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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116003
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20240820BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240820BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20240820BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240820BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240820BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240820BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240820BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/46 ZHV
B60W10/30 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60L50/61
B60L58/10
B60L1/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021964
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 幸秀
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB11
3D202BB20
3D202BB21
3D202CC60
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD24
3D202DD45
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC06
5H125BC25
5H125BD17
5H125CA01
5H125EE42
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】シリーズ方式のハイブリッド車両において電池低温時の走行性能の低下を抑制する。
【解決手段】本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の動作時に前記内燃機関の動力を電力に変換可能であるとともに前記内燃機関の非動作時に電池からの電力を用いて前記内燃機関を始動可能な発電用電動機と、電力を用いて駆動輪に走行のための駆動力を供給する駆動用電動機と、前記発電用電動機および前記駆動用電動機に電力を出力可能な前記電池と、を備え、電池制御の充放電制限量に対して所定量のマージンを設けて前記発電用電動機および前記駆動用電動機の使用電力を決定するハイブリッド車両の制御装置であって、前記駆動用電動機が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときは、前記マージンの大きさを低減させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の動作時に前記内燃機関の動力を電力に変換可能であるとともに前記内燃機関の非動作時に電池からの電力を用いて前記内燃機関を始動可能な発電用電動機と、電力を用いて駆動輪に走行のための駆動力を供給する駆動用電動機と、前記発電用電動機および前記駆動用電動機に電力を出力可能な前記電池と、を備え、電池制御の充放電制限量に対して所定量のマージンを設けて前記発電用電動機および前記駆動用電動機の使用電力を決定するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記駆動用電動機が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときは、前記マージンの大きさを低減させる、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記マージンの大きさを低減させるときに、併せて、前記ハイブリッド車両の補機における電力使用量を低減させる、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記マージンの大きさを低減させた後、前記駆動用電動機が前記駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できる状態になったときは、前記マージンの大きさを元に戻す、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の動力源を備えるハイブリッド車両に搭載されるシステムとして、例えば、いわゆるシリーズ方式のハイブリッドシステムがある。シリーズ方式のハイブリッドシステムは、例えば、エンジンと、エンジンの動力で発電する発電モータ(MG1)と、走行のための駆動力を発生する駆動モータ(MG2)と、駆動モータなどに供給される電力を蓄える電池(バッテリ)と、を含む。以下、このようなシリーズ方式のハイブリッドシステムが搭載されたハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)を、単に「ハイブリッド車両」と称する。また、電力出力を「電力」、「出力」、「パワー」などとも称する。
【0003】
ハイブリッド車両は、EV(Electric Vehicle)走行と、HV(Hybrid Vehicle)走行と、のいずれかによって走行する。EV走行では、発電モータによる発電を行わずに、電池から供給される電力のみによって走行する。また、HV走行では、エンジンの動力によって発電モータにより発電された電力と、電池から供給される電力と、の両方によって走行する。
【0004】
そして、EV走行時に、電池出力が、必要な電力よりも小さくなった場合、エンジンを始動してHV走行に切り替える。必要な電力とは、例えば、走行制御(HEV制御)に必要な電力(走行に必要な電力、および、エンジンの始動時に必要な電力の合計)、マージン、損失(各種エネルギー損失)、補機負荷などの合計である。
【0005】
したがって、ハイブリッド車両では、まず、電池制御における充放電制限量(単位時間あたりの充電制限量(上限量)、および、放電制限量(上限量)、単位は例えばW(ワット))が設定される。その電池制御における充放電制限量に対して、走行制御における充放電制限量は、マージンなどの分、小さく設定される。そして、走行制御における充放電制限量の制約を守りながら、発電モータと駆動モータの使用電力を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-87337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、一般に、電池低温時には、電池制御における充放電制限量が小さくなるので、それに応じて走行制御における充放電制限量も小さくなる。したがって、上述の従来技術では、例えば、電池低温時において、走行制御における充放電制限量が小さくなることで、走行性能が低下する場合がある。具体的には、例えば、登坂走行時に、走行抵抗が大きくて走行に要する電力が大きくなるが、駆動モータで使用可能な電力が小さいために、車両が前進できない(または前進しにくい)ことがある。また、平地走行時でも、車両の加速の度合いが小さくなることがある。
【0008】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、シリーズ方式のハイブリッド車両において電池低温時の走行性能の低下を抑制可能な制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の動作時に前記内燃機関の動力を電力に変換可能であるとともに前記内燃機関の非動作時に電池からの電力を用いて前記内燃機関を始動可能な発電用電動機と、電力を用いて駆動輪に走行のための駆動力を供給する駆動用電動機と、前記発電用電動機および前記駆動用電動機に電力を出力可能な前記電池と、を備え、電池制御の充放電制限量に対して所定量のマージンを設けて前記発電用電動機および前記駆動用電動機の使用電力を決定するハイブリッド車両の制御装置であって、前記駆動用電動機が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときは、前記マージンの大きさを低減させる。
【0010】
上記構成によれば、駆動用電動機が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときにマージンの大きさを低減させることで、駆動用電動機で使用可能な電力が増えるので、電池低温時の走行性能の低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記ハイブリッド車両の制御装置において、前記マージンの大きさを低減させるときに、併せて、前記ハイブリッド車両の補機における電力使用量を低減させる。
【0012】
上記構成によれば、マージンの大きさを低減させるとときに、併せて、補機における電力使用量を低減させることで、駆動用電動機で使用可能な電力がさらに増えるので、電池低温時の走行性能の低下をさらに抑制することができる。
【0013】
また、前記ハイブリッド車両の制御装置において、前記マージンの大きさを低減させた後、前記駆動用電動機が前記駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できる状態になったときは、前記マージンの大きさを元に戻す。
【0014】
上記構成によれば、マージンの大きさを低減させる必要性が減ったときに、すぐにマージンの大きさを元に戻すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリーズ方式のハイブリッド車両において、駆動用電動機が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときにマージンの大きさを低減させることで、駆動用電動機で使用可能な電力が増えるので、電池低温時の走行性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態のハイブリッド車両の要部構成の例を示す図である。
図2図2は、従来技術と実施形態における各パラメータの時間的推移を示すグラフである。
図3図3は、実施形態における駆動モータの上限パワー算出の説明図である。
図4図4は、実施形態のハイブリッド車両における処理を示すフローチャートである。
図5図5は、従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明のハイブリッド車両の制御装置の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
実施形態の理解を容易にするために、従来技術についてあらためて説明する。図5は、従来技術の説明図である。(a)は、ハイブリッド車両において電池の暖機後の各パラメータの時間的推移を示すグラフである。(a)、(b)のグラフにおいて、横軸は時間で、縦軸は電力(上側が放電。下側が充電)である。なお、以下では、「マージン」という場合に、本来のマージンのほかに、損失(各種エネルギー損失)や補機負荷なども含んだ合計を示す場合がある。
【0019】
(a)に示すように、ハイブリッド車両では、電池制御における放電制限量DL1、充電制限量CL1が設定される。それらに対して、走行制御における放電制限量DL2、充電制限量CL2は、それぞれ、マージンDM、CMの分、小さく設定される。なお、マージンを設けている理由の1つは、ハイブリッド車両に対して電池がオーバースペックだからである。そのため、本発明は、どんな電池の場合にも適用できる。
【0020】
ハイブリッド車両では、走行制御における充放電制限量(符号DL2、CL2)の制約を守りながら、発電モータと駆動モータの使用電力を決定する。そして、MG2消費電力PC2(駆動モータによる消費電力)、MG1発電電力PC1(発電モータによる消費電力)、電池充放電量BTは、図示のように推移する。この場合、電池充放電量BTが、放電制限量DL2から充電制限量CL2までの範囲に収まっていればよい。
【0021】
一方、(b)は、ハイブリッド車両において電池の低温時の各パラメータの時間的推移を示すグラフである。一般に、電池低温時には、電池制御における充放電制限量(符号DL1、CL1)が小さくなるので、それに応じて走行制御における充放電制限量(符号DL2、CL2)も小さくなる。
【0022】
そのために、走行性能が低下する場合がある。具体的には、例えば、登坂走行時に、走行抵抗が大きくて走行に要する電力が大きくなるが、駆動モータで使用可能な電力が小さいために、車両が前進できない(または前進しにくい)ことがある。また、平地走行時でも、車両の加速の度合いが小さくなることがある。この理由の1つは、電池充放電量BTを放電制限量DL2から充電制限量CL2までの範囲に収める必要があるので、MG2消費電力PC2(駆動モータによる消費電力)の変化量を小さく抑えることになるからである。
【0023】
そこで、以下では、シリーズ方式のハイブリッド車両において電池低温時の走行性能の低下を抑制可能な技術について説明する。
【0024】
図1は、実施形態のハイブリッド車両1の要部構成の例を示す図である。図1を参照しながら、本実施形態にハイブリッド車両1の要部構成について説明する。
【0025】
ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している車両である。ハイブリッド車両1は、駆動輪17と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)31と、アクセルセンサ32と、ブレーキスイッチ33と、車速センサ34と、を備える。
【0026】
また、ハイブリッドシステム2は、エンジン11と、発電モータ12(MG1:発電用電動機)と、駆動モータ13(MG2:駆動用電動機)と、電池14と、PCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15と、を含む。
【0027】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジン等の内燃機関である。
【0028】
発電モータ12は、エンジン11の動作時にエンジン11の動力を電力に変換可能であるとともに、エンジン11の非動作時に電池14からの電力を用いてエンジン11を始動可能である。
【0029】
具体的には、発電モータ12は、エンジン11の動力を電力に変換するための構成で、例えば、永久磁石同期モータである。発電モータ12の回転軸は、エンジン11のクランクシャフトに、図示しないギヤを介して機械的に連結されている。例えば、エンジン11のクランクシャフトにエンジン出力ギヤが相対回転不能に支持され、発電モータ12の回転軸にモータギヤが相対回転不能に支持されて、エンジン出力ギヤとモータギヤとが噛合している。
【0030】
駆動モータ13は、電池14からの電力などを用いて駆動輪17に走行のための駆動力を供給する。具体的には、駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータである。駆動モータ13の回転軸は、駆動輪17を回転駆動させるための駆動系16に連結されている。駆動系16は、デファレンシャルギヤを含む。駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これによって、左右の駆動輪17が回転し、ハイブリッド車両1が前進または後進する。
【0031】
電池14は、発電モータ12および駆動モータ13に電力を出力可能な構成である。具体的には、電池14は、例えば、複数の二次電池(例えばリチウムイオン電池)を組み合わせた組電池である。電池14は、例えば、約200~350[V]の直流電力を出力する。
【0032】
PCU15は、発電モータ12および駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットである。PCU15は、第1インバータ21と、第2インバータ22と、コンバータ23と、を備える。
【0033】
第1インバータ21は、コンバータ23からの直流電力を交流電力に変換し、発電モータ12により発電された交流電力を直流電力に変換するインバータ装置である。
【0034】
第2インバータ22は、コンバータ23からの直流電力を交流電力に変換し、駆動モータ13による回生運転により発生した交流電力を直流電力に変換するインバータ装置である。
【0035】
コンバータ23は、電池14から出力される直流電力を昇圧し、または、第1インバータ21や第2インバータ22から出力される直流電力を降圧するコンバータ装置である。
【0036】
エンジン11の始動時には、電池14から出力される直流電力がコンバータ23により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ21で交流電力に変換され、変換された交流電力が発電モータ12に供給される。これによって、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0037】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0038】
ハイブリッド車両1の走行時において、駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1は、EV(Electric Vehicle)走行を行う。すなわち、EV走行では、エンジン11が停止し、発電モータ12による発電を行わず、電池14からコンバータ23および第2インバータ22を介して供給される電力のみによって駆動モータ13が駆動される。
【0039】
一方、ハイブリッド車両1の走行時において、駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力を上回るときには、ハイブリッド車両1は、HV(Hybrid Vehicle)走行を行う。すなわち、HV走行では、発電モータ12により発電された電力、および、電池14から供給される電力の両方によって駆動モータ13が駆動される。
【0040】
具体的には、HV走行では、エンジン11が稼動状態となり、発電モータ12が発電運転(回生運転)されることにより、エンジン11の動力が発電モータ12で交流電力に変換される。そして、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、当該直流電力が第2インバータ22で交流電力に変換されて、当該交流電力が駆動モータ13に供給される。当該交流電力と電池14からの電力により、駆動モータ13が駆動される。
【0041】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が駆動系16の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ22に供給される交流電力が第2インバータ22で直流電力に変換され、当該直流電力がコンバータ23で降圧される。そして、降圧後の直流電力が電池14に供給されることにより、電池14が充電される。
【0042】
ECU31は、ハイブリッドシステム2を制御する制御装置である。ECU31には、アクセルセンサ32、ブレーキスイッチ33および車速センサ34が接続されている。ECU31は、アクセルセンサ32から出力される検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する現在の操作量の割合であるアクセル開度を求める。また、ECU31は、車速センサ34から出力される検出信号から、当該検出信号(パルス信号)の周波数を求めて、当該周波数を車速に換算する。
【0043】
アクセルセンサ32は、運転者により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に応じた検出信号を出力するセンサである。
【0044】
ブレーキスイッチ33は、運転者により足踏み操作されるブレーキペダルの操作量または踏み込んだか否かを示すブレーキ信号を出力するセンサである。
【0045】
車速センサ34は、ハイブリッド車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するセンサである。なお、ECU31が車速を認識する手法は、車速センサ34から取得した検出信号を用いる手法に限定されず、ほかに、例えば、PCU15やVSC(Vehicle Stability Control:車両安定制御システム)からCAN(Controller Area Network)経由で取得した車速関連情報を用いる手法などであってもよい。
【0046】
ハイブリッド車両1は、ECU31を含む複数のECUを搭載している。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備える。マイコンには、例えば、CPU(Central Processing Unit)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリなどが内蔵されている。複数のECUは、CAN通信プロトコルによる双方向通信が可能に相互接続されている。各ECUには、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、各ECUには、各種センサから入力される検出信号以外に制御に必要な情報が他のECUから入力される。
【0047】
以下、図2も参照する。図2は、従来技術と実施形態における各パラメータの時間的推移を示すグラフである。(a)は従来技術で、図5(b)と同様である。(b)は本実施形態である。(a)、(b)に示すように、ハイブリッド車両では、電池制御の充放電制限量(符号DL1、CL1)に対して所定量のマージン(符号DM、CM)を設けて走行制御の充放電制限量(符号DL2、CL2)を設定し、その走行制御の充放電制限量(符号DL2、CL2)の制約を守りながら、発電モータ12および駆動モータ13の使用電力を決定する。
【0048】
そして、(b)に示すように、ECU31は、駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたとき(つまり、走行悪化と判定したとき)は、マージン(符号DM、CM)の大きさを低減させる。これにより、放電制限量DL2から充電制限量CL2までの範囲が広がるので、MG2消費電力PC2(駆動モータによる消費電力)、MG1発電電力PC1(発電モータによる消費電力)の変化量を大きくすることができる。したがって、走行性能の低下を抑制できる。
【0049】
また、ECU31は、マージン(符号DM、CM)の大きさを低減させるときに、併せて、ハイブリッド車両1の補機における電力使用量(補機負荷)を低減させるようにしてもよい。そうすれば、MG2消費電力PC2、MG1発電電力PC1の変化量をさらに大きくすることができるので、走行性能の低下をさらに抑制できる。
【0050】
また、ECU31は、マージンの大きさ(および、補機における電力使用量)を低減させた後、駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できる状態になったとき(走行悪化状態から復帰したと判定したとき)は、マージンの大きさ(および、補機における電力使用量)を元に戻す。
【0051】
図3は、実施形態における駆動モータ(MG2)の上限パワー算出の説明図である。走行悪化判定時に、マージン量低減と補機負荷低減を実施することで、発電モータ12(MG1)の充電制限量が上がる(大きくなる)。そして、その充電制限量と駆動要求パワーに基づいて決定される発電モータ12(MG1)の発電量が上がる。
【0052】
また、放電制限量、補機負荷、各損失、発電モータ12(MG1)の発電量に基づいて、駆動モータ(MG2)の上限パワーが算出される。その場合に、放電制限量が上がり、補機負荷が下がり、発電モータ12(MG1)の発電量が上がることで、駆動モータ(MG2)の上限パワーは上がる。これにより、走行性能が良くなる。
【0053】
次に、図4を参照して、ハイブリッド車両1における処理について説明する。図4は、実施形態のハイブリッド車両1における処理を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS1において、ECU31は、ハイブリッド車両1の走行を制御する。
次に、ステップS2において、ECU31は、走行が悪化した(駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いた)か否かを判定し、Yesの場合(図2(b)の時刻t1)はステップS3に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0055】
ステップS3において、ECU31は、マージンの大きさを低減する(図2(b))。
次に、ステップS4において、ECU31は、補機負荷を低減する。
次に、ステップS5において、ECU31は、ハイブリッド車両1の走行を制御する。
【0056】
次に、ステップS6において、ECU31は、走行悪化状態から復帰した(駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できる状態になった)か否かを判定し、Yesの場合(図2(b)の時刻t2)はステップS7に進み、Noの場合はステップS5に戻る。
【0057】
ステップS7において、ECU31は、マージンの大きさを元に戻す。
次に、ステップS8において、ECU31は、補機負荷を元に戻す。次に、ステップS1に戻る。
【0058】
このようにして、本実施形態のハイブリッド車両1によれば、駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できない状態が所定時間以上続いたときにマージンの大きさを低減させることで、駆動モータ13で使用可能な電力が増えるので、電池低温時の走行性能の低下を抑制することができる。これにより、例えば、勾配が大きい登坂路でも走行することができる。
【0059】
また、マージンの大きさを低減させるとときに、併せて、補機における電力使用量を低減させることで、駆動モータ13で使用可能な電力がさらに増えるので、走行性能の低下をさらに抑制することができる。
【0060】
また、マージンの大きさ(および、補機負荷)を低減させた後、駆動モータ13が駆動要求トルクに対応する駆動力を供給できる状態になったとき、つまり、マージンの大きさ(および、補機負荷)を低減させる必要性が減ったときに、すぐにマージンの大きさ(および、補機負荷)を元に戻すことができる。これにより、本来の制御に迅速に戻すことができる。
【0061】
また、本実施形態のECU31で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0062】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…ハイブリッド車両、11…エンジン、12…発電モータ、13…駆動モータ、14…電池、15…PCU、16…駆動系、17…駆動輪、21…第1インバータ、22…第2インバータ、23…コンバータ、31…ECU、32…アクセルセンサ、33…ブレーキスイッチ、34…車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5