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特開2024-116082繊維用処理剤、繊維及び繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116082
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】繊維用処理剤、繊維及び繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/188 20060101AFI20240820BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
D06M13/188
C11D1/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012977
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023021290
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博行
【テーマコード(参考)】
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AA03
4H003AC12
4H003DA01
4L033AA02
4L033AB01
4L033AB07
4L033AC07
4L033BA21
(57)【要約】
【課題】スポット吸収性を付与できる繊維用処理剤を提供する。
【解決手段】親水性繊維に適用する繊維用処理剤であって、アルコールと炭素数6~24の脂肪酸とのエステル(A)を必須成分として含み、前記エステル(A)は、融点が35℃以上であり、HLB値が6~15である繊維用処理剤。エステル(A)を構成する炭素数6~24の脂肪酸は、炭素数6~24の脂肪族飽和カルボン酸であることが好ましい。また、前記アルコールは、3価以上のアルコールであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性繊維に適用する繊維用処理剤であって、
アルコールと炭素数6~24の脂肪酸とのエステル(A)を必須成分として含み、
前記エステル(A)は、融点が35℃以上であり、HLB値が6~15である繊維用処理剤。
【請求項2】
前記炭素数6~24の脂肪酸が、炭素数6~24の脂肪族飽和カルボン酸である請求項1に記載の繊維用処理剤。
【請求項3】
前記アルコールは、3価以上のアルコールである請求項1または2に記載の繊維用処理剤。
【請求項4】
親水性繊維を請求項1または2に記載の繊維用処理剤で処理してなる繊維であって、
前記繊維用処理剤の不揮発性成分の含有割合が、前記繊維の重量に基づき、0.02~10.0重量%である繊維。
【請求項5】
請求項1または2に記載の繊維用処理剤を溶解して処理液を得る工程と、
前記処理液で親水性繊維を処理して繊維を得る工程と、を含む繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維用処理剤、繊維及び繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつ、生理用ナプキン及びペット用のシート等の吸収性物品では、例えば、尿や経血等の体液が完全に吸収されるまでの時間が極めて短いこと(瞬時透水性)などが求められており、検討が行われている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6994612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペット用のシートにおいては、排尿後のシートの上をペットが歩くことにより、足裏に尿が付着し、室内を汚すことがあるため、シート表面(吸収面)の横方向に尿などが拡散しにくいことが求められている。生理用ナプキンにおいても、シート表面(吸収面)の横方向に経血などが拡散しにくいほうが好ましい。このような事情から、吸収性物品においては、体液等が吸収される吸収面の横方向における拡散度合いを小さくすること(スポット吸収性が優れること)が求められる。
上記特許文献1に記載の発明によれば、瞬時透水性を向上することができるが、スポット吸収性については改善の余地があった。
本発明の課題は、優れたスポット吸収性を付与できる繊維用処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、以下の通りである。
[1]親水性繊維に適用する繊維用処理剤であって、アルコールと炭素数6~24の脂肪酸とのエステル(A)を必須成分として含み、前記エステル(A)は、融点が35℃以上であり、HLB値が6~15である繊維用処理剤
[2]前記炭素数6~24の脂肪酸が、炭素数6~24の脂肪族飽和カルボン酸である[1]に記載の繊維用処理剤。
[3]前記アルコールは、3価以上のアルコールである[1]または[2]に記載の繊維用処理剤。
[4]親水性繊維を[1]~[3]のいずれか1項に記載の繊維用処理剤で処理してなる繊維であって、前記繊維用処理剤の不揮発性成分の含有割合が、前記繊維の重量に基づき、0.02~10.0重量%である繊維。
[5][1]~[3]のいずれか1項に記載の繊維用処理剤を溶解して処理液を得る工程と、前記処理液で親水性繊維を処理して繊維を得る工程と、を含む繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、親水性繊維に優れたスポット吸収性を付与できる繊維用処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[繊維用付与剤]
本発明の繊維用処理剤は親水性繊維にスポット吸収性を付与する繊維用処理剤である。本発明において「スポット吸収性」とは、吸収性物品等の吸収面の横方向における体液等の拡散度合いを意味し、「スポット吸収性が優れる」とは吸収性物品等の吸収面の横方向における体液等の拡散度合いが小さいことをいう。親水性繊維は、温度25℃、相対湿度65%で吸水率が1重量%超のものをいう。
【0008】
親水性繊維としては、疎水性繊維に親水化処理を施したもの、親水性の天然繊維、親水性の再生繊維、親水性の半合成繊維、および親水性の合成繊維等が挙げられる。
疎水性繊維に親水化処理を施したものを構成する疎水性繊維としては特に限定されず、疎水性の合成繊維を用いることができ、ポリオレフィン、ポリエステル、およびポリアミド等からなる繊維が挙げられる。
親水化処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト重合処理、繊維への親水化剤の練り込み、および耐久性油剤の塗布等が挙げられる。
【0009】
親水性の天然繊維としては、例えば、コットン、麻、羊毛、パルプ等の天然セルロース繊維が挙げられる。親水性の再生繊維としては、例えば、レーヨン、テンセル(登録商標)などのリヨセル、ポリノジック、キュプラ等の再生セルロース繊維が挙げられる。親水性の半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース繊維が挙げられる。親水性の合成繊維としては、親水性官能基(例えば水酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基等)および/または、親水性結合(例えばアミド結合)を有する熱可塑性樹脂で構成される合成繊維等が挙げられる。
親水性繊維としては、スポット吸収性発現の観点から、好ましくは疎水性繊維に親水性処理を施したもの、親水性の再生繊維及び親水性の合成繊維であり、より好ましくは疎水性繊維に親水化処理を施したものである。
【0010】
本発明の繊維用処理剤は、アルコールと炭素数6~24の脂肪酸とのエステル(A)を必須成分として含む。エステル(A)は、1種を用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エステル(A)を構成するアルコールとしては、脂肪族1価アルコール[脂肪族飽和1価アルコール{直鎖脂肪族飽和1価アルコール(例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール及びステアリルアルコール等)、分岐脂肪族飽和1価アルコール(例えば、2-エチルヘキシルアルコール、2-デシルテトラデカノール、2-オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、イソエイコシルアルコール及びイソテトラコシルアルコール等)等}、脂肪族不飽和1価アルコール{直鎖脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール及びエルシルアルコール等)、分岐脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、フィトール等)];脂肪族2価アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等)];脂肪族飽和3~6価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトール等)等]等が挙げられる。
エステル(A)を構成するアルコールは、スポット吸収性の観点から、好ましくは、ポリエチレングリコール及び3価以上のアルコールであり、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ソルビタンおよびソルビトールである。
【0011】
エステル(A)を構成する炭素数6~24の脂肪酸としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和カルボン酸(x11)[直鎖脂肪族飽和モノカルボン酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、分岐脂肪族飽和カルボン酸(例えば、イソステアリン酸及びイソアラキン酸等)等]、炭素数6~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和カルボン酸(x12)[例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸及びエルシン酸等]並びにこれらの脂肪族カルボン酸のアルキル基中の水素原子が水酸基で置換されたオキシカルボン酸(例えば、リシノール酸等)等が挙げられる。本明細書においてカルボン酸の炭素数には、カルボニル基の炭素は算入しない。エステル(A)を構成する脂肪酸としては、スポット吸収性の観点から、好ましくは炭素数6~24の脂肪族飽和カルボン酸であり、より好ましくは炭素数14~20の脂肪族飽和カルボン酸である。
【0012】
エステル(A)を構成するアルコールが2価以上の場合、エステル(A)はモノエステルであってもよいし2価以上のエステル(ジエステル、トリエステル等)であってもよい。
【0013】
エステル(A)としては、好ましくは、ポリエチレングリコールのジステアレート(数平均分子量または化学式量が400~4000)、ポリエチレングリコールのジオレート(数平均分子量または化学式量が400~1000)、ソルビタンモノパルミテート、ソルビトールモノパルミテート及びソルビタンモノステアレート等である。
【0014】
本発明において、エステル(A)は、融点が35℃以上であり、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が6~15である。融点が35℃以上で、HLB値が6~15のエステル(A)を含む繊維用処理剤を用いることにより、親水性繊維に顕著に優れたスポット吸収性を付与することができる。融点及びHLB値の少なくとも一方が上記範囲外(例えば融点が35℃未満、HLB値が6未満または15超)である場合、親水性繊維に十分なスポット吸収性を付与できないことがある。
【0015】
エステル(A)の融点は、スポット吸収性の観点から好ましくは37℃以上である。融点が35℃未満のエステルでは、親水性繊維に十分なスポット吸収性を付与できないことがある。本発明において、エステル(A)の融点はJIS K 0064に規定する方法により測定した数値である。
【0016】
エステル(A)のHLB値は、スポット吸収性の観点から、好ましくは6.5以上、より好ましくは6.7以上であり、好ましくは14.8以下、より好ましくは14.0以下である。
【0017】
本発明において、HLB値とは親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式(1)から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212-213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。
HLB値=10×(無機性/有機性) (1)
式(1)中、括弧内は有機化合物の無機性と有機性との比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0018】
本発明の繊維用処理剤中のエステル(A)の割合は、繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは70~100重量%であり、より好ましくは80~100重量%である。
【0019】
エステル(A)は、公知の方法で得ることができる。例えば、少なくとも一種の炭素数6~24の脂肪酸とアルコールとをエステル化反応する方法等により得ることができる。前記のエステル化反応において、酸に代えて、そのエステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物又は低級(例えば、炭素数1~4)アルコールエステル]を用いてもよい。
【0020】
本発明の繊維用処理剤は、エステル(A)以外の他の成分(B)を含んでいてもよい。他の成分(B)としては、例えば、炭素数2~10の多価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びソルビトール等)、溶剤(水及び有機溶剤等)、ワックス等の潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤及び香料等が挙げられる。
【0021】
[繊維]
本発明の繊維は、親水性繊維を本発明の繊維用処理剤で処理してなる繊維である。本発明の繊維用処理剤を親水性繊維の処理に使用することで、親水性繊維にスポット吸収性を付与し、本発明の繊維とすることができる。
本明細書において繊維用処理剤で処理する前の親水性繊維を「親水性繊維本体」または「繊維本体」と呼ぶことがある。本発明の繊維は、本発明の繊維用処理剤と親水性繊維本体とを含む。
【0022】
本発明の繊維において、本発明の繊維用処理剤の不揮発性成分の含有割合は、(処理後の)繊維の重量に基づき、0.02~10.0重量%であることが好ましく、0.2~7.0重量%であることがより好ましく、1~7重量%であることが特に好ましい。
【0023】
本発明の繊維用処理剤を親水性繊維本体の処理に使用する方法としては、繊維用処理剤を繊維本体に付着させる方法等が挙げられる。繊維本体に繊維用処理剤を付着させる方法には特に制限はなく、例えば紡糸、延伸などの任意の工程で、ディップ給油法、オイリングロール法、浸漬法、及び噴霧法などの公知の方法により付着する方法等が挙げられる。本発明の繊維用処理剤は、不織布などの状態とした繊維本体に直接塗布する方法などにより付着させてもよい。本発明の繊維用処理剤を繊維本体に使用する場合には、希釈液(水、エタノール等の水性溶剤、有機溶剤など)で希釈して用いてもよいし、希釈液を用いずに本発明の繊維用処理剤そのものを溶解して用いてもよい。
【0024】
本発明の繊維の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の繊維用処理剤を含む処理液を得る工程(工程1)と、処理液で親水性繊維(本体)を処理して繊維を得る工程(工程2)と、を含む方法により製造することができる。
工程1においては、繊維用処理剤を例えば上述の希釈液に溶解または分散させて処理液を得てもよいし、繊維用処理剤そのものを加熱することにより融解(または溶解)して処理液を得てもよい。繊維用処理剤そのものを加熱する際の温度は処理剤に含まれるエステル(A)の融点以上であればよく、好ましくは40℃以上である。加熱時間(または融点以上の温度で保温する時間)は、エステル(A)が液状になるように設定することが好ましい。本明細書において「液状」とは、対象物を容器に入れて、容器を傾けた後10秒以内に対象物が流動し形状が変化するものをいう。「容器を傾ける前」は、容器を水平な台の上に置いた状態とし、「容器を傾けたとき」には、水平な台の上に置いた容器を、傾ける前よりも10°以上傾けた状態とする。
工程2において、親水性繊維を処理する方法としては、上述の繊維用処理剤を繊維本体に付着させる方法、および繊維本体に直接塗布する方法等があげられる。
【0025】
本発明の繊維の素材(親水性繊維本体)としては、上記「繊維用処理剤」で説明した「親水性繊維」と同じものが挙げられる。
【0026】
本発明の繊維の態様は、布状の繊維が好ましく、織物、編物、及び不織布等が挙げられる。また、混綿、混紡、混繊、交編、及び交織などの方法で混合した繊維を布状として使用してもよい。これらの中では、特に不織布が好ましい。
【0027】
本発明の繊維用処理剤が付着した繊維を不織布に適用する場合、本発明の繊維用処理剤を処理した短繊維を、乾式又は湿式法で繊維積層体とした後、加熱ロールで圧着したり、空気加熱で融着したり、高圧水流で繊維を交絡させ不織布としてもよいし、スパンボンド法、メルトブローン法、及びフラッシュ紡糸法等によって得られた不織布に、本発明の繊維用処理剤を付着させてもよい。
【0028】
本発明の繊維は、吸水性物品のトップシート、特に紙おむつ等の衛生材料のトップシートとして好適に用いられる。本発明の繊維は、セカンドシート、吸水体及び吸収パッド等に利用することもできる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
<製造例1:(A-1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、パルミチン酸599.5g(2.34モル)、ソルビトール70%水溶液394.2g(1.5モル)、エステル化触媒である水酸化ナトリウムを6.0g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.3gを仕込み、減圧窒素置換後、徐々に140℃まで昇温し脱水を行った後、190℃まで昇温し4時間エステル化反応を行い、ソルビトールモノパルミテート(A-1)を得た。
【0031】
<製造例2:(A-2)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ポリエチレングリコール(分子量:400)437.5g(1.1モル)及びステアリン酸562.5g(2.0モル)仕込み、窒素雰囲気下攪拌しながら徐々に100℃まで昇温しエステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を3g仕込み、さらに135℃まで昇温しエステル化反応を行った。酸価が7以下になったのを確認したのちに水酸化ナトリウムを添加してpHを7に調整し、珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過によりポリエチレングリコールジステアレート(A-2)を得た。
【0032】
<製造例3:(A-3)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ポリエチレングリコール(分子量:4000)873.8g(0.2モル)、ステアリン酸を132.7g(0.5モル)仕込み、窒素雰囲気下攪拌しながら徐々に90℃まで昇温し溶解させた。続いてエステル化触媒である硫酸を1g仕込み、さらに140℃まで昇温しエステル化反応を行った。酸価が2.5以下になったのを確認したのちに水酸化ナトリウムを添加してpHを6に調整しポリエチレングリコールジステアレート(A-3)を得た。
【0033】
<製造例4:(A-4)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ポリエチレングリコール(分子量:400)450g(1.1モル)、オレイン酸607.7g(2.2モル)、エステル化触媒である50重量%次亜リン酸水溶液を仕込み、窒素雰囲気下攪拌しながら徐々に230℃まで昇温し10時間エステル合成を行った。その後70℃まで冷却し水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整してポリエチレングリコールジオレート(A-4)を得た。
【0034】
<製造例5:(A-6)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、パルミチン酸652.9g(2.55モル)、ソルビトール70%水溶液656.4g(2.52モル)、エステル化触媒である水酸化ナトリウムを3.3g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.7gを仕込み、減圧窒素置換後、徐々に140℃まで昇温し脱水を行った後、230℃まで昇温し17時間エステル化反応を行い、ソルビタンモノパルミテート(A-6)を得た。
【0035】
<実施例1~6及び比較例2~3>
実施例1~6および比較例2~3の繊維用処理剤として表1に記載したエステルを用い、各エステルを40℃で30分間撹拌することにより融解して液状とし、実施例1~6および比較例2~3の繊維用処理剤を得た。
【0036】
実施例1~6及び比較例2~3で用いたエステルは、以下の通りである。
(A-1):製造例1で得られたソルビトールモノパルミテート
(A-2):製造例2で得られたポリエチレングリコールジステアレート(オキシエチレン基の繰り返し数:9)
(A-3):製造例3で得られたポリエチレングリコールジステアレート(オキシエチレン基の繰り返し数:90)
(A-4):製造例4で得られたポリエチレングリコールジオレート(オキシエチレン基の繰り返し数:9)
(A-5):ソルビタンモノステアレート(花王(株)製、レオドール SP-S10V)
(A-6):製造例5で得られたソルビタンモノパルミテート
実施例6で用いたエステル:製造例1で得られたソルビトールモノパルミテート(A-1)と製造例5のソルビタンモノパルミテート(A-6)との混合物[(A-1)/(A-6)=7/3(重量比)]
(A’-1):三洋化成工業(株)製、「イオネット MS-400」(EOの重量割合:60重量%、化学式量=667)
(A’-2):ソルビタンモノオレートEO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「サンデット OS-200A」)(EOの重量割合:48重量%、化学式量=1840)
【0037】
<実施例1~6、比較例1~3:繊維の製造及び評価>
[1.希釈液の作製]
実施例1~6および比較例2~3の繊維用処理剤について、それぞれ融点以上に加熱して融解させた後に、60~90℃の温水を徐々に加え不揮発性成分の濃度が3.5重量%となるように希釈することにより、繊維用処理剤の希釈液を得た。
[2.不織布の製造]
親水性繊維本体300gに対し、1.で作製した繊維用処理剤希釈液600gをスプレー給油法で付着させ、繊維に付着する繊維用処理剤の不揮発性成分の付着量を、21gとした。
親水性繊維本体としては、ユニ・チャーム(株)製「デオシートしっかり超吸収無香消臭タイプレギュラーのトップシートを用いた。
比較例1に関しては、親水性繊維本体そのもの(繊維用処理剤処理なし)を用いて不織布を作製した。
得られた繊維について、以下の方法により吸収面積減少率の評価試験を行った。結果を表1に示す。表1に、各例で用いたエステルのHLB値と融点を併せて示した。
【0038】
[拡散面積減少率の評価]
上記で製造した繊維に対し、10mmの高さから人工尿30mLを8秒間かけて注入した。人工尿を注入した直後に、人工尿の拡散面積を測定した。
比較例1(繊維用処理剤処理なし)の不織布における、拡散面積(未処理不織布における拡散面積)に対する拡散面積減少率を、下記式により算出した。

拡散面積減少率(%)=[(未処理不織布における拡散面積-処理不織布における拡散面積)/未処理不織布における拡散面積]×100

拡散面積減少率は大きいほうがスポット吸収性に優れている。拡散面積減少率が負の数値の場合は、比較例1よりも拡散面積が広い(スポット吸収性が比較例1よりも劣っている)ことを意味する。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果から明らかなように、本発明によれば、親水性繊維にスポット吸収性を付与することができるということがわかった。本発明の繊維用処理剤が付着した繊維は、スポット吸収性に優れているので、吸収性物品のトップシートなどとして有用である。