(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116203
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】非石油系エチレングリコールを精製する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/82 20060101AFI20240820BHJP
C07C 29/86 20060101ALI20240820BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07C29/82
C07C29/86
C07C31/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088356
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2021512755の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】201811032489.5
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519450008
【氏名又は名称】チャンチュン メイヘ サイエンス アンド テクノロジー ディベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,イ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明では、非石油系エチレングリコールを精製する方法であって、エチレングリコールの沸点に近い沸点を有する不純物が分離される、方法が提供される。
【解決手段】記載される方法では、C5~C20親油性アルコール化合物、C5~C20アルカン及び/又はC4~C20親油性ケトン化合物は、非石油系エチレングリコールとの共沸を行って、エチレングリコールを含有する共沸混合物を得るために添加溶剤として使用され;その後、共沸混合物中の添加溶剤は、エチレングリコールの粗生成物を得るために分離及び除去され、及びエチレングリコールの粗生成物は、エチレングリコールを得るためにさらに精製される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非石油系エチレングリコールを精製する方法であって、1つ、2つ又はそれを超えるC5~C20親油性アルコール化合物、C5~C20アルカン及びC4~C20親油性ケトン化合物は、エチレングリコールを含有する共沸混合物を得るために、前記非石油系エチレングリコールとともに共沸剤として共沸に供され、その後、前記共沸混合物中の前記エチレングリコールを溶解させるために水が加えられ、前記水不溶性の共沸剤は、エチレングリコール水溶液から分離され、及びエチレングリコールは、前記得られたエチレングリコール水溶液の脱水及び精製から得られる、方法。
【請求項2】
前記C5~C20親油性アルコール化合物は、C6~C15親油性アルコール化合物、好ましくはC7~C12親油性アルコール化合物、特に好ましくはC7~C10親油性アルコール化合物であり、及び前記親油性アルコール化合物は、脂肪族アルコール及び複素環を含有するアルコール、例えばペンタノール及びその異性体、ヘキサノール及びその異性体、ヘプタノール及びその異性体、オクタノール及びその異性体、ノナノール及びその異性体、デカノール及びその異性体、ウンデカノール及びその異性体、ラウリルアルコール及びその異性体並びにベンジルアルコールであり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C5~C20親油性アルコール化合物は、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール及びイソデカノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記C5~C20アルカンは、C5~C15アルカン、好ましくはC5~C12アルカン、特に好ましくはC5~C10アルカンであり、及び前記アルカンは、直鎖アルカン、分岐アルカン、シクロアルカン又はベンゼン環を含有するアルカン、例えばペンタン及びその異性体、ヘキサン及びその異性体、ヘプタン及びその異性体、オクタン及びその異性体、ノナン及びその異性体、デカン及びその異性体、ウンデカン及びその異性体、ドデカン及びその異性体、シクロペンタン、シクロヘキサン、エチルベンゼン及びその異性体、好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、エチルベンゼンであり得る、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記C4~C20親油性ケトン化合物は、C5~C15親油性ケトン化合物、好ましくはC6~C12親油性ケトン化合物、特に好ましくはC6~C10親油性ケトン化合物であり、及び前記ケトンは、脂肪族ケトン又は脂環式ケトン、好ましくはヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ノノンであり得る、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非石油系エチレングリコールは、石炭から製造されたエチレングリコール又はバイオマスから製造されたエチレングリコールであり、前記バイオマスは、好ましくは、トウモロコシ、サトウキビなどを含む食用の第1世代バイオマス並びにわら、木材、バガスなどを含む農業及び林業廃棄物の非食品の第2世代バイオマスを意味する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非石油系エチレンは、限定されないが、エチレングリコール、ブタンジオール(好ましくは1,2-ブタンジオール)、ペンタンジオール(好ましくは1,2-ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(好ましくは1,2-ヘキサンジオール)を含み、且つ好ましくは、
【化1】
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非石油系エチレンは、プロピレングリコール、グリセロール及び/又はソルビトールを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非石油系エチレングリコールは、
100重量%の端点を除いて、1~100重量%のエチレングリコール、好ましくは1~99重量%のエチレングリコール、より好ましくは5~99重量%のエチレングリコール、特に好ましくは10~95重量%のエチレングリコールと;
0の端点を除いて、0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~30重量%、特に好ましくは0~10重量%のブタンジオール、好ましくは1,2-ブタンジオールと;
0の端点を除いて、0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%のペンタンジオール、好ましくは1,2-ペンタンジオールと;
0の端点を除いて、0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%のヘキサンジオール、好ましくは1,2-ヘキサンジオールと;
0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%の、
【化2】
と
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非石油系エチレングリコールは、
0~95重量%、好ましくは0.1~50重量%の1,2-プロパンジオール;
0~50重量%、好ましくは0.01~10重量%の2,3-ブタンジオール;
0~20重量%、好ましくは0.01~10重量%のグリセロール、及び/又は;
0~20重量%、好ましくは0.01~10重量%のソルビトール
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非石油系エチレングリコールは、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量又はさらにガスクロマトグラフィーの検出限界未満の量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどを含む不純物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、エチレングリコールを精製する方法に関し、特にエチレングリコールの沸点に近い沸点を有する、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及び任意選択の
【化1】
を含む不純物並びにエチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどを含む不純物を含む非石油系エチレングリコールを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
近年、原油価格の不確定性及び人々の持続可能な開発に対する関心のため、石炭からエチレングリコールへ及びバイオマスの原材料からのエチレングリコールの製造など、非石油経路の技術が急速に開発されている。しかし、合成経路が異なるため、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、
【化2】
などを含むアルコール不純物並びにエチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量又はさらにガスクロマトグラフィーの検出限界未満の量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどを含む不純物など、エチレングリコールの製造のための石油経路における副生成物と異なる副生成物が非石油経路におけるエチレングリコールの製造中に生成される。液相化合物の従来の精製方法の1つは、物質の異なる沸点を利用することによる分離のための精留方法である。しかし、これらの不純物の沸点は、エチレングリコールの沸点に近い。例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、
【化3】
などのアルコール不純物並びにエチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量又はさらにガスクロマトグラフィーの検出限界未満の量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどを含む不純物は、エチレングリコールと類似の物理的性質を有し、沸点がエチレングリコールの沸点に非常に近い。したがって、直接精留方法によるエチレングリコールのアルコール不純物からの分離では、エチレングリコールの低い蒸留収率及び高いエネルギー消費が得られる。さらに、精留によって得られるエチレングリコールの紫外線透過率は、一部の微量の不純物を依然として含有するため、繊維グレード及びボトルグレードのポリエステルの要求を直ちに満たすことができない。
【0003】
米国特許第4935102号、米国特許第4966658号、米国特許第5423955号及び米国特許第8906205号のすべては、様々な共沸剤を用いることによってエチレングリコールをブタンジオールから分離する技術を記載している。共沸剤は、エチレングリコールとの共沸点を有する。一般に、共沸点の温度は、エチレングリコールの沸点よりも明らかに低い。したがって、エチレングリコール及び共沸剤の共沸混合物の沸点と、ブタンジオールなどの不純物の沸点との間に明確な温度差が生じる。エチレングリコールとブタンジオールとの分離は、精留によって経済的に実現することができる。
【0004】
非石油経路におけるエチレングリコールの製造方法により、エチレングリコール以外に、エチレングリコールの沸点に非常に近い沸点を有するペンタンジオール、ヘキサンジオール、
【化4】
などのアルコール不純物並びにエチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量又はさらにガスクロマトグラフィーの検出限界未満の量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどの不純物が生成される。しかし、前述の幾つかの文献は、共沸剤を用いることによってエチレングリコールからブタンジオールを分離することの効果のみを記載しており、共沸剤の使用後にエチレングリコールからペンタンジオール、ヘキサンジオール、
【化5】
などを分離する効果に言及していない。それらは、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える、微量又はさらにガスクロマトグラフィーの検出限界未満の量の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールの不純物からエチレングリコールを分離する効果にも言及していない。したがって、これらの特許は、エチレングリコールの紫外線透過率を改善できることに言及していない。
【0005】
中国特許出願公開第106946654A号は、エチレングリコールを精製する効果を実現するために、バイオマスから誘導されるエチレングリコール中の不純物を吸着するための多孔質炭素吸着剤を有する吸着層を記載している。この技術は、エチレングリコールの紫外線透過率の改善のみを記載しており、ブタンジオール、以下の分子式
【化6】
を有する化合物、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及び他のアルコール不純物を分離できると記載していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の内容
本発明は、非石油系エチレングリコールを精製する方法であって、エチレングリコールの沸点に近い沸点を有する不純物が分離される、方法を提供する。この方法では、95%以上、好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上のエチレングリコールの高い回収率の条件下で前記エチレングリコールの純度を99.90%以上、好ましくは99.95%以上に高めることができる。さらに、得られたエチレングリコールの220nm、275nm及び350nmの波長における紫外線透過率はが、それぞれ75%以上、92%以上及び99%以上に改善される。
【0007】
前記非石油系エチレングリコールは、非石油経路において製造されるエチレングリコール、特に石炭又はバイオマスから製造されるエチレングリコールを意味する。これは、限定されないが、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む。好ましくは、非石油系エチレングリコールは、以下の分子式:
【化7】
を有する化合物をさらに含む。前記ブタンジオールは、好ましくは、1,2-ブタンジオールであり、前記ペンタンジオールは、好ましくは、1,2-ペンタンジオールであり、前記ヘキサンジオールは、好ましくは、1,2-ヘキサンジオールである。
【0008】
本発明の方法では、1つ、2つ又はそれを超えるC5~C20親油性アルコール化合物、C5~C20アルカン及びC4~C20親油性ケトン化合物は、エチレングリコールを含有する共沸混合物を得るために、非石油系エチレングリコールとともに共沸剤として共沸に供され、その後、共沸混合物中のエチレングリコールを溶解させるために水が加えられ、水不溶性共沸剤は、エチレングリコール水溶液から分離され、及びエチレングリコールは、得られたエチレングリコール水溶液の脱水及び精製から得られる。
【0009】
本発明の一実施形態では、C5~C20親油性アルコール化合物は、好ましくは、C6~C15親油性アルコール化合物、より好ましくはC7~C12親油性アルコール化合物、特に好ましくはC7~C10親油性アルコール化合物である。親油性アルコール化合物は、脂肪族アルコール及び複素環を含有するアルコールであり得る。例えば、親油性アルコール化合物の例は、ペンタノール及びその異性体、ヘキサノール及びその異性体、ヘプタノール及びその異性体、オクタノール及びその異性体、ノナノール及びその異性体、デカノール及びその異性体、ウンデカノール及びその異性体、ラウリルアルコール及びその異性体並びにベンジルアルコールである。特に好ましくは、前記親油性アルコール化合物は、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール及びイソデカノールである。
【0010】
本発明の別の一実施形態では、C5~C20アルカンは、好ましくは、C5~C15アルカン、好ましくはC5~C12アルカン、特に好ましくはC5~C10アルカンである。アルカンは、直鎖アルカン、分岐アルカン、シクロアルカン又はベンゼン環を含有するアルカンであり得る。例えば、アルカンの例は、ペンタン及びその異性体、ヘキサン及びその異性体、ヘプタン及びその異性体、オクタン及びその異性体、ノナン及びその異性体、デカン及びその異性体、ウンデカン及びその異性体、ドデカン及びその異性体、シクロペンタン及びシクロヘキサン、エチルベンゼン及びその異性体である。特に好ましくは、アルカンは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びエチルベンゼンである。
【0011】
本発明の別の一実施形態では、前記C4~C20親油性ケトン化合物は、好ましくは、C5~C15親油性ケトン化合物、より好ましくはC6~C12親油性ケトン化合物、特に好ましくはC6~C10親油性ケトン化合物である。ケトンは、脂肪族ケトン又は脂環式ケトンであり得る。特に好ましくは、ケトンは、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ノナノンである。
【0012】
本発明によるバイオマスは、好ましくは、トウモロコシ、サトウキビなどを含む食用の第1世代バイオマス並びにわら、木材、バガスなどを含む農業及び林業廃棄物の非食品の第2世代バイオマスを意味する。好ましくは、本発明の非石油系エチレングリコールは、限定されないが、エチレングリコール、ブタンジオール(好ましくは1,2-ブタンジオール)、ペンタンジオール(好ましくは1,2-ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(好ましくは1,2-ヘキサンジオール)、及び
【化8】
を含む。本発明の非石油系エチレングリコールは、任意選択で、プロピレングリコール、グリセロール及び/又はソルビトールを含む。より好ましくは、前記非石油系エチレングリコールは、限定されないが、
1~100重量%のエチレングリコール(100重量%の端点を除いて)、好ましくは1~99重量%のエチレングリコール、より好ましくは5~99重量%のエチレングリコール、特に好ましくは10~95重量%のエチレングリコールと;
0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~30重量%、特に好ましくは0~10重量%のブタンジオール(好ましくは1,2-ブタンジオール、0の端点を除いて)と;
0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%のペンタンジオール(好ましくは1,2-ペンタンジオール、0の端点を除いて)と;
0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%のヘキサンジオール(好ましくは1,2-ヘキサンジオール、0の端点を除いて)と、
任意選択で、0~95重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~10重量%、特に好ましくは0~1重量%の、
【化9】
と
を含む。
【0013】
前記非石油系エチレングリコールは、任意選択で、
0~95重量%、好ましくは0.1~50重量%の1,2-プロパンジオール、
0~50重量%、好ましくは0.01~10重量%の2,3-ブタンジオール、
0~20重量%、好ましくは0.01~10重量%のグリセロール、及び/又は
0~20重量%、好ましくは0.01~10重量%のソルビトール
をさらに含む。
【0014】
本発明の方法では、共沸剤は、エチレングリコールとの共沸によって共沸混合物を形成する。共沸混合物の沸点と、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、
【化10】
などの不純物並びに紫外線透過率に影響を与える微量の他の酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールなどの沸点との間に明確な温度差が存在する。したがって、エチレングリコールは、例えば、精留プロセスによって経済的に精製することができる。
【0015】
共沸剤は、共沸混合物を水と混合した後の抽出プロセスにより、エチレングリコールを含有する水溶液から分離することができる。エチレングリコールを含有する前記水溶液を脱水後に精製することでエチレングリコールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図の説明
【
図1】本発明の非石油系エチレングリコールの共沸精製方法のフローチャートである。
【
図2】非石油系エチレングリコールの従来の精留方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施する形態
図1と組み合わせると、本発明の精製方法は、以下のように説明される:混合アルコール供給材料及び共沸剤供給材料は、共沸塔に入る前に混合され、ここで、共沸塔は、精留塔である。共沸剤供給材料と、混合アルコール供給材料のエチレングリコールとの重量比は、0.1:1~20:1、好ましくは0.2:1~10:1、より好ましくは0.5:1~10:1である。共沸塔の運転圧力は、1kPa(絶対)~101kPa(絶対)であり、共沸塔における還流材料と抽出材料との重量比(すなわち還流比)は、0.1:1~15:1である。ここで、混合アルコール供給材料中の大部分のエチレングリコール及び少量の他の不純物は、共沸塔の上部から共沸剤とともに抜き取られ(すなわちストリーム1)、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入る。限定されないが、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及び任意選択の
【化11】
を含む重質成分不純物並びに少量の共沸剤は、共沸塔底部から抜き取られ(すなわちストリーム8)、蒸発器に入る。
【0018】
スチーム1及び新しい水並びに任意選択の再循環水(すなわちストリーム4)が混合され、共沸塔上部からの生成物のための相分離器中で成層する。共沸剤層(すなわちストリーム2)は、共沸塔に再循環される一方、水層(すなわちストリーム3)は、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入る。
【0019】
共沸塔上部からの生成物のための脱水塔において、ストリーム3中の水は、塔の上部から抜き取られ(すなわちストリーム4)、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に再循環される。軽質成分不純物を含有するエチレングリコール(すなわちストリーム5)は、サイドラインから抜き取られて、エチレングリコール精製塔に入る。塔底部中の重質成分不純物(すなわちストリーム6)は、系から排出される。
【0020】
エチレングリコール精製塔におけるエチレングリコールの精製のためにストリーム5が精製され、エチレングリコールは、精製塔のサイドラインから抜き取られる。得られたエチレングリコール生成物の純度及び紫外線透過率の両方は、繊維グレード及びボトルグレードのポリエステルの要求を満たす。他の軽質成分不純物は、エチレングリコール精製塔の上部から抜き取られる。重質成分不純物は、エチレングリコール精製塔の底部から抜き取られる。
【0021】
共沸塔の底部の材料(すなわちストリーム8)は、蒸発器に入り、ここで、グリセロール及びソルビトールなどの非常に高沸点の重質成分不純物が蒸発器底部から分離され、系から排出される(すなわちストリーム9)。
【0022】
限定されないが、共沸剤、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及び任意選択の
【化12】
を含むストリーム10は、共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入り、次に新しい水及び任意選択の再循環水(すなわちストリーム13)と混合され、次に成層される。そこで、共沸剤層(すなわちストリーム11)は、共沸塔に再循環される一方、限定されないが、水、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む水層(すなわちストリーム12)は、脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入る。
【0023】
共沸塔底部からの生成物のための相分離器の水層中の水(すなわちストリーム12)は、共沸塔底部からの生成物のための脱水塔において分離され、塔の上部から抜き取られ(すなわちストリーム13)、次に共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環される。限定されないが、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む不純物は、共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の底部から抜き取られ、系から排出される。
【0024】
本発明の技術により、95%以上、好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上のエチレングリコールの高い回収率の条件下において、非石油系エチレングリコール中のエチレングリコールを、限定されないが、ブタンジオール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール及び任意選択の
【化13】
を含む不純物から分離することができる。一方で、エチレングリコールの純度は、99.90%以上、好ましくは99.95%以上に改善され、得られたエチレングリコールの紫外線透過率は、220nm、275nm及び350nmの波長においてそれぞれ75%以上、92%以上及び99%以上に改善される。したがって、非石油系エチレングリコールの精製の従来技術における、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール及び任意選択の
【化14】
などの不純物の分離が紫外線透過率の改善と同時に実現できない問題が解決される。
【実施例0025】
実施例
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。しかしながら、本発明は、それらの限定されるものではない。
【0026】
実施例1
図1に示されるフローチャートによると、混合アルコール供給材料は、バイオマスの原材料から製造された混合生成物の脱水及び軽質成分の除去によって得られた材料であった。この材料は、重量パーセント値の単位で85.1%のエチレングリコール、6.6%の1,2-プロパンジオール、2.2%の1,2-ブタンジオール、0.4%の2,3-ブタンジオール、0.7%の1,4-ブタンジオール、0.2%の1,2-ペンタンジオール、0.2%の1,2-ヘキサンジオール、0.1%の、
【化15】
、0.5%のグリセロール、0.5%のソルビトール並びに3.5%の他の軽質及び重質成分で構成された。
【0027】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤のイソオクタノールを混合し、共沸塔の45番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、3.39:1であった。共沸塔には、全体で90の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の40番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、50kPa(絶対)であり、還流比は、0.5:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ74.97%、22.18%、2.54%、0.11%、0.08%、0%、0%、0%、0%及び0.12%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
【化16】
及び他の軽質成分で構成された。
【0028】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0029】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちストリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0030】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、20:1であり、運転圧力は、10kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.96%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で83.2%、275nmの波長で96.0%、350nmの波長で99.0%であった。エチレングリコールの全精留収率は、98.2%であった。
【0031】
実施例2
図1に示されるフローチャートによると、混合アルコール供給材料は、バイオマスの原材料から製造された混合生成物の脱水及び軽質成分の除去によって得られた材料であった。この材料は、重量パーセント値の単位で23.2%のエチレングリコール、55.09%の1,2-プロパンジオール、4.60%の1,2-ブタンジオール、1.40%の2,3-ブタンジオール、0.60%の1,4-ブタンジオール、0.31%の1,2-ペンタンジオール、0.49%の1,2-ヘキサンジオール、0.15%の、
【化17】
、2.10%のグリセロール、1.90%のソルビトール並びに10.16%の他の軽質及び重質成分で構成された。
【0032】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤の2-ノナノンを混合し、共沸塔の30番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、7.04:1であった。共沸塔には、全体で90の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の25番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、30kPa(絶対)であり、還流比は、2.5:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ64.96%、9.23%、24.98%、0.20%、0.32%、0%、0%、0%、0%及び0.31%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
【化18】
及び他の軽質成分で構成された。
【0033】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0034】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちストリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0035】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、20:1であり、運転圧力は、10kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.95%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で76.1%、275nmの波長で95.5%、350nmの波長で99.0%であった。エチレングリコールの全精留収率は、98.8%であった。
【0036】
実施例3
図1に示されるフローチャートによると、混合アルコール供給材料は、バイオマスの原材料から製造された混合生成物の脱水及び軽質成分の除去によって得られた材料であった。この材料は、重量パーセント値の単位で92.50%のエチレングリコール、4.89%の1,2-プロパンジオール、1.42%の1,2-ブタンジオール、0.17%の2,3-ブタンジオール、0.12%の1,4-ブタンジオール、0.06%の1,2-ペンタンジオール、0.24%の1,2-ヘキサンジオール、0.07%の、
【化19】
並びに0.53%の他の軽質及び重質成分で構成された。
【0037】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤のn-デカノールを混合し、共沸塔の30番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、0.60:1であった。共沸塔には、全体で90の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の25番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、20kPa(絶対)であり、還流比は、3:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ35.81%、60.45%、3.15%、0.44%、0.02%、0%、0%、0%、0%、0.13%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
【化20】
及び他の軽質成分で構成された。
【0038】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0039】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちストリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0040】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、40:1であり、運転圧力は、20kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.96%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で76.0%、275nmの波長で95.4%、350nmの波長で99.0%であった。エチレングリコールの全精留収率は、96.5%であった。
【0041】
実施例4
図1に示されるフローチャートによると、混合アルコール供給材料は、実施例3の混合アルコール供給材料と同じであった。
【0042】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤の2-ヘプタノールを混合し、共沸塔の30番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、8.35:1であった。共沸塔には、全体で90の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の25番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、50kPa(絶対)であり、還流比は、3:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ88.15%、11.21%、0.55%、0%、0%、0%、0%、0%、0%、0.09%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
【化21】
及び他の軽質成分で構成された。
【0043】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0044】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちストリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0045】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、20:1であり、運転圧力は、20kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.96%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で76.6%、275nmの波長で92.1%、350nmの波長で99.5%であった。エチレングリコールの全精留収率は、97.0%であった。
【0046】
実施例5
図1に示されるフローチャートによると、混合アルコール供給材料は、実施例3の混合アルコール供給材料と同じであった。
【0047】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤のn-オクタンを混合し、共沸塔の30番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、9.1:1であった。共沸塔には、全体で63の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の25番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、101kPa(絶対)であり、還流比は、5:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ89.55%、9.86%、0.51%、0.01%、0.01%、0%、0%、0%、0%、0.06%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、
【化22】
及び他の軽質成分で構成された。
【0048】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0049】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちトリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0050】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、40:1であり、運転圧力は、20kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.96%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で75.3%、275nmの波長で93.0%、350nmの波長で99.2%であった。エチレングリコールの全精留収率は、97.1%であった。
【0051】
実施例6
図1に示される方法によると、混合アルコール供給材料は、石炭の原材料から製造された混合生成物であった。この材料は、重量パーセント値の単位で77.94%のエチレングリコール、0.86%の1,2-プロパンジオール、17.15%の1,2-ブタンジオール、0.60%の2,3-ブタンジオール、0.01%の1,4-ブタンジオール、0.02%の1,2-ペンタンジオール、0.01%の1,2-ヘキサンジオール並びに3.41%の他の軽質及び重質成分で構成された。
【0052】
混合アルコール供給材料及び新しい共沸剤のイソオクタノールを混合し、共沸塔の30番目の理論段に入れた。共沸剤(新しい共沸剤並びに再循環された共沸剤ストリーム2及びストリーム11を含む)と、混合アルコール供給材料中のエチレングリコールとの重量比は、3.26:1であった。共沸塔には、全体で90の理論段が存在した。塔上部から再循環された共沸剤ストリーム2及び塔底部から再循環された共沸剤ストリーム11をそれぞれ共沸塔の25番目の理論段から共沸塔に入れた。共沸塔の運転圧力は、77kPa(絶対)であり、還流比は、2:1であった。共沸塔から分離された上部の塔からのストリーム1は、それぞれ76.07%、23.35%、0.15%、0.03%、0.23%、0%、0%、0%、0.17%の重量パーセント値の共沸剤、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール及び他の軽質成分で構成された。
【0053】
高沸点を有する重質成分のストリーム9を蒸発器によってストリーム8から分離した。
【0054】
ストリーム10及び共沸塔底部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム13を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に入れた。再循環した共沸剤である成層した共沸剤層(すなわちストリーム11)を共沸塔に再循環させ;アルコールと水との混合物である水層(すなわちストリーム12)を脱水のための共沸塔底部からの生成物のための脱水塔に入れ、水(すなわちストリーム13)を共沸塔底部からの生成物のための相分離器に再循環させた。
【0055】
共沸塔の上部からのストリーム1を、共沸塔上部からの生成物のための脱水塔の上部からのストリーム4とともに、共沸塔上部からの生成物のための相分離器に入れた。相分離器によって分離した後、水層ストリーム(すなわちストリーム3)を、脱水のための共沸塔上部からの生成物のための脱水塔に入れた。脱水後、サイドラインのストリーム5をエチレングリコール精製塔の60番目の理論段に入れた。エチレングリコール精製塔は、合計で90の理論段を有し、還流比は、20:1であり、運転圧力は、20kPa(絶対)であった。エチレングリコール生成物をエチレングリコール精製塔の80番目の理論段から抜き取った。国家規格のGB/T4649-2008並びに米国のASTM E2409及びASTM E2139の方法によるそれぞれの分析によると、精製したエチレングリコールの純度は、重量パーセント値の単位で99.98%であり、紫外線透過率は、それぞれ220nmの波長で77.1%、275nmの波長で95.0%、350nmの波長で99.2%であった。エチレングリコールの全精留収率は、98.5%であった。
【0056】
比較例1
実施例1におけるバイオマスの原材料から製造された混合生成物の脱水及び軽質成分の除去によって得られた材料を混合アルコール原材料として使用した。
図2に示すような従来の精留方法で分離を行った。従来の精留方法では、共沸剤は、加えられず、抽出セクションも不要であったため、塔上部からの生成物のための相分離器、塔底部からの生成物のための相分離器、塔上部からの生成物のための脱水塔、塔底部からの生成物のための脱水塔及び蒸発器は、不要であった。実施例1と比較すると、エチレングリコール中の重質成分を除去するための塔の全理論段数及び運転条件は、共沸塔と同じであり;比較例1におけるエチレングリコール中の軽質成分を除去するための塔の全理論段数及び運転条件は、実施例1のエチレングリコール精製塔のものと同じであった。エチレングリコール生成物は、それぞれ99.45%、0%、0.25%、0%、0%、0.02%、0.21%及び0.07%の重量パーセント値のエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール及び1,2-ヘキサンジオール、並びに
【化23】
で構成された。紫外線透過率は、220nmの波長で56.1%、275nmの波長で87.2%、350nmの波長で96.8%であった。低い純度のエチレングリコール全精留収率は、93.0%であった。
【0057】
これらの実験結果は、共沸剤を用いない従来の精留では、エチレングリコール中の1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール及び任意選択の
【化24】
などの不純物を効率的に分離できないことを示している。99.9%の純度に到達するために、還流比及びエネルギー消費を増加させることが必要である。さらに、紫外線透過率を効率的に改善できない。本発明の方法は、エチレングリコールの高収率の条件下で上記エチレングリコールの純度を99.90%以上に効率的に高めることができる。さらに、得られたエチレングリコールの220nmの波長、275nm及び350nmにおける紫外線透過率は、75%以上、92%以上及び99%以上に増加させることができる。