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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116027
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】冷水製造装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B1/00 361D
F25B1/00 371J
F25B1/00 371B
F25B1/00 371F
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022011
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】堀川 伸二
(72)【発明者】
【氏名】林 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 憲
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱交換器の管路を複雑にすることなく水の凍結を防止することの可能な冷水製造装置を提供する。
【解決手段】圧縮機20は、非共沸混合冷媒を吸引して圧縮するとともに圧縮能力を変更可能に構成され、凝縮器21は、非共沸混合冷媒を凝縮液化するよう構成され、膨張弁40は、非共沸混合冷媒を減圧するよう構成され、熱交換器3は、非共沸混合冷媒を水との熱交換により蒸発させるとともに当該熱交換により水を冷却するよう構成され、制御手段10は、温度グライドに起因した熱交換器3の入口における冷媒の温度低下を抑制する温度グライド抑制制御が実行され、圧縮機20の圧縮能力を制御する冷水製造装置1が提供され、熱交換器3の入口側における非共沸混合冷媒の圧力又は温度と、熱交換器3の出口側における非共沸混合冷媒の圧力との少なくとも一方に基づいて制御し、予め定めた圧縮能力以下にならないよう制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を冷却して冷水を製造する冷水製造装置であって、
循環ラインと、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、熱交換器と、制御手段とを備え、
前記循環ラインは、前記圧縮機、前記凝縮器、前記膨張弁及び前記熱交換器に非共沸混合冷媒を循環させるよう構成され、
前記圧縮機は、非共沸混合冷媒を吸引して圧縮するとともに圧縮能力を変更可能に構成され、
前記凝縮器は、非共沸混合冷媒を凝縮液化するよう構成され、
前記膨張弁は、非共沸混合冷媒を減圧するよう構成され、
前記熱交換器は、非共沸混合冷媒を水との熱交換により蒸発させるとともに当該熱交換により水を冷却するよう構成され、
前記制御手段は、温度グライドに起因した前記熱交換器の入口における冷媒の温度低下を抑制する温度グライド抑制制御を実行するよう構成され、
前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、下記(1)又は(2)のように制御する、冷水製造装置。
(1)前記熱交換器の入口側における非共沸混合冷媒の圧力又は温度と、前記熱交換器の出口側における非共沸混合冷媒の圧力との少なくとも一方に基づいて制御する
(2)予め定めた圧縮能力以下にならないよう制御する
【請求項2】
請求項1に記載の冷水製造装置であって、
前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、前記(1)のように制御する、冷水製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷水製造装置であって、
入口側冷媒状態検知手段と、出口側冷媒状態検知手段とをさらに備え、
前記入口側冷媒状態検知手段は、前記熱交換器の入口側における非共沸混合冷媒の圧力又は温度を入口側冷媒状態として検知するよう構成され、
前記出口側冷媒状態検知手段は、前記熱交換器の出口側における非共沸混合冷媒の圧力を出口側冷媒状態として検知するよう構成され、
前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、前記入口側冷媒状態と前記出口側冷媒状態とに基づいて制御する、冷水製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷水製造装置であって、
前記制御手段は、水の冷却状況に応じて前記圧縮機の前記圧縮能力を下げるよう制御するとともに、前記入口側冷媒状態と前記出口側冷媒状態とに基づいて、前記冷却状況に関わらず前記圧縮能力を上げるか又は前記圧縮能力を下げないよう制御する、冷水製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷水製造装置であって、
前記熱交換器における熱交換後の水の温度である冷水出口温度を検知する冷水温度センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記冷水出口温度の低下に応じて前記圧縮機の前記圧縮能力を下げるよう制御する、冷水製造装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の冷水製造装置であって、
前記圧縮機は、周波数制御により前記圧縮能力を変更可能とされる、冷水製造装置。
【請求項7】
請求項3~請求項5のいずれかに記載の冷水製造装置であって、
前記入口側冷媒状態検知手段は、前記循環ラインにおける前記熱交換器の入口側の位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の温度である入口冷媒蒸発温度を検知する入口側冷媒温度センサ、又は前記位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の圧力である入口冷媒蒸発圧力を検知する入口側冷媒圧力センサであり、
前記出口側冷媒状態検知手段は、前記循環ラインにおける前記熱交換器の出口側の位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の圧力である出口冷媒蒸発圧力を検知する出口側冷媒圧力センサである、冷水製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の冷水製造装置であって、
前記制御手段は、前記入口側冷媒状態検知手段が検知した前記入口冷媒蒸発温度又は前記入口側冷媒状態検知手段が検知した前記入口冷媒蒸発圧力から換算した前記入口冷媒蒸発温度と、前記出口冷媒蒸発圧力から換算した出口冷媒蒸発温度とに基づいて、前記圧縮機の前記圧縮能力を制御する、冷水製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の冷水製造装置であって、
前記制御手段は、前記出口冷媒蒸発温度に対する前記入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度以下となるよう前記圧縮機の前記圧縮能力を制御する、冷水製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の冷水製造装置であって、
前記所定温度は0℃である、冷水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を冷却して冷水を製造する冷水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器(熱交換器)とを備え、冷凍サイクルを利用して水を冷却する冷水製造装置がある。例えば、特許文献1には、冷媒として非共沸混合冷媒(以下、単に混合冷媒とも呼ぶ)を用いた冷水製造装置(冷凍サイクル装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-216778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷媒として非共沸混合冷媒を用いる場合、飽和域において温度グライド(温度勾配)が生じるため、運転条件によっては熱交換器の入口で冷媒の温度が低下してしまう。この点、特許文献1に開示される冷水製造装置では、熱交換器を直列に分割して流入側の熱交換器の入口と出口の冷媒を熱交換する冷媒-冷媒熱交換器を付加することで熱交換器入口における冷媒の温度を昇温させ、熱交換器入口での水の凍結を防止するようになっている。
【0005】
しかしながら、このような構成では、冷媒-冷媒熱交換器を新たに付加し、冷媒管路と水管路をそれぞれ接続する必要があり、構成が複雑となってしまっていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換器の管路を複雑にすることなく水の凍結を防止することの可能な冷水製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]水を冷却して冷水を製造する冷水製造装置であって、循環ラインと、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、熱交換器と、制御手段とを備え、前記循環ラインは、前記圧縮機、前記凝縮器、前記膨張弁及び前記熱交換器に非共沸混合冷媒を循環させるよう構成され、前記圧縮機は、非共沸混合冷媒を吸引して圧縮するとともに圧縮能力を変更可能に構成され、前記凝縮器は、非共沸混合冷媒を凝縮液化するよう構成され、前記膨張弁は、非共沸混合冷媒を減圧するよう構成され、前記熱交換器は、非共沸混合冷媒を水との熱交換により蒸発させるとともに当該熱交換により水を冷却するよう構成され、前記制御手段は、温度グライドに起因した前記熱交換器の入口における冷媒の温度低下を抑制する温度グライド抑制制御を実行するよう構成され、前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、下記(1)又は(2)のように制御する、冷水製造装置。
(1)前記熱交換器の入口側における非共沸混合冷媒の圧力又は温度と、前記熱交換器の出口側における非共沸混合冷媒の圧力との少なくとも一方に基づいて制御する
(2)予め定めた圧縮能力以下にならないよう制御する
[2][1]に記載の冷水製造装置であって、前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、前記(1)のように制御する
[3][2]に記載の冷水製造装置であって、入口側冷媒状態検知手段と、出口側冷媒状態検知手段とをさらに備え、前記入口側冷媒状態検知手段は、前記熱交換器の入口側における非共沸混合冷媒の圧力又は温度を入口側冷媒状態として検知するよう構成され、前記出口側冷媒状態検知手段は、前記熱交換器の出口側における非共沸混合冷媒の圧力を出口側冷媒状態として検知するよう構成され、前記制御手段は、前記温度グライド抑制制御において、前記圧縮機の前記圧縮能力を、前記入口側冷媒状態と前記出口側冷媒状態とに基づいて制御する、冷水製造装置。
[4][3]に記載の冷水製造装置であって、前記制御手段は、水の冷却状況に応じて前記圧縮機の前記圧縮能力を下げるよう制御するとともに、前記入口側冷媒状態と前記出口側冷媒状態とに基づいて、前記冷却状況に関わらず前記圧縮能力を上げるか又は前記圧縮能力を下げないよう制御する、冷水製造装置。
[5][4]に記載の冷水製造装置であって、前記熱交換器における熱交換後の水の温度である冷水出口温度を検知する冷水温度センサをさらに備え、前記制御手段は、前記冷水出口温度の低下に応じて前記圧縮機の前記圧縮能力を下げるよう制御する、冷水製造装置。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の冷水製造装置であって、前記圧縮機は、周波数制御により前記圧縮能力を変更可能とされる、冷水製造装置。
[7][3]~[5]のいずれかに記載の冷水製造装置であって、前記入口側冷媒状態検知手段は、前記循環ラインにおける前記熱交換器の入口側の位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の温度である入口冷媒蒸発温度を検知する入口側冷媒温度センサ、又は前記位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の圧力である入口冷媒蒸発圧力を検知する入口側冷媒圧力センサであり、前記出口側冷媒状態検知手段は、前記循環ラインにおける前記熱交換器の出口側の位置に設けられるとともに当該位置の冷媒の圧力である出口冷媒蒸発圧力を検知する出口側冷媒圧力センサである、冷水製造装置。
[8][7]に記載の冷水製造装置であって、前記制御手段は、前記入口側冷媒状態検知手段が検知した前記入口冷媒蒸発温度又は前記入口側冷媒状態検知手段が検知した前記入口冷媒蒸発圧力から換算した前記入口冷媒蒸発温度と、前記出口冷媒蒸発圧力から換算した出口冷媒蒸発温度とに基づいて、前記圧縮機の前記圧縮能力を制御する、冷水製造装置。
[9][8]に記載の冷水製造装置であって、前記制御手段は、前記出口冷媒蒸発温度に対する前記入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度以下となるよう前記圧縮機の前記圧縮能力を制御する、冷水製造装置。
[10][9]に記載の冷水製造装置であって、前記所定温度は0℃である、冷水製造装置。
【0008】
本発明によれば、温度グライド抑制制御において圧縮機の圧縮能力を制御することで、温度グライドを抑制し、熱交換器の管路を複雑にすることなく水の凍結を防止することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る冷水製造装置1を示す概略図である。
図2】非共沸混合冷媒を使用する冷水製造装置1のモリエル線図(p-h線図)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
1.冷水製造装置1の構成
まず、本発明の一実施形態に係る冷水製造装置1の構成について説明する。本実施形態の冷水製造装置1は、水を冷却し、冷水を製造するために用いられる。製造された冷水は、例えば、食品等の被処理物を冷却するために用いられる。
【0012】
本実施形態の冷水製造装置1は、図1に示すように、冷凍機2と、蒸発器としての熱交換器3とを備える。また、冷水製造装置1は、冷凍機2と熱交換器3とを接続して冷媒を流通させるラインとして、冷媒循環ライン4を備える。冷媒循環ライン4には、冷凍機2の下流側の位置に、膨張弁40が設置される。加えて、冷水製造装置1は、各要素の動作を制御する制御手段10を備える。本実施形態の冷水製造装置1では、熱交換器3に接続された冷水ライン100を流通する水が冷媒と熱交換することにより、冷水が製造される。
【0013】
ここで、本実施形態の冷水製造装置1は、冷媒として、沸点の異なる2種類以上の冷媒を混合した非共沸混合冷媒を用いるものである。非共沸混合冷媒は、適切に冷媒を組み合わせることで、地球温暖化係数(GWP:GlobalWarming Potential)を小さくしつつ燃焼性も低下させることができる。しかしながら、非共沸混合冷媒は、液相と気相とで組成が異なるため、蒸発(又は凝縮)の開始温度に対して終了温度が高くなる温度グライド(温度勾配)が生じるという特徴も備えている。
【0014】
なお、本実施形態の冷水製造装置1は、冷水ライン100の熱交換器3よりも下流側、つまり出口側の位置に、冷水温度センサ5も備えている。以下、各構成を具体的に説明する。
【0015】
冷凍機2は、圧縮機20と、凝縮器21とを備え、冷媒を冷却するものである。冷凍機2は、冷媒循環ライン4によって熱交換器3と接続されている。
【0016】
圧縮機20は、低温低圧の冷媒ガスを断熱圧縮して高温高圧のガスにする。圧縮機20において高温高圧のガス状態となった冷媒は、好ましくは油分離器(図示せず)を介して凝縮器21へ送られる。圧縮機20には、例えばスクロール圧縮機が用いられる。なお、本実施形態の圧縮機20は、多段階に運転周波数を変動させて圧縮能力を調整する周波数制御を行うことができるものである。
【0017】
凝縮器21は、圧縮機20からの高温高圧のガスを凝縮液化して、低温高圧の冷媒液の状態にする。本実施形態の凝縮器21は、ファン21aを備える空冷式の熱交換器である。ただし、水冷式の凝縮器21を用いることも可能である。凝縮器21で低温高圧の冷媒液の状態となった冷媒は、冷媒循環ライン4を通って膨張弁40へ送られる。
【0018】
膨張弁40は、凝縮器21で低温高圧の冷媒液の状態となった冷媒を減圧して、低温低圧の冷媒液の状態にする。膨張弁40は、その開度を制御可能な弁であり、開度は制御手段10によって制御される。制御手段10によって膨張弁40の開度を調整することにより、減圧の度合いを調整することができる。膨張弁40で低温低圧の冷媒液の状態となった冷媒は、熱交換器3へ送られる。なお、膨張弁40は、電子膨張弁であっても機械式膨張弁であっても良い。
【0019】
冷媒循環ライン4は、冷媒を圧縮機20、凝縮器21、膨張弁40及び熱交換器3(蒸発器)の順に循環させるよう接続されており、冷媒が冷媒循環ライン4を循環することで、冷媒の圧縮、凝縮、膨張及び蒸発の冷凍サイクルが実行されるようになっている。なお、本実施形態において、凝縮器21の下流側(出口側)であって膨張弁40の上流側の位置には、循環弁41も設けられている。循環弁41には、電磁弁を用いることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態の冷媒循環ライン4には、熱交換器3の上流側(入口側)であって膨張弁40の下流側の位置に、入口側冷媒状態検知手段としての入口側冷媒温度センサ6が設置されている。入口側冷媒温度センサ6は、熱交換器3の入口側の位置の冷媒の温度(以下、入口冷媒蒸発温度と呼ぶ)を検知するよう構成される。
【0021】
加えて、冷媒循環ライン4には、熱交換器3の下流側(出口側)であって圧縮機20の上流側(入口側)の位置に、出口側冷媒状態検知手段としての出口側冷媒圧力センサ7が設置されている。出口側冷媒圧力センサ7は、熱交換器3の出口側の位置の冷媒の圧力、すなわち、熱交換器3を通過した後、圧縮機20に吸入される冷媒の圧力(以下、出口冷媒蒸発圧力と呼ぶ)を検知するよう構成される。なお、出口側冷媒圧力センサ7は、熱交換器3の出口から圧縮機20の入口に至る冷媒循環ライン4の配管上であれば、任意の箇所に設置することができる。
【0022】
熱交換器3は、冷凍サイクルにおける蒸発器として機能する。熱交換器3は、冷媒循環ライン4と接続される冷媒流路と冷水ライン100と接続される水流路とを備え、冷媒と水とを混合することなく、これらの間で間接的に熱交換させるものである。熱交換器3は、膨張弁40を通過して低温低圧となった冷媒循環ライン4の冷媒液が圧力一定のまま冷水ライン100の水から吸熱して蒸発することにより、水から熱を奪って水を冷却する。熱交換器3には、例えば、二重管熱交換器が用いられる。なお、膨張弁40の開度調整により、冷媒は熱交換器3において完全に蒸発し、蒸発した冷媒は、冷媒循環ライン4を通って低温低圧のガスの状態で圧縮機20へ送られるようになっている。
【0023】
なお、冷水ライン100には、熱交換器3の上流側(入口側)の位置に冷水ポンプ101が配置され、熱交換器3の下流側(出口側)の位置に、冷水温度センサ5が設けられている。冷水ポンプ101の作動により、冷水ライン100を水が流通する。冷水ライン100は、例えば、冷水タンク(図示せず)に接続され、熱交換器3と冷水タンクとで水を循環させることで、冷水タンク内の水を冷却することが可能である。ただし、製造された冷水を熱負荷との熱交換(例えば食材の冷却)に使用し、使い捨てる(流水仕様)ようにしてもよい。
【0024】
また、冷水温度センサ5は、熱交換器3における熱交換後の水の温度(冷水出口温度)を検知するよう構成される。本実施形態に係る冷水製造装置1では、冷水温度センサ5により水の冷却状況を取得することができる。
【0025】
制御手段10は、各種センサの検出信号や経過時間などに基づき、上記各構成を制御する。制御手段10は、具体的には、冷凍機2(圧縮機20及び凝縮器21)と、膨張弁40と、循環弁41とを制御する。また、制御手段10には、冷水温度センサ5、入口側冷媒温度センサ6及び出口側冷媒圧力センサ7などが接続されている。制御手段10は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、冷媒を循環させて水を冷却する冷却動作のための制御を行う。
【0026】
なお、上記構成の制御手段10は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段10の上記各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段10の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0027】
2.冷水製造装置1の冷却動作
次に、本実施形態の冷水製造装置1の冷却動作について説明する。冷水製造装置1は、制御手段10による冷凍機2及び膨張弁40等の制御により冷媒循環ライン4に冷媒を循環させ、冷媒の圧縮、凝縮、膨張及び蒸発の冷凍サイクルを実行する。そして、熱交換器3において冷媒と冷水ライン100の水との熱交換を行うことで、水を冷却する。具体的には、本実施形態の冷水製造装置1は、冷凍サイクルの実行の際、制御手段10の制御により、蒸発温度一定制御と、冷凍機周波数制御と、温度グライド抑制制御とを実行する。以下、各制御についてより具体的に説明する。なお、これらの制御は、それぞれ冷水製造装置1の冷却運転中に亘って並列的に実行される。
【0028】
<蒸発温度一定制御>
蒸発温度一定制御は、熱交換後の冷媒の圧力から算出される冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度となるよう膨張弁40をフィードバック制御(PID制御)するものである。具体的には、制御手段10は、まず、出口側冷媒圧力センサ7が検知した出口冷媒蒸発圧力に基づいて、当該圧力に対応する飽和温度、つまり出口冷媒蒸発温度を算出(換算)する。出口冷媒蒸発温度の算出は、例えば、出口冷媒蒸発圧力と出口冷媒蒸発温度との対照テーブルを予め設定し、対照テーブルに基づいて行うことができる。また、入力される出口冷媒蒸発圧力に対し出口冷媒蒸発温度を出力する関数を予め設定し、検知された出口冷媒蒸発圧力を当該関数に入力して出口冷媒蒸発温度を算出するようにしてもよい。
【0029】
そして、制御手段10は、上記算出された出口冷媒蒸発温度が目標蒸発温度に一致するよう、膨張弁40の開度を制御する。なお、目標蒸発温度は、冷凍機2の冷却能力が実質的に最大になるように設定することが好ましい。
【0030】
<冷凍機周波数制御>
冷凍機周波数制御は、水の冷却状況、すなわち冷水温度センサ5が検知する熱交換後の水の温度(以下、冷水出口温度と呼ぶ)に応じて冷凍機2(圧縮機20)の周波数を変動させる制御である。具体的には、冷凍機周波数制御において、制御手段10は、冷水出口温度が第1閾値以上である場合、さらなる冷却が必要であると判断し、圧縮機20の周波数を1段階増加させる。また、制御手段10は、冷水出口温度が第2閾値以下である場合、冷却力を緩めることが可能と判断して圧縮機20の周波数を1段階低下させる。ここで、第1閾値は冷水の目標温度より高い温度とし、第2閾値は冷水の目標温度より低い温度とすることが好ましい。冷凍機周波数制御により、冷水出口温度に応じて冷凍機2(圧縮機20)を効率的に運転し、消費電力を低減することが可能となっている。
【0031】
<温度グライド抑制制御>
ところで、本実施形態の冷水製造装置1は、冷媒として非共沸混合冷媒を用いているため、熱交換器3において熱交換器3の入口における冷媒の温度低下が生じ得る。具体的には、熱交換器3における熱交換器3の入口における冷媒の温度低下は、冷媒が熱交換器3を通過するときの圧力損失による影響(入口冷媒蒸発温度に対する出口冷媒蒸発温度の低下)に対して、温度グライドによる影響(入口冷媒蒸発温度に対する出口冷媒蒸発温度の上昇)が上回ったときに生じる。
【0032】
この点、冷媒が熱交換器3を通過するときの圧力損失は、圧縮機20の運転周波数によって変動する。具体的には、圧縮機20の運転周波数を高くすると、熱交換器3を流通する冷媒の流速が上がるため圧力損失も増加し、圧縮機20の運転周波数を低くすると、冷媒の流速が下がるため圧力損失は低下する。したがって、冷凍機周波数制御において圧縮機20の運転周波数を低下させた場合に、圧力損失による影響に対して温度グライドの影響が大きくなり、熱交換器3の入口における冷媒の温度低下が生じることになる。
【0033】
ここで、図2は、本実施形態の冷水製造装置1における冷媒の冷凍サイクル(ABCDA)を表すモリエル線図(p-h線図)である。図2に示すように、圧縮機20の運転周波数が高い場合は、図2の線D-Aに示すように、熱交換器3の冷媒入口(点D)から冷媒出口(点A)に至るまで、冷媒の圧力は圧力損失により低下するものの、気液混合状態において、冷媒の温度は概ね一定に保たれる(図示例では、0℃の等温線L1と-10℃の等温線L2の間で維持される)。したがって、上述した蒸発温度一定制御により出口冷媒蒸発温度(点Aの温度)が一定の目標蒸発温度となるよう制御した場合でも、熱交換器3の冷媒入口(点D)における冷媒の温度低下は生じない。なお、圧縮機20の運転周波数が高く、圧力損失が大きい場合、冷媒入口の冷媒温度よりも冷媒出口の冷媒温度が低くなることもあり得る。
【0034】
一方、圧縮機20の運転周波数が低い場合は、図2の線D'-A(2点鎖線)に示すように、圧力損失がほとんどないため、冷媒入口(点D')から冷媒出口(点A)に向かうにつれて、圧力がほぼ一定に保たれ、冷媒の温度が上昇することになる。したがって、上述した蒸発温度一定制御により出口冷媒蒸発温度(点Aの温度)が一定の目標蒸発温度となるよう制御した場合、気液混合状態において、出口冷媒蒸発温度よりも入口冷媒蒸発温度(点D'の温度)が低下することになる(図示例では、点Aは0℃の等温線L1と-10℃の等温線L2の間にあるものの、点D'が-10℃の等温線L2よりも温度の低い位置となっている)。
【0035】
そして、圧縮機20の運転周波数は、上述した冷凍機周波数制御において、冷水出口温度が低い場合に低下させるものであるため、入口冷媒蒸発温度が低下してしまうと、すでに冷却が進んでいる水を必要以上に低下させてしまうことになり、熱交換器3の入口において冷水が凍結するおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態の冷水製造装置1は、冷凍サイクルの実行の際、制御手段10の制御により、上述した蒸発温度一定制御と冷凍機周波数制御に加えて、以下に示す温度グライド抑制制御を実行するようになっている。
【0037】
温度グライド抑制制御は、上述した蒸発温度一定制御及び冷凍機周波数制御を前提として、非共沸混合冷媒の温度グライドに起因した熱交換器3の入口における冷媒の温度低下を抑制する制御である。温度グライド抑制制御において、制御手段10は、入口側冷媒温度センサ6の検知する非共沸混合冷媒の入口冷媒蒸発温度と、出口側冷媒圧力センサ7の検知する非共沸混合冷媒の出口冷媒蒸発圧力とに基づいて、圧縮機20を周波数制御する。
【0038】
具体的には、制御手段10は、出口冷媒蒸発温度に対する入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度以下となるよう圧縮機20の運転周波数を制御する。より具体的には、出口冷媒蒸発温度に対する入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度以下である間は、制御手段10は、通常通り上述した冷凍機周波数制御を実行する。一方、制御手段10は、出口冷媒蒸発温度に対する入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度を超えた場合は、冷凍機周波数制御に関わらず、圧縮機20の運転周波数を増加させる。圧縮機20の運転周波数を増加させることで、熱交換器3における圧力損失が増加するため、入口冷媒蒸発温度の低下を抑制することが可能となる。なお、制御手段10は、圧縮機20の運転周波数を増加させることに代えて、圧縮機20の運転周波数をそれ以上低下させないようにしても良い。
【0039】
なお、出口冷媒蒸発温度は、蒸発温度一定制御でも用いられるものであり、上述したように、出口側冷媒圧力センサ7が検知した出口冷媒蒸発圧力に基づいて算出(換算)される。
【0040】
また、出口冷媒蒸発温度に対する入口冷媒蒸発温度の温度低下の閾値となる所定温度(すなわち、許容される低下温度)は、例えば、0℃とすることができる。所定温度が0℃とは、入口冷媒蒸発温度と出口冷媒蒸発温度が同じであり、温度低下が全く生じないようにするということである。また、所定温度は、1,2,3,4,5℃のいずれかの温度とすることや、これらの間の温度とすることもできる。さらに、所定温度(許容される低下温度)を0℃未満とすること、すなわち、出口冷媒蒸発温度よりも入口冷媒蒸発温度の方が常に高くなるよう設定することも可能である。この場合、所定温度は、例えば、-1,-2,-3,-4,-5℃のいずれかの温度とすることや、これらの間の温度とすることができる。所定温度は、熱交換器3の入口において水が凍結しない範囲において設定される。
【0041】
3.作用効果
(1)本実施形態の冷水製造装置1において、制御手段10は、冷凍サイクルの実行の際、蒸発温度一定制御と冷凍機周波数制御に加えて、出口冷媒蒸発温度に対する入口冷媒蒸発温度の温度低下が所定温度以下となるよう圧縮機20の運転周波数を制御する(増加させる又はそれ以上低下させない)、温度グライド抑制制御を実行するようになっている。このような制御により、本実施形態の冷水製造装置1では、冷凍機周波数制御により冷凍機2(圧縮機20)を効率的に運転させつつ、熱交換器3の入口における水の凍結を防止することも可能となっている。
【0042】
(2)本実施形態の冷水製造装置1では、温度グライド抑制制御として、制御手段10が圧縮機20の運転周波数を制御するだけで、他の複雑な構成を追加することなく、容易に熱交換器3における圧力損失を増減させ、入口冷媒蒸発温度の低下を抑制することが可能となっている。
【0043】
(3)本実施形態の冷水製造装置1は、入口側冷媒状態検知手段として入口側冷媒温度センサ6を備え、出口側冷媒状態検知手段として出口側冷媒圧力センサ7を備えている。そして、制御手段10は、温度グライド抑制制御において、入口側冷媒温度センサ6が検知する入口冷媒蒸発温度を取得するとともに、出口側冷媒圧力センサ7が検知する出口側冷媒圧力から出口冷媒蒸発温度を算出(換算)して、これら入口冷媒蒸発温度及び出口冷媒蒸発温度に基づいて圧縮機20の運転周波数を制御している。このように、本実施形態の冷水製造装置1では、出口側においては冷媒状態を出口側冷媒圧力センサ7により検知して蒸発温度に換算する一方、入口側では入口側冷媒温度センサ6により蒸発温度を直接検知するようになっている。したがって、入口側冷媒温度センサ6により検知された冷媒温度(冷媒状態)は、非共沸混合冷媒の乾き度を考慮したものとなっているため、圧縮機20の運転周波数の正確な制御が可能となっている。
【0044】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0045】
上記実施形態において、冷凍機周波数制御では、制御手段10は、冷水温度センサ5が検知する熱交換後の水の温度に応じて圧縮機20の周波数を変動させるよう構成されていた。しかしながら、冷凍機周波数制御において、冷水温度センサ5が検知する熱交換後の水の温度以外の情報により水の冷却状況を取得し、圧縮機20の周波数を制御するようにしても良い。例えば、水の冷却状況として、冷水によって冷却される食品の品温や食品の量等の情報を用いることも可能である。
【0046】
上記実施形態において、圧縮機20は、周波数制御により圧縮能力を多段階に変更可能な構成であった。しかしながら、圧縮機を並列に複数台配置し、駆動する圧縮機の台数を制御することで圧縮能力を調整する構成とすることも可能である。
【0047】
上記実施形態では、蒸発温度一定制御において、制御手段10は、出口側冷媒圧力センサ7が検知した出口冷媒蒸発温度が目標蒸発温度に一致するよう、膨張弁40の開度を制御するよう構成されていた。しかしながら、膨張弁40の開度は、出口側冷媒圧力センサ7が検知した出口冷媒蒸発温度に加えて、又は出口冷媒蒸発温度に代えて、他の物性値に基づいて制御されるようにしても良い。
【0048】
上記実施形態では、温度グライド抑制制御において、入口側冷媒状態検知手段として入口側冷媒温度センサ6を備え、入口側冷媒温度センサ6が検知した入口冷媒温度を用いて圧縮機20の運転周波数を制御していた。しかしながら、入口側冷媒状態検知手段として、入口側冷媒温度センサ6に代えて、入口側冷媒圧力センサを設け、入口側冷媒圧力センサが検知した入口冷媒蒸発圧力に基づいて、当該圧力に対応する飽和温度として入口冷媒温度を算出(換算)するようにしても良い。なお、この場合、膨張弁40の入口側に温度センサ及び圧力センサを設け、入口冷媒蒸発圧力に加えて膨張弁40の入口側における冷媒温度及び冷媒圧力を用いれば、非共沸混合冷媒の乾き度を考慮した入口冷媒温度を算出(換算)することが可能である。
【0049】
上記実施形態において、制御手段10は、入口側冷媒温度センサ6の検知する非共沸混合冷媒の入口冷媒蒸発温度と、出口側冷媒圧力センサ7の検知する非共沸混合冷媒の出口冷媒蒸発圧力(換算される出口冷媒蒸発温度)とに基づいて、圧縮機20を周波数制御していた。しかしながら、入口冷媒蒸発温度と出口冷媒蒸発温度のいずれか一方のみに基づいて、圧縮機20を周波数制御することも可能である。
【0050】
加えて、温度グライド抑制制御において、制御手段10は、圧縮機20の周波数を、入口冷媒蒸発温度や出口冷媒蒸発温度によらず、単に予め定めた下限周波数以下にならないよう制御するだけでも良い。ここで、下限周波数は、予め実験により決定しておくものであり、例えば、最も凍結しやすい条件(例えば、水温1℃)であっても水が凍結しないような周波数が選択される。なお、このような構成の場合、冷水製造装置1は、入口側冷媒状態検知手段(入口側冷媒温度センサ6又は入口側冷媒圧力センサ)を備えていなくても良い。
【0051】
上記実施形態の冷水製造装置1において、凝縮器21において液化された高圧低温の冷媒と熱交換器3で気化された冷媒との間で熱交換をする液ガス熱交換器(図示せず)を設けることも好ましい。液ガス熱交換器により、膨張弁40へ送られる冷媒を冷却するとともに、熱交換器3を出て冷凍機2(圧縮機20)に戻る冷媒を完全にガス化することができる。なお、液ガス熱交換器を設ける場合、出口側冷媒圧力センサ7は液ガス熱交換器の冷凍機2側の出口から圧縮機20の入口に至るまでの冷媒循環ライン4の配管上に設けることが好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 :冷水製造装置
2 :冷凍機
3 :熱交換器
4 :冷媒循環ライン
5 :冷水温度センサ
6 :入口側冷媒温度センサ(入口側冷媒状態検知手段)
7 :出口側冷媒圧力センサ(出口側冷媒状態検知手段)
10 :制御手段
20 :圧縮機
21 :凝縮器
21a :ファン
40 :膨張弁
41 :循環弁
100 :冷水ライン
101 :冷水ポンプ
L1,L2 :等温線
図1
図2