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特開2024-1162血清コレステロールおよびPCSK9を低減する組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001162
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】血清コレステロールおよびPCSK9を低減する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/403
A61K31/4166
A61K31/4184
A61K31/4188
A61K31/423
A61K31/433
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/00
A61P1/16
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173195
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020516839の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】62/562,784
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】スタムラー,ジョナサン エス.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コレステロールおよび/またはPCSK9レベルの低下を必要とする対象におけるコレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させる方法を提供する。
【解決手段】対象にADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低減させるために有効な量で投与することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルの低下を必要としている対象における血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させる方法であって、
ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させるために有効な量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記対象に投与される前記ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、(i)総血清コレステロールを、投与前レベルに対して、少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%またはそれ以上減少させ、(ii)血清LDL-Cを、投与前レベルに対して、少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%またはそれ以上減少させ、(iii)血清トリグリセリドを、投与前レベルに対して、少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%減少させ、かつ/あるいは(iv)血清HDL-Cを減少させないか、または、血清HDL-Cを投与前レベルに対して約5%、約10%、約20%、約25%、約30%を超て減少させない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象に投与される前記ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、HDL-Cレベルを低下させないか、または実質的に低下させない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、肝臓における脂質の蓄積をもたらさない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記AKR阻害剤が選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記AKR1A1阻害剤が、2,7-ジフルオロ-2’H,5’H-スピロ[フルオレン-9,4’-イミダゾリジン]-2’,5’-ジオンおよびその類似体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
イミレスタット類似体が、以下からなる群から選択される化合物であって、
【化1】
各R、R、R、R、R、R、およびRは、同一または異なり、独立して、水素、ハロゲン、置換または非置換のC-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-C20アリール、5~6個の環原子を含むヘテロシクロアルケニル、5~14個の環原子を含むヘテロアリールまたはヘテロシクリル、C-C24アルカリル、C-C24アラルキル、ハロ、シリル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C-C24アルコキシ、C-C24アルケニルオキシ、C-C24アルキニルオキシ、C-C20アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、C-C24アルコキシカルボニル、C-C20アリールオキシカルボニル、C-C24アルキルカルボナト、C-C20アリールカルボナト、カルボキシ、カルボキシラト、カルバモイル、C-C24アルキル-カルバモイル、アリールカルバモイル、カルバミド、シアノ、アミノ、C-C24アルキルアミノ、C-C20アリールアミノ、C-C24アルキルアミド、C-C20アリールアミド、スルファナミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、スルホ、スルホナト、C-C24アルキルスルファニル、アリールスルファニル、C1-24アルキルスルフィニル、C-C20アリールスルフィニル、C-C24アルキルスルホニル、C-C20アリールスルホニル、スルホンアミド、およびそれらの組み合わせである化合物、ならびにその薬学的に許容される塩を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記AKR1A1阻害剤が、AKR1B1に対して、≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1A1の選択性を有することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が糖尿病を患っているかまたは糖尿病のリスクがあり、前記AKR阻害剤が選択的または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤が、選択的または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記AKR1B1阻害剤が、AKR1A1に対して、≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1B1の選択性を有することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
血清コレステロールレベルが上昇している、または上昇するリスクがある対象を治療する方法であって、
前記対象の血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させるために有効な量で、AKR1A1阻害剤および/またはAKR1B1阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記対象が、高コレステロール血症、多遺伝子性高コレステロール血症、混合型脂質異常症、冠状動脈性心疾患、急性冠症候群、早期発症型冠状動脈性心疾患、I型糖尿病、II型糖尿病、脂質異常症を伴うII型糖尿病、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、高脂血症、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、ApoBの上昇、コレステロールの上昇、LDLコレステロールの上昇、VLDLコレステロールの上昇、もしくは非HDLコレステロールの上昇、末梢血管疾患または脳卒中を有するか、またはそのリスクがある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記上昇したLDLコレステロールレベルが、少なくとも約70mg/dL、100mg/dL、130mg/dL、160mg/dL、または190mg/dLの目標レベルを超える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記AKR1A1阻害剤を投与することにより、少なくとも約190mg/dL、160mg/dL、130mg/dL、100mg/dL、70mg/dL、50mg/dL、または30mg/dLの目標レベルを下回るLDLコレステロールレベルがもたらされる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
AKR1A1阻害剤を投与することにより、ApoB、LDLコレステロール、VLDLコレステロール、非HDLコレステロール、肝臓トリグリセリドレベル、血清トリグリセリド、血清リン脂質、またはそれらの任意の組み合わせの減少がもたらされる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ApoB低下、前記LDLコレステロール低下、前記VLDLコレステロール低下、前記非HDLコレステロール低下、前記肝臓トリグリセリドレベル低下、前記血清トリグリセリド低下、または血清リン脂質低下のうちの少なくとも1つが、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記AKR阻害剤が選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記AKR1A1阻害剤が、2,7-ジフルオロ-2’H,5’H-スピロ[フルオレン-9,4’-イミダゾリジン]-2’,5’-ジオン、およびその類似体を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イミレスタット類似体が、以下からなる群から選択される化合物であって、
【化2】
各R、R、R、R、R、R、およびRは、同一または異なり、独立して、水素、ハロゲン、置換または非置換のC-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-C20アリール、5~6個の環原子を含むヘテロシクロアルケニル、5~14個の環原子を含むヘテロアリールまたはヘテロシクリル、C-C24アルカリル、C-C24アラルキル、ハロ、シリル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C-C24アルコキシ、C-C24アルケニルオキシ、C-C24アルキニルオキシ、C-C20アリールオキシ、アシル、アシルオキシ、C-C24アルコキシカルボニル、C-C20アリールオキシカルボニル、C-C24アルキルカルボナト、C-C20アリールカルボナト、カルボキシ、カルボキシラト、カルバモイル、C-C24アルキル-カルバモイル、アリールカルバモイル、カルバミド、シアノ、アミノ、C-C24アルキルアミノ、C-C20アリールアミノ、C-C24アルキルアミド、C-C20アリールアミド、スルファナミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、スルホ、スルホナト、C-C24アルキルスルファニル、アリールスルファニル、C1-24アルキルスルフィニル、C-C20アリールスルフィニル、C-C24アルキルスルホニル、C-C20アリールスルホニル、スルホンアミド、およびそれらの組み合わせである化合物、ならびにその薬学的に許容される塩を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記AKR1A1阻害剤が、AKR1B1に対して、≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1A1の選択性を有することができる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が糖尿病を有するかまたは糖尿病のリスクがあり、前記AKR阻害剤が選択的または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤が、選択的または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤と組み合わせて投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
AKR1B1阻害剤が、AKR1A1に対して、≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1B1の選択性を有することができる、請求項23に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2017年9月25日に出願された米国仮出願第62/562,784号の優先権を主張し、その主題は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、血清コレステロールおよび/またはPCSK9を低下させる組成物および方法に関し、特に、対象における血清コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させる方法におけるアルコールデヒドロゲナーゼ阻害剤、アルドケトレダクターゼ阻害剤、および/またはSNO-コエンザイムAレダクターゼ阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
人体は、細胞膜の構築、ホルモンの生成、脂肪消化化合物の生成などの多種多様な機能のためにコレステロールを必要とするが、過剰なコレステロールは心疾患を発症するリスクを高める。高コレステロール血症の人は、血流中の過剰なコレステロールが血管壁、特に血液を心臓に供給する動脈(冠動脈)に沈着する、「アテローム性動脈硬化症」または「冠動脈疾患」と呼ばれる心疾患の形態を発症するリスクが高い。コレステロールの異常な蓄積は、動脈壁を狭めて硬化させる塊(プラーク)を形成する。塊が大きくなると、動脈が詰まり、心臓への血流が制限される。冠状動脈にプラークが蓄積すると、狭心症と呼ばれる胸部の痛みが発生し、心臓発作のリスクが大幅に高まる。一般に、健康な生活には最適化されたコレステロール代謝が必要である。
【0004】
コレステロールはリポタンパク質と呼ばれる小さなパッケージで血流を通って移動する。いくつかの種類のリポタンパク質は、主に低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、および超低密度リポタンパク質(VLDL)で、体全体にコレステロールを運ぶ。両方のタイプのリポタンパク質を健康的なレベルで有することは重要である。LDLコレステロールは、「悪玉」コレステロールと呼ばれることがある。LDLレベルが高いと、動脈にコレステロールが蓄積する。HDLコレステロールは、「善玉」コレステロールと呼ばれることもある。これは、体の他の部分から肝臓にコレステロールを運ぶためである。肝臓はコレステロールを体から取り除く。高コレステロール血症の効果的な治療管理方法は、LDLコレステロール(およびVLDL)を減らし、HDLコレステロールのレベルを上げて、過剰なコレステロールを体内から効率的に取り除くことを目的とする。
【0005】
過去20年ほどの間に、コレステロール血症化合物のHDLおよびLDLレギュレーターへの分離と、後者の血中レベルを低下させることの望ましさの認識は、多くの薬剤の開発につながった。しかしながら、これらの薬物の多くは、特に他の薬物と組み合わせて投与される場合、望ましくない副作用を有し、および/または特定の患者では禁忌である。
【0006】
胆汁酸結合樹脂は、腸から肝臓への胆汁酸のリサイクルを妨げる薬物の一種である。胆汁酸結合樹脂の例は、コレスチラミン(QUESTRAN LIGHT、Bristol-Myers Squibb)、および塩酸コレスチポール(COLESTID、Pharmacia & Upjohn Company)である。経口摂取すると、これらの正に帯電した樹脂は腸内で負に帯電した胆汁酸に結合する。樹脂は腸から吸収されないため、胆汁酸を運んで排泄される。しかしながら、そのような樹脂の使用は、せいぜい、血清コレステロールレベルを約20%低下させるだけである。さらに、それらの使用は、便秘や特定のビタミン欠乏症を含む胃腸の副作用と関連する。さらに、樹脂は薬物と結合するため、他の経口薬は、樹脂の摂取の少なくとも1時間前または4~6時間後に服用する必要があり、心臓患者の薬物療法が複雑になる。
【0007】
スタチンはコレステロール合成の阻害剤である。スタチンは胆汁酸結合樹脂との併用療法で使用されることがある。ロバスタチン(MEVACOR、Merck&Co.,Inc.)、アスペルギルス株に由来する天然物、プラバスタチン(PRAVACHOL、ブリストル・マイヤーズスクイブ社)、およびアトルバスタチン(LIPITOR、ワーナーランバート)は、コレステロール生合成経路に関与する主要な酵素であるHMGCoAレダクターゼを阻害することにより、コレステロール合成をブロックする。ロバスタチンは、血清コレステロールおよびLDL血清レベルを大幅に低下させる。しかしながら、血清HDLレベルは、ロバスタチン投与後にわずかに増加するだけである。LDL低下効果のメカニズムには、VLDL濃度の低下とLDL受容体の細胞発現の誘導の両方が含まれ、LDLの生成の減少および/または異化の増加につながる。肝臓や腎臓の機能障害を含む副作用は、これらの薬の使用に関連する。
【0008】
ニコチン酸は、ナイアシンとも呼ばれ、栄養補助食品および抗高脂血症薬として使用される水溶性ビタミンB複合体である。ナイアシンはVLDLの生成を減少させ、LDLを低下させる効果がある。胆汁酸結合樹脂と組み合わせて使用される。ナイアシンは、治療上有効な用量で投与すると、HDLを増加させることができるが、その有用性は、副作用と有効性の問題によって制限される。
【0009】
フィブラート系薬剤は、様々な形態の高脂血症、高コレステロール血症にも関連している可能性がある血清トリグリセリドの上昇を治療するために使用される脂質低下薬のクラスである。フィブラート系薬剤は、VLDLの割合を減らし、HDLを適度に増やすが、これらの薬物の血清コレステロールへの影響は様々である。米国では、フィブラート系薬剤は抗高脂血症薬としての使用が承認されているが、高コレステロール血症薬としての承認は受けていない。例えば、クロフィブラート(ATROMID-S、Wyeth-Ayerst Laboratories)は、VLDLフラクションを減らすことにより血清トリグリセリドを低下させるように作用する抗高脂血症薬である。ATROMID-Sは特定の患者のサブ集団で血清コレステロールレベルを低下させる可能性があるが、薬物に対する生化学的反応は一定ではなく、どの患者が好ましい結果を得るかを常に予測できるとは限らない。ATROMID-Sは、冠状動脈性心疾患の予防に有効であることは示されていない。化学的および薬理学的に関連する薬物であるゲムフィブロジル(LOPID、Parke-Davis)は、血清トリグリセリドおよびVLDLコレステロールを適度に低下させる脂質調節剤である。LOPEDは、HDLコレステロール、特にHDL2およびHDL3サブフラクション、およびAI/AII-HDLフラクションの両方も増加させる。しかしながら、LOPIDに対する脂質反応は、特に異なる患者集団間で不均一である。さらに、40歳から55歳の男性患者では、既往の冠状動脈性心疾患の既往歴や症状のない冠状動脈性心疾患の予防が観察されたが、これらの所見を他の患者集団(例えば、女性、高齢および若い男性)にどの程度外挿できるかは明確でない。確かに、確立された冠状動脈性心疾患の患者では有効性は観察されなかった。重篤な副作用は、毒性を含むフィブラートの使用、悪性腫瘍、特に胃腸癌の悪性腫瘍、胆嚢疾患、および非冠状動脈性死亡率の増加に関連する。これらの薬物は、脂質異常のみであるため、高LDLまたは低HDLの患者の治療には適応されない。
【0010】
経口エストロゲン補充療法は、閉経後の女性の中等度の高コレステロール血症のために考慮されることがある。しかしながら、HDLの増加にはトリグリセリドの増加が伴う場合がある。エストロゲン治療は、もちろん、特定の患者集団、閉経後の女性に限定されており、悪性新生物の誘発を含む深刻な副作用、胆嚢疾患、血栓塞栓症、肝腺腫、血圧の上昇、耐糖能障害、および高カルシウム血症を伴う。
【0011】
長鎖カルボン酸、特に特徴的な置換パターンを持つ長鎖アルファ、オメガジカルボン酸、およびそれらの単純な誘導体と塩は、アテローム性動脈硬化症、肥満症、および糖尿病の治療のために開示されている(例えば、Bisgaier et al、1998、J.Lipid Res 39:17-30、およびそこに引用されている参考文献;国際特許公開第WO98/30530号;米国特許第4689344号;国際特許公開第WO99/00116号;および米国特許第5756344号を参照)。しかしながら、これらの化合物の中には、血清トリグリセリドおよび血清コレステロール低下活性を有する一方で、肥満および高コレステロール血症の治療には価値がないものもある(米国特許第4689344号)。
【0012】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)は、分泌型サブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属するプロタンパク質転換酵素である。コードされたタンパク質は、小胞体で自己触媒分子内処理を受ける可溶性チモーゲンとして合成される。証拠によると、PCSK9は、循環からのLDLクリアランスの主要経路である肝臓でのLDLエンドサイトーシスを仲介するLDL受容体の分解を促進することにより、血漿LDLコレステロールを増加させる。PCSK9タンパク質の構造は、それがシグナル配列を持ち、プロドメイン、保存された3残基(D186、H226およびS386)を含む触媒ドメイン、およびC末端ドメインが続いていることを示す。これは、ERで自己触媒的切断を受けて14kDaのプロドメインと60kDaの触媒フラグメントを生成する可溶性74kDaの前駆体として合成される。自己触媒活性は分泌に必要であることが示されている。切断後、プロドメインは触媒ドメインと密接に関連したままである。
【発明の概要】
【0013】
本明細書に記載の実施形態は、血清コレステロールおよび/またはプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)レベルの調節を必要とする対象においてそれを行う組成物および方法に関し、特に、コレステロールおよび/またはPCSK9レベルの低下を必要とする対象においてそれを行うためのアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)阻害剤(例えばADH6阻害剤)、アルドケトレダクターゼ(AKR)阻害剤(例、AKR1A1阻害剤)、および/またはSNO-コエンザイムAレダクターゼ(SNO-CoAR)阻害剤(例、ADH6阻害剤およびAKR1A1阻害剤)の使用に関する。
【0014】
ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、PCSK9レベルを低下させるのに有効な量で対象に投与することができる。PCSK9は、循環からのLDLクリアランスの主要経路である肝臓でのLDLエンドサイトーシスを仲介するLDL受容体の分解を促進することにより、血漿LDLコレステロール(LDL-C)を増加させる。ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoARを、それを必要とする対象に投与することによるPCSK9レベルの低下は、(i)総血清コレステロールを、投与前レベルに対して少なくとも約5%、約10%、約20%、25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、またはそれ以上減少させることができ、(ii)血清LDL-Cを、投与前レベルに対して少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、またはそれ以上減少させることができ、(iii)血清トリグリセリドを、投与前レベルに対して少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%減少させることができ、および/または(iv)血清HDL-Cを減少させないか、または血清HDL-Cを、投与前レベルに対して約5%、約10%、約20%、約25%、約30%を超えて減少させない。
【0015】
ある実施形態では、対象は、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症を発症するリスク、冠状動脈性心疾患、冠状動脈性心疾患の病歴、早期発症型冠状動脈性心疾患、急性冠症候群、冠状動脈性心疾患の1つ以上の危険因子、I型糖尿病、II型糖尿病、脂質異常症を伴うII型糖尿病、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高脂肪酸血症、肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝疾患を有するか、またはその危険性がある。
【0016】
特定の実施形態では、対象に投与されるADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、HDL-Cレベルを低下させないか、または実質的に低下させない。特定の実施形態では、本方法は、肝臓における脂質の蓄積をもたらさない。
【0017】
本明細書に記載の他の実施形態は、LDL-Cレベルの上昇に罹患した個体に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することにより、LDL-Cレベルを低下させる方法、または高コレステロール血症を治療する方法に関する。別の実施形態では、LDL-Cレベルを低下させる方法は、LDL-Cレベルの低下を必要とする個体を選択すること、および個体に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することを含む。さらなる実施形態において、冠状動脈性心疾患リスクを低減する方法は、LDL-Cレベルが上昇している個体および冠状動脈性心疾患リスクの1つ以上の追加の指標を選択すること、および、個体に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することを含む。
【0018】
他の実施形態では、対象のLDL-Cレベルは、30から70mg/dL、70から100mg/dL、100から129mg/dL、130から159mg/dL、160から189mg/dL、または190mg/dL以上でよい。
【0019】
1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与は、個体の血清中のLDL-Cレベルのモニタリングを伴い、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与に対する個体の応答を決定する。ADH阻害剤、AKR阻害剤、SNO-CoAR阻害剤の投与に対する個体の反応は、治療的介入の量と期間を決定するために医師によって利用できる。
【0020】
1つの実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与により、LDL-Cレベルが190mg/dL未満、160mg/dL未満、130mg/dL未満、100mg/dL未満、70mg/dL未満、50mg/dL未満、30mg/dL未満になる。別の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与は、LDL-Cを少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。
【0021】
LDL-Cレベルが上昇している個体は、HDL-Cレベルの低下および/または総コレステロールレベルの上昇も示すことがある。したがって、1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、LDL-Cレベルが上昇しており、低下したHDL-Cレベルおよび/または上昇した総コレステロールレベルも有している個体に投与される。
【0022】
LDL-Cレベルが上昇している人は、トリグリセリドレベルも上昇している場合がある。したがって、1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、LDL-Cレベルが上昇し、トリグリセリドレベルも上昇した個体に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】AKR1A1欠損12週マウスの総血清コレステロールレベルを、12週野生型マウスと比較したグラフである。
図2】AKR1A1欠損24週マウスの総血清コレステロールレベルを24週野生型マウスと比較したグラフを示す。
図3】AKR1A1欠損マウスにおけるコレステロール分画を示す図である。
図4】AKR1A1欠損マウスの血清PCSK9レベルを示すグラフである。
図5】イミレスタットによるAKR1A1 SNO-CoAレダクターゼ活性の阻害を示すグラフである。
図6】イミレスタットを投与したマウスの総血清コレステロールレベルを示すグラフである。
図7】イミレスタットで処置されたマウスのコレステロール分画を示す図である。
図8】イミレスタットで処置されたマウスの血清PCSK9レベルを示すグラフを示す。
図9】イミレスタットで処置されたマウスにおけるSnO-CoAレダクターゼ活性を示すグラフを示す。
図10】イミレスタットで処置したApoE欠損マウスの総血清コレステロールを示すグラフを示す。
図11】イミレスタットで処置したApoE欠損マウスにおけるコレステロール分画を示すプロットを示す。
図12】イミレスタットで処置したApoE欠損マウスの総血清PCSK9レベルを示すグラフを示す。
図13】イミレスタットで処置したCETP/ApoB100トランスジェニック(ヒト化)マウスの総血清コレステロールを示すグラフを示す。
図14】イミレスタットで処置したCETP/ApoB100トランスジェニック(ヒト化)マウスにおけるコレステロール分画を示すプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語がここに集められている。他に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0026】
「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「有する」、および「有すること」という用語は、包括的で開かれた意味で使用され、追加の要素が含まれ得ることを意味する。本明細書で使用される「など」、「例えば」という用語は、非限定的であり、例示のみを目的とする。「含む」および「含むがそれに限定されない」は、互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される「または」という用語は、文脈が明らかに他を示さない限り、「および/または」を意味すると理解されるべきである。
【0028】
本明細書で使用する場合、「約」または「およそ」という用語は、ある参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%と同程度に変動する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さを指す。1つの実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重さ、または長さについて、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さの範囲を指す。
【0029】
「高コレステロール血症」という用語は、血清コレステロールの上昇を特徴とする病態を意味する。
【0030】
「高脂血症」という用語は、血清脂質の上昇を特徴とする病態を意味する。
【0031】
「高トリグリセリド血症」という用語は、上昇した血清トリグリセリドレベルを特徴とする病態を意味する。
【0032】
「非家族性高コレステロール血症」という用語は、単一遺伝子変異の結果ではない血清コレステロールの上昇を特徴とする病態を意味する。
【0033】
「多遺伝子性高コレステロール血症」という用語は、様々な遺伝的要因の影響から生じるコレステロールの上昇を特徴とする病態を意味する。特定の実施形態において、多遺伝子性高コレステロール血症は、脂質の食事摂取により悪化することがある。
【0034】
「家族性高コレステロール血症(FH)」という用語は、LDL受容体(LDL-R)遺伝子の変異、LDL-Cの著しい上昇、およびアテローム性動脈硬化の早期発症を特徴とする常染色体優性代謝障害を意味する。家族性高コレステロール血症の診断は、個体が次の基準の1つ以上を満たしたときに行われ、その基準は、2つの変異したLDL受容体遺伝子を確認する遺伝子検査、1つの変異したLDL受容体遺伝子を確認する遺伝子検査、500mg/dLを超える未処理の血清LDLコレステロールの履歴の記録、10歳よりも前の腱および/または皮膚の黄色腫、または、両方の両親が、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症と一致する脂質低下療法の前に、血清LDLコレステロールの上昇を記録したこと、である。
【0035】
「ホモ接合性家族性高コレステロール血症」または「HoFH」という用語は、母方および父方両方のLDL-R遺伝子の変異を特徴とする病態を意味する。
【0036】
「ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症」または「HeFH」という用語は、母方または父方のいずれかのLDL-R遺伝子の変異を特徴とする病態を意味する。
【0037】
「混合型脂質異常症」という用語は、血清コレステロールの上昇および血清トリグリセリドの上昇を特徴とする病態を意味する。
【0038】
「糖尿病性脂質異常症」または「脂質異常症を伴うII型糖尿病」という用語は、II型糖尿病、HDL-Cの低下、血清トリグリセリドの上昇、および小さな高密度LDL粒子の上昇を特徴とする病態を意味する。
【0039】
「CHDリスク同等物」という用語は、冠状動脈性心疾患に高いリスクを与える臨床的アテローム性動脈硬化症の指標を意味し、臨床的冠状動脈性心疾患、症候性頸動脈疾患、末梢動脈疾患、および/または腹部大動脈瘤を含む。
【0040】
「メタボリックシンドローム」という用語は、代謝起源の脂質および非脂質心血管危険因子のクラスター化を特徴とする病態を意味する。特定の実施形態では、メタボリックシンドロームは、以下の要因のいずれか3つの存在によって識別され、その要因は、胴囲が男性で120cm以上、または女性で102cm以上、血清トリグリセリドが少なくとも150mg/dL、HDL-Cが男性で40mg/dL未満、または女性で50mg/dL未満、少なくとも130/85mmHgの血圧、および少なくとも110mg/dLの空腹時血糖である。
【0041】
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」という用語は、過度のアルコールの使用が原因ではない肝臓の脂肪性炎症を特徴とする病態を意味する(例えば、20g/日のアルコール消費)。特定の実施形態では、NAFLDはインスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームに関連している。
【0042】
「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」という用語は、過剰なアルコールの使用によるものではなく、炎症と肝臓内の脂肪および線維組織の蓄積を特徴とする病態を意味する。NASHはNAFLDの極端な形式である。
【0043】
「主要な危険因子」という用語は、冠状動脈性心疾患の高リスクの一因となる因子を意味し、喫煙、高血圧、低HDL-C、冠状動脈性心疾患の家族歴、および年齢を含むがこれらに限定されない。
【0044】
「CHDリスク要因」という用語は、CHDリスク相当物と主要なリスク要因を意味する。
【0045】
「冠状動脈性心疾患(CHD)」という用語は、血液と酸素を心臓に供給する細い血管の狭窄を意味し、これは、多くの場合、アテローム性動脈硬化症の結果である。
【0046】
「冠状動脈性心疾患のリスクの低下」という用語は、個体が冠状動脈性心疾患を発症する可能性の低下を意味する。特定の実施形態では、冠状動脈性心疾患リスクの低減は、1つ以上のCHD危険因子の改善、例えば、LDL-Cレベルの低下によって測定される。
【0047】
「アテローム性動脈硬化症」という用語は、大中型の動脈に影響を与える動脈の硬化を意味し、脂肪性沈着物の存在を特徴とする。脂肪性沈着物は「アテローム」または「プラーク」と呼ばれ、主にコレステロールなどの脂肪、カルシウム、瘢痕組織で構成され、動脈の内層を損傷する。
【0048】
「冠状動脈性心疾患の病歴」という用語は、個体または個体の家族の病歴における臨床的に明らかな冠状動脈性心疾患の発生を意味する。
【0049】
「早期発症冠状動脈性心疾患」という用語は、50歳より前の冠状動脈性心疾患の診断を意味する。
【0050】
「スタチン不耐性の個体」という用語は、スタチン療法の結果として、クレアチンキナーゼの増加、肝機能検査の異常、筋肉痛、または中枢神経系の副作用のうちの1つ以上を経験する個体を意味する。
【0051】
「有効性」という用語は、所望の効果を生み出す能力を意味する。例えば、脂質低下療法の有効性は、LDL-C、VLDL-C、IDL-C、非HDL-C、ApoB、リポタンパク質(a)、またはトリグリセリドのうちの1つ以上の濃度の低下でよい。
【0052】
「許容される安全性プロファイル」という用語は、臨床的に許容できる限界内にある副作用のパターンを意味する。
【0053】
「脂質低下療法」という用語は、個体の1つ以上の脂質を減少させるために個体に提供される治療レジメンを意味する。特定の実施形態では、脂質低下療法は、個体におけるApoB、総コレステロール、LDL-C、VLDL-C、IDL-C、非HDL-C、トリグリセリド、小さな高密度LDL粒子、およびLp(a)の1つ以上を減少させるために提供される。
【0054】
「脂質低下剤」という用語は、個体における脂質の低下を達成するために個体に提供される医薬品を意味する。例えば、特定の実施形態では、脂質低下剤は、ApoB、LDL-C、総コレステロール、およびトリグリセリドの1つ以上を減少させるために個体に提供される。
【0055】
「LDL-C目標」という用語は、脂質低下療法後に望ましいLDL-Cレベルを意味する。
【0056】
「低いLDL-受容体活性」という用語は、血流中のLDL-Cの臨床的に許容されるレベルを維持するのに十分に高くないLDL-受容体活性を意味する。
【0057】
「心血管転帰」という用語は、主要な心血管有害事象の発生を意味する。
【0058】
「心血管転帰の改善」という用語は、主要な心血管有害事象の発生の減少、またはそのリスクを意味する。主要な心血管系有害事象の例には、これらに限定されないが、死亡、再梗塞、脳卒中、心原性ショック、肺水腫、心停止、および心房性不整脈が含まれる。
【0059】
「心血管転帰の代理マーカー」という用語は、心血管イベントまたはそのリスクの間接的な指標を意味する。例えば、心血管転帰の代理マーカーには、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)が含まれる。心血管転帰の代理マーカーの別の例には、アテロームのサイズが含まれる。アテロームの大きさは、血管内超音波(IVUS)によって決定される場合がある代理マーカーには、HDLコレステロールの増加、または上記のマーカーの任意の組み合わせも含まれる。
【0060】
「HDL-Cの増加」という用語は、個体の経時的な血清HDL-Cの増加を意味する。
【0061】
「脂質低下」という用語は、個体の1つ以上の血清脂質の経時的な減少を意味する。
【0062】
「共投与」という用語は、個体への2つ以上の医薬品の投与を意味する。2つ以上の医薬品は、単一の医薬組成物にあってもよく、または別個の医薬組成物にあってもよい。2つ以上の医薬品のそれぞれは、同じまたは異なる投与経路を介して投与することができる。同時投与は、並行投与または逐次投与を包含する。
【0063】
「同時に投与される」とは、両方の薬理効果が同時に患者に現れる任意の方法での、同じ治療時間枠での2つの薬剤の投与を指す。同時投与は、両方の薬剤が単一の医薬組成物で、同じ剤形で、または同じ投与経路で投与されることを必要としない。
【0064】
「スタチン」という用語は、HMG-CoAレダクターゼの活性を阻害する医薬品を意味する。
【0065】
「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」という用語は、酵素HMG-CoAレダクターゼの阻害を介して作用する医薬品を意味する。
【0066】
「コレステロール吸収阻害剤」という用語は、食事から得られる外因性コレステロールの吸収を阻害する医薬品を意味する。
【0067】
「LDLアフェレーシス」という用語は、LDL-Cが血液から除去されるアフェレーシスの一形態を意味する。通常、個体の血液は静脈から取り出され、赤血球と血漿に分離される。LDL-Cは、血漿と赤血球が個体に戻る前に、血漿からろ過される。
【0068】
「MTP阻害剤」という用語は、酵素ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質を阻害する医薬品を意味する。
【0069】
「低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)」という用語は、低密度リポタンパク質粒子で運ばれるコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のLDL-Cの濃度は、通常mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清LDL-C」および「血漿LDL-C」は、それぞれ血清および血漿中のLDL-Cを意味する。
【0070】
「超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL-C)」という用語は、非常に低密度のリポタンパク質粒子に関連するコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のVLDL-Cの濃度は、通常mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清VLDL-C」および「血漿VLDL-C」は、それぞれ血清または血漿中のVLDL-Cを意味する。
【0071】
「中間低密度リポタンパク質コレステロール(IDL-C)」という用語は、中間密度リポタンパク質に関連するコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のIDL-Cの濃度は、通常mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清IDL-C」および「血漿IDL-C」は、それぞれ血清または血漿中のIDL-Cを意味する。
【0072】
「非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL-C)」という用語は、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質に関連するコレステロールを意味し、LDL-C、VLDL-C、およびIDL-Cが含まれるがこれらに限定されない。
【0073】
「高密度リポタンパク質-C(HDL-C)」という用語は、高密度リポタンパク質粒子に関連するコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のHDL-Cの濃度は、通常、mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清HDL-C」および「血漿HDL-C」は、それぞれ血清および血漿中のHDL-Cを意味する。
【0074】
「総コレステロール」という用語は、LDL-C、HDL-C、IDL-CおよびVLDL-Cを含むがこれらに限定されない、すべてのタイプのコレステロールを意味する。血清(または血漿)中の総コレステロール濃度は、通常mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。
【0075】
「リポタンパク質(a)」または「Lp(a)」という用語は、LDL-C、アポリポタンパク質(a)粒子、およびアポリポタンパク質B-100粒子から構成されるリポタンパク質粒子を意味する。
【0076】
「ApoA1」という用語は、血清中のアポリポタンパク質A1タンパク質を意味する。血清中のApoA1の濃度は、通常、mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。
【0077】
「ApoB:ApoA1比」とは、ApoA1濃度に対するApoB濃度の比を意味する。
【0078】
「ApoB含有リポタンパク質」という用語は、そのタンパク質成分としてアポリポタンパク質Bを有する任意のリポタンパク質を意味し、LDL、VLDL、IDL、およびリポタンパク質(a)を含むと理解されている。
【0079】
「トリグリセリド」という用語は、グリセロールのトリエステルである脂質を意味する。「血清トリグリセリド」は、血清中に存在するトリグリセリドを意味する。「肝臓トリグリセリド」は、肝臓組織に存在するトリグリセリドを意味する。
【0080】
「血清脂質」という用語は、血清中のコレステロールとトリグリセリドを意味する。
【0081】
「上昇した総コレステロール」という用語は、脂質低下療法が推奨される個体の濃度での総コレステロールを意味し、LDL-Cの上昇」、「VLDL-Cの上昇」、「IDL-Cの上昇」および「非HDL-Cの上昇」が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、200mg/dL未満、200~239mg/dL、および240mg/dLを超える総コレステロール濃度は、それぞれ、望ましい、高境界である、および高いと考えられる。特定の実施形態では、100mg/dL、100~129mg/dL、130~159mg/dL、160~189mg/dL、および190mg/dLを超えるLDL-C濃度は、それぞれ、最適である、ほぼ最適/最適を超える、高境界である、高い、および非常に高いと考えられる。
【0082】
「上昇トリグリセリド」という用語は、脂質低下療法が推奨される血清または肝臓中のトリグリセリドの濃度を意味し、「上昇血清トリグリセリド」および「上昇肝臓トリグリセリド」が含まれる。特定の実施形態では、150~199mg/dL、200~499mg/dL、および500mg/dL以上の血清トリグリセリド濃度は、それぞれ、高境界である、高い、および非常に高いと考えられる。
【0083】
「上昇した小さなLDL粒子」という用語は、脂質低下療法が推奨される個体における小さなLDL粒子の濃度を意味する。
【0084】
「上昇した小さなVLDL粒子」という用語は、脂質低下療法が推奨される個体における小さなVLDL粒子の濃度を意味する。
【0085】
「上昇したリポタンパク質(a)」という用語は、脂質低下療法が推奨される個体におけるリポタンパク質(a)の濃度を意味する。
【0086】
「低HDL-C」という用語は、脂質低下療法が推奨される個体におけるHDL-Cの濃度を意味する。特定の実施形態では、低HDL-Cが非HDL-Cの上昇および/またはトリグリセリドの上昇を伴う場合、脂質低下療法が推奨される。特定の実施形態では、40mg/dL未満のHDL-C濃度は低いと見なされる。特定の実施形態では、50mg/dL未満のHDL-C濃度は低いと見なされる。
【0087】
「LDL/HDL比」という用語は、LDL-CとHDL-Cの比を意味する。
【0088】
「酸化LDL」または「Ox-LDL-C」という用語は、フリーラジカルへの曝露後に酸化されるLDL-Cを意味する。
【0089】
「上昇したLDL-Cレベルを有する個体」という用語は、認識されたガイドラインに従って、治療介入が推奨されるレベルに近いかまたはそれを超えるLDL-Cレベルを有すると医療専門家(例えば、医師)によって識別された個体を意味する。そのような個体はまた、LDL-Cレベルを低下させるために「治療を必要としている」と考えられてもよい。
【0090】
「コレステロール関連障害」(「血清コレステロール関連障害」を含む)には、高コレステロール血症、高脂血症、心疾患、代謝性症候群、糖尿病、冠動脈心臓疾患、脳卒中、心臓血管病、アルツハイマー病、および、一般的には例えば、上昇した総血清コレステロール、上昇したLDL、上昇したトリグリセリド、上昇したVLDL、および/または低HDLによって現れ得る脂質異常症のうちのいずれか1つ以上が含まれる。高コレステロール血症は、実際には、人間の冠状動脈性心疾患(CHD)の確立された危険因子である。低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の低下は心血管リスクの低減をもたらし、CHDの薬物療法における主要な目標である。スタチン(ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA[HMG CoA]レダクターゼ阻害剤)は、現在、高コレステロール血症に最適な治療法である。しかしながら、新たに出現したデータは、高コレステロール血症のより積極的な治療がCHDイベントのリスク低下と関連していることを示している。さらに、一部の患者はスタチン療法に不耐性であるか、またはスタチン療法に十分に反応しない。したがって、LDL-Cをより効果的に低減するために単独でまたは既存の薬剤と組み合わせて使用することができる新規の治療法が有用であるかもしれない。
【0091】
本願の化合物のいくつかの構造は、不斉(キラル)炭素または硫黄原子を含むことに留意されたい。したがって、そうでないと示されない限り、そのような非対称性から生じる異性体が本明細書に含まれることを理解されたい。そのような異性体は、古典的な分離技術および立体化学的に制御された合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。本出願の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよく、したがって、個々の立体異性体として、または混合物として製造することができる。
【0092】
「非経口投与」および「非経口投与」という語句は、当該技術分野で認識されている用語であり、注射などの経腸および局所投与以外の投与方法が含まれ、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
「治療する」という用語は、当該技術分野で認識されており、対象の疾患、障害または病態を阻害すること、例えば、その進行を妨げること、および、疾患、障害または病態を緩和すること、例えば、疾患、障害および/または病態の退行を引き起こすことを含む。疾患または病態の治療には、根底にある病態生理学が影響を受けていないとしても、特定の疾患または病態の少なくとも1つの症状を改善することが含まれる。
【0094】
「予防する」という用語は、当該技術分野で認識されており、疾患、障害、または病態に罹患しやすいが、それを有するとまだ診断されていない、疾患、障害、または病態が対象で起こるのを止めることを含む。疾患に関連する病態を予防することは、疾患が診断された後であるが病態が診断される前に、その病態の発生を止めることを含む。
【0095】
「医薬組成物」という用語は、対象への投与に適した形態で開示された化合物を含む製剤を指す。好ましい実施形態では、医薬組成物は、バルクまたは単位剤形である。単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプ、またはバイアルを含む、様々な形態のいずれかである。組成物の単位用量における活性成分(例えば、開示された化合物またはその塩の製剤)の量は、有効量であり、関与する特定の治療に従って変化する。当業者は、患者の年齢および病態に応じて投与量に日常的な変更を加えることが必要な場合があることを理解するであろう。投与量は投与経路にも依存するであろう。経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、吸入などを含む様々な経路が企図される。本明細書に記載の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、噴霧化合物、および吸入剤が含まれる。好ましい実施形態において、活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされる任意の保存剤、緩衝剤、または噴射剤と混合される。
【0096】
「フラッシュ用量」という用語は、急速に分散する剤形である化合物製剤を指す。
【0097】
「即時放出」という用語は、比較的短い期間、一般的には最大約60分での剤形からの化合物の放出として定義される。「改変放出」という用語は、遅延放出、延長放出、およびパルス放出を含むと定義される。「パルス放出」という用語は、剤形からの一連の薬物放出として定義される。「持続放出」(sustained release)または「持続放出」(extended release)という用語は、長期間にわたる剤形からの化合物の連続的放出として定義される。
【0098】
「薬学的に許容される」という語句は、技術的に認識されている。特定の実施形態では、この用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題や合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合った組成物、ポリマーおよび他の材料および/または剤形を含む。
【0099】
「薬学的に許容される担体」という語句は当該分野で認識されており、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料など、ある器官または体の一部から別の器官または体の一部への任意の対象組成物の運搬または輸送に関与する薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルが含まれる。各担体は、対象組成物の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は非発熱性である。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなどのセルロース、およびその誘導体、(4)トラガント粉末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤、(9)落花生油、綿実油、ひまわり油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油などの油、(10)グリコール、例えばプロピレングリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、および(21)医薬製剤で使用される他の非毒性適合性物質が含まれる。
【0100】
本出願の化合物は、さらに塩を形成することができる。これらの形態のすべても本明細書で企図される。
【0101】
化合物の「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。例えば、塩は酸付加塩でよい。酸付加塩の1つの実施形態は、塩酸塩である。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水中または有機溶媒中、またはこの2つの混合物中で反応させることによって調製でき、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版に記載されている。(Mack Publishing Company,1990)。
【0102】
本明細書に記載される化合物はまた、エステル、例えば、薬学的に可能さるエステルとして調製することができる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基は、その対応するエステル、例えば、メチル、エチル、または他のエステルに変換することができる。また、化合物中のアルコール基は、その対応するエステル、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、または他のエステルに変換することができる。
【0103】
本明細書に記載される化合物はまた、プロドラッグ、例えば、薬学的に許容されるプロドラッグとして調製され得る。「プロドラッグ」および「プロドラッグ」という用語は、本明細書で互換的に使用され、インビボで活性な親薬物を放出する任意の化合物を指す。プロドラッグは、医薬品の多くの望ましい品質(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、製造など)を高めることが知られているため、化合物はプロドラッグの形で送達することができる。したがって、本明細書に記載されている化合物は、現在請求されている化合物のプロドラッグ、それを送達する方法、およびそれを含む組成物を網羅することを意図している。「プロドラッグ」は、そのようなプロドラッグが対象に投与されたときにインビボで活性な親薬物を放出する共有結合した担体を含むことが意図されている。プロドラッグは、通常の操作またはインビボのいずれかで修飾が親化合物に切断されるように、化合物に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシ、またはカルボニル基が、インビボで開裂して遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、遊離スルフヒドリル、遊離カルボキシ、または遊離カルボニル基をそれぞれ形成できる任意の基に結合している化合物が含まれる。プロドラッグはまた、本明細書に記載の活性またはより活性のある薬理作用剤または活性化合物になる前に代謝プロセスにより化学変換を受ける本明細書に記載の化合物の前駆体(先駆物質)を含み得る。
【0104】
プロドラッグの例には、化合物内の、エステル基(例えば、アセテート、ジアルキルアミノアセテート、ホルメート、ホスフェート、サルフェート、およびベンゾエート誘導体)およびヒドロキシ官能基のカルバメート(例えば、N、N-ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル基(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、N-マンニッヒ塩基のN-アシル誘導体(例えば、N-アセチル)、アミノ官能基のN-マンニッヒ塩基、シッフ塩基およびエナンチオマー、化合物中のケトンおよびアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタールおよびエノールエステルなど、ならびに、酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成するスルフィドを含むがこれらに限定されない。
【0105】
「保護基」という用語は、分子マスク内の反応性基に結合すると、その反応性を低減または防止する原子の群を指す。保護基の例は、Green and Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry(Wiley、第2版、1991)、Harrison and Harrison et al.,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1-8(John Wiley and Sons,1971-1996)、およびKocienski,Protecting Groups(Verlag、第3版、2003)に見られる。
【0106】
さらに、本明細書に記載される化合物の塩は、水和または非水和(無水)形態のいずれかで、または他の溶媒分子との溶媒和物として存在することができる。水和物の非限定的な例には、一水和物、二水和物などが含まれる。溶媒和物の非限定的な例には、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが含まれる。
【0107】
「溶媒和物」という用語は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。化合物の中には、結晶性固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、したがって溶媒和物を形成する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1つ以上の水の分子と、水がHOとしてその分子状態を保持する物質の1つとの組み合わせによって形成され、そのような組み合わせは1つ以上の水和物を形成できる。
【0108】
本明細書に記載される化合物、塩およびプロドラッグは、エノールおよびイミン形態、ならびにケトおよびエナミン形態ならびに幾何異性体およびそれらの混合物を含むいくつかの互変異性体で存在することができる。互変異性体は、溶液中に互変異性体の集合の混合物として存在する。固体の形態では、通常、1つの互変異性体が優勢である。1つの互変異性体が記載されているとしても、本願は、本化合物のすべての互変異性体を含む。互変異性体は、平衡状態で存在し、ある異性体から別の異性体に容易に変換される2つ以上の構造異性体の1つである。この反応は、隣接する共役二重結合のスイッチを伴う水素原子の形式的な移行をもたらす。互変異性化が可能な溶液では、互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒、pHなどのいくつかの要因に依存する。互変異性化によって相互変換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
【0109】
可能な様々なタイプの互変異性のうち、2つが一般的に観察される。ケト-エノール互変異性では、電子と水素原子の同時シフトが発生する。
【0110】
互変異性化は、塩基:1脱プロトン化、2非局在化アニオン(例えば、エノラート)の形成、3アニオンの異なる位置でのプロトン化、酸:1プロトン化、2非局在化カチオンの形成、3カチオンに隣接する別の位置での脱プロトン化、によって触媒され得る。
【0111】
「類似体」という用語は、構造的に別のものに類似しているが、組成がわずかに異なる化合物を指す(1つの原子を別の元素の原子によってまたは特定の官能基の存在下で置換するか、または1つの官能基を別の官能基によって置換するかのように)。したがって、類似体は、機能および外観が類似または同等であるが、構造または起源が参照化合物とは異なる化合物である。
【0112】
主題の方法によって治療される「患者」、「対象」、または「宿主」は、哺乳動物、魚、鳥、爬虫類、または両生類などのヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味することがある。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類でよい。この用語は、特定の年齢や性別を示すものではない。したがって、成人および新生児の対象、ならびに胎児は、男性または女性にかかわらず、カバーされることが意図されている。一態様では、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害に苦しんでいる対象を指す。
【0113】
「予防的」または「治療的」治療という用語は当技術分野で認識されており、1つ以上の対象組成物の宿主への投与を含む。それが望ましくない病態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない病態)の臨床症状の前に投与される場合、治療は予防的である、すなわちそれは望ましくない病態の発症から宿主を保護する。望ましくない病態の治療は治療的である(すなわち、既存の望ましくない病態またはその副作用を軽減、改善、または安定させることを目的とする)。
【0114】
「治療薬」、「薬物」、「医薬品」および「生物活性物質」という用語は、当技術分野で認識されており、患者または対象の局所的または全身的に作用する生物学的、生理学的、または薬理学的に活性な物質である分子および他の物質を含む。病気や病態を治療する。この用語には、その薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグが含まれるがこれらに限定されない。このような薬剤は、酸性、塩基性、または塩でよく、それらは、中性分子、極性分子、または水素結合が可能な分子複合体でよく、それらは、患者または対象に投与されたときに生物学的に活性化されるエーテル、エステル、アミドなどの形態のプロドラッグでよい。
【0115】
「治療有効量」または「薬学的有効量」という句は、当該技術分野で認識されている用語である。特定の実施形態では、この用語は、任意の医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比でいくつかの所望の効果をもたらす治療薬の量を指す。特定の実施形態では、この用語は、特定の治療レジメンの標的を排除、低減または維持するために必要または十分な量を指す。有効量は、治療される疾患または病態、投与される特定の標的化コンストラクト、対象のサイズ、または疾患または病態の重症度などの要因に応じて変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することができる。
【0116】
任意の化学化合物に関して、本願は、本化合物に存在する原子のすべての同位体を含むことが意図されている。同位体には、原子番号は同じで質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体には、トリチウムおよび重水素が含まれ、炭素の同位体には、C-13およびC-14が含まれる。
【0117】
置換基への結合が環内の2つの原子を接続する結合と交差することが示されている場合、そのような置換基は環内の任意の原子に結合することができる。そのような置換基が所与の式の化合物の残りに結合する原子を示さずに置換基が記載されている場合、そのような置換基はそのような置換基の任意の原子を介して結合できる。置換基および/または変数の組み合わせは許容されるが、そのような組み合わせが安定した化合物をもたらす場合に限られる。
【0118】
原子または化学的部分の後に下付きの数値範囲(例えば、C1-6)が続く場合、範囲内のすべての数値とすべての中間範囲を包含することを意味する。例えば、「C1-6アルキル」は、1、2、3、4、5、6、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、3~4、4~6、4~5、および5~6個の炭素を有するアルキル基を含むことを意味する。
【0119】
「アルキル」という用語は、分岐(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル)、直鎖(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル)の両方、およびシクロアルキル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。このような脂肪族炭化水素基は、特定の数の炭素原子を有する。例えば、C1-6アルキルは、C、C、C、C、C、およびCアルキル基を含むことを意図している。本明細書で使用される場合、「低級アルキル」は、炭素鎖の主鎖に1~6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。「アルキル」はさらに、1個以上の炭化水素骨格炭素原子を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を有するアルキル基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に6個の以下の炭素原子(例えば、直鎖についてC-C、分岐鎖についてC-C例えば4個以下の炭素原子を有する。同様に、特定のシクロアルキルは、それらの環構造に3~8個の炭素原子、例えば、環構造に5または6個の炭素を有する。
【0120】
「置換アルキル」という用語は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、ウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族またはヘテロ芳香族部分を含んでよい。シクロアルキルは、例えば上記の置換基でさらに置換することができる。「アルキルアリール」または「アラルキル」部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。特に明記しない限り、「アルキル」および「低級アルキル」という用語は、それぞれ、直鎖、分岐、環状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルキルまたは低級アルキルを含む。
【0121】
「アルケニル」という用語は、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルなどの、少なくとも1つの二重結合を含む2~約24個の炭素原子の直鎖、分岐または環状炭化水素基を指す。一般に、やはり必須ではないが、アルケニル基は、2~約18個の炭素原子、より具体的には2~12個の炭素原子を含むことができる。「低級アルケニル」という用語は、2~6個の炭素原子のアルケニル基を指し、特定の用語「シクロアルケニル」は、好ましくは5~8個の炭素原子を有する環状アルケニル基を意図する。「置換アルケニル」という用語は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニルを指し、「ヘテロ原子含有アルケニル」および「ヘテロアルケニル」という用語は、アルケニルまたは少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置換されたヘテロシクロアルケニル(例えば、ヘテロシクロヘキセニル)を指す。特に明記しない限り、「アルケニル」および「低級アルケニル」という用語は、それぞれ、直鎖、分岐、環状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルケニルおよび低級アルケニルを含む。
【0122】
「アルキニル」という用語は、エチニル、n-プロピニルなどの、少なくとも1つの三重結合を含む2~24個の炭素原子の直鎖または分岐炭化水素基を指す。一般に、やはり必ずではないが、アルキニル基は、2~約18個の炭素原子を含むことができ、より具体的には、2~12個の炭素原子を含むことができる。「低級アルキニル」という用語は、2~6個の炭素原子のアルキニル基を意図する。「置換アルキニル」という用語は、1つ以上の置換基で置換されたアルキニルを指し、「ヘテロ原子含有アルキニル」および「ヘテロアルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアルキニルを指す。特に明記しない限り、「アルキニル」および「低級アルキニル」という用語は、それぞれ、線状、分岐、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルキニルおよび低級アルキニルを含む。
【0123】
「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という用語は、ジラジカルである、すなわち2つの結合点を有する部分を含むことを意図している。ジラジカルであるそのようなアルキル部分の非限定的な例は、-CHCH2-、すなわち、各末端炭素原子を介して分子の残りの部分に共有結合しているCアルキル基である。
【0124】
「アルコキシ」という用語は、単一の末端エーテル結合を介して結合されたアルキル基を指し、すなわち、「アルコキシ」基は、-O-アルキルとして表すことができ、ここで、アルキルは上記で定義されたとおりである。「低級アルコキシ」基は、1~6個の炭素原子を含むアルコキシ基を意図し、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、t-ブチルオキシなどが含まれる。本明細書において「C-Cアルコキシ」または「低級アルコキシ」として特定される好ましい置換基は、1~3個の炭素原子を含み、特に好ましいかかる置換基は、1または2個の炭素原子を含む(すなわち、メトキシおよびエトキシ)。
【0125】
「アリール」という用語は、(異なる芳香環がメチレンまたはエチレン部分などの共通の基に結合されるように)一緒に融合、直接結合、または間接結合された単一の芳香環または複数の芳香環を含む芳香族置換基を指す。アリール基は、5~20個の炭素原子を含むことができ、特に好ましいアリール基は、5~14個の炭素原子を含むことができる。アリール基の例には、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどが含まれる。さらに、用語「アリール」は、多環式アリール基、例えば、三環式、二環式、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフスリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリンまたはインドリジンを含む。環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」または「複素芳香族」とも呼ばれることがある。芳香環は、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族またはヘテロ芳香族部分などの上記置換基で1つ以上の環位置で置換することができる。アリール基はまた、多環式系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように芳香族ではない脂環式または複素環式環と融合または架橋することができる。特に明記しない限り、「アリール」という用語は、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有芳香族置換基を含む。
【0126】
用語「アルカリル」は、アルキル置換基を有するアリール基を指し、用語「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキル基を指し、ここで、「アリール」および「アルキル」は、上で定義されたとおりである。例示的なアラルキル基は6~24個の炭素原子を含み、特に好ましいアラルキル基は6~16個の炭素原子を含む。アラルキル基の例には、ベンジル、2-フェニル-エチル、3-フェニル-プロピル、4-フェニル-ブチル、5-フェニル-ペンチル、4-フェニルシクロヘキシル、4-ベンジルシクロヘキシル、4-フェニルシクロヘキシルメチル、4-ベンジルシクロヘキシルメチルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルカリル基には、例えば、p-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、p-シクロヘキシルフェニル、2,7-ジメチルナフチル、7-シクロオクチルナフチル、3-エチル-シクロペンタ-1,4-ジエンなどが含まれる。
【0127】
「ヘテロシクリル」または「複素環式基」という用語は、1つ以上のヘテロ原子を含む閉環構造、例えば3~10員環、または4~7員環を含む。「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。ヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄およびリンが含まれる。
【0128】
ヘテロシクリル基は飽和または不飽和であってよく、ピロリジン、オキソラン、チオラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、およびスルトンが含まれる。ピロールやフランなどの複素環基は、芳香族の特性を持つことができる。それらには、キノリンやイソキノリンなどの縮合環構造が含まれる。複素環式基の他の例には、ピリジンおよびプリンが含まれる。複素環式環は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、または芳香族またはヘテロ芳香族部分など、上記のような置換基で1つ以上の位置で置換することができる。複素環式基は、例えば、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、-CFまたは--CNなどで1つ以上の構成原子を置換することもできる。
【0129】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。「対イオン」は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、酢酸塩、硫酸塩などの小さな負に帯電した種を表すために使用される。スルホキシドという用語は、2つの異なる炭素原子と1つの酸素に結合した硫黄を指し、S-O結合は、二重結合(S=O)、電荷のない単結合(S-O)、または電荷のある単結合[S(+)-O(-)]で図示することができる。
【0130】
「置換アルキル」、「置換アリール」などにおける「置換」という用語は、前述の定義のいくつかで言及されているように、アルキル、アリール、または他の部分において、少なくとも1つの水素原子が結合していることを意味する炭素(または他の)原子は1つ以上の非水素置換基で置き換えられる。そのような置換基の例としては、限定されないが、例えば、ハロ等の官能基を、ヒドロキシ、シリル、スルフヒドリル、C-C24アルコキシ、C-C24アルケニルオキシ、C-C24アルキニルオキシ、C-C20アリールオキシ、アシル(C-C24アルキルカルボニル(-CO-アルキル)およびC-C20アリールカルボニル(-CO-アリール)を含む)、アシルオキシ(-O-アシル)、C-C24アルコキシカルボニル(-(CO)-O-アルキル)、C-C20アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-アリール)、C-C24アルキルカルボナト(-O-(CO)-O-アルキル)、C-C20アリールカルボナト(-O-(CO)-O-アリール)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシラト(-COO-)、カルバモイル(-(CO)-NH)、モノ-(C-C24アルキル)-置換カルバモイル(-(CO)-NH(C-C24アルキル))、ジ-(C-Cアルキル)-置換カルバモイル(-(CO)-N(C-C24アルキル))、一置換アリールカルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、チオカルバモイル(-(CS)-NH2)、カルバミド(-NH-(CO)-NHシアノ(-CN)、イソシアノ(-N)シアナト(-O-CN)、イソシアナト(-O-N)イソチオシアナト(-S-CN)、アジド(-N=N=N)ホルミル(-(CO)-H)、チオホルミル(-(CS)-H)、アミノ(-NH)、モノ-およびジ-(C-C24アルキル)-置換アミノ、モノ-およびジ-(C-C20アリール)-置換アミノ、C-C24アルキルアミド(-NH-(CO)-アルキル)、C-C20アリールアミド(-NH-(CO)-アリール)、イミノ(-CR=NH(R=水素、C-C24アルキル、C-C20アリール、C-C24アルカリル、C-C24アラルキルなど))、アルキルイミノ(-CR=N(アルキル)、R=水素、アルキル、アリール、アルカリルなど)、アリールイミノ(-CR=N(アリール)、R=水素、アルキル、アリール、アルカリルなど))、ニトロ(-NO)、ニトロソ(-NO)、スルホ(-SO-OH)、スルホナト(-SO-O)、C-C24アルキルスルファニル(-S-アルキル、「アルキルチオ」とも呼ばれる)、アリールスルファニル(-S-アリール、「アリールチオ」とも呼ばれる)、C-C24アルキルスルフィニル(-(SO)-アルキル)、C-C20アリールスルフィニル(-(SO)-アリール)、C-C24アルキルスルホニル(-SO2-アルキル)、C-C20アリールスルホニル(-SO2-アリール)、ホスホノ(-P(O)(OH))、ホスホナト(-P(O)(Oホスフィナト(-P(O)(O))ホスホ(-POホスフィノ(-PH2)。およびヒドロカルビル部分C-C24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-C20アリール、C-C24アルカリル、およびC-C24アラルキルが含まれる。
【0131】
さらに、前述の官能基は、特定の基が許せば、1つ以上の追加の官能基または上記で具体的に列挙したものなどの1つ以上のヒドロカルビル部分でさらに置換されてもよい。同様に、上記のヒドロカルビル部分は、1つ以上の官能基または具体的に列挙されたものなどの追加のヒドロカルビル部分でさらに置換されてもよい。
【0132】
「置換された」という用語が可能な置換基のリストの前に現れる場合、その用語はその群のすべてのメンバーに適用されることが意図されている。例えば、「置換アルキル、アルケニル、およびアリール」という語句は、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アリール」として解釈されるべきである。同様に、「ヘテロ原子含有」という用語が可能なヘテロ原子含有基のリストの前に現れる場合、この用語はその群のすべてのメンバーに適用されることが意図されている。例えば、「ヘテロ原子含有アルキル、アルケニル、およびアリール」という語句は、「ヘテロ原子含有アルキル、置換アルケニル、および置換アリール」と解釈されるべきである。
【0133】
「任意の」または「任意に」とは、後で説明する状況が発生する場合と発生しない場合があるため、説明には状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意に置換された」という語句は、非水素置換基が所与の原子上に存在してもまたはしなくてもよいことを意味し、したがって、この記載は非水素置換基が存在する構造および非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0134】
「安定な化合物」および「安定な構造」という用語は、単離、および必要に応じて、反応混合物からの精製、および有効な治療薬への製剤に耐えるのに十分頑丈な化合物を示すことを意味する。
【0135】
本明細書では、「遊離化合物」という用語は、非結合状態の化合物を説明するために使用される。
【0136】
説明全体を通じて、組成物が特定の構成要素を有する、含む、または含むと記載されている場合、組成物はまた、列挙された構成要素から本質的に構成されるか、または構成されることが企図される。同様に、方法またはプロセスが、特定のプロセス工程を有する、含む、または含むものとして記載されている場合、プロセスはまた、列挙された処理工程から本質的に構成されるか、または構成される。さらに、本明細書に記載の組成物および方法が実施可能である限り、工程の順序または特定の操作を実行するための順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上の工程または操作を同時に実行できる。
【0137】
「小分子」という用語は、当技術分野で認識されている用語である。特定の実施形態では、この用語は、約2000amu未満、または約1000amu未満、さらには約500amu未満の分子量を有する分子を指す。
【0138】
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージおよび比率は、他に指示がない限り、重量による。
【0139】
「健常な」および「正常な」という用語は、本明細書では互換的に使用され、(少なくとも検出の限界まで)疾患病態がない対象または特定の細胞または組織を指す。
【0140】
本明細書に記載の実施形態は、血清コレステロールおよび/またはプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)レベルの調節を必要とする対象においてそれを行う組成物および方法に関し、特に、コレステロールおよび/またはPCSK9レベルの低下を必要とする対象においてそれを行うためのアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)阻害剤(例えばADH6阻害剤)、コレステロールおよび/またはPCSK9レベルを低下させるためのアルドケトレダクターゼ(AKR)阻害剤(例、AKR1A1阻害剤および/またはAKR1B1阻害剤)、および/またはSNO-コエンザイムAレダクターゼ(SNO-CoAR)阻害剤(例えば、ADH6阻害剤およびAKR1A1阻害剤)の使用に関する。
【0141】
LDLコレステロール(HDL-C)の上昇したレベルは、冠状動脈性心疾患(CHD)の主要な独立した危険因子として認識されている。LDLコレステロール(LDL-C)レベルを下げるために現在利用可能なコレステロール低下薬で積極的な治療を受けている個体でさえ、冠状動脈イベントは依然として発生しており、LDL-Cレベルの上昇はこれらの個体の冠状動脈性心疾患の主要な危険因子のままである。さらに、LDL低下療法を受けている多くの個体は、目標のLDL-Cレベルに到達しないため、CHDのリスクが残る。したがって、追加のLDL-C低下剤が必要である。
【0142】
図1~15に示すように、選択的および/または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤(例、イミレスタット)および/またはAKR1B1阻害剤などのAKR阻害剤は、コレステロールおよび/またはPCSK9レベルの低下を必要とする対象においてそれを行うために使用することができ、したがって高コレステロール血症の治療に有用である。ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤による高コレステロール血症の治療は、臨床的に望ましい結果をもたらす治療レジメンを包含する。例えば、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、高LDL-Cなどの高コレステロールの治療のために対象に投与することができる。さらに、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、CHDの1つ以上の危険因子を示す対象において、CHDのリスクを低減するために対象に投与することができる。さらに、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を対象に投与して、アテローム性動脈硬化症を治療および/または予防することができる。
【0143】
さらに、LDL受容体(LDLR)の発現はコレステロールレベルを調節する。LDLRが高いほど、対象の血清コレステロールが低くなる。LDLRは、PCSK9とIDOL(E3リガーゼ)の2つのメカニズムで制御できる。PCSK9は、LDLRの分解を促進することにより血漿LDLコレステロールを増加させる。LDLは、循環からのLDLクリアランスの主要経路である肝臓でのLDLエンドサイトーシスを仲介する。AKR1A1の阻害は、血漿中のPCSK9レベルを低下させ、肝臓でIDOL阻害と分解を引き起こし、LDLR発現の増加と血清LDLコレステロールの低下をもたらす。
【0144】
したがって、ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、PCSK9レベルを低下させるのに有効な量で対象に投与することができる。ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoARを、それを必要とする対象に投与することによるPCSK9レベルの低下は、(i)総血清コレステロールを投与前レベルに対して少なくとも約5%、約10%、約20%、25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、またはそれ以上減少させ、(ii)血清LDL-Cコレステロールを投与前レベルに対して少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、またはそれ以上減少させ、(iii)血清トリグリセリドを、投与前レベルと比較して少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%減少させ、かつ/あるいは(iv)血清HDL-Cを低下させないか、または血清HDL-Cを、投与前レベルと比較して約5%、約10%、約20%、約25%、約30%を超えて減少させない。
【0145】
ある実施形態では、対象は、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、アテローム性動脈硬化症を発症するリスク、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、冠状動脈性心疾患の病歴、早期発症型冠状動脈性心疾患、急性冠症候群、冠状動脈性心臓疾患の1つ以上の危険因子、II型糖尿病、脂質異常症を伴うII型糖尿病、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高脂肪酸血症、肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝疾患を有することがある。
【0146】
特定の実施形態では、対象に投与されるADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、HDL-Cレベルを低下させないか、または実質的に低下させない。特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、肝臓における脂質の蓄積をもたらさない。
【0147】
本明細書に記載の他の実施形態は、LDL-Cレベルの上昇に苦しむ対象に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することにより、LDL-Cレベルを低下させる方法、または高コレステロール血症を治療する方法に関する。別の実施形態では、LDL-Cレベルを低下させる方法は、LDL-Cレベルの低下を必要とする個体を選択すること、および個体に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することを含む。さらなる実施形態では、冠状動脈性心疾患のリスクを低減する方法は、LDL-Cレベルが上昇している個体および冠状動脈性心疾患のリスクの1つ以上の追加の指標を選択し、個体に治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を投与することを含む。
【0148】
他の実施形態では、LDL-Cレベルは、30から70mg/dL、70から100mg/dL、100から129mg/dL、130から159mg/dL、160から189mg/dL、または190mg/dL以上でよい。
【0149】
1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与は、個体の血清中のLDL-Cレベルのモニタリングを伴い、個体のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与に対する個体の応答を決定する。医師は、ADH阻害剤、AKR阻害剤、SNO-CoAR阻害剤の投与に対する個体の反応を使用して、治療的介入の量と期間を決定する。
【0150】
1つの実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与により、190mg/dL未満、160mg/dL未満、130mg/dL未満、100mg/dL未満、70mg/dL未満、または50mg/dL未満のLDL-Cレベルをもたらす。別の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与は、LDL-Cを少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。
【0151】
LDL-Cレベルが上昇している個体は、HDL-Cレベルの低下および/または総コレステロールレベルの上昇も示すことがある。したがって、1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、HDL-Cレベルが低下しているおよび/または総コレステロールレベルも上昇しているLDL-Cレベルが上昇している個体に投与される。
【0152】
LDL-Cレベルが上昇している人は、トリグリセリドレベルも上昇している場合がある。したがって、1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤が、LDL-Cレベルが上昇し、トリグリセリドレベルも上昇した個体に投与される。
【0153】
アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈性心疾患、脳卒中、または末梢血管疾患につながる可能性がある。LDL-Cレベルの上昇は、アテローム性動脈硬化症の発症と進行の危険因子と考えられている。したがって、1つの実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、アテローム性動脈硬化症を有する個体に投与することができる。さらなる実施形態では、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、アテローム性動脈硬化症にかかりやすい個体に投与することができる。アテローム性動脈硬化症は、頸動脈内膜の厚さを明らかにする超音波画像技術などの日常的な画像技術を通じて直接評価される。したがって、アテローム性動脈硬化症の治療および/または予防は、ルーチンの画像化技術によるアテローム性動脈硬化症のモニタリングをさらに含む。1つの実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の投与は、例えば、動脈における頸動脈内膜の厚みの減少によって示されるように、アテローム性動脈硬化症の重症度の軽減をもたらす。
【0154】
コレステロール、リポタンパク質、およびトリグリセリドの測定値は、個体から収集された血清または血漿を使用して取得される。血清または血漿サンプルを得る方法は、コレステロール、トリグリセリド、および他の血清マーカーの分析のための血清サンプルの調製方法と同様に日常的である。
【0155】
医師は、多少積極的なLDL低下療法が必要な場合に、個体の治療的介入の必要性を判断する場合がある。本明細書の方法の実践は、国立コレステロール教育プログラム(NCEP)によって提供された変更されたガイドライン、または、冠状動脈性心疾患のリスクを決定しメタボリックシンドロームの診断するために本明細書に挙げられた疾患または病態のいずれかを治療する際に使用される医師のためのガイドラインを確立する他の実体に適用できる。
【0156】
特定の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む医薬組成物は、治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、治療は、個体におけるLDL-C、ApoB、VLDL-C、IDL-C、非HDL-C、Lp(a)、血清トリグリセリド、肝臓トリグリセリド、Ox-LDL-C、LDL小粒子、小さなVLDL、リン脂質、または酸化リン脂質の減少である。特定の実施形態では、治療は、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症を発症するリスク、冠状動脈性心疾患、急性冠症候群、冠状動脈性心疾患の病歴、早期発症型冠状動脈性心疾患、冠状動脈性心疾患の1つ以上の危険因子、I型糖尿病、II型糖尿病、脂質異常症を伴うII型糖尿病、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高脂肪酸血症、肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝疾患、末梢血管疾患および脳卒中の治療である。追加の実施形態では、治療は、CHDリスクの低減である。特定の局面において、治療はアテローム性動脈硬化症の予防である。特定の実施形態では、治療は冠状動脈性心疾患の予防である。
【0157】
特定の実施形態では、個体におけるADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む医薬組成物は、LDL-C、ApoB、VLDL-C、IDL-C、非HDL-C、Lp(a)、血清トリグリセリド、肝臓トリグリセリド、Ox-LDL-C、小さなLDL粒子、小さなVLDL、リン脂質、または酸化リン脂質を低減するための医薬の調製のために使用される。特定の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む医薬組成物は、冠状動脈性心疾患のリスクを低減するための医薬の調製のために使用される。特定の実施形態において、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症の発症リスク、冠状動脈性心疾患、病歴冠状動脈性心疾患、早期発症型冠状動脈性心疾患、冠状動脈性心疾患の1つ以上の危険因子、I型糖尿病、II型糖尿病、脂質異常症を伴うII型糖尿病、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高脂肪酸血症、肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝疾患、末梢血管疾患、および脳卒中を治療するための医薬の調製のために使用される。
【0158】
当業者によって理解されるように、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、コレステロール関連障害の治療および/または予防において治療的に有用であり得る。ある実施形態では、「コレステロール関連障害」(「血清コレステロール関連障害」を含む)は、家族性高コレステロール血症、非家族性高コレステロール血症、高脂血症、心疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠状動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾患、アルツハイマー病および一般的に脂質異常症、例えば、総血清コレステロールの上昇、LDLの上昇、トリグリセリドの上昇、VLDLの上昇、および/またはHDL低下のうちのいずれか1つ以上を含む。ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を単独で、または1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用して治療できる原発性および続発性脂質異常症の非限定的な例の中には、メタボリックシンドローム、糖尿病、家族性複合高脂血症、家族性高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、ヘテロ接合性高コレステロール血症、ホモ接合性高コレステロール血症、家族性欠損アポリポタンパク質B-100、多遺伝子性高コレステロール血症、残余除去疾患、肝リパーゼ欠乏症、食事の不随意、甲状腺機能低下症、エストロゲンおよびプロゲスチン療法を含む薬物、ベータ遮断薬、チアジド系利尿薬のいずれかに続発する脂質異常症、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、クッシング症候群、原発性胆汁性肝硬変、グリコーゲン蓄積症、肝細胞癌、胆汁うっ滞、先端巨大症、インスリノーマ、成長ホルモン欠乏症、およびアルコール誘発性高トリグリセリド血症が含まれる。
【0159】
ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、例えば、心臓血管死、非心臓血管性または全原因による死、冠状動脈性心疾患、冠状動脈疾患などのアテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、脳卒中(虚血性および出血性)、狭心症、または脳血管疾患および急性冠症候群、心筋梗塞および不安定狭心症の予防または治療にも役立つことができる。ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、致命的および非致命的な心臓発作、致命的および非致命的な脳卒中、特定の種類の心臓手術、心不全のための入院、心疾患の患者の胸痛、および/または以前の心臓発作、以前の心臓手術などの確立された心疾患による心臓血管イベント、および/または動脈の詰まりおよび/または移植関連血管疾患の証拠を伴う胸痛、のリスクを低下させる点で有用である。ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、再発性心血管イベントのリスクを低下させる点で有用である。
【0160】
当業者によって理解されるように、スタチンの使用により一般に対処可能(治療可能または予防可能)の疾患または障害はまた、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の適用から利益を得ることができる。さらに、ある実施形態では、コレステロール合成の防止またはLDLR発現の増加から利益を得ることができる障害または疾患はまた、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の様々な実施形態によって治療され得る。さらに、当業者によって理解されるように、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の使用は、糖尿病の治療において特に有用であり得る。糖尿病は冠状動脈性心疾患の危険因子であるだけでなく、インスリンはPCSK9の発現を増加させる。つまり、糖尿病の人は(PCSK9レベルが高いことに関連している可能性がある)血漿脂質レベルが高く、これらのレベルを下げることで利益を得ることができる。このことは、一般に、その全体が参照により本明細書に組み込まれるCostet et alでより詳細に説明されている(“Hepatic PCSK9 Expression is Regulated by Nutritional Status via Insulin and Sterol Regulatory Element-binding Protein 1C”,J.Biol.Chem.,281:6211-6218,2006)。
【0161】
ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、血清コレステロールレベルをより安全な範囲に低下させるために、真性糖尿病、腹部大動脈瘤、アテローム性動脈硬化症および/または末梢血管疾患を有する者に投与される。ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、本明細書に記載の障害のいずれかを発症するリスクがある患者に投与される。ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、喫煙する、または喫煙に使用される(すなわち、以前の喫煙者)、高血圧または早期心臓発作の家族歴を有する対象に投与される。
【0162】
ある実施形態では、対象に投与されるAKR阻害剤は、部分的に選択的なAKR1A1阻害剤および/または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤でよい。例えば、AKR阻害剤は、AKR1A1とAKR1B1、AKR1A1より低いIC50で阻害AKR1B1、またはAKR1B1より低いIC50で阻害AKR1A1の両方を阻害することができる。必要に応じて、選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤は、選択的または部分的に選択的なAKR1B1阻害剤と組み合わせて投与され得る。
【0163】
ある実施形態では、AKR1A1阻害剤は、≦5μM、≦1μM、または≦100nMのIC50を有することができる。他の実施形態では、AKR1A1阻害剤は、AKR1B1に対して≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1A1の選択性を有することができる。他の実施形態では、AKR1A1阻害剤は、他のAKRに対して≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1A1の選択性を有することができる。さらに他の実施形態において、AKR1A1阻害剤は、AKR1A1について、IC50≦400nM、≦300nM、≦200nM、≦100nM、≦50nM、または≦25nM、および組み合わせたAKR1B1およびAKR1A1について、IC50≦500nM、≦400nM、≦300nM、≦200nM(例えば、100nM未満)を有することができる。
【0164】
ある実施形態では、AKR1A1阻害に対するAKR阻害剤の、AKR1B1などの他のAKRに対する選択性は、基質としてS-ニトロソ-コエンザイムA(SNO-CoA)を使用して測定することができる。この例では、SNO-CoAがAKR活性を測定するための基質として使用される場合、AKR阻害剤は、AKR1B1に対して≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1A1の選択性を有することができる。いくつかの実施形態において、AKR阻害剤は、SNO-CoAのAKR1B1活性の無視できる阻害を有し得、そして特にAKR1A1活性と比較することができる。
【0165】
他の実施形態では、AKR1B1阻害剤は、≦5μM、≦1μM、または≦100nMのIC50を有することができる。他の実施形態では、AKR1B1阻害剤は、AKR1A1に対して≧2倍、≧5倍、≧10倍、≧20倍、≧30倍、≧40倍、≧50倍またはそれ以上のAKR1B1の選択性を有することができる。他の実施形態では、AKR1B1阻害剤は、他のAKRに対して≧50倍のAKR1B1の選択性を有することができる。さらに他の実施形態では、AKR1B1阻害剤は、AKR1B1について、≦300nM、≦200nM、≦100nM、≦50nM、または≦25nMのIC50、および、組み合わせたAKR1B1およびAKR1A1について、≦500nM、≦400nM、≦300nM、≦200nM(例えば、100nM未満)のIC50を有することができる。
【0166】
SNO-CoAのAKR1A1活性の部分的に選択的な阻害剤を含む、選択的および部分的に選択的なAKR1A1阻害剤の例には、イミレスタット(2,7-ジフルオロ-2’H,5’H-スピロ[フルオレン-9,4’-イミダゾリジン]-2’,5’-ジオン)およびその類似体が含まれる。選択的および部分的に選択的なAKR1A1阻害剤の他の例には、トルレスタット、オキソ-トルレスタット、エパルレスタット、フィダレスタット、スタチル、ソルビニル、ラニレスタット、およびミナルレスタットが含まれる。
【0167】
ある実施形態では、イミレスタット類似体は、以下からなる群から選択される化合物であって、
【化1】
各R、R、R、R、R、R、およびRは同じかまたは異なり、水素、ハロゲン、置換または非置換のC1-24アルキル、C-C24アルケニル、C-C24アルキニル、C-C20アリール、5~6個の環原子を含むヘテロシクロアルケニル(1~3個の環原子はNから独立して選択され、NH、N(C-Cアルキル)、NC(O)(C-Cアルキル)、O、S)、5~14の環原子を含むヘテロアリールまたはヘテロシクリル(1~6の環原子は、N、NH、N(C-Cアルキル)、O、およびS)、C-C24アルカリル、C-C24アラルキル、ハロ、シリル、ヒドロキシル、スルフヒドリル、Cから独立して選択されるC24アルコキシ、C-C24アルケニルオキシ、C-C24アルキニルオキシ、C-C20アリールオキシ、アシル(C-C24アルキルカルボニル(-CO-アルキル)およびC-C20アリールカルボニル(-CO-アリール))、アシルオキシ(-O-アシル)、C-C24アルコキシカルボニル(-(CO)-O-アルキル)、C-C20アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-アリール)、C-C24アルキルカルボナト(-O-(CO)-O-アルキル)、C-C20アリールカルボナト(-O-(CO)-O-アリール)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシラト(-COO)、カルバモイル(-(CO)-NH2)、-C24アルキル-カルバモイル(-(CO)-NH(C-C24アルキル))、アリールカルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、カルバミド(-NH-(CO)-NH)、シアノ(-CN)、アミノ(-NH)、C-C24アルキルアミノ、C-C20アリールアミノ、C-C24アルキルアミド(-NH-(CO)-アルキル)、C-C20アリールアミド(-NH-(CO)-アリール)、スルファミド(-SONR2(Rは独立して水素、アルキル、アリールまたはヘテロアリールである))、イミノ(-CR=NH(Rは水素である)、C-C24アルキル、C-C20アリール、C-C24アルカリル、C-C24アラルキルなど)、アルキルイミノ(-CR=N(アルキル)、R=水素、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキルなどである)、アリールイミノ(-CR=N(アリール)、R=水素、アルキル、アリール、アルカリルなどである)、スルホ(-SO-OH)、スルホナト(-SO-O)、C-C24アルキルスルファニル(-S-アルキル)、「アルキルチオ」とも呼ばれる)、アリールスルファニル(-S-アリール、「アリールチオ」とも呼ばれる)、C-C24アルキルスルフィニル(-(SO)-アルキル)、C-C20アリールスルフィニル(-(SO)-アリール)それらの、C-C24アルキルスルホニル(-SO-アルキル)、C-C20アリールスルホニル(-SO-アリール)、スルホンアミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の置換基である、化合物、ならびにその薬学的に許容される塩を含んでよい。
【0168】
他の実施形態では、イミレスタット類似体は、以下からなる群から選択される化合物およびその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【化2】
【0169】
選択的および/または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤のさらに他の例は、以下の出版物:Mechanism of Human Aldehyde Reductase:Characterization of the Active Site Pocket,Oleg A.Barski et al.,Biochemistry 1995,34,11264-11275、In vivo role of aldehyde reductase,M.Takahashi et al.,Biochim Biophys Acta.2012 Nov;1820(11):1787-96、The Aldo-Keto Reductase Superfamily and its Role in Drug Metabolism and Detoxification,Oleg A.Barski et al.,Drug Metab Rev.2008;40(4):553-624、Asborin Inhibits Aldo/Keto Reductase 1A1,Matthias Scholz et al.,ChemMedChem,2011,6,89-93、Inhibition of Aldehyde Reductase by Aldose Reductase Inhibitors,Sanai Sato et al.,Biochemical Pharmacology,1990.40,1033-1042、Inhibition of human aldose and aldehyde reductases by non-steroidal anti-inflammatory drugs,D.Michelle Ratliff et al.,Advances in Experimental Medicine and Biology,Volume:463,Issue:Enzymology and Molecular Biology of Carbonyl Metabolism 7,Pages:493-499(1999.)、Inhibition of aldehyde reductases,PhilipJ.Schofield et al.,Progress in Clinical and Biological Research,1987,232、Issue:Enzymol.Mol.Biol.Carbonyl Metab.,287-96、Aldose Reductase Inhibitors as Potential Therapeutic Drugs of Diabetic Complications,By Changjin Zhu,DOI:10.5772/54642、Aldose Reductase Inhibitors:A Potential New Class of Agents for the Pharmacological Control of Certain Diabetic Complications,Peter F.Kador et al.,Journal of Medicinal Chemistry,1985,28,841-849、Recent clinical experience with aldose reductase inhibitors,H.M.J.Krans,Journal of Diabetes and its Complications,1992,6,39-44、A Novel Series of Non-Carboxylic Acid,Non-Hydantoin Inhibitors of Aldose Reductase with Potent Oral Activity in Diabetic Rat Models:6-(5-Chloro-3-methylbenzofuran-2-sulfonyl)-2H-pyridazin-3-one and Congeners,Banavara L.Mylari et al.,J.Med.Chem.2005,48,6326-6339、A Diverse Series of Substituted Benzenesulfonamides as Aldose Reductase Inhibitors with Antioxidant Activity:Design,Synthesis,and in Vitro Activity,Polyxeni Alexiou et al.,J.Med.Chem.2010,53,7756-7766、Aldose Reductase Inhibitors as Potential Therapeutic Drugs of Diabetic Complications,By Changjin Zhu,DOI:10.5772/54642、Aldose Reductase Inhibitors:A Potential New Class of Agents for the Pharmacological Control of Certain Diabetic Complications,Peter F.Kador et al.,Journal of Medicinal Chemistry,1985,28,841-849、Recent clinical experience with aldose reductase inhibitors,H.M.J.Krans,Journal of Diabetes and its Complications,1992,6,39-44、A Novel Series of Non-Carboxylic Acid,Non-Hydantoin Inhibitors of Aldose Reductase with Potent Oral Activity in Diabetic Rat Models:6-(5-Chloro-3-methylbenzofuran-2-sulfonyl)-2H-pyridazin-3-one and Congeners,Banavara L.Mylari et al.,J.Med.Chem.2005,48,6326-6339、A Diverse Series of Substituted Benzenesulfonamides as Aldose Reductase Inhibitors with Antioxidant Activity:Design,Synthesis,and in Vitro Activity,Polyxeni Alexiou et al.,J.Med.Chem.2010,53,7756-7766に開示されており、それらのすべてはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に列挙される組成物および方法において、潜在的な選択的または部分的に選択的なAKR1A1阻害剤を使用できることが理解されよう。
【0170】
ADH阻害剤には、オーラミンO、アリシン、1,5-アニリノナフタレンスルホン酸、1,7-アニリノナフタレンスルホン酸、1,8-アニリノナフタレンスルホン酸、ベルベリン、カナバニン、2,2’-ジプリピル、イミダゾール、m-メチルベンズアミド、4-メチルピラゾール、ピラゾール、4-ペンチルピラゾール、O-フェナントロリン、アルレスタチン、アントラン酸、O-カルボキシベンズアルデヒド、2,3-ジメチルコハク酸、エタクリン酸、イソニコチン酸、フェナセミド、ケルセチン、ケルシトリン、ソルビニル、テトラメチレングルタル酸、バルプロン酸、プロプラノール、2,2,2-トリクロロエタノール、4,5-ジアミノピラゾールおよびその誘導体および2-エチル-5-メチル-2H-3,4-ジアミノピラゾールが含まれてよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20030138390号を参照されたい。
【0171】
フォメピゾール(4-メチルピラゾール)もADHの競合阻害剤である。ピラゾールとその4-置換誘導体は、堅い酵素の形成によってアルコール基質の結合を競合的に阻害する。NAD阻害剤複合体では、ピラゾール窒素が亜鉛とNADの両方と相互作用する。Xieら、J.Biol.Chem、272:18558-18563(1997)(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0172】
CNAD(5-ベータ-D-リボフラノシルニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、NADの異性体および異性体の類似体であり、ニコチンアミド環がC-グリコシル(C5-C1’)結合を介して糖に結合されている。CNADは一般的なデヒドロゲナーゼ阻害剤として機能するが、肝臓のアルコールデヒドロゲナーゼに対して特異性と親和性を示す。Goldsteinら、J.Med.Chem、37:392-9(1994)(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0173】
他のADH阻害剤には、ジメチルスルホキシド、PerlmanおよびWolff、Science、160:317-9(1968)、およびp-メチルベンジルヒドロペルオキシド、Skurskyら、Biochem Int、26:899-904(1992)が含まれ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
ある実施形態では、ADH阻害剤は、ADH3を阻害しない選択的ADH6阻害剤または部分的選択的ADH6阻害剤でよい。他の実施形態では、ADH阻害剤は、ADH3を阻害しないが、ADH6などの他のADHを阻害する。
【0175】
他の実施形態では、ADH阻害剤および/またはAKR阻害剤は、ADH6発現またはAKR1A1発現などのADHおよび/またはAKR発現の低減または阻害を必要とする対象の組織または細胞において、それを行う薬剤を含んでよい。「発現」とは、遺伝子産物(通常はタンパク質、任意に翻訳後修飾されたタンパク質または機能的/構造的RNA)を生成するための遺伝子からの情報の全体的な流れを意味する。
【0176】
ある実施形態では、薬剤は、細胞におけるADHの発現および/またはAKRの発現を阻害または低減するRNAiコンストラクトを含むことができる。RNAiコンストラクトは、標的遺伝子の発現を特異的にブロックできる二本鎖RNAを含む。「RNA干渉」または「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が特定の転写後の方法で遺伝子発現をブロックする植物や虫で観察される現象に元々適用される用語である。
【0177】
本明細書で使用される場合、「dsRNA」という用語は、二本鎖特徴を含み、ヘアピンRNA部分などの細胞内でsiRNAにプロセシングできるsiRNA分子または他のRNA分子を指す。
【0178】
「機能喪失」という用語は、対象のRNAi方法によって阻害される遺伝子を指すので、RNAiコンストラクトの非存在下でのレベルと比較した場合の遺伝子の発現レベルの減少を指す。
【0179】
本明細書で使用される場合、「RNAiを媒介する」という語句は、どのRNAがRNAiプロセスによって分解されるべきかを区別する能力を指し(示し)、例えば、分解は、配列非依存性dsRNA応答、例えばPKR応答ではなく配列特異的な様式で起こる。
【0180】
本明細書で使用される場合、「RNAiコンストラクト」という用語は、インビボで切断されてsiRNAを形成できる低分子干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、および他のRNA種を含むように本明細書全体で使用される総称である。本明細書のRNAiコンストラクトはまた、細胞内でdsRNAまたはヘアピンRNAを形成する転写物、および/またはインビボでsiRNAを生成することができる転写物を生じさせることができる発現ベクター(RNAi発現ベクターとも呼ばれる)も含む。
【0181】
「RNAi発現ベクター」(本明細書では「dsRNAをコードするプラスミド」とも呼ばれる)は、コンストラクトが発現される細胞においてsiRNA部分を生成するRNAを発現(転写)するために使用される複製可能な核酸コンストラクトを指す。そのようなベクターは、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する遺伝的要素、例えば、二本鎖RNA(siRNAを形成するために細胞内でアニールする2つのRNA部分、またはsiRNAに処理できる単一のヘアピンRNA)を生成するために、(2)転写される「コード」配列に機能的に連結されたプロモーター、オペレーター、またはエンハンサーのアセンブリと、(3)適切な転写開始および終了配列とを含む転写単位を含む。
【0182】
プロモーターおよび他の調節要素の選択は、一般的に、意図される宿主細胞によって異なる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、それらのベクター形態では染色体に結合されない環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用される。しかしながら、本出願は、同等の機能を果たし、当技術分野で後に知られるようになる他の形態の発現ベクターを記載する。
【0183】
RNAiコンストラクトは、細胞の生理的条件下で、阻害される遺伝子(すなわち、「標的」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。二本鎖RNAは、それがRNAiを介在する能力を有する天然RNAと十分に類似してさえすればよい。したがって、実施形態は、遺伝的変異、株多型または進化的多様性のために予想される可能性がある配列変化を許容する。標的配列とRNAiコンストラクト配列の間の許容されるヌクレオチドミスマッチの数は、5塩基対に1つ、または10塩基対に1つ、または20塩基対に1つ、または50塩基対に1つ以下である。siRNA二重鎖の中心のミスマッチは最も重要であり、標的RNAの切断を本質的に廃止することがある。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3’末端にあるヌクレオチドは、標識認識の特異性にほとんど貢献しない。
【0184】
配列同一性は、当技術分野で知られている配列比較およびアラインメントアルゴリズム、ならびに、例えば、デフォルトのパラメーターを使用してBESTFITソフトウェアプログラムで実行されたスミス-ウォーターマンアルゴリズム(例えば、ウィスコンシン大学遺伝的計算グループ)によってヌクレオチド配列間のパーセント差を計算することによって最適化することができる。阻害性RNAと標的遺伝子の部分との間の90%を超える配列同一性、またはさらには100%の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二重鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列として機能的に定義され得る。
【0185】
RNAiコンストラクトの作成は、化学合成法または組換え核酸技術によって行うことができる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼは、インビボでの転写を仲介するか、クローン化されたRNAポリメラーゼをインビトロでの転写に使用できる。RNAiコンストラクトは、例えば、細胞ヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、バイオアベイラビリティを改善し、製剤特性を改善し、および/または他の薬物動態特性を変化させるために、リン酸糖骨格またはヌクレオシドのいずれかに修飾を含んでよい。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素または硫黄のヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含むように改変されてよい。RNA構造の変更は、dsRNAに対する一般的な応答を回避しながら、特定の遺伝子阻害を可能にするように調整されてよい。同様に、塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するように改変されてよい。RNAiコンストラクトは、酵素的に、または部分的/完全な有機合成によって生成されてもよく、修飾リボヌクレオチドは、インビトロの酵素合成または有機合成によって導入することができる。
【0186】
RNA分子を化学的に修飾する方法は、RNAiコンストラクトを修飾するために適合させることができる(例えば、Nucleic Acids Res、25:776-780;J Mol Recog 7:89-98;Nucleic Acids Res 23:2661-2668;Antisense Nucleic Acid Drug 7:55-61)。単に説明すると、RNAiコンストラクトの骨格は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネート-ホスホジエステル、ペプチド核酸、5-プロピニル-ピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾(例えば、2’-置換リボヌクレオシド、a-構造)で修飾することができる。
【0187】
二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖または2つの相補的RNA鎖によって形成されてよい。RNA二本鎖の形成は、細胞の内部または外部のいずれかで開始されてよい。RNAは、細胞あたり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入されてよい。より高用量(例えば、細胞あたり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)の二本鎖物質は、より効果的な阻害をもたらすことがあるが、より低用量も特定の用途に有用であり得る。RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝的阻害の標的となるという点で、阻害は配列特異的である。
【0188】
特定の実施形態では、主題のRNAiコンストラクトは、「低分子干渉RNA」または「siRNA」である。これらの核酸は、約19~30個のヌクレオチド長であり、さらにより好ましくは、21~23個のヌクレオチド長であり、例えば、より長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング」によって生成されるフラグメントに長さが対応する。siRNAは、ヌクレアーゼ複合体を動員し、特定の配列と対になることによって複合体を標的mRNAに導くと理解されている。その結果、標的mRNAはタンパク質複合体のヌクレアーゼによって分解される。特定の実施形態では、21~23個のヌクレオチドのsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。
【0189】
本明細書に記載されるsiRNA分子は、当業者に知られているいくつかの技術を使用して得られる。例えば、siRNAは、当技術分野で公知の方法を使用して、化学的に合成するか、または組換えにより生成することができる。例えば、短鎖センスとアンチセンスのRNAオリゴマーを合成し、アニーリングして、両端に2つのヌクレオチドのオーバーハングがある2本鎖RNA構造を形成できる(Proc Natl Acad Sci USA、98:9742-9747、EMBO J、20:6877-88)。次に、これらの二本鎖siRNA構造は、受動的取り込みまたは以下に説明するような選択した送達システムのいずれかによって、細胞に直接導入できる。
【0190】
特定の実施形態において、siRNAコンストラクトは、例えば、酵素ダイサーの存在下でのより長い二本鎖RNAのプロセシングによって作成することができる。1つの実施形態では、ショウジョウバエのインビトロ系が使用される。この実施形態では、dsRNAは、ショウジョウバエ胚に由来する可溶性抽出物と組み合わされ、それにより、組み合わせを生成する。組み合わせは、dsRNAが約21~約23個のヌクレオチドのRNA分子にプロセシングされる条件下で維持される。
【0191】
siRNA分子は、当業者に知られているいくつかの技術を使用して精製することができる。例えば、ゲル電気泳動はsiRNAの精製に使用できる。あるいは、非変性カラムクロマトグラフィーなどの非変性方法を使用して、siRNAを精製することができる。さらに、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、抗体によるアフィニティー精製は、siRNAを精製するめに使用できる。
【0192】
特定の実施形態では、RNAiコンストラクトはヘアピン構造(ヘアピンRNAと呼ばれる)の形態である。ヘアピンRNAは外因的に合成することも、インビボでRNAポリメラーゼIIIプロモーターから転写することによって形成することもできる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためのそのようなヘアピンRNAの作製および使用の例は、例えば、Genes Dev、2002、16:948-58に記載されている。Nature、2002、418:38-9;RNA、2002、8:842-50、およびProc Natl Acad Sci、2002、99:6047-52に記載されている。好ましくは、そのようなヘアピンRNAは、細胞または動物において操作されて、所望の遺伝子の継続的かつ安定した抑制を確実にする。当該技術分野では、細胞内でヘアピンRNAを処理することによりsiRNAを生成できることが知られている。
【0193】
さらに他の実施形態では、プラスミドは、例えば転写産物として二本鎖RNAを送達するために使用される。そのような実施形態では、プラスミドは、RNAiコンストラクトのセンス鎖およびアンチセンス鎖のそれぞれについて「コード配列」を含むように設計される。コード配列は、例えば逆転プロモーターが隣接する同じ配列であるか、またはそれぞれ別個のプロモーターの転写制御下にある2つの別個の配列でよい。コード配列が転写された後、相補的RNAは塩基対を転写して二本鎖RNAを形成する。
【0194】
PCT出願第WO01/77350号は、真核細胞において同じ導入遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA転写物を生成するための導入遺伝子の双方向転写のためのベクターの例を記載している。したがって、特定の実施形態は、以下の独特の特徴を有する組換えベクターを提供し、それは、反対方向に配置され、目的のRNAiコンストラクトの導入遺伝子に隣接する2つの重複する転写ユニットを有するウイルスレプリコンを含み、2つの重複する転写ユニットが、センスRNA転写物とアンチセンスRNA転写物の両方を宿主細胞内の同じ導入遺伝子フラグメントから生成する。
【0195】
ある実施形態において、レンチウイルスベクターは、癌細胞におけるRPTPの発現をノックダウンするために、ショートヘアピンRNA(shRNA)などのsiRNAの長期発現に使用することができる。レンチウイルスベクターを遺伝子治療に使用することにはいくつかの安全上の懸念があるが、自己不活化レンチウイルスベクターは哺乳動物細胞に容易にトランスフェクトするため、遺伝子治療の優れた候補と考えられる。
【0196】
例として、AKR1A1発現のショートヘアピンRNA(shRNA)ダウンレギュレーションは、OligoEngeneソフトウェア(OligoEngine、シアトル、ワシントン州)を使用して作成でき、siRNAの標的として配列を識別できる。オリゴ配列は、アニールし、線形化したpSUPER RNAiベクター(OligoEngine、シアトル、ワシントン州)にライゲーションし、大腸菌株DH5α細胞に形質転換することができる。陽性クローンが選択された後、プラスミドはカルシウム沈殿により293T細胞にトランスフェクトできる。次に、shRNAを含む収集されたウイルス上清を使用して、AKR1A1をダウンレギュレートするために哺乳動物細胞に感染させることができる。
【0197】
AKR1A1 siRNA、shRNAプラスミド、およびshRNAレンチウイルス粒子遺伝子サイレンサーは、Santa Cruz Biotechnologyからsc-78566、sc-78566-SH、およびsc-78566-Vという商品名で市販されている。
【0198】
別の実施形態では、ADHおよび/またはAKR阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のタンパク質をコードするmRNAのコード鎖(センス鎖)に相補的(またはアンチセンス)な比較的短い核酸である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは典型的にはRNA型であるが、それらはDNA型でもよい。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、安定性を高めるために修飾されることがよくある。
【0199】
これらの比較的短いオリゴヌクレオチドのmRNAへの結合は、内因性RNAアーゼによるメッセージの分解を引き起こす二本鎖RNAのストレッチを誘発すると考えられている。さらに、オリゴヌクレオチドはメッセージのプロモーターの近くに結合するように特別に設計されている場合があり、これらの状況下では、アンチセンスオリゴヌクレオチドがメッセージの翻訳をさらに妨害する可能性がある。アンチセンスオリゴヌクレオチドが機能する特定のメカニズムに関係なく、細胞または組織へのそれらの投与は、特定のタンパク質をコードするmRNAの分解を可能にする。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のタンパク質(例えば、AKR1A1)の発現および/または活性を減少させる。
【0200】
オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の、DNAまたはRNA、またはそのキメラ混合物、または誘導体、または修飾体でよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションなどを改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、宿主細胞受容体を標的とするため)、または細胞膜を横切る輸送を促進する薬剤(例えば、Proc Natl Acad Sci 86:6553-6556、Proc Natl Acad Sci 84:648-652、1988年12月15日に公開された国際公開第WO88/09810号を参照)または血液脳関門(例えば、1988年4月25日に公開されたPCT公開第WO8910134号を参照)、ハイブリダイゼーション誘発切断薬剤(例えば、BioTechniques 6:958-976を参照)または挿入剤(例えば、Pharm Res 5:539-549を参照)などの他の付加された群を含むことがある。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、別の分子にコンジュゲートまたはカップリングされてよい。
【0201】
本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野で公知の標準的な方法、例えば自動化DNA合成機(Biosearch、Applied Biosystemsなどから市販されているもの)を使用して合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法によって合成することができ(Nucl.Acids Res.16:3209)、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された細孔ガラスポリマーサポートを使用して調製することができる(Proc Natl Acad Sci 85:7448-7451)。
【0202】
適切なオリゴヌクレオチドの選択は、当業者によって実施することができる。特定のタンパク質をコードする核酸配列を前提として、当業者は、そのタンパク質に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計し、これらのオリゴヌクレオチドをインビトロまたはインビボシステムで試験して、それらが結合し、特定のタンパク質をコードするmRNAの分解を介在することを確認することができる。特定のタンパク質に特異的に結合してその分解を介在するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するためには、オリゴヌクレオチドによって認識される配列がその特定のタンパク質に固有または実質的に固有であることが重要である。例えば、タンパク質全体で頻繁に繰り返される配列は、特定のメッセージを特異的に認識して分解するオリゴヌクレオチドの設計にとって理想的な選択ではない場合もある。当業者は、オリゴヌクレオチドを設計し、そのオリゴヌクレオチドの配列を公的に入手可能なデータベースに寄託されている核酸配列と比較して、配列が特定のタンパク質に特異的または実質的に特異的であることを確認できる。
【0203】
アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するための多くの方法が開発されている。例えば、アンチセンス分子を組織部位に直接注入するか、目的の細胞を標的とするように設計された修飾アンチセンス分子(例えば、標的細胞表面で発現する受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体にリンクされたアンチセンス)を系統的に投与できる。
【0204】
しかしながら、特定の例において、内因性mRNAの翻訳を抑制するのに十分なアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内濃度を達成することは難しいかもしれない。したがって、別のアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に置かれている組換えDNAコンストラクトを利用する。例えば、ベクターは、細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を指示するように、インビボで導入することができる。そのようなベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生することができる限り、エピソームのままであるか、または染色体に組み込まれるようになることができる。そのようなベクターは、当技術分野で標準的な組換えDNA技術法によって構築することができる。ベクターは、哺乳動物細胞での複製および発現に使用される、プラスミド、ウイルス、または当技術分野で知られている他のものでよい。
【0205】
アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞で作用することが当技術分野で知られているプロモーターによるものでよい。そのようなプロモーターは、誘導的または構成的であり得る。このようなプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’ロングターミナルリピートに含まれるプロモーター(Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼ、プロモーター(Proc Natl Acad Sci 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Nature 296:39-42)などが含まれるが、これらに限定されない。あるタイプのプラスミド、コスミド、YAC、またはウイルスベクターを使用して、組織部位に直接導入できる組換えDNAコンストラクトを調製できる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを使用することができ、その場合、投与は、別の経路によって(例えば、体系的に)達成され得る。
【0206】
ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で提供することができる。適切な担体は、Lippincott Williams & Wilkins発行の「Remington:The Science and Practice、第20版」に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。本発明による医薬組成物はまた、1つ以上の非発明化合物活性剤を含んでもよい。
【0207】
ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む組成物は、注射用剤形、液体分散剤、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、凍結乾燥製剤、乾燥粉末、錠剤、カプセル、制御放出製剤、高速溶解製剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、混合即時放出および制御放出製剤などを含むがこれらに限定されない、任意の薬学的に許容される剤形で利用することができる。具体的には、ADH阻害剤、AKR阻害剤、SNO-CoAR阻害剤は、(a)経口、肺、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、直腸、眼科、結腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所、口腔、経鼻、および局所投与からなる群から選択される投与のために、(b)液体分散液、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、錠剤、小袋、およびカプセルからなる群から選択される剤形に、(c)凍結乾燥製剤、乾燥粉末、高速溶解製剤、制御放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、および即時放出と制御放出の混合製剤からなる群から選択される剤形に、または(d)それらの任意の組み合わせに処方することができる。
【0208】
呼吸器疾患については、吸入製剤を使用して、局所濃度を高くすることができる。吸入に適した製剤には、上気道および下気道細菌感染症を治療するために、感染患者の気管支内または鼻腔に吸入器またはネブライザーで分配できる、乾燥粉末またはエアロゾルまたは気化溶液、分散液、または懸濁液が含まれる。
【0209】
非経口、皮内、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:(1)注射用の水などの無菌希釈剤、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、または他の合成溶剤、(2)ベンジルアルコールやメチルパラベンなどの抗菌剤、(3)アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、(4)エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、(5)酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝液、(5)塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調整するための薬剤、のうちの1つ以上を含むことができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスまたはプラスチック製の複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0210】
注射用途に適した医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌注射溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末を含んでよい。静脈内投与については、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に行える程度に流動性でなければならない。医薬組成物は、製造および保管の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。
【0211】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒でよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムなどの無機塩を組成物中に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の延長は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0212】
無菌注射液は、必要量の活性試薬を適切な溶媒に上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、必要に応じてろ過滅菌することにより調製できる。一般に、分散液は、本発明の少なくとも1つの化合物を、基本的な分散媒および他の必要な成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、例示的な調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥を含み、どちらも、本発明の化合物の粉末と、以前に無菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分とをもたらす。
【0213】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、例えばゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的のために、本発明の化合物は、賦形剤と共に組み込むことができ、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、うがい薬として使用するための流体担体を使用して調製することもでき、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、すりつぶされ、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。
【0214】
吸入による投与については、化合物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガス、噴霧された液体、または適切なデバイスからの乾燥粉末を含む加圧容器またはディスペンサーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。経粘膜投与または経皮投与については、浸透すべきバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤を使用して行うことができる。経皮投与については、活性試薬は、当該技術分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに処方される。試薬は、直腸送達のための坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0215】
1つの実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、身体からの急速な排泄から保護する担体と共に調製される。例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤を使用することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。
【0216】
リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4522811号に記載されているように、当業者に知られている方法に従って調製することができる。
【0217】
さらに、本発明の化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた、送達のために使用することがある。必要に応じて、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させ、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含んでよい。
【0218】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、経口または非経口組成物を投薬単位形態で処方することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療される対象の単位用量として適した物理的に個別の単位を指し、各ユニットは、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された本発明の化合物の所定量を含む。本発明の投薬単位形態の仕様は、本発明の化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにそのような活性薬剤を調合する技術に固有の制限によって決定されおよびそれらに直接依存する。
【0219】
ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む医薬組成物は、1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤の例には、結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は当該技術分野で知られている。例示的な賦形剤には、(1)様々なセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、トラガカントガムおよびゼラチンを含む結合剤、(2)様々な澱粉、乳糖、乳糖一水和物、乳糖無水物等の充填剤、(3)崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル、コーンスターチ、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、およびそれらの混合物、(4)圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含む潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルが含まれ、(5)コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;(6)ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩などの防腐剤、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルまたはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物、(7)微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、糖類、および/または前述のいずれかの混合物などの薬学的に許容される不活性充填剤などの希釈剤、希釈剤の例には、微結晶性セルロースが含まれ、乳糖、例えば、乳糖一水和物、無水乳糖、リン酸二カルシウム、マンニトール;澱粉;ソルビトール;スクロースおよびグルコースが含まれ、(8)スクロース、サッカリン、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、およびアセスルファムなどの天然または人工甘味料を含む甘味料、(9)ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー、風船ガムフレーバー、フルーツフレーバーなどの香味料、ならびに(10)有機酸および炭酸塩または重炭酸塩などの発泡性カップルを含む発泡剤が含まれる。適切な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに無水物および酸塩が含まれる。適切な炭酸塩および重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L-リジン、および炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡性カップルの重炭酸ナトリウム成分のみが存在してもよい。
【0220】
ある実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む医薬組成物を含むADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、病状を予防または治療する(例えば、病状の1つ以上の症状を緩和する)ための方法で使用することができる。この方法は、治療有効量のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を、それを必要とする患者または対象に投与することを含む。組成物は予防的治療にも使用できる。
【0221】
患者は、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、およびウシを含むがこれらに限定されない、任意の動物、家畜(domestic)、家畜(livestock)、または野生の動物、好ましくはヒトの患者でよい。本明細書で使用される場合、患者および対象という用語は互換的に使用することができる。
【0222】
一般に、投与量、すなわち治療有効量は、1日あたり、治療対象者の体重当たり、1μg/kg~10g/kgの範囲であり、多くの場合、10μg/kg~1g/kgまたは10μg/kg~100mg/kgである。
【0223】
特定の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤の1つ以上の医薬組成物を、1つ以上の他の医薬剤と同時投与することができる。特定の実施形態では、そのような1つ以上の他の医薬品は、本発明の1つ以上の医薬組成物と同じ疾患または病態を治療するように設計される。特定の実施形態では、そのような1つ以上の他の医薬品は、本発明の1つ以上の医薬組成物とは異なる疾患または病態を治療するように設計される。特定の実施形態では、そのような1つ以上の他の医薬品は、本明細書に記載の1つ以上の医薬組成物の望ましくない効果を治療するように設計されている。特定の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の医薬組成物は、他の医薬剤と同時投与されて、他の医薬剤の望ましくない効果を治療する。特定の実施形態において、本発明の1つ以上の医薬組成物および1つ以上の他の医薬剤は同時に投与される。特定の実施形態において、本発明の1つ以上の医薬組成物および1つ以上の他の医薬剤は、異なる時に投与される。特定の実施形態では、本発明の1つ以上の医薬組成物および1つ以上の他の医薬品は、単一の製剤で一緒に調製される。特定の実施形態では、本発明の1つ以上の医薬組成物および1つ以上の他の医薬剤は別々に調製される。例えば、組成物は、アンチセンス化合物との別個の、連続した、または同時の投与のための医薬品を含んでよい。
【0224】
特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物と同時投与され得る医薬剤は、脂質低下剤を含む。このような特定の実施形態では、本発明の医薬組成物と同時投与することができる医薬剤には、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチンおよびエゼチミブが含まれるが、これらに限定されない。このような特定の実施形態では、脂質低下剤は、本明細書に記載の医薬組成物の投与前に投与される。このような特定の実施形態では、脂質低下剤は、本明細書に記載の医薬組成物の投与後に投与される。特定のこのような実施形態では、脂質低下剤は、本明細書に記載される医薬組成物と同時に投与される。特定のこのような実施形態では、同時投与される脂質低下剤の用量は、脂質低下剤が単独で投与される場合に投与されるであろう用量と同じである。特定のこのような実施形態では、同時投与される脂質低下剤の用量は、脂質低下剤が単独で投与される場合に投与されるであろう用量よりも低い。このような特定の実施形態では、同時投与される脂質低下剤の用量は、脂質低下剤が単独で投与される場合に投与されるであろう用量よりも多い。
【0225】
特定の実施形態では、併用投与される脂質低下薬は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤である。このような特定の実施形態では、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤はスタチンである。特定のこのような実施形態では、スタチンは、例えば、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチンおよびロスバスタチンから選択される。
【0226】
特定の実施形態では、併用投与される脂質低下剤は、コレステロール吸収阻害剤である。このような特定の実施形態では、コレステロール吸収阻害剤はエゼチミブである。
【0227】
特定の実施形態では、同時投与される脂質低下剤は、同時処方されたHMG-CoAレダクターゼ阻害剤およびコレステロール吸収阻害剤である。特定のこのような実施形態では、共製剤化された脂質低下剤は、エゼチミブ/シンバスタチンである。
【0228】
特定の実施形態では、併用投与される脂質低下剤は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害剤(MTP阻害剤)である。
【0229】
特定の実施形態では、同時投与される脂質低下剤は、ApoBを標的とするオリゴヌクレオチドである。
【0230】
特定の実施形態では、同時投与される薬剤は、胆汁酸封鎖剤である。特定のこのような実施形態では、胆汁酸封鎖剤は、コレスチラミン、コレスチポールおよびコレセベラムから選択される。
【0231】
特定の実施形態では、同時投与される薬剤はニコチン酸である。特定のこのような実施形態では、ニコチン酸は、即時放出ニコチン酸、持続放出ニコチン酸、および持続放出ニコチン酸から選択される。
【0232】
特定の実施形態では、同時投与される薬剤はフィブリン酸である。特定のこのような実施形態では、フィブリン酸は、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、クロフィブラート、ベザフィブラート、およびシプロフィブラートから選択される。
【0233】
本明細書に記載のADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤を含む、医薬組成物と同時投与することができる医薬剤のさらなる例には、プレドニゾンを含むがこれに限定されないコルチコステロイド、LXRアゴニスト、静脈内免疫グロブリン(IVIg)を含むがこれに限定されない免疫グロブリン、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、COX-1阻害剤、およびCOX-2阻害剤)を含むがこれらに限定されない抗炎症剤、サリチル酸塩、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌剤、抗糖尿病薬(例えば、ビグアニド、グルコシダーゼ阻害剤、インスリン、スルホニル尿素、およびチアゾリデンジオン)、アドレナリン作動性修飾剤、利尿薬、ホルモン(例えば、同化ステロイド、アンドロゲン、エストロゲン、カルシトニン、プロゲスチン、ソマトスタン、甲状腺ホルモン)、免疫調節剤、筋弛緩薬、抗ヒスタミン剤、骨粗しょう症剤(例えば、ビホスホネート、カルシトニン、およびエストロゲン)、プロスタグランジン、抗腫瘍薬、心理療法剤、鎮静剤、毒オークまたは毒スマック製品、抗体およびワクチンを含むが、これらに限定されない。
【0234】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、脂質低下療法と組み合わせて投与されてよい。このような特定の実施形態では、脂質低下療法は治療的ライフスタイルの変化である。このような特定の実施形態では、脂質低下療法はLDLアフェレーシスである。
【0235】
他の実施形態では、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、心臓血管疾患の血管形成術などの外科的処置と組み合わせて使用することができる。血管形成術は、損傷した冠状動脈内への「ステント」として知られている金属製のチューブ形状の補強構造の配置を伴うことが多い。より深刻な病態では、冠状動脈バイパス手術などの開心術が必要になることがある。これらの外科的処置は、侵襲的な外科用デバイスおよび/またはインプラントの使用を伴い、再狭窄および血栓症の高リスクと関連している。したがって、ADH阻害剤、AKR阻害剤、および/またはSNO-CoAR阻害剤は、心血管疾患の治療で使用される侵襲的手段と関連した再狭窄および血栓症のリスクを減少させるために、手術器具(例えば、カテーテル)やインプラント(例えば、ステント)へのコーティングとして使用され得る。
【実施例0236】
動物
AKR1A1-/-マウスはDeltagen、Inc.によって作成された。C57BL6/JおよびApoE-/-マウスはジャクソン研究所から購入した。CETP-ApoB100トランスジェニックマウスは、Taconic Biosciencesから購入した。すべてのマウスは12時間の明/暗サイクルの下で維持した。イミレスタット治療研究のために、マウスには、対照食または0.0125%w/wイミレスタット(125mgイミレスタット/1kg食餌)を自由に含む食餌を与えた。C57BL6/JおよびApoE-/-マウスには、20週令から開始して4週間、対照飼料またはイミレスタット飼料を与え、CETP-ApoB100トランスジェニックマウスには、10週令から開始して8週間、対照飼料またはイミレスタット飼料を与えた。
【0237】
採血と血清分離
安楽死の前に、マウスを示された時間断食させた。マウスを、下大静脈からの末期失血および重要臓器の除去を介して、イソフルラン麻酔下で安楽死させた。収集された血液は、小児用血清セパレーターチューブ内で、室温で20分間凝固させた。4℃、2000gで20分間遠心分離して血清を分離した。血清は分析まで-80℃で保存した。一晩絶食した12週令のAKR1A1-/-マウス(図5)については、コレステロール分析のために全血を大学病院の臨床研究所(OH、クリーブランド)に提供した。組織を液体窒素で急速冷凍し、分析まで-80℃で保存した。
【0238】
血清分析
総血清コレステロールは、標準的な酵素アッセイによって決定した。リポタンパク質コレステロールの定量化については、リポタンパク質画分をゲル濾過カラムクロマトグラフィーにより分離した。約70つの画分を収集し、各画分のコレステロールを標準的な酵素アッセイで定量化した。精製されたリポタンパク質画分を用いたカラムのキャリブレーションにより、様々なリポタンパク質種類のコレステロールの定量が可能になった。血清PCSK9は、固相サンドイッチELISAによって定量化した。
【0239】
AKR1A1アクティビティアッセイ
ヒトAKR1A1コード配列をpET21b細菌発現ベクターにクローニングした。pET21b-AKR1A1はRosetta2(DE3)pLysS大腸菌に変換され、A600nm=0.4で100μMイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシドを添加することにより発現を誘導した。細菌を25℃で4時間増殖させ、組換えHisタグ付きSCoRをNiアフィニティー精製により精製した。200nM組換えAKR1A1、100μM NADPH、100μM SNO-CoA、およびジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したイミレスタットの濃度を上げて、3回の反応を行った。SNO-CoAは、100μM EDTAと100μ MDTPAを含む1M HClと0.1M NaNO水中で等量の0.1M CoAを反応させることで調製した。初期速度は、340nmでの吸光度の減少を使用して計算した。IC50は、非線形回帰分析を使用してGraphPad Prism7で計算した。食事療法後のイミレスタット治療後のAKR1A1肝臓活性について、凍結した肝臓組織を、100μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)とジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)と150mM塩化ナトリウムを添加した50mMリン酸緩衝液、pH7.0で細かく均質化した(30オンス)。組織溶解物を20000gで45分間、4℃で遠心分離することにより清澄化した。清澄化した上澄みを収集し、遠心分離を繰り返した。肝臓溶解物における比活性のアッセイは、100μMSNO-CoA、100μM NADPH、100μM EDTA、および100μM DPTAを含む50mMリン酸緩衝液、pH7.0で行った。肝臓溶解物の添加により反応が開始され、340nmでの吸光度、タンパク質濃度、7.06mM-1・cm-1(SNO-CoAとNADPHの合計)の消衰係数の変化から比活性が計算された。
【0240】
図1は、12週令の野生型マウスと比較したAKR1A1欠損の12週令マウスの総血清コレステロールレベルを示すグラフを示している。AKR1A1欠損の12週令の雄性マウスは、12週令の野生型マウスと比較して総血清コレステロールが低下していた。
【0241】
図2は、24週令の野生型マウスと比較したAKR1A1欠損の24週令マウスの総血清コレステロールレベルを示すグラフを示す。AKR1A1欠損の24週令の雄性マウスは、24週令の野生型マウスと比較して総血清コレステロールが低下していた。
【0242】
図3は、AKR1A1欠損の24週令の雄性マウスと24週令の野生型マウスのコレステロール分画を示すプロットを示す。コレステロール分画により、AKR1A1欠損の24週令の雄性マウスでは、24週令の野生型マウスと比較して、総血清コレステロールの低下が確認された。
【0243】
図4は、AKR1A1欠損の24週令の雄性マウスと24週令の野生型マウスの血清PCSK9レベルを示すプロットを示す。AKR1A1欠損の24週令の雄性マウスは、24週令の野生型マウスと比較してPCSK9レベルが低下していた。
【0244】
イミレスタットによるAKR1A1 SNO-CoAレダクターゼ活性の阻害を示すプロットを示す。イミレスタットによるAKR1A1 SNO-CoAレダクターゼ活性の阻害におけるIC50は、約120nmであった。
【0245】
図6は、対照群と比較して、イミレスタット入り食事(-in diet Imirestat)で4週間処置したC57BL6Jの24週令の雄性マウスの総血清コレステロールレベルを示すプロットを示す。イミレスタットで処置した24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低い総血清コレステロールを示す。
【0246】
図7は、対照群と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したC57BL6Jの24週令の雄性マウスのコレステロール分画を示すプロットを示す。コレステロール分画により、対照の24週令の雄性マウスと比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したC57BL6Jの24週令の雄性マウスにおける総血清コレステロールの低下が確認された。
【0247】
図8は、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したC57BL6Jの24週令の雄性マウスの血清PCSK9レベルを示すプロットを示す。イミレスタットで処置された24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低い総血清PCSK9レベルを示した。
【0248】
図9は、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したC57BL6Jの24週令の雄性マウスの肝臓におけるSNO-CoAレダクターゼ活性を示すグラフを示す。イミレスタットで処置された24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低いAKR1A1肝臓活性を示した。
【0249】
図10は、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したApoE欠損の24週令の雄性マウスの総血清コレステロールレベルを示すプロットを示す。イミレスタットで処置した24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低い総血清コレステロールを示した。
【0250】
図11は、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したApoE欠損の24週令の雄性マウスのコレステロール分画を示すプロットである。コレステロール分画により、対照の24週令の雄性マウスと比較して、で4週間イミレスタットを投与したApoE欠損の24週令の雄性マウスにおける総血清コレステロールの低下が確認された。
【0251】
図12のプロットは、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したApoE欠損の24週令の雄性マウスの血清PCSK9レベルを示す。イミレスタットで処置された24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低い総血清PCSK9レベルを示した。
【0252】
図13は、対照と比較して、イミレスタット入り食事で4週間処置したCETP/ApoB100トランスジェニック24週令の雄性マウスの総血清コレステロールレベルを示すプロットを示す。イミレスタットで処置した24週令の雄性マウスは、対照の24週令の雄性マウスよりも低い総血清コレステロールを示した。
【0253】
本発明の上記の説明から、当業者は、改善、変更および修正を認識するであろう。当業者の範囲内のそのような改善、変更および修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図されている。本出願で引用されるすべての参考文献、刊行物、および特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に明細書に記載されている組成物、方法、または使用。