(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116061
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】発破装置
(51)【国際特許分類】
E21C 37/18 20060101AFI20240820BHJP
F42B 3/04 20060101ALI20240820BHJP
F42B 3/12 20060101ALI20240820BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
E21C37/18
F42B3/04
F42B3/12
E21D9/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190872
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2023021470
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065EA14
2D065EA19
2D065EA26
(57)【要約】
【課題】火薬の発破は意図せず爆発する可能性があり、保管、運搬、管理に注意が必要であり、安全管理を必要とする。また、火薬の発破は燃焼効率が低く、未燃焼炭素やNOxといった有害物質が排出される。
【解決手段】発破装置は、水とグラファイトを充填した圧力容器に外部電源に接続された電極を備えている。外部電源からの電力でグラファイトを介して圧力容器内の水を加熱して水蒸気にして、圧力容器の内部圧力の上昇を図る。グラファイトに電流の供給を続けると圧力容器の内部圧力が増加して圧力容器は破裂する。供給電力を高めると発破装置の能力が高くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器に収納されたグラファイトと液体を有し、前記圧力容器に収納された電極に電源を接続することにより前記液体を気化させて前記圧力容器の内部圧力が上昇して前記圧力容器を破裂させる発破装置。
【請求項2】
前記グラファイトがファイバー状である請求項1に記載の発破装置。
【請求項3】
前記グラファイトは金属が担持されている請求項2に記載の発破装置。
【請求項4】
前記金属がニッケルである請求項3に記載の発破装置。
【請求項5】
前記液体が水である請求項4に記載の発破装置。
【請求項6】
前記グラファイトが前記圧力容器の容積の40%~65%である請求項5に記載の発破装置。
【請求項7】
前記電源が二次電池である請求項6に記載の発破装置。
【請求項8】
前記電源の電力が変更可能になっていて、前記電力を調整することにより爆発強度か変更可能になっている請求項7に記載の発破装置。
【請求項9】
前記圧力容器が絶縁体で覆われている請求項8に記載の発破装置。
【請求項10】
前記圧力容器が導電性を有している請求項9に記載の発破装置。
【請求項11】
前記電極が絶縁体により保持されて前記圧力容器内に保持されている請求項10に記載の発破装置。
【請求項12】
前記圧力容器と前記電極の間にスイッチを介して前記二次電池が接続されており、前記スイッチを閉路することにより前記圧力容器と前記電極の間に前記二次電池が接続される請求項11に記載の発破装置。
【請求項13】
前記グラファイトが前記電極に糸巻き状に巻き付けられた請求項5に記載の発破装置。
【請求項14】
前記電極が絶縁性のガイドチューブの内方に収納されている請求項5に記載の発破装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧容器に電気を供給して、水を水蒸気にして圧力を上げて破裂させる発破装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発破は、火薬類の爆発力を利用して建築物や船舶などの人工構造物を破壊し、山もしくは岩の破砕手段として利用されている。また、地質調査のために広範囲にわたって地面を振動させる手段として利用されている。
【0003】
発破という用語は爆破と同義的に用いられることがあるが、爆破は火薬類を使って物を破壊する行為を指しており、産業上および軍事上の用途に用いられる。一方、発破は建築・土木業や鉱業をはじめ、民間産業や学術研究の目的に限定して使われる言葉である点において異なる。
【0004】
特許文献1には、アルカリ金属やケイ素等を用いた火薬の発明が記載されている。また、特許文献2には、トンネル工事に用いられる火薬であって、発破孔の奥に水またはゲルとともに爆薬を充填して、開口を閉塞して発破を仕掛ける装置および方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、水を電気分解して水素と酸素に分離して水酸素ガスを発生させて、密閉容器に蓄えられた水酸素ガスを電気的に点火する発破装置の発明が記載されている。また、特許文献4には、コンデンサーに接続された電極が金属細線を介して接続され、コンデンサーに予め充電蓄積した電気エネルギーを短時間で金属細線に放電供給することにより、金属細線を急激に溶融蒸発させてその衝撃力で被破壊物を破壊する破壊装置の発明が記載されている。
【0006】
火薬を用いた発破は意図せず爆発する可能性があり、保管、運搬、管理に注意が必要であり、安全管理を必要とする。また、燃焼効率が低く、未燃焼炭素やNOxといった有害物質が排出されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-143498号公報
【特許文献2】特開2010- 96419号公報
【特許文献3】特開2006-194475号公報
【特許文献4】特開2000- 64765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
火薬を用いた発破は意図せず爆発する可能性があり、保管、運搬、管理に注意が必要であり、安全管理に注力を必要とする。
【0009】
また火薬は、燃焼効率が低く、未燃焼炭素やNOxといった有害物質が排出されるという問題がある。本願発明の解決しようとする課題は、安全で効率がよく、環境負荷がない火薬の代替手段を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、安全で燃焼効率の高い発破装置を提供することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するために、本発明に係る発破装置は、圧力容器に収納されたグラファイトと液体を有し、前記圧力容器に収納された電極に電源を接続することにより前記液体を気化させて前記圧力容器の内部圧力が上昇して前記圧力容器を破裂させる。
【0012】
この構成において、本発明の発破装置は圧力容器を破壊させて水蒸気による圧力を発破装置の周囲に及ぼして発破装置の周辺を含む領域を破壊する。
【0013】
本発明に係る発破装置は、前記グラファイトがファイバー状である。また、本発明に係る発破装置は、前記グラファイトは金属が担持されたグラファイトであることが望ましい。さらに、本発明に係る発破装置は、前記金属がニッケルであって、ニッケルメッキを施したカーボンファイバーであることが好ましい。
【0014】
本発明に係る発破装置は、前記液体が水である。この構成において、発破装置はグラファイトと水を主成分としているので安全な装置である。
【0015】
本発明に係る発破装置は、前記グラファイトが前記圧力容器の容積の40%~65%である。
【0016】
本発明に係る発破装置は、前記電源が二次電池である。これは、二次電池であれば前記電源の電力が変更可能になっていて、前記電力を調整することにより爆発強度を変えることが可能になっているからである。
【0017】
本発明に係る発破装置は、前記圧力容器が絶縁体で覆われている。また、本発明に係る発破装置は、前記圧力容器が導電性を有している。
【0018】
本発明に係る発破装置は、前記電極が絶縁体により保持されて前記圧力容器内に保持されている。また、本発明に係る発破装置は、前記圧力容器と前記電極の間にスイッチを介して前記二次電池が接続されており、前記スイッチを閉路することにより前記圧力容器と前記電極の間に前記二次電池が接続される。
【0019】
本発明に係る発破装置は、前記グラファイトが前記電極に糸巻き状に巻き付けられている。また、本発明に係る発破装置は、前記電極が絶縁性のガイドチューブの内方に収納されている。
【0020】
本発明の発破装置に用いるグラファイトは、炭素からなる元素鉱物であって黒鉛とも称される。グラファイトは導電性に優れており、高温度下で溶融や蒸発しないという特性を有している。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明にかかる発破装置によれば、火薬の代替手段として、安全で燃焼効率の高い手段を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1の基本的構成の第1の変形例を示す図面である。
【
図3】
図1の基本的構成の第2の変形例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は本発明の発破装置の基本的な構成を説明するための図面である。発破装置10はその外殻が鉄製の耐圧構造を有した圧力容器11により覆われている。圧力容器11はその両端が外側に膨出するドーム状であって中央部は概略円柱状となっている。圧力容器11は耐圧性と導電性を有している。発破装置10には電源として二次電池13が接続可能となっている。
【0025】
導電性の電極12はその両端が保持部材19a,19bにより支持されて圧力容器11の内部に収納されている。保持部材19は絶縁性を有し、本実施例では保持部材として木製のものを使用した。二次電池13の一方の極は電線17を介して圧力容器11に接続され、二次電池13の他方の極はスイッチ14を介して電極12に接続されている。
【0026】
スイッチ14を閉路すると圧力容器11と電極12の間には二次電池13が接続され、二次電池13の電力が発破装置10に供給される構造となっている。
【0027】
圧力容器11の内方には水16とグラファイト15が収納されている。スイッチ14を閉路すると二次電池13の電気は電極12からグラファイト15を通じで圧力容器11に流れる。二次電池13からの電流でグラファイト15が加熱して、この熱が水16を加熱する。
【0028】
すなわち、二次電池13から電力を供給するとグラファイト15に電流が流れ、グラファイトからの発熱で水16が蒸発して圧力容器11の内部が高圧となり遂には圧力容器11が破裂する。
【0029】
グラファイト15は、導電性を有する炭素からなる元素鉱物であるので、発破装置10に供給された電力はグラファイト15に流れて、水16を加熱する。電源である二次電池13からの電力は、水16よりは導電性に優れたグラファイト15に主として流れる。
【0030】
図2は
図1の発破装置の変形例を示す。
図1の実施例と異なるところについて説明する。電極12はその一端が圧力容器11の内方に嵌合された金属製のバンド22aに支持されている。電極12の他端はセラミック製のスペーサー21に支持され絶縁性のガイドチューブ23の内方に収納されている。電極12とガイドチューブ23の間にはスイッチ14を介して電池13が接続されている。電極はガイドチューブに保護されているので無用な短絡を生じることなく、
図1に比べて強固な構造となっている。なおスペーサー21は圧力容器11の内部の水が漏出するのを防ぐ役割も果たしている。セラミック製のスペーサー21は圧力容器11内の高温の水により溶解することがない。
【0031】
図3は
図1の発破装置の別の変形例を示す。
図1の実施例と異なるところについて説明する。圧力容器11の内方にはグラファイト15と水16が収納されている。グラファイト15は糸巻き状に電極12に巻き付けられていて、グラファイトが電極に巻き付けられてボビンの形状となっている。水16はボビン状のグラファイトの隙間に存在している。
【0032】
電源の電流がグラファイトに流れるとグラファイトが加熱してこの熱が水に伝わり水が昇温して水蒸気となる。水は蒸発すると常温中ではその体積が約1700倍となる。電流の供給を続けると水は更に昇温する。圧力容器11は閉鎖空間を形成するので、その内部圧力は上昇する。二次電池13から電力の供給を続けると水は加熱蒸気となり、内部圧力が更に上昇し、圧力が圧力容器11の耐圧限界を超えると発破装置が作動する。
【0033】
すなわち、グラファイト15から発生する熱により、グラファイト15の周囲の水16が加熱されて蒸発する。水16は蒸発してその圧力が増大して、遂には圧力容器11が破裂して発破装置10としての作用を発揮する。発破装置10は急激に温度を上げることが重要で、例えば数10msで発破装置を作動させることが好ましい。短時間で作動させることにより発破の威力を増すことが可能となる。二次電池からの電力の供給が緩やかだとその間に圧力容器からの放熱により圧力容器内の圧力上昇がその分緩やかになる。
【0034】
二次電池13からの電力の供給量を調整することにより、圧力容器10の破裂強度を変えることができる。発破装置10として性能を調節することが可能となる。
【0035】
グラファイト15は形態として、表面積が広いことが望ましい。粉体およびファイバーであれば水16との接触面が広くなるのでよりスムーズに電源(二次電池13)の電力が水16に伝わる。ファイバー状のグラファイトが望ましい。圧力容器11の圧力の急激な上昇に寄与する。グラファイト15の充填量は圧力容器11の内部空間の30%位~65%位が好適であるが、これより少なくても、多くてもよい。本実施例では60%とした。
【0036】
グラファイトは金属で担持されているものが望ましい。金属は電気伝導度が大きく電気を通しやすいが高温度になると溶解する。一方、グラファイトは金属より電気伝導度は劣るが高温にて溶解しない。金属で担持されたグラファイトは金属とグラファイトの両方の特徴を備えている。
【0037】
金属としてはニッケル、銅、鉄であってもよい。金属であればグラファイトより導電率が高いので大きな電流が流れるので発熱が大きくなる。担持方法としては、メッキ、スパッタリング、蒸着等が挙げられるがこれらに限定されない。本実施形態としてはニッケルメッキを施したグラファイトを用いた。発破装置として効果が大きくなる。
【0038】
グラファイトは他の物質に比べて蒸発しにくく、溶融もしにくいので高温度まで上昇させることが可能となる。高温度まで上昇することができれば、発破装置に内包した水の温度を上昇することができ発破装置の威力を増すことが可能となる。大電力を供給して急速に加熱すれば放熱や伝導に寄る熱損失を防ぎ極めて短時間で発破を昇温させることができ発破装置は大きな威力を発揮する。
【0039】
発破装置10の生成物は水蒸気であり、無害である。火薬は窒素酸化物等を生成するので環境負荷となる。さらに、本発明の発破装置は内容物が水であり、火薬と比較して遥かに安全性が高い。
【0040】
本発明の発破装置は、電気で作動するのでその作動に失敗がない、破裂するまで電気を入れることができるからである。
【0041】
火薬は断熱反応であり、その温度上昇過程において自身の温度も上げる必要がありその分圧力の上昇に限界がある。本発明の発破装置はこのような限界は存在しない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る発破装置は、トンネル工事において地盤の破砕に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 発破装置
11 圧力容器
12 電極
13 二次電池
14 スイッチ
15 グラファイト
16 水
17 電線
18 スリーブ
19 保持片
20 被覆
21 スペーサー
22 バンド
23 ガイドチューブ
24 ボビン