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特開2024-116075有効成分の徐放のためのインプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116075
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】有効成分の徐放のためのインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A61F2/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003716
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】23156684.5
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC12
4C097CC14
4C097DD01
4C097DD04
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD12
4C097DD13
4C097EE13
4C097FF05
4C097SC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有効成分の徐放のためのインプラントを提供する。
【解決手段】有効成分の持続的皮下放出のためのインプラント100に関し、このインプラントは、ハウジング101であって、第1の側111が隔壁102によって画定され、有効成分の放出のための出口103を第2の側112に備える、ハウジングと、リザーバ104であって、ハウジングの空洞105内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている、リザーバと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分の持続的皮下放出のためのインプラント(100)であって、ハウジング(101)であって、第1の側(111)が隔壁(102)によって画定され、有効成分の前記放出のための出口(103)を第2の側(112)に備える、ハウジング(101)と、リザーバ(104)であって、前記ハウジング(101)の空洞(105)内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている、リザーバ(104)と、を備える、インプラント。
【請求項2】
前記インプラントは、前記ハウジング(101)内に、前記ハウジングの壁(107)と共にチャネル(108)を画定する貫通防止手段(106)を更に備え、前記チャネル(108)は、前記リザーバ(104)から前記出口(103)に有効成分を案内するように設計されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記貫通防止手段(106)は、前記リザーバ(104)及び/又は前記ハウジング(101)からの前記貫通防止手段(106)の距離を画定する表面構造(114)を備える、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記リザーバ(104)は開孔材料を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記リザーバ(104)は、網状発泡体、焼結プラスチック粒子、圧縮プラスチック繊維、圧縮天然繊維、又は結合プラスチック繊維を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記リザーバ(104)は、ポリアクリル酸の架橋塩、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンスルホン酸の塩、多糖類、又は多糖類誘導体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記リザーバ(104)は、前記ハウジング(101)内に配置され、前記隔壁(102)と前記出口(103)との間で有効成分を含有する液体の自由循環を可能にするように設計されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記隔壁(102)は、可撓性自己封止ポリマーを含み、前記ポリマーは、好ましくはポリハロゲン化オレフィン、シリコーン、又は熱可塑性エラストマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項9】
前記隔壁(102)は、凸状に湾曲した形状を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記隔壁(102)は、液体が前記ハウジング(101)の前記空洞(105)内に注入されたときに、弾性的に拡張するように設計されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項11】
前記ハウジング(101)の前記第2の側(112)は、実質的に平面形状を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
前記出口(103)の内径は、前記リザーバ(104)からの有効成分の送達速度を決定する、請求項1から11のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項13】
体組織に接続されるように設計された締結要素(113)を更に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記リザーバ(104)は、有効成分を含有する液体で充填されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項15】
皮下に埋め込まれた状態で、前記隔壁(102)を通して前記ハウジング(101)内に、好ましくは前記リザーバ(104)内に液体を注入することによって、有効成分を含有する前記液体で充填されるように設計されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に関し、特に、徐放を伴う有効成分の送達のための埋め込み型デバイスに関する。インプラントは、関節、例えば膝関節に空間的に近接して皮下に埋め込むことができる。可能な用途は、例えば、関節リウマチなどの炎症性関節疾患の治療である。
【背景技術】
【0002】
リウマチ性疾患は、まだ正確に知られていない理由のために免疫系が身体自身の構造に作用する、いわゆる自己免疫疾患に属する。関節リウマチ及び乾癬性関節炎の疾患は、リウマチ性疾患に属し、関節炎症(関節炎)に関連する。この典型的な慢性関節炎症は、関節の進行性破壊をもたらし得る。ヒトの関節は、関節包(Capsula articulatis)によって囲まれている。それは、外側の結合組織層(Membrana fibrosa)及びいわゆる滑膜の内側層(Membrana synovialis)から構成される。滑膜は、誤った方向に向けられた免疫細胞が当該膜を通って移動するため、又は滑膜上の線維芽細胞の増殖が線維芽細胞の細胞クローンであるパンヌスの形成を引き起こし得るため、関節リウマチ及び乾癬性関節炎における炎症プロセスにとって重要である。パンヌスが崩壊すると、移動した免疫細胞の結果として、インターロイキン及びα-TNF(α-腫瘍壊死因子)などの炎症メディエータが分泌される。これらの炎症メディエータは、炎症カスケードを介して免疫細胞からのプロテアーゼ及び他の破壊酵素の放出を制御し、その後、細胞は軟骨及び骨構造の酵素的破壊をもたらす。
【0003】
関節の領域に有効医薬成分を送達するためのインプラントは既に知られており、当該インプラントは抗生物質の局所適用に使用される。例えば、英国特許出願公開第2290971(A)号、米国特許出願公開第2010/0042213(A)号、国際公開第2017/178951(A1)号、国際公開第2007/084878(A1)号及び米国特許第6245111(B1)号が挙げられる。しかしながら、これらのインプラントを使用する場合、関節は広範囲に除去されなければならず、インプラントは主に抗生物質でプロテーゼを処置する役割を果たす。このようなインプラントは、処置すべき関節を治療のために除去しなければならず、その結果、その後の治療が無意味になるので、関節リウマチ又は乾癬性関節炎の治療には考えられていない。米国特許出願公開第2007/0219471(A1)号は、有効成分を適用し、空洞内の創傷治癒を加速するために減圧を維持し、十分に治癒しない空洞を機械的に安定化するためのインプラントを開示している。
【0004】
国際公開第2010/088548(A1)号は、薬学的有効成分を眼球に直接送達することができる、管状の再充填可能な眼インプラントを開示している。この目的のために、管状インプラントは眼球内に直接挿入される。インプラントは、関節に埋め込むために提供されないか、又はそれに適していない。関節への挿入は、関節自体を攻撃及び損傷させ、インプラントを挿入すると、関節の感染及び炎症の危険性がある。
【0005】
欧州特許第3978065号は、カニューレを使用して有効成分溶液を充填することができる空洞を有する可撓性材料から作製されたディスク形状インプラントを開示しており、インプラントは弾性的に拡張する。インプラントの復元力は、インプラントの下側のマイクロボアから有効成分溶液を漏出させる。
【0006】
米国特許第5681289(A)号及び米国特許出願公開第2018/0028320(A1)号は、関節を治療するため又は関節を潤滑するための医療用流体が、チューブを介してリザーバから関節に供給されるインプラントを開示している。インプラントは比較的大きく、位置決めが困難である。治療における短期間の変更は、平面アプリケータへの供給ラインが最初に洗浄されなければならないので複雑であり、洗浄は埋め込まれた状態では容易に可能ではない。インプラントは、インプラントを介して送達される潤滑剤で関節を潤滑するのによく適しているが、インプラント、リザーバ、及び供給ラインに含まれる体積が大きすぎるため、これらのインプラントを使用して高濃度の有効医薬成分を標的放出することは不可能である。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0139811(A1)号は、関節包の内部における抗炎症性有効成分の局所放出のための有効成分系を開示している。これらは、ねじ頭に開口部を有する中空ねじである。これらの中空ねじに有効成分を充填することができる。続いて、ねじは、関節包内の軟骨組織に隣接して位置する骨組織に導入される。次いで、有効成分は、ねじ頭の開口部を介して滑液中に放出されるはずである。ここで重要な点は、関節包が開かれなければならず、ねじが有効成分の放出後に関節包の内部に残ることである。関節包を開くことは、常に感染の重大な危険性にさらされる。埋め込まれたねじに新しい有効成分を充填するための手段はない。したがって、治療は、治療される患者の状態の変化に適合させることもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
好ましい実施形態
本発明の目的は、上述した問題及び従来技術の更なる問題の1つ以上を解決することである。例えば、本発明は、インプラントからの有効成分の徐放を容易にする。更に、本発明は、埋め込まれたままの状態で、注入カニューレを用いて有効成分を充填することができるインプラントを提供する。
【0009】
これらの目的は、本明細書に記載される方法及びデバイス、特に、特許請求の範囲に記載されるものによって達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態を以下に記載する。
【0011】
第1の実施形態は、有効成分の持続的皮下放出のためのインプラントを説明し、このインプラントは、ハウジングであって、第1の側が隔壁によって画定され、有効成分の放出のための出口を第2の側に備える、ハウジングと、リザーバであって、ハウジングの空洞内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている、リザーバと、を備える。
【0012】
第2の実施形態は、実施形態1に記載のインプラントを説明し、ハウジング内のインプラントは、ハウジング内に、ハウジングの壁と共にチャネルを画定する貫通防止手段を更に備え、チャネルは、リザーバから出口に有効成分を案内するように設計されている。
【0013】
第3の実施形態は、第2の実施形態に記載されるインプラントを説明し、貫通防止手段は、リザーバ及び/又はハウジングからの貫通防止手段の距離を画定する表面構造を備える。そのような距離は、例えば、各々の場合において、少なくとも0.5mm又は少なくとも1mmであり得る。
【0014】
第4の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、リザーバは開孔材料を備える。
【0015】
第5の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、リザーバは、網状発泡体、焼結プラスチック粒子、圧縮プラスチック繊維、圧縮天然繊維、又は結合プラスチック繊維を備える。
【0016】
第6の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを記載し、リザーバは、ポリアクリル酸の架橋塩、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンスルホン酸の塩、多糖類、又は多糖類誘導体を含む。
【0017】
第7の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、リザーバは、ハウジング内に配置され、隔壁と出口との間で有効成分を含有する液体の自由循環を可能にするように設計されている。
【0018】
第8の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、隔壁は、可撓性自己封止ポリマーを含み、ポリマーは、好ましくはポリハロゲン化オレフィン、シリコーン、又は熱可塑性エラストマーを含む。
【0019】
第9の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、隔壁は、凸状に湾曲した形状を備える。
【0020】
次いで、第10の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、隔壁は、液体がハウジングの空洞内に注入されたときに、弾性的に拡張するように設計されている。
【0021】
第11の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、ハウジングの第2の側は、実質的に平面形状を備える。
【0022】
第12の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、出口の内径は、リザーバからの有効成分の送達速度を決定する。
【0023】
第13の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、体組織に接続されるように設計された締結要素を更に備える。
【0024】
第14の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、リザーバは、有効成分を含有する液体で充填されている。
【0025】
第15の実施形態は、前述の実施形態のいずれかによるインプラントを説明し、皮下に埋め込まれた状態で、隔壁を通してハウジング内に、好ましくはリザーバ内に液体を注入することによって、有効成分を含有する液体で充填されるように設計されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に記載の実施形態に関して、特定の特徴(例えば、材料)を「含有する(contain)」又は「含む(comprise)」要素は、原則として、関連する要素がその特徴のみからなる、すなわち、他の構成要素を含まない更なる実施形態が常に企図される。用語「含む(comprise)」又は「含んでいる(comprising)」は、本明細書において、用語「含有する(contain)」又は「含有している(containing)」と同義的に使用される。
【0027】
一実施形態では、要素が単数形で示される場合、2つ以上のそのような要素が存在する実施形態も企図される。複数の要素に対する用語の使用は、原則として、単一の対応する要素のみが含まれる実施形態も含む。
【0028】
別段の指示がない限り、又は文脈から明確に除外されない限り、異なる実施形態の特徴が、本明細書に記載される他の実施形態にも存在し得ることが原理的に可能であり、これによって明確に企図される。同様に、原則として、方法に関連して本明細書に記載される全ての特徴は、本明細書に記載される製品及びデバイスにも適用可能であり、逆もまた同様であることが企図される。単に説明を簡潔にするために、全てのそのような考慮される組み合わせは、全ての事例において明示的に列挙されているわけではない。本明細書に記載の特徴と同等であることが知られている技術的解決手段もまた、原則として本発明の範囲によって含まれることが意図されている。
【0029】
本明細書の第1の態様は、第1の実施形態において、有効成分の持続的皮下放出のためのインプラントに関し、このインプラントは、ハウジングであって、第1の側が隔壁によって画定され、有効成分の放出のための出口を第2の側に備える、ハウジングと、リザーバであって、ハウジングの空洞内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている、リザーバと、を備える。
【0030】
インプラントは、好ましくは生体適合性材料で作られたハウジングを含む。ハウジングは、プラスチック若しくは金属、又はその両方を含むことができる。ハウジングは、多部品設計を有することができる。ハウジングは、好ましくは柔軟で伸縮可能な材料から形成される隔壁を備える。隔壁は、液体をハウジング内に注入するために、医療用カニューレによって貫通されるように設計されることが好ましい。隔壁は、ハウジングの第1の側に取り付けられる。この第1の側は、好ましくは、インプラントが埋め込まれた状態、例えば皮下埋め込み状態にあるときに皮膚表面の方向に位置合わせされるように設計され、その結果、隔壁は、カニューレによって外側からアクセス可能である。ハウジングは、リザーバが配置される空洞を含む。リザーバは、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている。これは、水性又は油性の液体がリザーバの内部に到達できることを意味する。この目的のために、リザーバは、以下により詳細に記載されるように、開放多孔性を含むことができる。
【0031】
更に、インプラントは、ハウジングから外部に有効成分を送達するために、ハウジングの第2の側に出口を含む。これは、有効成分を含有する液体中に溶解又は懸濁された物質を出口を通して拡散させることによって、又はそのような液体が出口を通ってハウジングから流出することによって、又はその両方によって行うことができる。
【0032】
出口は、高分子量物質、細菌又は他の粒子のインプラントへの浸透を防止するために、弁又はフィルタを備えることができる。例えば、220nm、200nm、100nm、75nm又は50nmの排除体積を有するフィルタを出口に取り付けることができる。フィルタは、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができる。弁又はフィルタはまた、有効成分の放出動態を規定することができる。
【0033】
ハウジングの第2の側は、ハウジングの第1の側に対向して配置される。インプラントが埋め込まれた状態にあるとき、第2の側は、患者の身体の内側と、例えば、治療される組織、例えば関節の方向に位置合わせすることができる。これは、標的組織への有効成分の標的化局所送達を可能にする。
【0034】
ハウジングは、ディスク形状であり得る。ハウジングは、例えば、扁平な円筒形状を含むことができる。ハウジングは、多部品設計を有することができ、異なる部分は、例えば、クリック又はスナップクロージャ又はラッチによって、液密に互いに恒久的に接続することができる。出口を除いて、ハウジングは、液体に対して不透過性であり得る。ハウジングは、金属又はプラスチックを含むことができる。ハウジングは、好ましくは生体適合性材料を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、インプラントは、ハウジング内に貫通防止手段を更に備える。貫通防止手段は、ハウジングが第1及び第2の側でカニューレによって完全に貫通されるのを防止するように設計することができる。貫通防止手段は、特に、カニューレがハウジングの第1の側の隔壁を通して挿入されるときに、ハウジングが第2の側で貫通されるのを防止するように設計することができる。
【0036】
この貫通防止手段は、好ましくはハウジングの壁と共に、チャネルを画定する。この目的のために、貫通防止手段は、例えば、液体透過性間隙が形成されるように、ハウジングの壁からある距離に配置することができる。そのような間隙は、有効成分を含有する液体をリザーバから出口に案内するように設計されたチャネルを画定する。例えば、液体中に溶解又は懸濁された有効成分は、リザーバからチャネルを通って出口に拡散することができる。
【0037】
貫通防止手段は、金属、プラスチック材料、セラミック材料、又はプラスチック-金属複合材料を含むことができる。一実施形態では、貫通防止手段は、その強度のために、ISO 7864:2016による医療用注入カニューレによって貫通することができない材料を含む。
【0038】
貫通防止手段は、表面構造を含むことができる。この表面構造は、貫通防止手段とリザーバとの間の距離を画定することができる。代替的に又は追加的に、表面構造は、貫通防止手段とハウジングとの間の、特にハウジングの第2の側からの距離を画定することができる。この距離は、溶解した有効成分が貫通防止手段の周囲に、例えばリザーバから出口に拡散できるように設計することができる。
【0039】
表面構造は、例えば、貫通防止手段の表面の一部の湾曲であってもよい。表面構造は、貫通防止手段がハウジングに対して完全に平坦に載置されるのではなく、貫通防止手段とハウジングとの間に間隙を形成する複数の点で自己支持領域を備えることをもたらすことができる。同様に、表面構造は、貫通防止手段の表面に対して完全に平坦に載置されないリザーバをもたらすことができる。
【0040】
リザーバは、開孔材料を含むことができる。その結果、有効成分を含有する液体は、リザーバの内部に通過することができ、リザーバ内に収容することができる。
【0041】
リザーバは、例えば、網状発泡体、焼結プラスチック粒子、圧縮プラスチック繊維、圧縮天然繊維、又は結合プラスチック繊維を備えることができる。発泡体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリル又はポリウレタンを含むことができる。好適な医療用発泡体は、とりわけ、Porex,Reinbek(ドイツ)から入手可能である。発泡体の例は、欧州特許出願第2480408(A1)号及び欧州特許出願第1581268(A1)号に記載されており、これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。発泡体は、繊維含有材料若しくは繊維非含有材料を含むか、又はそれらからなることができる。
【0042】
リザーバはヒドロゲルを含むことができる。ヒドロゲルは通常、スポンジ様構造を形成する架橋ポリマーを含有する。リザーバは、例えば、ポリアクリル酸の架橋塩、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンスルホン酸の塩、多糖類、又は多糖類誘導体を含むことができる。更なる例としては、アクリルアミドコポリマー、例えばアクリルアミドとアクリル酸とのコポリマー、又はアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムとのコポリマーが挙げられる。リザーバに使用することができる物質の更なる例は、HySorb(登録商標)及びSAVIVA(登録商標)(BASF,Ludwigshafen,Germany)などの市販の超吸収材である。多糖類の例としては、セルロース、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カラギーナン、シクロデキストリン及びアミロースが挙げられる。多糖類誘導体の例としては、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルアミロースが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、リザーバは、ハウジング内に配置され、隔壁と出口との間で有効成分を含有する液体の自由循環を可能にするように設計されている。これは、例えば、ハウジング内のリザーバの移動可能な配置によって達成することができる。例えば、リザーバは、ハウジング、隔壁、及び/又は貫通防止手段に対して自由に移動可能であり得る。いくつかの実施形態では、リザーバは、ハウジング、隔壁、及び/又は貫通防止手段に固定して接続されない。このようにして、ハウジング内での溶解した有効成分の自由拡散、並びにリザーバ内及びリザーバ外への自由拡散が達成され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、隔壁は、可撓性自己封止ポリマーを含む。ポリマーは、ポリハロゲン化オレフィン、シリコーン、又は熱可塑性エラストマーを含むことができる。隔壁は、好ましくは、隔壁がカニューレで貫通された後に、ハウジングの出口を除いてハウジングを液密に閉鎖するように設計される。隔壁は、好ましくは伸縮性であり、例えば化学瓶の隔壁から知られているように、ゴム弾性特性を示す。その結果、上述したように、隔壁は、一方では、貫通された後に自己治癒し、液体の注入時にハウジング内に拡張して、インデックス付き液体にハウジング内でより大きな体積を提供することができ、すなわち、ハウジング内の空洞は、隔壁の拡張によって拡大することができる。したがって、隔壁は、液体がハウジングの空洞内に注入されたときに弾性的に拡張するように設計することができる。
【0045】
隔壁は、好ましくは生体適合性材料を含む。
【0046】
隔壁は、例えば、実質的に平面又は凸状に湾曲した形状を含むことができる。隔壁は、円形形状を含むことができる。
【0047】
一実施形態では、隔壁は、100N未満の力でISO 7864:2016に準拠した医療用注入カニューレで貫通することができる材料を含む。
【0048】
隔壁は、好ましくは、液密にハウジングに接続される。
【0049】
一実施形態では、ハウジングの第2の側は、実質的に平坦な形状、例えばディスク形状を含む。外側において、ハウジングの第2の側は、スペーサとして機能することができる外側に湾曲した構造を備えることができる。これらの構造は、例えば、外向きに突出する隆起又はこぶの形状を含むことができる。
【0050】
本発明によるインプラントは、有効成分のより速い又はより遅い放出動態に適合させることができる。この目的のために、例えば、内径及び/又は出口の数を減少又は増加させることができる。したがって、出口の内径は、リザーバからの有効成分の送達速度を決定することができる。出口の直径は、例えば、最大で0.5mm又は最大で0.25mmであり得る。
【0051】
本明細書に記載のインプラントは、体組織に接続されるように設計された締結要素を更に備えることができる。例えば、アイレットをハウジングの外側に配置することができ、このアイレットを標的ファブリックに縫い付けることができる。例えば、ハウジングの外側に円周方向に配置することができる複数のそのような要素を設けることもできる。これは、有効成分の標的局所放出が起こり得ることをより確実にすることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、リザーバは、有効成分を含有する液体で充填することができる。例えば、製造プロセスの範囲内で、リザーバは、有効成分を含有する液体で予め充填されていてもよい。これは、有効成分を含有する液体が適用まで無菌のままであること、及び正確に所定量の有効成分がインプラントに含有されることをより確実にすることができる。更に、このようにして、有効成分濃度の平衡を、リザーバとハウジング内の他の空洞との間でより良好に調整することができる。リザーバは、隔壁を通した注入によって、本明細書に説明されるように充填されることができる。あるいは、製造プロセス中に隔壁を破る必要がないように、予め充填されたリザーバをハウジング内に設置することができる。
【0053】
原則として、リザーバは、液体中に溶解又は懸濁され得る任意の有効成分で充填され得る。抗リウマチ有効成分が特に好ましい。例えば、一連の有効成分群は、関節リウマチ及び乾癬性関節炎の治療に利用可能である。これらの有効成分群には、鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド及び基礎治療薬(疾患修飾性抗リウマチ薬、DMARD)が含まれる。更に、α-TNF(α-腫瘍壊死因子)又はインターロイキンIL-17のシグナル経路を阻害する治療抗体(生物学的製剤)がある。また、免疫系を抑制する低分子量有効成分も使用可能である。そのような免疫調節剤は、例えば、シクロスポリンA(CAS 59865-13-3)、タクロリムス(CAS 104987-11-3)及びエベロリムス(CAS 159351-69-6)を含む。有効成分の更なる例は、コーチゾン(CAS 53-06-5)、ベタメタゾン(CAS 378-44-9)、トリアムシノロン(CAS 124-94-7)、デキサメタゾン(CAS 50-02-2)、リン酸デキサメタゾン(CAS 2392-39-4)及びアプレミラスト(CAS 608141-41-9)である。
【0054】
シクロスポリンAの作用機序は、シクロスポリンAとイムノフィリンシクロフィリンとの複合体の形成に起因し得る。当該複合体は、ホスファターゼカルシニューリンを阻害する。次に、酵素カルシニューリンは、α-TNFの形成に必須であり、α-TNFは、炎症カスケードの開始における重要な化合物である。α-TNFの合成を阻害することすることによって、以下の炎症カスケードも阻害することができる。
【0055】
全身薬物療法では、シクロスポリンAについては約75μg/l~175μg/l、タクロリムスについては5μg/l~20μg/lの範囲の血清有効成分濃度を達成することができる。より高い全身有効成分濃度は、生体の残りに対する望ましくない毒性副作用のリスクのために、より長く持続する治療について全身的に可能ではない。これは、全身療法において、関節包(Membrana fibrosa及びMembrana synovialis)の組織中の有効成分濃度が非常に低く、したがって炎症過程に対して限られた免疫調節効果しか有し得ないことを意味する。対照的に、本発明によるインプラントを用いて、関節リウマチ又は乾癬性関節炎を有する患者の関節領域における慢性炎症過程を減少させて、これらの有効成分の十分に高い濃度を局所的に達成するために、有効成分を関節包の組織に直接又は関節包の近傍に皮下適用することができる。
【0056】
インプラントは、患者への埋め込み後に有効成分で充填することもできる。インプラントが例えば皮下に埋め込まれる場合、リザーバは、インプラントが露出又は外植される必要なしに、隔壁を通した注入によって外側から充填され得る。したがって、更なる実施形態は、隔壁を通してハウジング内に液体を注入することによって、皮下に埋め込まれた状態で、有効成分を含有する液体で充填されるように設計されたインプラントを説明する。これにより、液体は、ハウジングの空洞内に、又は好ましくはハウジングの空洞内に配置されたリザーバ内に直接注入することができる。
【0057】
本発明の更なる態様は、インプラントを充填するための方法であって、インプラントがリザーバ及び隔壁を備え、インプラントが埋め込まれた状態にあるときに、有効成分を含有する液体をリザーバに導入するために、隔壁が外側からカニューレで貫通される方法に関する。この場合、液体は、リザーバ内に直接注入され得るか、又はリザーバの外側の空洞内に導入され、次いでリザーバによっ受け入れられ得る。注入プロセスの後、隔壁の弾性材料の復元力は、隔壁がそれ自体を再び液密に封止することを可能にする。一実施形態では、インプラントは、非埋め込み状態、すなわちインビトロで充填される。
【0058】
更なる態様は、有効成分が、本明細書に記載のインプラントによって関節に遅延を伴って送達される、治療方法に関する。この目的のために、インプラントは、例えば、関節の領域において皮下に埋め込まれ、任意選択で、例えば、本明細書に記載される締結要素を使用して軟組織に接続され得る。
【0059】
本発明の更なる態様は、治療手順において使用するための抗リウマチ有効成分に関する。したがって、有効成分は、本明細書に記載のインプラント及び方法を使用して投与することができる。それによって、有効成分は、本明細書に記載されるように、インプラントの出口を介して持続的な様式でリザーバから送達され得る。
【実施例0060】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことを理解されたい。ここで説明した特徴の代わりに他の同等の手段を同様に使用できることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、例として、本発明によるインプラント100の第1の実施形態の断面図を示す。インプラントは、ここに示される例では2つの部分で設計されるディスク形状のハウジング101を備える。第1の側111では、隔壁102がハウジングの上部に液密に導入される。ハウジング101の下部には、出口103がハウジングの第2の側112に組み込まれており、これらの出口は、ハウジングの内部の空洞105をハウジングの外部環境に液体を導くように接続する。更に、リザーバ104は、ハウジング101の空洞105内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計される。貫通防止手段106は、リザーバ104とハウジングの第2の側112との間に配置され、貫通防止手段106は、注入カニューレによる貫通を防止することができる。リザーバは、液体が浸透して貯蔵されることを可能にする開放多孔性を有する材料を含む。貫通防止手段は、例えば、医療用ステンレス鋼又はチタンなどの固体金属から形成することができる。貫通防止手段106は、それらの間にチャネル108を形成するために、ハウジングの側壁107からある距離にある。チャネル108は、有効成分が空洞105の第1の側111から第2の側112に輸送されることを可能にし、その結果、有効成分を出口103を通して外部に送達することができる。
図2図2は、本発明によるインプラント100の更なる実施形態を等角平面図で示す。インプラントは、上側に隔壁102を備える。ハウジング101は、ここではハウジング101の横方向に突出する部分内の孔として具現化される、横方向縁部の周りに円周方向に複数の締結要素113を備える。締結要素113は、インプラントが標的組織に固定されることを可能にし、例えば、インプラントが関節の領域内の軟組織に縫合されることを可能にする。
図3図3は、カニューレ200を用いた本発明によるインプラント100の充填の断面図を示す。ここで、隔壁102は、カニューレ200を用いて貫通され、有効成分を含有する液体(図では液滴として象徴的に示されている)がハウジング内に導入される。液体は、同時に又はその後にリザーバ104内に受け入れられ得る。貫通防止手段106は、ハウジング101の第2の側112がカニューレ200によって貫通されるのを防止する。これにより、インプラントが埋め込まれた状態で充填されるときに、下にある組織が保護される。
図4図4は、本発明によるインプラント100からの有効成分を含有する液体の送達の断面図を示す。液体及び/又はその中に溶解された有効成分は、リザーバ104からハウジング101の空洞に送達され、ハウジング101の第2の側112上の出口103を通って外側に通過する。貫通防止手段106は、有効成分がリザーバ104から出口103に輸送されることを可能にするように配置される。
【符号の説明】
【0062】
100 インプラント
101 ハウジング
102 隔壁
103 出口
104 リザーバ
105 空洞
106 貫通防止手段
107 壁
108 チャネル
111 ハウジングの第1の側
112 ハウジングの第2の側
113 締結要素
114 表面構造
200 カニューレ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分の持続的皮下放出のためのインプラント(100)であって、ハウジング(101)であって、第1の側(111)が隔壁(102)によって画定され、有効成分の前記放出のための出口(103)を第2の側(112)に備える、ハウジング(101)と、リザーバ(104)であって、前記ハウジング(101)の空洞(105)内に配置され、有効成分を含有する液体を受け入れるように設計されている、リザーバ(104)と、を備える、インプラント。
【請求項2】
前記インプラントは、前記ハウジング(101)内に、前記ハウジングの壁(107)と共にチャネル(108)を画定する貫通防止手段(106)を更に備え、前記チャネル(108)は、前記リザーバ(104)から前記出口(103)に有効成分を案内するように設計されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記貫通防止手段(106)は、前記リザーバ(104)及び/又は前記ハウジング(101)からの前記貫通防止手段(106)の距離を画定する表面構造(114)を備える、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記リザーバ(104)は開孔材料を備える、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項5】
前記リザーバ(104)は、網状発泡体、焼結プラスチック粒子、圧縮プラスチック繊維、圧縮天然繊維、又は結合プラスチック繊維を備える、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記リザーバ(104)は、ポリアクリル酸の架橋塩、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンスルホン酸の塩、多糖類、又は多糖類誘導体を含む、請求項4に記載のインプラント。
【請求項7】
前記リザーバ(104)は、前記ハウジング(101)内に配置され、前記隔壁(102)と前記出口(103)との間で有効成分を含有する液体の自由循環を可能にするように設計されている、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項8】
前記隔壁(102)は、可撓性自己封止ポリマーを含み、前記ポリマーは、好ましくはポリハロゲン化オレフィン、シリコーン、又は熱可塑性エラストマーを含む、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項9】
前記隔壁(102)は、凸状に湾曲した形状を備える、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項10】
前記隔壁(102)は、液体が前記ハウジング(101)の前記空洞(105)内に注入されたときに、弾性的に拡張するように設計されている、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項11】
前記ハウジング(101)の前記第2の側(112)は、実質的に平面形状を備える、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項12】
前記出口(103)の内径は、前記リザーバ(104)からの有効成分の送達速度を決定する、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項13】
体組織に接続されるように設計された締結要素(113)を更に備える、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項14】
前記リザーバ(104)は、有効成分を含有する液体で充填されている、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項15】
皮下に埋め込まれた状態で、前記隔壁(102)を通して前記ハウジング(101)内に、好ましくは前記リザーバ(104)内に液体を注入することによって、有効成分を含有する前記液体で充填されるように設計されている、請求項1又は2に記載のインプラント。