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  • 特開-多層ライン用カプリング 図1
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  • 特開-多層ライン用カプリング 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116099
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】多層ライン用カプリング
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20240820BHJP
   F16L 59/075 20060101ALI20240820BHJP
   F16L 27/12 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F16L59/18
F16L59/075
F16L27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020142
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】23305205.9
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501044725
【氏名又は名称】ネクサン
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギュンツェル ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】エゲラー ラルフ
【テーマコード(参考)】
3H036
3H104
【Fターム(参考)】
3H036AA02
3H036AB35
3H036AC06
3H036AE07
3H104JA08
3H104JC05
3H104LB04
3H104LC02
3H104LF09
3H104LG22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多層ライン用カプリングを提供する。
【解決手段】カプリング200は、各々が一方の端において第1の多層ライン204のそれぞれ同心円状の管206,207のうちの1つに接続される内側及び外側チューブ217,218を含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雌カプリング部品202を含む。カプリングは、各々が一方の端において第2の多層ライン203の同心円状の管のうちの1つに接続される内側及び外側チューブ210,211を含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雄カプリング部品201をさらに含む。雌及び/又は雄カプリング部品の少なくとも2つの同心円状のチューブは、軸方向に圧縮可能及び/又は伸展可能であり、カプリングがその動作温度にまだ到達していないとき、雄及び雌カプリング部品間の流体密接続がすでに実現されることが確実とされる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、空間(208)により分離される少なくとも2つの同心円状の管(206,207)を有する第1及び第2の多層ライン(203,204)を接続するためのカプリングにおいて、
各々が一方の端において前記第1の多層ライン(204)の前記同心円状の管(206,207)のうちの1つに接続される内側及び外側チューブ(217,218)を含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雌カプリング部品(202)であって、前記少なくとも2つの同心円状のチューブ(217,218)の他方の端は流体密状態に結合され、前記内側チューブ(217)にシーリング面(221)が設けられる、雌カプリング部品(202)と、
各々が一方の端において前記第2の多層ライン(203)の前記同心円状の管(206,207)のうちの1つに接続される内側及び外側チューブ(210,211)を含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雄カプリング部品(201)であって、前記少なくとも2つの同心円状のチューブ(210,211)の他方の端は流体密状態に結合される、雄カプリング部品(201)と、
を含み、
前記雌及び/又は雄カプリング部品の前記少なくとも2つの同心円状のチューブは、軸方向に圧縮可能及び/又は伸展可能であることを特徴とする、カプリング。
【請求項2】
前記雌及び/又は雄カプリング部品(201,202)の前記少なくとも2つの同心円状のチューブに波型が付けられる、請求項1に記載のカプリング。
【請求項3】
前記カプリング(200)が、前記雌カプリング部品(202)の前記シーリング面(221)と前記雄カプリング部品(201)の前端(216)との間に配置されたシール(222)を含む、請求項1に記載のカプリング。
【請求項4】
前記シール(222)が前記雌又は雄カプリング部品(201,202)に取り付けられる、請求項3に記載のカプリング。
【請求項5】
前記シーリング面(221)が前記内側チューブ(217)の前記軸方向に関して角度が付けられている、請求項1に記載のカプリング。
【請求項6】
前記雌及び雄カプリング部品(201,202)がフランジ(214,219)を含む、請求項1に記載のカプリング。
【請求項7】
前記シール(223)が前記フランジ(214,219)間に配置される、請求項6に記載のカプリング。
【請求項8】
前記雌カプリング部品(202)の前記シーリング面(221)にカラー(301)が設けられる、請求項1に記載のカプリング。
【請求項9】
前記カラー(301)が、その内周又は外周上に管状及び/又は円錐形シール(302)を収容する、請求項8に記載のカプリング。
【請求項10】
前記管状シール(302)が、前記カラー(301)より大きい又は小さい熱膨張係数を有する、請求項9に記載のカプリング。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2の多層ラインの前記少なくとも2つの同心円状の管(206,207)間の前記空間(206)が真空引きされ、空気、不活性ガス、又は前記内管(206)の温度制御のための媒質が充填される、請求項1に記載のカプリング。
【請求項12】
前記雄カプリング部品(201)の前記前端(216)と、それに関係する前記接続フランジ(214)の接触面(215)との間の距離(Lm)は、前記雌カプリング部品(202)の前記シーリング面(221)の表面とそれに関係する前記接続フランジ(219)の接触面(224)との間の距離より大きい、請求項6に記載のカプリング。
【請求項13】
請求項1に記載のカプリングを含む、極低温流体用輸送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、「ジョンストンカプリング」とも呼ばれる多層フレキシブルラインのためのプラグインカプリングに関する。多層フレキシブルラインには、特に真空断熱ラインが含まれるが、それだけでなく、ラインの壁又は管同士の間の空間に空気、不活性ガス、又はラインの温度制御のための媒質が充填されたラインも含まれる。
【背景技術】
【0002】
極低温媒質は、極低温流体とも呼ばれ、船舶、タンカーワゴン、又はタンカートラックで輸送されることが多い。重要な例としては、-162℃(111K)の蒸発温度を有する液化天然ガス(LNG)、-196℃(77K)の蒸発温度の液化窒素、液体水素(蒸発温度-253℃、20K)、又は液体ヘリウム(蒸発温度-269℃、4K)が含まれる。1つのタンクから他のタンクへの輸送は、典型的に、真空断熱ラインとカプリングにより遂行される。
【0003】
輸送を目的として、輸送ラインは柔軟に設計され、少なくとも一方の端に硬質のいわゆるジョンストンカプリングが設けられ、それによって2つの極低温ラインを、接続点における断熱を損なうことなく、着脱式に接続することができる。
【0004】
輸送のために、輸送ラインは接続すべきタンクに結合され、その後、パージによってイナート化され、動作温度まで冷却される。切り離す前に、輸送ラインは周囲温度までウォームアップされ、イナート化される。完全な動作中、カプリングは、カプリングのコンポーネントの温度が周囲温度と極低温との間で変化する間に、環境に対して密閉状態でなければならない。
【0005】
ジョンストンカプリングは、例えば(特許文献1)において開示されており、図1に示されている。第1のシール132は、2つのカプリング半部分を低温領域で相互に密着させる。第2のシール120は、2つのカプリング半部分を高温領域において相互に密着させる。これによって2つのシール間に空所ができる。カプリングが高温であるとき、第2のシール120が主として2つのカプリング半部分を相互に密着させる。カプリングが低温であると、第1のシール132が主要シールとなり、第2のシール120は冗長手段としての機能を果たす。
【0006】
簡単に言えば、ジョンストンカプリングでは、2つの硬質の2層真空断熱カプリング部品103、104が相互の中に挿入される。カプリング部品の内径は典型的に10mm~200mmである。しかしながら、原則として、これより小さいか又は大きい内径もあり得る。雄カプリング部品103は雌カプリング部品104に差し込まれる。雄及び雌カプリング部品は、カプリングプラグ103及びカプリングソケット104とも呼ばれる。
【0007】
第1のシール132は低温のときにしか適正に作動しないため、第1及び第2のシール間の正確な距離が第1のシールの正しい動作にとって極めて重要である。製作公差によるわずかな偏差が、一方又は他方のシールの永久的な漏出の原因となる。したがって、製作公差は非常に厳しく、それによって生産コストが増大する。
【0008】
2つのシール120,132によって雄カプリング部品と雌カプリング部品との間に空所ができ、その中に冷却中に特定の量の極低温流体が蓄積及び捕捉されるが、これは、冷却プロセスの初めにシール132完全には密閉されていないからである。カプリングがその結合状態にないとき、捕捉された極低温流体の全量を完全に空所から取り除くことはできない。したがって、結合部分を切り離しているときに、捕捉された極低温流体が環境中に入る。流体が、例えば可燃性である、毒性がある等、有害である場合、それによって環境が汚染され、輸送ラインのオペレータが危険にさらされる。
【0009】
本願に関して、流体という用語はあらゆる種類の流動物質と理解されるものとし、これは固体、液体、又は気体の凝集状態を含み得る。この意味で、流体にはまた、液体のように汲み上げられて輸送ラインの中を流れることのできる固体粉体も含まれる。さらに、流体にはエアロゾル及びエマルジョンも含まれる。
【0010】
上述の2層真空断熱ラインは、前述の多層ラインのその他の種類の例として取り上げたにすぎない。多層ライン用の従来のカプリングは、カプリングがまだその動作温度に到達していないうちはそれらが気密状態にないという問題を有することが多く、それが上述の問題を生じさせる。
【0011】
本願に関して、チューブ、管、又はラインという用語は、あらゆる種類の断面形状の導管と理解されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1957851B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既存のカプリングの限界に鑑み、冒頭に記した問題の1つ又は複数を克服するか、少なくとも改善する改良型カプリングが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本開示は、各々が、空間により分離される少なくとも2つの同心円状の管を有する第1及び第2の多層ラインを接続するカプリングを提案する。このカプリングは、各々が一方の端において第1の多層ラインの同心円状の管のうちの1つに接続される内側及び外側チューブを含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雌カプリング部品を含む。少なくとも2つの同心円状のチューブの他方の端は気密状態に結合される。内側チューブにはシーリング面が設けられる。カプリングは、各々が一方の端において第2の多層ラインの同心円状の管のうちの1つに接続される内側及び外側チューブを含む少なくとも2つの同心円状のチューブを含む、雄カプリング部品をさらに含む。雄カプリング部品の少なくとも2つの同心円状のチューブの他方の端は気密状態に結合される。雌及び/又は雄カプリング部品の少なくとも2つの同心円状のチューブは、軸方向に圧縮可能及び/又は伸展可能である。
【0015】
結合状態では、提案されたカプリングは圧縮力を発生させ、それによって、カプリングがその動作温度に到達しないうちに、すでに雄及び雌カプリング部品間に液密接続が達成される。すなわち、カプリングは、例えば極低温流体用輸送ラインがまだ高温であってもすでに気密状態である。通常、カプリングは、それがその動作温度に到達してから初めて流体密及び/又は気密状態となる。その結果、それほど厳しくない製作公差も容認可能であり、これは、公差が雄及び/又は雌カプリング部品の圧縮及び/又は伸展の量により補償されるからである。雄及び/又は雌カプリング部品の弾性圧縮及び/又は伸展によって、これらが作られる材料を異なるものとすることができ、異なる熱膨張係数を有し得る。したがって、カプリング部品の材料は、カプリングを特定のニーズに合わせるように選択され得る。
【0016】
有利な点として、雌及び/又は雄カプリングの少なくとも2つの同心円状のチューブには波型が付けられている。波型にすることは、同心円状のチューブをチューブの軸方向に圧縮可能及び/又は伸展可能にするための簡便な方法である。
【0017】
有利な実施形態において、カプリングは、雌カプリング部品のシーリング面と雄カプリング部品の前端との間に配置されたシールを含む。シールは、例えば金属、ポリマ、又はゴムから製作することができる。雌及び/又は雄カプリング部品が圧縮可能及び/又は伸展可能であることにより、シールは、カプリングがまだその動作温度に到達していなくても、また大きな製作公差があっても、それを流体密状態にするために十分な軸方向の圧力を確実に受けることができる。
【0018】
有益な実施形態において、シールは雌又は雄カプリング部品に取り付けられる。
【0019】
有利な点として、シーリング面は内側チューブの軸方向に関して角度が付けられている。具体的には、シーリング面は段差の形態をとることができるが、例えば斜面、面取り等のその他の形状も技術的に可能である。さらに、シーリング面、段差、シール等は円形の断面を有していなくてもよい。楕円形、多角形、又は何れの断面形状も技術的に想定可能である。
【0020】
有利な点として、雌及び雄カプリング部品はフランジを含む。フランジは、雄及び雌カプリング部品をしっかりと接続するための機械的手段の役割を果たす。
【0021】
有利な実施形態において、シールはフランジ間に配置される。シールは、カプリングの高温部分の中にあり、カプリングの低温部分のシールのためのバックアップ又は冗長手段である。波型にすることにより、伝熱経路が長くなる。これによって、カプリングの断熱性は、単に、シーリング面と雄カプリング部品の前面との間のシールと、フランジ間のシールとの間の熱抵抗が大きくなることで改善される。その結果、あるレベルの断熱性を実現するために必要なカプリングの長さは、同心円状のチューブに波型が付けられている方が、そうでない場合より短くなり得る。
【0022】
本開示によるカプリングの別の実施形態では、雌カプリング部品のシーリング面にカラーが設けられる。カラーは、カプリングの低温部分のシールのための好都合の保持手段としての役割を果たす。
【0023】
カラーは、その内周又は外周上に管状シールを収容することができる。管状シールはリング形状とすることができる。
【0024】
有利な点として、管状シールは、カラーより大きい又は小さい熱膨張係数を有する。極低温流体等の低温流体がカプリング内に流れると、シールはカラーより大きく又は少なく収縮する。管状シールがカラーの外周又は内周に取り付けられると、カラーとシールとの間のさらに大きい摩擦接続が実現される。
【0025】
カプリングの有益な実施形態において、第1及び/又は第2の多層ラインの少なくとも2つの同心円状の管間の空間は真空引きされ、空気若しくは不活性ガス、又は内管の温度制御のための媒質が充填される。これらの実施形態は、異なる種類の伝送ラインを結合する必要がある様々な用途に適応される。
【0026】
本開示によるカプリングの好ましい実施形態において、雄カプリング部品の前端とそれに関係する接続フランジの接触面との間の距離は、雌カプリング部品のシーリング面の表面とそれに関係する接続フランジの接触面との間の距離より大きい。この配置により、雌カプリング部品のシーリング面と雄カプリング部品の前端との間に配置されるシールは、カプリングの温度がカプリングの動作中に変化したときのカプリングの熱膨張又は収縮を超える製作公差があっても、常に圧縮される。
【0027】
第2の態様によれば、本開示は、本開示の第1の態様によるカプリングを含む極低温流体のための輸送装置を提案する。
【0028】
本開示の例示的実施形態は図面に示され、以下の説明文の中でより詳しく説明される。図中、同じ又は同様の要素には同じ又は同様の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】先行技術において知られている従来のジョンストンカプリングを示す。
図2A】結合されていない状態の、本開示によるカプリングの第1の実施形態を示す。
図2B】結合された状態の図2Aに示されるカプリングを示す。
図3A】結合された状態の、本開示によるカプリングの第2の実施形態を示す。
図3B図3Aに示されるカプリングの変形を示す。
図4】本開示によるカプリングの代替的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は単に略図であり、図中の物体の実際の測定値や寸法を反映していない。
【0031】
図2Aは、本開示によるカプリング200の第1の実施形態を示す。カプリング200は、雄カプリング部品201と雌カプリング部品202とを含む。雄カプリング部品201は、第1の真空断熱輸送ライン203に接続される。雌カプリング部品202は、第2の真空断熱輸送ライン204に取り付けられる。輸送ライン203,204は内管206と外管207とを有する。内管及び外管206,207間に、断熱目的の真空空間208がある。
【0032】
雄カプリング部品201は内側チューブ210と外側チューブ211とを含み、これらは空間212により分離されている。内側及び外側チューブ210,211は、長さs1の区間Sにおいて波型にされている。波型区間Sは雄カプリング部品201に、図2Aにおいて両方向矢印213で示される軸方向への柔軟性を付与する。より具体的には、雄カプリング部品201は両方向矢印213の方向に圧縮可能及び伸展可能である。雄カプリング部品201の内側チューブ210は、第1の輸送ライン203の内管206に接続される。外側チューブ211は、フランジ214にフランジ214の接触面215において接続される。第1の輸送ライン203の外管207は、フランジ214の反対側に真空密閉状態に接続される。空間212は第1の輸送ライン203の真空空間208と連通する。その結果、雄カプリング部品201の内側及び外側チューブ210,211間の真空断熱が実現される。フランジ214の反対側で、内側及び外側チューブ210,211は、真空密閉状態で結合されて、雄カプリング部品201の前面216を形成する。雄カプリング部品201の長さLmは、フランジ214の前面216と接触面215との間の距離と定義される。
【0033】
雌カプリング部品202は、内側チューブ217と外側チューブ218とを含む。内側及び外側チューブ217,218の端はフランジ219に接続される。内側及び外側チューブ217,218の反対側の端は第2の輸送ライン204のそれぞれ内管及び外管206,207に接続される。内側チューブ217は円形の段差221を形成し、これは内側チューブ217の直径と、内管206の、より小さい直径との差をつなぐものである。図2Aに示される実施形態において、円形の段差221は内側チューブ217の一体部分である。他の実施形態において、円形の段差221は内側チューブ217に溶接されたリングにより形成される。当業者であれば、円形の段差221の別の形成方法を認識し得る。円形の段差221上に円形シール222が取り付けられる。シール222は、雄カプリング部品201の前面216の直径に基本的に対応する直径を有する。シール222は、例えば金属、ポリマ、又はゴムから製作される。フランジ219は円形のシール223を担持する。雌カプリング部品202の長さLfは、フランジ219の円形の段差221と接触面224との間の距離と定義される。雌カプリング部品202の長さLfは、雄カプリング部品201の長さLmより例えば1~3mm短い。簡潔にするために、シール222及び223の厚さはそれによって雄カプリング部品201がさらにある程度圧縮されるだけであるため、無視される。
【0034】
図2Aに示される実施形態において、段差221は、シール222のためのシーリング面として機能する。他の実施形態において、シーリング面は必ずしも段差でなくてはならないわけではない。斜面、面取り部等のその他の形状も技術的に可能である。さらに、シーリング面、段差、シール等は円形の断面を有していなくてもよい。楕円形、多角形、及び同様の断面もまた、技術的に想定可能である。
【0035】
カプリング200を接続するために、雄カプリング部品201は雌カプリング部品202に挿入される。図2Bは、接続された状態のカプリング200を示す。接続された状態で、フランジ214及び219はねじやクランプ(図2Bでは図示せず)で密着して接続される。Lf<Lmであるため、波型区間Sは、フランジ214,219の接触面215,224が直接接触しているときに長さs2<s1まで圧縮される。波型区間Sの圧縮により、シールと222はカプリング200の高温状態においてすでに圧縮されている。その結果、シール222は、それがカプリング200の動作温度まで冷却される前であっても、カプリング200が連結されるとすでに流体密状態である。その結果、シール222とシール223とにより取り囲まれた空所に流体は入り得ない。雌カプリング部品202の長さLfと雄カプリング部品201の長さLmとの1~3mmの差は通常、それぞれ雄及び雌カプリング部品201,202のそれほど厳しくない製作公差であってもそれを補償するのに十分である。しかしながら、雄及び雌カプリング部品間の長さの差は、必要であれば、また特定の用途に応じて1~3mmより小さく又は大きくなるように選択できることに留意されたい。
【0036】
雄カプリング部品201の圧縮により、シール222はあらゆる動作状態において流体密状態である。したがって、シール222はなくてもよいが、存在する場合、これはシール222が何らかの理由で不具合となった場合のバックアップの役割を果たす。
【0037】
万全を期して付記すれば、シール222はカプリング200の低温領域にあり、他方でシール223はカプリング200の高温領域内にある。
【0038】
カプリング200の変形型では、シール222は、カプリング200の機能性を変えずに、雄カプリング部品201の前面216に取り付けられる。
【0039】
通常、輸送ライン203,204は波型の内管及び外管206,207を有する柔軟輸送ラインである。しかしながら、簡潔にするために、管206,207は図中、概略的にのみ示され、波型部は示されていない。
【0040】
図3Aは、カプリング200の改良型実施形態を示す。この実施形態では、円形の段差221にカラー301が設けられている。カラー301は輸送ライン204の内管206の一種の続きである。円筒形シール302は、カラー301の外径に対応する内径を有し、カラー301に取り付けられる。円筒形シール302の長さはcである。雄カプリング部品201の長さLm、雌カプリング部品202の長さLf、及びシール302の長さcは、カプリング200の非結合状態でLf<c+Lmとなるように選択される。すなわち、カプリング200が、フランジ214,219の接触面215,224が直接接触するように結合されると、波型区間Sが圧縮され、円筒形シール302に圧力をかけ、それによって輸送ラインの内管206は漏れが生じない状態に接続される。これによって、内管206の中を流れる何れの流体も、シール302と223との間の空間に入らないようにされる。それに加えて、シール302はカラー301より高い熱膨張係数の材料で製作される。シール302が、それが内管206内を流れる極低温流体と接触したときに冷却されると、シール302は隣接するカラー301より半径方向に収縮し、カラー301とシール302との間の追加的な摩擦接続が生成される。再び、シール223の厚さはこの理由から無視される。
【0041】
図3Bは、カプリング200の別の改良型の実施形態を示す。この実施形態では、円形の段差221上のカラー301の直径は、内管206の直径より大きいが、内側チューブ217の直径より小さい。この実施形態において、円形のシール302の外径はカラー301の内径に対応し、それによってシール302はカラー301の中に納まる。この実施形態では、シール302はカラー301より高い熱膨張係数を有する。冷却されたときに、シール302は隣接するカラー301ほど収縮せず、摩擦接続が生成される。それとは別に、図3Bに示されるカプリング200は図3Aのカプリング200と同様に機能する。
【0042】
図に示されていない図3Bに示される実施形態の変形型では、シール302の内径はカラー301の外径に対応する。この変形型では、シール302の熱膨張係数はカラーの熱膨張係数より高い。このようにして、カプリングが極低温流体により冷却されると、シール302は隣接するカラー301より大きく収縮し、これは図3Aに関して説明された通りである。
【0043】
他の実施形態では、カラー301はカプリング部品201に取り付けられる。
【0044】
図4は、別の実施形態のカプリング400を示す。この実施形態では、内側及び外側チューブ217,218には区間Sにおいて波型が付けられている。雄及び雌カプリング部品201,202の相対的長さは、図2Aに関して説明したものと同じである。図4及び2Aに示される実施形態の唯一の違いは、雌カプリング部品202が雄カプリング部品201の前面216によりシール222に加えられる力を生成するために弾性的に伸展され、又は伸長される。図2Aに関して説明したように、シール222は、カプリング400が結合状態にされたときに初めからすでに漏れのない状態であり、内管206を通って流れの何れの流体もシール222と223との間の空間に入らないようにされる。
【0045】
最後に、図に示されていない本開示のまた別の実施形態において、雄及び雌カプリング部品201,202の両方の内側及び外側チューブ210,211,217,218には波型が付けられている。このカプリングがその結合状態にあるとき、雄及び雌カプリング部品の長さ、それぞれLm及びLfは、雄カプリング部品201の圧縮、雌カプリング部品202の伸展、又はその両者の組合せによって補償される。その結果、カプリングの低温側のシール、それぞれ222及び302は、それがその動作温度まで冷却される前にすでに漏れのない状態である。この効果は、雄及び雌カプリング部品、それぞれ201及び202の圧縮及び/又は伸展により実現される。
【0046】
特許請求の範囲中、「~を含む(comprising)」は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」は複数形を排除しない。
【0047】
1つのユニット又は装置は、特許請求の範囲に明記された複数の要素の機能を実行し得る。異なる機能や要素が異なる従属請求項に明記されていることは、これらの機能及び要素の組合せを有利に使用できないことを意味していない。
【符号の説明】
【0048】
103 雄カプリング部品
104 雌カプリング部品
109 フランジ
120 第2のシール
122 フランジ
132 第1のシール
200 カプリング
201 雄カプリング部品
202 雌カプリング部品
203 第1の輸送ライン
204 第2の輸送ライン
206 内管
207 外管
208 真空空間
210 内側チューブ
211 外側チューブ
212 空間
213 両方向矢印
214 フランジ
215 接触面
216 前面
217 内側チューブ
218 外側チューブ
219 フランジ
221 シーリング面/円形の段差
222 シール
223 シール
224 接触面
301 カラー
302 円筒形のシール
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4