(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115981
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/20 20220101AFI20240820BHJP
【FI】
F24H9/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021930
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】古谷 勇人
(57)【要約】
【課題】樹脂シートにネジ除け孔が設けられているにも拘わらず、異常発生を検知するタイミングが遅れるようなことのない給湯器を提供する。
【解決手段】ネジ除け孔13が穿設された樹脂シート10において、導電パターン11におけるネジ除け孔13と上下方向で重なる部分は、ネジ除け孔13と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅を狭くし、ネジ除け孔13の下側で蛇行させた。また、導電パターン11において、ネジ除け孔13と上下方向で重ならず且つネジ除け孔13と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔13に最も近い部分には、ネジ除け孔13側へ向かって左右方向に張り出す膨出部14、14を設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナを備えた燃焼室のケーシング周囲に、上下方向が幅方向で左右方向が長手方向とされた帯状の樹脂シートが巻回されているとともに、前記樹脂シートの表面に、前記上下方向へ往復して蛇行しながら前記左右方向に延びる導電パターンが形成されてなる過熱防止装置が搭載された給湯器であって、
前記樹脂シートに、ネジ除け孔が穿設されているとともに、
前記導電パターンにおける前記ネジ除け孔と上下方向で重なる部分は、前記ネジ除け孔と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅が狭くされ、前記ネジ除け孔の上側及び/又は下側で蛇行している一方、
前記導電パターンにおいて、前記ネジ除け孔と上下方向で重ならず且つ前記ネジ除け孔と左右方向で重なっている部分のうち、前記ネジ除け孔に最も近い部分には、前記ネジ除け孔側へ向かって張り出す膨出部が設けられていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記膨出部から前記ネジ除け孔の開口縁までの距離と、上下幅が狭い蛇行部分における前記ネジ除け孔に近い側のU字折り返し部から前記ネジ除け孔の開口縁までの距離とは同距離であることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナを備えた燃焼室のケーシング周囲に、導電パターンが形成された樹脂シートを巻回してなる過熱防止装置が搭載された給湯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の給湯器には、上下方向へ蛇行しながら左右方向へ延びる導電パターンが表面に印刷された樹脂シートを燃焼室のケーシングの周囲に巻回することによって、燃焼室のケーシングの異常過熱によるひび割れ等の発生を検知可能とした過熱防止装置が搭載されている(たとえば特許文献1)。一方、特許文献1に記載の給湯器も含めた従来周知の給湯器では、自身を壁面に設置する設置金具を筐体背面にネジ止することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の給湯器では、設置金具をネジ止めするための金具取付ネジと、樹脂シートにおける燃焼室の後側に位置する箇所とが干渉して、導電パターンが破損してしまうおそれがある。そこで、樹脂シートに、金具取付ネジのネジ部を遊挿可能なネジ除け孔を穿設するという対応も考えられる。ただ、ネジ除け孔を穿設する場合、ネジ除け孔と導電パターンとが重ならないようにしなければならないため、ネジ除け孔の周囲では導電パターンの上下幅を狭くする必要がある。したがって、樹脂シートのネジ除け孔の周囲において、導電パターンの密度が粗になりやすいという問題がある。そして、ネジ除け孔の周囲で導電パターンの密度が粗になると、異常発生に伴って樹脂シートにおけるネジ除け孔の穿設箇所近傍が溶融したにも拘わらず、導電パターンが破断するまでに時間がかかってしまい、結果として異常発生を検知するタイミングが遅れてしまうという状況が起こり得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、樹脂シートにネジ除け孔が設けられているにも拘わらず、異常発生を検知するタイミングが遅れるようなことのない給湯器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、バーナを備えた燃焼室のケーシング周囲に、上下方向が幅方向で左右方向が長手方向とされた帯状の樹脂シートが巻回されているとともに、樹脂シートの表面に、上下方向へ往復して蛇行しながら左右方向に延びる導電パターンが形成されてなる過熱防止装置が搭載された給湯器であって、樹脂シートに、ネジ除け孔が穿設されているとともに、導電パターンにおけるネジ除け孔と上下方向で重なる部分は、ネジ除け孔と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅が狭くされ、ネジ除け孔の上側及び/又は下側で蛇行している一方、導電パターンにおいて、ネジ除け孔と上下方向で重ならず且つネジ除け孔と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔に最も近い部分には、ネジ除け孔側へ向かって張り出す膨出部が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、膨出部からネジ除け孔の開口縁までの距離と、上下幅が狭い蛇行部分におけるネジ除け孔に近い側のU字折り返し部からネジ除け孔の開口縁までの距離とは同距離であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電パターンにおけるネジ除け孔と上下方向で重なる部分については、ネジ除け孔と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅を狭くし、ネジ除け孔の上側又は下側で蛇行させる一方、導電パターンにおいて、ネジ除け孔と上下方向で重ならず且つネジ除け孔と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔に最も近い部分には、ネジ除け孔側へ向かって張り出す膨出部を設けた。したがって、導電パターンの密度が粗になりやすいネジ除け孔の穿設箇所の周囲においても、導電パターンが広い範囲を覆っているため、樹脂シートの溶融から導電パターンの破断までに時間がかかってしまうようなことがなく、ひいては異常発生を検知するタイミングが遅れることのない給湯器とすることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、膨出部からネジ除け孔の開口縁までの距離と、上下幅が狭い蛇行部分におけるネジ除け孔に近い側のU字折り返し部からネジ除け孔の開口縁までの距離とを同距離としているため、ネジ除け孔の周縁において導電パターンが存在しない領域を一層削減することができ、異常発生を検知するタイミングが一層遅れない給湯器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】前面のフロントカバーが外された状態にある給湯器を正面から示した説明図である。
【
図2】背板と、その前側で巻回状態にある樹脂シートを前側から示した斜視説明図である。
【
図3】背板と、その前側で巻回状態にある樹脂シートを後側から示した斜視説明図である。
【
図4】樹脂シートにおけるネジ除け孔周りを拡大して示した説明図である。
【
図5】樹脂シートにおける導電パターンの変更例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる給湯器について、図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、前面のフロントカバーが外された状態にある給湯器1を正面から示した説明図である。
図2は、背板2Aと、その前側で巻回状態にある樹脂シート10を前側から示した斜視説明図である。
図3は、背板2Aと、その前側で巻回状態にある樹脂シート10を後側から示した斜視説明図である。
図4は、樹脂シート10におけるネジ除け孔13周りを拡大して示した説明図である。
【0010】
給湯器1は、前面に開口する箱本体と、該箱本体の前面を閉塞するフロントカバーとを備えた四角箱状の筐体2を有する。筐体2の上部には、排気部3が設けられており、排気部3には、フロントカバーを貫通して前方へ突出する排気筒4が備えられている。また、筐体2内には、燃焼室5が設けられている。燃焼室5は、ケーシング内にバーナユニットと熱交換器とを収容してなり、該燃焼室5には、筐体2内を引き回される複数の配管7、7・・(ガス管や給水管、出湯管等)が接続されている。配管7、7・・は、筐体2底部に設けられた接続口6、6・・を介して外部配管と接続されている。また、筐体2内における燃焼室5の下側には、燃焼室5に燃焼用空気を供給する給気ファン8が取り付けられている。加えて、筐体2内における燃焼室5の前側には、給湯器1の動作を制御するコントローラ20が設置されている。なお、9は、排気部3で発生するドレンを中和するための中和器である。
【0011】
上記給湯器1においては、出湯管に接続された外部配管の給湯栓が開栓され、給水管から器具内に通水されると、コントローラ20による制御のもと給気ファン8を作動させるとともにバーナユニットを燃焼させ、熱交換器において水とバーナユニットの燃焼排気とを熱交換させる。そして、加熱された湯を出湯管及び外部配管を介して給湯栓から出湯させる。
【0012】
ここで、本発明の要部となる樹脂シート10について説明する。
給湯器1の燃焼室5には、燃焼室5のケーシングの異常過熱によるひび割れ等の発生を検知するための樹脂シート10が巻回されている。樹脂シート10は、上下方向が幅方向で左右方向が長手方向とされた帯状体である。該樹脂シート10の表面には、左右方向へ所定の間隔毎に設けられた上下方向へ延びる直線部と、左右方向で隣り合う直線部同士を繋ぐU字部とを有することにより、上下方向へ往復して蛇行しながら左右方向に延びる導電パターン11が、左右方向の全長に亘って連続状に印刷されている。また、樹脂シート10の左右両端には、端子部12が設けられている。そして、端子部12を介して、導電パターン11をコントローラ20に電気的に接続することにより、過熱防止装置が形成される。
【0013】
このような樹脂シート10を備えた過熱防止装置では、燃焼室5のケーシングに異常過熱によるひび割れや穴あき等が生じて燃焼排気が噴出した際、樹脂シート10の溶融と共に導電パターン11が破断して抵抗値が急増又は無限大となることで、コントローラ20が異常発生を検知し、燃料ガスの供給を停止してバーナユニットを消火させるようになっている。
【0014】
一方、給湯器1における筐体2の背板2A後面には、給湯器1を壁面に設置するための設置金具30がネジ止めされている。そして、該設置金具30をネジ止めするための金具取付ネジ31、31のネジ部32、32が、背板2Aの前面から前方(筐体2内)へ突出している。そこで、樹脂シート10において、燃焼室5のケーシングへ巻回する際に燃焼室5の後側に位置する箇所には、ネジ部32を遊挿させることでネジ部32との干渉を防止可能な2つのネジ除け孔13、13が穿設されている。
【0015】
そして、樹脂シート10における各ネジ除け孔13の穿設箇所では、導電パターン11の蛇行態様が他の箇所での蛇行態様とは異なっている。すなわち、導電パターン11のうちネジ除け孔13と上下方向で重なる部分では、ネジ除け孔13と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅が狭くされ、ネジ除け孔13の下側で蛇行しており、導電パターン11とネジ除け孔13とが被らないようになっている。また、導電パターン11のうち、ネジ除け孔13と上下方向で重ならず且つネジ除け孔13と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔13に最も近い部分には、ネジ除け孔13側へ向かって左右方向に張り出す膨出部14、14が設けられている。
【0016】
なお、左右の膨出部14、14からネジ除け孔13の開口縁までの距離と、上下幅の狭い蛇行部分におけるネジ除け孔13に近い側(上側)のU字折り返し部15、15からネジ除け孔13の開口縁までの距離とは同距離とされている。すなわち、ネジ除け孔13と同心で、且つ、ネジ除け孔13よりも径の大きな仮想円Lを想定した際、膨出部14、14とU字折り返し部15、15とが仮想円Lに接するように、膨出部14及びU字折り返し部15は夫々設けられている。また、左右の膨出部14、14からネジ除け孔13の開口縁までの距離、及び上下幅の狭い蛇行部分におけるネジ除け孔13に近い側のU字折り返し部15、15からネジ除け孔13の開口縁までの距離は、導電パターン11の幅(導電パターン11が延びる方向に直交する方向における幅であって、たとえば直線部における左右幅)と同じとされている。さらに、導電パターン11において、膨出部14と上下幅の狭い蛇行部分とは、上下方向で重なっている。
【0017】
以上のような構成を有する給湯器1によれば、樹脂シート10に、ネジ除け孔13が穿設されているとともに、導電パターン11におけるネジ除け孔13と上下方向で重なる部分は、ネジ除け孔13と上下方向で重ならない部分と比べて上下幅が狭くされ、ネジ除け孔13の下側で蛇行している一方、導電パターン11において、ネジ除け孔13と上下方向で重ならず且つネジ除け孔13と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔13に最も近い部分には、ネジ除け孔13側へ向かって左右方向に張り出す膨出部14、14が設けられている。したがって、ネジ除け孔13の穿設箇所の周囲においても、導電パターン11が広い範囲を覆っているため、樹脂シート10の溶融から導電パターン11の破断までに時間がかかってしまうようなことがなく、異常発生を検知するタイミングが遅れることのない給湯器1とすることができる。
【0018】
また、膨出部14、14からネジ除け孔13の開口縁までの距離と、上下幅が狭い蛇行部分におけるネジ除け孔13に近い側のU字折り返し部15、15からネジ除け孔13の開口縁までの距離とが同距離とされ、膨出部14と上下幅の狭い蛇行部分とが上下方向で重なっているため、ネジ除け孔13の周縁において導電パターン11が存在しない領域を一層削減することができ、異常発生を検知するタイミングが一層遅れない給湯器1とすることができる。
【0019】
なお、本発明に係る給湯器は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、給湯器の全体的な構成は勿論、樹脂シートや導電パターンに係る構成についても必要に応じて適宜変更することができる。
【0020】
たとえば、上記実施形態の導電パターン11に代えて、
図5に示すような導電パターン41、46を形成して樹脂シート40、45を構成することも可能である。
図5(a)の樹脂シート40に形成された導電パターン41では、ネジ除け孔13と上下方向で重ならず且つネジ除け孔13と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔13に最も近い部分に、ネジ除け孔13側へ向かって左右方向のみならず下方へも張り出す膨出部42、42を設けている。また、
図5(b)の樹脂シート45に形成された導電パターン46では、ネジ除け孔13と上下方向で重ならず且つネジ除け孔13と左右方向で重なっている部分のうち、ネジ除け孔13に最も近い部分に、ネジ除け孔13側へ向かって左右方向へ張り出す2つの膨出部47、48を夫々設けている。このように膨出部の数や膨出部の具体的形状は適宜設計変更することができる。
また、上記実施形態では、ネジ除け孔の下側に上下幅の狭い蛇行部分を形成しているが、ネジ除け孔の位置によってはネジ除け孔の上側で蛇行させるとしても何ら問題はないし、ネジ除け孔の上下両側で蛇行させることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1・・給湯器、2・・筐体、10、40、45・・樹脂シート、11、41、46・・導電パターン、13・・ネジ除け孔、14、42、47、48・・膨出部、15・・U字折り返し部、20・・コントローラ、32・・ネジ部。