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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116206
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電磁波検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20240820BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20240820BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20240820BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240820BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01R29/08 Z
G01N21/3581
G01J1/44 A
G01J1/02 P
G01J1/42 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089848
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2022131599の分割
【原出願日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2018203597
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
(57)【要約】
【課題】対象物で反射した電磁波又は対象物を透過した電磁波を検出する検出部を備える電磁波検出システムにおいて、対象物がなくても検出部に印加するバイアス電圧の制御を可能にすることが一例として挙げられる。
【解決手段】本発明の電磁波検出システムは、電磁波を発生させる発生部と、前記発生部から離れて配置され、前記発生部が発生させた電磁波を対象物に向けて出射する出射部と、前記対象物で反射した電磁波を検出する検出部と、前記検出部に印加されるバイアス電圧を生成する生成部と、前記発生部と前記出射部との間に配置され、前記発生部が発生させる電磁波のうちの一部の電磁波を前記検出部に導く導波部と、前記検出部による前記一部の電磁波の検出結果に基づいて、前記バイアス電圧を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生させる発生部と、
前記発生部から離れて配置され、前記発生部が発生させた電磁波を対象物に向けて出射する出射部と、
前記対象物で反射した電磁波を検出する検出部と、
前記検出部に印加されるバイアス電圧を生成する生成部と、
前記発生部と前記出射部との間に配置され、前記発生部が発生させる電磁波のうちの一部の電磁波を前記検出部に導く導波部と、
前記検出部による前記一部の電磁波の検出結果に基づいて、前記バイアス電圧を制御する制御部と、
を備える電磁波検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テラヘルツ発振検出素子を備えた無線伝送装置が開示されている。また、特許文献1には、テラヘルツ発振検出素子の例として共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode、以下、RTDという。)が記載されている。なお、特許文献1には、テラヘルツ発振検出素子に印加されるバイアス電圧の具体的な設定方法について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-005115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RTDのような電磁波検出素子は、例えば、温度、湿度等の条件により、バイアス電圧に対する電磁波の検出感度が変動する。そのため、対象物に照射される電磁波を発生する発生部と、電磁波を検出するRTDのような電磁波検出素子を有する検出部とを備えた装置では、電磁波検出素子に印加するバイアス電圧を検出感度に応じて設定することが好ましい。この場合、対象物が反射した電磁波を検出部に検出させてバイアス電圧を設定する方法が考えられる。
しかしながら、この方法の場合、発生部が発生する電磁波が照射される位置に対象物が配置されていないと、バイアス電圧の設定をすることができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、対象物で反射した電磁波又は対象物を透過した電磁波を検出する検出部を備える電磁波検出システムにおいて、対象物がなくても検出部に印加するバイアス電圧の制御を可能にすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
電磁波を発生させる発生部と、
前記発生部から離れて配置され、前記発生部が発生させた電磁波を対象物に向けて出射する出射部と、
前記対象物で反射した電磁波を検出する検出部と、
前記検出部に印加されるバイアス電圧を生成する生成部と、
前記発生部と前記出射部との間に配置され、前記発生部が発生させる電磁波のうちの一部の電磁波を前記検出部に導く導波部と、
前記検出部による前記一部の電磁波の検出結果に基づいて、前記バイアス電圧を制御する制御部と、
を備える電磁波検出システム
である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
図1】第1実施形態の電磁波検出システムの概略図である。
図2】第1実施形態の電磁波検出システムを構成する反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図3】第1実施形態の電磁波検出部の電圧電流特性の一例を示すグラフである。
図4】第1実施形態の電磁波検出部における、印加されるバイアス電圧と、電磁波の検出感度との関係の一例を示すグラフである。
図5】第1実施形態の電磁波検出部に印加するバイアス電圧の設定動作のフロー図である。
図6A】第1変形例の反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図6B】第2変形例の反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図6C】第3変形例の反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図6D】第4変形例の反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図6E】第5変形例の反射部及び対物レンズを、X方向から見た図である。
図7】第2実施形態の電磁波検出システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪概要≫
以下、本発明の一例である第1実施形態及び第1実施形態の変形例並びに第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、参照するすべての図面では同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付し、明細書では適宜説明を省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
以下、第1実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の電磁波検出システム10(図1参照)の機能及び構成について説明する。次いで、本実施形態の電磁波検出システム10による対象物MO(図1参照)の測定動作について説明する。次いで、本実施形態の電磁波検出システム10による検出部26に印加するバイアス電圧の設定動作について説明する。次いで、本実施形態の効果について説明する。次いで、本実施形態の変形例(図6A図6E参照)について説明する。
【0011】
<第1実施形態の電磁波検出システムの機能及び構成>
図1は、本実施形態の電磁波検出システム10の概略図である。
本実施形態の電磁波検出システム10は、電磁波送受信部20と、制御部30と、バイアス電圧生成部40(生成部の一例)と、信号増幅部50と、バイアス・ティ回路部60とを備えている。電磁波検出システム10は、一例として、対象物MOに電磁波Wを照射し、対象物MOを反射した電磁波Wを検出して、対象物MOの形状等を測定する機能を有する。
【0012】
電磁波送受信部20は、発生部21と、コリメートレンズ22と、ビームスプリッタ23と、対物レンズ24(出射部の一例)と、集光レンズ25と、検出部26と、反射板27(導波部及び反射部の一例)を備えている。
【0013】
発生部21は、電磁波発生部21Aと、ホーンアンテナ21Bとを有している。発生部21は、電磁波Wを発生させる機能を有する。電磁波発生部21Aは、一例として、テラヘルツ波を発生可能なRTDを有している。そのため、本実施形態の電磁波検出システムで用いられる電磁波Wは、テラヘルツ波とされている。
なお、電磁波発生部21Aには、後述する制御部30に制御されるバイアス電圧生成部40が生成したバイアス電圧が印加されることで、電磁波Wを発生するようになっている。
【0014】
ここで、図1に示されるように、発生部21と、コリメートレンズ22と、ビームスプリッタ23と、対物レンズ24と、反射板27とは、これらの記載順で、直線状に並べられた状態で配置されている。本実施形態では、これらの並び方向をX方向と定義する。これに対して、ビームスプリッタ23と、集光レンズ25と、検出部26とは、これらの記載順で、X方向と直交する方向に沿って直線状に並べられた状態で配置されている。本実施形態では、これらの並び方向をY方向と定義する。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と定義する。
なお、本実施形態の発生部21が発生させる電磁波Wは、発生部21から対物レンズ24に向けて、すなわち、X方向を進行方向として対物レンズ24に入射するようになっている。図1の符号Oは、X方向に進行する電磁波Wの光軸を意味する。
【0015】
対物レンズ24は、図1に示されるように、発生部21からX方向に離れて配置されている。そして、発生部21が発生させた電磁波Wが入射された対物レンズ24は、電磁波Wが対象物MOで集光するように出射する機能を有する。本実施形態の対物レンズ24は、一例として、両凸レンズとされている。また、対物レンズ24は、その厚み方向から見ると、円形とされている(図2参照)。
【0016】
検出部26は、電磁波検出部26Aと、ホーンアンテナ26Bとを有している。検出部26は、対象物MOで反射した電磁波Wを検出する機能を有する。また、検出部26は、反射板27で反射した電磁波Wを検出する機能を有する。電磁波検出部26Aは、一例として、テラヘルツ波を検出可能なRTDを有している。
なお、電磁波検出部26Aには、後述する制御部30に制御されるバイアス電圧生成部40が生成したバイアス電圧が印加されることで、電磁波Wを検出するようになっている。
【0017】
ここで、テラヘルツ波とは、赤外線よりも短波長でミリ波よりも長波長の電磁波と言われている。テラヘルツ波は、光波及び電波の両方の性質を兼ね備えていた電磁波であり、例えば、布、紙、木、プラスチック、陶磁器等を透過し(又は透過し易く)、金属、水等は透過しない(又は透過し難い)という性質を有する。一般的に、テラヘルツ波の周波数は1THz前後(波長は300μm前後に相当)の電磁波とも言われているが、その範囲について一般的に明確な定義はない。そこで、本明細書では、テラヘルツ波の波長の範囲を70GHz以上10THz以下の範囲と定義する。なお、前述の説明では、電磁波発生部21Aがテラヘルツ波を発生可能なRTDを有するとしたが、テラヘルツ波を発生させる素子であればRTDでなくてもよい。また、電磁波検出部26Aがテラヘルツ波を検出可能なRTDを有するとしたが、テラヘルツ波を検出する素子であればRTDでなくてもよい。
【0018】
次に、電磁波検出部26A、すなわち、RTDの電気的特性について図3及び図4を参照しながら説明する。ここで、図3は、RTDの電圧電流特性の一例を示すグラフである。また、図4は、RTDにおける、印加されるバイアス電圧と、電磁波の検出感度との関係の一例を示すグラフである。
【0019】
RTDは、その動作領域の電流電圧特性に、微分負性抵抗特性を示す微分負性抵抗領域を有する(図3のグラフにおける点Bから点Cまでの範囲参照)。さらに、RTDは、微分負性抵抗領域付近で強い非線形特性を示す非線形領域を有する(図3のグラフにおける点Aから点Bまでの範囲参照)。
そして、RTDは、微分負性抵抗領域に相当するバイアス電圧が印加されている場合に、電磁波発生素子として機能する。これに対して、RTDは、非線形領域に相当するバイアス電圧が印加されている場合に、電磁波検出素子として機能する。
【0020】
図3のグラフに示されるように、非線形領域は、比較的狭い範囲である。そのため、RTDを電磁波検出素子として安定して動作させるためには、高精度にバイアス電圧を制御する必要がある。
【0021】
次に、RTDを電磁波検出素子として機能させる場合の電磁波の検出感度について、図4を参照しながら説明する。ここで、図4のグラフにおける点A及び点Bは、それぞれ、図3のグラフにおける点A及び点Bに対応する。
【0022】
図4のグラフに示されるように、RTDによる電磁波の検出感度は、点Aから点Bまでの範囲において、バイアス電圧が大きいほど高い。しかしながら、バイアス電圧が、点Bに相当する電圧、すなわち、検出感度が最大となる電圧を超えると、RTDの検出感度は急激に低くなる。そのため、RTDは、点Bに相当する電圧よりも大きいバイアス電圧が印加されている状態では、テラヘルツ波を検出可能な電磁波検出素子として機能しない。
【0023】
以上のとおりであるから、RTDを電磁波検出素子として機能させるためには、印加されるバイアス電圧を点Aから点Bまでの範囲(図4のグラフにおける、検出動作範囲を参照)とする必要がある。この場合、点Bに相当するバイアス電圧をRTDに印加すれば、電磁波検出素子としてのRTDによる電磁波の検出感度を最大感度にすることができる。ただし、本実施形態では、点Aよりも大きく且つ点Bよりも小さい範囲であって点Aよりも点Bに近い範囲(図4のグラフにおける点Dから点Eまでの範囲参照)を良好動作範囲とし、この範囲の電圧の中央値がバイアス電圧に設定される。このようにした理由は、電磁波の検出感度と、電磁波の検出動作の安定性とのバランスを図るためである。
【0024】
以上が、RTDの電気的特性についての説明である。
【0025】
次に、本実施形態の反射板27について図1及び図2を参照しながら説明する。
本実施形態の反射板27は、図1に示されるように、X方向において、ビームスプリッタ23と、対物レンズ24との間に配置されている。別言すれば、反射板27は、X方向において、発生部21と対物レンズ24との間に配置されている。そして、反射板27は、発生部21の電磁波発生部21Aが発生させる電磁波Wのうちの一部の電磁波Wを検出部26に導く機能を有する。具体的には、反射板27は、電磁波発生部21AがX方向に沿って発生部21側から対物レンズ24側に進行し自身に到達した電磁波WをX方向に沿って対物レンズ24側から発生部21側に反射させるようになっている。そして、反射板27から反射した電磁波Wは、ビームスプリッタ23によりその進行方向をZ方向のビームスプリッタ23側から検出部26側に反射されて、検出部26に入射されるようになっている。以上のとおりであるから、反射板27により反射されて検出部26に入射する電磁波Wは、対物レンズ24に入射することなく、すなわち、対象物MOから反射することなく、検出部26に入射する。
【0026】
反射板27の形状は、一例として、円盤とされている(図1及び図2参照)。反射板27は、図2に示されるように、X方向から見ると、対物レンズ24の軸に自身の軸を一致させた状態で配置されている。また、図2に示されるように、X方向から見た対物レンズ24の軸と、反射板27の軸とは、光軸Oと一致している。別の見方をすると、本実施形態の反射板27は、X方向から見て、対物レンズ24に入射する電磁波Wの光軸Oと重なって配置されている。以上より、本実施形態の反射板27は、X方向から見ると、円形とされ、且つ、光軸Oに対し対称形状(光軸Oを点とする点対称)とされている。
なお、前述のとおり、本実施形態では、反射板27の軸と光軸Oとは一致しているとしたが、後述する第2変形例(図6B参照)のようにずれていてもよい。ただし、ずれ量が小さいほど、後述する第3の効果を奏し易いといえる。
【0027】
ここで、図2における破線BL内の領域RAは、発生部21から対物レンズ24側に向けて進行する電磁波Wの範囲を示している。別の見方をすれば、破線BL内の領域RAは、反射板27がないと仮定した場合の対物レンズ24における電磁波Wが入射する領域RA(対物レンズ24における電磁波Wの入射面積に相当する領域)を示している。そして、X方向から見た、対物レンズ24における電磁波Wの入射面積に対する反射板27の面積の比率は、一例として15%に設定されている。なお、当該比率は、後述する理由により、一例として5%以上50%以下の範囲に設定されていることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態の反射板27は、一例として、アルミニウム合金、ステンレスその他の金属で構成されている。そのため、反射板27における発生部21側を向く面271は、金属面とされている。
【0029】
(制御部、バイアス電圧生成部、信号増幅部及びバイアス・ティ回路部)
次に、制御部30、バイアス電圧生成部40、信号増幅部50及びバイアス・ティ回路部60の具体的な構成について図1を参照しながら説明する。
【0030】
バイアス電圧生成部40は、検出部26の電磁波検出部26Aに印加されるバイアス電圧を生成する機能を有する。バイアス電圧生成部40と、電磁波検出部26Aとは、バイアス・ティ回路部60を介して、互いに電気的に接続されている。また、信号増幅部50と、電磁波検出部26Aとも、バイアス・ティ回路部60を介して、互いに電気的に接続されている。
【0031】
ここで、電磁波検出部26Aに印加されるバイアス電圧は直流電圧とされている。これに対して、電磁波検出部26Aから出力される受信信号は交流信号(電圧)とされている。電磁波検出部26Aとバイアス・ティ回路部60との間では、バイアス電圧に起因する直流成分と、受信信号に起因する交流成分とが合成されるようになっている。バイアス・ティ回路部60では、受信信号に起因する交流成分のみが抜き出され、この抜き出された交流成分が受信信号として信号増幅部50に入力されるようになっている。
【0032】
以上が、本実施形態の電磁波検出システムの機能及び構成についての説明である。
【0033】
<第1実施形態の電磁波検出システムによる対象物の測定動作>
次に、本実施形態の電磁波検出システム10による対象物MOの測定動作について図1を参照しながら説明する。
最初に、測定者は、対象物MOを定められた測定位置にセットする。次いで、測定者が電磁波検出システム10の動作スイッチ(図示省略)をオンにすると、制御部30は、制御部30内の記憶部32に記憶されている制御プログラムCPに従い、電磁波送受信部20、バイアス電圧生成部40、信号増幅部50及びバイアス・ティ回路部60の制御を開始する。そして、制御開始後の電磁波検出システム10は、以下のように作動する。
【0034】
まず、制御部30は、バイアス電圧生成部40を制御して、電磁波発生部21A及び電磁波検出部26Aのそれぞれに印加されるバイアス電圧を生成する。その結果、電磁波発生部21Aは、一定の周波数で変調された電磁波W(この場合はテラヘルツ波)を出射する。発生部21から出射された電磁波Wは、コリメートレンズ22、ビームスプリッタ23及び対物レンズ24を介して、対象物MOに照射される。対象物MOにより反射された電磁波は、対物レンズ24、ビームスプリッタ23及び集光レンズ25を介して、検出部26に入射する。その結果、検出部26の電磁波検出部26Aは、対象物MOが反射した電磁波Wを検出する。電磁波検出部26Aは、検出した電磁波Wに応じた受信信号を信号増幅部50に出力する。信号増幅部50は、電磁波検出部26Aから受信した受信信号を増幅して、制御部30に出力する。そして、制御部30は、信号増幅部50から受信した受信信号に基づいてマッピングした像を生成し、対象物MOの形状等を解析する。その結果、対象物MOの形状等が測定されて、本実施形態の電磁波検出システム10による測定動作が終了する。
【0035】
以上が、本実施形態の電磁波検出システム10による測定動作についての説明である。
【0036】
<第1実施形態の電磁波検出システムによる検出部に印加するバイアス電圧の設定動作>
次に、本実施形態の電磁波検出システム10による検出部26に印加するバイアス電圧の設定動作について主に図1及び図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態の電磁波検出部26Aに印加するバイアス電圧の設定動作のフロー図である。なお、本実施形態のバイアス電圧の決定動作は、一例として、対象物MOの測定動作を行っている期間以外の期間に行われる。そのため、対象物MOは想定位置に配置されていない。
【0037】
まず、制御部30は、バイアス電圧生成部40を用いて、発生部21にバイアス電圧を印加し、発生部21から電磁波Wを出射させる(図1参照)。これに伴い、発生部21から出射した電磁波Wは、コリメートレンズ22、ビームスプリッタ23を介して、対物レンズ24及び反射板27に照射される。そして、反射板27で反射した電磁波Wは、ビームスプリッタ23及び集光レンズ25を介して、検出部26に入射する。すなわち、反射板27は、発生部21が発生させる電磁波Wのうちの一部の電磁波Wが検出部26に導かれるように、一部の電磁波Wを反射させる。
【0038】
次いで、制御部30は、電磁波検出部26Aに印加されるバイアス電圧を初期化するように、バイアス電圧生成部40を制御する(ステップS101)。
【0039】
次いで、制御部30は、電磁波検出部26Aに印加されるバイアス電圧を、現在値から所定値ΔV1だけ増加するように、バイアス電圧生成部40を制御する(ステップS102)。この場合、制御部30は、電磁波検出部26Aから出力された受信信号を、バイアス・ティ回路部60及び信号増幅部50を介して受信し、受信信号の信号振幅を検出する(ステップS103)。
【0040】
次いで、制御部30は、前回検出された信号振幅と今回検出された信号振幅とを比較して、信号振幅が小さくなったか否かを判定する(ステップS104)。信号振幅は、電磁波検出部26Aの検出感度に相当する。ここで、図4のグラフに示されるように、バイアス電圧を、低電圧側から高電圧側へ変化させた場合、検出感度が最大となる電圧(点Bでの電圧)を超えるまでは検出感度は単調に増加し、検出感度が最大となる電圧を超えると検出感度は急激に減少する。
【0041】
次いで、制御部30は、信号振幅が小さくなったと判定した場合(ステップS104のYes、すなわち肯定判断)、バイアス電圧が現在値から所定値ΔV2(>ΔV1)分小さくなるように、バイアス電圧生成部40を制御する(ステップS105)。その結果、制御部30は、ステップS105で求めた電圧を、電磁波検出部26Aに印加されるバイアス電圧として決定する。なお、制御部30が信号振幅が小さくなっていないと判定した場合(ステップS104のNo、すなわち否定判断)は、再度ステップS102が実行される。
以上のようにして、検出部26(電磁波検出部26A)に印加されるバイアス電圧が設定されて、本動作が終了する。なお、以上のとおりであるから、本実施形態の制御部30は、発生部21が発生させる電磁波Wのうち反射板27に反射される一部の電磁波Wの検出部26による検出結果に基づいて、バイアス電圧の設定を行う(制御する)といえる。
【0042】
以上が、本実施形態の電磁波検出システム10による検出部26に印加するバイアス電圧の設定動作についての説明である。
【0043】
<第1実施形態の効果>
次に、本実施形態の効果(第1~第4の効果)について図面を参照しながら説明する。
【0044】
〔第1の効果〕
第1の効果は、本実施形態の電磁波検出システム10が、一部の電磁波を検出部26に導く反射板27を備えたうえで、制御部30が反射板27に反射される一部の電磁波Wの検出部26による検出結果に基づいてバイアス電圧の設定を行うことの効果である。
例えば、反射板27がなくても、発生部21が発生させる電磁波Wを対象物MOに照射させ、対象物MOが反射した電磁波Wを検出部26に検出させることで、検出部26のバイアス電圧の設定動作を行うことは可能である。しかしながら、上記のような形態の場合、対象物MOがなければ、検出部26のバイアス電圧の設定動作を行うことができない。
これに対して、本実施形態の電磁波検出システム10は、発生部21と対物レンズ24との間に配置され、発生部21が発生させる電磁波Wの一部を対物レンズ24に入射させることなく検出部26に導かれるように、反射させる反射板27を備えている(図1参照)。
したがって、本実施形態の電磁波検出システム10は、対象物MOがなくても検出部26に印加するバイアス電圧を設定することができる。すなわち、本実施形態は、対象物MOがなくても検出部26に印加するバイアス電圧の制御を可能にする。
【0045】
〔第2の効果〕
第2の効果は、反射板27が発生部21と対物レンズ24との間に配置されていることの効果である。
本実施形態の場合、図1に示されるように、発生部21と対物レンズ24との間に反射板27が配置されている点で、第1の効果において比較した形態と構造が異なる。その結果、本実施形態は第1の効果を奏する。
したがって、本実施形態の電磁波検出システム10は、簡単な構成で(比較的低コストで)、第1の効果を奏する構成を実現できる。
【0046】
〔第3の効果〕
第3の効果は、X方向から見て、反射板27が光軸Oに対して対称形状に設定されていることの効果である。
一般に、対物レンズ21に照射される電磁波Wの強度分布は、光軸Oを中心としたガウス分布となっており、中心の強度が最も高い。そのため、反射板27の設置位置は光軸Oの中心、かつ形状が光軸Oに対して対称であることにより、最も効率良く電磁波Wの一部を反射させることができる。
仮に反射板27がX方向から見て光軸Oに対して非対称形状である場合(後述する図6Bの第2変形例の反射板27B及び図6Dの第4変形例の反射板27D参照)、所望の反射量を得るためには、反射板27がX方向から見て光軸Oに対して対称である場合と比べて、反射板27の面積を大きくしなければならない。
これに対して、本実施形態の反射板27は、X方向から見て、光軸Oに対して対称形状に設定されている(図2参照)。そのため、本実施形態の電磁波検出システム10では、反射板27の面積を必要最低限に抑えることができる。
したがって、本実施形態の電磁波検出システム10は、対象物MO測定動作時の電磁波Wの検出に悪影響を及ぼし難い。
【0047】
〔第4の効果〕
第4の効果は、対物レンズ24における電磁波Wの入射面積に対する反射板27の面積の比率の範囲が5%以上50%以下に設定されていることの効果である。
上記比率が5%未満の場合、反射板27から反射される電磁波Wの強度が小さすぎて、検出部26のバイアス電圧の設定を高精度に行うことが難しい。
また、上記比率が50%を超える場合、対物レンズ24に到達する電磁波Wの光量、すなわち、対物レンズ24から対象物MOに向けて出射される電磁波Wの光量が少なすぎて、対象物MOの測定を高精度で行うことが難しい。
以上の理由により、本実施形態の反射板27の上記比率(一例として15%)は、5%以上50%以下の範囲に設定されている。
以上のとおりであるから、本実施形態の電磁波検出システム10は、検出部26のバイアス電圧の設定を高精度で行うことを可能としつつ、対象物MOの測定を高精度で行うことを可能とする。
【0048】
〔第5の効果〕
第5の効果は、反射板27における発生部21側を向く面271が金属面とされていることの効果である。
本実施形態の場合、反射板27における発生部21側を向く面271が金属面とされているため(図2参照)、電磁波Wを反射し易い点で有効である。特に、本実施形態の場合のように、電磁波Wがテラヘルツ波である場合、テラヘルツ波は金属を透過しない(又は透過し難い)点からも、面271が金属面とされている点は有効である。
【0049】
以上が、第1実施形態の効果についての説明である。そして、以上が、第1実施形態についての説明である。
【0050】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の反射板27の変形例(第1~第6変形例)について図6A図6Eを参照しながら説明する。なお、各変形例の説明において、第1実施形態と同じ構成要素等については同じ名称、符号等を用いることにする。
【0051】
〔第1変形例〕
第1変形例の反射板27A(反射部及び導波部の他の一例)は、図6Aに示されるように、X方向から見て多角形(具体的には正六角形)とされている。本変形例における第1実施形態の反射板27(図2)と異なる点は以上である。
本変形例の反射板27Aを備えた電磁波検出システムによれば、第1実施形態のすべての効果を奏する。
いる場合、同じ符号を付すものとする。
【0052】
〔第2変形例〕
第2変形例の反射板27B(反射部及び導波部の他の一例)は、図6Bに示されるように、X方向から見て円形とされているが、その軸が光軸Oからオフセットしている。本変形例における第1実施形態の反射板27(図2)と異なる点は以上である。
本変形例の反射板27Bを備えた電磁波検出システムによれば、第1実施形態の第1、第2、第4及び第5の効果を奏する。
【0053】
〔第3変形例〕
第3変形例の反射板27C(反射部及び導波部の他の一例)は、図6Cに示されるように、X方向から見て円形のリング状とされている。本変形例における第1実施形態の反射板27(図2)と異なる点は以上である。
本変形例の反射板27Cを備えた電磁波検出システムによれば、第1実施形態の第1、第2、第4及び第5の効果を奏する。
なお、第1実施形態の反射板27は、X方向から見た破線BL内の領域RAにおける光軸Oを中心とする径方向の中心側に配置されている。これに対して、本変形例の反射板27Cは、領域RAにおける径方向の周縁側に配置されている。
【0054】
〔第4変形例〕
第4変形例の反射板27D(反射部及び導波部の他の一例)は、図6Dに示されるように、X方向から見て矩形(長方形)とされ、光軸Oに重ならない位置に配置されている。本変形例における第1実施形態の反射板27(図2)と異なる点は以上である。
本変形例の反射板27Dを備えた電磁波検出システムによれば、第1実施形態の第1、第2、第4及び第5の効果を奏する。
〔第5変形例〕
第5変形例の反射板27E(反射部及び導波部の他の一例)は、図6Eに示されるように、X方向から見て円形のリング状の部材が複数(一例として2個)に分割されたような形状とされている。本変形例における第1実施形態の反射板27(図2)と異なる点は以上である。
本変形例の反射板27Eを備えた電磁波検出システムによれば、第1実施形態の第1、第2、第4及び第5の効果を奏する。
【0055】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態について図7を参照しながら説明する。本実施形態については、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成要素等については同じ名称、符号等を用いることにする。
【0056】
本実施形態の電磁波検出システム10Aは、反射板27に換えて導光路部28(導波部の他の一例)を備えている。導光路部28は、図7に示されるように、X方向における発生部21と対物レンズ24との間に配置されている。また、導光路部28は、発生部21の電磁波発生部21Aが発生させた電磁波Wのうちの一部の電磁波Wを検出部26に直接的に導く機能を有する。以上が、本実施形態における第1実施形態と異なる点である。
【0057】
第1実施形態の場合、前述のとおり、検出部26に印加されるバイアス電圧の設定動作は、反射板27から反射した電磁波Wを用いて行われる(図1参照)。
これに対して、本実施形態の場合、検出部26に印加されるバイアス電圧の設定動作は、発生部21が発生させた電磁波Wのうち導光路部28が直接検出部26に導いた一部の電磁波Wを用いて行われる。
【0058】
本実施形態の効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0059】
以上のとおり、本発明について第1実施形態及びその変形例並びに第2実施形態を一例として説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、下記のような形態(変形例)も含まれる。
【0060】
例えば、第1実施形態では、発生部の一例が、電磁波発生部21Aと、ホーンアンテナ21Bとを有する発生部21であるとして説明した。しかしながら、発生部21にコリメートレンズ22を組み合せた構成を、発生部の一例と捉えてもよい。
【0061】
また、第1実施形態では、導波部の一例が、反射板27であるとして説明した。しかしながら、反射板27にビームスプリッタ23を組み合せた構成を、導波部の一例と捉えてもよい。この場合、導波部の一例である、反射板27とビームスプリッタ23との組合せは、反射部の一例である反射板27を有するといえる。
【0062】
また、第1実施形態では、対物レンズ24における電磁波Wの入射面積に対する反射板27の面積の比率の範囲が5%以上50%以下に設定されているとして説明した。そして、第1実施形態の第4の効果の説明では、当該比率が5%未満である場合と50%を超える場合は好ましくないとした。しかしながら、当該比率が5%未満である場合と50%を超える形態であっても、第1の効果を奏する。したがって、当該比率が5%未満である場合と50%を超える形態であっても、本発明の技術的範囲に属する形態といえる。
【0063】
また、第1実施形態の説明では、本実施形態のバイアス電圧の決定動作は、一例として、対象物MOの測定動作を行っている期間以外の期間に行われるとして説明した。しかしながら、本実施形態のバイアス電圧の設定動作を、本実施形態の対象物MOの測定動作と並行して行ってもよい。この場合、設定されたバイアス電圧を測定動作時に変更するようにしてもよい。
【0064】
以下、参考形態の例を付記する。
1.
電磁波を発生させる発生部と、
前記発生部から離れて配置され、前記発生部が発生させた電磁波を対象物に向けて出射する出射部と、
前記対象物で反射した電磁波を検出する検出部と、
前記検出部に印加されるバイアス電圧を生成する生成部と、
前記発生部と前記出射部との間に配置され、前記発生部が発生させる電磁波のうちの一部の電磁波を前記検出部に導く導波部と、
前記検出部による前記一部の電磁波の検出結果に基づいて、前記バイアス電圧を制御する制御部と、
を備える電磁波検出システム。
2.
前記導波部は、前記一部の電磁波が前記検出部に導かれるように、前記一部の電磁波を反射させる反射部を有する、
1.に記載の電磁波検出システム。
3.
前記反射部は、前記発生部と前記出射部とが並ぶ方向から見て、前記出射部に入射する電磁波の光軸に対し対称形状とされている、
2.に記載の電磁波検出システム。
4.
前記反射部は、前記発生部と前記出射部とが並ぶ方向から見て、前記出射部に入射する電磁波の光軸と重なって配置されている、
2.又は3.に記載の電磁波検出システム。
5.
前記反射部は、前記発生部と前記出射部とが並ぶ方向から見て、円形又は正多角形とされている、
2.~4.のいずれか1つに記載の電磁波検出システム。
6.
前記発生部と前記出射部とが並ぶ方向から見た、前記出射部における電磁波の入射面積に対する前記反射部の面積の比率は、5%以上50%以下とされている、
1.~5.のいずれか1つに記載の電磁波検出システム。
7.
前記反射部における前記発生部側に向く面は、金属面とされている、
2.~6.のいずれか1つに記載の電磁波検出システム。
8.
前記発生部は、共鳴トンネルダイオードとされている、
1.~7.のいずれか1つに記載の電磁波検出システム。
【0065】
この出願は、2018年10月30日に出願された日本出願特願2018-203597号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0066】
10 電磁波検出システム
10A 電磁波検出システム
20 電磁波送受信部
21 発生部
21A 電磁波発生部
21B ホーンアンテナ
22 コリメートレンズ
23 ビームスプリッタ
24 対物レンズ(出射部の一例)
25 集光レンズ
26 検出部
26A 電磁波検出部
26B ホーンアンテナ
27 反射板(反射部の一例、導波部の一例)
271 反射板における発生部側を向く面(金属面の一例)
27A 反射板(反射部及び導波部の他の一例)
27B 反射板(反射部及び導波部の他の一例)
27C 反射板(反射部及び導波部の他の一例)
27D 反射板(反射部及び導波部の他の一例)
27E 反射板(反射部及び導波部の他の一例)
28 導光路部(導波部の他の一例)
30 制御部
32 記憶部
40 バイアス電圧生成部
50 信号増幅部
60 バイアス・ティ回路部
CP 制御プログラム
MO 対象物
O 光軸
RA 対物レンズにおける電磁波が入射する領域
W 電磁波
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7