覆う。これに対し、原料の平均粒子径が相対的に大きい場合は、相対的に粘度が高いアルコールを用いて懸濁液を作成し、該懸濁液で原料の表面を覆う。これによって、第四の工程において、原料を覆った懸濁液からアルコールを気化させると、原料の表面全体に、重なり合って微細化したアグリゲートの集まりが析出するが、原料の平均粒径の大きさに関わらず、原料の表面に重なり合って析出する微細化したアグリゲートの集まりの厚みが近づく。
ところで、カーボンブラックの最小単位は、炭素粒子の1次凝集体であるアグリゲートである。このアグリゲートは、カーボンブラックにおいて、10-100nmの大きさからなる炭素粒子同士が、不規則で複雑な形状で数珠つなぎした構造(これをストラクチャーと呼ぶ)で結合した炭素粒子の集まりである。アグリゲートの大きさは100-500nmからなり、炭素粒子の数は100-1000個からなる。従って、アグリゲートは、極めて軽量で、また、切断できる。このアグリゲートは、ストラクチャーによって容易に絡み合い、炭素粒子の2次凝集体であり、アグリゲートの凝集塊であるアグロメレートを形成する。従って、カーボンブラックを破砕することで、アグロメレートも破砕され、アグロメレートの大きさも、当初の大きさの1/25に近い大きさに粉砕される。また、絡み合ったアグリゲートも切断され、0.2mmより短く切断される。アグリゲートが切断されることで、第四の工程においてアルコールを気化すると、微細化したアグリゲートの集まりがランダムに重なり合って、原料の表面全体に析出し、原料の表面全体を満遍なく覆う。こうした微細化したアグリゲートで満遍なく表面が覆われた原料の集まりを、第五の工程で圧縮すると、隣接する原料の表面を覆ったアグリゲート同士が摩擦圧接によって接合し、さらに、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、摩擦圧接によって原料の表面に接合する。いっぽう、アグリゲートが微細で重量が僅かであるため、アグリゲート同士の摩擦圧接による接合は一定の接合力を持ち、接合したアグリゲートの集まりは容易に分離しない。また、原料の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりは、一定の接合力で原料に接合し、アグリゲートの集まりは容易に原料の表面から分離しない。さらに、アグリゲートの集まりで満遍なく表面が覆われた隣接する原料同士は、隣接する原料の表面を覆った摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の摩擦圧接による接合で接合し、該接合した原料の集まりが形成され、接合した原料の集まりも容易に分離しない。この理由から、本発明において、微細化させたアグリゲートの集まりをアルコールに分散した懸濁液によって、原料の表面全体を満遍なく覆った。なお、微細化したアグリゲートの集まりに圧縮応力が加えられた際に、微細化したアグリゲートは破断せず塑性変形し、塑性変形したアグリゲート同士が、摩擦圧接で接合する。このため、アグリゲート同士の摩擦圧接による接合は一定の接合力を持つ。
第二の工程は、微細化したアグリゲートにおけるアグリゲート同士の絡み合いを、アルコールを介して分離させる工程である。つまり、第三の工程において、微細化したアグリゲートの集まりがランダムに重なり合って、原料の表面全体を満遍なく覆うには、アグリゲート同士の絡み合いを分離させる必要がある。なお、アグリゲート同士の絡み合いは、単にアグリゲート同士が接触しているだけであり、絡み合いにおけるアグリゲート同士の接合力は極めて弱い。いっぽう、カーボンブラックは、その多くがアグリゲートの凝集塊であるアグロメレートで構成され、大きなものは1mm近くまで及ぶ粉体になる。このため、アグロメレートの集まりをアルコール中に分散した懸濁液を作成することは困難で、また、アグロメレートの集まりで、原料を覆うことはさらに困難である。この理由から、アルコール中でホモジナイザー装置を稼働させ、限界の大きさまで破砕したアグロメレートの集まりに衝撃波を継続して加え、アグリゲート同士が直接絡み合った部位を、衝撃波の照射で分離させ、分離した部位にアルコールを吸着させ、アルコールを介してアグリゲート同士を絡み合わせる。これによって、微細化したアグリゲートの集まりがアルコールに分散しやすくなり、微細化したアグリゲートの集まりがアルコールに分散した懸濁液が作成できる。これによって、懸濁液中に原料の集まりを浸漬させるだけで、原料の表面全体を、懸濁液で満遍なく覆うことが可能になり、また、アルコールを介して絡み合ったアグリゲートの集まりが、原料の表面に吸着する。なお、アグロメレートを物理的に限界の大きさまで粉砕したため、絡み合ったアグリゲートは0.2mmより短く微細化されている。このため、限界まで破砕したアグロメレートの集まりに、衝撃波を継続して加えると、アグロメレートにおけるアグリゲート同士の絡み合いが容易に解除できる。これによって、アルコールを介して絡み合った微細なアグリゲートの集まりが、低粘度のアルコールに均等に分散した第二の懸濁液が形成できる。
すなわち、容器内にホモジナイザー装置を配置させ、ホモジナイザー装置をアルコール中で稼働させると、極めて微細な衝撃波がアルコール中に発生し、衝撃波がアルコールの分子を励起させながら、アルコール中を移動する。いっぽう、アルコールの粘度が低いため、衝撃波がアルコールの分子を励起させる際に消費されるエネルギーが少なく、衝撃波のエネルギーが失われにくい。このため、微細化したアグリゲートの集まりに、アルコールを介して、微細な衝撃波が効率よく繰り返し照射される。これによって、アグリゲート同士が直接絡み合った部位にも、極めて微細な衝撃波が繰り返し照射され、微細化したアグリゲートが極めて軽量な物質であるため、直接絡み合った部位が解除され、絡み合いが解除したアグリゲートの部位に、アルコールが吸着する。この結果、アルコールを介して絡み合ったアグリゲートの集まりがアルコール中に均等に分散した第二の懸濁液になる。
なお、アグリゲートが、不規則で複雑な形状で炭素粒子同士が数珠つなぎしたストラクチャーの構造を持ち、かつ、個々のアグリゲートの長さと個々のアグリゲートのストラクチャーの形状が異なる。このため、ホモジナイザー装置が発する衝撃波をアグロメレートに繰り返し照射しても、微細化したアグリゲートの集まりであっても、アグリゲート同士が直接絡み合う全ての部位が分離され、これによって、アグリゲートの集まりが1つ1つのアグリゲートに分離し、1つ1つに分離されたアグリゲートをアルコールに均等に分散させることはできない。つまり、ホモジナイザー装置によるアグリゲート同士の絡み合いの分離は、あくまでも、アグリゲート同士が直接絡み合った部位に、アルコールを吸着させる処理である。この処理によって、アルコールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりが、アルコールに均等に分散する。従って、アルコールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりにおいては、絡み合ったアグリゲート同士は直接接合せず、アルコールを介して絡み合ったアグリゲートがアルコールに均等に分散している。これによって、第四の工程において、アルコールを気化させると、微細化したアグリゲート同士が再度絡み合い、絡み合ったアグリゲートがランダムに重なり合って、原料の表面に析出し、絡み合ったアグリゲートの集まりで、原料の表面全体を満遍なく覆うことができる。このため、原料の集まりを圧縮すると、絡み合った微細化したアグリゲート同士が摩擦圧接で直接接合するため、微細化したアグリゲート同士は、一定の接合力で接合し、接合したアグリゲートの集まりは容易に分離しない。また、摩擦圧接で原料の表面に接合した微細化したアグリゲートの集まりは、容易に原料の表面から離脱しない。さらに、微細化したアグリゲートの集まりで表面が覆われた隣接する原料同士は、隣接する原料の表面を覆った摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の摩擦圧接による接合で接合するため、接合した原料の集まりは容易に分離しない。
なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、微細化したアグリゲートの大きさより極めて小さい気泡が、莫大な数からなる気泡として同時に発生し、この後、気泡が殆ど同時に消滅する。この気泡の発生と消滅とが、超音波の発生周期に応じて繰り返し起こり、低粘度のアルコール中で、気泡の発生と消滅とが繰り返される(この現象をキャビテーションという)。この気泡がはじける際の衝撃波が、低粘度のアルコール中に継続して発生する。衝撃波のエネルギーは、低粘度のアルコールの分子の励起に殆ど消費されず、破砕されたアグロメレートの細部に継続して衝撃波が照射され、微細化したアグリゲート同士が直接絡み合った部位が短時間で分離し、分離した部位にアルコールが吸着する。従って、超音波方式のホモジナイザー装置は、超音波の発生周期に応じて、気泡の発生と消滅とを繰り返すため、比較的短時間でアグリゲート同士が直接絡み合った部位を分離させる。
第三の工程は、原料の集まりの集積度を、第二の懸濁液中において高め、集積度を高めた原料の表面全体に第二の懸濁液を吸着させ、原料の表面全体を第二の懸濁液で満遍なく覆う工程である。このため、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料であるペレット、クラムないしは粉体の集まりを、第二の懸濁液の重量より少ない重量として容器内に投入し、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを撹拌する。これによって、ペレット、クラムないしは粉体の集まりが、第二の懸濁液中に浸漬する。さらに、容器を前記した加振機の加振台の上に配置させ、加振機を稼働し、容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を、容器の大きさに応じて、2-3Gの振動加速度として繰り返し加える。これによって、第二の懸濁液中に浸漬したペレット、クラムないしは粉体の集まりが、第二の懸濁液中で再配列され、ペレット、クラムないしは粉体の集まりの集積度が、第二の懸濁液中において高まる。また、ペレット、クラムないしは粉体の表面全体に、第二の懸濁液がアルコールの粘度に応じた厚みで吸着した原料の集まりが作成される。なお、アルコールの粘度が、20℃において1.0-3.0mPa・秒と低いため、原料の表面に吸着する第二の懸濁液の厚みは3μm以下と薄い。いっぽう、アグロメレートが、当初の大きさの1/25程度の大きさまで粉砕されているため、微細化したアグリゲートの大きさは、当初の100-500nmより著しく微細になっている。このため、吸着した第二の懸濁液の厚みが3μm以下であっても、微細なアグリゲートがアルコールを介してランダムに重なり合い、ペレット、クラムないしは粉体の表面全体を、微細化したアグリゲートの集まりが満遍なく覆う。
第四の工程は、原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面に、微細化したアグリゲートの集まりを重なり合って析出させる工程である。このため、第二の懸濁液で満遍なく覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりについて、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に必要となる量を秤量し、秤量した原料の集まりを新たな容器に入れる。さらに、新たな容器を前記した加振機の加振台の上に配置させ、加振機を稼働し、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を、新たな容器の大きさに応じて、2-3Gの振動加速度として繰り返し加える。これによって、第二の懸濁液で満遍なく覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりが、新たな容器内で再配列され、第二の懸濁液で満遍なく覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりは、第二の懸濁液中における集積度を高める。また、第二の懸濁液で覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりにおける空隙が縮小される。さらに、第二の懸濁液で覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりにおける僅かな空隙は、第二の懸濁液で埋められる。この後、容器を真空チャンバー内に配置し、真空チャンバーを密閉した後に、真空ポンプを稼働させ、真空チャンバー内の圧力を、真空チャンバー内のアルコールが持つ蒸気圧より低い圧力に減圧させ、ペレット、クラムないしは粉体の表面を覆う第二の懸濁液から、アルコールを気化させ、ペレット、クラムないしは粉体の表面に、微細化したアグリゲートの集まりを重なり合って析出させる。この際、第二の懸濁液で覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりにおける僅かな空隙は、微細化したアグリゲートの集まりで埋められる。なお、20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールは、沸点が78-117℃と低いため、20℃における蒸気圧は0.58-5.58kPaと比較的高く、真空ポンプの稼働によって、アルコールが容易に気化する。なお、気化したアルコールは回収し、再利用する。いっぽう、熱可塑性エラストマーの中には、融点がアルコールの沸点より低い熱可塑性エラストマーが存在する。このため、原料の表面に微細化したアグリゲートの集まりを析出させるため、第二の懸濁液で覆われた原料の集まりを、アルコールの沸点に昇温し、アルコールを気化させることができない。
ところで、熱可塑性エラストマーは、室温付近ではゴムの性質を持ち、高温ではプラスチックの性質を持つ物質で、熱で変形する性質を持つものの、加硫ゴムとは異なり、熱劣化しない。また、加硫ゴムとは異なり、架橋構造を持たないため、熱融解によって成形加工ができ、熱可塑性樹脂と同様に、リサイクルが可能な材料である。つまり、熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性を示す柔軟性成分(ソフトセグメント)と、塑性変形を防止する架橋ゴムの架橋点の役目を果たす分子拘束成分(ハードセグメント)より構成され、常温ではハードセグメントが寄り集まってドメインを形成する。このドメインが架橋点および補強の役目を果たすため、熱可塑性エラストマーは架橋ゴムと同様に弾性を発現する。しかし高温下ではドメインが溶融し、架橋点の働きができなくなり、熱可塑性樹脂と同じように塑性変形して自由に流動でき、成形が可能となる。このため、熱可塑性樹脂と同様に、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料であるペレット、クラムないしは粉体を熱融解し、射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形、圧空成形などの安価な成形方法で、様々な形状の成形体が製造できる。これに対し、加硫ゴムの製造は、原料ゴムに補強充填材、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤などを添加・混練して得られる配合ゴムを予備成形した後に、加熱により架橋させる多段の工程を経る。いっぽう、熱可塑性エラストマーはこうした多段の工程が不要になるため、安価な成形体が成形できる。さらに、原料であるペレット、クラムないしは粉体は、熱可塑性樹脂の原料と同様に安価な材料である。このように、熱可塑性エラストマーは、弾性を持つ成形体を製造する上で、加硫ゴムより多くの長所を持つ。しかし、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂に比べると融点が低く、高温で塑性変形するため、耐熱性は熱可塑性樹脂に比べて劣る。さらに、加硫ゴムに比べると、ゴム弾性が不足し、熱可塑性エラストマーは、永久歪が大きい課題がある。
第五の工程は、原料であるペレット、クラムないしは粉体同士を、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合し、接合した原料の集まりを作成する工程である。このため、新たな容器を真空チャンバーから取り出し、新たな容器内のペレット、クラムないしは粉体の集まりの表面全体を覆う新たな板材を、ペレット、クラムないしは粉体の集まりの上に被せる。さらに、新たな板材の表面全体に圧縮荷重を均一に加え、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを均等に圧縮する。これによって、隣接するペレット、クラムないしは粉体同士が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合し、接合したペレット、クラムないしは粉体の集まりを新たな容器内に作成する。
つまり、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを均等に圧縮する際に、ペレット、クラムないしは粉体の集まりにおいて、原料の大きさに近い大きさの空隙が存在すると、空隙を埋めるようにペレット、クラムないしは粉体が移動して変形し、変形したペレット、クラムないしは粉体が応力によって破断し、ペレット、クラムないしは粉体の表面を覆ったアグリゲートの集まりが、破断したペレット、クラムないしは粉体の表面から剥離する。この現象を回避するため、第四の工程において、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを、新たな容器内で再配列させ、第二の懸濁液中におけるペレット、クラムないしは粉体の集まりの集積度を高めた。さらに、第二の懸濁液で覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりにおける僅かな空隙を、第二の懸濁液で埋めた。この第四の工程における処理によって、第五の工程において、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを均等に圧縮すると、最初に、ペレット、クラムないしは粉体の集まりは、僅かな空隙を埋めた微細化したアグリゲートの集まりを圧縮する。第二に、微細化したアグリゲートの集まりが僅かに変形する。第三に、ペレット、クラムないしは粉体も、僅かに変形する。この際に、圧縮応力が加わることによって、僅かな空隙を埋めた微細化したアグリゲート同士が、摩擦圧接で接合し、さらに、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、僅かに変形したペレット、クラムないしは粉体の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりと、摩擦圧接で接合する。いっぽう、ペレット、クラムないしは粉体の僅かな変形に追従して、ペレット、クラムないしは粉体の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが塑性変形し、ペレット、クラムないしは粉体の表面全体を、アグリゲートの集まりが継続して覆う。この結果、ペレット、クラムないしは粉体の表面が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりで覆われるとともに、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して、ペレット、クラムないしは粉体同士が接合する。つまり、ペレット、クラムないしは粉体の集まりにおける僅かな空隙に析出したアグリゲートの集まりは、応力を受けて変形し、これによって、ペレット、クラムないしは粉体も、僅かに変形する。この後、微細化したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合し、接合したアグリゲートの集まりは、僅かに変形したペレット、クラムないしは粉体の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりに、摩擦圧接で接合する。この結果、原料の集まりにおける空隙は極めて小さい。これによって、全ての原料の表面に、圧縮応力が加わる。従って、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりにおける接合力は大きく、また、原料の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりの接合力が大きい。さらに、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して、ペレット、クラムないしは粉体同士が接合する接合力が大きい。この後、容器の底面の複数個所に、容器の大きさに応じて0.2-0.4Gからなる同一の衝撃加速度を同時に加え、摩擦圧接で接合したペレット、クラムないしは粉体の集まりを、新たな容器の底面から引き剥がす。さらに、新たな板材の表面の複数個所に前記衝撃加速度と同じ大きさの衝撃加速度を同時に加え、摩擦圧接で接合したペレット、クラムないしは粉体の集まりを、新たな板材の表面から引き剥がす。この後、摩擦圧接で接合したペレット、クラムないしは粉体の集まりを取り出す。
以上に説明したように、前記した5つの工程における全ての処理を連続して実施することで、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面全体が、アグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して、ペレット、クラムないしは粉体同士が接合した該原料の集まりが作成できる。
つまり、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に、最初に、原料であるペレット、クラムないしは粉体の融点より高い温度に昇温した成形機ないしは金型に、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを充填し、ペレット、クラムないしは粉体を熱融解させる。熱可塑性エラストマーの中には、融点がアルコールの沸点より低い熱可塑性エラストマーが存在する。このため、成形機ないしは金型に充填したペレット、クラムないしは粉体の集まりから、アルコールが気化しない熱可塑性エラストマーが存在する。また、ペレット、クラムないしは粉体を、成形機ないしは金型に充填する以前に、第二の懸濁液で覆われたペレット、クラムないしは粉体の集まりから、アルコールを気化させると、アグリゲートの集まりがペレット、クラムないしは粉体の表面に積み重なって析出するが、析出したアグリゲートの集まりは、アグリゲートの集まりが積み重なっただけであるため、アグリゲートの集まりとペレット、クラムないしは粉体との接合力と、アグリゲート同士の接合力との双方の接合力が極めて小さい。このため、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを成形機ないしは金型に充填する際に、ペレット、クラムないしは粉体の表面に析出したアグリゲートの集まりが、ペレット、クラムないしは粉体の表面から脱落する。この理由から、ペレット、クラムないしは粉体の集まりを、成形機ないしは金型に充填する以前に、ペレット、クラムないしは粉体の集まりから、アルコールを気化させることができない。これに対し、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりで、ペレット、クラムないしは粉体の表面を覆い、ペレット、クラムないしは粉体同士が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合できれば、接合したペレット、クラムないしは粉体の集まりを、成形機ないしは金型に充填し、従来の成形方法で、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりで覆われた原料の集まりからなる成形体が成形できる。この考えから本発明に至った。
従って、本発明における第一の特徴は、第二の懸濁液で覆われた原料であるペレット、クラムないしは粉体の集まりを容器に充填し、この容器を真空チャンバー内に配置させ、真空チャンバー内の圧力を、アルコールの蒸気圧より低い圧力に低下させ、第二の懸濁液からアルコールを気化させ、原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面に、アグリゲートの集まりを重なり合って析出させ、さらに、原料の集まりの僅かな空隙を、析出したアグリゲートの集まりで埋める点にある。第二の特徴は、容器内の原料であるペレット、クラムないしは粉体の集まりを均等に圧縮し、最初に、僅かな空隙に析出したアグリゲートの集まりを摩擦圧接で接合し、次に、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを、ペレット、クラムないしは粉体の表面に摩擦圧接で接合させ、さらに、僅かな空隙における摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを、ペレット、クラムないしは粉体の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりと、摩擦圧接で接合させる。この結果、ペレット、クラムないしは粉体同士が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合する点にある。この原料の集まりを、成形機ないしは金型に充填する。この結果、アグリゲートの集まりで覆われた原料であるペレット、クラムないしは粉体の集まりを用い、従来の熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法に従って、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する。
【0008】
6段落に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
6段落に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールが、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノールないしは1-ブタノールからなるいずれか1種類のアルコールであり、該いずれか1種類のアルコールを、6段落に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールとして用い、6段落に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【0009】
つまり、6段落に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒であるアルコールとして、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノールないしは1-ブタノールからなるいずれか1種類のアルコールが存在する。
エタノールC(OH)は、20℃における粘度が1.2mPa・秒で、沸点が78℃で、20℃における蒸気圧が5.58kPaである。
2-プロパノール(CHCH(OH)は、20℃における粘度が1.8mPa・秒で、沸点が82℃で、20℃における蒸気圧が4.4kPaである。
1-プロパノールCH(CHOHは、20℃における粘度が1.9mPa・秒で、沸点が98℃で、20℃における蒸気圧が1.9kPaである。
1-ブタノールCH(CHOHは、20℃における粘度が3.0mPa・秒で、沸点が117℃で、20℃における蒸気圧が0.58kPaである。
これら4種類のアルコールは、6段落に記載した20℃における粘度が1.0-3.0mPa・秒の性質を持つ。さらに、沸点が78-117℃と低いため、20℃における蒸気圧が0.58-5.58kPaと比較的大きく、真空チャンバー内で容易にアルコールを気化することができる。また、いずれも汎用的な安価なアルコールである。従って、いずれか1種類のアルコールを、6段落に記載したアルコールとして用い、6段落に記載した方法に従って、5つの工程における全ての処理を連続して実施すると、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりが作成できる。
【0010】
6段落に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
6段落に記載したカーボンブラックがケッチェンブラックであり、該ケッチェンブラックを、6段落に記載したカーボンブラックとして用い、6段落に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【0011】
つまり、カーボンブラックは、カーボンブラックの製造方法によって、カーボンブラックの特徴が大きく変わり、製造方法の名称でカーボンブラックが分類されている。この製造方法によって、カーボンブラックの性質が変わる。
ファーネスブラックは、油やガスを高温ガス中で不完全燃焼させて製造したカーボンブラックであり、燃焼させる原料により、オイルファーネスとガスファーネスとに細分化される。ファーネスブラックの中で、ケッチェンブラックは、原料として炭化水素からなるオイルを用い、オイルの不完全燃焼で、カーボンブラックを生成する。このケッチェンブラックは、カーボンブラックの中で、比表面積とDPB(ジブチルフタレート)の吸収量が最も大きく、導電性がアセチレンブラックに次いで高い。つまり、ケッチェンブラックは、ストラクチャーが円弧を描いて形成した中空体が存在するため、円弧状のストラクチャーを電子が移動することで、ケッチェンブラックの導電性が増える。
その他のカーボンブラックに、天然ガスを燃焼させ、チャンネル鋼に析出させたものを掻き集めたチャンネルブラックと、アセチレンガスを熱分解して得たアセチレンブラックと、蓄熱した炉の中でガスの燃焼と分解を繰り返して製造するサーマルブラックがある。
カーボンブラックの中で、ケッチェンブラックは、一次粒子が最も小さく、単位質量当たりの一次粒子の数が最も多く、BET表面積が最も大きいため、カーボンブラックの中で、最も優れた遮光性を持つ。このため、6段落に記載したカーボンブラックとしてケッチェンブラックを用い、6段落に記載した方法に従って、5つの工程における全ての処理を連続して実施すると、ケッチェンブラックのアグリゲートの集まりで、原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面全体が覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりが作成される。この原料の集まりを用いて成形した熱可塑性エラストマー成形体は、紫外線が継続して照射されても、劣化しにくい成形体になる。さらに、ケッチェンブラックの熱放射率が0.97と高く、成形体は優れた放熱性を発揮する。
すなわち、ケッチェンブラックは、一次粒子径が30-40nmからなり、このため、単位質量当たりの一次粒子の数は1×10個/gに及び、BET表面積が1270m/gにも及ぶ。従って、ケッチェンブラックは、他のカーボンブラックより遮光性と放熱性が優れる。
【0012】
6段落に記載した熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法は、
6段落に記載したカーボンブラックがアセチレンブラックであり、該アセチレンブラックを、6段落に記載したカーボンブラックとして用い、6段落に記載した方法に従って、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体がカーボンブラックのアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法である。
【0013】
つまり、アセチレンブラックは、カーボンブラックの原料の中で、純度が最も高いアセチレンガスを使ってアセチレンブラックを生成するため、カーボンブラックの中で不純物が最も少なく、また、ストラクチャーと1次粒子とが最も発達している。このため、カーボンブラックの中で最も導電性が優れる。従って、6段落に記載したカーボンブラックとしてアセチレンブラックを用い、6段落に記載した方法に従って、5つの工程における全ての処理を連続して実施すると、アセチレンブラックのアグリゲートの集まりで、原料であるペレット、クラムないしは粉体の表面全体が覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりが作成される。この原料の集まりを用いて成形した熱可塑性エラストマーの成形体は、導電性、電磁波シールド性、帯電防止の性能が、他のカーボンブラックを用いた成形体より優れる。このため、アセチレンブラックは、導電性に優れた熱可塑性エラストマーの成形体を成形するのに適している。なお、アセチレンブラックとして、例えば、嵩密度が0.04g/cmで、電気抵抗率が0.21Ω・cmからなる粉状品がある。
いっぽう、銅の比抵抗は1.68×10-6Ω・cmであり、アセチレンブックの比抵抗を前記した0.21Ω・cmとし、銅の比導電率を1.0とした場合、アセチレンブラックの比導電率は、8×10-6になる。また、アセチレンブラックの比透磁率は1.0である。なお、電磁波の反射損失の材質間の度合いは、比導電率/比透磁率に相当し、電磁波の吸収損失の材質間の度合いは、比導電率・比透磁率に相当する。従って、アセチレンブラックの電磁波の反射損失の度合いと電磁波の吸収損失の度合いとは、いずれも8×10-6になる。いっぽう、鉄の比導電率は0.17で、比透磁率は100である。このため、鉄の電磁波の反射損失の度合いは1.7×10―3で、電磁波の吸収損失の度合いは17である。従って、アセチレンブラックは、金属の電磁波のシールド性能に及ばない。
さらに、帯電防止の性能は、表面抵抗で表わせられる。アセチレンブラックからなるアグリゲートの集まりで原料を、1μmの厚みで覆った場合は、表面固有抵抗が2.1×10Ω/□になる。また、0.1μmの厚みで覆った場合は、表面固有抵抗が2.1×10Ω/□になる。従って、いずれの膜厚も帯電しにくいが、アグリゲートの集まりの膜厚が薄いほうが静電気を速やかに消散することができる。
【0014】
遮光性と放熱性と導電性とを兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法は、
6段落に記載した5つの工程における全ての処理を連続して実施し、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に用いる原料の表面全体を、カーボンブラックのアグリゲートで満遍なく覆い、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する、この後、熱可塑性エラストマーの成形体を連続して成形する場合は、前記原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、該原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に連続して充填する、また、熱可塑性エラストマーの成形体を、同一の成形体として繰り返し成形する場合は、前記原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、一定の時間間隔をおいて、同一の重量からなる該原料の集まりとして、該原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に充填する、さらに、前記成形機内で、ないしは、前記金型内で、前記充填した原料の集まりを、予め決めた時間加熱を継続し、さらに、前記加熱した原料の集まりに、予め決めた大きさからなる応力を一定時間加える、これによって、前記原料が熱融解し、さらに、該熱融解した原料が変形し、該原料の変形が停止しても、前記応力が前記変形した原料に継続して加わるため、隣接する前記変形した原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合する、これによって、前記変形した原料の表面が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりで満遍なく覆われるとともに、該変形した原料同士が、該原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の接合を介して接合され、該変形した原料同士が接合した該原料の集まりが、前記成形機内ないしは前記金型内に形成される、この後、該成形機ないしは該金型を冷却させ、前記変形した原料の集まりが固化すると、該固化した原料同士が、前記摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の接合を介して接合され、該固化した原料同士が接合した該固化した原料の集まりからなる成形体が、前記成形機内ないしは前記金型内に成形される、遮光性と放熱性と導電性とを兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法である。
【0015】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂の成形方法と同様の成形方法で、成形体が成形できる。つまり、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、フィルム成形、圧空成形などの成形方法に依って、熱可塑性エラストマーからなる様々な形状の成形体が成形できる。
また、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する際に、2つの成形方法によって成形体を成形する。一つは、カレンダー成形ないしはフィルム成形のように、連続して成形体を成形する方法である。他の一つは、射出成形、押出成形、ブロー成形ないしは圧空成形のように、同一の成形体を繰り返し成形する方法である。成形体を連続して成形する方法は、予め決めた重量からなる熱可塑性エラストマーの原料を、原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に連続して充填する。これに対し、熱可塑性エラストマーの成形体を、同一の成形体として繰り返し成形する方法は、原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に、予め決めた重量からなる熱可塑性エラストマーの原料を、同一の重量からなる原料として、一定の時間間隔をおいて、繰り返し充填する。
ところで、前記した6つの熱可塑性エラストマーの成形体を成形する成形方法は、次の5つの項目が共通する。第一に、熱可塑性エラストマーの原料の集まりを、原料の融点を超える温度に昇温した成形機ないしは金型に充填する。第二に、原料の全てを熱融解させる。第三に、熱融解した原料の集まりに、成形機ないしは金型によって圧縮応力を継続して加え、熱融解した原料の集まりにおける空隙を、熱融解した原料の変形によって埋める。第四に、変形した原料同士が圧縮応力で融着する。第五に、成形機内ないしは金型内に、融着した原料の集まりからなる成形体が成形される。なお、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料は、ペレット、クラムないしは粉体から構成される。
従って、14段落に記載した成形方法が、これら5つの共通事項を満たせば、熱可塑性エラストマーの6つの成形方法を包括する成形方法になり、熱可塑性エラストマーの6つの成形方法を包括する成形方法に依って、様々な形状からなる成形体が成形できる。
いっぽう、14段落に記載した成形方法が、さらに、遮光性と放熱性と導電性を兼備する熱可塑性エラストマーの成形体を成形する方法であるためには、次の3つの要件を満たす必要がある。第一の要件は、原料の融点を超える温度に昇温した成形機ないしは金型に充填された原料は、熱融解した原料の表面全体を、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが継続して覆う。この第一の要件は、前記した第一と第二との共通事項に該当する。第二の要件は、成形機ないしは金型によって、熱融解した原料の集まりに圧縮応力が加わり、熱融解した原料が変形するが、変形した原料の表面全体を、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが継続して覆う。この第二の要件は、前記した第三の共通事項に該当する。さらに、第三の要件は、熱融解した原料が変形する際に、隣り合う原料の双方の原料を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が接合し、この摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士の接合によって、隣り合う原料同士が接合され、成形機内ないしは金型内に、変形した原料の集まりからなる成形体が形成される。この第三の要件は、前記した第四と第五との共通事項に該当する。
また、14段落に記載した成形方法が、これら3つの要件を満たすことで、第一に、アグリゲートの集まりが、成形体を構成する全ての原料の表面全体を覆う。第二に、隣り合う原料の双方の原料を覆うアグリゲートの集まり同士が接合する。この結果、成形体は、アグリゲートの性質である遮光性と放熱性と導電性を兼備する。
ところで、熱可塑性エラストマーの原料を覆うアグリゲートの集まりは、次の5つの性質を持つ。第一に、7段落に記載した微細化したアグリゲートの大きさは、熱可塑性エラストマーの原料の大きさに比べ4桁も小さい。第二に、7段落に記載したように、微細なアグリゲート同士が摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、一定の結合強度で接合し、さらに、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、原料の表面に一定の結合強度で接合する。第三に、熱融解した原料に応力が加わると、原料が僅かに変形するが、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりは、一定の結合強度で接合しているため、原料の変形に追従して、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、原料の表面を覆った状態を維持して僅かに塑性変形し、塑性変形した摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが変形した原料の表面を継続して覆う。第四に、第二の性質によって、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりは、一定の結合強度を持って、熱可塑性エラストマーの原料の表面に接合し続ける。
いっぽう、14段落に記載した成形方法は、第一に、6段落に記載した5つの工程における全ての処理を連続して実施し、熱可塑性エラストマーを成形する際に用いる原料の表面全体が、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが摩擦圧接で接合するとともに、該原料同士が前記摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して接合し、該接合した原料の集まりを作成する。第二に、熱可塑性エラストマーの成形体を連続して成形する方法は、原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に連続して充填する。また、熱可塑性エラストマーの成形体を、同一の成形体として繰り返し成形する方法は、原料の融点を超える温度に加熱した成形機ないしは金型に、原料の集まりの予め決めた重量からなる該原料の集まりを、同一の重量からなる原料の集まりとして、一定の時間間隔をおいて、繰り返し充填する。この際、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、原料の表面に摩擦圧接で接合し、該原料が熱融解する。熱融解した原料の体積が僅かに熱膨張するが、前記した第四の性質によって、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、熱融解した原料の熱膨張に追従して僅かに塑性変形し、熱融解した原料を覆い続ける。従って、本発明の成形方法は、前記した第一の要件を満たす。なお、成形機ないしは金型の温度が、アグリゲート同士が摩擦圧接で接合した際の接合部の温度より低いため、アグリゲート同士の接合力は、アグリゲート同士を摩擦圧接で接合した際に形成される接合力と変わらない。
次に、14段落に記載した成形方法は、熱融解した原料の集まりに圧縮応力を継続して加える。これによって、熱融解した原料は変形する。いっぽう、7段落に記載したように、原料の集まりにおける僅かな空隙は、析出した微細なアグリゲートの集まりで埋められる。このため、熱融解した原料が圧縮応力を受け、僅かな空隙を埋めた微細なアグリゲートの集まりを圧縮して、僅かに変形し、僅かな空隙が熱融解した原料の変形で埋められると、熱融解した原料の変形が停止する。従って、熱融解した原料の集まりに、空隙は存在しない。いっぽう、析出した微細なアグリゲート同士は摩擦圧接で接合し、該摩擦圧接で接合した微細なアグリゲートの集まりが、前記した第四の性質を持つ。このため、原料の表面に摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりは、熱融解した原料の僅かな変形に追従して、僅かに塑性変形する。この結果、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、継続して熱融解した原料の表面を覆う。従って、本成形方法は、前記した第二の要件を満たす。
さらに、熱融解した原料の変形が停止しても、圧縮応力が継続して熱融解した原料の集まりに加わり、前記した僅かな空隙を埋めた摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりが、隣接する原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりと、摩擦圧接で接合する。また、隣り合う熱融解した原料の双方の原料の表面を覆う摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まり同士が摩擦圧接で接合する。これによって、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりを介して、隣り合う熱融解した原料同士が接合され、接合した熱融解した原料の集まりが、成形機内ないしは金型内に形成される。従って、本成形方法は、第三の要件を満たす。なお、圧縮成形時の温度が、アグリゲート同士が摩擦圧接で接合した際の接合部の温度より低いため、アグリゲート同士の接合力は、アグリゲート同士を摩擦圧接で接合した際に形成される接合力と変わらない。
以上に説明したように、14段落に記載した成形方法は、熱可塑性エラストマーの成形体を成形する6つの成形方法に共通する5つの事項を満たす成形方法であり、熱可塑性エラストマーの6つの成形方法を包括する成形方法に依って成形体が成形できる。さらに、本成形方法は、前記した3つの要件を満たす成形方法であるため、本成形方法で成形した成形体は、アグリゲートの性質である遮光性と放熱性と導電性を兼備する。また、炭素粒子の集まりからなるアグリゲートは耐食性に優れるため、成形体に優れた耐食性を付与する。このため、本発明による熱可塑性エラストマーの成形体は、様々な新たな用途に用いることができる。
これによって、5段落で説明した3つの課題が、本成形方法に依って同時に解決される。
この後、熱融解した原料を冷却して固化すると、成形体が形成される。なお、原料が固化する際に、原料の体積が僅かに収縮するが、摩擦圧接で接合したアグリゲートの集まりは、原料の変形に追従して塑性変形し、固化した原料を覆い続ける。また、隣り合う固化した原料の双方の原料を覆うアグリゲートの集まりは塑性変形し、隣り合う固化した原料同士を継続して結合する。このため、成形体は、アグリゲートの性質を持つ。
以上に説明したように、14段落に記載した成形体の成形方法は、熱可塑性エラストマーの各種成形方法を包括する成形方法であり、かつ、アグリゲートの性質を持つ成形体を成形する成形方法である。このため、本発明の成形方法によって成形した熱可塑性エラストマーの成形体は、様々な新たな用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ケッチェンブラックのアグリゲートの集まりが、オレフィン系エラストマーのペレットを覆う状態を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態1
本実施形態は、熱可塑性エラストマーに関する実施形態である。熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントの化学的組成によって分類された次の9種類がある。また、各種の熱可塑性エラストマーは、ベースエラストマー、ポリマー成分に、各種の他の高分子材料(ポリオレフィン類、未加硫ゴム成分など)、無機フィラー類、軟化剤、可塑剤、加工安定剤、耐熱安定剤などが、複雑に複合されている。このため、熱可塑性エラストマーの融点に幅がある。
スチレン系エラストマーは、ハードセグメントがポリスチレンPSからなり、ソフトセグメントは、ポリブタジエンBR、ポリイソプレンIR、水素添加のBR、水素添加のIRの4種類からなる。熱可塑性エラストマーの中で最も加硫ゴムに近い性質を持つ。短所は、耐熱性が80℃と低く、耐候性、耐油性に劣る点である。また、IRの融点が40-70℃と低いため、用途が限定される。水素添加のBRからなるエラストマーに、強度、耐熱性、耐候性を改良したものがある。また、ハードセグメントのPSを、ポリエチレンPEの結晶に置き換えたものや、ポリシクロヘキサンに変えたものが存在する。このように、様々な改良がなされている。
オレフィン系エラストマーは、ハードセグメントがPPからなり、ソフトセグメントがポリエチレンプロピレンジエンEPDMからなるエラストマーが量的に主流で、比重が軽く、耐候性、耐オゾン性に優れる。短所は、圧縮永久ひずみが大きく、耐油性、耐摩耗性が不充分な点にある。この短所を改良するため、PPとEPDMを混合する際に架橋剤を加えることで、PPマトリックス中に完全架橋した、あるいは、部分架橋されたEPDM粒子をミクロ分散させた材料が開発されている。また、EPDMの代わりに、ニトリルゴムNBRやクロロプレンゴムCRやブチルゴムIIRを用い、圧縮永久歪、耐熱老化性、耐油性などを改良した材料が開発されている。このように、オレフィン系エラストマーについても様々な改良がなされている。また、ハードセグメントがPEからなるエラストマーも存在する。
塩化ビニル系エラストマーは、高重合度PVCと可塑剤とのブレンド、部分架橋PVCと可塑化PVCとのブレンド、PVCとNBRやウレタンゴムUとのブレンドがある。耐候性、耐オゾン性、耐薬品性に優れるが、ゴム弾性が低い欠点を持つ。
ウレタン系エラストマーは、ハードセグメントがポリウレタンからなり、ソフトセグメントが、脂肪族ポリエステルないしは脂肪族ポリエーテルからなる。耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性に優れる反面、永久歪性、耐黄変性に劣り、金型粘着性の欠点もある。
エステル系エラストマーは、ハードセグメントが芳香族ポリエステルからなり、ソフトセグメントが、脂肪族ポリエステルないしは脂肪族ポリエーテルからなり、とりわけ耐熱性に優れ、また、耐屈曲性、耐油性にも優れるが、低硬度の製品の製造が難しい。このため、ブレンド時の動的架橋で架橋ゴム粒子を微分散させ、柔軟性と耐熱性、耐油性を両立さる材料開発がなされている。
アミド系エラストマーは、ポリアミドをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステルないしは脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとする。ハードセグメントを構成するポリアミドによって、耐油性、耐熱性は、エステル系エラストマーに次ぐ性能を持ち、離型性と成形性では、エステル系エラストマーを凌ぐ。さらに、消音性、耐薬品性、耐摩耗性、強靭性、耐ガス透過性にも優れるが、ゴム弾性に乏しいのが難点である。また、他の高分子材料との熱融着性に優れる材料開発がなされている。
ポリブタジエン系エラストマーは、シンジオタック1、2-ブタジエンをハードセグメントとし、非結晶ブタジエンをソフトセグメントとし、結晶化度を抑えることで融点を下げ、溶融成形を可能としたエラストマーである。ガス透過性と透明性に優れるため、フィルムやシートに用いられている。なお、融点が70-125℃と低く、耐熱性は低い。
アクリル系エラストマーは、メタクリル酸メチルMMAをハードセグメントとし、アクリル酸ブチルBAをソフトセグメントとする、ブロック共重合体からなる。MMAが持つ透明性と耐候性と、BAが持つ柔軟性と接着性との双方を有する熱可塑性エラストマーである。なお、ABSやPCとの2色成形性に優れ、プライマーを不要とする塗装が可能で、射出成形性に優れた材料が開発されている。また、アクリル系エラストマーとPBT樹脂とを、ナノレベルに近い分散形態とし、柔軟性を維持し、耐熱性を高めた材料が開発されている。
フッ素系エラストマーは、フッ素ゴムの部分とフッ素樹脂の部分が結合したブロックポリマーで、常温では結晶性のフッ素樹脂相により、擬似架橋構造によってゴム弾性を示すが、融点以上の高温では熱可塑性樹脂と同じような流動性を示す。このため、他の熱可塑性エラストマーと同様に、溶融成形が可能である。融点は225℃で、180℃の耐熱性を持ち、耐薬品性、電気的特性、機械的特性に優れたエラストマーであるが、価格が高いのが難点である。
以上の9種類の熱可塑性エラストマーは、いずれも高分子材料であり、紫外線の照射によって、高分子の分子構造が破壊され劣化する。また、いずれも絶縁性の高分子材料である。
【0018】
実施例1
本実施例は、8段落に記載したアルコールとして1-プロパノールを用い、カーボンブラックとして10段落に記載したケッチェンブラックを用い、15段落に記載した熱可塑性エラストマーとしてオレフィン系エラストマーのペレットを用い、6段落に記載した方法に従って、オレフィン系エラストマーのペレットの表面を、1-プロパノールとケッチェンブラックのアグリゲートとからなる懸濁液で覆う。
1-プロパノールは、沸点が98℃で、20℃における粘度が1.9mPa・秒である。用いたケッチェンブラック(ライオン株式会社の製品EC600JD)は、平均粒子径が34nmと小さく、比表面積が1270m/gと大きく、優れた遮光性を示す。さらに、ケチェンブラックの粒子間の空隙を満たすに要するフタル酸ジブチルの量が495cm/100gと大きく、粒子の繋がりと粒子の凝集の程度が大きい。これによって、ケッチェンブラックのアグリゲートの絡み合いが進み、優れた遮光性を示す。また、オレフィン系エラストマーとして、動的架橋型であるが流動性に優れたグレードを用いた(例えば、JSR株式会社のEXCELINK1800)。なお、オレフィン系エラストマーのペレットの密度は、0.89g/cmである。
最初に、ケッチェンブラックの10gと、1-プロパノールの80gを容器に充填し、1-プロパノールを攪拌して、ケッチェンブラックを1-プロパノールに浸漬させた。
この後、容器の上に平板を被せ、平板の上に2kgの重り9個を等間隔に離間させて載せた。さらに、重りと平板とを除き、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を、5回繰り返した後に、重りを平板の上に載せたが、平板の動きが全く見られなかったため、一対の処理を停止した。
さらに、容器に超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社の製品LUH150)を容器内の1-プロパノール中で稼働し、20kHzの超音波信号を5分間加え、1-プロパノールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりを1-プロパノール中に分散した懸濁液を作成した。
この後、予め除湿乾燥機で予備乾燥させたオレフィン系エラストマーのペレットの60gを容器に投入し、ペレットの集まりを撹拌し、ペレットの集まりを、懸濁液に浸漬させた。さらに、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。
この後、容器内の試料の10gを新たな容器に移し、新たな容器を前記した加振台の上に固定させ、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の1Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。さらに、新たな容器を、真空チャンバー内に移し、真空チャンバー内の圧力を1.5kPaまで低下させ、試料から1-プロパノールを気化させた。
さらに、新たな容器を真空チャンバーから取り出し、新たな容器内の試料の全体を覆う平板を試料の表面に被せ、平板の上に0.4kgの重り5個を等間隔に離間させて載せた。
この後、新たな容器の底面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、平板に圧着した試料を新たな容器の底面から引き剥がした。さらに、平板の裏面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、試料を平板から引き剥がした。
【0019】
実施例2
本実施例は、実施例1で作成した試料を用い、カレンダー成形法によって0.1mmの厚みのフィルムを成形した。用いたオレフィン系エラストマーの流動性は、230℃、21Nで80g/10分の高い流動性を持つグレードであり、カレンダー成形のみならず、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形などによって、様々な形状の成形体が成形できる。なお、成形したフィルムは、淡く黒みがかったフィルムになった。
次に、フィルムを切断し、断面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
断面からの反射電子線について、900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。フィルムの厚みは0.1mmであった。断面は、扁平状に潰されたペレットの表面が、1μmの厚みからなるケッチェンブラックのアグリゲートの集まりで覆われ、隣接する扁平状のペレット同士が、アグリゲートの集まりを介して接合されていた。また、扁平状のペレット同士が接合した際に形成される僅かな間隙は、全てアグリゲートの集まりで埋められ、扁平状のペレットの集りからなる成形体において、空隙は見られなかった。図1に断面を模式的に示す。1はオレフィン系エラストマーのペレットで、2はケッチェンブラックのアグリゲートの集まりである。
さらに、フィルムの遮光性を、JIS-L-1055A法に基づいて測定した結果、95%の遮光率を有し、優れた遮光シートであることが分かった。
さらに、シートの熱放射率を、フーリエ変換赤外分光光度計と放射測定ユニットからなる分析器(株式会社コベルコ科研が所有する設備)で測定した結果、熱放射率が0.93と高く、優れた放熱シートであることが分かった。
【0020】
実施例3
実施例1において、ケッチェンブラックのアグリゲートの集まりを、1-プロパノールに分散された懸濁液で、オレフィン系エラストマーのペレットの表面を覆った。実施例3では、アセチレンブラック(デンカ株式会社の製品Li-100)のアグリゲートの集まりを、1-ブタノールに分散された懸濁液で、実施例1で用いたオレフィン系エラストマーのペレットの表面を覆う。なお、1-ブタノールは、20℃における粘度が3.0mPa・秒であり、沸点が117℃である。従って、1-ブタノールの粘度は、1-プロパノールの粘度の1.7倍であり、オレフィン系エラストマーのペレットの表面を覆う懸濁液の厚みが、粘度の増大に応じて1.7倍になる。
最初に、アセチレンブラックの10gと、1-ブタノールの80gを容器に充填し、1-ブタノールを攪拌して、アセチレンブラックを1-ブタノールに浸漬させた。
この後、実施例1と同様に、容器の上に平板を被せ、平板の上に2kgの重り9個を等間隔に離間させて載せた。さらに、重りと平板とを除き、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を、5回繰り返した後に、重りを平板の上に載せたが、平板の動きが全く見られなかったため、一対の処理を停止した。
さらに、実施例1と同様に、容器に超音波ホモジナイザーを容器内の1-ブタノール中で稼働し、20kHzの超音波信号を5分間加え、1-ブタノールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりを1-ブタノール中に分散した懸濁液を作成した。
この後、予め予備乾燥させたオレフィン系エラストマーのペレットの60gを、容器に投入し、ペレットの集まりを撹拌し、ペレットの集まりを、懸濁液に浸漬させた。さらに、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。
この後、容器内の試料の10gを新たな容器に移し、新たな容器を前記した加振台の上に固定させ、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の1Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。さらに、新たな容器を、真空チャンバー内に移し、真空チャンバー内の圧力を0.5kPaまで低下させ、試料から1-プロパノールを気化させた。
さらに、新たな容器を真空チャンバーから取り出し、新たな容器内の試料の全体を覆う平板を試料の表面に被せ、平板の上に0.4kgの重り5個を等間隔に離間させて載せた。
この後、新たな容器の底面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、平板に圧着した試料を新たな容器の底面から引き剥がした。さらに、平板の裏面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、試料を平板から引き剥がした。
【0021】
実施例4
実施例3で作成した試料を用い、カレンダー成形法によって0.3mmの厚みのシートを成形した。なお、成形したシートは、実施例2のフィルムより黒色度が増えたシートになった。
次に、実施例2と同様にシートを切断し、断面を実施例2で用いた電子顕微鏡で観察した。断面からの反射電子線について、900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。シートの厚みは0.3mmであった。断面は、扁平状に潰されたペレットの表面が、1.7μmの厚みからなるアセチレンブラックのアグリゲートの集まりで覆われ、隣接する扁平状のペレット同士が、アグリゲートの集まりを介して接合されていた。
次に、作成したシートの表面の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST-4)。表面抵抗率は1.0Ωであったため、シートはアセチレンブラックの抵抗率0.21Ω・cmに近い抵抗を有した。このため、作成したシートは、アセチレンブラックの抵抗率に基づき、導電性、電磁波シールド性、帯電防止の機能を兼備する薄膜としても作用する。
【0022】
実施例5
本実施例は、実施例1で作成した懸濁液で、アクリル系エラストマーのペレットの表面を覆い、カレンダー成形によって、0.3mmの厚みのシートを成形した。アクリル系エラストマーのペレットとして、アクリル系エラストマーとPBT樹脂とを、ナノレベルに近い分散形態とし、柔軟性を維持し、耐熱性を高めたアクリル系エラストマーを用いた(例えば、アロン化成株式会社のXB-A60)。用いたアクリル系エラストマーの流動性は、230℃、21Nで12g/10分と優れるので、カレンダー成形のみならず、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形などによって、様々な形状の成形体が成形できる。なお、アクリル系エラストマーのペレットの密度は、1.15g/cmである。
最初に、ケッチェンブラックの10gと、1-プロパノールの80gを容器に充填し、1-プロパノールを攪拌して、ケッチェンブラックを1-プロパノールに浸漬させた。
この後、実施例1と同様に、容器の上に平板を被せ、平板の上に2kgの重り9個を等間隔に離間させて載せた。さらに、重りと平板とを除き、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を、5回繰り返した後に、重りを平板の上に載せたが、平板の動きが全く見られなかったため、一対の処理を停止した。
さらに、実施例1と同様に、容器に超音波ホモジナイザーを容器内の1-プロパノール中で稼働し、20kHzの超音波信号を5分間加え、1-プロパノールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりを1-プロパノール中に分散した懸濁液を作成した。
この後、予め除湿乾燥機で予備乾燥させたアクリル系エラストマーのペレットの60gを容器に投入し、ペレットの集まりを撹拌し、ペレットの集まりを、懸濁液に浸漬させた。
さらに、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。
この後、容器内の試料の10gを新たな容器に移し、新たな容器を前記した加振台の上に固定させ、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の1Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。さらに、新たな容器を、真空チャンバー内に移し、真空チャンバー内の圧力を1.5kPaまで低下させ、試料から1-プロパノールを気化させた。
さらに、新たな容器を真空チャンバーから取り出し、新たな容器内の試料の全体を覆う平板を試料の表面に被せ、平板の上に0.4kgの重り5個を等間隔に離間させて載せた。
この後、新たな容器の底面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、平板に圧着した試料を新たな容器の底面から引き剥がした。さらに、平板の裏面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、試料を平板から引き剥がした。
この試料を用い、カレンダー成形によって、0.3mmの厚みのシートを成形した。なお、成形したシートは、実施例4のシートより黒色度がさらに増えた。
次に、シートを切断し、断面を実施例2で用いた電子顕微鏡で観察した。断面からの反射電子線について、900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。シートの厚みは0.5mmであった。断面は、扁平状に潰されたペレットの表面が、1.7μmの厚みからなるケッチェンブラックのアグリゲートの集まりで覆われ、隣接する扁平状のペレット同士が、アグリゲートの集まりを介して接合されていた。
さらに、フィルムの遮光性を、JIS-L-1055A法に基づいて測定した結果、96%の遮光率を有し、優れた遮光シートであることが分かった。
さらに、シートの熱放射率を、フーリエ変換赤外分光光度計と放射測定ユニットからなる分析器(株式会社コベルコ科研が所有する設備)で測定した結果、熱放射率が0.94と高く、優れた放熱シートであることが分かった。
【0023】
実施例6
本実施例は、実施例3で作成した懸濁液で、実施例5で用いたアクリル系エラストマーのペレットの表面を懸濁液で覆い、カレンダー成形によって、0.3mmの厚みのシートを成形した。また、カーボンブラックとして、実施例3のアセチレンブラックを用いた。さらに、アルコールとして、1-ブタノールを用いた。
最初に、アセチレンブラックの10gと、1-ブタノールの80gを容器に充填し、1-ブタノールを攪拌して、アセチレンブラックを1-ブタノールに浸漬させた。
この後、実施例3と同様に、容器の上に平板を被せ、平板の上に2kgの重り9個を等間隔に離間させて載せた。さらに、重りと平板とを除き、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。こうした圧縮荷重を加える処理と振動加速度を加える処理とからなる一対の処理を、5回繰り返した後に、重りを平板の上に載せたが、平板の動きが全く見られなかったため、一対の処理を停止した。
さらに、実施例3と同様に、容器に超音波ホモジナイザーを容器内の1-ブタノール中で稼働し、20kHzの超音波信号を5分間加え、1-ブタノールを介してアグリゲート同士が絡み合ったアグリゲートの集まりを1-ブタノール中に分散した懸濁液を作成した。
この後、実施例3で用いた予め予備乾燥させたアクリル系エラストマーのペレットの60gを、容器に投入し、ペレットの集まりを撹拌し、ペレットの集まりを、懸濁液に浸漬させた。さらに、容器を加振台の上に固定させ、容器に、前後、左右、上下の3方向の2Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。
この後、容器内の試料の10gを新たな容器に移し、新たな容器を前記した加振台の上に固定させ、新たな容器に、前後、左右、上下の3方向の1Gからなる振動加速度を繰り返し加えた。さらに、新たな容器を、真空チャンバー内に移し、真空チャンバー内の圧力を0.5kPaまで低下させ、試料から1-ブタノールを気化させた。
さらに、新たな容器を真空チャンバーから取り出し、新たな容器内の試料の全体を覆う平板を試料の表面に被せ、平板の上に0.4kgの重り5個を等間隔に離間させて載せた。
この後、新たな容器の底面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、平板に圧着した試料を新たな容器の底面から引き剥がした。さらに、平板の裏面の5個所に0.3Gからなる衝撃加速度を同時に加え、試料を平板から引き剥がした。
この試料を用い、カレンダー成形によって、0.3mmの厚みのシートを成形した。なお、成形したシートは、実施例5のシートより黒色度がさらに増えた。
次に、実施例2と同様にシートを切断し、断面を実施例2で用いた電子顕微鏡で観察した。断面からの反射電子線について、900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。シートの厚みは0.3mmであった。断面は、扁平状に潰されたペレットの表面が、1.7μmの厚みからなるアセチレンブラックのアグリゲートの集まりで覆われ、隣接する扁平状のペレット同士が、アグリゲートの集まりを介して接合されていた。
次に、作成したシートの表面の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST-4)。表面抵抗率は1.0Ωであったため、シートはアセチレンブラックの抵抗率0.21Ω・cmに近い抵抗を有した。このため、作成したシートは、アセチレンブラックの抵抗率に基づき、導電性、電磁波シールド性、帯電防止の機能を兼備する薄膜としても作用する。
【0024】
以上に説明した実施例は一部の事例に過ぎない。つまり、9段落に記載したアルコールを用い、また、11段落に記載したケッチェンブラックを、ないしは、13段落に記載したアセチレンブラックを、カーボンブラックとして用い、さらに、実施形態1に記載した熱可塑性エラストマーを用い、6段落に記載した熱可塑性エラストマーの原料の表面全体がアグリゲートの集まりで満遍なく覆われ、該原料同士が接合した該原料の集まりを作成する方法に従って、様々な材料構成からなる接合した原料の集まりが作成できる。
さらに、実施例で記載したカレンダー成形法のみならず、14段落に記載した成形方法が、熱可塑性エラストマーの6つの成形方法を包括する成形方法であるため、15段落に記載した他の5種類の成形方法によって、熱可塑性エラストマーの成形体が成形できる。この成形体は、熱可塑性エラストマーの原料の表面を覆うカーボンブラックの性質を持つ。
【符号の説明】
【0025】
1 オレフィン系エラストマーのペレット 2 ケッチェンブラックのアグリゲートの集まり
図1