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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116044
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/16 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B62B3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022037
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 篤史
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和浩
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050BB03
3D050CC01
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
(57)【要約】
【課題】台車が上下に段積みされた状態で、下側の台車に対して上側の台車が横ずれしにくい台車を提供する。
【解決手段】台車1は、積載物を載置するための台部2と、キャスター部3と、を備える。キャスター部3は、台部2の下面に取り付けられている。台部2は、凹部54と、突出部55と、を有する。凹部54は、台部2の上方の載置面510から凹み、キャスター部3の車輪部31を収納する。突出部55は、凹部54の中央部から上方に突出し、凹部54に収納された車輪部31の移動を規制する。凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物を載置するための台部と、
前記台部の下面に取り付けられるキャスター部と、を備えた台車において、
前記台部は、
前記台部の上方の載置面から凹み、前記キャスター部の車輪部を収納する凹部と、
前記凹部の中央部から上方に突出し、前記凹部に収納された前記車輪部の移動を規制する突出部と、を有し、
前記凹部の凹み深さは、前記車輪部の直径の15.15%以上である、
台車。
【請求項2】
前記台部は、前記台部から下方に突出するリブを更に有し、
前記リブは、
前記台部の前記凹部を有さない部分に形成された第一リブと、
前記台部の前記凹部を有する部分に形成された第二リブと、を有し、
前記台部の載置面から前記第一リブの下端までの長さL11、前記凹部の底面から前記第二リブの下端までの長さL12及び前記凹部の凹み深さL13が、下記の数式(1)を満たす、
請求項1に記載の台車。
数式(1)
【請求項3】
前記キャスター部は、平面視において、前記車輪部の中心部が上下方向に延びる旋回軸回りに旋回可能で、かつ、前記中心部を通って前記車輪部の長手方向に延びる直線上に前記旋回中心軸が位置するように構成されており、
前記突出部の前記凹部の底面からの最大突出長さは、前記旋回軸から前記中心部までの長さである旋回半径L22及び前記車輪部の半径L23から下記の数式(2)に基づいて求められ、
前記突出部の前記凹部の底面からの突出長さL21は、前記最大突出長さ以下である、
請求項1又は2に記載の台車。
数式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、底面フレームと、底面フレームの下面に取り付けられるホイールと、を備えたローラーキャリッジが記載されている。このローラーキャリッジにおいて、底面フレームには、ホイールを収納するための凹部が設けられている。このように、底面フレームに凹部を設けることで、ローラーキャリッジが上下に段積みされた状態で、下側のローラーキャリッジに対して上側のローラーキャリッジが横ずれしにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平8-503438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示すローラーキャリッジにあっては、ローラーキャリッジの移動時に床面にある凹凸を乗り越えやすくするために、ローラーキャリッジのホイールの直径を大きくする必要があった。
【0005】
しかしながら、ローラーキャリッジのホイールの直径が大きくなるほど、ローラーキャリッジの移動時に床面にある凹凸を乗り越えやすくはなるが、ローラーキャリッジを段積みした際、底面フレームに設けられた凹部の凹み深さが浅いと、下側のローラーキャリッジに対して上側のローラーキャリッジが横ずれするおそれがあった。
【0006】
本開示は、上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、台車が上下に段積みされた状態で、下側の台車に対して上側の台車が横ずれしにくい台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る一実施形態の台車は、積載物を載置するための台部と、キャスター部と、を備える。前記キャスター部は、前記台部の下面に取り付けられる。前記台部は、凹部と、突出部と、を有する。前記凹部は、前記台部の上方の載置面から凹み、前記キャスター部の車輪部を収納する。前記突出部は、前記凹部の中央部から上方に突出し、前記凹部に収納された前記車輪部の移動を規制する。前記凹部の凹み深さは、前記車輪部の直径の15.15%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る台車にあっては、台車が上下に段積みされた状態で、下側の台車に対して上側の台車が横ずれしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る台車を斜め上方から見た斜視図である。
図2図2は、同上の台車を斜め上方から見た分解斜視図である。
図3図3は、同上の台車の平面図である。
図4図4は、同上の台車の側断面図である。
図5図5は、同上の台車を段積みした状態の側断面図である。
図6図6は、同上の台車の要部を拡大した側断面図である。
図7図7は、同上の台車の変形例を示す側断面図である。
図8図8は、一実施形態に係る台車の変形例を斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
図1に示すように、一実施形態に係る台車1は、積載物を載置するための台部2と、キャスター部3と、を備える。キャスター部3は、台部2の下面に取り付けられる。台部2は、凹部54と、突出部55と、を有する。凹部54は、台部2の上方の載置面510から凹み、キャスター部3の車輪部31を収納する。突出部55は、凹部54の中央部から上方に突出し、凹部54に収納された車輪部31の移動を規制する。図4に示すように、凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上である。
【0011】
一実施形態に係る台車1にあっては、台部2の凹部54にキャスター部3の車輪部31が収納され、この車輪部31の移動を突出部55によって規制している。これにより、台車1が上下に段積みされた状態で、下側の台車1に対して上側の台車1が横ずれしにくい。また、一実施形態に係る台車1にあっては、凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上である。これにより、台車1が上下に段積みされた状態で、下側の台車1に対して上側の台車1がより横ずれしにくい。
【0012】
2.一実施形態
2-1.詳細
続いて、図1図6に示す本実施形態の台車1について図面を参照しながら、更に詳しく説明する。
【0013】
2-2.台車
図1に示すように、台車1は、台部2と、キャスター部3と、を備える。台車1は、人力で積載物を搬送するために用いられる運搬用台車である。台車1は、地面に載せられた台車1に対して台車1を上下に段積み可能であり、台車1を上下に段積みした状態で下側の台車1の移動が可能である。
【0014】
台車1は、平面視において矩形状である。以下では、台車1が載置された状態を基準として、上下方向としている。また、台車1の長辺に沿う方向を長辺方向とし、台車1の短辺に沿う方向を短辺方向としている。
【0015】
2-3.キャスター部
図4に示すように、キャスター部3は、車輪部31と、支持部32と、を有する。キャスター部3は、台部2の下面に四つ取り付けられている。四つのキャスター部3は、それぞれ同一形状である。
【0016】
車輪部31は、車輪軸311と、タイヤ312と、を有する。車輪部31は、支持部32によって吊り下げ支持されている。本実施形態では、車輪部31の直径L20は、64mm~101mmであり、車輪部31の直径L20が2.5in(64mm)、3in(75mm)及び4in(100mm)のタイヤ312が主な対象となる。ここで、本開示において、数値範囲を示す「~」は、その上限値及び下限値を含むものとする。
【0017】
車輪軸311は、タイヤ312の中心に位置する。車輪軸311は、タイヤ312を回転自在に支持する。これにより、台車1の移動が可能となる。タイヤ312は、例えば、ゴム製である。なお、タイヤ312は、ゴム以外の材料から形成されてもよく、ゴム以外の材料としては、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0018】
支持部32は、上片321と、旋回軸323と、を有する。支持部32は、例えば、金属製である。なお、支持部32は、金属以外の材料から形成されてもよい。
【0019】
上片321は、矩形板状である。上片321は、台部2の下面に固定されている。上片321は、旋回軸323の上端が連結される。旋回軸323は、上片321に対して略鉛直の軸回りに旋回する。旋回軸323の両端には、一対の連結片322が下方に延びている。一対の連結片322の下端の間には、略水平に架け渡される車輪軸311が連結される。これにより、連結片322に連結された車輪部31が旋回可能となる。
【0020】
車輪軸311の中心部313は、旋回軸323の中心の垂直線CL1に対して偏心した垂直線CL2上に位置する。旋回軸323の中心の垂直線CL1の上には、後述する突出部55の上面552が位置する。また、車輪軸311の中心部313の垂直線CL2の上には、後述する凹部54の底面542が位置する。
【0021】
2-4.台部
図3に示すように、台部2は、辺部材4と、コーナー部材5と、を有する。台部2の上面には、積載物が載置される。台部2は、平面視において矩形状である。本実施形態では、台部2の一辺は、概ね30cm~100cmである。
【0022】
平面視における台部2の形状は、短辺方向の中央を通る長辺方向に沿った線を中心として対称である。また、平面視における台部2の形状は、長辺方向の中央を通る短辺方向に沿った線を中心として対称である。平面視における台部2の中央部には、上下に貫通する貫通部20が形成されている。
【0023】
2-4-1.辺部材
図2に示すように、辺部材4は、長辺部材41と、短辺部材42と、を有する。辺部材4は、横方向(台車1が水平面に載置された状態での水平方向)に延びている。長辺部材41は、台部2の長辺方向に沿って延びた二つのアングル材410である。二つのアングル材410は、短辺方向の中央を通る長辺方向に沿った線を中心として、互いに反転している点を除いて、同一である。
【0024】
アングル材410は、縦片412と、積載物を支持するための梁部となる横片413と、を有する。アングル材410は、例えば、金属製である。なお、アングル材410は、金属以外の材料から形成されてもよく、金属以外の材料としては、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0025】
縦片412は、横片413の外側(平面視における台部2の外端側)の端縁から上方に延びている。縦片412は、横片413の上面に載置される積載物が外方に移動して横片413から落下しないように、積載物が外方に移動するのを規制する規制部(言い換えると落下防止部)として機能する。
【0026】
アングル材410において、縦片412と、横片413とが一体に形成されている。これにより、積載物が載置される横片413及び台車1全体の曲げ剛性が向上して台車1がたわみにくくなると共に、台車1の衝撃に対する強度が向上する。
【0027】
短辺部材42は、台部2の短辺方向に沿って延びた二つのアングル材420である。二つのアングル材420は、長辺方向の中央を通る短辺方向に沿った線を中心として互いに反転している点を除いて、同一である。
【0028】
アングル材420は、縦片422と、積載物を支持するための梁部となる横片423と、を有する。アングル材420は、例えば、金属製である。なお、アングル材420は金属以外の材料から形成されてもよく、金属以外の材料としては、例えば、樹脂等が挙げられる。
【0029】
縦片422は、横片423の外側(平面視における台部2の外端側)の端縁から上方に延びている。縦片422は、横片423の上面に載置される積載物が外方に移動して横片423から落下しないように、積載物が外方に移動するのを規制する規制部(言い換えると落下防止部)として機能する。
【0030】
アングル材420において、縦片422と、横片423とが一体に形成されている。これにより、積載物が載置される横片423及び台車1全体の曲げ剛性が向上して台車1がたわみにくくなると共に、台車1の衝撃に対する強度が向上する。
【0031】
2-4-2.コーナー部材
コーナー部材5は、辺部材4を連結する。コーナー部材5を介して辺部材4にリベット(不図示)等を打ち込むことにより、コーナー部材5と辺部材4とが固定される。これにより、台部2が構成される。
【0032】
コーナー部材5は、平面視における台部2の四つの角に配置される。四つのコーナー部材5の下面には、キャスター部3が取り付けられる。四つのコーナー部材5は、短辺方向の中央を通る長辺方向に沿った線を中心として互いに反転している点を除いて、同一である。また、四つのコーナー部材5は、長辺方向の中央を通る短辺方向に沿った線を中心として互いに反転している点を除いて、同一である。
【0033】
図2図4に示すように、コーナー部材5は、横片51と、縦片52と、を有する。コーナー部材5は、例えば、樹脂製である。なお、コーナー部材5は、樹脂以外の材料から形成されてもよく、樹脂以外の材料としては、例えば、金属等が挙げられる。
【0034】
横片51は、切欠部53と、凹部54と、突出部55と、リブ56と、を有する。横片51は、平面視における三角形状である。横片51の上面は、積載物を載置する載置面510となる。
【0035】
載置面510は、直接的に積載物を支持する。載置面510は、側面視において水平な平面である。なお、側面視における載置面510の形状は、特に限定されない。
【0036】
横片51の下面には、切欠部53が設けられている。切欠部53は、台車1の外周形状の短辺側の端部と長辺側の端部とに設けられている。切欠部53には、辺部材4の横片413,423の端部が挿入される。
【0037】
凹部54は、横片51の上面の一部に形成される。凹部54は、横片51の上方の載置面510から凹んだ部分である。凹部54は、平面視において円状である。なお、平面視における凹部54の形状は、特に限定されない。
【0038】
凹部54は、車輪部31を収納するための収納部(車輪収納部)として機能する。また、凹部54の外周縁は、車輪部31の移動するのを規制する規制部(言い換えると脱輪防止部)としても機能する。
【0039】
凹部54の平面視における直径は、横片51の平面視における最長の長さの40%~70%であることが好ましく、より好ましくは、50%~60%である。本実施形態においては、横片51の平面視における最長の長さは、横片51の平面視における三角形状のうちの横片51の斜辺の長さである。また、横片51の平面視における三角形状のうちの横片51の斜辺の長さをなるべく短くして、凹部54を形成するためには、凹部54の平面視における直径は、横片51の平面視における三角形状のうちの横片51の斜辺の長さの50%を超えることが特に好ましい。これにより、横片51の強度が凹部54によって低下しにくい。
【0040】
凹部54は、傾斜面541と、底面542と、貫通孔543と、を有する。傾斜面541は、載置面510の上方から凹部54の中心に向かって傾斜する面である。傾斜面541は、凹曲面となっている。傾斜面541の上縁には、底面542に載置された車輪部31が接触する。このため、車輪部31が車輪軸311の軸回りに回転するのを規制する。
【0041】
底面542は、傾斜面541の下縁から連続している。底面542には、凹部54に収納された車輪部31が載置される。底面542は、平面視において円環状である。底面542は、傾斜面541の下端から水平方向に連続している。底面542は、側面視において平面である。なお、側面視における底面542の形状は、特に限定されない。側面視における底面542の形状は、例えば、下方に湾曲した形状(車輪部31の外周面に近い形状)であってもよい。
【0042】
貫通孔543は、底面542に設けられている。貫通孔543は、底面542のうち、凹部54の中央部以外の底面542の一部に形成される。貫通孔543は、底面542における横片51を上下に貫通するように形成される。貫通孔543は、例えば、底面542に溜まった水や砂等を排出するために設けられる。なお、凹部54が有する貫通孔543の数は、特に限定されず、一つでもよいし、複数あってもよい。また、凹部54は、貫通孔543を有さなくてもよい。
【0043】
本実施形態では、底面542から載置面510までの上下の長さ(凹部54の凹み深さ)L13は、10mmである。なお、凹部54の凹み深さL13は、特に限定されない。
【0044】
凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上であることが好ましく、より好ましくは、15.45%以上であり、更に好ましくは、15.55%以上であり、特に好ましくは、15.64%以上である(表1参照)。なお、凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上であればよく、30%以下であってもよいし、25%以下であってもよいし、20%以下であってもよいし、16%以下であってもよい(表2参照)。ここで、各割合に対して車輪部31の直径L20が2.5in、3in及び4inである場合の凹部54の凹み深さL13を下記の表に示す。なお、下記の表中の凹部54の凹み深さL13の値は、車輪部31の直径L20の公差を考慮した値を記載している。すなわち、表1においては、凹部54の凹み深さL13として、車輪部31の直径L20の公差を考慮した凹部54の凹み深さL13の許容範囲の上限値を記載し、表2においては、凹部54の凹み深さL13として、車輪部31の直径L20の公差を考慮した凹部54の凹み深さL13の許容範囲の下限値を記載している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
図6に示すように、台車1を上下に段積みされた状態で、上側の台車1の車輪部31が移動して、下側の台車1の凹部54の傾斜面541を乗り越える乗り越えやすさは、凹部54の凹み深さL13に関係する。凹部54の凹み深さL13が深いほど、上側の台車1の車輪部31が移動する方向の水平方向に対する角度θ1が大きくなり、下側の台車1の凹部54の傾斜面541を乗り越えにくくなる。角度θ1は、概ね45度である。角度θ1が大きくなるほど、上側の台車1の車輪部31が下側の台車1の凹部54の傾斜面541を乗り越えにくい。そのため、凹部54の凹み深さL13を深くした方が、台車1を上下に積み上げた際に、下側の台車1に対して上側の台車1が横ずれしにくいという観点から凹部54の凹み深さL13の下限が15.15%となる。
【0048】
図4に示すように、リブ56は、横片51の下面に形成されている。リブ56は、横片51から下方に突出している。リブ56は、突状の部材である。リブ56は、横片51のうちの切欠部53と貫通孔543以外の部分に形成されている。
【0049】
リブ56は、第一リブ561と、第二リブ562と、第三リブ563と、を有する。第一リブ561は、凹部54を有さない部分に形成される。第一リブ561は、短辺側の端部と長辺側の端部とに二つ設けられている。第一リブ561の短辺側の端部は、長辺方向に沿って延びた部材である。また、第一リブ561の長辺側の端部は、短辺方向に沿って延びた部材である。
【0050】
二つの第一リブ561の突出長さは、それぞれ同じである。本実施形態では、載置面510から第一リブ561の下端までの上下の長さL11は、15mmである。なお、載置面510から第一リブ561の下端までの上下の長さL11は、特に限定されない。
【0051】
第二リブ562は、横片51の凹部54を有する部分に形成される。第二リブ562は、短辺方向と長辺方向に沿って延びた格子状のリブ群である。第二リブ562の突出長さは、それぞれ同じである。
【0052】
側面視における突出部55には、上方に凹んだ凹部550が形成されている。このように凹部550が形成されることで、成形装置により成形された突出部55が成形後に変形しにくい。第二リブ562は、突出部55の凹部550の下方を交差している。各第二リブ562は、突出部55の凹部550を跨ぐように形成される。これにより、突出部55の凹部550を跨ぐ第二リブ562を形成することで、凹部550が形成された部分の台部2の強度が向上する。
【0053】
第三リブ563は、横片51の凹部54を有する部分に形成される。第三リブ563は、短辺方向と長辺方向に沿って延びた部材である。第三リブ563は、第二リブ562の外側に位置する。第三リブ563の一部には、一対の保持片564が形成されている。一対の保持片564は、第三リブ563の下端に連続している。
【0054】
第三リブ563及び一対の保持片564に囲まれた空間が、キャスター部3の上片321を取り付ける空間である。キャスター部3が台部2に取り付けられた状態で、キャスター部3の上片321と凹部54の底面542の下面との間には、第二リブ562が位置する。第二リブ562及び第三リブ563は、凹部54を有する部分に形成されることで、台部2の強度が向上する。第三リブ563の下面の面積は、凹部54の底面542の面積の5~15%であることが好ましく、より好ましくは6%~12%、更に好ましくは7%~10%である。
【0055】
本実施形態では、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12は、13mmである。なお、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12は、特に限定されない。
【0056】
図6に示すように、載置面510から第一リブ561の下端までの上下の長さL11、底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12及び凹部54の凹み深さL13が、下記の数式(1)を満たす。
【0057】
【数1】
【0058】
数式(1)を満たすことは、凹部54の凹み深さL13によって、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12を長くすることを意味する。これにより、台部2のうち、凹部54が設けられた部分の強度が向上することとなる。
【0059】
図3及び図4に示すように、突出部55は、凹部54の中央部から上方に突出している。本実施形態では、突出部55は、側面視において円錐台形状である。なお、側面視における突出部55の形状は、特に限定されない。
【0060】
突出部55は、底面542に載置される車輪部31の移動するのを規制する規制部(言い換えると脱輪防止部)として機能する。
【0061】
突出部55は、傾斜面551と、上面552と、を有する。傾斜面551は、底面542から連続し、径方向内側に向かって上方に傾斜する面である。傾斜面551は、凹曲面となっている。
【0062】
傾斜面551の凹部54の底面542からの傾斜角度θ2は、車輪部31の直径L20が小さくなるほど小さく、傾斜面551の傾斜角度θ2は、車輪部31の直径L20が大きくなるほど大きい。また、凹部54の傾斜面541の凹部54の底面542からの傾斜角度θ3は、車輪部31の直径L20が小さくなるほど大きく、凹部54の傾斜面541の傾斜角度θ3は、車輪部31の直径L20が大きくなるほど小さい。
【0063】
本実施形態では、車輪部31の直径L20が2.5in又は3inである場合に、傾斜面551の傾斜角度θ2は、凹部54の傾斜面541の傾斜角度θ3よりも大きく、車輪部31の直径L20が4inである場合に、傾斜面551の傾斜角度θ2は、凹部54の傾斜面541の傾斜角度θ3よりも小さい。なお、傾斜面551の傾斜角度θ2は、車輪部31の直径L20の大小を問わず、凹部54の傾斜面541の傾斜角度θ3と同じでもよい。
【0064】
傾斜面551の上縁には、上面552が連続している。上面552は、傾斜面551の上縁から水平方向に連続した平面である。上面552は、平面視における円状である。
【0065】
突出部55の下方には、上述したように、キャスター部3の上片321に対して車輪部31の方向を旋回可能とする旋回軸323が位置する。これにより、旋回するキャスター部3の車輪部31が任意の方向を向いていても、車輪部31のタイヤ312が、上面552の周縁及び傾斜面551の上縁に接触する。このため、車輪部31が車輪軸311の軸回りに回転するのを規制する。
【0066】
図6に示すように、凹部54の底面542から突出部55の上面まで(突出部55の凹部54の底面542から)の最大突出長さは、旋回軸323の中心の垂直線CL1から水平方向に向かった中心部313までの長さである旋回半径L22及び車輪部31の半径L23から下記の数式(2)に基づいて求められる。
【0067】
【数2】
【0068】
具体的には、台車1を上下に段積みした状態の上側の台車1の台車1の車輪部31の中心部313から水平方向に向かって旋回軸323の中心の垂直線CL1までの一辺の長さである旋回半径L22及び台車1を上下に段積みした状態の台車1の車輪部31の中心部313から斜め下方に向かって下側の台車1の突出部55の上面552までの斜辺の長さである車輪部31の半径L23から下記の数式(2-1)のピタゴラスの定理(三平方の定理)に基づいて、台車1を上下に段積みした状態の他辺の長さL24が求められ、
【数3】
上記の数式(2-1)によって求められた台車1を上下に段積みした状態の他辺の長さL24及び台車1を上下に段積みした状態の上側の台車1の車輪部31の中心部313から鉛直方向に向かって下側の台車1の凹部54の底面542までの長さである車輪部31の半径L23から下記の数式(2-2)に基づいて突出部55の凹部54の底面542からの最大突出長さが求められる。
【数4】
【0069】
突出部55の凹部54の底面542からの突出長さL21は、突出部55の凹部54の底面542からの最大突出長さ以下である。また、突出部55の凹部54の底面542からの最大突出長さは、凹部54の凹み深さL13以下である。
【0070】
図1及び図2に示すように、横片51の外側(平面視における台部2の外端側)の端縁には、縦片52が上方に延びている。縦片52は、横片51の上面に載置される積載物が外方に移動して横片51から落下しないように、積載物が外方に移動するのを規制する規制部(言い換えると落下防止部)として機能する。このように、コーナー部材5において、縦片52と、横片51とが一体に形成されることにより、積載物が載置される横片51及び台車1全体の曲げ剛性が向上して横片51(台車1)がたわみにくくなると共に、台車1の衝撃に対する強度が向上する。なお、本実施形態では、縦片52の規制部(内側面)は、直接的に積載物が外方に移動するのを規制する。
【0071】
縦片52は、溝部57を有する。溝部57は、下方に開口している。溝部57は、短辺側の端縁と長辺側の端縁の両方に設けられている。溝部57には、辺部材4の縦片412,422が挿入される。
【0072】
2-5.台車が段積みされた状態の移動時
図5に示すように、台車1が上下に段積みされた状態で台車1が長手方向に移動すると、上側の台車1の四つの車輪部31が進行方向とは反対側を向くように旋回する。ここで、台車1が上下に段積みされた状態で進行方向を前方とし、その反対側を後方とする。台車1が上下に段積みされた状態で上側の台車1の四つの車輪部が後方を向いて旋回する。このとき、四つの車輪部31のうち、後方の二つの車輪部31の外周部分が下側の台車1の縦片52の一部に接触するように構成されている。台車1が上下に段積みされた状態の移動時に、下側の台車1の縦片52は、下側の台車1の凹部54に収納された上側の台車1の車輪部31が外方に移動して下側の台車1の台部2から脱輪しないように、上側の台車1の車輪部31が外方に移動するのを規制する規制部(言い換えると脱輪防止部)としても機能する。
【0073】
台車1が上下に段積みされた状態で台車1が短手方向に移動すると、上側の台車1の四つの車輪部31が進行方向とは反対側を向くように旋回する。ここで、台車1が上下に段積みされた状態で進行方向を前方とし、その反対側を後方とする。台車1が上下に段積みされた状態の移動時に、上側の台車1の四つの車輪部が後方を向いて旋回する。このとき、四つの車輪部31のうち、後方の二つの車輪部31の外周部分が下側の台車1の縦片52の一部に接触するように構成されている。台車1が上下に段積みされた状態の移動時に、下側の台車1の縦片52は、下側の台車1の凹部54に収納された上側の台車1の車輪部31が外方に移動して下側の台車1の台部2から脱輪しないように、上側の台車1の車輪部31が外方に移動するのを規制する規制部(言い換えると脱輪防止部)としても機能する。
【0074】
台車1が上下に段積みされた状態の移動時に、下側の台車1の横片51には、上側の台車1の車輪部31が載置されない領域58を形成している。上側の台車1の車輪部31が載置されない領域58は、横片51の上方の載置面510のうち、横片51の上方の載置面510に形成された凹部54以外の部分である。具体的には、上側の台車1の車輪部31が載置されない領域58は、下側の台車1の凹部54と縦片52との間の部分(上側の台車1の車輪部31が下側の台車1の縦片52の一部に接触した状態で、下側の台車1の凹部54と縦片52との間に形成された上側の台車1の車輪部31が載置されない空間部分)である。
【0075】
2-6.作用効果
以上説明した本実施形態の台車1では、上側の台車1の車輪部31を下側の台車1の凹部54に収納したうえで、下側の台車1の突出部55によって、上側の台車1の車輪部31を移動することを抑えて、下側の台車1に対して上側の台車1が横ずれしにくくなる。
【0076】
また、本実施形態の台車1では、凹部54の凹み深さL13が車輪部31の直径の15.15%以上であるため、台車1が上下に段積みされた状態で、下側の台車1に対して上側の台車1が横ずれしにくい。
【0077】
また、本実施形態の台車1では、台部2に凹部54があると、凹部54がある部分の台部の強度が弱くなるため、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12を凹部54の凹み深さL13よりも長くすることで、凹部54がある部分の台部2の強度を強くすることができる。
【0078】
また、本実施形態の台車1では、凹部54は、旋回する車輪部31に沿って形成されて
いるため、車輪部31の向く方向を考慮しなくても凹部54に収納することができる。
【0079】
また、本実施形態の台車1では、突出部55の下方には、キャスター部3の上片321に対して旋回可能となる旋回軸323が位置することで、旋回するキャスター部3の車輪部31が任意の方向を向いていても、傾斜面545の上縁に接触するため、車輪部31が車輪軸311の軸回りに回転するのを規制することができる。
【0080】
また、本実施形態の台車1では、旋回するキャスター部3の車輪部31の外周面が凹部54の傾斜面541に接触するため、車輪部31が車輪軸311の軸回りに回転するのを規制することができる。
【0081】
3.変形例
台車1の形状、大きさ、材質等は、特に限定されない。
【0082】
また、台部2には、上下に貫通する貫通部20が形成されなくてもよい。
【0083】
また、台部2において、辺部材4と、コーナー部材5とが一体に形成されてもよい。
【0084】
また、辺部材4は、縦片412,422を有さなくてもよく、横片413,423のみを有してもよい。
【0085】
また、コーナー部材5は、縦片52を有さなくてもよく、横片51のみを有してもよい。
【0086】
また、凹部54の形状は、車輪部31の旋回範囲の大きさに応じた形状であればよい。
【0087】
また、凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20に応じた深さであればよい。
【0088】
また、台車1が上下に段積みされた状態の移動時に、上側の台車1の四つの車輪部31のうち、二つの車輪部31の外周部分が縦片の一部に接触するように構成されていたが、これに限定されず、上側の台車1の四つの車輪部31のうち、少なくとも一つの車輪部31の外周部分が下側の台車1の縦片52の一部に接触するように構成されてもよいし、上側の台車1の四つの車輪部31の全てが下側の台車1の縦片52に接触しないように構成されてもよい。
【0089】
また、台車1の他例を図7に示す。この他例では、リブ56は、第四リブ565を更に有する。第四リブ565は、短辺方向に沿って延びた突状部材である。第四リブ565は、横片51の凹部54の傾斜面541を有する部分に形成されている。第四リブ565は、側面視における縦片52と第三リブ563との間に位置する。載置面510から第一リブ561の下端までの上下の長さL11、第四リブ565の下端から第四リブ565の上端までの上下の長さL14及び第四リブ565の上端から載置面510までの上下の長さL15が、下記の数式(3)を満たし、
【数5】
上記の数式(3)及び凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12が、下記の数式(4)を満たす。なお、他例に係る台車1は、一実施形態に係る台車1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【数6】
【0090】
また、台車1の他例を図8に示す。この他例では、台部2が全体として一枚の平板状の板材で構成されている。この場合、台部2は、直接的に積載物を載置するための載置面510となる。凹部54は、台部2の四つの角に配置される。なお、他例に係る台車1は、一実施形態に係る台車1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0091】
4.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例の台車1のように、第一態様の台車1は、下記の構成を備える。
【0092】
すなわち、第一態様の台車1は、積載物を載置するための台部2と、キャスター部3と、を備える。キャスター部3は、台部2の下面に取り付けられている。台部2は、凹部54と、突出部55と、を有する。凹部54は、台部2の上方の載置面510から凹み、キャスター部3の車輪部31を収納する。突出部55は、凹部54の中央部から上方に突出し、凹部54に収納された車輪部31の移動を規制する。凹部54の凹み深さL13は、車輪部31の直径L20の15.15%以上である。
【0093】
上記構成を備える第一態様の台車1では、車輪部31を収納する凹部54と、凹部54の中心部に車輪部31を移動するのを規制する突出部55が設けられることで、台車1が上下に段積みされた状態で、下側の台車1に対して上側の台車1の横ずれがしにくい。また、上記構成を備える第一態様の台車1では、凹部54の凹み深さL13が車輪部31の直径の15.15%以上であるため、台車1が上下に段積みされた状態で、下側の台車1に対して上側の台車1がより横ずれしにくい。
【0094】
また、上述した第一実施形態及びその変形例の台車1のように、第二態様の台車1は、第一態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0095】
すなわち、第二態様の台車1では、台部2は、台部2から下方に突出するリブ56を更に有する。リブ56は、台部2の凹部54を有さない部分に形成された第一リブ561と、台部2の凹部54を有する部分に形成された第二リブ562と、を有する。台部2の載置面510から第一リブ561の下端までの長さL11、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの長さL12及び凹部54の凹み深さL13が、下記の数式(1)を満たす。
【0096】
【数7】
【0097】
上記構成を備える第二態様の台車1では、台部2に凹部54があると、凹部54がある部分の台部の強度が弱くなるため、凹部54の底面542から第二リブ562の下端までの上下の長さL12を凹部54の凹み深さL13よりも長くすることで、凹部54がある部分の台部2の強度を強くすることができる。
【0098】
また、上述した一実施形態及びその変形例の台車1のように、第三態様の台車1は、第一又は第二態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0099】
すなわち、第三態様の台車1では、キャスター部3は、平面視において、車輪部31の中心部313が上下方向に延びる旋回軸323回りに旋回可能で、かつ、中心部313を通って車輪部31の長手方向に延びる直線上に旋回中心軸が位置するように構成されている。突出部55の凹部54の底面542からの最大突出長さは、旋回軸323から中心部313までの長さである旋回半径L22及び車輪部31の半径L23から下記の数式(2)に基づいて求められる。突出部55の凹部54の底面542からの突出長さL21は、最大突出長さ以下である。
【0100】
【数8】
【0101】
上記構成を備える第三態様の台車1では、突出部55の凹部54の底面542からの突出長さが、最大突出長さ以下である場合、突出部55の凹部54の底面542からの突出長さが、最大突出長さ以上である場合と比べて、台車1を積み上げる際、上側の台車1の車輪部31が下側の台車1の突出部55に引っ掛かりにくくなり、上側の台車1の車輪部31が下側の台車1の凹部54に収納しやすい。
【0102】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 台車
2 台部
3 キャスター部
31 車輪部
313 中心部
510 載置面
54 凹部
55 突出部
56 リブ
561 第一リブ
562 第二リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8