(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116001
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】浄水用フィルター体
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240820BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240820BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240820BHJP
B01D 27/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C02F1/28 G
B01J20/20 F
B01J20/28 Z
B01D27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021962
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】横井 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅野 拓也
【テーマコード(参考)】
4D116
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116AA07
4D116BB01
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4G066AC26C
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA23
4G066DA07
(57)【要約】
【課題】微粒子の捕集性能と通水性能をより適切に両立させることができる浄水用フィルター体を提供する。
【解決手段】活性炭と繊維状バインダーとを含む浄水部11を備えた浄水用フィルター体10であって、前記浄水部を通水方向に厚さ4.0mmで切り出して得られた試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmであり、より好ましくは前記累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.3μm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭と繊維状バインダーとを含む浄水部を備えた浄水用フィルター体であって、
前記浄水部を通水方向に厚さ4.0mmで切り出して得られた試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmである
ことを特徴とする浄水用フィルター体。
【請求項2】
前記試験体において、前記累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.3μm以上である請求項1に記載の浄水用フィルター体。
【請求項3】
前記試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上である請求項1又は2に記載の浄水用フィルター体。
【請求項4】
前記試験体において、パームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmである請求項1又は2に記載の浄水用フィルター体。
【請求項5】
前記試験体において、パームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmである請求項3に記載の浄水用フィルター体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水用フィルター体に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水等の飲料用水から異物等の微粒子を除去するための浄水器では、多孔質構造により吸着性能を備えた活性炭等を用いて構成されたフィルター体が装着される。この種の浄水用フィルター体は、例えば、粒状や繊維状等の活性炭と繊維状バインダーとが一体化されて、通水時に異物等の微粒子の除去が可能な浄水部が構成される。
【0003】
浄水器では、通常、通水が繰り返されて捕集された微粒子が蓄積される等により、目詰まりが生じて微粒子の捕集性能が徐々に低下する。その際、フィルター体の内部の空隙が小さくなるほど微粒子の捕集性能は向上するが目詰まりが早くなり、内部の空隙が大きくなるほど目詰まりしにくくなるが微粒子の捕集性能が低下する傾向があることから、浄水用フィルター体では、微粒子捕集性能と目詰まりのしにくさとの両立が求められている。
【0004】
そこで、フィルター体を構成する原料活性炭の粒度分布や粒径に着目し、積算体積百分率D50を50~150μm、積算体積百分率D10を55~75μm、積算体積百分率D90を160~190μm、かつ、粒径が40μm以下の粉末状活性炭の割合を7体積%以下と規定して、微粒子の捕集性能と通水性能(目詰まりのしにくさ)の両立を図ったフィルター体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、フィルター体を構成する原料活性炭の粒度分布や粒径は、フィルター体の通水性の程度を直接的に規定する要因とはいえないことから、より優れた微粒子捕集性能を備えつつ通水性能にも優れたフィルター体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、水中の微粒子の捕集性能と通水性能をより適切に両立させることができる浄水用フィルター体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、活性炭と繊維状バインダーとを含む浄水部を備えた浄水用フィルター体であって、前記浄水部を通水方向に厚さ4.0mmで切り出して得られた試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmであることを特徴とする浄水用フィルター体に係る。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記試験体の前記累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.3μm以上である浄水用フィルター体に係る。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上である浄水用フィルター体に係る。
【0011】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmである浄水用フィルター体に係る。
【0012】
第5の発明は、第3の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmである浄水用フィルター体に係る。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る浄水用フィルター体によると、活性炭と繊維状バインダーとを含む浄水部を備えた浄水用フィルター体であって、前記浄水部を通水方向に厚さ4.0mmで切り出して得られた試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmであるため、水中の微粒子の捕集性能と通水性能とを適切に両立させることができる。
【0014】
第2の発明に係る浄水用フィルター体によると、第1の発明において、前記試験体の前記累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.3μm以上であるため、通水性能が飛躍的に向上する。
【0015】
第3の発明に係る浄水用フィルター体によると、第1又は第2の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上であるため、通水性能をさらに向上させることができる。
【0016】
第4の発明に係る浄水用フィルター体によると、第1又は2の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmであるため、微粒子捕集性能と通水性能とをより適切に両立させることができる。
【0017】
第5の発明に係る浄水用フィルター体によると、第3の発明において、前記試験体のパームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmであるため、微粒子捕集性能と通水性能とをより適切に両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浄水用フィルター体の斜視図である。
【
図2】中空円筒形状のフィルター体から試験体を切り出す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の浄水用フィルター体は、水道水等の液体中の残留成分や異物等を吸着し、除去することを目的としたものであり、主として浄水器に装着される。このフィルター体は、活性炭と繊維状バインダーとを含む浄水部を備える。
【0020】
活性炭は、液体中の残留成分や異物等を吸着、除去する吸着材に相当する。活性炭は、活性炭原料を炭化し賦活して得られるものであり、粉末状、粒状、繊維状等の適宜の形態で構成される。活性炭原料は、ヤシ殻、大鋸粉(オガコ)、廃材、廃竹、石炭、石油ピッチ、フェノール樹脂等が用いられる。これらの活性炭原料は、炭化された後、水蒸気賦活、塩化亜鉛賦活、リン酸賦活、硫酸賦活、空気賦活、炭酸ガス賦活等の賦活処理が加えられ、細孔が発達する。
【0021】
粉末状や粒状の活性炭は、例えば、木材(廃材、間伐材、オガコ)、コーヒー豆の絞りかす、籾殻、椰子殻、樹皮、果物の実等の原料から得られる。これらの天然由来の原料は炭化、賦活により細孔が発達しやすくなる。また廃棄物の二次的利用であるため安価に調達可能である。他にもタイヤ、石油ピッチ、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂由来の焼成物、さらには、石炭等も原料として使用することができる。粉末状・粒状活性炭の平均粒子径は適宜であるが、例えば5~100μm程度が好ましい。
【0022】
繊維状活性炭は、例えば、フェノール樹脂系、アクリル樹脂系、セルロース系、石炭ピッチ系等の適宜の繊維を炭化し賦活して得られる。繊維長や断面径等は適宜である。繊維断面径が大きすぎる場合は、表面積が少なくなり接触効率が低下するため、吸着能力向上の点から繊維断面径は30μm以下とすることが好ましい。
【0023】
活性炭は、浄水用途で一般的に要求される吸着性能を備えていればよい。活性炭の吸着性能は、例えば、活性炭の比表面積、細孔容積、平均細孔直径等の指標が用いられる。具体的には、比表面積は500~2000(m2/g)、細孔容積は0.4~2.0(cm3/g)、平均細孔直径は0.5~6.0(nm)である。
【0024】
繊維状バインダーは、活性炭と一体化して保形するための材料であり、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、セルロース系繊維等が用いられる。特に、繊維状バインダーはフィブリル化された繊維バインダーが好ましい。繊維のフィブリル化により活性炭を効果的に絡めて一体化することができる。
【0025】
浄水部は、活性炭と繊維状バインダーとが一体化されて所定形状に成形され、通水により液体中の残留成分や異物等の微粒子を吸着、除去して捕集する部位である。活性炭と繊維状バインダーとの配合割合は、使用する活性炭の粒子径等の物性や、使用目的ないし使用環境等に応じて適宜に設定される。また、浄水部の形状等は、対応する浄水器の種類等に応じてシート形状、ブロック形状、中空円筒形状等、適宜である。
【0026】
図1に示す実施形態の浄水用フィルター体10は、活性炭と繊維状バインダーとが一体化された浄水部11が中空円筒形状に構成される。この中空円筒形状の浄水用フィルター体10では、使用に際して液体が浄水部11の側面12から中空部13方向へ通水されることから、側面12全周面から液体を通水させることができる。そのため、中空円筒形状の浄水用フィルター体10は、通水時に表面積を有効に利用でき、かつ均等に液体を通過させることができる。
【0027】
浄水用フィルター体は、活性炭と繊維状バインダーとを混合し、水性スラリーとして所定形状に吸引、成形する湿式成形法により得られる。また、浄水用フィルター体は、必要に応じてカートリッジ式とすることにより、浄水器への装着や交換を簡易に行うことができる。カートリッジ式の浄水用フィルター体は、家庭用浄水器の他、据え置き型や濾過能力を高めて大型化した装置への適用も可能である。
【0028】
本発明は、浄水用フィルター体の微粒子の捕集性能と通水性能(目詰まりしにくさ)を規定する要因として、フィルターを構成する活性炭同士によって形成される空隙の大きさに着目した。フィルター体の通水方向に貫通する細孔の孔径(貫通細孔径)をパームポロメーターによる測定にて算出し、微粒子捕集性能と通水性能の両立化の指標として表すことができることを見出した。
【0029】
貫通細孔径は、フィルター体の通水方向に貫通する細孔の孔径、つまりはフィルター体の浄水部内の通水経路に相当する空隙(貫通細孔)の孔径であって、パームポロメーターを用いて測定された圧力P(PSI)から、下記式(i)に基づいて算出される。なお、d(μm)は貫通細孔径、γ(dynes/cm)は含浸液体の表面張力、Cは定数(0.415)である。
d=C・γ/P ・・・ (i)
【0030】
パームポロメーターによる測定では、対象となる浄水用フィルター体の浄水部から使用時の通水方向に厚さ4.0mmで切り出された試験体が用いられる。浄水部における試験体の切り出し部分は任意であるが、本発明においては、
図2(a)に示すような中空円筒形状のフィルター体10を用いたため、中空部13の接線21に相当する位置の水平面を底面とし、接線21に対して鉛直方向を厚さ方向としたシート体20(
図2(b)参照)を切り出し、シート体20の適宜の切り出し部分25からパームポロメーターに設置可能な所定形状で切り出されて試験体30を得た(
図2(c)参照)。先に記載したように、試験体の切り出し部分は任意であるが、有意な貫通細孔径の測定に際しては、通水方向の出口側近傍の貫通細孔を測定することが好ましいと考えられることから、浄水部の使用時の通水方向出口側から切り出されるのがよい。
【0031】
試験体において、パームポロメーターによる測定で算出される貫通細孔径は、試験体の通水方向(厚さ方向)に相当する一面側から他面側へ貫通した空隙(貫通細孔)の最も細い部分の孔径である。
【0032】
パームポロメーターによる測定では、まず試験体が含浸液体に含浸されて貫通細孔を含む細孔が湿潤される。含浸液体には、所定の粘性を有する適宜の液体が用いられる。含浸された試験体はパームポロメーターに設置され、一面側(底面側)から徐々に圧力が加えられる。その際、圧力上昇に伴って細孔径が大きい貫通細孔から順に貫通細孔内の液体が流出される。
【0033】
ここで、パームポロメーターにより測定された所定の累積フィルターフローでの圧力から、式(i)を用いて対応する貫通細孔径を算出できる。累積フィルターフローは、Wet-up測定による湿潤試料の流量(ウェット流量)とDry-up測定による乾燥試料の流量(ドライ流量)とから、(ウェット流量/ドライ流量)×100で求められる値(単位:%)である。本発明では、パームポロメーターにより測定された累積フィルターフローから貫通細孔径が算出可能であることから、微粒子捕集性能と通水性能の両立化の好ましい条件として、パームポロメーターにより測定された累積フィルターフロー25%での圧力から算出される貫通細孔径を3.7~6.6μmと規定した。
【0034】
累積フィルターフロー25%での貫通細孔径は、試験体の中でも比較的液体が流出しやすい(通水しやすい)大径の貫通細孔の孔径を表し、試験体の通水性能の指標として用いることができる。そして、後述の実施例から、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmの範囲で微粒子捕集性能と通水性能とを適切に両立させることができ、特に貫通細孔径が4.3μm以上の場合に通水性能が飛躍的に向上する。この累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が小さすぎると、通水しやすい貫通細孔が少なくなって目詰まりしやすくなり、貫通細孔径が大きすぎると、通水しやすくなるが微粒子捕集性能が不十分となる。
【0035】
また、本発明の浄水用フィルター体では、パームポロメーターにより測定された厚さ方向(通水方向)の累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上であることが好ましい。累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上であると、試験体中の目詰まりしやすい小径の貫通細孔が比較的少なくなるため、通水性能をさらに向上させることができる。特に、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が小さいフィルター体において、より効果的に通水性能を向上させることができる。そのため、貫通細孔径が比較的小さくても目詰まりしにくい、いわゆる寿命の長いフィルター体を提供することができる。
【0036】
本発明の浄水用フィルター体では、パームポロメーターにより測定された厚さ方向(通水方向)のバブルポイントが12~22μmであることが好ましい。バブルポイントは、パームポロメーターによる測定において、貫通細孔からの液体の流出が発生した時点の貫通細孔径であり、貫通細孔の最大径に相当する。バブルポイント(貫通細孔の最大径)が小さすぎると十分な通水性能が得られないおそれがあり、大きすぎると微粒子捕集性能が低下するおそれがある。
【0037】
さらに本発明の浄水用フィルター体では、パームポロメーターにより測定された平均流量孔径が1.8~3.4μmであることが好ましい。この平均流量孔径は、ASTM E1294-89に準拠するハーフドライ法に基づいて、乾燥させた試験体を使用したパームポロメーターによるDry-up測定の1/2の流量曲線と、湿潤させた試験体を使用したパームポロメーターによるWet-up測定の流量曲線との交点の圧力から、式(i)を用いて算出した値である。平均流量孔径が上記範囲内であることにより、微粒子捕集性能と通水性能とをより適切に両立させることができる。
【実施例0038】
[浄水用フィルター体の作製]
浄水用フィルター体の作製に際し、後述する活性炭と繊維状バインダーとを用い、湿式成形法により、活性炭と繊維状バインダーとを混合して水性スラリーとし、外周径61mm、内周径(中空部の径)30mm、長さ125mmの中空円筒形状に成形して試作例1~10の浄水用フィルター体を作製した。なお、フィルター体を構成する原料において、活性炭の配合比は合計で100重量部、バインダーの配合比は活性炭100重量部に対する割合とした。
【0039】
[使用材料]
・活性炭C1:粉末状活性炭(フタムラ化学株式会社製、「CA」)、平均粒子径39μm
・活性炭C2:粉末状活性炭(フタムラ化学株式会社製、「CN70MS」)、平均粒子径85μm
・活性炭C3:粉末状活性炭(フタムラ化学株式会社製、「CN100MS」)、平均粒子径93μm
・活性炭C4:粉末状活性炭(フタムラ化学株式会社製、「CN50MS」)、平均粒子径44μm
・バインダーB1:フィブリル化繊維(日本エクスラン工業株式会社製、「ビィパル(登録商標)」)
【0040】
[試作例1]
試作例1は、活性炭C1が100重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が111.8gのフィルター体である。
【0041】
[試作例2]
試作例2は、活性炭C1が80重量部、活性炭C2が20重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が116.8gのフィルター体である。
【0042】
[試作例3]
試作例3は、活性炭C1が70重量部、活性炭C2が30重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が117.2gのフィルター体である。
【0043】
[試作例4]
試作例4は、活性炭C1が60重量部、活性炭C2が40重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が116.6gのフィルター体である。
【0044】
[試作例5]
試作例5は、活性炭C1が50重量部、活性炭C2が50重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が112.6gのフィルター体である。
【0045】
[試作例6]
試作例6は、活性炭C1が40重量部、活性炭C2が60重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が115.8gのフィルター体である。
【0046】
[試作例7]
試作例7は、活性炭C1が30重量部、活性炭C2が70重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が113.0gのフィルター体である。
【0047】
[試作例8]
試作例8は、活性炭C1が20重量部、活性炭C2が80重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が113.6gのフィルター体である。
【0048】
[試作例9]
試作例9は、活性炭C3が100重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が121.9gのフィルター体である。
【0049】
[試作例10]
試作例10は、活性炭C4が100重量部、バインダーB1が6重量部、フィルター重量が119.4gのフィルター体である。
【0050】
次に、各試作例1~10の浄水用フィルター体について、パームポロメーターによる測定、濁り除去性能試験を行った。各試作例1~10の浄水用フィルター体の原料の配合等や、パームポロメーターによる測定及び濁り除去性能試験の結果を後述する表1,2に示す。
【0051】
〈パームポロメーターによる測定〉
試作例1~10のフィルター体について、
図2に示す手順で厚さ4.0mm、直径16mmの円盤状に切り出して試験体を得た。各試験体を表面張力16(dynes/cm)の含浸液体(スリーエム ジャパン株式会社製、「FC-43」)に含浸させ、パームポロメーター(PMI社製、「CFP-1200AXL」)に設置後、下面側から徐々に圧力を上昇させて、バブルポイント(μm)、平均流量孔径(μm)、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径(μm)、累積フィルターフロー75%での貫通細孔径(μm)をそれぞれ算出した。
【0052】
〈濁り除去性能試験〉
試作例1~10のフィルター体について、JIS S 3201(2019)を参考に濁り除去性能試験を実施した。被濾過流体として、カオリンを分散した試験水(原水)を用いた。当該試験水は、JIS S 3201(2019)記載の方法で調製し、4L/minの流量にて各試作例のフィルター体に通水した。そこで、フィルター体により試験水中から除去されたカオリンの量を測定し、カオリン除去率を測定した。カオリン除去率を微粒子捕集性能として評価するに際し、カオリン除去率が80%以上を「○(良)」、80%未満を「×(不可)」とした。また、4L/minの流量にて通水を続け、カオリンを捕集して動水圧が0.2MPaになるまでの総通水量を測定した。総通水量は、フィルター体のいわゆる寿命の指標となる。通水量を通水性能として評価するに際し、総通水量が7000(L)以上を「A(優)」、4000(L)以上かつ7000(L)未満を「B(良)」、3000(L)以上かつ4000(L)未満を「C(可)」、3000(L)未満を「D(不可)」とした。なお、総合評価として、カオリン除去率の評価が「×」の場合には「D(不可)」とし、カオリン除去率の評価が「○」の場合には総通水量の評価と同一評価で表した。
【0053】
【0054】
【0055】
[結果と考察]
表1,2から理解されるように、試作例1~10のフィルター体のうち、試作例1は、カオリン除去率が100%で極めて優れた微粒子捕集性能を奏するが、総通水量が1500Lであって、要求される総通水量を大きく下回っており、十分な通水性能が得られなかった。また、試作例9は、通水初期からカオリン除去率77.0%であって評価基準のカオリン除去率80%を下回り、十分な微粒子捕集性能が得られなかった。これに対し、試作例2~8,10は、いずれも微粒子捕集性能と通水性能が要求される性能を満たしており、微粒子捕集性能と通水性能とを両立させることができた。
【0056】
ここで、濁り除去性能試験でほぼ同等の結果が得られた試作例4と試作例10とを対比する。試作例4は活性炭C1(平均粒子径39μm)が60重量部と活性炭C2(平均粒子径85μm)が40重量部で構成されているのに対し、試作例10は活性炭C4(平均粒子径44μm)が100重量部で構成されており、活性炭の粒子の構成が相違する試作例である。試作例4と試作例10とでは、フィルター体を構成する活性炭が異なるものの、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径や累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が近似していることから、濁り除去性能試験でほぼ同等の結果が示されたと考えられる。つまり、貫通細孔径が微粒子捕集性能と通水性能との両立化を規定する直接的な要因となっていると考えられる。
【0057】
この観点を踏まえて各試作例1~10を見ると、全体の傾向として、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が大きくなるのに伴って、微粒子捕集性能(カオリン除去率)が低下するとともに通水性能(総通水量)が増加する傾向がみられた。そして、優れた微粒子捕集性能を有するが通水性能が不十分な試作例1においては、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が試作例の中で最小(3.3μm)であった。また、微粒子捕集性能が不十分であった試作例9においては、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が試作例の中で最大(6.7μm)であった。なお、微粒子捕集性能が不十分であったため、通水性能(総通水量)の測定は行わなかった。
【0058】
微粒子捕集性能と通水性能の両立が示された試作例2~8,10では、試作例2の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径3.8μmが最小で総通水量の下限値(3000L)に近似し、試作例8の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径6.5μmがカオリン除去率の下限値(80%)に近似していた。そうすると、微粒子捕集性能と通水性能との両立が可能なフィルター体において、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径の範囲は、3.7~6.6μm程度であると考えられる。
【0059】
さらに、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.9μmの試作例3と累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.1μmの試作例4では、貫通細孔径の差が0.2μmで総通水量の増加量が50Lであるのに対し、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.1μmの試作例4と累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.5μmの試作例6では、貫通細孔径の差が0.4μmで総通水量の増加量が2800Lと大幅に増加していた。従って、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.3μm辺りから、通水性能が飛躍的に向上すると考えられる。
【0060】
そして、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.9μmの試作例3と累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が4.0μmの試作例10では、貫通細孔径の差が0.1μmで総通水量の増加量が50Lであるのに対し、貫通細孔径の差が同等の0.1μmである累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.8μmの試作例2と累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.9μmの試作例3では、総通水量の増加量が850Lと通水性能の向上がみられた。試作例2と試作例3とを対比すると、試作例2は累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が0.9μmであり、試作例3は累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.1μmであった。
【0061】
また、試作例3,4,10を対比すると、試作例3と試作例4では累積フィルターフロー25%での貫通細孔径の差が0.2μmかつ累積フィルターフロー75%での貫通細孔径の差が0.1μmで総通水量が50L増加しているのに対し、試作例3と試作例10では累積フィルターフロー25%での貫通細孔径の差が0.1μmかつ累積フィルターフロー75%での貫通細孔径の差が0.2μmで総通水量が同様に50L増加していた。
【0062】
試作例2,3,4,10の対比から、累積フィルターフロー75%での貫通細孔径も通水性能の向上に寄与していると考えられる。特に、試作例2,3の対比において、通水性能が比較的大きく向上されたことから、累積フィルターフロー75%での貫通細孔径が1.0μm以上である場合に、通水性能をさらに向上させることができる。この効果は、試作例3から理解されるように、累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が小さい場合により有効に作用した。
【0063】
各試作例の結果を見ると、平均流量孔径は、おおよそ累積フィルターフロー25%での貫通細孔径に比例する傾向にある。このため、平均流量孔径が小さすぎず、かつ大きすぎない範囲とすることにより、微粒子捕集性能と通水性能とを両立させることができると考えられる。表1,2から、特に微粒子捕集性能と通水性能とが良好なフィルター体とするためには、平均流量孔径が1.8~3.4μmであることが好ましいと考えらえる。
本発明の浄水用フィルター体は、浄水部を通水方向に厚さ4.0mmで切り出して得られた試験体において、パームポロメーターにより測定された厚さ方向の累積フィルターフロー25%での貫通細孔径が3.7~6.6μmであることにより、微粒子の捕集性能と通水性能とを適切に両立させることができる。そのため、従来の浄水用フィルター体の代替として有望である。