IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アールエフ360・シンガポール・ピーティーイー・リミテッドの特許一覧

特開2024-116136改良された上部電極接続部を有するBAW共振器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116136
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】改良された上部電極接続部を有するBAW共振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H03H9/17 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078737
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2021504222の分割
【原出願日】2019-07-01
(31)【優先権主張番号】102018118701.7
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523171814
【氏名又は名称】アールエフ360・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・シーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー・アイグナー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィルタ回路内の共振器の低オーム相互接続を提供するBAW共振器を提供する。
【解決手段】BAW共振器は、下部電極と、圧電層と、上部電極とを備える。上部電極接続部が上部電極より上の平面に配置される。これを行うために、スペーサが上部電極上に配置される。キャッピング層CLは、上部電極との間の空気で満たされた間隙が維持されるように、上部電極から離れてスペーサCS上に位置している。ここで、上部電極接続部がキャッピング層より上に配置される。導電性経路は、上部電極と上部電極接続部とを接続する。このような共振器は、1つの横方向設計だけが必要である。
【選択図】図11B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BAW共振器であって、
-下部電極と、
-圧電層と、
-上部電極と、
-前記上部電極上に配置されたスペーサと、
-前記スペーサ上に位置し、前記上部電極との間の空気で満たされた間隙を維持するキャッピング層と、
-前記キャッピング層より上に配置された上部電極接続部と、
-上部電極と上部電極接続部とを接続する導電性経路と
を備えるBAW共振器。
【請求項2】
前記スペーサは、前記導電性経路を提供するために活性共振器領域のマージンに位置する導電性フレームである、
先の請求項に記載のBAW共振器。
【請求項3】
前記キャッピング層は、リリース孔を有する誘電体層であり、
有機シール層は、前記キャッピング層を覆う、
先の請求項のうちの一項に記載のBAW共振器。
【請求項4】
前記スペーサは、活性共振器領域のマージンに位置する導電性フレームであり、
有機シール層は、前記キャッピング層を覆い、
上部金属層は、前記シール層の上に配置され、
スペーサと上部金属層との間の電気接触は、前記シール層が導電性フィラーで充填されることによって、または前記有機シール層を通るフレーム状もしくはフレーム形状の貫通接触部によって行われ、前記有機シール層は電気的に絶縁する、
先の請求項のうちの一項に記載のBAW共振器。
【請求項5】
圧電層、上部電極、スペーサ、およびシール層は、同じ第1のベース領域を有するように構成され、
前記下部電極は、前記下部電極をエッチング停止層として使用することができるように、前記第1のベース領域より大きい第2のベース領域を有する、
先の請求項のうちの一項に記載のBAW共振器。
【請求項6】
-多数の同様のBAW共振器が共通の基板上に並んで配置されており、
-前記BAW共振器の各々と前記基板との間にはブラッグミラーが配置されており、
-前記BAW共振器の各々の下の前記ブラッグミラーおよび前記下部電極は構造化されており、そのため互いに電気的に絶縁されており、
-前記基板上の前記BAW共振器間の空間は、フィラー誘電体が充填され、
-前記フィラー誘電体は、平坦化された表面を有し、
-前記上部電極接続部は、前記フィラー誘電体の前記平坦化された表面の上に配置されている、
先の請求項のうちの一項に記載のBAW共振器。
【請求項7】
前記導電性フレームに内方に隣接する、前記上部電極の上の横構造を備え、前記横構造は、主に一定の断面を有し、メインモードを制限して形成するように適合される、
先の請求項のうちの一項に記載のBAW共振器。
【請求項8】
BAW共振器を形成する方法であって、
A) 高インピーダンス層と低インピーダンス層との交互シーケンスを堆積して構造化することによってブラッグミラーを基板上に配置することと、
B) 最上部の低インピーダンス層の上に下部電極層を形成し、前記下部電極層を構造化することと、
C) 前記下部電極の上に圧電層を堆積することと、
D) 前記圧電層の上に上部電極層を堆積して構造化することと、
E) 前記BAW共振器の活性領域を囲むマージン領域において前記上部電極層の上にフレーム状の導電性スペーサを形成することと、
F) 前記上部電極層との間の空気で満たされた間隙を維持するキャッピング層を前記スペーサの上に形成することと、
G) 前記キャッピング層の上に金属層を堆積して構造化することによって上部電極接続部を形成することと
を備える方法。
【請求項9】
ステップE)の後に、ステップ
E1) 犠牲層(OS)を堆積して構造化することと、
F1) 前記犠牲層の上に前記キャッピング層を形成することと、
F2) 前記キャッピング層にリリース孔を形成することと、
F3) ドライエッチングもしくはウェットエッチングによってまたは溶媒に溶解することによって、前記リリース孔を通じて前記犠牲層を除去することと、
F4) 前記キャッピング層の上にシール層を堆積することと、
G) 前記スペーサへの電気接触を有する金属層を堆積して構造化することによって、前記キャッピング層の上に上部電極接続部を形成することと
を備える先の請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップA)~F)またはA)~F4)は、前記基板の表面上で互いに隣接して配置された多数のBAW共振器が互いに完全に分離されるような前記多数のBAW共振器の並列処理を備え、
ステップF)またはF4)の後に実行されるステップF5)において、前記分離されたBAW共振器間の空間を充填するために、フィラー誘電体が全表面にわたって堆積され、
ステップF6)において、前記フィラー誘電体の前記表面は、CMPプロセスにおいて平坦化される、
先の請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップG)は、前記シール層を通るフレーム状またはフレーム形状の貫通接触部を形成することと、前記貫通接触部の上部と直接接触する前記上部電極接続部のための金属層を適用することとを備える、
先の請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップF5)において、メタルトップは、前記シール層の上の各BAW共振器より上に形成され、前記フレーム形状の貫通接触部の外縁で横方向に終端する、
先の請求項のうちの一項に記載の方法。
【請求項13】
前記平坦化ステップF6)において、前記メタルトップの前記表面が露出され、
ステップG)において、前記上部電極接続部は、異なるBAW共振器のメタルトップを接続し、またはI/OパッドにまたはLC素子に接続する、
先の請求項のうちの一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
最先端のBAW共振器では、活性領域の周囲の異なるセグメントは、上部電極層への接続が適用されるか下部電極層への接続が適用されるか、または電極接続が適用されないかどうかに依存して、異なる音響境界条件を有する。そのため、異なる領域における横方向の音響エネルギー漏れを抑制するためには、異なる横方向の特徴が必要とされる。
【0002】
さらに、最適化された音響的挙動と電磁的挙動との間にはトレードオフが存在し得る。
【0003】
フィルタのコンテキストでは、BAW共振器は、電極接続をそれらの電極層に適用することによって、I/Oパッド、他の共振器、またはLC素子に接続される。これらの接続は、Qおよびフィルタ性能劣化を引き起こすエネルギー漏れを抑制するために、効率的な横方向設計手段のための適合された横方向の特徴を必要とする。そのため、典型的な例では、横方向設計は、非接続領域、上部電極接続領域、または下部電極接続領域のいずれかに対して最適化される必要がある。さらに、フィルタは一般に、低い音響損失、低いEM損失(すなわち、オーム損)、高電力耐久性、等に最適化される必要があり、これは常に妥協を必要とする。
【0004】
そのため、異なる横方向の特徴への適応をそれ程必要としない改良されたBAW共振器を提供することが目的である。
【0005】
この目的および他の目的は、独立請求項によるBAW共振器および製造方法によって達成される。
【0006】
さらなる特徴および有利な実施形態は、従属請求項によって与えられる。
【発明の概要】
【0007】
BAW共振器は、下部電極と、圧電層と、上部電極とを備える。本発明の最も一般的なアイディアは、上部電極の平面において異なる横方向環境に共振器を適合させることを必要としないこのBAW共振器に上部電極接続部を提供することである。
【0008】
そのため、上部電極接続部が上部電極より上の平面に配置される。これを行うために、スペーサが上部電極上に配置される。キャッピング層は、上部電極との間の空気で満たされた間隙が維持されるように、上部電極から離れてスペーサ上に位置している。ここで、上部電極接続部がキャッピング層より上に配置され得る。導電性経路は、上部電極と上部電極接続部とを接続する。
【0009】
この提案された解決策の新しい概念は、横方向設計最適化問題の数をたった1つに減らし、低減されたチップサイズおよびオーム損を有するBAW共振器を解釈することを可能にする。
【0010】
そのため、唯一の必要な横方向設計は、可能な限り対称である。スペーサは、クローズドフレームであり、導電性経路を提供するために活性共振器領域(active resonator area)のマージンに位置する。活性共振器領域は、両方の電極と圧電層とが互いに重なり合い、音響バルクモードを励起してBAW共振器中を伝搬させることができる横方向領域を意味する。スペーサは、上部電極接続部と上部電極との間に電気接触を提供するために導電性である。スペーサの幅は、BAW共振器の音響メインモードに及ぼす影響を最小にするために最小限にされる。
【0011】
キャッピング層は、好ましくは、誘電体層から形成され、上部電極接続部のための支持層として機能する。フレームで囲まれた活性領域に製造中に適用(apply)され、適用されたキャッピング層を支持する働きをする犠牲層は、後に除去される必要がある。そのため、キャッピング層にはリリース孔が形成される。
【0012】
犠牲層を除去した後、リリース孔を封止する有機シール層をキャッピング層上に適用することができる。キャッピング層およびシール層は、横方向に終端し、フレームの外縁と同一平面になるように構造化される。
【0013】
上部金属層は、シール層の上に配置される。第1の実施形態によれば、スペーサと上部金属層との間の電気接触は、導電性のシール層によって提供される。本質的に導電性の有機材料が使用されない場合、シール層の樹脂が導電性フィラーで充填され得る。有用なフィラーは当該技術分野で知られている。有用なフィラーの例は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、および金属ナノ粒子/ナノロッドである。
【0014】
第2の実施形態によれば、有機シール層を通る導電性フレーム状またはフレーム形状の貫通接触部が使用され得る。このフレームは、シール層を適用する前にまたはより好ましくは適用した後に、キャッピング層の上に製造され得る。後者の場合、シール層およびキャッピング層は、例えば、トレンチの底部にスペーサの一部を露出させるトレンチを形成することによって構造化される必要がある。このトレンチは、適切な金属堆積プロセスで金属が充填され得る。このフレーム形状の貫通接触部の上部は、上部金属層と接触し、そのため上部電極接続部と接触する。
【0015】
ある実施形態によれば、上部電極および圧電層は、フレーム形状のスペーサと同一平面になるように構造化され、第1のベース領域を覆う。構造化の間、下部電極はエッチング停止部として使用され得る。そのため、下部電極は、第1のベース領域より大きい第2のベース領域を有し、すべての横方向にスペーサを拡張させる。
【0016】
BAW共振器の横方向設計は、活性領域の全周囲に沿って同じであり得る。これは、スペーサの導電性フレームに内方に隣接する上部電極の上に横構造を適用することによって最適化されることができる。これらの横構造は、所望の音響メインモードだけを形成して閉じ込め、スプリアスモードの励起を回避するように設計される。そのような横構造は、環状構造を備え得、その高さは、活性領域の中心を考慮して増大または低減される。可能な限り、これらの横構造は、一定の断面を有する。さらに、それらは、翼状の構造として形成され得、共振器の表面から離れて、活性共振器領域(active resonator region)の中心に向かって内方に、共振器の縁部に向かって上向きにまたは外方に延在することができる。横構造は、好ましくは、周囲に沿って同じ断面である。
【0017】
以下では、好ましい実施形態および添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの図は、概略的に描かれているにすぎず、正確な縮尺ではない。そのため、相対寸法も絶対寸法もこれらの図面から推測することができない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、基板上に堆積されたブラッグミラーを概略断面図で示す。
図2図2は、下部電極を適用して構造化した後の図1の配置を示す。
図3図3は、圧電層を適用した後の図2の配置を示す。
図4図4は、上部電極層を適用して構造化した後の図3の配置を示す。
図5図5は、上部電極層上に横構造を適用して構造化した後の図4の配置を示す。
図6図6は、導電性スペーサを適用した後の図5の配置を示す。
図7図7は、犠牲層を適用して構造化した後の配置を示す。
図8図8は、キャッピング層を適用して構造化した後の配置を示す。
図9図9は、犠牲層を除去した後の配置を示す。
図10図10は、導電性シール層を適用して構造化した後の配置を示す。
図11A図11Aは、導電性シール層上に上部金属層を適用して構造化した後の図10の配置を示す。
図11B図11Bは、追加的に圧電層がスペーサの外縁と同一平面になるように構造化された図11Aの配置を示す。
図12図12は、電気的に絶縁するシール層を適用して構造化した後の図9の配置を示す。
図13図13は、フレーム状の貫通接触部を作成した後の図12の配置を示す。
図14A図14Aは、上部金属層を適用して構造化した後の図13の配置を示す。
図14B図14Bは、圧電層がスペーサの外縁と同一平面になるように構成されている、図14Aと同様の配置を示す。
図15図15は、BAW共振器間の空間をフィラー誘電体で充填した後の、図11Bによる少なくとも2つの隣接して配置されたBAW共振器の配置を示す。
図16図16は、BAW共振器間の空間をフィラー誘電体で充填した後の、図14Bによる少なくとも2つの隣接して配置されたBAW共振器の配置を示す。
図17図17は、提案されたBAW共振器を使用するフィルタ回路の概略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例えば、シリコンのような適切な基板SU上に、音響ブラッグミラーBMが形成され、構造化される。ブラッグミラーBMは、それぞれ一対のミラー層から形成された2つのミラーM1、M2を備える。ブラッグミラーBMでは、高インピーダンス層HIと低インピーダンス層LIとが交互になっている。これらのミラー層は、所望の反射帯域を設定するために、厚さがわずかに異なり得る。高インピーダンス層HIはWを備え得、低インピーダンス層LIはSiO2を備え得る。例えばTiまたはAlNの追加の薄い接着層または配向促進層が、ミラー対の下に堆積され得る。各導電性高インピーダンスミラー層HIは、後の共振器の領域に制限されるように構造化される。低インピーダンス層LIは、構造化される必要はない。
【0020】
任意選択で、SiO2の最上部ミラー層のCMP平坦化が、ミラー層および/または後の下部電極層に用いられ得る。
【0021】
図1は、完成したブラッグミラーBMを概略断面図で示す。
【0022】
図2は、下部電極層BEを適用して、後の共振器の所望の活性領域に構造化した後の図1の配置を示す。下部電極BEは、高導電性のAlCu層および高インピーダンス層、例えばW層やMo層、を使用して形成される。この場合も同様に、例えばTiまたはAlNの薄い接着層または配向促進層が、下部電極と最上部ミラーとの間に用いられ得る。また、下部電極BEのタングステン層とAlCu層との間に位置する追加の共振器離調材料のパターニングを可能にするために、TiNのようなキャッピング層および/またはエッチング停止層がAlCu層の上に適用される。
【0023】
下部電極BEの上には、例えばAlNまたはAlScNの圧電層PLが形成される。その厚さは、上部/下部電極BEおよびミラーMに取り付けられることによる追加の質量負荷効果(mass loading effect)により、所望の共振周波数の波長の半分より小さくなるように設定される。図3は、圧電層を適用した後の配置を示す。
【0024】
上部電極TEは、層のスタックから形成され得る。導電性金属は、下部電極と同じ金属群から選択され得る。このスタックは、例えば、圧電層PLの上面から開始して、例えばTi層のような薄い接着層、例えばタングステン層およびAlCu層のような導電層、薄いTiN層、および任意選択で例えばSiNの誘電体層が堆積される場合を備える。SiN層は、デバイスパッシベーションを提供し、周波数微調整トリミング層として機能することができる。
【0025】
図4は、上部電極層TEを適用して構造化した後の配置を示す。
【0026】
上部電極層TE上のその外縁の近くには、音響メインモードを支持し、最適に設計された場合には、その反射による望ましくないスプリアス横方向モードを抑制するのに適している横構造LSが形成される。さらに、これらの横構造によって、横方向速度プロファイルが形成される。これらの横構造は、当技術分野で知られており、金属および/または誘電体から形成され得る。図5は、この段階における配置を示す。
【0027】
次のステップでは、導電性スペーサCSが堆積して構造化される。スペーサは、上部電極と同じ金属、例えば、タングステン、Mo、またはAlCuを備え得る。しかしながら、任意の他の導電性材料も可能である。スペーサは、上部電極TEの外縁に直接隣接して配置される。そのため、両方の構造の縁部が同一平面上にある。図6は、導電性スペーサCSを有する配置を示す。横構造LSの反射効果により、共振器の中心から外方に広がってこの横構造を越えることができる音響エネルギーは非常に低いものである。そのため、音響波と相互作用し得る導電性スペーサの機械的影響はない。音響は、導電性スペーサによって妨げられない。
【0028】
次のステップでは、犠牲層OSが堆積する。好ましくは、この目的のためにフォトレジストが使用され、それの直接的な構造化を可能にする。犠牲層OSは、導電性スペーサCSで囲まれた上部電極の表面に制限される。図7は、犠牲層OSを適用して構造化した後の配置を示す。
【0029】
OS層の平面上に、キャッピング層CLが適用され、構造化される。キャッピング層CLには、リリース孔RHが設けられる。さらに、キャッピング層CLの環状マージン領域では、導電性スペーサCSの外縁が露出している。図8は、キャッピング層CLを適用して構造化した後の配置を示す。SiO2または任意の他の適切な誘電体を、キャッピング層に好ましい材料として使用することができる。
【0030】
ここで、好ましくは、例えば溶媒による湿式化学的処置によって、犠牲層OSの材料がリリース孔RHを通して除去され得る。ドライエッチングも可能であり、残留する湿式化学物質の除去を回避する。
【0031】
図9は、そのリリース後の配置を示す。キャッピング層CLと上部電極TEとの間には、空気で満たされた間隙GPが形成されている。
【0032】
次のステップでは、リリース孔をシール層SLで閉じる/封止する。変形例によれば、BCB(ベンゾシクロブテン)のような導電性高粘度ポリマーがこの目的に使用され得る。適切な電気伝導性を達成するために、ポリマーは導電性フィラーで充填される。適切な導電性フィラーは、グラファイト、グラフェン、BCB、カーボンナノチューブ、金属ナノ粒子、および金属ナノロッドから選択される。構造化ステップは、シール層SLの領域をキャッピング層CLの領域に制限する。図10は、シール層を適用して構造化した後の配置を示す。
【0033】
シール層SLおよびはんだ付け可能なコンタクトパッドまたは高導電性導体線のエンフォースメントは、シール層SL上への堆積によって適用される厚い上部金属層TMによって達成される。ベースメタライゼーションは、ガルバニックまたは無電流ステップでめっきすることによってそれをエンフォースメントする前に、スパッタリングされて、構造化され得る。図11Aは、上部金属層を適用して構造化した後の配置を示す。
【0034】
さらなる変形例によれば、圧電層PLは、露出しており上部電極TEによって覆われていない領域がエッチング除去される。図11Bは、圧電層PLの露出領域が除去されているという点で図11Aの配置とは異なる配置を示す。
【0035】
図11Bは、導電性シール層上に上部金属層を適用して構造化した後の図11の配置から始まる同様の配置を示す。この例では、シール層SLは導電性であり、圧電層PLの露出領域は除去されている。
【0036】
図12には、図10の配置とは対照的に、非導電性シール層SLが使用される変形例が示されている。
【0037】
シール層SLが非導電性であるため、導電性スペーサCSへの貫通接触部が必要である。そのため、金属バンプフレームからなるフレーム状の貫通接触部TCを作成され、堆積され得る。この貫通接触部TCは、スペーサCSに電気的に結合する。図13は、そのように作成された配置を示す。
【0038】
図14Aは、シール層SL上に上部金属層TMを適用して構造化し、それによって貫通接触部TCを電気的に導電させた後の配置を示す。
【0039】
図14Bは、圧電層PLがスペーサCSの外縁と同一平面になるように構造化されているという事実を除いて、図14Aと同様の配置を示す。エッチングマスクとして機能し得る上部金属TMを適用する前後にエッチングを行うことができる。
【0040】
しかしながら、使用されるエッチングシステムに依存して、下部電極のような任意の他の層、または下部電極の上に適用される層が、エッチングマスクとして機能し得る。当然ながら、追加的に適用されるマスクを使用することもできる。図4図9のうちのいずれかに示される任意の前段階で圧電層PLのエッチングが行われ得る。
【0041】
これは、図12および図14Bに示される配置が、図14Aに示される段階を使用せずに別の方法で作成され得ることを意味する。
【0042】
図1図14には、単一のBAW共振器が示されている。しかしながら、BAW共振器の大半のアプリケーションは、例えばフィルタ回路にしたがって互いに相互接続された多数のBAW共振器を備える回路を使用する。これを行うために、上部金属層は、その上部電極TEを介してBAW共振器を電気的に接続するための理想的なパッド構造を提供する。
【0043】
図15および図16は、図11Bおよび図14Bによる少なくとも2つの隣接して配置されたBAW共振器間の空間をフィラー誘電体FDで充填した後のこれら2つの示されるBAW共振器の配置を示す。前駆体としてTEOSを使用するCVDプロセスは、フィラー誘電体を堆積するために使用され得る。
【0044】
2つのBAW共振器の上部金属TMは、フィラー誘電体FD上に適用されたそれぞれの金属構造によって形成された上部電極接続部TECを介して接続される。同様に、上部電極接続部TECは、他のデバイス(図示せず)に、外部端子に、または統合された受動LC素子にガイドされ得る。
【0045】
図15は、導電性シール層を有する図11Bの配置に従う。図16は、非導電性シール層SLを通るフレーム形状の貫通接触部を有する図14Bによる配置に従う。
【0046】
図15および図16による互いに相互接続された多数のBAW共振器を備える回路では、下部電極BEへの電気接触も必要である。例えば、接触は、フィラー誘電体を通してエッチングされたビアによって提供され得る。活性共振器領域に広がる下部電極BEのより大きな領域は、それぞれのビアを作成するときにエッチング停止部として使用され得る。
【0047】
図17は、ラダー型の配置での、提案されているBAW共振器を使用するフィルタ回路の概略ブロック図を示す。フィルタ回路は、本発明にしたがって形成され得る直列BAW共振器BRおよび並列BAW共振器BRを備える。このフィルタ回路では、それぞれの直列BAW共振器BRおよびそれに対応する並列BAW共振器BRが、ラダー型の配置の基本セクションBSLTを形成する。全回路は、所望のフィルタ機能を達成するために直列に回路化され得る任意の数の基本セクションBSLTを備える。
【0048】
提案されている発明は以下の利点を提供する:
- 構造化されたミラー層の縁部にわたって圧電層が適用されるときに発生し得る構造不均一性が除去され、これ以上妨げることがないため、外側領域において圧電層が完全に除去される場合には、CMPは必要とされない。
- たった1つの横方向の縁部設計が最適化される必要がある
- 新しい設計によって、共振器を可能な限り互いに近接して配置することができ、共振器間ではなく圧電性物質より上(上部電極接続部TECを介して)および下で相互接続ルーティングを行うことができるので、サイズの縮小が達成される。
- 各共振器の上面はロバストであり、多数の接触技術に適している
- 各共振器のロバストな上面は、さらなるパッケージングを省略することを可能にし得る
- 厚い相互接続(上部金属TMおよび上部電極接続部TEC)を使用する場合、より低いオーム損を有するBAW共振器が達成可能である
- BAW共振器は、相互接続がヒートスプレッダとしての追加機能を発揮するため、高い電力耐久性を有する。
【0049】
本発明は、示された図および説明された具体的な実施形態によって限定されず、ゆえに、特許請求の範囲によって与えられる範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0050】
使用される参照記号のリスト
AR 活性共振器領域
BE 下部電極
BM ブラッグミラー
BRP 並列BAW共振器
BRS 直列BAW共振器
BS フィルタ回路の基本セクション
CL 例えば、キャッピング層
CP キャップ
CS 例えば、導電性スペーサ
FD フィラー誘電体
GP 空気で満たされた間隙
HI 高インピーダンスミラー層
LI 低インピーダンスミラー層
M1,M2 ミラー(一対のミラー層)
OS 犠牲層
PL 圧電層
RH リリース孔
SL 有機シール層
SU 基板
TC フレーム状の貫通接触部
TE 上部電極
TEC 上部電極接続部
TM 上部金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BAW共振器であって、
-下部電極と、
-圧電層と、
-上部電極と、
-前記上部電極上に配置されたスペーサと、
-前記スペーサ上に位置し、前記上部電極との間の空気で満たされた間隙を維持するキャッピング層と、
-前記キャッピング層より上に配置された上部電極接続部と、
-上部電極と上部電極接続部とを接続する導電性経路と
を備えるBAW共振器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
使用される参照記号のリスト
AR 活性共振器領域
BE 下部電極
BM ブラッグミラー
BRP 並列BAW共振器
BRS 直列BAW共振器
BS フィルタ回路の基本セクション
CL 例えば、キャッピング層
CP キャップ
CS 例えば、導電性スペーサ
FD フィラー誘電体
GP 空気で満たされた間隙
HI 高インピーダンスミラー層
LI 低インピーダンスミラー層
M1,M2 ミラー(一対のミラー層)
OS 犠牲層
PL 圧電層
RH リリース孔
SL 有機シール層
SU 基板
TC フレーム状の貫通接触部
TE 上部電極
TEC 上部電極接続部
TM 上部金属層
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
BAW共振器であって、
-下部電極と、
-圧電層と、
-上部電極と、
-前記上部電極上に配置されたスペーサと、
-前記スペーサ上に位置し、前記上部電極との間の空気で満たされた間隙を維持するキャッピング層と、
-前記キャッピング層より上に配置された上部電極接続部と、
-上部電極と上部電極接続部とを接続する導電性経路と
を備えるBAW共振器。
[C2]
前記スペーサは、前記導電性経路を提供するために活性共振器領域のマージンに位置する導電性フレームである、
先のCに記載のBAW共振器。
[C3]
前記キャッピング層は、リリース孔を有する誘電体層であり、
有機シール層は、前記キャッピング層を覆う、
先のCのうちの一項に記載のBAW共振器。
[C4]
前記スペーサは、活性共振器領域のマージンに位置する導電性フレームであり、
有機シール層は、前記キャッピング層を覆い、
上部金属層は、前記シール層の上に配置され、
スペーサと上部金属層との間の電気接触は、前記シール層が導電性フィラーで充填されることによって、または前記有機シール層を通るフレーム状もしくはフレーム形状の貫通接触部によって行われ、前記有機シール層は電気的に絶縁する、
先のCのうちの一項に記載のBAW共振器。
[C5]
圧電層、上部電極、スペーサ、およびシール層は、同じ第1のベース領域を有するように構成され、
前記下部電極は、前記下部電極をエッチング停止層として使用することができるように、前記第1のベース領域より大きい第2のベース領域を有する、
先のCのうちの一項に記載のBAW共振器。
[C6]
-多数の同様のBAW共振器が共通の基板上に並んで配置されており、
-前記BAW共振器の各々と前記基板との間にはブラッグミラーが配置されており、
-前記BAW共振器の各々の下の前記ブラッグミラーおよび前記下部電極は構造化されており、そのため互いに電気的に絶縁されており、
-前記基板上の前記BAW共振器間の空間は、フィラー誘電体が充填され、
-前記フィラー誘電体は、平坦化された表面を有し、
-前記上部電極接続部は、前記フィラー誘電体の前記平坦化された表面の上に配置されている、
先のCのうちの一項に記載のBAW共振器。
[C7]
前記導電性フレームに内方に隣接する、前記上部電極の上の横構造を備え、前記横構造は、主に一定の断面を有し、メインモードを制限して形成するように適合される、
先のCのうちの一項に記載のBAW共振器。
[C8]
BAW共振器を形成する方法であって、
A) 高インピーダンス層と低インピーダンス層との交互シーケンスを堆積して構造化することによってブラッグミラーを基板上に配置することと、
B) 最上部の低インピーダンス層の上に下部電極層を形成し、前記下部電極層を構造化することと、
C) 前記下部電極の上に圧電層を堆積することと、
D) 前記圧電層の上に上部電極層を堆積して構造化することと、
E) 前記BAW共振器の活性領域を囲むマージン領域において前記上部電極層の上にフレーム状の導電性スペーサを形成することと、
F) 前記上部電極層との間の空気で満たされた間隙を維持するキャッピング層を前記スペーサの上に形成することと、
G) 前記キャッピング層の上に金属層を堆積して構造化することによって上部電極接続部を形成することと
を備える方法。
[C9]
ステップE)の後に、ステップ
E1) 犠牲層(OS)を堆積して構造化することと、
F1) 前記犠牲層の上に前記キャッピング層を形成することと、
F2) 前記キャッピング層にリリース孔を形成することと、
F3) ドライエッチングもしくはウェットエッチングによってまたは溶媒に溶解することによって、前記リリース孔を通じて前記犠牲層を除去することと、
F4) 前記キャッピング層の上にシール層を堆積することと、
G) 前記スペーサへの電気接触を有する金属層を堆積して構造化することによって、前記キャッピング層の上に上部電極接続部を形成することと
を備える先のCに記載の方法。
[C10]
ステップA)~F)またはA)~F4)は、前記基板の表面上で互いに隣接して配置された多数のBAW共振器が互いに完全に分離されるような前記多数のBAW共振器の並列処理を備え、
ステップF)またはF4)の後に実行されるステップF5)において、前記分離されたBAW共振器間の空間を充填するために、フィラー誘電体が全表面にわたって堆積され、
ステップF6)において、前記フィラー誘電体の前記表面は、CMPプロセスにおいて平坦化される、
先のCのうちの一項に記載の方法。
[C11]
ステップG)は、前記シール層を通るフレーム状またはフレーム形状の貫通接触部を形成することと、前記貫通接触部の上部と直接接触する前記上部電極接続部のための金属層を適用することとを備える、
先のCのうちの一項に記載の方法。
[C12]
ステップF5)において、メタルトップは、前記シール層の上の各BAW共振器より上に形成され、前記フレーム形状の貫通接触部の外縁で横方向に終端する、
先のCのうちの一項に記載の方法。
[C13]
前記平坦化ステップF6)において、前記メタルトップの前記表面が露出され、
ステップG)において、前記上部電極接続部は、異なるBAW共振器のメタルトップを接続し、またはI/OパッドにまたはLC素子に接続する、
先のCのうちの一項に記載の方法。
【外国語明細書】