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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116060
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】把手付き椀
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A47G19/00 E
A47G19/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184624
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2023022029
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000187460
【氏名又は名称】松浦産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】松浦 英樹
【テーマコード(参考)】
3B001
【Fターム(参考)】
3B001AA01
3B001BB02
3B001CC21
3B001DA01
(57)【要約】
【課題】鉢の外周縁部に突設した把手を把持してどんぶり鉢の移動や食事が行えるとともに、どんぶり鉢に汁物料理を収納した状態で長時間把持しても疲れにくい把手付き椀を提供する。
【解決手段】この発明は、椀本体と、前記椀本体の外周縁部に下方に向かって突設した把手本体と、前記椀本体の前記外周縁部の一部を外方に斜めに突出形成した飲み口部とよりなり、前記飲み口部は前記椀本体の前記外周縁部において少なくとも前記把手本体と対向する前記外周縁部に形成し、しかも、前記椀本体は前記外周縁部および底部を平面視で略円形状に形成し、前記外周縁部の中心に対して前記底部の中心を前記把手本体側に変位させて設け、前記底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する前記椀本体の内周壁前面部は前記椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としてなることを特徴とする把手付き椀を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀本体と、
前記椀本体の外周縁部に下方に向かって突設した把手本体と、
前記椀本体の前記外周縁部の一部を外方に斜めに突出形成した飲み口部とよりなり、
前記飲み口部は前記椀本体の前記外周縁部において少なくとも前記把手本体と対向する前記外周縁部に形成し、しかも、前記椀本体は前記外周縁部および底部を平面視で略円形状に形成し、前記外周縁部の中心に対して前記底部の中心を前記把手本体側に変位させて設け、
前記底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する前記椀本体の内周壁前面部は前記椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としてなる
ことを特徴としてなる把手付き椀。
【請求項2】
前記飲み口部を前記椀本体の前記外周縁部の正面及び左右側面に等間隔に形成したことを特徴とする請求項1に記載の把手付き椀。
【請求項3】
前記把手本体と対向する位置に設けた前記飲み口部に水平面部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の把手付き椀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、うどん等の汁物料理を入れる把手付き椀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、うどん等の汁物料理を入れるどんぶり鉢は椀状に形成されている(例えば、特許文献1)。したがって、どんぶり鉢は、鉢の外周縁部に親指を掛けて他の指で鉢底を支持することにより把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3157714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような形態のどんぶり鉢に汁物の熱い料理を入れた場合、どんぶり鉢の外周縁部を指で把持することが困難であるとともに、どんぶり鉢を把持して移動するときには料理汁がどんぶり鉢内で揺動して把持する指や手を濡らして火傷する虞があり、さらには、どんぶり鉢に収納した料理汁に指が漬かり非衛生的になる等の支障があった。
【0005】
かかる問題点を解消するために、鉢の縁部に把手を備えた椀構造がある。しかし、単に従来の鉢の縁部に把手をつけただけの構造では、どんぶり鉢に入れた料理汁の重量と麺の重量により、把手部分にかかる負荷が大きく、どんぶり鉢を長時間把持したまま食することが困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解消するように鉢の外周縁部に突設した把手を把持してどんぶり鉢の移動や食事が行えるとともに、どんぶり鉢に汁物料理を収納した状態で長時間把持しても疲れにくい把手付き椀を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、椀本体と、椀本体の外周縁部に下方に向かって突設した把手本体と、椀本体の外周縁部の一部を外方に斜めに突出形成した飲み口部とよりなり、飲み口部は椀本体の外周縁部において少なくとも把手本体と対向する外周縁部に形成し、しかも、椀本体は外周縁部および底部を平面視で略円形状とし、外周縁部の中心に対して底部の中心を把手本体側に変位させて設け、底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する椀本体の内周壁前面部は椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としてなることを特徴とする把手付き椀である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記飲み口部は、前記椀本体の前記外周縁部の正面及び左右側面に等間隔に形成したことを特徴とする把手付き椀である。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記把手本体と対向する位置に設けた前記飲み口部に水平面部を有することを特徴とする把手付き椀である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、椀本体と、前記椀本体の外周縁部に下方に向かって突設した把手本体と、前記椀本体の前記外周縁部の一部を外方に斜めに突出形成した飲み口部とよりなり、前記飲み口部は前記椀本体の前記外周縁部において少なくとも前記把手本体と対向する前記外周縁部に形成し、しかも、前記椀本体は前記外周縁部および底部を平面視で略円形状に構成しつつ、前記外周縁部の中心に対して前記底部の中心を前記把手本体側に変位させて設けられ、前記底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する前記椀本体の内周壁前面部は前記椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としたため、片方の手掌全体で把手本体を把持でき、椀本体を安定した姿勢で保持することができる。
また、椀本体は外周縁部および底部を平面視で略円形状に形成し、外周縁部の円中心に対して底部の円中心を把手本体側に変位させて設け、底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する椀本体の内周壁前面部は椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としたため、椀本体に汁物料理を収納した際、椀本体の重心を把手本体側に変位させることができ、把手本体と椀本体の重心との距離が可及的に近くなり把手付き椀を軽い力で支持することができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様によれば、前記飲み口部を前記椀本体の前記外周縁部の正面及び左右側面に等間隔に形成したため、平面視において、椀本体の重心を把手本体と正面の飲み口部とを結ぶ直線上に位置させることができ、椀本体に汁物料理を収納した状態で把手本体を把持した際、把手本体を把持した持ち手に対して左右方向の回転モーメントが生起されづらく、持ち手に対する負担を軽減して、長時間把手付き椀を把持し続けることができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様によれば、前記把手本体と対向する位置に設けた前記飲み口部に水平面部を有することにより、椀本体に収納された料理汁を飲み口部から放出する際、椀本体の外周縁部に沿って液だれを生起する虞を可及的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における把手付き椀を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における把手付き椀を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態における把手付き椀を示す側面図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5】本発明の実施形態における把手付き椀を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の要旨は、椀本体と、椀本体の外周縁部に下方に向かって突設した把手本体と、椀本体の外周縁部の一部を外方に斜めに突出形成した飲み口部とよりなり、飲み口部は椀本体の外周縁部において少なくとも把手本体と対向する外周縁部に形成し、しかも、椀本体は外周縁部および底部を平面視で略円形状に形成し、外周縁部の中心に対して底部の中心を把手本体側に変位させて設け、底部の前端縁部から椀本体前端縁部に連続する椀本体の内周壁前面部は椀本体前端縁部に向かって徐々に底浅状としたことに特徴を有する。
【0015】
また、飲み口部を椀本体の外周縁部の正面及び左右側面に等間隔に形成したことにも特徴を有する。
【0016】
本発明の実施例を図1~5に基づき詳細に説明する。
【0017】
本実施形態における把手付き椀Bは、図1に示すように、どんぶり鉢状に形成した椀本体1と、椀本体1の外周縁部10に下方に向かって突設した扁平細幅状の把手本体2と、椀本体1の外周縁部10の一部を外方に膨出した飲み口部3を有する。
【0018】
椀本体1は、図2に示すように、椀本体1の上端部に位置する外周縁部10および椀本体1の内底面に位置する底部11を平面視において略円形状に形成するとともに、外周縁部10の中心部10aに対して底部11の中心部11aを把手本体2側に変位して設けている。また、椀本体1は、外底面の周縁部に沿って下方に突設した突縁部12を有する(図3図5参照)。椀本体1は、突縁部12から外周縁部10に向かって外方に膨出して内部に麺や汁などを入れることが可能な収納空間を有するどんぶり鉢状に形成している。
なお、椀本体1は、陶器、磁器、プラスチック等どのような素材で構成されていてもよい。
【0019】
また、椀本体1は、図4に示すように、底部11の前端縁部11bから椀本体1の前部に位置する椀本体前端縁部10bに連続する内周壁前面部1aを有する。内周壁前面部1aは、前端縁部11bの近傍を略鉛直状に立ち上げた鉛直部1bと、鉛直部1bの上端部から椀本体前端縁部10bにかけて外方に膨出しつつ緩やかな登り傾斜状に形成した傾斜部1cを有する。椀本体1は、内周壁前面部1aにより底部11から椀本体前端縁部10bにかけて内周底面が徐々に底浅となるように形成されている。椀本体1は、底部11と、内周壁前面部1aの鉛直部1bと、内周壁側面部1d、および内周壁後面部1eにより麺収納部Sを形成している(図4の二点鎖線を参照)。
【0020】
椀本体1の外周縁部10の後端部には、図3および図4に示すように、把手本体2が下向きに突設されている。
【0021】
把手本体2は基本的に扁平細幅状に形成されている。把手本体2は、手掌で把持できるような形状であればよく、必要に応じて把手本体2の周面を手掌で包み込むような周面形状、例えば、左右方向の中央部を椀本体1側にやや膨出した形状として膨出部20に親指を除く4本の手指、または、人差し指を除く4本の手指を当て、膨出部20の反対周面部分(後側の面)を手掌で覆うことが可能な凹部21に形成されている。
【0022】
なお、把手本体2はやや内方(前側)に湾曲させ、その全長は椀本体1の略底部11の位置にまで伸延させて椀本体1の外周面部13との間に把手本体2を把持した際の握り手指が位置するように湾曲状に形成すると共に、把手本体2の上部は略水平に形成して椀本体1の外周縁部10よりも上方に位置し、外周縁部10から上方に延設した連結部23を介して椀本体1に連設している。
【0023】
把手本体2の上端に位置する水平部には、把手本体2を把持した際に膨出部20を把持しなかった人差し指または親指を載置可能な指載置部22を形成している。
なお、指載置部22の下面には、椀本体1と把手本体2との連結部を補強するための補強リブ24を設けている。
【0024】
また、椀本体1の外周縁部10には、椀本体1から外方に円弧状に突出形成した飲み口部3を有する。飲み口部3は、図1および図2に示すように、椀本体1の外周縁部10に等間隔に複数形成されている。本実施形態において、飲み口部3は、把手本体2を間に挟んだ外周縁部10の左右側および把手本体2と対向する外周縁部10の合計3か所に設けられている。
【0025】
飲み口部3は、使用者の口の横幅員より小さく、かつ、上端部から下端部に向かって徐々にその幅員が狭くなる形状とし、さらには、側面視で傾斜状としている。すなわち、飲み口部3は、椀本体1の外周縁部10の内側面の鉛直面に対する傾きよりも外方に傾いて突出形成されるとともに、やや外方に円弧状に膨出させて椀本体1に入れた料理汁が飲み口部3から口内に流入する際にちょうど一口分が貯留できる汁貯め部30を設けて料理汁が円滑に口内に流入しやすくしている。
【0026】
また、把手本体2と対向する外周縁部10に設けた飲み口部3には、汁貯め部30の上端部から前方に向けて水平状に延設した水平面部3aを有する。水平面部3aは、図2に示すように、平面視において、汁貯め部30の上端部および外周縁部10に連結した基端部から先端部にかけて左右幅員が漸次狭くなる略くちばし状に形成されている。水平面部3aは、その厚みを外周縁部10の厚みと略同一の厚みtに形成されている。また、水平面部3aは、図4に示すように、汁貯め部30の内周面と水平面部3aの上面とのなす角度αが鈍角となるように設けられている。
【0027】
上述したように把手付き椀Bを構成することにより、椀本体1への汁物料理の収納前後において、椀本体1に汁物料理を収納した際、椀本体1の後端部に連設した把手本体2側に重心位置を変化させることができ、把手本体2を把持した際の持ち手への負担を軽減して、把手付き椀Bを長時間把持することができる。
【0028】
また、把手付き椀Bに設けた複数の飲み口部3のうち、把手本体2に対向する位置に設けられた飲み口部3に水平面部3aを設けた構成により、把手付き椀Bの前端部からの液だれを防止できる。ここで、本発明における液だれとは、椀本体1に収納された料理汁が飲み口部3から放出される際、料理汁と椀本体1との間に生じる界面張力により、椀本体1から離隔することなく水平面部3aの前端部に留まり、水平面部3aの前端部から外周面部13に沿って垂れることを指す。この液だれが生じるかどうかは、料理汁と椀本体1との間に生起される界面張力と椀本体1から離隔する際の料理汁の流速との関係により決定される。つまり、料理汁が椀本体1から離隔する際の流速に応じて料理汁に生起される力が料理汁と椀本体1との間に生起される界面張力を上回ると、料理汁が椀本体1から離隔して液だれを生じることがない。
【0029】
この把手付き椀Bからの液だれ防止作用について説明すると、水平面部3aと汁貯め部30とのなす角度αを鈍角に形成したことにより、椀本体1の前側に設けた飲み口部3が把手本体2の連結部23よりも下に位置するように把手付き椀Bを前後方向に傾けた際、汁貯め部30の上端部から水平面部3aに料理汁を容易に移動させることができる。つまり、椀本体1を前後方向に傾けた際に料理汁に生起される運動エネルギーを損なうことなく汁貯め部30から水平面部3aに移行できる。
【0030】
また、汁貯め部30を平面視において、基端部(後端部)から先端部(前端部)にかけて漸次幅が狭くなるように形成したことにより、汁貯め部30から水平面部3aに移行する過程で汁貯め部30の左右方向の中央部に料理汁が集約される。また、水平面部3aが一定の前後幅員を有することにより、把手本体2の飲み口部3が連結部23よりも下に位置するように把手付き椀Bを傾けると、水平面部3aが基端部から先端部にかけて下方傾斜の姿勢となる。この際、料理汁は、水平面部3aを移動する過程で水平面部3aの下方傾斜の姿勢により加速され、所定の流速で水平面部3aの前端部に到達することができる。このように、所定の流速を有して水平面部3aの前端部に料理汁が到達することにより、椀本体1と料理汁との間に生じる界面張力よりも料理汁が椀本体1から離隔しようとする力が大きくなり、水平面部3aの前端部に料理汁が留まって、椀本体1の外周面部13に沿って液だれを生起する虞を可及的に低減できる。
【0031】
椀本体1の重心位置が汁物料理の収納前後で変化する理由について図2~4を参照して説明する。なお、把手付き椀Bの椀本体1に汁物料理を収納する前の重心を符号G2とし、椀本体1に汁物料理を収納した後の重心を符号G1とし、飲食者が把手付き椀Bを保持する部分を符号Hとして説明する。
【0032】
重心とは、全質量がそこに集中しているとみなせる点であり、物体にかかる全重力の作用点である。本実施例に記載の把手付き椀Bは、図2に示すように、外周縁部10および底部11を略円形状に形成しつつ、底部11の中心部11aを外周縁部10の中心部10aよりも把手本体2寄りに設け、底部11から外周縁部10に向かって外方に膨出して内部に麺や汁などを入れることが可能な収納空間を有する左右対称のどんぶり鉢状であって、底部11から椀本体1の前端部にかけて内周底面が徐々に底浅となるように形成し、さらには、単一の素材で密度が一定に形成されていることから、椀本体1への汁物料理の収納前において、椀本体1の重心G2は、外周縁部10の中心部10aと底部11の中心部11aの間であって、中心部10a寄りの位置にある。
【0033】
この把手付き椀Bに汁物料理を収納すると、椀本体1に収納される汁物料理の汁、および麺(具材)は、麺収納部Sに集中して収納され、汁のみ椀本体前端縁部10b近傍の高さ位置まで収納される。すなわち、椀本体1に収納される汁物料理の麺(具材)は、底部11と鉛直部1bと内周壁側面部1d、および内周壁後面部1eで形成される麺収納部Sに収納される。これにより、椀本体1は、重量物となる麺(具材)を底部11に集中させることができる。このように、椀本体1の後部寄りに汁物料理の重量物である麺(具材)が収納されることから、汁物料理を収納後の椀本体1の重心G1は、汁物料理を収納する前の椀本体1の重心G2から外周縁部10の中心部10aと底部11の中心部11aの間であって、中心部11a寄りの位置に重心が変位する。
つまり、椀本体1の重心は、汁物料理の収納前後において、中心部10a寄りの重心G2から中心部11a寄りの重心G1に移動する。
【0034】
このように把手付き椀Bは、椀本体1の底部11の中心部11aを外周縁部10の中心部10aよりも後部側に位置し、さらには、底部11に麺収納部Sを有する構成により、汁物料理の収納前後において、椀本体1の重心位置を重心G2から重心G1に変位できる。
【0035】
ここで、重心位置の移動により把手本体2を把持する持ち手にかかる力のモーメントについて検討する。
力のモーメントとは、基準となる点を中心として物体に回転運動を生起させる力のことであり、基準となる点から力が生じる作用点までの距離と、作用点にかかる力の大きさによって定義される。本実施例においては、図3に示すように、基準となる点が把手本体2の持ち手部Hであり、作用点にかかる力の大きさが重心G1(または、重心G2)にかかる重量W1,W2として検討する。
【0036】
汁物料理を収納する前の持ち手部Hには、持ち手部Hから重心G2までの距離βと、重心G2にかかる椀本体1の重量W2を掛け合わせたモーメントF2がかかる。この持ち手部Hを基準とするモーメントF2を数式で表現するとF2=β×W2sinθ(数式(1))となる。
【0037】
また、汁物料理を収納した後の持ち手部Hには、持ち手部Hから重心G1までの距離αと、重心G1にかかる椀本体1および汁物料理を合算した重量W1を掛け合わせたモーメントF1がかかる。この持ち手部Hを基準とするモーメントF1を数式で表現するとF1=α×W1sinθ(数式(2))となる。
【0038】
このようにモーメントF1,F2は、基準となる点の持ち手部Hからの離隔距離に比例する。そのため、本実施例においては、椀本体1に汁物料理を収納した際、重心G1の重量W1が汁物料理の重量分((重量W2-重量W1)の分)重くなるものの、椀本体1の重心位置が重心G2から重心G1に変位して持ち手部Hとの離隔距離が(距離β-距離α)分短くなるため、持ち手部HにかかるモーメントF1は、汁物料理を椀本体1に収納した重量分(重量W1-重量W2)よりも小さくできる。
【0039】
すなわち、持ち手部Hと椀本体1の重心位置が、椀本体1に汁物料理を収納した際、重心G2から重心G1に変位することで持ち手部Hにかかる重量負荷を軽減し、汁物料理を収納した状態で椀本体1を長時間把持しても疲れにくくできる。
【0040】
以上のように形成した本発明の把手付き椀Bとすることにより、椀本体1に料理を収納した状態において、把手付き椀Bの重心位置が把手本体2側に変位するように、円形に形成した椀本体1の外周縁部10の中心よりも同じく円形に形成した椀本体1の底部11の中心を把手本体2寄りに設け、把手付き椀Bの重心を把手本体2側に寄せることができ、把手付き椀Bを把持する持ち手への負担を軽減して長時間把手付き椀Bを把持し続けることができる。
【0041】
また、飲み口部3を椀本体1の外周縁部10の正面及び左右側面に等間隔に形成したことにより、椀本体1の重心G2(または、重心G1)を把手本体2と正面側に設けた飲み口部3とを結ぶ直線上に位置させることができ、椀本体1に汁物料理を収納した状態で把手本体2を把持した際、把手本体2を把持した持ち手に対して左右方向の回転モーメントが生起されづらく、安定して椀本体1を支持することができ、長時間把手付き椀Bを把持し続けることができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したリ組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0043】
1 椀本体
1a 内周壁前面部
1b 鉛直部
1c 傾斜部
1d 内周壁側面部
1e 内周壁後面部
2 把手本体
3 飲み口部
10 外周縁部
10a 中心部
10b 椀本体前端縁部
11 底部
11a 中心部
11b 前端縁部
12 突縁部
13 外周面部
20 膨出部
21 凹部
22 指載置部
23 連結部
24 補強リブ
30 汁貯め部
B 把手付き椀
S 麺収納部
G1,G2 重心
F1,F2 モーメント
W1,W2 重量
H 持ち手部
図1
図2
図3
図4
図5