(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116252
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】グラフェン又はグラフェン誘導体膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20240820BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240820BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20240820BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20240820BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240820BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20240820BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20240820BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/42
B01D71/56
B01D71/68
B01D71/16
B01D71/34
B01D71/36
B01D71/52
B01D71/26
B01D71/48
B01D71/54
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/06
B01D69/08
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092082
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2020545894の分割
【原出願日】2018-11-23
(31)【優先権主張番号】1719767.4
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520185281
【氏名又は名称】ジー2オー ウォーター テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】リュウ カンシェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】濾過のための改善された膜を提供する。
【解決手段】多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含む、好適には水の濾過のための濾過膜。活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有する。二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含む。濾過膜及び濾過膜を含有する濾過装置を生成する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材層及び前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含む、好適には水の濾過のための濾過膜であって、前記活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、前記二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、基材は、多孔性フィルム基材又は中空繊維基材から選択される、濾過膜。
【請求項2】
濾過膜、好適には請求項1に記載の膜を生成する方法であって、前記膜は、多孔性基材層及び前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、前記活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、前記二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、前記方法は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.前記基材を、前記グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物と接触させるステップ、
c.任意選択で、前記膜を乾燥させるステップ
を含み、前記基材は、多孔性フィルム基材又は中空繊維基材から選択される、方法。
【請求項3】
濾過膜、好適には請求項1に記載の膜であって、多孔性基材層及び前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、前記活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、前記二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、前記膜は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.前記基材を、前記グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物と接触させるステップ、
c.任意選択で、前記膜を乾燥させるステップ
を含む方法によって生成され、前記基材は、多孔性フィルム基材又は中空繊維基材から選択される、濾過膜。
【請求項4】
前記グラフェン又はその誘導体を含む前記コーティング組成物は、前記基材上に印刷される、請求項2又は3に記載の濾過膜を生成する方法又は濾過膜。
【請求項5】
前記グラフェン又はその誘導体を含む前記コーティング組成物は、前記基材上にインクジェット印刷される、請求項2~4のいずれか一項に記載の濾過膜を生成する方法又は濾過膜。
【請求項6】
前記基材は、多孔性フィルムから形成され、好適には、前記多孔性フィルムは、無機多孔性フィルム、有機多孔性フィルム及び無機-有機多孔性フィルムから選択され得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項7】
前記多孔性フィルムは、ゼオライト、ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ベントナイト及びモンモリロナイトクレイ基材の1つ又は複数から選択される材料から形成される、請求項6に記載の膜又は方法。
【請求項8】
前記多孔性フィルムは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリ(エーテル)スルホン(PES)、酢酸セルロース(CA)、ポリ(ピペラジン-アミド)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)、ポリアミド-尿素、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリプロピレン、ポリ(フタラジノンエーテルケトン)及び複合薄膜多孔性フィルム(TFC)の1つ又は複数から選択される材料から形成される、請求項6又は7に記載の膜又は方法。
【請求項9】
前記TFCは、多孔性ポリマー支持体膜の上においてインサイチューで重合された超薄「バリア」層、例えばポリスルホン膜の上に形成される、境界面で合成されたポリアミドの、市販のポリアミドに由来するTFC及び/又はポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(ビニル-アルコール)(PVA)、ポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(フタラジノンビフェニルエーテルスルホン(PPBES)、加水分解された三酢酸セルロース(CTA)/酢酸セルロース(CA)TFCを含む、請求項8に記載の膜又は方法。
【請求項10】
多孔性フィルムは、多孔性有機ポリマーフィルム中に無機粒子を含む混合マトリックス膜から形成され、好ましくはポリスルホン多孔性膜を伴うジルコニアナノ粒子;1つ又は複数のタイプの無機粒子を含む薄膜ナノ複合膜;金属ベース(アルミニウム発泡体、銅発泡体、Pb発泡体、ジルコニウム発泡体及びSn発泡体、金発泡体)から選択される材料から形成される、請求項6~9のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項11】
前記多孔性基材は、不織布、例えばナノ不織布を含み、好ましくは、前記不織布は、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン並びに/又はポリウレタンで形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項12】
前記基材は、多孔性ポリマーフィルムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項13】
前記基材は、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び複合薄膜(TFC)、例えばポリスルホン担持ポリアミド複合フィルムの1つ又は複数から選択される材料から形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項14】
前記基材は、1つ又は複数のポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)及び複合薄膜(TFC)、例えばポリスルホン担持ポリアミド複合フィルムから選択される材料から形成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項15】
前記基材は、処理された基材であり、好ましくは、前記コーティング組成物を受け入れるように操作可能である前記基材の表面は、親水化、及び/又は官能基の添加、好適にはグラフト、及び/又は親水性添加物の添加に供されており、好ましくは、前記添加される官能基は、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸及びアミン基の1つ又は複数から選択され、好ましくは、前記親水性添加物は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナノ充填剤、表面修飾巨大分子及び双性イオンの1つ又は複数から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項16】
支持体は、微多孔又は限外濾過、好ましくは限外濾過であり、好適には、前記基材層の孔径は、0.1nm~4000nm、例えば≦3000nm又は≦2000nm、≦1000nm又は≦500nm、例えば≦250nm、≦100nm、≦50nm又は≦1nmである、請求項1~15のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項17】
前記基材の孔径は、前記二次元材料の粒子の平均サイズより小さい、請求項1~16のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項18】
前記基材層は、5~125μm、例えば5~100μm、又は10~100μm、又は30~100μm、好ましくは30~90μm、より好ましくは30~85μm、例えば30~70μm又は30~60μmの厚さを有し、任意選択で、前記基材層は、5~30μm、例えば8~25μm又は8~20μm、好ましくは10~15μmの厚さを有し得、好適には、前記基材は、ポリスルホン基材である、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項19】
前記基材は、0~1μm、例えば<500nm又は<300nm、例えば<200nm又は<100nm、好ましくは<70nm又は<50nm、より好ましくは<30nmの表面粗さ、好適にはRzを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項20】
前記活性層を受け入れるように操作可能である前記基材の前記表面は、親水性である、請求項1~19のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項21】
前記基材表面上の前記コーティング組成物の接触角は、<90°、例えば<70°、好ましくは<50°である、請求項1~20のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項22】
前記活性層は、2~1μm、例えば3~800nm又は4~600nm、例えば5~400nm又は5~200nm、好ましくは5~150nm又は5~100nmの厚さを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の膜又は方法。
【請求項23】
前記グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、水和グラフェン及びアミノをベースとするグラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化還元酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化還元酸化グラフェン並びに/又はポリマーグラフェンエアロゲルの1つ又は複数から選択され、好ましくは、前記グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン及び/又はアミノ基官能化酸化グラフェン、より好ましくは酸化グラフェンである、請求項1~22のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項24】
前記グラフェン又はその誘導体、好ましくは酸化グラフェンの酸素含量は、0~60%の酸素原子百分率、例えば0~50%又は0~45%の酸素原子百分率、好ましくは20~25%、又は25~45%、又は30~40%の酸素原子百分率である、請求項1~23のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項25】
前記グラフェン又は誘導体は、5~20%の酸素原子百分率の酸素含量を有する還元酸化グラフェンである、請求項1~24のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項26】
前記グラフェン又はその誘導体、好適には酸化グラフェンは、さらなる官能基、例えばグラフトされた官能基で置換され、好ましくは前記グラフェン又はその誘導体の既存のヒドロキシル基、カルボン酸基及びエポキシド基との反応を介してグラフトされる、請求項1~25のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項27】
前記グラフェン又はその誘導体、好適には酸化グラフェンは、アミン基;脂肪族アミン基、例えば長鎖(例えば、C18~C50)脂肪族アミン基;ポルフィリン官能化第二級アミン基及び/又は3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン基の1つ又は複数から選択されるさらなる官能基で置換される、請求項1~26のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項28】
前記グラフェン又はその誘導体、好ましくは酸化グラフェンは、アミノ基、好適にはグラフトされたアミノ基を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項29】
前記グラフェン又はその誘導体は、1nm~5000nm、例えば50~750nm、若しくは100~500nm、若しくは100~400nmのサイズを有するか;又は好適には100~3500nm、例えば200~3000nm、300~2500nm若しくは400~2000nm、好ましくは500~1500nmのサイズを有するか;又は好適には500~4000nm、500~3500nm、500~3000nm、750~3000nm、1000~3000nm、例えば1250~2750nm若しくは好ましくは1500~2500nmのサイズを有するフレークの形態である、請求項1~28のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項30】
前記グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズ分布は、前記グラフェンフレーク又はその誘導体の少なくとも30重量%が1~750nm、100~500nm、100~400nm;又は100~3500nm、例えば200~3000nm、300~2500nm若しくは400~2000nm、好ましくは500~1500nm;又は500~4000nm、500~3500nm、500~3000nm、750~3000nm、1000~3000nm、例えば1250~2750nm若しくは好ましくは1500~2500nmの直径を有するようなものであり、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は95重量%、又は98重量%、又は99重量%である、請求項1~29のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項31】
前記活性層又は組成物は、材料、好適にはグラフェン又はその誘導体以外の二次元材料、好ましくはシリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、好適には六方晶窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、二硫化モリブデン及び二硫化タングステン、ポリマー/グラフェンエアロゲルから選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項32】
前記活性層又は組成物は、実質的に、好適にはグラフェン又はその誘導体、より好ましくは酸化グラフェン又は還元酸化グラフェン、最も好ましくは酸化グラフェンの二次元材料から形成される、請求項1~31のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項33】
前記膜は、水処理、例えば油/水の分離;水域環境における医薬品残渣の除去のための医薬品濾過;生物濾過、例えば微生物と水との間の分離;脱塩若しくは選択的イオン濾過;及び核廃水からの放射性元素の除去のための核廃水の濾過;血液処理、例えば損傷された腎臓フィルターを置き換える生理学的濾過及び血液濾過;並びに/又は源、例えば植物、例えば草に由来するバイオプラットフォーム分子の分離のためのものである、請求項1~32のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項34】
前記膜は、水処理、例えば脱塩若しくは油及び水の分離又は医薬品濾過のためのものである、請求項1~33のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項35】
前記印刷は、インクジェット印刷、エアゾール印刷、3D印刷、オフセットリソグラフィー印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷技術、パッド印刷、カーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングから選択される、請求項2又は4~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記活性層は、インクジェット印刷で前記基材上に接触される、請求項1~35のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項37】
前記コーティング組成物は、液体担体及び前記グラフェン又はその誘導体を含む液体組成物である、請求項1~36のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項38】
前記液体担体は、任意選択で、結合剤、乾燥添加物、抗酸化剤、還元剤、平滑剤、可塑剤、ワックス、キレート剤、界面活性剤、顔料、消泡剤及び増感剤の任意の1つ又は複数を含む、前記組成物の性能及び/又はレオロジーを増強させる他の材料と共に水及び/又は有機溶媒、例えばイソプロパノール、メチルエチルケトン、エタノール又は酢酸エチルを含む、請求項37に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項39】
好適には酸化グラフェンのための前記液体担体は、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、キシレン又はこれらの混合物から選択され、好ましくは、前記液体担体は、水、アセトン又は水/アセトン混合物、例えば20~80容量%の水/アセトン混合物から選択される、請求項37又は38に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項40】
好適にはグラフェン及び/又は還元酸化グラフェンのための前記液体担体は、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、キシレン又はこれらの混合物;好ましくは、任意選択で1つ若しくは複数の界面活性剤を伴う水又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、最も好ましくは水から選択され得る、請求項37~39のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項41】
前記コーティング組成物中の前記グラフェン又はその誘導体の濃度は、0.3mg/ml~4mg/ml、例えば0.3mg/ml~3mg/ml、又は0.3mg/ml~2mg/ml、又は好ましくは0.3~1.5mg/mlである、請求項1~40のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項42】
前記グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズは、ノズルサイズの≦1/10、例えばノズルサイズの≦1/15である、請求項1~41のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項43】
前記組成物は、好適には酸素含量が<25%であるとき、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項44】
前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、シクロヘキサノン、テルピネオール、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル及びエタノールの1つ又は複数から選択される、請求項1~43のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項45】
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である、請求項1~46のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項46】
前記コーティング組成物は、結合剤を含み、好ましくは、前記結合剤は、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、アルキド、スチレン系樹脂、セルロース、セルロース誘導体、多糖、多糖誘導体、ゴム樹脂、ケトン、マレイン酸樹脂、ホルムアルデヒド、フェノール樹脂、エポキシド、フマル酸樹脂、炭化水素、ウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、シェラック、ポリビニルアルコールから選択される樹脂から選択される1つ又は複数である、請求項1~45のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項47】
前記コーティング組成物の粘度は、1~14cPa、好ましくは5~15cPa、例えば10~12cPaである、請求項1~46のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項48】
前記コーティング組成物の表面張力は、1~150mN/m、例えば28~80mN/mである、請求項1~47のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項49】
前記コーティング組成物は、1~16のZ数を有する、請求項1~48のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項50】
前記インクジェット印刷は、オンデマンド型(DOD)インクジェット印刷、例えば圧電若しくは熱;又は連続インクジェット印刷(CIJ)であり、好ましくは、前記インクジェット印刷は、DODインクジェット印刷である、請求項1~49のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項51】
インクジェットプリンターのノズルサイズは、5um~100um、好ましくは5um~60umである、請求項1~50のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の濾過膜を含む濾過装置。
【請求項53】
重力濾過装置、真空濾過装置又は加圧式濾過装置である、請求項52に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜に関する。さらに具体的には、本発明は、好適には水処理のための濾過膜を印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜濾過は、一般に、膜の表面にわたって加えられる駆動力、例えば圧力を加えることを伴う、構成要素の混合物を分離するための半透性材料の層を使用する。
【0003】
膜濾過は、原則的に、かなりの熱入力がないこと、化学添加物がより少ないこと及び使用済みの媒体の再生への要求がより低いことにより、他の水処理技術より好まれる。圧力によって推進される膜プロセスは、食品産業及び石油産業からの廃水処理から海水の脱塩までの異なる用途をカバーする、微粒子、イオン、微生物、細菌及び天然有機材料の除去のために水処理において最も広範に適用される膜技術である。
【0004】
典型的には、濾過膜は、特徴的な孔径又は意図する用途によって分類される。100nmまでの低い孔径を有する精密濾過膜(MF)を使用して、細菌、懸濁粒子及び一部のウイルスを除去することができる。10nmまでの低い孔径を有する限外濾過膜(UF)を使用して、タンパク質、ウイルス及びコロイド粒子を除去することができる。1nmまでの低い孔径を有するナノ濾過膜(NF)を使用して、多価イオン及び溶解した化合物を選択する能力を提供することができる。0.1nmまでの低い孔径を有する逆浸透膜(RO)は、水が通過することのみを可能とする。
【0005】
現在、市販の濾過膜は、多くの用途において良好に機能する。しかし、新たな水資源をもたらし、且つ既存の水資源を保護するという推進力により、改善された防汚特性、選択性、生産性及び低コストでより長い寿命を有し且つより制御可能な製造欠陥を有するより進歩した膜が求められている。これらの要求を満たす特性を有する新規な材料及び新規な加工技術が望まれている。
【0006】
ナノ材料又は二次元材料は、市販のフィルター装置の濾過膜における使用のために興味の対象となるものであり得る。しかし、このような材料は、スケーラビリティ並びに材料及び製造プロセスの高い価格に関して問題を提示し得る。
【0007】
一般に、水処理のためのロバストな濾過膜は、高い化学的、機械的及び熱的な安定性、清浄性を伴う良好な汚損抵抗、長い寿命、高い透過性並びに制御可能な選択性を含む特性を示すべきである。膜は、商業的な入手しやすさ、例えば低い材料及び製造コスト、高い製造スケーラビリティ並びに商品化までの妥当な準備時間も有するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、濾過のための改善された膜が必要とされている。したがって、上述又は他の問題の1つ又は複数に取り組むことが本発明の態様の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含む、好適には水の濾過のための濾過膜が提供され、活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含む。
【0010】
本発明の第2の態様によると、濾過膜、好適には本発明の第1の態様による膜を生成する方法が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、方法は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.基材を、グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物と接触させるステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む。
【0011】
本発明の第3の態様によると、濾過膜、好適には本発明の第1の態様による膜が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、膜は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.基材を、グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物と接触させるステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む方法によって生成される。
【0012】
本発明のさらなる態様によると、濾過膜、好適には本発明の任意の他の態様による膜を生成する方法が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、方法は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物を基材上に印刷するステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む。
【0013】
本発明のさらなる態様によると、濾過膜、好適には本発明の第1の態様による膜が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を有し、二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含み、膜は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物を基材上に印刷するステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む方法によって生成される。
【0014】
本発明のさらなる態様によると、濾過膜、好適には本発明の第1の態様による膜を生成する方法が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、グラフェン又はその誘導体を含み、方法は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ
b.グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物を基材上にインクジェット印刷するステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む。
【0015】
本発明のさらなる態様によると、濾過膜、好適には本発明の第1の態様による膜が提供され、膜は、多孔性基材層及び基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層を含み、活性層は、グラフェン又はその誘導体を含み、膜は、
a.任意選択で、基材を処理するステップ、
b.グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物を基材上にインクジェット印刷するステップ、
c.任意選択で、膜を乾燥させるステップ
を含む方法によって生成される。
【0016】
本発明のさらなる態様によると、濾過膜の製造における使用、好適には濾過膜のインクジェット印刷における使用のためのコーティング組成物が提供され、組成物は、グラフェン又はその誘導体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の任意の態様の基材層は、濾過プロセス中に活性層を支持するように操作可能である任意の多孔性材料を含み得る。基材は、1つの層又は複数の層を含み得る。
【0018】
基材は、材料、例えば多孔性フィルム、中空繊維及び分厚い形状物から形成され得る。好適には、基材は、多孔性フィルムから形成される。
【0019】
多孔性フィルムは、無機多孔性フィルム、有機多孔性フィルム及び無機-有機多孔性フィルムから選択され得る。
【0020】
無機多孔性フィルムは、ゼオライト、ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ベントナイト及びモンモリロナイトクレイ基材の1つ又は複数から選択される材料から形成され得る。
【0021】
有機多孔性フィルムは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリ(エーテル)スルホン(PES)、酢酸セルロース(CA)、ポリ(ピペラジン-アミド)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)、ポリアミド-尿素、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリプロピレン、ポリ(フタラジノンエーテルケトン)及び複合薄膜多孔性フィルム(TFC)の1つ又は複数から選択される材料から形成され得、好適には、TFCは、多孔性ポリマー支持体膜の上においてインサイチューで重合された超薄「バリア」層、例えばポリスルホン膜の上に形成される、境界面で合成されたポリアミドの、市販のポリアミドに由来するTFC及び/又は他のTFC、例えばポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(ビニル-アルコール)(PVA)、ポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(フタラジノンビフェニルエーテルスルホン(PPBES)、加水分解された三酢酸セルロース(CTA)/酢酸セルロース(CA)TFCを含む。
【0022】
多孔性フィルムは、ナノテクノロジーをベースとする多孔性フィルム、例えばナノ構造のセラミック多孔性フィルム、無機-有機多孔性フィルム及び/又はナノ多孔性不織布であり得る。
【0023】
ナノ構造のセラミック多孔性フィルムは、例えば、水熱結晶化又はドライゲル変換方法により、その上部において、ゼオライト、好適には合成されたゼオライトと共に膜、好適には通常の圧力によって推進される膜の層で形成され得る。他のナノ構造のセラミック多孔性フィルムは、反応性又は触媒コーティングされたセラミック表面の基材である。このような基材は、活性層との強力な相互作用を有利にもたらし、フィルターの安定性を改善し得る。
【0024】
混合マトリックス膜を含有する無機-有機多孔性フィルムは、多孔性有機ポリマーフィルム中に含有される無機粒子から形成され得る。無機-有機多孔性フィルムは、ポリスルホン多孔性膜を伴うジルコニアナノ粒子から選択される材料から形成され得る。有利には、無機-有機多孔性フィルムは、製造が容易である、良好な機械的強度を有する低コストの基材の組合せを実現し得る。無機-有機多孔性フィルム、例えばポリスルホンを伴うジルコニアナノ粒子は、高い透過性を有利に実現し得る。他の無機-有機多孔性フィルムは、1つ又は複数のタイプの無機粒子を含む薄膜ナノ複合膜;金属ベース(アルミニウム発泡体、銅発泡体、Pb発泡体、ジルコニウム発泡体及びSn発泡体、金発泡体);有機マトリックス中に無機充填剤を含み、有機-無機混合マトリックスを形成する混合マトリックス基材から選択され得る。
【0025】
多孔性基材は、ナノ不織布を含み得る。有利には、ナノ不織布は、高い多孔性、表面積及び/又は制御可能な官能性を実現する。不織布は、ナノスケールの直径を有する繊維を含み得る。不織布は、好適にはエレクトロスピニングにより、好適には酢酸セルロース、ポリウレタンなどを使用して、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン並びに/又はポリウレタンで形成され得る。
【0026】
基材は、フラットシートストック又は中空繊維として製造され、次いでいくつかのタイプの膜基材の1つ、例えば中空繊維基材又は渦巻形膜基材に作製され得る。適切なフラットシート基材は、Dow Filmtec及びGE Osmonicsから得ることができる。
【0027】
好ましくは、基材は、多孔性ポリマーフィルムである。有利には、多孔性ポリマーフィルムの形態の基材は、加工における改善された容易さ及び/又はより低いコストを実現することができる。
【0028】
基材は、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び複合薄膜(TFC)、例えばポリスルホン担持ポリアミド複合フィルムの1つ又は複数から選択され得る。好ましくは、基材は、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)及び複合薄膜(TFC)、例えばポリスルホン担持ポリアミド複合フィルムの1つ又は複数から選択される。
【0029】
基材は、処理された基材であり得る。コーティング組成物を受け入れるように操作可能である基材の表面は、親水化に供されていることができる。前記基材処理は、官能基の添加、好適にはグラフト及び/又は親水性添加物の添加を含み得る。添加される官能基は、ヒドロキシル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸及びアミン基の1つ又は複数から選択され得る。官能基のグラフトは、プラズマ処理、酸化還元反応、照射、UV-オゾン処理及び/又は化学的処理によるものであり得る。親水性添加物は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナノ充填剤、表面修飾巨大分子及び双性イオンから選択され得る。添加物の添加は、膜表面上に所望の官能性を有する添加物をコーティング又は堆積することによって行われ得る。
【0030】
有利には、前記親水性及び/又は基材上の官能性の存在は、より均一な構造及び改善された連続性を有する活性層を提供する。前記親水性及び/又は官能性は、改善されたフィルター寿命及び安定性も実現し得る。
【0031】
基材層は、任意の適切な孔径を有し得る。支持体は典型的には、微多孔膜又は限外濾過膜、好ましくは限外濾過膜である。基材層の孔径は、0.1nm~4000nm、例えば≦3000nm又は≦2000nm、≦1000nm又は≦500nm、例えば≦250nm、≦100nm、≦50nm又は≦1nmであり得る。好ましくは、基材の孔径は、二次元材料の粒子の平均サイズより小さい。例えば、酸化グラフェンが500nmの平均サイズを有するフレークの形態である場合、多孔性基材の孔径は、好ましくは、500nmより小さい。
【0032】
基材層は、任意の適切な厚さを有し得る。基材層の厚さは、5~125μm、例えば5~100μm、又は10~100μm、又は30~100μm、好ましくは30~90μm、より好ましくは30~85μm、例えば30~70μm又は30及び60μmであり得る。任意選択で、基材層は、5~30μm、例えば8~25μm又は8~20μm、好ましくは10~15μmの厚さを有し得、好適には、前記基材は、ポリスルホン基材である。
【0033】
基材は、例えば、0~1μm、例えば<500nm又は<300nm、例えば<200nm又は<100nm、好ましくは<70nm又は<50nm、より好ましくは<30nmの表面粗さ、好適にはRzを有し得る。有利には、低い表面粗さは、活性層における構造の改善された均一性を実現することができる。
【0034】
活性層を受け入れるように操作可能である基材の表面は、親水性であり得る。好適には、基材表面上のコーティング組成物の接触角は、<90°、例えば<70°、好ましくは<50°である。
【0035】
本発明の任意の態様の活性層は、2~1μm、例えば3~800nm又は4~600nm、例えば5~400nm又は5~200nm、好ましくは5~150nm又は5~100nmの厚さを有し得る。
【0036】
グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、水和グラフェン及びアミノをベースとするグラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化還元酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化還元酸化グラフェン及び/又はポリマーグラフェンエアロゲルの1つ又は複数から選択され得る。好ましくは、グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェンである。グラフェン及びその誘導体は、Sigma-Aldrichから商業的に得ることができる。
【0037】
好適には、グラフェン又はその誘導体、好ましくは酸化グラフェンは、ヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシド基を含む。グラフェン又はその誘導体、好ましくは酸化グラフェンの酸素含量は、0~60%の酸素原子百分率、例えば0~50%又は0~45%の酸素原子百分率であり得る。好適には、酸素含量は、20~25%又は25~45%である。有利には、水分含量が25~45%であるとき、界面活性剤は、組成物中に存在しなくてもよい。好ましくは、酸素含量は、30~40%の酸素原子百分率である。このような範囲は、他の安定化構成要素が存在しないにも関わらず、改善された安定性を実現することができる。好適には、グラフェン又は誘導体が還元酸化グラフェンであるとき、酸素含量は、5~20%の酸素原子百分率である。酸素含量は、X線光電子分光法(XPS)によって特性決定することができる。
【0038】
グラフェン又はその誘導体、好適には酸化グラフェンは、さらなる官能基で任意選択で置換され得る。任意選択の官能基は、グラフトされた官能基であり得、好ましくはグラフェン又はその誘導体の既存のヒドロキシル基、カルボン酸基及びエポキシド基との反応を介してグラフトされ得る。官能化は、共有結合的修飾及び非共有結合的修飾を含む。共有結合的修飾方法は、求核置換反応、求電子置換反応、縮合反応及び付加反応に下位分類することができる。任意選択の官能基の例は、アミン基;脂肪族アミン基、例えば長鎖(例えば、C18~C50)脂肪族アミン基;ポルフィリン官能化第二級アミン基及び/又は3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン基である。グラフェン又はその誘導体は、アミノ基、好適にはグラフトされたアミノ基を含み得、且つ好ましくは酸化グラフェンである。このような官能化は、鉄酸の改善された選択的ふるい分けを提供することができる。
【0039】
本発明の任意の態様によるグラフェン又はその誘導体は、1nm~5000nm、例えば50~750nm、100~500nm、100~400nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。本発明の任意の態様によるグラフェン又はその誘導体は、100~3500nm、例えば200~3000nm、300~2500nm又は400~2000nm、好ましくは500~1500nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。本発明の任意の態様によるグラフェン又はその誘導体は、500~4000nm、500~3500nm、500~3000nm、750~3000nm、1000~3000nm、例えば1250~2750nm又は好ましくは1500~2500nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。好適には、グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズ分布は、グラフェンフレーク又はその誘導体の少なくとも30重量%が1nm~5000nm、例えば1~750nm、100~500nm、100~400nm;又は100~3500nm、例えば200~3000nm、300~2500nm若しくは400~2000nm、好ましくは500~1500nm;又は500~4000nm、500~3500nm、500~3000nm、750~3000nm、1000~3000nm、例えば1250~2750nm若しくは好ましくは1500~2500nmの直径を有するようなものであり;より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%である。グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、JEOL株式会社、日本)を使用して測定され得る。
【0040】
グラフェン又はその誘導体は、単層又は多層の粒子、好ましくは単層の形態であり得る。グラフェンフレーク又はその誘導体は、単一層、2層又は数層のグラフェン又はその誘導体で形成され得、ここで、数層は、3~20層と定義され得る。好適には、グラフェンフレーク又はその誘導体は、1~15層、例えば2~10層又は5~15層を含む。好適には、グラフェンフレーク又はその誘導体の少なくとも30重量%は、1~15層、例えば1~10層又は5~15層を含み、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%である。グラフェンフレーク又はその誘導体における層の数は、原子間力顕微鏡(AFM又は透過型電子顕微鏡(TEM))(TT-AFM、AFM workshop Co.、CA、USA)を使用して測定され得る。
【0041】
好適には、グラフェン又はその誘導体における隣接する格子面間の面間隔は、0.34nm~1000nm、例えば0.34nm~500nm、又は0.4~500nm、又は0.4~250nm、例えば0.4~200nm、又は0.4~150nm、又は0.4~100nm、又は0.4~50nm、又は0.4~25nm、又は0.4~10nm、又は0.4~5nm、例えば0.45~4nm、0.5~3nm、0.55~2nm、又は0.55~1.5nm、又は0.6~1.2nm、例えば0.6~1.1nm、0.6~1nm、0.6~0.9nm又は0.6~0.8nmである。
【0042】
活性層は、グラフェン又はその誘導体以外の材料、好適には二次元材料を含み得る。例えば、活性層の他の材料は、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、好適には六方晶窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、二硫化モリブデン及び二硫化タングステン、ポリマー/グラフェンエアロゲルの1つ又は複数から選択され得る。
【0043】
活性層の材料は、当業者に公知の適切な方法のいずれかを使用して生成され得る。二次元シリセン、ゲルマネン及びスタネンは、超高真空下での表面補助エピタキシャル成長によって生成され得る。二次元六方晶窒化ホウ素は、いくつかの方法、例えば機械的切断、窒化ホウ素ナノチューブのアンジップ、化学的官能化及び超音波処理、固相反応及び溶媒剥離及び超音波処理によって生成され得る。これらの方法の中で、化学的方法は、最も高い収率を実現することが見出されてきた。例えば、六方晶窒化ホウ素は、ホウ素及び窒化物の源としてボラジンを使用して、単結晶遷移金属基材上で合成され得る。二次元窒化炭素は、メラミン及び炭素繊維の直接のマイクロ波加熱を介して調製することができる。金属-有機フレームワーク(MOF)は、高温、例えば100~140℃において成分を混合することによるインサイチューでのソルボサーマル合成方法、それに続く濾過によって生成することができる。二次元二硫化モリブデンは、少数の方法、例えば機械的剥離、液体剥離及び化学的剥離によって得ることができる。これらの方法の中で、化学的剥離は、高収率を実現することが見出されてきた。一例は、遠心機及び濾過を使用して二硫化モリブデンを化学的に剥離するリチウムを使用した化学的剥離である。二次元二硫化タングステンは、蒸着-熱アニール方法:タングステンの真空蒸着、それに続く硫黄の添加による熱アニールによって調製することができる。ポリマー/グラフェンエアロゲルは、ポリエチレングリコールグラフトされた酸化グラフェンを使用したカップリング及びそれに続く凍結乾燥によって生成することができる。
【0044】
好ましくは、活性層は、実質的に、好適にはグラフェン又はその誘導体、より好ましくは酸化グラフェン又は還元酸化グラフェン、最も好ましくは酸化グラフェンの二次元材料から形成される。
【0045】
膜は、基材上の活性層の2つ以上の別個の部分を含み得る。
【0046】
本発明の膜は、任意のタイプの濾過のためのものであり得る。好適には、本発明の膜は、水処理、例えば油/水の分離;水域環境における医薬品残渣の除去のための医薬品濾過;生物濾過、例えば微生物と水との間の分離;脱塩若しくは選択的イオン濾過;及び核廃水からの放射性元素の除去のための核廃水の濾過;血液処理、例えば損傷された腎臓フィルターを置き換える生理学的濾過及び血液濾過;並びに/又は源、例えば植物、例えば草に由来するバイオプラットフォーム分子の分離のためのものである。好適には、膜は、水処理、例えば脱塩若しくは油及び水の分離又は医薬品濾過のためのものである。
【0047】
本発明の任意の態様による方法は、インクジェット印刷、エアゾール印刷、3D印刷、オフセットリソグラフィー印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷技術、パッド印刷、カーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング及び当業者に公知の他の印刷又はコーティング技術を使用して、基材上にコーティング組成物を印刷することを含み得る。
【0048】
好ましくは、本発明の方法は、基材上にコーティング組成物をインクジェット印刷することを含む。
【0049】
好適には、基材は、コーティング組成物の添加前に処理する。添加物の添加は、膜表面上に所望の官能性を有する添加物をコーティング又は堆積することによって行われ得る。
【0050】
有利には、表面処理は、膜上の活性層の改善された均一性を実現することができる。表面処理は、膜の防汚性能、増進された脱塩率及び/又は増進された透過性を含む特性も改善させることができる。汚損は、異なるタイプの汚損、例えば有機汚損、生物汚損及びコロイド性汚損により、流動及び膜の寿命が減少する現象である。
【0051】
好適には、コーティング組成物は、液体担体及びグラフェン又はその誘導体を含む液体組成物である。本発明のコーティング組成物は、溶媒、非溶媒又は無溶媒を含み得、UV硬化性組成物、eビーム硬化性組成物などであり得る。本発明における使用のために液体組成物として、例えば溶液、分散液又は懸濁液として配合されたとき、適切な担体液又は溶媒は、水性又は有機であり得、他の構成要素は、それに合うように選択される。例えば、液体担体は、任意選択で、結合剤、乾燥添加物、抗酸化剤、還元剤、平滑剤、可塑剤、ワックス、キレート剤、界面活性剤、顔料、消泡剤及び増感剤の任意の1つ又は複数を含む、組成物の性能及び/又はレオロジーを増強させる他の材料と共に水又は有機溶媒、例えばイソプロパノール、メチルエチルケトン、エタノール又は酢酸エチルを含み得る。
【0052】
好適には、酸化グラフェンのための液体担体は、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、キシレン又はこれらの混合物から選択され得る。好ましくは、液体担体は、水、アセトン又は水/アセトン混合物、例えば20~80容量%の水/アセトン混合物から選択される。好適には、グラフェン及び/又は還元酸化グラフェンのための液体担体は、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、キシレン又はこれらの混合物、好ましくは任意選択で1つ若しくは複数の界面活性剤を伴う水又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、最も好ましくは水から選択され得る。
【0053】
コーティング組成物中のグラフェン又はその誘導体の濃度は、0.3mg/ml~4mg/ml、例えば0.3mg/ml~3mg/ml、又は0.3mg/ml~2mg/ml、又は好ましくは0.3~1.5mg/mlであり得る。濃度が低すぎる、例えば0.3mg/ml未満であるとき、カートリッジからのインクの漏出が起こり得、濃度が高すぎる、例えば4mg/ml超であるとき、三次元コロイドが形成し得、高粘度をもたらし、これは、印刷に適さない。
【0054】
グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズは、ノズルサイズの≦1/10、例えばノズルサイズの≦1/15であり得る。例えば、20umの直径を有するノズルについて、フレークは、≦2umのサイズを有し得る。フレークサイズとノズルサイズとのこのような比は、ノズルの詰まりの低減を有利に実現する。
【0055】
任意選択で、組成物は、好適には、酸素含量が<25%であるとき、界面活性剤及び/又は有機溶媒を含み得る。界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、シクロヘキサノン、テルピネオール、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル及びエタノールの1つ又は複数から選択され得る。有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0056】
本発明のコーティング組成物は、結合剤を含み得る。組成物中での使用のための適切な結合剤は、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、アルキド、スチレン系樹脂、セルロース、セルロース誘導体、多糖、多糖誘導体、ゴム樹脂、ケトン、マレイン酸樹脂、ホルムアルデヒド、フェノール樹脂、エポキシド、フマル酸樹脂、炭化水素、ウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、シェラック、ポリビニルアルコールから選択される樹脂又は当業者に公知の任意の他の結合剤から選択される1つ又は複数であり得る。結合剤の添加は、有利に膜の機械的強度を改善させ、寿命を延ばし得ることが見出されてきた。
【0057】
コーティング組成物の粘度は、1~14cPa、好ましくは5~15cPa、例えば10~12cPaであり得る。
【0058】
コーティング組成物の表面張力は、1~150mN/m、例えば28~80mN/mであり得る。
【0059】
組成物は、1~16のZ数を有し得る。前記Z数は、式Z=√γρα/μによって計算し、式中、μは、コーティング組成物の粘度(mPas)であり、γは、コーティング組成物の表面張力(mJ/m2)であり、ρは、コーティング組成物の密度(g/cm-3)であり、αは、インクジェットプリンターヘッドのノズル直径(μm)である。
【0060】
有利には、本発明のコーティング組成物は、長期間にわたって高い安定性を実現することができる。さらに、<0.5mg/mlの濃度は、良好な液滴の均一性及び安定なジェッティングを与えることが見出されてきた。
【0061】
本発明のコーティング組成物は、機械的混合のいずれか、例えばリーディングエッジトレーリングブレードによる撹拌;セラミックボールでの粉砕及びミリング;silverson混合;例えば、Eiger Torranceモーターミルでのガラスビーズ機械的ミリング;Ultra Turraxホモジナイザー;乳鉢及び乳棒での粉砕;機械的ロールミリングを使用して、液体中で1つ又は複数の構成要素を分散又は溶解することによって調製され得る。
【0062】
インクジェット印刷は、オンデマンド型(DOD)インクジェット印刷、例えば圧電若しくは熱;又は連続インクジェット印刷(CIJ)であり得、好ましくは、インクジェット印刷は、DODインクジェット印刷である。
【0063】
インクジェットプリンターのノズルサイズは、5μm~100μm、好ましくは5μm~60μmであり得る。
【0064】
カートリッジの液滴容量は、1pl~100pl、好適には5~50pl又は8~30pl、例えば10plであり得る。インクジェット印刷方法の電圧及び吐出頻度は、コーティング組成物の波形によって決まり得る。吐出電圧は、10~30Vであり得る。吐出頻度は、3kHz~15kHz、好適には約5KHzであり得る。インクジェットプリンターのカートリッジ温度は、20℃~50℃、好適には約40℃であり得る。インクジェットプリンターのステージ温度は、20℃~60℃、好適には約21℃であり得る。
【0065】
ストキャスティックフィルターを有するラスターを印刷プロセス中に使用し得る。有利には、前記ラスターの使用は、グラフェン又はその誘導体が重複することを低減させ、改善された均質な印刷を提供することができる。
【0066】
クリーンルームペーパーのシートを圧盤上に置いて、真空の局在化を低減し得る。
【0067】
インクジェットプリンターが通過するごとに堆積された活性層の厚さは、少なくとも3nm、例えば少なくとも4nm又は少なくとも5nmであり得る。インクジェット印刷は、複数の通過で活性層を付着させ得る。
【0068】
有利には、本発明の方法は、制御可能な厚さのものである基材上の活性層を生成するための時間効率的な方法を提供し、低い厚さが達成されることを可能とする。本発明の方法は、活性層における改善された均一性を有利に生じさせる。本発明の方法は、スケーラブルであり、多数の膜の改善された生成を可能とする。
【0069】
上で詳述したような他の印刷方法による付着のための最適なパラメーターは、当業者に公知である。例えば、フレキソ印刷又はグラビア印刷による付着のために、液体組成物は、15~35s Din#4フローカップの範囲の粘度及び基材及び印刷速度に適するように調整した乾燥速度を有するべきである。
【0070】
本発明の態様による濾過膜は、これらに限定されないが、重力濾過、真空濾過及び/又は加圧系下で動作するものを含む、広範囲の構成及び濾過装置において利用され得る。
【0071】
ラメラ構造という用語は、本明細書において、少なくとも2つの重複層を有する構造を意味する。活性層という用語は、本明細書において、層にわたって濾過を実現するように操作可能である層を意味する。二次元材料という用語は、本明細書において、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する材料を意味する。
【0072】
脂肪族という用語は、本明細書において、直鎖、分岐状又は環状であり得、完全に飽和しているか、又は不飽和の1個若しくは複数の単位を含有し得るが、芳香族ではない炭化水素部分を意味する。用語「不飽和」は、1個又は複数の二重結合及び/又は三重結合を有する部分を意味する。したがって、用語「脂肪族」は、アルキル、脂環式、アルケニル又はアルキニル基を包含することを意図する。脂肪族基は、好ましくは、1~15個の炭素原子、例えば1~14個の炭素原子、1~13個の炭素原子を含有し、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個の炭素原子を有する脂肪族基である。
【0073】
アルキル基は、1~15個の炭素原子を含有する。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖状であり得る。アルキル基は、好ましくは、1~14個の炭素原子、1~13個の炭素原子を含有し、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個の炭素原子を有するアルキル基である。具体的には、アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチルなど、及びこれらの異性体を含む。
【0074】
アルケニル及びアルキニル基は、それぞれ2~12個の炭素原子、例えば2~11個の炭素原子、2~10個の炭素原子、例えば2~9個、2~8個又は2~7個の炭素原子を含有する。このような基は、複数の炭素-炭素不飽和結合も含有し得る。
【0075】
脂環式基は、3~15個の炭素原子、例えば3~14個の炭素原子又は3~13個の炭素原子を有する飽和又は部分不飽和の環状脂肪族単環式基又は多環式基(縮合、架橋及びスピロ-縮合を含む)であり得、すなわち3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個の炭素原子を有する脂環式基である。好ましくは、脂環式基は、3~12個、より好ましくは3~11個、さらにより好ましくは3~10個、さらにより好ましくは3~9個の炭素原子、又は3~8個の炭素原子、又は3~7個若しくは3~6個の炭素原子を有する。用語「脂環式」は、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニル基を包含する。脂環式基は、1個又は複数の連結又は非連結アルキル置換基を担持する脂環式環、例えば-CH2-シクロヘキシルを含み得ることを認識されたい。具体的には、C3~15シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、イソボルニル及びシクロオクチルを含む。
【0076】
アリール基は、6~14個の炭素原子、例えば6~13個の炭素原子、6~12個又は6~11個の炭素原子を有する単環式又は多環式基である。アリール基は、好ましくは、「C6~12アリール基」であり、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子によって構成されるアリール基であり、縮合環基、例えば単環式環基又は二環式環基などを含む。具体的には、「C6~10アリール基」の例は、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル又はアズレニルなどを含む。縮合環、例えばインダン及びテトラヒドロナフタレンもアリール基に含まれることに留意すべきである。
【0077】
ヘテロ脂肪族及びヘテロアリールにおける用語「ヘテロ」の使用は、当技術分野で周知である。ヘテロ脂肪族及びヘテロアリールは、本明細書に定義されているような脂肪族又はアリール基を指し、ここで、1個又は複数の炭素原子は、適用できる場合、それぞれ基の鎖及び/又は環におけるヘテロ原子によって置き換えられている。ヘテロ原子は、硫黄及び/又は酸素の1つ又は複数であり得る。
【0078】
ヘテロ原子は、多官能アミン反応性物質と反応する多官能アミンのアミン基の能力を除かない任意の形態であり得る。ヘテロ原子は、エーテル基、例えばC1~C15アルコキシ;末端である場合にはヒドロキシル基;硫黄及び酸素の複素環;並びに/又はポリスルフィド基、例えば少なくとも2個の硫黄原子を含有するポリスルフィドの形態であり得る。
【0079】
好ましくは、アルコキシ基は、1~8個の炭素原子を含有し、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ及びその異性体形態から好適に選択される。
【0080】
本明細書において含有される特徴の全ては、上記の態様のいずれかと任意の組合せで組み合わされ得る。
【0081】
本発明をよりよく理解し、且つどのようにこれらの実施形態が実施され得るかを示すために、ここで、例として下記の実験データ及び数値について言及する。
【実施例0082】
実施例1
酸化グラフェン含有濾過膜の調製
酸化グラフェンの分散物を、工業規模の超音波処理を使用して、例えば超音波ホモジナイザーソニケーターを使用して、15gの酸化グラフェンフレークを50Lの水に分散させることによって調製した。生成した分散物は、0.3mg/mlの濃度及び10.7cPaの粘度を有した。次いで、得られた分散物を、Xaar1002ヘッドアセンブリーを備えたPixdro LP50を使用して、表面処理したポリスルホンに付着させた。周囲条件下での乾燥に続いて、次いで生成した膜の性能を評価し、コーティングされていない膜と比較して水分流動の20%の改善を示したことが見出された。
【0083】
実施例2
還元酸化グラフェン膜の調製
還元酸化グラフェンの分散物を、工業規模の超音波処理により、例えば超音波ホモジナイザーソニケーターを使用して、15gの還元酸化グラフェン及びTriton X-100非イオン性界面活性剤を50Lの水に分散させることによって調製した。生成した分散物は、0.3mg/mlの濃度及び12cPaの粘度を有した。次いで、得られた分散物を、Xaar1002ヘッドアセンブリーを備えたPixdro LP50を使用して、表面処理したポリスルホンに付着させた。周囲条件下での乾燥に続いて、次いで生成した膜の性能を評価し、コーティングされていない膜と比較して有機分子の選択的ふるい分けの改善を示したことが見出された。
【0084】
実施例3
アミノ基官能化酸化グラフェン膜の調製
アミノ基官能化酸化グラフェンの分散物を、工業規模の超音波処理により、例えば超音波ホモジナイザーソニケーターを使用して、15gのアミノ基官能化酸化グラフェンを50Lの水に分散させることによって調製した。生成した分散物は、0.3mg/mlの濃度及び10cPaの粘度を有した。次いで、得られた分散物を、Xaar1002ヘッドアセンブリーを備えたPixdro LP50を使用して表面処理したポリアミドに付着させた。周囲条件下での乾燥に続いて、次いで生成した膜の性能を評価し、コーティングされていない膜からの除去がないことと比較して水からの鉄酸の除去の改善を示したことが見出された。
【0085】
実施例4
フレキソ印刷による濾過膜の調製
酸化グラフェンの分散物を、実施例1において詳述した方法によって調製した。975gの分散物を25gのBASF Joncryl LMV7050ポリマーエマルジョンに加え、silversonホモジナイザーを使用して十分に混合した。次いで、液体コーティングの粘度を、水を加えることによって所望の印刷粘度に調節した。次いで、液体コーティング組成物を、フレキソヘッドをフィットさせたRKプリンティングプルーファーを使用して表面処理したポリスルホン基材に付着させた。周囲条件下での乾燥に続いて、生成した膜の性能を評価し、コーティングされていない膜に対して水分流動速度の30%の改善を示したことが見出された。
【0086】
実施例5
グラビア印刷による濾過膜の調製
酸化グラフェンの分散物を、実施例1において詳述した方法によって調製した。975gの分散物を25gのBASF Joncryl LMV7050ポリマーエマルジョンに加え、silversonホモジナイザーを使用して十分に混合した。次いで、液体コーティング組成物を、RK Kプリンティングプルーファーを使用して表面処理したポリスルホン基材に付着させた。周囲条件下での乾燥に続いて、生成した膜の性能を評価し、コーティングされていない膜に対して水分流動速度の25%の改善を示したことが見出された。
【0087】
本出願に関連して本明細書と併行して又は本明細書の前に出願され、且つ本明細書によって縦覧に供される全ての論文及び文献に注意が向けられ、全てのこのような論文及び文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
本明細書(任意の添付の請求項、要約及び図面を含む)において開示される特徴の全て及び/又はこのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、このような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わされ得る。
【0089】
本明細書(任意の添付の請求項、要約及び図面を含む)において開示される各特徴は、明確に他に断りのない限り、同じ、均等な又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。このように、明確に他に断りのない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の均等な又は同様の特徴のごく一例である。
【0090】
本発明は、上記の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約及び図面を含む)において開示される特徴の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せ又はこのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに及ぶ。
前記グラフェン又はその誘導体を含む前記コーティング組成物は、前記基材上にインクジェット印刷される、請求項2~4のいずれか一項に記載の濾過膜を生成する方法又は濾過膜。
前記グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、水和グラフェン及びアミノをベースとするグラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化還元酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化還元酸化グラフェン並びに/又はポリマーグラフェンエアロゲルの1つ又は複数から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜、方法又は組成物。