(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115995
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】情報出力装置及び情報出力方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B60W30/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021954
(22)【出願日】2023-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由多
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241CC17
3D241CE09
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB12Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両が目標軌道を追従する精度を向上させる。
【解決手段】目標軌道と、目標速度と、走行位置と、方位角とを取得する取得部201と、目標ヨーレートと、目標操舵角とを特定し、横偏差を特定する特定部202と、それぞれの予測ステップについて予測ステップに対応する方位角偏差と予測ステップの次の予測ステップに対応する方位角偏差との関係を示し、且つ、目標軌道の曲率を含まずに目標ヨーレートを含む第1式と、それぞれの予測ステップについて予測ステップに対応する横偏差と予測ステップの次の予測ステップに対応する横偏差との関係を示す第2式と、を含む予測モデルを用いて、横偏差に関する項、方位角偏差に関する項、及び、目標操舵角と車両の操舵角との偏差に関する項、を含む評価関数を最小化するための操舵角を導出する導出部203と、制御装置4へ操舵角を出力する出力部303と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための目標軌道と、当該目標軌道上の複数の位置における前記車両の目標速度と、前記車両が走行する走行位置と、前記車両の向きを示す方位角とを取得する取得部と、
前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道が延びる接線方向が回転する目標ヨーレートと、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道に沿って前記車両が旋回するための目標操舵角とを特定し、且つ、前記走行位置と前記目標軌道との当該目標軌道に垂直な横方向のずれを示す横偏差を特定する特定部と、
予測時間範囲に含まれる複数の予測ステップのそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する方位角偏差であって前記車両の前記方位角と目標軌道が延びる接線方向を示す目標方位角とのずれを示す当該方位角偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記方位角偏差との関係を示し、且つ、前記目標軌道の曲率を含まずに前記目標ヨーレートを含む第1式と、前記予測時間範囲に含まれるそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する前記横偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記横偏差との関係を示す第2式と、を含む予測モデルを用いて、前記横偏差に関する項、前記方位角偏差に関する項、及び、前記目標操舵角と前記車両の操舵角との偏差に関する項、を含む評価関数を最小化するための前記車両が旋回する操舵角を導出する導出部と、
前記車両の走行を制御する制御装置へ前記操舵角を出力する出力部と、
を備える情報出力装置。
【請求項2】
前記評価関数は、前記方位角偏差の前記予測時間範囲における終端値に関する項と、前記横偏差の前記予測時間範囲における終端値に関する項とをさらに含む、
請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記車両が走行する走行速度を取得し、
前記走行速度と、前記車両が旋回する操舵角速度の上限値とを関連付けて記憶する記憶部とをさらに備え、
前記出力部は、前記導出部が導出した前記操舵角と前記車両の現在の操舵角との差分に基づく操舵角速度が、前記取得部が取得した前記走行速度に関連付けて前記記憶部に記憶されている前記操舵角速度の上限値以下である場合に、前記導出部が導出した前記操舵角を出力する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記出力部は、バターワースフィルタにより平滑化処理した後の前記操舵角を出力する、
請求項3に記載の情報出力装置。
【請求項5】
前記導出部は、前記車両が駐車する予定の駐車位置を含む前記目標軌道を前記取得部が取得した場合に、ローパスフィルタで平滑化処理した前記車両の前記横偏差と、前記ローパスフィルタで平滑化処理した前記車両の前記方位角偏差とを前記予測モデルに入力することにより、前記評価関数を最小化するための前記操舵角を導出する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記車両が走行する走行速度を取得し、
前記導出部は、前記横偏差に関する項として前記横偏差に第1重み値を乗じた項を含み、前記方位角偏差に関する項として前記方位角偏差に第2重み値を乗じた項を含み、かつ、前記目標操舵角と前記車両の操舵角とのずれに関する項として、前記目標操舵角と前記車両の操舵角とのずれに第3重み値を乗じた項を含む前記評価関数を最小化するための前記操舵角を導出する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
車両が走行するための目標軌道と、当該目標軌道上の複数の位置における前記車両の目標速度と、前記車両が走行する走行位置と、前記車両の向きを示す方位角とを取得する手順と、
前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道が延びる接線方向が回転する目標ヨーレートと、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道に沿って前記車両が旋回するための目標操舵角とを特定し、且つ、前記走行位置と前記目標軌道との当該目標軌道に垂直な横方向のずれを示す横偏差を特定する手順と、
予測時間範囲に含まれる複数の予測ステップのそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する方位角偏差であって前記車両の前記方位角と目標軌道が延びる接線方向を示す目標方位角とのずれを示す当該方位角偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記方位角偏差との関係を示し、且つ、前記目標軌道の曲率を含まずに前記目標ヨーレートを含む第1式と、前記予測時間範囲に含まれるそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する前記横偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記横偏差との関係を示す第2式と、を含む予測モデルを用いて、前記横偏差に関する項、前記方位角偏差に関する項、及び、前記目標操舵角と前記車両の操舵角との偏差に関する項、を含む評価関数を最小化するための前記車両が旋回する操舵角を導出する手順と、
前記車両の走行を制御する制御装置へ前記操舵角を出力する手順と、
を備える情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が自律的に走行するための情報を出力する情報出力装置及び情報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標軌道に追従して車両を自動走行する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車両の縦速度及び横速度等に対応する評価関数に、車両の横速度、方位角偏差及び曲率を入力し、評価関数を最小等にするための補正操舵角を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、車両の発進時等の車速が比較的低い区間では、目標軌道間の空間的な距離が近くなることに起因して、曲率の誤差が大きくなるという問題があった。このため、車両が目標軌道を追従する精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、車両が目標軌道を追従する精度を向上させることができる情報出力装置及び情報出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報出力装置は、車両が走行するための目標軌道と、当該目標軌道上の複数の位置における前記車両の目標速度と、前記車両が走行する走行位置と、前記車両の向きを示す方位角とを取得する取得部と、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道が延びる接線方向が回転する目標ヨーレートと、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道に沿って前記車両が旋回するための目標操舵角とを特定し、且つ、前記走行位置と前記目標軌道との当該目標軌道に垂直な横方向のずれを示す横偏差を特定する特定部と、予測時間範囲に含まれる複数の予測ステップのそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する方位角偏差であって前記車両の前記方位角と目標軌道が延びる接線方向を示す目標方位角とのずれを示す当該方位角偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記方位角偏差との関係を示し、且つ、前記目標軌道の曲率を含まずに前記目標ヨーレートを含む第1式と、前記予測時間範囲に含まれるそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する前記横偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記横偏差との関係を示す第2式と、を含む予測モデルを用いて、前記横偏差に関する項、前記方位角偏差に関する項、及び、前記目標操舵角と前記車両の操舵角との偏差に関する項、を含む評価関数を最小化するための前記車両が旋回する操舵角を導出する導出部と、前記車両の走行を制御する制御装置へ前記操舵角を出力する出力部と、を備える。
【0007】
前記評価関数は、前記方位角偏差の前記予測時間範囲における終端値に関する項と、前記横偏差の前記予測時間範囲における終端値に関する項とをさらに含んでもよい。前記取得部は、前記車両が走行する走行速度を取得し、前記走行速度と、前記車両が旋回する操舵角速度の上限値とを関連付けて記憶する記憶部とをさらに備え、前記出力部は、前記導出部が導出した前記操舵角と前記車両の現在の操舵角との差分に基づく操舵角速度が、前記取得部が取得した前記走行速度に関連付けて前記記憶部に記憶されている前記操舵角速度の上限値以下である場合に、前記導出部が導出した前記操舵角を出力してもよい。
【0008】
前記出力部は、バターワースフィルタにより平滑化処理した後の前記操舵角を出力してもよい。前記導出部は、前記車両が駐車する予定の駐車位置を含む前記目標軌道を前記取得部が取得した場合に、ローパスフィルタで平滑化処理した前記車両の前記横偏差と、前記ローパスフィルタで平滑化処理した前記車両の前記方位角偏差とを前記予測モデルに入力することにより、前記評価関数を最小化するための前記操舵角を導出してもよい。
【0009】
前記取得部は、前記車両が走行する走行速度を取得し、前記導出部は、前記横偏差に関する項として前記横偏差に第1重み値を乗じた項を含み、前記方位角偏差に関する項として前記方位角偏差に第2重み値を乗じた項を含み、かつ、前記目標操舵角と前記車両の操舵角とのずれに関する項として、前記目標操舵角と前記車両の操舵角とのずれに第3重み値を乗じた項を含む前記評価関数を最小化するための前記操舵角を導出してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の情報出力方法は、コンピュータが実行する、車両が走行するための目標軌道と、当該目標軌道上の複数の位置における前記車両の目標速度と、前記車両が走行する走行位置と、前記車両の向きを示す方位角とを取得する手順と、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道が延びる接線方向が回転する目標ヨーレートと、前記目標軌道上の複数の位置において前記目標軌道に沿って前記車両が旋回するための目標操舵角とを特定し、且つ、前記走行位置と前記目標軌道との当該目標軌道に垂直な横方向のずれを示す横偏差を特定する手順と、予測時間範囲に含まれる複数の予測ステップのそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する方位角偏差であって前記車両の前記方位角と目標軌道が延びる接線方向を示す目標方位角とのずれを示す当該方位角偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記方位角偏差との関係を示し、且つ、前記目標軌道の曲率を含まずに前記目標ヨーレートを含む第1式と、前記予測時間範囲に含まれるそれぞれの予測ステップについて当該予測ステップに対応する前記横偏差と当該予測ステップの次の予測ステップに対応する前記横偏差との関係を示す第2式と、を含む予測モデルを用いて、前記横偏差に関する項、前記方位角偏差に関する項、及び、前記目標操舵角と前記車両の操舵角との偏差に関する項、を含む評価関数を最小化するための前記車両が旋回する操舵角を導出する手順と、前記車両の走行を制御する制御装置へ前記操舵角を出力する手順と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両が目標軌道を追従する精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図7】走行速度と操舵角速度の上限値との関係を示す操舵角速度制約情報の一例を示す。
【
図8】情報出力装置による目標軌道を車両が追従するための操舵角の導出の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の情報出力装置100の構成を示す。情報出力装置100は、プランナー1、モデル予測制御器2、フィルタ処理部3及び制御装置4を備える。情報出力装置100は、車両に搭載されている。
【0014】
プランナー1は、車両が走行するための目標軌道を生成する。プランナー1は、目標軌道に加えて、車両が目標軌道を走行したと仮定した場合の目標軌道上のそれぞれの位置の車両10の向きを示す目標方位角を決定する。プランナー1は、目標軌道を走行した場合の目標軌道上のそれぞれの位置の車両の走行速度を示す目標速度を決定する。プランナー1は、生成した目標軌道c、目標方位角及び目標速度をモデル予測制御器2へ入力する。
【0015】
図2は、目標軌道の例を示す。
図2中の符号cは、目標軌道を示す。
図2中の矢印xは、目標軌道cが延びる接線方向を示し、矢印yは、目標軌道の接線方向に垂直な横方向を示す。以下、矢印xが延びる接線方向に対応する方位角を目標方位角ともいう。
図2中のθは、車両10の向きを示す方位角と、目標方位角とのずれ(以下、方位角偏差ともいう)を示す。
図2中のvは、車両10が走行する走行速度を示す。
図2中のδは、車両10が旋回する操舵角を示す。
【0016】
プランナー1は、目標軌道を生成する際に、車両10が走行する走行位置と、車両10の向きを示す方位角とを制御装置4から取得する。プランナー1は、取得した車両10の走行位置と方位角とをモデル予測制御器2へ入力する。
【0017】
モデル予測制御器2は、所定のサンプリング時間ごとに、プランナー1が生成した目標軌道に車両10が追従して走行するための操舵角δを導出する。モデル予測制御器2のサンプリング時間は、例えば、100ミリ秒である。予測モデルの詳細については後述するが、モデル予測制御器2は、目標軌道の曲率Κγを含まずに目標ヨーレートを含む予測モデルを用いて、目標軌道を追従するための操舵角を導出する。モデル予測制御器2は、導出した操舵角δをフィルタ処理部3に入力する。
【0018】
フィルタ処理部3は、所定のサンプリング時間ごとに、導出した操舵角と、現在の車両10の操舵角との差分に基づいて、操舵角速度を特定する。フィルタ処理部3のサンプリング時間は、例えば、10ミリ秒である。フィルタ処理部3は、特定した操舵角速度が所定の制約条件を満たすか否かを判定する。制約条件の詳細については後述する。フィルタ処理部3は、操舵角速度が制約条件を満たすと判定した場合に、導出した操舵角をバターワースフィルタにより平滑化処理する。フィルタ処理部3は、平滑化処理後の操舵角を制御装置4へ出力する。
【0019】
制御装置4は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置4は、車両10の走行を制御する。制御装置4は、フィルタ処理部3による平滑化処理後の操舵角に基づいて、車両10の操舵角を変化させて車両10を走行させる。制御装置4は、走行中の車両10の状態を示す車両状態情報をモデル予測制御器2へ入力する。例えば、車両状態情報は、車両10の走行速度v、方位角、操舵角δを含む。
【0020】
車両10の走行速度が比較的低い状態では、目標軌道間の空間的な距離が近いことに起因して、曲率の算出の精度が低下する。これに対し、モデル予測制御器2は、曲率を含まない予測モデルを用いることにより、車両10の走行速度が比較的低い状態において操舵角を導出する精度を向上させることができる。
【0021】
[情報出力装置100の要部の構成]
図3は、情報出力装置100の要部の構成を示す。情報出力装置100は、モデル予測制御器2、フィルタ処理部3、記憶部5及び記憶部6を備える。モデル予測制御器2は、取得部201、特定部202及び導出部203を備える。フィルタ処理部3は、制約処理部301、バターワースフィルタ(
図3中のBWF)302及び出力部303を備える。
【0022】
記憶部5は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部5は、モデル予測制御器2を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部5には、車両10の走行速度vと、横偏差yに対応する第1重み値との関係を示す横偏差重み情報が記憶されている。記憶部5には、車両10の走行速度vと、方位角偏差θに対応する第2重み値との関係を示す方位角偏差重み情報が記憶されている。
【0023】
図4(a)及び
図4(b)は、車両10の走行速度vと重み値との関係を示す。
図4(a)は、車両10の走行速度vと、横偏差yに対応する第1重み値との関係を示す横偏差重み情報の例を示す。
図4(b)は、車両10の走行速度vと、方位角偏差θに対応する第2重み値との関係を示す方位角偏差重み情報の例を示す。
図4(a)の縦軸は、横偏差yに対応する第1重み値を示す。第1重み値は、例えば、1より小さい倍率である。
図4(a)の横軸は、車両10の走行速度vを示す。
図4(a)に示すように、車両10の走行速度vが高いほど、第1重み値は小さい値になる。
【0024】
図4(b)の縦軸は、方位角偏差θに対応する第2重み値を示す。第2重み値は、例えば、0より大きい倍率である。
図4(b)の横軸は、車両10の走行速度vを示す。
図4(b)に示すように、車両10の走行速度vが高いほど、第2重み値は小さい値になる。横偏差重み情報及び方位角偏差重み情報は、目標軌道を車両10が追従するための操舵角δを導出部203が導出する際に利用する評価関数に含まれる第1重み値及び第2重み値を特定するために用いられる。
【0025】
記憶部5には、車両10の走行速度vと、第3重み値との関係を示す操舵角重み情報が記憶されている。第3重み値は、目標操舵角δ
γと車両10の操舵角δとの偏差に乗じるための係数である。
図5は、操舵角重み情報の例を示す。
図5の縦軸は、第3重み値を示す。
図5の横軸は、車両10の走行速度vを示す。
図5の例では、第3重み値は、一定である。操舵角重み情報は、目標軌道を車両10が追従するための操舵角δを導出部203が導出する際に利用する評価関数に含まれる第3重み値を特定するために用いられる。
【0026】
記憶部5には、車両10の走行速度vと、横偏差yに関する終端重み値との関係を示す横偏差終端情報が記憶されている。この終端重み値は、後述する評価関数において横偏差の予測時間範囲における終端値に対応する重み値である。記憶部5には、車両10の走行速度vと、方位角偏差に関する終端重み値との関係を示す方位角偏差終端情報が記憶されている。この終端重み値は、後述する評価関数において方位角偏差の予測時間範囲における終端値に対応する重み値である
【0027】
図6は、終端情報の例を示す。
図6(a)は、横偏差終端情報の例を示す。
図6(b)は、方位角偏差終端情報の例を示す。
図6(a)の縦軸は、横偏差yに関する終端重み値を示す。横偏差yに関する終端重み値は、0より大きな値である。
【0028】
図6(b)の縦軸は、方位角偏差θに関する終端重み値を示す。方位角偏差θに関する終端重み値は、0より大きな値である。横偏差終端情報及び方位角偏差終端情報は、目標軌道を車両10が追従するための操舵角δを導出部203が導出する際に用いる評価関数の終端重み値を特定するために用いられる。
【0029】
記憶部6は、例えば、ROM及びRAM等により構成される。記憶部6は、フィルタ処理部3を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部6には、車両10の走行速度vと操舵角速度の上限値とを関連付けた操舵角速度制約情報が記憶されている。
図7は、走行速度vと操舵角速度の上限値との関係を示す操舵角速度制約情報の一例を示す。
図7の縦軸は、操舵角速度の上限値を示す。
図7の横軸は、車両10の走行速度vを示す。走行速度vが比較的低い状態では、操舵角速度の上限値は一定である。走行速度vが中程度から比較的高い状態では、操舵角速度の上限値は、走行速度vが高くなるほど低い値になる。
【0030】
[モデル予測制御器2の構成]
取得部201は、各種の情報をプランナー1又は制御装置4から取得する。取得部201は、プランナー1が生成した目標軌道及び目標速度をプランナー1から取得する。取得部201は、目標軌道を走行した場合の目標軌道上のそれぞれの位置の車両10の向きを示す目標方位角をプランナー1から取得する。取得部201は、車両10の走行位置と、車両10の走行する向きを示す方位角とをプランナー1から取得する。また、取得部201は、車両10の走行位置と、車両10の方位角とを制御装置4から取得してもよい。
【0031】
取得部201は、車両状態を示す車両状態情報を制御装置4から取得する。例えば、車両状態情報は、車両10の走行速度v又は操舵角δの少なくとも一つ以上を含む。取得部201は、取得した目標軌道、目標方位角、目標速度、車両10の走行位置、方位角、走行速度を特定部202へ出力する。取得部201は、取得した目標軌道、目標方位角、目標速度、車両10の走行位置、方位角、走行速度v及び操舵角δを導出部203へ出力する。
【0032】
特定部202はサンプリング時間ごとに、目標軌道上を目標速度で走行する車両10の目標ヨーレートを特定する。目標ヨーレートは、この車両10の向きが回転する角速度である。目標軌道上を走行する車両10の向きは、目標軌道の接線方向といいかえることもできる。目標ヨーレートは、
図2中のxy座標系がグローバル座標系(例えば、東経、北緯等)に対して回転する角速度に相当する。特定部202は、取得した目標軌道上を車両10が走行したと仮定した場合に、目標軌道上の複数の位置において目標軌道に沿って車両10が旋回するための目標操舵角を特定する。目標操舵角は、例えば、後述する式(6)により定められる。
【0033】
特定部202は、取得部201が取得した車両10の走行位置と目標軌道との横方向(
図2中のy方向)のずれを示す横偏差を特定する。例えば、特定部202は、車両10の走行位置を
図2に示すxy座標系に変換し、y座標を横偏差として特定する。このとき、特定部202は、xy座標系の原点として、目標軌道上において車両10の走行位置のx座標が0になる位置を指定する。特定部202は、xy座標系の原点として、目標軌道上において車両10の走行位置に最も近い位置を指定してもよい。
【0034】
特定部202は、車両10の方位角と、目標軌道が延びる接線方向に対応する目標方位角とのずれを示す方位角偏差を特定する。例えば、特定部202は、車両10の走行位置とx座標が同じ目標軌道上の位置を特定し、この位置において目標軌道の接線が延びる方向に対応する方位角を目標方位角として特定する。特定部202は、車両10の方位角と目標方位角との差分を算出することにより方位角偏差を特定する。
【0035】
一例として、特定部202は、車両10が駐車する予定の駐車位置を含む目標軌道を取得部201が取得した場合に、特定した横偏差をローパスフィルタで平滑化処理し、平滑化処理した後の横偏差を特定する。駐車位置とは、例えば、目標軌道上において目標速度が0(ゼロ)の地点である。このようにして、特定部202は、車両10が目標軌道を追従する精度が特に要求される駐車時において車両10の位置を推定する際のノイズを平滑化処理により除去するので、車両10を駐車位置に精度よく駐車させることができる。
【0036】
同様に、特定部202は、車両10が駐車する予定の駐車位置を含む目標軌道を取得部201が取得した場合に、特定した方位角偏差をローパスフィルタで平滑化処理し、平滑化処理した後の方位角偏差を特定する。特定部202は、駐車位置を含まない目標軌道を取得部201が取得した場合に、特定した横偏差及び方位角偏差をいずれも平滑化処理しない。特定部202は、特定した目標ヨーレート、目標操舵角、横偏差及び方位角偏差を導出部203へ出力する。特定部202は、車両10が駐車する予定の駐車位置を含む目標軌道を取得部201が取得した場合には、平滑化処理した後の横偏差及び方位角偏差を導出部203へ出力する。
【0037】
[曲率を含む予測モデル]
導出部203は、取得部201が取得した目標軌道に車両10が追従するための操舵角を導出する。まず、操舵角を導出するための予測モデルについて説明する。
図2に示す車両のモデルにおいて以下の式(1)~(3)が成り立つ。
x
k+1=x
k+vcosθ
kdt・・・(1)
y
k+1=y
k+vsinθ
kdt・・・(2)
θ
k+1=θ
k+(vtanδ
k/L)dt・・・(3)
式(1)中、xは、車両10の位置と、目標軌道上を目標速度で走行したと仮定した場合の車両10の位置との目標軌道の接線方向におけるずれを示す接線方向偏差である。yは横偏差である。Lはホイールベース長である。
【0038】
目標軌道近傍において目標軌道からの誤差は、以下の式(4)~(5)により表される。
y
k+1=y
k+v・sinθ
kdt・・・(4)
θ
k+1=θ
k+(vtanδ
k/L)dt-Κ
γvcosθ
kdt・・・(5)
Κ
γは、目標軌道上(
図2中のxy座標系の原点)における曲率である。式(5)中の第3項は目標ヨーレートを示す。
【0039】
ここで、目標軌道の曲率を用いて、その曲率を曲がる際のおおよその操舵角である目標操舵角δγは、式(3)から以下の式(6)により求められる。
δγ=tan-1(LΚγ)・・・(6)
δkとδγとの差分が微小であるため、式(6)は以下の式(7)のように近似される。
tanδ≒LΚγ+(1/cos2δγ)(δ-δγ)・・・(7)
式(7)を式(5)に代入し整理すると、式(8)となる。
θk+1=θk+((vdt)/Lcos2δγ)δk-((vδγdt)/(Lcos2δγ))・・・(8)
【0040】
式(4)において方位角偏差θ
kが微小であるとみなすと、最終的に予測モデルは式(9)のように変形される。
x
k+1=A
k+B
ku
k+w
k・・・(9)
その結果、以下の式(10)を得られる。
【数1】
【0041】
式(10)は、目標軌道及び目標速度に依存して変化する。このため、式(10)は、予測時間範囲の各予測ステップ(k=1、2、...、p)において行列Ak、Bk、wkが変化するLTV-MPC(Linear Time Varying Model Predictive Control)として扱われる。予測時間範囲は、現在から所定の未来(一例としては数秒先)までの時間範囲である。予測時間範囲は、例えば予測ホライズンである。
【0042】
[曲率を含まない予測モデル]
上述の予測モデルでは、車両10の発進時又は停車時等において走行速度vが比較的低い状態では、目標軌道間の距離が近くなるため、曲率の導出の精度が著しく低下するという問題がある。そこで、曲率を用いない導出モデルを導出する方法について説明する。
【0043】
導出部203は、予測モデルを用いて、目標軌道cを車両10が追従するための操舵角δを導出する。この予測モデルの第1式は、目標軌道の曲率Κγを含まずに目標ヨーレートφtを含む。この第1式は、予測時間範囲に含まれる複数の予測ステップ(k=1,2,...,p)のそれぞれの予測ステップについて予測ステップ(k)に対応する方位角偏差θ(k)と、この予測ステップ(k)の次の予測ステップ(k+1)に対応する方位角偏差θ(k+1)との関係を示す。pは、予測時間範囲の長さを示す。
【0044】
この予測モデルの第2式は、予測時間範囲に含まれるそれぞれの予測ステップ(k=1,2,...,p)について予測ステップ(k)に対応する横偏差y(k)と、この予測ステップ(k)の次の予測ステップ(k+1)に対応する横偏差y(k+1)との関係を示す。
【0045】
目標軌道近傍において目標軌道からの誤差は以下の式(4)及び(11)により表される。
y
k+1=y
k+v・sinθ
kdt・・・(4)
θ
k+1=θ
k+(v・tanδ
k/L)dt-φ
tdt・・・(11)
式(11)中、φ
tは目標ヨーレートである。式(11)においてtanδk=δkと近似することで、最終的に予測モデルは以下の式(12)により表される。
【数2】
【0046】
式(12)も式(10)と同様、行列Ak、Bk、wkが変化するLTV-MPCとして扱われる。式(12)に示す予測モデルは、左辺の予測ステップ(k+1)に対応する横偏差y(k+1)と、右辺の予測ステップ(k)に対応する横偏差y(k)との関係を示す。式(12)に示す予測モデルは、左辺の予測ステップ(k+1)に対応する方位角偏差θ(k+1)と、右辺の予測ステップ(k)に対応する方位角偏差θ(k)との関係を示す。式(12)に示す式は、目標軌道の曲率Κγを含まず、代わりに目標ヨーレートφtを含む。
【0047】
[モデル予測制御による操舵角の導出]
導出部203は、横偏差yに関する項、方位角偏差θに関する項、及び、目標操舵角δγと車両の操舵角δとのずれに関する項、を含む評価関数を最小化するための操舵角δを導出する。評価関数は、方位角偏差θの予測時間範囲における終端値θ(p)に関する項と、横偏差yの予測時間範囲における終端値y(p)に関する項とをさらに含む。評価関数は、横偏差yに関する項として横偏差yに第1重み値を乗じた項を含む。評価関数は、方位角偏差θに関する項として方位角偏差θに第2重み値を乗じた項を含む。評価関数は、目標操舵角δγと車両の操舵角δとのずれに関する項として、目標操舵角δγと車両の操舵角δとのずれに第3重み値を乗じた項を含む。
【0048】
評価関数Jは、以下の式(13)で表される。
【数3】
式(13)の第1項は、横偏差yに関する項である。式(13)の第2項は、方位角偏差θに関する項である。式(13)の第3項は、目標操舵角δ
γと車両の操舵角δとのずれに関する項である。式(13)の第4項は、横偏差yの予測時間範囲における終端値y(p)に関する項である。式(13)の第5項は、方位角偏差の予測時間範囲における終端値θ(p)に関する項である。
【0049】
導出部203は、δmin≦δ(k)≦δmaxの条件を満たす範囲内において式(13)の評価関数を最小化する操舵角δを導出する。操舵角の最小値δmin及び操舵角の最大値δmaxは、例えば、車両10の仕様により定められる。式(13)中、Qyは、横偏差yに関する第1重み値である。Qθは、方位角偏差θに関する第2重み値である。Rδは、目標操舵角δγと車両の操舵角δとのずれに関する第3重み値である。
【0050】
y(p)は、横偏差の予測時間範囲における終端値を示す。θ(p)は、方位角偏差の予測時間範囲における終端値を示す。Qyfinalは、横偏差に関する終端重み値である。Qθfinalは、方位角偏差に関する終端重み値である。pは、予測時間範囲の長さである。導出部203は、式(12)に示す予測モデルが成り立つことを条件として実時間最適化問題を解き、式(13)の評価関数を最小にする操舵角δを導出する。例えば、導出部203は、アクティブセット法により、この評価関数を最小にする操舵角δを導出する。導出部203は、導出した操舵角δを制約処理部301へ出力する。
【0051】
導出部203は、車両10が駐車する予定の駐車位置を含む目標軌道を取得部201が取得した場合に、ローパスフィルタで平滑化処理した車両10の横偏差yと、ローパスフィルタで平滑化処理した車両10の方位角偏差θとを上述の予測モデルに入力することにより、この予測モデルが成り立つ条件において評価関数を最小化するための操舵角速度δを導出する。このようにして、導出部203は、車両10の走行位置等を推定する際のノイズの影響を受けて操舵角δを導出する精度が低下することを抑制することができる。
【0052】
[操舵角速度の制約に基づく操舵角の調整]
続いて、フィルタ処理部3の動作を説明する。制約処理部301は、操舵角速度に関する制約条件を満たすように、モデル予測制御器2が導出した操舵角を調整する。まず、制約処理部301は、導出した操舵角と、現在の車両10の操舵角との差分に基づいて、操舵角速度を特定する。
【0053】
制約処理部301は、走行速度vと操舵角速度の上限値との関係を示す操舵角速度制約情報(
図7参照)を記憶部6から読み出す。制約処理部301は、読み出した操舵角速度制約情報を参照して、車両10の走行速度vに関連付けられた操舵角速度の上限値を特定する。制約処理部301は、特定した操舵角速度が操舵角速度の上限値以下である否かを判定する。制約処理部301は、特定した操舵角速度が特定した上限値以下である場合、モデル予測制御器2が導出した操舵角が上限値の制約を満たすと判定する。制約処理部301は、この操舵角をバターワースフィルタ302へ出力する。
【0054】
制約処理部301は、特定した操舵角速度が上限値を超える場合、モデル予測制御器2が導出した操舵角が上限値の制約を満たさないと判定する。このとき、制約処理部301は、操舵角速度を上限値と同じ値に補正する。制約処理部301は、車両10の現在の操舵角δから補正後の操舵角速度で変化した操舵角を算出する。制約処理部301は、算出した操舵角をバターワースフィルタ302へ出力する。
【0055】
また、制約処理部301は、操舵角速度が上限値以下となる操舵角の範囲を導出部203に通知してもよい。導出部203は、操舵角がこの範囲内になる条件を満たすように評価関数を最小にする操舵角を導出してもよい。
【0056】
[バターワースフィルタ302による平滑化]
バターワースフィルタ302は、制約処理部301が上限値の制約を満たすと判定した操舵角、又は、制約処理部301が補正した後の操舵角速度に対応する操舵角が車両10の現在及び過去の操舵角に対して急激に変化する高周波成分を含む場合に、この高周波成分を平滑化処理により除去する。
【0057】
バターワースフィルタ302は、平滑化処理後の操舵角を出力部303へ出力する。バターワースフィルタ302は、制約処理部301が上限値の制約を満たすと判定した操舵角等が車両10の現在及び過去の操舵角に対して急激に変化する高周波成分を含まない場合に、この操舵角をそのまま出力部303へ出力する。
【0058】
[操舵角の出力]
出力部303は、導出部203が導出した操舵角を制御装置4へ出力する。出力部303は、導出部203が導出した操舵角と車両10の現在の操舵角との差分に基づいて制約処理部301が特定した操舵角速度が、操舵角速度の上限値以下である場合に、導出した操舵角を制御装置4へ出力する。一方、出力部303は、制約処理部301が特定した操舵角速度が、操舵角速度の上限値を超える場合には、操舵角速度の上限値に対応する操舵角を制御装置4へ出力する。
【0059】
出力部303は、導出部203が導出した操舵角が車両10の現在及び過去の操舵角に対して急激に変化する高周波成分を含む場合には、バターワースフィルタ302により平滑化処理した後の操舵角を出力する。出力部303は、導出部203が導出した操舵角がこの高周波成分を含まない場合には、バターワースフィルタ302により平滑化処理する前と同じ値の操舵角を出力する。
【0060】
[情報出力装置100による操舵角の導出の処理手順]
図8は、情報出力装置100による目標軌道を車両10が追従するための操舵角の導出の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両10の走行中に開始される。まず、取得部201は、プランナー1が生成した目標軌道及び目標速度をプランナー1から取得する(S101)。取得部201は、車両10の走行位置と、車両10の走行する向きを示す方位角とをプランナー1から取得する(S102)。
【0061】
特定部202は、取得部201が取得した目標軌道上の複数の位置において目標軌道が延びる接線方向がグローバル座標系(例えば、東経、北緯等)に対して回転する目標ヨーレートを特定する。特定部202は、取得した目標軌道上を車両10が走行したと仮定した場合に、目標軌道上の複数の位置において目標軌道に沿って車両10が旋回するための目標操舵角を特定する(S103)。
【0062】
導出部203は、目標軌道の曲率Κγを含まずに目標ヨーレートφtを含む予測モデル(式(12)参照)を用いて、目標軌道を追従するための操舵角を導出する。導出部203は、この予測モデルが成り立つ条件下において、横偏差yに関する項、方位角偏差θに関する項、及び、目標操舵角δγと車両の操舵角δとのずれに関する項、を含む評価関数(式(13)参照)を最小化するための操舵角δを導出する(S104)。
【0063】
制約処理部301は、導出部203が導出した操舵角と、現在の車両10の操舵角との差分に基づいて、操舵角速度を特定する。制約処理部301は、特定した操舵角速度が上限値を超えるか否かを判定する(S105)。制約処理部301は、特定した操舵角速度が上限値を超えると判定した場合に(S105のYES)、操舵角速度を上限値と同じ値に補正し、この補正後の操舵角速度に対応する操舵角を算出する(S106)。バターワースフィルタ302は、操舵角が車両10の現在及び過去の操舵角に対して急激に変化する高周波成分を含む場合にこの高周波成分を平滑化処理により除去する(S107)。出力部303は、高周波成分が除去された操舵角を制御装置4へ出力する。制御装置4は、この操舵角に基づいて車両10の操舵角を変化させて車両10を走行させる(S108)。制御装置4は、車両10の走行を終了したか否かを判定する(S109)。制御装置4は、車両10の走行を終了したと判定した場合(S109のYES)、処理を終了する。
【0064】
制約処理部301は、S105の判定において特定した操舵角速度が上限値以下であると判定した場合に(S105のNO)、S107の処理に移る。制御装置4は、S109の判定において車両10の走行を終了していないと判定した場合(S109のNO)、S101の処理に戻る。
【0065】
[本実施形態の情報出力装置100による効果]
導出部203は、目標軌道の曲率Κγを含まずに目標ヨーレートを含む予測モデルを用いて、評価関数Jを最小化する操舵角を導出する。導出部203は、曲率を含まない予測モデルを用いることにより、車両10の走行速度が比較的低い状態において曲率の算出の精度が低下することに起因して、操舵角の導出の精度が低下することを抑制することができる。したがって、導出部203は、操舵角を導出する精度を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0067】
1 プランナー
2 モデル予測制御器
3 フィルタ処理部
4 制御装置
5 記憶部
6 記憶部
10 車両
100 情報出力装置
201 取得部
202 特定部
203 導出部
301 制約処理部
302 バターワースフィルタ
303 出力部