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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116030
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/18 20060101AFI20240820BHJP
   B60R 22/28 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60R22/18
B60R22/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022014
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆二
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA12
3D018CB06
3D018DA03
(57)【要約】
【課題】保持部材の厚さ方向両側への傾倒を抑制する。
【解決手段】バックル装置10では、バックル本体18がブーツ34の上部内に保持されており、ブーツ34の下部が下側からフレーム22及びプロテクタ26によって支持されている。ここで、ブーツ34の左側の左壁34Aがクリップ36によってフレーム22に固定されると共に、ブーツ34の右側の固定片38がフレーム22の引掛突起22Dに固定されている。このため、ブーツ34の左右方向両側への傾倒を抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体を保持すると共に、厚さ方向両側に固定部が設けられる保持部材と、
前記保持部材を支持し、両方の前記固定部が固定される支持体と、
を備えるバックル装置。
【請求項2】
前記支持体の前記バックル本体とは反対側に前記固定部が引掛けられる請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられると共に、先端側が前記固定部の先端側に突出される引掛部を備える請求項1記載のバックル装置。
【請求項4】
前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられる引掛部を備え、前記固定部の前記引掛部より先端側の肉厚及び幅の少なくとも一方が拡大される請求項1記載のバックル装置。
【請求項5】
前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられる引掛部を備え、前記固定部の前記引掛部より先端側に凸部が設けられる請求項1記載のバックル装置。
【請求項6】
前記支持体に設けられ、取付けられて前記固定部の移動を係止する取付部材を備える請求項1記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル本体を保持部材が保持すると共に保持部材を支持体が支持するバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル装置では、バックル本体をブーツが保持すると共に、ブーツをプロテクタ、カバー及びフレームが支持している。
【0003】
ここで、このようなバックル装置では、ブーツの厚さ方向両側への傾倒を抑制できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-125010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、保持部材の厚さ方向両側への傾倒を抑制できるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体を保持すると共に、厚さ方向両側に固定部が設けられる保持部材と、前記保持部材を支持し、両方の前記固定部が固定される支持体と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のバックル装置は、本発明の第1態様のバックル装置において、前記支持体の前記バックル本体とは反対側に前記固定部が引掛けられる。
【0008】
本発明の第3態様のバックル装置は、本発明の第1態様又は第2態様のバックル装置において、前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられると共に、先端側が前記固定部の先端側に突出される引掛部を備える。
【0009】
本発明の第4態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのバックル装置において、前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられる引掛部を備え、前記固定部の前記引掛部より先端側の肉厚及び幅の少なくとも一方が拡大される。
【0010】
本発明の第5態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのバックル装置において、前記支持体に設けられ、前記固定部が引掛けられる引掛部を備え、前記固定部の前記引掛部より先端側に凸部が設けられる。
【0011】
本発明の第6態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第5態様の何れか1つのバックル装置において、前記支持体に設けられ、取付けられて前記固定部の移動を係止する取付部材を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。また、バックル本体を保持部材が保持すると共に、保持部材を支持体が支持する。
【0013】
ここで、保持部材の厚さ方向両側に固定部が設けられており、両方の固定部が支持体に固定される。このため、保持部材の厚さ方向両側への傾倒を抑制できる。
【0014】
本発明の第2態様のバックル装置では、支持体のバックル本体とは反対側に固定部が引掛けられる。このため、支持体からの固定部の離脱を効果的に抑制できる。
【0015】
本発明の第3態様のバックル装置では、支持体の引掛部に固定部が引掛けられる。
【0016】
ここで、引掛部の先端側が固定部の先端側に突出される。このため、支持体からの固定部の離脱を効果的に抑制できる。
【0017】
本発明の第4態様のバックル装置では、支持体の引掛部に固定部が引掛けられる。
【0018】
ここで、固定部の引掛部より先端側の肉厚及び幅の少なくとも一方が拡大される。このため、引掛部に固定部を容易に引掛けることができる。
【0019】
本発明の第5態様のバックル装置では、支持体の引掛部に固定部が引掛けられる。
【0020】
ここで、固定部の引掛部より先端側に凸部が設けられる。このため、引掛部に固定部を容易に引掛けることができる。
【0021】
本発明の第6態様のバックル装置では、支持体の取付部材が、取付けられて、固定部の移動を係止する。このため、支持体からの固定部の離脱を規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す後方から見た断面図である。
図2】(A)~(C)は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置の主要部を示す斜視図であり、(A)は、右斜め前方から見た図であり、(B)は、下斜め右方から見た図であり、(C)は、後斜め下方から見た図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバックル装置の主要部を示す前斜め下方から見た分解斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るバックル装置のフレーム及びブーツ等を示す前方から見た前面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るバックル装置のブーツを示す前斜め右方から見た斜視図である。
図6】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態の変形例に係るバックル装置を示す図であり、(A)は、下斜め右方から見た斜視図であり、(B)は、下方から見た下面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るバックル装置を示す前斜め下方から見た斜視図である。
図8】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係るバックル装置を示す図であり、(A)は、右方から見た右面図であり、(B)は、後方から見た断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るバックル装置を示す右斜め前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るバックル装置10が後方から見た断面図にて示されており、図3には、バックル装置10の主要部が前斜め下方から見た分解斜視図にて示されている。なお、図面では、バックル装置10の前方を矢印FRで示し、バックル装置10の右方(表側)を矢印RHで示し、バックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0024】
本実施形態に係るバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートベルト装置12には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング14(図1参照)が基端側から巻取られており、ウェビング14は、巻取装置への巻取側に付勢されると共に、巻取装置から上側に引出されている。巻取装置には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックする。
【0025】
ウェビング14は、巻取装置よりも先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング14の先端部には、アンカ(図示省略)が固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング14は、スルーアンカとアンカとの間において、タング16(図1参照)に移動可能に貫通されている。
【0026】
バックル装置10は、シート後部の車幅方向内側かつ下側に設置されており、バックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前側又は後側、車幅方向内方及び上側に向けられている。
【0027】
図1に示す如く、バックル装置10の上部には、略直方体状のバックル本体18が設けられている。バックル本体18には、上側からタング16が係合可能にされており、バックル本体18にタング16が係合されて、シートに着座した乗員にウェビング14が装着される。これにより、ウェビング14のスルーアンカとタング16との間の部分(ショルダウェビング)が乗員の肩部から腰部(胸部を含む)に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング14のタング16とアンカとの間の部分(ラップウェビング)が乗員の腰部に横方向に掛渡される。バックル本体18へのタング16の係合は、解除可能にされており、バックル本体18へのタング16の係合が解除されて、乗員へのウェビング14の装着が解除される。また、バックル本体18の下側部分は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされている。
【0028】
バックル本体18の下部には、連結部材としての帯状のベルト20(ウェビング)の先端側部分(上側部)が連結されており、ベルト20は、例えばウェビング14と同一の材質にされて、織物にされている。
【0029】
図1及び図3に示す如く、バックル装置10の下部には、支持体を構成する支持部材としての金属製のフレーム22が設けられており、フレーム22は、断面U字形板状にされている。フレーム22の左部には、背板22Aが設けられており、フレーム22は、背板22Aの下端部において、車体側(例えばシート下部の後部)に固定されている。フレーム22の前部及び後部には、それぞれ脚板22B及び脚板22Cが設けられており、脚板22B及び脚板22Cは、背板22Aから右方に突出されている。脚板22Bの下面の右部には、引掛部としてのL字形板状の引掛突起22Dが一体形成されており、引掛突起22Dは、下側に突出されると共に、先端部(下端部)が左側に突出されている。
【0030】
フレーム22の脚板22B及び脚板22Cには、巻取軸としての金属製で略円筒状のスプール24が貫通されており、スプール24は、フレーム22に支持されている。スプール24の軸方向は、前後方向に平行にされており、スプール24は、中心軸線周りに回転可能にされている。スプール24には、ベルト20の基端側部分(下側部)が連結されており、ベルト20は、スプール24に巻取られると共に、スプール24の左側から上側に引出されている。
【0031】
フレーム22の上部内には、支持体を構成する被覆部材としての樹脂製のプロテクタ26が嵌合されている。プロテクタ26は、上面視U字状にされて、内部が右側に開放されており、プロテクタ26の左壁、前壁及び後壁は、それぞれフレーム22の背板22A、脚板22B及び脚板22Cを被覆している。プロテクタ26の上端部は、プロテクタ26の外側に突出されており、プロテクタ26の上端部は、フレーム22の上側に載置されている。プロテクタ26内には、ベルト20が挿通されており、プロテクタ26は、ベルト20のフレーム22への接触を制限している。
【0032】
フレーム22(脚板22B)の前側には、支持体を構成する取付部材としての金属製のケース28(図2の(A)~(C)参照)が配置されている。ケース28には、略矩形板状の係止板28Aが設けられており、係止板28Aの上部及び下部がネジ30によって脚板22Bに固定されて、ケース28が脚板22Bに取付けられている。係止板28Aの下端部には、係止部としての断面矩形状の係止孔28Cが形成されており、係止孔28Cは、後方に開放されている。係止孔28Cは、左方へ向かうに従い下方へ向かう方向に延在されており、係止孔28Cの長手方向両端は、開放されている。係止板28Aの前側には、略有底円筒状の係止筒28Bが一体形成されており、係止筒28Bの軸方向は、前後方向に平行にされている。係止筒28B内は、係止板28Aを貫通して、係止板28Aの後側に開放されており、ケース28内には、スプール24の前部が同軸上に挿入されている。
【0033】
ケース28内には、変形部材(エネルギー吸収部材)としての金属製で略円柱状のトーションシャフト32(図4参照)が同軸上に配置されている。トーションシャフト32の前端部は、係止筒28B内の前端部に相対回転不能に係止されており、トーションシャフト32の後端部は、スプール24に相対回転不能に連結されて、スプール24の回転を制限している。
【0034】
バックル本体18からフレーム22までの範囲には、保持部材としての略矩形筒状のブーツ34(図5参照)が設けられており、ブーツ34は、軟質樹脂製にされて、可撓性(弾性)を有している。ブーツ34は、軸方向が上下方向にされると共に、左右方向寸法が前後方向寸法に比し小さくされており、ブーツ34の厚さ方向は、左右方向にされている。ブーツ34の上部は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされており、ブーツ34は、上部内にバックル本体18の下側部分が嵌入されて、バックル本体18の下側へ移動を制限することで、バックル本体18を保持している。ブーツ34内には、ベルト20が挿入されており、ブーツ34の下部内には、フレーム22(スプール24を含む)及びプロテクタ26が挿入されている。ブーツ34の下部内は、前側に開放されており、ケース28は、ブーツ34の下部の前側に突出されている。ブーツ34内の下部の直上は、下側から、プロテクタ26及びフレーム22によって支持されており、これにより、ブーツ34の下側への移動が制限されている。上述の如く、ベルト20がスプール24に巻取られることで、ベルト20に張力が作用された状態で、ブーツ34がバックル本体18とプロテクタ26との間で弾性収縮力を作用されており、ブーツ34は、プロテクタ26及びフレーム22を下側に付勢してプロテクタ26及びフレーム22に対し自立されると共に、バックル本体18を上側に付勢して自立させている。
【0035】
ブーツ34の固定部としての左壁34Aの下端部及びフレーム22の背板22Aには、固定部材としての硬質樹脂製で略柱状のクリップ36(図8参照)が貫通されている。クリップ36の基端(左端)は、略楕円板状にされており、クリップ36の先端部(右端部)は、略台形柱状にされている。クリップ36の先端部の軸方向は、前後方向にされており、クリップ36の先端部は、上方及び下方に突出されている。クリップ36は、先端部が一時的に上下方向に弾性縮小されてブーツ34の左壁34A及びフレーム22の背板22Aに貫通された後に、先端部が、左壁34A及び背板22Aを通過されて、上下方向に弾性拡大(弾性復元)されている。このため、クリップ36の基端と先端部との間にブーツ34の左壁34A及びフレーム22の背板22Aとが挟まれて、クリップ36によってブーツ34の左壁34Aがフレーム22の背板22Aに固定されている。
【0036】
ブーツ34の右壁の前端部には、固定部としての長尺板状の固定片38(図2の(A)~(C)及び図4参照)が一体形成されており、固定片38は、下方に延出されている。固定片38の基端部には、薄肉部38Aが形成されており、固定片38は、薄肉部38Aにおいて、弾性曲がり性能及び弾性伸長性能が高くされている。固定片38は、薄肉部38Aにおいて、フレーム22の脚板22Bの下側かつ右側の角部に沿って左側に曲げられおり、固定片38の薄肉部38Aより先端側部分は、左方へ向かうに従い下方へ向かう方向に延出されている。
【0037】
固定片38の中間部(長手方向中間部)には、被引掛部としての長尺矩形状の引掛孔38Bが貫通形成されており、引掛孔38Bは、固定片38の長手方向に延在されている。引掛孔38Bには、脚板22Bの引掛突起22Dが貫通されており、引掛孔38Bは、左面が引掛突起22Dの基端側部分に接近又は当接されると共に、引掛突起22Dが前後方向において嵌合されている。固定片38の引掛孔38Bより先端側部分は、引掛突起22Dの先端部に当接可能にされており、固定片38の引掛孔38Bより先端側部分は、引掛突起22Dの先端部によって下側への移動を制限されている。これにより、固定片38(引掛孔38B)が引掛突起22Dに引掛けられている。
【0038】
固定片38の中間部は、引掛孔38Bより前側部分を含む部分において、ケース28(係止板28A)の係止孔28Cに挿入されており、係止孔28Cの下面は、固定片38の中間部の下側への移動を係止している。さらに、係止板28Aの係止孔28Cより下側部分は、脚板22Bの引掛突起22Dに接近又は当接されている。これにより、固定片38がフレーム22に固定されている。
【0039】
固定片38の先端部には、凸部としての半円柱状の突出部38Cが所定数(本実施形態では3個)が一体形成されており、突出部38Cは、下側に突出されて固定片38の肉厚を拡大させると共に、前後方向に延在されている。所定数の突出部38Cは、固定片38の長手方向に並べられており、突出部38C間には、隙間が設けられている。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル装置10において、スプール24の回転をトーションシャフト32が制限して、ベルト20のスプール24からの引出し及びバックル本体18の上側への延出が制限されており、バックル本体18にウェビング14のタング16が係合されることで、乗員にウェビング14が装着される。
【0042】
車両の衝突時(緊急時)には、巻取装置のロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックすることで、ウェビング14によって乗員が拘束される。そして、例えば乗員に慣性力が作用されて、乗員によってウェビング14が引張られた際には、ウェビング14からタング16及びバックル本体18を介してベルト20にスプール24からの引出力が作用されることで、スプール24に回転力が作用される。さらに、スプール24に作用される回転力によって、トーションシャフト32が前端部と後端部との間において捩れ変形(塑性変形)されて、スプール24の回転が許容されることで、ベルト20のスプール24からの引出しが許容されて、バックル本体18(タング16を含む)の上側への延出が許容される。このため、ウェビング14から乗員(特に胸部)に作用される荷重が低減される(トーションシャフト32が捩れ変形されるための荷重(フォースリミッタ荷重)に制限される)と共に、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト32の捩れ変形によって吸収されることで、乗員が保護される。
【0043】
ところで、バックル本体18がブーツ34の上部内に保持されており、ブーツ34の下部内にフレーム22及びプロテクタ26が挿入されて、ブーツ34が下側からフレーム22及びプロテクタ26によって支持されている。
【0044】
ここで、ブーツ34の左側及び右側(厚さ方向両側)にそれぞれ左壁34A及び固定片38が設けられている。さらに、クリップ36によって左壁34Aの下端部がフレーム22の背板22Aに固定されている。しかも、固定片38(引掛孔38B)がフレーム22(脚板22B)の引掛突起22Dに引掛けられると共に、固定片38がケース28(係止板28A)の係止孔28Cに挿入されて、固定片38がフレーム22に固定されている。このため、例えば乗員からブーツ34の上側部分に荷重が入力された場合でも、ブーツ34の左壁34Aのフレーム22への固定によってブーツ34の右側への傾倒を抑制できると共に、固定片38のフレーム22への固定によってブーツ34の左側への傾倒を抑制できて、ブーツ34の左右方向両側への傾倒を抑制できる。
【0045】
さらに、フレーム22(脚板22B)のバックル本体18とは反対側(下側)の引掛突起22Dにブーツ34の固定片38(引掛孔38B)が引掛けられている。このため、フレーム22(脚板22B)の右側にブーツ34が引掛けられる場合に比し、ブーツ34の左側への傾倒によるブーツ34の弾性伸長量を大きくできて、引掛突起22Dからの固定片38(引掛孔38B)の離脱を効果的に抑制できる。
【0046】
また、引掛突起22Dの先端部が固定片38の先端側(左側)に突出されている。このため、引掛突起22Dの先端部によって固定片38の下側への移動を制限でき、引掛突起22Dからの固定片38(引掛孔38B)の離脱を効果的に抑制できる。
【0047】
さらに、固定片38がケース28(係止板28A)の係止孔28Cに挿入されて、係止孔28Cの下面が固定片38の下側への移動を係止している。このため、固定片38の下側への移動を効果的に制限でき、引掛突起22Dからの固定片38(引掛孔38B)の離脱を効果的に抑制できる。
【0048】
また、固定片38の引掛孔38Bより基端側に薄肉部38Aが設けられており、薄肉部38Aの弾性伸長性能が高くされている。このため、引掛突起22Dに固定片38(引掛孔38B)が引掛けられる際には、固定片38が薄肉部38Aにおいて良好に弾性伸長できて、固定片38(引掛孔38B)が引掛突起22Dの先端部を容易に通過できる。しかも、固定片38(引掛孔38B)が引掛突起22Dの先端部を通過した後には、固定片38が薄肉部38Aにおいて良好に弾性収縮(弾性復元)できて、引掛突起22Dの先端部によって固定片38の下側への移動を制限できる。
【0049】
さらに、固定片38の先端部に突出部38Cが設けられており、固定片38の先端部の肉厚が突出部38Cにおいて拡大されている。このため、引掛突起22Dに固定片38(引掛孔38B)が引掛けられる際には、固定片38の先端部を良好に把持できて、引掛突起22Dに固定片38(引掛孔38B)を容易に引掛けることができる。
【0050】
(変形例)
図6(A)には、上記第1実施形態の変形例に係るバックル装置50が下斜め右方から見た斜視図にて示されており、図6(B)には、バックル装置50が下方から見た下面図にて示されている。
【0051】
図6の(A)及び(B)に示す如く、本変形例に係るバックル装置50では、ブーツ34の固定片38の先端部に突出部38Cが設けられておらず、固定片38の先端部は、先端側へ向かうに従い肉厚が下側に徐々に拡大されると共に、前側に拡大されている。このため、フレーム22(脚板22B)の引掛突起22Dに固定片38(引掛孔38B)が引掛けられる際には、固定片38の先端部を良好に把持できる。
【0052】
ここで、本変形例でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0053】
[第2実施形態]
図7には、本発明の第2実施形態に係るバックル装置60が前斜め下方から見た斜視図にて示されている。
【0054】
本実施形態に係るバックル装置60は、上記第1実施形態の変形例と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0055】
図7に示す如く、本実施形態に係るバックル装置60では、ケース28において、係止板28Aの下端部に係止孔28Cが形成されておらず、引掛突起22Dは、フレーム22に代えて、係止板28Aの下面に一体形成されている(図8(B)参照)。
【0056】
ブーツ34の固定片38(図8の(A)及び(B)参照)では、引掛孔38Bが円状にされており、引掛孔38Bの径寸法は、引掛突起22Dの肉厚寸法と略同一にされると共に、引掛突起22Dの基端側部分における幅寸法に比し小さくされている。引掛孔38Bには、引掛突起22Dの基端側部分が貫通かつ圧入されており、固定片38の引掛孔38Bより先端側部分は、引掛突起22Dの先端部に当接可能にされて、引掛突起22Dの先端部によって下側への移動を制限される。これにより、固定片38(引掛孔38B)が引掛突起22Dに引掛けられて、固定片38がケース28に固定されている。なお、固定片38の先端部は、前側に拡大されていない。
【0057】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0058】
特に、ブーツ34の固定片38の引掛孔38Bにケース28(係止板28A)の引掛突起22Dの基端側部分が圧入されている。このため、固定片38の下側への移動を効果的に制限でき、引掛突起22Dからの固定片38(引掛孔38B)の離脱を効果的に抑制できる。
【0059】
[第3実施形態]
図9には、本発明の第3実施形態に係るバックル装置70が右斜め前方から見た斜視図にて示されている。
【0060】
本実施形態に係るバックル装置70は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0061】
図9に示す如く、本実施形態に係るバックル装置70では、フレーム22(脚板22B)に引掛突起22Dが設けられておらず、ケース28の係止板28Aの下端部に係止孔28Cが形成されていない。
【0062】
ブーツ34の右壁の前後方向中間部には、固定片38が一体形成されており、固定片38は、基端部に薄肉部38Aが形成されていないと共に、先端部に突出部38Cが設けられていない。固定片38の基端部は、左側に曲げられており、固定片38の先端部には、矩形状の引掛孔38Bが貫通形成されている。
【0063】
ブーツ34の左壁34Aの下端部、フレーム22の背板22A及び固定片38の引掛孔38Bには、クリップ36が貫通されている。クリップ36は、先端部が一時的に上下方向に弾性縮小されてブーツ34の左壁34A、フレーム22の背板22A及び固定片38の引掛孔38Bに貫通された後に、先端部が、左壁34A、背板22A及び引掛孔38Bを通過されて、上下方向に弾性拡大(弾性復元)されている。このため、クリップ36の基端と先端部との間にブーツ34の左壁34A、フレーム22の背板22A及び固定片38が挟まれて、クリップ36によってブーツ34の左壁34A及び固定片38がフレーム22の背板22Aに固定されている。
【0064】
ここで、本実施形態でも、固定片38の薄肉部38Aによる作用及び効果と固定片38の突出部38Cによる作用及び効果を除き、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、クリップ36によってブーツ34の左壁34Aと固定片38とがフレーム22に一緒に固定される。しかしながら、ブーツ34の左壁34Aと固定片38とがフレーム22(支持体)に別々に固定されてもよい。
【0066】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、フレーム22又はケース28(支持体)に引掛突起22Dが1個設けられると共に、ブーツ34(固定片38)に引掛孔38Bが1個設けられる。しかしながら、フレーム22又はケース28(支持体)に引掛突起22Dが複数設けられると共に、ブーツ34(固定片38)に引掛孔38Bが複数設けられてもよい。
【0067】
さらに、上記第1実施形態~第3実施形態では、ブーツ34とクリップ36とが別体にされる。しかしながら、ブーツ34とクリップ36とが一体にされてもよい。この場合、クリップ36によってブーツ34がフレーム22(支持体)に固定される際に、ブーツ34とクリップ36とが分離されてもよい。
【0068】
また、上記第1実施形態~第3実施形態では、フレーム22にスプール24が設けられる。しかしながら、フレーム22にスプール24が設けられずに、フレーム22にベルト20が連結されてもよい。この場合、トーションシャフト32が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10・・・バックル装置、14・・・ウェビング、16・・・タング、18・・・バックル本体、22・・・フレーム(支持体)、22D・・・引掛突起(引掛部)、26・・・プロテクタ(支持体)、28・・・ケース(支持体、取付部材)、34・・・ブーツ(保持部材)、34A・・・左壁(固定部)、38・・・固定片(固定部)、38C・・・突出部(凸部)、50・・・バックル装置、60・・・バックル装置、70・・・バックル装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9