(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116026
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】回転角検出装置の異常を診断する方法及び回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01D5/244 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022008
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久礼
(72)【発明者】
【氏名】寺井 絵美子
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA03
2F077CC07
2F077FF34
2F077PP26
(57)【要約】
【課題】回転角検出装置の異常をより正確に判断できる、回転角検出装置の異常を診断する方法を提供する。
【解決手段】モータの回転状態に応じてアナログ信号であるsin信号、cos信号及び励磁電圧を出力する回転角センサと、回転角センサから出力されるsin信号、cos信号をモータの回転角情報を含むデジタル信号に変換するとともに、励磁電圧に基づき励磁信号を出力する角度検出器と、回転角センサが出力するsin信号及びcos信号をそれぞれsin及びcosデジタル信号に変換するAD変換手段とを備える回転角検出装置の異常を診断する方法が提供される。この方法では、角度検出器により変換されたデジタル信号に基づきモータの第1の回転角を検出し、AD変換手段により変換されたsin及びcosデジタル信号と励磁信号とに基づきモータの第2の回転角を検出し、第1の回転角と第2の回転角とを比較して、回転角検出装置の異常を診断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転状態を検出し、前記モータの回転状態に応じてアナログ信号であるsin信号、cos信号及び励磁電圧を出力する回転角センサと、前記回転角センサから出力されるsin信号、cos信号を前記モータの回転角情報を含むデジタル信号に変換するとともに、前記励磁電圧に基づき励磁信号を出力する角度検出器とを備える回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記回転角検出装置は、前記回転角センサが出力するsin信号及びcos信号をそれぞれsin及びcosデジタル信号に変換するAD変換手段を備え、
前記角度検出器により変換されたデジタル信号に基づき前記モータの第1の回転角を検出し、
前記AD変換手段により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と前記励磁信号とに基づき前記モータの第2の回転角を検出し、
前記第1の回転角と前記第2の回転角とを比較することで、前記回転角検出装置の異常を診断する、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号の周期に応じて動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第1の回転角を前記第1の基準タイマと同一の周期で動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第2の回転角の取得タイミングと、前記第1の回転角の取得タイミングの時間差を計測し、
前記第2の基準タイマの周期を前記時間差分だけ一回短くし、前記第1の回転角の取得タイミングと前記第2の回転角の取得タイミングとを同期させる、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号の周期に応じて動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第1の回転角を前記第1の基準タイマと同一の周期で動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第2の回転角の取得タイミングと、前記第1の回転角の取得タイミングの時間差を計測し、
前記第2の基準タイマの周期を前記時間差分だけ一回長くし、前記第1の回転角の取得タイミングと前記第2の回転角の取得タイミングとを同期させる、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号の周期に応じて動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第1の回転角を前記第1の基準タイマと同一の周期で動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第2の基準タイマを、前記第2の回転角の取得タイミングに合わせてクリアし、前記第1の回転角の取得タイミングと前記第2の回転角の取得タイミングとを同期させる、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号の周期に応じた周期で動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第1の回転角を前記第1の基準タイマと同一の周期で動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第2の基準タイマを、前記第2の回転角の取得タイミングに合わせて開始し、前記第1の回転角の取得タイミングと前記第2の回転角の取得タイミングとを同期させる、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号の周期に応じて動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第1の回転角を前記第1の基準タイマと同一の周期で動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、
前記第2の回転角の取得タイミングと、前記第1の回転角の取得タイミングの時間差を計測し、
前記第2の基準タイマを、前記時間差分だけ遅らせて開始し、前記第1の回転角の取得タイミングと前記第2の回転角の取得タイミングとを同期させる、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の回転角検出装置の異常を診断する方法であって、
前記第2の回転角を前記励磁信号のゼロクロスから前記励磁信号の周期の1/4または3/4遅れたタイミングで周期的に取得する、
回転角検出装置の異常を診断する方法。
【請求項8】
モータの回転状態を検出し、前記回転状態に応じてアナログ信号であるsin信号、cos信号及び励磁電圧を出力する回転角センサと、
前記回転角センサから出力されるsin信号、cos信号を前記モータの回転角情報を含むデジタル信号に変換するとともに、前記励磁電圧に基づき励磁信号を出力する角度検出器と、を備える回転角検出装置であって、
前記角度検出器により変換されたデジタル信号に基づき前記モータの第1の回転角を検出する第1回転状態検出手段と、
前記回転角センサが出力するsin信号及びcos信号をそれぞれsin及びcosデジタル信号に変換し、出力するAD変換手段と、
前記AD変換手段により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と前記励磁信号とに基づき前記モータの第2の回転角を検出する第2回転状態検出手段と、
前記第1の回転角と前記第2の回転角とを比較することで、前記回転角検出装置の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により異常が検出された場合に、モータ制御信号を遮断するモータ制御信号遮断部と、
を備える、
回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出装置の異常を診断する方法及び回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の回転角センサを設けた回転角検出装置が開示されている。この回転角検出装置では、各回転角センサが出力するアナログ信号を同期させてAD変換し、変換した各デジタル信号を比較することで、回転角検出装置内の異常を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回転角検出装置は、複数の回転角センサが出力するアナログ信号を同期させて複数のAD変換器が取得し、複数のAD変換器が変換したデジタル信号をコントローラが比較して回転角検出装置内の異常を判断している構成であるために、構成が複雑化してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、回転角検出装置の異常をより正確に判断できる、回転角検出装置の異常を診断する方法及び回転角検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、モータの回転状態を検出し、モータの回転状態に応じてアナログ信号であるsin信号、cos信号及び励磁電圧を出力する回転角センサと、回転角センサから出力されるsin信号、cos信号をモータの回転角情報を含むデジタル信号に変換するとともに、励磁電圧に基づき励磁信号を出力する角度検出器と、回転角センサが出力するsin信号及びcos信号をそれぞれsin及びcosデジタル信号に変換するAD変換手段とを備える回転角検出装置の異常を診断する方法が提供される。この回転角検出装置の異常を診断する方法は、角度検出器により変換されたデジタル信号に基づきモータの第1の回転角を検出し、AD変換手段により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と励磁信号とに基づきモータの第2の回転角を検出し、第1の回転角と第2の回転角とを比較することで、回転角検出装置の異常を診断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転角センサから出力されるアナログ信号を角度検出器とAD変換手段とにより、それぞれデジタル信号及び励起信号と、sin及びcosデジタル信号とに変換する。そして、角度検出器により変換されたデジタル信号に基づき検出されたモータの第1の回転角と、AD変換手段により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と角度検出器により変換された励磁信号とに基づき検出されたモータの第2の回転角とを比較して、回転角検出装置の異常を診断する。即ち、1つの回転角センサから出力されるアナログ信号を角度検出器とAD変換手段とにより各々変換して、それぞれモータの回転角を検出し、比較するために、簡単な構成で複数の回転角センサを用いずに回転角検出装置の異常を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、各実施形態に共通する回転角検出装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態の回転角検出装置における同期制御を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態の回転角検出装置における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第3実施形態の回転角検出装置における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第4実施形態の回転角検出装置における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、第5実施形態の回転角検出装置における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第6実施形態の回転角検出装置における、AD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の各実施形態による回転角検出装置の異常を診断する方法が採用される回転角検出装置100の概略構成図である。回転角検出装置100は、モータの回転状態を検出し、アナログ信号を出力するレゾルバ(回転角センサ)1と、レゾルバ(回転角センサ)1からのアナログ信号をデジタル信号に変換してモータの回転角を検出し、当該回転角に基づきモータを制御するコントローラ20とからなる装置である。
【0011】
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えており、中央演算装置が特定のプログラムを実行することにより、特定の制御を実現するための処理を実行する。
【0012】
図1に示すように、コントローラ20は、RD変換器(角度検出器)2及びAD変換器(AD変換手段)3と、クロック供給部4、第1回転角取得部(第1回転状態検出手段)5、AD変換値取得部(第2回転状態検出手段)6、第2回転角取得部(第2回転状態検出手段)7、角度取得同期部8、主制御部9、異常検出部(異常検出手段)10及びモータ制御信号遮断部11とを含む。
【0013】
なお、レゾルバ(回転角センサ)1、RD変換器(角度検出器)2及びAD変換器(AD変換手段)3は、ハードウェアとして構成される。一方、クロック供給部4、第1回転角取得部(第1回転状態検出手段)5、AD変換値取得部(第2回転状態検出手段)6、第2回転角取得部(第2回転状態検出手段)7、角度取得同期部8、主制御部9、異常検出部(異常検出手段)10及びモータ制御信号遮断部11は、中央演算装置がソフトウェアによりこれらの機能を実現する。また、コントローラ20のマイコンは、モータの回転角を検出(取得)するタイミングを規定するための複数のタイマ(第1の基準タイマ、第2の基準タイマ、共通タイマ)を備えている。なお、RD変換器2やAD変換器3をハードウェアで構成するとしたが、中央演算装置がソフトウェアによりこれらの機能を実現する構成としたり、中央演算装置がソフトウェアで実現する機能の一部をハードウェアで構成するよう変更することも可能である。
【0014】
レゾルバ(回転角センサ)1は、不図示のモータ近傍に配置され、当該モータの回転状態を検出する。また、レゾルバ1は、検出したモータの回転状態に応じたアナログ信号であるsin信号、cos信号をRD変換器(角度検出器)2及びAD変換器(AD変換手段)3に出力し、励磁電圧をRD変換器(角度検出器)2に出力する。
【0015】
RD変換器(角度検出器)2は、レゾルバ1から出力されるsin信号及びcos信号を、モータの回転角(回転角度)情報を含むデジタル信号にRD変換し、第1回転角取得部(第1回転状態検出手段)5に出力する。また、RD変換器2は、レゾルバ1から出力された励磁電圧に基づき、励磁信号を設定し、AD変換値取得部(第2回転状態検出手段)6に出力する。
【0016】
AD変換器(AD変換手段)3は、レゾルバ1から出力されるsin信号及びcos信号を、それぞれsinデジタル信号及びcosデジタル信号にAD変換する。AD変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号は、AD変換値取得部6に出力される。
【0017】
クロック供給部4は、RD変換器2に、RD変換器2が動作する基準クロックを供給する。RD変換器2は、クロック供給部4から供給された基準クロックに応じて、レゾルバ1からのアナログ信号(sin信号、cos信号、励磁電圧)を取得し、デジタル信号を出力する。
【0018】
第1回転角取得部(第1回転状態検出手段)5は、RD変換器(角度検出器)2により変換されたモータの回転角情報を含むデジタル信号に基づき、モータの回転角(第1の回転角、以下、Digitalθともいう)を検出(取得)する。なお、第1回転角取得部5は、後述の角度取得同期部8から入力される角度取得同期信号に応じたタイミングで、第1の回転角(Digitalθ)を取得する。取得された第1の回転角(Digitalθ)は、主制御部9及び異常検出部(異常検出手段)10に出力される。
【0019】
AD変換値取得部6は、AD変換器3によりAD変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号を、RD変換器2から出力される励磁信号のタイミングに応じて取得し、第2回転角取得部(第2回転状態検出手段)7に出力する。
【0020】
第2回転角取得部7は、AD変換値取得部6から出力されるsinデジタル信号及びcosデジタル信号に基づき、モータの回転角(第2の回転角、以下、Analogθともいう)を検出(取得)する。即ち、AD変換値取得部6と第2回転角取得部7とは、sinデジタル信号及びcosデジタル信号と励磁信号とに基づきモータの第2の回転角(Analogθ)を検出する回転状態検出手段(第2回転状態検出手段)を構成する。第2回転角取得部7において取得されたモータの第2の回転角(Analogθ)は、異常検出部(異常検出手段)10に出力される。
【0021】
角度取得同期部8は、第1回転角取得部5がモータの回転角(第1の回転角)を取得するタイミングと、第2回転角取得部7がモータの回転角(第2の回転角)を取得するタイミングとを同期するための角度取得同期信号を生成する。角度取得同期部8により生成された角度同期信号は、第1回転角取得部5に出力され、第1回転角取得部5は、角度取得同期信号に応じたタイミングで、第1の回転角(Digitalθ)を取得する。なお、第1の回転角と第2の回転角の取得タイミングの詳細は後述する。
【0022】
主制御部9は、第1回転角取得部5において取得された第1の回転角(Digitalθ)に基づきモータ制御信号を算出し、モータ制御信号遮断部11に出力する。
【0023】
異常検出部(異常検出手段)10は、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを比較し、回転角検出装置100内の異常を検出する。異常検出部10は、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値の差異に応じた診断結果信号を算出し、モータ制御信号遮断部11に出力する。例えば、異常検出部10は、DigitalθとAnalogθとの差が、誤差の範囲よりも大きい場合に、異常であると判断し、異常との診断結果信号を出力する。一方、DigitalθとAnalogθとの差が誤差の範囲内である場合、正常であると判断し、正常との診断結果信号を出力する。
【0024】
モータ制御信号遮断部11は、異常検出部10からの診断結果信号に基づき、主制御部9から出力されたモータ制御信号を通過させるか、遮断するかを判断する。即ち、異常検出部10において異常が検出された場合、モータ制御信号遮断部11はモータ制御信号を遮断する。一方、異常検出部10において異常が検出されていない(正常な)場合、モータ制御信号遮断部11は、モータ制御信号を通過させる。モータ制御信号遮断部11がモータ制御信号を通過させた場合、当該モータ制御信号に基づき、モータの動作が制御される。一方、異常が検出された場合には、モータ制御信号が遮断されるため、モータの誤作動が防止される。
【0025】
以上のとおり、本実施形態の回転角検出装置100においては、1つのレゾルバ(回転角センサ)1から出力されるアナログ信号をRD変換器(角度検出器)2とAD変換器(AD変換手段)3とにより各々RD変換及びAD変換して、それぞれ第1,第2のモータの回転角(Digitalθ,Analogθ)を検出する。そして、第1のモータ回転角と第2のモータ回転角を比較することで、回転角検出装置100の異常を診断する。このように、本実施形態の回転角検出装置100では、複数の回転角センサを用いずに回転角検出装置100の異常を診断することができる。
【0026】
以下、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングの詳細を説明する。
【0027】
図2は、RD変換されたデジタル信号とsin信号及びcos信号のAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。第1回転角取得部5がRD変換されたデジタル信号を取得するタイミングと、第2回転角取得部7がsin信号及びcos信号のAD変換値を取得するタイミングを同期することで、第1の回転角と第2の回転角の取得タイミングは同期される。以下、RD変換されたデジタル信号を取得するタイミングのことを第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング、sin信号及びcos信号のAD変換値の取得タイミングのことを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとも言う。
【0028】
回転角検出装置100には、第1の基準タイマ、第2の基準タイマ、及び共通タイマが備えられている。第1の基準タイマは、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを決定するタイマであり、第2の基準タイマは、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングを決定するためのタイマである。また、共通タイマは、第1の基準タイマと第2の基準タイマの動作タイミングの時間差を計測するためのタイマであり、例えば、第1及び第2の基準タイマの周期と同等か、それよりも周期が長いフリーランタイマである。
【0029】
第1の基準タイマは、RD変換器2から出力される励磁信号の周期に同期して動作するように設定される。AD変換値取得部6は、励磁信号の周期に応じた周期で動作する第1の基準タイマに従って、AD変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号を出力し、第2回転角取得部7は、第1の基準タイマに従って、第2の回転角(Analogθ)を周期的に取得する。
【0030】
第2の基準タイマは、第1の基準タイマと同一のクロックで動作するように設定される。クロック供給部4は、RD変換器2が、第2の基準タイマに従ってRD変換されたデジタル信号を出力するように、RD変換器2に基準クロックを供給する。これにより、第1回転角取得部5は、第2の基準タイマに従って、第1の回転角(Digitalθ)を周期的に取得する。なお、後述するように、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングは、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに同期するように補正されるが、当該補正の指令は、角度取得同期部8からの角度取得同期信号により第1回転角取得部5に出力され、第1回転角取得部5は、角度取得同期信号に応じたタイミングで第1の回転角(Digitalθ)を取得する。
【0031】
ところで、第1の基準タイマと第2の基準タイマの開始タイミングは、ハードウェアのバラつきやソフトウェアの処理負荷等により一意に決まるものではない。また、第1の基準タイマの開始タイミングは、RD変換器2の動作により開始タイミングが決まるため、第1の基準タイマの開始タイミングを任意に指定することはできない。このため、多くの場合、第1の基準タイマと第2の基準タイマの動作タイミングには時間差が生じている。
【0032】
そこで本実施形態では、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングの時間差Δtを計測し、第2の基準タイマの周期(クロック)を当該時間差分だけ一回短くすることで、第1の回転角の取得タイミングを第2の回転角の取得タイミングに同期させることとした。
【0033】
具体的には、第2回転角取得部7は、AD変換値(sinデジタル信号及びcosデジタル信号)の取得と同時に、共通タイマのカウント値を取得し、これを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taとする。また、第1回転角取得部5は、RD変換値(デジタル信号)の取得と同時に、共通タイマのカウント値を取得し、これを第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値tdとする。そして、角度取得同期部8は、第2の基準タイマが、一度だけ、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taと第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値tdとの差分Δtだけ第2の基準タイマの周期T2を短く補正した周期Tcorrで動作するように制御する。また同時に、角度取得同期部8は、第1回転角取得部5が、補正された第2の基準タイマの周期Tcorrに従ったタイミングで第1の回転角(Digitalθ)を取得するように、角度取得同期信号を出力する。これにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。このように、第2の基準タイマの周期を時間差Δt分だけ一回短くすることで、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングのずれが解消され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断することができる。
【0034】
図3は、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングとを同期させる制御(以下、同期制御ともいう)を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ20により実行される。
【0035】
ステップS11において、コントローラ20は、各タイマのクロックを設定する。第1の基準タイマは、RD変換器2から出力される励磁信号の周期に同期して動作するように設定する。例えば、第1の基準タイマは、励磁信号のゼロクロスと同期してゼロクリアされるように動作させる。第2の基準タイマは、第1の基準タイマと同一のクロックで動作するように設定される。共通タイマは、第1及び第2の基準タイマよりも周期が長く設定される。
【0036】
ステップS12において、コントローラ20は、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを検出する。前述のとおり、AD変換器3及びAD変換値取得部6は、第1の基準タイマに従って周期的にsin信号及びcos信号をAD変換し、AD変換値(sinデジタル信号及びcosデジタル信号)を取得する。また、第2回転角取得部7は、AD変換値に基づき、第2の回転角(Analogθ)を算出する。そして、コントローラ20(AD変換値取得部6)は、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、共通タイマのカウント値を取得し、これを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taとする。
【0037】
なお、第2の回転角(Analogθ)は、逆三角関数atanを用いた以下の式(1)により算出される。また、AD変換値は、第1の基準タイマの周期で取得すればよく、取得するタイミングは第1の基準タイマのどのタイミングで取得してもよい。
【数1】
【0038】
ステップS13において、コントローラ20は、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングを検出する。前述のとおり、RD変換器2は、sin信号及びcos信号をRD変換し、第1回転角取得部5は、RD変換されたデジタル信号に基づき、第1の回転角(Digitalθ)を算出する。ここで、第1の回転角(Digitalθ)は、例えばRD変換器2から出力される相対角を示すABパルスと基準角を示すZパルスとで構成されるABZパルスに基づいて算出されるABZθであるとする。この場合、第1回転角取得部5は、第2の基準タイマのゼロクリアタイミングと同期して、例えばDMA転送により、ABZパルスが格納されたレジスタからABZパルス値を取得し、ABZパルス値からABZθを算出する。また、第1回転角取得部5は、ABZパルス値の取得と同時に、例えばDMA転送により、共通タイマのカウント値を取得し、これを第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値tdとする。
【0039】
ステップS14において、コントローラ20(角度取得同期部8)は、共通タイマにより、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aと第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dとの差を求める。これにより、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングの時間差Δtを求めることができる。コントローラ20(角度取得同期部8)は、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dと、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aのどちらが大きいかを判断し、大きい方から小さい方を減算することで、正の値である時間差Δtを算出する。なお、
図2では、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dの方が、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aよりも大きい場合を示している。
【0040】
時間差Δtを算出すると、ステップS15において、コントローラ20(角度取得同期部8)は、補正時間t
corrを算出する。補正時間t
corrは、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aとの差分(時間差)Δtと第2の基準タイマの周期T
2との剰余演算(Mod)により算出される。具体的には、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dの方が、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aよりも大きい場合、補正時間t
corrは、以下の式(2)により算出される。
【数2】
【0041】
一方、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値t
aの方が、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値t
dよりも大きい場合、補正時間t
corrは、以下の式(3)により算出される。
【数3】
【0042】
補正時間t
corrを算出すると、ステップS16において、コントローラ20は、第2の基準タイマの周期T
2を補正し、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期させる。コントローラ20は、補正周期T
corrを算出し、第2の基準タイマを、第2の基準タイマの周期T
2を一度だけ補正時間t
corr分短くした補正周期T
corrで、動作させる。ここで、補正周期T
corrは、以下の式(4)により算出される。
【数4】
【0043】
第2の基準タイマが、一度だけ補正周期Tcorrで動作することにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。
【0044】
第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期すると、コントローラ20は、ステップS17において、第2の基準タイマを、補正周期Tcorrを設定する前の元の周期T2に戻す。第1の基準タイマと、第2の基準タイマとは、同一のクロックで動作しているため、第2の基準タイマの周期を元の周期T2に戻すことで、以降継続して、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに時間差が無い状態となる。従って、異常検出部10において、回転角検出装置100内の異常を検出する際、取得タイミングの時間差による角度差を補正することなく、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを直接比較することができる。従って、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)との差分の算出精度が向上し、回転角異常の誤診断、誤検出が防止され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断できる。
【0045】
なお、好ましくは、上記で説明した同期制御は、主制御部9や異常検出部10での演算が開始される前に実施しておく。これにより、第2の基準タイマの周期を短くすることで、主制御部9や異常検出部10での演算が周期内に終わらずに処理負荷が破綻することを防止できる。
【0046】
上記した第1実施形態の回転角検出装置100及び回転角検出装置100の異常を診断する方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法によれば、レゾルバ(回転角センサ)1から出力されるアナログ信号を、RD変換器(角度検出器)2により、モータの回転角情報を含むデジタル信号と励磁信号に変換し、AD変換器(AD変換手段)3により、sin及びcosデジタル信号に変換する。また、RD変換器(角度検出器)2により変換されたデジタル信号に基づきモータの第1の回転角を検出し、AD変換器(AD変換手段)3により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と励磁信号とに基づきモータの第2の回転角を検出する。そして、モータの第1の回転角と、モータの第2の回転角とを比較して回転角検出装置100の異常を診断する。即ち、1つのレゾルバ(回転角センサ)1から出力されるアナログ信号をRD変換器(角度検出器)2とAD変換器(AD変換手段)3とにより各々変換して、それぞれモータの回転角を検出し、比較するため、複数の回転角センサを用いずに回転角検出装置100の異常を診断することができる。
【0048】
本実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法によれば、第2の回転角(Analogθ)を励磁信号の周期に応じたクロックで動作する第1の基準タイマに従って周期的に取得し、第1の回転角(Digitalθ)を第1の基準タイマと同一のクロックで動作する第2の基準タイマに従って周期的に取得し、第2の回転角の取得タイミングと、第1の回転角の取得タイミングの時間差Δtを計測する。そして、第2の基準タイマのクロックを時間差Δt分だけ一回短くし、第1の回転角の取得タイミングと第2の回転角の取得タイミングとを同期させる。このように、第2の基準タイマのクロックを時間差Δt分だけ一回短くすることで、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングのずれが解消され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断することができる。
【0049】
本実施形態の回転角検出装置100は、RD変換器(角度検出器)2により変換されたデジタル信号に基づきモータの第1の回転角(Digitalθ)を検出する第1回転角取得部(第1回転状態検出手段)5を備える。また、AD変換器(AD変換手段)3により変換されたsinデジタル信号及びcosデジタル信号と励磁信号とに基づきモータの第2の回転角(Analogθ)を検出する第2回転角取得部(第2回転状態検出手段)7を備える。そして、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)とを比較することで、回転角検出装置100の異常を検出する異常検出部(異常検出手段)10と、異常検出部(異常検出手段)10により異常が検出された場合に、モータ制御信号を遮断するモータ制御信号遮断部11とを備える。これにより、複数の回転角センサを用いずに回転角検出装置100の異常を診断することができるとともに、異常が検出された場合、モータ制御信号が遮断される。従って、回転角検出装置100の異常をより正確に判断することができるとともに、モータの誤作動を防止できる。
【0050】
なお、本実施形態においては、第1の回転角(Digitalθ)がABZθである場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、第1の回転角(Digitalθ)は、RD変換器2からシリアル通信で出力される回転角情報を含む通信データに基づき取得されるSerialθであってもよい。この場合、RD変換器2でSerialθをラッチするために角度ラッチ信号が必要であれば、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングで、RD変換器2から、例えばDMA転送により角度ラッチ信号を出力し、それ以降に実施されるシリアル通信により予めラッチされたSerialθを取得する。また、シリアル通信にかかる時間が、主制御部9や異常検出部10における演算の開始タイミングの遅れをもたらし、処理負荷に影響を与えることで処理負荷の破綻を招く虞がある場合には、シリアル通信の受信結果が格納されたシリアル通信受信レジスタから、次回の演算タスクでSerialθを取得し、前回の演算タスクで取得した第2の回転角(Analogθ)と比較してもよい。即ち、取得したSerialθ(第1の回転角(Digitalθ))と、それより一つ前の演算タスクで(1周期前に)取得した第2の回転角(Analogθ)とを比較して異常を検出してもよい。この場合、比較する第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングの時間差分を、例えばモータ回転角の回転速度等から補正した演算を実行してから比較してもよい。
【0051】
[第2実施形態]
図4を参照して、第2実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
図4は、第2実施形態の回転角検出装置100における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。本実施形態においては、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期する方法が第1実施形態と異なる。
【0053】
図4に示すように、本実施形態では、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングの時間差Δtを計測し、第2の基準タイマの周期(クロック)を当該時間差Δt分だけ一回長くすることで、第1の回転角の取得タイミングを第2の回転角の取得タイミングに同期させる。
【0054】
具体的には、コントローラ20は、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングの時間差Δtから、補正時間t
corrを算出する。そして、第2の基準タイマを、一度だけ、第2の基準タイマの周期T
2から補正時間t
corrを差し引いた分だけ第2の基準タイマの周期T
2を長くした補正周期T
corrで動作させる。これにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。ここで、補正周期T
corrは、以下の式(5)により算出される。式(5)に示すように、補正周期T
corrは、第2の基準タイマの周期T
2の2倍に対して補正時間t
corr分だけ短くすることで算出することができる。
【数5】
【0055】
第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期すると、コントローラ20は、第2の基準タイマを、補正周期Tcorrを設定する前の元の周期T2に戻す。これにより、以降継続して、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに時間差が無い状態となる。従って、取得タイミングの時間差による角度差を補正することなく、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを直接比較して、回転角検出装置100の異常を診断することができる。よって、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)との差分の算出精度が向上し、回転角異常の誤診断、誤検出が防止され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断できる。
【0056】
なお、好ましくは、上記で説明した第2の実施形態における同期制御は、主制御部9や異常検出部10での演算が開始される前に実施しておく。これにより、第2の基準タイマの周期T2を長くすることで、主制御部9や異常検出部10での演算の周期の一定性が崩れ、タイマ周期が一定であることを前提とした演算の前提が崩れて、補正演算等の追加を考慮しなければならなくなることを防止できる。
【0057】
[第3実施形態]
図5を参照して、第3実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図5は、第3実施形態の回転角検出装置100における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。本実施形態においては、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期する方法が他の実施形態と異なる。
【0059】
図5に示すように、本実施形態では、第2の基準タイマを、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに合わせてクリアすることで、第1の回転角の取得タイミングを第2の回転角の取得タイミングに同期させる。
【0060】
具体的には、コントローラ20(AD変換値取得部6)は、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、共通タイマのカウント値を取得し、これを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taとする。また、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、第2の基準タイマをゼロクリアさせる。これにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。
【0061】
第1の基準タイマと、第2の基準タイマとは、同一のクロックで動作しているため、第2の基準タイマのゼロクリアによって、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期された以降は、継続して、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに時間差が無い状態となる。従って、取得タイミングの時間差による角度差を補正することなく、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを直接比較して、回転角検出装置100の異常を診断することができる。よって、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)との差分の算出精度が向上し、回転角異常の誤診断、誤検出が防止され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断できる。
【0062】
[第4実施形態]
図6を参照して、第4実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図6は、第4実施形態の回転角検出装置100における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。本実施形態においては、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期する方法が他の実施形態と異なる。
【0064】
図6に示すように、本実施形態では、第2の基準タイマを、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに合わせて開始することで、第1の回転角の取得タイミングを第2の回転角の取得タイミングに同期させる。
【0065】
具体的には、コントローラ20(AD変換値取得部6)は、第2の基準タイマの動作を開始させていない状態において、AD変換値を取得し、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、共通タイマのカウント値を取得し、これを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taとする。また、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、第2の基準タイマの動作を開始させる。これにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。
【0066】
第1の基準タイマと、第2の基準タイマとは、同一のクロックで動作しているため、第2の基準タイマの動作を、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに合わせて開始させて、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期された以降は、継続して、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに時間差が無い状態となる。従って、取得タイミングの時間差による角度差を補正することなく、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを直接比較して、回転角検出装置100の異常を診断することができる。よって、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)との差分の算出精度が向上し、回転角異常の誤診断、誤検出が防止され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断できる。
【0067】
[第5実施形態]
図7を参照して、第5実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図7は、第5実施形態の回転角検出装置100における、RD変換されたデジタル信号とAD変換値の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。本実施形態においては、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期する方法が他の実施形態と異なる。
【0069】
図7に示すように、本実施形態では、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングと、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングの時間差Δtを計測し、第2の基準タイマを当該時間差Δt分だけ遅らせて開始することで、第1の回転角の取得タイミングを第2の回転角の取得タイミングに同期させる。
【0070】
具体的には、コントローラ20(AD変換値取得部6)は、AD変換値の取得と同時に、例えばDMA転送により、共通タイマのカウント値を取得し、これを第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taとする。また、RD変換値(デジタル信号)の取得と同時に、共通タイマのカウント値を取得し、これを第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値tdとする。但し、このとき、第2の基準タイマは開始させない。次に、コントローラ20は、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミング値taと第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミング値tdとの差分Δtを算出する。また、第1実施形態と同様に、コントローラ20は、補正時間tcorrを算出するとともに、補正時間tcorrに基づき、補正周期Tcorrを算出する。そして、コントローラ20は、補正周期Tcorrを演算したタイミング(td)から、補正周期Tcorr(タイマウェイト時間)だけ経過した後に、第2の基準タイマの動作を開始させる。これにより、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングとの時間差が無くなり、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期される。
【0071】
第1の基準タイマと、第2の基準タイマとは、同一のクロックで動作しているため、第2の基準タイマの動作の開始を遅らせることにより第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが同期された以降は、継続して、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングに時間差が無い状態となる。従って、取得タイミングの時間差による角度差を補正することなく、第1の回転角(Digitalθ)の値と、第2の回転角(Analogθ)の値とを直接比較して、回転角検出装置100の異常を診断することができる。よって、第1の回転角(Digitalθ)と第2の回転角(Analogθ)との差分の算出精度が向上し、回転角異常の誤診断、誤検出が防止され、回転角検出装置100の異常をより正確に判断できる。
【0072】
なお、例えば、補正周期Tcorrが当該処理を実行するのに必要な時間以下の周期の場合、補正周期Tcorrの時間内に第2の基準タイマを動作させる処理が終わらない虞がある。従って、このような場合、補正周期Tcorrに例えば第2の基準タイマの周期T2分だけ加算した時間だけ経過した後に、第2の基準タイマの動作を開始させてもよい。
【0073】
[第6実施形態]
図8を参照して、第6実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図8は、第6実施形態の回転角検出装置100における、AD変換値(第2の回転角)の取得タイミングを説明するタイミングチャートである。本実施形態においては、第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングが他の実施形態と異なる。
【0075】
図8に示すように、本実施形態では、AD変換値(第2の回転角(Analogθ))を励磁信号のゼロクロスのタイミングt
zeroから1/4または3/4周期遅れたタイミングで周期的に取得する(
図8では、1/4周期遅れたタイミングで周期的に取得する場合を示しているが、3/4遅れたタイミングで周期的に取得してもよい)。これにより、sin及びcosデジタル信号を、正弦波状に変化する信号である励磁信号の振幅が最も大きいピークにおいて取得することができることとなり、ノイズ耐性としてS/N比を大きくとることができる。即ち、正弦波状に変化する信号である励磁信号の振幅が大きい箇所でAD変換値を取得する場合、仮に取得タイミングが少しずれても、励磁信号の振幅が小さい箇所でAD変換値を取得する場合に比べ、誤差は小さい。従って、精度の高い第2の回転角(Analogθ)を取得することができる。よって、回転角検出装置100の異常診断の精度がより向上する。
【0076】
なお、本実施形態では、励磁信号のゼロクロスから1/4または3/4周期遅れたタイミングでAD変換値を取得するが、必ずしもこれに限られず、例えば、ハードウェアの遅れやノイズの影響等を考慮して、AD変換値の取得タイミングを適宜ずらしてもよい。
【0077】
また、いずれの実施形態においても、共通タイマ、第1の基準タイマ及び第2の基準タイマという3つのタイマを用いているが、必ずしもこれに限られない。例えば、DMA転送やAD変換のタイミング(トリガ)等を上記3つのタイマだけでは実現できない場合、これらのタイマと同期したさらに別のタイマを用いる等、さらに多くのタイマを用いてもよい。
【0078】
また、各実施形態で説明した制御は、ひとつのCPUで実現してよく、また複数のCPUで実現してもよい。
【0079】
また、第1~第5実施形態で説明した同期制御は、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングを同期させる方法を例示したものであり、同期させる方法はこれらに限られるものではない。即ち、第1の回転角(Digitalθ)の取得タイミングと第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングは、既知の如何なる方法を用いて同期させてもよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0081】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。例えば、第6実施形態で説明した第2の回転角(Analogθ)の取得タイミングについては、第1~第5実施形態の回転角検出装置100の異常を診断する方法においても適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0082】
1、レゾルバ(回転角センサ),2、RD変換器(角度検出器),3、AD変換器(AD変換手段),4、クロック供給部,5、第1回転角取得部(第1回転状態検出手段),6、AD変換値取得部(第2回転状態検出手段),7、第2回転角取得部(第2回転状態検出手段),8、角度取得同期部,9、主制御部,10、異常検出部(異常検出手段),11、モータ制御信号遮断部,20、コントローラ,100、回転角検出装置