(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116017
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】分散剤含有液および水系色材分散液
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20240820BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20240820BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240820BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20240820BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20240820BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240820BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C09K23/52
C09D11/32
C09D17/00
C09C3/10
C09K23/42
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021991
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 智哉
(72)【発明者】
【氏名】北田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 幸一
(72)【発明者】
【氏名】柿下 元
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4D077
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186FB11
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2H186FB55
4D077AA03
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4J039CA06
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】短時間の分散処理で、有機色材の好適な解砕・分散に用いることができ、有機色材の分散安定性に優れた水系色材分散液の調製に用いることができる分散剤含有液を提供すること、また、有機色材の分散安定性に優れた水系色材分散液を提供すること。
【解決手段】本発明の分散剤含有液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、を含む。前記分散剤含有液中における、前記水溶性ポリエステルの含有量XPEs[質量%]、前記ポリアルキレングリコール類の含有量XPAG[質量%]としたとき、下記式(4)を満たすことが好ましい。
0.01≦XPAG/XPEs≦2.00 ・・・ (4)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、を含む、分散剤含有液。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール類として、下記式(1)で示される化合物を含む、請求項1に記載の分散剤含有液。
HO(CH2CH2O)a(CH2CH2CH2O)b(CH2CH2O)cH (1)
(式(1)中、a、bおよびcは、それぞれ独立して、1以上の整数である。)
【請求項3】
前記水溶性ポリエステルの全構成モノマー中における、芳香環構造を有するモノマーの占める割合をXa[mol%]、前記スルホン酸塩量に対する前記カルボン酸塩量のモル比をRC/S[mol%]としたとき、下記式(2)および下記式(3)の条件を満たし、かつ、
前記水溶性ポリエステルは、少なくともpHが7以上10以下の範囲で水溶性である、請求項1または2に記載の分散剤含有液。
25≦Xa≦75 (2)
0≦RC/S≦200 (3)
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコール類の曇点が67℃以上である、請求項1または2に記載の分散剤含有液。
【請求項5】
前記分散剤含有液中における、前記水溶性ポリエステルの含有量XPEs[質量%]、前記ポリアルキレングリコール類の含有量XPAG[質量%]としたとき、下記式(4)を満たす、請求項1または2に記載の分散剤含有液。
0.01≦XPAG/XPEs≦2.00 ・・・ (4)
【請求項6】
カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、顔料、分散染料および油溶性染料よりなる群から選択される少なくとも1種である有機色材と、を含む、水系色材分散液。
【請求項7】
前記ポリアルキレングリコール類として、下記式(1)で示される化合物を含む、請求項6に記載の水系色材分散液。
【請求項8】
前記水溶性ポリエステルの全構成モノマー中における芳香環構造を有するモノマーの占める割合をXa[mol%]、前記水溶性ポリエステル中における前記スルホン酸塩量に対する前記カルボン酸塩量のモル比をRC/S[mol%]としたとき、下記式(2)および下記式(3)の条件を満たし、かつ、
前記水溶性ポリエステルは、少なくともpHが7以上10以下の範囲で水溶性である、請求項6または7に記載の水系色材分散液。
25≦Xa≦75 (2)
0≦RC/S≦200 (3)
【請求項9】
前記ポリアルキレングリコール類の曇点が67℃以上である、請求項6または7に記載の水系色材分散液。
【請求項10】
前記水系色材分散液中における、前記水溶性ポリエステルの含有量XPEs[質量%]、前記ポリアルキレングリコール類の含有量XPAG[質量%]としたとき、下記式(4)を満たす、請求項6または7に記載の水系色材分散液。
0.01≦XPAG/XPEs≦2.00 ・・・ (3)
【請求項11】
前記水系色材分散液は、インクジェットインクである、請求項6または7に記載の水系色材分散液。
【請求項12】
前記インクジェットインクは、さらに、保湿剤および表面張力調整剤を含む、請求項11に記載の水系色材分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤含有液および水系色材分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
水を含む分散媒中に分散質が分散した分散液が、様々な用途で用いられている。
このような分散液としては、例えば、水を含む分散媒中に色材が分散したインク等が挙げられる。
【0003】
このような分散液においては、分散質の分散性を向上させる目的で、分散剤が添加されることがある。
【0004】
分散剤としては、色材との親和性の高さや臭気が少ない等の点から、樹脂型の分散剤が特に有利である。
【0005】
このような樹脂型の分散剤を用いたインクとしては、例えば、水、水溶性有機溶剤、分散染料、および、酸価が100~250である水溶性ポリエステルを含有するインクジェット記録用分散染料インクが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来においては、樹脂型の分散剤は、色材に対する初期的な濡れ性が小さく、分散液であるインクの調製時における色材分散の色材解砕・分散力が不十分となり、分散時間が長くなり、分散時に有機色材にかかるストレスが多くなるため、インクの分散安定性が不十分となるという問題が生じやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0009】
本発明の適用例に係る分散剤含有液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、を含む。
【0010】
本発明の適用例に係る水系色材分散液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、顔料、分散染料および油溶性染料よりなる群から選択される少なくとも1種である有機色材と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、合成例1~9で得られた水溶性ポリエステルの条件をまとめて示す表である。
【
図2】
図2は、合成例10~17で得られた水溶性ポリエステルの条件をまとめて示す表である。
【
図3】
図3は、実施例A1~A11に係る分散剤含有液の条件をまとめて示す表である。
【
図4】
図4は、実施例A12~A22に係る分散剤含有液の条件をまとめて示す表である。
【
図5】
図5は、実施例A23~A31および比較例A1、A2に係る分散剤含有液の条件をまとめて示す表である。
【
図6】
図6は、実施例B1~B12に係るインクジェットインクの原液の条件をまとめて示す表である。
【
図7】
図7は、実施例B13~B24に係るインクジェットインクの原液の条件をまとめて示す表である。
【
図8】
図8は、実施例B25~B33および比較例B1、B2に係るインクジェットインクの原液の条件をまとめて示す表である。
【
図9】
図9は、実施例C1~C12に係るインクジェットインクの条件をまとめて示す表である。
【
図10】
図10は、実施例C13~C24に係るインクジェットインクの条件をまとめて示す表である。
【
図11】
図11は、実施例C25~C33および比較例C1、C2に係るインクジェットインクの条件をまとめて示す表である。
【
図12】
図12は、実施例B1~B18に係るインクジェットインクの原液の評価結果をまとめて示す表である。
【
図13】
図13は、実施例B19~B33および比較例B1、B2に係るインクジェットインクの原液の評価結果をまとめて示す表である。
【
図14】
図14は、実施例C1~C18に係るインクジェットインクの評価結果をまとめて示す表である。
【
図15】
図15は、実施例C19~C33および比較例C1、C2に係るインクジェットインクの評価結果をまとめて示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<1>分散剤含有液
まず、本発明の分散剤含有液について説明する。
【0013】
本発明の分散剤含有液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、を含む、分散剤含有液。
【0014】
これにより、短時間の分散処理で、有機色材の好適な解砕・分散に用いることができ、分散時に有機色材にかかるストレスが少なくすることができ、有機色材の分散安定性に優れ、保存安定性に優れた水系色材分散液の調製に用いることができる分散剤含有液を提供することができる。より詳しく説明すると、以下のとおりである。すなわち、有機色材に対する分散剤含有液の濡れを優れたものとすることができ、有機色材の解砕、粉砕をし易くなり、水系色材分散液の調製に要する時間を短縮することができる。有機色材の解砕、粉砕がし易くなることで、分散時に有機色材にかかるストレスを少なくすることができ、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性、水系色材分散液の保存安定性を優れたものとすることができる。
【0015】
また、分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の耐乾燥性を優れたものとすることができる。なお、耐乾燥性の指標としては、分散剤含有液の乾燥のしにくさや、乾燥により析出した固形分の再分散性、再溶解性等が挙げられる。さらに、水系色材分散液の調製において、有機色材に対する親和性や吸着性について、添加する保湿剤や表面張力調整剤との間で競合することがなく、有機色材の分散安定に悪影響を及ぼさないため、好適である。
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足の行く結果が得られない。
【0016】
例えば、ポリエステルが、カルボン酸塩およびスルホン酸塩のいずれも含まない構造のものであると、ポリエステルの水溶性を十分に優れたものとすることができず、分散剤含有液を用いて有機色材を含む水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性、水系色材分散液の保存安定性を十分に優れたものとすることができない。また、水系色材分散液の耐乾燥性も劣ったものとなる。
【0017】
また、ポリアルキレングリコール類を含んでいないと、有機色材の分散処理に要する時間が長くなり、水系色材分散液の生産性が著しく低下する。また、有機色材を分散した水系色材分散液が得られても、分散時に有機色材にかかるストレスが多くなり、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性、水系色材分散液の保存安定性は劣ったものとなる。
【0018】
<1-1>水
本発明の分散剤含有液は、水を含んでいる。当該水は、主に、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液に流動性を付与する機能を有しており、分散媒や溶媒として機能する。
【0019】
水としては、イオン交換水、純水、超純水を用いることが好ましい。
分散剤含有液中における水の含有量の下限は、特に限定されないが、30.0質量%であるのが好ましく、35.0質量%であるのがより好ましく、40.0質量%であるのがさらに好ましい。また、分散剤含有液中における水の含有量の上限は、特に限定されないが、93.0質量%であるのが好ましく、90.0質量%であるのがより好ましく、87.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0020】
これにより、分散剤含有液の粘度をより確実に好適な値に調整することができる。また、分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。
【0021】
<1-2>分散剤としての水溶性ポリエステル
ポリエステルは、主鎖にエステル結合を有する高分子材料の総称であるが、一般に、分子内に複数の水酸基を有するポリオール成分と、分子内に複数のカルボキシル基を有するポリカルボン酸成分とが脱水縮合した化学構造を含んでいる。
【0022】
特に、本発明の分散剤含有液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含む水溶性ポリエステルを分散剤として含んでいる。
【0023】
水溶性ポリエステルは、カルボン酸塩、スルホン酸塩のうち少なくとも一方を含んでいればよいが、カルボン酸塩およびスルホン酸塩の両方を含んでいるのが好ましい。
【0024】
これにより、水溶性ポリエステルの水溶性をより好適なものとすることができる。また、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の耐乾燥性もより優れたものとなる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、インクジェット用組成物により形成される記録部の耐水性をより優れたものとすることができる。
【0025】
水溶性ポリエステルがカルボン酸塩およびスルホン酸塩の両方を含んでいる場合、カルボン酸塩およびスルホン酸塩は、水溶性ポリエステルの分子のいかなる部位に存在していてもよく、水溶性ポリエステルを構成する同一のモノマーに存在していてもよいが、カルボン酸塩と、スルホン酸塩とは、水溶性ポリエステルを構成する異なるモノマーに存在しているのが好ましい。言い換えると、水溶性ポリエステルは、構成モノマーとして、カルボン酸塩を有する第1のモノマーと、スルホン酸塩を有する第2のモノマーとを有するものであるのが好ましい。
【0026】
これにより、水溶性ポリエステルの水溶性をさらに好適なものとすることができる。また、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性をさらに優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の耐乾燥性もさらに優れたものとなる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をさらに優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をさらに優れたものとすることができる。また、インクジェット用組成物により形成される記録部の耐水性をさらに優れたものとすることができる。
【0027】
カルボン酸塩を有する第1のモノマーとしては、例えば、3価以上のカルボン酸化合物の塩、カルボキシル基含有ポリオールの塩等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、トリカルバリル酸、β-アラニン二酢酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリト酸、メロファン酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-β-アラニン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)スクシンアミド酸等が挙げられる。また、第1のモノマーとして、後述するような樹脂末端修飾剤を用いる場合、当該樹脂末端修飾剤としては、例えば、後述する2価のポリカルボン酸モノマーの塩を用いることができる。
【0028】
スルホン酸塩を有する第2のモノマーとしては、例えば、スルホン化ポリカルボン酸モノマーの塩、スルホン化ポリオールモノマーの塩等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記スルホン化ポリカルボン酸モノマーとしては、例えば、スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホフタル酸、スルホコハク酸、スルホマロン酸、2,3-ジスルホコハク酸、スルホ酒石酸、スルホリンゴ酸、スルホマレイン酸、スルホフマル酸、1-スルホ-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、3-(ソジオオキシスルホニル)グルタル酸等が挙げられる。前記スルホン化ポリオールモノマーとして、例えば、2,3-ジヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、3-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0029】
水溶性ポリエステルを構成する全モノマーに対する第1のモノマーの含有量と第2のモノマーの含有量との和の割合の下限は、1.0mol%であるのが好ましく、1.5mol%であるのがより好ましく、2.0mol%であるのがさらに好ましい。また、水溶性ポリエステルを構成する全モノマーに対する第1のモノマーの含有量と第2のモノマーの含有量との和の割合の上限は、25.0mol%であるのが好ましく、22.0mol%であるのがより好ましく、20.0mol%であるのがさらに好ましい。
【0030】
これにより、水溶性ポリエステルの水溶性をより好適なものとすることができる。また、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の耐乾燥性もより優れたものとなる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、インクジェット用組成物により形成される記録部の耐水性をより優れたものとすることができる。
【0031】
水溶性ポリエステル中におけるスルホン酸塩量に対するカルボン酸塩量のモル比、すなわち、水溶性ポリエステル中に含まれる、スルホン酸塩量をXs[mol]、カルボン酸塩量をXc[mol]としたときのXc/Xsを、RC/Sとしたとき、0≦RC/S≦200の関係を満たすのが好ましく、50≦RC/S≦150の関係を満たすのがより好ましく、60≦RC/S≦120の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0032】
これにより、水溶性ポリエステルの水溶性をさらに好適なものとすることができる。また、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性をさらに優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の耐乾燥性もさらに優れたものとなる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をさらに優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をさらに優れたものとすることができる。また、インクジェット用組成物により形成される記録部の耐水性をさらに優れたものとすることができる。
【0033】
カルボン酸塩およびスルホン酸塩は、例えば、水溶性ポリエステルの分子の側鎖に存在していてもよいし、水溶性ポリエステルの主鎖の末端に存在していてもよい。
【0034】
カルボン酸塩が水溶性ポリエステルの分子の側鎖に存在している場合、当該カルボン酸塩は、例えば、水溶性ポリエステルの合成において、3価以上のポリカルボン酸やその低級アルキルエステル、酸無水物をポリカルボン酸モノマーとして用いたり、2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物をポリオールモノマーとして用いたりすることにより、好適に導入することができる。
【0035】
また、カルボン酸塩が水溶性ポリエステルの主鎖の末端に存在している場合、当該カルボン酸塩は、例えば、後述する具体的な実施例で説明するように、末端に水酸基が存在するように反応条件を調整して重合体を合成した後、当該重合体の末端の水酸基と、樹脂末端修飾剤としての2価以上のポリカルボン酸モノマーのカルボン酸塩とを反応させることにより、好適に導入することができる。また、この場合、樹脂末端修飾剤としては、前記2価以上のポリカルボン酸モノマーの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0036】
スルホン酸塩が水溶性ポリエステルの分子の側鎖に存在している場合、当該スルホン酸塩は、例えば、水溶性ポリエステルの合成において、スルホ基を有する2価以上のポリカルボン酸やその低級アルキルエステル、酸無水物をポリカルボン酸モノマーとして用いたり、スルホ基を有するとともに2個以上の水酸基を有する化合物をポリオールモノマーとして用いたりすることにより、好適に導入することができる。
【0037】
また、スルホン酸塩が水溶性ポリエステルの主鎖の末端に存在している場合、当該スルホン酸塩は、例えば、末端に水酸基が存在するように反応条件を調整して重合体を合成した後、当該重合体の末端の水酸基と、カルボキシル基とスルホ基とを有する樹脂末端修飾剤のカルボキシル基とを反応させることにより、好適に導入することができる。
【0038】
ポリカルボン酸モノマーとしては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、4,4’-スルホニル二安息香酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸類、およびその低級アルキルエステル、無水物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
ポリオールモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)イソプロパン等の脂肪族ポリオール類、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、ビフェノール、4,4’-メチレンビスフェノール、2,2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、スチレングリコール、2-フェニル-1,3-プロパンジオール、ナフタレンジオール等の芳香族ポリオール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
水溶性ポリエステルは、芳香環構造を有するモノマーを構成モノマーとして含んでいるのが好ましい。
【0041】
これにより、本発明の分散剤含有液と、有機色材とを用いて、本発明の水系色材分散液を調製する場合において、有機色材を水溶性ポリエステルにより好適に吸着させることができ、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。
【0042】
水溶性ポリエステルが芳香環構造を有するモノマーを構成モノマーとして含んでいる場合、水溶性ポリエステルの全構成モノマー中における芳香環構造を有するモノマーの占める割合の下限は、25mol%であるのが好ましく、30mol%であるのがより好ましく、33mol%であるのがさらに好ましい。また、水溶性ポリエステルの全構成モノマー中における芳香環構造を有するモノマーの占める割合の上限は、75mol%であるのが好ましく、70mol%であるのがより好ましく、65mol%であるのがさらに好ましい。
【0043】
これにより、本発明の分散剤含有液と、有機色材とを用いて、水系色材分散液を調製した場合において、有機色材に対して水溶性ポリエステルが疎水的に吸着する力を十分に大きいものとすることができるとともに、水溶性ポリエステルの分子の柔軟性をより優れたものとすることができ、有機色材の表面形状に水溶性ポリエステルの分子がより好適に追従することができる。その結果、有機色材を水溶性ポリエステルにさらに好適に吸着させることができ、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0044】
水溶性ポリエステルが芳香環構造を有するモノマーを構成モノマーとして含んでいる場合、当該芳香環構造を有するモノマーは、水溶性基を有さないものであるのが好ましい。
【0045】
これにより、本発明の分散剤含有液と、有機色材とを用いて、本発明の水系色材分散液を調製する場合において、有機色材を水溶性ポリエステルにより好適に吸着させることができ、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。
【0046】
前記水溶性基は、例えば、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基やこれらの塩等が挙げられる。
【0047】
また、非水溶性芳香族モノマーが有する芳香環としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基や、これらの官能基が有する水素原子のうちの少なくとも一部が他の原子または原子団で置換された官能基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
水溶性ポリエステルの数平均分子量の下限は、1,500であるのが好ましく、1,800であるのがより好ましく、2,000であるのがさらに好ましい。水溶性ポリエステルの数平均分子量の上限は、15,000であるのが好ましく、12,000であるのがより好ましく、10,000であるのがさらに好ましい。
【0049】
このような構成により、分散剤としての水溶性ポリエステルの水溶性をより優れたものとすることができ、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0050】
水溶性ポリエステルの酸価の下限は、7mgKOH/gであるのが好ましく、10mgKOH/gであるのがより好ましく、15mgKOH/gであるのがさらに好ましい。また、水溶性ポリエステルの酸価の上限は、500mgKOH/gであるのが好ましく、400mgKOH/gであるのがより好ましく、250mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0051】
これにより、樹脂同士の静電反発力が向上し、適度な距離間で樹脂分子同士が存在でき、分散性を上げる効果が得られる。
【0052】
水溶性ポリエステルは、少なくともpHが7以上10以下の範囲で水溶性であるのが好ましい。
これにより、樹脂成分の経時による構造劣化を抑制できる効果が得られる。
【0053】
ここで、水溶性とは、20℃における水に対する溶解度が1.0g/100g水以上のことを指し、好ましくは、20℃における水に対する溶解度が5.0g/100g水以上であり、より好ましくは、20℃における水に対する溶解度が10.0g/100g水以上である。
【0054】
分散剤含有液中における水溶性ポリエステルの含有量の下限は、3.0質量%であるのが好ましく、4.0質量%であるのがより好ましく、4.5質量%であるのがさらに好ましい。また、分散剤含有液中における水溶性ポリエステルの含有量の上限は、35.0質量%であるのが好ましく、30.0質量%であるのがより好ましく、28.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0055】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0056】
<1-3>ポリアルキレングリコール類
本発明の分散剤含有液は、ポリアルキレングリコール類を含んでいる。
【0057】
ポリアルキレングリコール類を、前述した水溶性ポリエステルとともに含むことにより、分散剤含有液を用いて水系色材分散液を調製した場合における、水系色材分散液の粘度上昇や、水系色材分散液における異物の発生を抑制できる。また、分散剤としてアニオン性樹脂のみを用いて色材を解砕・分散させた場合に比べて、色材の解砕・分散にかかる時間を短くすることができ、過分散を抑制することができる。過分散を抑制することにより、過分散に起因する分散安定性の低下を回避できる。
【0058】
ポリアルキレングリコール類としては、例えば、ポリアルキレングリコールや、ポリアルキレングリコールが有する少なくとも1つの水酸基がエーテル化されたエーテル化物、ポリアルキレングリコールが有する少なくとも1つの水酸基がエステル化されたエステル化物等のポリアルキレングリコールの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールのホモポリマーや、コポリマー等が挙げられる。アルキレングリコールのホモポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。アルキレングリコールのコポリマー等としては、例えば、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0060】
ポリアルキレングリコールのエーテル化物としては、例えば、上記のポリアルキレングリコールが有する水酸基の少なくとも一部が、メチルエーテル基、エチルエーテル基、プロピルエーテル基等で置換された構造の化合物等が挙げられる。
【0061】
また、ポリアルキレングリコールのエステル化物としては、例えば、上記のポリアルキレングリコールが有する水酸基の少なくとも一部が、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等で置換された構造の化合物等が挙げられる。
【0062】
特に、ポリアルキレングリコール類としては、ポリアルキレングリコールが好ましく、アルキレングリコールのコポリマーであるのがより好ましく、ブロック共重合体であるのがさらに好ましい。
【0063】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
また、ポリアルキレングリコール類は、ノニオン性であるのが好ましい。
【0064】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材を含む水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の凝集をより効果的に防止することができ、水系色材分散液の保存安定性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液がインクジェットインクである場合における、当該インクジェットインクの吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0065】
特に、ポリアルキレングリコール類としては、下記式(1)で示される化合物が好ましい。
【0066】
HO(CH2CH2O)a(CH2CH2CH2O)b(CH2CH2O)cH (1)
(式(1)中、a、bおよびcは、それぞれ独立して、1以上の整数である。)
【0067】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をさらに優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をさらに好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をさらに優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をさらに優れたものとすることができる。また、さらに短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がさらに優れたものとなる。
【0068】
ポリアルキレングリコール類として上記式(1)で示される化合物を含む場合、当該ポリアルキレングリコール類を構成するポリオキシプロピレン鎖の数平均分子量の下限は、1500であるのが好ましく、2000であるのがより好ましく、3000であるのがさらに好ましい。また、ポリアルキレングリコール類として上記式(1)で示される化合物を含む場合、当該ポリアルキレングリコール類を構成するポリオキシプロピレン鎖の数平均分子量の上限は、5000であるのが好ましく、4500であるのがより好ましい。
【0069】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
【0070】
ポリアルキレングリコール類として上記式(1)で示される化合物を含む場合、当該ポリアルキレングリコール類中におけるポリオキシエチレン鎖の占める割合の下限は、20質量%であるのが好ましく、40質量%であるのがより好ましく、75質量%であるのがさらに好ましい。
【0071】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
【0072】
ポリアルキレングリコール類の数平均分子量の下限は、3000であるのが好ましく、7000であるのがより好ましく、9000であるのがさらに好ましく、10000であるのがもっとも好ましい。また、ポリアルキレングリコール類の数平均分子量の上限は、30000であるのが好ましく、28000であるのがより好ましく、25000であるのがもっとも好ましい。
【0073】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
【0074】
ポリアルキレングリコール類の曇点は、67℃以上であるのが好ましく、75℃以上であるのがより好ましく、100℃以上であるのがさらに好ましい。
【0075】
これにより、分散過程において発生する異物および樹脂や色材同士の凝集を抑制するという効果が得られる。
【0076】
分散剤含有液中におけるポリアルキレングリコール類の含有量の下限は、0.1質量%であるのが好ましく、0.3質量%であるのがより好ましく、0.5質量%であるのがさらに好ましい。また、分散剤含有液中におけるポリアルキレングリコール類の含有量の上限は、20.0質量%であるのが好ましく、10.0質量%であるのがより好ましく、3.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0077】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
【0078】
分散剤含有液中における、水溶性ポリエステルの含有量XPEs[質量%]、ポリアルキレングリコール類の含有量XPAG[質量%]としたとき、0.01≦XPAG/XPEs≦2.00の関係を満たすのが好ましく、0.03≦XPAG/XPEs≦1.00の関係を満たすのがより好ましく、0.05≦XPAG/XPEs≦0.50の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0079】
これにより、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。また、より短時間の分散処理で、有機色材を好適に解砕・分散することができ、水系色材分散液の生産性がより優れたものとなる。
【0080】
<1-4>塩基性物質
本発明の分散剤含有液は、pH調整剤として塩基性物質を含んでいてもよい。
【0081】
これにより、分散剤含有液のpHの範囲を弱塩基性の好適な範囲に調整することができ、分散剤含有液中において、水溶性ポリエステルのより好適な溶解状態を確保することができ、例えば、水溶性ポリエステルの不溶化による凝集、沈降等の問題をより効果的に防止することができる。その結果、例えば、分散剤含有液を用いて有機色材が分散した水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0082】
塩基性物質としては、例えば、1価の無機塩基、2価の無機塩基、水溶性有機アミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
1価の無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられ、特に、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
2価の無機塩基としては、例えば、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
【0084】
水溶性有機アミンとしては、例えば、20℃における水に対する溶解度が10g/100g水以上の有機アミンを用いることができる。水溶性有機アミンの具体例としては、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等のアルキルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0085】
特に、水溶性有機アミンとしては、ヒドロキシアミンが好ましく、ジオールアミンまたはトリオールアミンがより好ましく、トリエタノールアミンがさらに好ましい。
【0086】
これにより、水溶性有機アミンの水溶性を特に高いものとしつつ、高沸点化することができ、かつ、高い吸湿性も得られるため、分散剤含有液や分散剤含有液を用いて調製される水系色材分散液の不本意な乾燥による固形分の析出をより効果的に防止することができる。
【0087】
なお、塩基性物質は、水溶性ポリエステルの合成時に、例えば、モノマーが塩の形態となるように用いられるものであってもよいし、合成された水溶性ポリエステルと混合されるものであってもよい。
【0088】
<1-5>その他の成分
本発明の分散剤含有液は、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、このような成分をこの項目内において、「その他の成分」と言う。
【0089】
その他の成分としては、例えば、水溶性ポリエステル以外の分散剤や樹脂成分、水以外の溶剤、保湿剤、表面張力調整剤、防腐剤、キレート剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
ただし、本発明の分散剤含有液は、顔料、分散染料および油溶性染料よりなる群から選択される少なくとも1種である有機色材を含まないものである。前述した本発明の分散剤含有液の構成成分に加えて、有機色材を含むものは、後述する本発明の水系色材分散液である。
【0091】
なお、本発明の分散剤含有液中におけるその他の成分の含有量は、10.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0092】
<1-6>その他
本発明の分散剤含有液は、以下に述べる条件を満たすのが好ましい。
【0093】
例えば、本発明の分散剤含有液の20℃におけるpHの下限は、7.0であるのが好ましく、7.2であるのがより好ましく、7.4であるのがさらに好ましい。また、本発明の分散剤含有液の20℃におけるpHの上限は、10.0であるのが好ましく、9.0であるのがより好ましく、8.6であるのがさらに好ましい。
【0094】
これにより、水溶性ポリエステルのより好適な溶解状態を確保することができ、例えば、水溶性ポリエステルの不溶化による凝集、沈降等の問題をより効果的に防止することができる。その結果、例えば、分散剤含有液を用いて有機色材を含む水系色材分散液を調製した場合における、有機色材の分散安定性や水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0095】
本発明の分散剤含有液は、例えば、縮合反応で得られた水溶性ポリエステルに、水やポリアルキレングリコール類等の必要成分を加えて、撹拌することにより好適に調製することができる。また、撹拌時に、必要に応じて加熱をしてもよい。
【0096】
<2>水系色材分散液
次に、本発明の水系色材分散液について、説明する。
【0097】
本発明の水系色材分散液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含むアニオン性の水溶性ポリエステルと、ポリアルキレングリコール類と、水と、顔料、分散染料および油溶性染料よりなる群から選択される少なくとも1種である有機色材と、を含む。
【0098】
これにより、有機色材の分散安定性に優れ、保存安定性に優れた水系色材分散液を提供することができる。また、水系色材分散液の耐乾燥性を優れたものとすることができる。さらに、水系色材分散液が保湿剤や表面張力調整剤を含むものであっても、有機色材に対する親和性や吸着性について、保湿剤や表面張力調整剤との間で競合することがなく、有機色材の分散安定に悪影響を及ぼさないため、好適である。
【0099】
<2-1>水
本発明の水系色材分散液は、水を含んでいる。当該水は、主に、水系色材分散液に流動性を付与する機能を有しており、分散媒や溶媒として機能する。
【0100】
水としては、イオン交換水、純水、超純水を用いることが好ましい。
水系色材分散液中における水の含有量の下限は、特に限定されないが、35.0質量%であるのが好ましく、40.0質量%であるのがより好ましく、45.0質量%であるのがさらに好ましい。また、分散剤含有液中における水の含有量の上限は、特に限定されないが、95.0質量%であるのが好ましく、93.0質量%であるのがより好ましく、90.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0101】
これにより、水系色材分散液の粘度をより確実に好適な値に調整することができる。また、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。
【0102】
<2-2>分散剤としての水溶性ポリエステル
本発明の水系色材分散液は、カルボン酸塩および/またはスルホン酸塩を含む水溶性ポリエステルを分散剤として含んでいる。
【0103】
このような水溶性ポリエステルは、上記<1-2>で説明したのと同様の条件を満たすものであるのが好ましい。
これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0104】
水系色材分散液中における水溶性ポリエステルの含有量の下限は、0.3質量%であるのが好ましく、0.4質量%であるのがより好ましく、0.5質量%であるのがさらに好ましい。また、水系色材分散液中における水溶性ポリエステルの含有量の上限は、17.5質量%であるのが好ましく、15.0質量%であるのがより好ましく、14.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0105】
これにより、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0106】
また、水系色材分散液中に含まれる有機色材:100.0質量部に対する水溶性ポリエステルの含有量の下限は、10.0質量部であるのが好ましく、15.0質量部であるのがより好ましく、20.0質量部であるのがさらに好ましい。また、水系色材分散液中に含まれる有機色材:100.0質量部に対する水溶性ポリエステルの含有量の上限は、200.0質量部であるのが好ましく、150.0質量部であるのがより好ましく、90.0質量部であるのがさらに好ましい。
【0107】
これにより、水系色材分散液の粘度を好適な範囲に調整しやすくなり、水系色材分散液の取り扱いのしやすさをより優れたものとすることができるとともに、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。
【0108】
<2-3>ポリアルキレングリコール類
本発明の水系色材分散液は、ポリアルキレングリコール類を含んでいる。
【0109】
このようなポリアルキレングリコール類は、上記<1-3>で説明したのと同様の条件を満たすものであるのが好ましい。
これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0110】
水系色材分散液中におけるポリアルキレングリコール類の含有量の下限は、0.01質量%であるのが好ましく、0.03質量%であるのがより好ましく、0.05質量%であるのがさらに好ましい。また、水系色材分散液中におけるポリアルキレングリコール類の含有量の上限は、10.0質量%であるのが好ましく、5.0質量%であるのがより好ましく、1.5質量%であるのがさらに好ましい。
【0111】
これにより、有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0112】
水系色材分散液中における、水溶性ポリエステルの含有量XPEs[質量%]、ポリアルキレングリコール類の含有量XPAG[質量%]としたとき、0.01≦XPAG/XPEs≦2.00の関係を満たすのが好ましく、0.03≦XPAG/XPEs≦1.00の関係を満たすのがより好ましく、0.05≦XPAG/XPEs≦0.50の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0113】
これにより、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整することができ、例えば、水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0114】
<2-4>有機色材
本発明の水系色材分散液は、顔料、分散染料および油溶性染料よりなる群から選択される少なくとも1種である有機色材を含んでいる。
【0115】
顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
【0116】
より具体的には、イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、180等が挙げられる。マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53、53:1、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219等が挙げられる。シアン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられる。その他のカラー顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、C.I.ピグメントバイオレット1、3、5:1、16、19、23、38等が挙げられる。
【0117】
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパース・レッド60、82、86、86:1、167:1、279、364、C.I.ディスパース・イエロー54、64、71、86、114、153、232、233、245、C.I.ディスパース・ブルー27、60、73、77、77:1、87、257、359、367、C.I.ディスパース・バイオレット26、33、36、57、C.I.ディスパース・オレンジ30、41、61等が挙げられる。
【0118】
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・イエロー16、21、25、29、33、51、56、82、88、89、150、160:1、163、C.I.ソルベント・レッド7、8、18、24、27、49、109、122、125、127、130、132、135、218、225、230、C.I.ソルベント・ブルー14、25、35、38、48、67、68、70、132、C.I.ソルベント・ブラック3、5、7、27、28、29、34等が挙げられる。
【0119】
本発明の水系色材分散液中に含まれる有機色材は、分散染料または油溶性染料のいずれかであるのが好ましい。
【0120】
これにより、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、本発明の水系色材分散液を、インクジェット用組成物に、好適に適用することができ、当該インクジェット用組成物を用いて形成される記録部の発色性等をより優れたものとすることができる。
【0121】
本発明の水系色材分散液中に含まれる有機色材の平均粒径の下限は、80nmであるのが好ましく、85nmであるのが好ましく、90nmであるのが好ましい。また、本発明の水系色材分散液中に含まれる有機色材の平均粒径の上限は、180nmであるのが好ましく、150nmであるのが好ましく、120nmであるのが好ましい。
【0122】
これにより、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性、水系色材分散液の保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0123】
なお、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指す。また、平均粒径は、例えば、マイクロトラックUPA(日機装社製)等を用いた測定により求めることができる。
【0124】
本発明の水系色材分散液中における有機色材の含有量は、特に限定されないが、本発明の水系色材分散液中における有機色材の含有量の下限は、0.5質量%であるのが好ましく、1.0質量%であるのがより好ましく、1.5質量%であるのがさらに好ましい。また、本発明の水系色材分散液中における有機色材の含有量の上限は、30.0質量%であるのが好ましく、25.0質量%であるのがより好ましく、20.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0125】
これにより、水系色材分散液中における有機色材の含有量を十分に高いものとしつつ、有機色材の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、例えば、ビーズミル等の分散機を用いて有機色材を分散させた場合に、得られる水系色材分散液の粘度をより好適な範囲に調整しやすくなる。また、水系色材分散液がインクジェット用組成物等のインク組成物である場合に、当該インク組成物の吐出安定性や、当該インク組成物を用いて形成される記録部の発色性をより優れたものとすることができる。
【0126】
<2-5>塩基性物質
本発明の水系色材分散液は、pH調整剤として塩基性物質を含んでいてもよい。
【0127】
これにより、水系色材分散液のpHの範囲を好適な範囲に調整することができ、水系色材分散液中において、水溶性ポリエステルのより好適な溶解状態を確保することができ、例えば、水溶性ポリエステルの不溶化による凝集、沈降等の問題をより効果的に防止することができる。その結果、例えば、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0128】
このような塩基性物質は、上記<1-4>で説明したのと同様の条件を満たすものであるのが好ましい。
これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0129】
<2-6>保湿剤
本発明の水系色材分散液は、保湿剤を含んでいてもよい。
【0130】
保湿剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、メソエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール類、2グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖類やこれら糖類の誘導体、グリシン、トリメチルグリシンのベタイン類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
本発明の水系色材分散液中における保湿剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の水系色材分散液中における保湿剤の含有量の下限は、0.2質量%であるのが好ましく、0.5質量%であるのがより好ましく、0.7質量%であるのがさらに好ましい。また、本発明の水系色材分散液中における保湿剤の含有量の上限は、20.0質量%であるのが好ましく、15.0質量%であるのがより好ましく、10.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0132】
<2-7>表面張力調整剤
本発明の水系色材分散液は、表面張力調整剤を含んでいてもよい。
表面張力調整剤としては、例えば、界面活性剤等が挙げられる。
【0133】
特に、本発明の水系色材分散液が、インクジェットインクである場合に、前述した保湿剤とともに、表面張力調整剤を含むことにより、優れた保湿能により蒸発速度を低下させより安定な吐出を行う効果が得られる。
【0134】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性の界面活性剤、アニオン性の界面活性剤、ノニオン性の界面活性剤等が挙げられるが、アニオン性で溶解している水溶性ポリエステルの溶解性への影響を抑えるために、特に、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
【0135】
ノニオン性の非反応性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。
【0136】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製:BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-349、BYK-3455、日信化学工業社製:シルフェイスSAG503A、SAG002、SAG005、SAG014、信越化学社製:KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012等が挙げられる。
【0137】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、スリーエムジャパン社製:FC-4430、FC-4432、DIC社製:メガファックF-444、F-477、F-553、F-556、AGCセイミケミカル社製:サーフロンS-241、S-242、S-243、S-386等が挙げられる。
【0138】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、日信化学工業社製:サーフィノール82、465、485、2502、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD-002W、PD-004、EXP4001、EXP4002、EXP4123、EXP4300、川研ファインケミカル社製:アセチレノールE00、E103T、E40、E60、E100、E200等が挙げられる。
【0139】
また、表面張力調整剤としては、例えば、2-プロパノール、1-プロパノール、2-ブタノール、1-ブタノール等の低級アルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシル等のグリコールモノエーテル類、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等の低級アルキル1,2-ジオール類、グリセリンモノブチルエーテル、グリセリン-2-エチルヘキシルエーテル等のグリセリンモノエーテル等の水溶性化合物を用いることもできる。
【0140】
本発明の水系色材分散液中における表面張力調整剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の水系色材分散液中における表面張力調整剤の含有量の下限は、0.1質量%であるのが好ましく、0.2質量%であるのがより好ましく、0.3質量%であるのがさらに好ましい。また、本発明の水系色材分散液中における表面張力調整剤の含有量の上限は、10.0質量%であるのが好ましく、8.0質量%であるのがより好ましく、6.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0141】
<2-8>その他の成分
本発明の水系色材分散液は、前述した成分以外の成分をさらに含んでいてもよい。以下、このような成分をこの項目内において、「その他の成分」と言う。
【0142】
その他の成分としては、例えば、防腐剤、キレート剤、水溶性ポリエステル以外の分散剤や樹脂成分、水以外の溶剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0143】
防腐剤を含むことにより、例えば、微生物による水系色材分散液の腐敗を防ぎ、水系色材分散液中の固形分の析出や凝集をより効果的に防止することができる。
【0144】
防腐剤としては、例えば、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、ベンズイソチアゾリノン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ジエチレンオキシミド等が挙げられる。
【0145】
キレート剤を含むことにより、例えば、水系色材分散液中の多価カチオンをトラップし、水系色材分散液中の固形分の析出や凝集をより効果的に防止することができる。
【0146】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ四酢酸塩、ジエチルトリアミン五酢酸塩、ペンテト酸塩、イミノジコハク酸塩、アスパラギン酸二酢酸塩等が挙げられる。
【0147】
ただし、本発明の水系色材分散液中におけるその他の成分の含有量は、10.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0148】
<2-9>その他
本発明の水系色材分散液は、以下に述べる条件を満たすのが好ましい。
例えば、本発明の水系色材分散液の20℃におけるpHの下限は、7.0であるのが好ましく、7.2であるのがより好ましく、7.4であるのがさらに好ましい。また、本発明の水系色材分散液の20℃におけるpHの上限は、10.0であるのが好ましく、9.0であるのがより好ましく、8.6であるのがさらに好ましい。
【0149】
これにより、水溶性ポリエステルのより好適な溶解状態を確保することができ、例えば、水溶性ポリエステルの不溶化による凝集、沈降等の問題をより効果的に防止することができる。その結果、例えば、水系色材分散液中における有機色材の分散安定性および水系色材分散液の耐乾燥性をより優れたものとすることができる。また、水系色材分散液が、インクジェット用組成物である場合、インクジェット法によるインクジェット用組成物の吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0150】
本発明の水系色材分散液は、例えば、塗料や、各種インク組成物等、いかなる用途のものであってもよいが、インクジェット用組成物、特に、インクジェットインクであるのが好ましい。
【0151】
インクジェットインクでは、当該組成物中の有機色材が沈降、凝集したり、インクジェットヘッドや流路内で固形分が析出したりすること等が、インクジェット法による吐出安定性に大きな影響を与え、場合によっては、インクジェット法による組成物の吐出そのものが不能になる場合もある。言い換えると、インクジェット用組成物では、より高いレベルで有機色材の分散安定性と耐乾燥性とを両立することが求められる。これに対し、本発明では、有機色材の分散安定性と耐乾燥性とを好適に両立することができる。すなわち、水系色材分散液がインクジェットインクである場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。なお、本明細書において、インクジェット用組成物は、インクジェット法により吐出されるインクジェットインクそのもののほか、例えば、他の成分を混合することによりインクジェットインクの調製に用いるインクジェットインクの原液等を含む概念である。
【0152】
本発明の水系色材分散液の20℃における粘度の下限は、特に限定されないが、2.0mPa・sであるのが好ましく、3.0mPa・sであるのがより好ましい。また、本発明の水系色材分散液の20℃における粘度の上限は、特に限定されないが、9.0mPa・sであるのが好ましく、8.0mPa・sであるのがより好ましく、7.0mPa・sであるのがさらに好ましい。
【0153】
これにより、例えば、本発明の水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合に、その吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0154】
なお、粘度は、20℃にて、例えば、Pysica社製のMCR-300等の粘弾性試験機を用いて、Shear Rateを10[s-1]から1000[s-1]に上げていき、Shear Rate200の時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0155】
本発明の水系色材分散液の20℃における表面張力の下限は、特に限定されないが、20mN/mであるのが好ましく、21mN/mであるのがより好ましく、23mN/mであるのがさらに好ましい。また、本発明の水系色材分散液の20℃における表面張力の上限は、特に限定されないが、50mN/mであるのが好ましく、40mN/mであるのがより好ましく、30mN/mであるのがさらに好ましい。
【0156】
これにより、例えば、本発明の水系色材分散液がインクジェット用組成物である場合に、インクジェット法による記録装置のノズルの詰まり等がより生じにくくなり、本発明の水系色材分散液の吐出安定性がより向上する。また、ノズルの詰まりを生じた場合でも、ノズルにキャップをすること、すなわち、キャッピングによる回復性をより優れたものとすることができる。
【0157】
なお、表面張力としては、ウィルヘルミー法により測定した値を採用することができる。表面張力の測定は、例えば、協和界面科学社製のCBVP-7等の表面張力計を用いることができる。
【0158】
本発明の水系色材分散液がインクジェットインクである場合、当該インクは、通常、カートリッジ、袋、タンク等の容器に収納された状態で、インクジェット法による記録装置に適用される。言い換えると、本発明に係る記録装置は、本発明の水系色材分散液としてのインクジェットインクを収納するインクカートリッジ等の容器を備えるものである。
【0159】
本発明の水系色材分散液は、例えば、前述した本発明の分散剤含有液と、分散質となるべき有機色材とを混合した状態で、ビーズミル等を用いて、有機色材を微細化することにより調製することができる。
【0160】
ビーズとしては、例えば、ジルコニアビーズ、ステンレスビーズ、アルミナビーズ等の各種無機ビーズを好適に用いることができる。
【0161】
本発明の水系色材分散液を調製する際には、前述した本発明の分散剤含有液、有機色材に加えて、例えば、水や溶剤、保湿剤、表面張力調整剤等の成分を用いてもよい。
本発明の水系色材分散液の調製時には、必要に応じて、加熱をしてもよい。
【0162】
また、本発明の水系色材分散液は、上記のような方法で調製されたものに限定されない。例えば、本発明の水系色材分散液は、前述した本発明の分散剤含有液を用いることなく、縮合反応で得られた水溶性ポリエステル、有機色材、前述したポリアルキレングリコール類、水等の必要成分を一括混合し、または、所定の順番で順次添加して混合し、その後、ビーズミル等を用いて、有機色材を微細化することにより調製してもよい。
【0163】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0164】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
<3>水溶性ポリエステルの合成
【0165】
(合成例1)
温度計、撹拌機を備えたオートクレーブ中に、33重量部のテレフタル酸ジメチル、19重量部のイソフタル酸ジメチル、35重量部のアジピン酸ジメチル、5重量部の5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、14重量部の1,3-プロパンジオール、28重量部のベンゼンジメタノール、10重量部のネオペンチルグリコール、0.5重量部の触媒としてのテトラブトキシチタネートを仕込み、150~200℃で180分間加熱してエステル交換反応を行った。
【0166】
次いで、200℃の温度で、系の圧力を徐々に減じてジオール成分を留去し、30分後に10mmHgとし、そのまま90分間高分子化反応を続けた。この反応物に、2重量部の樹脂末端修飾剤として無水マレイン酸を加え、200℃で60分間さらに反応させ、ポリエステル末端にカルボキシル基を導入し、
図1に示す条件の水溶性ポリエステルを得た。
【0167】
得られた水溶性ポリエステルの数平均分子量は5500、酸価は20mgKOH/g、水溶性ポリエステル中におけるスルホ基量に対するカルボキシル基量のモル比[mol%]は100mol%、水溶性ポリエステルの全モノマーに対する芳香環を持つモノマーの比率Xa[mol%]は51mol%であった。
【0168】
なお、得られた水溶性ポリエステルの数平均分子量は、GPCにて測定した。また、水溶性ポリエステル中のモノマー比率は、1H-NMRにて測定した。スルホ基量は、XRFにて硫黄量を測定して算出した。カルボキシル基量は、水溶性ポリエステルの酸価から算出した。以下の合成例で合成した水溶性ポリエステルについても、数平均分子量、水溶性ポリエステル中のモノマー比率、スルホ基量、カルボキシル基量を、同様にして求めた。
【0169】
(合成例2~17)
水溶性ポリエステルの合成に用いる原料モノマーの種類、使用量を変更し、それぞれ、
図1、
図2に示す条件となるように変更した以外は、前記合成例1と同様にして水溶性ポリエステルを得た。
【0170】
前記合成例1~17で得られた水溶性ポリエステルの条件を
図1、
図2にまとめて示す。なお、
図1、
図2中の組成比についての数値は、水溶性ポリエステル中における比率を、mol%の単位で示したものである。
【0171】
<4>分散剤含有液の調製
(実施例A1)
フラスコに、10.0質量部の合成例1で合成した水溶性ポリエステル、50.0質量部の純水、1.0質量部のポリアルキレングリコール類としてアデカプルロニックP-85(ADEKA社製、「プルロニック」は登録商標)を加えて、5.0質量部の塩基性物質としてのトリエタノールアミンを加えた。その後、全量が100.0質量部になるように純水を追加し、70℃で60分間撹拌して、均一な分散剤含有液を得た。
【0172】
(実施例A2~A31)
分散剤含有液の調製に用いる各成分の種類、使用量を
図3~
図5に示すように変更した以外は、前記実施例A1と同様にして分散剤含有液を調製した。
【0173】
(比較例A1、A2)
分散剤含有液の調製に用いる各成分の種類、使用量を
図5に示すように変更した以外は、前記実施例A1と同様にして分散剤含有液を調製した。
【0174】
前記実施例A1~A31および比較例A1、A2に係る分散剤含有液の条件を
図3~
図5にまとめて示す。なお、
図3~
図5中の「調製に用いた成分」の「使用量」についての数値は、各成分の使用量を質量部の単位で示したものである。また、
図3~
図5中、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコール類としてのニューポールPE-62(三洋化成工業社製)を「PAG1」、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコール類としてのアデカプルロニックP-103(ADEKA社製、「プルロニック」は登録商標)を「PAG2」、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコール類としてのアデカプルロニックP-85(ADEKA社製、「プルロニック」は登録商標)を「PAG3」、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコール類としてのニューポールPE-108(三洋化成工業社製)を「PAG4」、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコール類としてのニューポール50HB-660(三洋化成工業社製)を「PAG5」、塩基性物質としてのトリエタノールアミンを「TEA」と示した。PAG1は、曇点が30℃であり、PAG2は、曇点が67℃であり、PAG3は、曇点が75℃であり、PAG4は、曇点が105℃であり、PAG5は、曇点が125℃である。
【0175】
<5>水系色材分散液としてのインクジェットインクの原液の調製
(実施例B1)
50.0質量部の前記実施例A1で調製した分散剤含有液、40.0質量部の純水を混合し、ここに、10.0質量部の色材として分散染料のC.I.ピグメントブルー15:3を加え、0.5mm径のジルコニアボールをメディアとして使用してビーズミルにて0.5時間分散、ビーズを分離、孔径8μmのフィルターにてろ過して水系色材分散液としてのインクジェットインクの原液を得た。
【0176】
(実施例B2~B33)
インクジェットインクの原液の調製に用いる分散剤含有液の種類、色材の種類を
図6~
図8に示すように変更した以外は、前記実施例B1と同様にして水系色材分散液としてのインクジェットインクの原液を調製した。
【0177】
(比較例B1、B2)
インクジェットインクの原液の調製に用いる分散剤含有液の種類、色材の種類を
図8に示すように変更した以外は、前記実施例B1と同様にして水系色材分散液としてのインクジェットインクの原液を調製した。
【0178】
前記実施例B1~B33および比較例B1、B2に係るインクジェットインクの原液の条件を
図6~
図8にまとめて示す。なお、
図6~
図8中の「調製に用いた成分」の「使用量」についての数値は、各成分の使用量を質量部の単位で示したものである。また、
図6~
図8中、C.I.ピグメントブルー15:3を「PB15:3」、C.I.ディスパース・ブルー359を「DB359」、C.I.ソルベント・イエロー160:1を「SY160:1」と示した。また、前記各実施例のインクジェットインクの原液は、いずれも、インクジェットインクの原液中に含まれる有機色材の平均粒径が80nm以上180nm以下の範囲内の値であった。
【0179】
<6>水系色材分散液としてのインクジェットインクの調製
(実施例C1)
30.0質量部の前記実施例B1で調製したインクジェットインクの原液、0.8質量部の保湿剤としてのトリエチレングリコール、0.4質量部の保湿剤としてのトリメチロールプロパン、0.6質量部の表面張力調整剤としてのBYK-348(ビックケミー・ジャパン社製)、0.5質量部の表面張力調整剤としての1,2-ヘキサンジオールを混合し、さらに総量が100.0質量部となるように純水を追加して、20℃の環境下で30分撹拌、孔径3μmの精密ろ過フィルターでろ過して、水系色材分散液としてのインクジェットインクを得た。
【0180】
(実施例C2~C33)
インクジェットインクの調製に用いるインクジェットインクの原液の種類、各添加成分の種類を
図9~
図11に示すように変更した以外は、前記実施例C1と同様にして水系色材分散液としてのインクジェットインクを調製した。
【0181】
(比較例C1、C2)
インクジェットインクの調製に用いるインクジェットインクの原液の種類、各添加成分の種類を
図11に示すように変更した以外は、前記実施例C1と同様にして水系色材分散液としてのインクジェットインクを調製した。
【0182】
前記実施例C1~C33および比較例C1、C2に係るインクジェットインクの条件を
図9~
図11にまとめて示す。なお、
図9~
図11中の「調製に用いた成分」の「使用量」についての数値は、各成分の使用量を質量部の単位で示したものである。また、
図9~
図11中、トリエチレングリコールを「TEG」、ペンタエリスリトールを「PE」、トリメチロールプロパンを「TMP」、1,2-ヘキサンジオールを「1,2HD」と示した。また、前記各実施例のインクジェットインクは、いずれも、インクジェットインク中に含まれる有機色材の平均粒径が80nm以上180nm以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例のインクジェットインクは、いずれも、粘度が2.0mPa・s以上9.0mPa・s以下であった。なお、粘度は、粘弾性試験機MCR-300(Pysica社製)を用いて、20℃にて、Shear Rateを10[s
-1]から1000[s
-1]に上げていき、Shear Rate200の時の粘度を読み取ることにより測定した。また、前記各実施例のインクジェットインクは、いずれも、表面張力が23mN/m以上30mN/m以下の範囲内の値であった。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学社製、CBVP-7)を用いて、20℃にて、ウィルヘルミー法により測定した。
【0183】
<7>評価
<7-1>粘度の安定性による保存安定性評価
前記実施例B1~B33および比較例B1、B2のインクジェットインクの原液、前記実施例C1~C33および比較例C1、C2のインクジェットインクを、それぞれ、サンプル容器に入れ60℃の環境で1週間放置した後、20℃での粘度を測定し、それぞれに対応する製造直後のインクジェットインクの原液、インクジェットインクの20℃での粘度と比較し、以下の基準に従い評価した。粘度の変動率が小さいほど、保存安定性に優れていると言える。
【0184】
A:製造直後からの粘度の変動率が5%未満。
B:製造直後からの粘度の変動率が5%以上10%未満。
C:製造直後からの粘度の変動率が10%以上12%未満。
D:製造直後からの粘度の変動率が12%以上14%未満。
E:製造直後からの粘度の変動率が14%以上。
【0185】
<7-2>粒径の安定性による保存安定性評価
前記実施例B1~B33および比較例B1、B2のインクジェットインクの原液、前記実施例C1~C33および比較例C1、C2のインクジェットインクを、それぞれ、サンプル容器に入れ60℃の環境で1週間放置した後、20℃の環境下で有機色材の平均粒径を求め、それぞれに対応する製造直後のインクジェットインクの原液、インクジェットインク中に含まれる有機色材の平均粒径と比較し、以下の基準に従い評価した。有機色材の粒径の変動率が小さいほど、保存安定性が高く、吐出安定性に与える悪影響も小さいと言える。なお、平均粒径の測定には、マイクロトラックUPA(日機装社製)を用いた。
【0186】
A:製造直後からの有機色材の平均粒径の変動率が2%未満。
B:製造直後からの有機色材の平均粒径の変動率が2%以上5%未満。
C:製造直後からの有機色材の平均粒径の変動率が5%以上7%未満。
D:製造直後からの有機色材の平均粒径の変動率が7%以上9%未満。
E:製造直後からの有機色材の平均粒径の変動率が9%以上。
【0187】
<7-3>異物の発生量による保存安定性評価
前記実施例B1~B33および比較例B1、B2のインクジェットインクの原液、前記実施例C1~C33および比較例C1、C2のインクジェットインクを、それぞれ、10mLだけ、所定のガラス瓶に入れ、気液界面が存在する状態で、60℃の環境で1週間放置した。その後、各インクジェットインクの原液、各インクジェットインクを、口径10μmの金属メッシュフィルターでろ過し、当該金属メッシュフィルター上に残留した固形物の1mm四方当たりの個数を数え、以下の基準に従い評価した。異物の発生量が少ないほど保存安定性に優れていると言える。
【0188】
A:1mm四方当たりの固形物の個数が10個未満。
B:1mm四方当たりの固形物の個数が10個以上15個未満。
C:1mm四方当たりの固形物の個数が15個以上30個未満。
D:1mm四方当たりの固形物の個数が30個以上50個未満。
E:1mm四方当たりの固形物の個数が50個以上。
【0189】
<7-4>軟凝集の程度の評価
まず、製造直後の、前記実施例B1~B33および比較例B1、B2のインクジェットインクの原液、前記実施例C1~C33および比較例C1、C2のインクジェットインクについて、それぞれ、一部を取り分け、粒子径・粒度分布測定装置(シメックス社製、FPIA-3000S)を用いて、純水で100倍に希釈し、HPF測定モード/標準撮影ユニットで、粒径が0.5μm以上40.0μm以下の粒子数を測定した。
【0190】
次に、前記実施例B1~B33および比較例B1、B2のインクジェットインクの原液、前記実施例C1~C33および比較例C1、C2のインクジェットインクを、それぞれ、サンプル容器に入れ60℃の環境で1週間放置した直後に、粒子径・粒度分布測定装置(シメックス社製、FPIA-3000S)を用いて、純水で100倍に希釈し、HPF測定モード/標準撮影ユニットで、粒径が0.5μm以上40.0μm以下の粒子数を測定した。
【0191】
これらの値から、製造直後から、60℃の環境で1週間放置した際の粒径が0.5μm以上40.0μm以下の粒子数の変動率を求め、以下の基準に従い評価した。この変動率が大きいほど軟凝集体の形成が進行していると言え、保存安定性に劣っていると言える。
【0192】
A:製造直後からの変動率が10%未満。
B:製造直後からの変動率が10%以上15%未満。
C:製造直後からの変動率が15%以上35%未満。
D:製造直後からの変動率が35%以上50%未満。
E:製造直後からの変動率が50%以上。
【0193】
上記の評価結果を
図12~
図15にまとめて示す。
図12~
図15から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られた。特に、本発明の水系色材分散液の製造においては、0.5時間という短時間の分散処理でも、有機色材を好適に解砕・分散させることができ、得られた水系色材分散液は、有機色材の分散安定性に優れ、保存安定性に優れるものであった。これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。