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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116004
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20240820BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240820BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240820BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240820BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240820BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W10/08 900
B60L50/61
B60L58/10
F02D29/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021965
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 幸秀
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB08
3D202BB11
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD06
3D202DD17
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD45
3D202DD46
3G093AA07
3G093BA22
3G093DA06
3G093DA13
3G093DB05
3G093DB09
3G093DB15
3G093DB19
3G093DB20
3G093EA02
3G093EA05
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125EE09
5H125EE15
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】シリーズ方式のハイブリッド車両においてエンジンの回転ハンチングを抑制する。
【解決手段】本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、発電用電動機と、駆動用電動機と、電池と、を備える。走行状態および電池の状態に応じて発電用電動機による発電量を決定し、発電量に基づいて内燃機関の目標回転数および目標トルクを決定し、内燃機関の実回転数が目標回転数に近づくように発電用電動機のトルクを調整し、内燃機関の目標トルクについて内燃機関の目標回転数と実回転数の差分に応じた補正を行って補正目標トルクを算出し、内燃機関の補正目標トルクが所定の燃料カット閾値を超えているか否かで内燃機関についての燃料カット要求の作動/非作動を決定する。電池の性能に応じて発電用電動機の動作が制限されているとき、燃料カット要求を非作動にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の動作時に前記内燃機関の動力を電力に変換可能であるとともに前記内燃機関の非動作時に電池からの電力を用いて前記内燃機関を始動可能な発電用電動機と、電力を用いて駆動輪に走行のための駆動力を供給する駆動用電動機と、前記発電用電動機および前記駆動用電動機に電力を出力可能な前記電池と、を備え、走行状態および前記電池の状態に応じて前記発電用電動機による発電量を決定し、前記発電量に基づいて前記内燃機関の目標回転数および目標トルクを決定し、前記内燃機関の実回転数が前記目標回転数に近づくように前記発電用電動機のトルクを調整し、前記内燃機関の前記目標トルクについて前記内燃機関の前記目標回転数と実回転数の差分に応じた補正を行って補正目標トルクを算出し、前記内燃機関の前記補正目標トルクが所定の燃料カット閾値を超えているか否かで前記内燃機関についての燃料カット要求の作動/非作動を決定するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記電池の性能に応じて前記発電用電動機の動作が制限されているとき、前記燃料カット要求を非作動にする、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記電池の性能に応じて前記発電用電動機の下限トルクが設定されていて、前記発電用電動機の実トルクが前記下限トルクまで低下している場合、前記燃料カット要求を非作動にする、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の動力源を備えるハイブリッド車両に搭載されるシステムとして、例えば、いわゆるシリーズ方式のハイブリッドシステムがある。シリーズ方式のハイブリッドシステムは、例えば、エンジン(内燃機関)と、エンジンの動力で発電する発電モータ(MG1)と、走行のための駆動力を発生する駆動モータ(MG2)と、駆動モータなどに供給される電力を蓄える電池(バッテリ)と、を含む。以下、このようなシリーズ方式のハイブリッドシステムが搭載されたハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)を、単に「ハイブリッド車両」と称する。また、電力出力を「電力」、「出力」、「パワー」などとも称する。
【0003】
ハイブリッド車両は、EV(Electric Vehicle)走行と、HV(Hybrid Vehicle)走行と、のいずれかによって走行する。EV走行では、発電モータによる発電を行わずに、電池から供給される電力のみによって走行する。また、HV走行では、エンジンの動力によって発電モータにより発電された電力と、電池から供給される電力と、の両方によって走行する。
【0004】
以下、従来技術のハイブリッド車両について、図4図5を参照して説明する。図4(a)はエンジン目標回転数とエンジン実回転数の乖離が小さい場合を示し、図4(b)はエンジン目標回転数とエンジン実回転数の乖離が大きい場合を示す。
【0005】
HV走行時には、走行状態(車速など)や電池の状態(SOC(State of Charge)や電池温度など)などに応じて発電モータによる発電量を決定する。次に、その発電量に基づいてエンジン目標回転数E2およびエンジン目標トルクE3を決定する。そして、制御によって、エンジン実回転数E1がエンジン目標回転数E2に近づくように発電モータ実トルクPを調整する。
【0006】
また、エンジン目標トルクE3について、エンジン目標回転数E2とエンジン実回転数E1の差分に応じた補正を行い(差分が大きいほど補正量が大きい)、エンジン補正目標トルクE4を算出する。そして、エンジン補正目標トルクE4が所定の燃料カット閾値THを超えている(下回った)か否かでエンジンについての燃料カット要求FCの作動/非作動を決定する。
【0007】
図4(a)に示すように、エンジン目標回転数E2とエンジン実回転数E1の乖離が小さい場合は、エンジン補正目標トルクE4が燃料カット閾値THを超えず、燃料カット要求FCは作動しない(非作動である)。
【0008】
一方、図4(b)に示すように、エンジン目標回転数E2とエンジン実回転数E1の乖離が大きい場合は、大きい補正量によって算出されるエンジン補正目標トルクE4が燃料カット閾値THを超え、燃料カット要求FCが時刻t1から時刻t2まで作動する。これにより、時刻t1から時刻t2まで、エンジンへの燃料供給が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-90310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
また、電池低温時など、電池の性能(出力可能電圧など)が低いとき、電池の保護などのために、発電モータの動作などが制限される。その場合、例えば、図5に示すように、発電モータ下限トルクP2やエンジン上限トルクE5が設定される。
【0011】
このとき、図4(b)と同様の前提とすると、図5において、時刻t11から、発電モータ下限トルクP2によって発電モータ実トルクPが制限されていることにより、エンジン実回転数E1は、エンジン目標回転数E2に追従できず、大きくなっていく。
【0012】
そして、時刻t12でエンジン補正目標トルクE4が燃料カット閾値THを超えると、燃料カット要求FCが時刻t12から時刻t14まで作動し、エンジンへの燃料供給が停止する。これにより、エンジン実トルクE6は小さくなり、エンジン実回転数E1も小さくなる。
【0013】
そして、時刻t13でエンジン実回転数E1がエンジン目標回転数E2まで下がると制御により発電モータ実トルクPは大きくなる。その後、時刻t14に燃料カット要求FCをOFF(非作動)にすると、制御によりエンジン実トルクE6が再び大きくなる。
【0014】
そして、時刻t15から時刻t19まで、各パラメータは時刻t11から時刻t15までと同様に推移する。時刻t19以降も同様である。このように、エンジンの回転ハンチング(繰り返し)が発生するという問題がある。このエンジンの回転ハンチングが発生すると、例えば、騒音や振動によって乗員の乗り心地が悪化することがある。
【0015】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、シリーズ方式のハイブリッド車両においてエンジンの回転ハンチングを抑制可能な制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の動作時に前記内燃機関の動力を電力に変換可能であるとともに前記内燃機関の非動作時に電池からの電力を用いて前記内燃機関を始動可能な発電用電動機と、電力を用いて駆動輪に走行のための駆動力を供給する駆動用電動機と、前記発電用電動機および前記駆動用電動機に電力を出力可能な前記電池と、を備え、走行状態および前記電池の状態に応じて前記発電用電動機による発電量を決定し、前記発電量に基づいて前記内燃機関の目標回転数および目標トルクを決定し、前記内燃機関の実回転数が前記目標回転数に近づくように前記発電用電動機のトルクを調整し、前記内燃機関の前記目標トルクについて前記内燃機関の前記目標回転数と実回転数の差分に応じた補正を行って補正目標トルクを算出し、前記内燃機関の前記補正目標トルクが所定の燃料カット閾値を超えているか否かで前記内燃機関についての燃料カット要求の作動/非作動を決定するハイブリッド車両の制御装置であって、前記電池の性能に応じて前記発電用電動機の動作が制限されているとき、前記燃料カット要求を非作動にする。
【0017】
上記構成によれば、エンジンの回転ハンチングが発生しやすい発電用電動機の動作の制限時に燃料カット要求を非作動にすることで、エンジンの回転ハンチングを抑制することができる。
【0018】
また、前記ハイブリッド車両の制御装置において、前記電池の性能に応じて前記発電用電動機の下限トルクが設定されていて、前記発電用電動機の実トルクが前記下限トルクまで低下している場合、前記燃料カット要求を非作動にする。
【0019】
上記構成によれば、具体的に、電池の性能に応じて発電用電動機の下限トルクが設定されていて、発電用電動機の実トルクが下限トルクまで低下している場合に、燃料カット要求を非作動にすることで、エンジンの回転ハンチングを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発電用電動機の動作の制限時に燃料カット要求を非作動にすることで、エンジンの回転ハンチングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態のハイブリッド車両の要部構成の例を示す図である。
図2図2は、実施形態における各パラメータの時間的推移を示すグラフである。
図3図3は、実施形態のハイブリッド車両における処理を示すフローチャートである。
図4図4は、従来技術の説明図である。
図5図5は、従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら、本発明のハイブリッド車両の制御装置の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、実施形態のハイブリッド車両1の要部構成の例を示す図である。図1を参照しながら、本実施形態にハイブリッド車両1の要部構成について説明する。
【0024】
ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している車両である。ハイブリッド車両1は、駆動輪17と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)31と、アクセルセンサ32と、ブレーキスイッチ33と、車速センサ34と、を備える。
【0025】
また、ハイブリッドシステム2は、エンジン11と、発電モータ12(MG1:発電用電動機)と、駆動モータ13(MG2:駆動用電動機)と、電池14と、PCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15と、を含む。
【0026】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジン等の内燃機関である。
【0027】
発電モータ12は、エンジン11の動作時にエンジン11の動力を電力に変換可能であるとともに、エンジン11の非動作時に電池14からの電力を用いてエンジン11を始動可能である。
【0028】
具体的には、発電モータ12は、エンジン11の動力を電力に変換するための構成で、例えば、永久磁石同期モータである。発電モータ12の回転軸は、エンジン11のクランクシャフトに、図示しないギヤを介して機械的に連結されている。例えば、エンジン11のクランクシャフトにエンジン出力ギヤが相対回転不能に支持され、発電モータ12の回転軸にモータギヤが相対回転不能に支持されて、エンジン出力ギヤとモータギヤとが噛合している。
【0029】
駆動モータ13は、電池14からの電力などを用いて駆動輪17に走行のための駆動力を供給する。具体的には、駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータである。駆動モータ13の回転軸は、駆動輪17を回転駆動させるための駆動系16に連結されている。駆動系16は、デファレンシャルギヤを含む。駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これによって、左右の駆動輪17が回転し、ハイブリッド車両1が前進または後進する。
【0030】
電池14は、発電モータ12および駆動モータ13に電力を出力可能な構成である。具体的には、電池14は、例えば、複数の二次電池(例えばリチウムイオン電池)を組み合わせた組電池である。電池14は、例えば、約200~350[V]の直流電力を出力する。
【0031】
PCU15は、発電モータ12および駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットである。PCU15は、第1インバータ21と、第2インバータ22と、コンバータ23と、を備える。
【0032】
第1インバータ21は、コンバータ23からの直流電力を交流電力に変換し、発電モータ12により発電された交流電力を直流電力に変換するインバータ装置である。
【0033】
第2インバータ22は、コンバータ23からの直流電力を交流電力に変換し、駆動モータ13による回生運転により発生した交流電力を直流電力に変換するインバータ装置である。
【0034】
コンバータ23は、電池14から出力される直流電力を昇圧し、または、第1インバータ21や第2インバータ22から出力される直流電力を降圧するコンバータ装置である。
【0035】
エンジン11の始動時には、電池14から出力される直流電力がコンバータ23により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ21で交流電力に変換され、変換された交流電力が発電モータ12に供給される。これによって、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0036】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0037】
ハイブリッド車両1の走行時において、駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1は、EV(Electric Vehicle)走行を行う。すなわち、EV走行では、エンジン11が停止し、発電モータ12による発電を行わず、電池14からコンバータ23および第2インバータ22を介して供給される電力のみによって駆動モータ13が駆動される。
【0038】
一方、ハイブリッド車両1の走行時において、駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力を上回るときには、ハイブリッド車両1は、HV(Hybrid Vehicle)走行を行う。すなわち、HV走行では、発電モータ12により発電された電力、および、電池14から供給される電力の両方によって駆動モータ13が駆動される。
【0039】
具体的には、HV走行では、エンジン11が稼動状態となり、発電モータ12が発電運転(回生運転)されることにより、エンジン11の動力が発電モータ12で交流電力に変換される。そして、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、当該直流電力が第2インバータ22で交流電力に変換されて、当該交流電力が駆動モータ13に供給される。当該交流電力と電池14からの電力により、駆動モータ13が駆動される。
【0040】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が駆動系16の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ22に供給される交流電力が第2インバータ22で直流電力に変換され、当該直流電力がコンバータ23で降圧される。そして、降圧後の直流電力が電池14に供給されることにより、電池14が充電される。
【0041】
ECU31は、ハイブリッドシステム2を制御する制御装置である。ECU31には、アクセルセンサ32、ブレーキスイッチ33および車速センサ34が接続されている。ECU31は、アクセルセンサ32から出力される検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する現在の操作量の割合であるアクセル開度を求める。また、ECU31は、車速センサ34から出力される検出信号から、当該検出信号(パルス信号)の周波数を求めて、当該周波数を車速に換算する。
【0042】
アクセルセンサ32は、運転者により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に応じた検出信号を出力するセンサである。
【0043】
ブレーキスイッチ33は、運転者により足踏み操作されるブレーキペダルの操作量または踏み込んだか否かを示すブレーキ信号を出力するセンサである。
【0044】
車速センサ34は、ハイブリッド車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するセンサである。なお、ECU31が車速を認識する手法は、車速センサ34から取得した検出信号を用いる手法に限定されず、ほかに、例えば、PCU15やVSC(Vehicle Stability Control:車両安定制御システム)からCAN(Controller Area Network)経由で取得した車速関連情報を用いる手法などであってもよい。
【0045】
ハイブリッド車両1は、ECU31を含む複数のECUを搭載している。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備える。マイコンには、例えば、CPU(Central Processing Unit)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリなどが内蔵されている。複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に相互接続されている。各ECUには、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、各ECUには、各種センサから入力される検出信号以外に制御に必要な情報が他のECUから入力される。
【0046】
以下、図2も併せて参照する。図5と同様の事項については、説明を適宜省略する。図2は、実施形態における各パラメータの時間的推移を示すグラフである。HV走行時に、ECU31は、走行状態(車速など)や電池の状態(SOCや電池温度など)などに応じて発電モータ12による発電量を決定する。次に、ECU31は、その発電量に基づいてエンジン目標回転数E2およびエンジン目標トルクを決定する。そして、ECU31は、発電モータ12を制御することによって、エンジン実回転数E1がエンジン目標回転数E2に近づくように発電モータ実トルクPを調整する。
【0047】
また、ECU31は、エンジン目標トルク(図4の符号E3)について、エンジン目標回転数E2とエンジン実回転数E1の差分に応じた補正を行い(差分が大きいほど補正量が大きい)、エンジン補正目標トルクE4を算出する。そして、エンジン補正目標トルクE4が所定の燃料カット閾値THを超えている(下回った)か否かでエンジン11についての燃料カット要求FCの作動/非作動を決定する。
【0048】
また、ECU31は、電池14の性能に応じて(例えば、電池14の低温時に)、発電モータ12の動作が制限されているとき、燃料カット要求FCを非作動にする。
【0049】
例えば、ECU31は、電池14の性能に応じて発電モータ下限トルクP2が設定されていて、かつ、発電モータ実トルクPが発電モータ下限トルクP2まで低下している場合、燃料カット要求FCを非作動にする。
【0050】
具体的には、以下の通りである。時刻t21からエンジン実回転数E1が大きくなる。そして、図2に対応する従来技術の図5の例では、時刻t12でエンジン補正目標トルクE4が燃料カット閾値THを超え、燃料カット要求FCが時刻t12から時刻t14まで作動した。しかし、図2の例では、時刻t21の時点で、発電モータ実トルクPが発電モータ下限トルクP2まで低下しているので、ECU31は、燃料カット要求FCを非作動にする。
【0051】
これによって、時刻t22以降(具体的には、時刻t22~t24、時刻t26~t28)に、エンジン11への燃料供給は停止しない。したがって、エンジン実トルクE6は小さくならず、エンジン実回転数E1も小さくならない。よって、エンジン11の回転ハンチングは発生しない。
【0052】
図3は、実施形態のハイブリッド車両1における処理を示すフローチャートである(図2も併せて参照)。ステップS1において、HV走行時に、ECU31は、走行状態や電池の状態などに応じて発電モータ12による発電量を決定する。
【0053】
次に、ステップS2において、ECU31は、その発電量に基づいてエンジン目標回転数E2およびエンジン目標トルクを決定する。そして、ECU31は、発電モータ12を制御することによって、エンジン実回転数E1がエンジン目標回転数E2に近づくように発電モータ実トルクPを調整する。
【0054】
次に、ステップS3において、ECU31は、エンジン目標トルクについて、エンジン目標回転数E2とエンジン実回転数E1の差分に応じた補正を行い、エンジン補正目標トルクE4を算出する。
【0055】
次に、ステップS4において、ECU31は、発電モータ下限トルクP2が設定されているか否かを判定し、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合はステップS7に進む。
【0056】
ステップS5において、ECU31は、発電モータ実トルクPが発電モータ下限トルクP2まで低下しているか否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合はステップS7に進む。
【0057】
ステップS6において、ECU31は、エンジン11についての燃料カット要求FCを非作動に決定する。
【0058】
ステップS7において、ECU31は、エンジン補正目標トルクE4が燃料カット閾値THを超えている(下回った)か否かを判定し、Yesの場合はステップS8に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0059】
ステップS8において、ECU31は、エンジン11についての燃料カット要求FCを作動し、エンジン11への燃料供給を停止させる。
【0060】
このようにして、本実施形態のハイブリッド車両1によれば、エンジン11の回転ハンチングが発生しやすい発電モータ12の動作の制限時に燃料カット要求FCを非作動にすることで、エンジン11の回転ハンチングを抑制することができる。
【0061】
また、具体的に、電池14の性能に応じて発電モータ下限トルクP2が設定されていて、かつ、発電モータ実トルクPが発電モータ下限トルクP2まで低下している場合に、燃料カット要求FCを非作動にすることで、エンジン11の回転ハンチングを抑制することができる。
【0062】
そして、エンジン11の回転ハンチングを抑制した場合、エンジン実回転数E1がエンジン目標回転数E2を超過している状態は続く(図2参照)。しかしながら、乗員にとって、エンジン11の実回転数の目標超過に起因する騒音や振動よる違和感は、エンジン11の回転ハンチングに起因する騒音や振動による違和感よりも小さいので、乗り心地の改善を実現できる。
【0063】
また、本実施形態のECU31で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0064】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0065】
例えば、電池14の性能に応じて発電モータ12の動作が制限されているときとして、電池14の低温時を例にとったが、これに限定されない。ほかに、電池14の高温時や、発電モータ12の高温時や、システム電圧制限時や、定格の出力電圧が小さい電池の使用時などであってもよい。
【0066】
つまり、本発明は、電池の性能に応じて発電モータ12の動作が制限されているとき全般に適用できる。そして、上述の条件充足をトリガーに燃料カット要求を非作動にすることで、エンジンの回転ハンチングを効果的に抑制することができる。これにより、電池の性能が低下した場合や、あるいは、電池の元々の性能が低い場合でも、良好な乗り心地を実現できる。
【符号の説明】
【0067】
1…ハイブリッド車両、11…エンジン、12…発電モータ、13…駆動モータ、14…電池、15…PCU、16…駆動系、17…駆動輪、21…第1インバータ、22…第2インバータ、23…コンバータ、31…ECU、32…アクセルセンサ、33…ブレーキスイッチ、34…車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5