(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011606
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】丸紐の被覆の形成方法
(51)【国際特許分類】
D04D 1/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
D04D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113757
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000147590
【氏名又は名称】株式会社青山
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】青山 隆治
【テーマコード(参考)】
4L049
【Fターム(参考)】
4L049AA13
4L049AA16
4L049BA06
4L049BA22
4L049CA01
4L049DA00
4L049EA00
(57)【要約】
【課題】労力と時間を節減し得る丸紐の管状の被覆の形成方法を提供する。
【解決手段】被覆12の形成方法は、熱可塑性樹脂製の繊維からなるテープ状の布地であってその伸長方向へ伸びる二つの互いに相対する側縁部14a,14bを有する布地14を準備する。次に、布地の両側縁部が互いに他の一方に沿って伸びるように布地を二つ折りにし、これにより生じた二つの折り片16,18を両側縁部に沿って熱溶断する。熱溶断によって両折り片に生じる新たな二つの側縁部16a,18aにおいて両折り片を熱溶着し、次いで新たな両側縁部に熱圧を付与し、これにより新たな両側縁部を平らに整形することを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の周囲を取り巻く管状の被覆とを有する丸紐の前記被覆の形成方法であって、
熱可塑性樹脂製の繊維からなるテープ状の布地であってその伸長方向へ伸びる二つの互いに相対する側縁部を有する布地を準備すること、
前記布地の両側縁部が互いに他の一方に沿って伸びるように前記布地を二つ折りにすること、
前記布地の二つ折りによって生じた二つの折り片を両側縁部に沿って熱溶断し、これにより生じる新たな二つの側縁部において両折り片を熱溶着すること、
前記新たな二つの側縁部に熱圧を付与し、これにより前記新たな二つの側縁部を平らに整形することを含む、丸紐の被覆の形成方法。
【請求項2】
さらに、前記新たな二つの側縁部の整形後、両折り片をその伸長方向に関して、1又は複数の箇所において切断することを含む、請求項1に記載の丸紐の被覆の形成方法。
【請求項3】
前記布地はバイアステープからなる、請求項1又は2に記載の丸紐の被覆の形成方法。
【請求項4】
前記布地の二つ折りは、前記布地がその両側縁部間の部分において湾曲するように行う、請求項1又は2に記載の丸紐の被覆の形成方法。
【請求項5】
前記熱溶断は両折り片にレーザーカット加工又はヒートカット加工を施すことにより行う、請求項1又は2に記載の丸紐の被覆の形成方法。
【請求項6】
前記熱圧の付与は、熱鏝を前記新たな二つの側縁部にこれらの上から押し当てることにより行う、請求項1又は2に記載の丸紐の被覆の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸紐の被覆の形成方法、より詳細には、芯材と、該芯材の周囲を取り巻く管状の被覆とからなる丸紐の前記被覆の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸紐の被覆は次のようにして形成されている。まず、テープ状の布地を準備する。次に、布地を二つ折りにして、布地の伸長方向へ伸びる2つの側縁部を互いに重ね合わせる。次いで、布地の両側縁部を糸で縫い合わせる。その後、縫い合わせにより管状にされた布地を裏返しにする。裏返しにより、縫合された両側縁部が管状の布地の外部からその内部に移動し、縫い目が表に現われる。これにより、被覆が形成される。なお、前記丸紐は、例えば複数本の毛糸からなる芯材を被覆内に通し、被覆の両端部を閉じ合わせることにより形成される。
【0003】
ところで、前記従来の丸紐の被覆の形成に際して行う、管状にされた布地を裏返しにする作業は比較的面倒な作業であり、労力と時間とを要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、労力と時間を節減し得る丸紐の被覆の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芯材と、該芯材の周囲を取り巻く管状の被覆とからなる丸紐の前記被覆の形成方法に係る。前記被覆の形成方法は、熱可塑性樹脂製の繊維からなるテープ状の布地であってその伸長方向へ伸びる二つの互いに相対する側縁部を有する布地を準備すること、前記布地の両側縁部が互いに他の一方に沿って伸びるように前記布地を二つ折りにすること、前記布地の二つ折りによって生じた二つの折り片を両側縁部に沿って熱溶断し、これにより生じる新たな二つの側縁部において両折り片を熱溶着すること、前記新たな二つの側縁部に熱圧を付与し、これにより前記新たな二つの側縁部を平らに整形することを含む。
【0007】
本発明にあっては、前記熱可塑性樹脂製の繊維からなるテープ状の布地を二つ折りにして得られた二つの折り片を前記布地の両側縁部に沿って熱溶断する。熱溶断により両折り片にそれぞれ二つの新たな側縁部が生じ、両折り片はこれらの新たな両側縁部において互いに接合される。より詳細には、前記熱溶断によって前記新たな両側縁部が熱溶融され、これにより生じた熱溶融物を介して両折り片が互いに接合(熱溶着)され、これにより全体に管状を呈する状態にされる。
【0008】
ここにおいて、前記新たな両側縁部は山形をなして連なる形態を呈することから、前記新たな両側縁部に熱圧を付与する。前記熱圧の付与は、前記新たな両側縁部及びこれらの近傍領域に例えば尖った先端部を有する熱鏝の前記先端部を押し当てながら、前記新たな両側縁部に沿って移動させることにより行う。前記熱鏝の押し当ては、好ましくは、管状を呈する両折り片に折り目が付かないように、両折り片が押し潰されない程度の力で行う。
【0009】
前記熱圧の付与により、前記新たな両側縁部における熱溶融物を柔軟にし、前記新たな両側縁部を前記山形の形態から平らな形態へと整形することができる。その結果、管状の被覆が形成される。本発明によれば、前記管状の被覆の形成に当たり、前記従来における裏返しの作業を必要とせず、前記裏返しの作業に要する労力及び時間の節減を図ることができる。
【0010】
前記形成方法は、さらに、前記新たな両側縁部の整形後、両折り片をその伸長方向に関して、1又は複数の箇所において切断することを含むものとすることができる。これによれば、複数の管状の被覆を形成することができる。
【0011】
前記布地は、好ましくは、生地を45度の角度で裁断して得られるテープ状の布地であるバイアステープからなる。
【0012】
前記布地の二つ折りは、好ましくは前記布地がその両側縁部間の部分において湾曲するように行う。これによれば、全体に一様に湾曲した内外両周面を有する環状の被覆を得ることができる。
【0013】
前記熱溶断は前記布地の両側縁部に例えばレーザーカット加工又はヒートカット加工を施すことにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】布地をその両側縁部が一線上に揃うよう二つ折りにした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、丸紐10(
図4)を構成する管状の被覆12を形成するために準備されたテープ状の布地が全体に符号14で示されている。丸紐10は、被覆12内に通され被覆12と共に丸紐10を構成する例えば複数本の毛糸からなる芯材15を有する。丸紐10は、芯材15の両端を切り揃えた後、芯材15の周囲を取り巻く被覆12の両端部12a、12bをそれぞれ閉じ合わせることにより形成される。
【0016】
布地14はポリエステル繊維のような熱可塑性樹脂製の繊維からなり、加熱することにより溶融(熱溶融)する性質を有する。布地14は、好ましくは、生地を45度の角度で裁断して得られるテープ状の布地であるバイアステープからなる。布地14は、その伸長方向へ伸びる2つの互いに相対する2つの側縁部14a、14bを有する。
【0017】
管状の被覆12は、次のようにして形成する。
【0018】
まず、布地14を二つ折りにする(矢印a参照)。布地14の二つ折りは、布地14の両側縁部14a、14bが互いに他の一方に沿って伸びるように行う。このとき、両側縁部14a、14bが一線上に揃うようにし(
図2)、あるいは、両側縁部14a、14bが一線上に揃うことなく互いに平行をなすようにする(図示せず)。また、前記二つ折りは、好ましくは、布地14の両側縁部14a、14b間の部分14cが、外観上の見栄えを損なう折り目が生じないように、湾曲するように行う。布地14を二つ折りにすると、二つの折り片16、18が生じる。
【0019】
次に、布地14の二つ折りによって生じた両折り片16、18を布地14の両側縁部14a、14bに沿って熱溶断する。より詳細には、両側縁部14a、14bと平行な直線(これを想像線lで示す。)を切断線とする熱溶断を行う。前記熱溶断は、両折り片16、18にレーザーカット加工又はヒートカット加工を施すことにより行うことができる。
【0020】
前記熱溶断によって、両折り片16、18にそれぞれ新たな二つの側縁部16a、18a(
図3)が生じ、両折り片16、18はこれらの両側縁部16a、18aにおいて熱溶着される。より詳細には、前記熱溶断によって生じる新たな両側縁部16a、18aが熱溶融され、これにより両側縁部16a、18aに生じた熱溶融物(図示せず)を介して両折り片16、18が互いに接合(熱溶着)される。熱溶着された新たな両側縁部16a、18aは山形の形態をなして連なり、両折り片16、18は全体に管状を呈する。
【0021】
次に、熱溶着された新たな両側縁部16a、18aに熱圧を付与する。前記熱圧の付与は、例えば尖った先端部を有する熱鏝(図示せず)を使用して行う。このとき、前記熱鏝の先端部を、新たな両側縁部16a、18a及びこれらの近傍領域に押し当てながら、両側縁部16a、18aに沿って移動させる。両側縁部16a、18a及びこれらの近傍領域への前記熱鏝の先端部の押し当ては、好ましくは、管状を呈する両折り片16、18に折り目が付かないように、両折り片16、18が押し潰されない程度の力を加えて行う。前記熱圧の付与により、新たな両側縁部16a、18aにおける前記熱溶融物が柔軟にされ、両側縁部16a、18aが前記山形の形態(
図3参照)から、両側縁部16a、18aが互いに突き合わされた平らな形態(
図4参照)へと整形される。その結果、管状の被覆12が形成される(
図4参照)。
【0022】
また、準備する布地14を比較的長尺なものとすることができる。これによれば、両折り片16、18の両側縁部16a、18aの整形後、両折り片16、18をその伸長方向に関して、1又は複数の箇所において切断することにより、1つの布地14を用いて、複数の被覆12を形成することができる。
【0023】
本発明によれば、管状の被覆12の形成に当たり、前記従来における裏返しの作業を必要とせず、前記裏返しの作業に要する労力及び時間の節減を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 丸紐
12 被覆
14 布地
16、18 折り片