(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116014
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】被覆電線の接地用釘打ち込み装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20240820BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021986
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AB09
5G352AE01
5G352AM04
5G352CA10
5G352CH07
5G352CK08
(57)【要約】
【課題】感電や、打ち損ねによるけがの危険がなく、作業に大きな労力を要しない電線への接地用釘の打ち込み装置を提供する。
【解決手段】釘打ち込み装置1は、下顎部25と上顎部26を有するフレーム2、上顎部26に支持されるナット部材3、これに外周ねじ部41を螺合させて上下位置調整自在に支持される油圧シリンダ4、これに装入されるピストンロッド5、それの下端部に着脱自在の釘ホルダ6を具備する。釘ホルダ6には接地線8が接続される。釘ホルダ6は、頭部をピストンロッド5の下端に当接させ、先端部を下方へ突出させるように釘Nを保持する。油圧シリンダ4の油圧で、釘Nを被覆電線Cの芯線C2に突き刺し、被覆電線Cの接地をとることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地をとるべき被覆電線を載せ受ける下顎部と、当該下顎部に載せ受けられる前記被覆電線の一側方において前記下顎部に連続し前記被覆電線の上方において前記下顎部に対向する上顎部とを具備するフレームと、
前記フレームの上顎部に固着され、前記下顎部上の前記被覆電線に中心軸線を向けたねじ孔を有するナット部材と、
前記ナット部材のねじ孔に外周ねじ部を螺合させ、上下位置を調整可能に前記ナット部材に支持される油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに装入され、下端部が当該油圧シリンダの下端から突出し、所定のストロークで昇降自在のピストンロッドと、
前記ピストンロッドの下端部に着脱自在で、接地線が接続される釘ホルダとを具備し、
前記釘ホルダは、釘の頭部を前記ピストンロッドの下端に当接させると共に、先端部を下方へ突出させて釘を保持するように設けられ、
油圧ポンプから前記油圧シリンダへ供給される油圧により、前記釘を被覆電線の被覆部を貫通させて芯線に到達するまで圧入させることを特徴とする被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【請求項2】
前記ナット部材の上方に位置して前記油圧シリンダの外周ねじ部に螺合されるロックナットをさらに具備し、前記フレームに対する前記油圧シリンダの上下位置が調整自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載の被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【請求項3】
前記ピストンロッドと前記釘ホルダとは、前記被覆電線に対する前記釘の引き抜き抵抗力より小さい係合力の相互係合手段により着脱自在に結合され、
それによって、前記ピストンロッドの復帰時に、前記釘ホルダが、当該ピストンロッドから自動的に離脱して、前記釘と共に前記被覆電線上に残置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドと前記釘ホルダとの相互係合手段は、前記ピストンロッドの先端部の外周に形成される環状溝と、当該環状溝に係脱自在に前記釘ホルダに設けられるボールプランジャとからなることを特徴とする請求項3に記載の被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【請求項5】
前記釘ホルダの外周に、前記接地線を係止するための蝶ボルトが螺合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【請求項6】
前記フレームは、平行一対のフレーム板材をカラーを介してボルトで結合して構成され、
前記ナット部材は、前記一対のフレーム板材の上部間に固着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆電線の接地用釘打ち込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中配電工事等において、被覆電線へ接地用釘を打ち込む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルの接地用治具として、特許文献1に開示されたものがある。この接地用治具は、油圧ジャッキ本体を有する油圧ジャッキ部と、油圧ジャッキの先端に取り付けられ、それの油圧作動により電力ケーブルに打ち込まれる接地用針と、接地用針に接続される接地用リード線と、油圧ジャッキを載せて、電力ケーブルを跨ぐように設置されるジャッキ固定台と、ジャッキ固定台に取り付けられて、電力ケーブルを固定するケーブル固定具とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の電力ケーブルの接地用治具と同様の基本構造を採用し、さらに具体的構成を付加して使い勝手を向上させ、感電や、打ち損ねによるけがの危険がなく、作業に大きな労力を要しない電線への接地用釘の打ち込み装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の接地用釘の打ち込み装置1は、フック状のフレーム2と、フレーム2に支持されるナット部材3と、ナット部材3に支持される油圧シリンダ4と、油圧シリンダ4に装入されるピストンロッド5と、ピストンロッド5の下端部に着脱自在の釘ホルダ6とを具備する。フレーム2は、接地をとるべき被覆電線Cを載せ受ける下顎部25と、当該下顎部25に載せ受けられる被覆電線Cの一側方において下顎部25に連続し被覆電線Cの上方において下顎部25に対向する上顎部26とを具備する。ナット部材3は、フレーム2の上顎部26に固着され、下顎部25上の被覆電線Cに中心軸線を向けたねじ孔31を有する。油圧シリンダ4は、ナット部材3のねじ孔31に外周ねじ部32を螺合させて、上下位置を調整自在にナット部材3に支持される。ピストンロッド5は、油圧シリンダ4に装入され、下端部が当該油圧シリンダ4の下端から突出し、所定のストロークで昇降自在である。釘ホルダ6は、油圧シリンダ4の下端から突出したピストンロッド5の下端部に着脱自在で、接地線8が接続される。釘ホルダ6は、釘Nの頭部をピストンロッド5の下端に当接させると共に、先端部を下方へ突出させて釘Nを保持するように設けられる。油圧ポンプから油圧シリンダ4へ供給される油圧により、釘Nを被覆電線Cの被覆部C1を貫通させて芯線C2に到達するまで圧入させることで、被覆電線Cの接地をとることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電線への接地用釘の打ち込み作業において、感電や、打ち損ねによるけがの危険がなく、作業に大きな労力を要しない釘の打ち込み装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の接地用釘打ち込み装置の一部を切欠した正面図である。
【
図2】
図1の接地用釘打ち込み装置の側面図である。
【
図3】
図1の接地用釘打ち込み装置の斜視図である。
【
図5】
図1の接地用釘打ち込み装置の最短縮状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
接地用釘の打ち込み装置1は、フック状のフレーム2と、フレーム2に支持されるナット部材3と、ナット部材3に支持される油圧シリンダ4と、油圧シリンダ4に装入されるピストンロッド5と、ピストンロッド5の下端部に着脱自在の釘ホルダ6とを具備する。
【0009】
フレーム2は、平行一対のフレーム板材21をカラー22を介してボルト・ナット23で結合して構成される。フレーム2は、下顎部25と、一側方において下顎部25に連続する上顎部26とを具備する。下顎部25の断面円弧状の載せ受け面25a上に、接地をとるべき被覆電線Cが載せ受けられる。上顎部26は、下顎部25上の被覆電線Cの上方において下顎部25に対向し、フレーム2の他側方は、下顎部25上に被覆電線Cを取り込むために開放している。載せ受け面25aは、円弧状に限らず、被覆電線Cの中心をピストンロッド5の中心軸線下に位置決めし易い形状であることが望ましい。
【0010】
ナット部材3は、フレーム2の上顎部26のフレーム板材21間に固着される。ナット部材3は、被覆電線Cの中心に中心軸線を向けたねじ孔31を有する。
【0011】
油圧シリンダ4は、外周にねじ部41とこれに螺合するロックナット42を具備し、上部に回転操作用のハンドル43を具備する。油圧シリンダは、ナット部材3のねじ孔31に外周ねじ部41を螺合させ、ナット部材3に中心軸線を一致させてナット部材3に支持される。ロックナット42は、ナット部材3の上方に配置され、油圧シリンダ4のフレーム2に対する上下位置を調整した後、ナット部材3に当接するように締め付けられる。油圧シリンダ4は、カプラ44に接続される図示しない油圧ホースを介して、図示しない油圧ポンプに接続され、この油圧ポンプの制御により給排油される。
【0012】
ピストンロッド5は、油圧シリンダ4に中心軸線を一致させて当該油圧シリンダ4内に復帰ばね7を介して装入され、下端側が油圧シリンダ4の下端から所定のスロークで突出するように昇降自在である。ピストンロッド5の先端部の外周には、環状溝51が形成される。
【0013】
釘ホルダ6は、概略リング状で、上端部にボールプランジャ61を具備する。釘ホルダ6は、油圧シリンダ4の下端から突出したピストンロッド5の下端部の外周に嵌合し、ボールプランジャ61を環状溝51に係脱させてピストンロッド5に対して着脱自在である。釘ホルダ6は、内側上部に大径の保持空間64、下部に小径の貫通孔65を具備し、保持空間64に釘Nの頭部を保持し、下部を貫通孔65を通してピストンロッド5の中心軸線に沿って下方へ突出させる。釘Nの頭部は、保持空間64内において、ピストンロッド5の下端に当接する。図示の実施形態においては、釘Nとして、市販のコンクリート釘を用いる。
【0014】
釘ホルダ6の側面には、接地線9の端子を接続するための蝶ボルト8が螺合される。したがって、釘ホルダ6は、接地線9を介して電気的に接地される。
【0015】
接地作業を行う場合には、釘ホルダ6に釘Nを装着し、側面に蝶ボルト8で接地線9の端子を接続する。この釘ホルダ6をピストンロッド5の先端部に嵌合させ、ボールプランジャ61を環状溝51に係合させて固定する。次いで、被覆電線Cをフレーム2の下顎部25上に取り込む。被覆電線Cは、載せ受け面25a上で、概略釘Nの真下の位置に配置される。ハンドル43を握って油圧シリンダ4を回転させることにより、フレーム2に対して油圧シリンダ4を下降させ、釘Nの先端を被覆電線Cに当てて位置決めし、ロックナット42を締め付けて油圧シリンダ4を固定する。カプラ43に油圧ホースを接続し、油圧ポンプを操作して油圧シリンダ4に油を送り、ピストンロッド5を所定距離下降させ、被覆電線Cに釘Nを打ち込む。これで被覆電線Cの接地が完了する。
【0016】
油圧ポンプを操作し、あるいは自動的に油圧を開放することでピストンロッド5を上昇復帰させると、ボールプランジャ61とピストンロッド5との係合力が被覆電線Cに対する釘Nの引き抜き抵抗に負けて、ボールプランジャ61とピストンロッド5との係合が自動的に外れ、釘ホルダ6が被覆電線C上に残置される。被覆電線Cの切断作業完了後は、釘ホルダ6と共に釘Nをバール等で抜きとり、両者を分離して回収する。
【0017】
なお、釘ホルダ6を被覆電線C上に自動的に残置させる手段、すなわち、被覆電線Cに対する釘Nの引き抜き抵抗力より釘ホルダ6とピストンロッド5との係合力を小さく設定できる係合手段としては、磁力による係合、その他種々変更できる。
【0018】
接地用釘の打ち込み装置1を用いれば、接地用釘Nの打ち込み作業において、大きな労力を要しないし、作業者が被覆電線Cの芯線C2に接触することがないので、感電のおそれがなく、また打ち損ねによるけがの危険もない。
【符号の説明】
【0019】
1 釘打ち込み装置
2 フレーム
21 フレーム板
22 カラー
23 ボルト・ナット
24 円弧状凹部
25 下顎部
25a 載せ受け面
26 上顎部
3 ナット部材
31 ねじ孔
4 油圧シリンダ
41 外周ねじ部
42 ロックナット
43 ハンドル
44 カプラ
5 ピストンロッド
51 環状溝
6 釘ホルダ
61 ボールプランジャ
64 保持空間
65 貫通孔
7 復帰ばね
8 蝶ボルト
9 接地線