(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116122
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】防汚損組成物およびそれを産生する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240820BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240820BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240820BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240820BHJP
A01N 63/27 20200101ALI20240820BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20240820BHJP
A01P 7/00 20060101ALI20240820BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 D
C12N1/14 A
C12N1/20 E
C12N1/21
C12Q1/37
A01P3/00
A01N63/27
A01P13/00
A01P7/00
A01P7/04
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076748
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2022016399の分割
【原出願日】2016-06-09
(31)【優先権主張番号】62/174,349
(32)【優先日】2015-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517432293
【氏名又は名称】バイオミメテクス、エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】BioMimetx,S.A.
【住所又は居所原語表記】Biocant Park,Nucleo 04,Lote 02,3060-197 Cantanhede,Portugal
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサロ・コスタ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・フレイレ
(72)【発明者】
【氏名】ロマナ・サントス
(72)【発明者】
【氏名】アナ・クリスティナ・シルバ
(72)【発明者】
【氏名】イネス・ギノテ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗微生物剤耐性および生物汚損を低下させるための新規の方法および組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、シュードモナス環境株PF-11の細胞を培養することと、上澄み液を回収することとを含む、細菌上澄み液を調製する方法を提供する。本発明はまた、表面のバイオフィルムの量を減少させる、少なくとも1種の有機体が表面へ付着するのを減少させる、または表面のマイクロ汚損またはマクロ汚損を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)シュードモナス(Pseudomonas)環境株PF-11の細胞を培養すること、および
ii)上澄み液を回収すること
を含む細菌上澄み液を調製する方法。
【請求項2】
前記シュードモナス株PF-11の細胞を、前記細胞を少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを産生する条件下で培養し、前記上澄み液が前記少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)前記上澄み液を、培養細胞の数が対数的速度で増加しているときに回収する、
(b)前記上澄み液を、培養細胞の数が対数的速度で増加しなくなった後に回収する、
(c)前記細胞を、グルコースが添加された塩培地で培養する、
(d)前記細胞を、グルコースが添加されたM9培地で培養する、
(e)前記細胞を、アンモニウムおよびチアミンが欠如した培地で培養する、または
(f)前記細胞を、約28、29、30、31または32℃の温度で培養する
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記上澄み液または修飾上澄み液を、
(a)サイズが10キロダルトン(kDa)超の構成成分の分画、および
(b)サイズが10kDa未満の構成成分の分画
に分割することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)前記上澄み液またはその分画のうちの1種以上の構成成分から少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを分離し、
(b)前記上澄み液もしくはその分画の塩濃度を減少させて、
(c)前記上澄み液もしくはその分画の水分含量を低下させて、または
(d)前記上澄み液もしくはその分画を滅菌して、
修飾上澄み液またはその分画を産生することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1種以上の許容される担体を、前記上澄み液、修飾上澄み液、またはその分画へ添加することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面のバイオフィルムの量を減少させる方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、または修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記表面を接触させることを含む方法。
【請求項8】
前記バイオフィルムが、
(a)淡水バイオフィルムであり、
(b)沼、湖、もしくは河川環境で増殖可能な淡水バイオフィルムであり、
(c)海洋バイオフィルムであり、または
(D)淡水もしくは塩水の水槽中で増殖可能である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の有機体が表面へ付着するのを減少させる方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、または修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記表面を接触させることを含む方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種以上の有機体が、藻類、ウニ、フジツボ、またはコケムシ個虫である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
表面のマイクロ汚損またはマクロ汚損を減少させる方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、または修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記表面を接触させることを含む方法。
【請求項12】
前記表面が、
(a)ガラス、繊維ガラス、木、ゴム、プラスチック、または金属、
(b)水槽、プール、浮標、桟橋、または船舶もしくは平底荷船の船体の表面、
(c)水中に入れられた漁網または他の網、
(d)縄、または
(e)壁または内張り構造体、
である、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、または修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む前記組成物が、塗料または透明被覆剤である、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
真菌を殺傷するまたはその増殖を減少させる方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記真菌を接触させることを含む方法。
【請求項15】
昆虫を殺傷するまたはその発生を阻害する方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記昆虫を接触させることを含む方法。
【請求項16】
海洋カイアシを殺傷するまたはその発生を阻害する方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記海洋カイアシを接触させることを含む方法。
【請求項17】
細菌細胞を殺傷するまたはその増殖を減少させる方法であって、
i)シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、または
ii)シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
と、前記細菌細胞を接触させることを含む方法。
【請求項18】
前記上澄み液分画または修飾上澄み液分画が、シュードモナス株PF-11セクレトームの、サイズが10kDa超の構成成分を含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記上澄み液分画または修飾上澄み液分画が、シュードモナス株PF-11セクレトームの、サイズが10kDa未満の構成成分を含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌細胞が、シュードモナス属種(Pseudomonas spp.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、またはシュードモナス属(Pseudomonas)の細胞以外のものである、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記細菌細胞が、ブドウ球菌属種(Staphylococcus spp.)、黄色ブドウ球菌、またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の細胞である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記細菌細胞が、エシェリキア属種(Escherichia spp.)、大腸菌、または大腸菌O157の細胞である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11の実質的に純粋な培養物。
【請求項24】
シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11細胞の実質的に純粋な培養物であって、前記細胞が、プロモーターに操作可能に連結されたレポーターポリペプチドをコードする外因性耐性遺伝子または外因性ポリヌクレオチドを含むように修飾されている、実質的に純粋な培養物。
【請求項25】
シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11細胞の実質的に純粋な培養物であって、前記細胞が、シュードモナス株PF-11の対応する細胞と比較して、抗生物質化合物に対する感受性が高まるように遺伝子操作されている、実質的に純粋な培養物。
【請求項26】
前記培養物中の生存微生物細胞の総数のうちの約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%未満、またはさらにこれら未満が、シュードモナス株PF-11細胞以外の生存細胞である、請求項23から25のいずれか一項に記載の実質的に純粋な培養物。
【請求項27】
シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11細胞が富化された、細胞培養物。
【請求項28】
前記シュードモナス株PF-11細胞が、請求項24から26のいずれか一項に記載の細胞である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、または修飾上澄み液分画が、請求項1から6のいずれか一項に従って産生される、請求項7から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記シュードモナス株PF-11培養物が、請求項24から26のいずれか一項に記載の1種以上の細胞の培養物である、請求項7から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
i)請求項23から27のいずれか一項に記載の細胞、または上澄み液、修飾上澄み液もしくはその分画、および
ii)1種以上の許容される担体
を含む組成物。
【請求項32】
防汚損または抗微生物組成物であって、
i)請求項23から27のいずれか一項に記載の細胞、もしくは上澄み液、修飾上澄み液もしくはその分画、または
ii)請求項23から27のいずれか一項に記載の細胞、もしくは上澄み液、修飾上澄み液もしくはその分画、および1種以上の許容される担体を含む組成物
を含む防汚損または抗微生物組成物。
【請求項33】
細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であるかどうかを識別する方法であって、
i)前記細菌の細胞を、前記高分子量基質が添加された増殖制限培地へ入れること、
ii)前記高分子量基質が添加された前記増殖制限培地中で前記細胞が増殖するかどうかを判定すること、ならびに
iii)工程ii)で前記細胞が増殖すると判定された場合に、前記細菌が、前記高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であると識別すること、および工程ii)で前記細胞が増殖しないと判定された場合に、前記細菌が、前記高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが不可能であると識別すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本出願のあらゆる箇所で種々の刊行物が参照され、丸括弧内における参照を含む。丸括弧において参照された刊行物の完全な引用は、本明細書の最後、特許請求の範囲の直前に記載されていることを見出すことができる。参照された全ての刊行物の開示はその全体が、本発明が関連する技術水準をより完全に記載するために、ここでは参照により本出願に組み込まれるものとする。
【発明の背景】
【0002】
抗微生物剤耐性
抗微生物剤に対する細菌耐性が増加しているために、細菌感染症の治療および予防は、今後数十年間、健康上の世界的な主要課題である(Kaplan 2004)。EUのみで、1年あたり25000名を超える患者が、多剤耐性菌を起因とする感染症が原因で死亡し、社会に対する全体的な直接コストは15億ユーロである(ECDC/EMA joint technical report 2009)。しかし、ヒト病原体を治療するために使用される抗生物質はまた、疾患を治療し、成長を促進し、かつ飼料効果を改善するために、動物に使用されている(FAO/OIE/WHO 2003)。結果として、都市起源と農業起源の両方に由来する抗生物質は、土壌および水生環境で生き残り、強い重圧がかけられ、耐性菌の選択がもたらされる。それにより、抗微生物剤耐性(AMR)を有する細菌の存在が、動物飼育施設および食肉処理場で、土壌および廃水で、都市および農業汚水で検出されてきた。これらの耐性菌のほとんどが、ヒト病原体への耐性遺伝子の導入を示してきた(Martinez 2013)。したがって、抗生物質の連続使用および乱用は、AMRメカニズムを病原株に導入することが可能な環境耐性株を選択する大きな一因となり、かつ任意の新規の抗生物質を短期間で治療用途に導入したとしても、その使用に対して細菌が耐性を示すようになるメカニズムの選択を引き起こし、限界をもたらす。
【0003】
新たに利用可能な抗生物質の流通は衰退し、1990年代と今世紀初めの10年とで認可された件数は少ない(Boucher et al. 2009)。したがって、AMR細菌による感染症負担と問題に取り組むための新たな抗生物質の開発との間にはギャップがある。これは実質的には、新規の有効な抗生物質の開発が困難であること、細菌によって容易に克服されること、新規の抗生物質の使用を実行するための規制が困難であること、ならびに抗生物質が製薬業界で利益が小さいという事実に起因する(Livermore 2011;Payne et al. 2007)。したがって、AMRメカニズムに効果的でもあり、それを促進することもない、新たな作用様式を有する新規の抗菌戦略の発展に研究努力の焦点を合わせるべきである。
【0004】
生物汚損(Biofouling)
生きた有機体(living organisms)は、大部分の多様な環境、天然、および合成表面上に付着し、増殖することが可能である。生物汚損は、水に曝露されたときに、表面が多層状にコロニー化する天然プロセスにあり、吸収された有機材料の蓄積によって発生し、これが細菌または微細藻類が付着するためのコンディショニングフィルムを形成し、バイオフィルムの形成をもたらす(Abarzua et al.、Olsen et al.)。
【0005】
抗微生物剤耐性および生物汚損を低下させるための新規の方法および組成物が必要とされる。
【0006】
殺真菌剤
微生物有機体によって産生される抗真菌剤化合物、たとえば抗生物質の利用は、医薬化合物に強く焦点を合わせて、新規の化合物の開発に大いに活用されてきた。
【0007】
いくつかの細菌は、酵素、シデロフォア、および多様な分子、たとえばシアン化水素またはエチレンを含む天然の抗真菌剤および抗生物質である、さまざまな分類の化合物を産生することが確認されてきた。
【0008】
寄生生物として、真菌は一般的なかつ重要な病原体であり、深刻な作物の損失や動物およびヒト集団における疾患をもたらすだけでなく、天然生物コミュニティーの組成物および構造体を作り出す。殺真菌剤は、健康および獣医用途から、製紙時の工業用パルプ製造までかつ家庭用まで幅広い一連の用途のために使用することができる。
【0009】
ヒト健康において、真菌感染症は、1種以上の真菌種によって組織が浸潤されることを表す。大部分の真菌感染症は、ヒトが、近接環境、たとえば、空気、土壌、または鳥の糞中の真菌源に曝露されるために発症する。一般的な疾患は、手指の爪および足指の爪の真菌、足白癬、たむし、頭皮頭髪感染症、輪癬、真菌性副鼻腔感染症、毛そうなどを含む真菌感染症によって引き起こされる。このような疾患は、一般的に、疼痛、不快感、および社会的困惑を患者にもたらす。時には永久的な損傷を引き起こす恐れさえあり、場合によっては、最終的に特定の患者、たとえば、臓器移植レシピエントおよびHIV/AIDS保菌者に対して致命的となる。
【0010】
植物もまた、多種多様な病原性真菌にさらされている。植物においてまたは植物の一部において真菌が増殖すると、葉、果実、または種子の生成、および栽培作物の品質全般が抑制されるために、真菌をコントロールすることは重要である。農業および園芸における全真菌性疾患のうちの約25%は、うどん粉病植物病原体によって引き起こされる。農業および園芸栽培における真菌繁殖の経済的影響が大きいために、一般的なおよび特異的な用途に対して広域スペクトルの殺真菌性および静真菌性製品が開発されてきた。このような例は、無機炭酸塩、炭酸塩化合物、レシチン、およびライムの使用である。しかし、これらの殺真菌性および静真菌性製品は環境に対して有害である恐れがあり、地域、たとえば、地下水を汚染する恐れがある。したがって、環境に悪影響を及ぼすことなく真菌をコントロールし、同時に植物に有害な副次的影響を最小限にして植物を保護する手段を提供する生物学的溶液が必要とされる。
【0011】
殺虫剤
蚊媒介性疾患は、世界的に毎年7億人近くの人々に影響を及ぼし、かつ100万件を超える死因に関与する。蚊媒介性疾患をコントロールすることが、世界保健機関(WHO)のMillennium Development Goalで設定された目的である。さらに、このような疾患は、ヨーロッパではEuropean Centre for Disease Prevention and Controlにより新たに出現した脅威として特定されてきた。今のところ、蚊のコントロールは、環境への大きな打撃および殺昆虫剤耐性の増加を伴う殺昆虫剤用途で主に伝えられてきた。
【0012】
さらに、多くの昆虫は、住宅所有者、行楽者、園芸家、ならびに農場経営者および昆虫による農作物の著しい損害の結果として農業製品への投資がしばしば損失しているまたは減少している人々にとっては害虫として広くみなされている。特に生育期が短い地域では、昆虫による著しい損害は、栽培者の全利益の損失および穀物生産高の著しい減少を意味し得る。特定の農業生産物の供給が不十分であると、食品加工業者にとって、ひいては食用植物およびこれらの植物由来の製品の最終消費者にとって常にコスト高となる。
【0013】
殺虫剤または革新的戦略における新規の活性成分は最も重要なものであり、すなわち、植物または細菌のいずれかから単離された天然製品をベースとして、かつ2つの主な領域である農業および健康で作用するように模索されているところである。
【0014】
農業において
殺虫剤は、農業生産性および食品供給を増加させる主な一因であった。一方で、ヒト、動物、および環境への副次的影響のため、同程度に悩みの種でもあった。この懸念は、殺虫剤散布および使用の政府規制が高まり、オーガニック食品の需要が増加し、かつ人々の間の健康意識が高まる形で現れた。過去10年間における合成有機化学物質の広範囲な使用により、長期にわたるいくつかの環境問題が生じた。主な問題は、殺虫剤の、環境、特に水への蓄積と関連する。これらの問題は殺虫剤使用者の安全に関する心配と同様に継続している。これらの事実は全て、生物殺虫剤市場の世界的な成長に限りない限界があることを示す。
【0015】
昆虫によって生じる損害は、任意の作物種の生産性の低下における最も重大な因子のうちのひとつである。年間での全経済的損失は約177億USドルに達する。殺虫剤は作物保護に対する効果が連続的に低下する。それは、これらの化学物質が有する環境影響、たとえば、小川、河川、または運河の汚染が原因で生じる、耐性ならびに消失がもたらされる可能性が高いという事実のためである。これらの変化は全て、世界的に、1年で推定1兆USドルの食品ロスまたは廃棄の一因となる。
【0016】
健康に関して
蚊は、疾患、たとえば、マラリア、リンパ系フィラリア症、ならびにデング熱、ジカ熱、黄熱病、チクングンヤ熱、およびウエストナイル熱などのアルボウイルスを引き起こす、いくつかのヒトおよび/または動物病原体ベクターである。これらの疾患は、それが最も流行している特に亜熱帯および熱帯地方の国で、結果として生じる社会的かつ経済的影響とともに、高レベルの死亡率および罹患率をもたらす。蚊媒介性疾患のコントロールは、世界保健機構のMillennium Development Goals(MDG)で検討されている。さらに、グローバル化、人々の移動、および気候変化などの要因、それに伴い結果として生じる蚊ベクター種の地理的拡大および/または病原因子の分布が原因で、いくつかのこれらの疾患、たとえば、2007年のイタリアでのチクングンヤ熱、2012年のポルトガルのマデイラ島および2010年のフランスでのデング熱が拡散しかつ新たに発生し、または温帯地方において、たとえば2010年のギリシャで再発生している。さらに、1999年米国のウエストナイル熱および2013/14年のブラジルカリブ海のチクングンヤ熱の移入に伴って、これらは現在ではデング熱とともに、東および西半球にわたって最も広範囲なアボウイルス蚊媒介性疾病である。重篤な罹患率そして/あるいは死亡率がもたらされる恐れがある発熱症候群、重度の関節痛、髄膜脳炎、あるいは出血症候群のいずれかを引き起こすため、これらの感染症への公衆衛生の関連性は非常に高い。
【0017】
ベクターコントロールは、依然としてベクター媒介疾患をコントロールする基本ツールである。組込み型ベクターコントロール戦略が推奨されるが、ベクターコントロールは、殺昆虫用途で主に伝えられてきている。環境コストおよび殺昆虫剤耐性の発現のため(非常に高価で、安価ではないコストが原因で、これらの集中的なかつ/または断続的な散布を頻繁に行った結果)、新規の殺昆虫剤/配合剤/戦略、すなわち、植物または細菌産物をベースにした生物殺昆虫剤/配合剤/戦略が模索されている。
【0018】
生物殺虫剤
細菌起源由来の代謝産物の害虫管理における使用は、耐性発現を誘発する傾向がないために、農業において、かつヒト/動物疾患ベクターのコントロールにおいて拡大しており、従来の殺虫剤よりも一般的により生分解性でありかつ環境に優しい。
【0019】
現在のところ生物殺昆虫剤として使用されている大部分の生物殺虫剤は、バチルス チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)細菌由来であり、全殺昆虫剤市場の約2%を占めている。蚊ベクターコントロールにおいて、使用されている大部分の生物殺虫剤は、B.t.イスラエレンシス(B. t. Israelensis)(Bti)およびリジニバチルス スファエリカス(Lysinbacillus sphaericus)(=バチルス スファエリクス(Bacillus sphaericus))(Ls)であった。BtおよびLsは蚊の幼虫期に対して高特異性を示し、かつ中腸組織の破壊することによって、続いて、おそらくそれらのみの作用によってだけではなく、他の細菌腫によっても敗血症を起こすことによって昆虫を殺傷する。胞子形成時に、BtiおよびLsは、CryまたはCyt毒素と呼ばれる種々の殺昆虫タンパク質によって形成された結晶封入体を産生する。これらの毒素は、高選択スペクトルの活性を示し、狭い範囲の昆虫種を殺傷する。それらを使用することにより、化学殺虫剤の使用が有意に減少することになる。
【0020】
しかし、BtiおよびLs系殺昆虫剤に対する耐性発現の可能性があるという報告が出現している。一方で、害虫コントロールの歴史により、殺昆虫剤の使用においてローテンションすることが、耐性発現を回避するために望ましいことが示される。
【0021】
それにより、農業害虫管理において取り入れられた類似の戦略との組み合わせた、新規の殺生物剤またはそれを使用する方法が必要とされ、かつ研究され、蚊などの有害またはベクター昆虫をコントロールするためのより広範囲の溶液が提供されなければならない。
【0022】
海洋寄生虫
集中的な養魚により、フナムシなどの寄生生物による魚の損傷を介して実質的な経済損失が継続される。これらの海洋カイアシの蔓延は、網囲いをベースとする生産において避けることは困難であり、世界中の水産養殖産業で深刻な問題である。問題の深刻さは各地域によって変わる。サケ養殖産業の分野において、フナムシのコントロールは、その今後の持続可能性にとって不可欠である。その飼育により損傷が生じ、浸透圧の問題および2次感染につながる病変の原因となるため、フナムシの蔓延は、その宿主の、成長、繁殖力、および生存に影響を及ぼし、処置しない場合は、魚にとって高度に有害なまたは致死的なレベルに達し得る。野生と養殖の両方のサケが、フナムシの宿主としての働きをすることができる。フナムシは水を介して動き、養殖魚から野生魚へ、そしてその逆に移動することができる。養殖魚と野生魚との間の寄生虫に起こり得る相互作用および交差蔓延は重大な問題をもたらす。水産養殖業のための目的は、魚養殖施設由来のフナムシが野生魚集団に任意の悪影響を与えないことを確実にすることである。
【0023】
現在、養殖魚のフナムシの処置としては、生物学的処置(ベラ、清掃魚)、医薬処置(経口処置および浴槽処置)、および飼料添加化合物がある。種々の処置を組み合わせていてもよい。抗寄生虫剤は、蔓延に対処するために1980年代初期から使用され、有機リン剤は1980初期から1990年代の中期に耐性が発現するまで使用されてきた。それ以降、合成のピレスロイドである、シペルメトリン、デルタメトリン、およびアベルメクチンエマメクチンが、フナムシ処置のために、有機リン剤とほぼ完全に取って代わった。しかし、最近では、これらのピレスロイドおよびエマメクチンを用いたいくつかの処置の失敗が報告され、かつ感受性の低下が検出された。今日の害虫管理のための戦略は、抗寄生虫剤にほとんど依存していない。
【0024】
過酸化水素がまた、魚からフナムシを除去するために使用される。しかし、大量の過酸化水素が必要とされ、魚に対する処置活性および毒性は限られ、この理想的な方法を行うことができない。過酸化水素は、フナムシを殺傷しないため、寄生虫が魚を再攻撃することがある。
【0025】
多くの処置が利用可能であるが、信頼性の高い方法はまた確立されていない。さらに、フナムシの感受性が処置に対して低下したことが、頻繁に使用された領域で記録された。交叉耐性がまた、関連する化合物間で生じることもある。特定の処置に対する耐性の根拠がある場合には、関連化合物の使用を避けるための手当をするべきである。耐性に対する可能性は、正しい処置手順に従い、完全推奨用量を投与することによって、かつ可能である場合は、別の治療方法と交互に使用することによって減らすことができる。したがって、耐性発現を回避するために、いくつかの異なるグループの有効化合物がフナムシの蔓延の処置に利用可能であることが必要とされる。したがって、フナムシの阻止に効果的であり、かつ、魚、消費者、および環境に対して安全な、魚におけるフナムシをコントロールする改善された手段が必要であると長い間思われてきた。外見的には、フナムシの蔓延の管理に有用な化合物を識別するための明らかな取り組みは、既知の殺虫剤、たとえば、海洋寄生虫に対して効果的であることが以前に示された殺昆虫剤または化合物に焦点を合わせたことであろう。しかし、経験により、他の水生寄生虫に対する特定の化合物の有効性も、フナムシ蔓延に対して効果的である化合物の指標ではないことが示されてきた。魚用の多数の抗寄生虫剤が、フナムシ蔓延の阻止に対してそれらの効果を試験されてきた。周知の例は、プラジカンテルおよび別のベンズイミダゾール(フェンベンダゾール、メベンダゾール、アルベンダゾール、フルベンダゾールなど)であり、抗蠕虫剤であるがフナムシに対して効果が全くない。ピランテルは、別の抗蠕虫剤(抗線虫性チオフェン)であり、フナムシに対して効果がない。抗原虫剤、たとえば、トルトラズリルおよびジクラズリル(抗コクシジウム剤)はまた、フナムシに対して効果がない。腸内原虫に対して効果があるがフナムシに対して効果がないバシトラシンの場合も同様である。非常に限られた数の利用可能な殺虫剤のみがフナムシなどの魚寄生虫に対して優れた有効性を示してきた。これらには、ピレスロイド、たとえばシペルメトリンおよびデルタメトリンが含まれる。既知の抗寄生虫化合物が新規の種に対して試験されたときに、経験した難しさを説明するいくつかの因子、たとえば、さまざまな種の寄生虫間での遺伝子型および表現型の広い多様性、代謝の大きな違い、および寄生虫が全く異なる生息地を占め、かつ宿主への伝播および感染のための異なる戦略を有するという事実がある。
【0026】
寄生虫蔓延を処置するための治療化学物質の背景にある原理は、宿主に劇的な影響を与えることなく、寄生虫を効率的に不活性化する治療窓を見出すことである。
【0027】
発明の概要
本発明は、シュードモナス(Pseudomonas)環境株PF-11の細胞を培養することと、上澄み液を回収することとを含む、細菌上澄み液を調製する方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、表面のバイオフィルムの量を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0029】
本発明はまた、少なくとも1種の有機体が表面へ付着するのを減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、表面のマイクロ汚損(microfouling)またはマクロ汚損(macrofouling)を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、真菌もしくは細菌細胞を殺傷するもしくはこれらの増殖を減少させる方法または昆虫もしくは海洋カイアシを殺傷するもしくはこれらの発生を阻害する方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、真菌、細菌、昆虫、または海洋カイアシを接触させることを含む方法が提供される。
【0032】
本発明はまた、シュードモナス株PF-11の実質的に純粋な培養物を提供する。
【0033】
本発明はまた、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であるかどうかを識別する方法であって、i)細菌の細胞を、高分子量基質が添加された増殖制限培地へ入れることと、ii)高分子量基質が添加された増殖制限培地中で細胞が増殖するかどうかを判定することと、iii)工程ii)で細胞が増殖すると判定された場合に、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であると識別すること、および工程ii)で細胞が増殖しないと判定された場合に、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが不可能であると識別することとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】細菌セクレトームの抗微生物効果。非病原株緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853に対して試験された回収上澄み液の増殖阻害の潜在力。
【
図1B】細菌セクレトームの抗微生物効果。非病原株大腸菌ATCC25922に対して試験された回収上澄み液の増殖阻害の潜在力。
【
図1C】細菌セクレトームの抗微生物効果。非病原株黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NCTC8325に対して試験された回収上澄み液の増殖阻害の潜在力。
【
図2】PF-11セクレトームの抗微生物効果。PF-11セクレトームの抗微生物活性を、
図1のように参考株に対して試験し、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)参考株KT2440および他のP.プチダ(P. putida)環境単離株まで範囲を広げた。
【
図3A】PF-11セクレトーム分画の抗微生物活性。分泌ペプチドおよび低分子の効果。この分画の効果を、緑膿菌ATCC27853、大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌NCTC8325、およびシュードモナス プチダ参考株KT2440の株の増殖に対して試験した。
【
図3B】PF-11セクレトーム分画の抗微生物活性。タンパク質を含む高分子の効果。この分画の効果を、緑膿菌ATCC27853、大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌NCTC8325、およびシュードモナス プチダ参考株KT2440の株の増殖に対して試験した。
【
図3C】PF-11セクレトーム分画の抗微生物活性。沸騰された未加工セクレトームの効果。この分画の効果を、緑膿菌ATCC27853、大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌NCTC8325、およびシュードモナス プチダ参考株KT2440の株の増殖に対して試験した。
【
図4A】シュードモナス株分泌ペプチドのHPLCパターン。M9培地(対照)と、対数期のP.プチダ参考株およびPF-11分泌ペプチドとの間の比較。参考株は高濃度で最も高いタンパク質分子量を有し、同時に株11は第1の内容物とサイズがわずかに一致するが、大部分はいくつかのkDaに沿って分散されたペプチドを示す。
【
図4B】シュードモナスPF-11単離株分泌ペプチドのHPLCパターン。予想した通り、SDS-PAGE後に対数期と比較すると、静止期のセクレトームは有意に高い変動性およびレベルのペプチドを有する。
【
図6】黄色ブドウ球菌および緑膿菌参考株の粗精製抽出物に対するPF-11セクレトームの分解酵素活性の分析。
【
図7A】大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)ATCC33591有毒臨床病原単離株、および既に使用された非病原性大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する異なる濃度のPF-11セクレトームの増殖阻害アッセイ。
【
図7B】大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌ATCC33591有毒臨床病原単離株、および既に使用された非病原性大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する異なる濃度のPF-11セクレトームの増殖阻害アッセイ。PF-11セクレトームの分離ペプチド分画の効果。
【
図7C】大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌ATCC33591有毒臨床病原単離株、および既に使用された非病原性大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する異なる濃度のPF-11セクレトームの増殖阻害アッセイ。PF-11セクレトームの高分子分画の効果。
【
図7D】大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌ATCC33591有毒臨床病原単離株、および既に使用された非病原性大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する異なる濃度のPF-11セクレトームの増殖阻害アッセイ。PF-11の沸騰された完全なセクレトームの効果。
【
図8A】参考株P.プチダKT2440、および7種類の選択環境単離株(PF-08、PF-09、PF-11、PF-13、PF-29、PF-50、およびPF-57)から抽出されたタンパク質のプロファイルを有するSDS-PAGEゲル。M9培地で増殖された静止期細菌の細胞内の全体的なタンパク質のプロファイル。ロードされた試料は等量の総タンパク質に相当する。
【
図8B】参考株P.プチダKT2440、および7種類の選択環境単離株(PF-08、PF-09、PF-11、PF-13、PF-29、PF-50、およびPF-57)から抽出されたタンパク質のプロファイルを有するSDS-PAGEゲル。同一の増殖条件で増殖された同一の株の上澄み液から回収された分泌タンパク質。ロードされた試料は、過剰ローディングを裂けるために1:8に希釈されたPF-11を除いて、等体積の収集上澄み液に相当する。対照レーンは、非接種増殖培地M9に相当する。
【
図8C】参考株P.プチダKT2440、および7種類の選択環境単離株(PF-08、PF-09、PF-11、PF-13、PF-29、PF-50、およびPF-57)から抽出されたタンパク質のプロファイルを有するSDS-PAGEゲル。増殖曲線に沿ってPF-11により培地へ分泌されたタンパク質のOD
600nmが0.1から1.2までのプロファイル(1.2は静止期後期に相当する)。ゲルへアプライされた試料は、培養物のそれぞれ40、30、20、4、および2mlの体積の上澄み液に相当する。M:分子量マーカー。
【
図9A】上澄み液中のmg総タンパク質によってμgプロテアーゼ換算値で測定された、対数期(11EXP)および静止期(11STAT)のPF-11セクレトームのタンパク質活性。
【
図9B】インキュベーションの温度(15、20、25、30、35、40、および45℃)による、増殖静止期に収集されたPF-11セクレトームの、カゼインに対するタンパク質分解活性。データは、相対百分率で示され、100%活性は、タンパク質1mg当たり115μgに相当する(表1を参照のこと)。
【
図9C】酵素ターンオーバー評価:37℃で一晩インキュベートした後の、PF-11静止期セクレトームのタンパク質分解活性(左)。
【
図9D】タンパク質ターンオーバー評価:37℃で一晩インキュベートする前(レーン1)およびインキュベートした後(レーン2)のPF-11セクレトームプロファイル。全ての実験において、暗色の縦棒は、少なくとも3回の単独測定からの標準偏差を表す。
【
図10A】PF-11分泌タンパク質によって分解された最終的なタンパク質分解基質をスクリーニングするために使用された2D対角線SDS-PAGEゲル。大腸菌ATCC25922からの全タンパク質抽出物を、1D SDS-PAGEゲルへアプライし、陰性対照としてのM9培地、およびPF-11上澄み液と、35℃で5時間インキュベートした。インキュベート後、2次元をランすると、左のゲルに認められるように、タンパク質分解がない連続的な対角バンドが示された。矢印は1次元の移動方向を表す。
【
図10B】PF-11分泌タンパク質によって分解された最終的なタンパク質分解基質をスクリーニングするために使用された2D対角線SDS-PAGEゲル。上述のように調製された、ウニ付着性足跡(footprint)のタンパク質抽出物を使用していることを除いて、
図10Aと同一である。
【
図11】M9培地(対照)、PF-11およびKT2440培養物、ならびに上澄み液(SN)とインキュベートされた海洋バイオフィルム。水槽中に置かれ、回収されたペトリ皿を使用し、インキュベーションしてから18および40時間後に、接着した細菌および微細藻類の除去を試験した。
【
図12】M9培地(対照)、PF-11およびKT2440培養物、ならびに上澄み液(SN)とインキュベートされ、クリスタルバイオレットで着色されたウニ付着性足跡。少なくとも2つのスライド(沸騰されたPF-11 SN)は、生体接着剤の破壊に対して、煮沸されたPF-11上澄み液は効果がないことを示す。
【
図13A】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。ウシ血清アルブミンが添加された普通ブロス(NB+BSA)中で増殖させた。
【
図13B】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。ゼラチンが添加された普通ブロス(NB+ゼラチン)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14A】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。窒素源を含まない、ウシ血清アルブミンが添加されたM9(M9-N+BSA)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14B】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。窒素源を含まない、ゼラチンが添加されたM9(M9-N+ゼラチン)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14C】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。炭素源を含まない、ウシ血清アルブミンが添加されたM9(M9-G+BSA)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14D】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。炭素源を含まない、ゼラチンが添加されたM9(M9-G+ゼラチン)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14E】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。ウシ血清アルブミンが添加されたシュードモナス属最小培地(PMM+BSA)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図14F】水(O)、P.プチダおよび緑膿菌のそれぞれの参考株KT2440およびNTC、ならびに環境単離株PF-11(陽性対照)およびPF-29(陰性対照)の接種物によって正規化されたままの増殖百分率。ゼラチンが添加されたシュードモナス属最小培地(PMM+ゼラチン)中で増殖させた。値は2回の測定値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図15】分泌単離株の細胞外タンパク質加水分解活性の視覚的検査。M9完全培地増殖培養物に、15分間、8時間、72時間、および2カ月間曝露した後の、写真フィルムの表面ゼラチン層の分解の評価。
【
図16A】参考株P.プチダKT2440(1)、および選択環境単離株PF-09、PF-11、PF-29、および参考株NTC由来の分泌タンパク質のSDS-PAGEタンパク質プロファイル。分泌タンパク質は、TCA/アセトンを用いた沈殿によって、上澄み液から回収された。ロードされた試料は、等体積の収集上澄み液に相当する。ゲルの左側は分子量マーカーを示す。
【
図16B】ゼラチンザイモグラフ中の分泌タンパク質の細胞外プロテアーゼプロファイル。
【
図17A】試料を10mM PMSFおよび/または10mM EDTA阻害剤とインキュベートした後の、ゼラチンザイモグラム中の緑膿菌NTC27853参照環境単離株の分泌タンパク質の細胞外プロテアーゼプロファイル。
【
図17B】試料を10mM PMSFおよび/または10mM EDTA阻害剤とインキュベートした後の、ゼラチンザイモグラム中のシュードモナスPF-11環境単離株の分泌タンパク質の細胞外プロテアーゼプロファイル。
【
図18A】分類学的相同性によってグループ化されたPF-11セクレトーム。
【
図18B】分子機能によってグループ化されたPF-11セクレトーム。
【
図18C】酵素活性によってグループ化されたPF-11セクレトーム。
【
図19】増殖対数期中期のPF-11を添加した後の、海洋ブロスにおけるコベティア マリナ(Cobetia marina)の細菌増殖曲線の発展。
【
図20】OD
600nmによって判定された増殖%およびmg/Lに相当するPF-11濃度ppm(w/v)で測定された、ブロス微量希釈試験による、2種類の海洋細菌、ビブリオ コレラエ(Vibrio cholerae)およびビブリオ バルニフィカス(Vibrio vulnificus)の増殖に対する抗微生物効果。
【
図21】クリスタルバイオレット染色によって判定された付着細胞密度%で測定された細菌バイオフィルム形成のPF-11阻止。PF-11濃度は、mg/Lに相当するppm(w/v)である。
【
図22】1海水(テトラセルミス スエシカ(Tetraselmis suecica))および2淡水(コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)およびムレミカズキモ(Pseudokirchneriella subcapitata))微細藻類の増殖に対するPF-11の殺藻効果。PF-11濃度はg/Lである。
【
図23】異なる濃度のPF-11セクレトームに対するアノフェレス アトロパルブス(Anopheles atroparvus)幼虫の生存率アッセイ。
【
図24】フナムシコペポジドに対する異なる濃度のPF-11セクレトームの生存率アッセイ。
【
図25】フナムシ幼虫に対する異なる濃度のPF-11セクレトームの生存率アッセイ。
【発明の詳細な説明】
【0035】
定義
他に定義されない限り、ここで使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される場合と同じ意味を有する。
【0036】
ここで使用される、かつ特に指示がない限りまたは文脈によって特に必要性がない限り、以下の用語はそれぞれ下記の定義を有するものとする。
【0037】
一般定義
数値または数値範囲の文脈において、ここで使用される「約」は、文脈上、より限定された範囲に解すべき場合を除き、列挙されたまたは特許請求された数値または数値範囲の±10%を意味する。
【0038】
ここで使用される「セクレトーム」は、細胞によって産生および分泌された有機分子および無機元素の全てを意味する。増殖条件が示される場合、セクレトームは、その増殖条件下の細胞によって産生および分泌された有機分子および無機元素の全てである。セクレトームは、細胞上澄み液に回収されていてもよいことが理解されるであろう。
【0039】
ここで使用される「操作可能に連結された」は、構成要素が配置されて、その通常機能を実行する並置を指す。たとえば、コード配列に操作可能に連結されたコントロール配列またはプロモーターは、コード配列の発現をもたらすことが可能である。
【0040】
ここで使用される「シュードモナス(Pseudomonas)株PF-11の細胞」は、シュードモナス株PF-11の細胞またはその任意の後代を指す。シュードモナス株PF-11は、寄託番号DSM 32058として、2015年6月2日に、Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)、住所:Inhoffenstr.7B 38124 Braunschweigに寄託した。
【0041】
ここで使用される微生物の「実質的に純粋な培養物」は、培養物中の生存微生物(たとえば、細菌、真菌(酵母を含む)、マイコプラズマ、または原生動物)細胞の総数のうちの約40%未満(すなわち、約35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%未満、またはさらにこれら未満)が微生物以外の生存微生物細胞である、その微生物の培養物である。
【0042】
ここで使用される「富化された」シュードモナス株PF-11細胞は、天然で見出されるシュードモナス株PF-11細胞の任意の濃縮物よりも高濃度のシュードモナス株PF-11細胞の濃縮物を指す。
【0043】
ここで使用される「ベクター」という用語は、それに連結されている他のポリヌクレオチドフラグメントまたは配列をある位置(たとえば、宿主、系)から他の位置へ運搬および移送することが可能なポリヌクレオチド分子を指す。その用語は、in vivoまたはin vitro発現系用のベクターを含む。非限定例として、ベクターは、「プラスミド」の形態とすることができ、これは、典型的にはエピソームによって維持されているが、宿主ゲノム中に組み込まれていてもよい、環状二本鎖DNAループを指す。
【0044】
本発明の側面は、1種以上の細胞外プロテアーゼの産生に効果的な条件下で1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能な細胞を培養し、1種以上の細胞外プロテアーゼを含むセクレトームを回収することによる、1種以上の細胞外プロテアーゼを含むセクレトームの産生に関する。培養のための好ましい細胞は、本発明の細胞である。効果的な培養条件としては、これらに限定されるものではないが、細胞外プロテアーゼの産生を可能にする、有効培地、バイオリアクター、温度、pH、および酸素条件がある。有効培地は、1種以上の本発明の細胞外プロテアーゼを産生するために細胞が培養される、任意の培地を指す。このような培地には、同化可能な炭素、窒素、およびリン酸源、ならびに適切な塩、無機物、金属、ならびに他の栄養素、たとえば、ビタミンが含まれていてもよい。いくつかの態様において、培地は、同化可能な炭素、窒素、またはリン酸源が欠如したまたはそれらを減少させた増殖制限培地である。
【0045】
本発明はまた、本発明の細胞の、上澄み液、修飾上澄み液、上澄み液分画、セクレトーム、部分的に精製されたセクレトーム、およびセクレトーム分画を提供する。
【0046】
培地
本発明の態様において有用な細菌培地の非限定例としては、M9培地、M9-NH4Cl-Vit B1培地、M9-グルコース培地、シュードモナス属用の最小培地、およびNBがあり、以下で述べられる。
【0047】
M9培地:1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、NH4Cl 1g、100mM CaCl2 1ml、1M MgSO4 1 ml、1%Vit B1 500μl、20%グルコース20mlが添加されている(0)。
【0048】
M9-NH4Cl-Vit B1またはM9-N培地:1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、100mM CaCl2 1ml、1M MgSO4 1ml(0)、
M9-グルコースまたはM9-G:1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、100mM CaCl2 1ml、1M MgSO4 1ml(0)
シュードモナス属用最小培地:1L当たり、K2HPO4 1g、KH2PO4 3g、NaCl 5g、MgSO4・7H2O 0.2g、FeCl3 3mg(Prijambada et al. 1995)
NB:1%ペプトン、0.6%牛肉エキス、1% NaCl(Gaby and Hadley 1957)。
【0049】
略語
以下の略語がここで使用される:
BSA - ウシ血清アルブミン、OD - 光学密度、MMP - シュードモナス属用最小培地、M9-N - M9-NH4Cl-Vit B1、M9-G - M9-グルコース。
【0050】
態様
本発明は、シュードモナス環境株PF-11の細胞を培養することと、上澄み液を回収することとを含む、細菌上澄み液を調製する方法を提供する。
【0051】
1つの態様において、シュードモナス株PF-11の細胞を細胞または細胞後代が少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを産生する条件下で培養し、上澄み液は少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを含む。
【0052】
いくつかの態様において、上澄み液を、培養細胞の数が対数的速度で増加しているときに回収する。他の態様において、上澄み液を、培養細胞の数が対数的速度で増加しなくなった後に回収する。他の態様において、細胞を、グルコースが添加された塩培地で培養する。他の態様において、細胞を、グルコースが添加されたM9培地で培養する。他の態様において、細胞を、アンモニウムおよびチアミンが欠如した培地で培養する。いくつかの態様において、細胞を、約28、29、30、31、または32℃の温度で培養する。
【0053】
いくつかの態様において、本方法は、上澄み液または修飾上澄み液を、サイズが10キロダルトン(kDa)超の構成成分の分画とサイズが10kDa未満の構成成分の分画とに分割することをさらに伴う。
【0054】
いくつかの態様において、本方法は、上澄み液またはその分画のうちの1種以上の構成成分から少なくとも1種の細胞外プロテアーゼを分離し、上澄み液もしくはその分画の塩濃度を減少させて、上澄み液もしくはその分画の水分含量を低下させて、または上澄み液もしくはその分画を滅菌して、修飾上澄み液またはその分画を産生することを伴う。
【0055】
いくつかの態様において、本方法は、1種以上の許容される担体を、上澄み液、修飾上澄み液、またはこれらの分画へ添加することを含む。
【0056】
本発明はまた、表面のバイオフィルムの量を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11の上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0057】
いくつかの態様において、バイオフィルムは水生バイオフィルムである。いくつかの態様において、水生バイオフィルムは、淡水バイオフィルム;沼、湖、もしくは河川環境で増殖可能な淡水バイオフィルム;海洋バイオフィルム;または淡水もしくは塩水の水槽中で増殖可能なバイオフィルムである。
【0058】
本発明はまた、少なくとも1種の有機体が表面へ付着するのを減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0059】
いくつかの態様において、有機体は、藻類、ウニ、フジツボ、またはコケムシ個虫である。
【0060】
本発明はまた、表面のマイクロ汚損またはマクロ汚損を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、表面を接触させることを含む方法を提供する。
【0061】
いくつかの態様において、表面は、ガラス、繊維ガラス、木、ゴム、プラスチック、または金属である。他の態様において、表面は、水槽、プール、浮標、桟橋、または船舶もしくは平底荷船の船体のものである。他の態様において、表面は、水中に入れられた漁網または他の網のものである。他の態様において、表面は縄である。他の態様において、表面は、壁または内張り構造体のものである。
【0062】
いくつかの態様において、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物は、塗料または透明被覆剤である。
【0063】
本発明はまた、真菌を殺傷するまたはその増殖を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、真菌を接触させることを含む方法を提供する。
【0064】
本発明はまた、昆虫を殺傷するまたはその発生を阻害する方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、昆虫を接触させることを含む方法を提供する。
【0065】
本発明はまた、海洋カイアシを殺傷するまたはその発生を阻害する方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、海洋カイアシを接触させることを含む方法を提供する。
【0066】
本発明はまた、細菌細胞を殺傷するまたはその増殖を減少させる方法であって、シュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画、またはシュードモナス株PF-11培養物の、上澄み液、上澄み液分画、修飾上澄み液、もしくは修飾上澄み液分画と1種以上の許容される担体とを含む組成物と、細菌細胞を接触させることを含む方法を提供する。
【0067】
他の態様において、上澄み液分画または修飾上澄み液分画は、シュードモナス株PF-11セクレトームの、サイズが10kDa超の構成成分を含む。他の態様において、上澄み液分画または修飾上澄み液分画は、シュードモナス株PF-11セクレトームの、サイズが10kDa未満の構成成分を含む。他の態様において、細菌細胞は、シュードモナス属種(Pseudomonas spp.)、緑膿菌、またはシュードモナス属の細胞以外のものである。他の態様において、細菌細胞は、ブドウ球菌属種(Staphylococcus spp.)、黄色ブドウ球菌、またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の細胞である。他の態様において、細菌細胞は、エシェリキア属種(Escherichia spp.)、大腸菌、または大腸菌O157の細胞である。
【0068】
本発明はまた、シュードモナス株PF-11の実質的に純粋な培養物を提供する。いくつかの態様において、実質的に純粋な培養物の細胞は、プロモーターに操作可能に連結されたレポーターポリペプチドをコードする外因性耐性遺伝子または外因性ポリヌクレオチドを含むように修飾されている。いくつかの態様において、実質的に純粋な培養物の細胞は、シュードモナス株PF-11の対応する細胞と比較して、抗生物質化合物に対する感受性が高まるように遺伝子操作されている。いくつかの態様において、実質的に純粋な培養物は、培養物中の生存微生物細胞の総数のうちの約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%未満、またはさらにこれら未満が、シュードモナス株PF-11細胞以外の生存細胞である培養物である。
【0069】
本発明はまた、シュードモナス株PF-11が富化された培養物を提供する。
【0070】
本発明はまた、ここで記載される態様のうちのいずれか1つの細胞、または上澄み液、修飾上澄み液、もしくはこれらの分画と、1種以上の許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0071】
いくつかの態様において、組成物は、ここで記載される態様のうちのいずれか1つの細胞、または上澄み液、修飾上澄み液、もしくはこれらの分画を含む、防汚損(antifouling)または抗微生物組成物である。いくつかの態様において、組成物は、1種以上の許容される担体を含む。
【0072】
本発明はまた、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であるかどうかを識別する方法であって、i)細菌細胞を、高分子量基質が添加された増殖制限培地へ入れることと、ii)高分子量基質が添加された増殖制限培地中で細胞が増殖するかどうかを判定することと、iii)工程ii)で細胞が増殖すると判定された場合に、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが可能であると識別すること、および工程ii)で細胞が増殖しないと判定された場合に、細菌が、高分子量基質を消化することが可能な1種以上の細胞外プロテアーゼを産生することが不可能であると識別することとを含む方法を提供する。
【0073】
1つの態様において、高分子量基質が添加された増殖制限培地中の細胞数が、少なくとも0.5、1、3、4、5、または1~24時間にわたって、少なくとも1、5、10、100、1000、または10,000倍に増加する場合に、細胞は増殖すると判定される。
【0074】
1つの態様において、増殖制限培地は塩培地である。他の態様において、増殖制限培地は、グルコースが添加された塩培地である。他の態様において、増殖制限培地は、グルコースが添加されたM9培地である。他の態様において、増殖培地は、アンモニウムおよびチアミンが欠如している。他の態様において、増殖制限培地は、約28、29、30、31、または32℃の温度で維持される。他の態様において、増殖制限培地は液体である。他の態様において、増殖培地は寒天を含む。
【0075】
1つの態様において、高分子量基質は、細菌細胞の細胞壁または細胞膜を通過することができない。他の態様において、高分子量基質は、細胞増殖のために取り込まれかつ使用されるために、分解されなければならない。他の態様において、高分子量基質は、ゼラチン、カゼイン、ヘモグロビン、またはウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0076】
1つの態様において、工程i)の細菌細胞は、完全培地から得られ、その培地を希釈して高分子量基質を含む増殖制限培地とする。
【0077】
ここで開示される任意の態様は、ここで開示される目標、目的、および必要性のうちの少なくとも1つと一致する任意の方法で任意の他の態様と組み合わせもよく、「態様」、「いくつかの態様」、「別の態様」、「種々の態様」、「1つの態様」などに対する言及は必ずしも互いに排他的なものではなく、態様に関連して記載される特定の、特定の特徴、構造、または特性は少なくとも1つの態様に含まれていてもよいことを示すことを意図する。
【0078】
培養
細菌細胞を培養する方法は、当業者には既知であり、ここで開示される方法に限定されるものではない。たとえば、本発明の細胞は、従来の、発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイター皿、およびペトリプレート中で培養することができる。培養は、組換え細胞に適した、温度、pH、および酸素含量で行うことができる。このような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内である。
【0079】
セクレトームまたはセクレトームを含む上澄み液の1種以上の構成成分から細胞外プロテアーゼを分離する非限定方法としては、透析、限外ろ過、超遠心分離、およびクロマトグラフィー方法(これらに限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、拡張床吸着(Expanded Bed Adsorption)(EBA)クロマトグラフィー分離、逆相クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー、またはアフィニティークロマトグラフィーを含む)がある。
【0080】
培養培地から細胞を除去し、セクレトームを含む上澄み液を回収する方法の非限定例としては、遠心分離、ろ過、または沈殿がある。上澄み液、修飾上澄み液、またはこれらの分画の水分含量を低下させる方法の非限定例としては、蒸発、低分子量膜を用いた透析またはろ過、凍結乾燥、噴霧乾燥、およびドラム乾燥がある。
【0081】
本発明の組成物
本発明の組成物には、ここでは「許容される担体」とも呼ばれる賦形剤が含まれる。賦形剤は、処置される表面が許容することができる任意の材料とすることができる。このような賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、ハンク溶液、および他の生理学的平衡塩水溶液がある。非水性ビヒクル、たとえば、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドをまた、使用していてもよい。他の有用な調製剤としては、粘度強化剤、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含む懸濁液がある。賦形剤はまた、少量の添加物、たとえば、等張性および化学的安定性を促進する物質を含むことができる。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、およびトリス緩衝液があり、同時に防腐剤の例としては、チメロサールまたはo-クレゾール、ホルマリン、およびベンジルアルコールがある。賦形剤、たとえば、これらに限定されるものではないが、ポリマー制御放出ビヒクル、生分解性インプラント、リポソーム、細菌、ウイルス、他の細胞、油、エステル、およびグリコールはまた、組成物の半減期を増加するために使用することができる。
【0082】
本発明のいくつかの態様において、本発明の組成物は、被覆剤であるかまたは被覆剤と混合される。本発明のいくつかの態様において、本発明の組成物は、塗料であるかまたは塗料と混合される。1つの態様において、塗料は水性塗料である。他の態様において、塗料は油性塗料である。他の態様において、塗料は船舶用塗料である。他の態様において、塗料は、溶媒または希釈剤を含まない。被覆剤または塗料は、ここで開示される1種以上の表面、たとえば、水槽のガラス、プールの内側、水産業用網、または船舶の船体へ塗布してもよい。
【0083】
本発明の1つの態様は、本発明の組成物を環境または表面へ徐々に放出することが可能な制御放出調製剤である。ここで使用される制御放出調製剤は、制御放出ビヒクル中に本発明の組成物を含む。好適な制御放出ビヒクルとしては、これらに限定されるものではないが、生体適合性ポリマー、他のポリマーマトリックス、カプセル、マイクロカプセル、マイクロ粒子、ボーラス製剤、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポスフィア、および経皮送達系がある。いくつかの態様において、制御放出調製剤は生分解性(すなわち、生体内分解性)である。徐放性組成物は、移動水中での使用に特に有用である。調製剤は、好ましくは約1~約12カ月にわたって放出される。本発明の好ましい制御放出調製剤は、好ましくは少なくとも約1カ月間、より好ましくは少なくとも約3カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約6カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約9カ月間、さらにより好ましくは少なくとも約12カ月間、処置を行うことが可能である。
【0084】
別の態様において、組成物は乾燥組成物である。より好ましくは、本発明の細胞、たとえば、本発明の上澄み液またはセクレトームの乾燥抽出物である。液体組成物は当業者に既知の任意の技術、たとえばこれらに限定されないが、凍結乾燥、噴霧乾燥、およびドラム乾燥を使用して乾燥することができる。乾燥組成物は、被覆剤または塗料の添加物として使用することができる。
【0085】
細胞の修飾
ある態様において、本発明の細胞は、天然に存在するその同等物から修飾された。1つの態様において、細胞は天然に存在するその同等物と比較して、抗生物質に対し耐性を示すか、または高い耐性を有する。他の態様において、細胞は天然に存在するその同等物と比較して、抗生物質に対し耐性を示さないか、または耐性が低い。
【0086】
本発明の側面は、特異的な遺伝子型変化を有する本発明の細胞を選択する能力に関する。いくつかの態様において、本発明の細胞は、細胞の選択を可能にする外因性選択可能マーカーを含む。
【0087】
組換えDNA技術における1つの一般的な選択戦略は、表現型特性を有する遺伝要素(プラスミド、ウイルス、トランスポゾンなど)中に、クローン遺伝子またはDNA配列を含めることであり、それにより要素(形質転換細胞)を含む宿主細胞を、それを含まない細胞から分離することが可能になる。生存選択を提供する遺伝子が特に有用である。したがって、遺伝要素を含む細胞の選択は、毒物を含む培地上で細胞を増殖させることによって簡便に行うことができ、その培地上で「耐性遺伝子」を発現する形質転換体のみが生き残ることが可能である。いくつかの態様において、本発明の細胞は、外因性細胞を含み、それが発現したときに細胞の選択を可能にする。本発明の細胞の選択を可能にする外因性遺伝子の非限定例としては、抗生物質耐性遺伝子がある。ウイルス耐性、重金属耐性、またはポリペプチド耐性を提供する遺伝子がまた、利用可能である。当業者であれば、形質転換細胞を選択するためのプロトコールが、形質転換宿主細胞中に耐性、たとえば抗生物質耐性をコードする遺伝子を発現する遺伝要素(たとえば、クローニングベクター)に基づくことは既知であろう(たとえば、US4,237,224;Ausubel, 2000を参照のこと)。例示的な抗生物質としては、ペニシリンテトラサイクリン、ストレプトマイシン、およびサルファ薬がある。いくつかの態様において、本発明の細胞は、そのゲノムへ組み込まれた外因性耐性遺伝子を含む。
【0088】
いくつかの態様において、本発明の細胞は、レポーターポリペプチドを発現する。ここで使用される「レポーターポリペプチド」は、識別可能なシグナルを細胞内に提供するか、または当技術分野において既知の任意の技術によって細胞内で特異的に検出可能であるポリペプチドである。レポーターポリペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、ストレプトアビジン、β-ガラクトシダーゼ、エピトープ標識、蛍光タンパク質、発光タンパク質、および発色酵素がある。
【0089】
蛍光タンパク質は、当技術分野で周知であり、これらに限定されるものではないが、GFP、AcGFP、EGFP、TagGFP、EBFP、EBFP2、Asurite、mCFP、mKeima-Red、Azami Green、YagYFP、YFP、Topaz、mCitrine、Kusabira Orange、mOrange、mKO、TagRFP、RFP、DsRed、DsRed2、mStrawberry、mRFP1、mCherryおよびmRaspberryがある。発光タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、発光反応を触媒し得る酵素、たとえば、ルシフェラーゼがある。発色酵素の例としては、これらに限定されるものではないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、およびアルカリフォスファターゼがある。
【0090】
エピトープ標識の例としては、これらに限定されるものではないが、V5-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tag、GST-tag、およびHis-tagがある。エピトープ標識の更なる例は次の参考文献:Huang and Honda, CED: a conformational epitope database. BMC Immunology 7:7 www.biomedcentral.com/1471-2172/7/7#B1. Retrieved February 16, 2011 (2006);およびWalker and Rapley, Molecular biomethods handbook. Pg.467(Humana Press, 2008)に記載される。これらの参考文献のその全体が、参照により本出願に組み込まれるものとする。
【0091】
他の刊行物または参考文献、および実験の詳細の参照
ここで挙げられる全ての刊行物および他の参考文献は、個々の刊行物または参考文献それぞれが具体的にかつ個々に示され参照によって組み込まれたように、参照によってその全体が組み込まれるものとする。ここで引用される刊行物および参考文献は、従来技術であるとは認められない。
【0092】
本発明は、後に続く実験の詳細を参照することによってより理解されるが、その後に続く特許請求の範囲で定義されるため、記述された特定の実験は本発明の単に例示にすぎないことは当業者であれば容易に理解するであろう。
【0093】
実験の詳細
本発明をより完全に理解することを容易にするために、例を以下に提供する。以下の例は、本発明を作製しかつ実施する例示的様式を示す。しかし、本発明の範囲は、これらの例で開示される特定の態様に限定されるものではなく、単に説明のみを目的とする。
【0094】
実施例1
株PF-11の、単離、特性評価、および保存
環境サンプリングおよび細菌単離
土壌および/または泥試料を、PortugalのLisbon付近のTagus川地区で収集した。収集された材料(10g)を、滅菌水(50mL)とホモジネートした。混合物が重力沈降した後、液体分画を回収した。次いで、(微生物を含む)材料懸濁液を、遠心分離(12000g、5分)によって収集した。得られた沈殿物を滅菌水中で再懸濁した。1次増殖は、LB(Luria Bertani)培地中で実施した。これらの培養物を希釈(10-2~10-9)し、LA(LB+寒天)またはアンピシリン(8μg/mL)、アモキシリン(8μg/mL)、もしくはセフォタキシム(2μg/mL)を含むLAのいずれかで培養し、耐性または低い感受性を示す株を選択した。サイズまたは形態に違いが認識できるコロニーを選択した。選択されたコロニーはそれぞれ、連続的な培養継代(3回まで)を行い、純粋な培養物を得た。
【0095】
単離された株の識別
グラム陰性株の検出を、シクロヘキシミドを含む選択的McConkey nr3培地で実施した。生物学的特性評価を実施し、広範の株特性を確立した。TSI(Triple Sugar Iron)、オキシダーゼ、およびカタラーゼ試験によって、デキストロース、ラクトース、スクロース、および硫黄化合物を醗酵する能力ならびにオキシダーゼおよび/またはカタラーゼを産生する能力を推測した(Hajna 1945)。従来の判定にしたがって、市販の表現型識別システムを使用し、単離されたグラム陰性細菌の正確な識別を実施した。API(登録商標)(API 20EおよびAPI ID32 GN)試験紙を使用し、自動システムおよびソフトウェア(BioMerieux)と組み合わせると、99.5%以上の精度を有する識別が得られた。単離株PF-11は、99,9%の精度でシュードモナス プチダと識別された。
【0096】
MIC判定
MIC(最小阻止濃度)を、CLSI標準(CLSI、M02-A10;CLSI、M100-S21)に従い、寒天希釈およびディスク拡散によって判定した。手短に言うと、LAプレートを調製し、試験される抗生物質の一連の希釈物を添加し、MICを判定した。株の増殖を阻止する最も低い抗生物質濃度が、MIC値とみなされる。推奨されるように、大腸菌ATCC25922を対照株として使用した。EUCASTによる耐性ブレークポイントのCLSI標準および参照値を使用して、株PF-11がアンピシリン、アモキシリン、セフォタキシム、セフタジジム、セフォキシチン、アズトレオナムに対して耐性があることが判定された。
【0097】
株PF-11の保存
株を、-80℃で、保存培地として20%グリセロールが添加されたLB培地を使用して、いくつかの一定量で保管した。
【0098】
実施例2
PF-11培養物の増殖、化合物の製造、分泌された化合物の回収および特性評価
PF-11増殖条件
凍結細菌の一定量を、LB寒天培地で、30℃で一晩(16~18時間)培養する。次いで、1つのコロニーを使用して、グルコースが添加されたM9培地を含む滅菌フラスコへ接種し、オービタルシェーカー内で、30℃、120rpmで16時間増殖させる。培地からの化合物の回収
細胞を、4℃、14.000rpmで15分間遠心分離によって除去し、上澄み液を収集する。上澄み液を、0.22μmDURAPOREフィルター(Millex GP, Millipore, Ireland)を備えたろ過装置を使用したろ過によって滅菌する。滅菌状態は、上澄み液50μlを、30℃で少なくとも16時間、LAプレートでインキュベートすることによって確認する。
【0099】
化合物の未加工混合物の精製
上澄み液を-80℃で凍結し、凍結乾燥によって脱水する。次いで、それを水中に再懸濁し、2kDaのカットオフを使用した透析を実施して、過剰な塩を除去する。透析した混合物を再凍結乾燥し、粉末のまま-80℃で保持する。
【0100】
混合物に存在するタンパク質の識別
セクレトームタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%SDS-PAGE)によって、ミニゲルフォーマット(7×7cm Tetra system Bio-Rad製)中で分離した。タンパク質20マイクログラムを、1レーン当たりに使用した。試料を、MilliQ水で10倍に希釈し、還元緩衝液(62.5mM Tris-HCl、pH6.8、20%(v/v)グリセロール、2%(w/v)SDS、5%(v/v)b-メルカプトエタノール)と混合した。電気泳動の前に、試料を100℃で5分間加熱した。タンパク質バンドをCoomassie Brilliant Blue R-250で染色した。
【0101】
タンパク質バンドをゲルから手動で切り出し、MilliQ水で洗浄し、50%(v/v)アセトニトリル、続いて100%アセトニトリルで変色させた。システイン残基を10mM DTTで還元し、50mMヨードアセトアミドでアルキル化した。ゲル切片を真空下で遠心分離することによって乾燥し、50mM NH4HCO3および6.7ng・μL-1トリプシン(修飾ブタトリプシン、プロテオミクスグレード、Promega)を含む消化緩衝液に4℃で再水和した。30分後、上澄み液を除去し、廃棄して、50mM NH4HCO3 20μLを添加した。消化を、37℃で一晩進行させた。消化後、残留上澄み液を除去し、-20℃で保存した。
【0102】
得られたペプチド混合物を、ZipTip C18(Millipore)を用いて脱塩し、真空乾燥し、0.1%FAで再構成してから分析した。ナノ-LC-MS/MSの設定は以下のとおりである。試料を、Finnigan Micro ASオートサンプラーを介して注入し、Micro AS-Surveyor MSクロマトグラフシステムを使用して、NanoEase捕獲カラムSymmetry 300(商標)、C18、5μm(Waters)へ15μl/分の流量でロードした。ペプチドを、C18 PepMap 100、3μmキャピラリーカラム(75μm、15cm)(Dionex, LC Packings)を使用して、0%Bで10分のアイソクラティック溶出、0%~15%Bで10分の、15%~60%Bで70分の、60%~100%Bで20分の直線勾配を含む3つの連続工程、続いて、100%Bで10分のアイソクラティック溶出(A=H2O中の0.1%FA、B=CH3CN中の0.1%FA)を含む160分ランで分離した。ペプチド分離のために使用した110nl/分の流量は、自社のスプリッターシステムによって達成された。カラム出口を、TriVersa NanoMateのLC連結器へ連結し、その連結器を7 T LTQ-FT Ultraへ連結した。質量分析計を、データ依存モードで作動させた。1回のスキャン当たり、最強イオンのうちの最大10個を分解し、線形イオントラップで検出した。FTICRセルへのイオン透過率および線形トラップを、電荷容量をサーベイフルスキャンでは100万カウントに、かつMS/MS実験では50,000カウントに設定することにより、分析機の最適性能で自動的にコントロールした。MS/MS用に既に選択された標的イオンを、60分間、動的に除外した。データベース検索を、Proteome Discovererソフトウェアv1.2(Thermo)を用い、Sequest and Mascotエンジンを使用して実施した。使用されたデータベースは、SwissprotおよびNCBInrであった。
【0103】
Blast2GOプログラムを、識別されたタンパク質の機能分析に使用した。このプログラムは、相同な配列を見出すためのブラスト工程と、ブラストヒットと関連するGOタームを収集するためのマッピング工程と、機能タームを、マッピングで収集されたGOタームのプールからクエリー配列にアサインするためのアノテーション工程の3つの主要工程からなる。機能アサインメントはGOデータベースに基づく。識別されたタンパク質の配列データを、Blast2GOソフトウェアによってバッチ分析するためのマルチプルFASTAファイルとしてアップロードした。ブラスト工程を、共通データベースSwissprotに対してblastpを使用して実行した。他のパラメータをデフォルト値で、すなわち、e値閾値を1e-3でかつ回収率を1配列当たり20ヒットで保持した。さらに、最小整列長(hspフィルター)を33に設定し、100個のヌクレオチドよりも少ないマッチング領域へのヒットを避けた。QBlast-NCBIをBlastモードのままで設定した。1.0E-6のe値ヒットフィルターを有するアノテーションコンフィグレーション、55のアノテーションカットオフ、および5のGO重み(GO weight)が選択された。識別されたタンパク質を、情報の簡潔表現を得るために、分析ツールである複合グラフ(combined graph)を使用して、20の配列フィルターを用い、GOカテゴリー(たとえば、分子機能)の選択されたサブグループにグループ化した。
【0104】
質量分析および相同性検索分析により、PF-11セクレトームは少なくとも171個のタンパク質を含むことが示された。識別されたタンパク質の機能分析により、セクレトームタンパク質は、1)シュードモナス属、より具体的には緑膿菌由来のタンパク質と高い相同性を示し(
図18A)、2)36%のセクレトームタンパク質が触媒活性を有し(
図18B)、かつ3)その中で、加水分解酵素がセクレトーム中の最も多い酵素である(
図18C)ことが示された。
【0105】
実施例3
環境起源由来の抗微生物剤
抗生物質に対する耐性を介し従来の研究を通じて収集され(Meireles 2013)、強力な適応能力を有する環境シュードモナス プチダ株の異種コレクションを使用して、微生物学的増殖コントロールに関する分泌天然化合物の潜在力をスクリーニングした。Meireles 2013の内容は、参照により本出願に組み込まれるものとする。コレクション由来の1組のP.プチダ単離株を、その適応レベル、抗生物質耐性、および一般適合性(データは示されていない)をベースに、かつ多様な範囲の株特性を収集することを目的として選択した。これらの株のセクレトーム(すなわち、これらの分泌分子)を収集し、大腸菌、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌のジャンルの3つの基準株の増殖に対する効果について最初に試験した。1つの株PF-11が、最も優れた抗微生物潜在力を示した。次いで、この最初の1組を、セクレトームを収集した全てのP.プチダ株にまで拡大した。抗微生物特性を有する化合物の最初の特性評価を実施すると、その効果の一因となり得る、ペプチド、酵素、および界面活性剤の存在が明らかになった。最後に、PF-11セクレトームの病原株に対する効果を試験し、感染症治療における将来の用途に対する潜在力を評価するために、臨床株MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)および有毒な大腸菌O157の増殖をアッセイした。その結果、環境から単離されたP.プチダPF-11が、抗生物質として将来の用途に対し高い潜在力を有する抗微生物化合物の強力な分泌体(secretor)として確認された。
【0106】
材料および方法
細菌環境単離株および試験株
あらかじめ、65種類の環境シュードモナス プチダのコレクションを土壌から単離し、肉眼的に選択し、識別し、獲得した抗生物質耐性メカニズムを特徴付けた(Meireles 2013)。土壌および泥試料を、PortugalのLisbon地区にあるTejo川付近のいくつかの場所から収集した。予備的な表現型分析の後に、高い適応能力(速い増殖、最低限の栄養必要量)および抗微生物多耐性プロファイルを示した7種類のP.プチダ株(PF-8、PF-9、PF-11、PF-13、PF-29、PF-50、PF-57)を、これらが抗微生物化合物を分泌することをスクリーニングするために選択した。
【0107】
細菌培養物の成長条件
使用した全ての株は、5%グリセロール中、-80℃で保存し、LA(LuriaブロスAgar)中、35℃で一晩(16時間)培養してから、M9培地に接種した。単一のコロニーを、0.4%グルコースが添加された液体M9最小培地(50mM Na2HPO4、22mM KH2PO4、8.5mM NaCl、18.7mM NH4Cl、0.1mM CaCl2、1mM MgSO4、0.0005%チアミン)に、35℃、120rpmで、1、2、4、6、または24時間接種した(後半を静止期と定義した)。
【0108】
細菌培養物由来の上澄み液の調製
M9培地中の細菌培養物由来の上澄み液を回収し、以前に記載のように(Roy et al.)、ろ過装置の0.22μmナイロンフィルター(Millex GP, Millipore, Ireland)を介して滅菌ろ過した。滅菌状態を確認するために、各上澄み液の100μlを35℃で少なくとも16時間インキュベートした。
【0109】
抗微生物実験に関しては、ろ過された上澄み液を直接使用し、in vitroタンパク質分解アッセイに関しては、上澄み液を-50℃で凍結乾燥し、水に懸濁し、収集された上澄み液の最初の体積と比較して20分の1に濃縮した。
【0110】
培養物粗精製タンパク質の抽出および分離
株を、LB中、表示された条件で一晩増殖させた。次いで、培養物を1000gで10分間遠心分離し、細菌を沈殿させた。タンパク質抽出緩衝液を添加し、5分間沸騰させ、細胞を溶解した。タンパク質をNanodrop装置(Bio-Rad)、280nmで測定して定量化し、ホモジネートして、最終的に10μg/10μlとした。Coomassie blue brilliant(登録商標)(Sigma)および1%メルカプトエタノールを含む、1:1volのタンパク質ローディング緩衝液を添加してからすぐに、試料をSDS-PAGE用の12.5%PAAゲルにローディングした。
【0111】
細菌培養物由来の上澄み液の調製
選択された細菌単離株を35℃で16時間培養し、48時間超まで保存した。コロニーを、グルコースが添加されたLuria Bertaniブロス(LB)またはM9最小培地中で、35℃、120rpmで、1、2、4、6、または24時間増殖させた(静止期)。培養物が目的の増殖期に達した後に、それを次の使用のために保存するかまたは10000gで15分間遠心分離した。上澄み液を、ろ過装置の0.2μm孔ナイロンフィルター(Millex GP, Millipore, Ireland)でろ過した。滅菌状態を確認するために、各上澄み液の1mLを37℃で72時間インキュベートした。画分が必要とされるときは、ろ過された上澄み液を、10kDaカットオフを有するアミコンチューブで遠心分離し、上部分画をM9培地に再溶解して、分画濃度または緩衝液濃度は変化させずに同様の最終体積となるようにした。ろ過された上澄み液の加熱不活性化を、100℃の沸騰水で10分間インキュベートすることにより行い、タンパク質変性を促進した。4℃で1または2週間静止させた直前に記載の分画のうちいずれかを用いていくつかの実験を実施し、タンパク質分解活性を「失わせる」と同時に完全な多糖および界面活性剤特性を維持し、画分手順において分子の非特異的な減少をさけるために、これらを別々に評価した。各実験に対して、少なくとも独立した3回の繰り返しを実施した。HPLC分析に関しては、ろ過された上澄み液(200ml)を-20℃で保存し、-54℃で凍結乾燥し、最終的に再蒸留水5mlに再懸濁し、ペプチド分画を10kDaカットオフフィルターによって分離して、ペプチドを分析することができた。
【0112】
細菌タンパク質変性研究
大腸菌基準株から抽出された全タンパク質200μgを上澄み液と(個々に)混合して、4~7μg/μlの最終濃度とし、37℃でインキュベートした。プロテアーゼ活性を阻害するために、4-アミジノフェニルメタンスルホニルフルオリド塩酸塩を添加して、最終濃度を25μMとした。反応内容物をローディングダイと混合し(6回)、SDS-PAGEによって分離した。同一の手順を行い、静止期11単離株セクレトームの活性を、異なる温度、特に15~45℃で5℃毎に判定した。この手順を再度使用し、セクレトームのタンパク質分解活性の低下を、4℃での貯蔵時間に沿って評価した。各実験に対して、最低でも独立した3回の繰り返しを実施した。
【0113】
培養上澄み液中のタンパク質の検出
単離株をLuriaブロス中で表示された条件で一晩増殖させた後、培養物を1000gで15分間遠心分離し、細菌を沈殿させ、上澄み液を回収し、以前に記載のように(Roy et al.)、0.2μmフィルター(Millipore)を介して滅菌ろ過した。次いで、同量のタンパク質を隣接するウエルにロードし、12.5%のSDS-PAGEによって分離した。
【0114】
PF-11が分泌したペプチドのHPLCによる分離
HPLCシステムは、LDC、Milton Roy、Consta Metric 1ポンプ、およびLichrosorb RP-18(Merck Hibar)カラム(粒径5μm、長さ125mm、内径4mm)からなっていた。ポンプ圧は60MPaであった。インジェクターは全自動式(Rheotype Gilson Abimed Model 231)であった。検出器は、蛍光分光高度計(Shimadzu RF 535、γ励起365mm、およびγ放射444nm)を備えていた。流量は1分当たり1mLであり、注入体積は50μLであった。移動相は水/アセトニトリル(75:25)であった。
【0115】
標準溶液
AFM1、AFB1、AFB2、AFG1、およびAFG2はSigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から得た。市販のAFM1のストック溶液は1,000ng/mLであった。スパイク溶液を、HPLCグレードのアセトニトリル/水を使用して1:40に希釈し、約25ng/mLを得た。希釈したストック溶液のうちの140μLを、脱脂Hippベビーミルク70mLへ添加した。校正曲線を、AFM1 2μg/Lで1:500に希釈することによって用意した。ストック溶液を使用しないときは、4℃で保管した。
【0116】
結果
抗生物質選択を介して前もって収集した(Meireles 2013)環境シュードモナス プチダ単離株のコレクションを使用し、微生物学的増殖コントロールに対する天然細菌ツールの潜在力をスクリーニングした。これらの株のうち少数の単離株が、適応潜在力および平均を上回る細胞外分泌を示し(データは示されていない)、ここから7種類のシュードモナス環境単離株(PF-8、PF-9、PF-11、PF-13、PF-29、PF-50、PF-57)を選択し、さらに研究した。最初に、これらの選択単離株および対照株P.プチダKT2440の細菌培養物の上澄み液を最小培地に増殖静止期に収集し、これらのセクレトームの抗微生物効果を評価した。収集した上澄み液の増殖を阻害する潜在力を、ヒト感染症を含む、広く研究された3種類のジャンルの細菌、すなわち、大腸菌、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌で試験した。3種類の非病原株(大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌NCTC8325、および緑膿菌ATCC27853)をこの段階で使用し、セクレトームの抗微生物効果を評価した。3種類の試験株を冨栄養培地で増殖させ、8種類のセクレトームおよび最小増殖培地M9からなる対照と1:1体積で16時間インキュベートし、上澄み液を回収した(
図1A~1C)。緑膿菌は、7種類の単離株または参考株P.プチダKT24240よって分泌された化合物のいずれによっても明らかに影響を受けなかった(
図1A)。対照的に、大腸菌と黄色ブドウ球菌の両方の試験株は、いくつかのP.プチダセクレトームによる影響を強く受けた。異なる反復実験で一致した阻害効果のみを考慮すると、大腸菌の増殖は、PF-9およびPF-11のセクレトームによって少なくとも40%に阻害された(
図1B)。黄色ブドウ球菌の増殖阻害の試験により、株PF-13、PF-29、およびPF-50のセクレトームで、セクレトームに対して非常に高い感受性が示され、増殖が50%超に減少し、特にPF-11のセクレトームは黄色ブドウ球菌の増殖を90%低下させた(
図1C)。株PF-11のセクレトームが大腸菌と黄色ブドウ球菌の両方に広範な増殖阻害を示すことを考慮し、更なる分析を選択した。
【0117】
シュードモナスPF-11のセクレトームの細菌増殖に対する効果を、標的として上記で使用した全てのシュードモナス単離株および参照株を添加したことを除いて、上記のように試験した。
図2のデータにより、PF-11株の培養培地から回収された分泌化合物は、全てのP.プチダ株に対して、強力な阻害効果である約50%の増殖阻害を有することが明らかに示され、同じジャンル由来の細菌に対する分泌化合物の優れた効果が明らかなった。対照的に、増殖静止期のPF-11培養物から回収した培養上澄み液を株PF-11自体で試験したとき、増殖が20%誘発され(
図2)、その株に特異的な増殖強化物質、さらに上記で検出された他の細菌の増殖阻害物質の存在が明らかになった。PF-11に特異的なこれらの増殖強化物質の存在は、実質的に純粋な培養物またはPF-11が富化された培養物が、その天然状態の細胞とは異なった振舞いをすることを意味する。実質的に純粋な培養物またはPF-11が富化された培養物は、天然のPF-11細胞と比較して増殖を促進することが実証される。したがって、実質的に純粋な培養物またはPF-11が富化された培養物は、天然に存在するようなPF-11細胞よりも有用である。たとえば、実質的に純粋なまたは富化された培養物は、防汚損、抗微生物、または他の用途用の分泌化合物を産生するためにより有用であろう。
【0118】
増殖静止期に最小培地M9に分泌されたPF-11のセクレトームを回収し、10kDaの排除膜フィルターを使用して分離した。2つの分画が得られた。1つ目は分泌ペプチドおよび低分子を含み、2つ目はタンパク質を含む高分子を含んでいた。これらの分画の効果を、上記で使用した株の増殖に対して試験した。緑膿菌ATCC27853の増殖は予想通り、依然としてPF-11セクレトームのどの分画によっても影響を受けないままである(
図3Aおよび
図3B)。2種類の他のグラム陰性株である、P.プチダKT2420および大腸菌ATCC25922の増殖は、完全なセクレトームによって大きく(50%)低下した。しかし、大腸菌の増殖は、分泌ペプチド分画によってわずかに(25%)低下したのみであると同時に、P.プチダに対する有意な効果は有さなかった(
図3A)。対照的に、タンパク質および高分子を含む分画は、多少は低下しているが、一般的にこれらの2種類の株に対して観察された全体的な抗微生物活性を保持する(
図3B)。明らかに、黄色ブドウ球菌NCTC8325は、PF-11の完全なセクレトームによってほぼ完全に(90%)阻害された。
図3Aのデータより、セクレトームのペプチド分画が同一の阻害を再現し、抗ブドウ球菌化合物の主な供給源としてこの分画を表していることが示される。しかし、タンパク質分画(10kDa超)はまた、50%超のこの株の増殖阻害効果を示し(
図3B)、いくつかの種類の抗ブドウ球菌分子であるセクレトームの存在を示唆する。PF-11の上澄み液の活性をさらに特徴付けるために、とりわけ、沸騰させて分子を変性させ、存在する任意の酵素活性を破壊した後に、その抗微生物効果を試験した。
図3Cのデータより、煮沸されたセクレトームは、上記の
図2で観察された抗微生物効果を保持することが示される。
【0119】
分泌されたペプチド含量を特徴付けるために(上記
図3Bのように調製し)、増殖の対数期のP.プチダPF-11セクレトームに含まれる材料の評価を、P.プチダKT2440を参考株として使用し、HPLCによって実施した。参照株の分泌ペプチドのプロファイルは、溶出の最初の段階でのみ認識することができる非常に小さいペプチドを表すいくつかのピークとともに不十分な溶出プロファイルを示す。対照的に、PF-11セクレトームは、ペプチドが明らかに豊富であること、クロマトグラフィーに沿って均一に溶出されること、および特にKT2440株よりもはるかに大量であることを示す(
図4A)。ここで増殖の対数期および静止期で得た抽出物を比較すると、PF-11セクレトームのこのペプチド分画のより詳細なHPLC分析により、この株によって分泌されたペプチドの入り組んだ複雑性が示された(
図4B)。さらに、これらの低分子の非常に強い蓄積は静止増殖期において明らかに検出可能であり、ペプチドの安定性が良好であることを示し、かつ優れたペプチド分泌株としての株P.プチダPF-11が確認される。
【0120】
細菌ペプチドは大抵の場合、界面活性を有するリポペプチドである。したがって、増殖静止期におけるPF-11の細菌培養物の表面張力を分析し、増殖培地および株KT2440と比較した(
図5A)。同一体積の溶液をプラスチック表面に滴下し、液滴の直径とその高さの両方を視覚化した(材料および方法を参照のこと)。増殖培地のみと株KT2440の両方が、沈殿物の直径と高さの両方で同様の特徴を示した。対照的に、PF-11培養物の液滴は、表面接触の非常に有意な広がりを示し、同時に生じる直径の増加(対照と比較すると、2倍)と高さの急激な減少とから明らかに認識される。培養されたPF-11を含む培地は接触表面張力(contact surface tension)が大きく低下し、培地中に界面活性剤分子が存在することを示す。細菌細胞の存在から任意の人為的効果を除くため、実験を、株KT2440およびPF-11の精製セクレトームを使用して繰り返した(
図5B)。細菌培養物を用い上記で得られたデータをそのセクレトームで確認することにより、株PF-11が界面活性剤分子を培地中に活発に分泌することが示される。
【0121】
サイズが10kDa超の化合物の分画は、いくつかの試験標的株に対して有意な抗微生物効果を示した。沸騰された抽出セクレトームは、その特性が有意に変化しないにもかかわらず、酵素、すなわち触媒活性を有するタンパク質の存在が、それが示す阻害効果の大きな一因となり得る。したがって、大腸菌、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌株からの粗精製タンパク質抽出物を使用し、KT2440の増殖の対数期および静止期において抽出したPF-11セクレトーム、ならびに対照としての水と一晩インキュベートして、分解酵素の存在をアッセイした(
図6)。水とインキュベーションすると、37℃で一晩後に、外部効果の影響を受けることなく標的タンパク質のパターンが示される。KT2440セクレトームと一晩インキュベートした後のタンパク質プロファイルは、巨大タンパク質に相当する薄いバンドを最上部にもたらし、低レベルであるが、いくつかの分解を示す。対照的に、上記の通り、PF-11セクレトームは全てのタンパク質抽出物を、静止期と比較して低濃度の化合物を有する対数期に収集されたものでさえ強力に分解する。この分析によって、PF-11セクレトーム中に、複合体基質、たとえば別の細菌由来の全粗精製タンパク質抽出物を分解することが可能である、顕著な濃度かつ極めて効率的な活性の分泌分解酵素の存在が示される。
【0122】
したがって、シュードモナスPF-11セクレトームは、非常に豊富でありかつ組成と活性に関して複雑であり、グラム陰性株とグラム陽性株の両方に強い抗微生物効果を有する。このような化合物の潜在的な用途についての更なる研究に関しては、分泌分子を抽出し、濃縮することと、その特性評価を進めることとが不可欠である。したがって、セクレトームを、凍結乾燥によって濃縮し、緩衝液交換によって脱塩し、水中に再懸濁した。この再構成溶液を、試験済みの大腸菌および黄色ブドウ球菌株に対して、異なる濃度(10倍、4倍、および2倍、1倍の濃度がPF-11培養物の上澄み液の濃度に相当する)で調べ、この精製プロセスの後に化合物がその抗菌特徴を保持したかどうかを評価した。さらに、これらの研究の1つの目的は、新規の抗感染症剤アプローチを実施することであり得、病原株は「基準」株とは異なる特性を有するため、2種類の病原株を使用してPF-11によって分泌された精製化合物を試験した。大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌ATCC33591は有毒な臨床病原単離株であり、一般的にはEU薬局方のコントロールおよびモニタリングにおける最小株として使用される。最初に、精製され、脱塩され、濃縮された全セクレトームを、これらの4種類の株とともに増殖阻害アッセイで使用した(
図7A)。従来通り、PF-11セクレトームの強力な抗微生物活性は、試験された全ての株については明白である。黄色ブドウ球菌株は、2倍の濃度の抽出物で全体的に阻害される。しかし、高濃度(4倍および10倍)で阻害効果は低下するが、80%越の増殖阻害は依然として達成される。両方の大腸菌株がPF-11セクレトーム存在下で同様の振舞いをするが、大腸菌O157は、その抗微生物効果に対して大腸菌ATCC25922よりも低濃度でより耐性を示す。この相違にも関わらず、10倍の濃度で両方の株の増殖は90%阻害される。先のように、再懸濁されたセクレトームのペプチド分画を分離し、その抗微生物効果を分析した。ペプチドは、2倍の濃度で大腸菌に対する効果が低いことが示された(
図7B)。しかし、4倍の濃度では、両方の株の増殖は50%に低下し、全体的な増殖阻害が10倍の濃度で達成される。ペプチドの抗ブドウ球菌効果については、約90%阻害が2倍の濃度で達成され、100%阻害に近い範囲が高濃度で達成される。サイズが10kDa越の分子を含む分画の抗微生物効果を分析するときに、PF-11培養物の上澄み液で観察された大腸菌25922に対する増殖阻害が実証された(
図7C)が、この分画は病原性大腸菌O157の増殖に有意な効果は有さない。驚くことに、黄色ブドウ球菌増殖は両方の株で大きく低下し、80%よりも優れた阻害を伴うが、上澄み液では約50%の阻害しか達成されなかった。沸騰させて分子構造を変性させること以外は同一の分画を使用した更なる試験を実施し、沸騰されていない懸濁液と非常に類似した結果であった(
図7D)。
【0123】
実施例4
PF-11セクレトームの防汚損効果
P.プチダの環境株の異種コレクションを、抗生物質に対する耐性を介した活性選択による従来の研究を通じて収集した(Meireles 2013)。この1組の株を使用し、細胞外分泌潜在力を調べ、P.プチダによって産生されたプロテアーゼを識別しかつ特徴付けた。P.プチダKT2440と比較すると、バイオレメディエーション用途の関連で単離され、研究された株であるシュードモナスPF-11は有益な株として発生し、コレクション由来の他の全ての細菌の中でバイオテクノロジー関連の潜在力を伴っていた。この環境株をスクリーニングするために使用した選択手順および防汚損剤分泌細菌としてのその潜在力の評価をここに記載する。粗精製細菌タンパク質抽出物の分解と海洋生物学的付着剤の分解との両方において、強力なタンパク質分解効果がin vitroで示された。さらに、上澄み液または全PF-11細菌培養物のいずれかを使用したin vivoアッセイにより、海洋性マイクロ汚損の破壊に対するかつウニによって産生された生体接着剤の分解に対するこの株の防汚損特性が明らかに実証される。
【0124】
したがって、環境から単離されたシュードモナス株PF-11は、プロテアーゼ、とりわけ他の生体分子の濃縮混合物を分泌することが可能であり、マイクロ汚損またはマクロ汚損事象のいずれかに対する強力な防汚損効果を高めることが可能である。したがって、天然起源のこのような化合物は、海洋性防汚損技術における用途、たとえば、新規の被覆剤または保護塗料への添加物に潜在的に有用である。
【0125】
材料および方法
細菌単離株
あらかじめ、65種類の環境シュードモナス プチダのコレクションを、土壌から単離し、肉眼的に選択し、識別し、獲得した抗生物質耐性メカニズムを特徴付けた(Meireles 2013)。土壌および泥試料を、PortugalのLisbon地区にあるTejo川付近のいくつかの場所から収集した。予備的な表現型分析の後に、高い適応力(速い増殖、最低限の栄養必要量)および抗微生物多耐性プロファイルを示した7種類のP.プチダを、これらの分泌挙動をスクリーニングするために選択した。この環境設定セットを分析し、十分に研究された参考株(Palleroni)であるP.プチダKT2440と比較した。
【0126】
細菌培養物の成長条件
使用した全ての株は、5%グリセロール中、-80℃で保存し、LA(LuriaブロスAgar)中、35℃で一晩(16時間)培養してから、M9に接種した。単一のコロニーを、0.4%グルコースが添加された液体M9最小培地(50mM Na2HPO4、22mM KH2PO4、8.5mM NaCl、18.7mM NH4Cl、0.1mM CaCl2、1mM MgSO4、0.0005%チアミン)(Miller et al.)に、35℃、120rpmで、1、2、4、6、または24時間増殖させた(後半を静止期と定義した)。培養物が所望の増殖期に達した後に、それを直接使用するために収集するかまたは10,000gで最低でも15分間遠心分離して、培養培地中のバルク細胞を、上澄み液から収集された分泌分子から分離した。
【0127】
細菌細胞内タンパク質の抽出および分離
増殖の対数期または静止期のいずれかからの細菌細胞沈殿物を10,000gで15分間遠心分離することによって収集した。細菌を、タンパク質抽出緩衝液(2%SDS、20mM Tris、2mM PMSF)(Sambrook et al.)に再懸濁し、懸濁液を5分間煮沸し、細胞溶解を誘発した。タンパク質をNanodrop装置(Thermo Fisher Scientific)で、280nmで測定することによって定量化し、ホモジネートし、最終的に10μg/10μlとした。Coomassie Brilliant Blue(登録商標)(Sigma)(0.03%)、グリセロール(30%)、およびβ-メルカプトエタノール(10%)を含む、1:1volのタンパク質ローディング緩衝液を添加し、沸騰してからすぐに、試料をSDS-PAGE用の12.5%PAAゲルにローディングした。
【0128】
細菌培養物からの上澄み液の調製
M9培地中の細菌培養物由来の上澄み液を回収し、以前に記載のように(0)、ろ過装置の0.22μmナイロンフィルターを介して滅菌ろ過した。滅菌状態を確認するために、各上澄み液の100μlを35℃で少なくとも16時間インキュベートした。防汚損実験に関しては、ろ過された上澄み液を直接使用し、in vitroタンパク質分解アッセイに関しては、上澄み液を-50℃で凍結乾燥し、水中に懸濁し、収集された上澄み液の最初の体積と比較して20分の1に濃縮した。
【0129】
分泌されたタンパク質のTCA沈降
滅菌ろ過されたタンパク質上澄み液を、トリクロロ酢酸(TCA)およびアセトンを使用して沈降させた。4℃のアセトン中の25%TCA溶液を、1:3(通常は、TCA8ml対上澄み液の沈降物25ml)の体積比で各試料へ添加した。ホモジネート後、混合物を氷上で15分間インキュベートし、次いで、10,000g、4℃で10分間遠心分離した。得られた沈殿物をアセトンで10mlおよび4mlでそれぞれ懸濁することによって2回洗浄し、続いて、同一の条件で遠心分離した。乾燥した最終沈降物をSDSタンパク質変性ローディング緩衝液(62.5mM Tris HCl pH6.8、2%SDS、5%β-メルカプトエタノール、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)40μlに懸濁し、その10μlを12.5%SDS-PAGEゲル中でランした。ゲルをCommasie Brilliant Blue(Sigma)で染色した。沈降フラクションを、初期細胞培養物懸濁液6.5mlに相当するゲルへアプライした。
【0130】
タンパク質分解アッセイ
P.プチダセクレトームのタンパク質分解物質含量を評価するために、Fluorescent Protease Assay Kit(Pierce)を製造業者の取扱説明書に従って使用した。手短に言うと、アッセイには、フルオレセイン共鳴エネルギー移動(FRET)によって、試料中のプロテアーゼ活性を評価するためのフルオレセイン標識基質(カゼイン)の使用が含まれる。この強く標識された無傷タンパク基質の蛍光特性は、プロテアーゼによって消化されたときに劇的に変化し、測定可能なタンパク質分解の指標をもたらす。基質がより小さいフルオレセイン標識フラグメントに消化されるにつれて、総蛍光シグナルは(蛍光消光が減少する結果として)増加する(ホモトランスファー蛍光方法)。蛍光測定を、フルオレセイン励起/発光フィルター(485/538nm)を備えたFluorolog-3(Horiba Jobin Yvon)を用い、0.5cmの石英キュベット光路中で行った。校正用に、トリプシンを一般的なプロテアーゼに選択した。セクレトーム試料をTBS(25mM Tris、0.15M NaCl、pH7.2)で100倍に希釈した。トリプシン標準およびカゼイン溶液を同一の緩衝液で調製した。全ての試料および標準を基質と、室温で20分間インキュベートした。タンパク質濃度を、Bradfordタンパク質アッセイによって判定し、ウシ血清アルブミン(BSA)(Bio-Rad)を標準として使用した。単離された全てのP.プチダ株のセクレトームを本方法に従って評価したが、ブランクよりも優れた総蛍光値を示したもののみをさらに処理した。試料中のプロテアーゼ濃度の評価を、トリプシン標準を用いた直線回帰によって計算し、次いで、アッセイで使用した総タンパク質量で割った(μgプロテアーゼ/μgタンパク質)。プロテアーゼ活性に対する温度効果を評価するために、セクレトーム試料をフルオレセイン標識カゼインと、異なる温度(5℃毎に15~45℃)で20分間インキュベートした。得られたタンパク質1mg当たりのプロテアーゼ活性μgの最大値を最大活性(100%)とみなし、全温度結果とこの値との比を実施した。温度がそれ自体の蛍光シグナルに影響を与えないことを確認するために、標準ブランクに加えて、フルオレセイン標識カゼインを用いて予備対照を作製し、各研究温度の緩衝液中のみでインキュベートした。
【0131】
プロテアーゼ基質をスクリーニングするための2D-PAGE
細菌参考株(大腸菌ATCC25922)の細胞外タンパク質抽出物およびウニ、ヨーロッパムラサキウニ(Paracentrotus lividus)の削られた付着性足跡を、記載のように(Nestler et al.)タンパク質分解アッセイのための基質として使用した。大腸菌の全タンパク質を上記(細菌細胞内タンパク質の抽出および分離)のように抽出した。ウニ付着性足跡(乾燥重量で1mg)を、10%トリクロロ酢酸1mL、0.07%(w/v)β-メルカプトエタノール中に、4℃で1時間懸濁し、タンパク質を沈降させ、次いで、冷却(-20℃)されたアセトン中の0.07%(v/v)β-メルカプトエタノール1mLで3回洗浄し、最後に真空乾燥した。得られたタンパク質沈殿物を非還元条件下(62.5mM Tris-HCl pH6.8中、2%SDS、20%グリセロール)で再懸濁し、得られた溶液を95℃で5分間加熱した。次いで、ウニ付着性タンパク質を、12.5%ポリアクリルアミドゲル中でSDS-PAGEを使用し、一次元で分離した。分離後、レーンを切り出し、陰性対照としてM9培地と、かつPF-11株上澄み液と、35℃で5時間インキュベートした。1Dレーンは、12.5%ポリアクリルアミドゲル上のアガロースでシールし、2次元を、1次元に対して直角にランした。電気泳動は同一の条件下で実施されるため、未消化のタンパク質がゲルを通して対角線上に出現する。特異的なタンパク質分解的切断の生成物はこのレーンの下に生じるはずである。
【0132】
海洋バイオフィルムの破壊
PF-11P.プチダの最終単離上澄み液の抗微生物学的防汚損潜在力をex vivoで評価するために、海洋バイオフィルムを、「Vasco da Gama Aquarium」(Alges, Oeiras)の15℃で33%の海水を含む開放型循環槽(open-circuit tank)の内側に入れたペトリ皿上で成長させた。これらのペトリ皿を再蒸留水で優しく3回洗浄し、過剰の塩および遊離有機材料を除去した。残りの強力に接着した材料(細菌および微細藻類)を、異なる細胞基質および滅菌上澄み液とインキュベートし、海洋性マクロ汚損を、室温、18~40時間でガラスマトリックスから破壊する能力を評価した。インキュベーション期間後、液体分画を除去し、皿を再蒸留水で優しく洗浄し、バイオフィルム破壊を可視化した。全ての試験を少なくとも3回実施した。代表的な写真を示す。
【0133】
ウニ付着性足跡のex vivoでの分解
ヨーロッパムラサキウニ種由来のウニ(Lamark 1816)を、Portugalの西海岸(Estoril, Cascais)で干潮時に収集した。収集後、動物を「Vasco da Gama Aquarium」(Alges, Oeiras)に移送し、15℃および33%の開放型循環槽で飼育した。人工海水(Crystal Sea, Marine Enterprises International, Baltimore, MD, USA)中にウニを含む小さいプラスチック水槽(3L)を使用し、付着性材料を収集した。この水槽の内部を、動物が接着することができる取り外し可能なガラス板で覆った。
【0134】
数時間後、何百もの足跡で覆われたこれらのガラス板を除去し、蒸留水ですすぎ、タンパク質抽出のために使い捨てメスで削るかまたは除去アッセイのために直接使用した(0)。シュードモナスPF-11の最終単離上澄み液の海洋性防汚損潜在力をex vivoで評価するために、収集したウニの足跡を既に記載の細胞培養物および滅菌上澄み液とインキュベートした。インキュベートの前に、ガラススライドを再蒸留水で洗浄し、0.05%Crystal violetで染色し、再び洗浄し、付着性足跡材料を可視化した(0)。次いで、これらを評価の段階で、溶液と35℃、80rpmで18時間インキュベートした。ガラススライドを最後に洗浄し、同一のプロトコールに従って染色し、ガラス基質から生物学的付着剤を除去するその能力を評価した。
【0135】
海洋環境で無脊椎動物に対する防汚損剤としてのPF-11セクレトームの能力を評価するために、ウニ管足によって分泌された付着性足跡をタンパク質分解基質として使用した。その粘着力(単位面積当たりの力)は0.09~0.54MPaと推定され(0 et al. 2005、Santos et al. 2006)、これは他の無脊椎動物(非永久接着剤および永久接着剤に関してそれぞれ0.1~0.5および0.5~1MPa(Smith 2006))と比較して、強力な非永久接着剤としてのウニの分泌付着物を示す。
【0136】
ウニによって分泌された付着接着剤は、水生環境において重合することが可能であり、部分的にタンパク質で形成された化合物の複合混合物を含んでいる、織り交ぜられた構造を形成する。したがって、以前(Santos et al. 2005、Santos et al. 2009)に示されように、それは非常に安定でありかつ分解に対して耐性を示す。
【0137】
ウニを海水水槽中、15℃で維持し、次いでガラス板に置き、付着させた。その本来の挙動によって、ウニは接着と脱着とを繰り返し、ガラス上に付着性足跡を残し、それを可溶化するには強力な変性および還元剤が必要であった(Santos et al. 2009)。対角線SDS-PAGEをまた実施し、1次元は付着性足跡から抽出されたタンパク質の分離からなり、続いてゲルレーンをPF-11上澄み液とインキュベートし、最後に、大腸菌タンパク質抽出物に関して2次元をランした。
【0138】
先のように、PF-11細胞培養物から回収された上澄み液とインキュベートすると、タンパク質の完全な分解が確実になる。このタンパク質抽出物は、大腸菌由来の全細胞タンパク質抽出物ほど複雑ではないが、分解がより困難であることが予想される付着性タンパク質を含むが、一方で結果より、株PF-11によって分泌されるタンパク質の潜在的なタンパク質分解活性が確認され、さらに防汚損化合物分泌体としてその潜在力を高める一因となる(
図10B)。
【0139】
セクレトーム分析
環境細菌単離株のコレクションを都会の河川岸および農地土壌から回収し、スクリーニング方法としていくつかの抗生物質を使用し、強力な適応および生存潜在力を有する株を選択した。収集され、識別された細菌のうち、その複製速度が速いこと、異なる状態に対して適応が広いこと、およびストレスに対する耐性が確立されていることとおそらく関連する回復力の優れた保有体としてシュードモナス科(Pseudomonaceas)が出現した(Palleroni)。これらの科のうち、シュードモナス プチダは最も一般的な種であり、70種類の1組の株を、多数の、概してβ-ラクタムに対する耐性株とともに単離した(データは未発表である)。
【0140】
バイオテクノロジー用途の潜在的な活性生体分子をスクリーニングするために、概してβ-ラクタムに、特に第3世代のセファロスポリンおよびカルバペネムに対して高い耐性プロファイルを示す7種類の環境単離P.プチダ株を選択し、最小培地で培養し、その分泌プロファイルを評価した(Meireles 2013)。最初に、全細胞タンパク質を環境単離株から抽出し、バイオレメディエーション研究の背景において広く研究されたP.プチダKT2440株と比較した(Nelson et al.)。
【0141】
株KT2440は、バイオレメディエーションツールとしてのその潜在力および優れた挙動に基づいて単離され、不利な環境または毒性化合物に対する耐性のいずれかに適応する株である、P.プチダmt-2から得られた(0 et al.)。したがって、その特徴が、その生存力の点で同一種由来の大部分の株よりも多用途性を示すという意味では、それは既に非典型的なP.プチダ株である。SDS-PAGEゲルによる分析により、KT2440株に類似する分布プロファイルを有する株PF-11(それぞれ、
図8Aのレーン4および1)を除いて、単離株間でほぼ類似する細胞内タンパク質分布パターンが示された(
図8A)。同時に、これらの株の分泌潜在力を評価するために、培地に分泌されたタンパク質を、TCA/アセトンを用いた沈殿によって濃縮し、(ろ過によって細胞を除去した後に)最初の培地体積に対して比例的に懸濁した。
【0142】
セクレトームプロファイルを、SDS-PAGEによって同様に分析した(
図8B)。細胞内タンパク質分画とは異なり、分泌されたタンパク質プロファイルは単離株間で、組成だけではなく、定量的にも異なっていた。最も著しい違いは、株PF-11分泌挙動において観察された。実際には、同一のゲル中で全ての株のデータを示すために、PF-11株の回収されたセクレトームを8倍に希釈して、過剰ローディングを避けなければならない。その場合でさえも、
図8Bに示されるように、研究された他の株のセクレトームよりも有意により高濃度でありかつ複雑である。
【0143】
PF-11の8倍に希釈された試料を除いて、このゲルにロードされたタンパク質は、増殖静止期における同体積の培養上澄み液と一致する。シュードモナスPF-11がこのような高レベルの分泌タンパク質を産生するという事実が得られることにより、強力な分泌潜在力が明らかになり、そのセクレトームをさらなる特性評価のために選択した。株PF-11によって分泌されたタンパク質を収集し、増殖曲線に沿って視覚化し、増殖条件による変化を判定した。グルコースが添加されたM9最小培地の増殖曲線に従って培養物中の細胞が増加するために、予想通りに、培地に放出されたタンパク質が時間とともに有意に蓄積されたことを実証することが可能であった(
図8C)。バルク上澄み液のタンパク質分解活性を、スクリーニングされた全ての株について分析した。
【0144】
ろ過した上澄み液を、酵素活性を保持するために凍結乾燥し、水中に懸濁すると、未加工上澄み液の20倍の濃度に相当した。試験された全ての試料のうち、増殖の対数期または静止期のいずれかで収集されたPF-11セクレトームのみが、タンパク質分解活性を判定するためにカゼイン基質を分解することが可能であった(表1)。
【0145】
【0146】
表1.プチダ参考株および単離株によって静止期(STAT)にM9最小培地に分泌された全タンパク質のプロテアーゼ活性。データはまた、対数期(EXP)のPF-11細胞外プロテアーゼについても示す。ND:未検出。
【0147】
このスクリーニングにおいて、PF-11は、優れた分泌潜在力を有する株として明らかな振舞いをする。上澄み液への全体的な分泌タンパク質の蓄積が増殖曲線に沿って観察されたため、タンパク質分解活性の増加が、静止期に収集されたセクレトームに予想することができる。しかし、静止期に測定された全分泌タンパク質によって正規化されたタンパク質分解活性は、分泌タンパク質1mg当たりプロテアーゼ115μgであり、対数期と比較するとほぼ2倍の増加に相当し、したがってまた、増殖曲線とともに、分泌タンパク質のうちプロテアーゼが豊富であることが明らかになった(表1、
図9A)。
【0148】
静止期に収集された分泌プロテアーゼのタンパク質分解活性に最適な温度を15~45℃で測定し、35℃であることが実証された(
図9B)。活性を比較し、カゼインのタンパク質分解が試験された温度に応じて百分率でプロットした。P.プチダは平均で15~30℃の温度範囲で通常は生存する環境株であるため、その分泌タンパク質は広い温度範囲で活性を保持することができるであろうと期待することができる。
図9Bに示されるように、分泌プロテアーゼは、35℃の最適温度でのその活性を比較すると、15℃の低温度でそのタンパク質分解活性の30%を依然として保持する。
【0149】
その細胞機能が熱ショック状態で悪化するため、ほとんどの細胞プロテアーゼは約50~60℃の最適温度を有する(Angilletta et al.)。細胞外細菌プロテアーゼはまた、工業用途でプロテアーゼの製造および精製のために広く使用される、すなわちバチルス属種(Bacillus spp.)において同様の特徴を有することが示される(Watanabe et al.、Angilletta et al.)。一方、海洋微生物は、中国で単離される海洋細菌株によって産生されるメタロプロテイナーゼなどの、低温に適応した酵素を通常産生し、その酵素は30℃で最大活性を示す(0 et al.)。
【0150】
プロテアーゼの産業用途も、これらの酵素のターンオーバーが少ないことを必要とするであろう。これを評価するために、PF-11分泌タンパク質を37℃で一晩インキュベートし、タンパク質分解活性を測定すると、活性の低下は約25%であったことが実証された(
図9C)。さらに、いくつかの高分子量構成成分は、おそらく自己タンパク質融解のために低下したが、一晩インキュベートした後のセクレトームタンパク質のプロファイルはほとんど変化しなかった(
図9D)。
【0151】
対数期または静止期のいずれかでPF-11から回収された上澄み液は、カゼインに対して強力なタンパク質分解効果を示した。これは、このセクレトームの極めて特異的なタンパク質分解活性を明らかに示すにもかかわらず、単一基質のタンパク質分解のままである。広範囲の標的プロテアーゼ混合物としてのPF-11株セクレトームの効果を評価するために、全タンパク質を大腸菌株から抽出し、基質として使用した。対角線SDS-PAGEゲルを実施し、PF-11セクレトームによる、大腸菌タンパク質抽出物の最終的なタンパク質分解を可視化した(Nestler et al.)。
【0152】
大腸菌ATCC25922から収集した全タンパク質を、1次元SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、次いで、ゲルレーンをPF-11活性上澄み液と37℃で5時間インキュベートした。2次元の移動により、同様にサイズによって分子が分離され、大腸菌タンパク質抽出物のほぼ完全な分解が明らかに示された(
図10A)。不十分な分解フラグメントが依然として検出されるが、対照ゲルと対照的に、対角線移動パターンが明白に認められないことにより、PF-11セクレトームの強力で広範囲なタンパク質分解活性が確認された。このような結果より、これらはタンパク質の複合体溶液をほぼ完全に分解することができるため、これらの分泌プロテアーゼは防汚損剤として作用することができることが示唆される。
【0153】
PF-11セクレトームのin vitro効果
PF-11セクレトームの防汚損効果をin vitroで評価するために、2種類のアッセイを実施した。防汚損作用を、ガラスペトリ皿またはスライドに堆積した海洋細菌、微細藻類、海洋バイオフィルム、およびウニの付着性足跡によって代表される、マイクロ汚損とマクロ汚損の両方に対して試験した。
【0154】
海中に浸した材料が、微生物、主に細菌が接着するための場所となる。これらの細菌の多くが、有機デトリタスの破片が付着する粘着性材料を産生する。続いて、微細藻類が表面にコロニーを形成することもある。細菌およびその副産物はデトリタスと結合し、かつ微細藻類集団は「スライムフィルム」と通常呼ばれるものを構成する。このフィルムは、通常、汚損の最初の形態であり、水面下の表面に出現する。
【0155】
マリノバクター ハイドロカーボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)およびコベティア マリナは偏性海洋細菌であり、海洋付着物の主要な最初のコロニーとして常に記載される。これらの細菌は、海洋防汚損試験における指標として定期的に使用され、マクロ汚損またはより一般的にはスライムと呼ばれる生物汚損の初期層に対する化合物の防汚損能力を評価してきた。PF-11セクレトームは、コベティア マリナの増殖のコントロールに非常に効率的である。
図19に示されるデータは、いくつかの濃度のPF-11セクレトーム存在下での、海洋環境における最適な条件下でのコベティア マリナの増殖発展を表す。曲線により、8g/Lおよび4g/Lの低濃度のPF-11セクレトームで、コベティア マリナの強力な増殖阻害が明らかに示される。PF-11セクレトームはまた、増殖阻害試験において、470または234ppm(w/v)の低濃度で、いくつかの他の海洋細菌、たとえば、海洋生物汚損と通常関連するビブリオ属種(Vibrio spp.)の増殖を阻止する(
図20)。これらの株に加えて、PF-11セクレトームはとりわけ、グラム陰性菌とグラム陽性菌の両方の細菌、すなわち、大腸菌、ビブリオ アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ コレラエ、ビブリオ バルニフィカス、コベティア マリナ、マリノバクター ハイドロカーボノクラスティカス、黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス フェカーリス(Enterococcus faecalis)に対して効果的な抗微生物活性を与える。
【0156】
したがって、PF-11セクレトームは、一般的に細菌有機体の増殖コントロールに非常に効果的である。より具体的には、PF-11セクレトームは、生物汚損の初期層を形成する細菌に対して防汚損能力を有する。細菌自体の増殖コントロールに加えて、PF-11セクレトームはまた、海洋細菌バイオフィルムの形成、事実上、スライムのベース形成の阻止に効率的である。
図21に示されるデータにより、腸炎ビブリオおよびマリノバクター ハイドロカーボノクラスティカスのバイオフィルムの阻止に対するPF-11の効果が、500~2000ppmの範囲のPF-11セクレトーム濃度で達成したことが示される。
【0157】
図22で観察することができるように、海洋細菌とともに、PF-11セクレトームもまた、効果的な抗微細藻類活性を与えることができ、コナミドリムシ、ムレミカズキモ、およびテトラセルミス スエシカなどのいくつかの微細藻類種の増殖に影響を及ぼす。試験された最も感受性を示す種はコナミドリムシであり、最も耐性を示す種はムレミカズキモであった。
【0158】
上記に示すような単一細菌バイオフィルムの形成の阻止および単一微細藻類の増殖の阻止を上回って、PF-11は、再循環海水および安定化された海洋メソコスムを含む巨大水槽に8日間浸した滅菌ガラスペトリ皿に収集された海洋細菌藻類および微細藻類から実質的に構成される、既に形成された混合海洋バイオフィルムを効果的に破壊することが立証された。得られた汚損皿を洗浄し、海洋細菌および微細藻類によって主に構成されるマイクロ汚損材料を保持しているが接着していない材料を除去した。次いで、バイオフィルムを、PF-11上澄み液およびそれ自体の培養物さらにそれぞれの対照とインキュベートし、室温でインキュベートしてから18および40時間後にこれらの効果を評価した。アッセイされた分画のいずれかとインキュベートするときに、最初の洗浄に耐えた不完全に結合した材料を直ちに(18時間未満で)除去した。しかし、より強固に接着した海洋バイオフィルムの形成は、PF-11の上澄み液または細胞培養物を添加することによってのみ(18時間超で)除去することができた(
図11)。無脊椎動物汚損に関しては、P.プチダPF-11セクレトームのガラス上のウニ付着性足跡の除去で試験した。株PF-11の増殖から回収された培養物と上澄み液の両方が、ウニによってガラススライド上に残された付着性足跡を完全に破壊しかつ除去することが可能であった(
図12)。対照的に、別の細菌(環境単離P.プチダまたはKT2440株)由来の滅菌培地または材料のいずれかである、対照として使用された上澄み液または培養物はどれも、任意の防汚損作用を示さなかった。タンパク質、たとえばプロテアーゼの酵素活性はその天然3次元構造を維持することに依存するために、PF-11セクレトームの観察された防汚損作用における酵素活性の関連性を評価するため、沸騰された(100℃で15分)上澄み液を使用し、補充アッセイを平行して実施した(
図12)。この実験により、その酵素活性を維持している天然タンパク質は、ウニが分泌する付着物質を必要とすることが示された。したがって、加水分解酵素、たとえば既に検出されたプロテアーゼは、シュードモナスPF-11によって分泌された化合物へ防汚損能力を与えるために不可欠である。したがって、この環境単離株は、酵素活性を有する非常に重要な化合物の混合物を分泌し、その混合物はタンパク質を強力に分解し、細菌バイオフィルムの形成を破壊し、かつ海洋生体付着物質を除去することができる。
【0159】
実施例5
PF-11セクレトームの酵素活性
ここに記載される研究の目的は、PF-11およびいくつかの他の単離された株由来の分泌酵素のタンパク質分解活性を評価することであった。タンパク質またはエネルギー源枯渇培地へ添加された高分子量基質がある程度タンパク質分解された後のみ、株がそれを取り込み、成長のために使用することが可能であるだろうという考えに基づいた方法を確立した。
【0160】
材料および方法
細菌単離株
この研究の前に、71種類の環境株のコレクションを単離し、肉眼的に選択し、識別し、獲得した抗生物質耐性メカニズムを特徴付けた(Meireles 2013)。最終的に単離された選択物のうち、92%はシュードモナス プチダであった。これらのうちの1つであるPF-11は、高レベルでプロテアーゼを分泌することを示した。細胞外細菌プロテアーゼのさらに強力な産生物質を見出すことを目的に、全コレクションにここで記載されたスクリーニング手順を行った。
【0161】
試験された培地および補充物質
培地の形成に通常使用される異なるタンパク質分解性基質と関連する、または関連するスクリーニングと関連する、このジャンルに関する文献で参照された異なる培地を評価した。使用した培地は、M9-1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、NH4Cl 1g、100mM CaCl2 1ml、1M MgSO4 1ml、1%Vit B1 500μl、20%グルコース20mlが添加されている(Miller 1972)、M9-NH4Cl-Vit B1またはM9-N-1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl0.5g、100mM CaCl2 1ml、1M/MgSO4 1ml(Miller 1972)、M9-グルコースまたはM9-G-1L当たり、Na2HPO4 12.8g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、100mM CaCl2 1ml、1M MgSO4 1ml(Miller 1972)、シュードモナス属用最小培地またはMMP-1L当たり、K2HPO4 1g、KH2PO4 3g、NaCl 5g、MgSO4.7H2O 0.2g、FeCl3 3mg(Prijambada, Negoro et al. 1995)、およびNB-1%ペプトン、0.6%牛肉エキス、1%NaC(Gaby and Hadley 1957)であり、大部分は任意の補充物質用の陽性対照培地としてみなされた。試験された補充物質は、BSA 1%、ヘモグロビン1%、ゼラチン1%、脱脂乳2%、カゼイン1%、カザミノ酸1%であり、また試験された全ての培地の陽性対照としてみなされ、かつH2Oは陰性対照として使用された。
【0162】
細胞外プロテアーゼ検出のための最小培地および補充物質の試験
96ウエルのマイクロタイタープレートに、試験することを目的とした培地-補充物質の組合せ100μlを充填した。各単離株の単一コロニーを、Bacto-Mueller Hinton培地(Difco)に接種し、増殖させ、600nmでの吸光度を約1または2に到達させた。次いで、式C1V1=C2V2に従って、培養物をOD600nmが0.04になるようにM9培地塩のみで希釈し、10μlを各マイクロタイタープレートウエルへ分注した。そのプレートを35℃でさらにインキュベートした。検出を目的とする時点である18時間、26時間、72時間で、プレートを強く撹拌し、検出器で読み込んだ。増殖を、ブランク溶液と比較した試料のODによって検出した。この最初の試験で使用された株は、陰性対照株のPF-29単離株、陽性対照のPF-11単離株、参考株のP.プチダKT2440、および参考株の緑膿菌NTC27853であった。
【0163】
最小液体培地での増殖手順
96ウエルマイクロタイタープレートに選択された培地:M9-N+BSA、M9-G+BSA、M9-G+ゼラチン、MMP+BSA、およびMMP+ゼラチン100μlを充填した。各単離株の単一コロニーをグルコースが添加されたM9完全培地に接種し、約21時間増殖させた。次いで、培養物を1×M9塩のみで100倍に希釈し、この希釈物10μlを各マイクロタイタープレートウエルへ分注した。そのプレートを35℃でさらにインキュベートした。検出を目的とする時点である21時間および46時間で、プレートを強く撹拌し、検出器で読み込んだ。増殖を、試料のODからブランク溶液のODを差し引くことによって判定した。コレクション由来の全ての株を、再び、PF-29単離株を陰性対照として、かつPF-11単離株を陽性対照として使用した試験条件によって評価した。
【0164】
写真フィルムゼラチンのクリアランス(clearance)手順
各選択単離株の単一コロニーをBacto-LB(Difco)またはM9培地(0)へ接種し、一晩増殖させた。使用済み写真フィルムの断片を各試験管へ添加し、さらに室温でインキュベートした。フィルムを、インキュベートの、8分、12分、1時間、8時間、32時間、および2カ月(全ての写真フィルムゼラチン層が分解するのにかかった時間、すなわち、非接種培地対照)で培養物から取り出した。これらの時点で、フィルムを、再蒸留水を噴出して洗浄し、空気乾燥し、撮影した。
【0165】
細菌培養物からの上澄み液の調製
細菌単離株を選択し、個々のコロニーをグルコースが添加されたM9最小培地400mlに、35℃、120rpmで24時間接種した。培養物を10,000gで15分間遠心分離し、細菌を沈殿させ、上澄み液を、以前に記載のように(0)、0.2μmのDURAPORE低タンパク質結合フィルター(Millipore)を用い、ろ過装置を通してろ過した。回収されたろ液を-20℃で凍結し、-52℃で凍結乾燥し、20分の1に濃縮した。タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)(Bio-Rad)を使用したBradfordタンパク質アッセイによって判定した。
【0166】
タンパク質分解のin vitroアッセイ
Fluorescent Protease Assay Kit(Pierce)を使用し、製造業者の取扱説明書に従って、P.プチダセクレトームのタンパク質分解物質含量を評価した。手短に言うと、アッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって、試料中のプロテアーゼ量を評価するためのフルオレセイン標識基質(大部分のプロテアーゼの天然基質と類似しているカゼイン)の使用を伴う。プロテアーゼによって消化されるときの基質変化の蛍光特性により、タンパク質分解の測定可能な指標が得られる。蛍光測定を、標準フルオレセイン励起/発光フィルター(485/538nm)を備えたFluorolog-3(Horiba Jobin Yvon)を用い、0.5cmの石英キュベット光路中で行った。校正用に、トリプシンを標準として使用した。セクレトーム試料をTBS(25mM Tris、0.15M NaCl、pH7.2)で100倍に希釈した。全ての試料および標準を基質と、室温で20分間インキュベートした。タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)(Bio-Rad)を使用したBradfordタンパク質アッセイによって判定した。試料中のプロテアーゼの定量化を、トリプシン標準を用いた直線回帰によって計算し、次いで、アッセイで使用した総タンパク質量によって測定された活性で割って正規化した(μgプロテアーゼ/μgタンパク質)。
【0167】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質を、記載のように(Lamy, et al.2010;da Costa et al.2011)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%SDS-PAGE)によって、手短に言うと、ミニゲルフォーマット(7×7cm Tetra system Bio-Rad製)中で分離した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準として使用したBradfordタンパク質アッセイによって判定した。試料を、還元緩衝液(62.5mM Tris-HCl、pH6.8、20%(v/v)グリセロール、2%(w/v)SDS、5%(v/v)b-メルカプトエタノール)で6倍に希釈した。電気泳動の前に、試料を100℃で5分間加熱した。タンパク質バンドをCoomassie Brilliant Blue R-250で染色した。
【0168】
プロテアーゼ検出用のザイモグラム
カゼインおよびゼラチンザイモグラムを、以前に記載のように(Oldak and Trafny 2005)行った。手短に言うと、12%SDS-ポリアクリルアミドゲル(Laemmli 1970)を1%カゼインまたはゼラチンと4℃で共重合させた。非還元ローディング緩衝液(62.5mM Tris、2%SDS、10%グリセロール、0.001%ブロモフェノールブルー)をセクレトーム試料へ添加してから、ローディングした。電気泳動を、ブロモフェノール染料がゲルの底部に達するまで、100V、4℃で実施した。電気泳動後、SDSを除去するために、ゲルを2.5%(v/v)Triton X-100、30分でそれぞれ2回すすぎ、その後、脱イオン水、5分でそれぞれ5回洗浄した。次いで、酵素の再生、それに続くタンパク質分解活性のために、ゲルを活性緩衝液(0.1M Tris-HCl、0.01M CaCl2、pH8)中、37℃でインキュベートした。ゲルを、脱イオン水、5分でそれぞれ3回洗浄してから、Coomassie Brilliant Blue R-250中で1時間インキュベートした。画像を、ImageQuant LAS 500、GE Healthcare Life Sciencesによって得た。プロテアーゼ活性は青色背景上に明瞭なバンドとして認識できた。画像を、ImageQuant LAS 500, GE Healthcare Life Sciencesによって得た。Bertolini and Rohovec(Bertolini and Rohovec 1992)に記載のように、フェニルメチルスルホニルフッ化物(PMSF)およびEDTAによるプロテアーゼの阻害を判定した。
【0169】
結果
本目標は、PF-11およびいくつかの他の単離された株由来の分泌酵素のタンパク質分解活性を評価し、かつ比較することであった。その目的のために、3種類の基本培地:シュードモナス科用M9最小培地(Miller 1972)、1つ目とわずかな違いのみを有する(Prijambada, Negoro et al. 1995)に記載のシュードモナス科用に作製された最小培地、および緑膿菌を識別すると定義されている冨栄養培地である普通ブロスを選択し、1つ目の培地に、M9-Nと呼ばれる窒素源(アンモニウムおよびチアミン)の除去またはM9-Gと命名される糖/エネルギー源(グルコース)の除去のいずれかをさらに適用した(材料および方法を参照のこと)。これらの基質は細胞増殖のために取り込まれかつ使用されるための分解を必要としないため、それらが細胞外プロテアーゼを産生してもしなくても、カザミノ酸または脱脂乳が添加された任意の他の試験培地のように(データは示されていない)、冨栄養培地としてのNBは、全ての株を、独立して、乱雑に増殖を可能にするべきでありかつ可能にした(
図13A~B)。他の全ての培地は、成長を制限する条件を目的に設定されており、培養物が増殖し、光学密度測定値を記録するために、添加された基質が分解されることは必須であるだろう。歴史上の理由で、タンパク質分解物質を測定する方法として、脱脂乳、カゼイン、およびカザミノ酸(全ての株の増殖のための陽性対照として)を補充物質として使用したが、いくつかの生物学的アプローチおよびプロテアーゼ産生評価で既に記載され、切断される前に細胞内への取込みが行われるべきではない全てのタンパク質である、他のタンパク質、たとえば、BSA、ヘモグロビン、およびゼラチンも使用した(材料および方法を参照のこと)。H
2Oを、基質の代わりに陰性対照として使用した。
【0170】
培地および補充物質を入れ替えて、非株である陰性対照としてのPF-29および陽性対照としてのPF-11に対して、最終的にはP.プチダKT2440および緑膿菌参考株に対して評価し、これらは未知の試料の条件下で評価されたが、緑膿菌はいくつかの活性化合物の強力な分泌体として記載されたため、陽性応答を有することが期待される。
【0171】
総培地クリアランスは、ヘモグロビンおよびカゼイン溶解によって行うことはできなかった。そのスペクトル経路に光を保持し、それ自体の光学的吸収を示すと同時に、これらは株の増殖を妨げ、したがって、タンパク質補充物質としてのそれらの使用は阻止される(データは示されていない)。試験された選択肢の残りについては、最初の条件が行われ、結果が分析された。培地-タンパク質補充物質のいくつかの組合せであるM9-G+BSA、M9-G+ゼラチン、M9-N+ゼラチン、PPM+BSA、およびPPM+ゼラチンが、プロテアーゼ生成株の選択のために計画された基準を満たした(
図14A-F)。興味深いことに、M9-NおよびM9-Gのそれぞれにおけるゼラチンに対して認められたように、いくつかの補充物質が非特異的増殖を所与の培地にもたらしたと同時に、他のものとの完全な識別力を有していた(
図14CおよびD)。
【0172】
緑膿菌NTC27853およびシュードモナス プチダKT2440の2種類の参考株、ならびに陰性対照として環境単離株PF-29を選択し、PF-11のセクレトーム活性をさらに特徴付けた。
【0173】
バルク上澄み液のタンパク質分解物質含量を、全ての株に対してフルオレセイン崩壊によって分析した。PF-11分泌タンパク質のみが、タンパク質分解物質含量を判定するために蛍光カゼイン基質を分解することが可能であった。全分泌タンパク質によって正規化されたプロテアーゼ濃度は、PF-11に関しては100μg/mgである。PF-11株は、他の株よりも明らかに高いタンパク質分解物質含量を示した。細胞外プロテアーセ産生に関する陰性対照として、既に試験され、かつ細胞外タンパク質分解活性を示さないことが既知であるPF-29株を使用した。
【0174】
PF-11のタンパク質分解活性を、参考株のシュードモナス プチダKT2440、陰性対照として既に識別された単離株のPF-29、ならびに潜在的なプロテアーゼ産生物質として既に識別された単離株PF-9およびPF-22と比較した。そのため、細菌増殖培地をインキュベートした後に、写真フィルムの表面ゼラチン層の分解を視覚的に検査することによって最初の分析を実施した。PF-11細菌ブロスは優れたタンパク質分解活性を示し、表面の迅速な洗浄によって明らかになった(
図15)。
【0175】
分子的手法に関しては、エロモナス サルモニシダ(Aer. salmonicida)を含むさまざまな有機体のプロテアーゼを研究するための、精度が高くかつ信頼性のある方法であるザイモグラフィーによって株のタンパク質分解活性を分析し(Arnesen et al. 1995;Gudmundsdo' ttir et al. 2003)、スクリーニング手順として使用するためのもう1つの方法をさらに評価した。これらのSDS PAGEタンパク質プロファイルによって認めることができるように、試験された全ての株がタンパク質を分泌することが実証された(
図16A)。ゼラチン共重合SDS PAGEで得られたザイモグラムにより、試験された株の間で異なるバンドパターンを識別することが可能になった(
図16B)。評価された株のうち、PF-11と比べると、緑膿菌NTC27853のみが1つのタンパク質分解活性バンドを示した。タンパク質分解物含量のin vitro判定で観察されたように、株PF-11は、高いタンパク質分解物活性に相当するより強いバンドを示した。
【0176】
SDS PAGEタンパク質プロファイルは10~100kDaにタンパク質バンドを示し、より強いバンドは高分子量領域には無かった。しかし、ザイモグラムは高分子量領域にタンパク質分解活性を示すのみであった。この事実は、ザイモグラム研究で必要とされる低い変性条件において解離しないいくつかのタンパク質-タンパク質複合体によるものであり得る(Snoek-van Beurden and Von den Hoff 2005)。細胞外プロテアーゼ産生物質に存在するプロテアーゼの種類の更なる評価を、PMSFによるセリンプロテアーゼのおよびEDTAによるメタロプロテアーゼの選択的阻害によって実施した。PF-11およびNTCを10mM EDTAで処理したとき、未処理の対照レベルと比較して、これらのタンパク質分解活性は強く阻害されるが、10mM PMSFは有意に低い阻害効果を示した(
図17AおよびB)。したがって、これらのセクレトームの約10%のプロテアーゼ活性はセリンプロテアーゼによるものであるが、約50%はメタロプロテアーゼによるものである。
【0177】
実施例6
PF-11セクレトームの殺真菌効果
材料および方法
MIC(最小阻止濃度)を、CLSI標準(Clinical and Laboratory Standards Institute)M27-A3(酵素のブロス希釈抗真菌剤感受性試験のための参考方法;CLSI)およびM38-A(糸状菌のブロス希釈抗真菌剤感受性試験のための参考方法;CLSI)に従って判定した。使用した糸状菌は、黒麹菌(Aspergillus niger)、ボトリティス シネレア(Botrytis cinerea)、多犯性植物炭疽病菌(Colletotrichum acutatum)、多犯性炭疽病菌(Colletotrichum gloeosporioides)、およびフサリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)であった。黒麹菌は、真菌であり、アスペルギルス(Aspergillus)属の最も一般的な種である。これは、特定の果実や野菜、たとえば、ブドウ、アンズ、タマネギ、およびピーナッツにクロカビと呼ばれる疾患を引き起こし、かつ食品の一般的な汚染菌である。ボトリティス シネレアは、多くの植物種に影響を与える死体栄養性真菌であるが、最も有名な宿主はワイン用ブドウであり得る。ブドウ栽培において、これはボトリティス房腐敗病(botrytis bunch rot)と呼ばれ、園芸において、通常、色カビ(grey mould or gray mold)と呼ばれる。真菌はブドウに対して異なる2種類の感染症をもたらす。多犯性植物炭疽病菌は植物病原体である。これは、世界的に最も有害なルピン(lupin)種の真菌疾患である炭疽病をもたらす有機体である。フサリウム オキシスポラムの病原株は、非常に広範囲の宿主を有し、宿主としては、節足動物からヒトまでの範囲の動物、ならびに裸子植物と被子植物との両方の範囲を含む植物がある。
【0178】
使用した酵母は、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ グラブラータ(Candida glabrata)であった。カンジダ アルビカンスは、酵母と糸状細胞の両方として成長する2倍対真菌であり、ヒトにおける口腔日和見および生殖器感染症、ならびに爪甲感染症であるカンジダ性爪囲炎の原因となる病原体である。全身性の真菌感染症(真菌血症)としては、免疫易感染性(たとえば、AIDS、がん化学療法、臓器または骨髄移植)患者の罹患率および死亡率の重大な原因として発生するカンジダ アルビカンスによるものがある。
【0179】
結果
PF-11セクレトームは、酵母および糸状菌に対して抗真菌活性を示した(表2)。これらの結果より、PF-11セクレトームは、その組成に真菌に対して効果的な1種以上の活性剤を含み、殺真菌剤としての他の全ての適切な用途のうち、ヒト健康と食用植物の両方のために使用することができることが示される。
【0180】
【0181】
表2.PF-11セクレトームは、酵母および糸状菌に対して抗真菌活性を示した。
【0182】
実施例7
PF-11セクレトームの殺幼虫/殺昆虫効果
材料および方法
幼虫
3齢後半および/または4齢前半の蚊であるキュレックス タイレリ(Culex theileri)、アノフェレス アトロパルブスおよびアノフェレス ガンビエ(Anopheles gambiae)の幼虫を使用した。蚊のコロニーを、アッセイに十分な数の幼虫を産生する有効な数の蚊を得るためにブーストした。
【0183】
バイオアッセイ
用量を、0%と100%の両方の死亡率を組み込むために連続的に希釈することによって計画した。アッセイは、食料を与えずに、25~27℃、12時間点灯:12時間消灯の光周期で条件をコントロールした昆虫飼育室管理で、1濃度当たり脱ミネラル水250ml中の幼虫25匹で実施した。幼虫の死亡率を24時間後に記録した。脱ミネラル水のみを陰性対照として使用した。アッセイをWHO国際ガイドラインに従って実施し、殺蚊幼虫剤を評価した。
【0184】
結果
PF-11セクレトームは、殺傷することまたはその発生を阻止することによって昆虫の増殖をコントロールするための能力を示すために、化学/生体化合物としてのその使用を介して殺昆虫剤用途に使用することができる。飛び回る成虫へ変態する前のその水中発生期の間に蚊の幼虫を殺傷することによって、PF-11セクレトームの低濃度での殺昆虫活性を観察した。PF-11セクレトームは、3.9g/Lの濃度で24時間後に100%の幼虫死亡率を示す。
【0185】
実施例8
PF-11セクレトームの抗海洋カイアシ効果
材料および方法
アッセイは、ブランク対照と比較した幼虫およびコペポジドの生存率を評価するために、フナムシ(サケジラミ(Lepeophtheirus salmonis))の幼虫およびコペポジドをPF-11セクレトームとインキュベートすることからなっていた。70ppmで40分以内に幼虫を殺傷することが既知である次亜リン酸ナトリウム(NaOCl)を陽性対照として使用した。
【0186】
幼虫
幼虫を、サケフナムシをベンゾカインで鎮静させ、卵の糸(egg strings)をピンセットで摘出し、インキュベーターに設置された水槽へ糸を移すことによって得た。インキュベーター内では、インキュベーション期間にわたって水を連続的に交換した。幼虫が発生したときに、それをインキュベーターから取り出し、バイオアッセイで使用した。
【0187】
コペポジド
幼虫に関する記載のように、コペポジドを、フナムシ由来の卵の糸から発生させた。
【0188】
バイオアッセイ
シラミ幼虫およびコペポジドを含む海水をペトリ皿に入れ、PF-11セクレトームを添加し、最終的な仮濃度(pretended concentration)とした。化合物が添加されていない海水中の幼虫およびコペポジドをまた、比較のために使用した。陽性対照は70ppmのNaOClであった。幼虫およびコペポジドの生存率を経時的にチェックした。幼虫の生存率の評価を実施し、ブランク対照の生存率と比較した。純海水対照および培地ブランク対照の生存率をモニターし、比較すると、実験中は同じままであった。
【0189】
結果
使用された濃度範囲において、PF-11セクレトームはフナムシ幼虫(
図24)およびコペポジド(
図25)に対して70ppmの陽性対照であるNaOClよりも実質的に高い活性を示し、NaOClが100%の効果を得るために必要とする時間である20分前に幼虫およびコペポジドを100%殺傷した。これらの結果より、PF11セクレトームはフナムシに対して効果的であり、したがって、抗寄生虫活性を示すことが示される。
【0190】
考察
抗微生物剤耐性
今日使用されているほぼ全ての抗生物質に対する抗微生物剤耐性の出現によって、細菌感染症に対する有効な治療法が直ぐに利用できない状況が急速にもたらされている。医学的に使用される任意の新たに導入された抗生物質は、その効果を阻害する細菌耐性の検出によって1年以内に克服されてきた。したがって、新規の抗微生物化合物の模索は、細菌における新規の耐性メカニズムを促進しない有効な抗生物質を見出す、または既に存在する耐性プロセスを選択する必要性を組み入れなくてはならない。
【0191】
活性生体化合物の環境バイオプロスペクションは、細菌増殖をコントロールする場合に、このような新規の天然ツールの開発のための魅力的な戦略である。環境微生物は常に周囲の変化という圧力下にあり、それにより高耐性菌細胞の有効な選択が引き起こされる。環境微生物は常に変化する周囲の圧力下にあり、それにより高耐性細菌細胞の有効な選択が生じ、多くの分子応答を有し、外部の変化に耐え、栄養物に関して隣接する微生物と競争しなくてはならない。細菌は、軟百万年にもわたってその競合相手を圧倒してきた発展ツールであり、隣接する微生物の増殖を阻害することによって、またはさらにそれを破壊することによって、それ自体の生存および栄養への接近を確実にしてきた。細菌は、細胞外分子の天然産生物質であり、ほとんどの多様な地域で(抗生物質産生、生化学的方法、食品産業などの)用途に使用され成功してきた(Wilhelm et al.、Wu and Chen et al.、Liu and Li 2011、Pontes et al.)。
【0192】
抗微生物ペプチド(AMP)は、細胞膜を急速に破壊するため、感染症をコントロールするための優れた候補であり、グラム陽性種およびグラム陰性種に対して広域スペクトル活性を与える。注目すべきことに、AMPは自然に広く分布し、細菌が何百万年もの間これらの分子に曝露されてきたが、広範囲におよぶ耐性は報告されてこなかった(Fjell et al. 2011)。古典的な抗生物質に対する微生物耐性が増加すると、細菌感染症の今後の治療のための有効な代替物としてAMPの使用が際立つ。AMPは全ての生物種によって産生され、先天性免疫システムの重要な構成要素を表し、細菌、真菌、および酵母を含む侵入病原体に対して即効性のある武器を与える(Boman, 1995;Hancock et al., 2006;Selsted and Ouellette, 2005;Zasloff, 2002)。AMPは、膜を急速に浸透、透過、および破壊することができ(Ludtke et al., 1996;Pouny et al., 1992;Shai, 2002)、従来の抗生物質とは対照的に不可逆的な細胞障害を引き起こし、抗生物質との交叉耐性を有さず(Vooturi et al.)、その作用が不可逆性であることが微生物耐性出現の確立を低下させる(Zasloff, 2002)。真核生物のAMPは、一般的に、広いスペクトルの抗微生物剤であるが、ほとんどが細菌と真核生物細胞の両方に対して毒性があり、これらを直接使用する価値はない(Asthana 2004)。一般的に、ペプチドまたは効率のために必要な高濃度で生じるその凝集体のタンパク質分解に起因して、真核生物のAMPの高い細胞毒性および低バイオアベイラビリティにより、これまでのところ臨床適用を妨げられていた(Giuliani 2008)。対照的に、細菌によって産生されるAMP、たとえばリポペプチドまたはペプチド脂質は、選択的であり、動物に対して低毒性を示す(Parisien 2008)。リポペプチドは細菌および真菌のみで産生され、かつ強力な抗微生物活性ならびに界面活性特性を有する。それにもかかわらず、天然リポペプチドは非細胞選択的であり、したがって、哺乳動物細胞に対して毒性があり得る。これにも関わらず、このファミリーのメンバーであるダプトマイシンは、グラム陽性細菌に対してのみ活性があり、Food and Drug Administration(FDA)により、最近になってから複雑皮膚感染症の治療に対して承認された(Department of Health and Human Services, 2003)。ペプチド脂質はまた、植物病原体を破壊または除去するその能力のために研究中である。その界面活性特性を利用して、細菌が表面から接着することおよび/または脱着すること、細菌バイオフィルムの発生および維持(O'Toole et al., 2000)、ならびに細菌の運動性、細胞コミュニケーション、および栄養への接近(Al-Tahhan et al., 2000;Garcia-Junco et al., 2001)のいずれかを刺激することができる。細菌起源由来のAMPが研究され、用途に関してある程度成功してきたが、これらのアプローチを移す大部分の試みは真核生物のAMPに集中している。しかし、AMRおよびその大部分が未発見の亜種のプロセスに対して環境細菌が有する効果により、新規の抗微生物剤を研究する絶好の機会がもたらされる。
【0193】
例3では、抗生物質に対する耐性を介し従来の研究を通じて収集され(Meireles 2013)、強力な適応能力を有する環境シュードモナス プチダ株の異種コレクションを使用して、微生物学的増殖コントロールに対する分泌天然化合物の潜在力をスクリーニングした。さまざまな温度および条件でより安定な化合物をもたらすはずである分泌分子、特に、隣接する競争相手に影響を与えるために天然で使用される分子に重点を置き、産生細菌の生存によって得られる効率を実証した。シュードモナス属種は環境中に蔓延し、かつ高度に汚染された地域で生存し続ける(Madigan et al.)。さらに、これらにより、活発に分泌する分子が、集団感知コミュニケーションにおけるホモセリンラクトンンオートインデューサー(Roy et al.)、ピオベルジンまたはピオシアニンなどの別の種類のヘモジデリン貪食細胞(Nestler et al.)、細胞外プロテアーゼを含む、エキソポリサッカライドおよびいくつかの別の酵素(Wilhelm et al.)などの細菌コミュニケーションと関連することが示された。
【0194】
環境P.プチダ単離株のコレクションを使用し、抗微生物化合物分泌をスクリーニングした。1組で7種類のP.プチダ参考株のセクレトームを使用し、その抗微生物活性を判定した。いくつかのセクレトームは細菌増殖阻害に対して潜在力を示したが、株PF-11によって分泌された化合物は他の細菌の増殖阻止に驚くべきかつ優れた効果を示した(
図1A~C)。しかし、P.プチダの近縁ジャンルであり、また広く遍在しかつその適応力は既知である、緑膿菌の増殖の阻害は示さなかった。対照的に、大腸菌および黄色ブドウ球菌の強力な増殖が判定され、グラム陰性株と陽性株の両方に効果を示した。ジャンルの代表として使用されたこれらの参考株により、対照病原性大腸菌および黄色ブドウ球菌株に対して感受性を示す化合物を含むPF-11セクレトームの強力な潜在力が示された。単離株、およびKT2440を含む他のP.プチダ株もまた、大きく低下させた(
図2)。
【0195】
驚くべきことに、それ自体の増殖に対して試験すると、PF-11セクレトームは増殖刺激物質として作用し、特異的な株内コミュニケーション(intra-strain communication)でその株の複製を刺激する特異的な化合物の存在を示した。P.プチダ株またはさらに緑膿菌のどちらもこのような挙動を示さず、株PF-11の唯一性が強調された。この細菌は、競合相手を強く阻害するためのツールおよびその同胞種の複製に過度な刺激を与えるための利点を有する、成功した環境残存種の特徴を明らかに示す。
【0196】
分子サイズ排除によってPF-11セクレトームを分離すると、ペプチドおよび低分子(10kDaより低いサイズ)を含む分画と、高分子(酵素などを含むタンパク質など)を含む他の分画とが得られた。
図3のデータにより、どちらの分画にも緑膿菌増殖の低下がなく、同時に大腸菌およびP.プチダはタンパク質分画によって実質的に阻害されることが確認された。ペプチド分画は強力な抗ブドウ球菌効果を明らかに有するが、黄色ブドウ球菌は分画のうちのいずれかによって強く阻害される。これらの結果より、PF-11セクレトームの抗微生物特性にもかかわらず、それは異なる化合物または分子によって支持され、かつ明らかに異なる細菌に影響を与えることが示される。したがって、このセクレトームは異なる要素の混合物を別の組合せで、または場合によってはそれ自体によって均質に含み、細菌増殖を阻害し、かつ別の細菌ジャンルを標的にすることができる。したがって、株PF-11によって分泌された化合物は、抗微生物用途に広い潜在力を示し、多様な用途に関して興味深いいくつかの分子の存在が示唆された。
【0197】
組成に関するPF-11セクレトームの一般的な特性評価によって、傑出した濃度のペプチドの存在(
図4)、界面活性剤分子、最終的にはリポペプチド(
図5)、および分解酵素(
図6)の存在が示された。これらのあらゆる種類の化合物が細菌により、P.プチダKT2440に対して明白で顕著な挙動で、大量に分泌され、かつ潜在的な抗微生物化合物に関してこのセクレトームの豊かさが確認された。
【0198】
今後の用途のめの道筋を明白にするために、株PF-11のセクレトームを収集し、化合物の生物活性を維持するために凍結乾燥によって濃縮した。大腸菌および黄色ブドウ球菌で既に得られた結果は有効であり、病原株である大腸菌O157およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌ATCC33591に対する効果が確立された。抗微生物化合物がこのセクレトームの別に試験された分画で見いだされるが、そのペプチド分画は別の細菌に高い抗微生物効果を有する分子、おそらく抗微生物ペプチドを含み、最終的には界面活性剤活性を有する。
【0199】
防汚損
海洋環境において、マクロ汚損のこのような初期段階の後に、固定された、海草、フジツボ、および他の海洋無脊椎動物からなるマクロ汚損の相が最終的に生じ、浸された人工構造体、たとえば、船体、水産業用網、海水取込管、また沖合プラットフォームに機能的および維持的問題をもたらす(Railkin et al.)。船体のマクロ汚損は摩擦抵抗を増加させ、それ自体によって輸送時の燃料消費が21%増加する原因となると同時に、マクロ汚損の影響が86%に近いエネルギー損失をもたらす(Schultz et al.)。
【0200】
世界貿易の約90%が海路による国際輸送をベースとしている(International Chamber of Shipping)。国際海上輸送のコストに対する海洋生物汚損の財務的影響は大きく、防汚損技術における研究が指数関数的に必要となってきており、地球環境の枠内で1年あたり40億米ドルと推定される(Dafforn et al.)。海上交通が始まってから、この産業の競争力に対する生物汚損のこのような大きな影響が、防汚損溶液の開発および実施を導いてきた。船舶体の被覆剤は、腐食を減少させかつ生物汚損を阻止することを目的とする。
【0201】
毒性化合物、たとえば銅およびトリブチルスズをこの方法で使用される塗料に添加し、海周辺に連続的に放出することによって生物汚損の形成が達成されることを阻止してきた(Yebra et al.)。しかし、このような物質、特にトリブチルスズを広範囲に使用することにより、それが環境中に蓄積され、その非特異性のために世界的な関心が生じ、海洋コミュニティーに毒性がもたらされた(Thomas et al.)。結果的に、International Maritime Organisationが、2003年からトリブチルスズ系塗料の使用を禁止したことにより、効率的な防汚損問題の解決策がなくなった(International Maritime Organisation, London)。銅系塗料は依然として使用され続け、かつ新規の非毒性シリコーン系被覆が開発および実施されてきたが、これらの使用は強く規制され、さらにその利用は減少している(Townsin et al.)。したがって、新規のかつ天然の防汚損化合物の研究が発展し、非毒性を満たす最も期待されるアプローチおよび生物学的増殖をコントロールするための効率的な方法論が残されるが、問題解決は商業的に実行されておらず、まだ達成されていないことが理解できる(Dafforn et al.)。
【0202】
したがって、研究が進められ、環境に毒性影響を及ぼすことがなく、これらの付着構造体の形成を阻止または破壊することが可能な酵素が識別されてきた(Leroy et al.、Pettitt et al.)。細菌から下等真核生物までの生物種によって使用される接着剤または分子の中心は、実質的にタンパク質であるため、生物汚損に影響を及ぼす潜在力を有する分解または抗増殖化合物のうち、プロテアーゼの分解酵素活性は有望な道筋として提唱されてきた(Rawlings et al.)。プロテアーゼ混合物により、アオサ属(Ulva zoospores)、タテジマフジツボ(Balanus amphitrite)のシプリド幼虫、およびフサコケムシ(Bugula neritina)の定着が阻害されることが示され(Pettitt et al.、Dobretsov et al.)、かつこのような活性は付着効果の減少、おそらくペプチド系接着化合物の分解によるものであることが確認された(Aldred et al.)。さらに、このような酵素を水性塗料へ組み込んだ場合の、プロテアーゼと関連する防汚損効果が確立された(Dobretsov et al.)。さらに、シュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)のバイオフィルム形成で観察されるように、タンパク質はバイオフィルムマトリックスの重要な部分を構成し、プロテアーゼはこれらの構造の破壊に効率的であり得る(Leroy et al.)。
【0203】
活性生体化合物の環境バイオプロスペクションは、新規のバイオテクノロジーツールの発展のための魅力的な戦略である。細菌は、最も多様な領域(抗生物質産生、生化学的方法、食品産業など)における用途に使用され成功してきた細胞外分子の天然産生物質である(Wilhelm et al.、Pontes et al.)。環境腸内細菌科、特にシュードモナス科が、細胞外プロテアーゼを周囲培地へ分泌することは既知である。これらの分泌されたプロテアーゼは、感染戦略の一因となる、緑膿菌によって産生されるアルカリプロテアーゼやエラスターゼなどの毒性因子である場合があるが(Liu 1974)、セラチア属種(Serratia sp.)株E-15によって産生されるメタロプロテアーゼなどの抗炎症剤としても使用されてきた(Nakahama et al.)。ヒトおよび魚の日和見病原体であるエロモナス ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)は、温度安定性メタロプロテアーゼおよび温度非安定性セリンプロテアーゼの2つの異なる種類の細胞外プロテアーゼを産生することが見出された(Leung et al.)。
【0204】
環境株は、特に土壌表面または川岸付近に定住する場合、不安定周囲の影響下に常にある。とりわけ、温度、湿度、光または栄養の有無の規則的な日変動は、これらの細菌の選択の圧力を強化する傾向があり、それは人為的要因を考慮するときに増加する傾向がある。後者は、異なる種類(化学物質、殺虫剤、糞便で汚染された汚水など)の徐々に進行する継続的な汚染から急な産業有毒物の廃棄まで変わり得る。これらの全ての因子により、細菌細胞に特化された高度な耐性が能動的に選択され、同時に細菌は多くの応答を保有し、このような多種多様な外部圧力に抵抗しなければならない。このような厳しい条件は、隣接する微生物に対して高度に競合するだけではなく、外部条件の変化に抵抗するときに、別の起源由来のかつ別の分解メカニズムを介して栄養物を獲得することに高度に成功した環境株に反映され、生存のための静かな戦争において確実な兵器の使用をもたらす。これらのプロセルに関与するメカニズムおよび産生された分子は、何十億年物進化の結果であり、現実の状況で直接試験され、キャリア種の生存によってその効率が証明される。したがって、このようなコミュニティーは分子をスクリーニングするための優れた保有体となり、有機体の生物コントロールする用途に使用される。
【0205】
土壌中で最も認められるシュードモナス科であるシュードモナス プチダは、腐生微生物であり、腐敗物質の化学合成従属栄養性(chemoheterotrophic)の細胞外消化が可能である。最もよく適合した環境細菌のうちの1つである、P.プチダは適応能力が遺伝的に封入された兵器を有し、周囲の栄養を能動的に捕獲するだけではなく、毒性または抗増殖化合物の分泌を介してその成長に影響を与えることによって他の競争相手である細菌や真菌をコントロールすることを可能にする(Gjermansen et al.、Tsuru et al.)。
【0206】
例4において、防汚損剤としてのバイオテクノロジー用途と関連する細胞外化合物を産生することが可能であり、自然に産生され、かつ環境コミュニティーに対して非毒性である、環境シュードモナス株を検出するための選択が行われた。シュードモナス種株は環境中に蔓延し、かつ高度に汚染された地域で生存し続ける(Madigan et al.)。さらに、これらにより、活発に分泌する分子が、集団感知と関連するホモセリンラクトンオートインデューサー(Charlton et al.、Huang et al.)、ピオベルジンまたはピオシアニンなどの別の種類のヘモジデリン貪食細胞(Meyer et al.)、細胞外プロテアーゼを含む、エキソポリサッカライドおよびいくつかの別の酵素(Liu 1974)などの細胞コミュニケーションと関連することが示された。バイオテクノロジー用途を考慮するときに、分泌された生体分子を収集する可能性はいくつかの興味深い利点を示す。分析的な特性評価および使用に必要なその大量の回収が促進されるだけなく、通常、環境中に分泌される実在分子は、原理上、より安定なはずであり、したがって、自然発生分解に対して細胞内分子よりもより耐性を示す。
【0207】
試験された株のうち、シュードモナスPF-11は例外的なプロテアーゼ分泌株として確立され、プロテアーゼまたはよりおそらくはプロテアーゼ混合物を生成し、カゼイン、全大腸菌タンパク質抽出物、およびウニによって分泌された付着物質を分解することが可能である。さらに、検出された活性は広い温度間隔において依然としてほぼ安定であり、非常に低い交代率を示した。このタンパク質分解活性は、PF-11細胞培養物の上澄み中の分泌プロテアーゼの存在に依存する。上述のように、プロテアーゼは防汚損被覆剤用途の優れた酵素候補物質として一貫してみなされてきた。
【0208】
さらに、この株によって産生された上澄み混合物とそれ自体によるバルク培養物の両方が、海洋バイオフィルムおよびガラス基質へ付着したウニ付着性足跡を破壊することができた。大部分は、自然に構造化されたタンパク質の分解は任意の破壊を無効にするのに十分であるために、これらの効果は、使用した溶液中のプロテアーゼの存在に起因し得る。実際、ウニ、または海洋バイオフィルムに存在する多様な微生物の付着メカニズムのいずれかのタンパク質系付着構造は、タンパク質分解に対する理想的な標的を構成し、続いて汚損が破壊する。しかし、他の調節要素がこの分泌された混合物および組合せを組み込んで、付着完全性に対してこのように強く影響することに寄与する。シュードモナスPF-11のセクレトームは、極めて関連性がある潜在的な防汚損化合物の豊富なかつ複雑な混合物を構成するように思われる。
【0209】
環境から単離されたシュードモナス株PF-11は、プロテアーゼ、およびおそらくマイクロおよびマクロ汚損事象の両方に対する強力な防汚損効果を高める他の化合物の濃縮混合物を分泌することが可能である。生物汚損の除去を伴う能動的なプレーヤー(active player)を判定するために、この分泌された混合物の防汚損成分の特性評価が必要とされ、この研究の論理的な進行が継続している。その認知された潜在力は検出されたタンパク質分解活性をはるかに超える。この方法を伴う分子の識別は、生物汚損のメカニズムにより光を当てるだけではなく、いくつかの生物汚損による危険に対する、特に海洋生物汚損除去戦略における解決策の一部となり得る、環境に優しい新規の1組の生体活性分子とともに確実に貢献するであろう。
【0210】
プロテアーゼ
プロテアーゼは、他のタンパク質またはオリゴペプチドのタンパク質分解を行う酵素であり、逐次的なアミノ酸間のペプチド結合を加水分解する。求核的攻撃は、エンドペプチダーゼによってペプチド鎖内の特定のアミノ酸と関連して生じてもよく、またはエクソペプチダーゼによってタンパク質の先端で不特定のアミノ酸と関連して生じることができる。したがって、基質は、短鎖またはオリゴペプチドのいずれかへ部分的に分解されるか、または完全なままで、そのアミノ酸の構成ブロックを放出する(Barrett 2001)。これらの生物触媒は、酸性、中性、またはアルカリ性として定義され、その活性を発揮するpH範囲と一致する(Gupta, Beg et al. 2002)。触媒、基質特異性、さらにタンパク質低分子阻害のそのメカニズムに従って、プロテアーゼはまた、アスパラギンペプチドリアーゼ、またはアスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびメタロ、もしくは未知の触媒型ペプチダーゼとして分類することができる(Rawlings, Barrett et al. 2012)。これまでのところ、全てのうちで最も研究されたものは、細胞外細菌プロテアーゼであり、その中ではセリンおよびメタロプロテアーゼである(Wu et al.)。
【0211】
生物学的触媒に対する世界的需要は、2013年に70億ドルに達することが予想される。プロテアーゼは、現在は、工業用酵素の主要なグループの1つを表し、かつ洗浄剤に安定ないくつかのプロテアーゼが単離され、その広範囲にわたる使用のために特徴付けられてきた(GCI 2009)。細胞外細菌プロテアーゼ(EBP)は、いくつかの特性を示し、それはバイオエンジニアリング産業との関連で独特であり、プレプロペプチドとも言い換えられ、かつ細胞によって分泌され(したがって、当然、増殖培地中で利用しやすくなり、それを得るための特殊な方法は回避され、さらに、培養物を維持すると同時に目的の化合物を回収することが可能になる)、さらに、細胞外でのみ活性を有するということである。そして、酵素の活性形態は、成熟が切断されるときの分子内シャペロンを介したオートプロセッシングによって達成される(Kessler and Ohman 2004;Gao, Wang et al. 2010)、またはその調節因子として作用する他のプロテアーゼによって促進される(Kessler, Safrin et al. 1998)。これらの側面に加えて、細胞外プロテアーゼは、大抵の場合、単離株が増殖する環境に依存する最適な、温度、pH(およびpI)、およびイオン強度を示し、そして、特定の環境、溶媒、または温度に対して人為的な進化的圧力を作り出す極限の状態において増殖および機能に適応する培養物およびタンパク質を誘発することが可能であるため、その起源に応じて特定の単離株に対する目的の活性を精密にスクリーニングすることが可能である。さらに、これらは細胞外で保護されないため、分泌された生体触媒は、通常、興味深い、熱、pH、およびさらに塩安定性を天然で示す(Wu and Chen et al. 2011)。
【0212】
しかし、基質特異性または溶媒安定性/活性、すなわち、その目的とする使用のための条件に対する(不)適合性がないために、プロテアーゼが遍在する場合は、発現レベルまたはダウンストリームプロセッシングの必要条件のいずれか、かつそれに続く製造コストのために、そのほとんどが産業材料ではない(Gupta, Beg et al. 2002)。それにもかかわらず、微生物プロテアーゼは、1999年以前から産業的なプロテアーゼ製品の大部分を占め、その市場だけが成長する傾向がある(Godfrey and West 1996;Kumar and Takagi 1999)。
【0213】
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