(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115984
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】回収装置、回収器、及び回収方法
(51)【国際特許分類】
B63C 7/10 20060101AFI20240820BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240820BHJP
B63C 11/48 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B63C7/10
B63C11/00 B
B63C11/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021935
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】505323493
【氏名又は名称】株式会社マリン・ワーク・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宇田 公紀
(72)【発明者】
【氏名】安田 愛
(72)【発明者】
【氏名】中富 伸幸
(57)【要約】
【課題】対象物の回収作業の作業効率を向上することが可能な回収装置を提供する。
【解決手段】対象物Oまで移動可能なドローン9と、ドローン9に着脱自在に支持され、対象物Oを保持してドローン9から離脱すると共に浮上することによって対象物Oを回収する回収器11とを備え、回収器11は、対象物Oを保持する保持部47と、保持部47に取り付けられ充填物によって膨張することで回収器11の浮上を可能とするバルーン49と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物まで移動可能なドローンと、
前記ドローンに着脱自在に支持され前記対象物を保持して前記ドローンから離脱すると共に浮上することによって前記対象物を回収する回収器とを備え、
前記回収器は、
前記対象物を保持する保持部と、
前記保持部に取り付けられ充填物によって膨張することで前記浮上を可能とするバルーンと、
を備えた、
回収装置。
【請求項2】
請求項1の回収装置であって、
前記ドローンは、前記回収器をスライド可能に支持する支持部を備え、前記バルーンが膨張した際に前記回収器をスライドさせて前記離脱及び前記浮上を許容する、
回収装置。
【請求項3】
請求項2の回収装置であって、
前記回収器は、前記バルーンを膨張させる前記充填物を収容した筒状のボンベ部を備え、前記ボンベ部が前記支持部にスライド可能に支持された、
回収装置。
【請求項4】
請求項3の回収装置であって、
前記回収器は、前記ボンベ部に対して揺動可能に支持され前記揺動によって前記ボンベ部から前記充填物を前記バルーンへと充填させるレバーを備え、
前記ドローンは、前記レバーに係合して動作することで前記レバーを揺動させる動作部を備えた、
回収装置。
【請求項5】
請求項4の回収装置であって、
前記ドローンは、相対的に開閉自在な一対の開閉体を備え、
前記支持部は、前記一対の開閉体の一方に備えられ、
前記動作部は、前記一対の開閉体の他方に備えられた、
回収装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項の回収装置であって、
前記保持部は、
開閉自在な一対の保持アームと、
前記一対の保持アーム間に進退自在な進退部材と、
前記一対の保持アームと前記進退部材を接続して連動させるリンク部とを備え、
前記一対の保持アームは、前記進退部材の前記一対の保持アーム間への進出動作により連動して開き、前記進退部材の後退動作により連動して閉じる、
回収装置。
【請求項7】
対象物を保持してドローンから離脱すると共に浮上することによって前記対象物を回収する回収器であって、
前記対象物を保持する保持部と、
前記保持部に取り付けられ充填物によって膨張することで前記浮上を可能とするバルーンと、
を備えた、
回収器。
【請求項8】
請求項7の回収器であって、
前記バルーンを膨張させて前記対象物を保持した前記保持部を浮上させる前記充填物を収容した筒状のボンベ部を備え、前記ボンベ部が前記ドローン側にスライド可能に支持される、
回収装置。
【請求項9】
請求項8の回収器であって、
前記ボンベ部に対して揺動可能に支持され前記揺動によって前記ボンベ部から前記充填物を前記バルーンへと充填させるレバーを備え、
前記レバーは、前記ドローンに設けられた動作部に係合して、前記動作部の動作によって揺動する、
回収器。
【請求項10】
請求項7~9の何れか一項の回収器であって、
前記保持部は、
開閉自在な一対の保持アームと、
前記一対の保持アーム間に進退自在な進退部材と、
前記一対の保持アームと前記進退部材を接続して連動させるリンク部とを備え、
前記一対の保持アームは、前記進退部材の前記一対のアーム間への進出動作により連動して開き、前記進退部材の後退動作により連動して閉じる、
回収器。
【請求項11】
対象物までドローンを移動させ、
前記ドローンに着脱自在に支持された回収器に前記対象物を保持し、
前記回収器のバルーンを充填物の充填により膨張させ、
前記対象物を保持した前記回収器を前記ドローンから離脱させつつ前記膨張したバルーンによって浮上させる、
回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中のへい死魚等の対象物を回収可能とする回収装置、回収器、及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回収装置としては、例えば特許文献1のように、海底から鉱物資源を回収する水中移動構造体がある。
【0003】
この水中移動構造体では、主浮力体、ボンベ室、及びフックを備えている。主浮力体は、蛇腹状の浮袋である。ボンベ室は、主浮力体に充填されるガスを保持する。フックは、海底の鉱物資源を収容した対象物である荷揚げ容器を引っ掛けるようになっている。
【0004】
かかる水中移動構造体は、主浮力体が縮小した状態で重力により海底へ沈降し、海底の鉱物資源を収容した荷揚げ容器をフックに引っ掛ける。その後、ボンベ室のガスを主浮力体に充填し、主浮力体を膨張させて浮上する。こうして水中移動構造体は、沈降及び浮上することで海底の鉱物資源を回収することができる。
【0005】
しかし、従来の回収装置である水中移動構造体は、荷揚げ容器まで適切に移動することが困難であり、また沈降自体に時間を要し、さらにフックに荷揚げ容器を引っ掛ける作業が困難であった。結果として、全体としての荷揚げ容器の回収作業の作業効率が悪かった。
【0006】
なお、こういった対象物の回収の問題は、水中のみならず、例えば、谷底等の危険地帯への落下物等を回収する場合のように陸上でも生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、対象物の回収作業の作業効率が悪かった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対象物まで移動可能なドローンと、前記ドローンに着脱自在に支持され前記対象物を保持して前記ドローンから離脱すると共に浮上することによって前記対象物を回収する回収器とを備え、前記回収器は、前記対象物を保持する保持部と、前記保持部に取り付けられ充填物によって膨張することで前記浮上を可能とするバルーンと、を備えた、回収装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、対象物を保持してドローンから離脱すると共に浮上することによって前記対象物を回収する回収器であって、前記対象物を保持する保持部と、前記保持部に取り付けられ充填物によって膨張することで前記浮上を可能とするバルーンと、を備えた、回収器を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、対象物までドローンを移動させ、前記ドローンに着脱自在に支持された回収器に前記対象物を保持し、前記回収器のバルーンを充填物の充填により膨張させ、前記対象物を保持した前記回収器を前記ドローンから離脱させつつ前記膨張したバルーンによって浮上させる、回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ドローンを対象物まで迅速かつ適切に移動させて回収器の保持部により対象物を保持し、対象物を保持した回収器をドローンから離脱させると共にバルーンにより迅速に浮上させることで、対象物を回収することができる。従って、対象物の回収作業の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る回収装置を備えた回収システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の回収装置のドローンのアーム及び回収器を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2のアームの一部を拡大して示しアームを先端部側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の回収装置のドローンのアーム及び回収器のバルーンの膨張状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のアーム及び回収器の一部を拡大して示しアームを先端部側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
対象物の回収作業の作業効率を向上するという目的を、ドローンを用いることによって実現した。
【0015】
図のように、回収装置3は、ドローン9と、回収器11とを備えている。ドローン9は、対象物Oまで移動可能に構成されている。回収器11は、ドローン9に着脱自在に支持され、対象物Oを保持してドローン9から離脱すると共に浮上することによって対象物Oを回収する。
【0016】
回収器11は、保持部47と、バルーン49とを備えている。保持部47は、対象物Oを保持するものである。バルーン49は、保持部47に取り付けられ、充填物によって膨張することで回収器11の浮上を可能とする。
【0017】
回収装置3は、水中用又は陸上用とすることが可能である。水中用の場合、ドローン9は、水中ドローンによって構成できる。陸上用の場合、ドローン9は、飛行するドローンの他、車輪等によって走行するドローン等とすることも可能である。水中用の回収装置3は、生簀Fのへい死魚や鉱物等を対象物Oとした回収が可能である。陸上用の回収装置3は、谷底のような危険地帯での落下物等を対象物Oとした回収が可能である。バルーン49に充填される充填物は、気体が好適であるが、回収装置3が水中用の場合、発泡材料等とすることも可能である。
【0018】
回収器11の離脱は、膨張したバルーン49によって引き起こされるのが好ましい。具体的には、ドローン9は、回収器11をスライド可能に支持する支持部33を備え、バルーン49が膨張した際に回収器11をスライドさせて回収器11の離脱及び浮上を許容する。
【0019】
ただし、回収器11は、ドローン9のグリッパーによって保持され、グリッパーから解放されることでドローン9から離脱する構成等とすることも可能である。
【0020】
回収器11をスライド可能にドローン9の支持部に支持する場合、回収器11は、バルーン49を膨張させる充填物を収容した筒状のボンベ部83とを備え、ボンベ部83が支持部33にスライド可能に支持されてもよい。
【0021】
なお、回収器11は、ボンベ部83以外の部分を支持部33に支持してもよい。また、ボンベ部83は、ドローン9側に備えてもよい。さらに、ボンベ部83は、回収装置3外に設け、バルーン49には、ボンベ部83に接続されたチューブを介して充填物を充填してもよい。
【0022】
回収器11は、ボンベ部83に対して揺動可能に支持され、揺動によってボンベ部83から充填物をバルーン49へと充填させるレバー87を備えてもよい。この場合、ドローン9は、レバー87に係合して動作することでレバー87を揺動させる動作部35を備える。
【0023】
ドローン9は、相対的に開閉自在な一対の開閉体27a及び27bを備え、支持部33は、一対の開閉体27a及び27bの一方に備えられ、動作部35は、一対の開閉体27a及び27bの他方に備えられてもよい。
【0024】
保持部47は、開閉自在な一対の保持アーム51a及び51bと、一対の保持アーム51a及び51b間に進退自在な進退部材53と、一対の保持アーム51a及び51bと進退部材53を接続して連動させるリンク部54とを備えてもよい。この場合、一対の保持アーム51a及び51bは、進退部材53の一対の保持アーム51a及び51b間への進出動作により連動して開き、進退部材53の後退動作により連動して閉じる。
【0025】
回収方法では、対象物Oまでドローン9を移動させ、ドローン9に着脱自在に支持された回収器11に対象物Oを保持し、回収器11のバルーン49を充填物の充填により膨張させ、対象物Oを保持した回収器11をドローン9から離脱させつつ膨張したバルーン49によって浮上させる。
【実施例0026】
[回収システム]
図1は、本発明の実施例1に係る回収装置を備えた回収システムを示す概略構成図である。
【0027】
本実施例の回収システム1は、水中の対象物Oとして生簀F内における鮪等のへい死魚を回収するものである。生簀Fは、例えば海中の一部を網によって区画したものである。回収システム1は、回収装置3と、ケーブル5と、ケーブルガイド7とを備えている。
【0028】
回収装置3は、ドローン9と、回収器11とを備える。ドローン9は、対象物Oまで移動可能に構成されている。回収器11は、ドローン9に着脱自在に支持され、対象物Oを保持してドローン9から離脱すると共に浮上することによって対象物Oを回収する。ドローン9及び回収器11については後述する。この回収装置3は、ケーブル5によって情報の送受信が行われる。回収装置3への電力の供給は、図示しないバッテリーにより行われるが、ケーブル5によって行うことも可能である。
【0029】
ケーブル5は、ケーブルガイド7によって水面Wから生簀Fの底へと案内された後、回収装置3へと至る。なお、ケーブルガイド7を省略することも可能である。本実施例のケーブル5は、通信用のケーブルである。このケーブル5は、長手方向の所定間隔毎に錘13が取り付けられており、ケーブルガイド7と回収装置3との間で浮上することが抑制されている。
【0030】
ケーブルガイド7は、特に限定されるものではないが、水面Wから伸びるワイヤー15であり、下端に錘16が取り付けられている。ケーブルガイド7のワイヤー15には、ケーブル5を保持するリング等のリテーナー17が設けられている。
【0031】
図2は、
図1の回収装置のドローンのアーム及び回収器を示す斜視図である。
図3は、
図2のアーム及び回収器を示す平面図である。
図4は、
図2のアーム及び回収器を示す側面図である。
図2のアームの一部を拡大して示しアームを先端部側から見た斜視図である。
図6は、
図1の回収装置のドローンのアーム及び回収器を示しバルーンの膨張状態を示す斜視図である。
図7は、
図6のアーム及び回収器の一部を拡大して示しアームを先端部側から見た斜視図である。
【0032】
回収装置3のドローン9は、特に限定されるものではなく、遠隔操作可能な水中ドローンであればよい。本実施例のドローン9は、
図1のように、フレーム19にカメラ21やスクリュー23等が取り付けられている。このドローン9は、操作者がカメラ21で撮像された映像を確認しながら操作し、操作に応じてスクリュー23を動作させて水中を移動する。ドローン9には、回収器11を着脱自在に支持するためのアーム25が備えられている。
【0033】
アーム25は、
図2~
図5のように、棒状に構成されている。アーム25は、ドローン9に対して固定又は可動の何れであってもよい。このアーム25の先端には、一対の開閉体27a及び27bが取り付けられている。
【0034】
開閉体27a及び27bは、アーム25の軸方向に伸びた先端部間が開閉するようにアーム25に対して回転自在に支持されている。一方の開閉体27aは、先端部に支持部33を有している。支持部33は、後述する回収器11をスライド可能に支持する。後述する回収器11のバルーン49が膨張した際には、支持部33が回収器11をスライドさせて離脱及び浮上を許容する。
【0035】
本実施例の支持部33は、リング状に構成されている。なお、支持部33のリング状は、閉じたリング状の他、周方向の一部が開放されたリング状であってもよい。また、支持部33は、回収器11をスライド自在に支持できれば良く、リング状である必要は無い。従って、支持部33は、一対の平行な棒状体等で構成してもよい。また、開閉体27a及び27bは、アーム25を介さずにドローン9に取り付けてもよい。
【0036】
このリング状の支持部33は、上下方向に開口するようになっている。従って、支持部33は、回収器11を上下方向にスライド自在とする。なお、上下方向とは、平常時における上下方向である(以下、同じ。)。平常時とは、開閉体27a及び27bが水平方向に開閉可能な状態をいう。
【0037】
他方の開閉体27bは、先端部に動作部としてのピン35が立設されている。ピン35は、平常時において上方に向けて伸びる。ピン35は、
図6及び
図7のように、開閉体27bの開閉動作に応じて移動することで動作する。このピン35は、後述するレバー87に係合して動作することで、レバー87を揺動させるようになっている。
【0038】
これら開閉体27a及び27bは、
図5及び
図7のように、基端部から軸方向に交差する方向に延びる延設部37a及び37bが設けられている。延設部37aは、一対の板体39a及び39bからなり、延設部37bは、上下方向で延設部37aの板体39a及び39b間に位置する板体からなる。これら延設部37a及び37bは、上下から狭持された可動部41の支持板43a及び43bにボルト44が挿通することで回転自在に支持されている。
【0039】
可動部41は、アーム25に対して軸方向に移動自在に支持されている。可動部41の移動に応じ、開閉体27a及び27bは、延設部37a及び37bが揺動し、全体として開閉動作を行う。可動部41には、
図2及び
図6のアーム25内を挿通する可動軸45が結合されている。従って、可動部41は、この可動軸45を介して、ドローン9のモーター等によって軸方向に駆動されるようになっている。なお、開閉体27a及び27bは、何れか一方のみが開閉動作を行い、他方をアーム25に固定的に設けてもよい。
【0040】
回収器11は、
図2~
図4及び
図6のように、保持部47と、バルーン49とを備えている。
【0041】
保持部47は、対象物Oを保持するものである。本実施例の保持部47は、一対の保持アーム51a及び51bと、進退部材53と、リンク部54とを備えている。ただし、保持部47は、対象物Oを保持できる限り、特に限定されるものではない。このため、保持部47は、対象物Oに応じてフック等の他の構造を採用してもよい。
【0042】
一対の保持アーム51a及び51bは、開閉自在に構成されている。本実施例の保持アーム51a及び51bは、それぞれ中間部においてベース52に回転自在に支持されている。なお、中間部は、保持アーム51a及び51bの先端部及び基端部の間を意味し、先端部及び基端部間の中央を意味するものではない。
【0043】
ベース52は、対向する一対のベース板59a及び59bをボルト61a及び61bにより結合して構成されている。保持アーム51a及び51bの中間部における支持は、ベース52の下部側のボルト61aの軸部がそれぞれ保持アーム51a及び51bの中間部を挿通することで行われている。
【0044】
保持アーム51a及び51bの中間部における支持位置は、ベース52の幅方向に偏倚している。幅方向とは、平常時における
図4の側面図における幅方向をいう。偏倚とは、幅方向の中央に対してずれていることをいう。
【0045】
これら保持アーム51a及び51bは、先端部側が、中間部の支持位置の偏倚とは幅方向における逆側にベース52から引き出される。このとき、保持アーム51a及び51bは、ベース52内で相互に交差する。この交差は、一方の保持アーム51aを構成する一対の板体63a及び63b間に他方のアーム51bの板体63cが位置することで行われている。なお、保持アーム51a及び51bの先端部側とは、保持アーム51a及び51bの中間部に対して先端部寄りの部分をいう。
【0046】
保持アーム51a及び51bの先端部側は、ベース52から引き出された後、下方に伸びる。先端部は、パッド65a及び65bが取り付けられており、
図6の保持アーム51a及び51bの閉じ状態でパッド65a及び65bが突き当たるようになっている。
【0047】
保持アーム51a及び51bの基端部側は、中間部の支持位置の偏倚と同一側、つまり先端部側とは幅方向の反対側にベース52から引き出されている。なお、基端部側とは、保持アーム51a及び51bの中間部に対して基端部寄りの部分をいう。基端部には、リンク部54が接続される。
【0048】
進退部材53は、一対の保持アーム51a及び51b間に進退自在に構成されている。進退部材53は、上下方向に沿って伸びる長尺状の板体で構成されている。この進退部材53は、ベース52を上下方向でスライド自在に挿通している。本実施例では、一方のベース板59aを挿通している。一方のベース板59aは、他方のベース板59b及び進退部材53に対して厚く構成されている。
【0049】
進退部材53の下端部は、一対の保持アーム51a及び51b間に位置している。この下端部には、保持アーム51a及び51b間に入り込んだ対象物Oを受ける板状の受け部67が設けられている。この受け部67が保持アーム51a及び51b間で進退する。進退は、保持アーム51a及び51bの先端部に対する進退であり、進出は、先端部に向けて移動することをいい、後退とは、先端部から離れるように移動することをいう。
【0050】
受け部67は、幅方向に沿った長尺状の板体で構成されている。受け部67の幅方向両端には、凹部69が設けらえている。凹部69は、
図6の閉じ状態で保持アーム51a及び51bとの干渉を避ける逃げ部となっている。
【0051】
ベース52に対する上方では、進退部材53に幅方向に膨出したストッパー71が設けられている。このストッパー71により、進退部材53は、ベース52から下方へ抜けることが抑制されている。ストッパー71には、リンク部54が接続される。なお、ストッパー71をリンク部54に接続する必要は無く、進退部材53がリンク部54に接続されていればよい。
【0052】
リンク部54は、一対の保持アーム51a及び51bと進退部材53を接続して連動させるものである。本実施例のリンク部54は、進退部材53の一対の保持アーム51a及び51b間への進出動作により一対の保持アーム51a及び51bを連動させて開き、進退部材53の後退動作により一対の保持アーム51a及び51bを連動させて閉じる。
【0053】
なお、リンク部54及び進退部材53を省略して電気的に動作するアクチュエーターを設けることも可能である。
【0054】
本実施例のリンク部54は、長尺板状のリンク部材73a及び73bからなる。リンク部材73a及び73bは、それぞれストッパー71と保持アーム51a及び51bの基端部57a及び57bとの間を接続する。リンク部材73a及び73bの接続は、ストッパー71と基端部57a及び57bとに対して回転自在なものとなっている。本実施例においては、リンク部材73a及び73bと、ストッパー71及び基端部57a及び57bとをボルト75の軸部が貫通する。
【0055】
進出状態の進退部材53が後退動作を行うと、
図6のようにストッパー71が上方へ移動する。このとき、リンク部54のリンク部73a及び73bを介して保持アーム51a及び51bの基端部が引き上げられる。基端部が引き上げられると、保持アーム51a及び51bは、中間部を支点に回転し、先端部が閉じてパッド65a及び65bが相互に突き当たる。
【0056】
逆に、
図2のように後退状態の進退部材53が進出動作を行うと、ストッパー71が下方へ移動する。このとき、リンク部54のリンク部材73a及び73bを介して保持アーム51a及び51bの基端部が押し下げられる。基端部31a及び31bが押し下げられると、保持アーム51a及び51bは、中間部を支点に回転し、先端部が開く。
【0057】
かかる構成の保持部47は、バルーン49側に結合されている。
【0058】
バルーン49は、
図6のように保持部47に取り付けられ、充填物によって膨張することで回収器11の浮上を可能とするものである。本実施例のバルーン49は、樹脂等によって構成された袋体である。充填物は、本実施例において水中での浮力を生じさせるものであれば良い。充填物は、炭酸ガス等の気体が好ましいが、発泡ウレタン等の発泡剤であってもよい。なお、回収装置3を陸上用として構成する場合は、空気よりも軽い気体である必要がある。
【0059】
このバルーン49は、
図2~
図4のように収縮時においてハウジング77に収容されている。ハウジング77は、なお、バルーン49の収縮時とは、バルーン49の膨張前の状態であり、充填物が充填されていない状態をいう。
【0060】
ハウジング77は、平常時において上方が開口したハウジング本体79を蓋81によって閉じて構成されている。蓋81は、バルーン49が膨張した際にハウジング本体79から離脱してバルーン49の膨張を許容する。ハウジング本体79は、ボンベ部83に結合されている。
【0061】
ボンベ部83は、ボンベを内蔵する筒状部分である。ボンベ部83は、ハウジング77に内部で連通している。このボンベ部83には、保持部47がブラケット85を介して取り付けられている。ブラケット85は、保持部47のベース52からクランク状に伸びる板体である。なお、ブラケット85は、保持部47をボンベ部83に結合できればよく、形状は特に限定されるものではない。
【0062】
このボンベ部83は、ドローン9のアーム25の開閉体27aの支持部33をスライド可能に挿通している。従って、回収器11は、バルーン49を膨張させる充填物を収容した筒状のボンベ部83とを備え、ボンベ部83が支持部33にスライド可能に支持された構成となっている。
【0063】
ボンベ部83には、
図7のように凹部83aが設けられている。この凹部83aは、支持部33の貫通孔33aに臨んでいる。開閉体27a及び27bの閉じ状態では、
図5のように開閉体27bに設けられた突起28が貫通孔33a内に入り込む。この状態では、突起28が凹部83aに係合し、ボンベ部83の支持部33からの抜け落ちが防止されている。
【0064】
このボンベ部85には、
図2、
図6及び
図7のように、揺動可能に支持されたレバー87が備えられている。揺動は、レバー87の一側を中心に他側が回転動作を行うことである。このため、レバー87の一側は、ボンベ部85に回転自在に支持された構成となっている。レバー87は、例えばボンベ部83内の図示しないニードルに接続されている。このレバー87が揺動することによって、ニードルがボンベ部83内の図示しないボンベの封板を突き破る。
【0065】
これにより、ボンベ部83からハウジング77内のバルーン49に充填物が充填される。従って、回収器11は、ボンベ部83に対して揺動可能に支持され、揺動によってボンベ部83から充填物をバルーン49へと充填させるレバー87を備えた構成となっている。
【0066】
レバー87の揺動は、上記のようにアーム25の開閉体27bのピン35によって行われる。具体的には、
図2のピン35が開閉体27a及び27bが閉じている平常時においてレバー87とボンベ部83との間に位置する。そして、ピン35は、
図6及び
図7のように開閉体27a及び27bが開くことによってレバー87に当接により係合し、レバー87にスライドしながらレバー87をボンベ部83に対して離れるように揺動させる。
【0067】
[回収方法]
本実施例の回収システム1を用いた対象物Oの回収方法では、
図1のように、回収装置3、つまり回収器11が取り付けられたドローン9を対象物Oまで移動させる。本実施例では、対象物Oが、生簀F内のへい死魚であり、生簀Fの底部に存在する。このため、ドローン9をまずケーブルガイド7に沿って底部まで移動させ、次いでドローン9を生簀Fの底部付近でケーブルガイド7から離れる方向へ移動させる。
【0068】
このとき、ドローン9のケーブル5は、ケーブルガイド7に沿って生簀Fの底へと案内された後、ドローン9へと至るため、生簀F内を遊泳する魚を傷つけるおそれ等が低減される。
【0069】
ドローン9が対象物Oまで移動すると、対象物Oの保持が行われる。対象物Oの保持の際は、まずドローン9の位置を調整して回収器11の保持部47の開状態の保持アーム51a及び51bを対象物Oに位置合わせする。本実施例では、対象物Oであるへい死魚の尾が保持アーム51a及び51b間の下方に位置するようにする。
【0070】
この状態でドローン9を下降させて
図6のように保持アーム51a及び51b間に対象物Oを入れ込む。このとき、対象物Oによって保持部47の進退部材53が上方に押されて後退動作をする。この後退動作にリンク部54を介して保持アーム51a及び51bが連動して閉じ動作を行う。保持アーム51a及び51bが閉じた状態では、対象物Oが進退部材53の進出を妨げるため、保持アーム51a及び51bが不用意に開くことを抑制できる。
【0071】
なお、
図6では、バルーン49が膨張しているが、対象物Oを保持する際には、
図2のようにバルーン49が収縮してハウジング77内に収容されている。
【0072】
こうして保持アーム51a及び51bを閉じることによって対象物Oを保持部47によって保持することができる。対象物Oを保持した後は、回収器11と共に対象物Oを浮上させる。
【0073】
すなわち、
図6及び
図7のように、ドローン9のアーム25の開閉体27a及び27bに開動作を行わせる。アーム25の開閉体27a及び27bが回動さを行うと、一方の開閉体27bのピン35がハウジング77のレバー87を揺動させる。この結果、炭酸ガス等の気体である充填物がボンベ部83からバルーン49へと充填される。
【0074】
従って、バルーン49が充填物によって膨張して浮力を生じさせる。この浮力により、
図1のように、回収器11のボンベ部83がアーム25の開閉体27aの支持部33に対してスライドし、回収器11がアーム25から離脱しながら浮上する。回収器11及び対象物Oが水面Wまで浮上すると、作業員が回収器11及び対象物Oを回収することになる。
【0075】
このように、本実施例では、ドローン9で対象物Oまでの移動及び対象物Oの回収器11への保持を迅速かつ適切に行うことができる。そして、対象物Oを回収器11で保持した後は、回収器11をドローン9から離脱させてバルーン49によって迅速に浮上させことで、対象物Oを回収することができる。従って、対象物Oの回収作業の作業効率を向上することができる。
【0076】
本実施例のドローン9は、回収器11をスライド可能に支持する支持部33を備え、バルーン49が膨張した際に回収器11をスライドさせて回収器11の離脱及び浮上を許容する。
【0077】
従って、バルーン49を膨張させるだけで回収器11を容易にドローン9から離脱させて浮上させることができ、より確実に対象物Oの回収作業の作業効率を向上できる。
【0078】
また、回収器11は、バルーン49を膨張させる充填物を収容した筒状のボンベ部83とを備え、ボンベ部83が支持部33にスライド可能に支持されている。
【0079】
従って、筒状のボンベ部83を利用して、回収器11をスライド可能に支持部33に容易に支持することができる。
【0080】
回収器11は、ボンベ部83に対して揺動可能に支持され、揺動によってボンベ部83から充填物をバルーン49へと充填させるためのレバー87を備え、ドローン9は、レバー87に係合して動作することでレバー87を揺動させるピン35を備えた。
【0081】
従って、回収器11は、レバー87を動作させる動力源が不要であり、構造を簡素化することができる。
【0082】
ドローン9は、相対的に開閉自在な一対の開閉体27a及び27bを備え、支持部33は、一対の開閉体27a及び27bの一方に備えられ、ピン35は、一対の開閉体27a及び27bの他方に備えられた。
【0083】
このため、開閉体27a及び27bを相対的に開くだけでレバー87を揺動させてバルーン49へ充填物を充填することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0084】
保持部47は、開閉自在な一対の保持アーム51a及び51bと、一対の保持アーム51a及び51b間に進退自在な進退部材53と、一対の保持アーム51a及び51bと進退部材53を接続して連動させるリンク部54とを備え、一対の保持アーム51a及び51bは、進退部材53の一対の保持アーム51a及び51b間への進出動作により連動して開き、進退部材53の後退動作により連動して閉じる。
【0085】
従って、対象物Oを保持アーム51a及び51b間へ入れ込むと、対象物Oによって進退部材53が上方に押されて後退動作をし、保持アーム51a及び51bが閉じて対象物Oを容易に保持することができる。しかも、保持アーム51a及び51bが閉じた状態では、対象物Oが進退部材53の進出を妨げるため、保持アーム51a及び51bが不用意に開くことを抑制できる。
【0086】
本実施例の回収方法では、対象物Oまでドローン9を移動させ、ドローン9に着脱自在に支持された回収器11に対象物Oを保持し、回収器11のバルーン49を充填物の充填により膨張させ、対象物Oを保持した回収器11をドローン9から離脱させつつ膨張したバルーン49によって浮上させる。従って、対象物Oの回収作業の作業効率を向上することができる。