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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116209
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】移送システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20240820BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20240820BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B01D21/18 K
B01D21/26
B01D21/24 G
B01D21/24 M
B01D21/24 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090410
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2020059615の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安価な移送システムを提供する。
【解決手段】汚水に混入している砂が沈降して底部1aに堆積する沈砂池1に設けられた移送システム6であって、底部1aよりも上方に配置されて集砂用液を貯留するタンク62と、タンク62から沈砂池1内まで延在した第1給水管63と、沈砂池1内に設置された吐出口632とを備え、吐出口632は、第1給水管63を通って流下してきた集砂用液を、沈砂池1から汚水を排水した状態で吐出し、底部1aに堆積した砂を移送するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に混入している混入物が沈降して底部に堆積する池に設けられた移送システムであって、
前記底部よりも上方に配置されて集砂用液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記池内まで延在した送液管と、
前記池内に設置された吐出口とを備え、
前記吐出口は、前記送液管を通って流下してきた前記集砂用液を、前記池から前記液体を排液した状態で吐出し、前記底部に堆積した混入物を移送するものであることを特徴とする移送システム。
【請求項2】
前記送液管は、前記タンクの下面に接続されたものであることを特徴とする請求項1記載の移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に混入している混入物が沈降して底部に堆積する池に設けられた移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設には、沈砂池や沈殿池等の池が配置されている。沈砂池は、下水または雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に混入している砂を沈降させ、底面に堆積した砂を集砂ピットまで移送し、集砂ピットに集まった砂を揚砂ポンプによって除去するものである。また、沈殿池は、沈砂池で砂が除去された汚水を受入れ、受け入れた汚水に混入している汚泥を沈降させ、底面に堆積した汚泥を汚泥ピットまで移送し、汚泥ピットに集まった汚泥を汚泥ポンプによって除去するものである。以下、汚水に混入している砂や汚泥等を混入物と称することがある。池の底面に堆積した混入物を移送する移送システムとして、スクリューコンベアやかき寄せ装置などの機械的な装置を用いるものがある。しかし、機械的な装置を用いるものは、混入物との摩擦で装置が摩耗したり、汚水によって装置が腐食することがあるため、近年では水流で混入物を移送するシステムが開発されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の移送システムでは、吐出口から空間形成部材によって形成された空間内に液体を吐出することで空間内に水流を発生させ、池の底面に堆積した混入物を、その空間内に吸い込みつつ水流によってピットまで移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-165701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された移送システムでは、池に形成されたポンプ井に移送システム用のポンプを配置し、その移送システム用のポンプによってポンプ井の汚水を吸い上げて吐出口から吐出する液体として使用している。このため、移送システムが高価になってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、安価な移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の移送システムは、
液体に混入している混入物が沈降して底部に堆積する池に設けられた移送システムであって、
前記底部よりも上方に配置されて集砂用液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記池内まで延在した送液管と、
前記池内に設置された吐出口とを備え、
前記吐出口は、前記送液管を通って流下してきた前記集砂用液を、前記池から前記液体を排液した状態で吐出し、前記底部に堆積した混入物を移送するものであることを特徴とする。
【0007】
前記送液管は、前記タンクの下面に接続されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価な移送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に相当する移送システムが配置された沈砂池を上方から見た平面図である。
図2図1に示す沈砂池のA-A断面図である。
図3】(a)は、図1に示した容器の平面図であり、(b)は、同図(a)におけるB-B断面図である。
図4図1に示した搬出装置の下側部分と容器と貯留槽とを示す正面図である。
図5図1に示した搬出装置の下側部分と容器と貯留槽とを示す右側面図である。
図6図1に示した移送システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、本発明の移送システムを沈砂池に設けた例を用いる。沈砂池は、下水処理施設の上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて取り除くものである。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に相当する移送システムが配置された沈砂池を上方から見た平面図である。また、図2は、図1に示す沈砂池のA-A断面図である。
【0012】
図1に示すように、沈砂池1は、底部傾斜面2と、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5と、移送システム6とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図1に示す沈砂池1は、図の右側から汚水を受け入れる。この汚水は、液体の一例に相当する。受け入れた汚水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図1および図2に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈砂池の長手方向が汚水の流れの方向になり、図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。また、図1および図2における左方向が移送システム6による砂の移送方向になる。
【0013】
底部傾斜面2とトラフ3は、沈砂池1上流側の底部1a(図2参照)に形成されている。底部傾斜面2とトラフ3は、集砂ピット4よりも上流側に配置されている。トラフ3は、沈砂池1の幅方向中央に設けられ、砂の移送方向に沿って延在している。この砂の移送方向は、沈砂池1が受け入れた汚水の流れ方向と一致している。トラフ3は、上方が開放された断面が3/4円弧の断面形状をしている。ただし、トラフ3の断面形状は、U字状やV字状等であってもよい。本実施形態のトラフ3の全長は20mである。トラフ3の下流端は集砂ピット4に接続している。底部傾斜面2は、トラフ3の幅方向両側にトラフ3につながるように形成されている。沈砂池1に流れ込んだ汚水に混入している砂は、沈砂池1の上流側部分をゆっくり流れていく間に底部1aに向かって沈降する。沈砂池1の底部1aに向かって沈降してきた砂は、底部傾斜面2を流れ落ちて或いは直接トラフ3によって画定された溝に堆積する。トラフ3によって画定された溝に堆積した砂は、吐出口632から吐出される水の流れによって集砂ピット4まで移送される。
【0014】
集砂ピット4は、沈砂池1下流側の底部1a(図2参照)に設けられている。この集砂ピット4には、沈砂池1の底部1aに沈降した砂が集められる。この砂は混入物の一例に相当し、集砂ピット4は集積部の一例に相当する。集砂ピット4の内部には、攪拌ノズル651と揚砂ポンプ61が設けられている。攪拌ノズル651は、集砂ピット4の底部における各角部近傍に合計で4つ配置されている。攪拌ノズル651は、集砂ピット4の内部にある砂を撹拌するためのものである。揚砂ポンプ61を駆動する前に攪拌ノズル651の先端から流体を吐出することで、集砂ピット4の内部にある砂を攪拌することができる。揚砂ポンプ61は、集砂ピット4の底近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1よりも上方に配置された分離装置7に汲み上げるものである。揚砂ポンプ61には揚砂管611の一端が接続されている。揚砂ポンプ61によって吸引された砂は、この揚砂管611を通して分離装置7に汲み上げられる。なお、揚砂ポンプ61は、砂とともに汚水も汲み上げる。以下、揚砂ポンプ61によって汲み上げられた砂と汚水をあわせて砂混入水と称する。
【0015】
ポンプ井5には、砂が取り除かれた汚水が貯留される。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が配置されている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に排出するものである。揚水ポンプ51には揚水管511が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管511を通して不図示の沈殿池に送られる。図2には、沈砂池1を流れる汚水によって形成される池水面WL1も示されている。なお、この池水面WL1の位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0016】
移送システム6は、上述した揚砂ポンプ61および揚砂管611と、タンク62と、第1給水管63と、空間形成部材64と、第2給水管65と、分離装置7とを備えている。分離装置7は、容器71と、貯留槽72と、搬出装置73と、分離管74とを備えている。分離装置7は、砂混入水に含まれる汚水と砂を分離するものである。分離装置7は、地上であって沈砂池1の近傍に配置されている。容器71の下側部分は貯留槽72の槽内に配置され、容器71の上側部分は貯留槽72よりも上方に突出している。容器71は、揚砂管611の他端が接続された、所謂液体サイクロンである。容器71には、揚砂ポンプ61が汲み上げた砂混入水が流入する。容器71は、流入した砂混入水から砂を分離し、汚水を分離管74に送り出すものである。また、容器71は、砂の濃度が高まった濃縮水を貯留槽72に排出する。これらの容器71と貯留槽72については後に詳述する。容器71から直接分離管74に送出される汚水は、後述する貯留槽72から吸い上げられる上澄み液(汚水)とともに分離管74を通してタンク62に送られる。以下、容器71から直接分離管74に送出される汚水および貯留槽72から吸い上げられて分離管74に送出される上澄み液を総称して分離水と称する。また、貯留槽72に貯留されている砂と上澄み液を総称して貯留水と称する。なお、貯留水には夾雑物も混入していることがあるが、本実施形態では、この夾雑物が混入した貯留水を単に貯留水と称し、夾雑物が混入した上澄み液を単に上澄み液と称する場合がある。分離管74は、一端が容器71の容器蓋7112に接続され、他端がタンク62の上端からタンク62内に入り込んでいる。
【0017】
搬出装置73は、貯留槽72の下端に接続され、斜め上方に向かって延在している。この搬出装置73は、スクリューコンベア731と投下口732とを有する。スクリューコンベア731は、搬出装置73内に配置されている。スクリューコンベア731の軸方向は、搬出装置73の延在方向に一致している。搬出装置73の上端部分には、モータ733と駆動伝達機構734が固定されている。このモータ733を駆動することで、駆動伝達機構734を介してスクリューコンベア731が回転する。なお、駆動伝達機構734は、モータ733の駆動軸とスクリューコンベア731それぞれに固定されたスプロケットと、各スプロケットに巻き掛けられたチェーンとから構成されているが、歯車などの他の伝動用機械要素で構成されていてもよい。また、駆動伝達機構734を設けずに、モータ733とスクリューコンベア731を直接連結してもよい。貯留槽72内に排出された濃縮水に含まれていた砂は、貯留槽72内を沈降して貯留槽72に接続された搬出装置73内に流れ込み、スクリューコンベア731が回転することで、水切りされながら斜め上方に搬送される。投下口732は、スクリューコンベア731の上端近傍に配置されている。スクリューコンベア731によって水切りされた砂は、投下口732から下方に向けて投下される。すなわち、搬出装置73は、貯留槽72に貯留されている貯留水に含まれている砂を貯留槽72の外部に搬出するものである。なお、スクリューコンベア731の代わりに、ベルトコンベアなどの他の搬送機構を用いてもよい。
【0018】
図3(a)は、図1に示した容器の平面図であり、図3(b)は、同図(a)におけるB-B断面図である。図3(a)および図3(b)には、揚砂管611の一部も示されている。
【0019】
図3(b)に示すように、容器71は、流体導入部711と、絞り部712と、排出部713と、流体流入管714と、分離管74とを備えている。流体導入部711は、容器71の上側部分に設けられている。絞り部712は、その上端が流体導入部711の下端に接続している。また、絞り部712の下端には、排出部713の上端が接続されている。容器71の内周面71aは、流体導入部711の内周面711aと絞り部712の内周面712aと排出部713の内周面713aによって構成されている。この容器71の内周面71aによって容器内空間X1が画定されている。
【0020】
流体導入部711は、内周面711aが円筒状をした円筒部7111と、円筒部7111の上端を閉塞する容器蓋7112とを備えている。円筒部7111は、板厚3.2mmの鋼板を内径500mmの円筒状に加工したものである。また、容器蓋7112は、板厚6.0mmの鋼板を外径が586mmで内径が216mmの環状に加工したものである。なお、円筒部7111および容器蓋7112の形状、材質、および厚みは、容器内空間X1の大きさ等に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
円筒部7111の上側部分には、流体流入管714が連結されている。図1に示した揚砂ポンプ61と流体流入管714とは揚砂管611を介して接続されている。揚砂管611と流体流入管714とは、接続端に設けられたフランジどうしがボルトで締結されることで着脱可能に結合されている。流体流入管714は内径100mmの管である。この流体流入管714と円筒部7111との連結部には、流入口7141が形成されている。図3(a)および図3(b)に右向きの直線の矢印で示すように、揚砂ポンプ61が吸い上げた砂混入水は、円筒部7111の内周面711aの接線方向から流入口7141を通って容器内空間X1に導入される。これにより、容器内空間X1には砂混入水による旋回流が形成される。
【0022】
絞り部712は、流入口7141と排出部713の間に配置されている。この絞り部712では、容器内空間X1の断面積が排出部713に向かうに従って減少する。換言すれば、絞り部712は、円筒部7111から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状の内周面712aを有している。この絞り部712は、板厚3.2mmの鋼板を円錐状に加工したものであり、上端は内径500mm、下端は内径100mmに形成されている。なお、絞り部712の材質や厚みは、容器内空間X1の大きさや絞り量等に応じて適宜選択すればよい。また、絞り部712は、円筒部7111から離れるにつれて段階的に容器内空間X1の断面積が減少するように形成されていてもよい。すなわち、絞り部712は、容器内空間X1の断面積が流入口7141側よりも排出口7131側の方が小さいものであればよい。絞り部712の下端の断面積は、排出口7131の開口面積と等しい。この実施形態では、絞り部712の下端の断面積、すなわち排出口7131の開口面積(断面積)を流入口7141の開口面積(断面積)と一致させているが、排出口7131の開口面積は、流入口7141の開口面積以上であってもよく、流入口7141の開口面積未満であってもよい。ただし、排出口7131の開口面積を小さくしすぎると、容器71における圧力損失が増大するので、排出口7131の開口面積は、流入口7141の開口面積以上であることが好ましい。加えて、排出口7131の開口面積は、小さくしすぎても大きくしすぎても後述する貯留槽72から容器71への吸込み作用が低下するため、流入口7141の開口面積の50%以上150%以下にすることが望ましい。絞り部712の上端には、容器71の外側に向かって突出した容器フランジ7121が形成されている。
【0023】
排出部713は、絞り部712の、流体導入部711が接続された側とは反対側に接続している。すなわち、排出部713は、絞り部712の下端に接続している。排出部713は、下端にフランジ7132が形成された円筒状をしている。この排出部713の下端の開口が排出口7131になる。なお、排出部713は省略してもよい。省略した場合、絞り部712の下端の開口部が排出口になる。フランジ7132は、外径が200mmの環状をしている。
【0024】
分離管74は、内径200mmの管である。分離管74の一端は、溶接によって容器蓋7112に水密状態で結合している。なお、分離管74の一端は、容器内空間X1内に突出していてもよい。この分離管74の一端の開口が送出口741になる。この送出口741から送り出された分離水は、図1に示したタンク62に分離管74を通して送られる。図3(a)および図3(b)には、分離水の流れる方向が左向きの直線の矢印で示されている。送出口741の開口面積は、排出口7131の開口面積以上であることが好ましい。こうすることで、送出口741から送り出される分離水の量を増加させ、容器71における圧力損失を低減できる。また、送出口741の開口面積は、流入口7141の開口面積以上の面積にすることが好ましい。こうすることで、流入口7141から流入する砂混入水よりも多くの量の流体を送出口741から送り出すことができる。この実施形態における送出口741の開口面積は、排出口7131および流入口7141の開口面積の4倍である。
【0025】
図4は、図1に示した搬出装置の下側部分と容器と貯留槽とを示す正面図である。また、図5は、図1に示した搬出装置の下側部分と容器と貯留槽とを示す右側面図である。
【0026】
図4に示すように、貯留槽72は、容器71よりも外側に配置されて排出口7131よりも上方に延在した側壁721と、側壁721の上端を閉塞する槽蓋722とを備えている。この実施形態では、側壁721は、排出口7131よりも下方から、絞り部712と流体導入部711との接続部分の高さまで延在している。槽蓋722の平面視における中央部には、容器71の流体導入部711の外周と同一径の孔が形成されている。容器71は、絞り部712の上端部分がその孔に挿入された状態で、容器フランジ7121が槽蓋722に溶接されることで貯留槽72に結合している。槽蓋722には、脱臭管7221が設けられている。貯留槽72は、脚723で支えられている。脚723は、平面視で貯留槽72の四隅にそれぞれ配置されている。図4では、脚723は中間部か省略されて上端部分と下端部分のみが示されている。この脚723の下端部分が接地されることで、貯留槽72は地面よりも上方の所定の高さ位置に配置されている。なお、搬出装置73の延在方向の中間部分にも搬出装置73を支持する支持部材が設けられているが、その支持部材は図示省略している。
【0027】
貯留槽72は、上側部分が平面視で略正方形の角筒に形成されている。図5に示すように、貯留槽72の下側部分には、槽傾斜面721aが形成されている。この槽傾斜面721aの下端は、搬出装置73に接続されている。また、図4に示すように、貯留槽72の下端は、搬出装置73の傾斜角度と同じ角度で斜め上方に向かって切り欠かれた形状をしている。容器71の排出口7131から排出された濃縮水に含まれていた砂は、槽傾斜面721aを滑り落ちて或いは直接貯留槽72の下端に接続された搬出装置73の下側部分に堆積する。上述したように、搬出装置73に堆積した砂は、スクリューコンベア731によって分離装置7の外部に搬出される。搬出装置73の下端には、点検時などに貯留槽72および搬出装置73内に残っている液体や砂を排出するための排出管735が設けられている。この排出管735には不図示の弁が設けられている。図4および図5には、排出口7131から排出された貯留水の上澄み液によって、排出口7131に対面した高さ位置に形成された槽水面WL2も示されている。
【0028】
図1に示すように、タンク62は、平面視で長方形をしたカーボンファイバー製の水槽である。このタンク62は、3000リットル以上の液体を貯留できる。なお、タンク62は、ステンレスなどの金属や樹脂で構成されてもよい。タンク62の上端は開放されているが、上端を閉塞する蓋を設けてもよい。蓋を設ける場合、蓋またはタンク62上端部分に空気の流入口を設けるか、タンク62と蓋の間に空気が通過可能な隙間を設けることが望ましい。上述したように、タンク62内には分離管74の他端が入り込んでいる。図2に示すように、分離管74の他端には、分離水をタンク62に放出する放出口742が形成されている。また、タンク62内には、処理水を供給する供給口91も配置されている。この処理水は、沈砂池1よりも後流にある曝気槽や最終沈殿池などで処理された水であり、最終沈殿池にあるポンプで吸い上げられ、不図示の弁が開放されることで処理水供給管9を通して供給される。供給口91を配置することで、揚砂ポンプ61を駆動しなくてもタンク62に浄水を供給できる。なお、処理水の代わりに上水道を流れる浄水を供給してもよい。浄水を用いる場合、処理水供給管9の代わりに水道管を用いてもよく、弁の代わりにタンク62の上部に蛇口を設置してもよい。すなわち、タンク62には、分離水、処理水、浄水、またはこれらの混合水が集砂用液として貯留される。なお、分離水は有機物などを含む汚水で構成されているため、長期間タンク62に貯留すると腐食してしまう。しかし、処理水または浄水を集砂用液として貯留することで、タンク62で長期間貯留しても集砂用液が腐食してしまうことを抑制できる。タンク62は、沈砂池1の最も高水位にあるときの池水面WL1よりも10m上方にタンク62の下面が位置するように不図示のタンク脚によって支持されている。タンク62の上端部分にはオーバーフロー管621が接続されている。オーバーフロー管621の先端は、沈砂池1内に配置されている。オーバーフロー管621は、タンク62から集砂用液が溢れ出ないように、タンク62の上端近傍まで集砂用液が供給されたときに、タンク62の上端近傍にある集砂用液を沈砂池1に戻すものである。また、タンク62内にはタンク内に貯留された集砂用液の水位を検出する水位センサ622が設けられている。
【0029】
第1給水管63は、タンク62の下面に接続されている。この第1給水管63は、送液管の一例に相当する。第1給水管63は、沈砂池1内まで延在している。この実施形態の第1給水管63は、沈砂池1の底部1a近傍まで延在し、底部1a近傍で先端部分が砂の移送方向である下流側に向かって折れ曲がっている。この折れ曲がった先端部分が集砂ノズルを形成している。第1給水管63には、第1電動弁631が設けられている。第1電動弁631を開放すると、タンク62に貯留された集砂用液は、第1給水管63を通して沈砂池1の底部1aに送り出される。すなわち、この集砂用液は、位置エネルギーによって第1給水管63内を流下する。第1給水管63の先端には吐出口632が形成されている。流下した集砂用液は、吐出口632から砂の移送方向に向かって吐出される。この吐出口632は、空間形成部材64によって画定された内部空間内に入り込んでいる。吐出口632は、直径80mmの第1給水管63の先端を、扁平につぶして形成された長孔形状のものである。吐出口632は、高さ方向がつぶれ幅方向に拡がった扁平な形状をしている。吐出口632の幅方向の開口長Wは120mmで、吐出口632の高さHは20mmである。吐出口632をこのような扁平な形状にすることで、真円の形状のものよりも、吐出される集砂用液の流速を高めることができる。
【0030】
吐出口632と空間形成部材64は、トラフ3によって画定された溝に配置されている。空間形成部材64は、トラフ3に沿って延在したものである。空間形成部材64の全長はトラフ3の全長とほぼ同じであるが、トラフ3に対し下流側にほんの少しずらして配置されているため、空間形成部材64の下流端は集砂ピット4に少し突出している。空間形成部材64の延在方向は、砂の移送方向でもある。この空間形成部材64は、ステンレス製の平板材を、断面が円弧状になるように成形したものである。ただし、空間形成部材64は、他の材質の板材を加工したものであってもよく、射出成形や押出成形して作製したものであってもよい。本実施形態の空間形成部材64は、内径156mmの円筒体の下方を切り欠いた形状のものであり、下部にトラフ3の底面とは隙間をあけてその底面に対向した開口が設けられている。空間形成部材64の径方向の中心位置は、トラフ3の径方向の中心位置とほぼ一致している。なお、空間形成部材64の断面形状は、下辺幅方向中央部が開口した矩形状等であってもよい。
【0031】
第2給水管65も、タンク62の下面に接続されている。第2給水管65の先端部分には上述した攪拌ノズル651が形成されている。第2給水管65には、第2電動弁652が設けられている。第2電動弁652を開放すると、タンク62に貯留された集砂用液は、第2給水管65を通して攪拌ノズル651側に送り出される。すなわち、タンク62に貯留されていた集砂用液は、位置エネルギーによって第2給水管65内を流下する。流下した集砂用液は、集砂ピット4の四隅近傍に配置された攪拌ノズル651の先端から集砂ピット4の幅方向中央側に向かって吐出される。これにより、集砂ピット4内にある砂が撹拌される。
【0032】
次に、この移送システム6の駆動方法と作用について説明する。図6は、図1に示した移送システムの動作を示すフローチャートである。
【0033】
移送システム6の動作は、不図示の制御装置によって制御されている。図1に示した沈砂池1の底面に堆積した砂がある程度の量になった所定の時期に、移送システム6は移送動作を行う。ここで所定の時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池1に流入した汚水の合計流量または沈砂池1から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。移送動作では、まず水位センサ622によってタンク62の水位が検出される(ステップS1)。タンク62の水位が所定水位以下である場合(ステップS1でNO)、所定水位になるまで処理水供給管9から処理水が供給される(ステップS2)。ここで所定水位とは、集砂ピット4内を2回撹拌できる量と、トラフ3によって画定された溝に堆積した砂を集砂ピット4まで移送できる量の集砂用液がタンク62内に貯留されている水位をいう。ただし、後述するように揚砂ポンプ61を駆動開始して暫くするとタンク62に分離水が供給され始めるので、所定水位は、集砂ピット4内を1回撹拌できる量が貯留されている水位より高ければよい。タンク62の水位が所定水位以上になったら(ステップS1でYES)、処理水の供給を停止し、第2電動弁652を開放する(ステップS3)。上述したように、第2電動弁652を開放すると、タンク62に貯留された集砂用液は、第2給水管65内を流下し、水圧によって攪拌ノズル651の先端から集砂ピット4の幅方向中央側に向かって吐出される。これによって、集砂ピット4内にある砂が撹拌され、集砂ピット4の幅方向両端部分に堆積している砂を揚砂ポンプ61に向けて移動させることができる。また、揚砂ポンプ61が砂没している場合には、砂を攪拌することで揚砂ポンプ61を砂没させている砂を舞い上がらせて揚砂ポンプ61周囲の砂の濃度を低下させることができる。これにより。揚砂ポンプ61の起動時に揚砂ポンプ61が目詰まりしてしまうことを抑制できる。第2電動弁652を開放してから第1所定時間経過したら(ステップS4でYES)、第2電動弁652を閉塞する(ステップS5)。この第1所定時間は、集砂ピット4内にある砂が撹拌されるのに十分な時間が設定される。以上説明したステップS3からステップS5は第1攪拌工程の一例に相当する。
【0034】
次に、搬出装置73の駆動を開始する(ステップS10)とともに第1電動弁631を開放する(ステップS21)。搬出装置73を駆動している間、搬出装置73の下側部分に堆積している砂は搬出装置73の搬出経路に沿って斜め上方に搬送されていく。スクリューコンベア731によって搬送されている砂は、搬出経路のうち槽水面WL2よりも高い後半部分で水切りされながら搬送される。そして、搬出装置73の搬出経路の上端部分に達した砂は、投下口732から下方に向けて投下される。搬出装置73の駆動を開始したら、次に揚砂ポンプ61の駆動が開始される。この駆動開始により、容器71への砂混入水の流入が開始される(ステップS11)。砂混入水は円筒部7111の内周面711aの接線方向から流入するので、容器内空間X1において、容器71の内周面71a近傍には砂混入水の旋回流が形成される。砂混入水に含まれている砂は、汚水よりも比重が大きいため遠心力により容器71の内周面71aに押し付けられつつ、その内周面71aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下していく。一方、容器71の径方向の中心部分には、砂混入水から砂が取り除かれた汚水が集まり上昇流が発生する。この上昇流により、中心部分に集まった汚水は容器71の上端にある送出口741から分離水として送出される。送出された分離水は、分離管74を通って分離管74他端の放出口742からタンク62内に放出される。
【0035】
容器内空間X1において、内周面71aに沿って旋回しながら徐々に下方に落下した砂は、ある程度の汚水とともに排出口7131から濃縮水として排出され始める(ステップS12)。濃縮水は、旋回流の遠心力によって排出口7131から放射方向に向かって放出される。図4および図5には、濃縮水の放出方向が曲線の矢印で示されている。濃縮水の排出が開始されたときに貯留槽72の槽内が空の状態であった場合、貯留槽72の槽水面WL2は徐々に上昇していく。また、貯留槽72の槽内に貯留された貯留水に含まれる砂は、自重により貯留槽72の底部に向かって沈降し、搬出装置73の下側部分に堆積していく。なお、堆積した砂の量が増加すると、搬出装置73の下側部分に入りきらない砂は貯留槽72の下側部分にも堆積していく。
【0036】
槽水面WL2が上昇し、図4および図5に示すように、槽水面WL2が排出口7131に対面する高さ位置に達すると(ステップS13でYES)、排出口7131に対面した部分にある貯留水の上澄み液(汚水)が、排出口7131に吸い込まれていく(ステップS14)。この排出口7131に吸い込まれる上澄み液は液体成分の一例に相当する。上澄み液は、容器71内の上昇流によって排出口7131の径方向の中心部分から吸い込まれる。図4および図5には、上澄み液の吸込み方向が直線の矢印で示されている。この上澄み液が排出口7131に吸い込まれる際に、排出口7131の周囲の空気も排出口7131に吸い込まれている。すなわち、排出口7131には、排出される濃縮水の量以上の量の流体(上澄み液と空気)が吸い込まれる。本実施形態の容器71には、排出口7131よりも大きい開口面積を有する送出口741が形成されているので、送出口741から大量の流体を送り出すことが可能に構成されている。その結果、排出口7131から流体を吸い込みやすくなっている。また、排出される濃縮水の量以上の量の流体を排出口7131から吸い込んでも、送出口741から送り出すことができる。排出口7131から上澄み液と空気を吸い込んでいる状態では、排出口7131から貯留槽72に排出される濃縮水の量と、排出口7131から容器内空間X1に吸い込んでいる上澄み液の量とがほぼ一致したバランス状態が形成されている。排出口7131に吸い込まれる空気の体積は、上澄み液の体積の1/5以下である。この実施形態では、排出口7131の周囲に水平方向に向かって拡がるフランジ7132が形成されているので、排出口7131よりも上方にある空気は排出口7131に吸い込まれにくくなっている。また、排出口7131近傍の槽水面WL2の波うちがフランジ7132によって抑制されている。これらにより、空気が排出口7131に吸い込まれにくく、空気に対して上澄み液が排出口7131に吸い込まれる比率が高められている。さらに、排出口7131から排出される濃縮水は、フランジ7132によって放射方向に整然と排出されやすくなる。その結果、排出口7131から排出された濃縮水に含まれていた砂が、排出口7131の径方向の中心部分から吸い込まれる上澄み液に混じってしまうことが抑制されている。なお、槽水面WL2が排出口7131に対面する高さ位置とは、槽水面WL2と排出口7131との距離が0mm以上20mm以下である高さに槽水面WL2が達した位置を指す。ここで、上述したように濃縮水は排出口7131から放射方向に向かって放出されるので、濃縮水に含まれている砂が、排出口7131の中心部分から吸い込まれてしまう可能性は低い。加えて、砂は比重が高く貯留槽72の下方に早期に沈降しやすい。このため、容器71内に強い上昇流が形成されて排出口7131に生じている吸込み力が強くても、容器71に吸い込まれる砂の量は極僅かな量に限定される。その極僅かな量の砂も、上澄み液と比較して比重が大きいので殆どが容器71内で上昇流から放射方向にはじきだされて旋回流にのみこまれ、再度排出口7131から貯留槽72に排出される。上述したように排出口7131からは空気も吸い込まれているので、容器71内の中央部分に生じている上昇流は、吸い込まれた空気が混ざった比重が小さい流体の流れになっている。従って、上昇流を主に構成している流体と砂との比重差がより大きくなり、比重の大きい砂はより放射方向にはじき出されやすい。
【0037】
なお、容器71に流入する砂混入水の量が2.0m3/分よりも少ない場合、排出口7131に吸い込まれる上澄み液の量が排出口7131から排出される濃縮水よりも少なくなり、排出口7131を超えて槽水面WL2が上昇することがある。しかし、槽水面WL2が排出口7131に達すると排出口7131が貯留水で閉塞されるため、排出口7131から排出される濃縮水の量は減少する。すなわち、絞り部712における容器内空間X1の断面積の減少による抵抗と排出口7131に加わる貯留水の水圧が相まって、排出口7131から濃縮水が排出されにくくなる。そして、槽水面WL2が上昇するにつれ、排出口7131に加わる貯留水の水圧が高まるため、排出口7131から排出される濃縮水の量は減少し、送出口741から送出される分離水の量は増加する。これらにより槽水面WL2はある程度の高さでとまし、その高さで維持される。また、本実施形態では、容器71の排出口7131の高さ位置よりも放出口742の高さ位置を低くしているので、タンク62に貯留される集砂用液の液面が槽水面WL2よりも低く、かつ分離管74が分離水で満たされているときにはサイフォンの原理により放出口742から流れ出ようとする作用が分離水に生じる。この作用によっても槽水面WL2の上昇が抑制され、さらに排出口7131から排出される濃縮液の量以上の量の上澄み液が排出口7131に吸い込まれて槽水面WL2が低下することもある。
【0038】
一方、上述のステップS21において第1電動弁631を開放することで、タンク62に貯留された集砂用液は、第1給水管63内を流下し、水圧によって吐出口632から砂の移送方向に向かって吐出される。これによって、空間形成部材64内に液体の流れが発生し、空間形成部材64の内と外とで圧力差が生じる。トラフ3によって画定された溝に堆積した砂は、空間形成部材64下側の開口から空間形成部材64の内部空間に吸い込まれる。さらに、その内部空間では、吸い込まれた砂が、液体の流れによって集砂ピット4側に向かって移動する。トラフ3によって画定された溝に堆積した砂は集砂ピット4まで移送され、集砂ピット4に集められる。第1電動弁631を開放してから第4所定時間経過したら(ステップS22でYES)、第1電動弁631を閉塞する(ステップS23)。この第4所定時間は、トラフ3によって画定された溝に堆積した砂を集砂ピット4まで移送するのに十分な時間が設定される。以上説明したステップS21からステップS23は集砂工程の一例に相当する。
【0039】
ステップS23で第1電動弁631を閉塞したら、すぐに第2電動弁652を開放する(ステップS24)。第2電動弁652を開放すると、タンク62に貯留された集砂用液は、第2給水管65内を流下し、水圧によって攪拌ノズル651の先端から集砂ピット4の幅方向中央側に向かって吐出される。これによって、集砂ピット4内にある砂が撹拌され、集砂ピット4の幅方向両端部分にある砂を揚砂ポンプ61に向けて移動させることができる。第2電動弁652を開放してから第5所定時間経過したら(ステップS25でYES)、第2電動弁652を閉塞する(ステップS26)。この第5所定時間は、集砂ピット4の幅方向両端部分にある砂を揚砂ポンプ61の近傍に移動するのに十分な時間が設定される。こうすることで、揚砂ポンプ61の駆動停止後に集砂ピット4内に残ってしまう砂を減らすことができる。以上説明したステップS24からステップS26は第2攪拌工程の一例に相当する。
【0040】
揚砂ポンプ61の駆動開始から第2所定時間経過したら(ステップS15でYES)、揚砂ポンプ61の駆動を停止する(ステップS16)。この第2所定時間は、第4所定時間と第5所定時間とを合計した時間に、さらに数十秒を加えた時間である。従って、揚砂ポンプ61が停止する少し前に、上述のステップS21からS26までの処理は完了している。揚砂ポンプ61を停止することで、容器71への砂混入水の流入、貯留槽72への濃縮水の排出、上澄み液の吸込み、および分離水の送出も停止する。この停止までの間、タンク62には分離水が供給されている。送出される分離水の量が多くオーバーフロー管621が接続されたタンク62の上端近傍まで集砂用液が達した場合、オーバーフロー管621を通して沈砂池1に集砂用液が流れ出る。以上説明したステップS11からステップS16が砂混入液を容器71に流入させる流入工程の一例に相当する。また、ステップS14からステップS16が排出口7131から貯留槽72に濃縮液を排出しつつ貯留槽72内の上澄み液を排出口7131から吸い込む排出吸込工程の一例に相当する。
【0041】
揚砂ポンプ61の駆動が停止してから第3所定時間が経過したら(ステップS17でYES)、搬出装置73の駆動を停止する(ステップS18)。以上説明したステップS10からステップS18は、砂を分離装置7の外部に搬出する搬出工程の一例に相当する。この第3所定時間は、排出口7131から排出された濃縮水に含まれていた砂が搬出装置73の下側部分に沈降する時間と搬出装置73の下側部分から投下口732まで砂を搬送する時間の合計時間である。なお、第3所定時間が経過したか否か判断することに代えて、搬出装置73の下側部分の砂の有無を検出する砂有無センサを搬出装置73に設け、その検出が発生したか否かを判断してもよい。以上で移送システム6の動作を修了する。上述した容器71に流入する砂混入水の量が2.0m3/分よりも少ない場合を除けば、搬出装置73の駆動中、槽水面WL2は、排出口7131よりも下方か排出口7131とほぼ一致する位置にあるので、搬出経路が短くても、水切りしつつ砂を搬送できる。搬出経路は斜め上方に向かって延在しているので、搬出経路を短くすることで搬出装置73の横幅と高さが短くなる。その結果、分離装置7を小型化できる。
【0042】
以上説明した移送システム6によれば、タンク62に貯留した集砂用液の水圧によって、その集砂用液を吐出口632から吐出しているので、吐出のためのポンプを省略でき、移送システム6を安価に構成できる。また、沈砂池1から汲み上げられた砂混入水から分離装置7によって砂と分離された分離水を集砂用液としてタンク62に貯留しているので、集砂用液を汲み上げるための電力を省略できる。また、砂混入水を集砂用液として用いた場合と異なり、砂が沈砂池1に戻されてしまうことを抑制できる。
【0043】
本発明は前述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本実施形態では、移送システム6を沈砂池1に適用する例を用いて説明したが、沈殿池に適用してもよい。また、本実施形態では、空間形成部材64によって画定された内部空間内に集砂用液を吐出することでトラフ3に堆積した砂を集砂ピット4に移送する例で説明したが、空間形成部材64を設けずに、砂に向かって集砂用液を吐出して水流で砂を押し込んで集砂ピット4に移送させてもよい。加えて、沈砂池1に汚水を溜めたまま集砂する沈砂池1に移送システム6を適用した例で説明したが、沈砂池1内の汚水を排水した状態で集砂する、いわゆる低圧集砂方式の沈砂池1に移送システム6を適用してもよい。低圧集砂方式の沈砂池1に適用する場合、沈砂池1を画定する側壁面に向けて集砂用液を吐出し、その側壁面に沿って集砂用液を流下させて底部1aにある砂を移送してもよい。この場合、吐出口632は、沈砂池1内であれば沈砂池1の上側部分に配置してもよい。低圧集砂方式に必要な吐出圧は、沈砂池1に汚水を溜めたまま砂に向かって集砂用液を吐出して水流で砂を押し込んで集砂ピット4に移送する高圧集砂方式の吐出圧に対して0.5%程度の格段に低い圧力で足りる。従って、本実施形態よりもタンク62を低い位置に設置してもよい。タンク62は、沈砂池1の底部1aよりも上方に配置されていればよく、例えば沈砂池1内に配置されていてもよい。さらに、本実施形態では、分離装置7で砂と分離した汚水を集砂用液としてタンク62に貯留したが、処理水供給管9から供給される処理水または浄水のみをタンク62に貯留する構成にしてもよい。またさらに、分離装置7を省略し、砂混入水を集砂用液としてタンク62に貯留し、貯留した砂混入水の上澄み液を吐出口632から吐出するように構成してもよい。この場合、タンク62の下端に搬出装置73を接続してもよい。
【0044】
以上説明した本発明の移送システムは、
液体に混入している混入物が沈降して底部に堆積する池に設けられた移送システムであって、
前記底部よりも上方に配置されて集砂用液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記池内まで延在した送液管と、
前記底部に沿って延在したものであって、内部空間を形成し、下部に該底部から離間した開口が設けられた空間形成部材と、
前記池内に設置された吐出口とを備え、
前記吐出口は、前記送液管を通って位置エネルギーによって流下してきた前記集砂用液を前記内部空間内に吐出するものであり、
前記開口は、前記底部に堆積した混入物を、前記吐出口から集砂用液が吐出されることで前記内部空間内に吸い込む吸込口として機能するものであり、
前記空間形成部材は、前記内部空間内に吸い込まれた混入物が、前記吐出口から集砂用液が吐出されることで集砂用液の吐出方向下流側に向かって移動する経路として機能するものであることを特徴とする。
【0045】
また、液体に混入している混入物が沈降して底部に堆積する池に設けられた移送システムであって、
前記底部よりも上方に配置されて集砂用液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記池内まで延在した送液管と、
前記池内に設置された吐出口とを備え、
前記吐出口は、前記送液管を通って流下してきた前記集砂用液を吐出し、前記底部に堆積した混入物を移送するものであることを特徴としてもよい。
【0046】
前記タンクに貯留された集砂用液を用いて前記底部に堆積した混入物を移送しているので、移送システム用のポンプが不要になり、移送システムを安価に構成できる。
【0047】
ここで、前記吐出口は、前記送液管を通って流下してきた前記集砂用液を、前記底部に堆積した混入物に向けて吐出するものであってもよいし、前記池を画定する側壁面に向けて吐出するものであってもよい。あるいは、前記吐出口は、前記送液管を通って流下してきた前記集砂用液を、前記底部において混入物の移送方向に向けて吐出するものであってもよい。また、前記吐出口は、前記送液管の先端に形成されたものであってもよい。
【0048】
この移送システムにおいて、前記底部に堆積した混入物を汲み上げるポンプを備え、
前記タンクは、前記ポンプによって前記混入物とともに汲み上げられた液体を集砂用液として貯留する態様であってもよい。
【0049】
この態様によれば、前記ポンプを利用して前記タンクに集砂用液を貯留できる。
【0050】
ここで、前記ポンプは、前記池に形成された、混入物が集められる集積部に配置されたものであってもよい。
【0051】
また、この移送システムにおいて、液体と固体とを分離する分離装置を備え、
前記ポンプは、前記混入物と該混入物とともに汲み上げられた液体を前記分離装置に送るものであり、
前記分離装置は、分離した液体を前記集砂用液として前記タンクに供給するものであってもよい。
【0052】
この態様では、前記分離装置で得られた液体を前記集砂用液としているので、混入物が前記沈砂池に戻されてしまうことを抑制できる。
【0053】
ここで、前記分離装置は液体サイクロンを有するものであってもよい。
【0054】
また、前記タンクは、前記池以外から得られた液体も前記集砂用液として貯留するものであってもよい。
【0055】
こうすることで、前記ポンプの駆動前であっても前記タンクに前記集砂用液を供給できる。
【0056】
ここで、前記タンクは、汚水処理施設で処理された処理水を前記集砂用液として貯留するものであってもよい。また、前記タンクは、浄水を前記集砂用液として貯留するものであってもよい。前記処理水または浄水を前記集砂用液として貯留することで、前記タンクで該集砂用液を長期間貯留しても該集砂用液が腐食してしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0057】
1 沈砂池
1a 底部
6 移送システム
62 タンク
63 第1給水管
632 吐出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6