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特開2024-116022微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116022
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240820BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08G18/50 021
C08G18/18
C08G18/09 020
C08G18/76 057
C08G18/42 008
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022000
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】尾下 正道
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊明
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG16
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA03
4J034MA04
4J034NA01
4J034NA06
4J034QB01
4J034QB16
4J034QC01
4J034RA14
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率を従来よりも低減する。
【解決手段】ポリオール由来の構成単位及びイソシアネート由来の構成単位を含有する硬質ポリウレタンフォームと、微粒子と、を含有する微粒子含有硬質ポリウレタンフォームであって、前記微粒子が前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であることを特徴とする微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール由来の構成単位及びイソシアネート由来の構成単位を含有する硬質ポリウレタンフォームと、
微粒子と、を含有する微粒子含有硬質ポリウレタンフォームであって、
前記微粒子が前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、
前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であることを特徴とする微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記微粒子が中空粒子又は多孔質粒子である、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記微粒子が硬質ポリウレタンフォームの骨格内に存在している、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記微粒子は無機材料からなるものである、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記微粒子のかさ密度が600kg/m以下であり、かつ前記微粒子の平均粒子径は10μm以下である、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記ポリオール構成単位が、2以上4以下の官能基を有する脂肪族非アミン系化合物であってエチレンオキシドが付加された脂肪族非芳香族アミン系化合物由来の構成単位を1質量%以上10質量%以下の範囲で含有し、4以上6以下の官能基を有する芳香族アミン化合物であってエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方が付加された芳香族アミン化合物由来の構成単位を65質量%以上99質量%以下の範囲で含有するものである、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記ポリオール構成単位が、2以上4以下の官能基を有する芳香族ジカルボン酸であってジオールを付加された化合物由来の構成単位を1質量%以上10質量%以下の範囲で含有するものである、請求項6に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
前記微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム全体の密度が30kg/m以上45kg/m以下である、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
樹脂化触媒、泡化触媒及び三量化触媒のうちいずれか1種以上の触媒をさらに含有する、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
前記触媒が第3級アミンである、請求項9に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
シリコーン系整泡剤をさらに含有する、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
前記イソシアネートは、ポリメリックMDIである、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
前記微粒子は、表面処理剤によって疎水性の表面修飾がなされたものである、請求項1に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項14】
前記表面処理剤が、疎水性シランカップリング剤である、請求項13に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項15】
ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールと発泡剤と微粒子とを含有するプレミクスと、
イソシアネートとを混合して微粒子含有硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記微粒子が、前記ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールと前記発泡剤と前記イソシアネートとを混合して得られる硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であることを特徴とする、微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項16】
前記プレミクスが発泡補助剤をさらに含み、前記プレミクス中の前記発泡補助剤の含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である、請求項15に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷蔵庫の断熱材として用いることができる微粒子含有硬質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームをより低熱伝導率とするために、硬質ポリウレタンフォームにグラファイト、モンモリロナイト又は酸化チタンの微粒子を添加して、ウレタンフォームの気泡を小さくすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-80539号公報
【特許文献2】特開2010-222521号公報
【特許文献3】特開2013-107962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが実際に試してみた結果、前述した各特許文献に記載されている従来の硬質ポリウレタンフォームにおいては、微粒子を含有させることにより気泡を小さくしようとすると、微粒子を含有する微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム全体としての熱伝導率が逆に上昇してしまうことが分かった。
このような結果となった理由について本発明者らが鋭意検討した結果、前述した各特許文献に記載されている微粒子の熱伝導率が硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率よりも高いことが原因となっているからではないかと考えた。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率を従来よりも低減することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、以下のようなものである。
[1]ポリオール由来の構成単位及びイソシアネート由来の構成単位を含有する硬質ポリウレタンフォームと、
微粒子と、を含有する微粒子含有硬質ポリウレタンフォームであって、
前記微粒子が前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、
前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であることを特徴とする微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[2]前記微粒子が中空粒子又は多孔質粒子である[1]記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[3]前記微粒子が硬質ポリウレタンフォームの骨格内に存在している、[1]又は[2]記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[4]前記微粒子は無機材料からなるものである、[1]~[3]に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[5]前記微粒子のかさ密度が600kg/m以下であり、かつ前記微粒子の平均粒子径が10μm以下である、[1]~[4]の何れかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[6]前記ポリオール構成単位が、2以上4以下の官能基を有する脂肪族非アミン系化合物であってエチレンオキシドが付加された脂肪族非芳香族アミン系化合物由来の構成単位を1質量%以上10質量%以下の範囲で含有し、4以上6以下の官能基を有する芳香族アミン化合物であってエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方が付加された芳香族アミン化合物由来の構成単位を65質量%以上99質量%以下の範囲で含有するものである、[1]~[5]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[7]前記ポリオール構成単位が、2以上4以下の官能基を有する芳香族ジカルボン酸であってジオールを付加された化合物由来の構成単位を1質量%以上10質量%以下の範囲で含有するものである、[6]に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[8]前記微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム全体の密度が30kg/m以上45kg/m以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[9]樹脂化触媒、泡化触媒及び三量化触媒のうちいずれか1種以上の触媒をさらに含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[10]前記触媒が第3級アミンである、[9]に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[11]シリコーン系整泡剤をさらに含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[12]前記イソシアネートは、ポリメリックMDIである、[1]~[11]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[13]前記微粒子は、表面処理剤によって疎水性の表面修飾がなされたものである、[1]~[12]のいずれかに記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[14]前記表面処理剤が、疎水性シランカップリング剤である、[13]に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム。
[15]ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールと発泡剤と微粒子とを含有するプレミクスと、
イソシアネートとを混合して微粒子含有硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
前記微粒子が、前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であることを特徴とする、微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
[16]前記プレミクスが発泡補助剤をさらに含み、前記プレミクス中の前記発泡補助剤の含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である、[15]に記載の微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記微粒子が、前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものであり、前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.35体積%以下であるので、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率を従来よりもさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの気泡成長抑制の様子を表す模式図。
図2】本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームにおける熱の流れを表す模式図。
図3】本発明の実施例、比較例にかかる微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの顕微鏡写真。
図4】本発明の実施例、比較例にかかる微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの微粒子の含有量と熱伝導率との関係を示すグラフ。
図5】本発明の実施例、比較例にかかる微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの顕微鏡写真。
図6】本発明の実施例、比較例にかかる微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの微粒子の含有量と熱伝導率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
<本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの構成>
本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは、発泡硬化させることにより内部に多数の気泡が形成されたものである。該ウレタンフォーム全体としての密度は30kg/m以上45kg/m以下であることが好ましく、32kg/m以上40kg/m以下であることがより好ましく、32kg/m以上38kg/m以下である。
【0010】
前記微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール由来の構成単位及びイソシアネート由来の構成単位から構成される硬質ポリウレタンフォームと、微粒子とを含有するものである。
なお、硬質ポリウレタンフォームとは、硬化後に復元性、クッション性を失ったウレタンフォームのことであり、断熱用途として用いられることが多いものである。
【0011】
前記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを挙げることができる。
前記ポリオール由来の構成単位が、4以上6以下の官能基を有する芳香族アミン化合物であってエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方が付加された芳香族アミン化合物由来の構成単位(第1構成単位ともいう。)を含有するものであることが好ましい。第1構成単位の具体例としては、例えば、2,3-トルエンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン等をあげることができる。第1構成単位の含有量は、前記ポリオール由来の構成単位全体を100質量%とした場合に65質量%以上99質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
前記ポリオール由来の構成単位が、さらに2以上4以下の官能基を有する脂肪族非アミン系化合物であってエチレンオキシドが付加された脂肪族非芳香族アミン系化合物由来の構成単位(第2構成単位ともいう。)を含有するものとしても良い。第2構成単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。この場合の第2構成単位の含有量は、前記ポリオール由来の構成単位全体を100質量%とした場合に、1質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。前記ポリオール由来の構成単位が非芳香族アミン系化合物を前述した範囲で含有することにより芳香環による立体障害を抑えて気泡膜の強度を向上させることができる。その結果、気泡をより微細化し、かつ高ガスバリア性を付与することができるので、微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率をさらに低減することができると考えられる。
【0013】
前記ポリオール由来の構成単位が、前述した第1構成単位と、2以上4以下の官能基を有する芳香族ジカルボン酸であってジオールを付加された化合物由来の構成単位(第3構成単位ともいう。)と含有するものとしても良い。第3構成単位を構成する芳香族ジカルボン酸の具体例としては、無水フタル酸、テレフタル酸などをあげることができる。ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどを挙げることができる。この場合には、前記ポリオール由来の構成単位全体を100質量%とした場合に、第1構成単位を65質量%以上99質量%以下の範囲で含有することが好ましく、第3構成単位を1質量%以上10質量%以下の範囲で含有することが好ましい。前記ポリオール由来の構成単位が、第1構成単位と第3構成単位とを含有することによって、これら構成単位が有する芳香環同士がスタックし、気泡膜の強度をより向上させることができる。その結果、気泡をより微細化し、かつ高ガスバリア性を付与することができるので、微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率をさらに低減することができると考えられる。
なお、前述した第1構成単位、第2構成単位、第3構成単位という名称は、便宜上のものであり、例えば、第3構成単位を含有する場合に、前提条件として必ず第1構成単位や第2構成単位を含有しなければならない等といった特別な意味を有するものではない。
【0014】
前記イソシアネートとしては、硬質ポリウレタンフォームに従来使用されているものを広く使用することができるが、ポリメリックMDIを使用することが好ましい。
【0015】
本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは、前述した成分以外にさらに触媒や整泡剤(結合剤)などの添加剤を含有するものとしても良い。
【0016】
触媒としては、例えば、樹脂化触媒、泡化触媒及び三量化触媒などをあげることができる。これら触媒としては第3級アミンを含有するものとすれば、製造コストを抑えながらもできるだけ環境に配慮したポリウレタンフォームとすることができるため好ましい。
【0017】
整泡剤は硬質ポリウレタンフォームに従来使用されているものを広く使用することができるが、シリコーン系の整泡剤を使用することが特に好ましい。
【0018】
しかして、前記微粒子は前記硬質ポリウレタンフォームよりも熱伝導率の低いものである。微粒子の熱伝導率は、例えば、50mW/m・K以下であることが好ましく、30mW/m・K以下であることがより好ましく、20mW/m・K以下であることが特に好ましい。
【0019】
前記微粒子の具体例としては、中空又は多孔質構造のものを挙げることができる。素材としては、強度や耐熱性に優れた無機材料からなるものが好ましく、例えば、シリカやエアロゲル等からなるものを挙げることができる。
【0020】
前記微粒子は、表面処理剤によって処理されることにより表面修飾されて疎水性となっているものが好ましい。微粒子の表面処理に用いる表面処理剤は特に限定されないが、例えば、疎水性シランカップリング剤等を好適に用いることができる。
【0021】
微粒子の形状は、球状、回転楕円形状、その他の幾何学的形状、不規則形状などの何れであってもよいが、球状や回転楕円形状のものであることが好ましい。長短比(長軸長を短軸長で割った値)と凹凸係数(長軸及び短軸を含む平面における断面積をその外周長の二乗で割った値)との合計値を2で徐算した商である形状係数が120以下であることがより好ましい。
【0022】
従来は粒子の含有量を重量%を基準にして添加していたが、この基準だと粒子種類によっては微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの体積当たりに含有される微粒子の数が極端に多くなってしまったり少なくなってしまったりして、気泡サイズを小さくできない結果となる恐れがある。
そこで、本実施形態においては、微粒子の含有量を発泡硬化後の微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの体積に対する微粒子の体積割合で規定することとしている。これにより、微粒子の種類が変わった場合であっても気泡を微細化するために必要な数の微粒子を微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム中に存在させることができ、気泡の成長を確実に制御して、断熱効果を向上させることができることを見出した点も本発明の特徴の1つである。
【0023】
微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム全体の体積を100体積%とした場合の前記微粒子の含有量が0.05体積%以上0.5体積%以下であることが好ましく、0.05以上0.35体積%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
微粒子の含有量を0.05体積%以上とすることにより気泡を確実に微細化することができる。また、微粒子の含有量を0.35体積%以下とすることによりポリオール等を含有する発泡硬化前の微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの材料であるミクスチャの粘度が高くなり過ぎることを抑えてウレタンフォームの中に発生した大きな気泡が抜けずにボイドとして形成されてしまうことによる熱伝導率の上昇を抑制することができる。
【0025】
微粒子のかさ密度が600kg/m以下であることが好ましく、300kg/m以下であることがより好ましい。微粒子のかさ密度が600kg/m以下であれば、前記ミクスチャの粘度が高くなり過ぎず、前述したボイドの発生をより抑制することができるため好ましい。微粒子のかさ密度が小さくなればポリウレタンフォームの断熱性能が向上するので、微粒子のかさ密度は小さければ小さいほど良い。
なお、かさ密度は、微粒子粉体100gをメスシリンダーに静かに入れ、上面をならし、かさ体積V(単位:ml)を読み取ることにより求めたかさ密度(g/ml)から単位換算して求めることができる。
【0026】
微粒子の平均粒子径が0.03μm以上10μm以下であることが好ましい。微粒子の平均粒子径が0.03μm以上であれば微粒子の存在による気泡の成長抑制効果を十分に発揮することができるため好ましい。また、微粒子の平均粒子径が10μm以下であれば硬質ポリウレタンフォームに含有される微粒子の数を十分に確保して、気泡の成長抑制効果を十分に発揮することができるため好ましい。微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡での観察により、計測することができる。
【0027】
<本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの製造方法>
本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは、例えば、以下のような手順及び工程によって製造することができる。
まずポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含むポリオールミクスを調整し、このポリオールミクスと、微粒子とを常温大気開放化で混合し、その後20℃~25℃にした密閉空間内で発泡剤を添加し、混合することによってプレミクスを調整する。
【0028】
前記プレミクスにイソシアネートを添加して攪拌した後に、この混合液を適切な型に流し込んで自由発泡させることによって微粒子含有硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0029】
前記発泡剤としては硬質ポリウレタンフォームに従来使用されているものを広く使用することができるが、例えば、比較的沸点の低いシクロペンタン等の有機溶剤を発泡剤として使用することが特に好ましい。具体的には、沸点が55℃以下の発泡剤を使用することが好ましく、50℃以下の発泡剤を使用することが特に好ましい。
【0030】
前記プレミクスは発泡補助剤をさらに含んでいることが好ましく、前記プレミクス中の前記発泡補助剤の含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である。前記発泡補助剤としては、特に限定はされないが、高い反応効率と低いコストを両立できるという観点から水を用いることが好ましい。
【0031】
<本実施形態による効果>
本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームによれば、微粒子を発泡硬化後の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム100体積%中に0.05体積%以上0.35体積%以下の割合で含有するものとしているので、図1に示すように、発泡時における気泡の成長を抑制し、気泡の粒径(D50)を従来よりも3%~7%程度小さくすることができる。また、微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する微粒子を用いているために、図2に示すように、硬質ポリウレタンフォームの骨格部分を流れる熱の経路が気泡だけでなく微粒子をも避けるものとなり、微粒子含有硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率をさらに低減(例えば、20mW/m・K未満に)することができる。
【0032】
本実施形態に係る微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは断熱材として様々な用途に使用することができるが、熱伝導率が十分に低い上に製造コストも適切な範囲に抑えることができるので、例えば、冷蔵庫などの家電製品の断熱材等として好適に使用することが可能である。
【0033】
微粒子含有硬質ポリウレタンフォームは、従来よりも熱伝導率が低いので、従来よりも厚みを小さくしても従来と同等の断熱性能を発揮することが可能である。その結果、冷蔵庫の外箱と内箱との間の断熱材として使用した場合には、外箱と内箱との間の断熱層の厚みを小さくして内箱内(冷蔵室)の容積を従来よりも大きくすることができる。
【0034】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、種々の変形や実施形態の組合せを行ってもかまわない。
【実施例0035】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
まずは、以下の表1に記載された通りの混合液をそれぞれ作製した。液温25℃に調整した前記混合物をハンドミキサーで6000rpm5秒間攪拌した。その後27℃に温度調節した300mm×300mm×30mmの木箱内に流し込んで、自由発泡させることにより実施例及び比較例の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム又は微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームを作製した。発泡硬化後の各微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム又は微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームの各成分の体積割合、及びを表2に示す。
【0037】
【表1】
なお、表1中の数値の単位は全て質量%である。また表1中の各成分の具体的な内容は以下の通りである。
ポリオール:日清紡ケミカル株式会社製 HK-K200-18(R)
発泡剤:シクロペンタン 東京化成株式会社製 C0699 純度98%
イソシアネート:日清紡ケミカル株式会社製 HK-K200-20(T)
整泡剤:信越シリコーン株式会社製 KF-352A、密度1030kg/m
微粒子A:CABOT製 MT1100(かさ密度61kg/m、熱伝導率12mW/m・K)、平均粒子径(D50)8μm
微粒子B:3M製 K15(かさ密度150kg/m、熱伝導率55mW/m・K)、平均粒子径(D50)60μm
【0038】
次に、これら実施例及び比較例について以下に示す方法により性能を評価し、結果を表2に示した。また、各実施例及び比較例についての顕微鏡写真を図3に示す。
<熱伝導率の測定>
発泡硬化後の各実施例及び比較例の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム又は微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームについて、300mm×300mm×厚み30mmの大きさの硬質ポリウレタンフォームをNETZSCH 定常法熱伝導率測定装置(HFM436)にて平均温度24℃で熱伝導率を測定した。
【0039】
<気泡サイズの測定>
キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-5000を用いて、観察視野内の任意の気泡10個の気泡径を測定し、その平均値から気泡サイズ(D50)を算出した。
【0040】
<微粒子硬質ポリウレタンフォーム全体の密度の測定>
00mm×300mm×厚み30mmの大きさの硬質ポリウレタンフォームの重量を電子天秤にて計測し、硬質ポリウレタンフォーム全体の体積からフォーム全体の密度を算出した。
【0041】
【表2】
なお、表2中の単位の表示がない数値の単位は体積%である。
また、表2中の硬質ポリウレタンフォームの体積は、各硬質ポリウレタンフォームの密度と、表1中のポリオール、発泡剤及びイソシアネートの合計質量から算出した。他の成分の体積は、各成分の密度と質量から算出した。
さらに表2に記載の微粒子の含有量(体積割合基準)と熱伝導率の関係を示すグラフを図4に表した。
【0042】
これら表1、表2、図3及び図4の各実施例及び比較例の結果から、比較例1に示す硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する中空の微粒子を用い、さらにこの微粒子を発泡硬化後の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム100体積%中に0.05体積%以上0.35体積%以下の割合で含有するものとしている実施例1~4においては、比較例1よりも気泡サイズを小さくし、熱伝導率を低減させることができた。
一方で、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する中空の微粒子Bを用いた比較例3~6の結果から、これら微粒子を添加してもこれら微粒子の熱伝導率が高いために微粒子含有硬質ウレタンフォーム全体としての熱伝導率を低減することができていないことが分かる。
また、比較例2の結果から、微粒子の含有量を増やすと発泡硬化前のプレミクスの粘度が高くなり過ぎてしまうために、型に流し込む際にフォームの中に比較的大きな空隙(ボイド)が発生してしまい、熱伝導率が低減できなくなってしまう場合があるものと考えらえる。プレミクスの粘度は使用するポリオールミクスやイソシアネートの種類、微粒子の種類などによって変化するが、この実施例で用いているプレミクスの実際の粘度から1200mPa・s程度であれば熱伝導率への影響がほとんど無いことが分かっている。そこで、プレミクスの粘度は1500mPa・s以下であることが好ましいと考えられる。前述したプレミクスの好適粘度は東機産業製のTVC-10を用いて20℃条件下で測定した場合のものである。
【0043】
さらに、表1記載のものとは異なる組成の実施例及び比較例を表3及び表4に示す通りの組成で作製した。
まず、表3に記載された通りの混合液をそれぞれ作製した。液温20℃に調整した前記混合物をハンドミキサーで5000rpm5秒間攪拌した。その後42℃~44℃に温度調節した300mm×300mm×50mmの木箱内に流し込んで、自由発泡させることにより実施例及び比較例の微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム又は微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームを作製した。
表2と同じ評価方法で各微粒子含有硬質ポリウレタンフォーム又は微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームについて評価した結果を表4に示す。また、各実施例及び比較例についての顕微鏡写真を図5に示す。
【0044】
【表3】
なお、表3中の数値の単位は全て質量%である。また表3中の各成分の具体的な内容は以下の通りである。
ポリオールミクス:芳香族アミン系ポリオール96.5質量%、鎖状脂肪族ポリオール2.5質量%、芳香族ポリエステルポリオール1.0質量%、シリコーン系整泡剤2.5質量%、発泡補助剤(水)1.5質量%
発泡剤:シクロペンタン 丸善石油化学株式会社製 マルカゾールFH
イソシアネート:東ソー株式会社製 MR-200 Index110
微粒子A:CABOT製 MT1100(かさ密度61kg/m、熱伝導率12mW/m・K)、平均粒子径(D50)8μm
【0045】
【表4】
なお、表2中の単位の表示がない数値の単位は体積%である。表4に記載の微粒子の含有量(体積割合基準)と熱伝導率の関係を示すグラフを図6に表す。
【0046】
表3、表4、図5及び図6の結果から、異なる組成の硬質ポリウレタンフォーム及び異なる種類の微粒子を使用した場合においても同様に、微粒子を含有しない硬質ポリウレタンフォームである比較例7に比べて、実施例5~8においては気泡サイズを小さくし、熱伝導率を低減させることができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6