(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116089
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240820BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240820BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240820BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240820BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240820BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A23L2/00 G
A23L2/52
A23L2/60
A61K47/26
A61K9/08
A61K47/14
A61K47/08
A61K47/02
A61K47/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017568
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023021265
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山地 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】迫 真理子
(72)【発明者】
【氏名】小林 知美
【テーマコード(参考)】
4B117
4C076
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK16
4B117LL02
4C076AA12
4C076BB01
4C076DD21
4C076DD23
4C076DD40T
4C076DD45T
4C076DD67
4C076FF11
4C076FF52
(57)【要約】
【課題】実質的に糖類を含まない飲料において、飲用時の満足感が付与された飲料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)(b)(c)及び(d);
(a)糖アルコール
(b)酪酸エチル、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の香気成分
(c)ナトリウムイオン
(d)塩化物イオン
を含み、
(c)ナトリウムイオンが35mg/100mL以上、かつ(d)塩化物イオンが30mg/100mL以上であって、
実質的に糖類を含まないことを特徴とする飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)(b)(c)及び(d);
(a)糖アルコール
(b)酪酸エチル、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の香気成分
(c)ナトリウムイオン
(d)塩化物イオン
を含み、
(c)ナトリウムイオンが35mg/100mL以上、かつ(d)塩化物イオンが30mg/100mL以上であって、
実質的に糖類を含まないことを特徴とする飲料。
【請求項2】
(a)糖アルコールがエリスリトール、ソルビトール、マルチトール及びキシリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
カロリーが100mL当たり40kcal 以下である、請求項1又は2のいずれかに記載の飲料。
【請求項4】
医薬品、又は医薬部外品である、請求項1又は2のいずれかに記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に糖類を含まない飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康意識の高まりから、飲料での糖類ゼロニーズが高まっている。糖類を含まない飲料は、甘味の質や風味バランスが悪く、また飲みごたえに欠け、飲用時の満足感の高い飲料を提供できないという課題があった。該課題を解決するため、これまでにいくつかの試みがなされている。
【0003】
例えばクコシ及び/又はケイヒを含むことで、糖アルコールや高甘味度甘味料などの低カロリー甘味料を使用しても、従来の高カロリー甘味料を使用したビタミン含有内服液剤に優る美味しさ及びボリューム感を付与できることが報告されている(特許文献1)。上記技術では、クコシ又はケイヒの配合が必須であり、商品設計の自由度という点で工夫の余地がある。
【0004】
また、デヒドロローズオキシドを、飲料、特に炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、リンゴ果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料に一定量添加することにより、飲料の飲みごたえ感を増強し、また、飲料の後半の厚みのある味を増強する効果を有し、消費者の嗜好に合うバラエティーに富んだ飲料を提供することが報告されている(特許文献2)。
【0005】
糖類を含まない飲料において、生活者の風味に対する高度な要求に対応するには工夫が必要であり、商品展開をするうえでも種々の検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-143827号公報
【特許文献2】特開2022-25772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、実質的に糖類を含まない飲料において、飲用時の満足感が付与された飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、糖類を含まず糖アルコールを含む水溶液に、ある種の香気成分と、特定量のナトリウムイオン及び塩化物イオンを配合することにより、満足感のある飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)次の成分(a)(b)(c)及び(d);
(a)糖アルコール
(b)酪酸エチル、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の香気成分
(c)ナトリウムイオン
(d)塩化物イオン
を含み、
(c)ナトリウムイオンが35mg/100mL以上、かつ(d)塩化物イオンが30mg/100mL以上であって、
実質的に糖類を含まないことを特徴とする飲料、
(2)(a)糖アルコールがエリスリトール、ソルビトール、マルチトール及びキシリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の飲料、
(3)カロリーが100mL当たり40kcal 以下である、(1)又は(2)のいずれかに記載の飲料、
(4)医薬品、又は医薬部外品である、(1)~(3)のいずれかに記載の飲料、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、実質的に糖類を含まない飲料において、飲用時に満足感が付与された飲料を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の飲料は、実質的に糖類を含まない。実質的に糖類を含まないとは、飲料100mL当たりの糖類含有量が0.5g未満であることをいう。本発明における糖類とは、単糖類又は二糖類であり、糖アルコールでないものである。これは、食品表示基準と同じである。
【0012】
本発明における糖アルコールとは、糖類を還元し、末端をアルコール基に変換した構造を持ち、具体的にはエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、還元水飴等が挙げられ、好ましくは、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールである。糖アルコールは、1種のみの使用でもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。糖アルコールの含有量(複数含む場合は、その合計量)は、飲料全量に対して0.01~90w/v%が好ましく、より好ましくは0.1~30w/v%、さらに好ましくは1~10w/v%である。エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールは、アセスルファムカリウムやスクラロース等の高甘味度甘味料と比較して砂糖に似た味質を持つという共通した特徴を有している。
【0013】
本発明における香気成分とは、特定のエステル系又はアルデヒド系香気成分が挙げられる。具体的には酪酸エチル、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチルである。
【0014】
香気成分の含有量は、飲料全体に対してそれぞれの香気成分として0.00001w/v%~0.1w/v%が好ましく、より好ましくは0.00002w/v%~0.05w/v%,さらに好ましくは0.0001w/v%~0.005w/v%である。酪酸エチル、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチルのいずれかの香気成分を複数含む場合は、飲料全体に対して0.00002w/v%~0.5w/v%が好ましい。
【0015】
また、糖アルコール1質量部に対する香気成分の含有量は、特に制限されないが、本願発明の効果を十分に発揮しうるという点から、0.0000001~10質量部が好ましく、より好ましくは0.0000007~0.5質量部,さらに好ましくは0.00001~0.005質量部である。
【0016】
本発明の飲料におけるナトリウムイオンの由来は特に限定されないが、通常、有機塩、無機塩に由来する。具体的には、水酸化ナトリウム、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等に由来する。
【0017】
ナトリウムイオン濃度は飲料全体に対して、通常、35mg/100mL以上であり、好ましくは35mg/100mL~360mg/100mL、より好ましくは35mg/100mL~150mg/100mLである。
【0018】
また、糖アルコール1質量部に対するナトリウムイオンの含有量は、特に制限されないが、本願発明の効果を十分に発揮しうるという点から、0.0004質量部以上が好ましく、より好ましくは0.001~3.6質量部、さらに好ましくは0.004~0.2質量部である。
【0019】
本発明の飲料における塩化物イオンの由来は特に限定されないが、通常、有機塩、無機塩に由来する。具体的には、塩酸、ピリドキシン塩酸塩、カルニチン塩化物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アルギニン塩酸塩等に由来する。
【0020】
塩化物イオン濃度は飲料全体に対して、通常、30mg/100mL以上であり、好ましくは30mg/100mL~330mg/100mL、より好ましくは35mg/100mL~130mg/100mLである。
【0021】
また、糖アルコール1質量部に対する塩化物イオンの含有量は、特に制限されないが、本願発明の効果を十分に発揮しうるという点から、0.0003質量部以上が好ましく、より好ましくは0.001~3.3質量部、さらに好ましくは0.003~0.1質量部である。
【0022】
本発明の飲料におけるナトリウムイオン濃度(mg/100mL)および塩化物イオン濃度(mg/100mL)の比(ナトリウムイオン濃度/塩化物イオン濃度)は、本願発明の効果を十分に発揮しうるという点から、0.65を超えること(0.65超)が好ましく、より好ましくは0.65超1.95未満、さらに好ましくは0.8以上1.7以下である。
【0023】
本発明の飲料のカロリーは、健康意識の高まりに対応した飲料を提供するという観点から、好ましくは、100mL当たり40kcal以下であり、より好ましくは100mL当たり30kcal以下、さらに好ましくは100mL当たり20kcal以下である。
【0024】
本発明の飲料は、ドリンク剤等の医薬品や医薬部外品の各種製剤、健康飲料、清涼飲料等の各種飲料に適用することができ、特に、医薬品、医薬部外品に有用である。実質的に糖類を含まないという点で、摂取者がより限定的な医薬品、医薬部外品に対し、目的に沿った製品を提供できるからである。
【0025】
本発明の飲料のpHは、特に限定されず、例えばpH2.0~7.0である。甘味の質や風味バランスが良く、高い満足感を感じられるという点において、pH2.5~5.0の範囲が好ましく、さらに好ましくはpH2.5~4.0である。本発明の飲料のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられる。上記記載の酸や塩基は、pH調整剤としてのみではなく、他の用途としても使用することができる。
【0026】
本発明の飲料にはその他の成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸又はその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0027】
さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤、甘味料、酸味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0028】
本発明の飲料は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり、適量の精製水で溶解した後、必要に応じてpHを調整し、さらに精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により得られ、容器詰め飲料とすることもできる。
【実施例0029】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0030】
表1~2に示す組成に従い、成分を精製水に溶解し、精製水で容量を調整して飲料(実施例1~7及び比較例1~11)を得た。なお、表1~2に示すナトリウムイオン濃度、塩化物イオン濃度、カロリーは計算値である。
実施例1~7及び比較例1~11の飲料をカップに約20mL注ぎ、「満足感」、「バランス」、「持続性のある風味」、「元気になる感じ」について、表3に示す評価基準に従って専門パネル4名によるブラインド評価を実施した。すべての評価は室温で実施した。
【0031】
「満足感」は、バランス、持続性のある風味、元気が出る感じ、味の厚みの存在、飲用欲求が満たされる感覚を含む総合的な感覚を評価した。「バランス」「持続性のある風味」「元気になる感じ」は次の通りである。「バランス」とは、甘味・酸味・苦味・塩味と香りにおいて、不快に感じる風味がなく、特定の風味が突出しておらず調和がとれていること。「持続性のある風味」とは、甘味・酸味・苦味・塩味と香りが飲用時及び飲用後に持続すること。「元気が出る感じ」とは、飲料の風味からエネルギーが湧き出る感じ、及び飲用後に頑張れそうな感じを実感すること。
結果を表1~2に示した。なお、パネル4名の平均を評点として示した。
【0032】
【0033】
実施例1~5から明らかなように、エリスリトール、酪酸エチル、特定の量以上のナトリウムイオン及び塩化物イオンを配合することで、糖類を含まない飲料でありながら飲用時の十分な満足感が得られた。
一方で比較例1~5から明らかなように、上記4成分全てが配合されていない場合には、十分な満足感が得られなかった。
比較例6、7から明らかなように、ナトリウムイオン濃度と塩化物イオン濃度が特定の量より低い場合、エリスリトール、酪酸エチル、ナトリウムイオン及び塩化物イオンが配合されていても十分な満足感が付与されなかった。
なお、塩化物イオン濃度に対するナトリウムイオン濃度(ナトリウムイオン濃度/塩化物イオン濃度)は、実施例1~4、比較例3、6では1.1であり、実施例5では1.6であり、比較例7では0.6であった。
【0034】
【0035】
実施例6、7から明らかなように、糖アルコールとしてソルビトールを配合した場合、又は香気成分としてベンズアルデヒドを配合した場合においても、特定の量以上のナトリウムイオン及び塩化物イオンを配合することで、糖類を含まない飲料でありながら高い満足感が得られた。
なお、塩化物イオン濃度に対するナトリウムイオン濃度(ナトリウムイオン濃度/塩化物イオン濃度)は、実施例6、7、比較例10では1.1であった。
【0036】
【0037】
(製剤例)
表4に製剤例の飲料を記載する。
【0038】
本発明により、糖類を配合することなく飲用時の高い満足感を付与した飲料の提供が可能となり、健康意識の高い生活者のニーズにより的確に対応できる、或いは生活習慣病の予防となり得る製品の提供に寄与できるようになった。