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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116031
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/18 20060101AFI20240820BHJP
   B60R 22/28 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60R22/18
B60R22/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022015
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆二
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA12
3D018CB06
3D018DA03
(57)【要約】
【課題】保持部材の支持体側への変位を抑制する。
【解決手段】バックル装置10では、バックル本体18がブーツ34の上部内に保持されており、ブーツ34の下部が下側からフレーム22及びプロテクタ26によって支持されている。ここで、ブーツ34の左上傾斜面36Dとプロテクタ26の左下傾斜面26Dとがブーツ34の左右方向内側へ向かうに従い下方へ向かう方向に傾斜されている。このため、ブーツ34に上側から荷重が入力された際に、ブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体を保持し、被支持面が設けられる保持部材と、
支持面が設けられ、前記被支持面を前記支持面が支持して前記保持部材を支持する支持体と、
前記被支持面及び前記支持面の少なくとも一方に設けられ、前記保持部材厚さ方向内側へ向かうに従い前記バックル本体側から前記支持体側へ向かう方向に傾斜される傾斜部と、
を備えるバックル装置。
【請求項2】
前記被支持面及び前記支持面に前記傾斜部が設けられる請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記被支持面の前記傾斜部を前記支持面の前記傾斜部が支持する請求項2記載のバックル装置。
【請求項4】
前記保持部材厚さ方向両側に前記傾斜部が設けられる請求項1記載のバックル装置。
【請求項5】
前記保持部材厚さ方向片側に前記傾斜部が複数設けられる請求項1記載のバックル装置。
【請求項6】
前記傾斜部の前記保持部材周方向両側に前記被支持面及び前記支持面が設けられない請求項1記載のバックル装置。
【請求項7】
前記保持部材に設けられ、前記支持体が収容される収容部と、
前記収容部の側壁に設けられ、前記支持体を露出させる露出孔と、
前記側壁に設けられ、前記支持体を被覆する被覆部と、
を備える請求項1記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル本体を保持部材が保持すると共に保持部材を支持体が支持するバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル装置では、バックル本体をブーツが保持すると共に、ブーツをアンカが支持している。
【0003】
ここで、このバックル装置では、ブーツのアンカ側への変位を抑制できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-66332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、保持部材の支持体側への変位を抑制できるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体を保持し、被支持面が設けられる保持部材と、支持面が設けられ、前記被支持面を前記支持面が支持して前記保持部材を支持する支持体と、前記被支持面及び前記支持面の少なくとも一方に設けられ、前記保持部材厚さ方向内側へ向かうに従い前記バックル本体側から前記支持体側へ向かう方向に傾斜される傾斜部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のバックル装置は、本発明の第1態様のバックル装置において、前記被支持面及び前記支持面に前記傾斜部が設けられる。
【0008】
本発明の第3態様のバックル装置は、本発明の第2態様のバックル装置において、前記被支持面の前記傾斜部を前記支持面の前記傾斜部が支持する。
【0009】
本発明の第4態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのバックル装置において、前記保持部材厚さ方向両側に前記傾斜部が設けられる。
【0010】
本発明の第5態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのバックル装置において、前記保持部材厚さ方向片側に前記傾斜部が複数設けられる。
【0011】
本発明の第6態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第5態様の何れか1つのバックル装置において、前記傾斜部の前記保持部材周方向両側に前記被支持面及び前記支持面が設けられない。
【0012】
本発明の第7態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第6態様の何れか1つのバックル装置において、前記保持部材に設けられ、前記支持体が収容される収容部と、前記収容部の側壁に設けられ、前記支持体を露出させる露出孔と、前記側壁に設けられ、前記支持体を被覆する被覆部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。また、バックル本体を保持部材が保持しており、保持部材の被支持面を支持体の支持面が支持して、保持部材を支持体が支持する。
【0014】
ここで、被支持面及び支持面の少なくとも一方の傾斜部が、保持部材厚さ方向内側へ向かうに従いバックル本体側から支持体側へ向かう方向に傾斜される。このため、保持部材の支持体側への変位を抑制できる。
【0015】
本発明の第2態様のバックル装置では、被支持面及び支持面に傾斜部が設けられる。このため、保持部材の支持体側への変位を効果的に抑制できる。
【0016】
本発明の第3態様のバックル装置では、被支持面の傾斜部を支持面の傾斜部が支持する。このため、保持部材の支持体側への変位を効果的に抑制できる。
【0017】
本発明の第4態様のバックル装置では、保持部材厚さ方向両側に傾斜部が設けられる。このため、保持部材の支持体側への変位を効果的に抑制できる。
【0018】
本発明の第5態様のバックル装置では、保持部材厚さ方向片側に傾斜部が複数設けられる。このため、保持部材の支持体側への変位を効果的に抑制できる。
【0019】
本発明の第6態様のバックル装置では、傾斜部の保持部材周方向両側に被支持面及び支持面が設けられない。このため、傾斜部の保持部材周方向両側に被支持面及び支持面が設けられない場合でも、傾斜部によって保持部材の支持体側への変位を抑制できる。
【0020】
本発明の第7態様のバックル装置では、保持部材の収容部に支持体が収容されると共に、収容部の側壁の露出孔が支持体を露出させる。
【0021】
ここで、収容部の側壁の被覆部が支持体を被覆する。このため、保持部材が支持体側に変位される際に、収容部の側壁の露出孔から支持体が抜け出ることを被覆部によって抑制でき、保持部材の支持体側への変位を抑制できる。
【0022】
本発明の第8態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体を保持すると共に、収容部が設けられる保持部材と、前記収容部に収容されて前記保持部材を支持する支持体と、前記収容部の側壁に設けられ、前記支持体を露出させる露出孔と、前記側壁に設けられ、前記支持体を被覆する被覆部と、を備える。
【0023】
本発明の第8態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。また、バックル本体を保持部材が保持しており、保持部材の収容部に支持体が収容されて、保持部材を支持体が支持する。また、収容部の側壁の露出孔が支持体を露出させる。
【0024】
ここで、収容部の側壁の被覆部が支持体を被覆する。このため、保持部材が支持体側に変位される際に、収容部の側壁の露出孔から支持体が抜け出ることを被覆部によって抑制でき、保持部材の支持体側への変位を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るバックル装置を示す後方から見た断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るバックル装置内を示す後方から見た後面図である。
図3】本発明の実施形態に係るバックル装置を示す前方から見た前面図である。
図4】本発明の実施形態に係るバックル装置のフレーム及びブーツ等を示す前方から見た前面図である。
図5】(A)~(C)は、本発明の実施形態に係るバックル装置を示す斜視図であり、(A)は、右斜め前方から見た図であり、(B)は、下斜め右方から見た図であり、(C)は、後斜め下方から見た図である。
図6】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るバックル装置のプロテクタ等を示す斜視図であり、(A)は、前斜め右方から見た図であり、(B)は、前斜め左方から見た図である。
図7】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るバックル装置のプロテクタ等を示す斜視図であり、(A)は、後斜め右方から見た図であり、(B)は、後側から見た図である。
図8】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るバックル装置を示す下方から見た図であり、(A)は、ブーツ及びプロテクタを示し、(B)は、ブーツを示している。後方から見た断面図である。
図9】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るバックル装置を示す前斜め下方から見た図であり、(A)は、ブーツ及びプロテクタを示し、(B)は、ブーツを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、本発明の実施形態に係るバックル装置10が後方から見た断面図にて示されている。なお、図面では、バックル装置10の前方を矢印FRで示し、バックル装置10の右方(表側)を矢印RHで示し、バックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0027】
本実施形態に係るバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートベルト装置12には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング14(図1参照)が基端側から巻取られており、ウェビング14は、巻取装置への巻取側に付勢されると共に、巻取装置から上側に引出されている。巻取装置には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックする。
【0028】
ウェビング14は、巻取装置よりも先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング14の先端部には、アンカ(図示省略)が固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング14は、スルーアンカとアンカとの間において、タング16(図1参照)に移動可能に貫通されている。
【0029】
バックル装置10は、シート後部の車幅方向内側かつ下側に設置されており、バックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前側又は後側、車幅方向内方及び上側に向けられている。
【0030】
図1に示す如く、バックル装置10の上部には、略直方体状のバックル本体18が設けられている。バックル本体18には、上側からタング16が係合可能にされており、バックル本体18にタング16が係合されて、シートに着座した乗員にウェビング14が装着される。これにより、ウェビング14のスルーアンカとタング16との間の部分(ショルダウェビング)が乗員の肩部から腰部(胸部を含む)に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング14のタング16とアンカとの間の部分(ラップウェビング)が乗員の腰部に横方向に掛渡される。バックル本体18へのタング16の係合は、解除可能にされており、バックル本体18へのタング16の係合が解除されて、乗員へのウェビング14の装着が解除される。また、バックル本体18の下側部分は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされている。
【0031】
バックル本体18内には、検出部としてのバックルスイッチ(図示省略)が設けられており、バックルスイッチは、バックル本体18へのタング16の係合を検出して、ウェビング14の乗員への装着を検出する。なお、バックルスイッチが複数設けられてもよい。
【0032】
バックル本体18の下部には、連結部材としての帯状のベルト20(ウェビング)の先端側部分(上側部)が連結されており、ベルト20は、例えばウェビング14と同一の材質にされて、織物にされている。
【0033】
バックル装置10の下部には、支持体を構成する支持部材としての金属製のフレーム22が設けられており、フレーム22は、断面U字形板状にされている。フレーム22の左部には、背板22Aが設けられており、フレーム22は、背板22Aの下端部において、車体側(例えばシート下部の後部)に固定されている。フレーム22の前部及び後部には、それぞれ脚板22B及び脚板22Cが設けられており、脚板22B及び脚板22Cは、背板22Aから右方に突出されている。脚板22Bの下面の右部には、引掛部としてのL字形板状の引掛突起22Dが一体形成されており、引掛突起22Dは、下側に突出されると共に、先端部(下端部)が左側に突出されている。
【0034】
フレーム22の脚板22B及び脚板22Cには、巻取軸としての金属製で略円筒状のスプール24が貫通されており、スプール24は、フレーム22に支持されている。スプール24の軸方向は、前後方向に平行にされており、スプール24は、中心軸線周りに回転可能にされている。スプール24には、ベルト20の基端側部分(下側部)が連結されており、ベルト20は、スプール24に巻取られると共に、スプール24の左側から上側に引出されている。
【0035】
フレーム22の上部内には、支持体を構成する被覆部材としての樹脂製のプロテクタ26(図6の(A)及び(B)、図7の(A)及び(B)参照)が嵌合されている。プロテクタ26は、上面視U字状にされて、内部が右側に開放されており、プロテクタ26の左壁、前壁及び後壁は、それぞれフレーム22の背板22A、脚板22B及び脚板22Cを被覆している。プロテクタ26の上端部は、上壁にされており、プロテクタ26の上壁は、プロテクタ26の外側に突出されて、フレーム22の上側に載置されている。また、プロテクタ26の前部及び後部の一部は、断面逆J字状にされて、内部にそれぞれ脚板22B及び脚板22Cが嵌合されている。プロテクタ26内には、ベルト20が挿通されており、プロテクタ26は、ベルト20のフレーム22への接触を制限している。
【0036】
プロテクタ26の上壁の前部及び左部における上面には、支持面26Aを構成する上面視略L字状の下支持面26Bが形成されており、下支持面26Bは、上下方向に垂直に配置されている。プロテクタ26の上壁左部の左側部分には、略台形柱状の支持台26Cが所定数(本実施形態では2個)形成されており、所定数の支持台26Cは、前後方向に延在されると共に、互いに離間されている。支持台26Cの上面には、支持面26Aを構成する傾斜部としての左下傾斜面26Dが形成されており、左下傾斜面26Dは、右方(プロテクタ26の左右方向内側)へ向かうに従い下方へ向かう方向に傾斜されている。プロテクタ26の上壁後部の右端部には、略矩形柱状の支持柱26Eが一体形成されており、支持柱26Eは、上方に突出されている。支持柱26Eの上面には、支持面26Aを構成する傾斜部としての右下傾斜面26Fが形成されており、右下傾斜面26Fは、左方(プロテクタ26の左右方向内側)へ向かうに従い下方へ向かう方向に傾斜されている。
【0037】
フレーム22(脚板22B)の前側には、取付部材としての金属製のケース28(図3及び図5の(A)~(C)参照)が配置されている。ケース28には、略矩形板状の係止板28Aが設けられており、係止板28Aの上部及び下部がネジ30によって脚板22Bに固定されて、ケース28が脚板22Bに取付けられている。係止板28Aの下端部には、係止部としての断面矩形状の係止孔28Cが形成されており、係止孔28Cは、後方に開放されている。係止孔28Cは、左方へ向かうに従い下方へ向かう方向に延在されており、係止孔28Cの長手方向両端は、開放されている。係止板28Aの前側には、略有底円筒状の係止筒28Bが一体形成されており、係止筒28Bの軸方向は、前後方向に平行にされている。係止筒28B内は、係止板28Aを貫通して、係止板28Aの後側に開放されており、ケース28内には、スプール24の前部が同軸上に挿入されている。
【0038】
ケース28内には、変形部材(エネルギー吸収部材)としての金属製で略円柱状のトーションシャフト32(図4参照)が同軸上に配置されている。トーションシャフト32の前端部は、係止筒28B内の前端部に相対回転不能に係止されており、トーションシャフト32の後端部は、スプール24に相対回転不能に連結されて、スプール24の回転を制限している。
【0039】
バックル本体18からフレーム22までの範囲には、保持部材としての略矩形筒状のブーツ34(図8の(A)及び(B)、図9の(A)及び(B)参照)が設けられており、ブーツ34は、軟質樹脂製にされて、可撓性(弾性)を有している。ブーツ34は、軸方向が上下方向にされると共に、左右方向寸法が前後方向寸法に比し小さくされており、ブーツ34の厚さ方向は、左右方向にされている。ブーツ34の上部は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされており、ブーツ34は、上部内にバックル本体18の下側部分が嵌入されて、バックル本体18の下側へ移動を制限することで、バックル本体18を保持している。
【0040】
ブーツ34の下部は、収容部36にされており、収容部36は、ブーツ34の直上部分に対し、前方及び左方に突出されている。収容部36内の前部及び左部における上面には、被支持面36Aを構成する下面視略L字状の上支持面36Bが形成されており、上支持面36Bは、上下方向に垂直に配置されている。収容部36内の上面左部の左側部分には、略三角形柱状の支持溝36Cが所定数(本実施形態では1個)形成されており、支持溝36Cは、前後方向に延在されている。支持溝36Cの上面(底面)は、被支持面36Aを構成する傾斜部としての左上傾斜面36Dにされており、左上傾斜面36Dは、右方(ブーツ34の左右方向内側)へ向かうに従い下方へ向かう方向に傾斜されている。ブーツ34の右壁内面の後部には、収容部36の直上において、略三角柱状の支持突起36Eが一体形成されており、支持突起36Eは、左側に突出されている。支持突起36Eの下面には、被支持面36Aを構成する傾斜部としての右上傾斜面36Fが形成されており、右上傾斜面36Fは、左方(ブーツ34の左右方向内側)へ向かうに従い下方へ向かう方向に傾斜されている。
【0041】
収容部36の前壁(側壁)には、上側かつ左側の角部及び上側かつ右側の角部を除き、露出孔36Gが貫通形成されており、露出孔36Gは、収容部36内を前側に露出させている。また、収容部36の前壁における上側かつ左側の角部及び上側かつ右側の角部には、被覆部としての三角形板状の被覆壁36Hが形成されている。
【0042】
ブーツ34内には、ベルト20が挿入されており、収容部36には、フレーム22(スプール24を含む)及びプロテクタ26が収容されている。収容部36の露出孔36Gは、フレーム22の脚板22B及びプロテクタ26の前部を前側に露出させており、ケース28は、収容部36の露出孔36Gから前側に突出されている(図3及び図4参照)。収容部36の左側の被覆壁36Hは、脚板22B及びプロテクタ26の前側を被覆しており、収容部36の右側の被覆壁36Hは、プロテクタ26の前側を被覆している。
【0043】
ブーツ34の上支持面36B、左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fは、それぞれプロテクタ26の下支持面26B、左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fによって下側から支持されており、これにより、ブーツ34がプロテクタ26及びフレーム22によって下側から支持されて、ブーツ34の下側への移動が制限されている。上述の如く、ベルト20がスプール24に巻取られることで、ベルト20に張力が作用された状態で、ブーツ34がバックル本体18とプロテクタ26との間で弾性収縮力を作用されており、ブーツ34は、プロテクタ26及びフレーム22を下側に付勢してプロテクタ26及びフレーム22に対し自立されると共に、バックル本体18を上側に付勢して自立させている。
【0044】
ブーツ34(収容部36)の左壁の下端部及びフレーム22の背板22Aには、固定部材としての硬質樹脂製で略柱状のクリップ38が貫通されている。クリップ38の基端(左端)は、略楕円板状にされており、クリップ38の先端部(右端部)は、略台形柱状にされている。クリップ38の先端部の軸方向は、前後方向にされており、クリップ38の先端部は、上方及び下方に突出されている。クリップ38は、先端部が一時的に上下方向に弾性縮小されてブーツ34の左壁及びフレーム22の背板22Aに貫通された後に、先端部が、ブーツ34左壁及び背板22Aを通過されて、上下方向に弾性拡大(弾性復元)されている。このため、クリップ38の基端と先端部との間にブーツ34の左壁及びフレーム22の背板22Aとが挟まれて、クリップ38によってブーツ34の左壁がフレーム22の背板22Aに固定されることで、ブーツ34の右側への傾倒が抑制されている。
【0045】
ブーツ34の右壁の前端部には、固定部としての長尺板状の固定片40(図5の(A)~(C)参照)が一体形成されており、固定片40は、下方に延出されている。固定片40は、基端部において、フレーム22の脚板22Bの下側かつ右側の角部に沿って左側に曲げられおり、固定片40の基端部より先端側部分は、左方へ向かうに従い下方へ向かう方向に延出されている。
【0046】
固定片40の中間部(長手方向中間部)には、被引掛部としての長尺矩形状の引掛孔40Aが貫通形成されており、引掛孔40Aは、固定片40の長手方向に延在されている。引掛孔40Aには、脚板22Bの引掛突起22Dが貫通されており、引掛孔40Aは、左面が引掛突起22Dの基端側部分に接近又は当接されると共に、引掛突起22Dが前後方向において嵌合されている。固定片40の引掛孔40Aより先端側部分は、引掛突起22Dの先端部に当接可能にされており、固定片40の引掛孔40Aより先端側部分は、引掛突起22Dの先端部によって下側への移動を制限されている。これにより、固定片40(引掛孔40A)が引掛突起22Dに引掛けられている。
【0047】
固定片40の中間部は、引掛孔40Aより前側部分を含む部分において、ケース28(係止板28A)の係止孔28Cに挿入されており、係止孔28Cの下面は、固定片40の中間部の下側への移動を係止している。さらに、係止板28Aの係止孔28Cより下側部分は、脚板22Bの引掛突起22Dに接近又は当接されている。これにより、固定片40がフレーム22に固定されることで、ブーツ34の左側への傾倒が抑制されている。
【0048】
バックル本体18内のバックルスイッチには、一対のワイヤハーネス42(配線、図2参照)の一端が電気的に接続されており、ワイヤハーネス42は、バックル本体18の下端からブーツ34内(ブーツ34の後壁とプロテクタ26の後部及びフレーム22の脚板22Cとの間を含む)を介してブーツ34の下側に配索されている。ワイヤハーネス42の一端部は、プロテクタ26より上側においてベルト20の右側に配置されると共に、プロテクタ26の後部の周囲において屈曲されている。ワイヤハーネス42には、2本(3本以上でもよい)の電線42Aが設けられており、電線42Aは、例えばAVSS線(自動車用薄肉低圧電線)にされると共に、外周に被覆が設けられている。一対のワイヤハーネス42の一端部より他端側には、被覆管としての円管状のビニールチューブ42Bが設けられており、ビニールチューブ42Bは、可撓性を有している。ビニールチューブ42B内には、4本の電線42Aが挿入されており、4本の電線42Aは、ビニールチューブ42Bによって保護されている。また、電線42Aの径寸法は、プロテクタ26における支持柱26Eの突出基端から右下傾斜面26F下端までの上下方向寸法H(図2参照)に比し小さくされている。
【0049】
バックル本体18内のバックルスイッチは、一対のワイヤハーネス42を介して、車両の制御装置44に電気的に接続されており、制御装置44には、例えば、車両のエアバッグ装置46及び警告装置48が電気的に接続されている。バックルスイッチがバックル本体18へのタング16の係合(ウェビング14の乗員への装着)を検出しない際には、制御装置44の制御により、車両の衝突時にエアバッグ装置46が作動されないと共に、警告装置48が乗員にウェビング14の装着を促す警告を行う。バックルスイッチがバックル本体18へのタング16の係合(ウェビング14の乗員への装着)を検出する際には、制御装置44の制御により、車両の衝突時にエアバッグ装置46が作動されると共に、警告装置48が乗員にウェビング14の装着を促す警告を行わない。
【0050】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0051】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル装置10において、スプール24の回転をトーションシャフト32が制限して、ベルト20のスプール24からの引出し及びバックル本体18の上側への延出が制限されており、バックル本体18にウェビング14のタング16が係合されることで、乗員にウェビング14が装着される。
【0052】
車両の衝突時(緊急時)には、巻取装置のロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックすることで、ウェビング14によって乗員が拘束される。そして、例えば乗員に慣性力が作用されて、乗員によってウェビング14が引張られた際には、ウェビング14からタング16及びバックル本体18を介してベルト20にスプール24からの引出力が作用されることで、スプール24に回転力が作用される。さらに、スプール24に作用される回転力によって、トーションシャフト32が前端部と後端部との間において捩れ変形(塑性変形)されて、スプール24の回転が許容されることで、ベルト20のスプール24からの引出しが許容されて、バックル本体18(タング16を含む)の上側への延出が許容される。このため、ウェビング14から乗員(特に胸部)に作用される荷重が低減される(トーションシャフト32が捩れ変形されるための荷重(フォースリミッタ荷重)に制限される)と共に、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト32の捩れ変形によって吸収されることで、乗員が保護される。
【0053】
ところで、バックル本体18がブーツ34の上部内に保持されている。さらに、ブーツ34下部の収容部36にフレーム22及びプロテクタ26が収容されており、ブーツ34の被支持面36Aの上支持面36B、左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fがそれぞれプロテクタ26の支持面26Aの下支持面26B、左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fによって下側から支持されて、ブーツ34がフレーム22及びプロテクタ26によって下側から支持されている。
【0054】
ここで、ブーツ34の左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fとプロテクタ26の左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fとが、ブーツ34の左右方向(厚さ方向)内側へ向かうに従い下方(バックル本体18側からプロテクタ26側)へ向かう方向に傾斜されている。このため、例えば乗員からの荷重がバックル本体18及びブーツ34に上側から入力された際には、左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fと左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fとによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を作用させることができる。これにより、ブーツ34がプロテクタ26の左右方向外側に変位してブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26による支持が解除されることを抑制でき、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側(フレーム22及びプロテクタ26の側)への変位を抑制できる。
【0055】
また、ブーツ34(被支持面36A)に左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fが設けられると共に、プロテクタ26(支持面26A)に左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fが設けられている。このため、左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fと左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fとによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を効果的に作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を効果的に抑制できる。
【0056】
さらに、ブーツ34(被支持面36A)の左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fをそれぞれプロテクタ26(支持面26A)の左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fが支持している。このため、左上傾斜面36D及び右上傾斜面36Fと左下傾斜面26D及び右下傾斜面26Fとによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を効果的に作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を効果的に抑制できる。
【0057】
しかも、ブーツ34及びプロテクタ26の左側(ブーツ34厚さ方向一側)に左上傾斜面36D及び左下傾斜面26Dが設けられると共に、ブーツ34及びプロテクタ26の右側(ブーツ34厚さ方向他側)に右上傾斜面36F及び右下傾斜面26Fが設けられている。このため、左上傾斜面36D及び左下傾斜面26Dと右上傾斜面36F及び右下傾斜面26Fとによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を効果的に作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を効果的に抑制できる。
【0058】
また、プロテクタ26の左側(ブーツ34厚さ方向片側)に左下傾斜面26Dが複数設けられている。このため、複数の左下傾斜面26Dによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を効果的に作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を効果的に抑制できる。
【0059】
さらに、右上傾斜面36F及び右下傾斜面26Fの前側及び左側(ブーツ34周方向両側)に被支持面36A及び支持面26Aが設けられていない。このため、右上傾斜面36F及び右下傾斜面26Fの前側及び左側に被支持面36A及び支持面26Aが設けられない場合でも、右上傾斜面36F及び右下傾斜面26Fによってブーツ34にプロテクタ26の左右方向内側への変位力を作用させることができ、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を抑制できる。
【0060】
また、ブーツ34(収容部36)の露出孔36Gがフレーム22の脚板22B及びプロテクタ26を前側に露出させており、収容部36の被覆壁36Hが脚板22B及びプロテクタ26の少なくとも一方の前側を被覆している。このため、ブーツ34がプロテクタ26の左右方向内側への変位力を作用される際に、露出孔36Gからフレーム22及びプロテクタ26が抜け出ることを被覆壁36Hによって抑制でき、ブーツ34がプロテクタ26の左右方向内側に変位されることを抑制できて、ブーツ34のフレーム22及びプロテクタ26に対する下側への変位を抑制できる。
【0061】
さらに、ワイヤハーネス42の電線42Aの径寸法がプロテクタ26における支持柱26Eの突出基端から右下傾斜面26F下端までの上下方向寸法Hに比し小さくされている。このため、ブーツ34の右上傾斜面36Fとプロテクタ26の右下傾斜面26Fとの間に電線42Aが挟まれることを支持柱26Eによって制限できる。
【0062】
なお、本実施形態では、プロテクタ26の左側(ブーツ34厚さ方向片側)に傾斜部(左下傾斜面26D)が複数設けられる。しかしながら、これと共に、又は、これに代えて、ブーツ34の左側(ブーツ34厚さ方向片側)に傾斜部が複数設けられてもよく、プロテクタ26の右側(ブーツ34厚さ方向片側)に傾斜部が複数設けられてもよく、ブーツ34の右側(ブーツ34厚さ方向片側)に傾斜部が複数設けられてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、ブーツ34及びプロテクタ26の左側(ブーツ34厚さ方向一側)に傾斜部(左下傾斜面26D及び左上傾斜面36D)が設けられると共に、ブーツ34及びプロテクタ26の右側(ブーツ34厚さ方向他側)に傾斜部(右下傾斜面26F及び右上傾斜面36F)が設けられる。しかしながら、ブーツ34及びプロテクタ26の左側又は右側(ブーツ34厚さ方向片側)に傾斜部が設けられてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、ブーツ34(被支持面36A)に傾斜部(左上傾斜面36D及び右上傾斜面36F)が設けられると共に、プロテクタ26(支持面26A)に傾斜部(左下傾斜面26D及び右下傾斜面26F)が設けられる。しかしながら、ブーツ34(被支持面36A)及びプロテクタ26(支持面26A)の少なくとも一方に傾斜部が設けられればよい。
【0065】
また、本実施形態では、フレーム22にスプール24が設けられる。しかしながら、フレーム22にスプール24が設けられずに、フレーム22にベルト20が連結されてもよい。この場合、トーションシャフト32が設けられなくてもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、変形部材がトーションシャフト32にされる。しかしながら、変形部材がトーションシャフト32以外のものにされてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、電線42Aが4本設けられる。しかしながら、電線42Aは1本以上設けられればよい。
【符号の説明】
【0068】
10・・・バックル装置、14・・・ウェビング、16・・・タング、18・・・バックル本体、22・・・フレーム(支持体)、26・・・プロテクタ(支持体)、26A・・・支持面、26D・・・左下傾斜面(傾斜部)、26F・・・右下傾斜面(傾斜部)、34・・・ブーツ(保持部材)、36・・・収容部、36A・・・被支持面、36D・・・左上傾斜面(傾斜部)、36F・・・右上傾斜面(傾斜部)、36G・・・露出孔、36H・・・被覆壁(被覆部)
図1
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図9