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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116090
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】化粧料含浸用基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4374 20120101AFI20240820BHJP
   D04H 1/4258 20120101ALI20240820BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20240820BHJP
【FI】
D04H1/4374
D04H1/4258
D04H3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017605
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023021769
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023110192
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023161475
(32)【優先日】2023-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】見正 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】森 章太朗
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA14
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047BA04
4L047BA09
4L047CA05
4L047CB10
4L047CC03
4L047CC16
4L047EA02
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げ
る際の伸びが抑制され、かつ、肌触りが良好な基布を提供する。
【解決手段】連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、レーヨン短繊維を50質量%以上含む短繊維ウェブであって、パラレルカード機により作成されたパラレル短繊維ウェブを準備する工程、スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程とを含む化粧料含浸用基布の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を含浸するための基布の製造方法であって、
連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、
レーヨン短繊維を50質量%以上含む短繊維ウェブであって、パラレルカード機により作成されたパラレル短繊維ウェブを準備する工程、
スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、
積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程を含む化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項2】
スパンボンド不織布は、連続繊維同士が部分的に熱圧接されてなる不織布であることを特徴とする請求項1記載の化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項3】
化粧料を含浸するための基布が、シートパック用基布であることを特徴とする請求項1または2記載のシートパック用基布の製造方法。
【請求項4】
化粧料を含浸するための基布が、化粧落としのためのクレンジング用基布であることを特徴とする請求項1または2記載のクレンジング用基布の製造方法。
【請求項5】
化粧料を含浸するための基布が、制汗シート用基布であることを特徴とする請求項1または2記載の制汗シート用基布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、化粧料を含浸するための基布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料を含浸してなるシートパックやクレンジングシート、制汗シート等の化粧料を含浸するための基材としては、不織布が多く用いられている。不織布としては、コットン繊維のみからなる不織布、レーヨン繊維のみからなる不織布、また、スパンボンド不織布の両表面にコットン繊維層を積層させた積層不織布(例えば、特許文献1)等が用いられている。
【0003】
特許文献1によれば、スパンボンド不織布層を中間層とし、両表面にコットン繊維を積層した積層不織布をシートパックのシート基材とすることにより、コットンの風合いを活かしたものとなり、また、化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げる際の伸びが抑制されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-168226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シートパックやクレンジングシート、制汗シート等の化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げる際の伸びが抑制され、かつ、肌触りが良好な化粧料含浸用基布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するものであって、化粧料を含浸するための基布の製造方法であって、
連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、
レーヨン短繊維を50質量%以上含む短繊維ウェブであって、パラレルカード機により作成されたパラレル短繊維ウェブを準備する工程、
スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、
積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程を含む化粧料含浸用基布の製造方法を要旨とするものである。
【0007】
本発明は、化粧料を含浸するための基布の製造方法であり、当該基布は、スパンボンド不織布の機械方向とパラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層された積層ウェブにより構成される。
【0008】
本発明で用いるスパンボンド不織布は、ポリオレフィン繊維やポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の連続繊維で構成される。ポリオレフィン繊維は、屈曲性が良好で、柔軟性に優れるため好ましい。また、芯部がポリプロピレン、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維もまた柔軟性の観点から好ましい。また、芯部がポリエステル、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘複合繊維は、機械的強度を有し、かつ柔軟性も備えるため好ましい。ポリエステル繊維のなかでも、ポリ乳酸繊維は、環境配慮の観点から好ましい。連続繊維の単繊維繊度は、1~3デシテックスが好ましい。より好ましくは1~2デシテックスである。繊度が1デシテックス以上であることにより、実用的な強度を有するものとなり、短繊維との交絡の際に容易に切断されにくいため好ましい。繊度が3デシテックス以下であることにより、連続繊維は柔軟性が優れ、曲げに対して抵抗なく屈曲することから、短繊維との交絡性が向上し、また、シートパック用基布の柔軟性も良好となる。
【0009】
スパンボンド不織布の目付は、7~30g/m程度がよい。目付が7g/m以上であることにより、化粧料含浸用基布の強度を維持し、化粧料が含浸された場合に、変形しにくいシートパックやクレンジングシートが得られる。一方、目付が30g/m以下であることにより、基布の質量が大きくなり過ぎず、強度と柔軟性との両者を備えたシートパックやクレンジングシート等となる。このような理由から、7~15g/mであることがより好ましい。
【0010】
スパンボンド不織布は、スパンボンド法により製造されたものであり、溶融紡糸された繊維群を移動式コンベアネットに捕集し、その後、連続繊維同士を接合して一体化してスパンボンド不織布となり、その後、巻芯に巻かれてスパンボンド不織布ロールとなる。本発明では、このような巻き芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する。
【0011】
スパンボンド不織布は、連続繊維同士を接合する手段として、熱エンボス加工により、繊維同士が部分的に熱圧接されることにより一体化したものを好ましく用いる。部分的に熱圧接されることにより、柔軟性を有するとともに、機械的強度と寸法安定性を備えたものとなり、化粧料が含浸されたシートパックやクレンジングシートや制汗シートを袋から引っぱり出した際や、また、畳まれた状態のシートパック等を広げる際に、目付が小さくとも、変形しにくく寸法を維持したものとなり好ましい。また、スパンボンド不織布は、溶融紡糸された繊維群を移動式コンベアネットに捕集するため、連続繊維の軸方向が、ほぼ機械方向となるように配列して、堆積され捕集される。したがって、得られるスパンボンド不織布は、連続繊維の繊維軸方向がほぼ機械方向になるように配列しているため、機械方向の強度に優れるとともに、しなやかで柔軟性が高い。
【0012】
スパンボンド不織布の片面には、レーヨン短繊維を50質量%以上含む短繊維ウェブを積層する。レーヨン短繊維は柔軟性に優れるとともに、吸水性にも優れるため、肌触りがよく、良好に化粧料を保持することができる。よって、本発明においては、このようなレーヨン短繊維を、短繊維ウェブ中に50質量%以上含ませる。また、短繊維ウェブの構成繊維としては、レーヨン短繊維のみからなるものであってもよいが、短繊維ウェブ中に50質量%未満の範囲で、レーヨン繊維以外の他の繊維を混合させてもよい。
【0013】
混合させる他の繊維としては、天然繊維であって、吸水性に優れる木綿繊維が好ましい。また、溶剤紡糸セルロース系繊維もまた吸水性を有し、柔軟性も有するため好ましい。
【0014】
さらには、合成繊維であって、単繊維繊度が1デシテックス未満の極細繊維を混合させることも好ましい。極細繊維は柔軟性に優れるため肌当たりも良好であり、繊維同士の交絡性も良好であるためである。極細繊維としては、分割型複合繊維を用いて、交絡処理の際に、分割割繊し、極細繊維が発現するものを用いるとよい。分割型複合繊維の分割形状としては、2種の重合体が横断面において放射状に交互に配してなるものが好ましい。分割型複合繊維は、基布の吸液性を考慮すると、混合する場合の混合比は、多くとも20質量%がよく、好ましくは10~20質量%である。短繊維ウェブを構成する短繊維の繊維長は、20~55mm程度がよい。また、単繊維繊度は、肌触り性を考慮すると、細繊度であることが好ましく、2.5デシテックス以下が好ましく、より好ましくは2.0デシテックス以下である。単繊維繊度の下限は、0.1デシテックス程度でよい。また、2.5デシテックス以下であることにより、繊維が屈曲しやすく、スパンボンド不織布と交絡一体化の際に、連続繊維に絡み付きやすいため好ましく、また、肌当たりが優しいため好ましい。
【0015】
また、合成繊維であって、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維を混合させてもよい。芯部は、鞘部のポリエチレンよりも高融点の熱可塑性樹脂により構成されるものがよい。このような高融点熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレンやポリエステルが挙げられる。鞘部のポリエチレンは加熱することにより溶融軟化するため、基布にヒートシール性や熱成型性を付与することができる。また、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維は、柔軟性に優れるため、上記したように加熱処理により溶融軟化させて熱バインダー繊維として機能させるのではなく、加熱せず非加熱の状態のままとし、基布の柔軟性向上に寄与することもできる。
【0016】
短繊維ウェブの目付は、15~55g/mが好ましい。短繊維ウェブは、レーヨン繊維を主たる構成繊維とするため、吸水性に優れ、基布に含浸させる化粧料を良好に吸液するとともに、吸収した化粧料を良好に保持する役割も担う。目付が上の範囲内であると、良好に吸液し、保持することができる。目付が15g/m未満であると、化粧料を十分に保持しにくい傾向となり、一方、55g/mを超えると、化粧料を多量に吸液してしまい、例えば、シートパックの場合には、使用者が顔面等に貼り付けた際に、重く感じる場合がある。
【0017】
スパンボンド不織布の片面に積層する短繊維ウェブは、パラレルカード機により作成したパラレル短繊維ウェブである。短繊維ウェブを作成する方法としては、一般的には、繊維の方向性として、ウェブの機械方向に繊維の軸方向が配列するパラレルウェブ、また、パラレルウェブを機械方向と直行する方向が繊維方向となるように反転させて堆積させ、繊維の軸方向が機械方向と直行する方向に配列してなるクロスウェブ、気流による遠心力によって繊維を搬送して繊維の方向性が一定ではなく個々の繊維がランダムな方向を向いて堆積してなるランダムウェブが挙げられる。また、ランダムウェブと同じく、繊維の方向性が一定ではなくランダムな方向に堆積したエアレイウェブも挙げられる。本発明においては、前記したウェブのうち、繊維の配向方向が機械方向であり、一定の方向を有するパラレルウェブを採用することにより、肌触りが良好な化粧料含浸用基布が得られる。なお、パラレルウェブは繊維の配向方向が機械方向であるため、機械方向(MD方向)とこれに直交する方向(CD方向)との強度比が大きく、強度のバランスが悪いため、このような短繊維のみからなるパラレルウェブのみを用いて、水流交絡処理を施したり、交絡処理後の乾燥処理、また基布を特定の形状に裁断する際やシートパックとして特定の形状に打ち抜きする際の処理工程等において、CD方向の強度が小さいために幅入りし、機械方向に伸びてしまい、処理工程での加工性に問題が生じるが、本発明においては、このようなパラレルウェブとスパンボンド不織布とを積層して一体化するため、寸法安定性に優れ、工程での幅入りが生じにくく、取り扱い性が良好な基布となる。
【0018】
本発明は、上記した連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備し、また、一方で、上記したレーヨン短繊維を50質量%以上含む短繊維ウェブであって、パラレルカード機により作成されたパラレル短繊維ウェブを準備し、スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得、この積層ウェブに高圧水流を噴射して、水流交絡処理を施す。積層ウェブは、スパンボンド不織布を構成する連続繊維も機械方向に配向し、また、短繊維ウェブを構成する短繊維も機械方向に配向し、両者ともに機械方向に配向していることから、噴射される高圧水流によって配向状態をほぼ維持したまま短繊維ウェブ同士交絡するとともに、短繊維が連続繊維に絡み、積層ウェブは、交絡一体化する。
【0019】
連続繊維および短繊維はともにほぼ機械方向に配向し、構成繊維が同じ方向に配向していることにより、柔軟性が良好で、肌触りが良く、地合いの良好な化粧料含浸用基布を得ることができる。また、スパンボンド不織布が積層されることにより、実用的な強度を有し、幅入りしにくく、寸法安定性に優れ、加工性が良好となり、化粧料を含ませてシートパックやクレンジングシート等とした際に、袋から取り出した際に伸びや変形が生じにくい。また、短繊維ウェブは、構成繊維同士が水流交絡処理により交絡一体化しているため、シートパックやクレンジングシート等として化粧料を含ませた際に、レーヨン繊維自体が化粧料を吸液するとともに、交絡により形成される繊維間空隙内に良好に化粧料を保持することができる。
【0020】
スパンボンド不織布に短繊維ウェブを積層する際、スパンボンド不織布の片面に上記したパラレル短繊維ウェブを積層した2層構造のものであるが、さらに、スパンボンド不織布の他方の面に短繊維ウェブが積層され、スパンボンド不織布の両面に短繊維ウェブを積層した3層構造のものであってもよい。3層構造の場合に、他方の面に積層する短繊維ウェブもまたパラレル短繊維ウェブの場合は、柔軟性が良好なものとなる。また、他方の面に積層する短繊維ウェブが、パラレル短繊維ウェブではなく、ランダムウェブやクロスウェブを採用する場合には、柔軟性の観点から、片面に積層するパラレルウェブの目付と同定度や同等もしくはそれよりも小さい目付のものを採用することもよい。
【0021】
本発明においては、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得、この積層ウェブに高圧水流を噴射して、水流交絡処理を施す。水流交絡処理における高圧水流は、例えば、1~10MPaの圧力の水流を積層ウェブに衝突させることにより行う。まず、1~3MPa程度の高圧水流で予備交絡を行い、次いで4~10MPaの圧力の水流で本交絡を行うと、地合いの良好なものが得られる。また、水流の圧力が10MPaを超えると、スパンボンド不織布と短繊維ウェブとの交絡が強くなりすぎて、やや柔軟性に劣る傾向となる。
【0022】
水流交絡処理を施して得られる積層体には、高圧水流処理により水が含有されているので、この水を脱水乾燥工程を経て除去し、化粧料含浸用基布を得る。脱水乾燥工程は従来公知の方法が採用され、例えば、積層体をマングル等で搾液した後、乾燥機を通すことにより行われる。
【0023】
化粧料含浸用基布は、スパンボンド不織布と短繊維ウェブとが積層されてなり、短繊維同士が絡むとともに、短繊維がスパンボンド不織布に絡むことにより一体化してなる。なお、スパンボンド不織布に絡みついた一部の短繊維が、スパンボンド不織布表面に存在することもある。
【0024】
基布の目付は、25~70g/mの範囲がよい。25g/m以上であることによって適度な強度を有するとともに、化粧料を良好に保持することができる。一方、70g/m以下であることによって、化粧料を含んだシートパック自体やクレンジングシート自体の質量が大きくなり過ぎず、取り扱いが良好となる。
【0025】
本発明において、化粧料含浸用基布が白以外の色の着色がなされていることも好ましい。化粧料含浸用基布は、いわゆる清潔感のイメージである白色を呈するものが一般的であるが、白以外の色の着色がなされることによって清潔感以外の美観性等の意匠性を付与することができる。また、着色の色相に応じて、種々のイメージを持たせることもできる。
【0026】
色相としては、青色、淡い水色、紫色、緑色、緋色、黄色、桃色等が挙げられる。青色や水色については、清潔感や清涼感を有するとともに、落ち着いた気分となりやすく、緑色、緋色、黄色については、使用者は、エネルギーが与えられる気分となりやすく、紫や桃色については、使用者は、華やかな気分となりやすい。得られた基布を用いて、シートパック等とした際に、そのシートパック等を収納する袋等の収納体においても、基布と同様の着色を呈したものとすることにより、より意匠性や統一感を持たせることもできる。また、基布に含浸させる化粧料の効能やイメージ等に応じて、基布に付与する色を選択することも好ましい。
【0027】
化粧料含浸用基布に着色する方法としては、得られた基布を所望の色に染色してもよい。また、化粧料含浸用基布を構成するスパンボンド不織布として、染色により着色されたスパンボンド不織布や、不織布を構成する繊維が、白色以外の色を呈する顔料を含有する原着のスパンボンド不織布を用いることも好ましい。着色されたスパンボンド不織布を用いる場合、スパンボンド不織布の色相を発揮させるために、短繊維ウェブを構成する短繊維はいずれも無着色であるか、白色顔料を含む短繊維を用いるとよい。また、スパンボンド不織布の色相をより発揮させるために、短繊維がスパンボンド不織布と同系色の顔料を含む原着短繊維や同系色の染料で染色された短繊維であることもよい。
【0028】
得られた化粧料含浸用基布は、例えば、打ち抜き加工処理等によって、顔の全部または一部を覆う形状、首、首と胸元を覆う形状等の所望の形状の基布とし、ローション等の化粧液、美容液、乳液等の化粧料を含ませてシートパックとする。化粧料を含ませたシートパックは適宜折り畳み、袋等に収納するとよい。本発明の基布により得られるシートパックは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【0029】
また、得られた化粧料含浸用基布は、例えば、適宜の大きさに裁断し、化粧メイク落とし用のクレンジングローションやクレンジング乳液等の化粧料を含ませて、クレンジングシートとする。クレンジングシートは、適宜折り畳み、また複数枚の折り畳まれたクレンジングシートを収納体に収納するとよく、複数枚収納する際には、クレンジングシートの一部がこれに積層される他のクレンジングシートの折り畳み部に挟まれるように組み合わせて、順次取り出し可能とするとよい。本発明の基布により得られるクレンジングシートは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、順次取り出し可能な形態としても変形しにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【0030】
また、得られた化粧料含浸用基布は、例えば、適宜の大きさに裁断し、制汗シート用のローション等の化粧料を含ませて、制汗シートとする。制汗シートは、適宜折り畳み、また複数枚の折り畳まれた制汗シートを収納体に収納するとよく、複数枚収納する際には、制汗シートの一部がこれに積層される他の制汗シートの折り畳み部に挟まれるように組み合わせて、順次取り出し可能とするとよい。本発明の基布により得られる制汗シートは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、順次取り出し可能な形態としても変形しにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、地合いが良好で、肌触りがよく、また、寸法安定性が良好で、加工性に優れる化粧料含浸用基布を提供することができる。
【実施例0032】
実施例1
[スパンボンド不織布の準備]
スパンボンド法によって得られたポリプロピレン連続繊維からなり、熱エンボス加工が施されたスパンボンド不織布(目付9g/m、連続繊維の単繊維繊度1.5デシテックス、熱エンボス加工による圧接面積率18%)が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備した。なお、連続繊維を構成するポリプロピレンのメルトフローレート(JIS-K7210 温度230 ℃ 、荷重2.16 kg)は60g/10分である。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群を、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付21g/mのレーヨン短繊維からなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したスパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の上にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層した積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、スパンボンド不織布側から4MPaの噴射圧力で1回高圧水流を施し、さらに反転して短繊維ウエブ側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0033】
実施例2
[スパンボンド不織布の準備]
実施例1で準備したスパンボンド不織布ロールを準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群を、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付16g/mのレーヨン短繊維からなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群を、ランダムカード機で開繊及び集積し、目付10g/mのレーヨン短繊維からなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したパラレル短繊維ウェブ上に、スパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層し、さらにスパンボンド不織布の上にランダム短繊維ウェブを積層した。得られた3層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、ランダム短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、パラレル短繊維ウェブ側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してランダム短繊維ウエブ側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0034】
実施例3
[スパンボンド不織布の準備]
実施例1で準備したスパンボンド不織布ロールを準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群を、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付15g/mのレーヨン短繊維からなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群を、ランダムカード機で開繊及び集積し、目付16g/mのレーヨン短繊維からなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したパラレル短繊維ウェブ上に、スパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層し、さらにスパンボンド不織布の上にランダム短繊維ウェブを積層した。得られた3層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、ランダム短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、パラレル短繊維ウェブ側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してランダム短繊維ウエブ側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0035】
実施例4
[スパンボンド不織布の準備]
実施例1で準備したスパンボンド不織布ロールを準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群と、平均繊維長25mmの木綿繊維群と、放射状にポリエステルとポリアミド6とが交互に配列してなる20分割型複合短繊維(短繊維繊度3.3デシテックス、繊維長38mm、分割割繊により発現するポリエステルまたはポリアミド6からなる極細繊維の単繊維繊度約0.17デシテックス)とを準備し、レーヨン短繊維:木綿繊維:分割型複合短繊維とを質量比50:25:25として混綿し、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付18g/mのパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
前記したレーヨン短繊維と木綿繊維と分割型複合短繊維とを質量比50:25:25として混綿し、ランダムカード機で開繊及び集積し、目付18g/mの短繊維からなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したパラレル短繊維ウェブ上に、スパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層し、さらにスパンボンド不織布の上にランダム短繊維ウェブを積層した。得られた3層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、ランダム短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、パラレル短繊維ウェブ側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してランダム短繊維ウエブ側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0036】
実施例5
[スパンボンド不織布の準備]
実施例1で準備したスパンボンド不織布ロールを準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
単繊維繊度1.67デシテックス、繊維長40mmのレーヨン短繊維群と、平均繊維長25mmの木綿繊維群と、放射状にポリエステルとポリアミド6とが交互に配列してなる20分割型複合短繊維(短繊維繊度3.3デシテックス、繊維長38mm、分割割繊により発現するポリエステルまたはポリアミド6からなる極細繊維の単繊維繊度約0.17デシテックス)とを準備し、レーヨン短繊維:木綿繊維:分割型複合短繊維とを質量比60:25:15として混綿し、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付18g/mのパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
前記したレーヨン短繊維と木綿繊維と分割型複合短繊維とを質量比60:25:15として混綿し、ランダムカード機で開繊及び集積し、目付18g/mの短繊維からなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したパラレル短繊維ウェブ上に、スパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層し、さらにスパンボンド不織布の上にランダム短繊維ウェブを積層した。得られた3層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、ランダム短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、パラレル短繊維ウェブ側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してランダム短繊維ウエブ側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0037】
比較例1
[パラレル短繊維ウェブ(1)の準備]
平均繊維長25mmの晒し木綿群をパラレルカード機で開繊及び集積し、目付24g/mの木綿繊維からなるパラレル短繊維ウェブを得た。
[ランダム短繊維ウェブ(2)の準備]
平均繊維長25mmの晒し木綿群をランダムカード機で開繊及び集積し、目付16g/mの木綿繊維からなるランダム短繊維ウェブを得た。
[化粧料含浸用基布]
上記準備した短繊維ウェブ(1)と(2)を積層し、得られた2層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、ランダム短繊維ウェブ(1)側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、ランダム短繊維ウェブ(2)側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してランダム短繊維ウエブ(1)側から8MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0038】
得られた実施例1~5、比較例1の用基布について、下記物性を測定し、その結果を表1に示す。
(1)目付(g/m):標準状態の試料から試験片(縦10cm×横10cm)10点を作成し、各試料片の質量を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し目付とした。
(2)引張強力(N/50mm幅):JIS L-1913)に記載のストリップ法に準じ、巾50mm×長さ300mmの試験片を用いて、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分として、最大引張強力を測定した。試験片は、MD方向、CD方向それぞれ5点作成し、その平均値をそれぞれの引張強力とした。
(3)不織布の剛軟度(N):JIS L-1913に記載のハンドルオメーター法に準じ、スロット巾5mmで測定した。数値の小さい方が柔らかい風合を示す。なお、測定方向は、試験片1枚ごとに、表面のMD方向(すなわち、測定方向であるMD方向がスロットと直角となる方向)とCD方向(すなわち、測定方向であるCD方向がスロットと直角となる方向)、裏面のMD方向とCD方向の4辺とし、その4辺の最高値の合計値を求めて試験片3枚の平均値を算出した。なお、参考までに、表面のMD方向と裏面のMD方向の平均値、および表面のCD方向と裏面のCD方向の平均値も算出した。
【0039】
【表1】