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特開2024-116238格子改変炭素およびその化学的官能化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116238
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】格子改変炭素およびその化学的官能化
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20240820BHJP
【FI】
C01B32/194
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091573
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2020543477の分割
【原出願日】2018-10-23
(31)【優先権主張番号】62/576,433
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519263833
【氏名又は名称】ディキンソン・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,アバイ・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,マシュー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化学的に官能化された炭素格子を提供する。
【解決手段】反応器内の炭素格子核を、室温~1500℃の温度に加熱するステップと、前記炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、前記炭素質ガス中の炭素原子を前記炭素格子核のエッジに吸着させるステップと、多原子環の一部が非六角形環を含む前記多原子環において、吸着された前記炭素原子を互いに共有結合させるステップと、前記多原子環を前記炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新しい格子領域で互いに共有結合させ、それにより前記非六角形環を組み込んだ改変格子を形成するステップと、前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能基および分子の少なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップとを含む方法によって形成される、化学的に官能化された炭素格子が提供される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内の炭素格子核を、室温~1500℃の温度に加熱するステップと、
前記炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、
前記炭素質ガス中の炭素原子を前記炭素格子核のエッジに吸着させるステップと、
多原子環の一部が非六角形環を含む前記多原子環において、吸着された前記炭素原子を
互いに共有結合させるステップと、
前記多原子環を前記炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新しい格子領域で互いに共
有結合させ、それにより前記非六角形環を組み込んだ改変格子を形成するステップと、
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能基および分子の少
なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップと
を含む方法によって形成される、化学的に官能化された炭素格子。
【請求項2】
前記方法が、前記反応器内で前記炭素格子核を核形成するステップをさらに含む、請求
項1に記載の官能化された炭素格子。
【請求項3】
前記方法中、前記炭素格子核がテンプレートまたは担体上にある、請求項1または2に
記載の官能化された炭素格子。
【請求項4】
前記テンプレートまたは担体が、無機塩を含む、請求項3に記載の官能化された炭素格
子。
【請求項5】
前記テンプレートまたは担体が、テンプレートカーボン、カーボンブラック、グラファ
イトカーボン、および活性炭粒子の少なくとも1つの内部の炭素格子を含む、請求項3に
記載の官能化された炭素格子。
【請求項6】
前記テンプレートまたは担体が、前記改変格子の形成を誘導する、請求項3に記載の官
能化された炭素格子。
【請求項7】
前記炭素質ガスが、有機分子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の官能化さ
れた炭素格子。
【請求項8】
前記改変格子が、多層格子集合体の一部を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載
の官能化された炭素格子。
【請求項9】
前記非六角形環が、3員環、4員環、5員環、7員環、8員環、および9員環の少なく
とも1つを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の官能化された炭素格子。
【請求項10】
前記非六角形環が、非平面格子特徴を有する非晶質またはヘッケライト(haecke
lite)格子構造を形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の官能化された炭
素格子。
【請求項11】
前記方法が、環が形成される条件を選択することにより、前記改変格子内に形成される
非六角形環の頻度およびタイリングの少なくとも1つを調節するステップをさらに含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の官能化された炭素格子。
【請求項12】
前記選択された条件が、炭素質ガスの種、炭素質ガスの分圧、全ガス圧、温度、および
格子エッジジオメトリの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の官能化された炭素格
子。
【請求項13】
前記方法が、前記新しい格子領域が形成される間、前記条件を実質的に維持するステッ
プをさらに含む、請求項11または12に記載の官能化された炭素格子。
【請求項14】
前記方法が、前記新しい格子領域が形成される間、前記条件を実質的に変更するステッ
プをさらに含む、請求項11または12に記載の官能化された炭素格子。
【請求項15】
前記条件を変更するステップが、前記新しい格子領域が形成されている間に前記新しい
格子領域を加熱または冷却することを含む、請求項14に記載の官能化された炭素格子。
【請求項16】
前記条件を変更するステップが、前記改変格子を2つ以上の別個の反応器ゾーンを通し
て運搬することを含み、それぞれの別個の反応器ゾーンは、前記新しい格子領域が形成さ
れる間別個の局所条件を有する、請求項14に記載の官能化された炭素格子。
【請求項17】
改変格子を2つ以上の別個の局所条件を通して運搬することは、前記新しい格子領域が
形成される間局所条件の勾配を通して前記改変格子を運搬することを含む、請求項16に
記載の官能化された炭素格子。
【請求項18】
前記別個の局所条件が、別個のレベルの熱エネルギーを含む、請求項16または17に
記載の官能化された炭素格子。
【請求項19】
前記別個の局所条件が、300℃~1100℃の範囲の別個の局所温度を含む、請求項
18に記載の官能化された炭素格子。
【請求項20】
前記改変格子の運搬が、移動または流動床で前記改変格子を運搬することを含む、請求
項16から19のいずれか一項に記載の官能化された炭素格子。
【請求項21】
非六角形環構造の濃度が、前記改変格子全体にわたって実質的に同じである、請求項1
から20のいずれか一項に記載の官能化された炭素格子。
【請求項22】
前記改変格子の1つの領域における非六角形環構造の濃度が、前記改変格子の別の領域
における前記非六角形環構造の濃度と実質的に異なる、請求項1から20のいずれか一項
に記載の官能化された炭素格子。
【請求項23】
前記改変格子が、改変格子の多層集合体の表面を含む、請求項1から22のいずれか一
項に記載の官能化された炭素格子。
【請求項24】
前記改変格子内の非平面特徴が前記格子の化学反応性を増加させる、請求項10に記載
の官能化された炭素格子。
【請求項25】
前記改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルが、0.25未満のI
/Iピーク強度比を示す、請求項1から24のいずれか一項に記載の官能化された炭素
【請求項26】
前記改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルが、0.25~0.50
のI/Iピーク強度比を示す、請求項1から24のいずれか一項記載の官能化された
炭素。
【請求項27】
前記改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルが、0.50~0.75
のI/Iピーク強度比を示す、請求項1から24のいずれか一項に記載の官能化され
た炭素。
【請求項28】
前記改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルが、0.75を超えるI
/Iピーク強度比を示す、請求項1から24のいずれか一項に記載の官能化された炭
素。
【請求項29】
XRDによって決定される中間層d間隔が、3.45Å~3.55Åのピーク強度を示
す、請求項1から28のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項30】
XRDによって決定される中間層d間隔が、3.55Å~3.65Åのピーク強度を示
す、請求項1から28のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項31】
前記改変格子の一部を1つまたは複数の化学物質に曝露するステップが、前記改変格子
の曝露部分の少なくとも2つの側を曝露することを含む、請求項1から30のいずれか一
項に記載の官能化された炭素。
【請求項32】
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露するステップが、前記改変格
子の曝露部分の1つの側のみを曝露することを含む、請求項1から30のいずれか一項に
記載の官能化された炭素。
【請求項33】
前記改変格子の非曝露側が、隣接する担体によって物理的に閉塞されている、請求項3
2記載の官能化された炭素。
【請求項34】
前記隣接する担体が、1つ以上の炭素格子を含む、請求項33に記載の官能化された炭
素。
【請求項35】
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露するステップが、前記改変格
子の曝露部分に官能基を共有結合的に付加することを含む、請求項1から34のいずれか
一項に記載の官能化された炭素。
【請求項36】
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露するステップが、前記化学物
質の存在下で前記改変格子を機械的に攪拌することを含む、請求項1から35のいずれか
一項に記載の官能化された炭素。
【請求項37】
官能基および分子の少なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップが、格子結合
炭素原子と、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、水素原子、およびハロゲン原子の少なくと
も1つとの間に共有結合を形成することを含む、請求項1から36のいずれか一項に記載
の官能化された炭素。
【請求項38】
官能基および分子の少なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップが、格子結合
炭素原子と酸素原子との間に共有結合を形成することを含む、請求項37に記載の官能化
された炭素。
【請求項39】
官能基および分子の少なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップが、四級窒素
カチオンの形態で格子結合炭素原子と窒素原子との間に共有結合を形成することを含む、
請求項37に記載の官能化された炭素。
【請求項40】
前記1種または複数種の化学物質の少なくとも1つが酸を含む、請求項1から39のい
ずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項41】
前記酸が、オレウム、硫酸、発煙硫酸、硝酸、塩酸、クロロスルホン酸、フルオロスル
ホン酸、アルキルスルホン酸、次亜リン酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、およびそ
れらの組み合わせを含む、請求項40に記載の官能化された炭素。
【請求項42】
前記酸が、多層格子集合体の2つ以上の格子にインターカレートする挿入剤を含む、請
求項41に記載の官能化された炭素。
【請求項43】
前記1種または複数種の化学物質の少なくとも1つが、酸化剤である、請求項1から4
2のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項44】
前記酸化剤が、過酸化物、過酸、四酸化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、塩素酸塩、過
塩素酸塩、窒素酸化物、硝酸塩、硝酸、過硫酸イオン含有化合物、次亜塩素酸塩、次亜塩
素酸、塩素、フッ素、蒸気、酸素ガス、オゾン、およびそれらの組み合わせからなる群の
少なくとも1つを含む、請求項43に記載の官能化された炭素。
【請求項45】
前記酸化剤が、過酸化物、次亜塩素酸塩、および次亜塩素酸の少なくとも1つを含む、
請求項44に記載の官能化された炭素。
【請求項46】
前記酸化剤が、酸性溶液を含む、請求項45に記載の官能化された炭素。
【請求項47】
前記酸化剤が、塩基性溶液を含む、請求項45に記載の官能化された炭素。
【請求項48】
前記方法が、前記改変格子の曝露部分の基底面内に、カルボキシル、カーボネート、ヒ
ドロキシル、カルボニル、エーテル、およびエポキシドの官能基の少なくとも1つを形成
するステップをさらに含む、請求項1から47のいずれか一項に記載の官能化された炭素
【請求項49】
前記方法が、以下の要因:曝露された格子の局所欠陥構造、曝露された格子の局所曲率
、酸化溶液のpH、酸化溶液の濃度、酸化溶液の温度、酸化溶液中の酸化種、格子が酸化
溶液に曝露されている時間、酸化溶液のイオン濃度の少なくとも1つに基づいて1つ以上
のタイプの官能基を選択的に形成することを含む、請求項48に記載の官能化された炭素
【請求項50】
1つ以上のタイプの官能基を選択的に形成するステップが、カルボキシル官能基を選択
的に形成することを含む、請求項49に記載の官能化された炭素。
【請求項51】
カルボキシル官能基を形成することにより、前記炭素格子の前記基底面内に空孔が導入
される、請求項49または50に記載の官能化された炭素。
【請求項52】
前記方法が、前記空孔をエッチングして、前記基底面内にナノスケールの穴を形成する
ことをさらに含む、請求項51に記載の官能化された炭素。
【請求項53】
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露するステップが、漸進的酸化
エッチングを含む、請求項1から52のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項54】
前記格子の前記漸進的酸化エッチングが、有機残渣を生成する、請求項53に記載の官
能化された炭素。
【請求項55】
前記有機残渣が、多層格子集合体の表面に吸着される、請求項54に記載の官能化され
た炭素。
【請求項56】
前記格子の前記漸進的酸化エッチングが、実質的に有機残渣を生成しない、請求項1か
ら49のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項57】
前記改変格子の曝露側の炭素対酸素の原子比が、1:1~2:1である、請求項1から
56のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項58】
前記改変格子の曝露側の炭素対酸素の原子比が、2:1~4:1である、請求項1から
56のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項59】
前記改変格子の曝露側の炭素対酸素の原子比が、4:1~6:1である、請求項1から
56のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項60】
前記改変格子の曝露側の炭素対酸素の原子比が、6:1~8:1である、請求項1から
56のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項61】
前記改変格子中の窒素の原子百分率が、5%超である、請求項1から60のいずれか一
項に記載の官能化された炭素。
【請求項62】
前記改変格子中の窒素の原子百分率が、1%~5%である、請求項1から60のいずれ
か一項に記載の官能化された炭素。
【請求項63】
前記改変格子中の硫黄の原子百分率が、5%超である、請求項1から59のいずれか一
項に記載の官能化された炭素。
【請求項64】
前記改変格子中の硫黄の原子百分率が、1%~5%である、請求項1から62のいずれ
か一項に記載の官能化された炭素。
【請求項65】
前記方法が、前記改変格子を酸化剤に曝露した後、前記改変格子を塩基性溶液に曝露す
るステップをさらに含む、請求項42から64のいずれか一項に記載の官能化された炭素
【請求項66】
前記方法が、前記改変格子を塩基性溶液に曝露して、アルゴン雰囲気中での前記官能化
された炭素の熱重量分析により決定した場合に、不安定基の全質量を50%超増加させる
ステップをさらに含む、請求項65に記載の官能化された炭素。
【請求項67】
酸化された炭素上の不安定基の前記全質量が、塩基性溶液に曝露された後、アルゴン雰
囲気中での前記官能化された炭素の熱重量分析により決定した場合に、25%~50%増
加する、請求項65に記載の官能化された炭素。
【請求項68】
炭素を塩基性溶液に曝露するステップが、カルボキシル基を脱プロトン化してカルボキ
シレート基を形成することを含む、請求項65に記載の官能化された炭素。
【請求項69】
前記方法が、前記改変格子を酸性溶液に曝露するステップを含む、請求項35から68
のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項70】
前記改変格子を酸性溶液に曝露するステップが、カルボキシレート基をプロトン化して
カルボキシル基を形成することを含む、請求項69に記載の官能化された炭素。
【請求項71】
前記方法が、前記化学的に官能化された炭素格子に分子を共有結合させることをさらに
含む、請求項1から70のいずれか一項に記載の官能化された炭素。
【請求項72】
前記分子が、カップリング剤を含む、請求項71に記載の官能化された炭素。
【請求項73】
前記カップリング剤が、シロキサンまたはポリシロキサンを含む、請求項72に記載の
官能化された炭素。
【請求項74】
化学的に官能化された炭素格子を形成する方法であって、
反応器内の炭素格子核を室温~1500℃の温度に加熱するステップと、
前記炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、
前記炭素質ガス中の炭素原子を前記炭素格子核のエッジに吸着させるステップと、
多原子環の一部が非六角形環を組み込んだ前記多原子環において、吸着された前記炭素
原子を互いに共有結合させるステップと、
前記多原子環を前記炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新しい格子領域で互いに共
有結合させ、それにより前記非六角形環を含む改変格子を形成するステップと、
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能基および分子の少
なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップと
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月24日に提出された米国仮特許出願第62/576,43
3号に対する優先権を主張し、これは全ての目的において参照によりその全体が本明細書
に組み込まれる。本出願は、2017年2月10日に提出されたPCT/US17/17
537にも関連し、これは全ての目的において参照によりその全体が本明細書に組み込ま
れる。
【0002】
以下の開示は、化学的に官能化された炭素ベース材料を合成するために使用される方法
および材料に関する。合成は、自己触媒格子成長を介して格子改変炭素を合成することに
よって達成することができ、炭素ベース材料の化学的官能化を含み得る。より詳細には、
本開示は、制御された濃度の非六角形環を有する炭素格子および多層格子集合体の合成、
ならびにこれらの格子および集合体の基底面への官能基の共有結合付加に関する。
【背景技術】
【0003】
「低次元炭素」を合成する一般的な方法は、多環式炭素高分子の化学蒸着(CVD)
を含む。本明細書で「炭素格子」または「格子」とも呼ばれる多環式炭素高分子は、多原
子環構造内のsp混成結合を介して互いに結合した炭素原子の原子単層シート(すなわ
ち、単一原子の厚さを有するシート)である。図1は、六角形環構造内で互いに結合した
炭素原子を含むグラフェン格子を示す。CVD中、炭素質ガス分子は、ガス分子の分解を
触媒し、触媒上に炭素格子を堆積させる触媒材料、例えば遷移金属箔に接触する。格子ま
たは格子の多層集合体を合成した後、格子の特性は、格子を化学的に官能化することによ
って変更され得る。官能基を追加するこの方法では、多くの場合、ハマー法等の過酷で制
御が不十分な酸化反応が必要である。
【0004】
本明細書では、サイズが100nm以下の少なくとも1つの構造的特徴を有する炭素ベ
ース構造として定義される。
【0005】
当技術分野において、化学的に官能化された炭素を生成するためのより穏やかで、より
制御可能な方法に対する満たされていない必要性が存在する。側面特異的、サイト特異的
、階層特異的、および基特異的な官能性を備えた炭素に対する満たされていない必要性が
存在する。一般に、格子レベルおよび粒子レベルでのより洗練された機能アーキテクチャ
を使用して、特定の用途に最適な特性を有する炭素を構築することができる。
【発明の概要】
【0006】
市販の炭素を格子核(例えばカーボンブラックまたはグラファイト)として利用すると
、これらの炭素の化学的官能性を有効に変更できるようになる。カーボンブラックおよび
活性炭は、炭化水素ガスから水素を生成する安価な触媒として使用でき、その結果、潜在
的に価値のある炭素副生成物が得られることが示されている。しかしながら、これらの核
で合成された新しい格子領域のタイリングおよび構造は綿密に検討されておらず、化学的
官能化も調査されていない。したがって、当技術分野において、炭化水素改質を介して生
成される炭素触媒格子および格子集合体の化学的官能化の必要性が満たされていない。
【0007】
本開示は、とりわけ、改変炭素格子および格子集合体の自己触媒成長に関連する新規の
方法および材料を説明する。また、特に酸化反応を介して、化学的に官能化されたナノ構
造化炭素を形成するための原料としての、格子改変炭素の使用についても説明する。
【0008】
また、本明細書において、選択的な化学的官能化を可能にする格子特性を有する改変炭
素格子および格子集合体の自己触媒成長に関連する新規の方法および材料も説明される。
これには、側面選択的、サイト選択的、領域選択的、階層選択的、および基選択的な官能
化のための原料としてのこれらの材料の使用が含まれる。特に、本開示は、基底面酸化を
得るための、反応性表面を有する改変炭素格子および格子集合体の利用を説明する。
【0009】
本明細書に記載される方法および材料は、従来技術を超えるいくつかの利点を提供する
。例えば、本明細書に記載されている格子改変炭素は、グラフェンまたはグラファイト炭
素よりも化学的に反応性が高くなり得る。したがって、化学的官能化プロセスの原料とし
て、格子改変炭素をより簡単かつ制御可能に官能化することができる。これにより、ハマ
ー法等のグラファイト原料で利用されるより攻撃的な官能化プロセスが不要となり得、よ
り穏やかで安全かつ環境に優しい官能化プロセスを使用できるようになる。
【0010】
ある特定のCVD条件下では、炭素格子は、触媒が存在しない場合、それ自体の成長を
自触媒(「自己触媒」)し得る。密度汎関数理論によるこの現象のモデリングは、例えば
、六角形の格子が、格子エッジでのメタンの解離吸着を介して非炭素触媒なしで成長する
可能性があることを予測する。次いで、炭素吸着原子は互いに結合し、格子に組み込まれ
た新しいリング構造に組み立てられる。同時に、格子エッジが再生され、新しい炭素吸着
原子を吸着することができる。この自己触媒成長様式では、炭素格子が触媒の役割を果た
す。
【0011】
格子の触媒的役割のため、自己触媒成長プロセスには「炭素格子核」、「核」、または
「シード」が必要である。本明細書において定義され、図2に示されている核は、自己触
媒格子成長が生じる任意の時間間隔にわたる格子の初期構造状態である。このように、核
はそのサイズ、ジオメトリ、またはリング構造によって定義されるのではなく、自己触媒
成長の間隔にわたり核から成長するいくつかの拡張格子構造の構造開始点としての指定に
よってのみ定義される。間隔の終点において、格子の新しい領域、すなわち核状態では存
在しなかった領域は、「新しい成長領域」または「新しい領域」と呼ばれる。これらの領
域は、図2にも示されている。
【0012】
自己触媒CVDプロセスでは、既存の格子核がCVD反応器に導入され、次いで自己触
媒作用を介して成長する。代替として、それはin situで核形成および成長しても
よい。核形成は、非炭素触媒(例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属ハロゲン化
物)によって誘発され得る。代替として、非炭素触媒なしで核形成が生じる場合(例えば
、核が別の炭素格子の表面上に形成されるか、または炭化水素の気相熱分解によって形成
される)、本明細書では「自己核形成」と呼ばれる。
【0013】
自己触媒成長は、いくつかの状況で発生し得る。1つの状況は、孤立状態である-すな
わち、成長する格子の領域(「領域」は、本明細書において、図3に示されるように、二
次元炭素格子を構成する炭素原子の任意の連続するサブセットとして定義される)は、別
の固体分子または粒子と接触していない。別の状況は、担体上である-すなわち、格子の
1つまたは複数の領域が、より大きな固体分子または粒子と接触している。支持成長と同
様の別の状況は、1つの格子がそれ自体または別の炭素格子と重複して接触している場合
である。重複接触は、2つの格子側面間の接触を含む。「側面」は、図3に示されるよう
に、本明細書において、炭素格子の所与の領域に関連する2つの格子面として定義される
。メビウスの輪等のある特定のトポロジ異常を除いて、格子ジオメトリには常に2つの側
面があり、この場合、2つの「側面」は、格子の局所領域によって形成された2つの局所
的な面と単純に考えることができる。2次元の特徴である格子の側面は、格子の1次元の
1または複数の終端である格子の「エッジ」とは異なる。
【0014】
CVD成長中に2つの格子側面間の重複接触が生じる可能性があり、例えば、共通の支
持面上の複数の近くの核から成長した格子が互いに遭遇すると、それらは互いを沈み込ま
せる、または互いに沈み込み、重複を形成し得る。代替として、格子はそれ自体重複する
場合がある(例えば、一側面がそれ自体と接触したときに形成される折り畳み構成で、ま
たは一方の側面が他方の側面と接触したときに生じるスクロール構成のそれぞれで)。格
子がそれ自体または別の格子と重複する場合、本明細書において、そのような重複アーキ
テクチャは「多層の特徴」と呼ばれる。本明細書において、1つまたは複数の多層の特徴
を含む任意の炭素構造は、「多層構造」(「MS」)と呼ばれる。図4に示されるように
、多層構造は、多数のジオメトリを含み得る。
【0015】
多層構造では、各重複格子領域は「層」と呼ばれる。単一の格子が2つ以上の層(例え
ば、折り畳まれたナノプレートレットまたはスクロールされたナノチューブ)を含むこと
が可能であるが、最も一般的なタイプの多層構造は、複数の格子(例えば、格子のグラフ
ァイトスタックまたは多層ナノチューブ)を含む。テンプレート誘導CVDを介して成長
した炭素では、テンプレートの周囲に成長した壁は、典型的には多層構造である。壁は、
他の格子に重複する格子、および3次元で自分自身を包み込む格子を含み得る。
【0016】
格子は、異なる環構造および異なる分子パターン(本明細書において「タイリング」と
呼ばれる)を含み得る。反復する六角形環として組織化されたsp結合炭素原子の結晶
配列は「グラフェン」として知られ、規則的なハニカムタイルを有する。いくつかのグラ
フェン格子は、低濃度の非六角形環、例えば五角形、七角形、八角形環を組み込んでもよ
い。非六角形環は、低濃度で格子に組み込まれた場合、グラフェン格子のタイリングをご
くわずかに局所的に変更し得る。非六角形環の組み込みは、グラフェンの六角形のタイリ
ングからの逸脱を引き起こすため、非六角形環は、本明細書において「欠陥」と呼ばれる
。格子中の欠陥の頻度または濃度は、基底面の全ての環に対する非六角形環のパーセンテ
ージとして表され、本明細書では格子の「不完全性」または「欠陥集中」と呼ばれる。
【0017】
非六角形環の濃度が高いほど、タイリングはより大きく、遍在的に変化し得る。実際、
一部の格子タイプは、規則的な五角形のタイリングを有するペンタグラフェン等、完全に
非六角形環で構成され得る。他の格子構造は、「非晶質グラフェン」と呼ばれることもあ
るランダムなガラス質タイリングに五角形、六角形、および七角形を含み得る。これらの
非六角形のタイリングは、より高い格子ひずみ、多層格子集合体の異なる層間間隔および
間隔分布、ならびにトポロジの不規則性に関連する非ゼロの局所曲率等、グラフェンと比
較して著しく異なる特性を有し得る。格子が成長している間に非六角形環を格子に導入す
ることを制御すること(例えば、制御された頻度でそれらを格子に導入することにより)
は、本明細書において「格子改変」と呼ばれる。格子改変プロセスを介して作製された炭
素格子は、「改変炭素格子」または「改変格子」と呼ばれる。
【0018】
格子改変により、格子の化学ポテンシャルエネルギーの調整が可能となり得、これによ
り、一方で官能基の追加(本明細書において「化学的官能化」または「官能化」と呼ばれ
る)がより簡単で制御可能となり得る。「官能性」(すなわち、化学的官能化から生じる
格子構造または多層構造の化学的性質)は、粒子が他の材料および媒体と相互作用する様
式に影響を与える可能性がある。非六角形格子の特徴が、格子の成長中に制御可能な濃度
で形成されるように誘導され得る限り、格子改変プロセスは、化学的に官能化された格子
および格子集合体の生成を容易にし得る。
【0019】
ナノ構造炭素の最も一般的な官能化の1つは、酸素ベースの官能基、または「酸素基」
の共有結合付加である。グラフェン格子の基底面に優先的に付加される酸素基は、エーテ
ル/エポキシド(C-O-C)、ヒドロキシル(C-OH)、およびカルボニル(C=O
)を含む。局所的な凸部を有する格子では、カルボキシル基およびエーテル基が優先的に
基底面に付加される(例えば、ナノチューブのエッジ壁カルボキシル化)。カルボキシル
化は、C-C結合の開裂および空孔の形成をもたらし得る。グラフェン格子上の十分なレ
ベルの酸化は、一般に酸化グラフェン(「GO」)と呼ばれるものをもたらす。酸化グラ
フェンを作製するための多くの手順において、炭素格子の漸進的酸化エッチングにより、
格子の表面上に有機残渣の吸着層が生成され得る。本明細書において「酸化残渣」(「O
D」)とも呼ばれるこの残渣は、GO格子に物理吸着され得る。そのため、ODの酸素基
は、下にある格子に対して格子結合していない場合がある。格子がその後塩基洗浄されな
い限り、ODはGO上に存在し得、その結果ODが脱着する。漸進性酸化エッチングの別
の効果は、空孔を導入または拡大すること、ならびに他の欠陥を格子内に導入することで
あり得る。
【0020】
GO格子上の酸素基および酸化残渣は、格子と他の材料との間の界面の結合および形成
に影響し得る。例えば、生成直後のGO格子上の残渣は、GOおよびエポキシナノ複合材
のエポキシマトリックスの界面での架橋密度を低下させることが示されている。マトリッ
クスと格子との間の架橋密度を低減すると、ポリマーが応力を格子に伝達する能力が妨げ
られ得、ナノ複合材料の弾性率が低下し得る。ODで装飾されたGOで作製されたエポキ
シナノ複合材と比較して、ODが取り除かれたGOは、より高密度の架橋界面を可能にし
、より高い弾性率をもたらし得る。
【0021】
GO上のOD内の酸素基は、通常、GOに関して報告された酸素全体のかなりの割合を
占める。XPS分析は、塩基洗浄によりODを除去した後、C:O比が約2:1から6:
1に減少することを示している。したがって、格子結合酸素は、しばしば、GOに関連す
る報告されたC:O比が示すよりもはるかに低い場合がある。塩基洗浄および化学還元は
、格子結合エポキシドを他の酸素基に変換することにより、格子の有意な「脱エポキシ化
」を引き起こす可能性もある。この変換は、ある特定の用途でエポキシド部分が必要な場
合は望ましくなく、そのような用途ではODの除去が問題となり得る。
【0022】
格子の分解および残渣の生成の問題に加えて、ブロディ法、シュタウデンマイヤー法、
ホフマン法、およびハマー法等の最も一般的なグラファイト炭素を酸化する方法、ならび
にそのバリエーションには、他の重大な欠点がある。第一に、それらは一般に、酸化の場
所および程度の両方に関して、プロセスの制御をほとんど提供しない。これらの方法は、
グラファイトにインターカレートする強力な酸(通常はHSO、HNO、またはそ
れらのいくつかの組み合わせ)および強力な酸化剤(KMnO、KClO、NaNO
等)とグラファイト炭素原料との反応によって酸化する。しかしながら、これらの材料
は完全に消費されず、腐食性廃棄物ストリームを生成する可能性がある。第二に、それら
の方法には危険な化学物質が必要であり、爆発性ガスや有害ガス(ClO、NO、N
等)を生成する。したがって、それらは危険な試薬の生産、保管、および消費を必
要とし、危険な廃棄物を生成する可能性がある。
【0023】
欠陥のあるグラフェン格子を酸化の原料として使用して、より穏やかで制御可能なプロ
セスでGOを形成することが検討されている。しかしながら、これは限られた制御性およ
びわずかな産業上のスケーラビリティでのみ実行され得ることが文献で示されている。一
例において、電子ビーム照射を介して前処理されたグラファイトに反応性欠陥が導入され
、欠陥のあるグラファイトが酸化された。しかしながら、電子ビーム放射およびプロセス
の他の態様の使用は、大量生産用に容易に拡張できない場合があり、酸化の制御は制限さ
れていた。さらに、電子ビーム照射は、多層格子集合体の特定の層に浸透しない場合があ
る。したがって、基底面酸化を伴う炭素格子を生成するための制御可能で穏やかなプロセ
スに対する満たされていない必要性が依然として存在する。
【0024】
格子改変手方法は、官能化をより選択的にする、より高度に改変された格子原料を形成
する能力により、新しい官能化機能を提供することができる。例えば、酸化グラフェンを
作製するために使用されるグラファイトまたはグラファイトナノプレートレット等の一般
的な原料は、平面の側面を有する炭素格子を含み得る。したがって、格子のいずれかの側
面の全体的な化学反応性は同じとなり得る。対照的に、単層ナノチューブは、凹側内面お
よび凸側外面を有する。六角形タイリングのナノチューブ格子の凸側面は、その歪みのた
めに六角形タイリングの平面格子よりも化学反応性が高いのに対し、六角形タイリングの
ナノチューブ格子の凹側面は、六角形タイリングの平面格子よりも化学反応性が低いこと
が示されている。したがって、単層ナノチューブの官能化は、実質的に片側である傾向が
あり、これは、本明細書において「モノトピック」または「側面選択的」官能化として説
明される。両側官能化は、本明細書では「ジトピック」官能化として説明される。
【0025】
各側面が100%凹面または凸面であるナノチューブの特定の場合とは異なり、各側面
が局所的な凹面および凸面の地形的特徴、または「サイト」を示す他の格子も存在し得る
。したがって、凹面と凸面の格子曲率の反応性の違いにより、側面選択的な官能化が可能
になるだけでなく、「サイト選択的な」官能化(すなわち、地形的なサイトに特異的な官
能化効果)もまた可能となり得る。例えば、非晶質グラフェン格子は、各側面が多数の凹
面および凸面の両方のサイトを示す、襞状のトポグラフィーを有し得る。酸化剤に曝露さ
れた場合、これらのナノスケールサイトは、その曲率に基づいて選択的に官能化されない
、または官能化される可能性があり、その結果、格子のトポグラフィーに実質的に対応す
る官能基がマッピングされる。
【0026】
別のタイプの選択性は、官能化されている格子の(1または複数の)領域に基づき得る
。例えば、改変格子は、六角形の平面格子核を含み、その周りに、1つまたは複数の非晶
質の襞状の新しい格子領域が同心円状に成長している。核領域および(1または複数の)
新しい領域は、平面核領域では格子が選択的に官能化されず、襞状の新しい格子領域で選
択的に官能化され得るように、異なる化学的反応性を有し得る。これにより、格子の領域
特性に対応する官能基のマッピング、または「領域選択的」官能化が生じ得る。
【0027】
別のタイプの位置選択性は、機能的に異なる特定の「階層」(「階層」は、本明細書に
おいて1つまたは複数の隣接する層を含む多層構造内の別個のバンドとして定義される)
に関係し得る。例えば、テンプレートまたは担体上に合成された多層構造では、セル壁の
発達は、典型的には内から外に進行する、すなわち、格子の内側バンドが最初にテンプレ
ートの隣に成長し、次いで格子の中央のバンドが内側バンドの上に成長し、最後に外側バ
ンドが成長する。壁が形成されると、格子改変を利用して、各階層に関連付けられた別個
のタイリングを形成することができる。これは、粒子が他の媒体とどのように相互作用す
るかを変更するが、粒子の内部化学には影響しない機能的表面(本明細書において「表面
」は外部格子領域の外側面として定義される)を形成するために利用され得る。例えば、
粒子の内部格子は導電性のまま、酸化された表面は非導電性となり得る。階層選択的酸化
は、多層構造に酸化剤がインターカレートされ、粒子の表面だけでなくその内部の格子も
酸化されるハマー法のような酸化方法では不可能である。
【0028】
位置選択的官能化に加えて、格子改変により、ある特定のタイプの官能基が優先的に形
成される「基選択的」官能化が可能となり得る。密で小さな地形的特徴を有する格子を官
能化すると、凸面特異的官能性および凹面特異的非官能性が優勢であり、平面官能性が相
対的に不足するため、カルボキシルおよびエーテルが優先的に形成され得る。高度にカル
ボキシル化された基底面は、より極性が高く親水性の表面をもたらし、極性媒体中での分
散性を改善し得る。
【0029】
格子改変炭素は、選択的官能化のための原料として利用され得る。これは、テンプレー
ト化された炭素粒子の表面を選択的に酸化するために特に有益となり得る。選択的表面酸
化は、粒子をより分散性にする一方で、内部の格子構造をそのままにし、非酸化状態を維
持することができる。
【0030】
以下の発明を実施するための形態から、追加の利点および用途が当業者に容易に明らか
となる。本明細書における例および説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定
と見なされるべきではない。
【0031】
添付の図面を参照して、例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】グラフェンの六角形格子構造の説明図である。格子は単原子の厚さであり、多原子環構造を含む。環構造は格子のタイリングを形成し、これは、存在する環のタイプに基づいて規則的または不規則的となり得る。
図2】炭素格子核と、自己触媒格子成長のある程度の間隔にわたって核のエッジから形成された新しい成長領域の図である。これらは共に、局所的に変化したタイリングを有し得る改変格子構造を構成する。
図3】格子の基本的な特徴の説明図である。これは、格子の1次元の終端を含む格子のエッジ、任意の領域によって形成される2つの表面を含む格子の側面、および格子の炭素原子のいくつかの局所的サブセットである格子領域を含む。
図4】それぞれが2つ以上の層を有する特徴を有する、いくつかの仮想的な多層構造の説明図である。テンプレート化された多層構造は、テンプレート、およびテンプレートの周囲に形成された多層壁の断面を示す。
図5】MgOテンプレートの抽出後の試料A1~A4の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6】多層構造の断面または壁の厚さを示す、MgOテンプレートの抽出後の試料A1、A3、A4の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図7】MgOテンプレートの抽出前の試料A1~A4のラマンスペクトルである。
図8】酸化試料A1~A4の熱重量分析(TGA)曲線である。20時間および40時間の2つの酸化プロトコルを実行した。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図9】試料A3、A3 80xBT-2時間、およびA3 80xBT-20時間のX線光電子分光法(XPS)分析から抽出されたC/O比であり、O/C比(A)および炭素-酸素部分の分解(B)を示す図である。
図10】2時間および20時間の異なる酸化時間に対する試料A3およびその酸化型のSEM画像である。
図11】MgOテンプレートの抽出前の試料A1、A3、およびB1のラマンスペクトルである。
図12】MgOテンプレートの抽出後の試料A1、A3、およびB1のSEM画像である。
図13】多層構造の断面または壁の厚さを示す、MgOテンプレートの抽出後の試料A1、A3、およびB1の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図14】試料A1、A3、およびBの酸化変種のTGA曲線である。20時間および40時間の2つの酸化プロトコルを使用した。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図15】水に再懸濁した後のB2-OxおよびB3-Oxの濡れ挙動の違いを示す、それらの画像である。
図16】2段階の加水分解および縮合反応機構によるシランおよびヒドロキシル基との間の典型的な反応を示す概略図である。
図17】官能化された炭素の湿潤挙動の変化を示す、CO-OxおよびCO-Ox-OTES(攪拌前および攪拌後)の画像である。
図18】CO-OxおよびCO-Ox-OTESのTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図19】それぞれ、試料であるカーボンブラック対照(D0)ならびに低温(D1)および高温(D2)での自己触媒成長炭素のSEM画像である。
図20】カーボンブラック上に成長した追加の炭素の異なる熱的性質を示す、試料D0、D1、およびD2のTGA曲線(A)である。また、酸化後の異なる挙動を示す酸化型のD1-OxおよびD2-Oxも示される(B)。全てのTGA曲線は、空気中で(10℃/分の昇温速度で)行った。
図21】質量損失パーセンテージ(A)および正規化微分重量(B)を示す、試料E2 40xABT-20時間(対照、BWおよびBW-RA)のTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図22】質量損失のパーセンテージを示す、24時間のピラニア処理後の試料E0、E1およびE2のTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図23】正規化微分重量を示す、24時間のピラニア処理後の試料E0、E1およびE2のTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図24】正規化微分重量を示す、24時間のピラニア処理および塩基洗浄後の試料E1およびE2のTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
図25】質量損失の割合を示す、60時間のAPS処理後の試料E0およびE2のTGA曲線である。全てのTGA曲線は、アルゴン中で(20℃/分の昇温速度で)行った。
【発明を実施するための形態】
【0033】
説明された実験結果を含む以下の説明は、制御可能な密度の非六角形環の格子、および
局所的に変化した分子タイリングの格子を改変するための自己触媒格子成長の使用を示し
ている。次いで、得られた格子改変された格子は、化学的に官能化され得る。そのような
自己触媒格子成長は、本明細書に記載されているプロセスの本質から実質的に逸脱するこ
となく、いくつかの異なる条件下で得ることができる。
【0034】
本明細書において、反応器内の炭素格子核を室温~1500℃の温度に加熱するステッ
プを含む方法によって形成される、化学的に官能化された炭素格子が説明される。この方
法はまた、炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、炭素質ガス中の炭素原子を炭素格子核の
エッジに吸着させ、多原子環の一部が非六角形環を含む多原子環において、吸着された炭
素原子を互いに共有結合させ、多原子環を炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新しい
格子領域で互いに共有結合させ、それにより非六角形環を組み込んだ改変格子を形成する
ステップと、改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能基および分
子の少なくとも1つを改変格子に結合させるステップとを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、反応器内で炭素格子核を核形成するステップを
さらに含んでもよい。炭素格子核は、方法の間にテンプレートまたは担体上に置かれても
よい。テンプレートまたは担体は、無機塩を含んでもよい。テンプレートまたは担体は、
テンプレートカーボン、カーボンブラック、グラファイトカーボン、および活性炭粒子の
少なくとも1つの内部の炭素格子を含んでもよい。テンプレートまたは担体は、改変格子
の形成を誘導し得る。炭素質ガスは有機分子を含んでもよい。改変格子は、多層格子集合
体の一部を含んでもよい。非六角形環は、3員環、4員環、5員環、7員環、8員環、お
よび9員環の少なくとも1つを含んでもよい。官能化された非六角形環は、非平面格子特
徴を有する非晶質またはヘッケライト(haeckelite)格子構造を形成し得る。
【0036】
方法は、環が形成される条件を選択することにより、改変格子内に形成される非六角形
環の頻度およびタイリングの少なくとも1つを調節するステップをさらに含んでもよい。
選択された条件は、炭素質ガスの種、炭素質ガスの分圧、全ガス圧、温度、および格子エ
ッジジオメトリの少なくとも1つを含んでもよい。方法は、新しい格子領域が形成される
間、条件を実質的に維持するステップを含んでもよい。方法は、新しい格子領域が形成さ
れる間、条件を実質的に変更するステップを含んでもよい。条件を変更するステップは、
新しい格子領域が形成されている間に新しい格子領域を加熱または冷却することを含んで
もよい。条件を変更するステップは、改変格子を2つ以上の別個の反応器ゾーンを通して
運搬することを含んでもよく、それぞれの別個の反応器ゾーンは、新しい格子領域が形成
される間別個の局所条件を有する。改変格子を2つ以上の別個の局所条件を通して運搬す
ることは、新しい格子領域が形成される間局所条件の勾配を通して改変格子を運搬するこ
とを含んでもよい。別個の局所条件は、別個のレベルの熱エネルギーを含み得る。別個の
局所条件は、300℃~1100℃の範囲の別個の局所温度を含んでもよい。改変格子の
運搬は、移動または流動床で改変格子を運搬することを含んでもよい。非六角形環構造の
濃度は、改変格子全体にわたって実質的に同じであってもよい。
【0037】
改変格子の1つの領域における非六角形環構造の濃度は、改変格子の別の領域における
非六角形環構造の濃度と実質的に異なっていてもよい。改変格子は、改変格子の多層集合
体の表面を含んでもよい。改変格子内の非平面特徴は、格子の化学反応性を増加させ得る
。改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルは、0.25未満のIT/I
Gピーク強度比を示してもよい。改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクト
ルは、0.25~0.50のIT/IGピーク強度比を示してもよい。改変格子または改
変格子の多層集合体のラマンスペクトルは、0.50~0.75のIT/IGピーク強度
比を示してもよい。改変格子または改変格子の多層集合体のラマンスペクトルは、0.7
5を超えるIT/IGピーク強度比を示してもよい。XRDによって決定された中間層の
d間隔は、3.45Å~3.55Åにピーク強度を示してもよい。XRDによって決定さ
れた中間層のd間隔は、3.55Å~3.65Åにピーク強度を示してもよい。改変格子
の一部を1種または複数種の化学物質に曝露するステップは、改変格子の曝露部分の少な
くとも2つの側を曝露することを含んでもよい。改変格子の一部を1種または複数種の化
学物質に曝露するステップとは、改変格子の曝露部分の1つの側のみを曝露することを含
んでもよい。改変格子の非曝露側は、隣接する担体によって物理的に閉塞されてもよい。
隣接する担体は、1つまたは複数の炭素格子を含んでもよい。改変格子の一部を1種また
は複数種の化学物質に曝露するステップは、改変格子の曝露部分に官能基を共有結合的に
付加することを含んでもよい。改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露する
ステップは、化学物質の存在下で改変格子を機械的に攪拌することを含んでもよい。官能
基および分子の少なくとも1つを改変格子に結合させるステップは、格子結合炭素原子と
、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、水素原子、およびハロゲン原子の少なくとも1つとの
間に共有結合を形成することを含んでもよい。官能基および分子の少なくとも1つを改変
格子に結合させるステップは、格子結合炭素原子と酸素原子との間に共有結合を形成する
ことを含んでもよい。官能基および分子の少なくとも1つを改変格子に結合させるステッ
プは、四級窒素カチオンの形態で格子結合炭素原子と窒素原子との間に共有結合を形成す
ることを含んでもよい。
【0038】
1種または複数種の化学物質の少なくとも1つは、酸を含んでもよい。酸は、オレウム
、硫酸、発煙硫酸、硝酸、塩酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、アルキルスル
ホン酸、次亜リン酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、およびそれらの組み合わせを含
んでもよい。酸は、多層格子集合体の2つ以上の格子にインターカレートする挿入剤を含
んでもよい。1種または複数種の化学物質の少なくとも1つは、酸化剤であってもよい。
酸化剤は、過酸化物、過酸、四酸化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、塩素酸塩、過塩素酸
塩、窒素酸化物、硝酸塩、硝酸、過硫酸イオン含有化合物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、
塩素、フッ素、蒸気、酸素ガス、オゾン、およびそれらの組み合わせからなる群の少なく
とも1つを含んでもよい。酸化剤は、過酸化物、次亜塩素酸塩、および次亜塩素酸の少な
くとも1つを含んでもよい。酸化剤は、酸性溶液を含んでもよい。酸化剤は、塩基性溶液
を含んでもよい。方法は、改変格子の曝露部分の基底面内に、カルボキシル、カーボネー
ト、ヒドロキシル、カルボニル、エーテル、およびエポキシドの官能基の少なくとも1つ
を形成するステップを含んでもよい。方法は、以下の要因:曝露された格子の局所欠陥構
造、曝露された格子の局所曲率、酸化溶液のpH、酸化溶液の濃度、酸化溶液の温度、酸
化溶液中の酸化種、格子が酸化溶液に曝露されている時間、酸化溶液のイオン濃度の少な
くとも1つに基づいて1つ以上のタイプの官能基を選択的に形成することを含んでもよい
。1つ以上のタイプの官能基を選択的に形成するステップは、カルボキシル官能基を選択
的に形成することを含んでもよい。カルボキシル官能基を形成することにより、炭素格子
の基底面内に空孔が導入され得る。方法は、空孔をエッチングして、基底面内にナノスケ
ールの穴を形成することを含んでもよい。改変格子の一部を1種または複数種の化学物質
に曝露するステップは、漸進的酸化エッチングを含んでもよい。格子の漸進的酸化エッチ
ングは、有機残渣を生成してもよい。有機残渣は、多層格子集合体の表面に吸着されても
よい。格子の漸進的酸化エッチングは、実質的に有機残骸を生成しなくてもよい。改変格
子の曝露側の炭素対酸素の原子比は、1:1~2:1であってもよい。改変格子の曝露側
の炭素対酸素の原子比は、2:1~4:1であってもよい。改変格子の曝露側の炭素対酸
素の原子比は、4:1~6:1であってもよい。改変格子の曝露側の炭素対酸素の原子比
は、6:1~8:1であってもよい。改変格子中の窒素の原子百分率は、5%超であって
もよい。改変格子中の窒素の原子百分率は、1%~5%であってもよい。改変格子中の硫
黄の原子百分率は、5%超であってもよい。改変格子中の硫黄の原子百分率は、1%~5
%であってもよい。
【0039】
方法は、改変格子を酸化剤に曝露した後、それを塩基性溶液に曝露するステップを含ん
でもよい。方法は、改変格子を塩基性溶液に曝露して、アルゴン雰囲気中での官能化され
た炭素の熱重量分析により決定した場合に、不安定基の全質量を50%超増加させるステ
ップを含んでもよい。酸化された炭素上の不安定基の全質量は、塩基性溶液に曝露された
後、アルゴン雰囲気中での官能化された炭素の熱重量分析により決定した場合に25%~
50%増加してもよい。炭素を塩基性溶液に曝露するステップは、カルボキシル基を脱プ
ロトン化してカルボキシレート基を形成することを含んでもよい。方法は、改変格子を酸
性溶液に曝露するステップを含んでもよい。改変格子を酸性溶液に曝露するステップは、
カルボキシレート基をプロトン化してカルボキシル基を形成することを含んでもよい。方
法は、化学的に官能化された炭素格子に分子を共有結合させることを含んでもよい。分子
は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は、シロキサンまたはポリシロキサ
ンを含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態は、化学的に官能化された炭素格子を形成する方法であって、反応
器内の炭素格子核を室温~1500℃の温度に加熱するステップを含む方法を含む。この
方法は、炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、炭素質ガス中の炭素原子を炭素格子核のエ
ッジに吸着させ、多原子環の一部が非六角形環を組み込んだ多原子環において、吸着され
た炭素原子を互いに共有結合させ、多原子環を炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新
しい格子領域で互いに共有結合させ、それにより非六角形環を含む改変格子を形成するス
テップを含む。方法は、改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能
基および分子の少なくとも1つを改変格子に結合させるステップをさらに含む。
【0041】
本明細書において開示される実験では、周囲圧力下でCVDが行われた。CVD中に使
用されるガスは、メタン(CH)、プロピレン(C)、およびアルゴン(Ar)
を含んだ。一部の実験では、MgOテンプレートが使用された。そのようなテンプレート
は、Akrochemから供給された炭酸マグネシウム(Light Magnesiu
m CarbonateまたはL-MgCO)から形成された。Shape Chem
icalsから供給された塩酸(HCl)は、MgOテンプレートの酸抽出に使用された
【0042】
全てのCVD実験には、プログラム可能な最大温度が1200℃のMTI回転式管状炉
および石英管が使用された。炉は、以下に説明される番号が付されたスキーマに従って装
備および操作された。
【0043】
スキーム1では、炉を水平に維持した。試料粉末を、外径100mmの石英管に直接装
填し、炉の加熱ゾーン内にある中央領域に押し込んだ。セラミックブロックを管に挿入し
、加熱ゾーンの両側に配置した。セラミックブロックの位置の固定には、グラスウールを
使用した。管に、ステンレス鋼のフランジ、上流のガス供給入口、および下流のガス出口
を装備した。石英管を、炉の加熱、CVDプロセス、および炉の冷却の間、2.5または
10RPMで回転させた。
【0044】
スキーム2では、炉および石英管(外径60mm)の両方を傾けた/傾斜させた。管を
回転させた。「Schenk Accurate」往復オーガーフィーダーを管の高い方
の端に挿入し、フィーダーの外径と石英管の内径との間のエアギャップを、自由に回転で
きるシリコーンフォームワッシャーで封止した。オーガーフィーダーは、粉末を石英管の
高い方の端に連続的に計量した。管の下流端は大気に開放されたままであった。オーガー
フィーダーを通してプロセスガスを流すために、オーガーフィーダーは、上流にガス供給
入口を備えた石英管の上流に変更された。
【0045】
スキーム3では、炉を水平に維持した。セラミックボートに粉末を入れた。次いで、ボ
ートを石英管(外径60mm)に入れ、管の中央領域(すなわち、炉の加熱ゾーン内)に
押し込んだ。石英管は回転させなかった。管の一端に、ステンレス鋼のフランジおよびガ
ス供給入口を装備した。管の反対側の端は大気に開放されたままであった。
【0046】
全てのラマン分光特性評価は、532nmの励起レーザーを備えたThermoFis
her DXRラマン顕微鏡を使用して行われた。全てのTGA特性評価は、TA In
struments Q600 TGA/DSCで行われた。
【0047】
ラマン分光法は、炭素の格子構造を特性評価するために一般的に使用される。以下の3
つの主要なスペクトル特徴が、典型的にはsp結合炭素に関連付けられる:Gバンド(
1585cm-1)、G’バンド(代替として「2Dバンド」と呼ばれ、2500~28
00cm-1にある)、および「Dバンド」(1200~1400cm-1にある)。G
バンドは、sp結合炭素の面内振動から生じるため、sp炭素結晶のラマン特性を提
供し得る。対照的に、Dバンドは、炭素の構造欠陥に起因する面外振動から生じる。Dバ
ンドが高いほど、壊れたsp結合の割合が高く、sp結合の程度が高いことを示す。
したがって、Dバンドは格子の不規則性に関連付けられており、Gバンドに対するDバン
ドの強度の比が欠陥の尺度となる。しかしながら、Dピークが広がり、高さが減少するた
め、ある特定の閾値を超えて不規則性が増加すると、正確なDバンド測定を取得すること
が困難となる。この広がりが発生すると、DピークとGピークとの間の谷がより浅くなる
。このため、本開示は、Dバンドの代わりに不規則性を確認するために、DピークとGピ
ークとの間の谷である第4の特徴である「Tバンド」を定義および使用する。Tバンドの
谷の深さは、規則性の程度に関連している。本明細書において「Tバンド強度」と示され
るTバンド谷強度を測定すると、Dピークの広がりを示すことができる。本明細書におい
て、Tバンド強度は、Dピークに関連する波数とGピークに関連する波数との間に生じる
局所的最小強度値として定義される。
【0048】
G、2D、D、およびTバンドの強度は、本明細書においてそれぞれI、IG’(ま
たはI2D)、I、およびIとして指定される。IG’/I(またはI2D/I
)ピーク比は、試料の2次元構造化に寄与するsp炭素の割合として理解され得る。上
記のように、I/I比は、sp炭素に対する非sp炭素の割合の尺度として理解
され、欠陥濃度に関連し得る。極めて不規則な炭素の場合、I/I比は、Dピークの
広がりを反映し、欠陥濃度に関連しているため、I/Iと同様の物理的解釈を有する
【0049】
各試料について、25の異なるポイントのラマンスペクトルを測定した。測定は、20
μmのポイント間の間隔で5×5ポイントの長方形グリッド上で行った。次いで、25の
異なるポイントのスペクトルを平均して、複合スペクトルを作成した。各試料について報
告されたピーク強度比は全て、試料の複合スペクトルに由来する。
【0050】
欠陥濃度の制御および影響、ならびに欠陥の酸化を調査するために、実験A~Eを行っ
た。以下に各実験の詳細を説明する。
【0051】
実験A-手順
実験Aでは、金属酸化物テンプレート(MgO)、ならびに炭化水素種および反応器温
度等のその他のパラメータが、格子構造および反応性に及ぼす影響を調査する。
【0052】
金属酸化物粉末は、炭素質ガスの熱分解を触媒し、金属酸化物粒子の表面上の複数環(
すなわち、「多環式」)炭素構造のin-situ核形成をもたらす。格子核は、PCT
/US17/17537に開示されているように、自己触媒格子成長のためのシードを提
供することができる。成長が十分に長く続く場合、炭素格子は、金属酸化物粒子の表面を
少なくとも部分的に覆う多層構造を形成し得、これは、テンプレートおよび/または触媒
として作用し得る。次いで、金属酸化物テンプレートを炭素シェルから抽出して、テンプ
レート化された多層構造を得ることができる。
【0053】
実験Aでは、4つの炭素試料(A1~A4)を、上記の炉スキーム1を使用して、Mg
Oテンプレート誘導CVDプロセスで合成した。合成に使用される全てのガスは、Pra
xairから供給された。L-MgCOを1050℃の温度で2時間焼成することによ
りMgOテンプレートを作製し、多面体粒子(PH-MgO)の粉末を得た。
【0054】
試料A1には、CHおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に、PH
-MgO粉末300gを装填した。その後、管を閉じ、2.5RPMで回転させた。50
0sccmのArフローを開始した後、炉の温度を50分間かけて室温から1050℃ま
で上昇させた。次いで、1050℃で30分間保持した。加熱中、Arガスフローを維持
した。次に、Arフローを60分間維持しながら、160sccmのCHフローを開始
した。次いで、CHフローを停止し、連続Arフロー下で炉を室温まで冷却した。次い
で、HClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、塩化マグネシウム(MgCl)ブ
ライン水溶液中の炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イオン
水で3回濯ぎ、水性ペースト(A1-Aq)として収集した。溶媒交換プロセスにより水
をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。
【0055】
次いで、アセトンペーストを蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末A1を形成した。
【0056】
試料A2には、CHおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に300
gのPH-MgO粉末を充填し、次いでこれを閉じて、2.5RPMで管の回転を開始し
た。500sccmのArフローを開始した後、炉を50分間かけて室温から1050℃
に加熱した。その後、1050℃で30分間保持した。全ての加熱中、Arフローを維持
した。次に、Arフローを維持しながら、1920sccmのCHフローを開始した。
これを15分間継続した。次いで、CHフローを停止し、Arフローを継続しながら炉
を室温まで冷却した。過剰の酸性条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し
、MgClブライン水溶液中の炭素のスラリーを得た。炭素をブラインから濾過し、脱
イオン水で3回濯ぎ、水性ペースト(A2-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プ
ロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで
、アセトンペーストを蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末A2を形成した。
【0057】
試料A3には、CおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に30
0gのPH-MgOを装填し、次いでこれを閉じて、2.5RPMで管の回転を開始した
。500sccmのArフローを開始した後、炉を室温から750℃の設定温度まで30
分かけて加熱し、Arフローを維持しながら750℃で30分間維持した。次に、Arフ
ローを変更せずに270sccmのCフローを開始した。これを30分間継続した
。次いで、Cフローを停止し、Arフローを継続しながら炉を室温まで冷却した。
過剰の酸性条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgClブライン
水溶液中の炭素のスラリーを得た。炭素をブラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、
水性ペースト(A3-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水を
アセトンと置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで、アセトンペーストを
蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末A3を形成した。
【0058】
試料A4には、CおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に30
0gのPH-MgOを入れ、次いでこれを閉じて、2.5RPMで回転させた。500s
ccmのArフローを開始した後、炉を室温から650℃の設定温度まで30分かけて加
熱し、Arフローを維持しながら650℃で30分間維持した。次に、Arフローを変更
せずに270sccmのCフローを開始した。これを60分間継続した。次いで、
フローを停止し、Arフローを継続しながら炉を室温まで冷却した。過剰の酸性
条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgClブライン水溶液中の
炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、水
性ペースト(A4-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をア
セトンと置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで、ペーストを蒸発乾燥さ
せて、乾燥炭素粉末A4を形成した。
【0059】
次に、各水性ペーストを一連の測定に供し、炭素に対する穏やかな酸化の影響を評価し
た。次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を酸化剤として選択した。各
反応において、以下の表1に示されるように、0.5wt%の濃度の炭素および約5.3
wt%の濃度のNaOClを使用した。
【表1】
【0060】
反応を20時間実行した後、24グラムのアリコート(約0.12グラムの試料炭素を
含む)を収集した。残りの溶液をさらに20時間反応させた(全反応時間は40時間)。
20時間および40時間の時点で試料採取された溶液を濾過し、続いて炭素保持液をDI
水で洗浄し、0.2MのHCl溶液に再懸濁させた。酸性溶液を10分間攪拌し、次いで
濾過し、DI水で洗浄して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交換プロセス
を使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60
℃で蒸発乾燥させて、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭
素を、20時間実行したか40時間実行したかに基づいて、「80xBT-20時間」ま
たは「80xBT-40時間」と表示した。
【0061】
実験A-材料の特性評価および分析
本明細書において、MgOおよびCの合成直後の粉末における炭素の重量パーセントと
して定義される炭素収率は、CVDプロセス後に回収された濃い灰色の粉末に対して灰分
試験を行うことによって測定された。収率は、CVDが元々白色のMgO粉末を濃い灰色
にした後に測定されたが、色の変化は炭素の形成を示す。温度、流速、成長時間、および
炭化水素種を変化させることにより、1.71%~2.31%の範囲の同様の収率が各炭
素合成手順で得られた。試料A1~A4のSEM画像を図5に示し、A1、A3およびA
4のTEM画像を図6に示す。TEM画像では、試料A1の格子縞は、A3およびA4の
格子縞よりも平坦で整列していることが観察され得る。これは、欠陥に起因する面外変形
が比較的少ない、ほぼ六角形のspタイリングを示している。3つの試料のうち、A4
は最も非平面であり、基底面全体で欠陥の濃度が最も高く、これが面外変形を引き起こし
て、sp三角結合にある程度の四面体の特徴を与える。このひずみにより、格子のポテン
シャルエネルギーおよび化学反応性が増加するはずである。収率を表2にまとめる。
【表2】
【0062】
テンプレート抽出前の炭素の欠陥濃度は、ラマン分光法で分析した。これらの試料のス
ペクトルを図7に示し、スペクトルピーク比を以下の表3に示す。
【表3】
【0063】
ラマンスペクトル分析は、I/I(おおよその欠陥濃度)が、1050℃で生成さ
れた試料A1およびA2よりも、それぞれ750℃および650℃で生成された試料A3
およびA4の方が大幅に高いことを示している。これは、他の条件が全て等しい場合、高
温で生成された試料(すなわち1050℃で生成されたA1およびA2)が、低温で生成
された試料よりも欠陥濃度が低い(すなわちI/Iが低い)ことを示唆している。こ
れはTEM分析と一致している。A1およびA2のラマン分析を比較すると、同じ温度(
すなわち1050℃)で生成された試料の場合、ガス流速が少ないと欠陥濃度が低くなる
(すなわち流量の少ない試料A1のI/Iが低くなる)ことが示される。まとめると
、これらの結果は、PCT/US17/17537で説明されている結果と一致して、よ
り高い温度およびより低い炭化水素流速が、より規則的な欠陥の少ない炭素の合成を促進
することを示唆している。炭化水素の流速が高いほど、自己核形成(すなわち、炭素触媒
による新しい炭素格子の核形成)の速度が増加し得る。これにより、平均格子サイズが減
少し、エッジ状態の密度が増加し、ラマンスペクトルの次数が減少する。炭化水素分子で
満たされた場合、格子エッジ成長の速度は、非六角形環の形成が増加するポイントまで加
速し得る。これにより、基底面の規則性が減少する可能性がある。
【0064】
テンプレート誘導CVDを介して合成された炭素は、高い欠陥濃度を示すラマンスペク
トルを示すことが多い。高い欠陥濃度は、典型的にテンプレートで生じる高い核形成密度
によって引き起こされ得る。六角形タイリングの多数の格子核で形成された格子集合体は
、エッジの密度が高いため、一般に極めて欠陥のあるスペクトルを示す。非六角形タイリ
ングの大きな格子は、基底面に非六角形環の濃度がかなり高いため、欠陥のあるスペクト
ルを有し得る。これらの理由により、実験Aのほとんどの試料に関係するラマンスペクト
ルによって示される高い欠陥濃度は、非六角形環を有する格子の存在を独立して証明する
ものではない。非六角形格子タイリングを確認するために、ラマン結果をTGA等の他の
特性評価方法の結果と比較することができる。
【0065】
図8に示される次亜塩素酸ナトリウムで酸化された試料のTGAは、試料中の酸素部分
のレベルを確認する。Arの下で熱に曝露されると、酸化炭素試料は、主に酸素含有部分
の発生に起因する質量損失を示す。100℃~750℃の温度での各酸化炭素試料のTG
A質量損失を表4に示す。
【表4】
【0066】
試料A1では、ラマンスペクトルは比較的低い欠陥濃度を示し、したがって六角形タイ
リングの程度が高いことを示していた。したがって、次亜塩素酸ナトリウム溶液への曝露
による酸化は最小限であった。他のグラファイト炭素ナノ構造と同様に、六角形の基底面
の化学的安定性およびアクセス可能な格子エッジの欠如により、試料の作製に使用される
比較的穏やかな酸化プロセスでの広範囲の酸化が妨げられた。試料A2では、TGAで測
定された酸化はわずかに大きかった。これは、より小さな格子サイズ分布、および格子集
合体の表面上の小さな格子の自己核形成から生じるアクセス可能なエッジ欠陥の数が多い
ことに起因し得る。
【0067】
TEM分析およびラマンスペクトルは、(表3のI/Iがより高いことから明らか
であるように)試料A3およびA4が試料A1およびA2よりも大幅に欠陥があることを
示している。それに対応して、TGAデータは、A3およびA4がまたより高い酸化度(
表4に示されるようにより大きい質量損失)を示すことを示している。試料A1およびA
2と比較して、これらの炭素シェルの収率がより高いことから、酸化の増加は驚くべきこ
とであった(表2)。MgOテンプレートは4つの試料(A1~A4)のそれぞれで本質
的に同一であったため、A3およびA4のより高い収率は、それに比例して酸化剤に曝露
される表面積が少ない、より厚い多層構造を示唆している。酸化剤によるインターカレー
ションがない場合、酸化は多層構造の表面でのみ生じる。したがって、表面積の減少は通
常、酸化度がより低い(すなわち、構造の単位質量あたりの酸素がより少ない)ことを示
唆する。試料A3およびA4の多層構造が反応性の高い格子構造を含む場合でも、次亜塩
素酸ナトリウム溶液によるインターカレーションは推定されておらず、集合体表面の酸化
はより低くなることが推定される。
【0068】
表4に示される試料A3およびA4の比較的高い質量損失度は、格子の基底面が酸化さ
れたことを示している。基底面の酸化を検証するために、試料A3を、酸化前と、酸化か
ら2時間後および20時間後との両方で、XPSにより分析した。図9Aは、官能化前の
A3試料がごくわずかな酸素(0.7%)を示したのに対して、2時間および20時間の
試料はそれぞれ10%および17%の酸素を示したことを示している。インターカレーシ
ョンがない場合、これは、多層格子集合体が外側から徐々にエッチングされることを示唆
している。炭素の質量が減少すると、炭素および酸素の全質量に対するその割合もまた減
少する。図5Aは、3つの試料全てのO/C比も示している。試料A3 80xBT-2
0時間のO/C比は0.21であり、これはGOの低減に典型的なレベルである。
【0069】
2時間および20時間の試料(それぞれA3 80xBT-2時間およびA3 80x
BT-20時間)における様々な酸素含有種のXPS濃度(原子%)を図9Bに示す。図
9Bのデータは、2時間および20時間の両方の試料の酸化が、格子のエッジだけでなく
、基底面内でも生じることを示している。これは、2時間および20時間の両方の試料の
XPS結果が、エポキシド、カルボニル、およびヒドロキシル部分のかなりの量を示して
おり、これが基底面の酸化を示しているためである。六角形タイリング格子の基底面にこ
れらの官能基の有意な存在を得るためには、一般により強力な酸化剤が必要である。
【0070】
非六角形環を格子に導入すると、規則正しく積み重ねられない非平面の表面が形成され
る。襞状の領域は、数百もの環の範囲にわたって格子間の間隔を増加させ得る。試料A1
のXRD分析では、3.45Aのd間隔が示されたが、これは、平面的な乱層構造スタッ
クグラフェン格子に典型的なものである。これと比較して、試料A3およびA4のd間隔
は、それぞれ3.57Aおよび3.53Aと大きかった。酸素のインターカレーションは
、典型的には格子間のd間隔を増加させるが、酸化後の試料A3およびA4のd間隔はそ
れほど大きくはなく、インターカレーションの欠如をさらに示唆している。これは、これ
らの試料のSEM分析(図10)によってさらに証明され、多層格子集合体が元のテンプ
レート形状を保持していることが確認されるが、これはテンプレートで生成された多孔質
炭素の望ましい属性であり、集合体内の層間の間隔が酸化グラファイト構造のように拡張
されている場合には劣化し得るものである。
【0071】
このプロセスには、他にもいくつかの明確な利点がある。第1に、塩基洗浄または化学
的還元ステップが必要ない(ただし、組み込むことはできる)。ハマー法とは異なり、調
整可能な酸化が容易であり、必要な欠陥濃度が得られ、対応する量の酸素基が炭素に結合
するように、自己触媒環形成の条件を設定するだけで済む。さらに、反応の副生成物は溶
解した塩化ナトリウム(NaCl)であり、次亜塩素酸ナトリウムが全て消費されて変換
されるまで反応を継続できるため、非毒性の中性pHのブラインを簡単に廃棄できるよう
に官能化を行うことができる。異なるブライン、例えば、塩化リチウムブラインが好まし
い場合、所望のカチオンに関連する次亜塩素酸塩種が利用され得る。
【0072】
実験Aの結果は、反応器内で格子核を核形成できること、および自己触媒成長を利用し
て、制御可能な濃度の非六角形環を有する新しい格子領域を成長させることができること
を示している。非六角形環の形成を誘導する1つの簡単な方法は、改変炭素格子の形成に
関連する平均温度を調節することである。異なる炭化水素供給原料は、異なる格子成長速
度で利用することができる。実験Aでは、テンプレートが利用されたが、プロセスの他の
実施形態は、テンプレートの使用を除外することができた。実験Aで生成された官能化さ
れた炭素は、個々の官能化された格子、および官能化された格子の多層集合体の両方を含
む。穏やかな酸化プロセスで得られる基底面官能性の制御可能なレベルは、形成された欠
陥のある格子の反応性の増加を示す。インターカレーションの欠如は、格子領域の一方の
側のみを曝露することによって側面選択的官能化が得られることを示し、時間の関数とし
て増加したO:C比は、利用される酸化プロセスが漸進的酸化エッチングを含むことを示
す。これは、酸化炭素を濾過した後の濾液の琥珀色によって裏付けられた。琥珀色の濾液
は、格子エッチングによって生成されたODを示している。
【0073】
実験B
実験Bは、異なる官能性階層を有するテンプレート化された多層格子集合体の合成を示
す。実験Bのパート1では、内部の官能化されていない階層および2つの官能化された表
面階層を含む多層構造が示される。各階層の明確な格子特性は、3段階テンプレート誘導
CVDプロセスを使用することにより得られた。実験Bのパート2では、1つの非官能化
階層および1つの官能化階層を含む多層構造が示される。各階層の明確な格子特性は、2
段階テンプレート誘導CVDプロセスを使用することにより得られた。テンプレートが3
つのCVD段階の完了後に抽出されたパート1の手順とは異なり、パート2の手順では、
第1および第2のCVD段階の間でテンプレートが抽出された。
【0074】
実験Bのパート1では、炉スキーム1を使用したMgOテンプレート誘導CVDプロセ
スを介して単一の試料(試料B1)を合成した。PH-MgOテンプレートは、L-Mg
COを1050℃で2時間焼成することによって生成した。メタン/プロピレン/アル
ゴン混合物を供給ガスとして使用した。300gのPH-MgOを、炉の加熱ゾーン内の
石英管(外径100mm)内に装填した。温度上昇、成長、および冷却段階の間、管を2
.5RPMの速度で回転させた。温度を30分かけて室温から750℃に上昇させ、50
0sccmのArフロー下で750℃に30分間維持した。次に、Arフローを一定に保
ちながら、270sccmのCフローを開始した。これを5分間継続した(CVD
「段階1」)。次いで、Cフローを停止し、反応器を15分間1050℃に加熱し
、500sccmのArフロー下でさらに30分間その温度に維持した。次に、Arフロ
ーを一定に保ちながら、160sccmのCHフローを開始した。これを60分間継続
した(CVD「段階2」)。次いで、CHフローを停止し、反応器を30分にわたり7
50℃に冷却し、500sccmのArフロー下でその温度に30分間維持した。次に、
Arフローを変更せずに270sccmのCフローを開始した。これを5分間継続
した(CVD「段階3」)。次いで、Cフローを停止し、Arフローを継続しなが
ら反応器を室温まで冷却した。
【0075】
HClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgClブライン水溶液中の炭素の
スラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、水性ペー
スト(B1-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をアセトン
と置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで、ペーストを蒸発乾燥させて、
乾燥炭素粉末B1を形成した。
【0076】
次に、水性ペースト(「B1-Aq」)を使用して、炭素に対する穏やかな酸化反応の
影響を評価した。次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を酸化剤として
選択した。各反応において、表5に示されるように、0.5wt%の濃度の炭素および約
5.3wt%の濃度のNaOClを使用した。
【表5】
【0077】
反応は20時間行われ、その後、24グラムのアリコート(約0.12グラムの試料カ
ーボンを含む)が収集された。残りの溶液をさらに20時間反応させた(全反応時間は4
0時間)。20時間および40時間の時点で試料採取された溶液を濾過し、続いて炭素保
持液をDI水で洗浄し、0.2MのHCl溶液に再懸濁させた。酸性溶液を10分間攪拌
し、次いで濾過し、DI水で洗浄して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交
換プロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペー
ストを60℃で蒸発乾燥させて、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸
化された炭素を、20時間実行したか40時間実行したかに基づいて、「B1 80xB
T-20時間」または「B1 80xBT-40時間」と表示した。
【0078】
実験Bのパート2では、2段階CVDプロセスを示すために、第1段階で、炉スキーム
1を使用したMgOテンプレート誘導CVDプロセスを介して試料B2を合成し、その後
テンプレートを除去した。試料B2は、炉スキーム3を使用して試料B3を合成する自己
触媒格子成長CVDプロセスの第2段階で使用された。全てのプロセスガスは、Prax
airから供給された。
【0079】
試料B2には、CHおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に、50
0gのElastomag 170(EL-170)グレードのMgOを装填した。次い
でそれを閉じ、10RPMで回転させた。500sccmのArフローを開始した後、炉
の温度を50分かけて室温から1050℃まで上昇させた。次いで、1050℃で30分
間保持した。Arガスフローは、温度上昇および定常状態の両方の間で維持した。次に、
Arフローを変更せずに1200sccmのCHフローを開始した。これを45分間継
続した。次いで、CHフローを停止し、Arフローを継続しながら炉を室温まで冷却し
た。過剰の酸性条件下の塩酸(HCl)での酸エッチングによりMgOを抽出し、塩化マ
グネシウム(MgCl)ブライン水溶液中の炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブ
ラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、水性ペースト(B2-Aq)として収集した
。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得
た。次いで、ペーストを蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末B2を形成した。
【0080】
試料B3には、CおよびArの混合物を供給ガスとして使用し、石英管を実験に
使用した。4700sccmのArフローを開始した後、炉を室温から750℃の設定温
度まで20分かけて加熱し、Arフローを維持しながら750℃で30分間維持した。次
いで、0.302gのB2乾燥粉末を含むアルミナボートを管の低温ゾーン内に10分間
置き、高アルゴンフロー下で空気を除去した。次いで、ボートを加熱ゾーンに滑り込ませ
、そこで5分間保持して、温度を平衡化させた。次に、Arフローを変更せずに750s
ccmのCフローを開始した。これを23分間継続した。次いで、Cフロー
を停止し、ボートを加熱ゾーンに5分間放置した。次いで、ボートを低温ゾーンに滑り込
ませ、そこで10分間保持して、高流量アルゴンブランケット下で温度を下げた。室温ま
で冷却した後に試料B3を秤量した。
【0081】
次に、試料B2およびB3を次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を
使用して酸化させた。各反応において、以下の表6に示されるように、0.6wt%の濃
度の炭素および約3.1wt%の濃度のNaOClを使用した。
【表6】
【0082】
反応を30分間行った。この後、内容物を濾過して炭素保持液を得、これをDI水で洗
浄し、0.2MのHCl溶液に再懸濁した。酸性溶液を10分間攪拌した。続いて、酸性
溶液を濾過し、DI水で洗浄して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交換プ
ロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。ペーストを60℃
で蒸発乾燥させて、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素
を、B2-OxおよびB3-Oxと表示した。
【0083】
実験B-材料の特性評価および分析
炭素収率(CVDが炭素堆積によりMgO粉末を濃い灰色にした後)を灰分試験で測定
した。2.25%で、これは実験Aの炭素試料と同様であった。以下の表7は、プロセス
パラメータおよび収率をまとめたものである。
【表7】
【0084】
テンプレート抽出の前に、ラマン分光法を使用して炭素の欠陥を分析した。試料B1の
スペクトルを図11に示し、スペクトルピーク比を以下の表8に示す。
【表8】
【0085】
試料B1のラマンスペクトルは、中間レベルの2次元の規則性(すなわち、A1とA3
との間のI2D/I)および欠陥(すなわち、A1とA3との間のI/I)の両方
を示していた。このハイブリッドラマン結果は、3つの階層の存在を示しており、そのう
ちの2つはA1に類似し、1つはA3に類似している。1050□で成長した階層におけ
る改変炭素格子は、試料A1のように比較的六角形であるが、750□で成長した階層に
おける改変炭素格子は、試料A3のように著しくより欠陥を有する。試料A1、A3およ
びB1のSEM画像を図12に示すが、これは、試料B1のハイブリッドの性質を示し、
(A3のように)テンプレートの湾曲形状を良好に保持しているだけでなく、粒子全体が
被覆されているため、壊れた接合部(A1のように)はほとんどない。試料A1、A3お
よびB1のTEM画像は、図13において、多層構造の断面または壁の厚さを示している
【0086】
テンプレート誘導成長中の多層構造の同心円状の発達は、反応器の設定および付随する
成長条件の調整と組み合わせて、異なる階層の形成を可能にする。表面階層は、CVDプ
ロセスの段階1および段階3にそれぞれ対応する、テンプレート上で合成された最初およ
び最後の階層である。CVD段階2中に形成された内部階層は、より高い温度で成長した
炭素の存在に起因して、より欠陥が少なく、化学的に不活性である。
【0087】
図14に示す次亜塩素酸ナトリウムで酸化された試料のTGAは、より多くの情報を提
供する。Ar下で熱に曝露されると、酸化された炭素試料は、酸素部分の除去により質量
損失を示した。100℃~750℃の温度での各酸化炭素試料のTGA質量損失を、表9
に示す。
【表9】
【0088】
試料B1、A1、およびA3間のラマンデータおよび質量損失データを比較すると、試
料B1の構造をさらに詳しく知ることができる。試料A1では、ラマンスペクトルは比較
的高い次数を示し、高度の六角形タイリングに対応する。試料A3では、ラマンスペクト
ルはかなり多くの欠陥を示した。試料A1の収率は1.7%(表2)であり、正確な成長
条件を使用して試料B1の内部コアを生成したが、これは2.25%の収率であった(表
7)。したがって、試料B1は、試料A3タイプの格子の比較的薄い表面階層を有する、
試料A1タイプの格子から主に構成されている。TGAでは、試料B1(15%)の質量
損失(酸化レベルの代用)が試料A1(12%)タイプの格子構造をより示しており、お
そらくは欠陥のある表面階層の存在からの若干より高い酸化を有することが確認される(
表9を参照されたい)。
【0089】
B2の成長条件は、2Dピークを示す観測されたラマンスペクトルに基づき、比較的高
い程度の六角形タイリングを生成した。B3に対して選択された条件は、欠陥のある炭素
の薄い階層(全体の質量の約14%)がB2を超えて成長するが、親水性にも劇的な変化
をもたらすような条件であった。したがって、試料B3は、不活性な階層の上に形成され
た反応性の「スキン」からなる階層状の多層構造である。この構造により、疎水性炭素ナ
ノ粒子をより効果的に分散させるために、表面の階層選択的な官能化が可能になる。
【0090】
以下に示される表10は、B2の成長に使用されるパラメータの組み合わせに基づいて
B3の質量の増加をまとめたものである。
【表10】
【0091】
酸化が多層構造を徐々にエッチングし、長期間にわたってODを生成することが示され
た実験Aとは異なり、実験Bは、エッチングを制限することを目的として、はるかに短い
酸化時間を使用した。酸化時間を約30分に短縮すると、炭素表面が酸化され、カーボン
の親水性が増加し(図15に示されるように)、観察可能なOD生成がなくなった。
【0092】
実験C
実験Cは、制御可能な化学反応性が他の分子をナノ炭素に結合させる上で果たす役割を
示している。これは、実験AおよびBの結果に基づいており、改変格子および多層格子集
合体の側面選択的および階層選択的官能化を実証した。これはまた、格子核が新しい格子
領域の成長と同時に反応ゾーンを通って運搬される格子改変プロセスの実施形態を実証す
る。
【0093】
実験Cでは、1つの炭素試料(CO)を、スキーム2の炉配置を2ステップで使用する
MgOテンプレート誘導CVDプロセスを介して合成した(以下で説明される)。Ela
stomag-170(EL-170)を1050℃の温度で1時間焼成することにより
MgOテンプレートを作製し、卵形粒子(Ov-MgO)の粉末を得た。
【0094】
ステップ1では、外径60mmの石英管および炉を両方とも0.6度の傾斜に傾けた。
管を約6RPMで回転させた。CおよびArの混合物を供給ガスとして使用した。
2718gのOv-MgOをホッパーに装填し、次いでそれを封止して4720sccm
のアルゴンフローを使用してわずかな陽圧下に維持し、システムに空気が入るのを防止し
た。
【0095】
石英管内で第2の4720sccmでのArフローを開始した後、炉を室温からゾーン
1(上流)の850℃およびゾーン2(下流)の750℃の2つの設定温度まで30分か
けて加熱した。この反応器構成は、CVDプロセスの過程を通して確立および維持される
と、炭素格子核と新しい格子領域が自己触媒炭素成長と同時に運搬される複数の勾配を形
成する。第1の勾配は、in-situでの格子核形成が生じる温度から約850℃への
上昇であった。成長する炭素格子が移動する第2の温度勾配は、ゾーン1の温度からゾー
ン2の温度(すなわち850℃から750℃)への冷却であった。炭素格子が移動する第
3の温度勾配は、ゾーン2の温度から自己触媒格子成長が終了する温度までの冷却であっ
た。さらに、スキーム2に従ってCVD炉を使用すると、炭素質供給ガスの分圧、および
堆積に起因する様々な炭化水素および水素分解生成物等、他のパラメータ勾配も形成され
る。
【0096】
炉ゾーンが設定温度に達したら、システムをArフロー下で30分間それらの温度に維
持した。MgO粉末供給システムは、オーガースクリューをMgO粉末の約8g/分の重
量供給速度に対応する約7%に設定して起動された。深さを低い設定に設定し、パドルの
攪拌が10%に設定されている間浅い床が供給管を通って移動できるようにして、確実に
粉末が充填または高密度化されないようにした。粉末は、炉の加熱ゾーン内の約14分の
滞留時間を有していた。定常状態の床(すなわち、加熱ゾーンに流入する質量と加熱ゾー
ンから流出する質量がほぼ同じである床)を達成するには、(最初の材料供給の開始から
)約20分を要した。定常状態の床に達した後、Arフローを変更せずに250sccm
のCフローを開始した。(炭化水素ガスフローの開始から)最初の25分間に管を
出る粉末は廃棄された。収集は、(炭化水素ガスフローの開始から)25分の時点で開始
した。反応が完了するまでに約4時間45分を要し、2203gの生成物が得られた。
【0097】
ステップ2では、石英管(外径60mm)および炉を両方とも0.6度の傾斜に傾けた
。ここでも、管を約6RPMで回転させた。CおよびArの混合物を供給ガスとし
て使用した。2181gのステップ1で回収された粉末をホッパーに装填し、次いでそれ
を封止して4720sccmのアルゴンフローを使用してわずかな陽圧下に維持し、シス
テムに空気が入るのを防止した。石英管内で第2の4720sccmでのArフローを開
始した後、炉を室温から750℃(ゾーン1-上流)および750℃(ゾーン2-下流)
の設定温度まで30分かけて加熱した。したがって、炉には2つの温度勾配があった(7
50℃までの上昇および750℃からの下降)。
【0098】
炉のゾーンが設定温度に達したら、Arフローを維持しながら、システムを30分間維
持して平衡化させた。粉末供給システムは、オーガースクリューをMgO粉末の約8g/
分の重量供給速度に対応する約7%に設定して起動された。深さを低い設定に設定し、パ
ドルの攪拌が10%に設定されている間浅い床が供給管を通って移動できるようにして、
確実に粉末が充填または高密度化されないようにした。粉末は、加熱ゾーン内の15分の
滞留時間を有していた。定常状態の床(すなわち、加熱ゾーンに流入する質量と加熱ゾー
ンから流出する質量がほぼ同じである床)を達成するには、(最初の材料供給の開始から
)約20分を要した。定常状態の床に達した後、Arフローを変更せずに500sccm
のCフローを開始した。(炭化水素ガスフローの開始から)最初の25分間に管を
出る粉末は廃棄された。収集は、(炭化水素ガスフローの開始から)25分の時点で開始
した。反応が完了するまでに約4時間50分を要し、1925gの生成物が得られた。
【0099】
石英管の下流部分でより重い分子量の炭化水素縮合物が形成されるため、第2のCVD
ステップからの粉末を300℃で一晩加熱して、合成中に堆積した揮発性物質を除去した
。次いで、過剰の酸性条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgCl
ブライン水溶液中の炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イ
オン水で3回濯ぎ、45.10gの炭素含量を有する水性ペースト(CO-Aq)として
収集した。この水性ペーストの一部(50mgの炭素)を、溶媒交換プロセスを使用して
イソプロピルアルコールペースト(CO-IPA)を生成するために使用した。
【0100】
残りの水性ペーストの一部を酸化物型(CO-Ox)に変換し、エポキシ配合における
効果を評価した。次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を酸化剤として
選択した。以下の表11に示されるように、0.74wt%の濃度の炭素および約5.5
wt%の濃度のNaOClを使用した。
【表11】
【0101】
反応を120分間実行し、完了時に溶液を濾過した。炭素保持液をDI水で洗浄し、0
.2MのHCl溶液に再懸濁した。酸性溶液を10分間攪拌し、次いで濾過し、酸化炭素
の水性ペースト(CO-Ox-Aq)を得るためにDI水で洗浄した。
【0102】
表12に示されるように、CO-Oxをオクチルトリエトキシシランと反応させた。C
O-Ox-Aqバッチの一部をDI水と混合し、Branson 8510DTHバスソ
ニケーターを使用して超音波処理して、CO-Oxの水中懸濁液を生成した。オクチルト
リエトキシシラン(OTES)をIPAに溶解し、CO-Ox水溶液に添加し、混合物を
磁気攪拌板上で室温で1時間攪拌した。続いてこれを濾過し、IPAで洗浄して過剰なO
TESを除去した。濾過後の残渣を110℃で2時間加熱し、反応を完了させた。加熱工
程後、残留物を引き続き2回目のIPAで完全に濯ぎ、未反応のOTESを炭素表面から
洗い流し、110℃で2時間乾燥させた生成物をCO-Ox-OTESと命名した。これ
らの炭素、すなわちCO、CO-OxおよびCO-Ox-OTESを、水中での濡れ挙動
およびTGAを使用して特性評価した。
【表12】
【0103】
実験C-材料の特性評価および分析
試料COおよびCO-OxのTGA分析を実行して、試料CO-Oxの酸素官能化を確
認した。表13に示されるように、アルゴンフロー下で室温から750℃まで20℃/分
の加熱速度に曝露されると、CO-Oxの100~750℃の質量損失数は、試料COの
無視できる質量損失とは対照的に約5%であった。
【表13】
【0104】
実験AにおけるXPS結果で詳しく説明されているように、酸化後の基底面官能基の2
つは、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含み、どちらも-OH部分を有する。グリ
シジル(エポキシ)、アミン、ビニル、および脂肪族鎖等の広範囲のその他の有用な官能
基が、シランカップリング反応を介してこれらの基に付加され得る。他の官能基の付加は
、これらの酸化された炭素構造を、それらをポリマーマトリックスと適合させる様式で様
々なポリマー系に組み込むのに有用であろう。
【0105】
この実験では、オクチルトリエトキシシラン(OTES)をシランとして選択した。O
TESは、ケイ素原子に結合した脂肪族鎖を有する。炭素表面上のヒドロキシル基のシラ
ン官能化の概略図を図16に示す。ステップ1は、シランを加水分解し、それを「活性化
」してシラノールを形成するが、このプロセスは水の存在下で行われる。ステップ2は、
CO-Ox表面上のシラノールとヒドロキシル基との間の水素結合の形成を含むが、これ
は室温での攪拌下で行われる。ステップ3は、HO分子が除去される縮合反応によって
水素結合を永続的な共有結合に変換することを含むが、これは典型的には約110℃の加
熱下で1時間行われる。
【0106】
シランによる官能化は、試料CO-Oxの湿潤挙動がシラン処理後に劇的に変化し、親
水性の酸化炭素表面が疎水性になることから明らかであった。図17に示されるように、
CO-Ox試料は親水性であり、最小限の攪拌で瞬時に水中に分散するが、攪拌すると安
定した懸濁液を形成する。しかしながら、シラン処理後のCO-Ox-OTESは疎水性
であり、攪拌しても分散しない。この親水性から疎水性への変換は、シラン分子の一部を
含む長い疎水性脂肪族鎖によるものである。
【0107】
アルゴン中で実行された試料CO-Ox、CO-Ox-OTESの図18のTGA曲線
は、親水性から疎水性への遷移が酸素官能基の除去(すなわち、還元グラフェン酸化物へ
の変換)ではないことを示している。より高い質量損失は、試料CO-Ox-OTESの
方が高いが、これは、親水性CO-Oxを疎水性CO-Ox-OTESに変換した表面上
の新たな化学を示している。使用されたTGAプロファイルは、100mL/分の空気フ
ロー下での、室温から800℃までの20℃/分の上昇であった。また、図18では、ケ
イ素に結合した長鎖脂肪族基の除去である可能性がある、425℃で開始する顕著な質量
損失事象が存在する。
【0108】
実験Cは、改変炭素格子および集合体の初期の酸化的官能化が、様々な機能を形成する
ためのプラットフォームとして機能し得ることを示す。最初の官能化手順で炭素原料を選
択的に官能化できる限り、最初の官能化に基づいてさらに官能化を選択的に適用すること
もできる。さらに、実験Cは、反応器内の1つ以上のパラメータ勾配を介して格子核およ
び新しい格子領域が運搬されるCVDプロセスを示している。これは、本明細書において
、各CVD段階が一定条件で実行される実験AおよびBで利用されるもの等のCVDプロ
セスとは区別される。パラメータ勾配によって可能になる機能の1つは、格子特徴の連続
的な勾配を得る能力、および官能化後のそれらの特徴に関連する官能性である。パラメー
タ勾配により、複数のCVD段階を介して実際に改変され得るよりも、より細かく調整さ
れた動的CVD手順が可能になる。さらに、成長と同時に、成長する格子をパラメータ勾
配を介して運搬することにより、格子タイリングの突然の段階的な再改変を必要とせずに
、幅広い格子特性を格子に設計する(例えば、六角形格子核から完全に非晶質の新しい格
子領域を成長させる)ことができる。そのような格子構造の突然の変化は、機械的応力伝
達および強度等のある特定の特性にとって理想的ではない場合がある。
【0109】
実験D
実験Dは、改変炭素格子が非炭素触媒、テンプレート、または担体を必要とせずに炭素
格子核上で合成され得ることを一般的に示すために行った。さらに、実験Dは、カーボン
ブラックの格子核が安価なCVD原料として利用され得ること、および様々な炭素原料で
自己触媒的に成長した新しい格子領域もまた反応性および官能性に関して調整され得るこ
とを具体的に示している。最後に、実験Dは、核形成およびCVD成長の両方がin-s
ituで行われるプロセス実施形態とは対照的に、核形成前の炭素格子核が反応器に導入
されるプロセス実施形態を示している。
【0110】
実験Dでは、典型的な導電性グレードのカーボンブラック(D0)を基材として使用し
て、2つの炭素試料(D1およびD2)を自己触媒格子成長により合成した。全てのプロ
セスガスは、Praxairから供給された。導電性グレードのカーボンブラックVUL
CAN XC72Rは、Cabotから供給された。実験Dでは、スキーム3の炉配置を
使用した自己触媒格子成長によって、D1およびD2を合成した。
【0111】
試料D1には、CおよびArの混合物を供給ガスとして使用し、石英管を実験に
使用した。4700sccmのArフローを開始した後、炉を室温から750℃の設定温
度まで20分かけて加熱し、Arフローを維持しながら750℃で30分間維持した。次
いで、1gのカーボンブラック(D0)を含むアルミナボートを管の低温ゾーン内に10
分間置き、高アルゴンフロー下で空気を除去させた。次いで、ボートを加熱ゾーンに滑り
込ませ、そこで5分間維持して、温度を平衡化させた。次に、Arフローを変更せずに7
50sccmのCフローを開始した。これを60分間継続した。次いで、C
フローを停止し、ボートを加熱ゾーンに5分間放置した。次いで、ボートを低温ゾーンに
滑り込ませ、そこで10分間保持して、高流量アルゴンブランケット下で温度を下げた。
室温まで冷却した後に試料D1を秤量した。
【0112】
試料D1には、CHおよびArの混合物を供給ガスとして使用し、石英管を実験に使
用した。4700sccmのArフローを開始した後、炉を室温から1050℃の設定温
度まで50分かけて加熱し、Arフローを維持しながら1050℃で30分間維持した。
次いで、1gのカーボンブラック(D0)を含むアルミナボートを管の低温ゾーン内に1
0分間置き、高アルゴンフロー下で空気を除去させた。ボートを加熱ゾーンに滑り込ませ
、そこで5分間維持して、温度を平衡化させた。次に、Arフローを変更せずに130s
ccmのCHフローを開始した。これを30分間継続した。次いで、CHフローを停
止し、ボートを加熱ゾーンに5分間放置した。次いで、ボートを低温ゾーンに滑り込ませ
、そこで10分間保持して、高流量アルゴン下で温度を下げた。室温まで冷却した後に試
料D1を秤量した。
【0113】
表14は、カーボンブラックのシードに対して実験DのCVD手順を実行した結果の質
量増加をまとめたものである。表14はまた、関連するプロセスパラメータの概要も示し
ている。
【表14】
【0114】
次に、試料D1およびD2を、次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)
の穏やかな酸化を使用して酸化させた。各反応において、以下の表15に示されるように
、0.4wt%の濃度の炭素および約4.2wt%の濃度のNaOClを使用した。
【表15】
【0115】
合計20時間の反応を実行してから濾過し、続いて炭素保持液をDI水で洗浄し、0.
2MのHCl溶液に再懸濁させた。酸性溶液を10分間攪拌し、次いで濾過し、DI水で
洗浄して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をア
セトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60□で蒸発乾燥させ
て、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素を、D1-Ox
およびD2-Oxと表示した。
【0116】
実験D-材料の特性評価および分析
試料D0、D1、およびD2のSEM画像を図19に示す。試料D2およびD0の粒子
の外観は非常に類似しており、共形炭素の成長を示している。しかしながら、D1の粒子
は、おそらくは接線方向または非共形の成長のために、粗い炭素表面を有するように見え
る。そのような成長は、複雑な表面に適応する自由度がより低い平面格子領域を形成する
、六角形タイリングの程度がより高いことを示している。
【0117】
試料D0、D1、およびD2のTGA曲線(図20A)は、DO上に成長した新しい格
子領域の異なる熱的性質を示している。試料D1の場合、炭素燃焼に関連する質量損失の
開始は、D0よりも低い温度で開始する。試料D2では、開始点はより高い。これは、非
六角形格子を有するD1と一致しているが、D2のより六角形の格子配置は、より高い熱
安定性を備えている。D1-OxおよびD2-Oxの酸化後TGA曲線を図20Bに示す
。ここでもまた、試料間の異なる挙動が観察され得、複雑な熱的事象が生じている。D1
-Oxで見られる鋭いピークは、高度に酸化された炭素が急速に燃焼するという特徴であ
るが、D2-Oxのより緩やかな燃焼は、より酸化されていない炭素の特徴である。
【0118】
実験E
実験Eは、基選択的な官能化を得る能力、および様々な酸化剤で酸化を得る能力、なら
びに酸化剤および酸の組み合わせが関与する酸化を得る能力を示す。実験Eはまた、多層
格子集合体の格子層間に官能基を結合させる能力も示している。実験Eはさらに、結合し
た酸素基を修飾するために塩基洗浄または酸性化処理を利用する能力を示している。最後
に、実験Eは、硫黄または窒素等の非酸素原子を改変炭素格子に結合させる能力を示して
いる。
【0119】
3つの代替酸化プロトコルを、自己触媒成長炭素で試験した。第1の代替酸化プロトコ
ルは、処理が低pH(約4)領域で行われる次亜塩素酸ナトリウム処理プロトコルの単純
なバリエーションであった。第2および第3のプロトコルでは、それぞれ過酸化水素(H
2O2)および過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)のいずれかとともに硫酸(
H2SO4)の溶液を使用して、炭素酸化用の強力な酸化溶液を作製した。
【0120】
実験Aにおいて使用された炭素と同様に、3つの炭素試料(E0、E1およびE2)を
、上記の炉スキーム1を使用して、MgOテンプレート誘導CVDプロセスで合成した。
合成に使用される全てのガスは、Praxairから供給された。L-MgCO3を10
50℃の温度で2時間焼成することによりMgOテンプレートを作製し、多面体粒子(P
H-MgO)の粉末を得た。
【0121】
試料E0には、CH4およびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に、PH
-MgO粉末300gを装填した。その後、管を閉じ、2.5RPMで回転させた。50
0sccmのArフローを開始した後、炉の温度を50分間かけて室温から1050℃ま
で上昇させた。次いで、1050℃で30分間保持した。加熱中、Arガスフローを維持
した。次に、Arフローを60分間維持しながら、160sccmのCH4フローを開始
した。次いで、CH4フローを停止し、連続Arフロー下で炉を室温まで冷却した。次い
で、HClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、塩化マグネシウム(MgCl2)ブ
ライン水溶液中の炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イオン
水で3回濯ぎ、水性ペースト(E0-Aq)として収集した。溶媒交換プロセスにより水
をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。
【0122】
次いで、アセトンペーストを蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末E0を形成した。
【0123】
試料E1には、C3H6およびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に30
0gのPH-MgOを装填し、次いでこれを閉じて、2.5RPMで管の回転を開始した
。500sccmのArフローを開始した後、炉を室温から750℃の設定温度まで30
分かけて加熱し、Arフローを維持しながら750℃で30分間維持した。次に、Arフ
ローを変更せずに270sccmのC3H6フローを開始した。これを30分間継続した
。次いで、C3H6フローを停止し、Arフローを継続しながら炉を室温まで冷却した。
過剰の酸性条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgCl2ブライン
水溶液中の炭素のスラリーを得た。炭素をブラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、
水性ペースト(E1-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水を
アセトンと置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで、アセトンペーストを
蒸発乾燥させて、乾燥炭素粉末E1を形成した。
【0124】
試料E2には、C3H6およびArの混合物を供給ガスとして使用した。石英管に30
0gのPH-MgOを入れ、次いでこれを閉じて、2.5RPMで回転させた。500s
ccmのArフローを開始した後、炉を室温から650℃の設定温度まで30分かけて加
熱し、Arフローを維持しながら650℃で30分間維持した。次に、Arフローを変更
せずに270sccmのC3H6フローを開始した。これを60分間継続した。次いで、
C3H6フローを停止し、Arフローを継続しながら炉を室温まで冷却した。過剰の酸性
条件下のHClでの酸エッチングによりMgOを抽出し、MgCl2ブライン水溶液中の
炭素のスラリーを得た。次いで、炭素をブラインから濾過し、脱イオン水で3回濯ぎ、水
性ペースト(E2-Aq)として収集した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をア
セトンと置き換え、アセトン/カーボンペーストを得た。次いで、ペーストを蒸発乾燥さ
せて、乾燥炭素粉末E2を形成した。
【0125】
第1の酸化プロトコルでは、酸性型の次亜塩素酸ナトリウム処理を評価した。このプロ
トコルを使用して生成された酸化炭素は、「酸性漂白剤-対照」、「酸性漂白剤-塩基洗
浄」、「酸性漂白剤-塩基洗浄に続く酸性化」の3つの形式であった。
【0126】
「対照」バリエーションは、ここで説明されるように、酸性漂白プロトコルのみに供し
た。次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を酸化剤として選択し、2M
のHClを使用してpHを調整した。以下の表16に示されるように、反応には0.29
wt%の濃度の炭素が使用された。
【表16】
【0127】
反応を20時間実行し、その最後にそれらを濾過し、続いて炭素保持液をDI水で洗浄
して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をアセト
ンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60℃で蒸発乾燥させて、
酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素を、「E2 40x
ABT-20時間対照」と表示した。
【0128】
「酸性漂白剤-塩基洗浄」のバリエーションは、ここで説明されているように、酸性漂
白プロトコルおよびそれに続く塩基洗浄プロセスに供した。次亜塩素酸ナトリウム溶液(
約13wt%NaOCl)を酸化剤として選択し、2MのHClを使用して反応のpHを
調整した。塩基洗浄液として6MのNaOHを使用した。以下の表17に示されるように
、0.29wt%の濃度の炭素が使用された。
【表17】
【0129】
反応を20時間実行し、その最後にそれを濾過し、続いて炭素保持液をDI水で洗浄し
た。炭素保持液を、塩基洗浄ステップのために、10gの6M NaOH溶液に再懸濁さ
せた。塩基洗浄ステップは、30分間の磁気攪拌に続いて、30分間のバス超音波処理を
含んでいた。この高塩基性溶液を90gの水で希釈し、次いで濾過し、DI水で洗浄して
、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をアセトンと
置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60℃で蒸発乾燥させて、酸化
炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素を、「E2 40xAB
T-20時間BW」と表示した。
【0130】
「酸性漂白剤-塩基洗浄に続く酸性化」のバリエーションは、ここで説明されているよ
うに、酸性漂白プロトコル、続いて塩基洗浄プロセス、続いて酸性化ステップに供した。
次亜塩素酸ナトリウム溶液(約13wt%NaOCl)を酸化剤として選択し、2MのH
Clを使用して反応のpHを調整した。塩基洗浄液として6MのNaOHを使用し、塩基
洗浄後、濃HClを使用して溶液を酸性化した。以下の表18に示されるように、0.2
9wt%の濃度の炭素が使用された。
【表18】
【0131】
反応を20時間実行し、その最後にそれを濾過し、続いて炭素保持液をDI水で洗浄し
た。炭素保持液を、塩基洗浄ステップのために、10gの6M NaOH溶液に再懸濁さ
せた。塩基洗浄ステップは、30分間の磁気攪拌に続いて、30分間のバス超音波処理を
含んでいた。この高塩基性溶液を90gの水で希釈し、次いで濾過し、DI水で洗浄して
、酸化炭素の水性ペーストを得た。炭素保持液を10gのDI水に再懸濁させ、酸性化ス
テップのために、pHが2未満になるまで濃HClを使用して酸性化した。酸性化ステッ
プは、30分間の磁気攪拌に続いて、30分間のバス超音波処理を含んでいた。この高酸
性溶液を90gの水で希釈し、次いで濾過し、DI水で洗浄して、酸化炭素の水性ペース
トを得た。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペー
ストを得た。次いで、ペーストを60℃で蒸発乾燥させて、酸化炭素粉末を形成した。こ
のプロトコルを使用して酸化された炭素を、「E2 40xABT-20時間BW-RA
」と表示した。
【0132】
第2の代替酸化プロトコルでは、過酸化水素(H)を含む濃硫酸(より一般的に
ピラニア溶液と呼ばれる)を炭素E0、E1、E2を酸化するための酸化媒体として使用
した。
【0133】
炭素E0、E1およびE2を乾燥粉末として使用し、以下の表19に示されるようにピ
ラニア処理に供した。ピラニア溶液は、濃硫酸および30wt%過酸化水素を重量比7:
1で混合したものである。炭素を濃硫酸に添加し、10分間磁気攪拌した後、炭素-酸溶
液を氷浴中に置いて冷過酸化水素を5分かけて滴下した。この炭素を含むピラニア溶液を
、室温で24時間磁気攪拌した。
【表19】
【0134】
反応を24時間実行し、その最後に、大きな発熱がないように炭素-ピラニア溶液を過
剰の水(100mL)にゆっくりと添加することにより、反応を停止させた。これに続い
て、濾過し、炭素保持液をDI水で洗浄した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水を
アセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60℃で蒸発乾燥さ
せて、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素を、「E0
PrT 24時間」、「E1 PrT 24時間」および「E2 PrT 24時間」と
表示した。
【0135】
試料E1 PrT 24時間およびE2 PrT 24時間を、6M NaOH溶液を
使用する塩基洗浄プロトコルに供し、E1 PrT 24時間BWおよびE2 PrT
24時間BWを生成した。この合成の完全な手順を以下に示す。
【0136】
炭素E1およびE2を乾燥粉末として使用し、表19に記載さされるようにピラニア処
理に供した。ピラニア溶液は、濃硫酸および30wt%過酸化水素を重量比7:1で混合
したものである。炭素を濃硫酸に添加し、10分間磁気攪拌した後、炭素-酸溶液を氷浴
中に置いて冷過酸化水素を5分かけて滴下した。この炭素を含むピラニア溶液を、室温で
24時間磁気攪拌した。
【0137】
反応を24時間実行し、その最後に、大きな発熱がないように炭素-ピラニア溶液を過
剰の水(100mL)にゆっくりと添加することにより、反応を停止させた。これに続い
て、濾過し、炭素保持液をDI水で洗浄した。炭素保持液を、塩基洗浄ステップのために
、10gの6M NaOH溶液に再懸濁させた。塩基洗浄ステップは、30分間の磁気攪
拌に続いて、30分間のバス超音波処理を含んでいた。この高塩基性溶液を90gの水で
希釈し、次いで濾過し、DI水で洗浄して、酸化炭素の水性ペーストを得た。次いで、溶
媒交換プロセスを使用して水をアセトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、
ペーストを60℃で蒸発乾燥させて、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用し
て酸化された炭素を、「E1 PrT 24時間BW」および「E2 PrT 24時間
BW」と表示した。
【0138】
ここではAPS処理と呼ばれる第3の代替酸化プロトコルでは、酸化剤過硫酸アンモニ
ウム((NH)を含む濃硫酸を酸化媒体として使用して、炭素E0および
E2を酸化した。
【0139】
炭素E0およびE2を乾燥粉末として使用し、以下の表20に示されるようにAPS処
理に供した。APS溶液は、濃硫酸および過硫酸アンモニウムを重量比で10:1で混合
したものである。炭素を濃硫酸に添加し、10分間磁気攪拌した後、炭素-酸溶液を氷浴
中に置いて過硫酸アンモニウムを5分かけてゆっくりと添加した。この炭素を含むAPS
溶液を、室温で60時間磁気攪拌した。
【表20】
【0140】
反応を60時間実行し、その最後に、大きな発熱がないように炭素-APS溶液を過剰
の水(100mL)にゆっくりと添加することにより、反応を停止させた。これに続いて
、濾過し、炭素保持液をDI水で洗浄した。次いで、溶媒交換プロセスを使用して水をア
セトンと置き換え、アセトンペーストを得た。次いで、ペーストを60℃で蒸発乾燥させ
て、酸化炭素粉末を形成した。このプロトコルを使用して酸化された炭素を、「E0 A
PS 60時間」および「E2 APS 60時間」と表示した。
【0141】
実験E-材料の特性評価および分析
3つの代替酸化プロトコルを試験したが、3つ全てが自己触媒成長炭素を様々な程度で
、および様々な程度の基選択性で酸化し得ることが実証された。
【0142】
第1の代替酸化プロトコルは、低pH(約4)領域で行われるNaOCl処理プロトコ
ルの単純なバリエーションであった。次亜塩素酸塩溶液中の活性酸化種はpH領域に依存
し、解離していない次亜塩素酸(HOCl)の量は約pH4で最も高く、pH7を超える
と次亜塩素酸塩(OCl)イオンのみが存在することが知られている。この処理プロトコ
ルは、2つの異なる領域での漂白剤の酸化特性を比較するために使用された。TGA曲線
から明らかなように、より低いpH領域の酸化プロトコルでは、基選択性の程度が増加す
ることが観察された。生成される基の選択性の現象を理解するために、順次塩基洗浄およ
び酸性化を含む実験を行ったが、これは、それらのステップが存在するいくつかの酸素官
能基の変化を優先的に誘導するためである。
【表21】
【0143】
表21および図21Aに示されるように、試料E2 40xABT-20時間対照は、
100℃~750℃の間の質量損失のパーセンテージが最も高く(24.3%)、E2
40xABT-20時間BWおよびE2 40xABT-20時間BW-RAの両方の試
料で塩基洗浄時に約18~19%に減少する。この低下は、炭素表面上に存在するODの
除去に起因する。ODを除去した後でも、質量損失のパーセンテージは約18%であり、
そのうちの2~3%は水に起因することに留意することが重要である。
【表22】
【0144】
TEM画像(図6)に基づいて、E2タイプの炭素には約10~15層を含むセル壁が
あることがわかる。これらの層のうち、壁の最も外側の層の外側のみが酸化される。酸化
後の層間d間隔のわずかな変化(壁厚測定のXRD分析およびTEM分析で確認)によっ
て明らかなように、壁の最も外側の層の内側を含む、壁内の格子間に酸化はない。壁の平
均層数が10である保守的なモデルを想定し、10層のうち2層のみが酸化されている場
合、試料に存在する全ての酸素は、各粒子の層の10層のうち2層、または5分の1に存
在する。酸化層のみの真のC:O比を決定するには、酸素が層の5分の1にしか存在しな
いため、試料のC:O比の合計を5で割る。試料E2 40xABT-20時間BWおよ
びE2 40xABT-20時間BW-RAのXPSデータ(表22)から、総酸素含量
は14.9%~16.0%であり、それぞれ5.50および5.20の合計試料C:O比
に対応する。酸化層の真のC:O比(ODは塩基洗浄よって脱着される)は1.04~1
.1となり、これは典型的な塩基洗浄酸化グラフェンC:O比の値4~7よりも劇的に低
い。
【0145】
さらに、酸化グラフェン上の酸素基は各側の間で均等に分割されるが、実験Eでは、格
子結合酸素基は全て、酸化された格子のそれぞれの外側のみに起因する。したがって、片
側のみが酸化された格子上の所与のC:O比の場合、酸化された側の官能基密度は、両側
が酸化され、同じC:O比を有する格子の酸化された側の官能基密度の約2倍になる。こ
れは、格子改変酸化炭素の表面固有のC:O比と組み合わせて、GO等の従来の酸化ナノ
炭素と比較して、その表面ではるかに高い官能基密度を得ることができることを示唆して
いる。
【0146】
炭素ナノ粒子の表面上に劇的に多くの酸素を付加できることは、欠陥誘導酸化プロセス
の主要な利点であり、炭素ナノ粒子とそれらが付加される任意の系との間に調整された界
面を形成する上で非常に役立つことがわかる。
【0147】
第2および第3のプロトコルでは、過酸化水素-H(すなわちピラニア溶液)お
よび過硫酸アンモニウム-(NH等の酸化剤をそれぞれ添加した濃硫酸(
SO)媒体が使用された。酸化剤と組み合わせた濃硫酸は、層間酸素基をグラファ
イトにインターカレートして結合させることが示されており、この現象は、第2および第
3の代替処理プロトコルの背後にある理論的根拠であった。
【0148】
試料E0、E1、E2のラマンデータを表23に示す。試料E0、E1およびE2は、
実験Aで生成されたもの(それぞれ、A1、A3およびA4で示される)と同じ炭素タイ
プであることに留意されたい。
【表23】
【0149】
A1と同様に、試料E0は高温で成長した炭素であり、表23のラマンデータに見られ
るように、比較的高いI2D/I比を有し、これは他の試料よりも高度な2次元規則性
を示しており、I/Iピーク比が比較的低く、これは欠陥密度が低いことを示してい
る。試料E1およびE2は低温で成長した炭素であり、表23のラマンデータに見られる
ように、どちらもI2D/I比が低く(E2が最も低い)、これは2次元規則性が低い
ことを示しており、またはI/Iが高く、これは高い欠陥密度を示している。
【0150】
ピラニア処理後、試料E0、E1、およびE2は、TGAデータの表24および図22
に見られるように、それぞれ6%、14.2%、および14.9%の質量損失(100~
750℃)を有していた。実験Aと一致して、E1およびE2は、より六角形の対応物E
0よりも酸化されやすく、これは様々な酸化剤に関して当てはまる。
【表24】
【0151】
ElとE2との間の酸化を詳しく見ると、顕著な違いがある。100℃~750℃の範
囲にわたるE1およびE2の全質量損失は類似している(約14~15%)が、より詳細
な検査(図23および表25)では、試料E1は100℃~300℃の範囲内で9.6%
低下し、一方試料E2は300℃~750℃の範囲内で9.0%低下することが明らかで
ある。これは基選択的な官能化を示しており、不安定な基にはE1が好まれ、より安定な
基にはE2が好まれ得る。基選択性の現象をさらに調査するために、塩基洗浄を使用して
、酸化炭素試料のそれぞれに存在する基の正確な性質を試し、理解した。
【表25】
【0152】
様々な温度範囲での質量損失を詳しく調べることにより、炭素表面上に存在する特定の
官能基に関する情報を収集することが可能である典型的には、酸化炭素の質量損失は、温
度に基づいて大きく4つの領域、すなわち100℃未満、100~300℃、300~6
00℃および600~750℃に分類され得る。
【0153】
100℃を中心とする質量損失のピークは、水に関連する。約200℃(100~30
0℃)を中心とする第2のピークは、エポキシド、カルボキシル、カーボネート、および
一部のヒドロキシル基を含むより不安定な酸素基に関連する。450℃(300~600
℃)を中心とする第3の幅広いピークは、カルボニル基および一部のヒドロキシル基を含
むより安定な酸素官能基に関連する。720℃(600~750℃)を中心とする最後の
ピークはカルボン酸/炭酸ナトリウム塩基を含む基に関連する。
【0154】
表26および図24は、塩基洗浄の前後のTGA質量損失に関する情報を提供している

【表26】
【0155】
試料E1 PrT 24時間の質量損失のほとんど(合計14.24%の9.58%)
は、100~300℃の範囲で生じる。しかしながら、塩基洗浄後、試料E1 PrT
24時間BWは、100~300℃の範囲にわたりわずか2.2%の質量損失を示し、3
00~600℃の範囲では質量損失は3.4%とそれより高かった。塩基洗浄後の全質量
損失の大幅な減少(14.2%から7%)を考えると、E1 PrT 24時間は、塩基
洗浄によって除去されたかなりの量のODを有し、OD上の基は100~300℃の範囲
で観察された質量損失の大部分を占めていたと説明される。しかしながら、塩基洗浄後の
濾液にはODは観察されず、これは、ODが質量損失の原因ではないことを示している。
【0156】
驚いたことに、試料E1 PrT 24時間のXPS結果は、5.3%の原子濃度の窒
素およびほぼ5.5%に等しい原子濃度の硫黄を示した。存在する窒素は実質的に全て四
級窒素カチオンの形態であり、硫黄は実質的に全て硫酸アニオンの形態である。窒素およ
び硫黄を合わせた原子濃度がほぼ11%で、酸素が22%を超える場合、XPSから、四
級窒素カチオンおよび硫酸アニオンがインターカレートされた化学種を構成していること
が明らかである。
【0157】
使用される化学物質に窒素化合物がないことを考慮すると、これは驚くべきことである
。代わりに、酸化剤のインターカレーション中に格子が拡張し、溶液に溶解した大気中の
窒素をトラップするようである。溶解したガス分子は、格子の間に導入されると、極度の
閉じ込めに起因して反応するように誘導される。閉じ込めは、ある特定の種の反応性およ
びある特定の反応の反応速度を何桁も増加させることが示されており、ナノ細孔を「ナノ
反応器」として使用するという概念が生まれている。四級窒素カチオンおよび硫酸アニオ
ンの存在は、TGAの質量損失の違いを説明し、塩基洗浄がインターカレートされた化合
物を除去する効果があることを示している。
【0158】
試料E2 PrT 24時間では、全質量損失のほとんどは100~300℃および3
00~600℃の範囲で生じる。これら2つの範囲にわたる質量損失は、それぞれ5.9
%および6.1%でかなり均等に分かれる600~750℃の範囲で失われるのはわずか
2.9%である。しかしながら、試料E2 PrT 24時間BWの場合、全質量損失の
ほぼ半分は600~750℃の範囲で生じ、100~300℃および300~600℃の
範囲の質量損失はそれぞれ4.4%および5.6%に減少する。ODが大量にあった場合
、塩基洗浄により質量損失数が低減すると推定される。しかしながら、塩基洗浄後の全質
量損失は大幅に増加する(14.93%から19.35%へ)。これは、NaOHに曝露
されると酸化炭素上のカルボン酸基が中和され、ナトリウム塩が形成されることを示して
いる。
【0159】
カルボン酸基へのナトリウムカチオンの付加により、試料E2 PrT 24時間BW
の全不安定質量は、試料E2 PrT 24時間の全不安定質量に対して約30%(OD
除去による損失の純量)増加する。COOH基を塩(COONa)に変換すると、理論上
の質量は56%増加し、炭素表面上の酸素基が100%カルボン酸である(そしてODが
存在しない)場合、全不安定質量は塩基洗浄後、約56%増加するはずである。したがっ
て、不安定質量の経験的に観察された30%の増加は、全不安定質量の約54%がカルボ
ン酸で構成され、塩基洗浄によってOD関連の不安定質量が減少した程度に依存して、お
そらくより多くなることを示唆している。
【0160】
この主張のさらなる裏付けは、XPS結果におけるE2 PrT 24時間BWで観察
された約4.6%のナトリウムの大きな原子%、およびカルボン酸と比較して形成された
塩の熱安定性の大幅なシフトである。TGA曲線は、600~750℃の温度範囲でのみ
揮発する安定化種が優先的であり、より不安定なカルボキシル種の減少を明確に示してい
る。さらに、E2 PrT 24時間BW-RAのTGA曲線は、推定されるように、塩
基で洗浄した試料を酸性化すると、より不安定な種が回復することを示している。安定化
された塩の除去により、600~750℃の温度範囲への観察される質量損失のシフトが
なくなる。
【0161】
そのような高レベルの初期カルボン酸は、カルボン酸基が基底面に位置することを示す
。これは、グラフェン等の平面格子原料の場合には稀であるが、CNTの外面等の凸状格
子原料の場合に好ましい。E1タイプの炭素に対するE2タイプの炭素のTEM画像を調
べると、E2タイプの格子がはるかに湾曲しており、非平面であることがわかる。しわの
あるフリンジはよりコヒーレントでなく、追跡が困難となる。対照的に、E1タイプの格
子はより平面的である。これは、E2タイプの格子の基選択的カルボキシル化を説明して
いるが、E1タイプの格子は選択的にカルボキシル化されていないようである。すなわち
、E2タイプの格子は凸状および凹状のサイトを含む。E2タイプの格子は、その側面の
1つが酸化剤に曝露されると、局所的な格子歪み(ナノチューブの外面と同様)により凸
状サイトでサイト選択的および基選択的にカルボキシル化される。対照的に、凹状サイト
は反応性が低く、それにより寄与する酸素基が少ないと推測される。その結果、ナノチュ
ーブとは明らかに異なるにもかかわらず(例えば、その格子面のそれぞれが、凹状および
凸状の両方の特徴のどちらか一方のみではなく、その両方を有する)、その官能基が実質
的に全て凸状サイトに位置し、高度のカルボキシル化をもたらすため、ナノチューブに類
似した炭素となる。
【0162】
APS処理は、様々な酸化プロトコルに対する改変格子の化学酸化電位の違いを示す追
加的方法として選択された。APS処理後、表27および図25におけるTGAデータに
見られるように、E0およびE2はそれぞれ12.1%および21.9%の質量損失(1
00~750℃)を有していた。酸化プロトコルとしてのAPS処理は、観察可能なOD
を生成しなかったことに留意されたい。
【表27】
【0163】
前の実験の他の酸化処理と同様に、実験Eはさらに、格子改変炭素を様々な種類の化学
物質、具体的には様々な種類の酸化剤に曝露して、化学的官能化を誘発する能力を検証す
る。実験Eはさらに、格子炭素が窒素または硫黄原子に結合している格子および多層格子
集合体を生成する能力を示している。格子間の閉じ込めは、通常の条件下では予測されな
いある特定の反応を誘導することが示されている。さらに、多層構造の格子間に官能基が
付加され得ることが示されている。実験Eはまた、片面酸化の場合、曝露側の酸素基の官
能基密度が酸化グラフェン上の酸素基の官能基密度よりも大幅に高くなり得ることを示し
ている。両側に凹状および凸状の両方の特徴を備えた改変格子構造を利用した、基選択的
およびサイト選択的官能化もまた示されている。
【0164】
本出願は、本文および図においていくつかの数値範囲を開示している。本開示は開示さ
れた数値範囲にわたり実践され得るため、開示された数値範囲は、本明細書において正確
な範囲限定が逐語的に述べられていない場合でも、開示された数値範囲内の範囲または値
を包含する。
【0165】
上記の説明は、当業者が本開示を作製および使用できるようにするために提示されてい
る。実施形態に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義され
る一般的な原理は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および
用途に適用され得る。したがって、本開示は、示される実施形態に限定されることを意図
するものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与え
られるべきである。最後に、本出願で参照される特許および刊行物の開示全体が、参照に
より本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内の炭素格子核を、室温~1500℃の温度に加熱するステップと、
前記炭素格子核を炭素質ガスに曝露して、
前記炭素質ガス中の炭素原子を前記炭素格子核のエッジに吸着させるステップと、
多原子環の一部が非六角形環を含む前記多原子環において、吸着された前記炭素原子を互いに共有結合させるステップと、
前記多原子環を前記炭素格子核から伸びる1つまたは複数の新しい格子領域で互いに共有結合させ、それにより前記非六角形環を組み込んだ改変格子を形成するステップと、
前記改変格子の一部を1種または複数種の化学物質に曝露して、官能基および分子の少 なくとも1つを前記改変格子に結合させるステップと
を含む方法によって形成される、化学的に官能化された炭素格子。
【外国語明細書】