IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図1
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図2
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図3
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図4
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図5
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図6
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図7
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図8
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図9
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図10
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図11
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図12
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図13
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図14
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図15
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図16
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図17
  • 特開-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116069
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】アイアン型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240820BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240820BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218307
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】63/445,813
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227983
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 久美子
(72)【発明者】
【氏名】上村 大河
(72)【発明者】
【氏名】ジミー クワン
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH03
(57)【要約】
【課題】フェースを開いたショットにおいて打感が良好なアイアン型ゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】アイアン型ゴルフクラブヘッド100は、複数のスコアラインgv及びフェースセンターFcを有する打撃フェース102と、バック面104と、ソール面106と、トップブレード108と、フェース厚みTとを備えている。バック面104の、スコアライン中心位置Pcを含む領域に、フェース厚みTがそのトウ側及びヒール側よりも大きい厚肉部120が形成されている。厚肉部120は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。アイアン型ゴルフクラブヘッド100のロフト角は、46°以上である。フェース厚みTは、打撃フェース102とバック面104との間で画定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスコアライン及びフェースセンターを有する打撃フェースと、バック面と、ソール面と、トップブレードと、前記打撃フェースと前記バック面との間で画定されるフェース厚みとを備えており、
前記バック面の、スコアライン中心位置を含む領域に、前記フェース厚みがそのトウ側及びヒール側よりも大きい厚肉部が形成されており、
前記厚肉部が、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されており、
ロフト角が46°以上であるアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記厚肉部の前記フェース厚みが、ブレード側に向かうにつれて小さくなっている請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記厚肉部が、前記フェースセンターを含む領域に配置されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記厚肉部のブレード側に、前記厚肉部の上端よりも厚い上側厚肉部が更に設けられている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してヒール側且つブレード側であるヒール上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つブレード側であるトウ上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つソール側であるトウ下部分と、前記フェースセンターに対してヒール側且つソール側であるヒール下部分とに区分けされるとき、
前記トウ上部分の面積が、前記ヒール上部分の面積よりも大きく、前記トウ下部分の面積よりも大きく、且つ、前記ヒール下部分の面積よりも大きい請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してヒール側且つブレード側であるヒール上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つブレード側であるトウ上部分とを有しており、
前記トウ上部分の面積が、前記ヒール上部分の面積の2倍以上である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してブレード側である上部分と、前記フェースセンターに対してソール側である下部分とに区分けされるとき、
前記上部分の面積が、前記下部分の面積よりも大きい請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してトウ側であるトウ部分と、前記フェースセンターに対してヒール側であるヒール部分とに区分けされるとき、
前記トウ部分の面積が、前記ヒール部分の面積よりも大きい請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
鍛造で製造されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドと、シャフトと、グリップとを有するゴルフクラブ。
【請求項11】
請求項10に記載のゴルフクラブを2本以上含むゴルフクラブセットであって、
ロフト角が大きくなるにつれて、前記厚肉部の面積が大きいゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な形態のアイアン型ゴルフクラブヘッドが知られている。特開2010-51618号公報は、キャビティバックの内側に厚肉部が設けられたアイアン型ゴルフクラブヘッドを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-51618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイアン型ゴルフクラブヘッドでは、フェースを開いて使用される場合がある。特にロフト角が大きいヘッドでは、バンカーショットやアプローチショットなどの際に、フェースを開いてショットがなされる。
【0005】
フェースを開いたショットにおいて、打感が悪い場合があることが判明した。バンカーショットやアプローチショットなど、フェースを開くショットでは、微妙な感覚が要求される。打感は、ショットの結果に影響を与えうる。本発明者は、この打感を向上させうる構成を見出すに至った。
【0006】
本発明の目的の一つは、フェースを開いたショットにおいて打感が良好なアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様では、アイアン型ゴルフクラブヘッドは、複数のスコアライン及びフェースセンターを有する打撃フェースと、バック面と、ソール面と、トップブレードと、前記打撃フェースと前記バック面との間で画定されるフェース厚みとを備えている。前記バック面の、スコアライン中心位置を含む領域に、前記フェース厚みがそのトウ側及びヒール側よりも大きい厚肉部が形成されている。前記厚肉部は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。このヘッドのロフト角は、46°以上である。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、フェースを開いたショットにおいて打感が良好なアイアン型ゴルフクラブヘッドが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブセットを示す
図2図2は、第1実施形態に係る第1ヘッドの斜視図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、図2のヘッドの背面図である。図3(a)は陰影図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、図2のヘッドを打撃フェースの正面から見た正面図である。図4(a)は陰影図である。
図5図5(a)は図3(a)のa-a線に沿った断面図であり、図5(b)は図3(a)のb-b線に沿った断面図であり、図5(c)は図3(a)のc-c線に沿った断面図であり、図5(d)は図3(a)のd-d線に沿った断面図であり、図5(e)は図3(a)のe-e線に沿った断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る第2ヘッドの背面図である。図6(a)は陰影図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、図6のヘッドを打撃フェースの正面から見た正面図である。図7(a)は陰影図である。
図8図8(a)は図6(a)のa-a線に沿った断面図であり、図8(b)は図6(a)のb-b線に沿った断面図であり、図8(c)は図6(a)のc-c線に沿った断面図であり、図8(d)は図6(a)のd-d線に沿った断面図であり、図8(e)は図6(a)のe-e線に沿った断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、第1実施形態に係る第3ヘッドの背面図である。図9(a)は陰影図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、図9のヘッドを打撃フェースの正面から見た正面図である。図10(a)は陰影図である。
図11図11(a)は図9(a)のa-a線に沿った断面図であり、図11(b)は図9(a)のb-b線に沿った断面図であり、図11(c)は図9(a)のc-c線に沿った断面図であり、図11(d)は図9(a)のd-d線に沿った断面図であり、図11(e)は図9(a)のe-e線に沿った断面図である。
図12図12(a)及び図12(b)は、第2実施形態に係るヘッドの背面図である。図12(a)は陰影図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、第3実施形態に係るヘッドの背面図である。図13(a)は陰影図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、第4実施形態に係るヘッドの背面図である。図14(a)は陰影図である。
図15図15は、図3(b)と同じ背面図である。
図16図16は、図4(b)の正面図に、図15の背面図の打撃フェースへの投影像を重ねた図である。
図17図17は、図16と同じ図である。
図18図18は、基準状態について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0011】
[基準状態]
基準状態とは、スコアラインgvと水平面HPとが平行とされた状態で、ヘッドが水平面HP上に載置された状態である。この基準状態では、ヘッドのシャフト孔の中心軸線Z(シャフト軸線Z)が基準垂直面VP内に配されている(図18参照)。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。この基準状態において、スコアラインgvは、水平面HPに平行であり、且つ、基準垂直面VPに平行である。
【0012】
[トウ-ヒール方向]
前記基準状態のヘッドにおいて、前記基準垂直面VPと前記水平面HPとの交線の方向が、トウ-ヒール方向である。このトウ-ヒール方向は、スコアラインに平行である。
【0013】
[フェース-バック方向]
前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記水平面HPに平行な方向が、フェース-バック方向である。フェース-バック方向は、前後方向でもある。フェース側は前側とも称される。バック側は後側とも称される。
【0014】
[上下方向]
前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース-バック方向に対して垂直な方向が、上下方向である。
【0015】
[投影像]
打撃フェースに平行な平面(打撃フェースを含む)に投影された像が、投影像である。この投影の方向は、打撃フェースに対して垂直である。
【0016】
[ブレード-ソール方向]
前記上下方向に延びる直線の前記投影像における方向が、ブレード-ソール方向である。
【0017】
[トウ基準位置]
複数のスコアラインのトウ側の端が一列に並んでいる場合、これらのトウ側の端の位置が、トウ基準位置とされる。ただし、フルスコアライン(フルフェースライン)のヘッドのように、複数のスコアラインのトウ側の端が一列に並んでいない場合、打撃フェースの最もトウ側の点からヒール側に18.5mm隔てた位置が、トウ基準位置とされる。トウ基準位置は、トウ-ヒール方向の位置である。
【0018】
[ヒール基準位置]
各スコアラインは、ヒール側の端を有している。これらのヒール側の端のうち、最もヒール側の端の位置が、ヒール基準位置である。通常は、最長スコアラインのヒール側の端が、ヒール基準位置に一致している。ヒール基準位置は、トウ-ヒール方向の位置である。
【0019】
[スコアライン中心位置]
トウ基準位置とヒール基準位置との間をトウ-ヒール方向に2等分する位置が、スコアライン中心位置である。通常は、最長スコアラインの中心の位置が、スコアライン中心位置に一致している。スコアライン中心位置は、トウ-ヒール方向の位置である。上述の通り、フルスコアラインのヘッドの場合でも、通常のスコアラインの場合に相当する位置に、トウ基準位置が設定される。従って、フルスコアラインのヘッドの場合において、スコアライン中心位置も、通常のスコアラインの場合に相当する位置に設定される。
【0020】
[フェースセンター]
スコアライン中心位置における、打撃フェースの上下方向幅の中心点が、フェースセンターである。なお、フェースセンターは、バック面においても存在する、バック面におけるフェースセンターは、打撃フェース上のフェースセンターをバック面に投影した点である。この投影の方向は、打撃フェースに垂直な方向である。
【0021】
[リーディングエッジ]
フェース-バック方向に沿ったヘッドの断面において、最も前側に位置する点が定まる。この点は、トウ-ヒール方向の各位置において定まる。この点の集合が、リーディングエッジである。リーディングエッジは、ソール面の前縁である。
【0022】
[トレーリングエッジ]
フェース-バック方向に沿ったヘッドの断面において、ソール面の曲率半径を後方に向かって順次測定したとき、当該曲率半径が最初に5mm以下となる点が定まる。この点の集合が、トレーリングエッジと定義される。トレーリングエッジは、ソール面の後縁である。
【0023】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの発明と、ゴルフクラブセットの発明とを含む。図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブセット2を示す図である。ゴルフクラブセット2は、アイアン型ゴルフクラブセットである。ゴルフクラブセット2に含まれるゴルフクラブのロフト角は、46°以上である。ロフト角の上限は、好ましくは70°以下、更には65°以下、更には62°以下である。ゴルフクラブセット2は、ウエッジのセットである。なお、本願においてロフト角とは、リアルロフト角を意味する。リアルロフト角とは、シャフト軸線Zに対するロフト角である。
【0024】
ゴルフクラブセット2は、ロフト角が互いに相違する2本以上のゴルフクラブ4を含む。ゴルフクラブセット2において、クラブ長さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ゴルフクラブセットのクラブ構成及び総数制限(14本)を考慮すると、ゴルフクラブセット2のクラブ本数は、2本以上5本以下、更には2本以上4本以下、更には2本以上3本以下とされうる。
【0025】
本実施形態では、ゴルフクラブセット2は、3本のゴルフクラブ4を含む。この3本は、第1ゴルフクラブ41、第2ゴルフクラブ42及び第3ゴルフクラブ43である。第2ゴルフクラブ42のロフト角は、第1ゴルフクラブ41のロフト角よりも大きい。第3ゴルフクラブ43のロフト角は、第2ゴルフクラブ42のロフト角よりも大きい。ゴルフクラブセット2において、クラブ長さは全て同じである。
【0026】
第1ゴルフクラブ41のロフト角は、46°以上52°未満とされうる。本実施形態では、第1ゴルフクラブ41のロフト角は、50°である。第2ゴルフクラブ42のロフト角は、52°以上56°未満とされうる。本実施形態では、第2ゴルフクラブ42のロフト角は、54°である。第3ゴルフクラブ43のロフト角は、56°以上62°以下とされうる。本実施形態では、第3ゴルフクラブ43のロフト角は、58°である。
【0027】
ゴルフクラブセット2は、ロフト角が46°以上54°未満である少なくとも1本のゴルフクラブAと、ロフト角が54°以上62°以下である少なくとも1本のゴルフクラブBとを含む。本実施形態では、第1ゴルフクラブ41がゴルフクラブAであり、第2ゴルフクラブ42及び第3ゴルフクラブ43がゴルフクラブBである。
【0028】
ゴルフクラブ4のそれぞれは、シャフトsf及びグリップgpを有する。第1ゴルフクラブ41は、第1ヘッドであるヘッド100を有する。第2ゴルフクラブ42は、第2ヘッドであるヘッド200を有する。第3ゴルフクラブ43は、第3ヘッドであるヘッド300を有する。第1ヘッド(ヘッド100)のロフト角は、46°以上52°未満とされうる。本実施形態では、ヘッド100のロフト角は、50°である。第2ヘッド(ヘッド200)のロフト角は、第1ヘッド(ヘッド100)のロフト角よりも大きい。第2ヘッド(ヘッド200)のロフト角は、52°以上56°未満とされうる。本実施形態では、ヘッド200のロフト角は、54°である。第3ヘッド(ヘッド300)のロフト角は、第2ヘッド(ヘッド200)のロフト角よりも大きい。第3ヘッド(ヘッド300)のロフト角は、56°以上62°以下とされうる。本実施形態では、ヘッド300のロフト角は、58°である。
【0029】
図2は、第1実施形態のヘッド100をバック側から見た斜視図である。図2は、陰影図である。図3(a)及び図3(b)はヘッド100の背面図である。図3(a)は陰影図である。図4(a)及び図4(b)はヘッド100を打撃フェースの正面方向から見た外観図である。図4(a)は陰影図である。図5(a)は図3(a)のa-a線に沿った断面図であり、図5(b)は図3(a)のb-b線に沿った断面図であり、図5(c)は図3(a)のc-c線に沿った断面図であり、図5(d)は図3(a)のd-d線に沿った断面図であり、図5(e)は図3(a)のe-e線に沿った断面図である。図5(a)から(d)は上下方向に沿った断面であり、縦断面とも称される。図5(e)は、トウ-ヒール方向に沿った断面であり、横断面とも称される。
【0030】
ヘッド100は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド100は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド100は、キャビティバック型アイアンであってもよい。ヘッド100の番手は限定されない。本実施形態では、ヘッド100のロフト角は、50°である。
【0031】
ヘッド100は、フェースセンターFcを有する打撃フェース102と、バック面104と、ソール面106と、トップブレード108とを有する。またヘッド100は、ホーゼル部110を有する。ホーゼル部110は、シャフト孔110aを有する。
【0032】
打撃フェース102は、単にフェースとも称される。打撃フェース102は、複数のスコアラインgvを有する。スコアラインgvを除き、打撃フェース102は平面である。打撃の際に、ボールは打撃フェース102に当たる。隣接するスコアラインgv同士の距離は、一定である。全てのスコアラインgvは、互いに平行である。スコアラインgvは、最長スコアラインgv1を含む。複数の最長スコアラインgv1が設けられている。スコアラインgvは、バックスピン量の増加及び安定に寄与する。
【0033】
各スコアラインgvは、トウ側の端112を有する。全てのスコアラインgvにおいて、トウ側の端112のトウ-ヒール方向位置は一致している。トウ側の端112のトウ-ヒール方向位置が、トウ基準位置Ptである。
【0034】
なお、スコアラインgvは、打撃フェース102のほぼ全域に亘って設けられてもよい。このようなスコアラインgvの形態は、フルスコアライン又はフルフェースラインとも称される。この場合、各スコアラインgvは、打撃フェース102の外縁近傍まで延在する。このため、トウ側の端112は、打撃フェース102のトウ側の縁の近傍にまで配置される。この構成では、トウ側の端112のトウ-ヒール方向位置は揃わない。このようなフルスコアラインの場合を除くと、スコアラインのトウ側の端112がトウ基準位置Ptとされうる。
【0035】
少なくとも1のスコアラインgvは、最もヒール側の端114を有する。本実施形態では、最もヒール側の端114は、最長スコアラインgv1のヒール側の端である。最もヒール側の端114は、打撃フェース102のヒール側の縁116の近傍に位置する。縁116は、平面である打撃フェース102と、ホーゼル部110に繋がる非平面部118との境界である。最もヒール側の端114のトウ-ヒール方向位置が、ヒール基準位置Phである。複数の端114のトウ-ヒール方向位置は、揃っている。
【0036】
上述の通り、トウ基準位置Ptとヒール基準位置Phとの間を2等分する位置が、スコアライン中心位置Pcである。スコアライン中心位置Pcは、トウ-ヒール方向の位置である。スコアライン中心位置Pcおいて、打撃フェース102は、上下方向幅W1を有する。この上下方向幅W1の中心点が、フェースセンターFcである。
【0037】
図4(b)において両矢印D1で示されているのは、トウ基準位置Ptとヒール基準位置Phとの間の距離である。距離D1は、トウ-ヒール方向に沿って測定される。本実施形態では、距離D1は、最長スコアラインgv1の長さに等しい。スコアライン中心位置Pcは、距離D1を2等分する位置である。
【0038】
ヘッド100は、リーディングエッジLeと、トレーリングエッジTeとを有する。リーディングエッジLeは、ソール面106の前縁である。トレーリングエッジTeは、ソール面106の後縁である。
【0039】
ヘッド100は、フェース厚みTを有する。フェース厚みTは、打撃フェース102に垂直な方向に沿って測定される。フェース厚みTは、打撃フェース102とバック面104との間で画定される。なお、図5(a)から(d)の断面図で示されるように、打撃フェース102の下部では、フェース厚みTは、打撃フェース102とソール面106との間で画定される。本願において、このフェース厚みTは、単に厚みとも称される。本願における「厚い」及び「薄い」の対象は、フェース厚みTである。
【0040】
ヘッド100は、厚肉部120を有する。厚肉部120は、フェース厚みTがそのトウ側及びヒール側よりも大きい部分である。厚肉部120は、上下方向の各位置において、隣接するトウ側及び/又はヒール側よりも厚い。厚肉部120は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部120は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部120は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。厚肉部120は、1箇所だけに設けられている。
【0041】
図5(b)が示すように、縦断面において、厚肉部120の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。縦断面において、厚肉部120の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。厚肉部120の厚みTの変化は限定されず、例えば厚みTが一定である部分が存在していてもよい。
【0042】
図5(e)が示すように、横断面において、厚肉部120の厚みTは一定である。横断面において、厚肉部120の厚みTが変化していてもよく、この変化が連続的であってもよい。
【0043】
厚肉部120のトウ側には、トウ薄肉部122が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部122は厚肉部120よりも薄い。トウ薄肉部122は、厚肉部120のトウ側に隣接している。トウ薄肉部122は、バック面104の外縁104aまで延びている。トウ薄肉部122は、バック面104の外縁104aに到達していなくてもよい。厚肉部120のヒール側には、ヒール薄肉部124が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部124は厚肉部120よりも薄い。ヒール薄肉部124は、厚肉部120のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部124は、バック面104の外縁104aまで延びている。ヒール薄肉部124は、バック面104の外縁104aに到達していなくてもよい。外縁104aは、トップブレード108を含む。
【0044】
厚肉部120の厚みTの最小値は、トウ薄肉部122の厚みTの最大値よりも大きくてもよい。厚肉部120の厚みTの最小値は、ヒール薄肉部124の厚みTの最大値よりも大きくてもよい。
【0045】
厚肉部120の存在は、トウ-ヒール方向に沿った断面(横断面)において確認される。図5(e)は、横断面の一例である。この横断面において、そのトウ側及びヒール側よりも厚い部分(第1部分F1とする)は、厚肉部120である。この第1部分F1は、フェースセンターFcを含む。第1部分F1は、厚肉部120の大部分を占める。更に、厚肉部120は、この第1部分F1から連続して延び、横断面においてそのトウ側及びヒール側のいずれか一方よりも厚い部分(第2部分F2)を含む。本実施形態では、第2部分F2は、厚肉部120の上端部のトウ側に存在する。横断面は、上下方向の各位置で設定されうる。横断面毎に、厚肉部120の存在が確認される。トウ薄肉部122及びヒール薄肉部124の存在も、横断面毎に確認されうる。
【0046】
図5(a)から(d)が示すように、バック面104は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ソール側領域Rsは、ソール面106に近い部分であり、フェース厚みTが大きい。ブレード側領域Rtは、ソール側領域Rsよりも上側の部分である。ソール側領域Rsの厚みTが大きいのは、ソールの存在に起因する。図5(a)から(d)が示すように、縦断面において、フェース厚みTは、トレーリングエッジTe又はその近傍で最大である。縦断面において、バック面104の曲率半径を上側に向かって順次測定したとき、当該曲率半径が極小となる最初の点B1が決定されうる。この最初の極小点B1が、ブレード側領域Rtとソール側領域Rsとの境界点とされうる。
【0047】
厚肉部120は、ブレード側領域Rtに属する第1厚肉部120aと、ソール側領域Rsに属する第2厚肉部120bとを有する。厚肉部120は、第1厚肉部120aのみであってもよい。第2厚肉部120bは無くてもよい。
【0048】
バック面104は、上側厚肉部130を有する。上側厚肉部130は、厚肉部120のブレード側に設けられている。上側厚肉部130のフェース厚みTは、厚肉部120の上端のフェース厚みTよりも大きい。上側厚肉部130のフェース厚みTは、厚肉部120の上端のフェース厚みTの最大値よりも大きい。上側厚肉部130の存在は、縦断面によって確認されうる。各縦断面において、上側厚肉部130のフェース厚みTは、厚肉部120の上端のフェース厚みTよりも大きい。上側厚肉部130は、1箇所のみに設けられている。上側厚肉部130は、2箇所以上に設けられていてもよい。上側厚肉部130は、フェースセンターFcよりもトウ側に位置する。
【0049】
図6(a)及び図6(b)はヘッド200の背面図である。図6(a)は陰影図である。図7(a)及び図7(b)はヘッド200を打撃フェースの正面方向から見た外観図である。図7(a)は陰影図である。図8(a)は図6(a)のa-a線に沿った断面図であり、図8(b)は図6(a)のb-b線に沿った断面図であり、図8(c)は図6(a)のc-c線に沿った断面図であり、図8(d)は図6(a)のd-d線に沿った断面図であり、図8(e)は図6(a)のe-e線に沿った断面図である。
【0050】
ヘッド200は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド200は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド200は、キャビティバック型アイアンであってもよい。ヘッド200のロフト角は、ヘッド100のロフト角よりも大きい。ヘッド200のロフト角は、50°よりも大きい。本実施形態では、ヘッド200のロフト角は、54°である。
【0051】
ヘッド200は、フェースセンターFcを有する打撃フェース202と、バック面204と、ソール面206と、トップブレード208とを有する。またヘッド200は、ホーゼル部210を有する。ホーゼル部210は、シャフト孔210aを有する。
【0052】
打撃フェース202は、複数のスコアラインgvを有する。スコアラインgvは、最長スコアラインgv1を含む。
【0053】
ヘッド200は、リーディングエッジLeと、トレーリングエッジTeとを有する。ヘッド200は、フェース厚みTを有する。
【0054】
ヘッド200は、厚肉部220を有する。厚肉部220は、フェース厚みTがそのトウ側及びヒール側よりも大きい部分である。厚肉部220は、上下方向の各位置において、隣接するトウ側及びヒール側よりも厚い。厚肉部220は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部220は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部220は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。
【0055】
図8(b)が示すように、厚肉部220の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。厚肉部220の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。図8(e)が示すように、横断面において、厚肉部220の厚みTは一定である。
【0056】
厚肉部220のトウ側には、トウ薄肉部222が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部222は厚肉部220よりも薄い。トウ薄肉部222は、厚肉部220のトウ側に隣接している。トウ薄肉部222は、バック面204の外縁204aまで延びている。厚肉部220のヒール側には、ヒール薄肉部224が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部224は厚肉部220よりも薄い。ヒール薄肉部224は、厚肉部220のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部224は、バック面204の外縁204aまで延びている。
【0057】
図8(a)から(d)が示すように、バック面204は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ソール側領域Rsは、ソール面206に近い部分であり、フェース厚みTが大きい。ブレード側領域Rtは、ソール側領域Rsよりも上側の部分である。図8(a)から(d)が示すように、縦断面において、フェース厚みTは、トレーリングエッジTe又はその近傍で最大である。点B1は、ブレード側領域Rtとソール側領域Rsとの境界点である。
【0058】
厚肉部220は、ブレード側領域Rtに属する第1厚肉部220aと、ソール側領域Rsに属する第2厚肉部220bとを有する。バック面204は、上側厚肉部230を有する。上側厚肉部230は、厚肉部220のブレード側に設けられている。上側厚肉部230のフェース厚みTは、厚肉部220の上端のフェース厚みTよりも大きい。上側厚肉部230のフェース厚みTは、厚肉部220の上端のフェース厚みTの最大値よりも大きい。
【0059】
図9(a)及び図9(b)はヘッド300の背面図である。図9(a)は陰影図である。図10(a)及び図10(b)はヘッド300を打撃フェースの正面方向から見た外観図である。図10(a)は陰影図である。図11(a)は図9(a)のa-a線に沿った断面図であり、図11(b)は図9(a)のb-b線に沿った断面図であり、図11(c)は図9(a)のc-c線に沿った断面図であり、図11(d)は図9(a)のd-d線に沿った断面図であり、図11(e)は図9(a)のe-e線に沿った断面図である。
【0060】
ヘッド300は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド300は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド300は、キャビティバック型アイアンであってもよい。ヘッド300のロフト角は、ヘッド200のロフト角よりも大きい。ヘッド300のロフト角は、54°よりも大きい。本実施形態では、ヘッド300のロフト角は、58°である。
【0061】
ヘッド300は、フェースセンターFcを有する打撃フェース302と、バック面304と、ソール面306と、トップブレード308とを有する。またヘッド300は、ホーゼル部310を有する。ホーゼル部310は、シャフト孔310aを有する。
【0062】
打撃フェース302は、複数のスコアラインgvを有する。スコアラインgvは、最長スコアラインgv1を含む。
【0063】
ヘッド300は、リーディングエッジLeと、トレーリングエッジTeとを有する。ヘッド300は、フェース厚みTを有する。
【0064】
ヘッド300は、厚肉部320を有する。厚肉部320は、フェース厚みTがそのトウ側及びヒール側よりも大きい部分である。厚肉部320は、上下方向の各位置において、隣接するトウ側及びヒール側よりも厚い。厚肉部320は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部320は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部320は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。
【0065】
図11(b)が示すように、厚肉部320の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。厚肉部320の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。図11(e)が示すように、横断面において、厚肉部320の厚みTは一定である。
【0066】
厚肉部320のトウ側には、トウ薄肉部322が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部322は厚肉部320よりも薄い。トウ薄肉部322は、厚肉部320のトウ側に隣接している。トウ薄肉部322は、バック面304の外縁304aまで延びている。厚肉部320のヒール側には、ヒール薄肉部324が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部324は厚肉部320よりも薄い。ヒール薄肉部324は、厚肉部320のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部324は、バック面304の外縁304aまで延びている。
【0067】
図11(a)から(d)が示すように、バック面304は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ソール側領域Rsは、ソール面306に近い部分であり、フェース厚みTが大きい。ブレード側領域Rtは、ソール側領域Rsよりも上側の部分である。図11(a)から(d)が示すように、縦断面において、フェース厚みTは、トレーリングエッジTe又はその近傍で最大である。点B1は、ブレード側領域Rtとソール側領域Rsとの境界点である。
【0068】
厚肉部320は、ブレード側領域Rtに属する第1厚肉部320aと、ソール側領域Rsに属する第2厚肉部320bとを有する。バック面304は、上側厚肉部330を有する。上側厚肉部330は、厚肉部320の上側に設けられている。上側厚肉部330のフェース厚みTは、厚肉部320の上端のフェース厚みTよりも大きい。上側厚肉部330のフェース厚みTは、厚肉部320の上端のフェース厚みTの最大値よりも大きい。
【0069】
第1実施形態のゴルフクラブセット2に係るヘッド100、ヘッド200及びヘッド300は、ロフト角を除き、同一の構造を有する。ヘッド100、ヘッド200及びヘッド300は、第1実施形態に係るヘッドである。
【0070】
図12(a)及び図12(b)は、第2実施形態のヘッド400の背面図である。図12(a)は陰影図である。ヘッド400は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド400は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド400は、フェースセンターFcを有する打撃フェース(図示されず)と、バック面404と、ソール面406と、トップブレード408とを有する。またヘッド400は、ホーゼル部410を有する。打撃フェースの構成は、ヘッド100、200、300と同じである。ヘッド400のロフト角は、46°以上である。
【0071】
ヘッド400は、厚肉部420を有する。厚肉部420は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部420は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部420は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。厚肉部420の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。厚肉部420の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。
【0072】
厚肉部420のトウ側には、トウ薄肉部422が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部422は、厚肉部420よりも薄い。トウ薄肉部422は、厚肉部420のトウ側に隣接している。トウ薄肉部422は、バック面404の外縁404aまで延びている。
【0073】
厚肉部420のヒール側には、ヒール薄肉部424が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部424は厚肉部420よりも薄い。ヒール薄肉部424は、厚肉部420のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部424は、バック面404の外縁404aまで延びている。ヒール薄肉部424は、第1薄肉部424aと、第1薄肉部424aよりも薄い第2薄肉部424bとを有する。第1薄肉部424aは、厚肉部420のヒール側に隣接している。第2薄肉部424bは、第1薄肉部424aのヒール側に位置する。第2薄肉部424bは、バック面404の外縁404aまで延びている。
【0074】
前述の通り、ヘッド100、200、300は、それぞれ、上側厚肉部130、230、330を有する。これに対して、ヘッド400は、上側厚肉部を有さない。すなわち、ヘッド400は、厚肉部420のブレード側に、厚肉部420の上端よりも厚い部分を有さない。
【0075】
バック面404は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ヘッド400において、厚肉部420は、ソール側領域Rsに属する部分を有さない。厚肉部420の全体が、ブレード側領域Rtに属している。
【0076】
図13(a)及び図13(b)は、第3実施形態のヘッド500の背面図である。図13(a)は陰影図である。ヘッド500は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド500は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド500は、フェースセンターFcを有する打撃フェース(図示されず)と、バック面504と、ソール面506と、トップブレード508とを有する。またヘッド500は、ホーゼル部510を有する。打撃フェースの構成は、ヘッド100、200、300と同じである。ヘッド500のロフト角は、46°以上である。
【0077】
ヘッド500は、厚肉部520を有する。厚肉部520は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部520は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部520は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。厚肉部520の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。厚肉部520の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。
【0078】
厚肉部520のトウ側には、トウ薄肉部522が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部522は、厚肉部520よりも薄い。トウ薄肉部522は、厚肉部520のトウ側に隣接している。トウ薄肉部522は、バック面504の外縁504aまで延びている。
【0079】
厚肉部520のヒール側には、ヒール薄肉部524が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部524は厚肉部520よりも薄い。ヒール薄肉部524は、厚肉部520のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部524は、バック面504の外縁504aまで延びている。
【0080】
ヘッド400と同じく、ヘッド500は、上側厚肉部を有さない。すなわち、ヘッド500は、厚肉部520のブレード側に、厚肉部520の上端よりも厚い部分を有さない。
【0081】
バック面504は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ヘッド400と同じく、ヘッド500において、厚肉部520は、ソール側領域Rsに属する部分を有さない。厚肉部520の全体が、ブレード側領域Rtに属している。
【0082】
図14(a)及び図14(b)は、第4実施形態のヘッド600の背面図である。図14(a)は陰影図である。ヘッド600は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド600は、マッスルバック型アイアンである。ヘッド600は、フェースセンターFcを有する打撃フェース(図示されず)と、バック面604と、ソール面606と、トップブレード608とを有する。またヘッド600は、ホーゼル部610を有する。打撃フェースの構成は、ヘッド100、200、300と同じである。ヘッド600のロフト角は、46°以上である。
【0083】
ヘッド600は、厚肉部620を有する。厚肉部620は、フェースセンターFcを含む領域に配置されている。厚肉部620は、フェースセンターFcの位置から連続して延在している。厚肉部620は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。厚肉部620の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。厚肉部620の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて連続的に小さくなっている。
【0084】
厚肉部620のトウ側には、トウ薄肉部622が設けられている。各横断面において、トウ薄肉部622は、厚肉部620よりも薄い。トウ薄肉部622は、厚肉部620のトウ側に隣接している。トウ薄肉部622は、バック面604の外縁604aまで延びている。
【0085】
厚肉部620のヒール側には、ヒール薄肉部624が設けられている。各横断面において、ヒール薄肉部624は厚肉部620よりも薄い。ヒール薄肉部624は、厚肉部620のヒール側に隣接している。ヒール薄肉部624は、バック面604の外縁604aまで延びている。
【0086】
ヘッド100、200、300と同じく、ヘッド600は、上側厚肉部630を有する。すなわち、ヘッド600は、厚肉部620のブレード側に、厚肉部620の上端よりも厚い部分630を有する。
【0087】
バック面604は、ブレード側領域Rtと、ソール側領域Rsとを備える。ヘッド100、200、300と同じく、ヘッド600において、厚肉部620は、ソール側領域Rsに属する部分620bを有する。すなわち、厚肉部620は、ブレード側領域Rtに属する第1厚肉部620aと、ソール側領域Rsに属する第2厚肉部620bとを有する。
【0088】
ヘッド100、200、300、400、500では、厚肉部はトレーリングエッジTeに達していない。これに対して、ヘッド600では、厚肉部620は、トレーリングエッジTeまで延びている。
【0089】
以上に説明されたヘッド100、200、300、400、500及び600は、以下の効果を奏する。
【0090】
厚肉部は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。これにより、バック面の厚肉部の延在方向が、フェースを開いた際のヘッド軌道に近くなり、打点が上下方向にばらついたとしても、厚肉部で打撃することが可能となる。そのため、フェースを開いたショットにおいて打感が向上する。
【0091】
バンカーショットやアプローチショットなど、フェースを開くショットでは、微妙な感覚が要求される。また、フェースを開くショットでは、ボールへのコンタクトにおいて、より高い精度が要求される。打感は、スイングやショットの結果に影響を与えうる。打感が向上することで、例えば、微妙な距離感が良好となりうる。
【0092】
トウ薄肉部及びヒール薄肉部を設けることで、厚肉部の厚みTを大きくすることができ、打感を向上させることができる。トウ薄肉部及びヒール薄肉部を厚肉部の両側に配置することで、打点となる確率の高い領域に厚肉部を設けることができる。
【0093】
厚肉部の厚みTは、ブレード側(上側)に向かうにつれて小さくなっている。打撃確率がより高いソール側をより厚くすることで、打感を向上させることができる。また、この構成により、ヘッド重心を低くすることができる。それにより、打撃確率が最も高い位置にスイートスポットを近づけることができ、打感を更に高めることができる。
【0094】
厚肉部は、ブレード側領域Rtに属する第1厚肉部を有する。ブレード側領域では、フェース厚みTが薄くなりやすい。一方、フェースを開いた際には、ブレード側領域Rtが打点となりやすい。ブレード側領域Rtに厚肉部を設けることで、フェースを開いたショットにおいて打感が向上する。
【0095】
ヘッド100、200、300及び600では、上側厚肉部が設けられている。厚肉部に加えて上側厚肉部を設けることで、上下MIを大きくすることができる。上下MIが大きくされることで、上下方向に打点がばらついた際の、打ち出し角のばらつきを抑制することができる。フェースを開いてショットをする際には打点が上下にばらつきやすいため、この効果は、フェースを開いて使用するヘッドにおいて特に有効である。なお、上下MIとは、ヘッドの慣性モーメントであり、ヘッド重心を通りトウ-ヒール方向に平行な回転軸周りの慣性モーメントである。
【0096】
図15は、図3(b)と同じく、ヘッド100の背面図である。図15では、厚肉部120がクロスハッチングで示されている。なお、図15及び後述の図16、17で説明される構成は、ヘッド200及びヘッド300も備えている。
【0097】
厚肉部120は、面積Sを有する。この面積Sは、クロスハッチングで示されている厚肉部領域S1の面積である。面積Sは、投影像において測定される。
【0098】
厚肉部120は、トウ側の輪郭線であるトウ輪郭線ktと、ヒール側の輪郭線であるヒール輪郭線khとを有する。トウ側の輪郭線ktは、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。ヒール側の輪郭線khは、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されている。
【0099】
トウ輪郭線ktは、方向線Ltを規定する。トウ輪郭線ktが曲がっている部分を有する場合、方向線Ltは、トウ輪郭線ktの中間点において画定されうる。この中間点は、トウ輪郭線ktのブレード-ソール方向幅を2等分する点である。この中間点においてトウ輪郭線ktが曲がっている場合、方向線Ltは、当該中間点の接線とされうる。ヒール輪郭線khは、方向線Lhを規定する。ヒール輪郭線khが曲がっている部分を有する場合、方向線Lhは、ヒール輪郭線khの中間点において画定されうる。この中間点は、ヒール輪郭線khのブレード-ソール方向幅を2等分する点である。方向線Lt及び方向線Lhは、投影像において測定される。この中間点においてヒール輪郭線khが曲がっている場合、方向線Lhは、当該中間点の接線とされうる。方向線Ltは、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びている。方向線Lhは、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びている。
【0100】
図15において両矢印θtで示されるのは、トウ-ヒール方向に対する方向線Ltの角度である。図15において両矢印θhで示されるのは、トウ-ヒール方向に対する方向線Lhの角度である。角度θt及びθhは、投影像において測定される。角度θtは角度θhよりも大きい。θt>θhとの構成は、フェースを開いた際に当たりやすい部分に選択的に厚肉部を設けるのに寄与している。
【0101】
厚肉部120は、幅方向中心線LC1を有する。厚肉部120は、横断面における中心点C1を有する(図5(e)参照)。横断面における中心点C1は、各横断面において決定されうる。幅方向中心線LC1は、中心点C1の集合である。幅方向中心線LC1は、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びている。
【0102】
図15において両矢印θcで示されるのは、トウ-ヒール方向に対する幅方向中心線LC1の角度である。角度θcは、前記投影像において測定される。角度θcは角度θhよりも大きい。角度θcは角度θtよりも小さい。なお、幅方向中心線LC1は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。幅方向中心線LC1が曲線である場合、当該曲線上の各点における接線に基づき、角度θcが決定されうる。
【0103】
フェースを開いた際のヘッド軌道への適合性の観点から、角度θtは、90°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、70°以下がより好ましい。打点となりにくい領域には厚肉部を形成せずにトウ薄肉部を設けることで、厚肉部への重量配分を増やし、厚肉部の厚みTを大きくすることができる。この観点から、角度θtは、45°以上が好ましく、50°以上がより好ましく、55°以上がより好ましい。
【0104】
フェースを開いた際のヘッド軌道への適合性の観点から、角度θcは、85°以下が好ましく、75°以下がより好ましく、65°以下がより好ましい。フェースを開いた際のヘッド軌道への適合性の観点から、角度θcは、40°以上が好ましく、45°以上がより好ましく、50°以上がより好ましい。
【0105】
フェースを開いた際のヘッド軌道への適合性の観点、及び、打点となりにくい領域には厚肉部を形成せずにヒール薄肉部を設ける観点から、角度θhは、80°以下が好ましく、70°以下がより好ましく、60°以下がより好ましい。フェースを開いた際に打点となる打撃フェースの上側領域を厚肉部とする観点から、角度θtは、35°以上が好ましく、40°以上がより好ましく、45°以上がより好ましい。
【0106】
図16は、図4(b)に、図15の投影像を重ねた図である。図16は、打撃フェース102に投影された厚肉部120の投影像を示している。破線のクロスハッチングで示されるのが、厚肉部120の投影像である。投影像の領域が、厚肉部領域とも称される。
【0107】
厚肉部領域S1(厚肉部120)は、スコアライン中心位置Pcに位置する部分を有する。厚肉部領域S1(厚肉部120)は、トウ基準位置Ptに位置する部分を有する。更に、厚肉部領域S1は、トウ基準位置Ptよりもトウ側に位置するトウ外側部分S10を有する。トウ外側部分S10は、フェースセンターFcに対してブレード側に位置している。
【0108】
厚肉部領域S1(厚肉部120)は、ヒール基準位置Phに位置する部分を有さない。厚肉部領域S1(厚肉部120)は、ヒール基準位置Phに位置する部分を有していてもよい。
【0109】
厚肉部領域S1は、フェースセンターFcを通りトウ-ヒール方向に延びる直線L1により、2つの部分に区分けされる。この2つの部分は、直線L1よりもブレード側である上部分S12と、直線L1よりもソール側である下部分S14である。すなわち、上部分S12は、フェースセンターFcに対してブレード側の部分である。また、下部分S14は、フェースセンターFcに対してソール側の部分である。上部分S12に属する厚肉部は、その全体が第1厚肉部である。上部分S12の面積は、下部分S14の面積よりも大きい。フェースを開いた際に当たりやすい部分を選択的に厚肉部とすることで、当たりにくい領域に配置される厚肉部が抑制されうる。このため、当たりやすい領域の厚肉部を厚くすることができ、フェースを開いたショットにおいて打感を向上させることができる。
【0110】
厚肉部領域S1は、フェースセンターFcを通りブレード-ソール方向に延びる直線L2により、2つの部分に区分けされる。この2つの部分は、直線L2よりもトウ側であるトウ部分S16と、直線L2よりもヒール側であるヒール部分S18である。トウ部分S16は、フェースセンターFcに対してトウ側の部分である。ヒール部分S18は、フェースセンターFcに対してヒール側の部分である。トウ部分S16の面積は、ヒール部分S18の面積よりも大きい。フェースを開いた際に当たりやすい領域を選択的に厚肉部とすることで、当たりにくい領域に配置される厚肉部が抑制されうる。このため、当たりやすい領域の厚肉部を厚くすることができ、フェースを開いたショットにおいて打感を向上させることができる。
【0111】
直線L2と幅方向中心線LC1との交点P1は、フェースセンターFcに対してソール側に位置する。厚肉部領域S1は、フェースセンターFcに対してトウ側且つブレード側に延びている。
【0112】
図16における点P2は、ヒール基準位置Phにおける打撃フェース102の最上点である。厚肉部120は、最上点P2よりもブレード側にまで延びている。フェースを開いた際に当たりやすい領域に厚肉部が延在することで、打感が向上する。
【0113】
図17は、図16と同じ図である。符号の混雑を避けて見やすくする観点から、図16に加えて図17を記載する。
【0114】
図17が示すように、厚肉部領域S1は、直線L1と直線L2とによって、4つの部分に区分けされうる。直線L1よりもブレード側で且つ直線L2よりもヒール側の部分が、ヒール上部分S21とされる。ヒール上部分S21は、フェースセンターFcに対してブレード側且つヒール側の部分である。直線L1よりもブレード側で且つ直線L2よりもトウ側の部分が、トウ上部分S22とされる。トウ上部分S22は、フェースセンターFcに対してブレード側且つトウ側の部分である。直線L1よりもソール側で且つ直線L2よりもトウ側の部分が、トウ下部分S23とされる。トウ下部分S23は、フェースセンターFcに対してトウ側且つソール側の部分である。直線L1よりもソール側で且つ直線L2よりもヒール側の部分が、ヒール下部分S24とされる。ヒール下部分S24は、フェースセンターFcに対してヒール側且つソール側の部分である。トウ上部分S22に属する厚肉部は、その全体が第1厚肉部である。
【0115】
厚肉部領域S1は、ヒール上部分S21、トウ上部分S22、トウ下部分S23及びヒール下部分S24を有する。トウ上部分S22の面積は、ヒール上部分S21の面積よりも大きい。トウ上部分S22の面積は、トウ下部分S23の面積よりも大きい。トウ上部分S22の面積は、ヒール下部分S24の面積よりも大きい。トウ上部分S22の面積は、4つの領域の面積のうちで最大である。トウ上部分S22の面積は、ヒール上部分S21の面積に対して、2倍以上、更には3倍以上、更には4倍以上とすることができ、10倍以下、更には9倍以下、更には8倍以下とすることができる。ヒール上部分S21の面積は、トウ下部分S23の面積よりも小さい。ヒール上部分S21の面積は、ヒール下部分S24の面積よりも小さい。フェースを開いた際に当たりやすい部分ほど厚肉部の占める割合を大きくすることで、打点となりやすい部分を厚肉部とすることができる。また、当たりにくい部分の厚肉部を抑制することで、厚肉部の厚みTを大きくすることができる。このため、フェースを開いたショットにおいて打感が向上する。
【0116】
図7(b)が示すように、本願では、スコアライン領域Sgが定義される。図7(b)では、スコアライン領域Sgが、一点鎖線ハッチングで示されている。スコアライン領域Sgは、スコアラインgvが設けられている領域である。より詳細には、スコアライン領域Sgは、最も上側のスコアラインgv2と、最も下側のスコアラインgv3と、トウ基準位置Ptに沿った直線と、ヒール基準位置Phに沿った直線と、連結線Lgとで囲まれた領域である。スコアラインgvのヒール端のうち、ヒール基準位置Phよりもトウ側に位置する複数のヒール端について、隣接するヒール端同士を結ぶ線分が描かれうる。1又は2以上の前記線分により形成される線が、連結線Lgである。図7(b)において、連結線Lgは破線で示される。
【0117】
スコアライン領域Sgは、トウ上領域Sg1を含む。スコアライン領域Sgのうち、フェースセンターFcに対して上側で且つトウ側の領域が、トウ上領域Sg1である。図7(b)において、トウ上領域Sg1は2点鎖線ハッチングで示されている。
【0118】
図17に戻り、トウ上部分S22は、トウ上領域Sg1をカバーしている。トウ上領域Sg1において、トウ上部分S22でカバーされている部分の比率は、50%以上、更には60%以上、更には70%以上、更には80%以上とされうる。この比率は、100%であってもよい。フェースを開いた際に当たりやすい部分を厚肉部とすることで、打感を向上させることができる。
【0119】
厚肉部領域S1は、スコアライン領域Sg以外にはほとんど設けられていない。ブレード側領域Rtにおいて、スコアライン領域Sgの外側の大部分は、トウ薄肉部及びヒール薄肉部で占められている。厚肉部領域S1のうち、スコアライン領域Sgに属する部分の割合は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましい。この割合は、100%であってもよい。この割合を増やすことで、フェースを開いた際に当たりやすい部分を選択的に厚肉部とすることができ、フェースを開いた際に当たりにくい領域が厚肉部とされることを抑制することができる。
【0120】
上側厚肉部130は、スコアライン領域Sgの上側に位置する部分を含む。上側厚肉部130は、最も上側のスコアラインgv2の上側に位置する部分を含む。上側厚肉部130は、トウ基準位置Ptよりもトウ側の部分を含む。この上側厚肉部130の配置は、ヘッドの上下MIを効果的に高めうる。
【0121】
図17において両矢印W2で示されているのは、トウ基準位置Ptにおける打撃フェース102の幅である。この幅W2は、ブレード-ソール方向に沿って測定される。図17において両矢印W3で示されているのは、厚肉部120のトウ輪郭線ktの幅である。この幅W3は、ブレード-ソール方向に沿って測定される。図17において両矢印W4で示されるのは、厚肉部120の全体幅である。全体幅W4は、トウ-ヒール方向に沿って測定される。図17において両矢印W5で示されるのは、厚肉部120の上端の幅である。幅W5は、トウ-ヒール方向に沿って測定される。図17において両矢印W6で示されるのは、厚肉部120の下端の幅である。幅W6は、トウ-ヒール方向に沿って測定される。図17において両矢印W7で示されるのは、厚肉部120の全体高さである。全体高さW7は、ブレード-ソール方向に沿って測定される。
【0122】
フェースを開いた際に当たりやすい部分を厚肉部とする観点から、幅W3は、幅W2の40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がより好ましい。厚肉部が広すぎると、厚肉部の厚みTが制約される。この観点から、幅W3は、幅W2の70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がより好ましい。
【0123】
フェースを開いた際に当たりやすい部分を厚肉部とする観点から、幅W5は、幅W6の40%以上が好ましく、42%以上がより好ましく、45%以上がより好ましい。厚肉部が広すぎると、厚肉部の厚みTが制約される。この観点から、幅W5は、幅W6の70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がより好ましい。
【0124】
上述の通り、距離D1は、トウ基準位置Ptとヒール基準位置Phとの間の距離である(図4(b))。フェースを開いた際に当たりやすい部分を厚肉部とする観点から、幅W6は、距離D1の70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がより好ましい。厚肉部が広すぎると、厚肉部の厚みTが制約される。この観点から、幅W6は、距離D1の110%以下が好ましく、105%以下がより好ましく、100%以下がより好ましい。
【0125】
幅W6は、幅W5よりも大きい。全体幅W4は、幅W6よりも大きい。高さW7は、幅W5よりも大きい。これらの構成は、フェースを開いた際に当たりやすい部分に選択的に厚肉部を設けるのに寄与している。
【0126】
打感を高める観点から、厚肉部に位置するフェースセンターFcでのフェース厚みTは、6.0mm以上が好ましく、6.1mm以上がより好ましく、6.2mm以上がより好ましい。ヘッド重量の制約の観点から、フェースセンターFcでのフェース厚みTは、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0127】
余剰重量を確保して厚肉部を厚くする観点から、トウ薄肉部の厚みTは、5.7mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.3mm以下がより好ましい。強度の観点から、トウ薄肉部の厚みTは、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上がより好ましい。
【0128】
余剰重量を確保して厚肉部を厚くする観点から、ヒール薄肉部の厚みTは、5.7mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.3mm以下がより好ましい。強度の観点から、ヒール薄肉部の厚みTは、3.0mm以上が好ましく、3.5mm以上がより好ましく、4.0mm以上がより好ましい。
【0129】
上下MIを高める観点から、上側厚肉部の厚みTの最大値は、6.0mm以上が好ましく、6.1mm以上がより好ましく、6.2mm以上がより好ましい。厚肉部への重量配分の観点から、上側厚肉部の厚みTの最大値は、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0130】
ヘッドの製法は限定されない。この製法として、鍛造及び鋳造が例示される。鋳造は、ロストワックス精密鋳造とされうる。打感の観点から、鍛造が好ましい。鍛造では、金属を叩くことで内部の空隙が潰れ、結晶が微細化され、組織が緻密となる。鍛造で製造されることで、独特の金属組織が形成される。鍛造で製造されたヘッドは、打感に優れる。よって、厚肉部との相乗効果で、打感が一層向上する。
【0131】
ヘッドの材質は限定されない。ヘッドは、金属であってもよいし、非金属であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。打感の観点から、金属が好ましい。この金属の例として、鉄、ステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン及びチタン合金が挙げられる。鉄の例として、軟鉄(炭素含有率が0.3wt%未満の低炭素鋼)が挙げられる。打感の観点からは、軟鉄が好ましい。打感の観点からは、材質が軟鉄とされ鍛造で製造されるのがより好ましい。ステンレス鋼の場合には、鋳造が好ましい。
【0132】
上述した第1から第4実施形態は、中実のヘッドである。ヘッドは、中空部を有していてもよい。この場合、中空部は、ソール側領域Rsに設けられるのが好ましい。ブレード側領域Rtに属する厚肉部には、中空部を設けないのが好ましい。例えば、ソール側領域Rsであって且つフェースセンターFcに対してトウ側の領域に、中空部が設けられうる。中空部により得られた余剰重量を厚肉部に振り向けることで、厚肉部を厚くすることができる。中空部により得られた余剰重量をソールに振り向けることで、ソール幅を拡げることができる。
【0133】
ゴルフクラブセット2において、厚肉部の面積Sは変化している。ロフト角が大きくなるにつれて、厚肉部の面積Sが大きくなっている。すなわち、ヘッド200の面積Sは、ヘッド100の面積Sよりも大きい。また、ヘッド300の面積Sは、ヘッド200の面積Sよりも大きい。ロフト角が大きくなるにつれて、フェースを開いて打撃する機会が増加し、またスイング軌道はダウンブローとなりやすい。このため、ロフト角が大きいほど、打撃フェースの上側且つトウ側で打撃する機会が増え、また上下方向における打点のバラツキが増加しやすい。ロフト角が大きくなるほど面積Sを増加させることで、打点のバラツキに対応することができ、打感が向上する。逆に、ロフト角が小さくなるにつれて、フェースを開いて打撃する機会が減少し、スイング軌道はレベルブローとなりやすい。このため、ロフト角が小さいほど、打撃フェースの上側且つトウ側で打撃する機会が減り、また上下方向における打点のバラツキが減少しやすい。このため、ロフト角が小さくなるほど面積Sを減少させ、それによって生じた余剰重量で厚肉部を厚くすることができる。あるいは、当該余剰重量で、より適切な重心位置に設定することができる。このように、面積Sを変化させることで、各ヘッドのロフト角に応じて打感を最適化することが可能となる。
【0134】
ゴルフクラブセット2では、厚肉部の全体高さW7が変化している。ロフト角が大きくなるにつれて、厚肉部の全体高さW7が大きくなっている。すなわち、ヘッド200における高さW7は、ヘッド100における高さW7よりも大きい。また、ヘッド300の高さW7は、ヘッド200の高さW7よりも大きい。ロフト角が大きくなるにつれて、フェースを開いて打撃する機会が増加し、またスイング軌道はダウンブローとなりやすい。このため、ロフト角が大きいほど、打撃フェースの上側且つトウ側で打撃する機会が増え、また上下方向における打点のバラツキが増加しやすい。ロフト角が大きくなるほど高さW7を増加させることで、打点のバラツキに対応することができ、打感が向上する。逆に、ロフト角が小さくなるにつれて、フェースを開いて打撃する機会が減少し、スイング軌道はレベルブローとなりやすい。このため、ロフト角が小さいほど、打撃フェースの上側且つトウ側で打撃する機会が減り、また上下方向における打点のバラツキが減少しやすい。このため、ロフト角が小さくなるほど高さW7を減少させ、それによって生じた余剰重量で厚肉部を厚くすることができる。あるいは、当該余剰重量で、より適切な重心位置に設定することができる。このように、厚肉部の高さW7を変化させることで、各ヘッドのロフト角に応じて打感を最適化することが可能となる。
【0135】
本発明のゴルフクラブセットでは、当該セットを構成する複数のゴルフクラブが必ずしも同時に販売されなくてもよい。同じシリーズの中で異なるロフト角を有する複数のゴルフクラブは、各クラブが個別に販売されたとしても、本発明のゴルフクラブセットに該当する。ブランド名、品名、製品カタログ等により、同じシリーズか否かを判別することが可能である。
【0136】
以下の付記は、本願に含まれる発明の一部である。
[付記1]
複数のスコアライン及びフェースセンターを有する打撃フェースと、バック面と、ソール面と、トップブレードと、前記打撃フェースと前記バック面との間で画定されるフェース厚みとを備えており、
前記バック面の、スコアライン中心位置を含む領域に、前記フェース厚みがそのトウ側及びヒール側よりも大きい厚肉部が形成されており、
前記厚肉部が、ソール側からブレード側に向かうにつれてトウ側に延びるように形成されており、
ロフト角が46°以上であるアイアン型ゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記厚肉部の前記フェース厚みが、ブレード側に向かうにつれて小さくなっている付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記厚肉部が、前記フェースセンターを含む領域に配置されている付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記厚肉部のブレード側に、前記厚肉部の上端よりも厚い上側厚肉部が更に設けられている付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してヒール側且つブレード側であるヒール上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つブレード側であるトウ上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つソール側であるトウ下部分と、前記フェースセンターに対してヒール側且つソール側であるヒール下部分とに区分けされるとき、
前記トウ上部分の面積が、前記ヒール上部分の面積よりも大きく、前記トウ下部分の面積よりも大きく、且つ、前記ヒール下部分の面積よりも大きい付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してヒール側且つブレード側であるヒール上部分と、前記フェースセンターに対してトウ側且つブレード側であるトウ上部分とを有しており、
前記トウ上部分の面積が、前記ヒール上部分の面積の2倍以上である付記1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記7]
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してブレード側である上部分と、前記フェースセンターに対してソール側である下部分とに区分けされるとき、
前記上部分の面積が、前記下部分の面積よりも大きい付記1から6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記8]
前記厚肉部を前記打撃フェースに投影した厚肉部領域が、前記フェースセンターに対してトウ側であるトウ部分と、前記フェースセンターに対してヒール側であるヒール部分とに区分けされるとき、
前記トウ部分の面積が、前記ヒール部分の面積よりも大きい付記1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記9]
鍛造で製造されている付記1から8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記10]
付記1から9のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドと、シャフトと、グリップとを有するゴルフクラブ。
[付記11]
付記10に記載のゴルフクラブを2本以上含むゴルフクラブセットであって、
ロフト角が大きくなるにつれて、前記厚肉部の面積が大きいゴルフクラブセット。
【符号の説明】
【0137】
2・・・ゴルフクラブセット
4・・・ゴルフクラブ
41・・・第1ゴルフクラブ
42・・・第2ゴルフクラブ
43・・・第3ゴルフクラブ
100・・・ゴルフクラブヘッド(第1ゴルフクラブヘッド)
200・・・ゴルフクラブヘッド(第2ゴルフクラブヘッド)
300・・・ゴルフクラブヘッド(第3ゴルフクラブヘッド)
400、500、600・・・ゴルフクラブヘッド
102、202、302・・・打撃フェース
104、204、304、404、504、604・・・バック面
108、208、308、408、508、608・・・トップブレード
122、222、322、422、522、622・・・トウ薄肉部
124、224、324、424、524、624・・・ヒール薄肉部
120、220、320、420、520、620・・・厚肉部
130、230、330、630・・・上側厚肉部
gv・・・スコアライン
Le・・・リーディングエッジ
Te・・・トレーリングエッジ
Fc・・・フェースセンター
Rt・・・ブレード側領域
Rs・・・ソール側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18