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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116202
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ミラーデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20240820BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240820BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
B81C1/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088193
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2021006506の分割
【原出願日】2019-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹人
(57)【要約】
【課題】可動部の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能なミラーデバイスの製造方法、及び、ミラーユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】ミラーデバイス1の製造方法は、ウェハ10Wの加工によって、ベース部21、第1可動部22、第1可動部22がベース部21に対して揺動可能となるようにベース部21と第1可動部22とを互いに連結する第1連結部24を形成すると共に、第1可動部22にミラー層3を形成することで構造体7を形成する工程と、捕集部材90による構造体7の異物捕集を行う工程と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの加工によって、ベース部、可動部、及び、前記可動部が前記ベース部に対して揺動可能となるように前記ベース部と前記可動部とを互いに連結する連結部を形成すると共に、前記可動部にミラー層を形成して構造体を形成する形成工程と、
前記形成工程の後に、捕集部材による前記構造体の異物捕集を行う捕集工程と、
を備え、
前記捕集工程では、前記構造体のうち、前記可動部に形成した前記ミラー層に対して前記異物捕集を行う、
ミラーデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記捕集工程では、前記異物のみに前記捕集部材を接触させて前記異物捕集を行う、
請求項1に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記形成工程の後であって前記捕集工程の前、又は、前記捕集工程において、前記構造体の外観検査を行う第1検査工程を備える、
請求項1又は2に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記捕集工程では、前記第1検査工程の結果、前記構造体上に前記異物が発見された場合に、前記構造体における前記異物が存在する領域に対して前記異物捕集を行う、
請求項3に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記ウェハを切断する切断工程を備え、
前記形成工程では、前記構造体に対応する複数の部分を前記ウェハに形成し、
前記切断工程では、前記捕集工程の後に、前記複数の部分のそれぞれを前記ウェハから切り出すように前記ウェハを切断する、
請求項1~4いずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記ウェハを切断する切断工程を備え、
前記形成工程では、前記構造体に対応する複数の部分を前記ウェハに形成し、
前記切断工程では、前記形成工程の後であって前記捕集工程の前において、前記複数の部分のそれぞれを前記ウェハから切り出すように前記ウェハを切断する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーデバイスの製造方法、及び、ミラーユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon On Insulator)基板によって構成されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして、ベース部、及び、ベース部において支持された可動部を含む構造体と、可動部に設けられたミラー層と、を備えるミラーユニットが知られている。このようなミラーユニットの製造方法として、それぞれが構造体に対応する複数の部分をウェハに形成した後に、当該ウェハを洗浄液によって洗浄する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-334697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなミラーユニットでは、ミラー層に付着した異物に起因した反射率の低下を抑制することが望ましい。これに対して、例えばミラー層に対するエアブローによってミラー層に付着した異物を除去する方法が考えられる。しかしながら、エアブローによって異物を飛散させると、飛散した異物が可動部の下部に入り込んで可動部の動作に影響を与えるおそれがある。したがって、他の方法で異物を除去することが望まれる。
【0005】
本発明は、可動部の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能なミラーデバイスの製造方法、及び、ミラーユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、ウェハの加工によって、ベース部、可動部、及び、可動部がベース部に対して揺動可能となるようにベース部と可動部とを互いに連結する連結部を形成すると共に、可動部にミラー層を形成して構造体を形成する形成工程と、形成工程の後に、捕集部材による構造体の異物捕集を行う捕集工程と、を備える。
【0007】
この製造方法では、まず、揺動可能な可動部を形成すると共に、可動部にミラー層を形成することにより構造体を形成する。そして、捕集部材を用いて構造体の異物捕集を行う。このため、構造体に異物が付着している場合には、異物が除去される。特に、この製造方法では、構造体の異物が捕集されるので、飛散した異物が可動部の動作に影響を与えることがない。すなわち、この製造方法によれば、可動部の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能である。
【0008】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、異物のみに捕集部材を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、構造体に対して捕集部材が直接接触しないため、構造体の表面が傷つくことが避けられる。
【0009】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、形成工程の後であって捕集工程の前、又は、捕集工程において、構造体の外観検査を行う第1検査工程を備えてもよい。この場合、外観検査によって構造体上の異物を発見して確実に捕集できる。
【0010】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、第1検査工程の結果、構造体上に異物が発見された場合に、構造体における異物が存在する領域に対して異物捕集を行ってもよい。この場合、外観検査によって発見された異物をより確実に捕集できる。
【0011】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、第1検査工程の後であって捕集工程の前、又は、捕集工程において、第1検査工程の結果、構造体上に異物が発見された場合に、異物を切削する第1切削工程を備えてもよい。この場合、構造体に異物が強固に付着している場合であっても、当該異物を確実に捕集できる。
【0012】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、捕集工程の後に、構造体の外観検査を行う第2検査工程と、第2検査工程の結果、構造体に異物が残存している場合に、異物を切削する第2切削工程と、を備え、第2切削工程後に、捕集工程を再度実施してもよい。この場合、捕集工程で捕集できなかった異物を確実に捕集できる。
【0013】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、構造体の全面に捕集部材を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、構造体上の異物の有無、及び、異物の位置を把握する必要がないので、外観検査を省略できる。
【0014】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、構造体の一部に捕集部材を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、構造体における捕集部材が接触する面積が限定されるため、構造体のうちの傷がつく可能性のある範囲を限定できる。なお、この場合にも、捕集部材を接触させる部分を予め定めておくことで、外観検査を省略できる。
【0015】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、可動部の剛性よりも小さな剛性を有する捕集部材により異物捕集を行ってもよい。この場合、可動部に対して捕集部材が優先的に撓むため、可動部が撓むことを抑制できる。
【0016】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、捕集工程では、可動部が撓まないように捕集部材を可動部に接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、可動部の破損を抑制できる。
【0017】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法においては、可動部は、連結部を通る軸を揺動軸として揺動可能とされ、捕集工程では、捕集部材から可動部に付与される力に応じて連結部に発生するトルクが、可動部の揺動角度が最大となるトルク以下となるように、捕集部材を可動部に接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、可動部の回転軸を提供する連結部の破損を抑制できる。
【0018】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、ウェハを切断する切断工程を備え、形成工程では、構造体に対応する複数の部分をウェハに形成し、切断工程では、捕集工程の後に、複数の部分のそれぞれをウェハから切り出すようにウェハを切断してもよい。この場合、複数のミラーデバイスを製造できる。特に、この場合には、ウェハの切断の前に異物捕集を行うので、ウェハの切断の際に構造体上の異物が移動して可動部の動作に影響を与えることが避けられる。また、切断工程前では、隣接する複数の構造体に対応する部分が一体となっているため、強度が高い状態である。このため、捕集工程において構造体に破損が生じにくい。
【0019】
本発明に係るミラーデバイスの製造方法は、ウェハを切断する切断工程を備え、形成工程では、構造体に対応する複数の部分をウェハに形成し、切断工程では、形成工程の後であって捕集工程の前において、複数の部分のそれぞれをウェハから切り出すようにウェハを切断してもよい。この場合、複数のミラーデバイスを製造できる。特に、この場合には、ウェハの切断の後に異物捕集を行うので、ウェハの切断の際に発生・付着した異物を除去できる。
【0020】
本発明に係るミラーユニットの製造方法は、ベース部、可動部、可動部がベース部に対して揺動可能となるようにベース部と可動部とを互いに連結する連結部、及び、可動部に設けられたミラー層を含む構造体を有するミラーデバイスと、ミラーデバイスが搭載される搭載部材と、を準備する準備工程と、準備工程の後に、ミラーデバイスを実装する実装工程と、実装工程の後に、捕集部材による構造体の異物捕集を行う捕集工程と、を備える。
【0021】
この製造方法では、まず、ミラー層が設けられ揺動可能な可動部を含む構造体を有するミラーデバイスを準備する。そして、ミラーデバイスを搭載部に固定した後に、捕集部材を用いて構造体の異物捕集を行う。このため、構造体に異物が付着している場合には、異物が除去される。特に、この製造方法では、構造体の異物が捕集されるので、飛散した異物が可動部の動作に影響を与えることがない。すなわち、この製造方法によれば、可動部の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能である。また、この製造方法では、ミラーデバイスの搭載部への固定後に異物捕集を行う。つまり、この製造方法では、より終盤の工程で異物捕集を行うため、異物捕集を行った後の工程で再び異物が付着するリスクが小さくなる。
【0022】
本発明に係るミラーユニットの製造方法は、捕集工程の後に、ミラーデバイスを封止する封止工程を備えてもよい。この場合、ミラーデバイスの封止前に異物捕集が行われるので、歩留まりが向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、可動部の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能なミラーデバイスの製造方法、及び、ミラーユニットの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るミラーユニットを示す模式的な断面図である。
図2】本実施形態に係るミラーデバイスを示す平面図である。
図3図2に示されるII-II線に沿ってのミラーデバイスの断面図である。
図4図2に示されるミラーデバイスの製造方法のフローチャートである。
図5図2に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
図6図2に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
図7図2に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
図8図2に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
図9図4に示された異物を除去する工程のフローチャートである。
図10】捕集部材の一例を示す図である。
図11】第1可動部をX軸方向からみた場合の模式的な側面図である。
図12図1に示されたミラーユニットの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0026】
図1は、実施形態に係るミラーユニットを示す模式的な断面図である。図1に示されるように、ミラーユニット100は、ミラーデバイス1と、パッケージ40と、ミラーデバイス1に作用する磁界を発生させる磁界発生部70と、を備えている。パッケージ40は、搭載基板41と、枠部材42と、窓部材43と、を備えている。ミラーデバイス1は、搭載基板41に搭載(実装)されており、ワイヤWによって搭載基板41側に電気的に接続されている。
【0027】
枠部材42は、搭載基板41におけるミラーデバイス1の搭載面に交差する方向からみてミラーデバイス1を囲うように、搭載面に立設されている。窓部材43は、例えばガラス等の透光性材料によって板状に形成されており、枠部材42における搭載基板41と反対側の端部に接合されている。これにより、ミラーデバイス1は、パッケージ40により封止されている。ミラーユニット100は、一例として、光通信用光スイッチや光スキャナ等に用いられる光走査装置である。
【0028】
図2は、本実施形態に係るミラーデバイスを示す平面図である。図3は、図2に示されるII-II線に沿ってのミラーデバイスの断面図である。以下の図では、X軸、Y軸、及び、Z軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。図2及び図3に示されるように、ミラーデバイス1は、構造体2と、ミラー層3と、矯正層4と、を備えている。ミラーデバイス1は、X軸方向に沿った第1軸線X1及びY軸方向に沿った第2軸線X2のそれぞれに関して線対称な形状を呈している。ただし、ミラーデバイス1の形状は、ミラー層3の中心点(例えば第1軸線X1と第2軸線X2との交点)に対して点対称であってもよいし、線対称及び点対称でなく非対称であってもよい。ミラーデバイス1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス(例えばMEMSミラー)である。
【0029】
構造体2は、例えば、SOI基板によって構成されている。構造体2は、支持層11、デバイス層12及び中間層13を有している。支持層11は、例えばSOI基板の第1シリコン層である。デバイス層12は、例えばSOI基板の第2シリコン層である。中間層13は、支持層11とデバイス層12との間に配置された絶縁層である。一例として、支持層11の厚さは100μ以上700μm以下程度であり、デバイス層12の厚さは20μm以上200μm以下程度であり、中間層13の厚さは50μm以上3000μm以下程度である。
【0030】
構造体2は、例えば矩形板状を呈している。構造体2は、第1表面2a及び第2表面2bを有している。第1表面2aは、デバイス層12における中間層13とは反対側の面である。第2表面2bは、構造体2における第1表面2aとは反対側の面である。第2表面2bは、支持層11における中間層13とは反対側の面、及び、デバイス層12における第1表面2aとは反対側の面を含んでいる。
【0031】
構造体2は、ベース部21、第1可動部22、第2可動部23、一対の第1連結部24、及び一対の第2連結部25によって一体的に構成されている。ベース部21は、支持層11の一部、デバイス層12の一部及び中間層13の一部によって構成されている。ベース部21は、Z軸方向(構造体2の厚さ方向)から見た場合に、矩形環状を呈している。ベース部21は、Z軸方向から見た場合に、例えば10mm×15mm程度のサイズを有している。
【0032】
第1可動部22、第2可動部23、第1連結部24、及び第2連結部25は、デバイス層12の一部によって構成されている。第1可動部22及び第2可動部23は、ベース部21において支持されている。具体的には、第1可動部22及び第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、ベース部21の内側に配置されている。より具体的には、第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、構造体2を貫通する第2スリット23aを介してベース部21の内側に配置されている。第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈している。第2スリット23aは、Z軸方向から見た場合に、第2可動部23の外縁に沿って延びている。第2スリット23aにおいては、ベース部21における支持層11の端面11a、ベース部21におけるデバイス層12の端面12a、及びベース部21における中間層13の端面13aがそれぞれ露出している。
【0033】
各第2連結部25は、Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における第2可動部23の両側にそれぞれ配置されている。各第2連結部25は、例えば、Y軸方向に沿って直線状に延びている。各第2連結部25は、第2可動部23が第2軸線X2周りに揺動可能となるように、第2軸線X2上において第2可動部23とベース部21とを互いに連結している。なお、第2スリット23aは、X軸方向における各第2連結部25の両側においてY軸方向に沿って延びる部分を含んでいる。つまり、各第2連結部25は、第2スリット23aを介してベース部21の内側に配置されている。
【0034】
第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、構造体2を貫通する第1スリット22aを介して第2可動部23の内側に配置されている。第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。第1スリット22aは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁に沿って延びている。
【0035】
各第1連結部24は、Z軸方向から見た場合に、X軸方向における第1可動部22の両側にそれぞれ配置されている。各第1連結部24は、例えば、X軸方向に沿って直線状に延びている。各第1連結部24は、第1可動部22がX軸方向に沿った第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1軸線X1上において第1可動部22と第2可動部23とを互いに連結している。
【0036】
ミラー層3は、第1可動部22に設けられている。具体的には、ミラー層3は、構造体2の第1表面2aのうち第1可動部22に対応する領域に設けられている。ミラー層3は、Z軸方向から見た場合に、例えば円形状を呈している。ミラー層3は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を中心位置(重心位置)として配置されている。ミラー層3は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、銀、銀系合金、金、誘電体多層膜等からなる反射膜によって構成されている。
【0037】
矯正層4は、第2表面2bの全体に形成されている。具体的には、矯正層4は、ベース部21においては、支持層11における中間層13とは反対側の面に形成されている。矯正層4は、第1可動部22、第2可動部23、各第1連結部24、及び各第2連結部25においては、デバイス層12におけるミラー層3とは反対側の面に形成されている。矯正層4は、第1可動部22、第2可動部23、各第1連結部24、及び各第2連結部25の反り等を矯正する。矯正層4は、例えば、酸化ケイ素や窒化ケイ等の無機膜、又は、アルミニウム等の金属薄膜等によって構成されている。矯正層4の厚さは、例えば10nm以上1000nm以下程度である。
【0038】
ミラーデバイス1は、第1コイル221と、第2コイル231と、を更に備えている。第1コイル221は、例えば、第1可動部22に埋め込まれており、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁部において渦巻き状に延びている。第2コイル231は、例えば、第2可動部23に埋め込まれており、Z軸方向から見た場合に、第2可動部23の外縁部において渦巻き状に延びている。第1コイル221及び第2コイル231は、例えば銅等の金属材料によって構成されている。なお、図3においては、第1コイル221及び第2コイル231の図示が省略されている。
【0039】
以上のように構成されたミラーデバイス1では、互いに直交する第1軸線X1及び第2軸線X2の周りに、ミラー層3が設けられた第1可動部22が揺動させられる。具体的には、構造体2に設けられた電極パッド5及び配線を介して第2コイル231にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部70が発生させる磁界との相互作用によって第2コイル231にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と各第2連結部25の弾性力とのつり合いを利用することで、第2軸線X2周りにミラー層3(第1可動部22)を第2可動部23と共にリニア動作させることができる。
【0040】
一方、電極パッド5及び配線を介して第1コイル221に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部70が発生する磁界との相互作用によって第1コイル221にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部22の共振を利用することで、第1軸線X1周りにミラー層3(第1可動部22)を共振動作させることができる。
【0041】
ここで、電極パッド5は、一例としてベース部21に設けられている。より具体的には、電極パッド5は、構造体2の第1表面2aのうちベース部21に対応する領域に設けられている。構造体2は、ベース部21、第1可動部22、第2可動部23、一対の第1連結部24、及び一対の第2連結部25を含む。また、構造体2と第1可動部22に設けられたミラー層3とは、別の構造体7を構成する。構造体7は、さらに電極パッド5及び矯正層4を含み得る。
【0042】
次に、ミラーデバイス1の製造方法について説明する。まず、図4及び図5の(a)に示されるように、支持層11、デバイス層12、及び中間層13を有するウェハ10Wを用意する(ステップS1)。ウェハ10Wは、表面10a、及び表面10aとは反対側の裏面10bを有している。表面10aは、構造体2の第1表面2aとなる面である。ウェハ10Wは、それぞれが構造体2(すなわち、構造体7)となる複数の部分11Wを含んでいる。部分11Wは、構造体2が形成される前のウェハ10Wの一部である。ミラーデバイス1の製造方法の各工程は、ウェハレベルで実施される。なお、図5~8では、ウェハ10Wのうち一つの部分11Wが示されている。以下、ウェハ10Wのうち一つの部分11Wに着目して説明する。
【0043】
引き続いて、ステップS1で用意されたウェハ10Wの加工を行う。続く工程の概略としては、支持層11、デバイス層12及び中間層13のそれぞれの一部をエッチングによってウェハ10Wから除去することで、それぞれが構造体2に対応する複数の部分12WA(図8の(b)参照)をウェハ10Wに形成する。部分12WAは、構造体2が形成されたウェハ10Wの一部である。後述するように、部分12WAには、ミラー層3、電極パッド5、及び、矯正層4が形成されている。したがって、以下では、部分12WA、ミラー層3、電極パッド5、及び、矯正層4を含む部分を、構造体7に対応する部分17WAという場合がある。
【0044】
続く工程について、より詳細に説明する。ミラーデバイス1の製造方法では、ステップS1に続き、まず、デバイス層12の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS2)。具体的には、デバイス層12のうち第1スリット22a、第2スリット23aに対応する部分を除去する。その結果、デバイス層12の端面12aが形成される。ステップS2においては、第1コイル221、第2コイル231、並びに、第1コイル221及び第2コイル231に駆動信号を入力するための電極パッド5及び配線等をデバイス層12に設ける。ステップS2においては、ウェハ10Wの表面10aのうち第1可動部22に対応する部分にミラー層3を形成する。ミラー層3は、例えば金属の蒸着によって形成される。ステップS2においては、レジストを除去するための洗浄によって、デバイス層12の除去のために用いられたレジストをウェハ10Wから除去する。
【0045】
続いて、図5の(b)に示されるように、ウェハ10Wの裏面10bを研磨する(ステップS3)。ウェハ10Wは、裏面10bが研磨されることによって薄化される。研磨されたウェハ10Wの裏面10bは、構造体2の第2表面2bの一部となる面である。
【0046】
続いて、図6の(a)に示されるように、ウェハ10Wの裏面10bにレジスト19をパターニングする(ステップS4)。具体的には、裏面10bのうちベース部21に対応する領域にレジスト19を設ける。続いて、図6の(b)に示されるように、レジスト19を介して支持層11の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS5)。具体的には、支持層11のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分を除去する。その結果、支持層11の端面11aが形成される。支持層11の一部は、例えば、ボッシュプロセスを用いた反応性イオンエッチング(DRIE)によって除去される。なお、ステップS5においては、支持層11の一部をウェハ10Wから除去するときに、保護膜として例えばポリマー等を用いる。
【0047】
続いて、洗浄を実施する(ステップS6)。まず、ここでは、レジスト19をウェハ10Wの裏面10bから除去する(剥離させる)ための洗浄を行う。これにより、図7の(a)に示されるように、ウェハ10Wからレジスト19が除去される。続いて、ステップS5において保護膜として用いられたポリマー等をウェハ10Wから除去するための洗浄を行う。
【0048】
続いて、図7の(b)に示されるように、中間層13の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS7)。具体的には、中間層13のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分を除去する。その結果、第1スリット22a及び第2スリット23aが形成される。このとき、中間層13の端面13aが形成される。ステップS7においては、第1スリット22a及び第2スリット23aを形成することで、それぞれが構造体2に対応する複数の部分12WAをウェハ10Wに形成し、複数の部分12WAを完成させる。つまり、複数の第1可動部22及び複数の第2可動部23をリリースする。ステップS7においては、中間層13の一部をドライエッチングによってウェハ10Wから除去する。
【0049】
続いて、図8の(a)に示されるように、ウェハ10Wの表面のうちミラー層3が形成された面(表面10a)とは反対側の面(支持層11及びデバイス層12のそれぞれにおけるミラー層3とは反対側の面)に矯正層4を形成する(ステップS8)。上述したように、部分12WAには、ミラー層3及び電極パッド5が既に形成されている。よって、このステップS8で矯正層4が形成されることにより、部分12WA、ミラー層3、電極パッド5、及び矯正層4を含む部分17WAが形成される。この後に、図8の(b)に示されるように、複数の部分12WA(すなわち、構造体7に対応する複数の部分17WA)のそれぞれをウェハ10Wから切り出すようにウェハ10Wを切断する(ステップS10)。これにより、複数のミラーデバイス1を製造する。
【0050】
以上のステップS2~ステップS8により、ウェハ10Wに対して、構造体2と、構造体2に設けられたミラー層3(及び、電極パッド5と矯正層4)とを含む構造体7が形成される。すなわち、ステップS2~ステップS8は、ウェハ10Wの加工によって、ベース部21、第1可動部22、第2可動部23、一対の第1連結部24、及び、一対の第2連結部25を形成すると共に、第1可動部22にミラー層3(さらに、電極パッド5及び矯正層4)を形成することにより構造体7を形成する形成工程に対応する。なお、形成工程は、ステップS8を含まなくてもよい。その場合、構造体7は、矯正層4を有さないこととなる。また、上記の例は、ウェハ10Wの表面10aのうち第1可動部22に対応する部分にミラー層3を形成した後に、ウェハ10Wの加工によって、第1可動部22等を形成する(リリースする)ことにより、結果的に、第1可動部22にミラー層3を形成することとなる例である。これに対し、ウェハ10Wの表面10aのうち第1可動部22に対応する部分にミラー層3を形成することなく、ウェハ10Wの加工によって、第1可動部22等を形成した後に(リリースした後に)、第1可動部22に対してミラー層3を形成するようにしてもよい。いずれの場合も、ウェハ10Wの加工によって、ベース部21、第1可動部22、第2可動部23、一対の第1連結部24、及び、一対の第2連結部25を形成すると共に、第1可動部22にミラー層3を形成することにより構造体7を形成する形成工程に含まれる。
【0051】
ここで、このミラーデバイス1の製造方法では、ステップS8とステップS10との間において、ミラー層3上の異物を除去する工程(ステップS9)を実施する。引き続いて、このステップS9について詳細に説明する。
【0052】
図9は、図4に示された異物を除去する工程のフローチャートである。ここでは、構造体7(部分17WA)のうち、第1表面2a側(すなわち、ウェハ10Wの表面10a側であり、ミラー層3側)に対して、以下の異物を除去する工程(ステップS9)を実施する。ただし、構造体7のうち、第2表面2b側(すなわち、ウェハ10Wの裏面10b側)に対して、異物を除去する工程を実施してもよい。或いは、第1表面2a側及び第2表面2b側の両方に対して異物を除去する工程を実施することもできる。
【0053】
図9の(a)は、異物を除去する工程の第1の例を示す。図9の(a)に示されるように、この第1の例では、まず、構造体7(部分17WA)の外観検査を行う(ステップS101、第1検査工程)。これにより、構造体7上の異物の有無、及び、構造体7における異物が存在する領域が把握される。そこで、ステップS101の結果、構造体7上に異物が発見された場合に、当該異物を切削する(ステップS102、第1切削工程)。ただし、このステップS102は省略されてもよい。
【0054】
続いて、捕集部材による構造体7の異物捕集(異物のピックアップ)を行う(ステップS103、捕集工程)。このステップS103では、ステップS101の結果、構造体7上に異物が発見された場合に、構造体7における異物が存在する領域に対して異物捕集を行う。異物捕集の方法としては、静電気力によって捕集部材に異物を付着させたり、粘着力によって捕集部材に異物を付着させたりすることが考えられる。さらには、吸引ノズル等を用いて異物を吸引してもよい。つまり、ここでの異物捕集とは、捕集部材を異物に接触させずに特定の異物を捕集する場合(例えば静電気力や吸引力を用いる場合)もあるし、捕集部材を異物に接触させて特定の異物を捕集する場合(例えば粘着力を用いる場合)もある。
【0055】
この第1の例では、図10に示されるような捕集部材90を用いることができる。図10の(a)は、捕集部材の全体を示す側面図であり、図10の(b)は、捕集部材の先端部を示す斜視図である。図10に示される捕集部材90は、ハンドリング部91と、ハンドリング部91の先端に設けられた付着部92と、を有している。ハンドリング部91は、一例として長尺の棒状を呈しており、作業者の把持に用いられたり、例えば装置への組付けに用いられたりされ得る。
【0056】
付着部92は、例えば、静電気力を帯びるフィルム(又はテープやフェザー)、又は、粘着力を有するフィルム(又はテープ)によって構成されている。付着部92は、ハンドリング部91に接続される基端92bから先端92aに向かう方向に細くなるテーパ状に形成されている。より具体的には、付着部92の一対の面の幅D1は基端92bから先端92aに至るまで一定であり、付着部92の別の一対の面の幅D2は、基端92bから先端92aに向かうにつれて縮小する。付着部92の基端92bから先端92aまでの距離を示す付着部92の長さD3は、例えば、基端92bにおける付着部92の幅D1,D2の数倍(例えば5倍程度)である。基端92bにおける付着部92の幅D1と幅D2とは、一例として同一である。付着部92の剛性は、第1可動部22及び第2可動部23の剛性よりも小さい。
【0057】
ステップS103では、以上のような捕集部材90を、構造体7に対して捕集部材90を直接的に接触させることなく、異物のみに接触させる。換言すれば、ステップS103では、捕集部材90を、異物を介して構造体7に接触させる。ステップS103では、(異物を介して)第1可動部22又は第2可動部23に接触させる場合に、第1可動部22及び第2可動部23の破損を避ける観点から、第1可動部22及び第2可動部23が撓まないように捕集部材90を第1可動部22又は第2可動部23に接触させて異物捕集を行う。なお、捕集部材90を第1可動部22に接触させる場合には、上述したように異物のみを介する場合(異物が第1可動部22のミラー層3が設けられた部分以外の部分に存在する場合)に加えて、異物及びミラー層3を介する場合(異物がミラー層3上に存在する場合)がある。また、このステップS103では、第1可動部22を(第2可動部23及び第2連結部25を介して)ベース部21に連結するための第1連結部24の破損を避けるように、捕集部材90を第1可動部22に接触させることができる。この点についてより具体的に説明する。
【0058】
上述したように、第1連結部24は、第1可動部22がX軸方向に沿った第1軸線X1の周りに揺動可能となるように、第1可動部22を(第2可動部23及び第2連結部25を介して)ベース部21に連結している。換言すれば、第1可動部22は、第1連結部24を通る軸である第1軸線X1を揺動軸として揺動可能とされている。図11は、第1可動部22をX軸方向からみた場合の模式的な側面図である。
【0059】
図11に示されるように、第1軸線X1は、第1可動部22のY軸方向の中心Cを通っている。第1連結部24の揺動方向のバネ定数をバネ定数kθとすると、第1軸線X1の周りの第1可動部22の揺動を最大角度θとする場合に必要となるトルクTは、バネ定数kθ×最大角度θで表される。一例として、バネ定数kθが5.7×10-6[Nm/rad]であり、最大角度θが9°である場合、トルクT=8.98×10-7≒1×10-6[Nm]となる。
【0060】
第1可動部22の中心Cから最も離れた距離Aの点に捕集部材90を接触させたときに、第1連結部24に最も大きなトルクが付与される。このときのトルクが、上記の最大角度θを与えるトルクTとなるのは、捕集部材90から第1可動部22への力FがトルクT/距離Aとなる場合である。距離Aが例えば1.575×10-3[m]である場合、この力Fは、8.98×10-7/1.575×10-3=5.7×10-4≒6×10-4[N]となる。第1連結部24の破損を抑制するためには、捕集部材90から第1可動部22に付与される力が、この力F以下となるようにすればよい。
【0061】
すなわち、ステップS103では、捕集部材90から第1可動部22に付与される力に応じて第1連結部24に発生するトルクが、第1可動部22の揺動角度が最大角度θとなるトルクT以下となるように、捕集部材90を第1可動部22に接触させて異物捕集を行う。ただし、捕集部材90を第1可動部22に複数回接触させて異物捕集を行う場合であっても確実に破損を抑制するためには、ステップS103では、捕集部材90から第1可動部22に付与される力に応じて第1連結部24に発生するトルクが、第1可動部22の揺動角度が最大角度θの1/2の角度となるトルク以下となるように、捕集部材90を第1可動部22に接触させて異物捕集を行うことが好ましい。なお、上記の各値はあくまで一例であり、第1連結部24のバネ定数の設定に応じて、例えば100倍程度の範囲で変化し得る。
【0062】
一方、図9の(b)は、異物を除去する工程の第2の例を示すフローチャートである。この第2の例でも、捕集部材による構造体7の異物捕集を行う(ステップS103、捕集工程)。ただし、この例では、構造体7の全面に捕集部材を接触させて異物捕集を行う。この場合、構造体7の全面を一括して覆う捕集部材を構造体7に接触させて異物捕集を行ってもよいし、構造体7の一部に対応する捕集部材を、構造体7の全面にわたって複数回接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合の捕集部材も、第1可動部22及び第2可動部23の剛性よりも小さい剛性を有するものとすることができる。
【0063】
この第2の例では、外観検査のためのステップS101が省略できる。すなわち、この第2の例では、構造体7上の異物の有無に関わらず異物捕集を行うことができる。ただし、この第2の例でも、ステップS101を実施してもよい。第2の例でステップS101を実施する場合、構造体7上の異物の有無のみを把握すればよく、構造体7における異物の存在する領域を把握する必要はない(把握してもよい)。また、この第2の例でも、異物を切削するステップS102を実施してもよい。
【0064】
以上のように、ミラーデバイス1の製造方法では、異物を除去するステップS9を行った後に、複数の部分12WA(すなわち、複数の部分17WA)のそれぞれをウェハ10Wから切り出すようにウェハ10Wを切断するステップS10を実施する。なお、ステップS9とステップS10との順番は逆であってもよい。すなわち、ステップS9において異物捕集を行う前に、ステップS10において、複数の部分12WA(すなわち、複数の部分17WA)のそれぞれをウェハ10Wから切り出すようにウェハ10Wを切断してもよい。
【0065】
引き続いて、ミラーユニット100の製造方法について説明する。図12は、図1に示されたミラーユニットの製造方法を示すフローチャートである。図12に示されるように、この製造方法では、まず、ミラーデバイス1を準備する(ステップS20、準備工程)。ミラーデバイス1を製造する場合には、上述したミラーデバイス1の製造方法を実施することができる。
【0066】
続いて、ミラーデバイス1を搭載基板(搭載部)41に配置して固定する(ステップS21、固定工程)。ミラーデバイス1の搭載基板41に対する固定は、例えば、接着剤や嵌合、又はねじ止め等によって行うことができる。続いて、ミラーデバイス1と搭載基板41との間にワイヤWを設けることにより、ミラーデバイス1を搭載基板41に電気的に接続し、ミラーデバイス1を搭載基板41に実装する(ステップS22)。続いて、捕集部材による構造体7の異物捕集を行う(ステップS23、捕集工程)。このステップS23は、上述したミラーデバイス1の製造方法のステップS9と同様に行うことができる。なお、ステップS22とステップS23との順序は逆であってもよい。続いて、例えば窓部材43を枠部材42に接合することにより、パッケージ40によってミラーデバイス1を封止する(工程S24、封止工程)。以上により、ミラーユニット100が製造される。
【0067】
以上説明したように、ミラーデバイス1の製造方法では、まず、揺動可能な第1可動部22を形成すると共に、第1可動部22にミラー層3を形成することにより構造体7を形成する。そして、捕集部材90を用いて構造体7の異物捕集を行う。このため、構造体7に異物が付着している場合には、異物が除去される。特に、この製造方法では、構造体7の異物が捕集されるので、飛散した異物が第1可動部22等の動作に影響を与えることがない。すなわち、この製造方法によれば、第1可動部22等の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能である。特に、構造体7のうち、ミラー層3の異物が除去されれば、異物に起因した反射率の低減が抑制される。
【0068】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、捕集工程(ステップS103(以下同様))では、異物のみに捕集部材90を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、構造体7に対して捕集部材90が直接接触しないため、構造体7の表面が傷つくことが避けられる。
【0069】
また、ミラーデバイス1の製造方法は、捕集工程の前において、構造体7の外観検査を行う第1検査工程(ステップS101(以下同様))を備えてもよい。この場合、外観検査によって構造体7上の異物を発見して確実に捕集できる。
【0070】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、捕集工程では、第1検査工程の結果、構造体7上に異物が発見された場合に、構造体7における異物が存在する領域に対して異物捕集を行ってもよい。この場合、外観検査によって発見された異物をより確実に捕集できる。
【0071】
また、ミラーデバイス1の製造方法は、第1検査工程の後であって捕集工程の前において、第1検査工程の結果、構造体7上に異物が発見された場合に、異物を切削する切削工程(ステップS102(以下同様))を備えてもよい。この場合、構造体7に異物が強固に付着している場合であっても、当該異物を確実に捕集できる。
【0072】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、捕集工程では、構造体7の全面に捕集部材90を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合、構造体7に付着した異物の位置を把握する必要がないので、外観検査を省略できる。
【0073】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、捕集工程では、第1可動部22及び第2可動部23の剛性よりも小さな剛性を有する捕集部材90(付着部92)により異物捕集を行ってもよい。この場合、第1可動部22及び第2可動部23に対して捕集部材90(付着部92)が優先的に撓むため、第1可動部22及び第2可動部23が撓むことを抑制できる。
【0074】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、捕集工程では、第1可動部22及び第2可動部23が撓まないように捕集部材90を第1可動部22又は第2可動部23に接触させて異物捕集を行うことができる。この場合、第1可動部22及び第2可動部23の破損を抑制できる。
【0075】
また、ミラーデバイス1の製造方法においては、第1可動部22は、第1連結部24を通る第1軸線X1を揺動軸として揺動可能とされている。そして、捕集行程では、捕集部材90から第1可動部22に付与される力に応じて第1連結部24に発生するトルクが、第1可動部22の揺動角度が最大角度θとなるトルクT以下となるように、捕集部材90をミラー層3に接触させて異物捕集を行うことができる。このため、第1可動部22の揺動軸を提供する第1連結部24の破損を抑制できる。
【0076】
また、ミラーデバイス1の製造方法は、ウェハ10Wを切断する切断工程(ステップS11(以下同様))を備える。そして、形成工程では、構造体7に対応する複数の部分17WAをウェハ10Wに形成し、切断工程では、捕集工程の後に、複数の部分17WAのそれぞれをウェハ10Wから切り出すようにウェハ10Wを切断する。これにより、複数のミラーデバイス1を製造できる。特に、ウェハ10Wの切断の前に異物捕集を行うので、ウェハ10Wの切断の際に構造体7上の異物が移動して第1可動部22及び第2可動部23の動作に影響を与えることが避けられる。また、切断工程前では、隣接する複数の構造体7に対応する部分17WAが一体となっているため、強度が高い状態である。このため、捕集工程において構造体7に破損が生じにくい。
【0077】
さらに、ミラーデバイス1の製造方法は、ウェハ10Wを切断する切断工程を備える。そして、形成工程では、構造体7に対応する複数の部分17WAをウェハ10Wに形成し、切断工程では、形成工程の後であって捕集工程の前において、複数の部分17WAのそれぞれをウェハ10Wから切り出すようにウェハ10Wを切断してもよい。これにより、複数のミラーデバイス1を製造できる。特に、ウェハ10Wの切断の後に異物捕集を行うので、ウェハ10Wの切断の際に発生・付着した異物を除去できる。
【0078】
ここで、ミラーユニット100の製造方法では、ミラー層3が設けられ揺動可能な第1可動部22を含む構造体7を有するミラーデバイス1を準備する。そして、ミラーデバイス1を実装した後に、捕集部材90を用いて構造体7の異物捕集を行う。このため、構造体7に異物が付着している場合には、異物が除去される。特に、この製造方法では、構造体7の異物が捕集されるので、飛散した異物が第1可動部22等の動作に影響を与えることがない。すなわち、この製造方法によれば、第1可動部22等の動作への影響を抑制しつつ異物を除去可能である。また、ミラーユニット100の製造方法では、ミラーデバイス1の搭載基板41への固定後に異物捕集を行う。つまり、この製造方法では、より終盤の工程で異物捕集を行うため、異物捕集を行った後の工程で再び異物が付着するリスクが小さくなる。
【0079】
さらに、ミラーユニット100の製造方法は、捕集工程(ステップS23)の後に、ミラーデバイス1を封止する封止工程(ステップS24)を備える。このように、ミラーデバイス1の封止前に異物捕集が行われるので、歩留まりが向上する。
【0080】
以上の実施形態は、本発明の一形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述した形態に限定されず、任意の変更がされ得る。
【0081】
例えば、ミラーデバイス1は、第2可動部23が省略されて、1軸のミラーデバイスとして構成されてもよい。また、ミラーデバイス1の駆動方式は、圧電駆動式や静電駆動式であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、ウェハ10Wに対して、構造体7に対応する複数の部分17WAを形成し、それぞれの部分17WAをウェハ10Wから切り出す場合について例示した。しかしながら、単一の構造体7をウェハ10Wに形成してもよい。
【0083】
また、上記のミラーデバイス1の製造方法においては、異物を除去する工程(ステップS9(以下同様))の第2の例として、捕集工程において構造体7の全面に捕集部材を接触させて異物捕集を行う例を挙げた。しかしながら、異物を除去する工程の別の例として、捕集工程において、構造体7の一部に捕集部材を接触させて異物捕集を行ってもよい。この場合の構造体7の一部とは、1つの異物に対応する部分と比較して広い範囲であって、且つ、全面には至らない範囲の部分である。この場合、構造体7における捕集部材90が接触する面積が限定されるため、構造体7のうちの傷がつく可能性のある範囲を限定できる。なお、この場合にも、捕集部材90を接触させる部分を予め定めておくことで、外観検査を省略できる。
【0084】
また、上記のミラーデバイス1の製造方法は、異物を除去する工程のなかで、捕集工程の後に、構造体7の外観検査を行う第2検査工程と、第2検査工程の結果、構造体7に異物が残存している場合に、異物を切削する第2切削工程と、をさらに備えてもよい。この場合、第2切削工程の後に、捕集工程を再度実施することができる。この場合、異物を確実に捕集できる。なお、この場合であっても、第2切削工程は省略されてもよい。
【0085】
また、上記のミラーデバイス1の製造方法においては、第1検査工程の後であって捕集工程の前において、異物を切削する第1切削工程を実施した。しかし、第1切削工程は、捕集工程と同時に実施されてもよい(すなわち、異物を切削しながら捕集してもよい)。すなわち、第1切削工程は、第1検査工程の後であって捕集工程の前、又は、捕集工程において実施され得る。
【0086】
また、上記のミラーデバイス1の製造方法においては、形成工程の後であって捕集工程の前において、構造体7の外観検査を行う第1検査工程を実施した。しかし、第1検査工程は、捕集工程と同時に実施されてもよい(すなわち、外観検査を行いながら異物を捕集してもよい)。すなわち、第1検査工程は、形成工程の後であって捕集工程の前、又は、捕集工程において実施され得る。第1検査工程と捕集工程と同時に実施する場合は、例えば、構造体7の外観の検査を開始した後に、構造体7の一部分で発見された異物の捕集を行いつつ、構造体7の別の部分の外観検査を進める場合等が該当する。
【0087】
さらに、上記のミラーデバイス1の製造方法にあっては、異物を除去する工程で、構造体7の全体を対象として異物捕集を行う例について説明した。これに対して、異物を除去する工程で、ミラー層3やベース部21や電極パッド5等の構造体7の各部を対象として異物捕集を行ってもよい。異物を除去する工程でミラー層3を対象とし、ミラー層3の異物捕集を行うようにすれば、ミラー層3に付着した異物に起因したミラー層3の反射率の低減を抑制できる。
【0088】
また、異物を除去する工程で電極パッド5を対象とし、電極パッド5の異物捕集を行うようにすれば、配線と電極パッド5との接続不良を抑制できる。このように、ミラー層3やベース部21や電極パッド5等の構造体7の各部を対象とする場合には、上述した各工程の説明について、構造体7を各部に読み替えることにより、各工程を各部の異物捕集に適用可能である。なお、構造体7の全体を対象として異物捕集を行った場合であっても、ミラー層3の異物が除去されれば、ミラー層3の反射率の低減が抑制されるし、電極パッド5の異物が除去されれば、電極パッド5における接続不良が抑制される。
【0089】
また、上記のミラーユニット100の製造方法においては、ミラーデバイス1を搭載基板41に固定及び実装する例を挙げたが、ミラーデバイス1を磁界発生部70に直接配置・固定して実装する等、ミラーデバイス1が搭載基板41に固定及び実装される場合に限定されない。すなわち、磁界発生部70等も、ミラーデバイス1が搭載される搭載部であり得る。
【0090】
さらに、上記のミラーユニット100の製造方法にあっては、ミラーデバイス1を準備した後(準備工程の後)であって、ミラーデバイス1を実装する前(実装工程の前)に、構造体7の第2表面2b側(ミラー層3と反対側)を対象として、上述した異物を除去する工程を実施してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…ミラーデバイス、3…ミラー層、7…構造体、10W…ウェハ、21…ベース部、22…第1可動部、24…第1連結部、90…捕集部材、100…ミラーユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12