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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116129
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】細胞選別装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1429 20240101AFI20240820BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240820BHJP
   G01N 15/1433 20240101ALI20240820BHJP
   G01N 15/1434 20240101ALI20240820BHJP
   G01N 15/0227 20240101ALI20240820BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240820BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240820BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240820BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240820BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N15/1429 200
G01N15/14 C
G01N15/1433
G01N15/1434
G01N15/0227 100
G01N15/0227 110
G01N21/17 A
G01N21/64 E
C12Q1/06
C12Q1/68 100Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078297
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2021514044の分割
【原出願日】2019-09-16
(31)【優先権主張番号】62/731,745
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ユ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】グ,イ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハイスループットのフローサイトメーター及び高情報量の顕微鏡法を持つ画像誘導細胞選別及び分類システムを提供する。
【解決手段】第1の方向に沿ってビームをスキャンして細胞の蛍光情報又は細胞画像情報を含む細胞画像データを取得するビームスキャナを含み、ビームが、第1の方向に対して角度をなす第2の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に適用される撮像装置;撮像装置と通信するデータ処理及び制御装置であって、撮像装置によって得られた細胞画像データを処理して、処理された細胞画像データから細胞に関連する1つ以上の特性を決定し、決定された1つ以上の特性と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含むデータ処理及び制御装置、並びに撮像装置並びにデータ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置を含む細胞選別システム。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞選別システムであって、
第1の方向に沿ってビームをスキャンして細胞の蛍光情報又は細胞画像情報を含む細胞画像データを取得するビームスキャナを含み、ビームが、第1の方向に対して角度をなす第2の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に適用される、撮像装置;
撮像装置と通信するデータ処理及び制御装置であって、撮像装置によって得られた細胞画像データを処理して、処理された細胞画像データから細胞に関連する1つ以上の特性を決定し、決定された1つ以上の特性と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含み、制御コマンドが、細胞がチャネルを流れる間に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示す、データ処理及び制御装置;並びに
撮像装置並びにデータ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置
を含む細胞選別システム。
【請求項2】
選別基準が予め決められており、データ処理及び制御装置がクライアント装置と通信して、予め決められた選別基準を調整するための追加のコマンドをクライアント装置から受信する、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項3】
撮像装置が、
チャネル内の細胞を通過するLED光を提供するように構成されるLED光源;
第2の方向に分けられ、チャネルを流れる細胞の移動速度を得るように構成される2つ以上のスリットを含む第1の空間マスク
をさらに含み、
細胞をすでに通過したLED光が、光電流を生成する光検出器に達する前に第1の空間マスクを通過する、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項4】
撮像装置が、
ビームの結像面に配置され、不要な光を遮断する光学窓として動作可能な第2の空間マスク
をさらに含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項5】
ビームスキャナが音響光学偏向器(AOD)ビームスキャナを含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項6】
AODビームスキャナが、入力光をチャネル内の細胞に向けるように構成されたレーザー光源と動作可能に連結される、請求項5に記載の細胞選別システム。
【請求項7】
撮像システムが、チャネル内で入力光を照射する、又は入力光によって照射された細胞からの細胞画像データのキャプチャを支援するように構築された対物レンズをさらに含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項8】
撮像システムが、入力光をチャネルに向けるため、細胞によって発光若しくは散乱される光を撮像システムの結像面に向けるため、又は両方のためのダイクロイックミラーを含む1つ以上の光ガイド要素をさらに含む、請求項7に記載の細胞選別システム。
【請求項9】
撮像システムが、細胞によって発光若しくは散乱される光の検出に基づき対応する時間領域信号を生成する光電子倍増管(PMT)を含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項10】
データ処理及び制御装置のプロセッサが、撮像システムから得られた細胞画像データを初期二次元細胞画像に変換し、ビームスキャナに適用される信号と対応するレーザービームスポットとの間の時間遅延によって生じる誤差を補正するための位相シフト補正、又は細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正するための画像サイズ変更操作の少なくとも1つを行うようにさらに構成される、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項11】
プロセッサが、
細胞に関して、選別基準のパラメータの分布表示を作成すること;
ユーザー装置から、選択された表示セットの閾値を含むユーザー定義選別基準を受信すること;及び
ユーザー定義選別基準を満たす細胞を表示すること
を含む操作を行うようにさらに構成される、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項12】
データ処理及び制御装置のプロセッサが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、又はFPGA及びGPUの併用である、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項13】
撮像装置が、細胞の蛍光情報に対応する蛍光時間領域波形、又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過時間領域波形であって、細胞を通って散乱及び透過された後の光の残存部分から得られる光透過時間領域波形を含む細胞画像データを生成するように構成される、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項14】
細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の若しくは細胞上の特徴の量若しくはサイズ、細胞に結合した1つ以上の粒子、又は細胞若しくは細胞の部分の特定の形態のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項15】
細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の生活環の時期、細胞によるタンパク質の発現若しくは局在化、細胞による遺伝子の発現若しくは局在化、細胞の損傷、又は細胞による物質若しくは粒子の貪食を含む細胞の生理学的特性を含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項16】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項17】
細胞を選別する方法であって、
細胞が第1の方向に移動するチャネルを横切るビームであって、第1の方向に対して角度をなす第2の方向を通じてスキャンされるビームをスキャンすることにより、細胞の時間領域信号データを取得するステップ;
時間領域信号データを二次元細胞画像に変換するステップ;及び
二次元細胞画像を処理して細胞の1つ以上の特性を選別基準により評価し、制御コマンドを生成して、細胞がチャネルを流れている間に細胞に対応する画像信号データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき細胞を選別するステップ
を含む方法。
【請求項18】
二次元細胞画像の処理が、
細胞に関して、選別基準のパラメータの分布表示を作成すること;
ユーザー装置から、選択された表示セットの閾値を含むユーザー定義選別基準を受信すること;及び
ユーザー定義選別基準を満たす細胞を表示すること
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
表示を作成する前に、二次元細胞画像の処理が、
再構築された二次元細胞画像に基づき細胞の1つ以上の特性を同定するステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞の1つ以上の特性が、細胞の若しくは細胞上の特徴の量若しくはサイズ、細胞に結合した1つ以上の粒子、又は細胞若しくは細胞の部分の特定の形態のうち1つ以上を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の生活環の時期、細胞によるタンパク質の発現若しくは局在化、細胞による遺伝子の発現若しくは局在化、細胞の損傷、又は細胞による物質若しくは粒子の貪食を含む細胞の生理学的特性を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
得られた時間領域信号が、細胞の蛍光情報を表す蛍光時間領域信号、及び細胞の細胞画像情報を表す光透過時間領域信号であって、光が散乱された後に細胞を通る光の残存部分の透過から得られる光透過時間領域信号を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
二次元細胞画像を再構築するステップをさらに含み、二次元細胞画像の再構築が、
二次元細胞画像で位相シフト補正を行って、ビームのスキャンに伴う時間遅延によって生じる誤差を補正するステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
二次元細胞画像を再構築するステップをさらに含み、二次元細胞画像の再構築が、
画像サイズ変更操作を行って、細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正するステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
時間領域信号データの取得が、第1の方向に分けられた2つ以上のスリットを含む第1の空間マスクを通過する光を提供する追加の光源を提供することにより細胞の移動速度を得るステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
細胞選別システムであって、
第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に入力光を向けるように構成される光源;
光源と動作可能に連結され、細胞に向けてビームをスキャンして蛍光情報又は光透過情報及び細胞画像情報を含む細胞の細胞画像データを取得するように配置され、ビームのスキャンが第1の方向に対して角度をなす第2の方向に進むように構成される、ビームスキャナ;
ビームスキャナと通信するデータ処理及び制御装置であって、ビームスキャナによって得られた細胞画像データを処理して、得られた細胞画像データからの入力光の照射と関連する画像特徴を検出し、検出された画像特徴と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含むデータ処理及び制御装置;並びに
データ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置
を含む細胞選別システム。
【請求項28】
画像特徴が、照射された粒子の数、照射された粒子のサイズ、入力光の照射の空間分布、照射密度、照射の暗さ、又は照射の明るさのうち少なくとも1つを含む、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項29】
選別基準が予め決められており、データ処理及び制御装置がクライアント装置と通信して、予め決められた選別基準を調整するための追加のコマンドをクライアント装置から受信する、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項30】
データ処理及び制御装置が、細胞画像データを再構築してビームのスキャンに伴う時間遅延によって生じる誤差を補正するための位相シフト補正を行うこと、及び再構築細胞画像データをサイズ変更して細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正することにより細胞画像データを処理するように構成される、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項31】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項32】
制御コマンドが、チャネル内の細胞の流動中に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示す、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項33】
細胞画像データが、蛍光情報に対応する蛍光時間領域波形、及び細胞画像情報に対応する光透過時間領域波形であって、細胞を通って散乱及び透過された後の光の残存部分から得られる光透過時間領域波形を含む、請求項27に記載の細胞選別システム。
【請求項34】
細胞を選別する方法であって、
第1の方向に対して角度を形成する第2の方向に沿ってチャネルに向けてビームをスキャンすることにより、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞の画像データを取得するステップであって、得られた画像データが、細胞の蛍光情報に対応する蛍光信号又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過信号を含む、ステップ;
得られた画像データの個々のパラメータに対応する画像特徴、又は得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関を検出することにより得られた画像データを処理するステップであって、パラメータの各々が個別又は集合的に細胞の1つ以上の特性を表す、ステップ;並びに
検出された画像特徴を選別基準と比較し、コマンドを生成して比較に基づき細胞を選別するステップ
を含む方法。
【請求項35】
得られた画像データの個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、又は強度分布若しくは強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
細胞を選別する方法であって、
細胞が第2の方向に沿って移動するチャネルを横切って第1の方向に沿ってビームをスキャンすることにより、細胞の細胞蛍光情報を含む蛍光信号又は細胞の細胞画像情報を含む光透過信号を生成するステップであって、第1の方向及び第2の方向が互いに非平行である、ステップ;
蛍光信号又は光透過信号の少なくとも1つと関連する細胞画像特徴を検出するステップ;
検出された細胞画像特徴を選別基準と比較して、選別コマンドを生成して細胞を選別するステップ;並びに
チャネルを流れる細胞を選別コマンドに基づき対応するチャネルに偏向させるために信号を適用するステップ
を含む方法。
【請求項39】
細胞画像特徴が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む細胞の1つ以上の特性と関連する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
細胞画像特徴が、細胞と関連する個々のパラメータ、又は細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
細胞と関連する個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、強度分布又は強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布のうち少なくとも1つを含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文献は、細胞選別技術のためのシステム、装置、及びプロセスに関する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国立衛生研究所により授与されたDA042636の下、政府の支援により行われた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
関連出願の相互参照
本特許文献は、2018年9月14日に出願された「細胞選別装置及び方法」と題する米国仮特許出願第62/731,745号の優先権及び利益を主張するものである。上記特許出願の内容全体は、本特許文献の開示の一部として参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
単一細胞レベルでの細胞選別を含む細胞選別は、研究者及び臨床医が特定の細胞、例えば、例えば、幹細胞、循環腫瘍細胞、及び稀少な細菌種の研究及び精製により関心を示すようになったことから、フローサイトメトリーの分野の重要な特徴になっている。細胞選別は、様々な技法によって達成することができる。従来の細胞選別技術は、詳細な細胞内情報を含有するハイコンテント細胞画像に頼ることなく、純粋に蛍光強度及び/又は散乱強度に基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像誘導細胞選別を実施する技法、システム、及び装置が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、第1の方向に沿ってビームをスキャンして細胞の蛍光情報又は細胞画像情報を含む細胞画像データを取得するビームスキャナを含み、ビームが、第1の方向に対して角度をなす第2の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に適用される撮像装置;撮像装置と通信するデータ処理及び制御装置であって、撮像装置によって得られた細胞画像データを処理して、処理された細胞画像データから細胞に関連する1つ以上の特性を決定し、決定された1つ以上の特性と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含み、制御コマンドが、細胞がチャネルを流れる間に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示すデータ処理及び制御装置;並びに撮像装置並びにデータ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置を含む細胞選別システムが提供される。
【0007】
別の態様では、細胞を選別する方法が提供される。方法は、細胞が第1の方向に移動するチャネルを横切るビームであって、第1の方向に対して角度をなす第2の方向を通じてスキャンされるビームをスキャンすることにより、細胞の時間領域信号データを取得するステップ;時間領域信号データを二次元細胞画像に変換するステップ;及び二次元細胞画像を処理して細胞の1つ以上の特性を選別基準により評価し、制御コマンドを生成して、細胞がチャネルを流れている間に細胞に対応する画像信号データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき細胞を選別するステップを含む。
【0008】
別の態様では、細胞選別システムが開示される。細胞選別システムは、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に入力光を向けるように構成される光源;光源と動作可能に連結され、細胞に向けてビームをスキャンして蛍光情報又は光透過情報及び細胞画像情報を含む細胞の細胞画像データを取得するように配置され、ビームのスキャンが第1の方向に対して角度をなす第2の方向に進むように構成されるビームスキャナ;ビームスキャナと通信するデータ処理及び制御装置であって、ビームスキャナによって得られた細胞画像データを処理して、得られた細胞画像データからの入力光の照射と関連する画像特徴を検出し、検出された画像特徴と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含むデータ処理及び制御装置;並びにデータ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置を含む。
【0009】
別の態様では、細胞を選別する方法が提供される。方法は、第1の方向に対して角度を形成する第2の方向に沿ってチャネルに向けてビームをスキャンすることにより、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞の画像データを取得するステップであって、得られた画像データが、細胞の蛍光情報に対応する蛍光信号又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過信号を含むステップ;得られた画像データの個々のパラメータに対応する画像特徴、又は得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関を検出することにより得られた画像データを処理するステップであって、パラメータの各々が個別又は集合的に細胞の1つ以上の特性を表すステップ;並びに検出された画像特徴を選別基準と比較し、コマンドを生成して比較に基づき細胞を選別するステップを含む。
【0010】
別の態様では、細胞を選別する方法が提供される。方法は、細胞が第2の方向に沿って移動するチャネルを横切って第1の方向に沿ってビームをスキャンすることにより、細胞の細胞蛍光情報を含む蛍光信号又は細胞の細胞画像情報を含む光透過信号を生成するステップであって、第1の方向及び第2の方向が互いに非平行であるステップ;蛍光信号又は光透過信号の少なくとも1つと関連する細胞画像特徴を検出するステップ;検出された細胞画像特徴を選別基準と比較して、選別コマンドを生成して細胞を選別するステップ;並びにチャネルを流れる細胞を選別コマンドに基づき対応するチャネルに偏向させるために信号を適用するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムの例示実施形態の略図である。
図2図2A図2Eは、開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムの例示的運転(working)フローの概略図である。
図3】開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムに含まれるデータ処理及び制御ユニットの例示実施形態のブロック図である。
図4】開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムの光学的構成の模式図の例を示す図である。
図5】開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞撮像システムで使用されるビームスキャン方向及び細胞移動方向の例を示す図である。
図6】開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムに含まれるマイクロ流体装置の例を示す図である。
図7】開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムに含まれる第1の空間マスクの例示デザインを示す図である。
図8】開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞撮像システムに含まれる第2の空間マスクの例示デザインを示す図である。
図9図9A及び9Bは、AOD信号のトラフ及びピークを見出す前及び後の電圧波形の例を示す図である。図9Cは、正規化細胞信号の例を示す図である。
図10図10A及び10Bは、AODに印加される変調電圧と対応するビームスポットとの間の時間遅延を例示する図である。
図11図11A~11Cは、位相シフト変換が行われる前のAOD信号の電圧波形、正規化細胞信号、及び対応する2D画像の例を例示する図である。
図12図12A~12Dは、開示された技術のいくつかの実施に基づく位相シフト変換のプロセスの例を例示する図である。
図13図13A及び13Bは、開示された技術のいくつかの実施に基づく再構築細胞画像の例を示す図である。
図14A-B】開示された技術のいくつかの実施に基づくゲーティング戦略の例示的フローを示す図である。
図14C-D】開示された技術のいくつかの実施に基づくゲーティング戦略の例示的フローを示す図である。
図15】開示された技術のいくつかの実施に基づくリアルタイム処理モジュールの模式図の例を示す図である。
図16】開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する例示方法のフローチャートを示す図である。
図17】開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する例示方法のフローチャートを示す図である。
図18】開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する例示方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
画像誘導細胞選別システム及び方法に関する方法、装置及び適用が開示される。開示された技術は、制御された光学ビームを使用して細胞画像情報を取得することにより、ハイスループットのフローサイトメーター及び高情報量の顕微鏡法を提供する。いくつかの実施では、高速移動細胞の細胞画像情報は、対象物を横切る光学ビームを高速ビームスキャナ、例えば、音響光学偏向器(AOD)によってスキャンしてより高速な細胞選別操作を可能にすることによりアクセスされる。開示された技術のいくつかの実施はまた、細胞画像を再構築して細胞画像の取得中に生じる誤差を低減し、防ぐことも示唆する。示唆された技法によれば、より正確な信頼性のある結果を提供しながらより高速に動作することができる細胞選別技法を提供することが可能である。
【0013】
従来の細胞選別技術は、詳細な細胞内情報を含有するハイコンテント細胞画像に頼ることなく、純粋に蛍光強度及び/又は散乱強度に基づいている。蛍光活性化細胞選別は、蛍光及び光散乱の細胞間変動を解像することしかできない。技術ギャップを埋めるために、細胞画像から得られる特徴を使用する細胞選別の技法が提供される。マイクロ流体力学、光工学、計算顕微鏡法、リアルタイム画像処理及び機械学習を利用して、開示された技術のいくつかの実施は、ハイスループットのフローサイトメーター及び高情報量の顕微鏡法を持つ画像誘導細胞選別及び分類システムを提供することができる。開示された技術によれば、ハイスループットのフローサイトメーター及び高情報量の顕微鏡法が達成され得る。関心のある細胞集団が、細胞画像から抽出されたハイコンテント空間情報に基づきリアルタイムに選別される。開示された技術は、細胞に関する組み合わされた撮像及び選別能力を提供する。フローサイトメーターは、成長率9~10%の60億ドル産業である。開示された技術は、この産業に独自の能力を追加するものである。産業は「検出のみ」のシステムから細胞選別能力に移っているため、画像ベースの細胞選別はシステムの能力にとって大きな飛躍となり、数えきれない適用機会を開くであろう。
【0014】
開示された技術は、(1)ビームスキャン装置、例えば、音響光学偏向器(AOD)ビームスキャナを使用した高速移動細胞画像のリアルタイム取得、(2)蛍光信号及び細胞画像特徴の両方に基づく「ゲーティング」方法、(3)対象物の画像特徴を生成し、これらの特徴を画像関連ゲーティング基準と比較して、チャネルを流れる各細胞を選別するかどうかを決定するためのリアルタイム画像処理を可能にする画像誘導細胞選別技法を提供する。いくつかの実施では、画像誘導セルソーターは2D画像に基づく。他の実施もまた可能である。バイオマーカーの蛍光信号及び/又は光散乱強度に全面的に基づく従来のセルソーターとは異なり、本特許文献に示唆された画像誘導セルソーターは、ハイコンテント細胞画像に基づくリアルタイムな細胞分類及び選別を可能にする。そのような撮像特徴には、細胞サイズ、核サイズ、細胞の粗さ、タンパク質局在化等が含まれる。例示的適用には、オルガネラ移行、細胞周期に基づく細胞の単離、貪食された粒子、タンパク質共局在化の検出及び計数、並びに照射誘発DNA断裂の計数等が含まれる。本特許文献に示唆された画像誘導細胞選別システムのデザインは、任意の顕微鏡法ベースの細胞単離システム、例えば、レーザーマイクロダイセクションシステムより数桁大きい、1000細胞/sを超える処理量を支持することができる。
【0015】
システムの概観
図1は、本技術による画像誘導細胞選別システム100の例示実施形態の略図を示す。システム100は、細胞撮像システム120、細胞撮像システム120と通信するデータ処理及び制御ユニット130、並びにデータ処理及び制御ユニット130と通信する細胞選別ユニット140を含む。システム100は、データ処理及び制御ユニット130によってリアルタイムに分析される一つ一つの粒子によって示される複数の特性の1つ以上と関連し得るユーザー定義基準に基づき各粒子を選別するようにユーザーがプログラムできる。いくつかの例示ユーザー定義基準には、個々の粒子の若しくは個々の粒子上の下位特徴(例えば、細胞によって貪食された又は細胞に結合した粒子を含む、生細胞に結合した亜粒子)の量及び/若しくはサイズ、個々の粒子の形態、並びに/又は個々の粒子のサイズが含まれるが、これらに限定されない。このようにして、システム100は、細胞の生理学的機能性(例えば、細胞による粒子若しくは物質取り込み、又は細胞による粒子貪食)、細胞損傷、タンパク質の局在化、又は他の細胞特性による選別を含め、特性、例えば、生細胞の特性によって粒子を評価し、選別することができる。
【0016】
図2A~2Eは、開示された技術の実施に基づく画像誘導細胞選別システムの例示的運転フローの概略図を示す。画像誘導細胞選別システムによって行われる操作は、(1)図2Aに示されているように、レーザービームで各移動細胞を横切ってスキャンして細胞画像情報を時間波形にキャプチャするステップ、(2)図2Bに示されているように、キャプチャされた細胞画像に基づき波形を検出するステップ、(3)図2Cに示されているように、細胞画像を再構築して再構築細胞画像を生成するステップ、(4)図2Dに示されているように、撮像特徴を抽出し、ゲーティング基準を生成するステップ、及び(5)図2Eに示されているように、リアルタイム画像誘導選別をするステップを含む。操作(1)及び(2)、すなわち、細胞画像のキャプチャ及びキャプチャされた細胞画像からの波形の検出は、細胞撮像システム120によって行うことができる。操作(3)及び(4)、すなわち、細胞画像の再構築及び細胞画像特徴の抽出及び基準の生成は、データ処理及び制御ユニット130によって行うことができる。操作(5)、すなわち、リアルタイム画像誘導選別は、細胞選別ユニット140によって行うことができる。細胞はマイクロ流体チャネルを通って流れるため、各細胞画像は、スキャンレーザー励起ビームから生じた蛍光信号又は散乱/透過信号によって生成される時間波形に変換される。時間蛍光又は光散乱/透過波形は、例えば、光電子倍増管(PMT)又はアバランシェ光検出器(APD)によって検出されて電子波形になる。これらの電子波形は次いで再構築される。再構築細胞画像の特徴が抽出され、ユーザーに利用可能となって細胞単離のゲーティング基準をユーザーが定義又は変更できるようになる。インタロゲーションエリアを通過する各細胞の撮像特徴がリアルタイムに算出され、選別基準を満たす特徴を有する(すなわち、定義されたゲーティングの体制(regime)内にある)細胞が選別される。
【0017】
図3は、データ処理及び制御ユニット130の例示実施形態のブロック図を示す。様々な実施では、データ処理及び制御ユニット130は、1つ以上のパーソナルコンピュータ装置(例えば、デスクトップ又はラップトップコンピュータを含む)、インターネット経由でアクセス可能なコンピュータシステム若しくは通信ネットワーク(「クラウド」と呼ばれる)内の1つ以上のコンピューティング装置(サーバー及び/又はクラウド内のデータベースを含む)、及び/又は1つ以上のモバイルコンピューティング装置(例えば、スマートフォン、タブレット、又はスマートウォッチ若しくはスマートメガネを含むウェアラブルコンピュータ装置)で具現化される。データ処理及び制御ユニット130は、データを処理するためのプロセッサ331、並びにデータを格納及び/又はバッファリングするための、プロセッサ331と通信するメモリ332を含む。例えば、プロセッサ331は、中央処理装置(CPU)又はマイクロコントローラユニット(MCU)を含むことができる。いくつかの実施では、プロセッサ331は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又はグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を含むことができる。例えば、メモリ332は、プロセッサ実行可能コードを含む及び格納することができる。プロセッサ実行可能コードは、プロセッサ331によって実行された場合、様々な操作、例えば、情報、コマンド、及び/又はデータの受信、情報及びデータの処理(例えば、細胞撮像システム120からの)、並びに処理された情報/データの別の装置、例えばアクチュエータへの送信又は提供を行うようにデータ処理及び制御ユニット130を構成する。
【0018】
データ処理及び制御ユニット130の様々な機能をサポートするために、メモリ332は、情報及びデータ、例えば、プロセッサ331によって処理又は参照される命令、ソフトウェア、値、画像、及び他のデータを格納することができる。例えば、様々なタイプのランダムアクセスメモリ(RAM)装置、読み出し専用メモリ(ROM)装置、フラッシュメモリ装置、及び他の適切な記憶媒体が、メモリ132のストレージ機能を実行するのに使用され得る。いくつかの実施では、データ処理及び制御ユニット130は、プロセッサ331及び/又はメモリ332を他のモジュール、ユニット又は装置にインターフェースで接続するための入出力(I/O)ユニット333を含む。いくつかの実施形態では、例えばモバイルコンピューティング装置に関して、データ処理及び制御ユニット130は無線通信装置、例えば、送信機(Tx)又は送信機/受信機(Tx/Rx)ユニットを含む。例えば、そのような実施形態では、I/Oユニット333は、プロセッサ331及びメモリ332を無線通信装置とインターフェースで接続して、データ処理及び制御ユニット130と他の装置との、例えば、クラウド内の1つ以上のコンピュータとユーザー装置との間の通信で使用され得る、典型的なデータ通信規格に対応した様々なタイプの無線インターフェースを例えば利用することができる。データ通信規格には、Bluetooth、Bluetooth low energy(BLE)、Zigbee、IEEE 802.11、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、無線広域ネットワーク(WWAN)、WiMAX、IEEE 802.16(Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX))、3G/4G/LTEセルラー通信方法、及びパラレルインターフェースが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施では、データ処理及び制御ユニット130は、I/Oユニット333を介した有線接続を使用して他の装置とインターフェースで接続することができる。データ処理及び制御ユニット130はまた、他の外部インターフェース、データストレージソース、及び/又は視覚若しくは音声表示装置等とインターフェースで接続して、プロセッサ331によって処理され、メモリ332に格納され、又は表示装置若しくは外部装置の出力ユニットに示され得るデータ及び情報を受信し、転送することもできる。図1は、単一のデータ処理及び制御ユニット130を示しているが、開示された技術はそれに限定されない。故に、いくつかの実施では、画像誘導細胞選別システム100は複数のデータ処理ユニット及び制御ユニットを含んでもよく、各データ処理ユニット及び制御ユニットはそれぞれの操作、例えば、波形の検出、細胞画像の再構築、並びに細胞画像特徴の抽出及び基準の生成を行う。画像誘導細胞選別システム100が複数のデータ処理ユニット及び制御ユニットを含む場合、それらの複数のユニットは1つのサイトに配置されてもよく、又は複数のサイトにわたって分配され、通信ネットワークによって相互接続されてもよい。
【0020】
画像誘導細胞選別システム100によって行われる操作(1)~(5)は、以下のそれぞれのセクションでさらに詳細に記載される。
【0021】
光学的構成(細胞撮像操作)
図4は、開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムに含まれる細胞撮像システムの例となる光学的構成を示す。細胞撮像システムの光学的構成は、チャネルを流れる粒子(例えば、細胞)に対する光を入力又はプローブするように構成されたAOD 410及びレーザー光源412を含む。AOD 410は、レーザービームを偏向させるためにレーザー光源412に連結されてもよい。AOD 410と連結されたレーザー光源412は、集束(focus)後に小さな(直径<1um)スポットサイズを有するスキャンビームを作成して、マイクロ流体装置の照射エリアに入力光又はプローブ光を提供し、照射エリアの照射された粒子の画像を取得することができる。故に、レーザー光源412及びAOD 410は、蛍光信号及び/又は光透過信号の生成のためにともに動作する。いくつかの実施では、レーザー光源412及びAOD 410は、蛍光信号、又は光透過信号、又は蛍光信号及び光透過信号の両方を生成するように動作する。ビームが粒子に対してスキャンする場合、細胞蛍光情報を含む蛍光信号が検出され得る。さらに、ビームが細胞にヒットする場合、光の一部は散乱され、残りの部分は透過し、透過光は透過画像情報を含む光透過信号を形成し得る。蛍光を励起する又は透過するスキャンレーザービームスポットは、時間領域信号をPMT 474の出力において、電流又は電圧の形態で生成し得る。いくつかの実施では、レーザー光源412は488nm波長レーザーであってもよい。488nm波長レーザー照射は、フルオロフォアの励起を介して透過画像及び蛍光画像を生成するのに使用することができる。レーザー照射は、サンプルの左側の対物レンズによって回折限界光スポットに集束される。
【0022】
図5は、開示された技術のいくつかの実施に基づく画像誘導細胞選別システムに含まれる細胞撮像システムで使用されるビームスキャン方向及び細胞移動方向の例を示す図である。細胞の流れ方向はz軸に沿っており、ビームスキャンはy軸に進む。図5に示されているように、レーザースポットはAOD 410によって駆動されてy方向にスキャンされるが、細胞はチャネルを通って流れる。細胞の流れは遅相軸(z軸)情報を提供し、ビームスキャンは進相軸(例えば、y軸)情報を提供し、y軸がビームスキャン方向であり、z軸が細胞の流れ方向であるy-z面の二次元細胞画像の生成を可能にする。AOD 410は一次元スキャンのみを行うため、極めて高速で画像を作成することが可能である。図4はAOD 410をビームスキャン要素として示しているが、他の高速レーザースキャナがAOD 410の代わりに焦点をスキャンするのに使用されてもよい。
【0023】
いくつかの実施では、細胞画像の生成に使用されるレーザービームの他に、画像誘導細胞選別システムもLED光源430を有する。各流動細胞は、例えば、LED光源430によって提供される455nm波長LEDによって同時に照射される。LED光源430は、一つ一つの細胞の移動速度を測定するように構成することができる。後で説明するように、細胞速度を知ることは、歪みのない細胞画像を再構築するのに有益であり得る。故に、455nm LEDが各細胞の移動速度を測定するのに使用され得、そのような情報、すなわち、各細胞の移動速度が細胞画像構築に利用される。
【0024】
いくつかの実施では、選択された細胞をマイクロ流体チャネルに偏向させるためにオンチップ圧電PZTアクチュエータ640とともに構成されるマイクロ流体チップ420が使用されてもよい。図6は、マイクロ流体チップの例示構造を示す。図6を参照すると、マイクロ流体チップ410は、マイクロ流体サンプルチャネル611を形成する通路、及びサンプルチャネル611に合流するマイクロ流体シースチャネル612を有する基板613を含むように構築される。いくつかの実施では、例えば、サンプルチャネルは、流れ方向に流れる流体に懸濁された粒子(例えば、細胞)を運搬するように構成され、シースチャネル612は、マイクロ流体チップ420の照射エリア615を流れる前に、流体中の懸濁粒子に流体力学的に焦点(focus)を合わせるための流体のシース流を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、例えば、基板613は、ベース基板、例えば、ガラスベース基板又は他の材料のベース基板に結合されたバルク材料、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で形成されてもよい。
【0025】
図4に示されているようにこの例では、画像誘導細胞選別システムは、対物レンズ440及び442(例えば、顕微鏡又は他の光学撮像装置の)、光ガイド要素、第1及び第2の空間マスク450及び452、バンドパスフィルタ462及び464、高速光検出器472、又は光電子倍増管(PMT)474のうち少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施では、対物レンズ440及び442は、レーザー照射及び撮像の両方が細胞の厚みを横断する高い焦点深度を得るように構築され得る。いくつかの実施では、画像誘導細胞選別システムの光学的構成は、様々な目的で1つ以上の光ガイド要素、例えば、ダイクロイックミラーを含む。例えば、レーザー光源412及び/又はLED光源430とともに配置されたダイクロイックミラー482は、入力光をマイクロ流体チップ420の照射エリアに向けるように構成される。ダイクロイックミラー484及び486は、所望の発光バンドを高速光検出器472及びPMT 474に送るのに使用される。視野は、AOD 410のスキャン範囲及び信号記録期間によって決定される。光学セットアップでは、視野は、ほとんどの生体細胞のサイズをカバーする、例えば20μm×20μmとなるように選択され得る。解像度は、対物レンズの回折限界によって決定される。このセットアップでは、解像度は1μmである。
【0026】
図4の例では、LED光源430からのLED光は、チャネル内のサンプル及び対物レンズ442を通過し、次いで第1のダイクロイックミラー484によって反射され、高速光検出器(PD)472に達して光電流を生成する前に第1の空間マスク450を透過する。図7は、第1の空間マスクの例示デザインを示す。第1の空間マスク450は、z方向(すなわち、細胞の流れ方向)に分けられた2つのスリットを含むように構築され、結像面に配置される。光散乱又は吸収のため、スリットを通り抜ける透過LED光は、細胞が光路を通って移動するとき光強度にディップをもたらす。これらの2つのスリットによってもたらされる2つの光電流ディップ間の時間間隔は、2つのスリットの間隔及び光学システムの拡大率が分かっているため、細胞の移動速度を見出すのに使用することができる。図7に示されているように該例では、設置された第1の空間マスク450の2つの平行スリットは、各々10μm幅及び1mm長である。これらの2つのスリット間の中心間距離は200μmである。
【0027】
レーザービームの結像面位置に、第2の空間マスク452がさらに提供される。図8は、開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞撮像システムに含まれる第2の空間マスクの例示デザインを示す。いくつかの実施では、第2の空間マスク452は500μm×500μm光学窓を有してもよい。スキャンレーザーの結像面の実際の視野は200μm×200μmであるようにデザインされ、故に第2の空間マスク452は光学窓として扱うことができる。第2の空間マスク452は、迷光を遮断してシステム全体の感度を増強するように構成される。
【0028】
PMT出力信号は、選別判定をするためにデータ処理及び制御ユニット130(例えばFPGA)によって取得及び処理される。細胞撮像システムに含まれるPMTの数は変わり得る。例えば、図4は1つのみのPMTを示すが、より多くのPMTが撮像システムに追加されてもよく、必要であれば、細胞画像を生成するためにより多くの励起レーザービームが追加されてもよい。いくつかの実施では、選別判定に基づき細胞を選別するために圧電PZTアクチュエータが作動される。
【0029】
画像構築
画像誘導細胞選別システム100のデータ処理及び制御システム130は、撮像粒子を迅速に処理し、リアルタイムで撮像される各粒子の処理画像に基づき選別制御をもたらすように、例えばPMTを介して細胞撮像システム120と通信する状態で構成される。データ処理及び制御システム130のいくつかの実施では、FPGA処理ユニットが、細胞撮像システムによって受信された画像信号データを迅速に処理するように構成される。
【0030】
画像構築プロセスは、3つのステップを含有する:(1)未補正2D細胞画像へのPMTの時間波形の変換、(2)以下に「位相シフト」の補正と呼ばれる、AODに印加される変調電圧と対応するレーザービームスポットとの間の時間遅延によって生じる影響の補正、及び(3)細胞速度測定の誤差は細胞画像の収縮又は伸長をもたらし得ることから「画像サイズ変更」と呼ばれる、細胞移動速度の影響による画像歪みの補正。以下では、各ステップがより詳細に論じられる。
【0031】
(1)PMT出力の時間波形の初期2D細胞画像への変換
データ処理及び制御システム130は、細胞画像情報を含む時間波形であるPMT出力信号を受信し、時間波形を初期2D細胞画像に変換する。時間波形を初期2D細胞画像に変換するために、データ処理及び制御システム1300はPMT出力信号の正規化を含むデータ処理を行う。図9Aは、AOD(「AOD信号」)を変調する電圧波形の例を示す。図9Bは、AOD信号のトラフ及びピークを見出す例示プロセスを示す。図9Aに示されているように、AODを変調する電圧波形のトラフ及びピークが最初に見出され、次いでピークを1、及びトラフをゼロに設定するように波形プロットが正規化される。図9Cは、正規化細胞信号の例を示す。AODを変調する波形は、トラフからピークへ時間とともに直線的に上昇し、ピークからトラフへ迅速に降下する。そのような波形は、周期的鋸歯状波形を経時的に形成し続ける。各鋸歯状期間内に、AODは、y軸に沿って均一な速度で1つの極限位置から別の極限位置までレーザースポットをスキャンし、次いでレーザースポットは、次のスキャンのために開始位置に素早く戻る。現在のデザインでは、計算の簡単さ及び音響光学結晶の特性を考慮して直線スキャンが選択される。鋸歯状波形以外のスキャン波形も使用することができる。AODがレーザー励起ビームスポットをy方向にスキャンするたびに、PMTによって検出される生じた蛍光信号又は透過信号は、y方向に沿って細胞画像の1Dスライスを形成する。レーザースキャン中、細胞はz方向にも移動しているため、レーザーyスキャンは実際には、細胞フレームに対して小角度をなす細胞画像の直線スキャンをもたらす。小角度は次のように定義することができる:
【0032】
【数1】
【0033】
細胞移動速度と比べてはるかに速いレーザービームスキャン速度のために(例えば、Vscanが500cm/s、及びVscanが20cm/s)、そのような影響はむしろ小さく、無視又は必要に応じて容易に補正することができる。実験室フレームと細胞フレームとのy軸間の小角度を無視することにより、レーザービームがy軸に沿って直線スキャンをするたびに、y軸の細胞画像特徴が新たなz位置に記録されると考えることができる。数学的には、光照射エリアを通って移動する各細胞は、
【0034】
【数2】
として登録される一連の画像データを生成する。
上記のデータセットは、初期2D細胞画像をy-z面で表すM×N行列に配置することができる。
【0035】
(2)初期2D細胞画像の位相シフト補正
データ処理及び制御システム130は、初期2D細胞画像で位相シフト補正を行う。上で簡単に述べたように、位相シフト補正は、AODに印加される変調電圧と対応するレーザービームスポットとの間の時間遅延によって生じる影響を補正することである。DCバイアス条件下では、レーザービームスポットは、AODに対する印加電圧と一致する必要があり、最小バイアス電圧でy軸の一方の極限位置に、最大バイアス電圧で反対の極限位置にビームスポットを有する。しかし、鋸歯状電圧波形がAODに印加される場合、実際のレーザービームスポット位置と電圧値との間には、AODの電気容量及び寄生容量のために時間遅延があり得る。図10A及び10BはAODに印加される変調電圧と対応するレーザービームスポットとの間に生じる時間遅延の例示を示す。図10AはAODを変調する電圧波形を示し、図10Bは実際のレーザービーム位置を示す。図10A及び10Bに示されているように、「位相シフト」と呼ばれる時間遅延Δtがある。図11A~11Cは、位相シフト変換が行われる前のAOD信号の電圧波形、正規化細胞信号、及び対応する2D画像の例を例示する。図11Cに示されているように細胞画像は、各立ち上がりエッジ及び対応するPMT検出信号に基づく1スライス画像に対応する。画像は、2D細胞画像を再構築するために繋ぎ合わされる。
【0036】
そのような位相シフトは、細胞の下部が細胞の上部の頂上と思われる図11Cのものに似た2D細胞画像を生成する。これは、一つには前に論じられた位相シフトによるものであり、一つには細胞到達時間(すなわち、細胞が視野に進入する時間)とレーザースキャンのタイミングとの間の非同期によるものである。以下に論じられる位相シフト補正は、両方の影響(すなわち、AODによる位相シフト、及び細胞到達時間とレーザースキャンのタイミングの間の非同期)を補正するために行われる。
【0037】
上記の影響を補正するために、y-z面に細胞の輪郭を示す透過信号画像が撮影される。図12A~12Dは、開示された技術のいくつかの実施に基づく位相シフト変換のプロセスを例示する。図12Aは位相シフト補正前の初期2D画像を示し、図12Bは位相シフト補正後の補正2D画像を示し、図12Cは位相シフト補正前のx軸に沿った信号積分を示し、図12Dは位相シフト補正後のx軸に沿った信号積分を示す。1つ又はいくつかのz位置を選択し、y方向、すなわち、レーザースキャン方向に沿って透過光強度をプロットすることにより、強度プロファイルが連続プロファイルを示しているように見えないが、最小強度を含むセクションによって区切られた2つの領域に分けられるように見える、図12Cと似た強度プロットが得られる。一番左の領域をシフトさせて一番右の領域につなげて連続強度プロファイルを作製し、強度プロファイル全体を中心に置くことにより、図12Dに示された「位相シフト補正画像」が得られ得る。図12Dの再構築画像は、0.5umのピクセルサイズを有する40×40ピクセルからなる。
【0038】
位相シフトは透過画像についてのみ補正されているが、位相シフトの同じ補正は蛍光信号及び他の散乱信号にも適用可能であり得、その理由は、それらの信号が全て同じスキャンレーザービームによって生成され、互いに同期されているためであることに留意されたい。
【0039】
(3)画像歪みを補正するための画像サイズ変更
データ処理及び制御システム130は、細胞移動速度の影響による画像歪みを補正するための画像サイズ変更操作を行う。画像サイズ変更操作は、細胞画像の収縮又は伸長をもたらす細胞速度測定の誤差を補正する。流れを閉じ込めても、細胞はフローチャネルの断面の同じ位置にならないであろう。フローチャネル内の実際の細胞位置は、細胞サイズ、細胞の硬さ、及びフローチャネルの詳細なデザインに依存する。3Dの代わりに2Dの流れの閉じ込めによるマイクロ流体チャネル内の細胞に関して、チャネルの天井(又は床)からの細胞距離はかなり異なり得る。細胞速度がチャネル内の細胞位置によって決定される層流では、上記の影響は細胞間でかなりの速度変動をもたらし得る。細胞画像構築のプロセスは、時間信号(PMTによって検出された)を空間信号に変換する。そのような変換を行う上で、細胞移動速度は、特定の期間が特定の空間の長さにどう変換されるかを決定し、それ故に細胞速度の変動は長さスケールに影響を与え、したがって細胞画像を歪める可能性がある。
【0040】
いくつかの実施では、細胞は、流れ(z)方向に速度vで移動すると考えられる。鋸歯状波形の期間である時間間隔Δtに関して、レーザースポットはy軸を通ってスキャンし、信号の行列:
【0041】
【数3】
を生成する。Δtの次の期間で生じる次のスキャンには、別の信号の行列:
【0042】
【数4】
が生成される(ここで、zi+1=zi+Δz=zi+vΔt)。
【0043】
AODが400KHzで動作し、各スキャンが2.5μs(すなわち、Δt=2.5μs)かかり、細胞が20cm/sの速度で移動すると仮定すると、Δz=vΔt=0.5μmと算出される。次いで、40スキャンを撮影する時間量は、流れ方向(z軸)に沿った視野を定義する、Δzx40=20μmの距離をカバーするであろう。しかし、別の細胞が25cm/sの速度で光学インタロゲーションエリアを移動する場合はΔz=vΔtは0.625μmになる。次いで、40スキャンを撮影する同じ時間量では、距離はz方向に沿って25μm(0.625μmx40=25μm)になる。有効なことに、z軸に沿った視野は細胞移動速度とともに増加する。個々の細胞の移動速度が分からず、平均細胞速度が細胞画像を構築するように取られる場合、平均速度より早く移動する細胞は、z軸に沿ってその実際のサイズより小さいように見え、平均速度より下で移動する細胞はその実際のサイズより大きいように見える。したがって、歪みのない細胞画像を正しく構築するために、サイズ変更のプロセスが必要である。
【0044】
上記の考察から、y-z面に正しい細胞画像を生成するためには、明らかに細胞の移動速度vを正確に知る必要がある。図7に示されている第1の空間マスクの2つのスリットを通る透過LED光は、各細胞の速度を精密に測定できるようにする信号を生成し、速度の知識は、z方向に正しい長さスケールをもたらして歪みのない細胞画像を構築できるようにする。
【0045】
再構築細胞画像のいくつかの例が図13A及び13Bに示されている。図13Aは、pEGFP-GRプラスミド移行HEK-297T細胞及び非移行HEK-297T細胞の透過及び蛍光画像を示す。1行目は移行細胞を示し、2行目は非移行細胞を示す。1列目は蛍光画像を示し、2列目は透過画像を示し、3列目は透過画像とオーバーレイされた蛍光画像を示し、それぞれの輪郭がコンピュータ生成紅白曲線によって明確にされている。1列目、2列目、3列目は左から右である。透過画像は細胞の輪郭を生成し、蛍光画像は細胞内のGR-GFPタンパク質の局在化を示す。非移行細胞では、GR-GFPタンパク質は細胞質に分散されているが、移行細胞では、GR-GFPタンパク質は核に蓄積されている。図13Bは、放射線損傷に起因するDNA二本鎖切断(DSB)を有するGFPトランスフェクトヒト神経膠芽腫細胞の蛍光画像を示す。1列目はGFP画像を示し、2列目は放射線によって破壊された二本鎖DNAの断片を示し、3列目はオーバーレイ画像を示す。1列目、2列目、3列目は左から右である。緑色蛍光画像は細胞全体のエリアを表し、赤色蛍光画像は放射線によって破壊された二本鎖DNAの断片を表す。
【0046】
特徴抽出
細胞画像は視覚化を通じて直観的で豊富な情報を提供するが、各実験で生成される極めて大量の画像(多くの場合、100万枚を優に超える細胞画像)を考慮すると、情報はこれらの画像から主な特徴を抽出することにより管理及び利用され得る。一般に、生物学的及び臨床的に意義のある画像特徴は、2つのグループ、すなわち一つ一つのパラメータからの特徴、及び2つ以上のパラメータ間の相関からの特徴に分けることができる。各パラメータからの一般的に使用される特徴には、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比(長軸長/短軸長)、積分強度、平均強度(面積で割った強度)、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、スポット数等が含まれる。2つ以上のパラメータ間の関係について、これらには重複面積、強度分布、強度分散、面積の相関等が含まれる。いくつかの実施では、画像特徴は、照射された粒子の数、照射された粒子のサイズ、入力光の照射の空間分布、入力光の照射密度、暗さ、又は明るさのうち少なくとも1つを含み得る。流れ環境で画像誘導細胞選別を行うために、(a)インタロゲーションゾーンを通過する各細胞の画像特徴がリアルタイムで、典型的には1ms未満で計算される必要があること、(b)細胞選別の基準としてのいくつかの画像特徴に基づき「ゲーティング」を正しく定義する必要があることが必要とされる。以下では、「ゲーティング」を見出すアプローチ及び各細胞の画像特徴のリアルタイムの計算が論じられる。
【0047】
ゲーティング戦略
一般に、ゲーティングを定義するために2つのアプローチを取ることができ、1つは機械学習又はディープラーニングに基づき、もう1つはユーザーインターフェース(UI)及びユーザーエクスペリエンス(UX)相互作用の方法論に基づく。細胞選別では画像対象物が明確で、比較的はっきりしており、背景から際立っているため、細胞選別適用に適合し得る多くの機械学習及びディープラーニングアルゴリズムが確立されている。教師あり学習に関して、トレーニングサンプルがシステムを通って流れ、撮像信号が記録され、処理される。この段階では選別は起きないため、画像信号はオフラインで処理することができる。信号処理は、記録された信号を細胞画像に変換し、計算アルゴリズムにより撮像特徴を抽出する。画像誘導細胞選別に関して、ユーザーは細胞の画像特徴に基づきゲーティング基準を定義することができる。各細胞からの信号は、リアルタイムに取得及び処理されて、定義された基準(ゲーティング)に対する細胞画像特徴の比較結果に基づき選別を可能にする。ここでは、機械/ユーザー相互作用を伴うアプローチが、ユーザー視点からの例示的実施形態として論じられる。操作手順は、ゲーティング戦略のフローチャートを示す図14A~14Dに概説されている。
【0048】
図14Aに示されているように、ユーザーは最初に、関心のある集団を信号強度に基づき選択することができる。いくつかの実施では、関心のある集団を信号強度に基づき選択する方法は、従来のフローサイトメーターの操作と似ており、全てのフローサイトメーターユーザーにとって身近であり得る。2番目に、図14Bに示されているように、選択された集団内の各画像特徴のヒストグラムが表示される。ユーザーは画像特徴のこれらのヒストグラムを調べて、どの特徴が意図された適用に最も関連があるかを決めることができる。図14Cに示されているように、これらのヒストグラムから、ユーザーは、最初に選択された細胞集団が、これらの画像特徴(例えば、蛍光強度の空間分布、細胞又はオルガネラの形状又はサイズ)によって特徴付けられた下位集団にさらに分けられ得るかどうかを容易に及び直観的に知ることができる。次いで、ユーザーはゲートを精密化して、画像特徴の特定のセットに従って細胞の1つ又は複数の下位集団を選択することができる。結果的に、細胞選別は従来の蛍光信号又は散乱信号だけでなく、画像特徴によっても誘導される。
【0049】
いくつかの実施では、ユーザーは、画像特徴に基づきゲーティング(細胞選別基準)を定義するための選択肢を有することができる。画像特徴には、細胞体又は核の形状、サイズ、蛍光パターン、蛍光色分布等が含まれ得る。ユーザーは分離したいと思う細胞を引くことができ、システムがそれに応じて行うことになる。そのような独自の能力により、ユーザー、例えば研究者は、サイトゾル、核、又は細胞膜ドメイン及びサブドメイン内の特定のタンパク質の局在化によって多くの重要な生物学的プロセスを追跡することができる。どの細胞集団もゲノム(例えば、変異、エピジェネティック)レベル、又は環境(例えば、非対称分裂、モルフォゲン勾配)レベルである程度の不均一性を有することから、単一細胞のその固有の空間的特徴による同定及び抽出は、免疫学、腫瘍不均一性、幹細胞分化、及びニューロンの分析の分野に大きく寄与すると想定される。いくつかの実施では、ユーザーは、従来の光学蛍光信号又は散乱信号で開始することなくゲーティング操作を行うことができる。これは、伝統的な前方及び側方散乱信号と比べて、細胞及び核形状/サイズが明白な特性及び豊富な情報を示す、リンパ球又はCTCのラベルフリー選別に対する1つのオプションの操作モードとなり得る。
【0050】
画像誘導選別基準がユーザーのニーズを満たす、又はサンプルについてのユーザーの知識と一致することを確保するために、ゲートエリアの内側及び外側の再構築細胞画像が表示されてもよく、ユーザーは選別又は除外することを選択する細胞の実際の画像をチェックできるようになる。ユーザーは、図14C及び14Dに示されたステップを繰り返して選別基準を微調整することができる。
【0051】
リアルタイム処理モジュール
流れから細胞を選別することは、各細胞の画像特徴を計算し、これらのパラメータを選別基準と比較し、ゲーティングを定義し、装置を作動させて選択された細胞をストリームから単離する能力を必要とする。これらの選別プロセスは、フローサイトメーターに関して典型的には1000細胞/秒であるハイスループットを達成するために、迅速に完了される必要がある。したがって、細胞画像特徴の計算のリアルタイム処理が必要とされる。処理速度を加速するために1つの好ましい実施形態は、FPGA-GPUハイブリッドデザインである。リアルタイム処理システムの略図が、リアルタイム処理モジュールの模式図を示す図15に例示されている。PMT信号及びAODを変調する電圧信号が取得及びデジタル化され、光検出器からのLED信号がアナログ入力(AI)モジュールによって取得される。最初に、FPGAが取得された信号から細胞画像を再構築する。次いで、再構築細胞画像が撮像特徴抽出のためにGPUに転送される。画像特徴が計算された後、特徴がFPGAに転送し戻される。選別判定は、定義された選別基準と比べられた、抽出された撮像特徴に基づき行われる。
【0052】
いくつかの実施では、選別基準は、ユーザーからの入力に基づき変更することができる。例えば、リアルタイム処理モジュールは、選別基準に関する入力をユーザーが提供できるようにする装置に連結されてもよい。ユーザーは、現在の選別基準を調整してもよく、又は必要に応じて新たな基準を追加してもよい。例えばバイオマーカーを使用した初期分析が、細胞画像のいくつかの特性に関していくつかの相違を示す場合、ユーザー装置は入力を提供して細胞選別基準を調整して、相違を取り除くことができる。細胞が、形状又はサイズのどちらかによって特性が異なる強いバイオマーカーを示す場合、ユーザー装置は、入力を提供して新たな選別基準を追加して、異なる特性を含む細胞の特定のグループをより容易に単離することができる。このようにして、リアルタイム処理モジュールは、ユーザーからのフィードバックを反映し得るインタラクティブな自己保管(self-storing)操作を行うことができる。
【0053】
いくつかの実施では、細胞を選別するために、電圧パルスがオンチップ圧電PZTアクチュエータに印加され、バイモルフPZTディスクを瞬時に曲げて、細胞を中心流から離れて選別チャネルへと偏向させる。統合圧電アクチュエータは、細胞を選別するための、低コスト、容易な操作、及び高い細胞生存能をもたらす穏やかさによる望ましいデザインを提供するが、電気泳動、誘電泳動、静電気、機械ピンセット、音響ピンセット、光ピンセット等を含む他のメカニズムも細胞を選別するのに使用することができる。
【0054】
FPGA及びGPUからなるハイブリッド信号処理モジュールがハイスループット及びマルチパラメータシステムには望ましいが、FPGAのみ、又はPCのFPGA及びCPUを使用する他のデザインも、コスト及び性能の検討に基づき採用することができる。
【0055】
図16は、開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する一例となる方法のフローチャートを示す。方法1600は、ステップ1610において、細胞が第1の方向に移動するチャネルを横切るビームであって、第1の方向に対して角度をなす第2の方向を通じてスキャンされるビームをスキャンすることにより、細胞の時間領域信号データを取得するステップを含む。方法1600は、ステップ1620において、時間領域信号データを二次元細胞画像に変換するステップをさらに含む。方法1600は、ステップ1630において、二次元細胞画像を処理して細胞の1つ以上の特性を選別基準により評価し、制御コマンドを生成して、細胞がチャネルを流れている間に細胞に対応する画像信号データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき細胞を選別するステップをさらに含む。
【0056】
図17は、開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する一例となる方法のフローチャートを示す。方法1700は、ステップ1710において、第1の方向に対して角度を形成する第2の方向に沿ってチャネルに向けてビームをスキャンすることにより、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞の画像データを取得するステップであって、得られた画像データが、細胞の蛍光情報に対応する蛍光信号又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過信号を含むステップを含む。方法1700は、ステップ1720において、得られた画像データの個々のパラメータに対応する画像特徴、又は得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関を検出することにより得られた画像データを処理するステップであって、パラメータの各々が個別又は集合的に細胞の1つ以上の特性を表すステップをさらに含む。方法1700は、ステップ1730において、検出された画像特徴を選別基準と比較し、コマンドを生成して比較に基づき細胞を選別するステップをさらに含む。
【0057】
図18は、開示された技術のいくつかの実施に基づく細胞を選別する一例となる方法のフローチャートを示す。方法1800は、ステップ1810において、細胞が第2の方向に沿って移動するチャネルを横切って第1の方向に沿ってビームをスキャンすることにより、細胞の細胞蛍光情報を含む蛍光信号又は細胞の細胞画像情報を含む光透過信号を生成するステップであって、第1の方向及び第2の方向が互いに非平行であるステップを含む。方法1800は、ステップ1820において、蛍光信号又は光透過信号の少なくとも1つと関連する細胞画像特徴を検出するステップをさらに含む。方法1800は、ステップ1830において、検出された細胞画像特徴を選別基準と比較して、選別コマンドを生成して細胞を選別するステップをさらに含む。方法1800は、ステップ1840において、チャネルを流れる細胞を選別コマンドに基づき対応するチャネルに偏向させるために信号を適用するステップをさらに含む。
【0058】
本特許文献は多くの具体例を含有するが、これらは任意の発明又は請求され得るものの範囲を限定するものとしてではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有であり得る特徴の記載として解釈されるべきである。本特許文献に別々の実施形態の文脈で記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の実施形態の文脈で記載される様々な特徴は、複数の実施形態において別々に又は任意の適切な部分的組み合わせで実施することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用すると上記に記載され、そのようなものとして最初に請求される場合すらあるが、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除されてもよく、請求された組み合わせは、部分的組み合わせ又は部分的組み合わせの変形形態に関してであってもよい。
【0059】
同様に、操作は特定の順番で図面に描かれているが、これは、示された特定の順番若しくは連番でそのような操作が行われること、又は全ての例示された操作が所望の結果を実現するために行われることを必要とすると理解されるべきではない。さらに、本特許文献に記載された実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、そのような分離を全ての実施形態で必要とすると理解されるべきではない。
【0060】
ごくわずかな実施及び例が記載されているに過ぎず、本特許文献に記載及び例示されるものに基づき他の実施、強化及び変形形態がなされ得る。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]細胞選別システムであって、
第1の方向に沿ってビームをスキャンして細胞の蛍光情報又は細胞画像情報を含む細胞画像データを取得するビームスキャナを含み、ビームが、第1の方向に対して角度をなす第2の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に適用される、撮像装置;
撮像装置と通信するデータ処理及び制御装置であって、撮像装置によって得られた細胞画像データを処理して、処理された細胞画像データから細胞に関連する1つ以上の特性を決定し、決定された1つ以上の特性と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含み、制御コマンドが、細胞がチャネルを流れる間に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示す、データ処理及び制御装置;並びに
撮像装置並びにデータ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置
を含む細胞選別システム。
[実施形態2]選別基準が予め決められており、データ処理及び制御装置がクライアント装置と通信して、予め決められた選別基準を調整するための追加のコマンドをクライアント装置から受信する、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態3]撮像装置が、
チャネル内の細胞を通過するLED光を提供するように構成されるLED光源;
第2の方向に分けられ、チャネルを流れる細胞の移動速度を得るように構成される2つ以上のスリットを含む第1の空間マスク
をさらに含み、
細胞をすでに通過したLED光が、光電流を生成する光検出器に達する前に第1の空間マスクを通過する、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態4]撮像装置が、
ビームの結像面に配置され、不要な光を遮断する光学窓として動作可能な第2の空間マスク
をさらに含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態5]ビームスキャナが音響光学偏向器(AOD)ビームスキャナを含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態6]AODビームスキャナが、入力光をチャネル内の細胞に向けるように構成されたレーザー光源と動作可能に連結される、実施形態5に記載の細胞選別システム。
[実施形態7]撮像システムが、チャネル内で入力光を照射する、又は入力光によって照射された細胞からの細胞画像データのキャプチャを支援するように構築された対物レンズをさらに含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態8]撮像システムが、入力光をチャネルに向けるため、細胞によって発光若しくは散乱される光を撮像システムの結像面に向けるため、又は両方のためのダイクロイックミラーを含む1つ以上の光ガイド要素をさらに含む、実施形態7に記載の細胞選別システム。
[実施形態9]撮像システムが、細胞によって発光若しくは散乱される光の検出に基づき対応する時間領域信号を生成する光電子倍増管(PMT)を含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態10]データ処理及び制御装置のプロセッサが、撮像システムから得られた細胞画像データを初期二次元細胞画像に変換し、ビームスキャナに適用される信号と対応するレーザービームスポットとの間の時間遅延によって生じる誤差を補正するための位相シフト補正、又は細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正するための画像サイズ変更操作の少なくとも1つを行うようにさらに構成される、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態11]プロセッサが、
細胞に関して、選別基準のパラメータの分布表示を作成すること;
ユーザー装置から、選択された表示セットの閾値を含むユーザー定義選別基準を受信すること;及び
ユーザー定義選別基準を満たす細胞を表示すること
を含む操作を行うようにさらに構成される、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態12]データ処理及び制御装置のプロセッサが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、又はFPGA及びGPUの併用である、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態13]撮像装置が、細胞の蛍光情報に対応する蛍光時間領域波形、又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過時間領域波形であって、細胞を通って散乱及び透過された後の光の残存部分から得られる光透過時間領域波形を含む細胞画像データを生成するように構成される、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態14]細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の若しくは細胞上の特徴の量若しくはサイズ、細胞に結合した1つ以上の粒子、又は細胞若しくは細胞の部分の特定の形態のうち1つ以上を含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態15]細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の生活環の時期、細胞によるタンパク質の発現若しくは局在化、細胞による遺伝子の発現若しくは局在化、細胞の損傷、又は細胞による物質若しくは粒子の貪食を含む細胞の生理学的特性を含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態16]選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、実施形態1に記載の細胞選別システム。
[実施形態17]細胞を選別する方法であって、
細胞が第1の方向に移動するチャネルを横切るビームであって、第1の方向に対して角度をなす第2の方向を通じてスキャンされるビームをスキャンすることにより、細胞の時間領域信号データを取得するステップ;
時間領域信号データを二次元細胞画像に変換するステップ;及び
二次元細胞画像を処理して細胞の1つ以上の特性を選別基準により評価し、制御コマンドを生成して、細胞がチャネルを流れている間に細胞に対応する画像信号データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき細胞を選別するステップ
を含む方法。
[実施形態18]二次元細胞画像の処理が、
細胞に関して、選別基準のパラメータの分布表示を作成すること;
ユーザー装置から、選択された表示セットの閾値を含むユーザー定義選別基準を受信すること;及び
ユーザー定義選別基準を満たす細胞を表示すること
を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]表示を作成する前に、二次元細胞画像の処理が、
再構築された二次元細胞画像に基づき細胞の1つ以上の特性を同定するステップ
をさらに含む、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]細胞の1つ以上の特性が、細胞の若しくは細胞上の特徴の量若しくはサイズ、細胞に結合した1つ以上の粒子、又は細胞若しくは細胞の部分の特定の形態のうち1つ以上を含む、実施形態19に記載の方法。
[実施形態21]細胞に関連する1つ以上の特性が、細胞の生活環の時期、細胞によるタンパク質の発現若しくは局在化、細胞による遺伝子の発現若しくは局在化、細胞の損傷、又は細胞による物質若しくは粒子の貪食を含む細胞の生理学的特性を含む、実施形態19に記載の方法。
[実施形態22]選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態23]得られた時間領域信号が、細胞の蛍光情報を表す蛍光時間領域信号、及び細胞の細胞画像情報を表す光透過時間領域信号であって、光が散乱された後に細胞を通る光の残存部分の透過から得られる光透過時間領域信号を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態24]二次元細胞画像を再構築するステップをさらに含み、二次元細胞画像の再構築が、
二次元細胞画像で位相シフト補正を行って、ビームのスキャンに伴う時間遅延によって生じる誤差を補正するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態25]二次元細胞画像を再構築するステップをさらに含み、二次元細胞画像の再構築が、
画像サイズ変更操作を行って、細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正するステップ
を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態26]時間領域信号データの取得が、第1の方向に分けられた2つ以上のスリットを含む第1の空間マスクを通過する光を提供する追加の光源を提供することにより細胞の移動速度を得るステップを含む、実施形態21に記載の方法。
[実施形態27]細胞選別システムであって、
第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に入力光を向けるように構成される光源;
光源と動作可能に連結され、細胞に向けてビームをスキャンして蛍光情報又は光透過情報及び細胞画像情報を含む細胞の細胞画像データを取得するように配置され、ビームのスキャンが第1の方向に対して角度をなす第2の方向に進むように構成される、ビームスキャナ;
ビームスキャナと通信するデータ処理及び制御装置であって、ビームスキャナによって得られた細胞画像データを処理して、得られた細胞画像データからの入力光の照射と関連する画像特徴を検出し、検出された画像特徴と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含むデータ処理及び制御装置;並びに
データ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置
を含む細胞選別システム。
[実施形態28]画像特徴が、照射された粒子の数、照射された粒子のサイズ、入力光の照射の空間分布、照射密度、照射の暗さ、又は照射の明るさのうち少なくとも1つを含む、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態29]選別基準が予め決められており、データ処理及び制御装置がクライアント装置と通信して、予め決められた選別基準を調整するための追加のコマンドをクライアント装置から受信する、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態30]データ処理及び制御装置が、細胞画像データを再構築してビームのスキャンに伴う時間遅延によって生じる誤差を補正するための位相シフト補正を行うこと、及び再構築細胞画像データをサイズ変更して細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正することにより細胞画像データを処理するように構成される、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態31]選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態32]制御コマンドが、チャネル内の細胞の流動中に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示す、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態33]細胞画像データが、蛍光情報に対応する蛍光時間領域波形、及び細胞画像情報に対応する光透過時間領域波形であって、細胞を通って散乱及び透過された後の光の残存部分から得られる光透過時間領域波形を含む、実施形態27に記載の細胞選別システム。
[実施形態34]細胞を選別する方法であって、
第1の方向に対して角度を形成する第2の方向に沿ってチャネルに向けてビームをスキャンすることにより、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞の画像データを取得するステップであって、得られた画像データが、細胞の蛍光情報に対応する蛍光信号又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過信号を含む、ステップ;
得られた画像データの個々のパラメータに対応する画像特徴、又は得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関を検出することにより得られた画像データを処理するステップであって、パラメータの各々が個別又は集合的に細胞の1つ以上の特性を表す、ステップ;並びに
検出された画像特徴を選別基準と比較し、コマンドを生成して比較に基づき細胞を選別するステップ
を含む方法。
[実施形態35]得られた画像データの個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、実施形態34に記載の方法。
[実施形態36]得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、又は強度分布若しくは強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、実施形態34に記載の方法。
[実施形態37]選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、実施形態34に記載の方法。
[実施形態38]細胞を選別する方法であって、
細胞が第2の方向に沿って移動するチャネルを横切って第1の方向に沿ってビームをスキャンすることにより、細胞の細胞蛍光情報を含む蛍光信号又は細胞の細胞画像情報を含む光透過信号を生成するステップであって、第1の方向及び第2の方向が互いに非平行である、ステップ;
蛍光信号又は光透過信号の少なくとも1つと関連する細胞画像特徴を検出するステップ;
検出された細胞画像特徴を選別基準と比較して、選別コマンドを生成して細胞を選別するステップ;並びに
チャネルを流れる細胞を選別コマンドに基づき対応するチャネルに偏向させるために信号を適用するステップ
を含む方法。
[実施形態39]細胞画像特徴が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む細胞の1つ以上の特性と関連する、実施形態38に記載の方法。
[実施形態40]細胞画像特徴が、細胞と関連する個々のパラメータ、又は細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関を含む、実施形態38に記載の方法。
[実施形態41]細胞と関連する個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、実施形態40に記載の方法。
[実施形態42]細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、強度分布又は強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、実施形態40に記載の方法。
[実施形態43]選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布のうち少なくとも1つを含む、実施形態38に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-B】
図14C-D】
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞選別システムであって、
第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞に入力光を向けるように構成される光源;
光源と動作可能に連結され、細胞に向けてビームをスキャンし細胞の細胞画像データを取得するように配置されたビームスキャナであって細胞画像データが蛍光情報又は光透過情報及び細胞画像情報を含み、ビームスキャナが第1の方向に対して角度をなして第2の方向においてビームをスキャンするように構成される、ビームスキャナ;
ビームスキャナと通信するデータ処理及び制御装置であって、ビームスキャナによって得られた細胞画像データを処理して、(i)得られた細胞画像データからの入力光の照射と関連する画像特徴を検出し、(ii)検出された画像特徴と選別基準との比較に基づき制御コマンドを生成するように構成されるプロセッサを含むデータ処理及び制御装置;並びに
データ処理及び制御装置と通信する細胞選別装置であって、細胞が流れるチャネルから分岐する2つ以上の出力経路を含み、制御コマンドに基づき2つ以上の出力経路の1つに細胞を向けるように構成される細胞選別装置
を含む細胞選別システム。
【請求項2】
画像特徴が、照射された粒子の数、照射された粒子のサイズ、入力光の照射の空間分布、照射密度、照射の暗さ、又は照射の明るさのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項3】
選別基準が予め決められており、データ処理及び制御装置がクライアント装置と通信して、予め決められた選別基準を調整するために使用される追加のコマンドをクライアント装置から受信するように構成される、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項4】
データ処理及び制御装置が、(i)細胞画像データを再構築してビームのスキャンに伴う時間遅延によって生じる誤差を補正するための位相シフト補正を行うこと、及び(ii)再構築細胞画像データをサイズ変更して細胞の移動速度の影響によって生じる誤差を補正することにより細胞画像データを処理するように構成される、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項5】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項6】
制御コマンドが、チャネル内の細胞の流動中に生成され、細胞画像データから確認された1つ以上の細胞属性に基づき決定される選別判定を示す、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項7】
細胞画像データが、蛍光情報に対応する蛍光時間領域波形、及び細胞画像情報に対応する光透過時間領域波形を含み光透過時間領域波形が細胞を通って散乱及び透過された後の光の残存部分から得られ、請求項1に記載の細胞選別システム。
【請求項8】
細胞を選別する方法であって、
第1の方向に対して角度を形成する第2の方向に沿ってチャネルに向けてビームをスキャンすることにより、第1の方向に沿ってチャネルを流れる細胞の画像データを取得するステップであって、得られた画像データが、細胞の蛍光情報に対応する蛍光信号又は細胞の細胞画像情報に対応する光透過信号を含む、ステップ;
得られた画像データの個々のパラメータに対応する画像特徴、又は得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関を検出することにより得られた画像データを処理するステップであって、パラメータの各々が個別又は集合的に細胞の1つ以上の特性を表す、ステップ;並びに
検出された画像特徴を選別基準と比較し、コマンドを生成して比較に基づき細胞を選別するステップ
を含む方法。
【請求項9】
得られた画像データの個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
得られた画像データの2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、又は強度分布若しくは強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
細胞を選別する方法であって、
細胞が第2の方向に沿って移動するチャネルを横切って第1の方向に沿ってビームをスキャンすることにより、細胞の細胞蛍光情報を含む蛍光信号又は細胞の細胞画像情報を含む光透過信号を生成するステップであって、第1の方向及び第2の方向が互いに非平行である、ステップ;
蛍光信号又は光透過信号の少なくとも1つと関連する細胞画像特徴を検出するステップ;
検出された細胞画像特徴を選別基準と比較して、選別コマンドを生成して細胞を選別するステップ;並びに
チャネルを流れる細胞を選別コマンドに基づき対応するチャネルに偏向させるために信号を適用するステップ
を含む方法。
【請求項13】
細胞画像特徴が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布を含む細胞の1つ以上の特性と関連する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞画像特徴が、細胞と関連する個々のパラメータ、又は細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
細胞と関連する個々のパラメータが、面積、周囲長、形状、長軸長及び短軸長、円形度、同心度、アスペクト比、積分強度、平均強度、空間上の強度の標準偏差、粒度、テクスチャエントロピー、テクスチャ分散、又はスポット数のうち少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞と関連する2つ以上のパラメータ間の相関が、重複面積、強度分布又は強度分散の相関のうち少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
選別基準が、細胞輪郭、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、核形状、蛍光パターン、又は蛍光色分布のうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。