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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116058
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】分注装置および分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023153999
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2023021984
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】伊永 章史
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕之
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC02
2G058EA02
2G058ED01
2G058ED10
2G058ED20
2G058ED35
(57)【要約】
【課題】 コストの増加を抑制しつつ複数の収容部の整列方向が異なる種々の容器に対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能な分注装置および分注方法を提供する。
【解決手段】 分注装置100は、直線状に整列された複数の収容部を含む容器の各収容部から液体を吸引可能または各収容部に液体を吐出可能な分注装置100であって、容器を支持する支持部と、直線状に整列された複数のチップ取付部12を有し、複数のチップ取付部12の各々に取り付けられた分注チップ13に液体を吸引可能および分注チップ13から液体を吐出可能に構成された分注ヘッド10と、複数のチップ取付部12の整列方向が複数の収容部の整列方向に一致するように、分注ヘッド10および支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転可能に構成された第1の駆動部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に整列された複数の収容部を含む容器の各収容部から液体を吸引可能または各収容部に液体を吐出可能な分注装置であって、
前記容器を支持する支持部と、
直線状に整列された複数のチップ取付部を有し、前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに液体を吸引可能および前記分注チップから液体を吐出可能に構成された分注ヘッドと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致するように、前記分注ヘッドおよび前記支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転可能に構成された第1の駆動部とを備えた、分注装置。
【請求項2】
前記容器は、複数の第1の収容部を含む第1の容器と、複数の第2の収容部を含む第2の容器とを含み、
前記支持部は、前記複数の第1の収容部が第1の方向に整列されるように前記第1の容器を支持する第1の支持部と、前記複数の第2の収容部が前記第1の方向に交差する第2の方向に整列されるように前記第2の容器を支持する第2の支持部とを含み、
前記第1の駆動部は、前記分注ヘッドを前記第1または第2の支持部に対して相対的に回転させるように構成され、または前記第1または第2の支持部を前記分注ヘッドに対して相対的に回転させるように構成され、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の第1の収容部の整列方向に一致した状態で前記分注ヘッドの二つ以上の分注チップに前記第1の容器の二つ以上の第1の収容部から液体が吸引された後、前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の第2の収容部の整列方向に一致した状態で、吸引された液体が前記分注ヘッドの前記二つ以上の分注チップから前記第2の容器の二つ以上の第2の収容部に吐出されるように、前記分注ヘッドおよび前記第1の駆動部を制御する制御部をさらに備えた、請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記分注ヘッドを前記第1および第2の支持部に対して相対的に前記第1および第2の方向に移動させるように構成され、または前記第1および第2の支持部を前記分注ヘッドに対して相対的に前記第1および第2の方向に移動させるように構成された第2の駆動部と、
複数の第3の収容部を有する第3の容器を支持する第3の支持部とをさらに備え、
前記第1の容器は、複数の第1の分注単位を含み、各第1の分注単位は、予め定められた数の複数の第1の収容部を含み、
前記第2の容器は、複数の第2の分注単位を含み、各第2の分注単位は、予め定められた数の複数の第2の収容部を含み、
前記第3の容器は、複数の第3の分注単位を含み、各第3の分注単位は、予め定められた数の複数の第3の収容部を含み、
前記制御部は、
前記第3の容器の一の第3の分注単位の複数の第3の収容部からの液体の吸引、一の第1の分注単位の複数の第1の収容部への液体の吐出、前記一の第1の分注単位の複数の第1の収容部からの液体の吸引、および一の第2の分注単位の複数の第2の収容部への液体の吐出を順に含む一連の動作が連続的に行われた後、他の第3の分注単位、他の第1の分注単位および他の分注単位についての前記一連の動作が連続的に行われるように、前記分注ヘッド、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する、請求項2記載の分注装置。
【請求項4】
前記第1の容器の前記複数の第1の収容部は、第1のピッチで少なくとも一列に整列されたH個(Hは2以上の整数)以上の第1の収容部を含み、
前記第2の容器の前記複数の第2の収容部は、第2のピッチで少なくとも一列に配置されたM個の第2の収容部を含み、MはHのm倍(mは2以上の整数)であり、
前記第1のピッチは、前記第2のピッチの整数倍であり、
前記第2の容器の前記M個の第2収容部はm組に分類され、各m組はH個の第2の収容部を含み、
前記制御部は、前記複数の第1の収容部のうちH個の第1の収容部からH個の分注チップに液体を吸引する吸引動作が行われ、吸引された液体が一組のH個の第2の収容部に吐出される吐出動作がm組について順次行われるように、前記分注ヘッド、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する、請求項3記載の分注装置。
【請求項5】
前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに直交し、
前記分注ヘッドによる前記第1の容器からの液体の吸引時には、前記複数のチップ取付部の整列方向が前記第1の方向と一致し、
前記制御部は、前記分注ヘッドによる前記第1の容器からの液体の吸引時と前記分注ヘッドによる前記第2の容器への液体の吐出時との間で前記分注ヘッドおよび前記第2の支持部のうち一方を他方に対して相対的に90度回転させるように前記第1の駆動部を制御する、請求項2~4のいずれか一項に記載の分注装置。
【請求項6】
前記複数の収容部は、複数列および複数行のマトリクス状に配置され、
前記複数のチップ取付部は、複数列および複数行のマトリクス状に配置される、請求項1記載の分注装置。
【請求項7】
直線状に整列された複数のチップ取付部を有する分注ヘッドを用いて分注を行う分注方法であって、
直線状に整列された複数の収容部を含む容器を支持部により支持するステップと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致するように前記分注ヘッドおよび前記支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転させるステップと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致した状態で、前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに前記容器の前記複数の収容部から液体を吸引するか、または前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップから前記容器の前記複数の収容部に液体を吐出するステップとを含む、分注方法。
【請求項8】
前記第1の駆動部は、前記支持部を前記分注ヘッドに対して第1の回転軸の周りで回転させ、
前記分注装置は、さらに、
前記第1の回転軸と平行に延び、前記支持部と一体的に回転する第2の回転軸と、
前記第2の回転軸の周りで回転可能に取り付けられ、第1の部分および第1の押圧部を有するアームと、
第1の固定部と、
前記支持部により支持された前記容器の第1の側面と当接可能に前記支持部に設けられた第1の当接部と、を備え、
前記第1の固定部が前記支持部とともに一の方向に回転する前記アームの前記第1の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第1の側面に対向する第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させる、請求項1記載の分注装置。
【請求項9】
前記アームは、第2の部分をさらに有し、
前記分注装置は、さらに、
第2の固定部、を備え、
前記第2の固定部が前記支持部とともに前記一の方向とは逆の他の方向に回転する前記アームの前記第2の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させる、請求項8記載の分注装置。
【請求項10】
前記第2の固定部を予め定められた位置に設けることにより、前記支持部が基準姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を押圧せず、前記支持部が基準姿勢より前記他の方向に180度回転した姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させる、請求項9記載の分注装置。
【請求項11】
前記第1の固定部を前記第2の固定部が設けられる位置とは異なる予め定められた位置に設けることにより、前記支持部が基準姿勢より前記他の方向に90度回転した姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を押圧せず、前記支持部が基準姿勢より前記一の方向に90度回転した姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させる、請求項10記載の分注装置。
【請求項12】
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器の前記第2の側面に接触する第1のベアリングを含む、請求項8または9に記載の分注装置。
【請求項13】
前記第1の押圧部は、前記第1のベアリングと前記アームとを接続する平板形状の第1の板ばねをさらに含む、請求項12記載の分注装置。
【請求項14】
前記アームは、第2の押圧部をさらに有し、
前記分注装置は、さらに、
前記支持部により支持された前記容器の第3の側面と当接可能に前記支持部に設けられた第2の当接部、を備え、
前記第1の固定部が前記支持部とともに前記一の方向に回転する前記アームの前記第1の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第2の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第2の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第3の側面に対向する第4の側面を前記第2の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第3の側面を前記第2の当接部に当接させる、請求項8または9に記載の分注装置。
【請求項15】
前記第2の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器の前記第4の側面に接触する第2のベアリングを含む、請求項14記載の分注装置。
【請求項16】
前記第2の押圧部は、前記第2のベアリングと前記アームとを接続する平板形状の第2の板ばねをさらに含む、請求項15記載の分注装置。
【請求項17】
前記回転させるステップは、前記支持部を前記分注ヘッドに対して第1の回転軸の周りで回転させ、
前記分注方法は、さらに、
第1の固定部が前記支持部とともに一の方向に回転するアームの第1の部分に接触することにより、前記アームを第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転させるステップと、
前記支持部により支持された前記容器を挟んで第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の第1の側面に対向する第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧させることにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させるステップと、を含む、請求項7記載の分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置および分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野等で行われる試験および分析においては、検体等の液体をウェルプレートまたはマイクロプレート等の容器の複数の収容部(ウェル)に吐出するための分注装置が用いられる。近年の分注装置は、容器の多数の収容部に対して同時に分注可能な構成を有する。
【0003】
特許文献1に記載された液体分注装置は、ノズルユニットを有する分注ヘッド装置を備える。ノズルユニットには、複数のチップが格子状に配列されるように、同様な配列を有する複数のノズルに装着されている。チップは、液体を吸入または吐出可能な貫通孔を有する先細りのテーパ状のノズル状部品である。
【0004】
一般的に、分注装置に用いられる容器では、複数の収容部の配列が規格化されている。例えば、96個(8×12個)のウェルを備えるマイクロプレートまたは384個(16×24個)のウェルを備えるマイクロプレートが用いられる。
【0005】
特許文献1の分注装置は、一の種類のノズルユニットを他の種類のノズルユニットに交換可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4235599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された液体分注装置では、ノズルユニットを交換することにより異なる仕様の複数のマイクロプレートを用いることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の液体分注装置では、種々のマイクロプレートに対応する複数のノズルユニットを用意する必要がある。それにより、液体分注装置のコストが高くなる。具体的には、ステージ上に支持されるマイクロプレートの複数のウェルの長手方向の整列方向とノズルユニットにおける複数のノズルの長手方向の整列方向とが異なる場合には、ノズルユニットを交換する必要がある。
【0009】
ステージ上に支持された一のマイクロプレートにおける複数のウェルの配列方向がステージ上に支持された他のマイクロプレートにおける複数のウェルの配列方向と異なる場合には、一のマイクロプレートから液体を吸引し、吸引した液体を他のマイクロプレートに吐出することが困難または不可能となる。
【0010】
本発明の目的は、コストの増加を抑制しつつ複数の収容部の整列方向が異なる種々の容器に対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能な分注装置および分注方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、直線状に整列された複数の収容部を含む容器の各収容部から液体を吸引可能または各収容部に液体を吐出可能な分注装置であって、容器を支持する支持部と、直線状に整列された複数のチップ取付部を有し、複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに液体を吸引可能および分注チップから液体を吐出可能に構成された分注ヘッドと、複数のチップ取付部の整列方向が複数の収容部の整列方向に一致するように、分注ヘッドおよび支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転可能に構成された第1の駆動部とを備える、分注装置に関する。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、直線状に整列された複数のチップ取付部を有する分注ヘッドを用いて分注を行う分注方法であって、直線状に整列された複数の収容部を含む容器を支持部により支持するステップと、複数のチップ取付部の整列方向が複数の収容部の整列方向に一致するように分注ヘッドおよび支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転させるステップと、複数のチップ取付部の整列方向が複数の収容部の整列方向に一致した状態で、複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに容器の複数の収容部から液体を吸引するか、または複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップから容器の複数の収容部に液体を吐出するステップとを含む分注方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コストの増加を抑制しつつ複数の収容部の整列方向が異なる種々の容器に対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能な分注装置および分注方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態に係る分注装置の構成を説明するための模式図である。
図2】第1のウェルプレートおよび第2のウェルプレートについて説明するための模式的平面図である。
図3】第1のウェルプレートおよび第2のウェルプレートについて説明するための模式的平面図である。
図4】第1のウェルプレートおよび第2のウェルプレートについて説明するための模式的平面図である。
図5】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図6】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図7】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図8】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図9】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図10】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図11】制御部の制御による第1および第2のウェルプレート上の状態を示す模式的平面図である。
図12】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図13】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図14】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図15】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図16】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図17】変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。
図18】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
図19】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
図20】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
図21】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
図22】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
図23】変形例における姿勢変換装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る分注装置および分注方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(1)分注装置
図1は、一実施の形態に係る分注装置の構成を説明するための模式図である。図1には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。本実施の形態においては、X方向が第1の方向に相当し、Y方向が第2の方向に相当する。
【0017】
分注装置100は、分注ヘッド10、複数の第1の支持部21、第2の支持部22、回転駆動部30および制御部40を備える。分注ヘッド10は、吸引吐出機構11、複数のチップ取付部12および駆動機構10aを含む。
【0018】
複数のチップ取付部12は、吸引吐出機構11の下面に設けられる。各チップ取付部12は、例えば、ノズルである。チップ取付部12の各々には、下方を向くように分注チップ13が取り付けられる。本実施の形態の分注装置100においては、所望のチップ取付部12に対して分注チップ13を取り付け可能に構成される。図1の例では、全てのチップ取付部12に対して分注チップ13が取り付けられる。複数のチップ取付部12は、水平面内で複数列および複数行にマトリクス状に整列されている。各列と各行とは直交している。各列には、複数のチップ取付部12が直線状かつ等間隔に配列されている。各行には、複数のチップ取付部12が直線状かつ等間隔に配列されている。各列の複数のチップ取付部12の数は、各行の複数のチップ取付部12の数よりも大きい。したがって、各列の方向が長手方向であり、各行の方向が短手方向である。以下、分注ヘッド10における長手方向を複数のチップ取付部12の整列方向と呼ぶ。
【0019】
吸引吐出機構11は、例えば複数のチップ取付部12に対応する複数のシリンジを含み、チップ取付部12に取り付けられた分注チップ13への液体の吸引および分注チップ13からの液体の吐出を可能にする。以下、分注ヘッド10による分注チップ13への液体の吸引および分注チップ13からの液体の吐出を分注動作と総称する。分注ヘッド10は、駆動機構10aによりX方向、Y方向およびZ方向に移動可能に支持される。この構成により、分注ヘッド10は、3次元的に移動可能になる。分注ヘッド10は、後述する複数の第1のウェルプレートWPおよび複数の第2のウェルプレートwpに対する分注動作に用いられる。各第1のウェルプレートWPおよび各第2のウェルプレートwpは長方形状を有する。
【0020】
複数の第1の支持部21および第2の支持部22は、Y方向に並ぶように、ステージSt上に配置される。複数の第1の支持部21は、各長辺がX方向に平行となりかつ各短辺がY方向に平行となるようにステージStに固定され、第2の支持部22は、ステージSt上で回転可能に設けられる。第2の支持部22は、標準状態では、各長辺がX方向に平行となりかつ各短辺がY方向に平行となる。本実施の形態においては、n個の第1の支持部21が用いられる。nは正の整数である。図1においては、2番目から(n-1)番目の第1の支持部21の図示が省略される。複数の第1の支持部21および第2の支持部22は、支持面21a,22aを有する。支持面21a,22aには、第1のウェルプレートWPの外辺に沿った長方形状の外枠部21b,22bが形成される。
【0021】
各第1の支持部21の外枠部21b,22bは、第1のウェルプレートWPを嵌め込み可能な大きさで構成されている。各第1の支持部21の外枠部21b内には、第1のウェルプレートWPが嵌め込まれる。この場合、各第1のウェルプレートWPの長辺はX方向に平行となり、短辺はY方向に平行になる。第2の支持部22の外枠部22b内には、複数の第2のウェルプレートwpがアダプタADにより固定される。アダプタADは、直方体形状であり、上面に複数の第2のウェルプレートwpを固定可能に構成されている。第1のウェルプレートWPは、複数のウェルWLを有する。各第2のウェルプレートwpは、複数のウェルwlを有する。本実施の形態では、第2の支持部22の外枠部22b内に4つの第2のウェルプレートwpが固定される。この場合、複数の第2のウェルプレートwpは、X方向に並ぶように配置される。各第2のウェルプレートwpの長辺はY方向に平行となり、短辺はX方向に平行になる。
【0022】
本実施の形態においては、第1のウェルプレートWPおよび第2のウェルプレートwpは、異なる規格に適合する。そのため、各第1のウェルプレートWPのサイズ(長辺および短辺の長さ)と各第2のウェルプレートwpのサイズ(長辺および短辺の長さ)とは異なる。また、各第1のウェルプレートWPのウェルWLの数と第2のウェルプレートwpのウェルwlの数とは異なる。さらに、第1のウェルプレートWPのウェルWLの配列と第2のウェルプレートwpのウェルwlの配列とは異なる。
【0023】
支持部22の下方において、ステージSt内には回転駆動部30が収容される。支持部22の下面は、Z方向に延びる接続部材31を介して回転駆動部30に接続される。回転駆動部30は、例えば電動モータ(図示せず)を含み、接続部材31を介して支持部22をZ方向の軸の周りに回転させる。制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置等を含む。制御部40は、分注ヘッド10、駆動機構10aおよび回転駆動部30の動作を制御する。
【0024】
分注装置100においては、上記構成の他に、図示しない磁気ユニットが設けられる。磁気ユニットは、第1のウェルプレートWPを載置可能な載置部を含む。磁気ユニットの載置部には、第1のウェルプレートWPの各ウェルwlの外面に対して配置可能な複数の磁石が設けられる。磁気ユニットの磁石は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。本実施の形態においては、磁気ユニットの磁石は、永久磁石である。
【0025】
本実施の形態の分注装置100は、例えば、生体試料中の標的ポリペプチドを分析装置で分析および測定するための前処理としての免疫沈降処理に用いられる。このような処理として、国際公開第2018/139132号公報が挙げられる。分注装置100の免疫沈降処理において、分注ヘッド10は、複数の第1の支持部21および第2の支持部22に支持された第1および第2のウェルプレートWP,wp内の液体に対する分注に用いられる。
【0026】
複数の第1の支持部21上の複数の第1のウェルプレートWPを用いて、生体試料に対する免疫沈降処理における第1反応工程、第1洗浄工程、第1溶出工程、中性化工程、第2反応工程、第2洗浄工程および第2溶出工程が行われる。第2の支持部22上の複数の第2のウェルプレートwpを用いて、分析対象の物質をウェルwl上で生成する分析対象ウェル作成工程が行われる。分析対象ウェル作成工程後に第2の支持部22上の複数の第2のウェルプレートwpの各ウェルwl内の分析対象の物質は、分析装置により分析される。分析装置は、例えば質量分析装置である。本実施の形態において、分析装置は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析装置(以下、MALDI-MSと略記する。)である。
【0027】
第1反応工程は、例えば、第1抗体固定化担体(担体および当該担体に結合した標的ポリペプチドを認識可能な抗原結合部位を持つ抗体を含む)に、生体試料の含有液を接触させる工程である。第1抗体固定化担体としては、磁気ビーズが用いられる。生体試料を含む含有液は、図示しない試薬ボトルに収容される。第1反応工程においては、まず、複数の第1のウェルプレートWPのうち、未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに第1抗体固定化担体を含む溶液が分注される。各ウェルWLへの第1抗体固定化担体の分注については、使用者により手動で行われてもよく、分注装置100の分注ヘッド10を用いて行われてもよい。また、各ウェルWLに第1抗体固定化担体を含む溶液が予め収容された第1のウェルプレートWPが用いられてもよい。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の生体試料を含む含有液を吸引する。その後、分注装置100の分注ヘッド10が当該生体試料を含む含有液を第1抗体固定化担体が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。なお、この工程においては、生体試料を含む含有液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに第1抗体固定化担体を含む溶液が吐出されることにより行われてもよい。それにより、生体試料中の標的ポリペプチドが第1抗体固定化担体に結合する。これにより、第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体が得られる。
【0028】
第1洗浄工程は、第1反応工程により得られた第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を、洗浄溶液を用いて洗浄する工程である。洗浄溶液としては、界面活性剤を含む中性緩衝液が用いられる。洗浄溶液は、図示しない試薬ボトルに収容される。第1洗浄工程においては、まず、第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の洗浄溶液を吸引し、当該洗浄溶液を第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。それにより、第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体が洗浄される。
【0029】
第1の溶出工程は、酸性溶液を用いることにより、第1抗体固定化担体から標的ポリペプチドを解離させた後に、溶出させた第1溶出液を得る工程である。酸性溶液は、図示しない試薬ボトルに収容される。第1溶出工程においては、まず、第1洗浄工程において洗浄された第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の酸性溶液を吸引し、当該酸性溶液を第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体(洗浄済み)を含む溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。それにより、酸性溶液と第1抗体固定化担体および標的ポリペプチドの結合体(洗浄済み)とが混合され、第1混合液が生成される。
【0030】
続いて、第1混合液内の第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの解離が行われる。第1抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの解離については、第1混合液が各ウェルWLに収容された第1のウェルプレートWPが磁気ユニット(図示せず)に運搬される。磁気ユニットへの第1のウェルプレートWPの運搬については、作業者により手動で運搬されてもよく、例えば、第1のウェルプレートWPを吸着保持可能な搬送ロボットを用いて運搬されてもよい。磁気ユニットにおいては、図示しない磁気ユニットの複数の磁石が各ウェルWLの外壁面に配置される。これにより、ウェルプレートWPの各ウェルWL内の第1抗体固定化担体(磁気ビーズ)が各ウェルWLの内壁面に引き寄せられる。以下、この動作を集磁動作と呼ぶ。この状態で、分注装置100の分注ヘッド10が各ウェルWL内の第1混合液(上清)を吸引することにより、第1溶出液が得られる。
【0031】
中性化工程は、第1溶出液に中性緩衝液を加えることにより、第1溶出液のpHが中性とされた第1精製溶液を得る工程である。中性緩衝液は、図示しない試薬ボトルに収容される。中性化工程においては、まず、分注装置100の分注ヘッド10により第1溶出溶液が未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の中性緩衝液を吸引し、当該中性緩衝液を第1溶出溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。それにより、第1溶出液のpHが中性化されることにより、第1精製溶液が生成される。
【0032】
第2反応工程は、第2抗体固定化担体(担体および当該担体に結合した標的ポリペプチドを認識可能な抗原結合部位を持つ抗体を含む)に、第1精製溶液を接触させて、第1精製溶液中の標的ポリペプチドを第2抗体固定化担体に結合させる工程である。第2抗体固定化担体としては、磁気ビーズが用いられる。第2反応工程においては、まず、複数の第1のウェルプレートWPのうち、未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに第2抗体固定化担体を含む溶液が分注される。各ウェルWLへの第2抗体固定化担体の分注については、使用者により手動で行われてもよく、分注装置100の分注ヘッド10を用いて行われてもよい。また、各ウェルWLに第2抗体固定化担体を含む溶液が予め収容された第1のウェルプレートWPが用いられてもよい。次に、分注装置100の分注ヘッド10が中性化工程により得られた第1精製溶液を吸引する。その後、分注装置100の分注ヘッド10は、第1精製溶液を溶液(第2抗体固定化担体を含む)が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。なお、この工程においては、第1精製溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに第2抗体固定化担体を含む溶液が吐出されることにより行われてもよい。それにより、第1精製溶液中の標的ポリペプチドが第2抗体固定化担体に結合する。
【0033】
第2洗浄工程は、標的ポリペプチドが結合した第2抗体固定化担体を、洗浄溶液を用いて洗浄する工程である。洗浄溶液としては、界面活性剤を含む中性緩衝液が用いられる。洗浄溶液は、図示しない試薬ボトルに収容される。第2洗浄工程においては、まず、第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の洗浄溶液を吸引し、当該洗浄用液を第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。それにより、第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体が洗浄される。
【0034】
以上の第1反応工程から第2洗浄工程までは、図1の1番目から(n-1)番目の第1の支持部21上の第1のウェルプレートWP上で順次行われる。
【0035】
第2溶出工程は、酸性溶液を用いることにより、第2抗体固定化担体から標的ポリペプチドを解離させ後に、溶出させた第2溶出液を得る工程である。第2溶出工程の酸性溶液としては、揮発性を有する有機溶媒(本実施の形態では、70%アセトニトリル)が用いられる。そのため、第2溶出工程後の第2溶出液は、揮発性を有する。そこで、第2溶出工程は、図1のn番目の第1の支持部21の第1のウェルプレートWP上で行われる。酸性溶液は、図示しない試薬ボトルに収容される。
【0036】
第2溶出工程においては、まず、第2洗浄工程において洗浄された第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体を含む溶液が未使用の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内の酸性溶液を吸引し、当該酸性溶液を第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの結合体(洗浄済み)を含む溶液が収容される第1のウェルプレートWPの各ウェルWLに吐出する。それにより、酸性溶液と第2抗体固定化担体および標的ポリペプチドの結合体(洗浄済み)とが混合され、第2混合液が生成される。
【0037】
続いて、第2混合液内の第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの解離が行われる。第2抗体固定化担体と標的ポリペプチドとの解離については、第2混合液が各ウェルWLに収容された第1のウェルプレートWPが磁気ユニット(図示せず)に運搬される。磁気ユニットへの第1のウェルプレートWPの運搬については、上述したように、作業者により手動で運搬されてもよく、搬送ロボット等を用いて運搬されてもよい。磁気ユニットにおいては、上述した集磁動作が行われる。この状態で、分注装置100の分注ヘッド10が各ウェルWL内の第2混合液(上清)を吸引することにより、第2溶出液が得られる。上記においては、第1反応工程から第2溶出工程までの操作の一例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第1反応工程から第2溶出工程までの操作は、他の操作により実行されてもよい。
【0038】
分析対象ウェル作成工程は、第2溶出工程後にn番目の第1の支持部21上の第1のウェルプレートWPの各ウェルWL内の第2溶出液を第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに分注し、当該第2溶出液とMALDI-MS用試薬とを混合する工程である。MALDI-MS用試薬は、分析装置における分析に必要な試薬(マトリックスおよび添加剤等を含む)を含む溶液である。MALDI-MS用試薬は、図示しない試薬ボトルに収容される。本実施の形態の分析対象ウェル作成工程においては、第2溶出液を第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに4分割して分注する。この詳細については、後述する。
【0039】
分析対象ウェル作成工程においては、まず、分注装置100の分注ヘッド10により第2溶出液が第2のウェルプレートwpの各ウェルWLに分注される。次に、分注装置100の分注ヘッド10が試薬ボトル内のMALDI-MS用試薬を吸引し、第2溶出液が収容される第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに当該MALDI-MS用試薬を吐出する。それにより、第2のウェルプレートwpの各ウェルwl内で分析対象の物質を含む溶液が生成される。なお、この工程においては、MALDI-MS用試薬が収容される第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに第2溶出液が吐出されることにより行われてもよい。
【0040】
その後、第2のウェルプレートwpの各ウェルwl内においては、分析対象の物質を含む溶液中の第2溶出液が揮発するとともに、第2の溶出液の揮発により、結晶状の分析対象の物質が各ウェルwl内に残存する。MALDI-MSにおいては、第2のウェルプレートwpの各ウェルwl内に残存した結晶状の分析対象の物質に、例えばレーザ光が照射される。それにより、当該物質がイオン化されることにより、質量分析が行われる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、第1抗体固定化担体および第2抗体固定化担体には、磁気ビーズが用いられる。それにより、第1反応工程から分析対象ウェル作成工程までの各工程において、分注対象の溶液に対して固液分離が必要である場合には、適宜、磁気ユニットにより集磁動作が行われている状態で、その上清が吸引されてもよい。
【0042】
図2図4は、第1のウェルプレートWPおよび第2のウェルプレートwpについて説明するための模式的平面図である。図2には、第1のウェルプレートWPおよび第2のウェルプレートwpが示される。
【0043】
図2において、第1のウェルプレートWPの複数のウェルWLは、水平面内で複数列および複数行にマトリクス状に整列されている。各列と各行とは直交している。各列には、ウェルWLが直線状かつ等間隔に配列されている。各行には、ウェルWLが直線状かつ等間隔に配列されている。各列のウェルWLの数は、各行のウェルWLの数よりも大きい。したがって、各列の方向が長手方向であり、各行の方向が短手方向である。本実施の形態の第1のウェルプレートWPは、マイクロプレート規格(ANSI SLAS 1-2004)に適合する。第1のウェルプレートWPの各列および各行の複数のウェルWLは、第1のピッチΔI1で配列される。本実施の形態では、複数のウェルWLは、12行および8列(12×8)に配列される。第1のウェルプレートWPは、長手方向の長さL1を有し、短手方向の幅w1を有する。
【0044】
第2のウェルプレートwpの複数のウェルwlは、水平面内で複数列および複数行にマトリクス状に整列されている。各列と各行とは直交している。各列には、ウェルwlが直線状かつ等間隔に配列されている。各行には、ウェルwlが直線状かつ等間隔に配列されている。各列のウェルwlの数は、各行のウェルwlの数よりも大きい。したがって、各列の方向が長手方向であり、各行の方向が短手方向である。本実施の形態の第2のウェルプレートwpは、一般的に用いられるスライドグラスの大きさで構成される。第2のウェルプレートwpの各列および各行の複数のウェルwlは、第1のピッチΔI1の半分の第2のピッチΔI2で配列される。本実施の形態では、複数のウェルwlは、12行および4列(12×4)に配列される。
【0045】
第2のウェルプレートwpは、長手方向の長さL2を有し、短手方向の幅w2を有する。第2のウェルプレートwpの長さL2は、第1のウェルプレートWPの長さL1よりも小さくてもよく、第1のウェルプレートWP1の幅w1と略等しいか、または幅w1よりも小さくてもよい。第2のウェルプレートwpの幅w2は、第1のウェルプレートWPの長さL1よりも小さくてもよく、幅w1よりも小さくてもよい。具体的には、第2のウェルプレートwpの長さL2は、第1のウェルプレートWPの長さL1の1/2倍よりも小さくてもよく、幅w1の1/4倍よりも小さくてもよい。第2のウェルプレートwpの幅w2は、第1のウェルプレートWPの長さL1の1/4倍よりも小さくてもよく、幅w1の1/2倍よりも小さくてもよい。本実施の形態の第1のウェルプレートWPについては、長さL1が約128mmであり、幅w1が約86mmである。本実施の形態の第2のウェルプレートwpについては、長さL2が約73mmであり、幅w2が約22mmである。
【0046】
上述したように、各第2の支持部22の外枠部22bは、第1のウェルプレートWPを嵌め込み可能な大きさで構成されている。そのため、第2の支持部22上に第2のウェルプレートwpを固定するには、第2の支持部22上で第2のウェルプレートwpを固定可能なアダプタを用いる必要がある。ここで、上述した第2のウェルプレートwpを固定するためのアダプタADは、外枠部22bに嵌め込み可能な大きさで構成されている。分注装置100において、より効率よく分注作業を行うには、一の分注作業時における第2の支持部22に載置された第2のウェルプレートwpの交換頻度を少なくする必要がある。したがって、分注装置100において、より効率よく分注作業を行うには、第2の支持部22の外枠部22b内のアダプタADにより多くの第2のウェルプレートWP2を配置することが求められる。
【0047】
図3には、標準状態の第2の支持部22に対して複数の第2のウェルプレートwpが固定された第1の例が示される。図4には、標準状態の第2の支持部22に対して複数の第2のウェルプレートwpが固定された第2の例が示される。図3の第1の例については、第2の支持部22の長手方向と第2のウェルプレートwpの長手方向とが一致するように第2の支持部22に第2のウェルプレートwpが配置されている。この場合、第2の支持部22の外枠部22b内には、3つの第2のウェルプレートwpが第2の支持部22に配置可能である。一方、図4の第2の例については、第2の支持部22の長手方向と第2のウェルプレートwpの短手方向とが一致するように第2の支持部22に第2のウェルプレートwpが配置されている。この場合、第2の支持部22の外枠部22b内には、図3の第1の例よりも多い4つの第2のウェルプレートwpを第2の支持部22に配置可能である。したがって、より効率よく分注作業を行うには、図4に示す第2の例で第2の支持部22に4つの第2のウェルプレートwpを配置することが理想的である。
【0048】
しかしながら、図4の状態で、図1の分注ヘッド10を用いて第1のウェルプレートWPから各第2のウェルプレートwpへの分注動作を行う場合、Z方向視におけるn番目の第1のウェルプレートWPの各列(長手方向)のウェルWLの配列と第2のウェルプレートwpの各列(長手方向)のウェルwlの配列とが異なる。そのため、分注ヘッド10の各列のチップ取付部12の配列はn番目の第1のウェルプレートWPの各列のウェルWLの配列と一致するが、第2のウェルプレートwpの各列のウェルwlの配列と一致しない。この場合、n番目の第1のウェルプレートWPから各第2のウェルプレートwpへの分注ヘッド10の分注動作を効率良く行うことができない。
【0049】
具体的には、図4に示す状態では、n番目の第1のウェルプレートWPのX方向に整列する複数のウェルWLの数は、各第2のウェルプレートwpのX方向に整列する複数のウェルwlの数の3倍であり、第1のウェルプレートWPのX方向に整列する複数のウェルWLのピッチは、各第2のウェルプレートwpのX方向に整列する複数のウェルwlのピッチの2倍である。この場合、分注ヘッド10の1回の分注動作により、第1のウェルプレートWPのX方向に整列する複数のウェルWLから吸引された液体は、第2のウェルプレートwpのX方向に整列する一部のウェルwlのみに吐出される。それにより、1回の分注動作による分注対象のウェルWL,wlが少なくなるので、多数回の分注動作を行うことが必要となる。その結果、分注装置100のスループットが低下する。
【0050】
n番目の第1のウェルプレートWPおよび複数の第2のウェルプレートwpについて複数回の分注動作を行う場合、各回の分注動作でn番目の第1のウェルプレートWPの分注対象のウェルWL内での第2溶出液の滞在時間に差が生じる。例えば、最初の分注動作における分注対象のウェルWL内での第2溶出液の滞在時間は最も短く、最後の分注動作における分注対象のウェルWL内での第2溶出液の滞在時間は最も長い。そのため、最初の分注動作における分注対象のウェルWL内の第2溶出液の揮発量は少なく、最後の分注動作における分注対象のウェルWL内の第2溶出液の揮発量は多い。その結果、第2のウェルプレートwpの各ウェルwl内の物質の組成等に差異が生じる。後述する動作例では、n番目の第1のウェルプレートWPの複数のウェルWL内に液体が滞在する時間の差が小さく抑制される。
【0051】
(2)制御部40の制御の一例
図5図11は、制御部40の制御による第1および第2のウェルプレートWP,wp上の状態を示す模式的平面図である。図5図11には、(n-1)番目の第1の支持部21(n-1)上の第1のウェルプレートWP、n番目の第1の支持部21(n)上の第1のウェルプレートWPおよび第2の支持部22上の4個の第2のウェルプレートwpが示されている。また、ウェルWL,wl内に液体が存在する場合、各ウェルWL,wlには、ハッチングが付される。図1の制御部40は、以下の動作が行われるように、分注ヘッド10、駆動機構10aおよび回転駆動部30を制御する。
【0052】
本実施の形態では、図5に示すように、各第2のウェルプレートwpの長手方向(ウェルwlの数が多い方向)がX方向に実質的に一致するように、回転駆動部30(図1参照)が図4の標準状態から第2の支持部22を90度回転させる。この場合、分注ヘッド10は、1回の分注動作で、より多くのウェルWL,wl間で分注を行うことが可能になる。
【0053】
第1のウェルプレートWPの各列は、H個(Hは2以上の整数)のウェルWLを含む。本実施の形態では、第1のウェルプレートWPの各列は、2H個のウェルWLを含む。本例では、Hは6である。第2のウェルプレートwpは、M個(Mは2以上の整数)のウェルwlを含む。本例では、Mは(12×4)個である。
【0054】
本例では、n番目の第1のウェルプレートWPの各ウェルWLにおいて第2溶出工程が行われる。第2溶出工程により得られた第2溶出液は揮発性を有する。第1のウェルプレートWPの各ウェルWL内での第2溶出液の揮発は、後段の分析に対して影響を及ぼす。後述するように、n番目の第1のウェルプレートWPの各ウェルWL内の第2溶出液は、第2のウェルプレートwpの4個のウェルwlに分割して分注される。これらの点を考慮して、分注動作が以下のように効率的に行われる。
【0055】
n番目の第1のウェルプレートWPの複数のウェルWLは8個の領域A1~A8に区分される。各領域A1~A8は、H個(Hは2以上の整数)のウェルWLを含む。本例では、Hは12(6×2)である。本実施の形態では、各領域A1~A8が第1の分注単位に相当する。
【0056】
(n-1)番目の第1のウェルプレートWPのウェルWLの配列は、n番目の第1のウェルプレートWPのウェルWLの配列と同じである。(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの複数のウェルWLは、n番目のウェルプレートWPと同様に、8個の領域B1~B8に区分される。本実施の形態では、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの複数の各領域B1~B8が第3の分注単位に相当する。
【0057】
各第2のウェルプレートwpは、M個(Mは2以上の整数)のウェルwlを含む。本例では、Mは(12×4)である。MはHのm倍(mは2以上の整数)である。本例では、mは4である。第2のウェルプレートwpのM個のウェルwlはm組に分類されている。各組は、H個のウェルwlを含む。本実施の形態では、各第2のウェルプレートwpが第2の分注単位に相当する。
【0058】
図5の例では、各第2のウェルプレートwpにおいて、第1組は、第1列の1つおきの6個のウェルwlおよび第3列の1つおきの6個のウェルwlにより構成され、第2組は、第1列の残りの1つおきの6個のウェルwlおよび第3列の残りの1つおきの6個のウェルwlにより構成される。第3組は、第2列の1つおきの6個のウェルwlおよび第4列の1つおきの6個のウェルwlにより構成され、第4組は、第2列の残りの1つおきの6個のウェルwlおよび第4列の残りの1つおきの6個のウェルwlにより構成される。
【0059】
分注ヘッド10の複数のチップ取付部12には、各領域A1~A8内のウェルWLの配列(6×2)に対応するように12個の分注チップ13が取り付けられる。図5図11では、分注ヘッド10において分注チップ13が取り付けられた12個のチップ取付部12の配列が模式的に示されている。
【0060】
この状態で、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの領域B1内の12個のウェルWLから第2洗浄工程の終了後の液体が分注ヘッド10の12個の分注チップ13内に吸引される。続いて、12個の分注チップ13内に吸引された液体が、図6に示すように、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1内の12個のウェルWLに吐出される。ここで、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1内の12個のウェルWLにおいての第2溶出工程が行われる。
【0061】
第2溶出工程の終了後、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1内の12個のウェルWLから第2溶出液の一部が分注ヘッド10の12個の分注チップ13内に吸引される。次に、図7に示すように、分注ヘッド10の12個の分注チップ13が1番目の第2のウェルプレートwpの上方に移動する。12個の分注チップ13内にそれぞれ吸引された第2溶出液は、第2のウェルプレートwpの第1組の12個のウェルwlに吐出される。
【0062】
次に、分注ヘッド10の12個の分注チップ13がn番目の第1のウェルプレートWPの上方に移動し、領域A1内の12個のウェルWLから第2溶出液の残りの一部が分注ヘッド10の12個の分注チップ13内に吸引される。続いて、分注ヘッド10の12個の分注チップ13が1番目の第2のウェルプレートwpの上方に移動し、12個の分注チップ13内にそれぞれ吸引された第2溶出液が第2のウェルプレートwpの第2組の12個のウェルwlに吐出される。
【0063】
同様にして、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1のウェルWLからの第2溶出液の吸引および1番目の第2のウェルプレートwpの第3組の12個のウェルwlへの第2溶出液の吐出が行われ、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1のウェルWLからの第2溶出液の吸引および1番目の第2のウェルプレートwpの第4組の12個のウェルwlへの第2溶出液の吐出が行われる。
【0064】
このように、4回の分注動作により、図8に示すように、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1の12個のウェルWLから吸引された第2溶出液が1番目の第2のウェルプレートwpの48個のウェルwlに収容される。
【0065】
続いて、図9に示すように、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの領域B2、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A2および2番目の第2のウェルプレートwpについての一連の分注動作が行われる。それにより、図10に示すように、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A1の12個のウェルWLから吸引された第2溶出液が2番目の第2のウェルプレートwpの48個のウェルwlに収容される。
【0066】
さらに、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの領域B3、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A3および3番目の第2のウェルプレートwpについての一連の分注動作が行われる。最後に、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの領域B4、n番目の第1のウェルプレートWPの領域A4および4番目の第2のウェルプレートwpについての一連の分注動作が行われる。その結果、図11に示すように、1番目~4番目の第2のウェルプレートwpのウェルwlに第2溶出液が収容される。上記の分注動作においては、n番目の第1のウェルプレートWPの複数の領域A1~A4における第2溶出液の滞在時間の差が小さく抑制される。
【0067】
なお、(n-1)番目の第1のウェルプレートWPの領域B5~B8およびn番目の第1のウェルプレートWPの領域A5~A8については、第2の支持部22に支持された複数の第2のウェルプレートwpが新たな複数の第2のウェルプレートwpに交換された後に、上記の動作が行われる。新たな第2のウェルプレートwpの交換については、作業者により手動で交換されてもよく、第2のウェルプレートwpが固定されているアダプタADを搬送可能な搬送ロボットを用いて交換されてもよい。
【0068】
(3)実施の形態の効果
上記実施の形態の分注装置100においては、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の整列方向と第2の支持部22により支持された各第2のウェルプレートwpの複数のウェルwlの整列方向とが異なる場合でも、回転駆動部30により第2の支持部22が分注ヘッド10に対して相対的に回転される。それにより、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の整列方向と第2の支持部22により支持される各第2のウェルプレートwpの複数のウェルwlの整列方向とを一致させることができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ複数のウェルwlの整列方向が異なる種々のウェルプレートに対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能となる。
【0069】
また、第2の支持部22が90度回転するので、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の長手方向、第1の支持部21に支持された第1のウェルプレートWPのウェルWLの長手方向および第2の支持部22に支持された第2のウェルプレートwpのウェルwlの長手方向を一致させることができる。したがって、第1のウェルプレートWPの複数のウェルWLの長手方向と第2のウェルプレートwpの複数のウェルwlの長手方向とが直交する場合でも、第1のウェルプレートWPの各ウェルWLから第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに容易に分注することが可能になる。
【0070】
さらに、(n-1)番目の第1の支持部21の第1のウェルプレートWPの領域B1~B8の各ウェルWLから、n番目の第1の支持部21の第1のウェルプレートWPの領域A1~A8の各ウェルWLを経由して、第2のウェルプレートwpの第1組から第4組のウェルwlへの液体の移動が連続的に行われる。この場合、領域A1~A8のうち一の領域の各ウェルWLに吐出された液体が吸引され、一の第2のウェルプレートwpの各ウェルwlに吐出された後に、領域A1~A8のうち他の領域の各ウェルWLに液体が吐出される。そのため、領域A1~A8のうち一の領域の各ウェルWLに液体が収容されている時間と領域A1~A8のうち他の領域の各ウェルWLに液体が収容されている時間とが等しくなる。それにより、n番目のウェルプレートWPの複数のウェルwlに収容される液体が揮発性を有する液体のように時間とともに変化する場合でも、第1のウェルプレートWPに収容される液体の処理結果に生じる差が抑制される。
【0071】
(4)変形例
上記の実施形態においては、外枠部22b内に収容可能なアダプタAD上に4枚の第2のウェルプレートwpが固定されている例が示されている。搬送ロボットを用いて第2のウェルプレートwpが固定されたアダプタADを交換する場合、搬送ロボットの精度によっては外枠部22bをアダプタADの大きさより余裕を持たせた大きさに変更する必要がある。一方、外枠部22bの大きさがアダプタADより大きい場合、回転駆動部30により、第2の支持部22が回転すると、外枠部22b内でアダプタADが遊動する。そのため、アダプタAD上の第2のウェルプレートwpのウェルwlの位置が分注ヘッド10により分注可能な正規の位置からずれる可能性がある。この場合、図5図11に示した分注動作を正確に行うことが困難になる。このように、搬送ロボットを用いて第2のウェルプレートwpが固定されたアダプタADの交換を実現することと、分注動作を正確に行うこととの要求は、相反する。外枠部22bの大きさを大きくしつつアダプタADを固定するための新たな駆動源を用いることでこれらの課題を実現することが可能である。しかしながら、部品点数の増加によるコストの増大および制御の煩雑さ等を考慮すると、現実的でない。以下に示す変形例の姿勢変換装置では、コストを抑えつつ、搬送ロボットを用いて第2のウェルプレートwpが固定されたアダプタADの交換を実現することと、分注動作を正確に行うことを実現することとが可能である。
【0072】
図12図17は、変形例に用いられる姿勢変換装置の構成を説明するための図である。図12には姿勢変換装置500の斜視図が示される。変形例では、上記実施の形態の分注装置100の回転駆動部30、接続部材31および第2の支持部22に変えて、姿勢変換装置500が用いられる。姿勢変換装置500は、回転駆動部510、接続部材520、固定板530、支持部540を備える。
【0073】
回転駆動部510は、例えばパルスモータである。回転駆動部510には、接続部材520が接続される。接続部材520は、第1の回転軸521、回転板522および複数の接続部材523を含む。固定板530は、上面530aおよび下面を有する板状の部材である。固定板530には、当該上面530aおよび下面を貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0074】
接続部材520の第1の回転軸521は、Z方向に延びる第1軸AX(後述する図13参照)を軸心として、Z方向に延びる棒状部材である。第1の回転軸521の一端は、回転駆動部510に接続される。回転板522は、上面522aおよび下面522bを有する板状の部材である。第1の回転軸521の他端は、固定板530の図示しない貫通孔を通して回転板522の下面522bに固定される。第1の回転軸521の他端と回転板522の下面522bとは、例えば溶接により固定されてもよく、ボルト等により固定されてもよい。回転板522の下面522bは、固定板530の上面530aの上方に位置する。回転板522の下面522bと固定板530の上面530aとが離間する高さはh1である。固定板530の上面530aには、第1の固定部531(後述する図13参照)および第2の固定部532が設けられる。第1の固定部531および第2の固定部532は、固定板530の上面530aから上方向(Z方向)に突出する突起である。第1の固定部531および第2の固定部532は、固定板530と同一材質により一体的に形成されている。第1の固定部531および第2の固定部532は、上面530aに固定可能なボルト等の固定部材により構成されてもよい。第1の固定部531および第2の固定部532が上面530aから突出する高さh2は、高さh1よりも小さく、後述するアーム560と干渉する高さに設定される。これにより、第1の固定部531および第2の固定部532の上方で回転板522が回転可能である。なお、図12の例では、第1の固定部531は回転板522の下方に位置するので、図示されていない。第1の固定部531および第2の固定部532の詳細については後述する。
【0075】
回転板522の上面522aの所定の位置には、複数の接続部材523a~523dの一端が固定される。接続部材523a~523dの一端と回転板522とは、例えば溶接により固定されてもよく、ボルト等により固定されてもよい。複数の接続部材523a~523dは、回転板522の上面522aから上方向(Z方向)に延びる。複数の接続部材523a~523dの長さは互いに等しい。
【0076】
支持部540は、一対の支持板541,542を含む。支持板541は上面541aおよび下面541bを有しX方向に延びる板状の部材である。支持板541の下面541bには、接続部材523a,523bの他端(上端)が固定される。支持板541の下面541bと接続部材523a,523bの他端とは、例えば溶接により固定されてもよく、ボルト等により固定されてもよい。支持板542は上面542aおよび下面542bを有しX方向に延びる板状の部材である。支持板542の下面542bには、接続部材523c,523dの他端(上端)が固定される。支持板542の下面542bと接続部材523c,523dの他端とは、例えば溶接により固定されてもよく、ボルト等により固定されてもよい。これにより、回転駆動部510の駆動により、接続部材520を構成する第1の回転軸521、回転板522および支持板541,542が一体的に回転する。
【0077】
支持板541の上面541aと支持板542の上面542aとは、X-Y平面において平行であり、Z方向に関して同じ高さに配置される。4枚の第2のウェルプレートwp(図1等参照)が固定されたアダプタADは、側面S1~S4を有する直方体形状である。支持板541と支持板542とのX方向の長さは、平面視におけるアダプタADの長手方向の長さ(側面S3,S4の長さ)よりも大きく設定される。支持板541と支持板542とは、Y方向において離間する。支持板541と支持板542とがY方向に離間する距離D1は、平面視におけるアダプタADの短手方向の長さ(側面S1,S2の長さ)よりも小さく設定される。これにより、アダプタADは、支持板541の上面541aと支持板542の上面542aとを跨いで、支持板541および支持板542上に水平姿勢で載置される。
【0078】
図13には姿勢変換装置500の平面図が示される。図13では、支持板541,542とアダプタADとの関係を説明するために、固定板530および支持板541,542が実線で示され、アダプタADが一点鎖線で示され、他の構成の図示が省略されている。支持板541の上面541aおよび支持板542の上面542aそれぞれには、Z方向に突出する複数の突起部543a~543gが設けられる。具体的には、突起部543a,543f,543gが支持板542の上面542aに設けられ、突起部543b~543eが支持板541の上面541aに設けられる。太い一点鎖線で示される領域R1は、複数の突起部543a~543gそれぞれに接する仮想の領域であり、搬送ロボットにより搬送されたアダプタADを載置可能な領域である。領域R1は平面視で矩形状であり、アダプタADの外周のよりも大きく設定される。換言すると、複数の突起部543a~543gが設けられる位置は、領域R1がアダプタADの外周より大きくなるように予め設定されている。
【0079】
複数の突起部543a~543gのうち突起部543a,543bがアダプタADの側面S1に対向する位置に設けられる。突起部543a,543bが設けられる位置は、支持板541,542上に載置されるアダプタADを所望の位置に保持するために予め決定されている。複数の突起部543a~543gのうち突起部543c,543dがアダプタADの側面S3に対向する位置に設けられる。突起部543c,543dが設けられる位置は、支持板541,542上に載置されるアダプタADを所望の位置に保持するために予め決定されている。複数の突起部543a~543gのうち突起部543e,543fがアダプタADの側面S2に対向する位置に設けられる。また、複数の突起部543a~543gのうち突起部543gがアダプタADの側面S4に対向する位置に設けられる。
【0080】
図12に戻って、姿勢変換装置500は、第2の回転軸550、アーム560、第1の押圧部570および第2の押圧部580をさらに備える。図14には姿勢変換装置500の平面図が示される。図14では、固定板530、第2の回転軸550、アーム560、第1の押圧部570および第2の押圧部580が実線で示され、アダプタADが一点鎖線で示され、支持板541,542および回転板522が点線で示され、他の構成の図示が省略されている。図15には、姿勢変換装置500の第2の回転軸550、アーム560、第1の押圧部570および第2の押圧部580を拡大した斜視図が示される。図15では、固定板530、第2の回転軸550、アーム560、第1の押圧部570および第2の押圧部580以外の構成の図示が省略されている。
【0081】
図14および図15に示すように、第2の回転軸550は、第1軸AX(回転駆動部510の回転軸)と平行な第2軸axを軸心とし、Z方向に延びる棒状部材である。第2の回転軸550の一端(下端)は回転板522に固定され、第2の回転軸550の他端(上端)はアーム560に接続される。アーム560は、板状の部材である。アーム560は、回転板522の下面522bと固定板530の上面530aとの間に位置し、回転板522に対して第2軸axの周りに回転可能に第2の回転軸550に接続されている。これにより、アーム560は回転駆動部510の駆動により第1軸AXの周りに支持板541,542と一体的に回転可能である。また、アーム560は、回転板522に対して第2軸axの周りに回転可能であるので、アーム560と、支持板541,542とは第2軸axの周りで相対的に回転可能である。
【0082】
アーム560は、本体部560A、第1の当接部561、第2の当接部562、連結突起部563、第1の接続部564および第2の接続部565を含む。第1の当接部561は、回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXの周りに右回りRS(時計回り)に回転した際、固定板530の上面530aから突出する第1の固定部531と当接する部分である。第2の当接部562は、回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXの周りに左回りLS(反時計回り)に回転した際、固定板530の上面530aから突出する第2の固定部532と当接する部分である。
【0083】
第1の接続部564は、支持板541,542上に載置されたアダプタADの側面S2側に位置し、本体部560AからZ方向に湾曲した部分である。第1の接続部564には、第1の押圧部570が固定される。具体的には、図15に示すように、第1の押圧部570は、板ばね571およびベアリング572を含む。板ばね571は、金属により形成され水平方向に延びる平板形状を有する。図15の例では、板ばね571の一端が第1の接続部564に2つのボルトにより固定される例が記載される。板ばね571は、例えばばねの特性を有する板ばねであり、板ばね571の他端を一端から反らす方向に湾曲させると、板ばね571の他端には平板形状に戻ろうとする力が働く。板ばね571の他端には、Z方向に延びる軸の周りに回転可能なベアリング572が設けられる。ベアリング572は、支持板541,542上に載置されたアダプタADの側面S2と接触可能な高さに保持される。第1の接続部564の上方には、上カバー564Aが接続される。上カバー564Aは、平面視で板ばね571に重なり、板ばね571の側面(上方に向く側面)を覆う。一般的に、板ばねは金属であり、塑性変形可能な厚みで形成されるため、板ばねの厚さは薄い。このため、板ばねの側面は鋭利である。分注装置100の作業をする者が姿勢変換装置500を取り扱う際、上カバー564Aが設けられていれば、板ばね571との意図しない接触を抑制することが可能である。
【0084】
第2の接続部565は、支持板541,542上に載置されたアダプタADの側面S4側に位置し、本体部560AからZ方向に湾曲した部分である。第2の接続部565には、第2の押圧部580が固定される。具体的には、第2の押圧部580は、板ばね581およびベアリング582を含む。板ばね581は、水平方向に延びる平板形状を有し、図15の例では、板ばね581の一端が第2の接続部565に2つのボルトにより固定される例が記載される。板ばね581は、例えばばねの特性を有する板ばねであり、板ばね581の他端を一端から反らす方向に湾曲させると、板ばね581の他端には平板形状に戻ろうとする力が働く。板ばね581の他端には、Z方向に延びる軸の周りに回転可能なベアリング582が設けられる。ベアリング582は、支持板541,542上に載置されたアダプタADの側面S4と接触可能な高さに保持される。第2の接続部565の上方には、平面視で板ばね581と重なる位置に上カバー565Aが接続される。上カバー565Aが設けられることによる効果は上カバー564Aと同様である。
【0085】
図16および図17には姿勢変換装置500の平面図が示され、回転板522とアーム560との接続関係を説明するために、他の構成の図示が省略される。上述したように回転板522とアーム560とは、平面視において重なる。図16および図17では、平面視においてアーム560の回転板522と重なる部分が点線で示される。回転板522は、連結突起部522Aを含む。回転板522の連結突起部522Aと回転板522の下方に位置するアーム560の連結突起部563とは、Z方向における回転板522とアーム560との間に位置するばねPSにより接続される。ばねPSとしては、一般的な引張コイルばねであり、引張荷重を受けて働くばねである。ばねPSはその両端から引張荷重を受けると、収縮するように働く。
【0086】
例えば、アーム560に対して、第2軸axを中心に右回りRS(時計回り)に回転する力が与えられるとする。この場合、図17に示されるように、アーム560全体は、回転板522に対して第2軸axを中心に右回りRSに回転する。換言すれば、アーム560と回転板522とが相対的に回転する。第2の回転軸550の第2軸axを中心に右回りRS(時計回り)に回転する力が与えられ続けると、矢印a1に示すように第1の押圧部570が第2軸axを中心に回転し、矢印a2に示すように第2の押圧部580が第2軸axを中心に回転する。一方、アーム560の連結突起部563とは、回転板522とアーム560との間に位置するばねPSにより接続されているので、右回りRSに回転する力の付与を解除すると、ばねPSの収縮によりアーム560は左回り(反時計回り)に回転し、図16の状態に戻る。これにより、図14に示すように、アーム560に力が付与されない限り、図16の状態となる。換言すれば、第1の押圧部570のベアリング572と第2の押圧部580のベアリング582とは、領域R1内に侵入することがなく、アダプタADと接触することがない(図12参照)。以下、この状態を解除状態と呼ぶ。
【0087】
図18図23は、姿勢変換装置500の動作を説明するための図である。図18図23では、姿勢変換装置500の動作時の支持板541,542上のアダプタADとアーム560および支持板541,542との位置関係を説明するためにその他の構成の図示が省略されている。姿勢変換装置500の動作は、上記実施の形態の分注装置100の制御部40の制御により実現されてもよく、分注装置100の制御部40とは別の他の制御部の制御により実現されてもよい。本例においては、姿勢変換装置500の動作は、制御部40の制御により実現される。
【0088】
まず、図18に示すように、姿勢変換装置500は、解除状態である。この状態で、図示しない搬送ロボットにより第2のウェルプレートwpが固定されたアダプタADが支持板541,542に搬送される。搬送ロボットは、支持板541,542上のアダプタADの大きさよりも大きい領域R1内にアダプタADを搬送する。これにより、支持板541,542上にアダプタADが載置される。支持板541,542が延びる方向(支持板541,542に載置されたアダプタADの長手方向(側面S3,S4が延びる方向))とX方向とは一致している。以下、図18に示す支持板541,542に載置されたアダプタADの姿勢を基準姿勢と呼ぶ。
【0089】
ここで、回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回り(時計回り)する例について説明する。図18の状態から回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回りRSに回転すると、前述した回転板522および接続部材523(ともに図示せず)を介してアーム560および支持板541,542が第1の回転軸521と一体的に回転する。図19に示すように、第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回りRSにさらに回転すると、アーム560の第1の当接部561と固定板530の第1の固定部531とが当接する。第1の当接部561と第1の固定部531とが当接すると、第1の回転軸521のさらなる右回りRSへの回転により、アーム560に対して右回りRSに回転する力が与えられる。この場合、アーム560は第2の回転軸550の第2軸axを中心に支持板541,542に対して相対的に回転する。本例では、第1軸AXを中心に右回りRSに回転する支持板541,542に対してアーム560が第2軸axを中心に右回りRSに回転する。
【0090】
第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回りRSにさらに回転すると、アーム560は第2の回転軸550の第2軸axを中心に右回りRSにさらに回転する。これにより、第1の押圧部570のベアリング572がアダプタADを挟んで対向する突起部543a,543bに向かって(Y方向に向かって)回転し、ベアリング572とアダプタADの側面S2とが当接する。同時に、第2の押圧部580のベアリング582がアダプタADを挟んで対向する突起部543c,543dに向かって(X方向に向かって)回転し、ベアリング582とアダプタADの側面S4とが当接する。
【0091】
第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回りRSにさらに回転すると、図20に示すように、支持板541,542上のアダプタADが基準姿勢から右回りに90度回転した姿勢になる。なお、アダプタADが基準姿勢から右回りに90度回転した姿勢では、支持板541,542が延びる方向(支持板541,542に載置されたアダプタADの長手方向(側面S3,S4が延びる方向))とY方向とは一致している。この場合、アダプタADの側面S2がベアリング572により押圧され、アダプタADの側面S4がベアリング582により押圧される。これにより、アダプタADが突起部543a,543bに向かう方向(Y方向)と、突起部543c,543dに向かう方向(X方向)とに移動し、アダプタADの側面S1が突起部543a,543bに当接し、側面S3が543c,543dに当接する。
【0092】
支持板541,542上に載置されたアダプタADがベアリング572と突起部543a,543bとに挟持されるとともに、ベアリング582と突起部543c,543dとに挟持される。その結果、アダプタADの側面S1が突起部543a,543bに当接され、アダプタADの側面S3が突起部543c,543dに当接された状態で支持板541,542上にアダプタADを保持することができる。以下、支持板541,542上にアダプタADが保持される状態を固定状態と呼ぶ。
【0093】
また、ベアリング572とベアリング582とは、板ばね571,581を介してアーム560に接続されている。そのため、押圧する力に反発する力を側面S2,S4から受けてベアリング572,582が外方に向かう方向に板ばね571,581が変形する。この場合、板ばね571,581の平板形状に戻ろうとする力によりベアリング572をアダプタADの側面S2にさらに押し付け、ベアリング582をアダプタADの側面S4にさらに押し付けることができる。その結果、アダプタADに対するベアリング572,582の押圧力をより大きくすることができる。したがって、アダプタADをより安定して保持することが可能である。
【0094】
次に、図18に示すアダプタADが基準姿勢である状態から回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXを中心に左回り(反時計回り)する例について説明する。図18の状態から回転駆動部510により第1の回転軸521が第1軸AXを中心に左回りLSに回転すると、接続部材520を介してアーム560および支持板541,542が第1の回転軸521と一体的に左回りLSに回転する。第1の回転軸521が第1軸AXを中心に左回りLSにさらに回転すると、図21に示すように、支持板541,542上のアダプタADが基準姿勢から左回りに90度回転した姿勢になる。なお、アダプタADが基準姿勢から左回りに90度回転した姿勢では、支持板541,542が延びる方向(支持板541,542に載置されたアダプタADの長手方向(側面S3,S4が延びる方向))とY方向とは一致している。支持板541,542上のアダプタADが基準姿勢から左回りに90度回転した姿勢では、姿勢変換装置500は解除状態である。
【0095】
第1の回転軸521が第1軸AXを中心に左回りLSにさらに回転すると、図22に示すようにアーム560の第2の当接部562と固定板530の第2の固定部532とが当接する。第2の当接部562と第2の固定部532とが当接すると、第1の回転軸521のさらなる左回りLSへの回転により、アーム560に対して左回りLSに回転する力が与えられる。それにより、アーム560と支持板541,542とは、相対的に回転する。
【0096】
具体的には、第1の回転軸521が第1軸AXを中心に左回りLSにさらに回転すると、第2の当接部562の第2の固定部532とが当接した状態で第2の固定部532に対して第2の当接部562がスライドする。これにより、アダプタADの側面S2が第1の押圧部570のベアリング572に向かって回転し、第1の押圧部570のベアリング572がアダプタADの側面S2に向かって回転する。その結果、ベアリング572とアダプタADの側面S2とが当接する。これと同時に、アダプタADの側面S4が第2の押圧部580のベアリング582に向かって回転し、第2の押圧部580のベアリング582がアダプタADの側面S4に向かって回転する。その結果、ベアリング572とアダプタADの側面S4とが当接する。
【0097】
第1の回転軸521が第1軸AXを中心に右回りRSにさらに回転すると、図23に示すように、支持板541,542上のアダプタADが基準姿勢から左回りに180度回転した姿勢になる。なお、アダプタADが基準姿勢から左周りに180度回転した姿勢では、支持板541,542が延びる方向(支持板541,542に載置されたアダプタADの長手方向(側面S3,S4が延びる方向))とX方向とは一致している。この場合、アダプタADの側面S2がベアリング572により押圧され、アダプタADの側面S4がベアリング582により押圧される。アダプタADが突起部543a,543bに向かう方向(X方向)と、突起部543c,543dに向かう方向(Y方向とは逆の方向)とに移動する。これにより、アダプタADの側面S1が突起部543a,543bに当接し、側面S3が543c,543dに当接する。
【0098】
その結果、支持板541,542上に載置されたアダプタADがベアリング572と突起部543a,543bとに挟持されるとともに、ベアリング582と突起部543c,543dとに挟持される。アダプタADの側面S1が突起部543a,543bに当接され、アダプタADの側面S3が突起部543c,543dに当接された状態で支持板541,542上にアダプタADを保持することができる。この時の板ばね571,581により奏される作用および効果については前述した作用および効果と同様である。
【0099】
本例の姿勢変換装置500では、回転駆動部510の駆動のみで支持板541,542上に載置されたアダプタADを保持することができる。また、本例の姿勢変換装置500では、突起部543a,543bがアダプタADの側面S1に当接する位置に設けられ、突起部543c,543dがアダプタADの側面S3に当接する位置に設けられる。それにより、支持板541,542上のアダプタADを所望の位置に保持することが可能になる。これらの結果、新たな駆動源を用いずに、回転駆動部510の駆動のみで支持部内の所望の位置に容器を保持することができる。
【0100】
また、本例の姿勢変換装置500では、アダプタADが基準姿勢で解除状態であり、アダプタADが基準姿勢から右回りに90度回転した姿勢で固定状態となり、アダプタADが基準姿勢から左回りに90度回転した姿勢で解除状態が維持され、アダプタADが基準姿勢から左回りに180度回転した姿勢で固定状態となる。換言すれば、アダプタADの長手方向とX方向とが一致するときに解除状態と固定状態とに切り替えることができる。また、アダプタADの長手方向とY方向とが一致するときに解除状態と固定状態とに切り替えることができる。そのため、搬送ロボットにより搬送されるアダプタADの姿勢を2つから選択することができる。また、互いに直交する2つの姿勢で容器を固定することが可能であるため、姿勢変換装置500に載置される容器がアダプタADであっても第1のウェルプレートWPであっても分注装置100による分注が可能になる。
【0101】
上記例では、アーム560に第1の押圧部570と第2の押圧部580とが設けられる例が示されるが、アーム560には、第1の押圧部570と第2の押圧部580とのいずれか一方が設けられていればよい。アーム560に第2の押圧部580が設けられず第1の押圧部570が設けられる場合、支持板541には、突起部543c,543dが設けられなくてもよい。アーム560に第1の押圧部570が設けられず第2の押圧部580が設けられる場合、支持板541には突起部543bが設けられなくてもよく支持板542には突起部543aが設けられなくてもよい。
【0102】
上記の例では、分注装置100の回転駆動部30、接続部材31および第2の支持部22に変えて、姿勢変換装置500が用いられているが、分注装置100の複数の第1の支持部21のいずれかまたはすべての代わりに姿勢変換装置500が用いられてもよい。
【0103】
(5)その他の実施の形態
(5-1)上記実施の形態においては、第2の支持部22を回転させるための回転駆動部30が設けられるが、本発明はこれに限定されない。回転駆動部30は、分注ヘッド10に設けられてもよい。それにより、分注ヘッド10を第2の支持部22の第2のウェルプレートwpに対して相対的に回転させることが可能になる。また、第2の支持部22および分注ヘッド10の両方に回転駆動部30がそれぞれ設けられてもよい。その場合、第2の支持部22および分注ヘッド10の両方を回転させることができる。
【0104】
(5-2)上記実施の形態においては、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の整列方向が第1の支持部21により支持された第1のウェルプレートWPの複数のチップ取付部12の整列方向と等しいが、分注ヘッド10および第1の支持部21のうち少なくとも一方に回転駆動部が設けられる場合には、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の整列方向が第1の支持部21により支持された第1のウェルプレートWPの複数のチップ取付部12の整列方向と異なっていてもよい。この場合、回転駆動部により分注ヘッド10および第1の支持部21を回転させることにより、分注ヘッド10の複数のチップ取付部12の整列方向を第1の支持部21により支持された第1のウェルプレートWPの複数のチップ取付部12の整列方向と一致させることができる。
【0105】
(5-3)上記実施の形態において、第1のウェルプレートWPの複数のウェルWLの第1のピッチΔI1は、第2のウェルプレートwpの複数のウェルwlの第2のピッチΔ
I2の2倍に設定されるが、第1のピッチΔI1は、第2のピッチΔI2の2倍以外の整数倍に設定されてもよい。さらに、第1のウェルプレートWPとして、上記実施の形態とはウェルWLの数および配列が異なる他のウェルプレートが用いられてもよく、第2のウェルプレートwpとして、上記実施の形態とはウェルの数および配列が異なる他のウェルプレートが用いられてもよい。
【0106】
(5-4)上記実施の形態においては、1番目~n番目の第1の支持部21がステージSt上に固定され、分注ヘッド10がX方向およびY方向に移動する例が示されるが、1番目~n番目の第1の支持部21の各々をX方向およびY方向に移動させる駆動機構が設けられてもよい。この場合、分注ヘッド10の駆動機構10aが分注ヘッド10をX方向およびY方向に移動させなくてもよい。あるいは、駆動機構10aが設けられなくてもよい。
【0107】
(5-5)上記実施の形態において、分注装置100は、生体試料中の標的ポリペプチドをMALDI-MSで分析および測定するための前処理としての免疫沈降処理に用いられる例が記載されているが、本発明はこれに限定されない。分注装置100は、例えば、培養した微生物由来の試料をMALDI-MSで分析および測定するための前処理等の他の処理に用いられてもよい。この場合、分注装置100は、上記実施の形態において記載した構成以外に、遠心分離ユニットを備えてもよい。分注装置100が培養した微生物由来の試料を分析および測定するための前処理に用いられる場合の流れの一例は、以下である。まず、菌体の洗浄、菌体の成分の抽出、菌体の遠心分離等の工程が第1のウェルプレートWPで行われた後に、菌体成分を含むペレットが抽出される。その後、抽出された菌体成分を含むペレットが第2のウェルプレートwpに分注される。その後の動作は、上記実施の形態と同様である。
【0108】
(5-6)上記実施の形態において、分析装置がMALDI-MSである例が記載されるが、他の分析装置が用いられてもよい。
【0109】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、第1および第2のウェルプレートWP,wpおよびアダプタADが容器の例であり、ウェルWL,wlが収容部の例であり、第1および第2の支持部21,22が支持部の例であり、回転駆動部30,510が第1の駆動部の例であり、駆動機構10aが第2の駆動部の例であり、ウェルWLが第1の収容部の例である。また、第1のウェルプレートWPが第1の容器および第3の容器の例であり、ウェルwlが第2の収容部の例であり、第2のウェルプレートwpが第2の容器の例であり、n-1番目の第1の支持部21が第3の支持部の例である。また、突起部543a,543bが第1の当接部の例であり、突起部543c,543dが第2の当接部の例であり、板ばね571が第1の板ばねの例であり、板ばね581が第2の板ばねの例であり、ベアリング572が第1のベアリングの例であり、ベアリング582が第2のベアリングの例である。
【0110】
(7)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0111】
(第1項)一態様に係る分注装置は、直線状に整列された複数の収容部を含む容器の各収容部から液体を吸引可能または各収容部に液体を吐出可能であって、
前記容器を支持する支持部と、
直線状に整列された複数のチップ取付部を有し、前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに液体を吸引可能および前記分注チップから液体を吐出可能に構成された分注ヘッドと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致するように、前記分注ヘッドおよび前記支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転可能に構成された第1の駆動部とを備える。
【0112】
第1項に記載の分注装置においては、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持された容器の複数の収容部の整列方向とが異なる場合でも、第1の駆動部により分注ヘッドおよび支持部のうち少なくとも一方が他方に対して相対的に回転される。それにより、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持される容器の複数の収容部の整列方向とを一致させることができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ複数の収容部の整列方向が異なる種々の容器に対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能となる。
【0113】
(第2項)第1項に記載の分注装置において、前記容器は、複数の第1の収容部を含む第1の容器と、複数の第2の収容部を含む第2の容器とを含み、
前記支持部は、前記複数の第1の収容部が第1の方向に整列されるように前記第1の容器を支持する第1の支持部と、前記複数の第2の収容部が前記第1の方向に交差する第2の方向に整列されるように前記第2の容器を支持する第2の支持部とを含み、
前記第1の駆動部は、前記分注ヘッドを前記第1または第2の支持部に対して相対的に回転させるように構成され、または前記第1または第2の支持部を前記分注ヘッドに対して相対的に回転させるように構成され、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の第1の収容部の整列方向に一致した状態で前記分注ヘッドの二つ以上の分注チップに前記第1の容器の二つ以上の第1の収容部から液体が吸引された後、前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の第2の収容部の整列方向に一致した状態で、吸引された液体が前記分注ヘッドの前記二つ以上の分注チップから前記第2の容器の二つ以上の第2の収容部に吐出されるように、前記分注ヘッドおよび前記第1の駆動部を制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0114】
第2項に記載の分注装置によれば、第1の支持部、第2の支持部または分注ヘッドを回転させることができる。それにより、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向を第1の支持部により支持された第1の容器の複数の第1の収容部の整列方向と一致させ、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向を第2の支持部により支持された第2の容器の複数の第2の収容部の整列方向と一致させことができる。したがって、第1の容器の複数の第1の収容部の整列方向と第2の容器の複数の第2の収容部の整列方向とが異なる場合でも、第1の容器の各第1の収容部から分注ヘッドにより液体を吸引し、吸引した液体を分注ヘッドにより第2の容器の各第2の収容部に容易に吐出することができる。
【0115】
(第3項)第2項に記載の分注装置は、前記分注ヘッドを前記第1および第2の支持部に対して相対的に前記第1および第2の方向に移動させるように構成され、または前記第1および第2の支持部を前記分注ヘッドに対して相対的に前記第1および第2の方向に移動させるように構成された第2の駆動部と、
複数の第3の収容部を有する第3の容器を支持する第3の支持部とをさらに備え、
前記第1の容器は、複数の第1の分注単位を含み、各第1の分注単位は、予め定められた数の複数の第1の収容部を含み、
前記第2の容器は、複数の第2の分注単位を含み、各第2の分注単位は、予め定められた数の複数の第2の収容部を含み、
前記第3の容器は、複数の第3の分注単位を含み、各第3の分注単位は、予め定められた数の複数の第3の収容部を含み、
前記制御部は、
前記第3の容器の一の第3の分注単位の複数の第3の収容部からの液体の吸引、一の第1の分注単位の複数の第1の収容部への液体の吐出、前記一の第1の分注単位の複数の第1の収容部からの液体の吸引、および一の第2の分注単位の複数の第2の収容部への液体の吐出を順に含む一連の動作が連続的に行われた後、他の第3の分注単位、他の第1の分注単位および他の分注単位についての前記一連の動作が連続的に行われるように、前記分注ヘッド、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御してもよい。
【0116】
第3項に記載の分注装置によれば、第3の容器の一の第3の分注単位の各第3の収容部から第1の容器の一の第1の分注単位の各第1の収容部を経由して、第2の容器の一の第2の分注単位の各第2の収容部への液体の移動が連続的に行われる。この場合、一の第1の分注単位の各第1の収容部に吐出された液体が吸引され、吸引された液体が一の第2の分注単位の各第2の収容部に吐出された後に、他の第1の分注単位の各第1の収容部に液体が吐出される。そのため、一の第1の分注単位の各第1の収容部に液体が収容されている時間と他の第1の分注単位の各第1の収容部に液体が収容されている時間とが等しくなる。それにより、複数の第1の収容部に収容される液体が揮発性を有する液体のように時間とともに変化する場合でも、第1の容器の複数の第1の収容部に収容される液体の処理結果に生じる差が抑制される。
【0117】
(第4項)第3項に記載の分注装置において、前記第1の容器の前記複数の第1の収容部は、第1のピッチで少なくとも一列に整列されたH個(Hは2以上の整数)以上の第1の収容部を含み、
前記第2の容器の前記複数の第2の収容部は、第2のピッチで少なくとも一列に配置されたM個の第2の収容部を含み、MはHのm倍(mは2以上の整数)であり、
前記第1のピッチは、前記第2のピッチの整数倍であり、
前記第2の容器の前記M個の第2の収容部はm組に分類され、各m組はH個の第2の収容部を含み、
前記制御部は、前記複数の第1の収容部のうちH個の第1の収容部からH個の分注チップに液体を吸引する吸引動作が行われ、吸引された液体が一組のH個の第2の収容部に吐出される吐出動作がm組について順次行われるように、前記分注ヘッド、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御してもよい。
【0118】
第4項に記載の分注装置によれば、第1の容器のH個の第1の収容部から吸引された液体をM個(m×H個)の第2の収容部に吐出することができる。
【0119】
(第5項)第2項~第4項のいずれか一項に記載の分注装置において、前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに直交し、
前記分注ヘッドによる前記第1の容器からの液体の吸引時には、前記複数のチップ取付部の整列方向が前記第1の方向と一致し、
前記制御部は、前記分注ヘッドによる前記第1の容器からの液体の吸引時と前記分注ヘッドによる前記第2の容器への液体の吐出時との間で前記分注ヘッドおよび前記第2の支持部のうち一方を他方に対して相対的に90度回転させるように前記第1の駆動部を制御してもよい。
【0120】
第5項に記載の分注装置によれば、分注ヘッドまたは第2の支持部を90度回転させることにより分注ヘッドにより第1の容器から吸引された液体を第2の容器に容易に吐出することができる。
【0121】
(第6項)第1項に記載の分注装置において、
前記複数の収容部は、複数列および複数行のマトリクス状に配置され、
前記複数のチップ取付部は、複数列および複数行のマトリクス状に配置されてもよい。
【0122】
第6項に記載の分注装置によれば、一の分注動作で、より多くの収容部に対して液体を吸引または吐出することが可能となる。
【0123】
(第7項)他の態様に係る分注方法は、直線状に整列された複数のチップ取付部を有する分注ヘッドを用いて分注を行う分注方法であって、
直線状に整列された複数の収容部を含む容器を支持部により支持するステップと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致するように前記分注ヘッドおよび前記支持部のうち少なくとも一方を他方に対して相対的に回転させるステップと、
前記複数のチップ取付部の整列方向が前記複数の収容部の整列方向に一致した状態で、前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップに前記容器の前記複数の収容部から液体を吸引するか、または前記複数のチップ取付部の各々に取り付けられた分注チップから前記容器の前記複数の収容部に液体を吐出するステップとを含む。
【0124】
第7項に記載の分注方法によれば、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持された容器の複数の収容部の整列方向とが異なる場合でも、第1の駆動部により分注ヘッドおよび支持部のうち少なくとも一方が他方に対して相対的に回転される。それにより、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持される容器の複数の収容部の整列方向とを一致させることができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ複数の収容部の整列方向が異なる種々の容器に対して簡単な構成および動作で液体を吸引または吐出することが可能となる。
【0125】
(第8項)第1項に記載の分注装置において、
前記第1の駆動部は、前記支持部を前記分注ヘッドに対して第1の回転軸の周りで回転させ、
前記分注装置は、さらに、
前記第1の回転軸と平行に延び、前記支持部と一体的に回転する第2の回転軸と、
前記第2の回転軸の周りで回転可能に取り付けられ、第1の部分および第1の押圧部を有するアームと、
第1の固定部と、
前記支持部により支持された前記容器の第1の側面と当接可能に前記支持部に設けられた第1の当接部と、を備え、
前記第1の固定部が前記支持部とともに一の方向に回転する前記アームの前記第1の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第1の側面に対向する第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させてもよい。
【0126】
第8項に記載の分注装置によれば、容器を支持する支持部とアームとが第1の駆動部により第1の回転軸の周りで一の方向に回転する。支持部とアームとがさらに回転すると、アームの第1の部分と第1の固定部とが接触する。また、第1の回転軸の周りの一の方向に回転する力により、アームと支持部とが第2の回転軸の周りで相対的に回転する。これにより、支持部に支持された容器の第2の側面が第1の押圧部により押圧され、容器の第1の側面が第1の当接部に当接する。これにより、支持部内において容器が第1の押圧部と第1の当接部とに挟持されるので、第1の押圧部と第1の当接部との間の領域に容器を保持することができる。その結果、新たな駆動源を用いずに、第1の駆動部の駆動のみで支持部内の所望の位置に容器を保持することができる。
【0127】
(第9項)第8項に記載の分注装置において、
前記アームは、第2の部分をさらに有し、
前記分注装置は、さらに、
第2の固定部、を備え、
前記第2の固定部が前記支持部とともに前記一の方向とは逆の他の方向に回転する前記アームの前記第2の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させてもよい。
【0128】
第9項に記載の分注装置によれば、容器を支持する支持部とアームとが第1の駆動部により第1の回転軸の周りで他の方向に回転する。支持部とアームとがさらに回転すると、アームの第2の部分と第2の固定部とが接触する。また、第1の回転軸の周りの他の方向に回転する力により、アームと支持部とが第2の回転軸の周りで相対的に回転する。これにより、支持部に支持された容器は、第1の押圧部により押圧されつつ第1の当接部に当接する。これにより、支持部内において容器が第1の押圧部と第1の当接部とに挟持される。これらの結果、支持部を互いに異なる2つの角度に回転させた状態で、支持部内の所望の位置に容器を保持することができる。
【0129】
(第10項)第9項に記載の分注装置において、
前記第2の固定部を前記第1の固定部が設けられる位置とは異なる予め定められた位置に設けることにより、
前記支持部が基準姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を押圧せず、
前記支持部が基準姿勢より前記他の方向に180度回転した姿勢で第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させてもよい。
【0130】
第10項に記載の分注装置によれば、支持部に支持された容器を同じ姿勢で保持される状態と保持されない状態とに移行させることができる。
【0131】
(第11項)第10項に記載の分注装置において、
前記第1の固定部を予め定められた位置に設けることにより、
前記支持部が基準姿勢より前記他の方向に90度回転した姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を押圧せず、
前記支持部が基準姿勢より前記一の方向に90度回転した姿勢で前記第1の押圧部が前記容器の前記第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧することにより前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させてもよい。
【0132】
第11項に記載の分注装置によれば、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持された容器の複数の収容部の整列方向とが90度異なる場合、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持される容器の複数の収容部の整列方向とを一致させた状態で容器を保持することができる。さらに、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持された容器の複数の収容部の整列方向とが同じ場合でも、分注ヘッドの複数のチップ取付部の整列方向と支持部により支持される容器の複数の収容部の整列方向とを一致させた状態で容器を保持することができる。さらに、例えば容器の長手方向を縦にした状態で容器が保持される状態と容器が保持されない状態とにでき、容器の長手方向を横にした状態で容器が保持される状態と容器が保持されない状態とにできる。このため、ロボットで容器を搬送する場合、容器の姿勢を考慮せずにロボットに容器を搬送させることができる。
【0133】
(第12項)第8項~第11項のいずれか一項に記載の分注装置において、
前記第1の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器の前記第2の側面に接触する第1のベアリングを含んでもよい。
【0134】
第12項に記載の分注装置によれば、支持部により支持された容器と第1のベアリングとが接触する際、容器の第2の側面と第1のベアリングとの接触により第1のベアリングが回転可能である。これにより、容器の第2の側面と第1のベアリングとの摩擦の発生が抑制される。このため、容器の第2の側面と第1のベアリングとの摩擦による容器の支持部に対する位置ずれが抑制される。
【0135】
(第13項)第12項に記載の分注装置において、
前記第1の押圧部は、前記第1のベアリングと前記アームとを接続する平板形状の第1の板ばねをさらに含んでもよい。
【0136】
第13項に記載の分注装置によれば、容器の第1の側面と第1の当接部とが当接している状態で支持部により支持された容器と第1のベアリングとの接触する力に応じて、第1の板ばねが変形する。この場合、第1の板ばねの平板形状に戻ろうとする力により、支持部により支持された容器をさらに押圧することが可能になる。これにより、容器をより強固に保持することができる。
【0137】
(第14項)第8項~第13項のいずれか一項に記載の分注装置において、
前記アームは、第2の押圧部をさらに有し、
前記分注装置は、さらに、
前記支持部により支持された前記容器の第3の側面と当接可能に前記支持部に設けられた第2の当接部、を備え、
前記第1の固定部が前記支持部とともに前記一の方向に回転する前記アームの前記第1の部分に接触することにより、前記アームが前記第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転し、
前記第2の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器を挟んで前記第2の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の前記第3の側面に対向する第4の側面を前記第2の当接部に向かう方向に押圧することにより、前記容器の前記第3の側面を前記第2の当接部に当接させてもよい。
【0138】
第14項に記載の分注装置によれば、支持部に支持された容器は、第1の押圧部により第1の当接部に向かう方向に押圧されつつ、第2の押圧部により第2の当接部に向かう方向に押圧される。この場合、容器は異なる二方向から押圧されることにより、第1の当接部と第2の当接部とに当接する。これにより、容器は、第1の押圧部と第1の当接部との間に挟持されつつ、第2の押圧部と第2の当接部との間に挟持される。したがって、第1の押圧部と第1の当接部と第2の押圧部と第2の当接部とで形成される領域内に容器が保持されるので、より正確な位置に容器を保持することができる。
【0139】
(第15項)第14項に記載の分注装置において、
前記第2の押圧部は、前記支持部により支持された前記容器の前記第4の側面に接触する第2のベアリングを含んでもよい。
【0140】
第15項に記載の分注装置によれば、支持部により支持された容器と第2のベアリングとが接触する際、容器の第4の側面と第2のベアリングとの接触により第2のベアリングが回転可能である。これにより、容器の第4の側面と第2のベアリングとの摩擦の発生が抑制される。このため、容器の第4の側面と第2のベアリングとの摩擦による容器の支持部に対する位置ずれが抑制される。
【0141】
(第16項)第15項に記載の分注装置において、
前記第2の押圧部は、前記第2のベアリングと前記アームとを接続する平板形状の第2の板ばねをさらに含んでもよい。
【0142】
第16項に記載の分注装置によれば、容器の第3の側面と第2の当接部とが当接している状態で支持部により支持された容器と第2のベアリングとの接触する力に応じて、第2の板ばねが変形する。この場合、第2の板ばねの平板形状に戻ろうとする力により、支持部により支持された容器をさらに押圧することが可能になる。これにより、容器をより強固に保持することができる。
【0143】
(第17項)第7項に記載の分注方法において、
前記回転させるステップは、前記支持部を前記分注ヘッドに対して第1の回転軸の周りで回転させ、
前記分注方法は、さらに、
第1の固定部が前記支持部とともに一の方向に回転するアームの第1の部分に接触することにより、前記アームを第2の回転軸の周りに前記支持部に対して相対的に回転させるステップと、
前記支持部により支持された前記容器を挟んで第1の当接部と対向する位置で前記支持部に対する前記アームの相対的な回転により前記支持部に支持された前記容器の第1の側面に対向する第2の側面を前記第1の当接部に向かう方向に押圧させることにより、前記容器の前記第1の側面を前記第1の当接部に当接させるステップと、を含んでもよい。
【0144】
第17項に記載の分注方法によれば、支持部に支持された容器の第2の側面が第1の押圧部により押圧され、容器の第1の側面が第1の当接部に当接する。これにより、支持部内において容器が第1の押圧部と第1の当接部とに挟持されるので、第1の押圧部と第1の当接部との間の領域に容器を保持することができる。その結果、新たな駆動源を用いずに、第1の駆動部の駆動のみで支持部内の所望の位置に容器を保持することができる。
【符号の説明】
【0145】
10…分注ヘッド,10a…駆動機構,11…吸引吐出機構,12…チップ取付部,13…分注チップ,21…第1の支持部,21a…支持面,21b…外枠部,22…第2の支持部,22a…支持面,22b…外枠部,30…回転駆動部,31…接続部材,40…制御部,62…選択ウェル受付部,100…分注装置,A1~A8…領域,B1~B8…領域,ΔI1…第1のピッチ,ΔI2…第2のピッチ,St…ステージ,WP…第1のウェルプレート,WL…ウェル,wp…第2のウェルプレート,wl…ウェル,500…姿勢変換装置,510…回転駆動部,520…接続部材,521…第1の回転軸,522…回転板,522A…連結突起部,523a~523d…接続部材,530…固定板,531…第1の固定部,532…第2の固定部,540…支持部,541,542…支持板,543a~543g…突起部,550…第2の回転軸,560…アーム,560A…本体部,561…第1の当接部,562…第2の当接部,563…連結突起部,564…第1の接続部,564A,565A…上カバー,565…第2の接続部,570…第1の押圧部,571,581…板ばね,572,582…ベアリング,580…第2の押圧部,AD…アダプタ,AX…第1軸,ax…第2軸,PS…ばね
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