(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116159
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】化学物質の排出と対応する遺伝的、医学的および/または病理学的病状とを関連づけるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240820BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20240820BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
C12Q1/06
G01N33/497 A
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082479
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2021524346の分割
【原出願日】2019-11-04
(31)【優先権主張番号】62/772,645
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】262771
(32)【優先日】2018-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(71)【出願人】
【識別番号】522202768
【氏名又は名称】セント メディカル テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュティック,ハレル
(72)【発明者】
【氏名】モリス,ドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カントール,エフド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学物質の排出と対応する遺伝的、医学的、病理学的病状とを関連づけるための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】(a)非処置の標的細胞培養物にMCDを誘導し、それによりMCD後標的細胞培養物を生成させること、および(b)MCD後標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、によりMCD標的細胞VOCプロファイルを作成すること。選択された処置を標的細胞培養物に適用すること、および処置後標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、および選択された処置の効果を決定すること。処置は、(a)処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値より大きい場合;および(b)処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値より大きい場合、効果的と決定される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された集団において処置前及び処置後に、揮発性有機化合物(VOC)放出を、少なくとも1つの標的細胞型と関連付けるための方法であって、以下の手順:
各選択された標的細胞型に関して、複数の患者から標的細胞の標的細胞試料を取得する手順(202);
前記各選択された標的細胞型に関して、前記複数の患者から健常細胞の健常細胞試料を取得する手順(204)であって、前記健常細胞試料は前記標的細胞試料と同一の細胞型である、手順(204);
前記各選択された標的細胞型に関して、対照群から対照細胞の対照細胞試料を取得する手順(206)であって、前記対照細胞試料は前記標的細胞試料と同一の細胞型である、手順(206);
前記標的細胞、前記健常細胞、及び前記対照細胞のうち、少なくとも1つの遺伝子配列をそれぞれ決定する手順(212);
前記少なくとも1つの遺伝子配列のそれぞれを、分子分類に従って分類する手順(212);
前記標的細胞試料、前記健常細胞試料、及び前記対照細胞試料のそれぞれを培養して、標的細胞培養物、健常細胞培養物、及び対照細胞培養物をそれぞれ生成する手順(216);
大量細胞死(MCD)を誘導する前に、前記標的細胞培養物、前記健常細胞培養物、及び前記対照細胞培養物に関するVOC放出データを取得する手順(218);
前記分子分類のそれぞれの前記少なくとも1つの遺伝子配列に関して、フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ及びフィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データを生成する手順(220);
フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データを生成する手順(220);
前記標的細胞培養物、前記健常細胞培養物、及び前記対照細胞培養物上でMCDを誘導する手順(222);
MCD後標的細胞培養物VOC放出データ、MCD後健常細胞培養物VOC放出データ、及びMCD後対照細胞培養物VOC放出データを取得する手順(224);
前記分子分類のそれぞれの前記少なくとも1つの遺伝子配列に関して、フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データ及びフィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データを生成する手順(226);
フィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データを生成する手順(226);
前記フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データから、MCD前標的細胞VOCプロファイル及びMCD後標的細胞VOCプロファイルを決定する手順(228);
前記フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データから、MCD前健常細胞VOCプロファイル及びMCD後健常細胞VOCプロファイルを決定する手順(230);
前記フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データから、MCD前対照細胞VOCプロファイル及びMCD後対照細胞VOCプロファイルを決定する手順(231);
前記分子分類のそれぞれの前記少なくとも1つの遺伝子配列に関して、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイル、及び予測された対照細胞VOCプロファイルを決定する手順(232);
対照群から、呼吸及び少なくとも1つの体液の、少なくとも1つの試料を取得する手順(208);
前記対照群の前記少なくとも1つの試料において放出されたVOCのVOC放出データを取得する手順(214);
前記予測された対照細胞VOCプロファイル、及び前記対照群の前記少なくとも1つの試料において放出された前記VOCの前記VOC放出データから、動的対照細胞VOCプロファイルを生成する手順(234);
前記選択された集団の複数の患者から、前記各選択された標的細胞型に関して、呼吸及び少なくとも1つの体液の少なくとも1つの試料を取得する手順(200);
前記選択された集団の前記複数の患者に由来する前記少なくとも1つの試料において放出されたVOCのVOC放出データを取得する手順(210);
動的差分VOCプロファイルを生成する手順であって、前記動的差分VOCプロファイルは、前記分子分類の前記少なくとも1つの遺伝子配列のそれぞれに関して、前記予測された標的細胞VOCプロファイル、前記予測された健常細胞VOCプロファイル、及び前記少なくとも1つの試料の前記VOC放出データから生成される、手順(236);
前記動的差分VOCプロファイルを、前記動的対照細胞VOCプロファイルと比較する手順(238);及び
前記動的差分VOCプロファイル及び前記動的対照細胞VOCプロファイルをデータベース中に保存する手順(240)
を含む方法。
【請求項2】
前記標的細胞試料、前記健常細胞試料、及び前記対照細胞試料は、それぞれの生検手順により取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子分類は、前記少なくとも1つの遺伝子配列の各1つを、癌タイプに従ってそれぞれの遺伝子変異として分類する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ、前記フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データを生成する手順は、無関係のVOCアーチファクトの影響を軽減し、それによって、前記MCDを誘導する手順の前に前記少なくとも1つの遺伝子配列に関連するVOCをより良好に識別する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ、前記フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データを生成する手順は、以下のサブ手順:
前記標的細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記健常細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記対照細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データと比較する手順、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記MCDを誘導する手順は、VOCアーチファクトを生成しない手法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記手法は、急速冷凍技術及びUV光技術から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標的細胞培養物に関連する前記VOC放出データ、前記健常細胞培養物及び前記対照細胞培養物及び前記MCD後MCD標的細胞培養物VOC放出データ、前記MCD後健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記MCD後対照細胞培養物VOC放出データは、同一の標的細胞培養物、健常細胞培養物、及び対照細胞培養物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データ、前記フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データ、前記フィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記フィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データを生成する前記手順は、無関係のVOCアーチファクトの影響を軽減し、それによってMCDを導入する前記手順の後に、前記少なくとも1つの遺伝子配列に関連するVOCをより良好に識別する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データ、前記フィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記フィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データの生産の前記手順は、以下のサブ手順:
前記標的細胞培養物VOC放出データを、前記MCD後健常細胞培養物VOC放出データ及び前記MCD後対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記健常細胞培養物VOC放出データを、前記MCD後標的細胞培養物VOC放出データ及び前記MCD後対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;及び
前記対照細胞培養物VOC放出データを、前記MCD後健常細胞培養物VOC放出データと比較する手順
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記予測された標的細胞VOCプロファイル、前記予測された健常細胞VOCプロファイル、及び前記予測された対照細胞VOCプロファイルを決定する前記手順は、以下のサブ手順:
前記MCD前標的細胞VOCプロファイル及び前記MCD後標的細胞VOCプロファイルから、前記少なくとも1つの試料におけるVOC濃度レベルを予測する手順;
前記MCD前健常細胞VOCプロファイル及び前記MCD後健常細胞VOCプロファイルから、前記少なくとも1つの試料におけるVOC濃度レベルを予測する手順;及び
前記MCD前対照細胞VOCプロファイル及び前記MCD後対照細胞VOCプロファイルから、前記少なくとも1つの試料におけるVOC濃度レベルを予測する手順、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記VOC濃度レベルは、拡散モデルを用いることにより予測される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記拡散モデルは、Farhiの方程式、及び改変Farhiモデルから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記動的対照細胞VOCプロファイルを生成する前記手順は、前記予測された対照細胞VOCプロファイルと、前記対照群の前記少なくとも1つの試料における前記VOC放出データとの間の誤差を最小にする手順を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記VOC放出データを少なくとも1つの既知の病状と関連付ける手順を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記病状の処置前及び処置後の前記VOC放出データを比較する手順を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
揮発性有機化合物(VOC)放出を、選択された集団における選択された癌と関連付けるための方法であって、以下の手順:
前記選択された集団における複数の患者から選択された癌タイプの標的細胞の標的細胞試料を取得する手順(152);
前記複数の患者から健常細胞の健常細胞試料を取得する手順(154)であって、前記健常細胞試料は前記標的細胞試料と同一の細胞型である、手順(154);
対照群から対照細胞の対照細胞試料を取得する手順(156)であって、前記対照細胞試料は前記標的細胞試料と同一の細胞型である、手順(156);
前記標的細胞、前記健常細胞、及び前記対照細胞のうち少なくとも1つの遺伝子配列をそれぞれ決定する手順(162);
前記少なくとも1つの遺伝子配列を、前記選択された癌タイプの少なくとも1つの遺伝子変異に基づいてそれぞれ分類する手順(162);
前記標的細胞試料、前記健常細胞試料、及び前記対照細胞試料のうちそれぞれ1つを培養して、標的細胞培養物、健常細胞培養物、及び対照細胞培養物をそれぞれ生成する手順(166);
前記標的細胞培養物、前記健常細胞培養物、及び前記対照細胞培養物に関するVOC放出データを取得する手順(168);
前記少なくとも1つの遺伝子変異のそれぞれに関して、前記標的細胞培養物VOC放出データ、前記健常細胞培養物VOC放出データ、及び前記対照細胞培養物VOC放出データから、標的細胞VOCプロファイル、健常細胞VOCプロファイル、及び対照細胞VOCプロファイルをそれぞれ生成する手順(170);
対照群から、呼吸及び少なくとも1つの体液のうち少なくとも1つの試料を取得する手順(158);
前記対照群の前記少なくとも1つの試料において放出されるVOCのVOC放出データを取得する手順(164);
前記標的細胞VOCプロファイル、前記健常細胞VOCプロファイル、及び前記対照細胞VOCプロファイルからそれぞれ取得した前記少なくとも1つの試料におけるVOC濃度レベルを予測することによって、前記選択された癌タイプのそれぞれの前記少なくとも1つの遺伝子変異に関して、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイル、及び予測された対照細胞VOCプロファイルを決定する手順(172);
前記予測された対照細胞VOCプロファイル、及び前記対照群の前記少なくとも1つの試料において放出された前記VOCの前記VOC放出データから、動的対照細胞VOCプロファイルを生成する手順(176);
前記選択された癌タイプの前記少なくとも1つの遺伝子変異の各々に関して、前記予測された標的細胞VOCプロファイル、前記予測された健常細胞VOCプロファイル、及び前記少なくとも1つの試料の前記VOC放出データから、動的差分VOCプロファイルを生成する手順(174);
前記動的差分VOCプロファイルを前記動的対照細胞VOCプロファイルと比較する手順(178);及び
前記動的差分VOCプロファイル及び前記動的対照細胞VOCプロファイルをデータベースに保存する手順(180)
を含む方法。
【請求項18】
前記標的細胞試料、前記健常細胞試料、及び前記対照細胞試料は、それぞれの生検手順により取得される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記標的細胞培養物VOC放出データをフィルタリングする手順;
前記健常細胞培養物VOC放出データをフィルタリングする手順;及び
前記対照細胞培養物VOC放出データをフィルタリングする手順
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記フィルタリングの手順が、以下のサブ手順:
前記標的細胞培養物VOC放出データを、前記健常細胞培養物VOC放出データ及び前記対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記健常細胞培養物VOC放出データを、前記標的細胞培養物VOC放出データ及び前記対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記対照細胞培養物VOC放出データを前記健常細胞培養物VOC放出データと比較する手順
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標的細胞VOCプロファイル、前記健常細胞VOCプロファイル、及び前記対照細胞VOCプロファイルを生成する前記手順は、以下のサブ手順:
前記フィルタリングされた標的細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;
前記フィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされた標的細胞培養物VOC放出データ及び前記フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較する手順;及び
前記フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データを、前記フィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データと比較する手順
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記VOC濃度レベルは、拡散モデルを使用することにより予測される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記拡散モデルは、Farhiの方程式、及び改変Farhiモデルから成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記動的対照細胞VOCプロファイルを生成する前記手順は、前記予測された対照細胞VOCプロファイルと、前記対照群の前記少なくとも1つの試料の前記VOC放出データとの間の誤差を最小にする手順を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記動的差分VOCプロファイルを生成する前記手順は、前記予測された標的細胞VOCプロファイル、前記予測された健常細胞VOCプロファイル、及び前記少なくとも1つの試料の前記VOC放出データの間の誤差を最小にする手順を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術の分野
開示された技術は、概して人の身体および/または培養物における化学物質の排出を同定すること、詳細には人の身体および/または培養物における化学物質の排出と、対応する遺伝的、医学的および/または病理学的病状とを関連づけるための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
開示された技術の背景
代謝の、同化のおよび/または異化の工程は、化学化合物を生成する。化合物の幾つかは、3群の化合物、即ち、揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)および揮発性含硫化合物(VSC)に属する。これらの群の化合物は、典型的には室温で気体状態を維持する。代謝の、同化のおよび/または異化の工程に関係づけられる気体をモニタリングすることは、当該技術分野で公知である。例えば酸素(O2)飽和レベルをモニタリングすることは、患者の病状をモニタリングするために利用される。同様に二酸化炭素(CO2)は、広範囲の肺関係疾患での指示物質として利用される。
【0003】
発行物「Summary of Safety and Probable Benefit, Menssana Research, Inc. Hearts Breath Test for Grade 3 Heart Transplant Rejection」は、グレード3心臓移植片拒絶の診断を支援するために、心臓移植レシピエントの呼吸中のVOCをモニタリングすることを対象とする。
【0004】
de Lacy Costelloらへの発行物「A Review of the Volatiles From the Healthy Human body」は、健常なヒトの身体から報告されたVOCの一覧を対象とする。この一覧において、合計1840種のVOCが、呼吸、唾液、尿、乳、血液、皮膚分泌物、および糞便中で同定されている。872種が呼吸中で見出され、359種が唾液中で見出され、154種が血液中で見出され、256種が乳中で見出され、532種が皮膚分泌物中で見出だされ、279種が尿中で見いだされ、381種が糞便中で見出された。
【0005】
Ulanowskaらへの発行物「The Application of Statistical Methods Using VOCs to Identify Patients with Lung Cancer」は、肺癌バイオマーカの群を決定する試みを対象とする。この目的に向けて、呼吸試料が、肺癌を確認された患者137名から取得された。これらの試料が、SPME-GC/MS法を利用して分析された。呼気もまた、異なる喫煙習慣のある健常志願者(能動喫煙者、受動喫煙者および非喫煙者)143名から参照群として取得された。判別分析(DA)およびCHAIDツリーモデルなどの統計法が、データ処理および評価に用いられた。Ulanowskaは、肺癌に対する化学療法処置がアミノ酸、ペプチド、脂質および炭水化物などの分子バイオマーカを利用することにより制御され得ること、ならびにそれが、臓器の病理学的状態を反映する分子として定義され、治療的介入への特徴的な薬理学的応答であり得ることを示唆した。
【0006】
Altomareは2012年に、トリプル四重極ガスクロマトグラフィー・質量分析計(本明細書では以後「GC-MS/MS」)を用いた呼吸分析が、大腸癌および黒色腫などの特有の病状で特徴的なVOCを検出し得ることを記載した。
【0007】
表題「VOC Based, Narcolepsy Diagnostic Method」のDomingues OrtegaへのPCT特許出願公報WO2014/180974号は、対象から試料を得ること、および試料のVOCプロファイルを得るために試料中の少なくとも1種のVOCのレベルを検出すること、により患者におけるナルコレプシーを検出することを対象とする。その後、試料のVOCプロファイルが、参照VOCプロファイルと比較されて、患者がナルコレプシーを有するかどうかを決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書に開示された技術の概要
人の呼吸、体液、細胞培養物の少なくとも1種における化学物質の排出と、遺伝的または医学的病状の対応する表現とを関連づけるための、およびこれらの関連性を診断に利用するための、および/または処置の有効性を決定するための、および/または処置の選択を決定するための、新規な方法およびシステムを提供することが、開示された技術の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示された技術の実施形態によれば、患者に施された代謝的、同化的、異化的、遺伝的および/または医学的病状の少なくとも1つの選択された処置の効果を決定するための方法がしたがって、提供される。方法は、処置前標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、および処置前標的培養物のVOC放出から処置前標的細胞VOCプロファイルを作成すること、の手順を含む。方法はさらに
(a)非処置の標的細胞培養物に大量の細胞死を誘導すること、それによりMCD後標的細胞培養物を生成させること、および
(b)MCD後標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、
によりMCD標的細胞VOCプロファイルを作成する手順を含む。
【0010】
方法はまた、少なくとも1つの選択された処置を少なくとも標的細胞培養物に適用すること、各選択された処置のために処置後標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、および選択された処置の効果を決定すること、の手順を含む。処置は、
(a)処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値より大きい場合、および
(b)処置後標的細胞培養物により放出された、MCD VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置前標的細胞培養物により放出された、MCD VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値より大きい場合、
効果的と決定される。
【0011】
開示された技術の別の態様によれば、患者に施された代謝的、同化的、異化的、遺伝的および/または医学的病状の処置の有効性を決定するための方法がしたがって提供される。方法は、処置の少なくとも1つの選択された段階の前に、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つから放出されたVOCの処置前患者VOC放出データを取得すること、ならびに処置前標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること、の手順を含む。方法はさらに、
(a)非処置の標的細胞培養物に大量の細胞死を誘導すること、それによりMCD後標的細胞培養物を生成させること;
(b)MCD後標的細胞培養物のVOC放出データを取得すること;ならびに
(c)拡散モデルを利用して呼吸および/または体液中のVOCの濃度レベルを予測すること、
により予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルを作成する手順を含む。方法はまた、患者に選択された処置を適用すること、処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に取得された呼吸試料および体液試料の少なくとも1つから放出されたVOCの処置後患者VOC放出データを取得すること、ならびに選択された処置の有効性を決定すること、の手順を含む。処置は、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置後患者VOC放出データからの処置の選択された段階の間および/または後の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルでのVOCの濃度値が、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置前患者VOC放出データからの処置の選択された段階の前の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルでのVOCの濃度値よりも大きい場合、効果的と決定される。
【0012】
開示された技術のさらなる態様によれば、患者に施された処置の有効性を決定するための方法がしたがって提供される。方法は、処置の少なくとも1段階の前に呼吸および体液試料の少なくとも1つを取得すること、処置の少なくとも1段階の前に取得された呼吸試料および体液試料の少なくとも1つにより放出されたVOCのVOC放出データを取得すること、ならびに取得されたVOC放出データに対応する保存された動的差分(Dynamic Differential)VOCプロファイルを同定すること、それにより病理学的病状をVOC放出データに関連づけること、の手順を含む。方法はさらに、処置の少なくとも1段階の間および/または後に呼吸および体液試料の少なくとも1つを取得すること、処置の少なくとも1段階の間および/または後に取得された呼吸試料および体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCのVOC放出データを取得すること、ならびに少なくとも、処置の少なくとも1段階の前に取得された同定された動的差分VOCプロファイル中のVOCの濃度値を、処置の少なくとも1段階の間および/または後に取得された同定された動的差分VOCプロファイル中のVOCの濃度値と比較することにより、処置の有効性を分類すること、の手順を含む。処置の少なくとも1段階は、処置の選択された段階の間および/または後の動的差分VOCプロファイル中の標的細胞VOCプロファイルに関係づけられたVOCの濃度レベルが、処置の前の同定された動的差分VOCプロファイル中のVOCの濃度値に比べて低減される場合、成功したと分類される。
【0013】
開示された技術は、図面と併せて以下の詳細な記載からより完全に理解および察知されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】開示された技術の実施形態により構築され効力を発揮する、人の呼吸、体液、細胞培養物の少なくとも1つにおける化学物質の排出と、遺伝的または医学的病状の対応する表現とを関連づけるための、かつこれらの関連性を診断に利用するための、および/または処置の有効性を決定するための、および/または処置の選択を決定するためのシステムの概略的実例である。
【
図2A】開示された技術の別の実施形態による、VOC放出データの概略的実例である。
【
図2B】開示された技術の別の実施形態による、差分VOCプロファイルの概略的実例である。
【
図3A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図3B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図3C】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図4A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4D】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5C】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図6A】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6B】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6C】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6D】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図7A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された処置から処置抵抗性変異を生じた標的細胞のVOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図7B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された処置から処置抵抗性変異を生じた標的細胞のVOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図8A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてVOC放出を対応する異常な、または病理学的細胞に関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図8B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてVOC放出を対応する異常な、または病理学的細胞に関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図9A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてMCDの前および後にVOC放出を対応する標的細胞(例えば、発癌性細胞)に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図9B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてMCDの前および後にVOC放出を対応する標的細胞(例えば、発癌性細胞)に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図10A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図10B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図10C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図11】開示された技術のさらなる実施形態による、特定患者の乳癌に関連づけられた例示的な3つのVOC放出データのグラフ(grap)の概略的実例である。
【
図12】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13D】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13E】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図14】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、患者および/または培養物中の活性変異と不活性変異とを識別するための方法の概略的実例である。
【
図15A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者について最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【
図15B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者について最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【
図16】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、拡張Farhiモデルの概略的実例である。
【
図17A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、試料採取の前にVOC濃度を上昇させるための、および肺の選択された部分から定量された空気量を採取するための方法の概略的実例である。
【
図17B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、試料採取の前にVOC濃度を上昇させるための、および肺の選択された部分から定量された空気量を採取するための方法の概略的実例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の詳細な記載
開示された技術は、ヒトの呼吸、体液、または細胞培養物の少なくとも1つの中のVOC、SVOCおよび/またはVSCなどの化学物質の排出と、遺伝的、医学的または病理学的病状の対応する表現とを関連づけるための方法およびシステムを提供することにより先行技術の欠点を克服する。この関連性はその後、個々の患者についてまたは一般的に選択された集団についてのどちらかで、診断のために、処置の有効性を決定するために、または処置を選択するために利用されてよい。遺伝的および/または医学的および/または病理学的病状は、様々なステージの発癌過程、または病原(例えば、細菌、ウイルス、真菌など)により引き起こされる病状を包含してよい。
【0016】
一般にVOC放出データを対応する遺伝的、医学的および/または病理学的病状に関連づけることは、健常および非健常患者の両方の、インビボ(例えば、吐出された呼吸)、インビトロ(例えば、培養細胞)、またはその両方のいずれかのVOC放出データ(例えば、質量分析計での)を取得すること、ならびに遺伝的、医学的および/または病理学的病状に関連づけられたVOCプロファイルを決定すること、を含む。VOCプロファイルはその後、データベースに保存され、本明細書の以下にさらに議論される様々な目的で後に利用されてよい。用語「VOC」、「VOC放出データ」および「VOCプロファイル」は、以下においてもさらに詳述されるであろう。
【0017】
さらに本明細書において、用語「標的細胞」は、本明細書では、遺伝的、医学的および/もしくは病理学的病状(例えば、癌細胞、アルツハイマー感染細胞、胚またはウイルス)を引き起こす遺伝的、医学的および/もしくは病理学的病状を提示し得る該当する任意の細胞、または体内もしくは体外のどちらかを起源とする遺伝的、医学的および/もしくは病理学的病状に関係づけられた該当する任意の細胞に関係する(例えば、パピローマウイルスは子宮頸癌を引き起こし得るため、このウイルスは、子宮頸癌に関して該当する)。標的細胞はまた、他の標的細胞の変異であってよい。例えば発癌性細胞が、標的細胞である。細菌、ウイルスおよび真菌もまた、標的細胞であってよい。感染された組織細胞もまた、標的細胞であってよい。
【0018】
用語「細胞型」は、本明細書において、標的細胞が由来する型またはarc型に関係する。例えば乳癌細胞は、乳房でのみ見出される細胞を起源とする。別の例は、薬物感受性の起源細菌(arc型)- クレブシエラ・ニューモニア(KP)を起源とする薬物耐性菌ストリングクレブシエラ・ニューモニア/カルバペネマーゼ(KPC)である。
【0019】
用語「培養」は、少なくとも1種の培養物に関係する。用語「培養」はまた、複数の培養物に関係してもよく、さらに異なるブロス培地およびブロス条件を利用して生育された多数の細胞培養を指してもよい。例えばKPCは、Mueller Hintonブロス(MB)またはトリプティックソイブロス(TSB)で培養され得る。
【0020】
用語「VOC」は、インビボおよび/またはインビトロ試料(例えば、呼吸試料、尿試料、血液試料および/または培養試料)で見出される任意の化学化合物または複数の化合物を指す。例えば用語「VOC」は、炭化水素、エステル、アルデヒドおよびケトンなどの揮発性有機化合物に関してよく、さらにジメチルスルフィドなどの揮発性含硫化合物を指してもよい。用語「VOC」はさらに、複雑な分子代謝産物および/または生物学的エレメントに関してよい。例えばタンパク質、抗体、酵素、RNAおよびDNA。
【0021】
用語「VOC放出データ」は、少なくとも、選択されたVOCまたは複数のVOCの存在または非存在に関係する。VOC放出データはさらに、試料中の全ての、または選択されたVOCの濃度レベルを指してよい。VOC放出データはさらに、試料中の選択されたVOCまたは複数のVOCの質量スペクトル、イオン可動性、および/または保持時間(即ち、GCカラムからの溶出時間)に関係してよい。VOC放出データはまた、試料中の全てのVOCの別個での、または組み合わせた全質量スペクトル(分子イオンおよび断片)、イオン可動性、および/または保持時間に関係してもよい。例えばガスクロマトグラフィー・高電界非対称波形イオン移動度分光分析・質量分析(GC-FAIM-MS)などの分析装置は、検出された各VOCのGC保持時間分離情報、質量スペクトルおよびイオン移動度情報を提供する。VOC放出データは、パーツ・パー・ミリオン(ppm)、パーツ・パー・ビリオン(ppb)、パーツ・パー・トリリオン(ppt)などの単位で提供されてよい。VOC放出データはさらに、カウント速度、例えば部/秒、ppm/秒などで提供されてよい。VOC放出データは、例えばベクトルまたは行列の形で表現されてよい。
【0022】
用語「VOCプロファイル」は、対応する代謝的、同化的、異化的、遺伝子的および/または医学的病状(例えば、健常人、非健常人、発癌過程、代謝過程、癌タイプ、細菌、ウイルスまたは真菌)に関連づけられたVOC放出データに関係する。VOCプロファイルは、VOC濃度レベルに関係してよく、代わりまたは追加として、以下にさらに説明される通り、選択されたVOC濃度レベルの間の比率、またはVOC放出データに出現したVOCの幾つかもしくは全てにより作成されたパターンに関係してよい。VOCプロファイルは、対応する代謝的、同化的、異化的、遺伝的および/または医学的病状に関連づけられたVOC放出のテンプレートとして働き得る。本明細書における用語「健常VOCプロファイル」は、健常患者に関係するVOC放出データ(即ち、以下の:呼吸、体液または細胞培養物の少なくとも1つから)の加重平均に関係する。同様に用語「標的細胞VOCプロファイル」は、標的に関係するVOC放出データ(即ち、以下の:呼吸、体液または細胞培養物の少なくとも1つから)の加重平均に関係する。用語「動的差分VOCプロファイル」は、各プロファイル(即ち、健常プロファイル、標的プロファイル)のVOC放出データの範囲、および/または健常VOCプロファイルと標的VOCプロファイルの間の範囲に関係する。本明細書において、VOC放出データ、健常VOCプロファイル、標的VOCプロファイルおよび差分VOCプロファイルという用語は、関連の用語を記載する形容詞の次に来てよく、例えば「MCD前標的細胞VOCプロファイル」であってよい。
【0023】
ここで
図1を参照し、それは、開示された技術の実施形態により構築され効力を発揮する、人の呼吸、体液、細胞培養物の少なくとも1つにおける化学物質の排出と、遺伝的または医学的病状の対応する表現とを関連づけるための、およびこれらの関連性を診断に利用するための、および/または処置の有効性を決定するための、および/または処置の選択を決定するための、全体として100で参照されるシステムの概略的実例である。システムは、分析装置102と、データベース104と、プロセッサ106とを含む。システムはさらに、ユーザインターフェース108を含んでよい。プロセッサ106は、分析装置102に、データベース104に、かつユーザインターフェース108に、連結される。
【0024】
分析装置102は、質量分析計(MS)、イオン移動度分光分析計(IMS)、ガスクロマトグラフ(GC)、MSとGCとIMSとの様々な組み合わせ、または試料中のVOC被分析物の同定および/もしくは定量を提供する任意の他の装置であってよい。分析装置102は、例えば、トリプル四重極ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS/MS)であり、それは、サーマルディソルバー(thermal dissolver)を含んでよく、かつ選択されたイオンモニタリングMSモードで動作する。あるいは分析装置102は、較正されたプロトン移動反応・飛行時間型質量分析計(PTR-TOFMS)または較正された選択イオンフローチューブ質量分析計(SIFT-MS)、高電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)、ガスクロマトグラフ光イオン化検出器、または高電界非対称波形イオン移動度分光分析・飛行時間型質量分析計(FAIMS-TOFMS)、またはガスクロマトグラフ・四重極・飛行時間型質量分析計(GC-QTOF)、またはガスクロマトグラフOrbitrap(例えば、GC-exactive)、またはガスクロマトグラフ・四重極質量分析計Orbitrap(GC-Q Exactive)分析装置であってよい。分析装置102は、患者110の呼吸または体液中の様々な化学物質、具体的にはVOCの測定結果を取得するために用いられる。分析装置102はさらに、細胞培養物112中の様々な化学物質の測定結果を取得するために用いられる。分析装置102は、プロセッサ106に生の測定結果を提供する。
【0025】
プロセッサ106は、以下にさらに詳述される通り、化学物質の排出と、対応する代謝過程、同化過程、異化過程、遺伝子的病状よび/または医学的病状および/または病理学的病状とを関連づける。プロセッサ106はさらに、同じく下の記載において詳述される通り、診断のために、処置の有効性を決定するために、および適切な処置を選択するために、これらの関連性を利用する。
【0026】
ここで
図2Aおよび2Bを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態による、それぞれ全体として120で参照されるVOC放出データ、および全体として130で参照される差分VOCプロファイルの概略的実例である。
図2Aを参照すると、水平軸は、測定されている選択されたVOCを表し、垂直軸は、濃度レベルを表す。上述の通り、濃度レベルは、VOC分子のパーツ・パー表記(例えば、ppm、ppb、pptの表記)で、またはカウント速度として測定されてよい。一般に、典型的な人の呼吸および体液中に排泄される、または見出される1800種を超える異なるVOCが存在する。しかし、これらのVOCの全てが、必ずしも測定されるとは限らない。
【0027】
図2Bを参照すると、動的差分VOCプロファイル130は、健常および標的細胞培養物のVOC放出データと、呼吸および/または体液中に存在すると予測されるVOC濃度レベルと、呼吸および/または体液中で測定されたVOC濃度レベルから決定される健常および標的VOCプロファイルにより定義される。
図2Bにおいて、記号「X」132
Tは、健常細胞培養物から測定されたVOC濃度レベルを表す記号「X」132
Hに比べた、標的細胞培養物から測定された相対的VOC濃度レベルを表す。線134
T、および線135
Hの上の正方形136の部分は、標的細胞の発現または過剰発現を有する患者における呼吸および/または体液および/または細胞培養物中で観察されると予測される標的VOC濃度レベルを表す。線134
H、および線135
Tの下の正方形136の部分は、標的細胞の発現または過剰発現を有さない患者の呼吸および/または体液および/または細胞培養物中で観察されると予測される健常VOC濃度レベルを表す。予測されるVOC濃度レベルは、拡散モデル(例えば、Farhiの方程式または改変Farhiモデル、両者とも以下でさらに説明される)および細胞生育方程式を、健常および標的細胞培養物から測定されたVOC濃度レベルに当てはめることにより、決定される。正方形136は、健常患者、および標的細胞の発現または過剰発現を有する患者において、呼吸および/または体液から測定されたVOC放出データの範囲を表す。線135
Tは、健常患者群で測定された最高濃度レベルを表す。線135
Hは、標的細胞の発現または過剰発現を有する患者群で測定されたVOCの最低濃度レベルを表す。線135
Tと線135
Hの間の範囲は、呼吸、体液または細胞培養物中のVOCの最大正常VOC表現と標的細胞VOC表現の間の閾値を表す。点138
H~138
Tの間の範囲は、呼吸および/または体液の中に放出されたVOCの動的範囲である。
図2Aに示される通り、例えば、測定された濃度レベルが閾値未満である場合、測定されたVOCの全てが、VOCプロファイル130に含まれるとは限らない。
【0028】
VOCプロファイルデータベースの構築
ここで
図3A、3Bおよび3Cを参照し、それらは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。手順150において、呼吸および体液(例えば、血液、尿または汗)試料の少なくとも1つが、各選択された癌タイプのために複数の患者から取得される。用語「癌タイプ」は、癌のタイプ(例えば、卵巣、乳房、膀胱、皮膚、結腸ほか)および癌の遺伝子サブタイプ(例えば、HER2+、HERトリプルネガティブほか)に関係する。癌タイプは試料が取得される前に分かっているため、各呼吸および体液試料は、対応する癌タイプに関連づけられる。手順150の後、方法は、手順160に進む。
【0029】
手順152では、各選択された癌タイプのために、標的細胞試料が、複数の患者から取得される。
図3A~3Cで提示された例において、標的細胞は、それぞれの細胞型の発癌性細胞である。これらの標的細胞試料は、例えば生検手順により、取得される。手順152の後、方法は、手順162に進む。
【0030】
手順154では、標的細胞と同じ細胞型の健常細胞の試料が、複数の患者から取得される。これらの健常細胞試料もまた、例えば生検手順により、取得されてよい。手順154の後、方法は、手順162に進む。
【0031】
手順156では、標的細胞の同じ型の対照細胞の試料が、対照群から取得される。対照細胞は、対照群から取得された健常細胞である。対照細胞もまた、例えば生検手順により、取得されてよい。手順156の後、方法は、手順162に進む。
【0032】
手順158では、呼吸および/または体液の試料が、対照群から取得される。手順158の後、方法は、手順164に進む。
【0033】
手順160では、患者の呼吸および体液試料の少なくとも1つのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順160の後、方法は、手順174に進む。
【0034】
手順162では、標的細胞、健常細胞、および対照細胞の遺伝子配列が、決定される。その後、これらの遺伝子配列は、選択された癌タイプの既知の発癌性遺伝子変異に従って分類される。例えば現在、315種を超える既知の癌誘発性変異が存在する。これらの手順はまた、分子分類と称される。手順162の後、方法は、手順166に進む。
【0035】
手順164では、対照群の呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、対照群の呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順164の後、方法は、手順176に進む。
【0036】
手順166では、標的細胞、健常細胞、および対照細胞試料が、培養される。手順166の後、方法は、手順168に進む。
【0037】
手順168では、標的細胞培養物、健常細胞培養物、および対照細胞培養物に関係するVOC放出データが、それぞれの培養物から取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、標的細胞培養物に関係する放出データを取得し、健常細胞培養物および対照細胞培養物は、それぞれの培養物から取得される。手順168の後、方法は、手順170に進む。
【0038】
手順170では、各遺伝子配列について、各遺伝子変異のそれぞれの、標的細胞培養物VOC放出データ、健常細胞培養物VOC放出データ、および対照細胞培養物VOC放出データからの標的細胞VOCプロファイル、健常細胞VOCプロファイル、および対照細胞VOCプロファイルが決定される。最初に、標的細胞培養物VOC放出データ、健常細胞培養物VOC放出データ、および対照細胞培養物VOC放出データが、フィルタリングされる。一般に、標的および健常細胞は、遺伝子変異に関係しないVOCアーチファクトを生じる場合がある。標的細胞培養物VOC放出データおよび健常細胞培養物VOC放出データを、互いに、かつ対照細胞VOC放出データに比較することが、無関係のVOCアーチファクトの影響を軽減し選択された遺伝子変異に関係したVOCをより良好に識別するために利用される。例えば乳癌の幾つかの例では、健常細胞であっても癌性遺伝子を有する場合があり、かつ/または標的細胞になる過程の半ばにある場合がある。そのような例の幾つかにおいて、癌が完全に活性でない場合もある。それでもこの遺伝子の発現が、対照群から取得された対照細胞培養物VOC放出データならびに呼吸および体液試料VOC放出データの中に存在しないVOCかもしれない。このため、健常細胞におけるこの遺伝子の発現が、同定されてよい。フィルタリングされた標的細胞培養物VOC放出データは、標的細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養VOC放出データおよび対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較することにより作成される。その後、フィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データは、健常細胞培養物VOC放出データを、フィルタリングされた標的細胞培養VOC放出データおよび対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較することにより作成される。この後、フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データは、対照細胞培養物VOC放出データをフィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより作成される。その後、標的細胞VOCプロファイルは、フィルタリングされた標的細胞培養物VOC放出データをフィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データと比較することにより、決定される。健常細胞VOCプロファイルは、フィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データをフィルタリングされた標的細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較することにより、決定される。対照細胞VOCプロファイルは、フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データをフィルタリングされた健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子配列について、各遺伝子変異それぞれの、標的細胞培養物VOC放出データ、健常細胞培養物VOC放出データおよび対照細胞培養物VOC放出データから、標的細胞VOCプロファイル、健常細胞VOCプロファイルおよび対照細胞VOCプロファイルを決定する。手順170の後、方法は、手順172および180に進む。
【0039】
手順172では、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイルおよび予測された対照細胞VOCプロファイルが、各遺伝子変異の標的細胞VOCプロファイル、健常細胞VOCプロファイルおよび対照細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。VOCプロファイルは対応する遺伝子変異に関連づけられるため、予測されたVOCプロファイルもまた、対応する遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイルおよび予測された対照細胞VOCプロファイルを決定する。手順172の後、方法は、手順174および176に進む。
【0040】
手順174では、動的差分VOCプロファイルが、予測された標的細胞VOCプロファイルと、予測された健常細胞VOCプロファイルと、患者の呼吸および体液のVOC放出データとから作成される。この動的差分VOCプロファイルは、予測された標的細胞VOCプロファイルと、予測された健常細胞VOCプロファイルと、呼吸および体液試料のVOC放出データの間の誤差を最小にすることにより作成される。各予測された標的細胞VOCプロファイルおよび予測された健常細胞VOCプロファイルは、対応する遺伝子変異に関連づけられるため、各動的差分VOCプロファイルもまた、対応する遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異について動的差分VOCプロファイルを決定する。手順174から、方法は、手順178に進む。
【0041】
手順176では、動的対照VOCプロファイルが、予測された対照細胞VOCプロファイルと、対照群の呼吸および体液のVOC放出データとから作成される。動的差分VOCプロファイルと同様に、動的対照VOCプロファイルは、予測された対照細胞VOCプロファイルと、対照群の呼吸および体液試料のVOC放出データの間の誤差を最小にすることにより作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異について動的対照VOCプロファイルを決定する。手順176から、方法は、手順178に進む。
【0042】
手順178では、動的差分VOCプロファイルが、動的対照VOCプロファイルと比較されて、それらをさらに識別する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルを動的対照VOCプロファイルと比較して、それらをさらに識別する。手順178から、方法は、手順180に進む。
【0043】
手順180では、VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルおよび動的対照VOCプロファイルおよび対応する癌タイプをデータベース104に保存する。
【0044】
幾つかの例において、標的および健常細胞のVOC放出は、処置の前と後で異なっていてよい。例えば、発癌性標的細胞では、大量細胞死(MCD)処置(例えば、放射線処置、化学療法処置)が利用され、健常および標的細胞により放出されたVOCは、MCD処置の前および後で異なっていてよい。患者により放出されたVOCに及ぼすMCDの影響を決定するために、MCDは、VOCアーチファクトを生成しないような方法で(例えば、急速冷凍技術、または紫外線-UV光技術を利用することにより)細胞培養物において誘導され、MCDの前およびMCDの後に取得されたVOC放出はその後、選択された集団について対応する標的細胞に関連づけられる。
【0045】
ここで
図4A、4B、4Cおよび4Dを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。手順200では、呼吸および/または体液試料が、各選択された標的細胞型のために複数の患者から取得される。手順200の後、方法は、手順210に進む。
【0046】
手順202では、各選択された標的細胞型のために、標的細胞試料が、複数の患者から取得される。これらの標的細胞試料は、例えば、生検手順により、取得される。手順202の後、方法は、手順212に進む。
【0047】
手順204では、標的細胞と同じ細胞型の健常細胞の試料が、複数の患者から取得される。これらの健常細胞試料もまた、生検手順により取得されてよい。手順204の後、方法は、手順212に進む。
【0048】
手順206では、標的細胞と同じ型の対照細胞の試料が、対照群から取得される。これらの対照細胞試料もまた、生検手順により取得されてよい。手順206の後、方法は、手順212に進む。
【0049】
手順208では、呼吸および/または体液の試料が、対照群から取得される。手順208の後、方法は、手順214に進む。
【0050】
手順210では、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、複数の患者から取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、複数の患者から呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順210の後、方法は、手順236に進む。
【0051】
手順212では、標的細胞、健常細胞および対照細胞の遺伝子配列が、決定され、遺伝子配列が、分子分類(遺伝子分類)に従って分類される。手順212の後、方法は、手順216に進む。
【0052】
手順214では、対照群の呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、対照群の呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順214の後、方法は、手順234に進む。
【0053】
手順216では、標的細胞培養物、健常細胞培養物および対照細胞培養物が、標的細胞、健常細胞、および対照細胞の試料を培養することにより生成される。手順216から、方法は、手順218および220に進む。
【0054】
手順218では、標的細胞培養物、健常細胞培養物、および対照細胞培養物に関係するVOC放出データが、MCDを誘導する前に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDを誘導する前に、標的細胞、健常細胞、および対照細胞のVOC放出データを取得する。手順218の後、方法は、手順220および222に進む。
【0055】
手順220では、各遺伝子変異それぞれの各遺伝子配列についてフィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ、ならびにフィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データが作成されて、MCDを誘導する前に、無関係のVOCアーチファクトの影響を軽減し、選択された遺伝子変異に関係づけられたVOCをより良好に識別する。この目的に向けて、最初に、フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データが、標的細胞培養物VOC放出データを健常細胞VOC放出データおよび対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較することにより作成され、それらの全てのデータが、MCDを誘導する前に取得された。その後、フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データが、健常細胞VOC放出データ(即ち、MCDを誘導する前に取得された)を、フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データおよびMCDを誘導する前に取得された対照細胞培養物VOC放出データ(即ち、MCDを誘導する前に取得された)の両方と比較することにより作成される。この後、フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データが、MCDを誘導する前に取得された対照細胞培養物VOC放出データをフィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異それぞれの各遺伝子配列について、フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データ、フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データ、およびフィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データを決定する。手順220の後、方法は、手順228、230および231に進む。
【0056】
手順222では、大量の細胞死が、標的細胞培養物、健常細胞培養物および対照細胞培養物において誘導される。好ましくはMCDは、VOCアーチファクトを生成しない手法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)誘導される。
【0057】
手順224では、標的細胞培養物、健常細胞培養物、および対照細胞培養物に関係するVOC放出データが、大量の細胞死の後にそれらのそれぞれの培養物から取得される。MCDの前および後に利用される細胞培養物が同一培養物であることに、留意されたい。
図1を参照すると、分析装置102は、大量の細胞死の後に、標的細胞、健常細胞および対照細胞のVOC放出データを取得する。手順222の後、方法は、手順226に進む。
【0058】
手順226では、各遺伝子変異それぞれの、フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データと、フィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データとが、無関係のVOCアーチファクトの影響を軽減するために、かつMCDを誘導した後の選択された遺伝子変異に関係づけられたVOCをより良好に識別するために、作成される。最初に、フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データが、MCDを誘導した後に取得された標的細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された健常細胞培養物VOC放出データおよびMCDを誘導した後に取得された対照細胞培養物VOC放出データの両方と比較することにより作成される。その後、フィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データが、健常細胞培養物VOC放出データ(即ち、MCDを誘導した後に取得された)を、フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データおよび対照細胞培養物VOC放出データ(即ち、MCDを誘導した後に取得されたもの)と比較することにより作成される。この後、フィルタリングされた対照細胞培養物VOC放出データが、対照細胞培養物VOC放出データ(即ち、MCDを誘導した後に取得された)をフィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出と比較することにより決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異それぞれの各遺伝子配列について、フィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データ、フィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データを決定する。手順226の後、方法は、手順228、230および231に進む。
【0059】
手順228では、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルが、フィルタリングされたMCD前標的細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後標的細胞培養物VOC放出データから決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、フィルタリングされたMCS前標的細胞VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後標的細胞VOC放出データから、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順228の後、方法は、手順232に進む。
【0060】
手順230では、MCD前健常細胞VOCプロファイルおよびMCD後健常細胞VOCプロファイルが、フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データから決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、フィルタリングされたMCD前健常細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後健常細胞培養物VOC放出データから、MCD前健常細胞VOCプロファイルおよびMCD後健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順230の後、方法は、手順232に進む。
【0061】
手順231では、MCD前対照細胞VOCプロファイルおよびMCD後対照細胞VOCプロファイルが、フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データから決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、フィルタリングされたMCD前対照細胞培養物VOC放出データおよびフィルタリングされたMCD後対照細胞培養物VOC放出データから、MCD前対照細胞VOCプロファイルおよびMCD後対照細胞VOCプロファイルを決定する。手順231の後、方法は、手順232に進む。
【0062】
手順232では、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常VOCプロファイルおよび予測された対照細胞VOCプロファイルが、各遺伝子変異について決定される。予測された標的細胞VOCプロファイルは、MCD前標的細胞VOCプロファイル、MCD後標的細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。予測された健常細胞VOCプロファイルは、MCD前健常細胞VOCプロファイル、MCD後健常細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。予測された対照細胞VOCプロファイルは、MCD前対照細胞VOCプロファイル、MCD後対照細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイルおよび予測された対照細胞VOCプロファイルを決定する。手順232の後、方法は、手順234、236および240に進む。
【0063】
手順234では、動的対照細胞VOCプロファイルが、予測された対照細胞VOCプロファイルと、対照群の呼吸および体液のVOC放出データとから作成される。動的差分VOCプロファイルと同様に、動的対照VOCプロファイルは、予測された対照細胞VOCプロファイルと、対照群の呼吸および体液試料のVOC放出データの間の誤差を最小にすることにより作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異について動的対照VOCプロファイルを決定する。手順234の後、方法は、手順238に進む。
【0064】
手順236では、動的差分VOCプロファイルが、各遺伝子変異について、予測された標的細胞VOCプロファイルと、予測された健常細胞VOCプロファイルと、呼吸および/または体液試料のVOC放出データとから作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、各遺伝子変異について、予測された標的細胞VOCプロファイルと、予測された健常細胞VOCプロファイルと、呼吸および/または体液試料のVOC放出データとから動的差分VOCプロファイルを作成する。手順236の後、方法は、手順238に進む。
【0065】
手順238では、動的差分VOCプロファイルが、動的対照VOCプロファイルと比較されて、それらをさらに識別する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルを動的対照VOCプロファイルと比較して、それらをさらに識別する。手順238の後、方法は、手順240に進む。
【0066】
手順240では、動的差分VOCプロファイルおよび動的対照VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルおよび動的対照VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0067】
開示された技術の別の実施形態によれば、患者または複数の患者の身体および/または培養物からのVOC放出が、例えば細菌、ウイルス、真菌などの病原(例えば、正常な細菌叢または病的細菌叢)から生じる既知の病理学的病状に、関連づけられ得る。幾つかの例において(例えば、E.コリ菌)、これらの病原は体内に自然に存在してよく、病理学的病状は、そのような病原数の増加または減少を特徴とする。病理学的病状はまた、体内の別の細菌または病原に及ぼす処置の効果に関連したVOCアーチファクト(例えば、腸内の正常な細菌叢に及ぼす抗生物質効果に関連したVOCアーチファクト)の結果として、処置前および後に異なるVOC放出を呈してよい。
【0068】
ここで
図5A、5Bおよび5Cを参照し、それらは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【0069】
手順250では、異常なレベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つが、患者が標的細胞に関係する任意の処置を受ける前に(例えば、クレブシエラ・ニューモニエなどの細菌病原の場合には患者が抗生物質を受ける前に)取得され、同じ複数の患者からの呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つが、患者が処置を完了した後に(即ち、病原がもはや兆候的でなくなり、および/またはもはや患者の培養物中に存在しなくなった後に)取得される。処置が成功した後に採取される試料が、処置の効果が完全に減少するのに必要な時間を含む期間の後に採取され、そのため処置に直接的および間接的に関連したVOCアーチファクトがもはや試料中に存在しないことに留意されたい。手順250の後、方法は、手順258に進む。
【0070】
手順252では、正常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸試料および体液試料の少なくとも1つが、取得される。手順252の後、方法は、手順258に進む。
【0071】
手順254では、異常なレベルの標的細胞を有する複数の患者からの標的細胞試料が、任意の処置の前に取得される。手順254の後、方法は、手順260に進む。
【0072】
手順256では、正常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの標的細胞試料が、取得される。手順256の後、方法は、手順260に進む。
【0073】
手順258では、処置の前および後に取得された異常なレベルの標的細胞を有する患者からの呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCのVOC放出データが、取得される(即ち、処置が成功した場合)。加えて、正常レベルの標的細胞を有する患者からの呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCのVOC放出データもまた、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、異常なレベルの標的細胞を有する患者から任意の処置の前に取得された呼吸試料および体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCの放出データと、標的細胞に関係する処置の成功の後に取得された呼吸試料および体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCの放出データとを取得する(試料は、処置の前および後に同じ複数の患者から取得される)。分析装置102はさらに、正常レベルの標的細胞を有する複数の患者から呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つの中に放出されたVOCのVOC放出データを取得する。異常レベルの標的細胞を有する複数の患者の群、および正常レベルの標的細胞を有する複数の患者の群が、2つの異なる群であることに留意されたい。手順258の後、方法は、手順259および282に進む。
【0074】
手順259では、呼吸および/または体液標的VOCプロファイル、ならびに呼吸および/または体液健常VOCプロファイルが、決定される。呼吸および/または体液標的VOCプロファイルは、処置前に異常なレベルの標的細胞を有する複数の患者から取得されたVOC放出データを、処置に成功した後に異常なレベルの標的細胞を有する同じ複数の患者から取得されたVOC放出データ、および正常レベルの標的細胞を有する患者から取得されたVOC放出データの両方と比較することにより決定される。呼吸および/または体液健常VOCプロファイルは、複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データを、呼吸および/または体液標的VOCプロファイルと比較することにより決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、呼吸および/または体液標的VOCプロファイルと、呼吸および/または体液健常VOCプロファイルとを決定する。手順259の後、方法は、手順274および276に進む。
【0075】
手順260では、異常なレベルの標的細胞を有する患者、および正常レベルの標的細胞を有する患者の両方からの標的細胞の遺伝子配列が決定され、標的細胞が分類される。異常および正常レベルの標的細胞を有する患者からの標的細胞の遺伝子配列が、分子分類のために決定され、異常なレベルの標的細胞を有する患者からの標的細胞が、変異していたかどうかが、決定される。手順260の後、方法は、手順262に進む。
【0076】
手順262では、標的細胞培養物および正常細胞培養物が、それぞれ異常なレベルの標的細胞を有する患者からの細胞試料、および正常レベルの標的細胞を有する患者からの細胞試料の中の細胞を培養することにより生成される。手順262の後、方法は、手順264および266に進む。
【0077】
手順264では、標的および正常細胞培養物中の細胞により放出されたVOCに関係するVOC放出データが、MCDを誘導する前に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDを誘導する前に、標的および正常細胞培養物により放出されたVOCに関係するVOC放出データを取得する。手順264の後、方法は、手順266および270に進む。
【0078】
手順266では、大量の細胞死が、標的および正常細胞培養物中の細胞に誘導される。先の記載と同様に、MCDは、VOCアーチファクトを生成しない手法(例えば、急速冷凍、UV光)で誘導される。手順266の後、方法は、手順268に進む。
【0079】
手順268では、標的および正常細胞培養物中の細胞により放出されたVOCに関係するVOC放出データが、MCDを誘導した後に取得される。MCDの後にVOC放出データを取得するのに利用された細胞培養物が、MCDの前にVOCを取得するのに利用されたものと同じ細胞培養物であることに留意されたい。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDを誘導した後に細胞培養物により放出されたVOCに関係するVOC放出データを取得する。手順268の後、方法は、手順272に進む。
【0080】
手順270では、MCDを誘導する前に取得された標的細胞培養物VOC放出データが、MCDを誘導する前に取得された正常細胞培養物VOC放出データと比較されて、それらを識別する。標的細胞培養物VOC放出データは、任意の処置の前に異常なレベルの標的細胞を有する患者を起源とする細胞培養物のVOC放出データに関係する。正常なVOC放出データは、正常レベルの標的細胞を有する患者を起源とする細胞培養物のVOC放出データに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCDを誘導する前に標的細胞培養物VOC放出データを正常細胞培養物VOC放出データと比較して、それらを識別する。手順270の後、方法は、手順274に進む。
【0081】
手順272では、MCDを誘導した後に取得された標的細胞培養物VOC放出データがMCDを誘導した後の正常細胞培養物VOC放出データと比較されて、それらを識別する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCDを誘導した後に取得された標的細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された正常細胞培養物VOC放出データと比較されて、それらを識別する。手順272の後、方法は、手順276に進む。
【0082】
手順274では、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルが作成される。これらのプロファイルは、MCDを誘導する前に取得された標的細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された標的細胞培養物VOC放出データならびに呼吸および/または体液標的VOCプロファイルの両方と比較することにより作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCDを誘導する前に取得された標的細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された標的細胞培養物VOC放出データならびに呼吸および/または体液標的VOCプロファイルの両方と比較することにより、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順274の後、方法は、手順278に進む。
【0083】
手順276では、MCD前正常細胞VOCプロファイルおよびMCD後正常細胞VOCプロファイルが作成される。これらのプロファイルは、MCDを誘導する前に取得された正常細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された正常細胞培養物VOC放出データならびに呼吸および/または体液健常VOCプロファイルの両方と比較することにより作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCDを誘導する前に取得された正常細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後に取得された正常細胞培養物VOC放出データならびに呼吸および/または体液健常VOCプロファイルの両方と比較することにより、MCD前正常細胞VOCプロファイルおよびMCD後正常細胞VOCプロファイルを作成する。手順276の後、方法は、手順278に進む。
【0084】
手順278では、予測された標的VOCプロファイルおよび予測された標的VOCプロファイルが決定される。予測された標的VOCプロファイルは、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中の濃度レベルを予測することにより決定される。予測された健常VOCプロファイルは、MCD前およびMCD後健常VOCプロファイルから呼吸および体液中の濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された標的VOCプロファイルおよび予測された健常VOCプロファイルを決定する。手順278の後、方法は、手順280および282に進む。
【0085】
手順280では、異常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データを、正常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データ、予測された標的VOCプロファイルならびに予測された健常VOCプロファイルと比較することにより、標的細胞への患者の応答に関係づけられた異常応答VOCプロファイルおよび正常応答VOCプロファイルを作成する。これらの応答正常および異常VOCプロファイルは、標的細胞への患者の応答(例えば、免疫系、抗体産生)に関係づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、異常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データを、正常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データ、予測された標的VOCプロファイルならびに予測された健常VOCプロファイルと比較することにより標的細胞への患者の応答に関係づけられた異常応答VOCプロファイルおよび正常応答VOCプロファイルを作成する。手順280の後、方法は、手順282および284に進む。
【0086】
手順282では、動的差分VOCプロファイルが、予測された標的VOCプロファイル、予測された健常VOCプロファイル、異常応答VOCプロファイル、異常応答VOCプロファイル、異常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データ、ならびに正常レベルの標的細胞を有する複数の患者からの呼吸および/または体液VOC放出データから作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルを作成する。手順282の後、方法は、手順284に進む。
【0087】
手順284では、VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0088】
開示された技術の別の実施形態によれば、患者または複数の患者の身体からのVOC放出が、各選択されたミスマッチ修復遺伝子(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定することにより、MMR活性化処置への標的細胞の暴露に関連づけられ得る。ここで
図6A~6Dを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【0089】
手順300では、各選択された遺伝子のために、呼吸試料および/または体液試料が、MMR遺伝子活性化処置を適用する前に複数の患者から取得される。遺伝子は、MMR遺伝子活性化療法に適した遺伝子から選択される。手順300の後、方法は、手順302に進む。
【0090】
手順302では、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸試料および/または体液試料のVOC放出データを取得する。手順302から、方法は、手順348に進む。
【0091】
手順304では、各選択された遺伝子のために、標的細胞試料が、複数の患者から取得される。手順304から、方法は、手順308に進む。
【0092】
手順306では、各選択された遺伝子のために、標的細胞と同じ型の健常細胞試料が、同じ複数の患者から取得される(即ち、標的細胞と健常細胞のセットが、各選択された遺伝子のために複数の患者の各患者から取得される)。手順306から、方法は、手順308に進む。
【0093】
手順308では、2つの標的細胞培養物セットおよび健常細胞培養物が、標的および健常細胞試料から生成される。以下の説明を明確にするために、標的細胞培養物セットの第一のものを「培養物セットA」と称し、標的細胞培養物セットの第二のものを「培養物セットB」と称する。手順308から、方法は、手順310に進む。
【0094】
手順310では、2つの標的細胞培養物セット(即ち、培養物セットAおよび培養物セットB)および健常細胞培養物中の細胞に関係する処置前VOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、2つの標的細胞培養物および健常細胞培養物に関係するVOC放出データを取得する。手順310から、方法は、手順312、328、330、331に進む。
【0095】
手順312では、両方の標的細胞培養物セット中の(即ち、培養物セットAおよび培養物セットB中の)標的細胞、および健常細胞培養物中の健常細胞の遺伝子配列が、検証される。MMR遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定する場合、標的細胞の遺伝子配列は、既に知られていて、検証のみがなされるべきであり、健常細胞培養物は、病理学的工程もしくは病状の非存在を確定するため、または工程もしくは病状のレベルを決定するために遺伝子シーケンシングされる。手順312から、方法は、手順314に進む。
【0096】
手順314では、標的細胞それぞれの処置前標的細胞VOCプロファイル、および健常細胞それぞれの処置前健常細胞VOCプロファイルが、両方の標的細胞培養物セットの(即ち、培養物セットAおよび培養物セットBの)標的細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養物の健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置前標的VOCプロファイルおよび処置前健常VOCプロファイルを決定する。手順314から、方法は、手順316、318、320、340に進む。
【0097】
手順316では、選択されたMMR遺伝子活性化処置が、2つの標的細胞培養物セットのうちの第一のもの(即ち、培養物セットA)の中の細胞に適用される。手順316から、方法は、手順322に進む。
【0098】
手順318では、大量の細胞死が、残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、急速冷凍技術または紫外線-紫外光技術を標的細胞培養物に利用することにより)、任意の処置に暴露されていない2つの標的細胞培養物セットのうちの第二のもの(即ち、培養物セットB)の中の細胞に誘導される。手順318から、方法は、手順324に進む。
【0099】
手順320では、MMR遺伝子活性化療法が、健常細胞培養物中の細胞に適用される。手順320から、方法は、手順326に進む。
【0100】
手順322では、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、培養物セットA)における標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データが、選択されたMMR遺伝子活性化処置の適用の後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MMR遺伝子活性化処置の適用後に、培養物セットAの中の標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順322の後、方法は、手順328に進む。
【0101】
手順324では、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、培養物セットB)の中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データが、MCDの誘導後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの誘導後に培養物セットBの中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順324の後、方法は、手順330に進む。
【0102】
手順326では、健常細胞培養物に関係する処置後健常細胞培養物VOC放出データが、選択されたMMR遺伝子活性化処置の後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MMR遺伝子活性化処置の適用後に、健常細胞培養物に関係する処置後健常細胞培養物VOC放出データを取得する。手順326の後、方法は、手順332に進む。
【0103】
手順328では、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、培養物セットA)の中の標的細胞から取得された標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、培養物セットA)の中の標的細胞から取得された標的細胞の処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MMR遺伝子活性化標的VOCプロファイルを作成する。MMR遺伝子活性化標的VOCプロファイルは、選択されたMMR遺伝子活性化処置が適用された場合、標的細胞培養物により放出されるVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞から取得された標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、選択されたMMR遺伝子活性化療法に供された後の標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞から取得された標的細胞の処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MMR遺伝子活性化標的VOCプロファイルを作成する。手順328の後、方法は、手順334に進む。
【0104】
手順330では、MCD後VOCプロファイルが、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、培養物セットB)の中の標的細胞から取得された標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、MCDが誘導された後の標的細胞培養物の第二のセット(即ち、培養物セットB)の中の標的細胞から取得された標的細胞のMCD後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより作成される。MCD後標的細胞VOCプロファイルは、残留VOCを発生しない方法でMCDが誘導された場合、標的細胞培養物「B」により放出されるVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD前の標的細胞の第二のセットの中の標的細胞から取得された標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、MCDを誘導した後の標的細胞培養物の第二のセットの中の標的細胞から取得された標的細胞のMCD後標的細胞培養物VOC放出データを比較することにより、MCD後標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順330の後、方法は、手順336に進む。
【0105】
手順332では、MMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルが、健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを健常細胞の処置後VOC放出データと比較することにより作成される。MMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルは、MMR遺伝子活性化処置が適用された場合、健常細胞培養物により放出されるVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを、健常細胞の処置後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルを作成する。手順332の後、方法は、手順338に進む。
【0106】
手順334では、予測されたMMR遺伝子活性化標的細胞VOCプロファイルが、MMR遺伝子活性化標的細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMMR遺伝子活性化標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順334の後、方法は、手順342に進む。
【0107】
手順336では、予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイルが、MCD後標的細胞VOCプロファイルからの呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順336の後、方法は、手順342に進む。
【0108】
手順338では、予測されたMMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルが、MMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順338の後、方法は、手順342に進む。
【0109】
手順342では、患者のMMR遺伝子活性化処置が、開始される。手順342の後、方法は、手順344に進む。
【0110】
手順344では、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つが、選択されたMMR遺伝子活性化処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に複数の患者から取得される。手順344の後、方法は、手順346に進む。
【0111】
手順346では、患者の呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、選択されたMMR遺伝子活性化処置の少なくとも1つの選択された段階で取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、選択されたMMR遺伝子活性化処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に患者の呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データを取得する。手順346の後、方法は、手順348に進む。
【0112】
手順348では、各選択された遺伝子変異について動的差分VOCプロファイルが、予測されたMMR遺伝子活性化標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD標的細胞VOCプロファイル、予測されたMMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイル、ならびに処置前および処置後の複数の患者の呼吸および/または体液VOC放出データから作成される。MMR遺伝子活性化処置の前に採取された試料からの各患者の呼吸および/または体液VOC放出データについて、処置の間または後に採取された試料からの呼吸および/または体液VOC放出データが、同じ患者から採取されるべきであることが、留意されなければならない。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMMR遺伝子活性化標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD標的細胞VOCプロファイル、予測されたMMR遺伝子活性化健常細胞VOCプロファイル、ならびにMMR遺伝子活性化療法で処置される前および処置される間または後の複数の患者からのVOC放出データから、動的差分VOCプロファイルを作成する。手順348の後、方法は、手順350に進む。
【0113】
手順350では、VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0114】
VOCを測定することはまた、標的細胞が処置抵抗性変異または複数の変異を起こしたかどうかを決定するために利用されてもよい。その上、変異型標的細胞は、同じ処置または異なる処置に供された場合に他の変異を起こしてもよい。異なる処置は、異なる投与量の治療薬による同じタイプの処置(例えば、化学療法、放射線療法または抗生物質)、または異なるタイプの処置であってよい。言い換えれば、処置が、数世代の変異(generations of mutations)を起こしてよい。例えば肺癌のTP-53型標的細胞は、1つの処置に供された場合KSR型の標的細胞に変異してよい。KSR型標的細胞が、同じまたは別の処置に供された場合に、肺癌の別のタイプのオフターゲット細胞に変異してもよい。この目的に向けて、処置抵抗性変異または複数の変異を起こすことが知られた標的細胞培養物のVOC放出データが、処置抵抗性変異または複数の変異の発症を惹起することが知られた処置に供される前、および供された後に取得される。処置前および処置後の培養物は、同じ培養物である。1種または複数の処置抵抗性変異(遺伝子シーケンシングにより検証される)を起こした標的細胞培養物のVOC放出データは、処置を適用する前に、培養物のVOC放出データと比較される。この工程は、同じ処置のために複数回、および/または異なる処置のために複数回、反復されてよい。変異の世代の全てまたは選択された1つの標的細胞VOCプロファイルを含む複雑な処置抵抗性標的細胞VOCプロファイルが、作成される。本明細書における標的細胞の「型」という用語は、他の標的細胞から変異し得る、もしくは変異し得ない標的細胞、または過去に処置されている、もしくは処置されていない標的細胞に関係する。ここで
図7Aおよび7Bを参照し、それらは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された処置から処置抵抗性変異を発症した標的細胞のVOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【0115】
手順400では、処置抵抗性変異を起こすことが知られた選択された型の標的細胞それぞれの細胞培養物が、生成される。手順400の後、方法は、手順402に進む。
【0116】
手順402では、標的細胞培養物中の標的細胞により放出されたVOCに関係するVOC放出データが、処置を施す前に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、標的細胞培養物からの処置される前の標的細胞により放出されたVOCに関係するVOC放出データを取得する。手順402の後、方法は、手順404および手順414に進む。
【0117】
手順404では、処置抵抗性変異または複数の変異を生成することが知られた処置が、標的細胞培養物に適用される。手順404の後、方法は、手順406に進む。
【0118】
手順406では、例えば顕微鏡走査を利用することにより、処置された標的細胞培養物において、処置抵抗性を発症した標的細胞を同定する。手順406の後、方法は、手順408に進む。
【0119】
手順408では、それぞれの変異型標的細胞培養物が、各同定された処置抵抗性変異型標的細胞のために生成される(即ち、選択された処置を適用した後)。言い換えれば、これらの処置抵抗性変異型標的細胞の新しい培養物が、別に作製され、そのため選択された処置が、追加の処置抵抗性変異を同定するために、新しい培養物に適用され得る。手順408の後、方法は、手順410に進む。
【0120】
手順410では、起こった処置抵抗性変異を同定された標的細胞が、遺伝子シーケンシングされて、変異または複数の変異(即ち、存在する場合)を決定し、かつ処置後標的細胞の分子分類を同定する。手順410の後、方法は、手順412に進む。
【0121】
手順412では、変異型標的細胞に関係するVOC放出データが、それぞれのミュートされた(muted)標的細胞培養物から取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、変異型標的細胞培養物からVOC放出データを取得する。手順412の後、方法は、手順414に進む。
【0122】
手順414では、処置抵抗性標的細胞のVOCプロファイルの作成が、処置前標的細胞培養物VOC放出データ(即ち、処置前の標的細胞培養物のもの)を、変異型細胞培養物の変異型標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、任意の処置前の標的細胞培養物のVOC放出データを、変異型標的細胞培養物の標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、処置抵抗性VOCプロファイルを作成する。手順414の後、方法は、手順416に進む。
【0123】
手順416では、複雑な処置抵抗性VOCプロファイルが、決定される。複雑な処置抵抗性VOCプロファイルは、選択された数の変異世代の処置抵抗性標的細胞VOCプロファイルからの情報を含む。
図1を参照すると、プロセッサ106は、複雑な処置抵抗性VOCプロファイルを決定する。手順416の後、方法は、手順418に進む。
【0124】
手順418では、予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルが、複雑な処置抵抗性VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルを決定する。手順418の後、方法は、手順420に進む。
【0125】
手順420では、予測された処置抵抗性VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された処置抵抗性VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0126】
図7Aおよび7Bに記載された方法が、選択された数の処置または変異またはそれらの両方のために反復され得ることに、留意されたい。複雑な処置抵抗性VOCプロファイルは、これらの反復のそれぞれからの情報を取り込む。上記の保存された処置抵抗性VOCプロファイルは、個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するために利用されてよい。
【0127】
個体についてのVOCプロファイルの決定
VOCプロファイルは、一般的集団についてのVOCプロファイルを決定するのと同様に、個体について決定されてよい。上述の通り、開示された技術によれば、患者または複数の患者の身体からのVOC放出が、例えば細胞遺伝子変異または複数の変異から生じる対応する癌タイプに、関連づけられ得る。以下は、個々の患者の身体からのVOC放出を、細胞遺伝子変異から生じる対応する癌タイプに関連づけた例である。しかしながら、この技術は、任意の形態および型の細胞に適用されてよい。
【0128】
ここで
図8Aおよび8Bを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてVOC放出を対応する異常な、または病理学的細胞に関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
図8Aおよび8Bでは、例示的な病理学的細胞は、癌タイプの形態である。
【0129】
手順450では、呼吸および体液(例えば、血液、尿または汗)試料の少なくとも1つが、選択された細胞遺伝子変異のために患者から取得される。細胞遺伝子変異は、癌タイプに関連づけられてよい。用語「癌タイプ」は、癌のタイプ(例えば、卵巣、乳房、膀胱、皮膚、結腸ほか)および癌の遺伝子サブタイプ(例えば、HER2+、HERトリプルネガティブほか)に関係する。癌タイプおよびこの癌を引き起こす遺伝子変異は、試料が取得される前に知られている。取得された呼吸および体液試料は、癌タイプに関連づけられる。手順450の後、方法は、手順456に進む。
【0130】
手順452では、選択された遺伝子変異を呈する標的細胞試料が、患者から取得される。
図8Aおよび8Bで提示された例では、標的細胞は、それぞれの遺伝子変異を呈するそれぞれの癌タイプの発癌性細胞である。これらの標的細胞は、例えば生検手順により、取得される。手順452の後、方法は、手順458に進む。
【0131】
手順454では、標的細胞と同じ型の健常細胞の試料が、患者から取得される。これらの健常細胞はまた、例えば生検手順により、取得されてもよい。手順454の後、方法は、手順458に進む。
【0132】
手順456では、呼吸および体液試料の少なくとも1つのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順456の後、方法は、手順468に進む。
【0133】
手順458では、細胞試料中の標的および健常細胞が、培養される。手順458の後、方法は、手順460に進む。
【0134】
手順460では、培養された標的細胞および健常細胞の遺伝子配列が、決定される。その後、細胞試料の分子分類が、既知の遺伝子変異に従って検証される。一般に、患者の標的細胞の遺伝子変異の分類は標的細胞が採取される前に知られているため、この分類は、検証のみを必要とする。例えば現在、315種を超える関係する変異が存在する。この手順は、分子分類とも称される。手順460の後、方法は、手順462に進む。
【0135】
手順462では、標的細胞および健常細胞の両方に関係するVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、標的細胞および健常細胞の両方に関係するVOC放出データを取得する。手順462の後、方法は、手順464に進む。
【0136】
手順464では、選択された遺伝子変異それぞれの(したがってそれぞれの癌タイプの)標的細胞VOCプロファイル、および健常細胞それぞれの健常細胞VOCプロファイルが、標的細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、標的細胞VOCプロファイルおよび健常細胞VOCプロファイルを作成する。手順464の後、方法は、手順466に進む。
【0137】
手順466では、予測された標的細胞VOCプロファイルが、標的細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定され、予測された健常細胞VOCプロファイルが、健常細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。標的細胞VOCプロファイルは選択された遺伝子変異に関連づけられるため、予測された標的細胞VOCプロファイルもまた、同じ遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞VOCプロファイルおよび健常細胞VOCプロファイルから、予測された標的細胞VOCプロファイルおよび予測された健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順466の後、方法は、手順468に進む。
【0138】
手順468では、動的差分VOCプロファイルが、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイル、ならびに呼吸および体液のVOC放出データから作成される。この動的差分VOCプロファイルは、予測された標的細胞VOCプロファイルと呼吸および体液試料のVOC放出データの間の誤差を最小にすることにより、作成される。予測された標的細胞VOCプロファイルは対応する遺伝子変異に関連づけられるため、動的差分VOCプロファイルもまた、遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルを決定する。手順468の後、方法は、手順470に進む。
【0139】
手順470では、動的差分VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0140】
VOCプロファイルは、個々の患者における処置の有効性を決定するために利用されてよい。しかし、処置の有効性を決定するためには、患者により放出されるVOCに対する、大量の細胞死(MCD)を誘導する処置(例えば、化学療法、放射線療法)の影響が決定される必要がある。この影響は、VOCアーチファクトを発生しないような方法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)細胞培養物中にMCDを誘導すること、ならびにMCDの前と後で、個々の患者においてVOC放出を対応する標的細胞に関連づけることにより決定される。ここで
図9Aおよび9Bを参照し、それらは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてMCDの前および後にVOC放出を対応する標的細胞(例えば、発癌性細胞)に関連づけるための方法の概略的実例である。
【0141】
手順500では、呼吸および体液(例えば、血液、尿または汗)試料の少なくとも1つのが、選択された標的細胞および/または細胞遺伝子変異のために患者から取得される。上記と同様に、病理学的病状を引き起こす標的細胞型および遺伝子変異は、試料が取得される前に知られている。取得された呼吸および体液試料は、その標的細胞型に関連づけられる。手順500の後、方法は、手順506に進む。
【0142】
手順502では、各選択された標的細胞型のために、標的細胞試料が、患者から取得される。標的細胞型は、選択された遺伝子変異を呈する、または病理学的病状を引き起こす標的細胞であってよい。
図9Aおよび9Bに提示された例では、標的細胞は、それぞれの遺伝子変異を呈するそれぞれの癌タイプの発癌性細胞である。しかしながら、
図9Aおよび9Bに記載された方法は、任意の標的細胞に適用され得る。これらの標的細胞は、例えば生検手順により、取得される。手順502の後、方法は、手順508に進む。
【0143】
手順504では、標的細胞の同じ型の健常細胞の試料が、患者から取得される。これらの健常細胞は、例えば生検手順により、取得されてもよい。手順504の後、方法は、手順508に進む。
【0144】
手順506では、呼吸および体液試料の少なくとも1つのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸および体液の少なくとも1つの放出データを取得する。手順506の後、方法は、手順528に進む。
【0145】
手順508では、標的細胞および健常細胞の遺伝子配列が、決定される。その後、遺伝子配列が、選択された癌タイプの既知の発癌性遺伝子変異に従って分類される。この手順は、分子分類とも称される。手順508の後、方法は、手順510に進む。
【0146】
手順510では、細胞試料中の標的および健常細胞が、培養される。手順510の後、方法は、手順512および514に進む。
【0147】
手順512では、健常細胞および標的細胞の両方に関係するVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、健常および標的細胞の両方に関係する放出データを取得する。手順512の後、方法は、手順518に進む。
【0148】
手順514では、MCDが、標的および健常細胞培養物中に誘導される。好ましくはMCDは、VOCアーチファクトを発生しない手法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)誘導される。MCDが、MCD前VOC放出データを取得するために用いられたものと同じ標的細胞培養物および健常細胞培養物中に誘導されることが、留意されなければならない。手順514の後、方法は、手順516に進む。
【0149】
手順516では、標的細胞培養物に関係するVOC放出データ、および健常細胞培養物に関係するVOC放出データが、MCDが標的細胞および健常細胞培養物中に誘導された後に、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの後に標的細胞培養物および健常細胞培養物の両方からVOC放出データを取得する。手順516の後、方法は、手順520に進む。
【0150】
手順518では、標的細胞培養物VOC放出データが、MCD前に健常細胞培養物VOC放出データと比較されて、それらを識別する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD前に標的細胞培養物のVOC放出データを健常細胞培養物のVOC放出データと比較して、それらを識別する。手順518の後、方法は、手順522および524に進む。
【0151】
手順520では、標的細胞培養物VOC放出データが、MCD後に健常細胞培養物VOC放出データと比較されて、それらを識別する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD後に標的細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物VOC放出データと比較して、それらを識別する。手順520の後、方法は、手順522および524に進む。
【0152】
手順522では、MCD前の標的細胞培養物VOC放出データを、MCD後の標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルを作成する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD前の標的細胞培養物VOC放出データを、MCD後の標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順522の後、方法は、手順526に進む。
【0153】
手順524では、MCD前の健常細胞培養物VOC放出データを、MCD後の健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD前健常細胞VOCプロファイルおよびMCD後健常細胞VOCプロファイルを作成する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD前の健常細胞培養物VOC放出データを、MCD後の健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD前健常細胞VOCプロファイルおよびMCD後健常細胞VOCプロファイルを作成する。手順524の後、方法は、手順526に進む。
【0154】
手順526では、予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD前健常細胞VOCプロファイルおよび予測されたMCD後健常細胞VOCプロファイルが、決定される。予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイルおよび予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイルが、MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。予測されたMCD前健常細胞VOCプロファイルおよび予測されたMCD後健常細胞VOCプロファイルが、MCD前健常細胞VOCプロファイルおよびMCD後健常細胞VOC健常細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式fまたは改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。MCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後は選択された遺伝子位変異に関連づけられるため、予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイルおよび予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイルもまた、同じ遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、MCD前標的細胞VOCプロファイル、MCD後標的細胞VOCプロファイル、MCD前健常細胞VOCプロファイル、およびMCD後健常細胞VOCプロファイルから呼吸および体液中の予測されたVOC濃度レベルを決定する。手順526の後、方法は、手順528に進む。
【0155】
手順528では、動的差分VOCプロファイルが、予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD後標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD前健常細胞VOCプロファイル、予測されたMCD後健常細胞VOCプロファイルならびに呼吸および体液のVOC放出データから作成される。この動的差分VOCプロファイルは、予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイルと、MCD後標的細胞VOCプロファイルと、呼吸および体液試料のVOC放出データの間の誤差を最小にすることにより、作成される。予測されたMCD前標的細胞VOCプロファイルおよびMCD後標的細胞VOCプロファイルは対応する遺伝子変異に関連づけられるため、動的差分VOCプロファイルもまた、それらの遺伝子変異に関連づけられる。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルを決定する。手順528の後、方法は、手順530に進む。
【0156】
手順530では、動的差分VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的差分VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0157】
ここで
図10A、10Bおよび10Cを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。手順550では、個人向け処置抵抗性VOCプロファイルが、例えば本明細書の以下の
図13A、13B、13C、13Dおよび13Eと併せて本明細書の以下に記載された方法に従って、個体について決定される。手順550の後、方法は、手順552に進む。
【0158】
手順552では、処置される個体の標的細胞が、培養される。手順552の後、方法は、手順554に進む。
【0159】
手順554では、標的細胞培養物に関係するVOC放出データが、処置前に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、処置前に標的細胞培養物に関係するVOC放出データを取得する。手順554の後、方法は、手順556および手順570に進む。
【0160】
手順556では、少なくとも1つの選択された処置が、標的細胞培養物に施される。選択された処置または複数の処置が1種より多くの薬物および/または治療を含む場合、これらの選択された処置は、別個に、および一緒に、それぞれの標的細胞培養物の異なるセットに適用される。手順556の後、方法は、手順558および手順562に進む。
【0161】
手順558では、標的細胞培養物のVOC放出データが、少なくとも1つの選択された処置が標的細胞培養物に適用された後、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、少なくとも1つの選択された処置の後に、標的細胞培養物のVOC放出データを取得する。手順558の後、方法は、手順559および手順568に進む。
【0162】
手順559では、処置前標的細胞培養物VOC放出データを、少なくとも1つの処置のそれぞれの処置後標的細胞培養物VOC放出データと別個に比較することにより、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置後標的細胞VOCプロファイルを作成する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置前標的細胞培養物VOC放出データを処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置後標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順559の後、方法は、手順560に進む。
【0163】
手順560では、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置後標的細胞VOCプロファイルを比較することによる処置抵抗性変異の同定が、保存された予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイル(例えば、
図7Aおよび7Bと併せて本明細書の先に記載された方法に従って決定されたものなどのプロファイル)と比較される。
図1を参照すると、プロセス106は、処置抵抗性変異を同定するために、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置後標的細胞VOCプロファイルを、保存された予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルと比較する。手順560の後、方法は、手順562に進む。
【0164】
手順562では、対応する処置後標的細胞VOCプロファイルで処置抵抗性変異を生成することが同定され、かつ保存された予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルに出現しない標的細胞が、別個に培養されて、新しい標的細胞培養物を生成する。手順562の後、方法は、手順566に進む。
【0165】
手順564では、処置抵抗性変異を呈する別個に培養された標的細胞(即ち、培養物中で同定されたが、処置後標的細胞VOCプロファイルが保存された予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルと比較された時に同定されない)が、処置抵抗性変異を同定および分類するために、遺伝子シーケンシングされ分子同定を受ける。手順564の後、方法は、手順566に進む。
【0166】
手順566では、新しい標的細胞培養物のVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、新しい標的細胞培養物のVOC放出データを取得する。手順566の後、方法は、手順568に進む。
【0167】
手順568では、新しい処置後標的細胞VOCプロファイルが、処置前標的細胞培養物VOC放出データを新しい処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置前標的細胞培養物VOC放出データを新しい処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、新しい処置後標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順568の後、方法は、手順570に進む。
【0168】
手順570では、複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルが、処置前に標的細胞培養物から取得されたVOC放出データを、処置前標的細胞VOCプロファイル、処置後標的細胞VOCプロファイル(即ち、保存された予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルを用いて同定された処置抵抗性変異に関係する)、新しい処置後標的細胞VOCプロファイル(即ち、遺伝子シーケンシングおよび分子同定を用いて同定された変異に関係する)、および新しい標的細胞培養物から取得されたVOC放出データ(即ち、処置抵抗性を示しした標的細胞に関係する)と比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置前に標的細胞培養物から取得されたVOC放出データを、処置前標的細胞VOCプロファイル、処置後標的細胞VOCプロファイル、新しい処置後標的細胞VOCプロファイル、および新しい標的細胞培養物から取得されたVOC放出データと比較することにより、複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを決定する。手順570の後、方法は、手順572に進む。
【0169】
手順572では、予測された複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルが、複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルから呼吸および体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された複雑な個人向け処置抵抗性プロファイルを決定する。手順572の後、方法は、手順574に進む。
【0170】
手順574では、動的な複雑な処置抵抗性VOCプロファイルが、個人向け処置有効性VOCプロファイルを予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルへのフィルターとして用いて、処置抵抗性変異に関係しないアーチファクトを軽減することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセス106は、保存された個人向け処置の有効性を利用して予測された複雑な処置抵抗性VOCプロファイルにおける処置抵抗性変異に関係しないアーファクトを軽減し、動的な複雑な処置抵抗性VOCプロファイルを決定する。手順574の後、方法は、手順576に進む。
【0171】
手順576では、動的な複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルが、データベースに保存される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的な複雑な個人向け処置抵抗性VOCプロファイルをデータベース104に保存する。
【0172】
保存されたVOCプロファイルの用途
VOCプロファイルの一用途は、個人が発癌性遺伝子変異を有するかどうかを決定すること、およびどの発癌性遺伝子変異が個人において活性であるかをさらに同定すること、である。この目的に向けて、呼吸および/または体液のVOC放出データが、個人から採取される。その後、このVOC放出データは、保存された動的差分VOCプロファイル(例えば、
図3A、3Bおよび3Cと併せて記載された方法に従って決定された動的差分VOCプロファイル)と比較される。上述の通り、これらの保存された動的差分VOCプロファイルのそれぞれは、それぞれの遺伝子変異に関連づけられる。VOC放出データと、少なくとも1つの保存された動的差分VOCプロファイルの間に一致が検出された場合、その患者は、発癌性遺伝子変異を有すると同定される。さらに、取得されたVOC放出データと最良に一致する動的差分VOCプロファイルに関連づけられた遺伝子変異は、活性遺伝子変異として同定される。
【0173】
データベース内に保存されたVOCプロファイルは、患者に施された処置の有効性を決定するために用いられてよい。したがって、複数の段階を含み得る長期処置(例えば、化学療法、放射線療法、薬物療法)の間であっても、処置の有効性が、処置前の患者の呼吸および/または体液からVOC放出データを取得すること、およびデータベース内に保存された動的差分または予測されたVOCプロファイルのどれが取得されたVOC放出データと一致するかを確定すること、により決定されてよい。呼吸および/または体液のVOC放出データはまた、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の後(即ち、処置段階の少なくとも1つの間、または処置の終了時、または任意のそれらの組み合わせ)に取得される。選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の後に取得されたVOC放出データはまた、保存された動的差分または予測されたVOCプロファイルおよび処置前に取得されたVOC放出データの両方と比較されて、施された処置の有効性を確認する。VOC放出データが、処置の1つより多くの段階で取得される場合には、それらは、互いと、処置前のVOC放出データと、および保存されている動的差分または予測されたVOCプロファイルと比較される。患者の処置が既に開始している場合には、処置の有効性は、処置の選択された段階の前および後に患者の呼吸および/または体液のVOC放出データを取得することにより、決定され得る。処置の選択された段階の前に取得されたVOC放出データは、処置の選択された段階の後に取得されたVOC放出データ、および保存された動的差分または予測されたVOCプロファイルと比較されて、処置の有効性を決定する。
【0174】
さらに、上述の通り、MCDは、VOCプロファイルを決定する場合に利用される。以下にさらに詳述される通り、VOCアーチファクトを発生しない手法でのMCDの利用も、処置の有効性を決定する上で利用される。一般に、処置の前および後、または処置の1段階の後に標的細胞により放出されたVOCは、患者により、病状により、およびVOCが取得された時間により異なってよい。例えば、月経中の女性から取得されたVOCおよびその濃度レベルは、その女性が月経中でない時に取得されたVOCおよびその濃度レベルと異なるであろう。さらなる例として、患者は、別の医学的病状(即ち、処置される病状以外)に罹患している場合がある。そのためそのような患者の標的細胞により放出されたVOC、およびこれらのVOCの濃度レベルは、別の医学的病状に罹患していない患者と異なってよい。
【0175】
処置の前および後、または処置の1段階の後に標的細胞により放出されたVOCは、患者により、病状により、およびVOCが取得された時間により異なり得るため、処置、または施された処置の1段階の後に予期されたVOC放出に関係する情報(即ち、どのVOCが放出され、その濃度がどれほどであるか)を得ることが、有益である。細胞が死滅すると、それらの膜が崩壊する。膜が崩壊すると、細胞内に「閉じ込められた」VOCが、放出される。それゆえ、標的細胞が処置され死滅した場合、細胞内に「閉じ込められた」VOCの濃度レベルが上昇すると予期される。標的細胞においてVOCアーチファクトを発生しない手法でMCDを誘導することが、これらの標的細胞を破壊する。これらの破壊された細胞により放出されたVOCの濃度レベルの測定が、処置時のそれぞれのゲノムおよび医学的病状と共に、特定の患者についての処置の予期される結果を提供する。最適な処置は、患者において全ての標的細胞を破壊すると予期される。したがってMCDに関連するVOCの濃度値(即ち、細胞内に「閉じ込められた」VOC)は、処置が効果的であれば上昇する。そのため、処置の後、または処置の1段階の後に標的細胞から得られたVOCのVOC濃度値と、MCDが誘導された後に得られたVOCのVOC濃度値との比較は、処置が予期された結果を実現したかどうかの指標を提供する。処置の有効性の追加的指標として、標的細胞に関連するVOCの濃度値は、処置が効果的であれば減少する。さらに、健常細胞に関連するVOCの濃度値は、処置が効果的であれば不変のままである。処置はさらに、処置抵抗性または変異能がないと、下でさらに詳述される通り決定される場合、効果的である。
【0176】
ここで
図11を参照し、それは開示された技術のさらなる実施形態による、特定患者の乳癌に関連づけられた例示的な3つのVOC放出データ582、584および586の、全体として580で参照されるグラフの概略的実例である。
図11に提示された例において、VOC放出データ582、584および586は、乳癌の特定患者に関係する。VOC放出データ582は、MCDの後の健常細胞の選択されたVOCのVOC放出を表す(即ち、下でさらに詳述される通り、直接患者へのまたは培養物へのどちらかの)。VOC放出データ584は、MCD前の標的細胞の選択されたVOCのVOC放出を表し、VOC放出データ586は、MCD後の標的細胞の選択されたVOCのVOC放出を表す。
図11に見られる通り、100と称されるVOCは、VOC放出データ584における濃度値(即ち、MCD前)よりも、VOC放出データ586(即ち、MCDの後)において大きな濃度値を呈する。具体的には、
図11に表された例示的な例において、100と称されるVOCは、3-メチルヘキサンである。したがって、グラフ580が関係する特定患者の乳癌の例での最適処置は、
図11に表される通り、3-メチルヘキサンおよび他のVOCの濃度値の増加を示すであろう。
図11で測定された他のVOCは、例えば、2-エチルヘキサノール、5-エチル-3-メチルオキタン、アセトン、エタノール、酢酸エチル、エチルベンゼン、イソノナン、イソプレン、ノナナール、スチレン、トルエンおよびウンデカンである。
【0177】
ここで
図12を参照し、それは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【0178】
手順600では、呼吸試料および/または体液試料が、処置の少なくとも1段階の前に患者から取得される。手順600の後、方法は、手順602に進む。
【0179】
手順602では、呼吸試料および/または体液試料により放出されたVOCのVOC放出データが、処置の少なくとも1段階の前に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸試料および/または体液試料により放出されたVOCのVOC放出データを取得する。手順602の後、方法は、手順604および610に進む。
【0180】
手順604では、取得されたVOC放出データに対応する保存された動的差分VOCプロファイル(例えば、
図4A~4D、5A~5C、6A~6Dおよび7A~7Bと併せて決定された通り)が同定され、それにより病理学的病状をVOC放出データに関連づける。同定された、保存された動的差分VOCプロファイルは、対応する病理学的病状に関連づけられるため、取得されたVOC放出データもまた、病理学的病状(例えば、対応する発癌性遺伝子変異または病原から生じた病理学的病状)に関連づけられる。一般に、先の記載に従えば、保存された動的差分VOCプロファイルは、少なくとも1つの標的細胞VOCプロファイルで構成され、かつ複数の追加的VOCプロファイルでさらに構成されてよい。
図1を参照すると、プロセッサ106は、取得されたVOC放出データに対応する動的差分VOCプロファイルを同定する。手順604の後、方法は、手順606に進む。
【0181】
手順606では、呼吸試料および/または体液試料が、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に取得される。手順606の後、方法は、手順608に進む。
【0182】
手順608では、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、処置の後に呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データを取得する。手順608の後、方法は、手順610に進む。
【0183】
手順610では、処置の有効性が少なくとも、上記処置の上記少なくとも1段階の前に取得された同定された動的差分VOCプロファイルの中のVOCの濃度値を、処置の少なくとも1段階の間および/または後に取得された同定された動的差分VOCプロファイルの中のVOCの濃度値と共に決定することにより、分類される。例えば、処置の間、および/または後の同定された動的差分VOCプロファイルの中のVOCの濃度値が処置の前の同定された動的差分VOCプロファイルの中のVOCの濃度値に比べて低減される場合、処置は、成功したと分類されてよい。さもなければ処置は、成功しなかったと分類されてよい。新しい変異が起こったかどうかを検出するために、処置前、ならびに処置の間および/または処置後に取得されたVOC放出データが、データベースに保存された他の動的差分VOCプロファイルと比較される。新しい変異が起こっていなければ(即ち、他の動的差分プロファイルが、データベースで同定されなければ)、処置は、成功したと見なされてよい。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置の有効性を決定する。
【0184】
上述の通り、VOCプロファイルは、選択された処置の選択された段階で処置の有効性を決定するために、および処置を無効にし得る変異の発症を検出するために利用されてもよい。例えば、これらのVOCプロファイルは、化学療法の有効性を決定するために利用されてよい。その上、癌処置の場合、VOCプロファイルが、処置の間に細胞が別の癌サブタイプに変異して、それにより処置を無効にしたかどうかを決定するのに利用されてよい。
【0185】
ここで
図13A~13Eを参照し、これらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体にとっての処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【0186】
手順650では、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つが、選択された処置を適用する前に患者から取得される。手順650の後、方法は、手順652に進む。
【0187】
手順652では、呼吸および体液試料の少なくとも1つのVOC放出データが、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の前に取得される。選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の前に取得された呼吸および/または体液試料のVOC放出データは、処置前患者VOC放出データと称される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つの放出データを取得する。手順652から、方法は、手順702に進む。
【0188】
手順654では、標的細胞試料が、患者から取得される。手順654から、方法は、手順658に進む。
【0189】
手順656では、標的細胞と同じ型の健常細胞試料が、患者から取得される。手順656から、方法は、手順658に進む。
【0190】
手順658では、標的細胞培養物の2つのセット(即ち、標的細胞培養物「A」および標的細胞培養物「B」)、および健常細胞培養物の2つのセット(即ち、健常細胞培養物「A」および健常細胞培養物「B」)が、それぞれ標的細胞試料および健常細胞試料から生成される。各セットは、少なくとも1つの培養物を含む。手順658から、方法は、手順660に進む。
【0191】
手順660では、両方の標的細胞培養物セット(即ち、標的細胞培養物セット「A」および標的細胞培養物セット「B」)に関係する処置前標的細胞培養物VOC放出データ、および両方の健常細胞培養物セット(即ち、健常細胞培養物セット「A」および健常細胞培養物セット「B」)に関係する処置前健常細胞培養物VOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、両方の標的細胞培養物および両方の健常細胞培養物に関係するVOC放出データを取得する。手順660から、方法は、手順662、680、682、684、686および698に進む。
【0192】
手順662では、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置前健常細胞VOCプロファイルが、標的細胞培養物の両方のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」および標的細胞培養物セット「B」)の処置前標的細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物の両方のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」および健常細胞培養物セット「B」)の処置前健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置前健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順662から、方法は、手順680および698に進む。
【0193】
手順664では、選択された処置が、標的細胞培養物の第一のセット(例えば、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞に適用される。手順664から、方法は、手順672に進む。
【0194】
手順666では、大量の細胞死が、残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、標的細胞培養物に急速冷凍技術または紫外線-紫外光技術を利用することにより)、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞に誘導される。手順666から、方法は、手順674に進む。
【0195】
手順668では、選択された処置が、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞に適用される。手順668から、方法は、手順676に進む。
【0196】
手順670では、大量の細胞死が、残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、健常細胞培養物に急速冷凍技術または紫外線-紫外光技術を利用することにより)、健常細胞培養物の第二のセット(例えば、健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞に誘導される。手順670から、方法は、手順678に進む。
【0197】
手順672では、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データが、処置の適用後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、処置の適用後に、標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順672の後、方法は、手順680および698に進む。
【0198】
手順674では、第二の標的細胞培養物(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データが、MCDを誘導した後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの誘導後に、第二の標的細胞培養物中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順674の後、方法は、手順682に進む。
【0199】
手順676では、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の細胞に関係する処置後健常細胞培養物VOC放出データが、処置の適用後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、処置の適用後に、健常細胞培養物の第一のセットの健常細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順676の後、方法は、手順684に進む。
【0200】
手順678では、健常細胞培養物の第二のセット(即ち、健常細胞培養物セット「B」)の中の細胞に関係するMCD後健常細胞培養物VOC放出データが、MCDの誘導後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの誘導後に、健常細胞培養物の第二のセット中の健常細胞に関係するMCD後健常細胞培養物VOC放出データを取得する。手順678の後、方法は、手順686に進む。
【0201】
手順680では、処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルが、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞の処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルは、MCDが選択された処置により誘導された場合、標的細胞培養物セット「A」により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞の処置後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順680の後、方法は、手順688および698に進む。
【0202】
手順682では、MCD標的細胞VOCプロファイルが、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞のMCD後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。MCD標的細胞VOCプロファイルは、MCDが残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、急速冷凍技術または紫外線-紫外光技術を利用することにより)誘導される場合、標的細胞培養物「B」により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物の第二のセットの中の標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを、標的細胞培養物の第二のセットの中の標的細胞のMCD後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順682の後、方法は、手順690および698に進む。
【0203】
手順684では、処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルが、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞の処置後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルは、MCDが選択された処置により誘導された場合、健常細胞培養物「A」により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、健常細胞培養物の第一のセットの中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養物の第一のセットの中の健常細胞の処置後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルを作成する。
【0204】
手順686では、MCD健常細胞VOCプロファイルが、健常細胞培養物の第二のセット(即ち、健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養物の第二のセット(即ち、健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞のMCD後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。MCD健常細胞VOCプロファイルは、MCDが残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、急速冷凍技術または紫外線-紫外光技術を利用することにより)誘導される場合、健常細胞培養物「B」により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、健常細胞培養物の第二のセットの中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを、健常細胞培養物の第二のセットの中の健常細胞のMCD後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD健常細胞VOCプロファイルを作成する。手順686の後、方法は、手順694に進む。
【0205】
手順688では、予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルが、処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルから呼吸および/または体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順688の後、方法は、手順696に進む。
【0206】
手順690では、予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルが、MCD標的細胞VOCプロファイルから呼吸および/または体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順690の後、方法は、手順696に進む。
【0207】
手順692では、予測された処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルが、処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルから呼吸および/または体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順692の後、方法は、手順696に進む。
【0208】
手順694では、予測された健常MCD VOCプロファイルが、MCD健常細胞VOCプロファイルから呼吸および/または体液中のVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。VOC濃度レベルは、Farhi方程式または改変Farhiモデルなどの拡散モデルを利用することにより予測され、それらは両者とも下でさらに詳述される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測されたMCD健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順694の後、方法は、手順696に進む。
【0209】
手順696では、予測された処置効果差分VOCプロファイルが、処置前標的細胞VOCプロファイル、処置前健常細胞VOCプロファイル、予測された処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイル、予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイル、予測されたMCD健常細胞VOCプロファイル、および予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルから決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、予測された処置効果差分VOCプロファイルを決定する。手順696から、方法は、手順702に進む。
【0210】
手順698では、少なくとも1つの変異および/または病原の動的処置抵抗能差分VOCプロファイルおよび少なくとも1つの変異率差分VOCプロファイルが、決定される。最初に、標的細胞培養物セット「A」の中の標的細胞の処置後標的細胞培養物VOC放出データが、MCD標的細胞VOCプロファイルおよび処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされて、細胞死関係のVOCを軽減する。フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データは、処置前標的細胞VOCプロファイルと比較されて、動的処置抵抗能プロファイルを決定する。この処置抵抗能プロファイルにおけるVOCの濃度レベルは、処置を生き残りかつ変異していない細胞の部分の指標である。
【0211】
フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データはさらに、処置前標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされる。2回フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データは、保存された動的差分VOCプロファイル(例えば、
図3A~3C、5A~5Cおよび6A~6Dと併せて本明細書の上で決定されたような)と比較されて、様々な変異および/または病原の変異率差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイルを決定する。これらの変異率差分VOCプロファイルの中のVOCの濃度レベルは、様々な変異および病原の変異率(即ち、処置の間に変異した細胞の部分、および処置後に出現した新しい変異の数)の指標である。
図1を参照すると、プロセッサ106は、様々な変異および/または病原の動的処置抵抗能プロファイルおよび変異率差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイルを決定する。手順698の後、方法は、手順710に進む。
【0212】
手順702では、動的処置効果VOCプロファイルが、予測された処置効果差分VOCプロファイルと、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データとから決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、動的処置効果VOCプロファイルを決定する。手順702の後、方法は、手順704に進む。
【0213】
手順704では、患者への選択された処置が、開始される。手順704の後、方法は、手順706に進む。
【0214】
手順706では、呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つが、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に患者から取得される。選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に患者から取得された呼吸試料および/または体液試料は、本明細書では処置後患者VOC放出データと称される。手順706の後、方法は、手順708に進む。
【0215】
手順708では、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に取得された呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCの、処置後患者VOC放出データである。
図1を参照すると、分析装置102は、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後の呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データを取得する。手順708の後、方法は、手順710に進む。
【0216】
手順710では、個々の患者に施された選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の有効性(即ち、個々の個人向け処置の有効性)が、少なくとも、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の前に取得された呼吸および/または体液試料のVOC放出データと、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後に取得され呼吸および/または体液試料のVOC放出データ(即ち、処置前患者VOC放出データおよび処置後患者VOC放出データ)とから決定される。選択された処置の選択された段階の有効性を決定するために、以下の事柄が決定される:
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の処置前標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の間および/または後の処置前標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の間および/または後の予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の間および/または後の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値。
【0217】
選択された処置の選択された段階は、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置患者VOC放出データからの処置の選択された段階の間および/または後の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルの中のVOCの濃度値が、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置前患者VOC放出データからの処置の選択された段階の前の予測されたMCD標的細胞VOCプロファイルの中のVOCの濃度値よりも大きい場合、効果的と決定される。
【0218】
処置は、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値よりも大きい場合、効果的とさらに決定される。
【0219】
処置は、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置後患者VOC放出データからの予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの濃度値が、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた処置前患者VOC放出データの予測された処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの濃度値よりも大きい場合、効果的とさらに決定される。
【0220】
さらに、選択された処置の選択された段階の有効性を決定するために、以下の事柄もまた、決定される:
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の健常細胞に関係する処置前健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データから決定される、選択された処置の選択された段階の間および/または後の処置前健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の予測された処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の間および/または後の予測された処置誘導性MCD健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置前患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の前の予測されたMCD健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値、
・ 処置後患者VOC放出データからの、選択された処置の選択された段階の間および/または後の予測されたMCD健常細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値。
【0221】
処置は、上記予測された処置誘導性MCD健常VOCにおけるVOCの呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた上記処置後患者VOC放出データからの濃度値が、上記予測された処置誘導性MCD健常VOCにおけるVOCの、呼吸試料および体液試料の少なくとも1つに関連づけられた上記処置前患者VOC放出データからの濃度値に対して不変のままである場合(例えば、それらの値の差が、所定の閾値内であれば)、効果的と決定される。
【0222】
選択された処置の選択された段階の有効性はさらに、選択された処置の選択された段階の前、ならびに選択された処置の選択された段階の間および/または後の、動的患者処置抵抗能差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値および変異率差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値から決定されてよい。処置前の動的患者処置抵抗能差分VOCプロファイルにおけるおよび変異率差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値は、処置前患者VOC放出データから決定される。
【0223】
選択された処置の選択された段階の間および/または後の動的患者処置抵抗能差分VOCプロファイルにおけるおよび変異率差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値は、処置後患者VOC放出データから決定される。選択された処置の選択された段階は、選択された処置の選択された段階の前、ならびに選択された処置の選択された段階の間および/または後の、動的患者処置抵抗能差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値が不変のままである場合、効果的と決定される。また、選択された処置の選択された段階は、選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の間および/または後の、変異率差分VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値が、選択された処置の選択された段階の前のこれらのVOCの濃度値に比べて不変のままである場合、効果的と決定される。
【0224】
その上、選択された処置の選択された段階は、新しい変異が同定されない場合、効果的と決定される。新しい変異または複数の変異は、処置後患者VOC放出データを、保存された動的差分VOCプロファイルと比較することにより同定される。新しい変異または複数の変異を同定しようと試みる前に、処置後患者VOC放出データが、処置前標的細胞VOCプロファイル、処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイル、およびMCD標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされ、それにより処置前標的細胞VOCプロファイル、処置誘導性MCD標的細胞VOCプロファイル、およびMCD標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCに関係する情報を軽減する。
【0225】
図1を参照すると、プロセッサ106は、個々の患者に施された選択された処置の少なくとも1つの選択された段階の有効性を決定する。
【0226】
保存されたVOCプロファイルの別の用途は、患者および/または培養物中の活性変異と不活性変異とを識別することである。ここで
図14を参照し、それは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、患者および/または培養物中の活性変異と不活性変異とを識別するための方法の概略的実例である。
【0227】
手順750では、呼吸試料および/または体液試料の少なくとも1つが、患者から取得される。手順750の後、方法は、手順752に進む。
【0228】
手順752では、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、呼吸試料および/または体液試料中に放出されたVOCのVOC放出データを取得する。手順752の後、方法は、手順766に進む。
【0229】
手順754では、標的および健常細胞試料が、患者から取得される。手順754の後、方法は、手順756に進む。
【0230】
手順756では、標的細胞および健常細胞が、遺伝子シーケンシングされ、分子同定を受けて、遺伝子変異を同定する。手順756の後、方法は、手順758に進む。
【0231】
手順758では、標的および健常細胞試料が、培養される。手順758の後、方法は、手順760に進む。
【0232】
手順760では、標的および健常細胞培養物により放出されたVOCに関係するVOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、標的および健常細胞培養物により放出されたVOCに関係するVOC放出データを取得する。手順760の後、方法は、手順762に進む。
【0233】
手順762では、標的細胞VOCプロファイルが、標的細胞培養物からのVOC放出データを健常細胞培養物からのVOC放出データと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物からのVOC放出データを健常細胞培養物と比較することにより、標的細胞VOCプロファイルを決定する。手順762の後、方法は、手順764に進む。
【0234】
手順764では、標的細胞培養物中の活性変異または複数の変異が、標的細胞VOCプロファイルを、
図3A~3C、5A~5C、7A~7B、8A~8Bおよび10A~10Cと併せて本明細書の先に記載された通り決定された、保存された動的差分VOCプロファイルと比較することにより、決定される。
図1を参照すると、プロセス106は、標的細胞VOCプロファイルをデータベース104中のVOCプロファイルと比較することにより、遺伝子シーケンシングにより受け取った変異のリストから、標的細胞培養物中の活性変異または複数の変異を決定する。手順764の後、方法は、手順766に進む。
【0235】
手順766では、患者の活性変異または複数の変異が、患者の呼吸および/または体液VOC放出データを、同定された動的差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイルと比較することにより、決定される(即ち、同定された動的差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイルは、標的細胞VOCプロファイルを保存された動的差分VOCプロファイルと比較することにより同定された、動的差分VOCプロファイルに関係する)。さらに、呼吸および/または体液VOC放出データは、標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされる。その上、フィルタリングされた呼吸および/または体液VOC放出データは、
図3A~3C、5A~5C、7A~7B、8A~8Bおよび10A~10Cと併せて本明細書の先に記載された通り決定された、保存された動的差分VOCプロファイルと比較される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、患者における活性変異または複数の変異を決定する。
【0236】
保存されたVOCプロファイルの別の用途は、患者にとって最適な処置を決定することである。ここで
図15Aおよび15Bを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者にとって最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【0237】
手順800では、標的および健常細胞試料が、患者から取得される。手順800の後、方法は、手順802に進む。
【0238】
手順802では、標的細胞培養物の2つのセット(即ち、標的細胞培養物「A」および標的細胞培養物「B」)、および健常細胞培養物の2つのセット(即ち、健常細胞培養物「A」および健常細胞培養物「B」)が、それぞれ標的細胞試料および健常細胞試料から生成される。各セットは、少なくとも1つの培養物を含む。手順802の後、方法は、手順804に進む。
【0239】
手順804では、両方の標的細胞培養物のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」および標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞により放出されたVOCに関係する処置前標的細胞培養物VOC放出データと、両方の健常細胞培養物のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」および健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞により放出されたVOCに関係する処置前健常細胞培養物VOC放出データとが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、両方の標的細胞培養物セットの中の標的細胞からの標的細胞により放出されたVOCに関係する処置前標的細胞培養物VOC放出データと、両方の健常細胞培養物セットの中の健常細胞からの健常細胞により放出されたVOCに関係する処置前健常細胞培養物VOC放出データとを取得する。手順804の後、方法は、手順806、826、828および830に進む。
【0240】
手順806では、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置前健常細胞VOCプロファイルが、両方の標的細胞培養物セット(即ち、標的細胞培養物セット「A」および標的細胞培養物セット「B」)からの処置前標的細胞培養物VOC放出データを、両方の健常細胞培養物セット(即ち、健常細胞培養物セット「A」および健常細胞培養物セット「B」)からの処置前健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、両方の標的細胞培養物セットの中の標的細胞からの標的細胞培養物VOC放出データを、両方の健常細胞培養物セットの中の健常細胞からの健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、処置前標的細胞VOCプロファイルおよび処置前健常細胞VOCプロファイルを決定する。手順806の後、方法は、手順808、810、820、826、828および830に進む。
【0241】
手順808では、大量の細胞死が、VOCアーチファクトを発生しない手法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)、第一のセットの標的細胞培養物(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞に誘導される。手順808から、方法は、手順812に進む。
【0242】
手順810では、大量の細胞死が、VOCアーチファクトを発生しない手法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)、残留VOCアーチファクトを発生しない手法で健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞に誘導される。手順810から、方法は、手順814に進む。
【0243】
手順812では、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの誘導の後、標的細胞培養物「A」の中の標的細胞に関係するMCD後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順812の後、方法は、手順816に進む。
【0244】
手順814では、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞に関係するMCD後健常細胞培養物VOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、MCDの誘導の後、健常細胞培養物「A」の中の健常細胞に関係するMCD後健常細胞培養物VOC放出データを取得する。手順814の後、方法は、手順818に進む。
【0245】
手順816では、MCD標的細胞VOCプロファイルが、処置前標的細胞培養物VOC放出データをMCD後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。MCD標的細胞VOCプロファイルは、MCDが残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)誘導された場合、標的細胞培養物の第一のセット(即ち、標的細胞培養物セット「A」)の中の標的細胞により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞の処置前標的細胞培養物VOC放出データを標的細胞培養物の第一のセットの中の標的細胞のMCD後標的細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD標的細胞VOCプロファイルを作成する。手順816の後、方法は、手順826および828に進む。
【0246】
手順818では、MCD健常細胞VOCプロファイルが、健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物の第一のセット(即ち、健常細胞培養物セット「A」)の中の健常細胞のMCD後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、作成される。MCD健常細胞VOCプロファイルは、MCDが残留VOCアーチファクトを発生しない方法で(例えば、急速冷凍技術またはUV光技術を利用することにより)誘導された場合、健常細胞培養物「A」により放出されたVOCに関係する。
図1を参照すると、プロセッサ106は、健常細胞培養物の第一のセットの中の健常細胞の処置前健常細胞培養物VOC放出データを健常細胞培養物の第一のセットの中の健常細胞のMCD後健常細胞培養物VOC放出データと比較することにより、MCD健常細胞VOCプロファイルを作成する。手順818の後、方法は、手順830に進む。
【0247】
手順820では、少なくとも1つの選択された処置が、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞および健常細胞培養物の第二のセット(即ち、健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞に適用される。1つより多くの処置が適用される場合には、処置は、互いに比較参照として用いられる。手順820から、方法は、手順824に進む。
【0248】
手順822では、各選択された処置について、標的細胞培養物の第二のセット(即ち、標的細胞培養物セット「B」)の中の標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データが、取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、各選択された処置について標的細胞培養物の第二のセットの中の標的細胞に関係する処置後標的細胞培養物VOC放出データを取得する。手順822の後、方法は、手順826および828に進む。
【0249】
手順824では、各選択された処置について、健常細胞培養物の第二のセット(即ち、健常細胞培養物セット「B」)の中の健常細胞に関係する処置後健常細胞培養物VOC放出データが、選択された処置の適用後に取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、選択された処置の適用後に、各選択された処置について健常細胞培養物の第二のセットの中の健常細胞に関係する処置後健常細胞培養物VOC放出データを取得する。手順824の後、方法は、手順830に進む。
【0250】
手順826では、処置抵抗能および標的細胞変異率が、選択された処置のそれぞれについて決定される。処置抵抗能および標的細胞変異率は両者とも、選択された処置が効果的か否か(即ち、処置の効果)を決定するために利用される。最初に、処置前標的細胞VOCプロファイル内のVOCの濃度値が、標的細胞培養物「B」に関係する処置前標的細胞培養物VOC放出データから決定される(即ち、処置前の関連のVOCの濃度レベルを決定する)。その後、処置後標的細胞培養物VOC放出データが、MCD標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされて、細胞死関係のVOCを軽減する。処置前標的細胞VOCプロファイル内のMCDの濃度値は、フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データから決定される(即ち、処置の間および/または後の関連のVOCの濃度レベルを決定する)。選択された処置の処置抵抗能は、選択された処置の前の処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値を、選択された処置の間および/または後の処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値と比較することにより、決定される。関連のVOCの濃度値における変動は、選択された処置を生き残りかつ変異しなかった細胞の部分の指標である。選択された処置は、処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値が低減した場合、効果的と決定される。選択された処置は、処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値がゼロである場合、最も効果的とされてよい。
【0251】
フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データはさらに、処置前標的細胞VOCプロファイルでフィルタリングされる。変異率の能力が、2回フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データを、保存された動的差分VOCプロファイルと比較し(例えば、
図3A~3C、5A~5Cおよび6A~6Dと併せて本明細書の先に決定された通り)、これにより2回フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データに対応する保存された動的差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイルを同定することにより、決定される。その後、同定された保存された動的差分VOCプロファイルまたは複数のプロファイル中のVOCの濃度値が、2回フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データから決定される。同定された保存された動的差分VOCプロファイルの濃度レベルは、様々な変異および病原の変異率(即ち、選択された処置の間に変異した細胞の部分、および選択された処置後に出現した新しい変異の数)の指標である。選択された処置は、新しい保存された動的差分VOCプロファイルが、2回フィルタリングされた処置後標的細胞培養物VOC放出データから同定されなかった場合、最も効果的と決定される。1つより多くの選択された処置が利用される場合、最適な処置は、処置後標的細胞培養物VOC放出データにおいて処置前標的細胞VOCプロファイルの低減を示す処置前標的細胞VOCプロファイルにおいてVOCの濃度レベルの最高変動を呈する処置を選択することにより決定されてよく(即ち、最適効率は、処置前標的細胞VOCプロファイルがもはや処置後標的細胞培養物VOC放出データ中で同定されない場合に示される)、保存された動的細動VOCプロファイルは、処置後標的細胞培養物VOC放出データにおいて同定されないか、またはそれらが選択された処置全てにおいて同定される場合には、処置後標的細胞培養物VOC放出データ中の同定された保存された動的差分VOCプロファイルにおいてVOCの濃度レベルの最小変動を呈した処置が、最適処置と決定されてよい。
図1を参照すると、プロセッサ106は、処置抵抗能および変異率を決定する。手順826の後、方法は、手順832に進む。
【0252】
手順828では、標的細胞に及ぼす各選択された処置の効果が、決定される。選択された処置の効果を決定するために、処置前および後の処置前標的細胞VOCプロファイルにおけるVOCの濃度値と、処置前および後のMCD標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値とが決定される。この目的に向けて、処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度レベルが、標的細胞培養物「B」から取得された処置前標的細胞培養物VOC放出データから決定される。また、MCD標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度レベルが、標的細胞培養物「A」から取得された処置前標的細胞培養物VOC放出データから決定される。その上、処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値は、標的細胞培養物「B」から取得された処置後標的細胞培養物VOC放出データから決定され、MCD標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値は、標的細胞培養物「A」から取得された処置後標的細胞培養物VOC放出データから決定される。選択された処置は、
(a)処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値よりも大きい場合;および
(b)処置後標的細胞培養物により放出された、MCD標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値が、MCD標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値より大きい場合、
効果的と決定される。
【0253】
別の例によれば、処置後標的細胞培養物により放出された、MCD VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値と、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値との比率は、MCD VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値と、処置前標的細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前標的細胞培養物のVOC放出データからの濃度値との比率より大きい。
【0254】
1つより多くの選択された処理が利用される場合、最適な処置は、MCD標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度レベルが最大増加を呈し、処置前標的細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度レベルが最大低減を呈する処置を決定することにより、選択された処置から決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、選択された処置の効果を決定する。手順828の後、方法は、手順832に進む。
【0255】
手順830では、健常細胞に及ぼす各選択された処置の効果が、決定される。選択された処置の効果を決定するために、選択された処置の前および後の処置前健常細胞VOCプロファイル中の、ならびに選択された処置の前および後のMCD健常細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値が、決定される。この目的に向けて、処置前健常細胞VOCプロファイルでのVOCの濃度値が、健常細胞培養物「B」から取得された処置前健常細胞培養物VOC放出データから決定される。また、MCD健常細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値が、健常細胞培養物「A」から取得された処置前健常細胞培養物VOC放出データから決定される。その上、処置前健常細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値が、健常細胞培養物「B」から取得された処置後健常細胞培養物VOC放出データから決定され、MCD健常細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度値が、健常細胞培養物「A」から取得された処置後健常細胞培養物VOC放出データから決定される。選択された処置は、
(a)処置前健常細胞VOCプロファイル中のVOCの、処置後健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値が、処置前健常細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値に比べて不変のままである場合;および
(b)MCD健常細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値が、MCD健常細胞VOCプロファイル中のVOCの、処置前健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値に比べて不変のままである場合、
効果的と決定される。
【0256】
別の例によれば、MCD健常細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置後健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値、および処置前健常細胞VOCプロファイル中のVOCの、処置後健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値は、MCD健常細胞VOCプロファイル中のVOCの、処置前健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値、および処置前健常細胞VOCプロファイルに関連づけられたVOCの、処置前健常細胞培養物VOC放出データからの濃度値と等しい。
【0257】
1つより多くの選択された処理が利用される場合、最適な処置は、MCD健常細胞VOCプロファイル、および処置前健常細胞VOCプロファイル中のVOCの濃度レベルにおいて最小変動を呈した処置を決定することにより、選択された処置から決定される。
図1を参照すると、プロセッサ106は、選択された処置の効果を決定する。手順830の後、方法は、手順832に進む。
【0258】
手順832では、複合処置応答(compounded treatment response)が、4種の処置効果パラメータ(即ち、標的細胞に及ぼす処置の効果、健常細胞の処置の効果、処置抵抗能および変異率能(mutation rate potential))から各選択された処置について決定される。選択された処置が、これらの4種のパラメータの全てにおいて効果的であると決定される場合、複合処置応答は、陽性とされ、かつこの処置は、最適とされてもよい。1つより多くの選択された処置が利用される場合、4種全ての処置効果パラメータにおいて最高の陽性応答を有する処置が、選択された処置の最適処置と決定されてよい。
図1を参照すると、プロセス106は、4種の処置効果パラメータからの各選択された処置への複合処置応答を決定する。
【0259】
拡散モデル
上記の通り、呼吸および体液中のVOC濃度レベルは、標的および健常細胞から体液および呼吸へのVOCの拡散モデルを利用することにより予測される。具体的には、動的差分VOCプロファイルが、予測された標的細胞VOCプロファイル、予測された健常細胞VOCプロファイル、およびいくつかの例では追加の予測されたプロファイルから決定される。様々な予測されたプロファイルが、インビトロでの標的細胞、健常細胞および対照細胞の代謝率および生成率に基づいて呼吸および体液VOC放出データにおける該当するVOCのVOC濃度レベルを予測することにより、決定される。動的差分VOCプロファイルの決定の間、呼吸および体液試料VOC放出データはまた、様々な予測されたプロファイルと実際の結果との考えられる許容誤差を最小にするために用いられる。肺胞VOC濃度(即ち、呼吸中)を、それらの基本的な血液濃度に関係づける1つのそのようなモデルはFarhi方程式であり、以下の形態をとる:
【数1】
C
A(0)は、パーツ・パー・ビリオンでの肺胞内のVOC濃度に関係し、CV(―)(0)は、パーツ・パー・ビリオンでの静脈血中の混合濃度に関係し、λ
b:airは、血液/ガス分配係数に関係し、V(・)
Aは、リットル/分での換気量に関係し、Q(・)
Cは、リットル/分での心拍出量に関係する。
【0260】
先に説明された標準的Farhi方程式は、肺胞(即ち、肺の下部)区分内の考えられるVOC濃度のみを参照する。このモデルは、誤った結果を導く場合がある。
【0261】
本明細書の下で記載されるモデルは、標準Farhi方程式を拡張する(2区分モデルから3区分モデルに、即ち、拡張Farhiモデル)。ここで
図16を参照し、それは、開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、全体として840で参照される拡張Farhiの概略的実例である。
図16に表される通り、拡張Farhiモデル840は、3区分、つまり気管支区分842、肺胞区分844および身体区分846を含む。気管支区分842、肺胞区分844は、肺に関係する。身体区分844(即ち、代謝および生成)は、血液および組織区分(即ち、体内の標的細胞、健常細胞、または対照細胞の任意の形態)を有効体積V(~)の1区分にまとめる。身体の血液区分および組織区分は平衡であると仮定され、それゆえ
【数2】
により与えられる有効体積を有する1つの身体区分844(即ち、身体の血液、および標的細胞、健常細胞、または対照細胞区分)にまとめることができる。
【0262】
3区分モデルの使用は、より正確な動的差分VOCプロファイルを作成するために用いられてもよい。3区分モデルは、標準Farhi方程式にまつわる既知の問題を解決するために、上気道(気管支)および吐出VOC濃度の影響を組み入れる。本明細書の下で詳述される3区分モデルはまた、より高いHenry定数を有するVOCについて吐出呼吸濃度に及ぼす吸入VOC(環境汚染源)の影響を考慮する。気管支区分842は、気相と、水の物理的特性を継承すると仮定されてリザーバとして作用する粘膜とに分離された別個の区分と見なされる。この層に溶解されたVOCの一部は、気管支環境に移行し、それにより関連の静脈排出路の主要画分が、毛細血管後吻合を介して肺静脈に合流すると推定される。吐出および吸入を介して時間「t」で気管支区分842に輸送されるVOCの量はそれゆえ、
【数3】
(ここで、V(・)
Aは、換気量を表し、C
1は、吸気中の濃度を表し(通常はゼロと仮定される)、C
broは、気管支空気濃度を表す)に等しい。毛細血管後浸透圧を介し予備的静脈(preliminary veins)を通る血流の寄与が、
【数4】
(ここで、Q(・)は、細気管支を通した部分的血流を表し、Q(・)
Cは、心拍出量を表し、C
aは、動脈血濃度を表し、λ
muc:bは、粘膜/血液分配係数を表し、λ
muc:airは、温度依存性の粘膜/空気分配係数を表す)により与えられる。その後、動脈血濃度C
aは、
【数5】
(ここで、λ
b:airは、血液/空気分配係数を表し、C
Aは、肺胞濃度を表す)により表される。
【0263】
温度上昇に応じた粘膜への溶解度低下は、Van’t Hoff型方程式により周囲温度範囲で記載され得る:
【数6】
(ここで、AおよびB(ケルビン温度)は、それぞれ揮発のエントロピーおよびエンタルピーに比例する)。λ
b:airは常に、37℃を指す。同様に、粘膜と血液の間の分配係数λ
muc:bは、
【数7】
により定義される定数として扱われる。
【0264】
気管支区分842と肺胞区分844との交換は、拡散工程としてモデリングされる:
【数8】
(ここで、拡散定数Dは、ゼロと無限大の間の値を取る)。
【0265】
気管支区分842についての総物質収支は、
【数9】
により与えられる。
【0266】
肺胞区分844についての物質収支は、
【数10】
により与えられ、身体区分846についての物質収支は、
【数11】
(ここで、k
metは、身体の総代謝率を表し、k
prは、生成率を表す)により与えられる。V(~)
bro、V(~)
A、およびV(~)
Bは、それぞれ細気管支、肺胞および身体の有効体積を表す。またC
Bは、Henryの法則CV(―)=λ
b:BC
B(ここで、λ
b:Bは、血液/身体組織分配係数を表す)により混合静脈濃度CV(―)につながる体内濃度を表す。
【0267】
3つの線形差分方程式(9)、(10)および(11)をまとめると、VOC(m
tot)の総質量変化が得られる:
【数12】
VOCの総質量変化は、総物質収支が満たされるように、吸入量-吐出量+身体で生成される量-代謝で排出される量により与えられる(代謝は、例えば肝臓、尿、皮膚などによる、全ての損失を含む)。
【0268】
VOCフィルター
上記において、呼吸および/または体液および/または細胞培養物のいずれかから取得されたVOC放出データの全て、ならびにそれらの間の比較が、それらの中の共通するVOCを検出するために利用されてよい。これらの共通するVOCは、VOCフィルターを定義するために利用されてよい。そのようなVOCフィルターは、呼吸および/または体液および/または細胞培養物の新しいVOC放出データを取得する場合、共通するVOCをフィルタリングするために利用されてよい。そのようなVOCフィルターはまた、VOCプロファイル中の共通するVOCをフィルタリングするために利用されてよい。フィルターは、複数の患者から同じタイプの健常細胞の健常VOC放出データを比較すること、およびこれらの健常細胞の正常な活性に関係するVOCを同定すること、により構築される。拡散方程式(例えば、先に議論されたFarhi方程式)が、正常な活性に関係づけられたVOC濃度レベルの範囲を生成するために用いられる。正常な活性に関係づけられたこれらのVOC濃度レベルは、VOC放出データからこれらのVOCをフィルタリングで除去して、異常な濃度を同定するために用いられる。
【0269】
VOCプロファイルの比較
先に記載された実施形態において、VOCプロファイルは、互いに比較される。1つの代替法によれば、VOCプロファイルは、VOCプロファイルにより定義されたポリゴンを比較することにより比較される。VOCプロファイルは、水平軸がVOCにより定義され、かつ垂直軸が濃度レベルにより定義される、二次元ユーグリッド空間と見なされてよい。VOCプロファイル空間において、ポリゴンは、参照ポイントと、選択されたVOCのピーク値とにより定義される。参照ポイントは、二次元空間のゼロ座標であってよい。2つのVOCプロファイルを比較する場合、同じポリゴンまたは複数のポリゴンが、2つのVOCプロファイルにおいて定義される(即ち、同じ参照ポイントと同じ選択されたVOCを利用する)。これらの2つのポリゴンはその後、例えば2つのポリゴンのターニング関数(turning function)の間のLp距離を利用することにより、互いに比較される。
【0270】
VOC濃度の上昇
呼吸試料中のVOC放出データを決定する場合、呼吸を採取する前に肺内のVOCを増加させることが望ましい場合がある。この目的に向けて、試料採取の前に、患者は呼吸を最大の能力まで吐出するように要求される。その後、患者は、吸入し所定の期間(例えば、5、10、20、30秒間、1分間)呼吸を停止し、呼吸試料をコレクタに吐出する。各患者が呼吸を停止した期間が、異なる呼吸停止期間で取得された呼吸試料の間で相関させるために、測定される。
【0271】
その上、呼吸を採取する前に呼吸中のVOC濃度レベルを上昇させるための先に詳述された方法は、肺の選択された部分(例えば、気管支、肺胞、全肺)から吐出された空気の定量された量を採取するための当該技術分野で公知の方法と組み合わせられ、それにより分析装置の検出限界未満で呼吸中に典型的に見出されるVOCのVOC濃度レベルを、それらが検出、同定および定量され得るレベルへと上昇させてよい。ここで
図17Aおよび17Bを参照し、それらは、開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、試料採取の前にVOC濃度を上昇させるための、および肺の選択された部分から定量された空気量を採取するための方法の概略的実例である。
【0272】
手順850では、そこから空気が採取される肺の部分、および採取される空気の体積が、選択される。手順850の後、方法は、手順852に進む。
【0273】
手順852では、吸入流速、吐出速度および二酸化炭素(CO2)濃度レベルが、患者がある期間にわたり正常に呼吸している時に(例えば、数回の呼吸)、測定される。吸入および吐出流速、ならびにCO2濃度は、流量メータおよびCO2センサを含むスピロメータで測定されてよい。手順852の後、方法は、手順854に進む。
【0274】
手順854では、吸入流速、吐出流速およびCO2濃度レベルが、患者が最大能力まで吐出および吸入する時に測定される。手順854の後、方法は、手順856に進む。
【0275】
手順856では、吐出された呼吸の中の気管支部分と吐出された呼吸の肺胞部分とを識別する呼吸パターンが、決定される。手順856の後、方法は、手順858および860に進む。
【0276】
手順858では、呼吸試料が、患者が最大能力まで吐出し、最大能力まで吸入し、かつ少なくとも所定の期間呼吸を停止した後に、患者が最大能力まで吐出した時に取得される。各呼吸試料が、決定された呼吸パターンのそれぞれの時刻に関連づけられる。手順858の後、方法は、手順860に進む。
【0277】
手順860では、肺の選択された部分に対応する呼吸試料が、呼吸パターンおよび呼吸試料の関連づけられた時刻に従って選択される。手順858の後、方法は、手順862に進む。
【0278】
手順862では、VOC放出データが、取得された選択された呼吸試料から取得される。
図1を参照すると、分析装置102は、選択された呼吸試料からVOC放出データを取得する。手順862の後、方法は、手順864に進む。
【0279】
手順864では、患者が呼吸を停止した期間が測定されて、異なる呼吸停止期間と取得された試料中の得られた濃度レベルの上昇とを相関させるために要求され得る調整(adjustments)を決定する(即ち、標準化)。
【0280】
幾つかの例では、空気の選択された体積は、一度の繰り返しでは取得され得ない。そのため手順858が、患者が各繰り返しにおいて呼吸を同じ期間停止しつつ、選択された空気の体積が取得されるまで反復されてよい。
【0281】
開示された技術が、本明細書の先に詳細に指示および記載されたものに限定されないことは、当業者に察知されよう。むしろ開示された技術の範囲は、以下の特許請求の範囲のみにより定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
【
図1】開示された技術の実施形態により構築され効力を発揮する、人の呼吸、体液、細胞培養物の少なくとも1つにおける化学物質の排出と、遺伝的または医学的病状の対応する表現とを関連づけるための、かつこれらの関連性を診断に利用するための、および/または処置の有効性を決定するための、および/または処置の選択を決定するためのシステムの概略的実例である。
【
図2A】開示された技術の別の実施形態による、VOC放出データの概略的実例である。
【
図2B】開示された技術の別の実施形態による、差分VOCプロファイルの概略的実例である。
【
図3A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図3B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図3C】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された集団においてVOC放出を対応する癌タイプに関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図4A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図4D】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された集団において処置前および処置後にVOC放出を標的細胞に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図5C】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、VOCプロファイルを病原から生じた病理学的病状に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図6A】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6B】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6C】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図6D】開示された技術の別の実施形態による、選択されたミスマッチ修復(MMR)遺伝子活性化療法のための動的差分VOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図7A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された処置から処置抵抗性変異を生じた標的細胞のVOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図7B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、選択された処置から処置抵抗性変異を生じた標的細胞のVOCプロファイルを決定するための方法の概略的実例である。
【
図8A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてVOC放出を対応する異常な、または病理学的細胞に関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図8B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてVOC放出を対応する異常な、または病理学的細胞に関連づけるための例示的方法の概略的実例である。
【
図9A】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてMCDの前および後にVOC放出を対応する標的細胞(例えば、発癌性細胞)に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図9B】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、個々の患者においてMCDの前および後にVOC放出を対応する標的細胞(例えば、発癌性細胞)に関連づけるための方法の概略的実例である。
【
図10A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図10B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図10C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、選択された処置のために個体の個人向け処置抵抗性VOCプロファイルを同定するための方法の概略的実例である。
【
図11】開示された技術のさらなる実施形態による、特定患者の乳癌に関連づけられた例示的な3つのVOC放出データのグラフ(grap)の概略的実例である。
【
図12】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13C】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13D】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図13E】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、個体について処置の有効性を決定するための方法の概略的実例である。
【
図14】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、患者および/または培養物中の活性変異と不活性変異とを識別するための方法の概略的実例である。
【
図15A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者について最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【
図15B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者について最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【
図15C】
開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、患者について最適な処置を決定するための方法の概略的実例である。
【
図16】開示された技術のさらなる実施形態により効力を発揮する、拡張Farhiモデルの概略的実例である。
【
図17A】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、試料採取の前にVOC濃度を上昇させるための、および肺の選択された部分から定量された空気量を採取するための方法の概略的実例である。
【
図17B】開示された技術の別の実施形態により効力を発揮する、試料採取の前にVOC濃度を上昇させるための、および肺の選択された部分から定量された空気量を採取するための方法の概略的実例である。