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特開2024-116050ビークルツーグリッドシステムのための需要側フレキシビリティ最適化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116050
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ビークルツーグリッドシステムのための需要側フレキシビリティ最適化システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240820BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 311R
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023028104
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】18/169,307
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516172237
【氏名又は名称】アクセンチュア グローバル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102406
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100100240
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 結美子
(72)【発明者】
【氏名】森賀 新
【テーマコード(参考)】
5G064
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB03
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA11
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドを運用する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】方法は、需要側フレキシビリティ(DSF)システムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、予測のセットを表すデータを決定することと、を含む。予測の一部分は機械学習(ML)モデルのセットから決定する。方法はまた、制約のセットの下で、定数のセット、予測のセットおよび変数のセットに基づいて時間間隔に関する目的関数の値を最適化することと、目的関数の値の最適化の出力として変数のセットを出力することと、変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令をパワーグリッドの、電気自動車(EV)のセットを少なくとも部分的に含むアセットのセットに送信することと、命令に応答してパワーグリッドを運用することと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドを運用するためのコンピュータ実装方法であって、
需要側フレキシビリティ(DSF)システムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、
前記DSFシステムによって、予測のセットを表すデータを決定することであって、前記予測のセット内の予測の少なくとも一部分は機械学習(ML)モデルのセットから決定される、決定することと、
前記DSFシステムによって、制約のセットの下で目的関数の値を最適化することであって、前記目的関数の前記値は、前記定数のセット、前記予測のセット、および変数のセットに基づいて時間間隔に関して最適化され、前記変数のセット内の変数の値は最適化中に調整される、最適化することと、
前記DSFシステムによって、前記目的関数の前記値の最適化の出力として前記変数のセットを提供することと、
前記DSFシステムによって、前記変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令を前記パワーグリッドのアセットのセットに送信することであって、前記アセットのセットは電気自動車(EV)のセットを少なくとも部分的に含む、送信することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記定数のセットは、前記時間間隔の発電単価、前記時間間隔のDSF単価、および前記時間間隔の発電計画量のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変数のセットは、高コストな発電の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を表す第1の値と、市場調達の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を示す第2のパターンと、市場で販売される前記EVのセットからの電力量を示す第3の値と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変数のセットは、前記時間間隔中にそれぞれのEVを前記パワーグリッドにつなぐように所有者に促すために、前記EVのセット内のEVのそれぞれの所有者に伝えられるインセンティブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記変数のセットは、前記時間間隔中の電力不足のインスタンスを平滑化するための上限および下限を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予測のセットは、前記時間間隔の間に予測される電力不足量、前記時間間隔の間の過剰または不足を示す2値フラグ、前記時間間隔の間の市場取引単価、前記時間間隔の間の利用可能なEVバッテリーの電力ボリューム、前記時間間隔の間の供給速度、および前記時間間隔の間にEVから供給される電力量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パワーグリッド内の発電源のアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記発電源から前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パワーグリッド内のEVに関連するアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記EVから前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アセットは、前記EVが電気通信のために接続される充電ステーションを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサと、
前記1つまたは複数のプロセッサに結合され、命令が記憶されたコンピュータ可読記憶デバイスと、
を備え、前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行された場合に、前記1つまたは複数のプロセッサに、ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドを運用するための動作を実行させ、前記動作は、
需要側フレキシビリティ(DSF)システムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、
前記DSFシステムによって、予測のセットを表すデータを決定することであって、前記予測のセット内の予測の少なくとも一部分は機械学習(ML)モデルのセットから決定される、決定することと、
前記DSFシステムによって、制約のセットの下で目的関数の値を最適化することであって、前記目的関数の前記値は、前記定数のセット、前記予測のセット、および変数のセットに基づいて時間間隔に関して最適化され、前記変数のセット内の変数の値は最適化中に調整される、最適化することと、
前記DSFシステムによって、前記目的関数の前記値の最適化の出力として前記変数のセットを提供することと、
前記DSFシステムによって、前記変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令を前記パワーグリッドのアセットのセットに送信することであって、前記アセットのセットは電気自動車(EV)のセットを少なくとも部分的に含む、送信することと、
を含む、システム。
【請求項11】
前記定数のセットは、前記時間間隔の発電単価、前記時間間隔のDSF単価、および前記時間間隔の発電計画量のうちの1つまたは複数を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記変数のセットは、高コストな発電の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を表す第1の値と、市場調達の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を示す第2のパターンと、市場で販売される前記EVのセットからの電力量を示す第3の値と、を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記変数のセットは、前記時間間隔中にそれぞれのEVを前記パワーグリッドにつなぐように所有者に促すために、前記EVのセット内のEVのそれぞれの所有者に伝えられるインセンティブを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記変数のセットは、前記時間間隔中の電力不足のインスタンスを平滑化するための上限および下限を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記予測のセットは、前記時間間隔の間に予測される電力不足量、前記時間間隔の間の過剰または不足を示す2値フラグ、前記時間間隔の間の市場取引単価、前記時間間隔の間の利用可能なEVバッテリーの電力ボリューム、前記時間間隔の間の供給速度、および前記時間間隔の間にEVから供給される電力量を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
動作は、前記パワーグリッド内の発電源のアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記発電源から前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
動作は、前記パワーグリッド内のEVに関連するアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記EVから前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記アセットは、前記EVが電気通信のために接続される充電ステーションを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
1つまたは複数のプロセッサに結合され、命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行された場合に、前記1つまたは複数のプロセッサに、ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドを運用するための動作を実行させ、前記動作は、
需要側フレキシビリティ(DSF)システムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、
前記DSFシステムによって、予測のセットを表すデータを決定することであって、前記予測のセット内の予測の少なくとも一部分は機械学習(ML)モデルのセットから決定される、決定することと、
前記DSFシステムによって、制約のセットの下で目的関数の値を最適化することであって、前記目的関数の前記値は、前記定数のセット、前記予測のセット、および変数のセットに基づいて時間間隔に関して最適化され、前記変数のセット内の変数の値は最適化中に調整される、最適化することと、
前記DSFシステムによって、前記目的関数の前記値の最適化の出力として前記変数のセットを提供することと、
前記DSFシステムによって、前記変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令を前記パワーグリッドのアセットのセットに送信することであって、前記アセットのセットは電気自動車(EV)のセットを少なくとも部分的に含む、送信することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記定数のセットは、前記時間間隔の発電単価、前記時間間隔のDSF単価、および前記時間間隔の発電計画量のうちの1つまたは複数を含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
前記変数のセットは、高コストな発電の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を表す第1の値と、市場調達の代わりに前記EVのセットから前記パワーグリッドに供給する電力量を示す第2のパターンと、市場で販売される前記EVのセットからの電力量を示す第3の値と、を含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
前記変数のセットは、前記時間間隔中にそれぞれのEVを前記パワーグリッドにつなぐように所有者に促すために、前記EVのセット内のEVのそれぞれの所有者に伝えられるインセンティブを含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項23】
前記変数のセットは、前記時間間隔中の電力不足のインスタンスを平滑化するための上限および下限を含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
前記予測のセットは、前記時間間隔の間に予測される電力不足量、前記時間間隔の間の過剰または不足を示す2値フラグ、前記時間間隔の間の市場取引単価、前記時間間隔の間の利用可能なEVバッテリーの電力ボリューム、前記時間間隔の間の供給速度、および前記時間間隔の間にEVから供給される電力量を含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
動作は、前記パワーグリッド内の発電源のアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記発電源から前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項26】
動作は、前記パワーグリッド内のEVに関連するアセットによって、前記変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて前記EVから前記パワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項27】
前記アセットは、前記EVが電気通信のために接続される充電ステーションを含む、請求項26に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にビークルツーグリッド(V2G:vehicle-to-grid)技術を含むパワーグリッドを運用するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV:electric vehicle)はここ数年間でますます発展してきている。このきっかけは、EVに実用的な走行距離を提供するのに十分なエネルギーを貯蔵することが可能な大容量バッテリーの発展であった。大容量バッテリーの発展と共に、EVがエネルギーをパワーグリッドに提供することを可能にする、いわゆるビークルツーグリッド(V2G)技術が発展してきた。一般に、V2Gは、EVのバッテリーがEVに電力を供給するだけでなくパワーグリッドに還元して、バッテリーをパワーグリッドのバックアップ用蓄電セルとして扱うことを可能にする充電技術として説明することができる。
【0003】
パワーグリッドに対してプッシュまたはプルされるエネルギーは、任意の所与の時間における電気の供給および需要に基づくことができる。従来のアプローチでは、供給および需要のバランスを取ることは、将来の市場負荷(需要)を予測し、ピークを最小限に抑えるように充電サイクルをスケジューリングすることを含み得る。たとえば、機械学習(ML:machine learning)モデルを使用して、より広い市場トレンドに基づく予測が生成されている。いくつかの例では、ピーク時のおよび/または特定の場所での充電を回避するために、価格シグナルアルゴリズムを使用して、任意の所与の時間における利用可能なデータおよび需要に応じた動的な充電レートを作り出すことができる。しかしながら、そのような従来のアプローチは、EVをパワーグリッドに返すためのスケジュールを提供することと、EV自体の充電サイクルをスケジューリングすることとに限られている。たとえば、そのような従来のアプローチは、全体的な効率の最適化に目を向けてバランスを実現することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実装は一般に、ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドにおける効率を最適化するための需要側フレキシビリティ(DSF:demand-side flexibility)システムを対象とする。より詳細には、本開示の実装は、所与の時間間隔にわたってパワーグリッドを運用するためのパターンのセットを決定するDSFシステムを対象とし、各パターンは、1つまたは複数の電気自動車(EV)から提供する電力の割合を定義する。
【0005】
いくつかの実装では、アクションは、DSFシステムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、DSFシステムによって、予測のセットを表すデータを決定することであって、予測のセット内の予測の少なくとも一部分は機械学習(ML)モデルのセットから決定される、決定することと、DSFシステムによって、制約のセットの下で目的関数の値を最適化することであって、目的関数の値は、定数のセット、予測のセット、および変数のセットに基づいて時間間隔に関して最適化され、変数のセット内の変数の値は最適化中に調整される、最適化することと、DSFシステムによって、目的関数の値の最適化の出力として変数のセットを提供することと、DSFシステムによって、変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令をパワーグリッドのアセットのセットに送信することであって、アセットのセットはEVのセットを少なくとも部分的に含む、送信することと、を含む。この態様の他の実装は、対応するシステム、装置、および本方法のアクションを実行するように構成され、コンピュータ記憶デバイス上にエンコードされたコンピュータプログラムを含む。
【0006】
これらおよび他の実装はそれぞれ任意選択で、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。定数のセットは、時間間隔の発電単価、時間間隔のDSF単価、および時間間隔の発電計画量のうちの1つまたは複数を含む。変数のセットは、高コストな発電の代わりにEVのセットからパワーグリッドに供給する電力量を表す第1の値と、市場調達の代わりにEVのセットからパワーグリッドに供給する電力量を示す第2のパターンと、市場で販売されるEVのセットからの電力量を示す第3の値と、を含む。変数のセットは、時間間隔中にそれぞれのEVをパワーグリッドにつなぐように所有者に促すために、EVのセット内のEVのそれぞれの所有者に伝えられるインセンティブを含む。変数のセットは、時間間隔中の電力不足のインスタンスを平滑化するための上限および下限を含む。予測のセットは、時間間隔の間に予測される電力不足量、時間間隔の間の過剰または不足を示す2値フラグ、時間間隔の間の市場取引単価、時間間隔の間の利用可能なEVバッテリーの電力ボリューム、時間間隔の間の供給速度、および時間間隔の間にEVから供給される電力量を含む。アクションは、パワーグリッド内の発電源のアセットによって、変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいて発電源からパワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む。アクションは、パワーグリッド内のEVに関連するアセットによって、変数のセット内のそれぞれの変数の値に基づいてEVからパワーグリッドに電力を提供する1つまたは複数の命令を実行することをさらに含む。アセットは、EVが電気通信のために接続される充電ステーションを含む。
【0007】
本開示による方法が本明細書に記載の態様および特徴の任意の組み合わせを含むことができることは理解される。すなわち、たとえば、本開示による装置および方法は、本明細書に具体的に記載した態様および特徴の組み合わせに限定されず、提供した態様および特徴の任意の組み合わせも含み得る。
【0008】
本開示の1つまたは複数の実装の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載している。本開示の他の特徴および利点は、本説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実装を実行することができる例示的なシステムの図である。
図2】本開示の実装による需要側フレキシビリティ(DSF)システムを含む概念的なアーキテクチャの図である。
図3A】従来のアプローチと比較した、本開示の実装による、エネルギー供給が最適化されたシナリオの図である。
図3B】従来のアプローチと比較した、本開示の実装による、エネルギー供給が最適化されたシナリオの図である。
図3C】従来のアプローチと比較した、本開示の実装による、エネルギー供給が最適化されたシナリオの図である。
図4】本開示の実装による例示的なプロセスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な図面における同様の参照番号および名称は同様の要素を示す。
【0011】
本開示の実装は一般に、ビークルツーグリッド(V2G)技術を含むパワーグリッドにおける効率を最適化するための需要側フレキシビリティ(DSF)システムを対象とする。より詳細には、本開示の実装は、所与の時間間隔にわたってパワーグリッドを運用するためのパターンのセットを決定するDSFシステムを対象とし、各パターンは、発電システムから提供する電力の割合と、1つまたは複数の電気自動車(EV)から提供する電力の割合とを定義する。本明細書でさらに詳細に説明するように、DSFシステムは、効率を最適化し、機械学習(ML)モデルのセットの予測のセットを入力として受け取る最適化関数に基づいてパターンのセットを決定する。パワーグリッドは、時間間隔に対して決定されたパターンのセットに基づいて、時間間隔にわたって運用される。
【0012】
いくつかの実装では、アクションは、DSFシステムによって、定数のセットを表すデータを受け取ることと、DSFシステムによって、予測のセットを表すデータを決定することであって、予測のセット内の予測の少なくとも一部分はMLモデルのセットから決定される、決定することと、DSFシステムによって、制約のセットの下で目的関数の値を最適化することであって、目的関数の値は、定数のセット、予測のセット、および変数のセットに基づいて時間間隔に関して最適化され、変数のセット内の変数の値は最適化中に調整される、最適化することと、DSFシステムによって、目的関数の値の最適化の出力として変数のセットを提供することと、DSFシステムによって、変数のセット内の変数の少なくともサブセットの値に基づいて電力を供給する命令をパワーグリッドのアセットのセットに送信することであって、アセットのセットはEVのセットを少なくとも部分的に含む、送信することと、を含む。
【0013】
さらなるコンテキストを提供するために、上記で導入したように、EVはここ数年間でますます発展してきている。このきっかけとなったのは、EVに実用的な走行距離を提供するのに十分なエネルギーを貯蔵することが可能な大容量バッテリーの発展であった。大容量バッテリーの発展と共に、EVがエネルギーをパワーグリッドに提供することを可能にする、いわゆるビークルツーグリッド(V2G)技術が発展してきた。一般に、V2Gは、EVのバッテリーが、EVに電力を供給するだけでなく、パワーグリッドに還元して、バッテリーをパワーグリッドのバックアップ用蓄電セルとして扱うことを可能にする充電技術として説明することができる。V2Gを実装することは、接続されたEVに対してエネルギーをプッシュまたはプルするための双方向の充電ステーションの使用を含む。
【0014】
パワーグリッドに対してプッシュまたはプルされるエネルギーは、任意の所与の時間における電気の供給および需要に基づくことができる。たとえば、EVのバッテリーからプルされたエネルギーを使用して、パワーグリッドに接続されたもの(たとえば、家、建物)を充電することができる。したがって、V2Gによって、パワーグリッドに余りが生じたときにエネルギーを貯蔵し、より広い需要が生じたときにパワーグリッドにエネルギーを返すことによって、パワーグリッドのバランスを取るように、EVのバッテリーに貯蔵されたエネルギーを使用することが可能になる。
【0015】
従来のアプローチでは、供給および需要のバランスを取ることは、将来の市場負荷(需要)を予測し、ピークを最小化するように充電サイクルをスケジューリングすることを含み得る。たとえば、機械学習(ML)モデルを使用して、より広い市場トレンドに基づく予測が生成されている。いくつかの例では、ピーク時のおよび/または特定の場所での充電を回避するために、価格シグナルアルゴリズムを使用して、任意の所与の時間における利用可能なデータおよび需要に応じた動的な充電レートを作り出すことができる。しかしながら、そのような従来のアプローチは、EVをパワーグリッドに返すためのスケジュールを提供することと、EV自体の充電サイクルをスケジューリングすることとに限られている。たとえば、そのような従来のアプローチは、全体的な効率の最適化に目を向けてバランスを実現することができない。
【0016】
上記を踏まえて、本開示の実装は、所与の時間間隔にわたってパワーグリッドを運用するためのパターンのセットを決定するDSFシステムを対象とし、各パターンは、発電システムから提供する電力の割合と、1つまたは複数のEVから提供する電力の割合とを定義する。本明細書でさらに詳細に説明するように、DSFシステムは、効率を最適化し、MLモデルのセットの予測のセットを入力として受け取る最適化関数に基づいてパターンのセットを決定する。パワーグリッドは、時間間隔に対して決定されたパターンのセットに基づいて、時間間隔にわたって運用される。本明細書でさらに詳細に説明するように、本開示の実装は、供給および需要のバランスを取る際のエネルギーの出力の制御における非効率性を排除するために、電気をインベントリとして貯蔵し、これに選択的にアクセスすることによって、パワーグリッドの効率を最適化する。より具体的には、本開示のDSFシステムは、非集中的な管理されない方法で個人によって所有および運用される個々のEVのグループから合計で貯蔵された電力をインベントリとして活用する。たとえば、本開示のDSFシステムにより、一般大衆は自身のEVを放電時に自宅または充電ステーションのV2G機器に接続することが可能になる。1つまたは複数の発電企業は、EVからパワーグリッドへの直接的な電力の流れを制御することができる。したがって、本開示のDSFシステムは、一般家庭によって所有および運用される比較的多数のEVの群管理(herd management)を可能にするものとして説明することができる。本明細書に記載のように、この群管理は、最適な制御のための統計計算および最適化計算のためにML予測を使用して最適化され、インターネットを介して実行することができる。
【0017】
図1は、本開示の実装を実行することができる例示的なシステム100を示している。例示的なシステム100は、パワーグリッド102、バックエンドシステム108、およびネットワーク106を含む。いくつかの例では、ネットワーク106は、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、ワイドエリアネットワーク(WAN:wide area network)、インターネット、またはそれらの組み合わせを含み、ウェブサイト、デバイス(たとえば、コンピューティングデバイス)、およびバックエンドシステム(たとえば、バックエンドシステム108)を接続する。いくつかの例では、ネットワーク106は、有線および/または無線通信リンクを介してアクセスすることができる。
【0018】
図示の例では、バックエンドシステム108は、少なくとも1つのサーバシステム112、およびデータストア114(たとえば、データベースおよびナレッジグラフ構造)を含む。いくつかの例では、少なくとも1つのサーバシステム112は、ユーザがコンピューティングデバイスを用いて相互作用することができる1つまたは複数のコンピュータ実装サービスをホストする。たとえば、サーバシステム112は、本開示の実装によるDSFシステムの一部として提供される1つまたは複数のアプリケーションをホストすることができる。
【0019】
図示の例では、パワーグリッド102は、発電所120、送電系統122、居住地124、充電ステーション(CS:charging station)126、およびEV128を含む。いくつかの例では、CS126は、個人(たとえば、私人)によって所有および運用されるEV128の充電/放電を可能にするために居住地124に設置することができる。少数のEV128を図示しているが、本明細書で詳細に説明するように、数十台、数百台、数千台、さらには数百万台のEV128を用いて本開示の実装を実現して、電力をパワーグリッド102に選択的に提供することができると考えられる。また、居住地124を図示しているが、CSを有する商業地など、EVに電力を提供し、EVから電力を受け取ることが可能な任意の適切な場所を用いて本開示の実装を実現できることが考えられる。
【0020】
いくつかの例では、各CS126は、それぞれのEV128に電力を提供し、および/またはそれぞれのEV128から電力を受け取るためにパワーグリッド102と通信するソフトウェアを実行する。いくつかの例では、発電所120は、パワーグリッドを介して分配される(電気的)パワーを発生させる(たとえば、化石燃料、核、および/または再生可能資源、たとえば、水力発電、風力、太陽光を使用)。いくつかの例では、EV128の充電のために電力が分配される。たとえば、送電系統122を介して居住地124およびCS126ならびにEV128に電力が送られる。いくつかの例では、EV128のうちの1つまたは複数からパワーグリッド102に電力が送られる。すなわち、たとえば、各CS126は、グリッドからそれぞれのEV128へ、またはそれぞれのEV128からパワーグリッドへ電力を提供する双方向型である。
【0021】
いくつかの実装では、バックエンドシステム108は、本開示のDSFシステムをホストする。本明細書でさらに詳細に説明するように、DSFシステムは、所与の時間間隔にわたってパワーグリッド102を運用するためのパターンのセットを決定し、各パターンは、異なるシナリオでEV128のうちの1つまたは複数から提供する電力の割合を定義する。本明細書でさらに詳細に説明するように、DSFシステムは、効率を最適化し、MLモデルのセットの予測のセットを入力として受け取る目的関数に基づいてパターンのセットを決定する。パワーグリッド102は、時間間隔に対して決定されたパターンのセットに基づいて、時間間隔にわたって運用される。
【0022】
図2は、本開示の実装によるDSFシステム202を含む概念的なアーキテクチャ200を示している。図2の例では、概念的なアーキテクチャ200は、パワーグリッド204、EV206、個人208、送電系統運用者(TSO:transmission system operator)210、市場212、およびインハウス供給/需要(S/D:supply/demand)システム214を表すデータを処理するDSFシステム202を含む。いくつかの例では、TSO210は、発電企業(たとえば、電力会社)から注文を受け、それらの供給/需要を調整する仲介者として説明することができる。いくつかの例では、インハウスS/Dシステム214はそれぞれの発電企業のものであり、これによりその発電企業は自身の供給および需要を調整することが可能になる。いくつかの例では、複数のインハウスS/Dシステム214を設けることができ、各インハウスS/Dシステム214はそれぞれの発電企業のものである。図2の例では、DSFシステム202は、分散型エネルギー資源(DER:distributed energy resource)システム220およびバランス調整エンジン222を含む。
【0023】
図2の例では、DERシステム220は概念的に図示しており、配電網マネージャ(DNM:distribution network manager)230、1つまたは複数の管轄エリアマネージャ(CAM:control area manager)232、および1つまたは複数のエネルギー資源マネージャ(ERM:energy resource manager)234を含む。いくつかの例では、DNM230は、システムレベルの運用を実行し、アセット、接続性、および機能を含むDERポートフォリオを表すデータを記憶する。いくつかの例では、各CAM232は、アセットのグループをホストし、管理する。いくつかの例では、各ERM234は、アセットとインターフェースをとり、アセットを管理する。本開示のコンテキストでは、例示的なアセットは、限定なく、EV、場所(たとえば、住居用、商用)、エネルギー発生器(たとえば、化石燃料、核、再生可能)、およびバッテリーシステム(たとえば、EVから独立したエネルギー貯蔵装置)を含むことができる。例示的なDERシステム202は、限定なく、米国コロラド州フォートコリンズのSpirae,LLCによって提供されるSpirae Wave(登録商標)制御プラットフォームを含むことができる。いくつかの例では、Spirae Wave(登録商標)制御プラットフォームは、パワーグリッド内のDERを統合して管理するためのスケーラブルなアーキテクチャとして説明することができる。
【0024】
いくつかの実装では、本明細書でさらに詳細に説明するように、DERシステム220は、時間間隔に対して決定されたパターンのセットに基づいて時間間隔中にパワーグリッド204を運用する命令をパワーグリッド204に提供することができる。たとえば、DERシステム220は、ある割合の電力が1つまたは複数の発電システム(たとえば、化石燃料、核、太陽光、水力発電)から提供され、ある割合の電力がEV206(たとえば、図1のEV128)のうちの1つまたは複数から提供されるように、パワーグリッド204内の1つまたは複数のアセットに命令を提供することができる。たとえば、各アセットはそれぞれのERM234に関連付けることができ、これによりアセットはDERシステム220(たとえば、DERシステム220のDNM230)から命令を受信してこれに応答することが可能になる。
【0025】
本開示の実装によれば、バランス調整エンジン222は、供給および需要のバランスに基づいてアセットを運用するためのパターンのセット(たとえば、1つまたは複数のパターンを含む)を決定することができる。いくつかの実装では、バランス調整エンジン222は、時間間隔中にパターンのセットに基づいてアセットを運用するための時間間隔(たとえば、15分、30分、1日)の間のパターンのセットを決定する。いくつかの例では、来る期間(たとえば、24時間)内の時間間隔に対してパターンのセットを決定することができる。たとえば、限定なく、次の24時間に対してパターンのセットを決定することができ、パターンの各セットは、その24時間内のそれぞれの30分間の時間間隔のものである(たとえば、1440分(=24時間)/30分→48セットのパターン)。この非限定的な例では、次の24時間に関する、パターンのセットに基づいて運用する命令を発行することができ、これは[(xa,xb,xc),...,(xa48,xb48,xc48)]として提供することができ、ここで、(xa,xb,xc)は最初の30分間の時間間隔のものであり、(xa,xb,xc)は次の30分間の時間間隔のものであり、以下同様である。
【0026】
引き続き図2を参照すると、バランス調整エンジン222は、MLモジュール240および最適化モジュール242を含み、これは1つまたは複数のパターン244を提供する。いくつかの例では、本明細書でさらに詳細に説明するように、MLモジュール240は入力を受け取り、入力はMLモデルのセットを介して処理されて予測のセットを提供し、最適化モジュール242は、入力のセットおよび制約のセットに基づいて目的関数の最大化を実行することによって、パターンのセット244を決定する。
【0027】
さらに詳細には、各時間間隔について、バランス調整エンジン222は、入力のセットおよび制約のセットに基づいて目的関数を最大化することによって、変数のセットを最適化する。いくつかの例では、目的関数は、時間間隔の間の需要を満たすために電力を供給する際の効率を表す。これは次式で表すことができる。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、Oは目的関数であり、tは時間間隔(たとえば、15分、30分、1日)である。いくつかの例では、入力のセットは定数のセットおよび予測のセットを含む。いくつかの例では、定数のセットは、発電単価MC(たとえば、$/kWh)、DSF単価EC(たとえば、$/kWh)、および発電量(計画)MV(たとえば、kWh)を含む。いくつかの例では、発電量MVは、スケジュールされた計画ごとに発電システムによって発電される電力量を表す。いくつかの例では、予測のセットは、電力不足量NV(たとえば、kWh)、過剰または不足を示す2値フラグflg(たとえば、0、1)、市場取引単価JC(たとえば、$/kWh)、利用可能なEVバッテリーの電力ボリュームEV、最大放電速度D、EVから供給される電力量EVS、および接続確率Jを含む。それぞれについて、本明細書でさらに詳細に論じる。
【0030】
本開示の実装によれば、NV、flg、JC、EV、EVS、およびJのそれぞれは、1つまたは複数のMLモデルからの出力として提供され、またはそれに基づくものである。すなわち、たとえば、MLモデルのセットが提供され、各MLモデルは予測のセット内のそれぞれの予測またはそれぞれの予測の一部分を提供する。
【0031】
たとえば、電力不足量NVは、発電量Pと電力需要量PDとの差として決定され、ここで、Pは発電計画から決定され、PDは電力需要MLモデルから決定される。いくつかの例では、発電計画は、1つまたは複数のアセット(たとえば、化石燃料、核、再生可能)のそれぞれからの各時間間隔の発電量のスケジュールを提供し、発電所(たとえば、図1の発電所120)の運用者から提供することができる。いくつかの例では、電力需要MLモデルは、入力セット(たとえば、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、PDを出力として提供する。いくつかの例では、電力需要MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、状態空間モデル、時系列予測モデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、MLモデルは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。
【0032】
他の例として、2値フラグflgは、PがPD未満であるか否かに基づいて決定される。たとえば、PがPD未満である場合、時間間隔の間に発電不足が予想され、flgが第1の値(たとえば、1)に設定され、PがPD未満でない場合、時間間隔の間に発電不足は予想されず、flgが第2の値(たとえば、0)に設定される。
【0033】
他の例として、市場取引単価JCは、入力セット(たとえば、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、JCを出力として提供する市場取引MLモデルから決定される。いくつかの例では、市場取引MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、状態空間モデル、時系列予測モデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、MLモデルは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。
【0034】
他の例として、利用可能なEVバッテリーの電力ボリュームEVは、入力セット(たとえば、EV所有者の属性(人口統計、地域)、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、EVを出力として^提供するEV蓄電MLモデルから決定される。いくつかの例では、EV蓄電MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、非線形モデル、軽量勾配ブースティングモデル(light gradient boosted model)、勾配ブースティングモデル、回帰モデル)として提供することができる。
【0035】
本開示の実装によれば、目的関数は、Oの最適化された値をもたらす変数のセット内の変数の値を決定することによって、最適化される(たとえば、最大化される)。Tは最適化の持続時間(たとえば、48時間(2×24時間))であり、tは最適化の持続時間内の時間(たとえば、t=1,2,3,...,T)である。いくつかの例では、最適化される変数のセットは、第1の値xa、第2の値xb、および第3の値xcを含む。いくつかの例では、第1の値xaは、EVからの電力が高コストな発電に置き換わるシナリオにおける、時間間隔tにわたってEVからパワーグリッドから供給する電力量を表す。いくつかの例では、第2の値xbは、市場から調達する代わりに、EVから供給する電力量を示す。いくつかの例では、第3の値xcは、市場に販売することができるEVからの電力量を示す。例示的な値について、本明細書でさらに詳細に論じる。
【0036】
EVグループに関して、いくつかの例では、パワーグリッドへの放電に使用できる閾値数(たとえば、百万台のEV)より多くのEVが地域に含まれる場合、計算量を削減するためにEVグループが実装される。いくつかの例では、計算量を削減するために、各EVグループは単一のEVとして扱われ、1つまたは複数のEVがそのグループに属する。すなわち、EVグループごとに1つのEVが考慮される。
【0037】
いくつかの実装では、EVグループを考慮する際に、GはEVのグループの数を示し、gはそれぞれのグループの識別子(たとえば、g=1,2,3,...,G)を示す。グループあたりのEVの数はEとして提供される。EVグループに関して、以下の定義を提供することができる。上記のように、gはEVグループを表す。個々のEVはeと表される。ここで、EVe,tは時間tにおける個々のEVの電力ボリュームを表し、EVSは個々のEVから利用可能な電力量を表し、Je,tは時間tにおける個々のEVの接続確率を表す。これを踏まえて、以下の関係式を提供することができる。
【0038】
【数2】
【0039】
上記において、EVg,tは時間tにおけるEVグループgごとに貯蔵された電力ボリューム(kWh)であり、これは、入力セット(たとえば、EV所有者の属性(人口統計、地域)、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、EVg,tを出力として提供するEV蓄電MLモデルから決定することができる。いくつかの例では、EV蓄電MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、非線形モデル、軽量勾配ブースティングモデル、勾配ブースティングモデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、MLモデルは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。また、上記において、EVg,tはDSF供給を含めて貯蔵された電気の量を考慮する。このように、(放電される)DSF供給がEV未満であることが最適化制約に記述されているので、DSFに放電される量が考慮され、過小見積もりが防止される。
【0040】
いくつかの例では、EVSg,dは持続時間d(たとえば、24時間)の間のEVグループgあたりの電力供給の総量(kWh)であり、入力セット(たとえば、EV所有者の属性(人口統計、地域)、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、EVSg,dを出力として提供するEV利用可能電力MLモデルから決定することができる。いくつかの例では、EV利用可能電力MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、非線形モデル、軽量勾配ブースティングモデル、勾配ブースティングモデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、MLモデルは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。
【0041】
いくつかの例では、EVSPg,dは、持続時間d(たとえば、24時間)の間の、本明細書でさらに詳細に論じるインセンティブに起因する電力増加量であり、入力セット(たとえば、EV所有者の属性(人口統計、地域)、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、EVSPg,dを出力として提供するインセンティブ電力増加MLモデルを使用して決定することができる。いくつかの例では、インセンティブ電力増加MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、非線形モデル、軽量勾配ブースティングモデル、勾配ブースティングモデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、MLモデルは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。
【0042】
いくつかの例では、近接性の順序に基づくクラスタリング(たとえば、階層的なクラスタリング)により、EVのグルーピングを実現することができる。いくつかの例では、グループの数がグループの閾値数(たとえば、百万)未満になるまで、クラスタリングが実行される。ここで、EVの数もEVの閾値数未満である場合、グループあたり1つのEVのみが必要となる。クラスタリングのために、近接性および距離が考慮され、個々のEVのEVe,t、EVSe,d、Je,t、EVSPe,d、およびJPe,t(eは個々のEVを表す)を使用して、近さを決定し、これらのパラメータに関して十分に類似していると考えられるEVをグループ化する。すなわち、たとえば、EV間の距離をそれぞれのEVe,t、EVSe,d、Je,t、EVSPe,d、およびJPe,tに基づいて決定することができ、距離が閾値距離未満である場合、EVはグループ化される。
【0043】
EVがパワーグリッドに接続されて放電に利用可能になる可能性を考慮するために、接続確率が制約内で考慮される。たとえば、これは、自身のEVを放電のためにパワーグリッドに接続することに関する個人の時間ベースの(たとえば、1時間ごとの)都合に依存し得る(たとえば、1時間ごとの放電)。接続確率Jg,tは、EVグループg内の個人が自身のEvを接続するという時間tごとの予測を表す。いくつかの例では、接続確率はMLモデルを使用して決定され、これは、たとえば、時系列データを考慮する回帰モデルを含むことができる。たとえば、状態空間モデル(たとえば、カスタマイズされたロジックを用いて進行中のサイクルおよびトレンドを考慮に入れることができる時系列予測モデル)、または時系列に関連する特徴が追加されたXGBoost、LightGBMなどである。いくつかの例では、MLモデルへの入力は、限定なく、個人の属性(たとえば、人口統計、地域属性)、日付、および気候(たとえば、天気、降水量、湿度、気温)を含むことができ、出力は時間tにおけるEVグループgの接続確率である。
【0044】
上記を踏まえて、以下の例示的な関係式を提供することができる。
g,t=f(MC,EC,flg,JC,xa,xb,xc
最適化中に、目的関数の値が最適化されるまで、変数のセット内の変数の値が調整される。いくつかの例では、制約のセットの下で目的関数が最適化される。いくつかの実装では、制約のセットは以下の制約を含む。
【0045】
【表1】
【0046】
上記のように、Dは最大放電速度(たとえば、一定、30分あたり3kWh)であり、dg,tは時間tにおけるEVグループgあたりの放電量であり、EVg,tは時間tにおけるEVグループgごとに貯蔵された電力ボリューム(kWh)であり、EVSはEVグループgあたりの電力供給の総量(kWh)である。さらに、最適化用の大きな数Mは、全ての間隔tにわたるNVの総和の倍数(たとえば、10~100)として決定される定数として提供される。
【0047】
目的関数の最適化(たとえば、Oの最大化)を通じて、変数のセット内の各変数の値が提供され、変数のセットはxag,t、xbg,t、xcg,t、yb、yc、およびdg,tを含む。変数のセットに対して決定された値に基づいてパワーグリッドに電力が供給される。最適な変数を決定するための最適化の解法は限定されず、正確な解法、または近似的な解法、たとえば、数理最適化または数理計画法におけるメタヒューリスティクスによって最適解が得られる。
【0048】
いくつかの実装では、目的関数は、発電会社がEVの所有者に提供し得るインセンティブを考慮することができる。たとえば、EVの所有者は、自身のEVを利用可能にして(すなわち、EVをグリッドにつないで)、EVからパワーグリッドに電力をプッシュ可能にするようにインセンティブが与えられ得る。いくつかの例では、インセンティブは、EV所有者への支払いおよび/またはEV所有者に発行される電気料金への割引の形態にすることができる。他の例として、商用のCSのために、充電料金の割引を提供することができる。他の例として、長期契約(1日あたりx kWh、1週間あたりy kWh)を提供することができる。本開示の実装は、任意の適切な形態のインセンティブで実現することができる。
【0049】
さらに詳細には、インセンティブを考慮する際に、最適化される変数のセットは、第1の値xa、第2の値xb、第3の値xc、およびインセンティブIを含む。いくつかの例では、予測のセットは増加した供給EVSPを含み、これは、インセンティブから得られるであろうEVから利用可能な(それぞれのMLモデルを使用して)予測された電力量である。いくつかの例では、増加した供給EVSPは、入力セット(たとえば、インセンティブI、EV所有者の属性(人口統計、地域)、日付、降水量、湿度、気温、人口など)を受け取り、出力としてEVSPを提供するインセンティブ電力増加MLモデルから決定される。いくつかの例では、供給速度MLモデルは、任意の適切なトレーニング技術(たとえば、教師あり学習)を使用してトレーニングされる任意の適切なタイプのMLモデル(たとえば、非線形モデル、軽量勾配ブースティングモデル、勾配ブースティングモデル、回帰モデル)として提供することができる。いくつかの例では、供給速度MLモデルのトレーニングのために過去のデータが不十分であるかまたは存在しない場合、ルールベースのアルゴリズムを実装して、EVSPを決定することができる(たとえば、少なくとも、十分な過去のデータが収集されるまでの初期期間の間)。
【0050】
インセンティブを考慮する際に、以下の関係式を提供することができる。
g,t=f(MC,EC,flg,JC,xa,xb,xc,I
目的関数の最適化(たとえば、Oの最大化)を通じて、変数のセット内の各変数の値が提供され、変数のセットはxa、xb、xc、I、yb、yc、およびdg,tを含む。いくつかの実装では、インセンティブを考慮する際に、制約のセットは以下の制約を含む。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の制約では、JPg,tはインセンティブの結果としての接続確率の増加を示す。
【0053】
に関して、限定はしないが、計算の都合上、変数のセットの中でインセンティブIを特別に扱うことができる。たとえば、インセンティブIを固定値として変更しながら、予測値JPg,t、EVSPおよび目的関数を更新することによって、最適化が毎回実行される。各目的関数の値を比較することによって、最適なインセンティブIがスーパー変数(super variable)として決定される。
【0054】
いくつかの実装では、目的関数の最適化を通じてインセンティブIが決定された後、インセンティブIがEVの所有者に伝えられる。このようにして、所有者はインセンティブIを知り、インセンティブIに対応することができる。たとえば、限定なく、メッセージ(たとえば、携帯電話へのテキストメッセージ、携帯電話上で実行されるモバイルアプリケーション内のメッセージ)を各所有者のデバイスに伝えることができ、このメッセージはインセンティブIおよび時間間隔を表すデータを含む(たとえば、こんにちは、オーナーさん!YからZまでの期間中にあなたのEVを充電ステーションにつなぐとあなたの電気料金のX%の割引を受けられます。)。いくつかの例では、所有者は、所有者が申し出を受諾することを示すためにメッセージに返答することができる(たとえば、受諾を示す応答テキストメッセージを送る、モバイルアプリケーション内の受諾ボタンをクリックする)。
【0055】
いくつかの実装では、目的関数は、電力不足の平滑化を考慮することができる。さらに詳細には、電力不足の平滑化を考慮する際に、定数のセットは最適化用の大きな数M、Mも含み、予測のセットは変わらないままであるが、最適化される変数のセットは、第1のパターンxa、第2のパターンxb、第3のパターンxc、電力不足の上限Up、および電力不足の下限Lwを含む。いくつかの例では、MおよびMは、全ての間隔tにわたるNVの総和の倍数(たとえば、10~100)として決定される定数である。電力不足の平滑化を考慮する際に、制約のセットは以下の制約を含む。
【0056】
【表3】
【0057】
電力不足の平滑化を考慮する際に、以下の関係式を提供することができる。
g,t=f(MC,EC,flg,JC,xa,xb,xc,Up,Lw)
目的関数の最適化(たとえば、Oの最大化)を通じて、変数のセット内の各変数の値が提供され、変数のセットはxa、xb、xc、Up、Lwを含む。
【0058】
いくつかの実装では、目的関数は、インセンティブおよび電力不足の平滑化を考慮することができる。たとえば、目的関数およびその最適化は、インセンティブおよび電力不足の平滑化のそれぞれに関して上記で論じた特徴を含むことができる。インセンティブおよび電力不足の平滑化を考慮する際に、以下の関係式を提供することができる。
g,t=f(MC,EC,flg,JC,xa,xb,xc,M,I Up,Lw)
目的関数の最適化(たとえば、Og,tの最大化)を通じて、変数のセット内の各変数の値が提供され、変数のセットはxag,t、xbg,t、xcg,t、UP、Lw、I、yb、yc、およびdg,tを含む。EVのグループ、接続確率、インセンティブ、および電力不足の平滑化を考慮する際に、制約のセットは以下の制約を含む。
【0059】
【表4】
【0060】
本開示の実装によれば、Og,tの最適化は、パターンxag,t、xbg,t、xcg,tを最適化するだけでなく、個々のEVの放電dg,tも最適化すると共に、最大放電速度(たとえば、30分あたりの個々のEVごとのもの)、接続確率、およびEVグループも考慮する。
【0061】
本開示の実装は、MLモデルの予測の不確定性も考慮する。たとえば、いくつかの例では、MLモデルのうちの1つまたは複数は、不正確な予測を提供し得る。説明の目的で、Oの最適化後にDSFシステムが12月2日の17:00に50,000kWを提供すると決定される非限定的な例を考えることができる。これは12月1日に決定され得、発電会社にこれを知らせ、発電会社は12月2日の17:00の限界面(marginal plane)から50,000kWを削減することを決定することができる。12月2日の17:00に、DSFシステムは予測より10,000kW少ない40,000kWしかEVから提供できないということが起こり得る。これを発電会社に知らせることができ、発電会社は不足を考慮する方法を決定する必要がある。したがって、EVからの放電に利用可能な量が一致していない場合、発電会社の事前の計画(たとえば、パターンAの高コストな発電の置き換え計画、パターンBの市場調達の置き換え計画、パターンCの市場販売計画など)にずれを引き起こすので、これは問題になる。
【0062】
これを踏まえて、本開示の実装は、MLモデルの予測の信用区間(credit interval)を提供する。いくつかの例では、信用区間(信頼区間(confidence interval)とも呼ばれている)は予測の不確定性を定量化する。いくつかの例では、状態空間モデルによって提供される予測の信用区間は、予測にわたる分布(たとえば、正規分布)を使用して決定することができる。たとえば、予測は平均(m)として提供することができ、標準偏差(σ)を決定することができる。分布の閾値パーセンテージ(たとえば、90%)を考慮した標準偏差の倍数(q)を決定することができ、下限(たとえば、m-qσ)を予測値として使用することができる。いくつかの例では、他のタイプのモデル(たとえば、LightGBM、XGBoost)によって提供される予測の信用区間は、分位点回帰を使用してX%(たとえば、5%)パーセンタイル値を直接予測することによって決定することができ、これを使用して不確定性の下限を決定することができる。
【0063】
説明の目的で、Oの最適化後にDSFシステムが50,000kWを提供すると決定される非限定的な例を考えることができる。分布分析および/または分位点回帰を(たとえば、MLモデル(複数可)のタイプに応じて)適用することができ、40,000kWの下限および60,000kWの上限が不確定性の閾値パーセンテージを構成していると決定することができる。これを踏まえて、予測値を40,000kWの下限として提供することができる。結果的に、12月1日に、発電会社にこれを知らせ、発電会社は12月2日の17:00の限界面から40,000kWを削減することを決定することができる。
【0064】
限られた例では、信用区間を使用しても、予測値が不正確であり、DSFシステムからの電力の不足を考慮すべきであるということが依然として起こり得る。これは、たとえば、予測不可能なイベントの結果として起こり得る。そのような事態では、発電により不足自体を補うことができ、および/またはスポット市場を使用して不足を補うことができ、発電会社は網運用者に報告することができ、罰金を請求することができる。
【0065】
図3A図3Cは、従来のアプローチと比較した、本開示の実装による、エネルギー供給が最適化されたそれぞれのシナリオ300、302、304を示している。
【0066】
図3Aは、発電量が電力需要量を満たすのに十分であることを表すシナリオ300を示している(たとえば、Pは少なくともDに等しい)。いくつかの例では、シナリオ300において、発電所(たとえば、図1の発電所120)は、限界単位(marginal unit)で発電される電力をEV(たとえば、図1のEV128のうちの1つまたは複数)のバッテリーからの電力に置き換えることができる。結果的に、EVのバッテリーからの電力が、とりわけ高コストな発電手段から発電されるはずの電力に取って代わるので、資源効率が得られる。いくつかの例では、EV蓄電池からの集約コスト(EV所有者へのインセンティブを含む)は、限界単位生成の単位コスト未満である。このようにして、発電会社は、より少ない電力を発電するにもかかわらず、依然として電力の供給で利益を出すことができる。
【0067】
図3Bは、発電量が電力需要量を満たすのに不十分であることを表すシナリオ302を示している(たとえば、PはD未満である)。いくつかの例では、シナリオ302において、発電所(たとえば、図1の発電所120)は、電力の市場調達(すなわち、発電会社が他の発電会社から電力を購入する)をEV(たとえば、図1のEV128のうちの1つまたは複数)のバッテリーからの電力に置き換えることができる。結果的に、EVのバッテリーからの電力が、他の発電会社により発電されて市場で購入されるはずの電力に取って代わるので、資源効率が得られる。いくつかの例では、EV蓄電池からの集約コスト(EV所有者へのインセンティブを含む)は、市場価格未満である。このようにして、発電会社は、市場での電力の購入を回避することにより、依然として電力の供給で利益を出すことができる。
【0068】
図3Cは、発電量が電力需要量を満たすのに十分であることを表すシナリオ304を示している(たとえば、PはD未満ではない)。いくつかの例では、シナリオ304において、発電所(たとえば、図1の発電所120)はすぐに需要に応じることができ、EV(たとえば、図1のEV128のうちの1つまたは複数)のバッテリーからの電力を電力のインベントリとして提供することができ、その少なくとも一部は市場で販売することができる。これは、EV蓄電池からの集約コスト(EV所有者へのインセンティブを含む)が、EVからの電力の市場販売の利益未満である状況で起こり得る。
【0069】
いくつかの実装では、値を組み合わせてパターンを提供することができる。たとえば、EVからの電力は、発電の損失を埋めるために使用することができ(たとえば、PがD未満でない)、また、市場で販売することができる。これは、EVから利用可能な電力が発電の損失を埋めるのに必要な電力量を超える場合に行うことができる。
【0070】
図4は、本開示の実装で実行することができる例示的なプロセス400を示している。いくつかの例では、例示的なプロセス400は、1つまたは複数のコンピューティングデバイスによって実行される1つまたは複数のコンピュータ実行可能プログラムを使用して提供される。本開示の実装によれば、例示的なプロセス400は、期間p中の、および期間p内の各時間間隔tの間のパワーグリッドの運用を決定するために実行される。たとえば、期間pは日付(たとえば、2023-01-31)とすることができる。いくつかの例では、例示的なプロセス400を期間p-1(たとえば、2021-01-30)に実行して、期間p(たとえば、翌日)内の各時間間隔tの間にパワーグリッドをどのように運用するかを決定する。たとえば、非限定的な例として上記で論じたように、来る期間p(たとえば、翌日)内の30分間の時間間隔tに対してパターンのセットを決定することができる。たとえば、限定なく、次の24時間に対してパターンのセットを決定することができ、パターンの各セットは、その24時間内のそれぞれの30分間の時間間隔のものである(たとえば、1440分/30分→48セットのパターン)。この非限定的な例では、次の24時間に関する、パターンのセットに基づいて運用する命令を発行することができる。たとえば、期間pは明日を表すことができ、パターンのセットは[(xa,xb,xc),...,(xa48,xb48,xc48)]として提供することができ、これは今日(p-1)決定される。
【0071】
定数データが受け取られる(402)。たとえば、本明細書で詳細に説明しているように、図2のDSFシステム202のバランス調整エンジン222によって定数のセットを受け取ることができる。いくつかの例では、定数のセットは、時間間隔の発電単価、時間間隔のDSF単価、および時間間隔の発電計画量のうちの1つまたは複数を含む。たとえば、バランス調整エンジン222は、1つまたは複数のソース(たとえば、TSO210、市場212、パワーグリッド204)から定数のセット内の各定数の値を受け取ることができる。予測が決定される(404)。たとえば、本明細書で詳細に説明しているように、バランス調整エンジン222は、(たとえば、MLモジュール240によって実行される)MLモデルのセットに入力を提供することができ、MLモデルのセットは入力を処理して予測のセット内の予測を提供する。いくつかの例では、予測のセットは、時間間隔の間に予測される電力不足量、時間間隔の間の過剰または不足を示す2値フラグ、時間間隔の間の市場取引単価、時間間隔の間の利用可能なEVバッテリーの電力ボリューム、時間間隔の間の供給速度、および時間間隔の間にEVから供給される電力量を含む。いくつかの例では、MLモデルのうちの1つまたは複数への入力は、日付(たとえば、時間間隔を示す)、降水量、湿度、気温、人口、人口統計などを含むことができる。
【0072】
目的関数が最適化される(406)。たとえば、本明細書で詳細に説明しているように、目的関数Oは、最適化モジュール242によって最適化される。いくつかの例では、最適化は、目的関数の最大値を決定するように変数の値を調整することを含む。変数のセットが出力される(408)。たとえば、本明細書で詳細に説明しているように、変数のセットは最適化の出力として提供され、高コストな発電の代わりに時間間隔中にEVのセットからパワーグリッドに供給する電力量を表す第1の値と、市場調達の代わりにEVのセットからパワーグリッドに供給する電力量を示す第2のパターンと、市場で販売されるEVのセットからの電力量を示す第3の値と、を含むことができる。いくつかの例では、変数のセットは、時間間隔中にそれぞれのEVをパワーグリッドにつなぐように所有者に促すために、EVのセット内のEVのそれぞれの所有者に伝えられるインセンティブを含む。いくつかの例では、変数のセットは、時間間隔中の電力不足のインスタンスを平滑化するための上限および下限を含む。
【0073】
命令が送信され(410)、命令に応答してパワーグリッドが運用される(412)。たとえば、本明細書で詳細に説明しているように、DERシステム220は、時間間隔に対して決定された変数のセットに基づいて時間間隔中にパワーグリッド204を運用する命令をパワーグリッド204に提供することができる。たとえば、DERシステム220は、ある割合の電力が1つまたは複数の発電システム(たとえば、化石燃料、核、太陽光、水力発電)から提供され、ある割合の電力がEV206(たとえば、図1のEV128)のうちの1つまたは複数から提供されるように、パワーグリッド204内の1つまたは複数のアセットに命令を提供することができる。たとえば、各アセットはそれぞれのERM234に関連付けることができ、これによりアセットはDERシステム220(たとえば、DERシステム220のDNM230)から命令を受信してこれに応答することが可能になる。
【0074】
本開示の実装は複数の利点を実現する。たとえば、EVのバッテリーの活用を通じて、電力不足時の電力調達(およびそのコスト)が削減され、電力不足時の高単価の発電機の稼働が削減され、温室効果ガスの排出が削減され、海外からの燃料の調達が削減される。これらの削減は、本開示の実装による目的関数の最適化を通じて最大化される。さらに、単一の施設または単一のグリッドにストックされた電力を使用して最適な再充電/放電制御を実現するのではなく、エリア全体の個人によって所有されるEV蓄電池のグループおよび発電会社を単一のソースとして、EVによって提供される電力の活用を先導することによって、より大規模でより大きな効果を実現することができる。加えて、個人によって所有されるEV蓄電池を使用することによって、パワーグリッドのための大規模な蓄電施設を構築する必要がなく、資源、時間、および費用の潜在的な支出が回避されると共に、最終的に廃棄される必要があるバッテリーが回避される。このようにして、EVの蓄電容量を十分に利用することができ、発電機会を最大限に活性化(activate)することができ、それによって環境、一般大衆、および発電会社に利益がもたらされる。
【0075】
他の例として、インセンティブにより、EV所有者が集合的にアグリゲータとなってより多くの電力供給を集約することが可能になり、これにより燃料調達コストが低下し、電気調達コストが低下し、温室効果ガスの排出が低下する。これらの削減は、本開示の実装による目的関数の最適化を通じて最大化される。
【0076】
他の例として、平滑化を考慮すると、(不足を補うためにEV蓄電池を使用しても)電力の不足がある場合、本開示の実装により、電力の供給が不足している時間間隔において電力不足が平滑化されるような、EVバッテリーの再充電および放電が可能になる。このようにして、不足のために調達される電気の最大量が削減され、その結果、本来調達する必要がある電力量が削減され、電力コストの削減につながる。これにより電力調達コストが削減され、これは本開示の実装による目的関数の最適化を通じて最大化される。本開示の実装により、それぞれの地域内のパワーグリッドからの電力の供給も安定する。
【0077】
本明細書に記載した実装および全ての機能動作は、デジタル電子回路で、または本明細書で開示した構造およびその構造上の等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアで、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせで実現され得る。実装は1つまたは複数のコンピュータプログラム製品(すなわち、データ処理装置により実行されるかまたはその動作を制御するための、コンピュータ可読媒体上にエンコードされたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュール)として実現され得る。コンピュータ可読媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、メモリデバイス、機械可読伝播信号をもたらす組成物、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせであり得る。「コンピューティングシステム」という用語は、データを処理するための全ての装置、デバイス、および機械を含み、これには、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータが含まれる。この装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムの実行環境を作り出すコード(たとえば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらの1つまたは複数の任意の適切な組み合わせを構成するコード)を含み得る。伝播信号とは、適切な受信機装置に送信される情報をエンコードするために生成される人工的に生成された信号(たとえば、機械生成された電気信号、光信号、または電磁信号)である。
【0078】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られている)は、コンパイル型またはインタープリタ型言語を含む任意の適切な形式のプログラミング言語で記述され得、任意の適切な形態で、たとえば、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとして展開され得る。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応するとは限らない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分(たとえば、マークアップ言語ドキュメントに記憶される1つまたは複数のスクリプト)、対象のプログラム専用の単一ファイル、あるいは複数の連携ファイル(たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部分を記憶するファイル)に記憶され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つの場所に位置するかもしくは複数の場所に分散され通信ネットワークにより相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。
【0079】
本明細書に記載したプロセスおよび論理フローは、1つまたは複数のプログラマブルプロセッサが1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行し、入力データに作用し出力を生成することにより機能を実行することによって実行され得る。プロセスおよび論理フローは、専用論理回路(たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ:field programmable gate array)またはASIC(特定用途向け集積回路:application specific integrated circuit))によっても実行され得、装置はそれらとしても実装され得る。
【0080】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用および専用両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の適切な種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリもしくはランダムアクセスメモリまたはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータの要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスとを含むことができる。一般に、コンピュータはまた、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス(たとえば、磁気、光磁気ディスク、もしくは光ディスク)を含むか、またはそれらからデータを受け取るもしくはそれらへデータを転送するように動作可能に結合されるか、またはその両方である。しかしながら、コンピュータはそのようなデバイスを有する必要はない。さらに、コンピュータは、別のデバイス(たとえば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA:personal digital assistant)、携帯オーディオプレーヤー、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)受信機)に組み込まれ得る。コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体は、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスを含み、これには、例として、半導体メモリデバイス(たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(たとえば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、ならびにCD ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路により補完され得、またはそれに組み込まれ得る。
【0081】
ユーザとの相互作用を提供するために、情報をユーザに表示するためのディスプレイデバイス(たとえば、CRT(陰極線管:cathode ray tube)、LCD(液晶ディスプレイ:liquid crystal display)モニタ)と、ユーザがコンピュータに入力を提供し得るキーボードおよびポインティングデバイス(たとえば、マウス、トラックボール、タッチパッド)とを有するコンピュータ上で実装が実現され得る。ユーザとの相互作用を提供するために他の種類のデバイスも使用され得、たとえば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の適切な形態の感覚フィードバック(たとえば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、触覚フィードバック)であり得、ユーザからの入力は、音響、発話、または触覚入力を含む任意の適切な形態で受け取られ得る。
【0082】
実装は、バックエンドコンポーネント(たとえば、データサーバとして)、ミドルウェアコンポーネント(たとえば、アプリケーションサーバ)、および/またはフロントエンドコンポーネント(たとえば、ユーザが実装と相互作用し得るグラフィカルユーザインターフェースもしくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、あるいは1つまたは複数のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の適切な組み合わせを含むコンピューティングシステムで実現され得る。システムのコンポーネントは、任意の適切な形態または媒体のデジタルデータ通信(たとえば、通信ネットワーク)により相互接続され得る。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、たとえば、インターネットを含む。
【0083】
コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバを含み得る。クライアントおよびサーバは、一般的には互いに遠隔にあり、典型的には通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータ上で実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有することにより生じる。
【0084】
本明細書は多数の詳述を含むが、これらは、本開示の範囲または特許請求し得るものに対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実装に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別々の実装のコンテキストで本明細書に記載している特定の特徴はさらに、単一の実装において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実装のコンテキストで記載している様々な特徴はさらに、複数の実装において別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装され得る。さらに、特徴は特定の組み合わせで動作するよう上述し得、さらには最初にそのように特許請求し得るが、特許請求する組み合わせの1つまたは複数の特徴が一部のケースではその組み合わせから削除され得、特許請求する組み合わせはサブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象とし得る。
【0085】
同じく、動作は図面に特定の順序で示しているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が図示した特定の順序もしくは順次的な順序で実行されること、または示した全ての動作が実行されることを要求するものと理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクおよび並列処理が有利であり得る。さらに、上述の実装における様々なシステムコンポーネントの分離は、全ての実装においてそのような分離を要求するものと理解されるべきではなく、記載したプログラムコンポーネントおよびシステムが一般的には単一のソフトウェア製品に統合され得、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。
【0086】
いくつかの実装について記載した。それでもなお、本開示の思想および範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられ得ることは理解されよう。たとえば、ステップが並べ替え、追加、または削除された、上記で示したフローの種々の形態が使用され得る。したがって、他の実装は添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【外国語明細書】