(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116076
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】感光性組成物、硬化物、電子部品、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/029 20060101AFI20240820BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240820BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20240820BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G03F7/029
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/037
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003756
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023021353
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】荒木 斉
(72)【発明者】
【氏名】金木 貴之
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
2H225AC19
2H225AC31
2H225AC32
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2H225AC36
2H225AC38
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2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AE06P
2H225AE13P
2H225AF04P
2H225AM16P
2H225AM73P
2H225AM75P
2H225AM77P
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2H225AM85P
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2H225AN10P
2H225AN29P
2H225AN39P
2H225AN49P
2H225AN50P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225AN61P
2H225AN68P
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2H225AN86P
2H225AN88P
2H225AN95P
2H225AN98P
2H225AP11P
2H225BA02P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225BA35P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC03
2H225CC13
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】パターン裾部の残渣抑制及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えることができ、機械物性に優れる硬化物を提供できる。加えて、マイグレーション耐性に優れる電子部品に具備される硬化物を提供可能である。
【解決手段】(A)バインダー樹脂及び(C1-1)オキシムエステル系化合物を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、該(C1-1)オキシムエステル系化合物が、特定の構造を有する、感光性組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂及び(C1-1)オキシムエステル系化合物を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、該(C1-1)オキシムエステル系化合物が、
(Ia)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(Ib)構造:オキシムエステルカルボニル構造、(Ic)構造:酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはリン原子を含む置換基が結合したアリールカルボニル構造、又は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくはジアリールスルフィド構造が結合したカルボニル構造、及び(Id)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、及び/又は、
(IIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(IIb)構造:少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造、及び(IIc)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、感光性組成物。
【請求項2】
前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂が(WA)弱酸性基:フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種類以上の基を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たす、請求項1に記載の感光性組成物。
(1)該感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下
【請求項4】
前記(A1)弱酸性基含有樹脂が(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂を含む、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記(A1x)樹脂が、(A1x-1)樹脂:ポリイミド、(A1x-2)樹脂:ポリイミド前駆体、(A1x-3)樹脂:ポリベンゾオキサゾール、(A1x-4)樹脂:ポリベンゾオキサゾール前駆体、(A1x-5)樹脂:ポリアミドイミド、(A1x-6)樹脂:ポリアミドイミド前駆体、(A1x-7)樹脂:ポリアミド、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該(A1x)樹脂が、前記(WA)弱酸性基を含むアミン残基、及び/又は、前記(WA)弱酸性基を含むカルボン酸残基を有する、請求項4に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂がラジカル重合性基を有する、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂が(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含み、該(A1y)樹脂が、フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール基含有エポキシ樹脂、及びフェノール基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、請求項2~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記(A)バインダー樹脂が、(A1)弱酸性基含有樹脂及び(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有し、該(A1)弱酸性基含有樹脂が、(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂、及び/又は、(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含み、
該(A2)弱酸性基を有しない樹脂が、(A2x)樹脂:ラジカル重合性基を有する樹脂及び/又は(A2y)樹脂:ラジカル重合性基を有しない樹脂を含む、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記(A2x)樹脂が、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(A2y)樹脂が、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、請求項8に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記(A)バインダー樹脂が、下記(P1α)の条件を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
(P1α)該(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量が10,000質量ppm以下
【請求項11】
さらに有機黒色顔料を含有し、該有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含む、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項12】
さらに無機黒色顔料を含有し、該無機黒色顔料が、金属元素を含む窒化物、金属元素を含む炭化物、及び金属元素を含む酸窒化物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、金属元素がジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、及びタンタルからなる群より選ばれる一種類以上である、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項13】
さらに、酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、及び/又は、さらに、アルドオキシム化合物及び/又はケトオキシム化合物を含有し、かつ下記(3)の条件を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
(2)該感光性組成物の全固形分に占める酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下
(3)該感光性組成物の全固形分に占めるアルドオキシム化合物及びケトオキシム化合物の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下
【請求項14】
さらに水を含有し、かつ下記(4)の条件を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
(4)該感光性組成物中に占める水の含有量が0.010質量%以上、3.0質量%以下
【請求項15】
下記(1α)の条件を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
(1α)該感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
【請求項16】
前記(C1-1)オキシムエステル系化合物が、前記(Ib)構造及び前記(IIb)構造中のカルボニル構造を含む基と、オキシム構造の酸素原子を含む基との、オキシム構造のC=N結合に対するシス-トランス異性体を含み、該シス-トランス異性体の合計100質量%に占める、シス異性体又はトランス異性体の含有比率が90.0~99.9質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項17】
請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物を硬化した硬化物。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化物を具備する電子部品。
【請求項19】
(1)基板上に、請求項1~5のいずれかに記載の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)前記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、前記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)前記パターンを加熱し、前記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する、硬化物の製造方法。
【請求項20】
硬化物を具備する電子部品であって、該硬化物が(C1x-DL)カルボニル基含有化合物を含有し、該(C1x-DL)カルボニル基含有化合物が、
(XIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造にカルボニル基が結合した構造、(XIc)構造:酸素原子、硫黄原子、若しくは窒素原子を含む置換基が結合したアリールカルボニル構造、又は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくはジアリールスルフィド構造が結合したカルボニル構造、及び(XId)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、及び/又は、
(XIIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造にカルボニル基が結合した構造、及び(XIIc)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、硬化物、電子部品、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の製造工程の効率化によるコスト削減及び高集積化の取り組みがされており、多層の金属再配線を形成する半導体装置が注目されている。このような多層の金属再配線における層間絶縁層に用いられる材料には、多層化に伴う応力に耐えるための高い機械物性が求められる。さらにフォトリソグラフィーによるポジ型又はネガ型のパターン形成時の現像残渣抑制も両立する必要がある。加えて、半導体装置の高集積化に伴う配線微細化により、電気絶縁性に関する信頼性も求められるため、高いマイグレーション耐性も要求される。
【0003】
また有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)ディスプレイの製造において、発光材料成膜時の蒸着マスクの支持台となる膜厚の厚い領域(以下、「厚膜部」)と、厚膜部よりも膜厚の小さい薄膜部(以下、「薄膜部」)とを有する画素分割層における段差形状を、ハーフトーンフォトマスクを用いて一括形成するプロセスも適用される。そのため、画素分割層などに用いられる材料には、プロセスタイム削減及び歩留まり向上のため優れたハーフトーン特性が必要とされる。
【0004】
感光性組成物としては、例えば、ポリイミドと、特定構造の光重合開始剤とを含有するネガ型感光性組成物(例えば、特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性、機械物性、及びマイグレーション耐性を兼ね備えるものではなく、更なる特性向上が望まれていた。本発明は、パターン裾部の残渣抑制と優れたハーフトーン特性とを兼ね備えつつ、優れた機械物性を有し、かつマイグレーション耐性に優れる電子部品に具備される硬化物を提供することを目的とする。また本発明の別の目的は、マイグレーション耐性に優れる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の感光性組成物及び電子部品は、以下の[1]~[18]の構成を有する。
【0008】
[1](A)バインダー樹脂及び(C1-1)オキシムエステル系化合物を含有し、さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する感光性組成物であって、該(C1-1)オキシムエステル系化合物が、
(Ia)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(Ib)構造:オキシムエステルカルボニル構造、(Ic)構造:酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはリン原子を含む置換基が結合したアリールカルボニル構造、又は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくはジアリールスルフィド構造が結合したカルボニル構造、及び(Id)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、及び/又は、
(IIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(IIb)構造:少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造、及び(IIc)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、感光性組成物。
【0009】
[2]前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂が(WA)弱酸性基:フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種類以上の基を有する、[1]に記載の感光性組成物。
【0010】
[3]さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たす、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
(1)該感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下。
【0011】
[4]前記(A1)弱酸性基含有樹脂が(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂を含む、[2]又は[3]に記載の感光性組成物。
【0012】
[5]前記(A1x)樹脂が、(A1x-1)樹脂:ポリイミド、(A1x-2)樹脂:ポリイミド前駆体、(A1x-3)樹脂:ポリベンゾオキサゾール、(A1x-4)樹脂:ポリベンゾオキサゾール前駆体、(A1x-5)樹脂:ポリアミドイミド、(A1x-6)樹脂:ポリアミドイミド前駆体、(A1x-7)樹脂:ポリアミド、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該(A1x)樹脂が、前記(WA)弱酸性基を含むアミン残基、及び/又は、前記(WA)弱酸性基を含むカルボン酸残基を有する、[4]に記載の感光性組成物。
【0013】
[6]前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂がラジカル重合性基を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0014】
[7]前記(A)バインダー樹脂が(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、該(A1)弱酸性基含有樹脂が(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含み、該(A1y)樹脂が、フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール基含有エポキシ樹脂、及びフェノール基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、[2]~[6]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0015】
[8]前記(A)バインダー樹脂が、(A1)弱酸性基含有樹脂及び(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有し、該(A1)弱酸性基含有樹脂が、(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂、及び/又は、(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含み、
該(A2)弱酸性基を有しない樹脂が、(A2x)樹脂:ラジカル重合性基を有する樹脂及び/又は(A2y)樹脂:ラジカル重合性基を有しない樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0016】
[9]前記(A2x)樹脂が、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
前記(A2y)樹脂が、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、[8]に記載の感光性組成物。
【0017】
[10]前記(A)バインダー樹脂が、下記(P1α)の条件を満たす、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性組成物。
(P1α)該(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量が10,000質量ppm以下。
【0018】
[11]さらに有機黒色顔料を含有し、該有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、
該アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0019】
[12]さらに無機黒色顔料を含有し、該無機黒色顔料が、金属元素を含む窒化物、金属元素を含む炭化物、及び金属元素を含む酸窒化物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、金属元素がジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、及びタンタルからなる群より選ばれる一種類以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0020】
[13]さらに、酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、及び/又は、さらに、アルドオキシム化合物及び/又はケトオキシム化合物を含有し、かつ下記(3)の条件を満たす、[1]~[12]のいずれかに記載の感光性組成物。
(2)該感光性組成物の全固形分に占める酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下
(3)該感光性組成物の全固形分に占めるアルドオキシム化合物及びケトオキシム化合物の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下。
【0021】
[14]さらに水を含有し、かつ下記(4)の条件を満たす、[1]~[13]のいずれかに記載の感光性組成物。
(4)該感光性組成物中に占める水の含有量が0.010質量%以上、3.0質量%以下。
【0022】
[15]下記(1α)の条件を満たす、[1]~[14]のいずれかに記載の感光性組成物。
(1α)該感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下。
【0023】
[16]前記(C1-1)オキシムエステル系化合物が、前記(Ib)構造及び前記(IIb)構造中のカルボニル構造を含む基と、オキシム構造の酸素原子を含む基との、オキシム構造のC=N結合に対するシス-トランス異性体を含み、該シス-トランス異性体の合計100質量%に占める、シス異性体又はトランス異性体の含有比率が90.0~99.9質量%である、[1]~[15]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0024】
[17][1]~[16]のいずれかに記載の感光性組成物を硬化した硬化物。
【0025】
[18][17]に記載の硬化物を具備する電子部品。
【0026】
[19](1)基板上に、[1]~[16]のいずれかに記載の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)前記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、前記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)前記パターンを加熱し、前記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する、硬化物の製造方法。
【0027】
[20]硬化物を具備する電子部品であって、該硬化物が(C1x-DL)カルボニル基含有化合物を含有し、該(C1x-DL)カルボニル基含有化合物が、
(XIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造にカルボニル基が結合した構造、(XIc)構造:酸素原子、硫黄原子、若しくは窒素原子を含む置換基が結合したアリールカルボニル構造、又は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくはジアリールスルフィド構造が結合したカルボニル構造、及び(XId)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、及び/又は、
(XIIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造にカルボニル基が結合した構造、及び(XIIc)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、電子部品。
【発明の効果】
【0028】
本発明の感光性組成物によれば、パターン裾部の残渣抑制及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えることができ、機械物性に優れる硬化物を提供できる。加えて、マイグレーション耐性に優れる電子部品に具備される硬化物を提供可能である。また本発明の電子部品によれば、マイグレーション耐性に優れる電子部品を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ハーフトーン特性評価に用いたハーフトーンフォトマスクにおける、透光部、遮光部、及び半透光部の、配置及び寸法を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の感光性組成物について述べる。ただし、本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。なお樹脂の主鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち最も鎖長が長いものをいう。樹脂の側鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち、主鎖から分岐した又は主鎖に結合した、主鎖よりも鎖長が短いものをいう。樹脂の末端とは主鎖を封止する構造をいい、例えば、末端封止剤などに由来する構造である。また「XX結合」や「XX基」を含む、炭化水素基やアルキレン基とは、「XX結合」や「XX基」が結合した、炭化水素基やアルキレン基、又は、「XX結合」や「XX基」によって連結された、少なくとも2つの炭化水素基や少なくとも2つのアルキレン基をいう。「XX構造」や「XX原子」を含むZZ基とは、「XX構造」や「XX原子」が結合したZZ基、又は、「XX構造」や「XX原子」を構造中のいずれかに含むZZ基をいう。
【0031】
<感光性組成物>
本発明の感光性組成物は上記の[1]の構成を有する。上記の構成とすることで、本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制及び優れたハーフトーン特性を兼ね備えることができ、機械物性に優れる硬化物を提供できる。加えて、マイグレーション耐性に優れる電子部品に具備される硬化物を提供可能である。これは感光性組成物中に上記の特定の構造を有する(C1-1)オキシムエステル系化合物を含有させることで、当該化合物が膜全体に相溶化することに加え、当該化合物のUV透過性及びフォトブリーチング性により、比較的少ない露光量で膜の深部までUV硬化が進行すると推定される。その結果、膜の深部におけるラジカル発生量が制御され、また下地の基板によるUV光の反射も低減されることで過剰なラジカル重合が抑制されるため、パターン裾部の残渣抑制の効果を奏功すると考えられる。加えて、膜の深部までUV硬化が進行するため、優れたハーフトーン特性の効果を奏功すると推定される。また上記の(Ib)構造及び(Ic)構造、又は、(IIb)構造におけるカルボニル構造中のπ電子や、上記の(Id)構造又は(IIc)構造における特定の炭素数の脂肪族基又は脂環式基による疎水性構造が、開口部(ネガ型の感光性を有する場合は未露光部、ポジ型の感光性を有する場合は露光部)における有機物の残渣成分と相互作用し、現像液に対して溶解促進するため、パターン裾部の残渣抑制の効果を奏功するとも考えられる。
【0032】
上記の特定の構造を有する(C1-1)オキシムエステル系化合物により、膜の表面から膜の深部まで効率的にUV硬化が進行すると推定される。その結果、膜の架橋度向上に加え、膜中における架橋度の勾配が均一となるため、優れた機械物性の効果を奏功すると考えられる。また上記の特定の構造を有する(C1-1)オキシムエステル系化合物は、露光時や熱硬化時にラジカル発生をするだけでなく、露光時や熱硬化時に結合開裂をした後、架橋剤として樹脂などと架橋構造を形成すると推定される。そのため、上記の(Ia)構造又は(IIa)構造が硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与すると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、優れたマイグレーション耐性の効果を奏功すると推定される。また配線中の金属のマイグレーション抑制や凝集抑制により、電子部品、半導体装置、表示装置、又は金属張積層板における高信頼性の効果も奏功すると推定される。
【0033】
<(A)バインダー樹脂>
本発明の感光性組成物は(A)バインダー樹脂を含有する。(A)バインダー樹脂とは、組成物を硬化した硬化物中に少なくとも一部が残存する耐熱性を有する樹脂である。(A)バインダー樹脂は、反応によって架橋構造が形成されて硬化する樹脂が好ましい。反応は、加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではなく、後述する(F)架橋剤によって架橋構造が形成されても構わない。(A)バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0034】
(A)バインダー樹脂は、酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂又は有機溶剤可溶性構造を有する有機溶剤可溶性樹脂が好ましい。(A)バインダー樹脂は、後述する(C)感光剤によって組成物にポジ型又はネガ型の感光性が付与され、ポジ型又はネガ型のパターンを形成可能な溶解性を有する樹脂が好ましい。(A)バインダー樹脂は樹脂の構造単位中に酸性基を有することがより好ましい。酸性基は、アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、メルカプト基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基が好ましく、さらに露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基がより好ましい。
【0035】
(A)バインダー樹脂はラジカル重合性基を有することが好ましく、樹脂の構造単位中にラジカル重合性基を有することがより好ましい。ラジカル重合性基はエチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましく、光反応性基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基がより好ましい。光反応性基は、スチリル基、シンナモイル基、マレイミド基、ナジイミド基、又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。一方、炭素数2~5のアルケニル基又は炭素数2~5のアルキニル基は、ビニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、クロトニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、エチニル基、又は2-プロパルギル基が好ましく、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、ビニル基又はアリル基がより好ましい。
【0036】
<(A1)樹脂及び(A2)樹脂>
(A)バインダー樹脂は、(A1)弱酸性基含有樹脂及び/又は(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有することが好ましい。
【0037】
(A)バインダー樹脂は、ハーフトーン特性向上の観点から、(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、(A1)弱酸性基含有樹脂が(WA)弱酸性基:フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種類以上の基を有することが好ましく、樹脂の構造単位中に(WA)弱酸性基を有することがより好ましい。(WA)弱酸性基は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、フェノール性水酸基、シラノール基、又は1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基が好ましく、フェノール性水酸基がより好ましい。なお(A)バインダー樹脂が後述する下記(P1α)及び/又は(P2α)の条件を満たす場合、又は、本発明の感光性組成物が後述する下記(1α)及び/又は(2α)の条件を満たす場合、(A)バインダー樹脂が有する酸性基は、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、メルカプト基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基が好ましく、(WA)弱酸性基は、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種類以上の基が好ましい。
【0038】
上記の(A1)弱酸性基含有樹脂は、(WA)弱酸性基の適度な酸性度によりハーフトーン露光部が緩やかな現像膜減りをするため、溶解性が制御されることでハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。(WA)弱酸性基のうちフェノール性水酸基は、アルカリ溶解促進作用により、パターン裾部の残渣抑制の効果が顕著となる。また組成物がネガ型の感光性を有する場合、(WA)弱酸性基のうちフェノール性水酸基は露光部における過度なUV硬化を制御するとともに、露光量に対するUV硬化度の勾配を緩やかにできるため、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。
【0039】
(A)バインダー樹脂は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含むことが好ましい。(A2)弱酸性基を有しない樹脂は(WA)弱酸性基とは異なる酸性基を有することが好ましく、樹脂の構造単位中に(WA)弱酸性基とは異なる酸性基を有することがより好ましい。(WA)弱酸性基とは異なる酸性基は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基がより好ましい。
【0040】
(A)バインダー樹脂は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、(A1)弱酸性基含有樹脂を含み、(A1)弱酸性基含有樹脂がラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0041】
(A)バインダー樹脂は、(A1)弱酸性基含有樹脂及び/又は(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有し、(A1)弱酸性基含有樹脂が、(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造(以下、「イミド構造等」)からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂、及び/又は、(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含み、(A2)弱酸性基を有しない樹脂が、(A2x)樹脂:ラジカル重合性基を有する樹脂及び/又は(A2y)樹脂:ラジカル重合性基を有しない樹脂を含むことが好ましい。
【0042】
(A)バインダー樹脂は、ハーフトーン特性向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、(A1)弱酸性基含有樹脂及び(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有し、(A1)弱酸性基含有樹脂が、(A1x)樹脂及び/又は(A1y)樹脂を含み、(A2)弱酸性基を有しない樹脂が、(A2x)樹脂及び/又は(A2y)樹脂を含むことが好ましい。
【0043】
なお(A1x)樹脂、(A1y)樹脂、(A2x)樹脂、及び(A2y)樹脂は、これらの中でそれぞれが別の樹脂を構成する構造や基を有する場合は、以下の表1-1に示す分類方法によりいずれかに分類するものとする。ある樹脂が(A1x)樹脂、(A1y)樹脂、(A2x)樹脂、及び(A2y)樹脂のうち、2つ以上に該当しうる場合は、当該分類方法によりいずれの樹脂に該当するか決定する。
【0044】
【0045】
(A)バインダー樹脂は、(A1x)樹脂及び/又は(A1y)樹脂を含有することが好ましく、(A1x)樹脂を含有することがより好ましく、(A1x)樹脂及び(A1y)樹脂を含有することがさらに好ましい。また(A)バインダー樹脂は、(A1x)樹脂及び/又は(A1y)樹脂を含有し、さらに(A2x)樹脂を含有することが好ましく、(A1x)樹脂、(A1y)樹脂、及び(A2x)樹脂を含有することがより好ましい。また(A)バインダー樹脂は、(A1x)樹脂、(A1y)樹脂、又は(A2x)樹脂を含有し、さらに(A2y)樹脂を含有することも好ましい。また(A)バインダー樹脂は、各樹脂による特性向上の観点から、(A1x)樹脂、(A1y)樹脂、(A2x)樹脂、及び(A2y)樹脂からなる群より選ばれる二種類以上を含有することも好ましい。
【0046】
<(A1x)樹脂>
(A1)弱酸性基含有樹脂は、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、(A1x)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を有する樹脂を含むことが好ましい。(A1x)樹脂は、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、(A1x-1)樹脂:ポリイミド、(A1x-2)樹脂:ポリイミド前駆体、(A1x-3)樹脂:ポリベンゾオキサゾール、(A1x-4)樹脂:ポリベンゾオキサゾール前駆体、(A1x-5)樹脂:ポリアミドイミド、(A1x-6)樹脂:ポリアミドイミド前駆体、(A1x-7)樹脂:ポリアミド、(A1x-8)樹脂:ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、(A1x-1)樹脂、(A1x-2)樹脂、(A1x-3)樹脂、(A1x-4)樹脂、(A1x-5)樹脂、(A1x-6)樹脂、(A1x-7)樹脂、及びそれらの共重合体(以下、「弱酸性基を有するポリイミド系の樹脂」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。(A1x)樹脂は、機械物性向上の観点から、(A1x-1)樹脂、(A1x-3)樹脂、及びそれらの共重合体を含有することがさらに好ましい。(A1x)樹脂は、露光時の感度向上の観点から、(A1x-2)樹脂、(A1x-4)樹脂、及びそれらの共重合体を含有することがさらに好ましい。(A1x)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0047】
上記の(A1x)樹脂は、樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、又はシロキサン構造を有することで、機械物性向上の効果が得られる。またこれらの構造が、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などを捕捉するため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0048】
一方、(A2x)樹脂及び(A2y)樹脂は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらの共重合体(以下、「弱酸性基を有しないポリイミド系の樹脂」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。
【0049】
(A1x)樹脂は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、(A1x-1)樹脂、(A1x-2)樹脂、(A1x-3)樹脂、(A1x-4)樹脂、(A1x-5)樹脂、(A1x-6)樹脂、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、(A1x)樹脂が、(WA)弱酸性基を含むアミン残基、及び/又は、(WA)弱酸性基を含むカルボン酸残基を有することが好ましい。
【0050】
(A1x-1)樹脂、(A1x-2)樹脂、(A1x-3)樹脂、(A1x-4)樹脂、(A1x-5)樹脂、(A1x-6)樹脂、及びそれらの共重合体からなる群より選ばれる一種類以上は、一般式(11)で表されるアミン残基及び一般式(13)で表されるアミン残基からなる群より選ばれる一種類以上、及び/又は、一般式(11)、(12)、及び(14)で表されるカルボン酸残基からなる群より選ばれる一種類以上を有することがより好ましい。
【0051】
【0052】
一般式(11)~(14)において、R31~R38は、それぞれ独立して、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、メルカプト基、又はスルホン酸基を表す。R39~R42は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のハロゲン化アルキル基を表す。R61~R68は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基、又は炭素数1~10のアシル基を表す。X11~X16は、それぞれ独立して、直接結合、炭化水素基、エーテル結合を含む炭化水素基、又は炭化水素基が結合したアミド基を表す。Y11~Y14は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、炭化水素基、エーテル結合を含む炭化水素基、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、カルボニルオキシ基を含む炭化水素基、又はカルボニルアミド基を含む炭化水素基を表す。a、b、c、d、e、及びfは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。g、h、i、j、m、及びnは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。k及びlは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。o、p、q、r、s、t、u、及びvは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。w、x、y、及びzは、それぞれ独立して、0~6の整数を表す。なお1≦a+g≦4、かつ、1≦b+h≦4である。また1≦c+i≦4、かつ、1≦d+j≦4である。また1≦e+m≦4、かつ、1≦f+n≦4である。*1~*13は、それぞれ独立して、樹脂中の結合点を表す。
【0053】
一般式(11)~(14)において、ハロゲン原子はフッ素原子が好ましい。ハロゲン化アルキル基はフッ化アルキル基が好ましい。X11~X16において、炭化水素基、エーテル結合を含む炭化水素基、及び炭化水素基が結合したアミド基における炭化水素基は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、炭素数6~15のアリーレン基、又は炭素数10~20のアリールアルキレン基が好ましい。Y11~Y14において、炭化水素基及びエーテル結合を含む炭化水素基における炭化水素基は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、又は炭素数6~15のアリーレン基が好ましい。Y11~Y14において、カルボニルオキシ基を含む炭化水素基及びカルボニルアミド基を含む炭化水素基の炭素数は1~15が好ましく、炭化水素基は脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造、縮合多環式構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造が好ましい。上述した置換基及び構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。なお一般式(13)で表されるアミン残基はベンゾオキサゾール環を形成することが好ましい。すなわち樹脂の構造単位中にベンゾオキサゾール環を有する樹脂において、ベンゾオキサゾール環が一般式(13)で表されるアミン残基を有することが好ましい。また一般式(11)で表されるアミン残基中のフェノール性水酸基が樹脂中の構造及び/又は基と反応してベンゾオキサゾール環を形成することも好ましい。
【0054】
それぞれの樹脂の全アミン残基に占める一般式(11)及び一般式(13)で表されるアミン残基の含有比率の合計、及び/又は、全カルボン酸残基に占める一般式(11)、(12)、及び(14)で表されるカルボン酸残基の含有比率の合計は、上記の特性向上の観点から、10mol%以上が好ましく、30mol%以上がより好ましく、50mol%以上がさらに好ましい。一方、一般式(11)及び一般式(13)で表されるアミン残基の含有比率の合計、及び/又は、一般式(11)、(12)、及び(14)で表されるカルボン酸残基の含有比率の合計は、上記の特性向上の観点から、100mol%以下が好ましく、90mol%以下がより好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0055】
(A1x)樹脂は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。ラジカル重合性基は、一般式(51)、(52)、(53)、(54)及び(55)からなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましい。ラジカル重合性基は、樹脂が有するフェノール性水酸基及び/又はカルボキシ基の一部を、ラジカル重合性基を有する化合物と反応させて得られるものが好ましい。
【0056】
【0057】
一般式(51)~(55)において、X21~X24は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。X25は2~6価の有機基を表す。X26は直接結合又は2~6価の有機基を表す。R181~R202は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~15のアリール基を表す。a、b、c、d、及びeは、それぞれ独立して、0又は1を表す。f及びgは、それぞれ独立して、1~5の整数を表す。
【0058】
一般式(51)~(55)において、X25は2~6価の脂肪族基が好ましく、2~6価の炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。X26は直接結合又は2~6価の脂肪族基が好ましく、2~6価の炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。上述した置換基及び構造は、ヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0059】
(A1x)樹脂は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、ラジカル重合性基を有しない(A1x)樹脂、及び、ラジカル重合性基を有する(A1x)樹脂を含有することが好ましい。上記の構成とすることで、ラジカル重合性基を有しない(A1x)樹脂が、酸性基又は有機溶剤可溶性構造によるパターン裾部の残渣抑制と、金属不純物やイオン不純物などの捕捉能などを奏する一方、ラジカル重合性基を有する(A1x)樹脂が、露光時の感度向上及びラジカル重合促進による膜の架橋度向上などを奏すると考えられる。このような(A1x)樹脂における機能分離により、複数の特性向上の効果が顕著となる。
【0060】
(A1x)樹脂の酸当量は、露光時の感度向上の観点から、200g/mol以上が好ましい。一方、(A1x)樹脂の酸当量は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、600g/mol以下が好ましい。ここでいう露光とは、活性化学線(放射線)の照射のことであり、例えば、可視光線、紫外線、電子線、又はX線などの照射が挙げられる。以降、露光とは、活性化学線(放射線)の照射をいう。(A1x)樹脂の二重結合当量は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、200g/mol以上が好ましい。一方、(A1x)樹脂の二重結合当量は、露光時の感度向上の観点から、3,000g/mol以下が好ましい。
【0061】
<ポリイミド系の樹脂>
以下、(A1x)樹脂である弱酸性基を有するポリイミド系の樹脂と、(A2x)樹脂又は(A2y)樹脂である弱酸性基を有しないポリイミド系の樹脂についてまとめて記載する。これらの樹脂をまとめてポリイミド系の樹脂という場合もある。ポリイミド前駆体としては、例えば、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、又はポリイソイミドが挙げられる。ポリイミドとしては、例えば、ポリイミド前駆体を脱水閉環させた樹脂が挙げられる。ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、例えば、ポリヒドロキシアミドが挙げられる。ポリベンゾオキサゾールとしては、例えば、ポリベンゾオキサゾール前駆体を脱水閉環させた樹脂が挙げられる。ポリアミドイミド前駆体としては、例えば、トリカルボン酸無水物などと、ジアミンなどとを反応させることで得られる樹脂が挙げられる。ポリアミドイミドとしては、例えば、ポリアミドイミド前駆体を脱水閉環させた樹脂が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ジカルボン酸塩化物などと、ジアミンなどとを反応させることで得られる樹脂が挙げられる。
【0062】
ポリイミド前駆体は、機械物性向上の観点から、アミド酸エステル構造単位及び/又はアミド酸アミド構造単位を有することが好ましい。またポリイミド前駆体は、アミド酸構造単位、アミド酸エステル構造単位、又はアミド酸アミド構造単位の一部がイミド閉環したイミド閉環構造単位を有しても構わない。上記のポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、及びポリアミドイミド前駆体は、ポリアミドとの共重合体であっても構わない。
【0063】
ポリイミド系の樹脂は、露光時の感度向上の観点から、フッ素原子を有するカルボン酸残基及び/又はフッ素原子を有するアミン残基を有することが好ましい。それぞれの樹脂の全カルボン酸残基及び全アミン残基に占める、フッ素原子を有するカルボン酸残基及びフッ素原子を有するアミン残基の含有比率の合計は10~100mol%が好ましく、30~100mol%がより好ましく、50~100mol%がさらに好ましい。全アミン残基に占めるフッ素原子を有するアミン残基の含有比率の合計及び全カルボン酸残基に占めるフッ素原子を有するカルボン酸残基の含有比率の合計に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。
【0064】
ポリイミド系の樹脂は、保管安定性向上の観点から、樹脂の末端にモノアミン、ジカルボン酸無水物、又はモノカルボン酸誘導体で封止された構造を有することが好ましい。ポリイミド系の樹脂、は露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、樹脂の末端に、樹脂などと反応可能なラジカル重合性基又は架橋性基を有することが好ましく、マレイミド基又はナジイミド基を有することがより好ましい。これらの基を有する酸単量体としては、例えば、マレイン酸無水物又はナジック酸無水物が挙げられる。
【0065】
<(A)バインダー樹脂の構造中のフッ素元素の含有量>
(A)バインダー樹脂は、パターン裾部の残渣抑制及びマイグレーション耐性向上の観点から、下記(P1α)の条件を満たすことも好ましい。(A)バインダー樹脂は、さらに下記(P2α)の条件を満たすことがより好ましい。(A)バインダー樹脂がポリイミド系の樹脂である場合も同様に、パターン裾部の残渣抑制及びマイグレーション耐性向上の観点から、下記(P1α)の条件を満たすことも好ましく、さらに下記(P2α)の条件を満たすことがより好ましい。
(P1α)(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量が10,000質量ppm以下
(P2α)(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ化物イオンの含有量が10,000質量ppm以下。
【0066】
(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、0質量ppm以上が好ましく、0.010質量ppm以上がより好ましく、0.030質量ppm以上がさらに好ましく、0.050質量ppm以上がさらにより好ましく、0.070質量ppm以上が特に好ましく、0.10質量ppm以上が最も好ましい。一方、フッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、10,000質量ppm以下が好ましく、5,000質量ppm以下がより好ましく、1,000質量ppm以下がさらに好ましく、500質量ppm以下がさらにより好ましく、300質量ppm以下が特に好ましく、100質量ppm以下が最も好ましい。さらにフッ素元素の含有量は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5質量ppm以下がさらにより好ましく、3質量ppm以下が特に好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
【0067】
(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ化物イオンの含有量の好ましい範囲も、それぞれ上記の(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0068】
(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量は0質量ppmであっても構わない。(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ化物イオンの含有量も0質量ppmであっても構わない。
【0069】
感光性組成物中にフッ素元素の含有量が特定数値以下である(A)バインダー樹脂を含有させることで、これらの樹脂中のフッ素元素やフッ化物イオン又はこれらの樹脂に由来するフッ素元素を含むアニオンの含有量が特定数値以下となるため、感光性組成物中の各成分の水素結合等の相互作用により、感光性組成物中のプロトンが局所的に活性化されると推定される。そのため、現像液に対する溶解促進作用により、パターン裾部の残渣抑制の効果が顕著になると考えられる。また意図的に樹脂中の上記の成分の含有量を特定数値以下とすることで、感光性組成物の硬化物中の上記の成分の含有量も低減され、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0070】
<ポリシロキサン及びその他の樹脂>
以下、弱酸性基を有しないポリイミド系の樹脂以外の(A1x)樹脂と、弱酸性基を有しないポリイミド系樹脂以外の(A2x)樹脂又は(A2y)樹脂についてまとめて記載する。なおポリシロキサンはシラノール基を有し、かつ樹脂の構造単位中にシロキサン構造を含むため(A1x)樹脂である。
【0071】
ポリシロキサンは、アルカリ現像液でのパターン加工性の観点から、酸性基を含むオルガノシラン単位を有することが好ましく、ハーフトーン特性向上の観点から、(WA)弱酸性基を含むオルガノシラン単位を有することがより好ましい。酸性基及び(WA)弱酸性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。ポリシロキサンは、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましく、ラジカル重合性基を含むオルガノシラン単位を有することがより好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。ポリシロキサンは、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を有することが好ましく、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、フェニル基、トリル基、又はメトキシフェニル基を含むオルガノシラン単位を有することがより好ましい。
【0072】
マレイミド樹脂は少なくとも2つのマレイミド基を有する樹脂である。マレイミド-スチレン樹脂はマレイミド基と、スチレン誘導体に由来する単位を有する樹脂である。マレイミド-トリアジン樹脂はマレイミド基と、トリアジン構造を含む単位を有する樹脂である。マレイミド-オキサジン樹脂はマレイミド基と、オキサジン構造を含む単位を有する樹脂である。これらはポリイミド系の樹脂とは異なる樹脂である。
【0073】
<(A1y)樹脂>
(A1)弱酸性基含有樹脂は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、(A1y)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂を含むことが好ましい。(A1y)樹脂は、フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール基含有エポキシ樹脂、及びフェノール基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A1y)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0074】
(A1y)樹脂は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、(y1)構造単位:フェノール性水酸基を少なくとも2つ含む構造単位;(y2)構造単位:フェノール性水酸基、及び芳香族基を含む構造単位;並びに(y3)構造単位:フェノール性水酸基を含む構造単位、及び第二の芳香族基を含む構造単位;からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましく、(y1)構造単位及び/又は(y2)構造単位を有することがより好ましい。また(A1y)樹脂は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、(y1)構造単位を有することが好ましい。
【0075】
(y1)構造単位における少なくとも2つのフェノール性水酸基は、同一の芳香環又は異なる芳香環に結合しており、異なる芳香環に結合していることが好ましく、縮合多環式構造における異なる芳香環に結合していることも好ましい。ここで(y2)構造単位における芳香族基は、フェノール性水酸基が結合する芳香環とは別の芳香族基である。また(y3)構造単位における第二芳香族基は、フェノール性水酸基が結合する芳香環を除く芳香族基である。第二芳香族基とは、(y2)構造単位における芳香族基(フェノール性水酸基が結合する芳香環とは別の芳香族基をいう)と区別するための呼称である。
【0076】
フェノール樹脂は、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はフェノールアラルキル樹脂が好ましい。フェノール樹脂は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、芳香族構造、又はヘテロ環構造を有することが好ましい。
【0077】
ポリヒドロキシスチレンは、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体に由来する単位、又は、スチレン誘導体に由来する単位を有することが好ましい。
【0078】
フェノール基含有エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物と、エポキシ反応性基を有するフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられ、フェノール基含有カルド系樹脂又はフェノール基含有エポキシ変性樹脂が好ましい。フェノール基含有エポキシ変性樹脂はフェノール基含有エポキシエステル樹脂が好ましい。フェノール基含有カルド系樹脂は、縮合多環式構造又は縮合多環式ヘテロ環構造を有することが好ましい。フェノール基含有エポキシ樹脂は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を有することが好ましい。
【0079】
フェノール基含有アクリル樹脂としては、例えば、後述するアクリル樹脂に、さらに付加反応性基を有するフェノール化合物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。またフェノール性水酸基を有する共重合成分と、(メタ)アクリル酸誘導体などのその他の共重合成分とをラジカル共重合させて得られる樹脂も挙げられる。なおフェノール基含有アクリル樹脂はポリヒドロキシスチレンとは異なる樹脂である。フェノール基含有アクリル樹脂は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくは芳香族構造を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体に由来する単位、又は、スチレン誘導体に由来する単位を有することが好ましい。
【0080】
これらの樹脂における縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、芳香族構造、又はヘテロ環構造は、フルオレン構造、アントラセン構造、ナフタレン構造、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、アダマンタン構造、キサンテン構造、イソインドリノン構造、ビフェニル構造、ベンゼン構造、ビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、ビスフェノールAF構造、イソシアヌル酸構造、又はトリアジン構造が好ましい。
【0081】
<(A2x)樹脂及び(A2y)樹脂>
(A2)弱酸性基を有しない樹脂は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及び機械物性向上の観点から、(A2x)樹脂を含むことが好ましく、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、さらに(A2y)樹脂を含むことが好ましい。(A2x)樹脂は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及び機械物性向上の観点から、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A2x)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。一方、(A2y)樹脂は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A2y)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0082】
(A)バインダー樹脂が、(A1)弱酸性基含有樹脂及び(A2)弱酸性基を有しない樹脂を含有し、(A1)弱酸性基含有樹脂が(A1x)樹脂及び/又は(A1y)樹脂を含み、(A2)弱酸性基を有しない樹脂が(A2x)樹脂及び/又は(A2y)樹脂を含む場合、(A2x)樹脂及び(A2y)樹脂に関する例示及び好ましい記載も、それぞれ上記の通りである。
【0083】
多環側鎖含有樹脂は、マイグレーション耐性向上の観点から、縮合多環式構造又は縮合多環式ヘテロ環構造を有するカルド系樹脂が好ましい。酸変性エポキシ樹脂は、マイグレーション耐性向上の観点から、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、マイグレーション耐性向上の観点から、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体に由来する単位、又は、スチレン誘導体に由来する単位を有することが好ましい。またエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体に由来する単位を有することも好ましい。これらの樹脂における縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造は、フルオレン構造、アントラセン構造、ナフタレン構造、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、アダマンタン構造、キサンテン構造、イソインドリノン構造、ビフェニル構造、又はベンゼン構造が好ましい。
【0084】
(A)バインダー樹脂の合計100質量%に占める、(A1x)樹脂の含有比率の合計は、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、(A1x)樹脂の含有比率の合計は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。また(A1y)樹脂の含有比率の合計は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、(A1y)樹脂の含有比率の合計は、機械物性向上の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。また(A2x)樹脂及び(A2x)樹脂の含有比率の合計は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、(A2x)樹脂及び(A2y)樹脂の含有比率の合計は、機械物性向上の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0085】
本発明の感光性組成物の全固形分に占める(A)バインダー樹脂の含有比率は、各樹脂による特性向上の観点から、10質量%以上が好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有比率は、各樹脂による特性向上の観点から、75質量%以下が好ましい。なお組成物の全固形分とは、組成物中の溶剤を除く全ての成分の質量の合計をいう。また固形分濃度は、組成物1gを150℃で30分間加熱して蒸発乾固させ、加熱後に残存した質量を測定し、加熱前後の質量から算出される固形分濃度として算出できる。
【0086】
<(B)ラジカル重合性化合物>
本発明の感光性組成物は、(B)ラジカル重合性化合物(以下、「(B)化合物」)及び/又は(F)架橋剤を含有する。(B)化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物をいう。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。ラジカル重合性基は、ラジカル重合促進、露光時の感度向上、及び機械物性向上の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。(B)化合物が有するラジカル重合性基数は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましい。一方、ラジカル重合性基数は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましく、6個以下が特に好ましい。
【0087】
本発明の感光性組成物が(A)バインダー樹脂及び(B)化合物を含有する場合、(A)バインダー樹脂の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、25質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有量は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、85質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、75質量部以下がさらに好ましい。また(B)化合物の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、上記の特性向上の観点から、15質量部以上が好ましい。一方、(B)化合物の含有量は、上記の特性向上の観点から、75質量部以下が好ましい。
【0088】
<(B1)化合物~(B5)化合物>
本発明の感光性組成物は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、以下の条件(δ)、条件(ε)、及び条件(ζ)のうち少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(δ)(B)化合物が、以下の(B1)化合物及び(B2)化合物を含有する
(ε)(B)化合物が、以下の(B3)化合物及び(B4)化合物を含有する
(ζ)(B)化合物が、以下の(B1)化合物又は(B2)化合物を含有し、さらに、以下の(B3)化合物又は(B4)化合物を含有する
(B1)化合物:(I-b1)構造:縮合多環脂環式構造、脂環式構造、又はヘテロ環構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物
(B2)化合物:(I-b2)構造:縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む構造及び(II-b2)構造:脂肪族構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物
(B3)化合物:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、さらに(I-b3)構造:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基間を最小原子数4~10個で連結し、かつ、脂肪族構造を含む構造を有する化合物
(B4)化合物:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有し、さらに(I-b4)構造:少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基間を最小原子数11~45個で連結し、かつ、脂肪族構造を含む構造を有する化合物。
【0089】
(B1)化合物において(I-b1)構造は、機械物性向上の観点から、縮合多環脂環式構造が好ましく、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造又はアダマンタン構造がより好ましい。また上記の(I-b1)構造は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、ヘテロ環構造が好ましく、含窒素環状構造がより好ましく、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造がさらに好ましく、イソシアヌル酸構造又はトリアジン構造が特に好ましい。上記の(I-b1)構造におけるヘテロ環構造が有する窒素原子数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましく、3個以上がさらに好ましい。一方、窒素原子数は、6個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0090】
(B1)化合物は、さらに(II-b1)構造:脂肪族構造を含む構造を有することが好ましい。(B1)化合物が有する(II-b1)構造における脂肪族構造、(B2)化合物が有する上記の(II-b2)構造における脂肪族構造、(B3)化合物が有する上記の(I-b3)構造、及び(B4)化合物が有する(I-b4)構造における脂肪族構造は、それぞれ独立して、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、アルキレン基、オキシアルキレン基、ヒドロキシ基を含むアルキレン基、ヒドロキシ基を含むオキシアルキレン基、アルキレンカルボニル基、オキシアルキレンカルボニル基、又はアミノアルキレンカルボニル基が好ましい。これらの脂肪族構造は脂肪族多官能アルコールに由来する構造が好ましい。なお(B3)化合物及び(B4)化合物は、上記の(B1)化合物及び(B2)化合物とは異なる化合物であり、縮合多環脂環式構造、脂環式構造、又はヘテロ環構造を含む構造と、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は芳香族構造を含む構造とをいずれも有しない。
【0091】
(B2)化合物の(I-b2)構造における縮合多環式構造は、ハーフトーン特性向上及び機械物性向上の観点から、フルオレン構造、インダン構造、又はナフタレン構造が好ましい。また上記の(I-b2)構造における縮合多環式ヘテロ環構造は、機械物性向上の観点から、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造が好ましい。また上記の(I-b2)構造における芳香族構造は、ハーフトーン特性向上及び機械物性向上の観点から、ベンゼン構造又はビフェニル構造が好ましい。
【0092】
(B3)化合物又は(B4)化合物が2つの(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記の(I-b3)構造又は(I-b4)構造における最小原子数とは、2つの(メタ)アクリロイル基のカルボニル炭素間における炭素原子及びヘテロ原子を含む最小原子数をいう。なおカルボニル炭素間における炭素原子及びヘテロ原子に結合する原子は、最小原子数の計算には含めない。例えば、カルボニル炭素間に酸素原子、プロピレン基、及び酸素原子が存在する場合、最小原子数は5個である。また(B3)化合物又は(B4)化合物が3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する場合、上記の最小原子数とは、全ての(メタ)アクリロイル基のカルボニル炭素を連結する炭素原子及びヘテロ原子を含む最小原子数をいう。同様に、カルボニル炭素を連結する炭素原子及びヘテロ原子に結合する原子は、最小原子数の計算には含めない。
【0093】
(B3)化合物は、上記の(I-b3)構造における最小原子数を特定範囲とすることで、硬化物中の(B)化合物由来の低分子をより低減でき、マイグレーション耐性が向上すると推定される。上記の(I-b3)構造における最小原子数は、5個以上が好ましく、6個以上がより好ましい。一方、上記の(I-b3)構造における最小原子数は、9個以下が好ましく、8個以下がより好ましい。一方、(B4)化合物は、上記の(I-b4)構造における最小原子数を特定範囲とすることで、分子運動性向上により(メタ)アクリロイル基同士や、(メタ)アクリロイル基と他のラジカル重合性基との衝突確率が向上し、露光時の感度向上の効果が顕著となる。上記の(I-b4)構造における最小原子数は、13個以上が好ましく、15個以上がより好ましく、17個以上がさらに好ましく、20個以上が特に好ましい。一方、上記の(I-b4)構造における最小原子数は、40個以下が好ましく、35個以下がより好ましく、30個以下がさらに好ましく、25個以下が特に好ましい。
【0094】
上記の(B)化合物は、露光時や加熱時のラジカル発生により硬化物の架橋度向上の効果が得られることに加え、樹脂の側鎖や末端のラジカル重合性基との反応による架橋度向上の効果が得られるため、機械物性向上の効果が顕著となる。また上記の(II-b1)構造、(II-b2)構造、(I-b3)構造、又は(I-b4)構造における脂肪族構造を有する(B)化合物は、硬化物中の(B)化合物由来の低分子成分低減により、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0095】
(B)化合物は、ハーフトーン特性向上及び機械物性向上の観点から、さらに(B5)化合物:縮合多環式構造又は縮合多環式ヘテロ環構造を含む構造を有し、さらに少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物を含有することも好ましい。なお(B5)化合物は上記の(B2)化合物とは異なる化合物であり、上記の(II-b2)構造を有しない。(B5)化合物において上記の縮合多環式構造は、フルオレン構造、インダン構造、又はナフタレン構造が好ましい。また(B5)化合物において上記の縮合多環式ヘテロ環構造は、キサンテン構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造が好ましい。
【0096】
(B)化合物は、上記の(B1)化合物、(B2)化合物、(B3)化合物、(B4)化合物、及び(B5)化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することも好ましい。これらの(B)化合物の好ましい含有量も、それぞれ上記と同様である。
【0097】
<(C)感光剤>
本発明の感光性組成物は(C)感光剤を含有する。(C)感光剤とは、露光によって結合開裂、反応、又は構造変化して別の化合物を発生させることで、組成物にポジ型又はネガ型の感光性を付与する化合物をいう。(C)感光剤は、(C1)光重合開始剤(以下、「(C1)化合物」)、(C2)ナフトキノンジアジド化合物(以下、「(C2)化合物」)、(C3)光酸発生剤(以下、「(C3)化合物」)、及び(C4)光塩基発生剤(以下、「(C4)化合物」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。組成物にネガ型の感光性を付与する場合、(C1)化合物を含有することが好ましい。組成物にポジ型の感光性を付与する場合、(C2)化合物を含有することが好ましい。(C2)化合物とは、露光によって構造変化してインデンカルボン酸及び/又はスルホインデンカルボン酸を発生する化合物をいう。(C3)化合物とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して酸を発生する化合物をいう。(C4)化合物とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して塩基を発生する化合物をいう。
【0098】
(C)感光剤の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上の観点から、1.0質量部以上が好ましい。一方、(C)感光剤の含有量は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、30質量部以下が好ましい。
【0099】
<(C1)光重合開始剤>
本発明の感光性組成物は(C1)光重合開始剤を含有する。(C1)光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。(C1)光重合開始剤を含有させることがネガ型のパターン形成に好適であり、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0100】
本発明の感光性組成物は、(C1)光重合開始剤が(C1-1)オキシムエステル系化合物(以下、「(C1-1)化合物」)を含有する。(C1-1)化合物とは、分子中に露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する構造として、オキシムエステル構造を有する化合物をいう。(C1-1)化合物を含有することで、露光時の感度向上及び機械物性向上の効果が顕著となる。
【0101】
(C1-1)化合物の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。一方、(C1-1)化合物の含有量は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0102】
<(C1-1)化合物;特定の構造を有する化合物>
本発明の感光性組成物は、(C1-1)化合物が、
(Ia)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(Ib)構造:オキシムエステルカルボニル構造、(Ic)構造:酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはリン原子を含む置換基が結合したアリールカルボニル構造、又は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、若しくはジアリールスルフィド構造が結合したカルボニル構造、及び(Id)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する、及び/又は、
(IIa)構造:縮合多環式ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又はジアリールスルフィド構造、(IIb)構造:少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造、及び(IIc)構造:炭素数1~20の脂肪族基及び/又は炭素数4~20の脂環式基、を有する。これらの構造を有する(C1-1)化合物をまとめて特定の構造を有する(C1-1)化合物という場合もある。
【0103】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において、上記の(Ia)構造及び(IIa)構造における縮合多環式ヘテロ環構造は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、ベンゾカルバゾール構造、インドール構造、インドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、フェノチアジン構造、又はフェノチアジンオキシド構造が好ましい。上記の(Ia)構造及び(IIa)構造における縮合多環式構造は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、又はベンゾインダン構造が好ましい。上記の(Ia)構造及び(IIa)構造におけるジアリールスルフィド構造は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、ジフェニルスルフィド構造、ナフチルフェニルスルフィド構造、又はジナフチルスルフィド構造が好ましい。
【0104】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において、上記の(Ia)構造及び(IIa)構造は、フォトブリーチング性を有する観点から、インドール構造、ベンゾインドール構造、フェノチアジン構造、フェノチアジンオキシド構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、又はジフェニルスルフィド構造が好ましい。上記の(Ib)構造は、フォトブリーチング性を有する観点から、上記の(Ia)構造に結合していることが好ましい。上記の(IIb)構造は、フォトブリーチング性を有する観点から、上記の(IIa)構造に結合していることが好ましい。特定の構造を有する(C1-1)化合物がフォトブリーチング性を有することで、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及びハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。また硬化物中の(C1-1)化合物由来の低分子成分低減により、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。なおフォトブリーチング性とは、露光によって結合開裂及び/又は反応することで、紫外領域の波長(例えば、400nm以下)の吸光度及び/又は可視光線の波長(380~780nm)の吸光度が低下することをいう。
【0105】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において、上記の(Ib)構造及び(IIb)構造におけるオキシムエステルカルボニル構造中のオキシムエステル骨格はアシル基を有することが好ましい。アシル基は、露光時の感度向上の観点から、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を含むアシル基が好ましく、アセチル基又はプロパノイル基がより好ましい。一方、アシル基は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、炭素数6~10のアリール基を含むアシル基が好ましく、ベンゾイル基がより好ましい。
【0106】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において上記の(Ic)構造は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、上記の(Ia)構造に結合していることが好ましい。上記の(Ic)構造における酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはリン原子を含む置換基は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、エーテル結合を含む炭化水素基、エーテル結合とカルボニル基を含む炭化水素基、カルボニル基を含む炭化水素基、複素環基、複素環オキシ基、又は複素環を含むアルキル基が結合した置換基であって、カルボニルオキシ基、スルホニルオキシ基、カルボニルアミド基、又はホスホリルオキシ基であることが好ましい。カルボニルアミド基における窒素原子は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基が結合していることが好ましい。脂肪族基、脂環式基、芳香族基、エーテル結合を含む炭化水素基、エーテル結合とカルボニル基を含む炭化水素基、カルボニル基を含む炭化水素基、複素環基、複素環オキシ基、又は複素環を含むアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数4~20の(シクロアルキル)アルキル基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数8~20のジアルキルアリール基、炭素数9~20のトリアルキルアリール基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲン化アルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数4~10の複素環基、炭素数4~10の複素環オキシ基、炭素数5~20の複素環を含むアルキル基、又は炭素数1~10のアシル基が好ましい。複素環基は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含む複素環基が好ましい。
【0107】
上記の(Ic)構造におけるアリールカルボニル構造は、炭素数7~16のアリールカルボニル構造が好ましく、炭素数7~11のアリールカルボニル構造がより好ましい。アリールカルボニル構造は、フェニレンカルボニル基、ナフチレンカルボニル基、又はアントラセニレンカルボニル基が好ましい。上記の(Ic)構造における縮合多環式構造は、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、又はベンゾインダン構造が好ましい。上記の(Ic)構造における縮合多環式ヘテロ環構造は、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、ベンゾカルバゾール構造、インドール構造、インドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、フェノチアジン構造、又はフェノチアジンオキシド構造が好ましい。上記の(Ic)構造におけるジアリールスルフィド構造は、ジフェニルスルフィド構造、ナフチルフェニルスルフィド構造、又はジナフチルスルフィド構造が好ましい。
【0108】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において上記の(Id)構造は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、上記の(Ia)構造及び/又は(Ib)構造に結合していることが好ましい。上記の(IIc)構造は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、上記の(IIa)構造及び/又は(IIb)構造に結合していることが好ましい。上記の(Id)構造及び(IIc)構造における脂肪族基及び/又は脂環式基は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、炭素数4以上が好ましく、炭素数6以上がより好ましく、炭素数8以上がさらに好ましい。一方、上記の(Id)構造及び(IIc)構造における脂肪族基及び/又は脂環式基は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、炭素数18以下が好ましく、炭素数15以下がより好ましく、炭素数12以下がさらに好ましい。脂肪族基は、直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましい。脂環式基は、直鎖又は分岐のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、又はシクロアルキニル基が好ましい。上記の(Id)構造及び(IIc)構造における脂肪族基及び/又は脂環式基は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及びハーフトーン特性向上の観点から、ハロゲン原子で置換された基を有することが好ましく、フッ素原子で置換された基を有することがより好ましい。ハロゲン原子で置換された基は、トリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、フルオロシクロペンチル基、フルオロフェニル基、又はペンタフルオロフェニル基が好ましい。上記のポリイミド系の樹脂がフッ素原子を有するカルボン酸残基及び/又はフッ素原子を有するアミン残基を有する場合、(C1-1)化合物がハロゲン原子で置換された基を有することが好ましい。
【0109】
特定の構造を有する(C1-1)化合物において上記の(Ib)構造及び(Ic)構造は、各構造による特性向上の観点から、上記の(Ia)構造に結合していることが好ましく、上記の(Ib)構造、(Ic)構造、及び(Id)構造が、上記の(Ia)構造に結合していることがより好ましい。特定の構造を有する(C1-1)化合物において上記の(IIb)構造及び(IIc)構造は、各構造による特性向上の観点から、上記の(IIa)構造に結合していることが好ましい。
【0110】
特定の構造を有する(C1-1)化合物は、一般式(15)、(16)、及び(17)で表される化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。
【0111】
【0112】
一般式(15)~(17)において、R101~R103は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数4~10の複素環基、炭素数4~10の複素環オキシ基、炭素数1~10のアシル基、又は、炭素数1~10のアシル基及び炭素数1~20の炭化水素基を有するオキシムエステルカルボニル構造を表す。R104~R107は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~15のアリール基を表す。R108及びR109は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数4~20の(シクロアルキル)アルキル基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数4~10の複素環基、炭素数4~10の複素環オキシ基、炭素数5~20の複素環を含むアルキル基、又は炭素数1~10のアシル基を表す。R110~R115は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、又は環を形成する基を表す。なお複数のR110又は複数のR111による環員の炭素数は4~10である。複数のR112又は複数のR113による環員の炭素数は4~10である。複数のR114又は複数のR115による環員の炭素数は4~10である。R116~R119は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数4~20の(シクロアルキル)アルキル基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数8~20のジアルキルアリール基、炭素数9~20のトリアルキルアリール基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数3~20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数4~10の複素環基、炭素数4~10の複素環オキシ基、炭素数1~10のアシル基、又はニトロ基を表す。R120~R125は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、又は環を形成する基を表す。なおR120及びR121で環を形成する場合、R120及びR121による環員の炭素数は0~4である。またR122及びR123で環を形成する場合、R122及びR123による環員の炭素数は0~4である。またR124及びR125で環を形成する場合、R124及びR125による環員の炭素数は0~4である。R126及びR127は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~15のアリール基を表す。W1及びW2は、それぞれ独立して、炭素数6~15のアリーレン基、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又は炭素数6~15のアリーレン基が2つ結合したスルフィド構造を表す。X1~X7は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。X8は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、又は炭素数6~15のアリーレン基を表す。Y1~Y3は、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y4及びY5は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表す。Y6及びY7は、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子を表す。Y8及びY9は、それぞれ独立して、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、窒素原子、又はホスホリル基を表す。Y1、Y2、又はY3が炭素原子の場合、対応するa、b、又はcは2である。Y1、Y2、又はY3が窒素原子の場合、対応するa、b、又はcは1である。Y1、Y2、又はY3が酸素原子又は硫黄原子の場合、対応するa、b、又はcは0である。d及びeは、それぞれ独立して、0~2の整数を表す。f、g、h、i、j、及びkは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。l、m、n、及びoは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。Y4又はY5が直接結合、酸素原子、又は硫黄原子の場合、対応するp又はqは0である。Y4又はY5が窒素原子の場合、対応するp又はqは1である。Y8又はY9が直接結合、酸素原子、硫黄原子、又はスルホニル基の場合、対応するr又はsは0である。Y8又はY9が窒素原子の場合、対応するr又はsは1である。Y8又はY9がホスホリル基の場合、対応するr又はsは2である。t、u、及びvは、それぞれ独立して、0又は1であって、t+u+vは0又は1である。t+u+vが0の場合、wは0である。t+u+vが1の場合、wは1である。tが0の場合、yは1である。tが1の場合、yは0である。uが0の場合、sは上記の通りである。uが1の場合、sは0である。vが0の場合、bは上記の通りである。vが0の場合、bは0である。xは0~4の整数を表す。*1~*3は、それぞれ独立して、*4との結合点を表す。複数のR110若しくは複数のR111;複数のR112若しくは複数のR113;又は複数のR114若しくは複数のR115で形成される炭素数4~10の環は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、又はシクロペンタン環が好ましい。上述した置換基及び構造はヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0113】
(C1-1)化合物は、(Ib)構造及び(IIb)構造中のカルボニル構造を含む基と、オキシム構造の酸素原子を含む基との、オキシム構造のC=N結合に対するシス-トランス異性体を含み、シス-トランス異性体の合計100質量%に占める、シス異性体又はトランス異性体の含有比率は、上記の特性向上の観点から、90.0質量%以上が好ましく、95.0質量%以上がより好ましく、97.0質量%以上がさらに好ましく、99.0質量%以上が特に好ましい。一方、シス異性体(Z体)又はトランス異性体(E体)の含有比率は、上記の特性向上の観点から、100.0質量%以下が好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.5質量%以下がさらに好ましい。当該トランス異性体の含有比率は特定の構造を有する(C1-1)化合物における含有比率であることが好ましい。
【0114】
上記の特定の構造を有する(C1-1)化合物は、加熱時のラジカル発生やオキシムエステルカルボニル構造による相互作用により、硬化物の架橋度向上や樹脂の閉環反応促進の効果が得られ、機械物性向上の効果が顕著となる。また上記の(Ib)構造及び(Ic)構造、又は、(IIb)構造におけるカルボニル構造中のπ電子が、硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与するため、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0115】
<(C1-1)化合物;別の構造を有する化合物>
本発明の感光性組成物は(C1-1)化合物が、さらに別の構造を有することも好ましい。(C1-1)化合物が、さらに特定の構造を有する(C1-1)化合物とは異なる(C1-1)化合物「以下、別の構造を有する(C1-1)化合物」を含有することも好ましい。
【0116】
別の構造を有する(C1-1)化合物は、機械物性向上の観点から、(Ca)構造:縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジアリールスルフィド構造、又はベンゼン構造に、少なくとも1つのオキシムエステル構造又は少なくとも1つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造を有することが好ましく、露光時の感度向上の観点から、(Cb)構造:ニトロ基、ハロゲン原子で置換された基、ナフチルカルボニル構造、トリメチルベンゾイル構造、チオフェニルカルボニル構造、フリルカルボニル構造、少なくとも2つのオキシムエステル構造、及び少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造、からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。別の構造を有する(C1-1)化合物は、露光時の感度向上、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、(Ca)構造及び(Cb)構造を有することがより好ましく、(Ca)構造中の縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジアリールスルフィド構造、又はベンゼン構造に、(Cb)構造が結合していることがさらに好ましい。
【0117】
(Ca)構造中の縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、及びジアリールスルフィド構造に関する例示及び好ましい記載は、上記の特定の構造を有する(C1-1)化合物における(Ia)構造及び(IIa)構造に関する例示及び好ましい記載の通りである。
【0118】
別の構造を有する(C1-1)化合物は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、ハロゲン原子で置換された基を有することが好ましく、フッ素原子で置換された基を有することがより好ましい。ハロゲン原子で置換された基は、トリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、フルオロシクロペンチル基、フルオロフェニル基、又はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0119】
別の構造を有する(C1-1)化合物は、フォトブリーチング性を有する観点から、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インドール構造、ベンゾインドール構造、フェノチアジン構造、フェノチアジンオキシド構造、又はジフェニルスルフィド構造を有することが好ましく、縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジフェニルスルフィド構造、又はベンゼン構造に、少なくとも1つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造を有することも好ましい。別の構造を有する(C1-1)化合物がフォトブリーチング性を有することで、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、及びハーフトーン特性向上の効果が顕著となる。
【0120】
上記の別の構造を有する(C1-1)化合物は、加熱時のラジカル発生やオキシムエステル構造による相互作用により、硬化物の架橋度向上や樹脂の閉環反応促進の効果が得られるため、機械物性向上の効果が顕著となる。
【0121】
特定の構造を有する(C1-1)化合物の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。一方、特定の構造を有する(C1-1)化合物の含有量は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0122】
別の構造を有する(C1-1)化合物の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上、ハーフトーン特性向上、及び機械物性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。一方、別の構造を有する(C1-1)化合物の含有量は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性向上の観点から、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0123】
(C1-1)化合物の合計100質量%に占める、特定の構造を有する(C1-1)化合物の含有比率は、露光時の感度向上、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性向上、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらにより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、特定の構造を有する(C1-1)化合物の含有比率は、露光時の感度向上及びハーフトーン特性向上の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、75質量%以下が特に好ましい。
【0124】
(C1-1)化合物の合計100質量%に占める、別の構造を有する(C1-1)化合物の含有比率は、上記の特性向上の観点から、0質量%以上が好ましい。一方、別の構造を有する(C1-1)化合物の含有比率は、上記の特性向上の観点から、90質量%以下が好ましい。
【0125】
<その他の光重合開始剤>
本発明の感光性組成物は、さらにその他の光重合開始剤を含有することも好ましい。その他の光重合開始剤は、ベンジルケタール系化合物、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、アクリジン系化合物、チタノセン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、芳香族ケトエステル系化合物、又は安息香酸エステル系化合物が好ましく、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、又はホスフィンオキシド系化合物が好ましい。これらの(C)感光剤の好ましい含有量も、それぞれ上記と同様である。
【0126】
上記のα-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、及びホスフィンオキシド系化合物は、加熱時のラジカル発生や、ヒドロキシ基、アミノ基、イミダゾール構造、又はホスフィンオキシド構造による相互作用により、硬化物の架橋度向上や樹脂の閉環反応促進の効果が得られるため、機械物性向上の効果が顕著となる。
【0127】
<(D)着色剤>
本発明の感光性組成物は、さらに(D)着色剤を含有することも好ましい。(D)着色剤とは、可視光線の波長の光を吸収することで着色させる化合物をいう。(D)着色剤は顔料又は染料が好ましい。(D)着色剤は、外光反射抑制の観点から、黒色剤又は二色以上の着色剤混合物を含有することが好ましい。黒色剤は有機黒色顔料及び/又は無機黒色顔料を含有することが好ましい。(D)着色剤における黒色とは、国際公開第2019/087985号の段落[0284]~段落[0285]に記載の通りである。
【0128】
本発明の感光性組成物の全固形分に占める(D)着色剤の含有比率は、外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、(D)着色剤の含有比率は、露光時の感度向上及びパターン裾部の残渣抑制の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0129】
本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性、及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに有機黒色顔料を含有し、有機黒色顔料が、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、及びアゾメチン系黒色顔料からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、ベンゾフラノン系黒色顔料が、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、ペリレン系黒色顔料が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含み、アゾメチン系黒色顔料が、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含むことがより好ましい。上記の有機黒色顔料は紫外領域の波長の透過率が高いため、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0130】
有機黒色顔料は、アントラキノン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、又はカーボンブラックも好ましい。カーボンブラックは、樹脂被覆、染料被覆、酸化処理、イオン性基を有する有機基で表面修飾、又はスルホン酸基で表面処理されていることが好ましい。
【0131】
本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性の観点から、さらに、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有することが好ましく、二色以上が、青色及び/又は紫色を含み、かつ、赤色及び橙色を含み、着色顔料が、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インダントロン系顔料、又はジオキサジン系顔料であって、着色染料が、スクアリリウム系染料、キサンテン系染料、トリアリールメタン系染料、又はフタロシアニン系染料であることがより好ましい。
【0132】
顔料の平均一次粒子径は、素子の信頼性向上の観点から、20nm以上が好ましい。一方、顔料の平均一次粒子径は、外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、150nm以下が好ましい。
【0133】
本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制及びハーフトーン特性の観点から、さらに無機黒色顔料を含有し、無機黒色顔料が、金属元素を含む窒化物、金属元素を含む炭化物、及び金属元素を含む酸窒化物(以下、「特定の無機黒色顔料」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、金属元素がジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、及びタンタルからなる群より選ばれる一種類以上であることが好ましく、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、若しくはタンタルの窒化物、炭化物、及び酸窒化物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましく、さらに露光時の感度向上の観点から、ジルコニウムの窒化物、ジルコニウムの炭化物、及びジルコニウムの酸窒化物からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがさらに好ましい。ジルコニウムの窒化物、ジルコニウムの炭化物、及びジルコニウムの酸窒化物は紫外領域の波長の透過率が高いため、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0134】
特定の無機黒色顔料は、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、ハフニウム、又はタンタルを主成分の元素に含むことが好ましい。なお主成分の元素とは、構成元素において質量を基準として最も多く含まれる元素をいう。特定の無機黒色顔料は、外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、主成分の元素とは異なる元素を含むことが好ましく、B、Al、Si、Mn、Co、Ni、Fe、Cu、Zn、又はAgを含むことがより好ましい。
【0135】
特定の無機黒色顔料に含まれる窒化ジルコニウム粒子などの各化合物粒子は、CuKα線をX線源としたX線回折スペクトルにおける(111)面に由来するピークの半値幅から結晶子サイズを計算できる。結晶子サイズは、外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、5.0nm以上が好ましい。一方、結晶子サイズは、露光時の感度向上及び外光反射抑制の観点から、60nm以下が好ましい。なお粒子粉体の結晶子サイズ、分散液中の粒子の結晶子サイズ、及び膜中の粒子の結晶子サイズは、国際公開第2021/182499号の段落[0172]~段落[0179]に記載の各方法に基づき、求めることができる。
【0136】
本発明の感光性組成物は、顔料が被覆層を有することも好ましい。被覆層とは、顔料表面を被覆する層をいい、例えば、シランカップリング剤による表面処理又は樹脂による被覆処理などで形成される層が挙げられる。顔料が被覆層を有することで、パターン裾部の残渣抑制、ハーフトーン特性、及びマイグレーション耐性向上の効果が顕著となる。被覆層は、シリカ被覆層、金属酸化物被覆層、及び金属水酸化物被覆層からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0137】
<(E)分散剤>
本発明の感光性組成物は、さらに(E)分散剤を含有することも好ましい。(E)分散剤とは、顔料表面と相互作用する構造と、顔料同士の接近を阻害する構造とを有する化合物をいう。(E)分散剤は、顔料の分散安定性向上の観点から、塩基性基、酸性基、又はそれらの塩構造を有することが好ましく、塩基性基又はその塩構造を有することがより好ましい。
【0138】
<(F)架橋剤>
本発明の感光性組成物は、(B)化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する。(F)架橋剤とは、樹脂などと反応可能な架橋性基、カチオン重合性基、又はアニオン重合性基を有する化合物をいう。(F)架橋剤は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基、オキセタニル基、及びブロックイソシアネート基(以下、「特定の架橋性基」)からなる群より選ばれる一種類以上の基を有することが好ましい。アルコキシアルキル基はアルコキシメチル基又はアルコキシエチル基が好ましく、メトキシメチル基又はメトキシエチル基がより好ましい。ヒドロキシアルキル基はメチロール基又はエチロール基が好ましい。(F)架橋剤が有する特定の架橋性基数は、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、4個以上がさらに好ましく、6個以上が特に好ましい。一方、特定の架橋性基数は、機械物性向上の観点から、12個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましい。
【0139】
(F)架橋剤の含有量は(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、露光時の感度向上及び機械物性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましい。一方、(F)架橋剤の含有量は、パターン裾部の残渣抑制及び機械物性向上の観点から、30質量部以下が好ましい。
【0140】
(F)架橋剤は、パターン裾部の残渣抑制及び機械物性向上の観点から、(F1)化合物:少なくとも2つのフェノール性水酸基、及び、少なくとも2つの特定の架橋性基を有する化合物及び/又は(F2)化合物:ヘテロ環構造を含む構造、及び、少なくとも2つの特定の架橋性基を有する化合物を含有することが好ましい。これらの(F)架橋剤の好ましい含有量も、それぞれ上記と同様である。
【0141】
(F1)化合物は、機械物性向上の観点から、1つの芳香族構造に、フェノール性水酸基及び特定の架橋性基が結合した構造、を少なくとも2つ有することが好ましく、1つの芳香族構造に、フェノール性水酸基及び少なくとも2つの特定の架橋性基が結合した構造、を少なくとも2つ有することがより好ましい。(F2)化合物におけるヘテロ環構造は、機械物性向上の観点から、含窒素環状構造が好ましく、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造がより好ましく、イソシアヌル酸構造、トリアジン構造、グリコールウリル構造、イミダゾリドン構造、ピラゾール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造、テトラゾール構造、又はプリン構造がさらに好ましい。(F2)化合物におけるヘテロ環構造が有する窒素原子数は、1個以上が好ましく、2個以上がより好ましく、3個以上がさらに好ましい。一方、窒素原子数は、6個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0142】
<(G)無機粒子>
本発明の感光性組成物は、マイグレーション耐性向上の観点から、さらに(G)無機粒子を含有することが好ましい。(G)無機粒子とは、金属元素、半金属元素、及び半導体元素からなる群より選ばれる元素を主成分に含む粒子をいう。なお主成分とは、構成成分において質量を基準として最も多く含まれる成分をいう。(G)無機粒子は、マイグレーション耐性向上の観点から、粒子表面にヒドロキシ基及び/又はシラノール基を有することが好ましい。(G)無機粒子は、マイグレーション耐性向上の観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化バナジウム粒子、酸化クロム粒子、酸化鉄粒子、酸化コバルト粒子、酸化銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化スズ粒子、及び酸化セリウム粒子からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、さらに外光反射抑制の観点から、シリカ粒子を含有することがより好ましい。
【0143】
シリカ粒子は、ハーフトーン特性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、粒子表面にラジカル重合性基、熱反応性基、ヒドロキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、フェニルシリル基、又はジフェニルシリル基を有することが好ましく、さらにハーフトーン特性向上の観点から、粒子表面にラジカル重合性基又は熱反応性基を有することがより好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0144】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、マイグレーション耐性向上の観点から、5.0nm以上が好ましい。一方、シリカ粒子の平均一次粒子径は、パターン裾部の残渣抑制及び外光反射抑制の観点から、200nm以下が好ましい。またシリカ粒子の平均一次粒子径は、高弾性率化及び低熱膨張率化の観点から、0.20μm超過が好ましい。一方、シリカ粒子の平均一次粒子径は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、100μm以下が好ましい。
【0145】
上記の顔料及びシリカ粒子の一次粒子径とは一次粒子における長軸径をいう。膜中の顔料及びシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」)を用いて膜の断面を撮像及び解析し、一次粒子30個を測定した平均値として算出できる。また顔料分散液中及びシリカ粒子分散液中の平均一次粒子径の好ましい範囲は、膜中の平均一次粒子径の好ましい範囲の通りである。顔料分散液中及びシリカ粒子分散液中の平均一次粒子径は、動的光散乱法により粒度分布を測定して求められる。測定器としては、例えば、動的光散乱法は堀場製作所社製のSZ-100が挙げられ、レーザー回折・散乱法は島津製作所社製のSLD3100又は堀場製作所社製のLA-920若しくはその同等品が挙げられる。
【0146】
上記のシリカ粒子は、粒子表面のヒドロキシ基及び/又はシラノール基の酸性度や負電荷により、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などを捕捉すると考えられる。また粒子の堅牢な構造によって熱処理や電圧印加をしても捕捉した不純物を保持し続けるため、マイグレーション耐性が向上すると推定される。また硬化物の表面に偏在するシリカ粒子により、入射した外光の反射・散乱が低減されると考えられる。
【0147】
シリカ粒子に占めるナトリウム元素の含有量は、マイグレーション耐性向上の観点から、1.0質量ppm以上が好ましい。一方、シリカ粒子に占めるナトリウム元素の含有量は、マイグレーション耐性向上の観点から、1,000質量ppm以下が好ましい。ナトリウム元素の存在形態としては、例えば、イオン(Na+)又はシラノール基との塩(Si-ONa)が挙げられる。
【0148】
本発明の感光性組成物の全固形分に占める(G)無機粒子の含有比率は、マイグレーション耐性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましい。一方、(G)無機粒子の含有比率は、パターン裾部の残渣抑制の観点から、90質量%以下が好ましい。
【0149】
<その他の添加剤及び溶剤>
本発明の感光性組成物は、さらに、熱発色剤、酸化発色剤、溶解促進剤、撥インク剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、又は界面活性剤を含有することも好ましい。これらの添加剤は公知のものを用いても構わない。本発明の感光性組成物は、さらに溶剤を含有することも好ましい。本発明の感光性組成物が顔料を含有し、さらに分散剤を含有する場合、溶剤は、顔料の分散安定性向上の観点から、アセテート結合、プロピオネート結合、又はブチレート結合を有する化合物が好ましい。
【0150】
<特定の芳香族化合物の含有量>
本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレン(以下、「特定の芳香族化合物」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(1)の条件を満たすことが好ましい。
(1)感光性組成物中に占めるベンゼン、トルエン、キシレン、及びナフタレンの含有量の合計が0.010質量ppm以上、1,000質量ppm以下。
【0151】
感光性組成物中に占める特定の芳香族化合物の含有量の合計は、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、特定の芳香族化合物の含有量の合計は、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0152】
上記の特定の構造を有する(C1-1)化合物の合計10,000質量部に対する、特定の芳香族化合物の含有量の合計は、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.010質量部以上が好ましく、0.030質量部以上がより好ましく、0.050質量部以上がさらに好ましく、0.070質量部以上がさらにより好ましく、0.10質量部以上が特に好ましい。一方、特定の芳香族化合物の含有量の合計は、パターン裾部の残渣抑制、機械物性向上、及びマイグレーション耐性向上の観点から、1,000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。さらに、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5.0質量部以下がさらにより好ましく、3.0質量部以下が特に好ましく、1.0質量部以下が最も好ましい。
【0153】
上記の特定の芳香族化合物を微量含有させることで、感光性組成物のパターン形成時に開口部表面が表面改質されるため、配線表面への残渣付着防止により、パターン裾部の残渣抑制の効果が顕著となる。また特定の芳香族化合物と、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体などの芳香環を有する樹脂とのπ電子相互作用や、ポリシロキサンなどの空の原子軌道である3d軌道を有するケイ素原子を含む樹脂とのπ電子による配位結合により、これらの樹脂が局所的に配向した状態となり、効率的に樹脂間の架橋反応や樹脂の閉環反応が進行するため、機械物性向上の効果が顕著となる。また特定の芳香族化合物が、硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与するため、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0154】
本発明の感光性組成物がネガ型の感光性を有する場合、パターン裾部の残渣抑制の観点から、本発明の感光性組成物は上記条件(1)を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物が上記条件(1)を満たす場合、本発明の感光性組成物は上記の(C1)光重合開始剤及び(B)化合物を含有することがより好ましい。上記の特定の芳香族化合物は、芳香環上のπ電子により、活性ラジカルやカチオン重合又はアニオン重合における活性種と相互作用して安定化することで、パターン裾部の残渣抑制の効果が顕著となる。特に、特定の芳香族化合物は、上記の(C1)光重合開始剤及び(B)化合物由来の活性ラジカルを捕捉することで、露光時のラジカル重合制御によるパターン裾部の残渣抑制の効果が顕著となる。
【0155】
なお感光性組成物の保管安定性が悪い場合、例えば、室温で保管後の異物発生が課題となる場合もある。感光性組成物の保管中に異物が発生した場合、本発明の電子部品における硬化物など、感光性組成物の硬化物の形成時、硬化物中やパターン開口部に異物が残存することとなる。このような異物は、例えば、表示装置における発光素子の信頼性低下や電子部品におけるマイグレーション耐性低下の要因となる。本発明の感光性組成物は特定の芳香族化合物の含有量を特定範囲とすることで、保管時の異物発生が抑制され、保管安定性向上の効果が顕著となる。
【0156】
<特定の含窒素化合物の含有量>
本発明の感光性組成物は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに、一般式(20)で表される環状アミド化合物、一般式(21)で表されるアミド化合物、一般式(22)で表される環状ウレア化合物、一般式(23)で表されるウレア化合物、一般式(24)で表されるオキサゾリドン化合物、及び一般式(25)で表されるイソオキサゾリドン化合物(以下、「特定の含窒素化合物」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(5)の条件を満たすことが好ましい。
(5)感光性組成物の全固形分に占める一般式(20)で表される環状アミド化合物、一般式(21)で表されるアミド化合物、一般式(22)で表される環状ウレア化合物、一般式(23)で表されるウレア化合物、一般式(24)で表されるオキサゾリドン化合物、及び一般式(25)で表されるイソオキサゾリドン化合物の含有量の合計が0.010質量%以上、5.0質量%以下。
【0157】
【0158】
一般式(20)~(25)において、R46~R56は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。R130は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、又は炭素数2~12のジアルキルアミノ基を表す。R131~R142は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基を表す。α、β、及びγは、それぞれ独立して、0~6の整数を表す。a、b、c、e、f、g、h、i、j、k、l、及びmは、それぞれ独立して、0~2の整数を表す。αが0の場合、aは0である。βが0の場合、bは0である。γが0の場合、cは0である。上述した置換基及び構造はヘテロ原子を有してもよく、無置換体又は置換体のいずれであっても構わない。
【0159】
特定の含窒素化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロピオンアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、又は1,1,3,3-テトラエチル尿素が挙げられる。
【0160】
感光性組成物の全固形分に占める特定の含窒素化合物の含有量の合計は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量%以上が好ましく、0.050質量%以上がより好ましく、0.070質量%以上がさらに好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。一方、特定の含窒素化合物の含有量の合計は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、4.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。さらに、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらにより好ましく、0.70質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が最も好ましい。
【0161】
上記の特定の含窒素化合物を微量含有させることで、非共有電子対を有する含窒素構造が電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などを捕捉するため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。また特定の含窒素化合物は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、及びそれらの前駆体などの芳香環を有する樹脂における芳香環上での架橋反応や樹脂の閉環反応、ポリシロキサンなどのシラノール基を有する樹脂における架橋反応を促進する触媒として機能するため、機械物性向上の効果が顕著となる。
【0162】
本発明の感光性組成物が上記のポリイミド系の樹脂を含有する場合、マイグレーション耐性向上の観点から、本発明の感光性組成物は、上記条件(5)を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物が上記条件(5)を満たす場合、ポリイミド系の樹脂は弱酸性基を有するポリイミド系の樹脂を含有することがより好ましい。
【0163】
<特定のカルボン酸及び特定のオキシム化合物の含有量>
本発明の感光性組成物は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに、酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸(以下、「特定のカルボン酸」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(2)の条件を満たす、及び/又は、さらに、アルドオキシム化合物及び/又はケトオキシム化合物(以下、「特定のオキシム化合物」)を含有し、かつ下記(3)の条件を満たすことが好ましい。特定のオキシム化合物は、縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、ジアリールスルフィド構造、又はベンゼン構造を有することがより好ましい。縮合多環式構造は、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、又はベンゾインダン構造が好ましい。縮合多環式へテロ環構造は、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、ベンゾカルバゾール構造、インドール構造、インドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、フェノチアジン構造、又はフェノチアジンオキシド構造が好ましい。ジアリールスルフィド構造は、ジフェニルスルフィド構造、ナフチルフェニルスルフィド構造、又はジナフチルスルフィド構造が好ましい。
(2)感光性組成物の全固形分に占める酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、及びトリメチル安息香酸の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下
(3)感光性組成物の全固形分に占めるアルドオキシム化合物及びケトオキシム化合物の含有量の合計が0.010質量ppm以上、500質量ppm以下。
【0164】
感光性組成物の全固形分に占める特定のカルボン酸の含有量の合計は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、特定のカルボン酸の含有量の合計は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、300質量ppm以下が好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0165】
感光性組成物の全固形分に占める特定のオキシム化合物の含有量の合計は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、特定のオキシム化合物の含有量の合計は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、300質量ppm以下が好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0166】
上記の特定のカルボン酸又は特定のオキシム化合物を微量含有させることで、カルボキシ基及びオキシム基の酸性度や負電荷により、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などが捕捉されるため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。また特定のカルボン酸及び特定のオキシム化合物が硬化物中の水分を捕捉するため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0167】
本発明の感光性組成物が上記の(C1-1)化合物を含有する場合、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、本発明の感光性組成物は上記条件(2)及び/又は条件(3)を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物が上記条件(2)及び/又は条件(3)を満たす場合、(C1-1)化合物は上記の特定の構造を有する(C1-1)化合物を含有することがより好ましい。上記の特定のカルボン酸又は特定のオキシム化合物を微量含有させることで、(C1-1)化合物から発生するラジカルが長寿命化すると考えられ、露光時の感度向上の効果が顕著となる。
【0168】
<塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量>
本発明の感光性組成物は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに、塩素元素を含む成分、臭素元素を含む成分、及び硫黄元素を含む成分からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(6)の条件を満たすことが好ましい。
(6)感光性組成物の全固形分に占める塩素元素及び臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、感光性組成物の全固形分に占める硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0169】
塩素元素を含む成分及び臭素元素を含む成分は、塩化アルキル化合物、塩化シクロアルキル化合物、塩化アリール化合物、臭化アルキル化合物、臭化シクロアルキル化合物、又は臭化アリール化合物が好ましい。硫黄元素を含む成分は、チオール化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、スルトン化合物、又はチオフェン化合物が好ましい。
【0170】
本発明の感光性組成物は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、塩素元素を含むイオン、臭素元素を含むイオン、及び硫黄元素を含むイオンからなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ上記条件(6)が下記条件(6I)であって、下記条件(6I)を満たすことがより好ましい。
(6I)感光性組成物の全固形分に占める、塩素元素を含むイオン中の塩素元素及び臭素元素を含むイオン中の臭素元素の含有量の合計が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下、及び/又は、感光性組成物の全固形分に占める、硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量が0.010質量ppm以上、かつ500質量ppm以下。
【0171】
塩素元素を含むイオン及び臭素元素を含むイオンは、塩化物イオン又は臭化物イオンが好ましい。硫黄元素を含むイオンは、硫化物イオン、硫化水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、又は亜硫酸イオンが好ましい。
【0172】
感光性組成物の全固形分に占める、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量ppm以上が好ましく、0.050質量ppm以上がより好ましく、0.070質量ppm以上がさらに好ましく、0.10質量ppm以上が特に好ましい。一方、塩素元素及び臭素元素の含有量の合計及び硫黄元素の含有量は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、300質量ppm以下が好ましく、200質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。さらに、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5.0質量ppm以下がさらにより好ましく、3.0質量ppm以下が特に好ましく、1.0質量ppm以下が最も好ましい。
【0173】
上記の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素を微量含有させることで、非共有電子対や空の原子軌道である3d軌道により、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などが捕捉されるため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0174】
本発明の感光性組成物が上記条件(2)及び/又は条件(3)を満たす場合、マイグレーション耐性向上の観点から、本発明の感光性組成物は上記条件(6)及び/又は条件(6I)を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物が上記条件(6)及び/又は条件(6I)を満たす場合、本発明の感光性組成物は上記の(C1-1)化合物を含有することがより好ましい。上記の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素を微量含有させることで、(C1-1)化合物の保管安定性が向上するため、特定のカルボン酸の含有量及び特定のオキシム化合物の含有量を制御する上で好適であり、露光時の感度向上の効果が顕著となる。また上記の塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素を微量含有させることで、保管時の異物発生が抑制され、保管安定性向上の効果が顕著となる。
【0175】
<水の含有量>
本発明の感光性組成物は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、さらに水を含有し、かつ下記(4)の条件を満たすことが好ましい。
(4)感光性組成物中に占める水の含有量が0.010質量%以上、3.0質量%以下。
【0176】
感光性組成物中に占める水の含有量は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、0.030質量%以上が好ましく、0.050質量%以上がより好ましく、0.070質量%以上がさらに好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。一方、水の含有量は、露光時の感度向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、2.5質量%以下が好ましく、2.2質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。さらに、1.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらにより好ましく、0.70質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が最も好ましい。
【0177】
上記の水は、水分子の双極子モーメントや水素結合などの相互作用により、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などを捕捉するため、イオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションが抑制され、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0178】
本発明の感光性組成物が上記条件(2)及び/又は条件(3)を満たす場合、マイグレーション耐性向上の観点から、本発明の感光性組成物は上記条件(4)を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物が上記条件(4)を満たす場合、本発明の感光性組成物は上記の(C1-1)化合物を含有することがより好ましい。本発明の感光性組成物は水の含有量を特定範囲とすることで、(C1-1)化合物の保管安定性が向上するため、特定のカルボン酸の含有量及び特定のオキシム化合物の含有量を制御する上で好適であり、露光時の感度向上の効果が顕著となる。また本発明の感光性組成物は水の含有量を特定範囲とすることで、保管時の異物発生が抑制され、保管安定性向上の効果が顕著となる。
【0179】
<フッ素元素の含有量>
本発明の感光性組成物は、パターン裾部の残渣抑制及びマイグレーション耐性向上の観点から、下記(1α)の条件を満たすことが好ましい。本発明の感光性組成物は、さらに下記(2α)の条件を満たすことがより好ましい。
(1α)感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
(2α)感光性組成物の全固形分に占めるフッ化物イオンの含有量が1,000質量ppm以下。
【0180】
感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、0質量ppm以上が好ましく、0.010質量ppm以上がより好ましく、0.030質量ppm以上がさらに好ましく、0.050質量ppm以上がさらにより好ましく、0.070質量ppm以上が特に好ましく、0.10質量ppm以上が最も好ましい。一方、フッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、1,000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下がさらに好ましく、100質量ppm以下が特に好ましい。さらにフッ素元素の含有量は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5質量ppm以下がさらにより好ましく、3質量ppm以下が特に好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
【0181】
感光性組成物の全固形分に占めるフッ化物イオンの含有量の好ましい範囲も、それぞれ上記の感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0182】
感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量は0質量ppmであっても構わない。感光性組成物の全固形分に占めるフッ化物イオンの含有量も0質量ppmであっても構わない。感光性組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量及び/又はフッ化物イオンの含有量が0質量ppmを超える場合、本発明の感光性組成物は、(A)バインダー樹脂、(C)感光剤、(B)化合物、若しくは(F)架橋剤が構造中にフッ素原子若しくはフッ化物イオンを有する、又は、さらにフッ素元素を含む成分及び/又はフッ化物イオンを含む成分を含有することが好ましい。
【0183】
フッ素元素を含む成分は、フッ化アルキル基を含む置換基を有するフェノール化合物、フッ化アルキル化合物、フッ化シクロアルキル化合物、又はフッ化アリール化合物が好ましい。フッ化物イオンイオンを含む成分はカチオン種として、アンモニウムイオン、一級アンモニウムイオン、二級アンモニウムイオン、三級アンモニウムイオン、又は四級アンモニウムイオンを含有することが好ましい。四級アンモニウムイオンは直鎖又は分岐の炭化水素基を有することが好ましい。炭化水素基は、炭素数1~15のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましい。
【0184】
感光性組成物中における、構造中にフッ素原子を含む化合物やフッ素元素を含む成分などの含有量を特定数値以下とすることで、これらの成分中のフッ素元素やフッ化物イオン又はこれらの成分に由来するフッ素元素を含むアニオンの含有量が特定数値以下となるため、感光性組成物中の各成分の水素結合等の相互作用により、感光性組成物中のプロトンが局所的に活性化されると推定される。そのため、現像液に対する溶解促進作用により、パターン裾部の残渣抑制の効果が顕著になると考えられる。また意図的に上記の成分の含有量を特定数値以下とすることで、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0185】
<特定の構造を有するカルボニル基含有化合物の含有量>
本発明の感光性組成物は、機械物性向上及びマイグレーション耐性向上の観点から、後述する特定の(C1x-DL)化合物を含有することが好ましい。特定の(C1x-DL)カルボニル基含有化合物に関する例示及び好ましい記載は、後述する硬化物中の特定の(C1x-DL)化合物における記載の通りである。
【0186】
<本発明の感光性組成物被膜及び感光性組成物フィルム>
本発明の感光性組成物被膜は、本発明の感光性組成物を成膜した、半硬化状態(Bステージ)のものである。半硬化状態とは、架橋構造を形成していないか、一部反応により架橋構造が形成されているものの、膜が流動性を有していること、又、その状態をいう。例えば、基板等に塗布した後、塗膜を減圧乾燥させて溶剤を留去させた状態、又は、塗膜を40~150℃で加熱して乾燥させた状態が挙げられ、アルカリ溶液又は有機溶剤に可溶である状態をいう。本発明の感光性組成物フィルムは、本発明の感光性組成物を成膜した感光性組成物被膜及び支持体を有することが好ましい。このような構成とすることが、ハンドリング性の観点から好適である。感光性組成物フィルムはポジ型又はネガ型の感光性を有する。感光性組成物フィルムは、単膜で自立膜を形成可能であることも好ましい。感光性組成物フィルムは接着性を有することが好ましく、複数の部材を接合していることも好ましい。単膜で自立膜を形成可能とは、支持体を有しない状態で、幅1.5cm以上、長さ5.0cm以上、かつ厚さ5.0μm以上の膜を形成可能であることをいう。すなわち感光性組成物フィルムは、単膜で自立膜を形成可能な感光性組成物被膜であることも好ましい。支持体はフレキシブル基板が好ましく、リジッド基板であっても構わない。支持体における感光性フィルム側の表面はシランカップリング剤などの表面処理がされていても構わない。支持体の厚みは、ハンドリング性の観点から、10~200μmが好ましい。
【0187】
<本発明の感光性組成物の硬化物>
本発明の硬化物は本発明の感光性組成物を硬化したものである。硬化とは、反応により架橋構造が形成され膜の流動性が無くなること、又、その状態をいう。反応は加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではないが、加熱によるものが好ましい。加熱によって架橋構造が形成され膜の流動性が無くなった状態を熱硬化という。加熱条件としては、例えば、150~500℃で、5~300分間加熱するなどの条件である。本発明の硬化物は、本発明の感光性フィルムを硬化したものであっても構わない。
【0188】
本発明の硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度は、外光反射抑制及び素子の信頼性向上の観点から、0.20以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。一方、上記光学濃度は、露光時の感度向上及び素子の信頼性向上の観点から、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がより好ましい。なお光学濃度は、組成物を加熱して硬化した硬化物における光学濃度であることが好ましい。光学濃度が上記範囲であることで入射した外光を遮光できるため、外光反射抑制の効果が顕著となる。また硬化物自身やその内側にある層の光劣化が抑制されるため、素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0189】
本発明の硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接は、素子の信頼性向上及び低伝送損失の観点から、0.00010~0.0100が好ましい。なお誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)による共振器法で測定した値である。また本発明の硬化物の周波数1GHzにおける誘電率は、素子の信頼性向上及び低伝送損失の観点から、2.0~3.5が好ましい。本発明の硬化物の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電正接及び誘電率に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。
【0190】
本発明の硬化物の吸水率は、マイグレーション耐性向上の観点から、0.10質量%以上が好ましく、0.30質量%以上がより好ましい。一方、上記吸水率は、マイグレーション耐性向上の観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.80質量%以下がさらに好ましく、0.60質量%以下がさらにより好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。
【0191】
<硬化物を具備する素子及び物品>
本発明の素子は本発明の硬化物を具備する。また本発明の物品は本発明の硬化物を具備する。物品としては、例えば、電子部品、電子装置、移動体、建造物、又は窓などが挙げられる。電子部品としては、例えば、半導体装置、アンテナ、表示装置、金属張積層板、配線基板、半導体パッケージ、半導体装置を含む能動部品、又は受動部品が挙げられる。本発明の感光性組成物は電子部品の形成に用いられることが好ましい。半導体装置としては、例えば、ファンアウト・ウェハレベル・パッケージ構造、ファンアウト・パネルレベル・パッケージ構造、又はアンテナ・イン・パッケージ構造を有する半導体装置が挙げられる。アンテナとしては、例えば、マイクロストリップラインアンテナ又はストリップラインアンテナが挙げられる。表示装置としては、例えば、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイ、マイクロ発光ダイオード(以下、「LED」)ディスプレイ、ミニLEDディスプレイ、又は液晶ディスプレイが挙げられる。金属張積層板としては、例えば、プリント回路基板が挙げられる。
【0192】
本発明の電子部品は本発明の硬化物を具備する。本発明の硬化物は、優れた機械物性及び高マイグレーション耐性を兼ね備えることが可能である。そのため本発明の感光性組成物は、電子部品における金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線の層間絶縁層の形成に用いられることが好ましい。また本発明の感光性組成物は、半導体装置における再配線の層間絶縁層の形成に用いられることも好ましく、アンテナにおける金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線とグランド配線との層間絶縁層の形成に用いられることも好ましく、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイ、又はマイクロLEDディスプレイにおける画素分割層、薄層トランジスタ(以下、「TFT」)の平坦化層、TFTの保護層、TFTの層間絶縁層、又はゲート絶縁層の形成に用いられることも好ましく、金属張積層板における金属配線の絶縁層、金属配線の保護層、又は金属配線のソルダーレジスト層の形成に用いられることも好ましい。
【0193】
<中空構造体>
本発明の中空構造体は本発明の硬化物を具備する。本発明の電子部品は本発明の中空構造体を有することが好ましい。本発明の中空構造体は、中空構造支持材及び中空構造屋根材を有する。中空構造支持材及び中空構造屋根材は、耐熱性向上及び信頼性向上の観点から、上記のポリイミド系の樹脂を含有することが好ましい。中空構造支持材の膜厚は5~20μmが好ましい。中空構造屋根材の膜厚は10~50μmが好ましい。本発明の感光性組成物は中空構造体の形成に用いられることが好ましい。本発明の感光性フィルムは中空構造体の形成に好適である。中空構造体を有する電子部品としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等が挙げられる。
【0194】
<電子部品>
以下、本発明の電子部品について述べる。ただし、本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。
【0195】
本発明の電子部品は上記の[18]の構成を有する。上記の構成とすることで、本発明の電子部品は、マイグレーション耐性に優れる電子部品を提供可能である。これは上記の(XIa)構造又は(XIIa)構造が、硬化物中における分極構造や電荷バランスの制御に寄与すると考えられる。また上記の(XIc)構造におけるカルボニル構造中のπ電子が、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物などを捕捉すると考えられる。さらに上記の(XId)構造又は(XIIc)構造における特定の炭素数の脂肪族基又は脂環式基による疎水性構造が、硬化物中への水分の浸透を抑制すると推定される。これらの作用の結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、優れたマイグレーション耐性の効果を奏功すると推定される。また配線中の金属のマイグレーション抑制や凝集抑制により、電子部品、半導体装置、表示装置、又は金属張積層板における高信頼性の効果も奏功すると推定される。
【0196】
上記の特定の構造を有する(C1x-DL)カルボニル基含有化合物(以下、「特定の(C1x-DL)化合物」)は、マイグレーション耐性向上の観点から、上記の(XIc)構造中のアリールカルボニル構造又はカルボニル構造とは別に、上記の(XIa)構造中のカルボニル基を有することが好ましい。上記の(XIa)構造中のカルボニル基は、ケトン構造、アルデヒド構造、カルボン酸構造、カルボン酸エステル構造、又はカルボン酸アミド構造におけるカルボニル基であることが好ましい。硬化物中の特定の(C1x-DL)化合物は、上記の感光性組成物中の特定の(C1x-DL)化合物、又は、特定の構造を有する(C1-1)化合物に由来する構造を有する化合物であることが好ましい。硬化物中の特定の(C1x-DL)化合物における(XIa)構造、(XIc)構造、(XId)構造、(XIIa)構造、及び(XIIc)構造に関する例示及び好ましい記載は、上記の特定の構造を有する(C1-1)化合物における(Ia)構造、(Ic)構造、(Id)構造、(IIa)構造、及び(IIc)構造に関する例示及び好ましい記載の通りである。
【0197】
本発明の電子部品における硬化物は、マイグレーション耐性向上の観点から、下記(Xπ)の条件を満たすことが好ましい。
(Xπ)硬化物中の特定の(C1x-DL)化合物の含有量が0.0010質量%以上、5.0質量%以下。
【0198】
硬化物中の特定の(C1x-DL)化合物の含有量は、マイグレーション耐性向上の観点から、0.0050質量%以上が好ましく、0.010質量%以上がより好ましく、0.050質量%以上がさらに好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。一方、特定の(C1x-DL)化合物の含有量は、マイグレーション耐性向上の観点から、4.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。さらに、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらにより好ましく、0.70質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が最も好ましい。
【0199】
<硬化物中の樹脂及び化合物>
本発明の電子部品は硬化物を具備する。本発明の電子部品における硬化物は、感光性組成物の硬化物であることが好ましく、樹脂を含有することがより好ましい。硬化物中の樹脂は、(XA1)弱酸性基含有樹脂及び/又は(XA2)弱酸性基を有しない樹脂を含有することが好ましい。硬化物中の(XA1)弱酸性基含有樹脂は、上記の(A1)弱酸性基含有樹脂又は当該樹脂に由来する構造を有する樹脂であることが好ましい。(XA2)弱酸性基を有しない樹脂は、上記の(A2)弱酸性基を有しない樹脂又は当該樹脂に由来する構造を有する樹脂であることが好ましい。硬化物中の樹脂に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂に関する例示及び好ましい記載の通りである。硬化物中の樹脂は、組成物中の(A)バインダー樹脂又は当該樹脂に由来する構造を有する樹脂のいずれであっても構わない。
【0200】
<硬化物中の特定の含窒素化合物の含有量>
本発明の電子部品における硬化物は、マイグレーション耐性向上の観点から、さらに、上記の特定の含窒素化合物からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、かつ下記(X5)の条件を満たすことが好ましい。特定の含窒素化合物に関する例示及び好ましい記載は、上記の感光性組成物中の特定の含窒素化合物における記載の通りである。
(X5)硬化物中の一般式(20)で表される環状アミド化合物、一般式(21)で表されるアミド化合物、一般式(22)で表される環状ウレア化合物、一般式(23)で表されるウレア化合物、一般式(24)で表されるオキサゾリドン化合物、及び一般式(25)で表されるイソオキサゾリドン化合物(以下、「特定の含窒素化合物」)の含有量の合計が0.010質量%以上、5.0質量%以下。
【0201】
<硬化物中のフッ素元素の含有量>
本発明の電子部品における硬化物はマイグレーション耐性向上の観点から、下記(X1α)の条件を満たすことが好ましい。本発明の電子部品における硬化物は、さらに下記(X2α)の条件を満たすことがより好ましい。
(X1α)硬化物中のフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
(X2α)硬化物中のフッ化物イオンの含有量が1,000質量ppm以下。
【0202】
硬化物中のフッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、0質量ppm以上が好ましく、0.010質量ppm以上がより好ましく、0.030質量ppm以上がさらに好ましく、0.050質量ppm以上がさらにより好ましく、0.070質量ppm以上が特に好ましく、0.10質量ppm以上が最も好ましい。一方、フッ素元素の含有量は上記の発明の効果の観点から、1,000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下がさらに好ましく、100質量ppm以下が特に好ましい。さらにフッ素元素の含有量は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5質量ppm以下がさらにより好ましく、3質量ppm以下が特に好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
【0203】
硬化物中のフッ化物イオンの含有量の好ましい範囲も、それぞれ上記の硬化物中のフッ素元素の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0204】
硬化物中のフッ素元素の含有量は0質量ppmであっても構わない。硬化物中のフッ化物イオンの含有量も0質量ppmであっても構わない。硬化物中のフッ素元素の含有量及び/又はフッ化物イオンの含有量が0質量ppmを超える場合、本発明の電子部品における硬化物は、硬化物中の樹脂が構造中にフッ素原子若しくはフッ化物イオンを有する、又は、さらにフッ素元素を含む成分及び/又はフッ化物イオンを含む成分を含有することが好ましい。
【0205】
硬化物中のフッ素元素を含む成分及びフッ化物イオンを含む成分に関する例示及び好ましい記載は、上記の感光性組成物中の各成分における記載の通りである。
【0206】
意図的に硬化物中のフッ素元素やフッ化物イオンの含有量を特定数値以下とすることで、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、マイグレーション耐性が向上すると推定される。
【0207】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物の製造方法は、(1)基板上に、本発明の感光性組成物の塗膜を成膜する工程、(2)上記感光性組成物の塗膜にフォトマスクを介して活性化学線を照射する工程、(3)現像液を用いて現像し、上記感光性組成物のパターンを形成する工程、及び(4)上記パターンを加熱し、上記感光性組成物の硬化パターンを得る工程、を有する。なおこれらの工程において、国際公開第2019/087985号の段落[0453]~段落[0481]に記載の各方法を適用しても構わない。塗膜を成膜する工程は、塗布した後、プリベークして成膜することが好ましい。硬化パターンを得る工程は、パターンを加熱して熱硬化させることが好ましい。
【実施例0208】
以下に実施例、参考例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、以下の説明又は表で用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、略語に対応する名称を、まとめて表1-2に示す。
【0209】
【0210】
<各樹脂の合成例>
(A)バインダー樹脂として、合成例1~25で得られた各樹脂の組成を、まとめて表1-3~表1-5に示す。各樹脂は公知の文献に記載の方法に基づき、適宜モノマーとなる単量体化合物や共重合比率を変更して、公知の方法により合成した。モノマーの共重合比率は、表1-3~表1-5の通りである。
【0211】
合成例8で使用した下記構造のヒドロキシ基含有ジアミンである(HA)は、国際公開第2016/056451号の段落[0374]~段落[0376]における、合成例1に記載の合成方法に基づき、公知の方法により合成した。なお下記構造のヒドロキシ基含有ジアミンである(HA)を用いて合成例5で得られた樹脂は、アミド酸エステル構造単位、アミド酸構造単位、及びイミド閉環構造を有するポリイミド前駆体である。
【0212】
【0213】
合成例19において、国際公開第2012/141165号の段落[0109]~段落[0122]における、合成例3及び合成例5に記載の合成方法に基づき、XLNと4-ヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合反応物に代えて、XLNとSADとの縮合反応物として下記構造のフェノール化合物を合成し、得られたフェノール化合物をアルデヒド化合物との縮合反応に使用した。
【0214】
【0215】
合成例8において、樹脂中のアミド酸構造単位に対してエステル化剤であるDFAを反応させており、メチル基を有するアミド酸エステル構造単位に構造変換させた。
合成例9及び10において、テトラカルボン酸二無水物であるODPAに対してHEMA又はGDMAを反応させてODPAの酸無水物基を全て開環付加させた後、ODPAに由来するカルボキシ基に対してビスアミノフェノール化合物であるBAHF及び末端封止剤であるEtOHを反応させた。
合成例18において、樹脂中のMAAに由来するカルボキシ基に対してエポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。
合成例24において、樹脂中のGMAに由来するエポキシ基に対してカルボキシ基を有するDHBAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。
合成例25において、樹脂中のHPMAに由来するフェノール性水酸基に対してエポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
各合成例で得られた樹脂、並びに、各実施例、参考例、及び比較例で使用した樹脂について、各樹脂が有する構造単位と構造を、まとめて表2-1に示す。なおポリイミド(PI-1)~(PI-4)、ポリイミド前駆体(PIP-1)~(PIP-3)、ポリベンゾオキサゾール(PB-1)、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBP-1)、及びポリアミドイミド(PAI-1)における樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量は10,000質量ppmを超えていた。ポリイミド(PI-5)~(PI-7)、ポリイミド前駆体(PIP-4)、及びその他の合成例における樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量は0質量ppmであった。
【0220】
【0221】
各実施例、参考例、及び比較例で使用した(D)着色剤及び(E)分散剤の一覧と説明を、まとめて表2-2に示す。なお(A.R.52-B.B.7)は、A.R.52/B.B.7=1/1(mol比)で混合して攪拌し、析出した塩をろ過して水で3回洗浄した後、乾燥させて得た染料である。
【0222】
【0223】
<各顔料分散液の調製例>
顔料分散液として、調製例Bk-1~Bk-7で得られた各分散液の組成を、まとめて表2-3に示す。調製例Bk-1~Bk-7は、各顔料分散液を下記の方法により調製した。
【0224】
調製例Bk-1~Bk-7 顔料分散液(Bk-1)~(Bk-7)の調製
国際公開第2022/196261号の段落[0138]~段落[0140]、調製例1に記載されている方法に基づき、表2-3に記載の着色剤と、分散剤としてポリアルキレンアミン系-ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤であるADPを用い、顔料の平均一次粒子径が表2-3に記載の値となるように循環方式で湿式メディア分散処理を行った。その後、0.80μmφのフィルターで濾過を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=100/35(質量比)の顔料分散液(Bk-1)~(Bk-7)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径を表2-3に示す。また硬化膜中の顔料の平均一次粒子径、顔料分散液中の顔料の結晶子サイズ、及び硬化膜中の顔料の結晶子サイズも表2-3に示す。
【0225】
【0226】
<シリカ粒子分散液の合成例>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した無機粒子であるシリカ粒子の一覧と説明を、まとめて表2-4に示す。
【0227】
合成例26~28 シリカ粒子(SP-1)~(SP-3)分散液の合成
国際公開第2022/196261号の段落[0132]~段落[0134]、合成例3に記載されている方法に基づき、表2-4に記載のシリカ粒子分散液、表面修飾剤、及び重合禁止剤を用いてシリカ粒子(SP-1)~(SP-3)の分散液を得た。
【0228】
【0229】
<各実施例、参考例、及び比較例における評価方法>
各実施例、参考例、及び比較例における評価方法を以下に示す。なおガラス上に、APC(銀/パラジウム/銅=98.07/0.87/1.06(質量比))をスパッタにより100nm成膜し、さらに、APC層の上層に、ITOをスパッタにより10nm成膜したガラス基板(ジオマテック社製;以下、「ITO/Ag基板」)は、卓上型光表面処理装置(PL16-110;セン特殊光源社製)を用いて、100秒間UV-O3洗浄処理をして使用した。テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス社製)やその他の基板は前処理をせずに使用した。また膜厚測定は、表面粗さ・輪郭形状測定機(SURFCOM1400D;東京精密社製)を用いて、測定倍率を10,000倍、測定長さを1.0mm、測定速度を0.30mm/sの条件で膜厚を測定した。
【0230】
(1)樹脂の重量平均分子量
上記のポリイミド(PI-1)~(PI-7)、ポリイミド前駆体(PIP-1)~(PIP-4)、ポリベンゾオキサゾール(PB-1)、ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBP-1)、及びポリアミドイミド(PAI-1)は、各樹脂の0.10質量%のN-メチル-2-ピロリドン溶液を調製した。GPC分析装置(Waters 2690;Waters社製)を用い、流動層として塩化リチウムとリン酸とをそれぞれ0.050mol/Lで溶解したN-メチル-2-ピロリドンを用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。その他の樹脂は、GPC分析装置(HLC-8220;東ソー社製)を用い、流動層としてテトラヒドロフラン又はN-メチル-2-ピロリドンを用いて、「JIS K7252-3(2008)」に基づき、常温付近での方法によりポリスチレン換算の重量平均分子量を測定して求めた。
【0231】
(2)組成物中又は硬化膜中の特定の芳香族化合物、特定の含窒素化合物、特定のカルボン酸、特定のオキシム化合物、及び特定の(C1x-DL)化合物の含有量
組成物中又は硬化膜中の特定の芳香族化合物、特定の含窒素化合物、特定のカルボン酸、特定のオキシム化合物、及び特定の(C1x-DL)化合物の含有量は、標準物質による検量線を用いたガスクロマトグラフィー質量分析及び液体クロマトグラフィー質量分析によって測定した。なお組成物の全固形分に占める含有量は、得られた測定値と下記式から算出した。
(組成物の全固形分に占める含有量)=(組成物中の含有量)×100/(組成物の固形分濃度[質量%])。
【0232】
(3)樹脂中、組成物中、又は硬化膜中の特定の元素の含有量
樹脂中、組成物中、又は硬化膜中の、フッ素元素、塩素元素、臭素元素、及び硫黄元素の含有量は、下記の測定条件で燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定した。上記の各樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)分取によって各樹脂を分離してから用いた。なお樹脂が、樹脂を構成する構造単位が異なる構造である樹脂からなる場合も、GPC分取によって各樹脂を分離してから用いた。また組成物中の樹脂は、組成物中に単一の樹脂又は樹脂を構成する構造単位が異なる構造である樹脂が含まれる場合のいずれにおいても、組成物についてジクロロメタン抽出を行い、超遠心分離後、ジクロロメタン不溶物からGPC分取によって各樹脂を分離してから用いた。樹脂、組成物、又は硬化膜を分析装置の燃焼管内で燃焼・分解させ、発生したガスを吸収液に吸収後、吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーにより分析した。元素含有量の記載が無いものは、当該元素が検出されなかったことを示す。なお組成物の全固形分に占める含有量は、得られた測定値と下記式から算出した。
(組成物の全固形分に占める含有量)=(組成物中の含有量)×100/(組成物の固形分濃度[質量%])
<燃焼・吸収条件>
システム:AQF-2100H、GA-210(三菱化学社製)
電気炉温度:Inlet 900℃, Outlet 1000℃
ガス:Ar/O2 200mL/min, O2 400mL/min
吸収液:H2O2 0.1質量%
吸収液量:5mL
<イオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件>
システム:ICS1600(DIONEX社製)
移動相:2.7mmol/L Na2CO3, 0.3mmol/L NaHCO3
流速:1.50mL/min
検出器:電気伝導度検出器
注入量:100μL。
【0233】
(4)組成物中又は硬化膜中のフッ化物イオンの含有量
組成物中又は硬化膜中のフッ化物イオンの含有量は、下記の測定条件でイオンクロマトグラフィーによって測定した。超純水中に組成物又は硬化膜を添加して室温で振とうし、イオン成分を抽出した。抽出液を固相抽出用カートリッジで処理した後、イオンクロマトグラフィーでアニオン成分を分析した。アニオン成分については、下記のイオンクロマトグラフィー分析条件1で測定できなかった場合は、下記のイオンクロマトグラフィー分析条件2で測定した。イオン含有量の記載が無いものは、当該イオンが検出されなかったことを示す。なお組成物の全固形分に占める含有量は、得られた測定値と下記式から算出した。
(組成物の全固形分に占める含有量)=(組成物中の含有量)×100/(組成物の固形分濃度[質量%])
<イオンクロマトグラフィー分析条件1(アニオン成分)>
装置:IC-2010(東ソー社製)
分離カラム:4.6mmφ×100mm、TSKgel Super IC-Anion HS
溶離液:炭酸水素ナトリウム
カラム温度:40℃
検出器:電気伝導度計
試料注入量:250μL
<イオンクロマトグラフィー分析条件2(アニオン成分)>
装置:IC-2010(東ソー社製)
分離カラム:4.6mmφ×100mm、TSKgel Super IC-Anion HS
溶離液:炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム
カラム温度:40℃
検出器:電気伝導度計
試料注入量:250μL。
【0234】
(5)組成物中の水の含有量
組成物中の水の含有量は、カールフィッシャー水分率計(MKS-520;京都電子工業社製)を用い、滴定試薬としてカールフィッシャー試薬を用いて、「JIS K0113(2005)」に基づき、容量滴定法によって測定した。
【0235】
(6)感度
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;ニコン社製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察した。感度の指標として、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するスペースパターンを18μmの寸法幅にて形成できる露光量(i線照度計の値)を感度とした。下記のように判定し、感度が90mJ/cm2以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:感度が30mJ/cm2以下
A:感度が30mJ/cm2を超え、かつ40mJ/cm2以下
B+:感度が40mJ/cm2を超え、かつ50mJ/cm2以下
B:感度が50mJ/cm2を超え、かつ60mJ/cm2以下
C+:感度が60mJ/cm2を超え、かつ75mJ/cm2以下
C:感度が75mJ/cm2を超え、かつ90mJ/cm2以下
D:感度が90mJ/cm2を超え、かつ150mJ/cm2以下
E:感度が150mJ/cm2を超過。
【0236】
(7)パターン裾部の現像残渣
FPD/LSI検査顕微鏡(OPTIPHOT-300;ニコン社製)を用いて、作製した現像後膜の解像パターンを観察した。パターン裾部の現像残渣の指標として、20μmの開口パターンにおいてパターン裾部の残渣の有無を観察し、開口部の全外周に占めるパターン裾部に残渣がある開口部の外周の比率を算出した。下記のように判定し、残渣がある開口部の外周の比率が20%以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:パターン裾部の残渣無し
A:残渣がある開口部の外周の比率が3%以下
B+:残渣がある開口部の外周の比率が3%を超え、かつ6%以下
B:残渣がある開口部の外周の比率が6%を超え、かつ10%以下
C+:残渣がある開口部の外周の比率が10%を超え、かつ15%以下
C:残渣がある開口部の外周の比率が15%を超え、かつ20%以下
D:残渣がある開口部の外周の比率が20%を超え、かつ50%以下
E:残渣がある開口部の外周の比率が50%を超え、かつ100%以下。
【0237】
(8)ハーフトーン特性
下記、実施例1記載の方法で、ITO/Ag基板上に組成物のプリベーク膜を5μmの膜厚で成膜し、ハーフトーン特性評価用のハーフトーンフォトマスクを介して、露光量を変えて超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した後、現像して組成物の現像後膜を作製した。ハーフトーンフォトマスクは、半透光部の透過率(%T
HT)がそれぞれ、透光部の透過率(%T
FT)の20%、25%、30%、35%、40%、又は50%である箇所を有する。ハーフトーンフォトマスクの一例として、透光部41、遮光部42、及び半透光部43の配置、並びに、寸法の一例を、
図1に示す。作製した現像後膜の段差形状を有する解像パターンについて、透光部から形成された厚膜部の現像後の膜厚(T
FT)μmを測定した。ハーフトーン露光部である半透光部から形成された薄膜部は、透過率の異なる箇所の現像後の膜厚(T
HT)μmを測定し、現像後に残膜した薄膜部の最小膜厚(T
HT/min)μmを求めた。ハーフトーン特性の指標として、最大段差膜厚((T
FT)-(T
HT/min))μmを算出した。下記のように判定し、最大段差膜厚が0.4μm以上となる、A+、A、B+、B、C+及びCを合格とした。
A+:最大段差膜厚が2.5μm以上
A:最大段差膜厚が2.0μm以上、かつ2.5μm未満
B+:最大段差膜厚が1.5μm以上、かつ2.0μm未満
B:最大段差膜厚が1.0μm以上、かつ1.5μm未満
C+:最大段差膜厚が0.7μm以上、かつ1.0μm未満
C:最大段差膜厚が0.4μm以上、かつ0.7μm未満
D:最大段差膜厚が0.1μm以上、かつ0.4μm未満
E:最大段差膜厚が0.1μm未満、又は現像後に残膜せず測定不能。
【0238】
(9)遮光性(光学濃度値(以下、「OD値」))
下記、実施例1記載の方法で、テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス社製)上に組成物の硬化膜を作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite社製)を用いて、作製した硬化膜の面内3箇所における入射光強度(I0)及び透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、膜厚1μm当たりのOD値を下記式により算出し、面内3箇所におけるOD値の平均値を算出した。
OD値=log10(I0/I)。
【0239】
(10)機械物性(破断点伸度)
下記、実施例1記載の方法で、6インチ径のSiO2/Siウェハ上に組成物の硬化膜を膜厚約5μmで作製した。希フッ化水素酸を用いて、SiO2/Siウェハ上から硬化膜を剥離した。剥離した硬化膜を幅1.5cm×長さ9.0cmの短冊状にカットした。テンシロン(RTM-100;オリエンテック社製)を用いて、室温23.0℃、湿度45.0%RHの条件下、引っ張り速度50mm/分で引っ張り試験を行い、破断点伸度を測定した。なお1検体につき10枚の短冊について測定した。機械物性の指標として、得られた結果から上位5点の平均値を算出した。下記のように判定し、破断点伸度が5.0%以上となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:破断点伸度が30%以上
A:破断点伸度が20%以上、かつ30%未満
B+:破断点伸度が15%以上、かつ20%未満
B:破断点伸度が10%以上、かつ15%未満
C+:破断点伸度が7.5%以上、かつ10%未満
C:破断点伸度が5.0%以上、かつ7.5%未満
D:破断点伸度が1.0%以上、かつ5.0%未満
E:破断点伸度が1.0%未満又は測定不能。
【0240】
(11)マイグレーション耐性(絶縁信頼性)
下記、実施例1記載の方法で、マイグレーション評価用基板(WALTS-TEG ME0102JY;ウォルツ社製)上に組成物の硬化膜を膜厚約1.5μmで作製した。次いで、櫛歯の銅配線のライン・アンド・スペースパターンにおいて、ライン15μmとスペース10μmの測定用端子の箇所に導線をハンダ付けして評価用素子を作製した。作製した評価用素子を、絶縁劣化特性評価システム(ETAC SIR13;楠本化成社製)を用いて、高温高湿下での絶縁信頼性を評価した。試験条件を温度85℃、湿度85%RHに設定した高温高湿槽内に評価用素子を入れ、5.0Vの電圧を印加し、抵抗値の経時変化を5分間隔で測定した。抵抗値が1.0×106Ω以下に達した場合に絶縁不良と判断し、マイグレーション耐性の指標として、その時点での試験時間を測定した。下記のように判定し、試験時間が200時間以上となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とした。
A+:試験時間が1,000時間以上
A:試験時間が800時間以上、かつ1,000時間未満
B+:試験時間が600時間以上、かつ800時間未満
B:試験時間が400時間以上、かつ600時間未満
C+:試験時間が300時間以上、かつ400時間未満
C:試験時間が200時間以上、かつ300時間未満
D:試験時間が50時間以上、かつ200時間未満
E:試験時間が50時間未満又は測定不能。
【0241】
<各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物の構造を以下に示す。上記の(I-b3)構造における最小原子数は、(b-5)が4個である。上記の(I-b4)構造における最小原子数は、(b-6)が13個、(b-7)が23個、(b-8)が31個、(b-9)が17個である。(Cb-1)~(Cb-3)は上記の特定の(C1x-DL)化合物に相当する。これらの化合物は公知の方法により合成した。
【0242】
【0243】
【0244】
(x-17a)は、(x-17(E))/(x-17(Z))=99/1(質量比)である。(x-17b)は、(x-17(E))/(x-17(Z))=90/10(質量比)である。(x-17c)は、(x-17(E))/(x-17(Z))=1/99(質量比)である。これらはシス異性体(Z体)及びトランス異性体(E体)をそれぞれ合成し、再結晶及び/又はカラムクロマトグラフィー分取によって各異性体を単離した後、各異性体を上記の質量比で混合させることで得た。
【0245】
【0246】
(x-32a)は、(x-32(E))/(x-32(Z))=99/1(質量比)である。上記と同様に、シス異性体(Z体)及びトランス異性体(E体)をそれぞれ合成して単離した後、各異性体を上記の質量比で混合させることで得た。
【0247】
【0248】
(x-35a)は、(x-35(E))/(x-35(Z))=99/1(質量比)である。上記と同様に、シス異性体(Z体)及びトランス異性体(E体)をそれぞれ合成して単離した後、各異性体を上記の質量比で混合させることで得た。
【0249】
【0250】
(x-50a)は、(x-50(E))/(x-50(Z))=99/1(質量比)である。上記と同様に、シス異性体(Z体)及びトランス異性体(E体)をそれぞれ合成して単離した後、各異性体を上記の質量比で混合させることで得た。
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
また各実施例、参考例、及び比較例で使用した、特定の芳香族化合物;特定の含窒素化合物;特定のカルボン酸;特定のオキシム化合物;フッ素元素、塩素元素、臭素元素、又は硫黄元素を含む化合物(以下、「特定の元素を含む化合物」)、それぞれに対応する化合物を、まとめて表2-5に示す。
【0259】
【0260】
<感光性組成物の調製>
表3-1~表3-11に記載の組成にて、組成物1~組成物190を調製した。表3-1~表3-11において括弧内の数値は各成分の固形分の質量部を示す。組成物が顔料を含有する場合、まず顔料分散液を含まない調合液を調製した後、顔料分散液と調合液とを混合して組成物を調製した。溶剤として、PGMEA/EL/GBL=50/40/10(質量比)を用いて、組成物の固形分濃度が20質量%となるように調製した。得られた組成物の溶液は、0.45μmφのフィルターで濾過して使用した。
【0261】
<実施例1>
ITO/Ag基板上に組成物1を、スピンコーター(MS-A100;ミカサ社製)を用いて塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて120℃で120秒間プリベークし、膜厚約1.8μmのプリベーク膜を作製した。作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液又はシクロペンタノンでスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point;以下、「BP」)を測定した。
【0262】
同様の方法でプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した。露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスして現像後膜を作製した。現像時間は測定したBPの1.3倍とした。なお2.38質量%TMAH水溶液で現像後にパターン形成できなかった場合は、上記の方法と同様に露光した膜を作製し、露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、シクロペンタノンで現像し、水で30秒間リンスして現像後膜を作製した。現像時間は測定したBPの1.3倍とした。現像後のパターンを観察し、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するスペースパターンを18μmの寸法幅にて形成できる最適露光量(i線照度計の値)を求めた。最適露光量で露光後、現像した後のパターンを高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて220℃で60分間熱硬化させ、膜厚約1.2μmの硬化膜を作製した。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで220℃まで昇温し、220℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0263】
核磁気共鳴分光分析、赤外分光分析、ガスクロマトグラフィー質量分析、液体クロマトグラフィー質量分析、及び飛行時間型二次イオン質量分析などの方法で硬化膜を分析し、硬化膜中に含まれる樹脂の構造単位と硬化膜中に含まれる化合物の構造を分析した。組成物1の硬化膜は以下の樹脂及び化合物を含有しており、組成物1が含む樹脂に由来する構造を有する樹脂と、組成物1が含む化合物に由来する構造を有する化合物とを含有する。
(XA1x)樹脂:フェノール性水酸基を有し、かつ構造単位中にイミド構造を有する樹脂;フェノール性水酸基を有し、かつ構造単位中にアミド酸エステル構造、アミド酸構造、及びイミド構造を有する樹脂
特定の(C1x-DL)化合物:カルバゾール構造、カルバゾールの3-位にカルボニル基が結合した構造、ベンゾイルオキシ基が4-位に結合したベンゾイル構造がカルバゾールの6-位に結合した構造、及びカルバゾールの9-位に結合したエチル基、を有する化合物。
【0264】
<実施例2~実施例182及び比較例1~比較例8>
表3-1~表3-11に示す各組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び評価を行った。これらの評価結果を、まとめて表3-1~表3-11に示す。なお実施例1~実施例174及び比較例1~比較例8における、組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量及び硬化物中のフッ素元素の含有量は1,000質量ppmを超えていた。実施例175~実施例177における、組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量及び硬化物中のフッ素元素の含有量は0質量ppmであった。実施例178~実施例182における、組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量は表3-11に記載の通りであり、硬化物中のフッ素元素の含有量は組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量と同一であった。なお実施例172の熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。また各実施例において、ポジ型の感光性を有する組成物を用いた場合、フォトマスクは透光部と遮光部が反転したフォトマスクを用いた。現像時間は60秒、90秒、又は120秒とし、感度測定用のグレースケールマスク(MDRM MODEL 4000-5-FS;Opto-Line International社製)を用いて、20μmのライン・アンド・スペースパターンにおいて、開口部に相当するスペースパターンを20μmの寸法幅にて形成できる最適露光量(i線照度計の値)を求めた。これらの結果より、最適現像時間(60秒、90秒、又は120秒)とその現像時間における最適露光量を決定した。最適露光量で露光後、最適現像時間で現像した後のパターンを200℃で60分間熱硬化させた。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
比較例1~比較例8は、特定の構造を有する(C1-1)化合物を含有しないため、各種特性が劣っている。また比較例6は、組成物中に占める特定の芳香族化合物の含有量が好適な範囲を超過している。比較例7は、硫黄元素を含む化合物の含有量が過剰のため、組成物の全固形分に占める硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量が好適な範囲から外れている。比較例8は、組成物中に占める水の含有量が好ましい範囲を超過している。そのため、感度、機械物性、又はマイグレーション耐性が低下している。
【0277】
<感光性組成物の保管安定性>
実施例1~実施例182にて調製した各組成物を25℃で一週間保管した。保管後、実施例1と同様に基板上に組成物を成膜した結果、異物の発生は無く、保管安定性が良好な結果であった。一方、比較例6~比較例8にて調製した、特定の芳香族化合物の含有量、硫黄元素を含むイオン中の硫黄元素の含有量、又は水の含有量が好適な範囲から外れている組成物188~組成物190を、同様に25℃で一週間保管した。保管後、同様に基板上に組成物を成膜した結果、異物の発生が多く、保管安定性が悪い結果であった。