(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116254
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】組合せ医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20240820BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240820BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20240820BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240820BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240820BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
A61K38/20
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K38/20 ZNA
C12N15/24
C12N15/12
C12N15/63 Z
C07K14/715
C07K14/54
C12N15/13
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092095
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2019123809の分割
【原出願日】2014-08-08
(31)【優先権主張番号】13003964.7
(32)【優先日】2013-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513322899
【氏名又は名称】サイチューン ファーマ
(71)【出願人】
【識別番号】599029545
【氏名又は名称】アンスティテュ・グスターブ・ルシ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベシャール,ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シャピュ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】デボア,メラニー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象における癌を処置するための同時投与、分離投与、又は順次投与用に適合させた組合せ医薬組成物を提供する。
【解決手段】組合せ医薬組成物であって:a)(i)インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及びii)IL-15Rαのスシドメイン若しくはその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター;並びにb)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体若しくはそのフラグメント、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクターを含む組合せ医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌を処置するための同時投与、分離投与、又は順次投与用に適合させた組合せ医薬組成物であって:
a)(i)インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及びii)IL-15Rαのスシドメイン若しくはその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター、;並びに
b)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体若しくはそのフラグメント、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター
を含む組合せ医薬組成物。
【請求項2】
a)コンジュゲートが、注射によって用量60μg/kg以下、好ましくは用量10μg/kg以下、最も好ましくは用量5μg/kg以下で投与され;
b)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体又はそのフラグメントが、用量500μg/kg以下、好ましくは用量100μg/kg以下、最も好ましくは用量50μg/kg以下の注射によって投与される、
請求項1記載の組合せ医薬組成物。
【請求項3】
抗体が、CTL-A4、PD-1/PD-L1、PD-1/PD-L2、阻害性KIR、CD276、VTCN1、BTLA/HVEM、LAG3、HAVCR2及びADORA2Aのアンタゴニスト、好ましくはPD-1/PD-L1アンタゴニストを含む群より選択される、請求項1又は2のいずれか記載の組合せ医薬組成物。
【請求項4】
抗体が、CTL-A4アンタゴニスト、好ましくはイピリムマブ又はチクリムマブ(ticilimumab)より選択される、請求項3記載の組合せ医薬組成物。
【請求項5】
抗体が、阻害性KIRアンタゴニスト、好ましくは1-7F9より選択される、請求項3記載の組合せ医薬組成物。
【請求項6】
抗体が、PD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2のアンタゴニスト、好ましくはニボルマブ、Merck3745、CT-011、ランブロリズマブ(lambrolizumab)、AMP514、MDX-1105又はYW243.55.S70より選択される、請求項3記載の組合せ医薬組成物。
【請求項7】
抗体が、CD276アンタゴニスト、好ましくは8H9又はMGA271より選択される、請求項3記載の組合せ医薬組成物。
【請求項8】
a)コンジュゲートのポリペプチドi)及びii)が、融合タンパク質の状態に共有結合され;
b)該コンジュゲート及び抗体又はそのフラグメントが連結されていない、
請求項1~7のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物。
【請求項9】
インターロイキン15が、配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1~8のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物。
【請求項10】
IL-15Rαのスシドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項1~9のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物。
【請求項11】
コンジュゲートが、配列番号16又は配列番号17の配列を有する、請求項1~10のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる2013年8月8日出願の欧州特許出願EP13003964.7の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規な「組合せ医薬組成物」、より具体的には癌を処置するための、特異的IL-15スーパーアゴニストと、T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体との組合せに関する。
【0003】
背景
適応免疫応答は、T細胞及びB細胞と呼ばれる2つの主要クラスのリンパ球の活性化、選択、及びクローン増殖を伴う。抗原と遭遇後に、T細胞が増殖し、抗原特異的エフェクター細胞に分化する一方で、B細胞は増殖し、抗体分泌細胞に分化する。
【0004】
T細胞の活性化は、T細胞と抗原提示細胞(APC)との間のいくつかのシグナル伝達事象を要する多段階過程である。T細胞活性化が起こるために、休止T細胞に2種類のシグナルが送達されなければならない。
【0005】
第1のタイプは、抗原特異的T細胞受容体(TcR)によって媒介され、免疫応答に特異性を付与する。
【0006】
共刺激的な第2のタイプは、応答の強度を調節し、T細胞上の副受容体を介して送達される。これらの受容体は、免疫抑制受容体(例えばCTL-A4、PD-1、又は阻害性KIR)及び共刺激受容体(例えばCD40、4-1BB、OX-40又はグルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR))を含む。
【0007】
免疫系の抗腫瘍応答を強化するように、免疫抑制受容体の阻害又は共刺激受容体の活性化に対する治療戦略が開発されている。
【0008】
実際に組合せ戦略も構想されている。今のところ、被検化合物によっては結果が非常に有害である。
【0009】
発明の概要
さて、本発明者らは、RLIという名の本発明者らの特異的化合物と、T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体との組合せが、非常に高い率の腫瘍寛解を招く一方で、そのような寛解は、RLI又は免疫抑制受容体アンタゴニスト単独で得られる腫瘍寛解を考慮すると構想できないことを示す。
【0010】
そのうえ、この相乗作用は、低用量のRLIが低用量の抗PD1と組み合わされた低用量組合せでも得られた。驚くことに、そして以前の組合せに比べて、この組合せは、強力で相乗的な腫瘍成長阻害を提供した。
【0011】
この強力な相乗作用は、新しい治療法を構想可能にする。
【0012】
結果として、本発明は、対象における癌を処置するための同時投与、分離投与、又は順次投与用に適合させた組合せ医薬組成物であって:
1)(i)インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及びii)IL-15Rαのスシドメイン若しくはその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター;並びに
2)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体若しくはそのフラグメント、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター
を、対象における癌を処置するための同時使用、分離使用、又は順次使用用の組合せ調製物として含む組合せ医薬組成物に関する。
【0013】
第2の態様では、本発明は、癌を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の:
1)上記コンジュゲート、それをコードする核酸配列、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター、及び
2)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体若しくはそのフラグメント、それをコードする核酸配列、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター
を同時に、別々に、又は順次に投与する段階を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】BIOXELL抗PD1を用いてマウス癌モデルにおいて使用された注射プロトコールを示す図である。
【
図2】CT26モデルにおけるTILの存在を示す図である。
【
図3A】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3B】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3C】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3D】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3E】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3F】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図3G】マウスにおける抗PD1(RPMI1-14)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【
図4】抗PD1/RLI組合せ処置についてのマウスの生存率を示す図である。
【
図5】マウス癌モデルに使用された注射プロトコールを示す図である。
【
図6】マウスにおける抗PD1(mBAT)とRLIとの組合せ療法を示す図である。
【0015】
詳細な説明
コンジュゲート
用語「インターロイキン15」は、当技術分野においてその一般的な意味でIL-2と構造的類似性を有するサイトカインを表す(GRABSTEIN et al., Science, vol.264(5161), p:965-968, 1994)。このサイトカインは、IL-15、IL15又はMGC9721としても公知である。このサイトカイン及びIL-2は、多くの生物学的活性を共有し、共通のヘマトポイエチン受容体サブユニットに結合することが見出された。したがって、それらは、相互の活性をマイナスに調節しながら同じ受容体をかけて競合し得る。IL-15がT細胞及びナチュラルキラー細胞の活性化及び増殖を調節すること、並びにCD8+メモリー細胞数がこのサイトカインとIL2とのバランスによって制御されると示されることが立証されている。実施例に開示されているように、IL-15の活性は、kit225細胞系を用いてその増殖誘導を決定することによって測定することができる(HORI et al., Blood, vol.70(4), p:1069-72, 1987)。
【0016】
前記IL-15又はその誘導体は、kit225細胞系の増殖誘導に対してヒトインターロイキン-15の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を有する。
【0017】
前記インターロイキン15は、哺乳類インターロイキン15、好ましくは霊長類インターロイキン15、より好ましくはヒトインターロイキン15である。
【0018】
哺乳類インターロイキン15は、当業者によって簡単に同定されることができる。一例として、スス-スクロファ(Sus scrofa)(アクセッション番号ABF82250)、ラッツス-ノルベキクス(Rattus norvegicus)(アクセッション番号NP_037261)、ムス-ムスクルス(Mus musculus)(アクセッション番号NP_032383)、ボス-タウルス(Bos Taurus)(アクセッション番号NP_776515)、オリクトラグス-クニクルス(Oryctolagus cuniculus)(アクセッション番号NP_001075685)、オビエス-アリエス(Ovies aries)(アクセッション番号NP_001009734)、フェリス-カツス(Felis catus)(アクセッション番号NP_001009207)、マカカ-ファスシクラリス(Macaca fascicularis)(アクセッション番号BAA19149)、ホモ-サピエンス(Homo sapiens)(アクセッション番号NP_000576)、マカカ-ムラッタ(Macaca Mulatta)(アクセッション番号NP_001038196)、カビア-ポルセルス(Cavia porcellus)(アクセッション番号NP_001166300)、又はクロロセブス-サバエウス(Chlorocebus sabaeus)(アクセッション番号ACI289)由来のインターロイキン15を引用することができる。
【0019】
本明細書に使用される用語「哺乳類インターロイキン15」は、配列番号1のコンセンサス配列を表す。
【0020】
霊長類インターロイキン15は、当業者によって簡単に同定されることができる。一例として、スス-スクロファ(アクセッション番号ABF82250)、オリクトラグス-クニクルス(アクセッション番号NP_001075685)、マカカ-ファスシクラリス(アクセッション番号BAA19149)、ホモ-サピエンス(アクセッション番号NP_000576)、マカカ-ムラッタ(アクセッション番号NP_001038196)、又はクロロセブス-サバエウス(アクセッション番号ACI289)由来のインターロイキン15を引用することができる。
【0021】
本明細書に使用される用語「霊長類インターロイキン15」は、配列番号2のコンセンサス配列を表す。
【0022】
ヒトインターロイキン15は、当業者によって簡単に同定されることができる、配列番号3のアミノ酸配列を表す。
【0023】
本明細書に使用される用語「インターロイキン15誘導体」は、配列番号:1、配列番号2及び配列番号3からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも92.5%(すなわちアミノ酸置換約10個に対応する)、好ましくは少なくとも96%(すなわちアミノ酸置換約5個に対応する)、より好ましくは少なくとも98.5%(すなわちアミノ酸置換約2個に対応する)又は少なくとも99%(すなわちアミノ酸置換約1個に対応する)の同一率を有するアミノ酸配列を表す。そのような誘導体は、当業者によって、その個人的知識及び本特許出願の教示を考慮して簡単に同定されることができる。そのような誘導体の一例として、国際特許出願であるPCT国際公開公報第2009/135031号に記載されている誘導体を引用することができる。天然アミノ酸が化学修飾アミノ酸によって置き換えられ得ることも了解されている。典型的には、そのような化学修飾アミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させる。
【0024】
本明細書に使用される2つのアミノ酸配列間の「同一率」は、比較されるべき2つの配列間で同一のアミノ酸の率であって、該配列の最良のアライメントで得られた率を意味し、この率は、純粋に統計的であり、これら2つの配列間の差は、アミノ酸配列にわたりランダムに分布している。本明細書に使用される「最良のアライメント」又は「最適なアライメント」は、決定された同一率(下記参照)が最高であるアライメントを意味する。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、最良のアライメントに従って予め整列されたこれらの配列を比較することによって実現され;この比較は、局所類似領域を同定及び比較するために比較セグメントに関して実現される。比較を行うために最良の配列アライメントは、手作業以外に、SMITH及びWATERMAN(Ad. App. Math., vol.2, p:482, 1981)によって開発された全体的相同性アルゴリズムを使用することによって、NEDDLEMAN及びWUNSCH(J. Mol. Biol., vol.48, p:443, 1970)によって開発された局地的相同性アルゴリズムを使用することによって、PEARSON及びLIPMAN(Proc. Natl. Acd. Sci. USA, vol.85, p:2444, 1988)によって開発された類似性方法を使用することによって、そのようなアルゴリズムを使用するコンピューターソフトウェア(Wisconsin Genetics software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI USA中のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA)を使用することによって、MUSCLE多重アライメントアルゴリズム(Edgar, Robert C., Nucleic Acids Research, vol. 32, p:1792, 2004)を使用することによって、実現することができる。最良の局地的アライメントを得るために、好ましくはBLOSUM 62行列を用いたBLASTソフトウェアを使用することができる。2つのアミノ酸配列間の同一率は、最適に整列されたこれら2つの配列を比較することによって決定され、アミノ酸配列は、これら2つの配列間の最適なアライメントを得るために、参照配列に対して付加又は欠失を包含することが可能である。同一率は、これら2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較された位置の総数で割り、得られた結果に100をかけてこれら2つの配列間の同一率を得ることによって計算される。
【0025】
好ましくは、インターロイキン15誘導体は、IL-15アゴニスト又はスーパーアゴニストである。当業者は、IL-15アゴニスト又はスーパーアゴニストを簡単に同定することができる。IL-15アゴニスト又はIL-15スーパーアゴニストの一例として、国際特許出願である国際公開公報第2005/085282号又はZHUら(J. Immunol., vol.183(6), p:3598-607, 2009)に開示されたものを引用することができる。
【0026】
なお好ましくは、該IL-15アゴニスト又はスーパーアゴニストは、(配列番号3のヒトIL-15の配列に関して)L45D、L45E、S51D、L52D、N72D、N72E、N72A、N72S、N72Y及びN72Pを含む/からなる群より選択される。
【0027】
本明細書に使用される用語「IL-15Rαのスシドメイン」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、IL-15Rαのシグナルペプチドの後の最初のシステイン残基(C1)から開始し、該シグナルペプチドの後の4番目のシステイン残基(C4)で終止するドメインを表す。IL-15Rαの細胞外領域の部分に対応する該スシドメインは、それがIL-15に結合するために必要である(WEI et al., J. Immunol., vol.167(1), p:277-282, 2001)。
【0028】
IL-15Rα又はその誘導体の該スシドメインは、ヒトインターロイキン-15に対するヒトIL-15Rαのスシドメインの結合活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を有する。該結合活性は、WEIらに開示される方法によって簡単に決定することができる(上記、2001)。
【0029】
IL-15Rαの該スシドメインは、哺乳類IL-15Rαのスシドメイン、好ましくは霊長類IL-15Rαのスシドメイン、より好ましくはヒトIL-15Rαのスシドメインである。
【0030】
哺乳類IL-15Rαのスシドメインは、当業者によって簡単に同定されることができる。一例として、ラッツス-ノルベキクス(アクセッション番号XP_002728555)、ムス-ムスクルス(アクセッション番号EDL08026)、ボス-タウルス(アクセッション番号XP_002692113)、オリクトラグス-クニクルス(アクセッション番号XP_002723298)、マカカ-ファスシクラリス(アクセッション番号ACI42785)、マカカ-ネメストリナ(Macaca nemestrina)(アクセッション番号ACI42783)、ホモ-サピエンス(アクセッション番号Q13261.1)、マカカ-ムラッタ(アクセッション番号NP_001166315)、ポンゴ-アベリイ(Pongo abelii)(アクセッション番号XP_002820541)、セルコセブス-トルクアツス(Cercocebus torquatus)(アクセッション番号ACI42784)、カリトリクス-ジャックス(Callithrix jacchus)(アクセッション番号XP_002750073)、又はカビア-ポルセルス(アクセッション番号NP_001166314)由来のIL-15Rαのスシドメインを引用することができる。
【0031】
本明細書に使用される用語「哺乳類IL-15Rαのスシドメイン」は、配列番号4のコンセンサス配列を表す。
【0032】
好ましくは、哺乳類IL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、配列番号5のコンセンサス配列を表す。
【0033】
霊長類IL-15Rαのスシドメインは、当業者によって簡単に同定されることができる。一例として、オリクトラグス-クニクルス、マカカ-ファスシクラリス、マカカ-ネメストリナ、ホモーサピエンス、マカカ-ムラッタ、ポンゴ-アベリイ、セルコセブス-トルクアツス、又はカリトリクス-ジャックス由来のIL-15Rαのスシドメインを引用することができる。
【0034】
本明細書に使用される用語「霊長類IL-15Rαのスシドメイン」という用語は、配列番号6のコンセンサス配列を表す。
【0035】
好ましくは、霊長類IL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、配列番号7のコンセンサス配列を表す。
【0036】
ヒトIL-15Rαのスシドメインは、当業者によって簡単に同定されることができ、配列番号8のアミノ酸配列を表す。
【0037】
好ましくは、ヒトIL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、配列番号9を表す。
【0038】
本明細書に使用される用語「IL-15Rαのスシドメインの誘導体」は、配列番号:4、配列番号5、配列番号6、配列番号:7、配列番号8、及び配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも92%(すなわち約5個のアミノ酸置換に対応する)、好ましくは少なくとも96%(すなわち約2個のアミノ酸置換に対応する)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち約1個のアミノ酸置換に対応する)の同一率を有するアミノ酸配列を表す。そのような誘導体は、L-15Rαのスシドメインの4個のシステイン残基を含み、当業者の一般的知識及び本特許出願の教示を考慮して当業者によって簡単に同定されることができる。化学修飾されたアミノ酸によって天然アミノ酸が置き換えられ得ることも理解されている。典型的には、そのような化学修飾されたアミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させることができる。
【0039】
好ましい一実施態様によると、コンジュゲートは、(ii)IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン又はそれらの誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0040】
IL-15Rαのヒンジドメインは、スシドメインの後の最初のアミノ残基で開始し、最初の潜在的グリコシル化部位の前の最後のアミノ酸残基で終止するアミノ酸配列として定義される。ヒトIL-15Rαにおいて、ヒンジ領域のアミノ酸配列は、このIL-15Rアルファのスシドメインの後で、該スシドメインに対してC末端位に位置する14個のアミノ酸からなり、すなわち、該IL-15Rアルファのヒンジ領域は、前記(C4)システイン残基の後の最初のアミノ酸で開始し、(標準的な「N末端からC末端」方向で数えて)14番目のアミノ酸で終止する。
【0041】
IL-15Rαの該スシドメイン及びヒンジドメインは、哺乳類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン、好ましくは霊長類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン、より好ましくはヒトIL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメインである。
【0042】
哺乳類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者によって簡単に同定されることができる。本明細書に使用される用語「哺乳類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン」は、配列番号10のコンセンサス配列を表す。
【0043】
霊長類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者によって簡単に同定されることができる。本明細書に使用される用語「霊長類IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン」は、配列番号11のコンセンサス配列を表す。
【0044】
ヒトIL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者によって簡単に同定されることができる。本明細書に使用される用語「ヒトIL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメイン」は、配列番号12のコンセンサス配列を表す。
【0045】
本明細書に使用される用語「IL-15Rαのスシドメイン及びヒンジドメインの誘導体」は、配列番号:10、配列番号11、及び配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも93%(すなわち約5個のアミノ酸置換に対応する)、好ましくは少なくとも97%(すなわち約2個のアミノ酸置換に対応する)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち約1個のアミノ酸置換に対応する)の同一率を有するアミノ酸配列を表す。そのような誘導体は、L-15Rαのスシドメインの4個のシステイン残基を含み、当業者によって、本特許出願のその一般的な知識及び教示を考慮して簡単に同定されることができる。天然アミノ酸は、化学修飾されたアミノ酸によって置き換えられ得ることも理解されている。典型的には、そのような化学修飾されたアミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させることができる。
【0046】
コンジュゲートのポリペプチドi)及びii)の両方が、米国特許第8,124,084B2号に開示される複合体のように非共有結合的に連結され得る。該コンジュゲート又は複合体は、適切な量のポリペプチドi)を提供すること、適切な量のポリペプチドii)を提供すること、両方のポリペプチドを適切なpH及びイオン条件で、複合体(すなわちコンジュゲート)を形成させるために十分な時間混合すること、並びに場合により該複合体を濃縮又は精製することによって簡単に得ることができる。複合体(すなわちコンジュゲート)のポリペプチドは、例えば、標準的な方法に従ってペプチド合成装置を使用して;細胞又は細胞抽出物中に各ポリペプチドを別々に発現させ、次にポリペプチドを単離及び精製することによって、形成させることができる。場合により、本発明の治療用ポリペプチド複合体は、ポリペプチドi)及びii)の両方を同じ細胞又は細胞抽出物中に発現させ、次に、例えばリンホカイン部分、リンホカイン受容体部分、又は複合体に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技法を用いて、複合体を単離及び精製することによって形成させることができる。
【0047】
コンジュゲートのポリペプチドi)及びii)の両方は、また、二官能性タンパク質カップリング剤を使用して、又は融合タンパク質の状態に、共有結合され得る。
【0048】
二官能性タンパク質カップリング剤は、それらを使用する方法などで当業者に周知であり、例として、N-スクシンイミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トリレン2,6-ジイソシアナートなど)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)を含む。
【0049】
用語「融合タンパク質」は、本来は別々のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子を繋ぐことによって生み出されたタンパク質を表す。融合タンパク質は、キメラタンパク質としても公知である。この融合遺伝子の翻訳によって、本来のタンパク質のそれぞれに由来する機能的性質を有する単一ポリペプチドが生じる。組換え融合タンパク質は、生物学的研究又は治療法への使用のために組換えDNA技法によって人工的に生み出される。組換え融合タンパク質は、融合遺伝子の遺伝子操作によって生み出されたタンパク質である。これは、典型的には第1のタンパク質をコードするcDNA配列から終止コドンを除去し、次にライゲーション又はオーバーラップ伸長PCRによってフレーム内に第2のタンパク質のcDNA配列を付加することを伴う。そのDNA配列は、次に細胞によって単一のタンパク質として発現される。両方の本来のタンパク質の完全配列又はどちらかの一部のみを含むようにそのタンパク質を加工することができる。
【0050】
好ましい一実施態様では、コンジュゲートは融合タンパク質である。
【0051】
インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαのスシドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列に対してC末端又はN末端位置にある可能性がある。好ましくは、インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαのスシドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列に対してC末端位置にある。
【0052】
インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列及びIL-15Rαのスシドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列は、第1の「リンカー」アミノ酸配列によって分離され得る。該第1の「リンカー」アミノ酸配列は、融合タンパク質が適正な二次構造及び三次構造を確実に形成するに足る長さであり得る。
【0053】
第1のリンカーアミノ酸配列の長さは、融合タンパク質の生物学的活性に有意に影響せずに変動し得る。典型的には、第1のリンカーのアミノ酸配列は、少なくとも1個であるが30個未満のアミノ酸、例えばアミノ酸2~30個、好ましくはアミノ酸10~30個、より好ましくはアミノ酸15~30個、なおより好ましくはアミノ酸15~25個、最も好ましくはアミノ酸18~22個のリンカーを含む。
【0054】
好ましいリンカーのアミノ酸配列は、コンジュゲートに適正なコンフォメーション(すなわちIL-15Rベータ/ガンマシグナル伝達経路を介して適正なシグナル伝達活性を可能にするコンフォメーション)を採用させるアミノ酸配列である。
【0055】
最も適切な第1のリンカーのアミノ酸配列は、(1)可動性の伸長コンフォメーションを採用し、(2)融合タンパク質の機能的ドメインと相互作用できる秩序化二次構造を発生する傾向を示さず、(3)機能的タンパク質ドメインとの相互作用を促進することができる最小限の疎水性又は荷電性を有する。
【0056】
好ましくは、第1のリンカーのアミノ酸配列は、Gly(G)、Asn(N)、Ser(S)、Thr(T)、Ala(A)、Leu(L)、及びGln(Q)を含む群より、最も好ましくはGly(G)、Asn(N)、及びSer(S)を含む群より選択される中性に近いアミノ酸を含む。
【0057】
リンカー配列の例は、米国特許第5,073,627号及び同第5,108,910号に記載されている。
【0058】
より格別に本発明に適する例示的な可撓性リンカーは、配列番号:13(SGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ)、配列番号14(SGGSGGGGSGGGSGGGGSGG)又は配列番号15(SGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ)の配列によってコードされる可動性リンカーを含む。
【0059】
なお好ましくは、コンジュゲートは、配列番号16又は配列番号17の配列を有する融合タンパク質である。
【0060】
免疫抑制受容体のアンタゴニスト抗体
用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に繋がった4つのポリペプチド鎖、すなわち2つの同一の重(H)鎖(全長の場合約50~70kDa)及び2つの同一の軽(L)鎖(全長の場合約25kDa)を含む四量体に対応する免疫グロブリン分子を表す。軽鎖は、カッパ及びラムダとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュウ、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEとして定義する。各重鎖は、N末端重鎖可変領域(本明細書においてHCVRと略記)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、IgG、IgD、及びIgAについて3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3);並びにIgM及びIgEについて4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4)からなる。各軽鎖は、N末端軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRと略記)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。HCVR及びLCVR領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域によって分散された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分することができる。各HCVR及びLCVRは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列された3つのCDR及び4つのFRから構成される。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、周知の慣例に従う。抗体が特定の抗原に結合する機能的能力は、各軽/重鎖対の可変領域に依存し、主としてCDRによって決定される。
【0061】
本明細書に使用される用語「抗体」は、本質的にモノクローナル抗体を表す。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体の可能性がある。
【0062】
有利には、抗体という用語は、IgG1、IgG2(IgG2a又はIgG2b)、IgG3及びIgG4などのIgGを表す。好ましくは、抗体という用語は、IgG1又はIgG2、より好ましくはIgG2aを表す。
【0063】
「キメラ抗体」は、マウス免疫グロブリン由来の可変領域及びヒト免疫グロブリンの定常領域から構成される抗体を意味する。この変化は、ヒト抗体の定常領域をマウス定常領域で単に置換することで、医薬用途に許容し得るために足る低免疫原性を有し得るヒト/マウスキメラを生じさせることからなる。そのようなキメラ抗体を産生させるためのいくつかの方法がなお報告されており、したがって、当業者一般的知識の部分を形成している(例えば米国特許第5,225,539号参照)。
【0064】
「ヒト化抗体」は、非ヒト相補性決定領域(CDR)を有する抗体の配列を変化させることによってヒト抗体生殖系列から得られたアミノ酸配列から一部又は完全に構成される抗体を意味する。抗体の可変領域、すなわち最終的にはCDRのヒト化は、当技術分野において今や周知の技法によって行われる。一例として、英国特許出願GB2188638A及び米国特許第5,585,089号は、置換される唯一の抗体部分が相補性決定領域、すなわち「CDR」である組換え抗体が産生される工程を開示している。マウスCDR並びにヒト可変領域フレームワーク及び定常領域からなる抗体を作製するために、CDR移植技法が使用されている(例えばRIECHMANN et al., Nature , vol.332, p: 323-327, 1988を参照されたい)。これらの抗体は、Fc依存性エフェクター機能に必要であるが、抗体に対する免疫応答を誘起する見込みがずっと低いヒト定常領域を保有する。一例として、可変領域のフレームワーク領域は、対応するヒトフレームワーク領域によって置換され、非ヒトCDRは実質的に無傷なまま残される、又はCDRはヒトゲノム由来の配列と置き換えられさえする。完全ヒト抗体は、免疫系がヒト免疫系に対応するように変化された遺伝子改変マウスにおいて産生される。上述のように、単鎖形態を示すフラグメントを含む、抗体の免疫学的特異的フラグメントを採用することは、本発明の方法における使用にとって十分である。
【0065】
さらにヒト化抗体は、ヒトフレームワーク及び非ヒト抗体由来の少なくとも1つのCDRを含む抗体であって、存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一の、すなわち少なくとも約85又は90%、好ましくは少なくとも95%同一の抗体を表す。したがって、ヒト化抗体の全ての部分は、可能性があることにはCDRを除き、1つ以上の天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。例えば、ヒト化免疫グロブリンは、典型的にはキメラマウス可変領域/ヒト定常領域抗体を含まない。一例として、ヒト化免疫グロブリンの設計は、以下のように実施され得る:アミノ酸が以下の範疇に入るとき、使用されるべきヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)のフレームワークのアミノ酸は、CDR提供非ヒト免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)由来のフレームワークのアミノ酸によって置き換えられ:(a)アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸は、その位置でヒト免疫グロブリンにしては普通でなく、一方でドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって典型的であり;(b)アミノ酸の位置はCDRの1つのすぐ隣であり;又は(c)フレームワークのアミノ酸の任意の側鎖原子は、3次元免疫グロブリンモデルにおいてCDRアミノ酸の任意の原子から約5~6オングストローム(中心から中心)以内である(QUEEN et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.88, p:2869, 1991)。アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸のそれぞれ及びドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸が、その位置でヒト免疫グロブリンにしては普通でない場合、そのようなアミノ酸は、その位置でヒト免疫グロブリンに典型的なアミノ酸によって置き換えられる。
【0066】
本明細書に使用される用語「抗体フラグメント」は、その抗体対応物と同じ抗原と反応する能力のある抗体フラグメントを表す。そのようなフラグメントは、当業者によって簡単に同定されることができ、一例としてFabフラグメント(例えばパパイン消化による)、Fab’フラグメント(例えばペプシン消化及び部分還元による)、F(ab’)2フラグメント(例えばペプシン消化による)、Facb(例えばプラスミン消化による)、Fd(例えばペプシン消化、部分還元及び再集合による)フラグメントを含み、scFv(単鎖Fv;例えば分子生物学的技法による)フラグメントも本発明によって包含される。
【0067】
そのようなフラグメントは、当技術分野において公知及び/又は本明細書記載の酵素的切断、合成又は組換え技法によって産生させることができる。抗体は、1つ以上の終止コドンが天然終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、多様な切断型の状態で産生させることもできる。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードする組合せ遺伝子は、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の様々な部分を従来技法によって化学的に一緒に繋ぐことができ、又は遺伝子操作技法を用いて隣接タンパク質として調製することができる。
【0068】
好ましくは、該抗体フラグメントはscFvフラグメントである。
【0069】
用語「T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体」は、CTL-A4、PD-1、又は阻害性KIRなどの免疫抑制受容体又はそれらのリガンドのいずれかと結合することでダウンレギュレーションシグナルを防止することにより免疫活性化を促進することによって、この受容体と拮抗する抗体を表す。免疫抑制受容体アンタゴニスト抗体の一例として、CTL-A4、PD-1/PD-L1、PD-1/PD-L2、阻害性KIR、CD276、VTCN1、BTLA/HVEM、LAG3、HAVCR2及びADORA2Aのアンタゴニストに対応する抗体、好ましくはPD-1/PD-L1抗体を引用することができる。
【0070】
CTL-A4(CD152とも呼ばれる細胞傷害性リンパ球関連抗原)は、1987年に発見された(BRUNET et al., Nature, vol.328, p:267-270, 1987)。CTL-A4の役割は、主としてT細胞活性化を阻害することであり、これは、大規模なリンパ球増殖を患うCTL-A4欠損マウスにおいて示された(CHAMBERS et al., Immunity, vol.7, p:8855-8959, 1997)。今や、CTL-A4の遮断がT細胞応答をインビトロ(WALUNAS et al., Immunity, vol.1, p:405-413, 1994)及びインビボ(KEARNEY, J. Immunol, vol.155, p:1032-1036, 1995)で高めること、並びに抗腫瘍免疫を増大させること(LEACH, Science, vol.271, p:1734-1736, 1996)も示されている。CTL-A4アンタゴニストに対応する抗体の一例として、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第01/14424号に開示されるイピリムマブ(MDX-010及び10D1とも呼ばれ、MEDAREXから入手可能であり、BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANYによってYERVOY(商標)として販売されている)、国際公開公報第00/37504号に開示されるチクリムマブ(ticilimumab)(11.2.1及びCP-675,206としても公知)、並びに国際特許出願である国際公開公報第98/42752号、国際公開公報第01/14424号、国際公開公報第2004/035607号、及び国際公開公報第2012/120125号、EP1212422及びEP1262193、米国特許第5,811,097号、同第5,855,887号、同第5,977,318号、同第6,051,227号、同第6,207,156号、同第6,682,736号、同第6,984,720号、同第7,109,003号、及び同第7,132,281号に開示されるCTL-A4抗体も引用することができる。
【0071】
PD-1としても公知のプログラム細胞死1(PDCD1又はCD279とも呼ばれる)は、約55kDのI型膜糖タンパク質である。PD-1は、ナイーブT細胞、B細胞及びNK細胞に中等度に発現され、リンパ球、単球及び骨髄性細胞上のT/B細胞受容体シグナル伝達によってアップレギュレーションされるCD28共刺激遺伝子ファミリーの受容体である。PD-1は、別個の発現プロファイルを有する2つの公知のリガンド、PD-L1(B7-H1)(広く、すなわちナイーブリンパ球、活性化B及びT細胞、単球並びに樹状細胞上に発現される)並びにPD-L2(B7-DC)(その発現は限定され、すなわち活性化樹状細胞、マクロファージ及び単球並びに血管内皮細胞上である)を有する。いくつかのマウス同系腫瘍モデルにおいてPD-1又はPD-L1のいずれかの遮断は腫瘍の成長を有意に阻害し、又は完全退縮を誘導した。したがって、PD-1は、免疫調節及び末梢寛容の維持に重要な役者として認識されている。PD-1/PD-L1/PD-L2アンタゴニストに対応する抗体の一例として、国際公開公報第2006/121168号に開示されるニボルマブ(BMS-936558又はMDX1106としても公知;抗PD-1抗体、BRISTOL-MYERS SQUIBB)、国際公開公報第2009/114335号に開示されるMerck3745(MK-3475又はSCH-900475としても公知、抗PD-1抗体)、国際公開公報第2009/101611号に開示されるCT-011(hBAT又はhBAT-1としても公知、抗PD-1抗体)、国際公開公報第2008/156712号に開示されるランボロリズマブ(lambrolizumab)、国際公開公報第2010/027423号、同第2010/027827号、同第2010/027828号、及び同第2010/098788号に開示されるAMP514、並びにまた国際特許出願である国際公開公報第2004/056875号、同第2006/056875号、同第2008/083174号、同第2010/029434号、同第2010/029435号、同第2010/036959号、同第2010/089411号、同第2011/110604号、同第2012/135408号、及び同第2012/145493号に開示される抗体を引用することができる。該PD-1アンタゴニストは、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2007/005874号に開示されるMDX-1105(BMS-936559としても公知、抗PD-L1抗体)、又は国際公開公報第2010/077634号に開示されるYW243.55.S70(MPDL3280A若しくはRG7446としても公知;抗PD-L1抗体)などの抗PD-L1抗体に対応し得る。
【0072】
キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)は、ナチュラルキラー(NK)細胞と呼ばれる免疫系の重要な細胞上に見出される細胞表面タンパク質のファミリーである。それらは、全ての細胞型上に発現されるMHCクラスI分子と相互作用することによってこれらの細胞の殺滅機能を調節する。この相互作用は、特徴的な低レベルのクラスIMHCを表面に有するウイルス感染細胞又は腫瘍細胞をNK細胞が検出できるようにする。大部分のKIRは阻害性であり、それらのMHC認識がそれらのNK細胞の細胞傷害活性を抑制することを意味する。限られた数のKIRだけが細胞を活性化する能力を有する。
【0073】
阻害性KIRは、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含有する長い細胞質尾部を有し、それは、それらのMHCクラスIリガンドと結合するとNK細胞に阻害性シグナルを伝達する。公知の阻害性KIRは、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、及びKIR3DL3を含むKIR2DL及びKIR3DLサブファミリーのメンバーを含む。阻害性KIRアンタゴニストに対応する抗体の一例として、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2006/003179号に開示される抗体1-7F9を引用することができる。
【0074】
B7リガンドファミリーのメンバーは、免疫細胞による、最近になっては腫瘍細胞による、強い免疫調節活性を有することが公知であり、このファミリーは、CD276及びVTCN1を含む。
【0075】
CD276(分化クラスター276)(B7H3、B7-H3;B7RP-2;4Ig-B7-H3としても公知)は、樹状細胞及び活性化T細胞において最初に同定されたB7リガンドファミリー由来のI型膜貫通タンパク質である。CD276は、一部の固形腫瘍によって発現され、T細胞介在性免疫応答の調節に関与すると考えられる。さらに特定的には、CD276は、T-ヘルパー免疫応答をダウンレギュレーションし、免疫を抑制すると思われる(SUH et al., 2003)。CD276アンタゴニストの一例として、特許出願であるUS2005/0169932及び国際公開公報第2008/116219号に開示される抗体8H9、並びに国際公開公報第2011/109400号に開示されるMGA271などの他の抗体を引用することができる。
【0076】
B7X;B7H4;B7S1;B7-H4としても公知のVTCN1(V-set domain-containing T-cell activation inhibitor 1)もB7ファミリーのメンバーである。VTCN1は、T細胞応答の阻害性調節に役割を果たすと考えられ、研究によって、高レベルのこのタンパク質が腫瘍の進行と相関関係にあることが示された。VTCN1アンタゴニストの一例として、国際公開公報第2009/073533号に開示される抗体を引用することができる。
【0077】
CD272としても公知のBTLA(B- and T-lymphocyte attenuator)は、T細胞の活性化中に誘導され、Th2細胞ではなくTh1細胞上に発現され続ける。BTLAは、ヘルペスウイルス侵入仲介因子(HVEM)、TR2;ATAR;HVEA;CD270;LIGHTRとしても公知の腫瘍壊死因子(受容体)メンバー14(TNFRSF14)との相互作用を介してT細胞阻害を表す。TNFRSF14は、単純ヘルペスウイルス(HSV)侵入の細胞性仲介因子として同定された。この受容体の細胞質領域は、免疫応答を活性化するシグナル伝達経路を仲介し得るいくつかのTRAFファミリーのメンバーと結合することが見出された。最後に、BTLA/HVEM複合体は、T細胞免疫応答をマイナスに調節する。BTLA/HVEMアンタゴニストの一例として、国際公開公報第2008/076560号、同第2010/106051号、及び同第2011/014438号に開示される抗体を引用することができる。
【0078】
LAG3(Lymphocyte-activation gene 3、CD223としても公知)は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、4つの細胞外Ig様ドメインを含有する。LAG3アンタゴニストの一例として、国際公開公報第2010/019570号に開示される抗体を引用することができる。
【0079】
HAVCR2(Hepatitis A virus cellular receptor 2、Tim-3、KIM-3;TIMD3;Tim-3;及びTIMD-3としても公知)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するTh1特異的細胞表面タンパク質である。HAVCR2は、マクロファージの活性化を調節し、Th1介在性自己免疫応答及び同種免疫応答を阻害することで免疫寛容を促進する。HAVCR2アンタゴニストの一例として、国際公開公報第2013/006490A号に開示される抗体を引用することができる。
【0080】
ADORA2A(adenosine A2A receptor、A2aR、RDC8;又はADORA2としても公知)は、複数のクラス及びサブタイプに細分されるグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役受容体(GPCR)スーパーファミリーに属する。このタンパク質は、心調律及び循環、脳及び腎血流、免疫機能、疼痛調節、及び睡眠などの多数の生物学的機能に重要な役割を果たす。これは、炎症性疾患及び神経変性障害などの病態生理学的状態に関係づけられている。
【0081】
前記抗体又はそのフラグメントと前記コンジュゲートとは、連結されていない。
【0082】
核酸及びベクター
本明細書に使用される用語「ポリヌクレオチド」は、RNA又はDNA、好ましくはDNAを表す。
【0083】
好ましくは、そのような「ポリヌクレオチド」は、原核又は真核細胞内、好ましくは真核細胞内での核酸の発現を指令する遺伝子発現配列に作動的に連結されている。「遺伝子発現配列」は、作動的に連結された免疫サイトカインの核酸の効率的な転写及び翻訳を促進するプロモーター配列又はプロモーター-エンハンサー組合せなどの任意の調節性ヌクレオチド配列である。遺伝子発現配列は、例えば構成的プロモーター又は誘導性プロモーターなどの哺乳類プロモーター又はウイルスプロモーターであり得る。
【0084】
構成的哺乳類プロモーターは、非限定的に、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼに対するプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、筋クレアチンキナーゼプロモーター、ヒト伸長因子プロモーター及び他の構成的プロモーターを含む。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターは、例えば、シミアンウイルス(例えばSV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)由来のプロモーター、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。
【0085】
遺伝子発現配列として有用なプロモーターは、誘導性プロモーターも含む。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある種の金属イオンの存在下で誘導されて、転写及び翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。
【0086】
一般的に遺伝子発現配列は、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、それぞれ転写及び翻訳の開始に関係する5’非転写配列及び5’非翻訳配列を含むものとする。特に、そのような5’非転写配列は、作動的に繋がれた核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。遺伝子発現配列は、任意で、所望によりエンハンサー配列又は上流のアクティベーター配列を含む。本明細書に使用されるように、本発明の免疫サイトカインをコードする核酸配列及び遺伝子発現配列は、本発明の免疫サイトカインのコード配列の発現すなわち転写及び/又は翻訳を遺伝子発現配列の影響下又は制御下に置く方法でそれらが共有結合されている場合、「作動的に連結されている」と言われる。
【0087】
5’遺伝子発現配列中のプロモーターの誘導が、本発明の免疫サイトカインの転写を招くならば、そして2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト変異の導入を招く、(2)プロモーター領域が本発明の免疫サイトカインの転写を指令する能力を妨害する、又は(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害する、ことがないならば、2つのDNA配列は、作動的に連結されていると言われる。したがって、遺伝子発現配列は、遺伝子発現配列がその核酸配列の転写をもたらす能力があり、その結果、生じた転写物が所望のポリペプチドに翻訳されるならば、本発明の免疫サイトカインをコードする核酸配列に作動的に連結されている。
【0088】
プレmRNA分子が組換え分子の産生収率を改善するとしばしば実証されているので、有利には、該核酸配列は、イントロンを含む。任意のイントロン配列を使用してもよく、一例として、ZAGOら(Biotechnol. Appl. Biochem., vol.52(Pt 3), p:191-8, 2009)及びCAMPOS-DA-PAZら(Mol. Biotechnol., vol.39(2), p:155-8, 2008)に開示されるものを引用することができる。
【0089】
コンジュゲート又は免疫調節性抗体をコードするポリヌクレオチドは、単独で又はベクターに関連してインビボ送達され得る。
【0090】
「ベクター」は、その最も広い意味で本発明の免疫サイトカインをコードする核酸を細胞に送達することを促進する能力のある任意の媒体である。好ましくは、ベクターは、ベクターの不在下で生じるであろう分解の程度よりも少ない分解で核酸を細胞に輸送する。一般的には、本発明に有用なベクターは、非限定的に、プラスミド、コスミド、ファージミド、エピソーム、人工染色体、ウイルス、免疫サイトカインの核酸配列の挿入又は組込みによって操作されたウイルス又は細菌源から得られた他の媒体を含む。
【0091】
プラスミドベクターは、好ましい種類のベクターであり、当技術分野において広く記載されており、当業者に周知である。例えば、SANBROOK et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。プラスミドの非限定的な例は、pBR322、pUC18、pUCl9、pRC/CMV、SV40、及びpBlueScriptを含み、他のプラスミドは、当業者に周知である。追加的に、DNAの特異的フラグメントを除去及び付加するために、制限酵素及びライゲーション反応を使用してプラスミドをカスタム設計してもよい。
【0092】
好ましくは、ベクターは、細菌及び哺乳類細胞の両方において活性な選択マーカーを含むことができる。
【0093】
医薬組成物及び治療方法
本明細書に使用される用語「対象」は、齧歯類、ネコ、イヌ又は霊長類などの哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0094】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容し得る担体を含み得る。
【0095】
表現「薬学的に許容し得る」は、生理学的に耐容性であり、ヒトに投与した場合に典型的には急性胃蠕動、めまいなどのアレルギー反応又は類似の望ましくない反応を生じない分子実体及び組成物を表す。好ましくは、本明細書に使用される表現「薬学的に許容し得る」は、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認可能なこと、又は動物、より特定的にはヒトにおける使用のために米国薬局方若しくは他の一般的に認められた薬局方に挙げられていることを意味する。
【0096】
用語「担体」は、化合物が一緒に投与される溶媒、佐剤、賦形剤、又は媒体を表す。そのような医薬担体は、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成起源のものを含む、水及び油などの無菌液体であり得る。
【0097】
本発明に関連して、本明細書に使用される用語「処置する」又は「処置」は、そのような用語があてはまる障害若しくは状態又はそのような障害若しくは状態の1つ以上の症状を後退させる、緩和する、進行を阻害する、又は予防することを意味する。本明細書に使用される表現「癌を処置する」は、癌細胞の成長の阻害を意味する。好ましくは、そのような処置は、腫瘍成長の後退、すなわち計測可能な腫瘍のサイズの減少にも至る。最も好ましくは、そのような処置は、腫瘍の完全退縮に至る。
【0098】
表現「治療有効量」は、癌細胞の成長を阻害するために十分な、好ましくは腫瘍成長の後退を誘導するために十分な量を表す。投与された用量は、様々なパラメーターの関数として、特に使用される投与様式、関連する病理、又はその代わりに所望の処置期間の関数として採用することができる。もちろん、医薬組成物の形態、投与経路、投薬量及び投与計画は、処置されるべき状態、病気の重症度、対象の年齢、体重及び性別などにもちろん依存する。下記に提供される有効用量の範囲は、本発明を限定することを意図せず、好ましい用量範囲を表すものである。しかし、過度な実験なしに当業者によって理解され、決定可能なように、好ましい用量は、個別の対象に合わせることができる。
【0099】
本発明の組合せの著しい効率を考慮して、当業者は、対象を処置するために両方の個別の化合物を非常に低用量で使用することを計画することができる。
【0100】
非限定的な例として、本発明の免疫抑制受容体アンタゴニスト抗体は、注射によって用量500μg/kg以下、好ましくは用量100μg/kg以下、最も好ましくは用量50μg/kg以下で投与することができる。
【0101】
好ましくは、該免疫抑制受容体アンタゴニスト抗体は、注射によって用量少なくとも1μg/kg対象、好ましくは少なくとも5μg/kg対象、最も好ましくは用量少なくとも10μg/kg対象で投与することができる。
【0102】
非限定的な例として、本発明のコンジュゲートは、注射によって用量60μg/kg以下、好ましくは用量10μg/kg以下、最も好ましくは用量5μg/kg以下で投与することができる。
【0103】
好ましくは、該コンジュゲートは、注射によって用量少なくとも0.5μg/kg対象、好ましくは少なくとも0.7μg/kg対象で、最も好ましくは少なくとも用量0.8μg/kg対象で投与することができる。
【0104】
一例として、投与段階は、局所、経口、鼻腔内、眼内、静脈内、筋肉内、腫瘍内又は皮下投与などに対応することができる。好ましくは、これらの投与段階は、注射に対応する。したがって、コンジュゲート、免疫調節抗体若しくはそのフラグメント、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクターは、注射されることを意図する製剤にとって薬学的に許容し得る媒体と関連している。これらは、特に、等張無菌塩類溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど又はそのような塩の混合物)、又は場合により無菌水又は生理学的塩類溶液を添加したときに注射液の構成を許す乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であり得る。適切な医薬担体は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0105】
コンジュゲート、免疫調節抗体若しくはそのフラグメント、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクターを、緩衝液若しくは水に溶解させてもよく、あるいはエマルション、マイクロエマルション、ヒドロゲル(例えばPLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマー系ヒドロゲル)、マイクロスフェア、ナノスフェア、マイクロパーティクル、ナノパーティクル(例えば乳酸-グリコール酸コポリマーマイクロパーティクル(例えばポリ乳酸(PLA);乳酸-グリコール酸コポリマー(PLGA);ポリグルタミン酸のマイクロスフェア、ナノスフェア、マイクロパーティクル若しくはナノパーティクル)中に、リポソーム中に、又は他のガレヌス製剤中に組み入れてもよい。いかなる場合でも、製剤は無菌でなければならず、かつ許容し得るシリンジ通過性の程度まで流動性でなければならない。製剤は、製造及び保存の条件で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。
【0106】
遊離塩基又は薬学的に許容し得る塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中に調製することができる。
【0107】
分散物もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物並びに油中に調製することができる。通常の保存及び使用条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止するために保存料を含有する。
【0108】
本発明のコンジュゲート、免疫抑制受容体アンタゴニスト抗体若しくはそのフラグメント、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクターは、中性又は塩形態で組成物に製剤化することができる。薬学的に許容し得る塩は、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)を含む。遊離カルボキシル基と共に形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることができる。
【0109】
担体は、また、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。ポリペプチドは、また、その生物学的利用能(biodisponibility)を増加させるように、一例としてペグ化により修飾され得る。
【0110】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。
【0111】
注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤の組成物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、ポリオール、半減期増大共有結合及び非共有結合製剤の使用によりもたらすことができる。
【0112】
加水分解及び変性を含む、ペプチドの不安定性又は分解の多くの原因がある。疎水性相互作用は分子が一緒にクランピングすること(すなわち凝集)を引き起こし得る。そのような問題を減少又は防止するために、安定化剤を加えてもよい。
【0113】
安定化剤は、シクロデキストリン及びその誘導体を含む(米国特許第5,730,969号を参照されたい)。スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリンなどの適切な保存料もまた、最終製剤を安定化するために添加することができる。イオン性及び非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、及びそれらの混合物より選択される安定化剤を製剤に添加してもよい。アルカリ金属塩又は塩化マグネシウムの添加はペプチドを安定化し得る。ペプチドはまた、それを、デキストラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、デキストリン及びアルギン酸塩からなる群より選択されるサッカリドと接触させることによって安定化され得る。添加できる他の糖は、単糖、二糖、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールはペプチドを安定化し得、水混和性又は水溶性である。適切なポリオールは、ポリヒドロキシアルコール、マンニトール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びそれらのポリマーを含む単糖及び二糖であり得る。血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解ゼラチン、及び硫酸アンモニウムを含む、様々な賦形剤もまた、ペプチドを安定化し得る。
【0114】
以下に、アミノ酸配列、核酸配列及び実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。しかしながら、本発明は実施例の詳細に限定されることを意図するわけではない。むしろ本発明は、本明細書の実施例に明確に言及されていないが、当業者が過度の努力なしに見出す詳細を含む任意の実施態様に関する。
【0115】
実施例
1)PD1/PD-L1癌モデル
BALB/Cマウスの右脇腹にCT26腫瘍細胞を皮下注射した(2.105/匹)。9日目に腫瘍が20~30mm2に達したとき、マウスを250μg/匹の抗PD1(BIOXCELL、クローンRPM1-14、#BE0146)単独又はアイソタイプ対照(ラットIgG2a;BIOXCELL、クローン2A3、#BE0089)で処置した。抗PD1(α-PD1)又はアイソタイプ対照(2A3)を9、12及び15日目に注射した。13日から37日にかけて、マウスを週に2回、RLI CHO(1004-14p) 2μgで、又は対照群ではPBSで処置した。腫瘍を週に3回ノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算した:長さ×幅。腫瘍サイズが300mm2に達したとき又は潰瘍化したときにマウスを屠殺した。
【0116】
プロトコールを
図1に示す。担CT26腫瘍マウスは、9~15日目に抗PD1又はアイソタイプ対照の投与を3回受けた(250μg/回)。RLI処置(2μg/回)は、13~37日目に週2回注射して行った。
【0117】
CT26腫瘍モデルは、PD-L1(PD1リガンド;(DURAISWAMY et al., Cancer Res., Jun 5, 2013)を発現した。そしてPD1受容体を高度に発現しているT細胞によって浸潤される。
図2に、CT26モデルにおいて高頻度の腫瘍浸潤CD8+ T細胞がPD-1及びTim-3を共発現することを示す。担CT26腫瘍マウスから分離した脾臓及び腫瘍を染色し、フローサイトメトリーによって分析した。脾臓(左欄)及び腫瘍(右欄)におけるCD3+CD8+ T細胞上でのTim-3及びPD-1の共発現を示す。
【0118】
図3に、以前に記載されたプロトコールに従って抗PD1(aPD1)若しくは対照(2A3)、RLI若しくは対照(PBS)又は両方の処置の組合せ(aPD1+RLI)で処置された担CT26腫瘍マウスにおける腫瘍サイズの進展を示す。(A)各群における腫瘍の成長(n=5匹/群)。(B)Aと同様であるが2回目の実験から。C.各群において腫瘍が完全に退縮したマウスの率。(D~G)。対照処置群についての各マウスにおける腫瘍の成長(実験1及び2をまとめる、n=10)(D);RLI単独処置群(E);aPD1単独処置群(F)及びaPD1+RLI処置群(G)。二元ANOVAを用いた統計検定で判定した。*p<0.05;***p<0,001。
【0119】
図4に、抗PD1/RLIの組合せ処置がマウスにおける全生存を増加させることを示す。A.各処置群における全生存(1群あたりn=10)。
【0120】
したがって、結果は、抗PD1+RLIの組合せ処置が単独群に比べて抗腫瘍効果を高めることを示している。特に、RLI/aPD1処置は、完全に腫瘍が退縮したマウスの数及び全生存数を増加させる(
図3C及び4)。驚くことに、RLI及び抗PD1の組合せで処置され、完全寛解後、145日目にCT26腫瘍で再攻撃された無腫瘍マウスはどれも腫瘍成長を示さなかったので、防御抗腫瘍免疫の持続を示唆している(データは示さず)。これらの結果は、i)腫瘍接種後のD10から処置を開始した場合、RLIは単独で腫瘍成長に無効であった、ii)そのとき、抗PD1は生存率を高めたが、完全退縮を誘導することは、まれであった(5.9%)ことを立証した別系列の実験で確認された。抗PD1及びRLIの組合せは、生存率及び長期継続寛解であった完全寛解(30.4%)を増大させた。マウスが全退縮後の145日目にまだ無腫瘍であり、治癒後のマウスの再攻撃が腫瘍復活を決して示さなかったので、この組合せは、効果的な抗腫瘍メモリー免疫応答を誘導した(データは示さず)。
【0121】
BALB/Cマウスの右脇腹にCT26腫瘍細胞を皮下注射した(2.10
5/匹)。10日目に、マウスに低用量の抗PD1(クローンmBAT、12μg/m匹)若しくは対照、RLI CHO(1004-15p)2μg若しくは対照、又は両方の処置の組合せをi.p.で受けさせた。1週間後(17日目)に、マウスに、抗PD1、RLI又は対照の2回目の注射を受けさせる。腫瘍を2日毎にノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算した:長さ×幅。腫瘍サイズが300mm
2に達したとき又は潰瘍化したときにマウスを屠殺した。プロトコールを
図5に示す。
【0122】
図6に、RLIと組み合わせた低い抗PD1のi.p注射で2回処置された担CT26腫瘍マウスにおけるCT26腫瘍の成長を示す。二元ANOVAを用いた統計検定で判定した。***p<0,001。
【0123】
結果は、低用量の抗PD1又はRLIは単独で原発性皮下腫瘍の成長阻害を支援できないことを示している。しかし、低用量の抗PD1をRLIと組み合わせることで腫瘍の成長阻害が可能になった。この実験から、RLIが最適以下の用量の抗PD1処置であっても抗PD1戦略と相乗作用して腫瘍成長と闘うことができたと確認された。
【0124】
結局、この低用量の組合せが顕著な相乗性を招き、強い腫瘍成長阻害を招くと思われる。
【0125】
2)転移性黒色腫
0日目にC57BL/6マウスの脇腹にB16F10細胞3×104個をi.d.注射することによってB16F10腫瘍を移植した。7~25日目にRLI CHO 2μgを1週間に2回i.p.注射したRLI CHO(2μg/匹)と組み合わせて又は組み合わせずに、マウスを抗CTLA-4(クローン:UC10-4F10-11 100又はクローン:9D9)又は抗PD-1(クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(クローン:10F.9G2)でi.p.処置した。注射1回あたりの抗CTLA-4又は抗PD-1又は抗PD-L1抗体の用量は、3日目に200μgに加えて6及び9日目に100μgである。対照群は、対応する用量の抗体アイソタイプの投与を受けた。腫瘍サイズ及び発生率を身体検査により経時的にモニターした。
3)進行肺癌
腫瘍細胞系TC-1は、C57BL/6マウスの初代肺上皮細胞から得られ、ヒトパピローマウイルス16(HPV-16)E6/E7及びc-Ha-Rasを共トランスフォーメーションされている。TC-1肺癌細胞105個をC57BL/6マウスの背中の真皮上層中にs.c.注射する。腫瘍がサイズ≒15~20mm2で明らかに目に見え、触知可能になったときに対応する、腫瘍接種後10日目に処置を開始する。抗CTLA-4 mAb(100μg/匹、クローン:UC10-4F10-11 100若しくはクローン:9D9)又は抗PD-1(250μg/匹、クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(100μg/匹、クローン:10F.9G2)を3つの単一時点で(10、14、17日目)与え、RLI(2μg/匹)を10、13及び18日目に与える。エンドポイントとして1週間に2回測定した腫瘍成長を用いて、単一薬剤に対して各抗体とRLIとの対組合せを用いた処置を比較する。対応する用量の抗体アイソタイプの投与を対照群に受けさせた。
【0126】
4)進行膀胱癌
MB49腫瘍細胞系は、C57BL/6雄性マウスからの膀胱上皮起源の発癌物質誘導腫瘍を起源とする。MB49膀胱ガン細胞106個をC57BL/6マウスの背中の真皮上層中にs.c.注射する。腫瘍がサイズ≒15mm2で明らかに目に見え、触知可能になったときに対応する、腫瘍接種後6日目に処置を開始する。抗CTLA-4 mAb(100μg/匹、クローン:UC10-4F10-11 100若しくはクローン:9D9)又は抗PD-1(100μg/匹、クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(100μg/匹、クローン:10F.9G2)を4つの単一時点で(6、9、12日目)与え、RLI(2μg/匹)を7、8、10、11、13、14、及び16、17日目に与える。単一薬剤に対して各抗体とRLIとの対組合せを用いた処置を比較する。対応する用量の抗体アイソタイプの投与を対照群に受けさせた。腫瘍を1週間に3回ノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算した:長さ×幅。腫瘍サイズが300mm2に達したとき又は潰瘍化したときにマウスを屠殺した。
【0127】
5)乳癌
0日目にBALB/cマウスの乳腺に4T1乳癌細胞5×104個を接種する。腫瘍がサイズ≒15~20mm2で明らかに目に見え、触知可能になったときに対応する、腫瘍接種後10日目に処置を開始する。抗CTLA-4 mAb(100μg/匹、クローン:UC10-4F10-11 100若しくはクローン:9D9)又は抗PD-1(250μg/匹、クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(200μg/匹、クローン:10F.9G2)を4つの単一時点で(10、13、16日目)与え、RLI(2μg/匹)を10、11、13、14、16、17、及び19、20日目に与える。単一薬剤に対して各抗体とRLIとの対組合せを用いた処置を比較する。対応する用量の抗体アイソタイプの投与を対照群に受けさせた。腫瘍を1週間に3回ノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算する:長さ×幅。マウスを27日目に屠殺する。肺転移結節を双眼顕微鏡で計数する。
6)卵巣癌
ID8-VEGF卵巣癌細胞系は、マウス卵巣上皮乳頭漿液性腺癌細胞系から以前に開発された。C57BL/6マウスの右脇腹にいずれかのID8腫瘍細胞5×106個を皮下移植する。腫瘍がサイズ≒15~20mm2で明らかに目に見え、触知可能になったときに対応する、腫瘍接種後10日目に処置を開始する。抗CTLA-4 mAb(100μg/匹、クローン:UC10-4F10-11 100若しくはクローン:9D9)又は抗PD-1(250μg/匹、クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(200μg/匹、クローン:10F.9G2)を4つの単一時点で(10、13、16日目)与え、RLI(2μg/匹)を10、11、13、14、16、17、及び19、20日目に与える。エンドポイントとして1週間に2回測定した腫瘍成長を用いて、単一薬剤に対して各抗体とRLIとの対組合せを用いた処置を比較する。対応する用量の抗体アイソタイプの投与を対照群に受けさせた。腫瘍を1週間に3回ノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算する:長さ×幅。腫瘍サイズが300mm2に達したとき又は潰瘍化したときにマウスを屠殺する。
【0128】
7)前立腺ガン:RM-1
C57BL/6雌性マウスにRM-1マウス前立腺癌細胞2×105個をs.c.接種する。腫瘍がサイズ≒15~20mm2で明らかに目に見え、触知可能になったときに対応する、腫瘍接種後3日目に処置を開始する。抗CTLA-4 mAb(100μg/匹、クローン:UC10-4F10-11 100若しくはクローン:9D9)又は抗PD-1(250μg/匹、クローンRPM1-14、#BE0146)又は抗PD-L1 mAb(200μg/匹、クローン:10F.9G2)を3つの単一時点で(3、6、9日目)与え、RLI(2μg/匹)を6、7、9、10、12、13、15、16及び18、19日目に与える。エンドポイントとして1週間に2回測定した腫瘍成長を用いて、単一薬剤に対して各抗体とRLIとの対組合せを用いた処置を比較する。対応する用量の抗体アイソタイプの投与を対照群に受けさせた。腫瘍を1週間に3回ノギスで測定し、以下のように腫瘍面積を計算する:長さ×幅。腫瘍サイズが300mm2に達したとき又は潰瘍化したときにマウスを屠殺した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を処置するための組合せ医薬組成物であって:
a)(i)インターロイキン15又は配列番号3のN72Dアミノ酸置換を有するその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(ii)IL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;
それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター;
b)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター、並びに
c)薬学的に許容し得る担体
からなり、
該コンジュゲート及び抗体は、連結しておらず、
該抗体は、PD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2アンタゴニストを含む群より選択される、
組合せ医薬組成物。
【請求項2】
癌を処置するための医薬組成物であって:
a)(i)インターロイキン15又は配列番号3のN72Dアミノ酸置換を有するその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(ii)IL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;
それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター;
を含み、
b)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター
と組合せて用いられることを特徴とし、
該抗体は、PD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2アンタゴニストを含む群より選択され、
a)及びb)は、同時に、分離して、又は順次に投与される、
医薬組成物。
【請求項3】
癌を処置するための医薬組成物であって:
a)対象における癌を処置する使用のための、T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター
を含み、
該抗体は、PD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2アンタゴニストを含む群より選択され、
b)(i)インターロイキン15又は配列番号3のN72Dアミノ酸置換を有するその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び
(ii)IL-15Rαのスシドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含むコンジュゲート;それをコードするポリヌクレオチド、又はそのようなポリヌクレオチドを含むベクター;
と組合せて用いられることを特徴とし、
a)及びb)は、同時に、分離して、又は順次に投与される、
医薬組成物。
【請求項4】
対象における癌を処置する使用のための、同時に、分離して、又は順次に投与されるために適合された、請求項1の組合せ医薬組成物。
【請求項5】
a)コンジュゲートが、注射によって用量60μg/kg以下で投与され;及び
b)T細胞活性化の阻害に関係づけられている免疫経路に拮抗する抗体が、用量500μg/kg以下の注射によって投与される、
請求項1~4のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L2アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、請求項1~5のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ、Merck3745、CT-011、ランブロリズマブ(lambrolizumab)又はAMP514より選択される、請求項6記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記PD-1/PD-L1が、抗PD-L1抗体である、請求項1~5のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記抗PD-L1抗体が、MDX-1105又はYW243.55.S70から選択される、請求項6記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項10】
a)コンジュゲートのポリペプチドi)及びii)が、融合タンパク質の状態に共有結合されている、
請求項1~9のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項11】
インターロイキン15が、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1~10のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項12】
IL-15Rαのスシドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項1~11のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【請求項13】
コンジュゲートが、配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列を有する、請求項1~12のいずれか一項記載の組合せ医薬組成物又は癌を処置する使用のための医薬組成物。
【外国語明細書】