(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116080
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】成形用樹脂材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240820BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240820BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240820BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240820BHJP
C08K 5/1525 20060101ALI20240820BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20240820BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20240820BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/20 Z CES
C08J3/12 A
C08L93/04
C08K5/1525
C08K5/092
C08L25/08
C08L1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010023
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023021279
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】上里 朗
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、パルプ粉砕物と熱可塑性樹脂とが均一に混合され、射出成形時に切断や割れ等が生じない粘りが高く、成形しやすい成形用樹脂材料を提供することである。
【解決手段】本発明によって、ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料。
【請求項2】
サイズ剤を含むパルプシートの粉砕物が配合された、請求項1に記載の成形用樹脂材料。
【請求項3】
前記パルプシートの坪量が100~550g/m2で、ステキヒトサイズ度が400秒以上である、請求項2に記載の成形用樹脂材料。
【請求項4】
パルプシートの粉砕物がレーザー回折/散乱法で測定した体積基準50%平均粒子径(D50)が100μm以下である、請求項2に記載の成形用樹脂材料。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載の成形用樹脂材料。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が生分解性樹脂を含む、請求項1または2に記載の成形用樹脂材料。
【請求項7】
前記パルプ粉砕物が木材パルプの粉砕物を含む、請求項1または2に記載の成形用樹脂材料。
【請求項8】
ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を加熱混錬する工程を含む、成型用樹脂材料の製造方法。
【請求項9】
前記加熱混錬する工程において、二軸混錬押出機で処理した成型用樹脂材料を連続的に製造する、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
サイズ剤を含むパルプシートの粉砕物を添加して加熱混錬する、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記パルプシートの坪量が100~550g/m2である、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ粉砕物と熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料およびその製造方法に関する。また、本発明は、耐水性を有するパルプシートの粉砕物、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリ乳酸等に代表される熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業資源としてのバイオマス材が注目されている。バイオマス材とは、植物などの生物を由来とした材料を意味する。
地球温暖化問題等の地球環境問題を背景として、省資源化、及び廃棄物の原材料を目指すマテリアルリサイクル、そして、生分解性プラスチックに代表される環境循環サイクルの推進が急務となっており、我が国でも改正リサイクル法やグリーン購入法等が整備され、これに対応した製品のニーズも高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1にはカルボキシルメチル化セルロースナノファイバー、第1級アミノ基を有する高分子化合物、酸変性されたポリオレフィン、ポリオレフィンを含有する複合材料が記載されている。特許文献2には木材パルプとポリマーマトリックスを含むセルロース複合材料が記載されている。特許文献3には木粉とランダムポリプロピレン樹脂を混合し、射出成形機によって木粉含有樹脂射出成形品を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2014/087767号公報
【特許文献2】特表2019-512591号公報
【特許文献3】特開2010-138337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に「木質系バイオマス」と「ポリオレフィン樹脂」とを混合して加熱溶融して成形する場合には、木質系バイオマスが親水性であるためにポリオレフィン樹脂とが均一に混合できない、木質系バイオマスとポリプロピレンとの混合物を射出する装置出口で樹脂体が細かく切れてしまう、得られる成形物品の表面が滑らかでない、などの問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1ではカルボキシルメチル化セルロースナノファイバーを使用すると記載されているが、セルロースをカルボキシメチル化し、さらにポリオレフィン樹脂と均一分散性を高めるために、第1級アミノ基を有する高分子化合物、酸変性されたポリオレフィン樹脂を添加する必要があり、コストアップとなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、木質系バイオマスの1種であるパルプ粉砕物を混合した成形用樹脂材料において、パルプ粉砕物と熱可塑性樹脂とが均一に混合されており、射出時などの成形時の切断や割れが少ない成形用樹脂材料を低コストで提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、サイズ剤、パルプ粉砕物および熱可塑性樹脂を混合して加熱混練することによって、成形性に優れた成形用樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本発明者らは、サイズ剤を含有し耐水性を有するパルプシートの粉砕物及び熱可塑性樹脂と混合して加熱混練することで、成形性に優れた成形用樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明としては、以下に限定されないが、次のものが挙げられる。
[1] ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料。
[2] サイズ剤を含むパルプシートの粉砕物が配合された、[1]に記載の成形用樹脂材料。
[3] 前記パルプシートの坪量が100~550g/m2で、ステキヒトサイズ度が400秒以上である、[2]に記載の成形用樹脂材料。
[4] パルプシートの粉砕物がレーザー回折/散乱法で測定した体積基準50%平均粒子径(D50)が100μm以下である、[2]に記載の成形用樹脂材料。
[5] 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む、[1]または[2]に記載の成形用樹脂材料。
[6] 前記熱可塑性樹脂が生分解性樹脂を含む、[1]または[2]に記載の成形用樹脂材料。
[7] 前記パルプ粉砕物が木材パルプの粉砕物を含む、[1]または[2]に記載の成形用樹脂材料。
[8] ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を加熱混錬する工程を含む、成型用樹脂材料の製造方法。
[9] 前記加熱混錬する工程において、二軸混錬押出機で処理した成型用樹脂材料を連続的に製造する、[8]記載の製造方法。
[10] サイズ剤を含むパルプシートの粉砕物を添加して加熱混錬する、[8]または[9]に記載の製造方法。
[11] 前記パルプシートの坪量が100~550g/m2である、[10]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、射出成形時に切断や割れ等が生じにくく、粘りが高い成形用樹脂材料を安定的に製造することができる。また、パルプ粉砕物の配合率を高めることにより、カーボンニュートラルに優れる成形用樹脂材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つの態様において本発明は、サイズ剤、パルプ粉砕物、熱可塑性樹脂を含有する成形用樹脂材料である。
サイズ剤(疎水化剤)
本発明の成形用樹脂材料は、ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂のいずれか1種以上のサイズ剤を含有する。サイズ剤を添加することにより、パルプ粉砕物の分散性が向上するため成形用樹脂材料を安定的に製造することができ、また、サイズ剤が相溶化剤としての機能を果たすため成形物の強度が向上する。
【0012】
本発明においてサイズ剤の配合率は、例えば、樹脂材料の0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがより好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。また、サイズ剤、パルプ粉砕物、熱可塑性樹脂の配合比は、0.1~20:140~90:590~10であることが好ましい。
【0013】
一般にロジンとは、植物の樹液などから得られる天然樹脂であり、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸などで構成されるロジン酸を主成分とするものである。本発明においては、ロジンとして化学的に変性させたロジン誘導体を使用してもよく、ロジン誘導体としては、例えば、ロジンエステル類、酸変性ロジン、ロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0014】
パルプ粉砕物(粉末セルロース)
本発明の成形用樹脂材料は、パルプを粉砕して得られる粉末セルロースを含有する。本発明の成形用樹脂材料中のパルプ粉砕物の配合率は、バイオマス度を高いレベルで実現するためには、高い方が好ましいが、得られる樹脂材料、成形物品の製造や強度を考慮すると、30質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0015】
本発明の一つの態様において、サイズ剤を含むパルプシートを粉砕したものを熱可塑性樹脂に配合することができる。本発明の成形用樹脂材料に用いられるパルプシートとしては、坪量が100~550g/m2であることが好ましく、さらに好ましくは200~400g/m2である。また、耐水性を有する指標として、JIS P 8122:2004に従って測定したステキヒトサイズ度が400秒以上であることが好ましく、さらに好ましくは600秒以上である。ステキヒトサイズ度が400秒以上である耐水性を有するパルプシートの粉砕物を使用することにより、パルプシートの粉砕物と熱可塑性樹脂の混練時において、均一性を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明においてサイズ剤を含有するパルプシートを用いる場合、サイズ剤としては、通常製紙用途にて使用されるものが使用することができ、例えば、ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、スチレン-アクリル系樹脂等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して用いてもよい。サイズ剤を添加することによりパルプシートの耐水性を向上させることが可能となり、パルプシートの粉砕物及び熱可塑性樹脂の混練時に均一性を向上することができる。サイズ剤はパルプシートに対して0.15質量%以上含有させることが好ましい。
【0017】
本発明のパルプ粉砕物の平均粒径は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。また、パルプ粉砕物の平均粒径は、1μm以上が好ましく、5μm以上や10μm以上がより好ましい。平均粒径が100μmより大きいと、樹脂との均一な混合が困難になり、パルプ粉砕物と樹脂との混合物を射出する押出機出口で樹脂体が細かく切れる、冷却処理装置への搬出が困難となる、などの問題が生じ得る。なお、平均粒径とは、レーザー光散乱法(レーザー回折法)により測定した体積50%平均粒子径(D50)であり、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン製、機器名:マスターサイザー3000)等で測定することができる。
【0018】
本発明において、粉末セルロースの原料として使用されるパルプは、木材由来のパルプが好ましい。木材由来のパルプとしては、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプが挙げられるが、特に広葉樹由来の化学パルプが好ましい。これらの木材由来の化学パルプのパルプ化法(蒸解法)は、特に限定されるものではなく、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法等を例示することができるが、これらの中では、サルファイト蒸解法やクラフト蒸解法が好ましい。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、溶解クラフトパルプ(DKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解サルファイトパルプ(DSP)等が挙げられる。化学パルプは未漂白化学パルプ、漂白化学パルプのいずれも使用することができる。また、化学パルプ以外のパルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプを使用することもできる。本発明に係る粉末セルロースの原料としては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)が好ましい。
【0019】
一般に、パルプ化の過程で蒸解などによりパルプ中の着色物質であるリグニンが溶解して取り除かれて白色化するが、パルプの白色度をさらに高めるために、漂白処理を行なうことができる。漂白処理方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用される方法を用いることができる。例えば、任意に通常の方法で脱リグニンしたパルプに対し、塩素処理(C)、二酸化塩素漂白(D)、アルカリ抽出(E)、次亜塩素酸塩漂白(H)、過酸化水素漂白(P)、アルカリ性過酸化水素処理段(Ep)、アルカリ性過酸化水素・酸素処理段(Eop)、オゾン処理(Z)、キレート処理(Q)などを組み合わせて、D-E/PD、C/D-E-H-D、Z-E-D-PZ/D-Ep-D、Z/D-Ep-D-P、D-Ep-D、D-Ep-D-P、D-Ep-P-D、Z-Eop-D-D、Z/D-Eop-D、Z/D-Eop-D-E-D等のシーケンスで行うことができる(シーケンス中の「/」は、「/」の前後の処理を洗浄なしで連続して行なうことを意味する)。パルプの白色度は、ISO 2470に基づいて、80%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明のパルプシートの粉砕物の製造に用いる粉砕機としては、例えば、カッティング式ミル、ハンマー式ミル、衝撃式ミル、気流式ミル、ローラーミルなどを好適に使用することができ、具体的には以下を例示することができる。
■カッティング式ミル: メッシュミルHAシリーズ(株式会社ホーライ製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、セントリカッター(日本コークス工業製)、ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、ターボカッター(フロイント・ターボ株式会社製)など
■ハンマー式ミル: ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、アトマイザーTAP(東京アトマイザー製造株式会社製)、マイクロパルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、アトマイザー(株式会社セイシン企業製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)など
■衝撃式ミル: ACMパルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン株式会社製)、CUM型遠心ミル(日本コークス工業製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、インペラーミル(株式会社セイシン企業製)、トルネードミル(三庄インダストリー株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、HT形微粉砕機(株式会社ホーライ製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント・ターボ株式会社製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社吉田製作所製)、ユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)など
■気流式ミル: ギャザーミル(ポラリス株式会社製)、CGS型ジェットミル(日本コークス工業製)、スパイラルジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製)、スーパージェットミル(日清エンジニアリング株式会社製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)、ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、クリプトロン(株式会社アーステクニカ社製)など
■ローラーミル: 竪型ローラーミル(セイシン企業株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(株式会社アーステクニカ)、ISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング)など
これらの中では、微粉砕性に優れることから、マイクロパルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、竪型ローラーミル(セイシン企業株式会社製)、メッシュミルHAシリーズ(株式会社ホーライ製)、ナイフミル(パルマン社製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)などの粉砕機を用いることが好ましい。
【0021】
本発明において、パルプシートなどを粉砕してパルプ粉砕物を調製する場合、粉砕を2段階で行ってもよい。例えば、パルプシートを、平均粒子径が100μm以下である粉砕物を得る第1粉砕工程、続いて前記第1粉砕工程で得た粉砕物をさらに粉砕し、平均粒子が50μm以下である粉砕物を得る第2粉砕工程、を有する方法にてパルプシートの粉砕物を製造することができる。
【0022】
本発明のパルプ粉砕物を調製する際に、機能性付与、若しくは機能性向上を目的として、パルプシートなどとその他有機成分及び/又は無機成分を、1種単独若しくは2種類以上任意の割合で混合し、粉砕することも可能である。また、原料に使用するパルプ原料の重合度を大幅に損なわない範囲で、化学的処理を施すことが可能である。
【0023】
熱可塑性樹脂
本発明の成形用樹脂材料に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミドなどが挙げられるが、これらに限定されず、熱により可塑化し成形が可能であればいずれも用いることができる。本発明に係る熱可塑性樹脂としては、ホモポリプロピレン(hPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L-LDPE)等のポリオレフィン、ブロックポリプロピレン(bPP)等のブロック共重合体を好適に使用することができ、中でも、LDPEなどのポリエチレン、ポリプロピレンは成形性の観点から好ましい。ここで、一つの態様において、ホモポリプロピレンの融点は165~170℃、高密度ポリエチレンの融点は130~135℃、低密度ポリエチレンの融点は95~135℃、線状低密度ポリエチレンの融点は124℃程度、ブロックポリプロピレンの融点は150~170℃であってよい。また、2種類以上の熱可塑性樹脂を同時に利用することもできる。
【0024】
本発明においては、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いてもよい。熱可塑性を有する生分解性樹脂としては、これらに限定されないが、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、効果を損なわない範囲でエラストマーを併用してもよい。エラストマーとしては、熱可塑性を有するエラストマーの中で一般的なものを目的に応じて選択して用いることができる。例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。これらのエラストマーは1種類で用いてもよいし、2種類以上のエラストマーを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、熱可塑性樹脂として容器リサイクルペレットを使用してもよい。容器リサイクルペレットとは、食品容器や生活用品容器として再利用するために形成されたペレットであり、ポリプロピレン、ポリエチレンあるいはポリスチレンを含有する。
【0027】
さらに成形用樹脂材料の原料(パルプシート粉砕物、熱可塑性樹脂、その他添加物)の混練時には、均一性及び密着性を高める目的で、熱可塑性樹脂でもある相溶化樹脂(相溶化剤)を添加しても良い。
【0028】
相溶化樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えば、これに限定されないが、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1010、三洋化成製)等が挙げられる。相溶化樹脂は、紙の粉砕物と熱可塑性樹脂との均一混合や密着性を高める働きをするものである。相溶化樹脂は用いなくともよいが、用いる場合には、混練により得られる成形用樹脂材料中に、0.1~15質量%用いることが好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の前記成形用樹脂材料を加熱処理することによって成形体を得ることができる。本発明の成形用樹脂材料を加熱処理(加熱、溶融、混練等の処理)する際の温度は、通常100~300℃程度、好ましくは110~250℃程度、特に好ましくは120~220℃程度である。加熱処理により得られた成形体は、従来公知の樹脂成形体により目的とする形状に成形することができる。
【0030】
本発明の成形用樹脂材料の製造方法おいては、パルプ粉砕物及び熱可塑性樹脂を加熱混練するには、一般的な樹脂成形に用いられる装置を用いることができる。例えば、一般的な二軸混錬押出機を用いることが出来る。二軸混錬押出機としては日本製鋼所製のTEXシリーズを使用できる。
【0031】
本発明の成形用樹脂材料を用いて、種々の成形物品を製造することができる。成形には、熱可塑性樹脂の成形に用いられる通常の方法を用いることができ、例えば、これらに限定されないが、射出成形、押出成形、ブロー成型、金型成形、中空成形、発泡成形などを行うことができる。
【0032】
本発明の成形用樹脂材料又はそれを成形することにより得られる成形物品には、熱可塑性樹脂とパルプ粉砕物の有機物及び/又は無機物を含有させてもよい。他の成分としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ;クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイ力、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機填料;カーボンブラック、グラファイト、ガラスフレーク等の有機填料;ベンガラ、アゾ顔料、フタロシアニン等の染料又は顔料;分散剤、滑剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、結晶化促進剤(造核剤)、発泡剤、架橋剤、抗菌剤等の改質用添加剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の成形用樹脂材料は、種々の目的に合わせた成形が可能であり、プラスチック製品の代替品として利用できる。本発明の成形用樹脂材料より得られる成形物品としては、例えば、トレー等、自動車部品、自動車のダッシュボード等の内装、飛行機の荷物入れ、輸送用機器の構造部材、家電製品の筐体(ハウジング)、電化製品部材、カード、トナー容器等の各種容器、建築材、育苗ポット、農業用シート、筆記具、木製品、家庭用器具、ストロー、コップ、玩具、スポーツ用品、港湾用部材、建築部材、発電機用部材、工具、漁具、包装材料、3Dプリンター造形物、パレット、食品容器、食器、カトラリー(スプーン、フォーク等)、箸、各種シート類等に幅広く適用可能である。
【実施例0034】
以下に、本発明の実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部および%は質量部および質量%を示し、数値範囲はその端点を含むものとして記載する。
【0035】
樹脂材料の製造
(1)製造例1
カナダ標準ろ水度420mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)100質量部に対して、ロジン(商品名:ハーサイズNES105、ハリマ化成製)を0.3質量部、硫酸バンドを0.15質量部となるように添加した濃度1.12%のパルプスラリーを、パルプマシンにて抄速110m/minで、坪量320g/m2のパルプシートを抄造した。次いで、このパルプシートを竪型ローラーミルにより粉砕し、平均粒子径(D50)が26μmであるパルプ粉砕物(粉末セルロース)を製造した。
【0036】
パルプ粉砕物、ポリプロピレン(製品名:J779EA、プライムポリマー社製ブロックポリプロピレン)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(製品名:ユーメックス1010)を、51:48:1の配合比で混合し、二軸混錬押出機(Xplore Compounder MC15、Xplore Instruments社製)を用いて200℃、3分間混錬し、成形用樹脂材料を製造した。
(2)製造例2
サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD、AD1614、星光PMC製)を0.4質量部添加した以外は、製造例1と同様にしてパルプシートを抄造した。このパルプシートをカッティング式ミルにより粉砕し、平均粒子径(D50)が41μmであるパルプ粉砕物を製造した。次いで、製造例1と同様にして成形用樹脂材料を製造した。
(3)製造例3(比較例)
ロジンを添加しない以外は、製造例1と同様にしてパルプシートを製造し、成形用樹脂材料を製造した。なお、得られたパルプ粉砕物の平均粒子径(D50)は26μmであった。
(4)製造例4(比較例)
AKDを添加しない以外は、製造例2と同様にしてパルプシートを製造し、さらに成形用樹脂材料を製造した。なお、得られたパルプ粉砕物の平均粒子径(D50)は41μmであった。
(5)製造例5
広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度:420ml)100質量部に硫酸バンド0.15質量部を添加し、パルプスラリーを調成した(濃度:1.12%)。このパルプスラリーから手すきにより坪量18g/m2のパルプシートを作製した上で、このパルプシートを粉砕装置(UC-360、ホーライ社製)により粉砕した(パルプ粉砕物のD50:94μm)。
【0037】
このパルプ粉砕物100質量部に対して、ロジン(ハーサイズNES105、ハリマ化成製)を0.3質量部添加し、ヘンシェルミキサー(FM150、日本コークス工業製)を用いてよく混合した。
【0038】
次いで、上記の混合物、ポリプロピレン(J108M、プライムポリマー社製ホモポリプロピレン)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1010)を、51:48:1の配合比で混合し、二軸混錬押出機(テクノベル社製、スクリュー径φ15mm)を用いて200℃、3分間混錬し、成形用樹脂材料を連続的に製造した。
(6)製造例6
ロジンの添加量を3.0質量部に変更した以外は、製造例5と同様にしてパルプ粉砕物を作製し、成形用樹脂材料を製造した。
(7)製造例7(比較例)
ロジンを添加しない以外は、製造例5と同様にしてパルプ粉砕物を作製し、成形用樹脂材料を製造した。
【0039】
評価方法
上記の実験で用いたパルプシートについて、ステキヒトサイズ度を測定した。また、成形用樹脂材料から成形した試験片について、強度試験(引張試験、曲げ試験)を行なった。
(1)パルプシートのステキヒトサイズ度
JIS P 8122:2004に従って測定した。
(2)パルプ粉砕物の体積基準50%平均粒子径(D50)
マスターサイザー3000(レーザー回析式粒度分布測定装置)を用いて湿式法で測定した。具体的には、3000rpmで攪拌されている水中の測定部に、散乱強度が10%程度になるように試料を添加して行った。超音波を照射する場合、下記条件に基づいて水中の試料に超音波を当ててから湿式測定を行った。
・モード:連続
・強度:100%
・時間:600秒
粒子径分布の解析は、いずれの測定条件の場合も以下の条件で行った。
・解析:汎用
・解析感度:強調
・光散乱モデル:Mie理論
(3)引張試験
JIS K 7161(プラスチック-引張特性の試験方法)に準じて測定した(引張速度:1mm/min)。具体的には、金型を用いて成形用樹脂材料からダンベル状試験片(タイプA12、JIS K 7139)を成形した上で(加熱筒の温度:約200℃、金型温度:約40℃、押し出しシーケンス:9bar、2秒-11bar、0.5秒-11bar、24秒)、成形した試験片について、精密万能試験機(オートグラフAG-Xplus、島津製作所)を用いて引張応力を測定し、その最大値(最大応力)と破断時の歪(破断歪)を求めた(初期標線間距離:30mm)。5本の試験片を評価し、平均値を当該試料の測定値とした。
(4)曲げ試験
JIS K 7171に従って測定した。具体的には、金型を用いて成形用樹脂材料から短冊型試験片(タイプB1、JIS K7139)を成形した上で(加熱筒の温度:約200℃、金型温度:約40℃、押し出しシーケンス:9bar、2秒-11bar、0.5秒-11bar、24秒)、成形した試験片について、精密万能試験機(オートグラフAG-Xplus、島津製作所)を用いて曲げ試験を行い、曲げ試験中に試験片が耐えうる最大応力と弾性率を求めた(支点間距離:64mm、試験速度:10mm/min)。5本の試験片を評価し、平均値を当該試料の測定値とした。
【0040】
【0041】
表1に示されるように、サイズ剤を含有するパルプシートの粉砕物とポリプロピレンから成る成形用樹脂材料は、サイズ剤を含有しないパルプシートの粉砕物から成る成形用樹脂材料よりも破断応力(最大応力)、弾性率が高くなった。