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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116279
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】CD30及びCD3に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240820BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240820BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240820BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K47/28
A61K47/44
C07K16/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】60
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024093206
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2023538860の分割
【原出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21201712.3
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】サティン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルバーツ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ,エステル・シー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】オースティンディー,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】アレムデヒ,ファルシッド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有効性があり、安全で、良好な製造可能性を有し、かつ/又は長い貯蔵寿命を有するCD30標的化化合物を提供する。また、改善されたCD30標的化がん療法を提供する。
【解決手段】CD3及びCD30に結合する多重特異性抗体を提供する。前記抗体を含む薬学的組成物、抗体をコードする核酸、抗体を産生する宿主細胞、抗体を産生する方法、及び特にがん療法のための、抗体の使用を更に提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載される
CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結
合領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びC
DR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記
載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むC
D3結合領域と、
を含む多重特異性抗体。
【請求項2】
前記第1の重鎖可変領域及び/又は前記第1の軽鎖可変領域が、ヒトである、請求項1
に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第2の重鎖可変領域及び/又は前記第2の軽鎖可変領域が、ヒト化である、請求項
1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
配列番号9におけるXが、Hである、先行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異
性抗体。
【請求項5】
配列番号9におけるXが、Gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の多重特異性
抗体。
【請求項6】
前記第1の重鎖可変領域が、配列番号13に記載される配列を含み、前記第1の軽鎖可
変領域が、配列番号14に記載される配列を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載
の多重特異性抗体。
【請求項7】
前記第2の重鎖可変領域が、配列番号15に記載される配列を含み、前記第2の軽鎖可
変領域が、配列番号16に記載される配列を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載
の多重特異性抗体。
【請求項8】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、先行する請求項のいずれか一項に記載
の多重特異性抗体。
【請求項9】
前記多重特異性抗体が、第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域を含む、先
行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
前記Fc領域が、IgG1 Fc領域、好ましくはヒトIgG1 Fc領域である、請
求項9に記載の多重特異性抗体。
【請求項11】
前記多重特異性抗体が、全長抗体である、請求項9又は10に記載の多重特異性抗体。
【請求項12】
不活性Fc領域を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2のFcポリペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるL234及
び/又はL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換を含み、ここで、前記置換が、
好ましくは、それぞれ、F及びEへの置換であり、ここで、前記アミノ酸位置が、Euナ
ンバリングによって定義されるとおりである、請求項9~12のいずれか一項に記載の多
重特異性抗体。
【請求項14】
前記第1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ
酸に対応する前記アミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、前記第1及び/
又は第2のFcポリペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応
するアミノ酸の置換を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくは、Rへの置換であり、
ここで、前記アミノ酸位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、請求
項12又は13に記載の多重特異性抗体。
【請求項15】
前記第1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ
酸に対応する前記アミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、前記第1及び第
2のFcポリペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応する前
記アミノ酸の置換を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくは、Rへの置換である、請
求項14に記載の多重特異性抗体。
【請求項16】
前記第1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ
酸に対応する前記アミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、前記第1及び/
又は第2のFcポリペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応
するアミノ酸の置換を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくは、Aへの置換であり、
ここで、前記アミノ酸位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、請求
項12又は13に記載の多重特異性抗体。
【請求項17】
前記第1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ
酸に対応する前記アミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、前記第1及び第
2のFcポリペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応する前
記アミノ酸の置換を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくは、Aへの置換である、請
求項16に記載の多重特異性抗体。
【請求項18】
前記第1及び第2のFcポリペプチドのうちの一方が、それぞれ、L234、L235
、及びG236位のアミノ酸に対応する前記アミノ酸の、F、E、及びRへの置換を含み
、他方のFcポリペプチドが、それぞれ、L234、L235E、及びD265位のアミ
ノ酸に対応する前記アミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、ここで、前記アミノ酸
位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、請求項12~14のいずれ
か一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1のFcポリペプチド及び前記第1の重鎖可変領域が、同じポリペプチド鎖内に
含まれ、前記第2のFcポリペプチド及び前記第2の重鎖可変領域が、同じポリペプチド
鎖内に含まれる、請求項18に記載の多重特異性抗体。
【請求項20】
前記第1のFcポリペプチドが、それぞれ、L234、L235、及びG236位のア
ミノ酸に対応する前記アミノ酸の、F、E、及びRへの置換を含み、第2のFcポリペプ
チドが、それぞれ、L234、L235E、及びD265位のアミノ酸に対応する前記ア
ミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、ここで、前記アミノ酸位置が、Euナンバリ
ングによって定義されるとおりである、請求項19に記載の多重特異性抗体。
【請求項21】
前記第1のFcポリペプチドにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368
、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる群から選択される位
置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、前記第2の
Fcポリペプチドにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、
D399、F405、Y407、及びK409からなる群から選択される位置に対応する
位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、そしてここで、前記第1
及び第2のFcポリペプチドにおける前記置換が同じ位置にはなく、ここで、前記アミノ
酸位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、請求項9~20のいずれ
か一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項22】
前記第1のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置にある前記アミノ酸が
、Lであり、前記第2のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にある前記
アミノ酸が、Rであるか、又はその逆もまた同様である、請求項21に記載の多重特異性
抗体。
【請求項23】
前記第1のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にある前記アミノ酸が
Rであり、前記第2のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置にある前記ア
ミノ酸がLである、請求項22に記載の多重特異性抗体。
【請求項24】
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載される
CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結
合領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びC
DR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記
載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むC
D3結合領域と、を含み、
ここで、前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体であり、第1及び第2のFcポリペプ
チドからなるFc領域を含み、
ここで、前記第1のFcポリペプチド及び前記第1の重鎖可変領域が、同じポリペプチ
ド鎖内に含まれ、前記第2のFcポリペプチド及び前記第2の重鎖可変領域が、同じポリ
ペプチド鎖内に含まれ、
ここで、前記第1のFcポリペプチドが、それぞれ、L234、L235、及びG23
6位のアミノ酸に対応する前記アミノ酸の、F、E、及びRへの置換を含み、そして、前
記第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234、L235、及びD265位のアミノ
酸に対応する前記アミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、そしてここで、前記アミ
ノ酸位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりであり、
ここで、前記第1のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にある前記ア
ミノ酸が、Rであり、前記第2のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置に
ある前記アミノ酸がLである、先行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項25】
配列番号17及び19に記載される重鎖配列、並びに配列番号18及び20に記載され
る軽鎖配列を含むか、又はそれらからなる、先行する請求項のいずれか一項に記載の多重
特異性抗体。
【請求項26】
配列番号17及び19に記載される重鎖配列、並びに配列番号18及び20に記載され
る軽鎖配列を含むか、又はそれらからなり、前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体であ
る、先行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項27】
(i)前記CD30結合領域及び/若しくは前記CD3結合領域が、Fabであるか、
(ii)前記CD30結合領域及び/若しくは前記CD3結合領域が、scFvである
か、
(iii)前記CD30結合領域が、Fabであり、前記CD3結合領域が、scFv
であるか、又は
(iv)前記CD30結合領域が、scFvであり、前記CD3結合領域が、Fabで
ある、請求項1~8のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項28】
先行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする、核酸構築物、又
は核酸構築物の組み合わせ。
【請求項29】
請求項28に記載の核酸構築物を含む、発現ベクター、又は発現ベクターの組み合わせ
【請求項30】
請求項28に記載の核酸構築物を含む、送達ビヒクル。
【請求項31】
前記送達ビヒクルが、粒子である、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項32】
前記粒子が、脂質ナノ粒子である、請求項31に記載の送達ビヒクル。
【請求項33】
前記脂質ナノ粒子が、脂質、イオン化可能なアミノ脂質、PEG-脂質、コレステロー
ル、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項32に記載の送達ビヒクル。
【請求項34】
前記宿主細胞が、先行する請求項のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする
1つ以上の核酸構築物を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を
産生することができる組換え宿主細胞。
【請求項35】
前記組換え宿主細胞が、CHO細胞である、請求項34に記載の組換え宿主細胞。
【請求項36】
請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と、薬学的に許容される担体と
、を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
医薬としての使用のための、請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体、
請求項28に記載の核酸構築物、請求項30~33のいずれか一項に記載の送達ビヒクル
、又は請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
がんの治療における使用のための、請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性
抗体、請求項28に記載の核酸構築物、請求項30~33のいずれか一項に記載の送達ビ
ヒクル、又は請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療における使用のための、請
求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体、請求項28に記載の核酸構築物、
請求項30~33のいずれか一項に記載の送達ビヒクル、又は請求項36に記載の薬学的
組成物。
【請求項40】
非ホジキンリンパ腫が、T細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)である、請求項39
に記載の使用のための、多重特異性抗体、核酸構築物、送達ビヒクル、又は薬学的組成物
【請求項41】
T-NHLが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)又は末梢T細胞リンパ腫(PTCL)
である、請求項40に記載の使用のための、多重特異性抗体、核酸構築物、送達ビヒクル
、又は薬学的組成物。
【請求項42】
T細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)が、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)であ
る、請求項39~41のいずれか一項に記載の使用のための、多重特異性抗体、核酸構築
物、送達ビヒクル、又は薬学的組成物。
【請求項43】
非ホジキンリンパ腫が、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)である、請求項39
に記載の使用のための、多重特異性抗体、核酸構築物、送達ビヒクル、又は薬学的組成物
【請求項44】
前記多重特異性抗体、前記核酸構築物、前記送達ビヒクル、又は前記薬学的組成物が、
静脈内及び/又は皮下、好ましくは皮下投与されている、請求項37~43のいずれか一
項に記載の使用のための、多重特異性抗体、核酸構築物、送達ビヒクル、又は薬学的組成
物。
【請求項45】
請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を産生するための方法であって
、該方法は、
(i)請求項34又は35に記載の組換え宿主細胞を、前記抗体が産生される条件下で
培養することと、
(ii)産生された前記多重特異性抗体を培養物から単離することと、
を含む、方法。
【請求項46】
請求項9~26のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を産生するための方法であって
、該方法は;
a)請求項1に記載されるCD30結合領域を含む第1の抗体(i)、及び請求項1に
記載されるCD3結合領域を含む第2の抗体(ii)を提供し、ここで、前記抗体が、請
求項2~26に記載される更なる特徴を任意に含有し、
ここで、前記第1及び第2の抗体が、Fc領域を含み、
ここで、前記第1及び第2の抗体の第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひ
いては前記第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、前記第1及び第2の
CH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強く;
b)前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒に、前記ヒンジ領域における前記システイ
ンがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキ
ュベートし;そして、
c)前記第1の抗体の第1の免疫グロブリン重鎖及び第1の免疫グロブリン軽鎖と、前
記第2の抗体の第2の免疫グロブリン重鎖及び第2の免疫グロブリン軽鎖と、を含む前記
多重特異性抗体を得る;
ことを含む、方法。
【請求項47】
請求項1~27のいずれか一項に定義される抗体と、キットの使用説明書と、を含む、
コンパニオン診断薬としての/患者の集団内で請求項1~27のいずれか一項に定義され
る抗体での治療に応答する傾向を有する患者を特定するための使用のためのキットのよう
な、キットオブパーツ。
【請求項48】
請求項1~27のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を含む、診断用組成物。
【請求項49】
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載される
CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結
合領域と、
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、ここで、前記第
1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応
するアミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここて、前記第1及び第2のFcポリ
ペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換
を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくは、Rへの置換であり、ここで、前記アミノ
酸位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、Fc領域と、
を含む抗体。
【請求項50】
前記第1の重鎖可変領域が配列番号13に記載される配列を含み、前記第1の軽鎖可変
領域が配列番号14に記載される配列を含む、請求項49に記載の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、配列番号17に記載される重鎖配列及び配列番号18に記載される軽鎖配
列を含むか、又はそれらからなる、請求項49又は50に記載の抗体。
【請求項52】
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域と、
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、ここで、前記第
1及び第2のFcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応
するアミノ酸の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、前記第1及び第2のFcポリ
ペプチドが、ヒトIgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換
を更に含み、ここで、前記置換が、好ましくはRへの置換であり、ここで、前記アミノ酸
位置が、Euナンバリングによって定義されるとおりである、Fc領域と、
を含む抗体。
【請求項53】
配列番号9におけるXが、Hである、請求項52に記載の抗体。
【請求項54】
配列番号9におけるXが、Gである、請求項52に記載の抗体。
【請求項55】
前記第2の重鎖可変領域が、配列番号15に記載される配列を含み、前記第2の軽鎖可
変領域が、配列番号16に記載される配列を含む、請求項52~54のいずれか一項に記
載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が、全長抗体である、請求項49~55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項57】
ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y
407、及びK409からなる群から選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のう
ちの少なくとも1つが置換されており、好ましくは、F405に対応する位置にあるアミ
ノ酸がLであるか、又は、K409に対応する位置にあるアミノ酸がRである、請求項4
9~56のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
多重特異性抗体を産生するための方法であって、該方法は;
a)請求項49~51又は55~57のいずれか一項に記載される第1の抗体、並びに
、以下を含む第2の軽鎖可変領域を提供するか;
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びC
DR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記
載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列と、を含むCD3結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、ここで、前記
第1及び第2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応す
るアミノ酸の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に
対応するアミノ酸のAへの置換と、を含むFc領域;
又は
請求項52~57のいずれか一項に記載される第2の抗体、並びに、以下を含む第1の
抗体を提供し;
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びC
DR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載され
るCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD30
結合領域、及び
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、前記第1及び
第2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ
酸の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応する
アミノ酸のAへの置換と、を含むFc領域;
ここで、前記第1及び第2の抗体の前記第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、
ひいては前記第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、前記第1及び第2
のCH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強く、ここで、好ましくは、前記第1の
CH3領域において、F405に対応する位置にあるアミノ酸がLであり、前記第2のC
H3領域において、K409に対応する位置にあるアミノ酸が、Rであるか、又はその逆
もまた同様であり;
b)前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒に、前記ヒンジ領域における前記システイ
ンがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキ
ュベートし;そして、
c)前記第1の抗体の前記第1の免疫グロブリン重鎖及び前記第1の免疫グロブリン軽
鎖と、前記第2の抗体の前記第2の免疫グロブリン重鎖及び前記第2の免疫グロブリン軽
鎖と、を含む前記多重特異性抗体を得る
ことを含む、方法。
【請求項59】
請求項58に記載の多重特異性抗体を産生するための方法であって、該方法は、
a)請求項49~51又は55~57のいずれか一項に記載される第1の抗体、並びに
、以下を含む第2の抗体を提供し;
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びC
DR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記
載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むC
D3結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、前記第1及び
第2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ
酸の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応する
アミノ酸のAへの置換と、を含むFc領域、
ここで、前記第1及び第2の抗体の前記第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、
ひいては前記第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、前記第1及び第2
のCH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強く、ここで、好ましくは、前記第1の
CH3領域において、K409に対応する位置にあるアミノ酸がRであり、そして、前記
第2のCH3領域において、F405に対応する位置にあるアミノ酸がLである;
b)前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒に、前記ヒンジ領域における前記システイ
ンがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキ
ュベートし;そして
c)前記第1の抗体の前記第1の免疫グロブリン重鎖及び前記第1の免疫グロブリン軽
鎖と、前記第2の抗体の前記第2の免疫グロブリン重鎖及び前記第2の免疫グロブリン軽
鎖と、を含む、前記多重特異性抗体を得る、
ことを含む、方法。
【請求項60】
請求項58又は59のいずれかに記載の方法によって得られる多重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD30及びCD3に結合する多重特異性抗体に関する。本発明は、抗体を
含む薬学的組成物、抗体をコードする核酸、抗体を産生する宿主細胞、抗体を産生する方
法、及び特にがん療法のための、抗体の使用を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
Ki-1又はTNFRSF8としても知られる、CD30は、120kDの膜貫通糖タ
ンパク質受容体であり、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバー
である(Smith et al.(1994)Cell 76:959-962)。C
D30は、その細胞外ドメインに6つのシステインリッチ反復を有するシングルパスI型
膜タンパク質である(Durkop et al.(1992)Cell 68:421
-427)。加えて、可溶性形態のCD30(sCD30)が、潰瘍性大腸炎(UC)(
Giacomelli et al.Clin Exp Immunol.1998;1
11:532-5)を含む、炎症性疾患、及びCD30陽性血液悪性腫瘍(Josimo
vic-Alasevic et al.(1989)Eur J Immunol)を
有する患者の血清中で検出されている。sCD30は、TACE/ADAM17及びAD
AM10などの細胞膜係留性メタロプロテイナーゼによるCD30の細胞外部分の切断産
物を表す(Nagata et al.,PNAS 2005、Hansen et a
l.,FASEB,2004)。
【0003】
正常組織では、CD30発現は、主に活性化T及びBリンパ球のサブセットに制限され
る(Bowen et al.(1996)J Immunol.156:442-9、
Shanebeck et al.(1995)Eur J Immunol.25:2
147-53)。CD30発現は、様々なリンパ系腫瘍において検出されている。古典的
ホジキンリンパ腫(cHL)及び未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は、高いCD30発
現レベルを示す。特に、cHLに典型的に見られる、Reed-Sternberg(R
S)細胞の大部分は、CD30に対して陽性である(Frizzera et al.(
1992)Semin.Diagn.Pathol.9:291-296)。
【0004】
例えば、CD30標的化抗体-薬物複合体ブレンツキシマブベドチン(BV、SGN-
35)は、cHL、ALCL、及びCTCLなどのがんを治療する際に使用されているか
又は使用することが推奨されている(Younes et al.J Clin Onc
ol.2012 Jun 20;30(18):2183-9、Pro et al.B
lood.2017 Dec 21;130(25):2709-2717、Shea
et al.Curr Hematol Malig Rep.2020 Feb;15
(1):9-19)。四価二重特異性CD30×CD16A抗体AFM13は、cHL及
びCD30陽性リンパ腫のためのNK細胞媒介性免疫療法として開発されている(Rot
he et al.Blood.2015 Jun 25;125(26):4024-
31)。
【0005】
更に、CD30標的化CAR-T細胞療法は、cHL及びCD30陽性リンパ腫のため
に開発されている。他のCD30抗体は、WO2003059282(Medarex)
、US8257706(Seattle genetics)、US2010/0239
571(Seattle genetics)、WO2007/040653(米国政府
及び保健)、及びWO2016/0177846(Affimed)に記載されている。
【0006】
Pohl et al.(1993 Int.J.Cancer,54:820-82
7)は、CD30モノクローナル抗体HRS-3産生ハイブリドーマ細胞とCD3モノク
ローナル抗体OKT-3産生ハイブリドーマ細胞との融合(ハイブリッドハイブリドーマ
技術)によって生成されたCD3×CD30二重特異性抗体OKT-3/HRS-3を記
載する。
【0007】
WO2008/119567は、CD30及びCD3種間特異的二重特異性一本鎖分子
の生成及び特徴分析を記載している。
【0008】
US2020/0095330は、2つの抗CD30クローン(8D10及び10C2
と名付けられた)の抗CD3(オルソクローンOKT-3)への化学的ヘテロ抱合に起因
するCD3xCD30二重特異性抗体を記載している。
【0009】
しかしながら、これらのCD3×CD30二重特異性抗体のいずれも、臨床環境で試験
されていない。
【0010】
したがって、改善されたCD30標的化がん療法の必要性がある。有効性があり、安全
で、良好な製造可能性を有し、かつ/又は長い貯蔵寿命を有するCD30標的化化合物の
必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ヒト及びカニクイザルCD30及びCD3に結合するT細胞誘導抗体に関す
る。本発明者らは、いくつかのCD30結合抗体が、二価(モノクローナル)フォーマッ
トでCD30発現細胞に良好に結合するが、一価CD30結合を有する二重特異性フォー
マットで強く低減した結合及び細胞傷害性を示すことを見出した。強力な一価CD30結
合及び優れた腫瘍細胞殺滅を有する二重特異性抗体が特定された。更に、優れた安定性及
び溶解性のために、薬学的製品への開発に好適である、機能的に不活性なFcバックボー
ンを有する二重特異性抗体が特定された。
【0012】
一態様において、本発明は、
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR
3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載されるC
DR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結合
領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域と、
を含む多重特異性抗体に関する。
【0013】
更なる態様において、本発明は、本発明による多重特異性抗体をコードする、核酸構築
物、又は核酸構築物の組み合わせに関する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、本発明による核酸構築物を含む発現ベクター又は送達
ビヒクルに関する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、本発明による多重特異性抗体を産生することができる
組換え宿主細胞に関し、宿主細胞は、本発明による多重特異性抗体をコードする1つ以上
の核酸構築物を含む。
【0016】
更なる態様において、本発明は、本発明による多重特異性抗体と、薬学的に許容される
担体と、を含む、薬学的組成物に関する。
【0017】
更なる態様において、本発明は、例えば、がんの治療において、医薬としての使用のた
めの、本発明による多重特異性抗体、核酸構築物、送達ビヒクル、又は薬学的組成物に関
する。
【0018】
より更なる態様において、本発明は、本発明による多重特異性抗体を産生するための方
法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】二重特異性CD3×CD30抗体並びにそれらの単一特異性、二価CD3及びCD30対応物の、SU-DHL-1又はHDML-2細胞への結合である。(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEAR、及びIgG1-CD30-MDX060-FEAR、(B)bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-hAC10-FEAR、(C)bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-HRS-3-FEAR、(D)BsIgG1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-HeFi-I-FEAR、(E)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T405-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-T405-FEAR、(F)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-T105-FEAR、(G)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-T408-FEAR、並びに(H)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、及びIgG1-CD30-HRS-3-FEARの、SU-DHL-1細胞(左パネル)又はHDLM-2細胞(右パネル)への用量依存的結合。(I)1.11μg/mLの濃度でのSU-DHL-1(左パネル)又はHDLM-2細胞(右パネル)へのCD3xCD30二重特異性抗体及びCD30単一特異性抗体の結合。CD30アームに使用される抗体クローンは、x軸上に示される。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図2】bsG1-huCD3xCD30-MDX060のHL及びALCL細胞株への結合である。(A)HDLM-2(HL)、(B)L-428(HL)、(C)DEL(ALCL)、又は(D)KI-JK(ALCL)細胞へのbsG1-huCD3xCD30-MDX060の結合を、フローサイトメトリーによって評価した。二重特異性抗体bsG1-huCD3xb12及びbsG1-b12xCD30-MDX060並びに単一特異性抗体IgG1-CD30-MDX060、IgG1-huCD3、及びIgG1-12を対照として含めた。全ての抗体は、FEAL及び/又はFERR Fcサイレンシング並びにDuoBody(登録商標)技術変異を、示されるようにそれらのFcドメインに含有した。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図3】SU-DHL-1又はHDML-2細胞におけるCD3×CD30二重特異性抗体によるインビトロでの細胞傷害性の誘導である。CD3×CD30二重特異性抗体は、CD30陽性腫瘍細胞株SU-DHL-1細胞(左パネル)又はHDLM-2細胞(右パネル)を標的細胞として、T細胞(CD3陽性ADCCエフェクター細胞IV型細胞、Clean Cells、Montaigu、France)をエフェクター細胞として使用して、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。以下の抗体を試験した:(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEAR、及びIgG1-CD30-MDX060-FEAR、(B)bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR及びIgG1-CD30-hAC10-FEAR、(C)bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR及びIgG1-CD30-HRS-3-FEAR、(D)BsIgG1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR及びIgG1-CD30-HeFi-I-FEAR、(E)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T405-FEAR及びIgG1-CD30-T405-FEAR、(F)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR及びIgG1-CD30-T105-FEAR、(G)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR及びIgG1-CD30-T408-FEAR、又は(H)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR及びIgG1-CD30-HRS-3-FEAR。抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FEARを全ての実験に対照として含めた。示されるデータは、生存細胞パーセンテージであり、各グラフについてのデータは、1つの代表的な実験から得られた。
図4】いくつかのALCL及びHL細胞株におけるCD3×CD30二重特異性抗体によるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖の誘導である。(A-C)CD3×CD30二重特異性抗体を、異なるALCL及びHL細胞株を標的細胞として、精製されたT細胞(A、B)又はADCCエフェクター細胞IV型細胞(C)をエフェクター細胞として使用するインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。CD3×CD30二重特異性抗体は、CD3についてより低い親和性を有する、huCD3-FEAL Fabアーム又はhuCD3-H101G-FEALバリアント、及びCD30特異的MDX060-FEAR Fabアームを含有した。IgG1-huCD3及びIgG1-b12(A、B)又はbsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEAR及びIgG1-CD30-MDX060-FEAR(C)を対照として含めた。示されるデータは、生存細胞パーセンテージであり、各グラフについてのデータは、1つの代表的な実験から得られた。(D)CFSE陽性細胞の数を、HDLM-2細胞(左パネル)又はNCEB-1細胞(右パネル)を標的細胞として用いた細胞傷害性アッセイにおける絶対T細胞数の尺度として評価した。
図5】Expi293F細胞にトランスフェクトされた全長ヒト及びカニクイザルCD30へのCD3xCD30二重特異性抗体の結合である。(A-C)全長ヒトCD30(B)又はカニクイザルCD30(C)で一過性にトランスフェクトされた野生型Expi293F細胞(A)又はExpi293F細胞への一価及び二価CD30抗体の結合。細胞を増加する濃度の以下の抗体とインキュベートした:IgG1-CD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEAR、及びbsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR。データは、2つの技術的複製のフローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値として提示される。(D)ヒトT細胞又はカニクイザルT細胞への抗体IgG1-CD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、及びbsG1-huCD3-FEALxb12-FEARの結合。データは、1つの代表的実験のフローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値として提示される。
図6】Expi293F細胞にトランスフェクトされた全長ヒト及びアカゲザルCD30へのCD3xCD30二重特異性抗体の結合である。一価及び二価CD30抗体の、全長ヒトCD30(左パネル)又はアカゲザルCD30(右パネル)で一過性にトランスフェクトされたExpi293F細胞への結合を、フローサイトメトリーによって評価した。以下の抗体を評価した:(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR及びIgG1-CD30-hAC10-FEAR、(C)bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR及びIgG1-CD30-HRS-3-FEAR、(D)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR及びIgG1-CD30-HeFi-I-FEAR、(E)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T405-FEAR及びIgG1-CD30-T405-FEAR、(F)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR及びIgG1-CD30-T105-FEAR、(G)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR及びIgG1-CD30-T408-FEAR、又は(H)bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR及びIgG1-CD30-HRS-3-FEAR。抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FEARを全ての実験に陰性対照として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図7】示差走査蛍光測定(DSF)によって決定される、異なる非活性化変異を有する抗体の熱安定性である。増加する温度での立体構造タンパク質安定性を、DSFによって2通りに評価した。以下の抗体の融解曲線を示す:(A)pH7.4のIgG1-CD30-MDX060-FEAR、(B)pH7.4のIgG1-CD30-MDX060-FERR、(C)pH7.4のIgG1-huCD3-FEAL、及び(D)pH7.4のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR。
図8】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのHL細胞株への結合である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの、HL細胞株L-540(A)、KM-H2(B)、及びL-1236(C)への結合をフローサイトメトリーによって評価した。二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FERR及びbsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR並びに単一特異性抗体IgG1-CD30-MDX060-FERR、IgG1-huCD3-FEAL、及びIgG1-12-FEALを対照として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図9】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのALCL細胞株への結合である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのALCL細胞株SUP-M2(A)、DL-40(B)、KARPAS-299(C)、L-82(D)、及びSR-786(E)への結合をフローサイトメトリーによって評価した。二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FERR及びbsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR並びに単一特異性抗体IgG1-CD30-MDX060-FERR、IgG1-huCD3-FEAL、及びIgG1-12-FEALを対照として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図10】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのNHL細胞株への結合である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの、(A)SUP-T1(TLL)、(B)JVM-2(MCL)、(C)HH(CTCL)、及び(D)NCEB-1(MCL)細胞株への結合を、フローサイトメトリーによって評価した。二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FERR及びbsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR並びに単一特異性抗体IgG1-CD30-MDX060-FERR、IgG1-huCD3-FEAL、及びIgG1-12-FEALを対照として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図11】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの、HEK293細胞にトランスフェクトされた全長ヒト及びアカゲザルCD30への結合である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの、全長ヒトCD30(A)又はアカゲザルCD30(B)で一過性トランスフェクトされたHEK293細胞への結合を、フローサイトメトリーによって評価した。bsG1-huCD3-FEALxb12-FERRを陰性対照として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験についての、フローサイトメトリーによって決定される平均蛍光強度(MFI)値である。
図12】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのT細胞及び腫瘍細胞への同時結合である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの、蛍光標識された腫瘍細胞及びナイーブT細胞への同時結合を、フローサイトメトリーによって研究した。(A)二重陽性事象は、6x10-5~10μg/mLのbsG1huCD3FEALxCD30-MDX060-FERR又は対照抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、bsG1b12FEALxCD30MDX060-FERR、若しくはIgG1-b12-FEALの存在下での全生存細胞のパーセンテージとして示される。抗体なしでインキュベートされた試料中の二重陽性事象のパーセンテージを点線で示す。(B)0.12μg/mLのbsG1huCD3FEALxCD30-MDX060-FERRでインキュベートされた試料中の二重陽性細胞のゲーティング戦略の例。
図13】CD3×CD30二重特異性抗体によるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞活性化の誘導である。CD3×CD30二重特異性抗体のパネルを、CD30陽性腫瘍細胞株Karpas-299を標的細胞として、健常なヒトドナーバフィーコートから精製されたT細胞をエフェクター細胞として使用したインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。これらのアッセイでは、CD25発現をT細胞活性化の尺度としてCD4及びCD8細胞において評価した。以下の抗体を試験した:bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR、BsIgG1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T405-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR、及びbsIgG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR。(A)CD3xCD30抗体によるKarpas-299細胞の細胞傷害性のIC50値。(B)試験抗体によるKarpas-299細胞の最大細胞傷害性のパーセンテージ。(C-F)CD3×CD30抗体によるCD4(C、E)又はCD8(D、F)T細胞におけるCD25(C-D)又はPD-1(E-F)発現の誘導についてのEC50値。データは、6つの異なるドナーから得られたT細胞で行われた2つの独立した実験から得た。統計的値は、示されるクローンとbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRとの間のWilcoxon符号付順位和検定の結果を表す。NS:有意ではない、*:p<0.05。
図14】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでの細胞株のT細胞媒介性細胞傷害性。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる用量依存的T細胞媒介性細胞傷害性を、L-428(A)、KM-H2(B)、SUP-M2(C)、又はKI-JK(D)腫瘍細胞株を標的細胞として、精製されたT細胞をエフェクター細胞として用いてインビトロで試験した。IgG1-huCD3-FEAL、bsG1-huCD3-FEALxb12-FERR、IgG1-CD30-MDX060-FERR、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR、及びIgG1-b12-FEALを対照として含めた。示されるデータは、生存細胞パーセンテージであり、各グラフについてのデータは、1つの代表的な実験について得られた。
図15】L-428及びKI-JK細胞株におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞増殖である。T細胞増殖を、L-428(A、B)又はKI-JK(C、D)を標的細胞として使用したT細胞媒介性細胞傷害性アッセイにおいて評価した。希釈されたCelltrace Violet染色を有するCD4(A、C)又はCD8(B、D)T細胞をゲーティングし、増殖指数を、T細胞増殖についての尺度として、FlowJoからの増殖モデリングツールを使用して計算した。
図16】L-428及びKI-JK細胞株におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞活性化マーカーCD69の発現である。T細胞活性化を、L-428(A、B)又はKI-JK(C、D)を標的細胞として使用したT細胞媒介性細胞傷害性アッセイにおいて評価した。T細胞活性化マーカーCD69の発現を、CD4(A、C)又はCD8(B、D)T細胞において評価した。
図17】L-428及びKI-JK細胞株におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞活性化マーカーCD25の発現である。T細胞活性化を、L-428(A、B)又はKI-JK(C、D)を標的細胞として使用したT細胞媒介性細胞傷害性アッセイにおいて評価した。T細胞活性化マーカーCD25の発現を、CD4(A、C)又はCD8(B、D)T細胞において評価した。
図18】L-428及びKI-JK細胞株におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞活性化マーカーPD-1の発現である。T細胞活性化を、L-428(A、B)又はKI-JK(C、D)を標的細胞として使用したT細胞媒介性細胞傷害性アッセイにおいて評価した。T細胞活性化マーカーPD-1の発現を、CD4(A、C)又はCD8(B、D)T細胞において評価した。
図19】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのサイトカイン及びグランザイムB産生である。14の異なるサイトカイン(CD40、IFNγ、IL-10、IL-12、IL-13、IL-1b、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、PDL-1、INFα)及びグランザイムBの濃度を、L-428を標的細胞として使用したインビトロT細胞媒介性細胞傷害性実験中に収集された上清において評価した。サイトカイン及びグランザイムB濃度を、異なる濃度のbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR又は対照抗体IgG1-b12-FEALで処理された試料について示す。
図20】変動するエフェクター対標的比でのbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖である。(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる用量依存的T細胞媒介性細胞傷害性を、L-428腫瘍細胞を標的細胞として、精製されたT細胞をエフェクター細胞として1:1、2:1、4:1、又は8:1のE:T比で使用して、インビトロで試験した。bsG1-huCD3-FEALxb12-FERRを対照抗体として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験から得られた、生存細胞パーセンテージである。(B、C)希釈されたCelltrace Violet染色を有するCD4(B)又はCD8(C)T細胞のパーセンテージを、増殖するT細胞の尺度として示す。
図21】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖の動態である。(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるT細胞媒介性細胞傷害性の動態を、L-428腫瘍細胞を標的細胞として、精製されたT細胞をエフェクター細胞として4:1のE:T比で使用して、インビトロで試験した。細胞傷害性を、24時間、48時間、及び72時間後に評価した。bsG1-huCD3-FEALxb12-FERRを対照抗体として含めた。示されるデータは、1つの代表的な実験から得られた、生存細胞パーセンテージである。(B、C)希釈されたCelltrace Violet染色を有するCD4(B)又はCD8(C)T細胞をゲーティングし、増殖指数を、細胞傷害性アッセイにおけるT細胞増殖についての尺度として、FlowJoからの増殖モデリングツールを使用して計算した。
図22】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びCD30発現レベルとの相関である。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる最大T細胞媒介性殺滅(A)又はT細胞媒介性細胞傷害性のIC50濃度(B)対CD30発現レベル間の相関を、8つの腫瘍細胞株において評価した。Spearman順位相関検定(GraphPad Prismソフトウェア)を使用して、T細胞媒介性細胞傷害性(最大殺滅又はIC50)とCD30発現との間の相関度の統計的有意性を評価した。
図23】bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる活性化されたT細胞のフラトリサイドである。単離された健常ドナーT細胞を、1μg/mLの抗CD3(OKT-3)、1μg/mLの抗CD28、及び0.025μg/mLのIL-15で4日間刺激した。活性化(CD25上方調節)の確認後、T細胞を、増加する濃度のbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、bsIgG1-ctrlxCD30-MDX-060-FERR、bsIgG1-CD3xb12、又はIgG1-b12-FEALで48時間インキュベートした。活性化されたCD30T細胞のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR誘導性T細胞フラトリサイドを、いずれの抗体も加えることのない条件における生存T細胞の数に対する各条件における生存T細胞のパーセンテージとして測定した。(A-B)抗CD3、抗CD28、及びIL-15による刺激の72時間後及び96時間後の、CD4又はCD8T細胞中のCD25(A)又はCD30(B)細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーによって決定した。(C)T細胞フラトリサイドは、いずれの抗体も加えることのない条件に対するT細胞生存パーセントとして示された。1つの代表的なT細胞ドナーについてのデータを示す。
図24】CD30細胞培養物の上清中の可溶性CD30、及びBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの抗腫瘍活性へのその干渉である。(A)ELISAによって測定される、異なる血液腫瘍細胞株の上清中の可溶性CD30(sCD30)濃度を示す。(B)異なる血液腫瘍細胞株において、定量的フローサイトメトリー(ヒトIgGキャリブレーターキット-Biocytex)を使用して決定される、sCD30濃度と細胞表面上のCD30分子の数との間の相関を、Spearman順位相関検定(GraphPad Prismソフトウェア)によって評価した。(C)BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRを、CD30陽性ALCL腫瘍細胞株DELを標的細胞として、健常ドナー単離T細胞をエフェクター細胞として用いたインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。以下の対照抗体が含まれた:BsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR、IgG1-CD30-MDX060-FERR、BsG1-huCD3-FEALxb12-FERR、IgG1-huCD30-FEAL、及びIgG1-b12-FEAL。示されるデータは、1つの代表的な実験から得られた、生存細胞パーセンテージである。
図25】L-428腫瘍細胞におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるエクスビボでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖の誘導である。(A)bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRを、L-428腫瘍細胞を標的細胞として、初代患者由来T細胞をエフェクター細胞として使用したエクスビボ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。ホジキンリンパ腫(HL)、急性骨髄性白血病(AML)、及び末梢T細胞リンパ腫(PTCL)患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、T細胞の供給源として使用して、CD3依存的腫瘍細胞殺滅を評価した。IgG1-b12-FEALを対照として含めた。示されるデータは、生存標的細胞パーセンテージである。(B-D)T細胞活性化を、陽性細胞パーセンテージとして示される、PBMCサブセット内のCD4/CD8 T細胞上のCD69(B)、CD25(C)、及びPD-1(D)マーカーの上方調節によって評価した。
図26】SCIDマウスにおける静脈内注射後のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの血漿濃度である。SCIDマウスに、10μg(0.5mg/kg)又は100μg(5mg/kg)の単回IV用量のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRを注射した。(A)総ヒトIgGをELISAによって決定し、平均ヒトIgG1濃度を経時的にプロットした。(B)平均クリアランス率を、0.5又は5mg/kg用量レベルについてプロットした。点線は、マウスにおける非結合通常ヒトIgG1の標準分布体積に基づく推定クリアランス率を示す。
図27】膜結合bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRへのC1q結合である。C1qのbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR-オプソニン化、活性化ヒトCD8T細胞、又はCD30NCEB-1細胞への結合を、FITC標識ウサギ抗C1q抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。(A)C1qの供給源としての正常ヒト血清の存在下での、抗CD3/CD28ビーズで刺激されたヒトCD8T細胞への、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、IgG1-huCD3-FEAL、又は陽性対照抗体IgG1-CD52-E430Gの結合。示されるデータは、1つの代表的な実験からの複製ウェルからの幾何平均蛍光強度(gMFI)±SDである。(B)C1qの供給源としての正常ヒト血清の存在下での、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、IgG1-CD30-MDX060-FERR、又は陽性対照抗体IgG1-7D8-E430GのCD30 NCEB-1細胞への結合。示されるデータは、1つの代表的な実験からのgMFIである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用される「抗体」という用語は、少なくとも約30分、少なくとも約45
分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時
間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間以上、少なくとも約48時間以上、少
なくとも約3、4、5、6、7日以上などの、重要な期間、又は任意の他の関連する機能
的に定義された期間(抗原に結合する抗体と関連した生理学的応答を誘導、促進、増強、
及び/若しくは調節するのに十分な時間、並びに/又は抗体が内在化されるのに十分な時
間など)の半減期を有する、典型的な生理学的及び/又は腫瘍特異的条件下で、抗原に特
異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子のフラグメント
、又はそれらのいずれかの誘導体を指すことを意図している。抗体は、抗原と相互作用す
ることができる結合領域(又は両方とも同じ意味を有する、本明細書において使用され得
る結合領域)、免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を含む結合領域など
を含む。抗体は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)及び補体系の成分、例え
ば、C1q、補体活性化の古典的経路における第1の成分を含む、宿主組織又は因子への
免疫グロブリンの結合を媒介し得る抗体(Ab)の定常領域を含み得る。
【0021】
本発明の文脈において、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(mAb)、抗体
様ポリペプチド、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、並びに酵素的切断、ペプチド合成
、及び組換えDNA技術などの、任意の既知の技法によって提供される抗原(抗原結合フ
ラグメント)に特異的に結合する能力を保持する「抗体フラグメント」又は「そのフラグ
メント」を含む。「抗体」という用語は、二重、三重、若しくは多重特異性抗体、及び/
又は更なる修飾を有する抗体、例えば、抗体-薬物複合体及び/又はIgG Fcドメイ
ンに修飾を有する抗体を含む。本明細書における本開示が別途限定されない限り、本発明
に従って定義される抗体は、任意のアイソタイプを保有するか、又はアイソタイプを有さ
ない(例えば、scFv抗体)ことができる。
【0022】
抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって行われ得ることが示されてい
る。「抗体」という用語内に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fab’
若しくはFabフラグメント、軽鎖可変ドメイン(VL)、重鎖可変ドメイン(VH)、
軽鎖定常領域(CL)、及び重鎖定常領域ドメイン1(CH1)ドメインからなる一価フ
ラグメント、又はWO2007/059782に記載される一価抗体、(ii)F(ab
’)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2つのFabフラ
グメントを含む二価フラグメント、(iii)VH及びCH1ドメインから本質的になる
Fdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインから本質的になる
Fvフラグメント、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれるH
olt et al;Trends Biotechnol-.2003 Nov;21
(11):484-90、dAbフラグメントWard et al.,Nature
341,544546(1989)、(vi)ラクダ科動物又はナノボディRevets
et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5(
1):111-24、並びに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられ
る。更に、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によって
コードされるが、それらは、組換え方法を使用して、それらが、VL及びVH領域が一価
分子(一本鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成するために対合す
る単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって結合され
得、例えば、Revets et al;Expert Opin Biol Ther
.2005 Jan;5(1):111-24及びBird et al.,Scien
ce 242,423426(1988)を参照されたい。そのような一本鎖抗体は、別
段に記載されない限り、又は文脈によって明確に示されない限り、抗体という用語内に包
含される。そのようなフラグメントは、一般に、抗体の意味内に含まれるが、それらは、
集合的に、及び各々独立して、本発明の独自の特徴であり、異なる生物学的特性及び有用
性を示す。本発明の文脈におけるこれらの及び他の有用な抗体フラグメントは、本明細書
において更に論じられる。
【0023】
最終産物として、又は例えば、二重特異性抗体を制御されたFab-アーム交換(cF
EA)を通して生成するための中間体としてのいずれかの、抗体は、異なるインビトロ又
はエクスビボ発現又は産生システムにおいて産生され、それらから、例えば、組換え修飾
宿主細胞から、抗体をコードする核酸配列のインビトロ転写及び/又は翻訳を支持する細
胞抽出物を使用するハイブリドーマ又はシステムから収集され得る。
【0024】
本明細書で使用される「免疫グロブリン重鎖」又は「免疫グロブリンの重鎖」という用
語は、免疫グロブリンの重鎖のうちの1つを指すことが意図されている。重鎖は、典型的
には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び免疫グロブリンのアイソタイプ
を定義する重鎖定常領域(本明細書ではCHと略される)からなる。IgGの重鎖定常領
域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3で構成される。本明細
書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、典型的には、2対のポリペプチド鎖、
1対の軽(L)低分子量鎖、及び1対の重(H)鎖からなる構造的に関連する糖タンパク
質のクラスを指すことが意図され、4つは全てジスルフィド結合によって潜在的に相互接
続される。免疫グロブリンの構造は、十分に特徴付けられている(例えば、Fundam
ental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed
.Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい)。免疫グロブリンの
構造内では、2つの重鎖は、いわゆる「ヒンジ領域」におけるジスルフィド結合を介して
相互接続されている。重鎖と同等に、各軽鎖は、典型的には、いくつかの領域、軽鎖可変
領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、
典型的には、1つのドメイン、CLで構成される。更に、VH及びVL領域は、フレーム
ワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が散在している、相補性決定領域(
CDR)とも称される、超可変性の領域(又は配列及び/若しくは構造的に定義されたル
ープの形態において超可変性であり得る超可変領域)に更に細分化され得る。各VH及び
VLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配置された、3つ
のCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、
CDR3、FR4。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「半分子」、「Fab-アーム」、及び「アーム」という
用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指す。二重特異性抗体が、第1の抗体「に由来する」半分
子抗体、及び第2の抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載されるとき、「~に由来
する」という用語は、二重特異性抗体が、任意の既知の方法によって、当該第1及び第2
の抗体の各々からの当該半分子を、得られる二重特異性抗体に組換えることによって生成
されたことを示す。この文脈において、「組換えること」は、任意の特定の組換え方法に
よって限定されることを意図するものではなく、よって、例えば、半分子交換によって組
換えること、並びに核酸レベルで、及び/又は同じ細胞における2つの半分子の共発現を
通して組換えることを含む、本明細書に記載される二重特異性抗体を産生するための方法
のうちの全てを含む。
【0026】
「第1」及び「第2」という用語は、抗体又はそのドメイン若しくは領域の文脈で本明
細書において使用されるとき、単に参照しやすいように意図されており、特定の相対位置
などを示すことは意図されない。
【0027】
本明細書で使用される「抗原結合領域」又は「結合領域」という用語は、抗原に結合す
ることができる抗体の領域を指す。抗原は、ポリペプチド、タンパク質、多糖、又はそれ
らの組み合わせなどの、任意の分子であり得る。抗原は、例えば、細胞、細菌、又はビリ
オン上に提示され得る。「抗原」及び「標的」という用語は、文脈によって矛盾しない限
り、本発明の文脈において交換可能に使用され得る。「抗原結合領域」及び「抗原結合部
位」という用語は、文脈によって矛盾しない限り、本発明の文脈において交換可能に使用
され得る。
【0028】
本明細書で使用される「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡
解離定数を指し、kをkで割ることによって得られる。Kはまた、「結合親和性」
と称される。
【0029】
本明細書で使用される「k」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作
用の解離速度定数を指す。当該値は、koff値又はオフレートとも称される。
【0030】
本明細書で使用される「k」(M-1xsec-1)という用語は、特定の抗体-抗
原相互作用の会合速度定数を指す。当該値は、kon値又はオンレートとも称される。
【0031】
本明細書で使用される「結合」という用語は、抗体の、所定の抗原又は標的への、典型
的には、抗体をリガンドとして、抗原を分析物として使用するバイオレイヤー干渉法によ
って決定されるとき、1E-6M以下、例えば、5E-7M以下、1E-7M以下、例え
ば、5E-8M以下、例えば、1E-8M以下、例えば、5E-9M以下、例えば、1E
-9M以下、例えば、1E-10M以下、又は例えば、1E-11M以下のKに対応す
る結合親和性での結合を指し、所定の抗原に、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、
BSA、カゼイン)又は密接に関連する抗原への結合についてのその親和性よりも少なく
とも10倍低い、例えば、少なくとも100倍低い、例えば、少なくとも1,000倍低
い、例えば、少なくとも10,000倍低い、例えば、少なくとも100,000倍低い
に対応する親和性で結合する。
【0032】
本明細書で使用される「CD30」という用語は、TNFRSF8(腫瘍壊死因子受容
体スーパーファミリーメンバー8)としても知られる、ヒト分化抗原群30タンパク質を
指す。CD30は、様々な種において見出され、よって、「CD30」という用語は、文
脈によって矛盾しない限り、ヒトCD30に限定されない場合がある。ヒトCD30の配
列は、配列番号39に記載されている。
【0033】
本明細書で使用される「CD3」という用語は、T細胞共受容体タンパク質複合体の一
部であり、4つの異なる鎖で構成されるヒト分化抗原群3タンパク質を指す。CD3は、
様々な種において見出され、よって、「CD3」という用語は、文脈によって矛盾しない
限り、ヒトCD3に限定されない場合がある。哺乳動物において、複合体は、CD3γ(
ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/Swiss-Prot No P09
693、又はカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No
Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swi
ss-Prot No P04234、又はカニクイザルCD3δ UniProtKB
/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒ
トCD3ε:UniProtKB/Swiss-Prot No P07766、このう
ち本明細書における配列は配列番号42として組み込まれ、カニクイザルCD3ε Un
iProtKB/Swiss-Prot No Q95LI5、又はアカゲザルCD3ε
UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、及びCD3ζ鎖
(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No P2
0963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No
Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会
合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR及びCD3分子は、一緒に
、TCR複合体を含む。
【0034】
「抗体結合領域」という用語は、抗体が結合するエピトープを含む、抗原の領域を指す
。抗体結合領域は、バイオレイヤー干渉法を使用したエピトープビニングによって、アラ
ニンスキャンによって、又はドメインシャッフルアッセイ(抗原の領域が別の種の領域と
交換される抗原構築物を使用し、抗体が依然として抗原に結合するかどうかを決定する)
によって決定され得る。抗体との相互作用に関与する抗体結合領域内のアミノ酸は、水素
/重水素交換質量分析によって及び/又はその抗原に結合した抗体の結晶学によって決定
され得る。
【0035】
「エピトープ」という用語は、抗体によって特異的に結合した抗原決定基を意味する。
エピトープは、通常、アミノ酸、糖側鎖、又はそれらの組み合わせなどの分子の表面群化
からなり、通常、特異的三次元構造特徴、及び特異的電荷特徴を有する。立体構造及び非
立体構造エピトープは、前者への結合は、タンパク質又はその多量体の三次元構造を破壊
する変性溶媒又は他の薬剤の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で
区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、及び結合に直接関与しな
い他のアミノ酸残基、例えば、抗体が抗原に結合しているときに効果的にブロック又はカ
バーされるアミノ酸残基を含み得る。
【0036】
「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、
「mAb」などの用語は、本明細書で使用される場合、単一分子組成の抗体分子の調製物
を指し、典型的には、特定のエピトープについて単一の結合特異性及び親和性を示す。モ
ノクローナル抗体は、典型的には、例えば、ハイブリドーマ、安定細胞株などのような、
ユニークな親細胞の全てのクローンである同一の細胞によって作製され得る。したがって
、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来す
る可変及び定常領域を有する単一結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体
は、不死化細胞に融合した、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有す
る、トランスジェニック又はトランス染色体非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマ
ウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生され得る。ヒトモノクローナ
ル抗体は、ヒトB細胞又は形質細胞に由来し得る。モノクローナル抗体はまた、組換え修
飾された宿主細胞、又は抗体をコードする核酸配列のインビトロ転写及び/若しくは翻訳
を支持する細胞抽出物を使用するシステムから産生され得る。
【0037】
本明細書で使用される「アイソタイプ」という用語は、免疫グロブリンクラス(例えば
、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、若しくはIgM
)、又は重鎖定常領域遺伝子によってコードされるIgG1m(za)及びIgG1m(
f)などの、それらの任意のアロタイプを指す。更に、各重鎖アイソタイプは、カッパ(
κ)又はラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。
【0038】
「全長抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、1対の重鎖及び軽鎖、又は2
対の重鎖及び軽鎖を含み、各対が、そのアイソタイプの野生型抗体の重鎖-軽鎖対に通常
見られるような重鎖及び軽鎖定常及び可変ドメインを含む、抗体(例えば、親抗体又はバ
リアント抗体)を指す。よって、例えば、全長IgG1抗体は、VH、CH1、CH2、
CH3、ヒンジ、VL、及びCLドメインを含有する。全長バリアント抗体において、重
鎖及び軽鎖定常及び可変ドメインは、特に、全長親又は野生型抗体と比較されるとき、抗
体の機能的特性を修飾及び/又は改善するアミノ酸置換を含有し得る。本発明による全長
抗体は、(i)CDR配列を、完全な重鎖及び軽鎖配列を含む1つ以上の好適なベクター
にクローニングするステップと、(ii)好適な発現系において重鎖及び軽鎖配列を有す
る得られた好適なベクターを発現するステップと、を含む方法によって産生され得る。C
DR配列又は完全可変領域配列のいずれかから開始するとき、全長抗体を産生することは
、当業者の知識の範囲内である。よって、当業者は、本発明による全長抗体を生成する方
法を知っている。
【0039】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト可変ドメインに対する高レベ
ルの配列相同性を含有するように修飾されたヒト抗体定常ドメイン及び非ヒト可変ドメイ
ンを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒に抗原結合部位を形成
する、非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)の、相同ヒトアクセプターフレームワーク領
域(FR)上への移植によって達成することができる(とりわけ、WO92/22653
及びEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性及び特異性を完全に再構
成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からのフレームワーク残基のいくつかで
のヒトフレームワーク残基のいくつかの置換(逆変異)が必要とされ得る。構造的相同性
モデリングは、抗体の結合特性にとって重要なフレームワーク領域におけるアミノ酸残基
を特定するために役立ち得る。よって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に非ヒトア
ミノ酸配列への1つ以上のアミノ酸逆変異を任意に含むヒトフレームワーク領域、及び完
全ヒト定常領域を含み得る。任意に、必ずしも逆変異ではない、追加のアミノ酸修飾は、
特に有用な親和性及び生化学的特性などの、好ましい特徴を有するヒト化抗体を得るため
に、例えば、脱アミド化を回避及び/又は製造を改善する修飾を含むために適用され得る
。更に、CDR及び/又はフレームワーク領域は、例えば、親和性成熟手順を介して、抗
原に対する親和性を改善するように修飾され得る。
【0040】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に
由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロ
ブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム
若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入される
変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マ
ウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上
に移植されている抗体を含むことを意図していない。本発明のヒトモノクローナル抗体は
、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein
,Nature 256:495(1975)の標準体細胞ハイブリダイゼーション技法
を含む、様々な技法によって産生することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順
が好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を産生するための他の技法、例えば、ヒ
ト抗体遺伝子のライブラリーを使用するBリンパ球又はファージディスプレイ技法のウイ
ルス又はがん原性形質転換を用いることができる。ヒトモノクローナル抗体は、HCo1
2マウス(例えば、WO03/059282を参照されたい)などのような、マウス系で
はなく、ヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニック又はトランス染色体マウスを用
いて生成することができる。
【0041】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体の2つの重鎖ポリペプチドのN
末端からC末端への方向で、少なくともヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域を含む
領域を指す。Fcポリペプチドは、典型的には、グリコシル化される。抗体のFc領域は
、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)及び補体系の成分を含む、宿主組織又は
因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。Fc領域は、典型的には、FcRn及びタ
ンパク質Aにも結合する。
【0042】
本明細書で使用される、「…位のアミノ酸に対応するアミノ酸」などの語句は、ヒトI
gG1重鎖におけるアミノ酸位置番号を指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミ
ノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。別段の記載がない
限り、又は文脈によって矛盾しない限り、定常領域配列のアミノ酸は、本明細書では、E
U-インデックスのナンバリングに従って番号付けされる(Kabat,E.A.et
al.,1991,Sequences of proteins of immuno
logical interest.5th Edition-US Departme
nt of Health and Human Services,NIH publ
ication No.91-3242,pp 662,680,689に記載される)
。よって、別の配列におけるアミノ酸又はセグメント「に対応する」1つの配列における
アミノ酸又はセグメントは、他のアミノ酸又はセグメントと、ALIGN、Clusta
lW、又は類似物などの標準配列アラインメントプログラムを、典型的にはデフォルト設
定で使用してアラインし、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80
%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有するものである。当該技術分
野では、配列又は配列中のセグメントをアラインし、それによって、本発明によるアミノ
酸位置に対する配列における対応する位置を決定する方法は、周知であると考えられてい
る。
【0043】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域
を指す。よって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat,E.A.et
al.,Sequences of proteins of immunologi
cal interest.5th Edition-US Department o
f Health and Human Services,NIH publicat
ion No.91-3242,pp 662,680,689(1991)に記載され
るEuナンバリングに従ってアミノ酸216-230に対応する。しかしながら、ヒンジ
領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであり得る。
【0044】
本明細書で使用される「CH1領域」又は「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロ
ブリン重鎖のCH1領域を指す。よって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、K
abat(同上)に記載されるEuナンバリングに従ってアミノ酸118~215に対応
する。しかしながら、CH1領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれ
かであり得る。
【0045】
本明細書で使用される「CH2領域」又は「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロ
ブリン重鎖のCH2領域を指す。よって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、K
abat(同上)に記載されるEuナンバリングに従ってアミノ酸231~340に対応
する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれ
かであり得る。
【0046】
本明細書で使用される「CH3領域」又は「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロ
ブリン重鎖のCH3領域を指す。よって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、K
abat(同上)に記載されるEuナンバリングに従ってアミノ酸341~447に対応
する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれ
かであり得る。
【0047】
本明細書で使用される、「Fc媒介性エフェクター機能」という用語は、Fc媒介性エ
フェクター機能がポリペプチド又は抗体のFc領域に起因する、ポリペプチド又は抗体を
細胞膜上のその標的又は抗原に結合させた結果である機能を指すことが意図される。Fc
媒介性エフェクター機能の例としては、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(ii
i)補体依存的細胞傷害性(CDC)、(iv)抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(AD
CC)、(v)Fc-ガンマ受容体(FcgR)結合、(vi)抗体依存的、FcγR媒
介性抗原架橋、(vii)抗体依存的細胞食作用(ADCP)、(viii)補体依存的
細胞傷害性(CDCC)、(ix)補体増強性細胞傷害性、(x)抗体によって媒介され
るオプソニン化抗体の補体受容体への結合、(xi)オプソニン化、及び(xii)(i
)~(xi)のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される、「不活性(inertness)」、「不活性(inert)
」、又は「非活性化」という用語は、任意のFcγRに結合することができないか、若し
くは任意のFcγRに結合し、FcγRのFc媒介性架橋を誘導し、ADCC及びADC
PなどのFcγR媒介性エフェクター機能を誘導し、個々の抗体の2つのFc領域を介し
て標的抗原のFcγR媒介性架橋を誘導する最小限の能力を有し、かつ/又はC1qに結
合し、CDC及びCDCCなどの補体媒介性エフェクター機能を誘導することができない
Fc領域を指す。抗体のFc領域の不活性は、単一特異性又は二重特異性フォーマットで
抗体を使用して試験され得る。
【0049】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈において、1つの抗原結合ドメイン(例えば
、1つのFabアーム)のみを有する、抗原と相互作用することができる抗体分子を指す
。二重特異性などの、多重特異性抗体の文脈では、「一価抗体結合」は、多重特異性抗体
の、1つの抗原結合ドメイン(例えば、1つのFabアーム)のみを有する1つの抗原へ
の結合を指す。
【0050】
本発明の文脈における「単一特異性抗体」という用語は、1つの抗原、1つのエピトー
プのみに対する結合特異性を有する抗体を指す。抗体は、単一特異性、一価抗体(すなわ
ち、1つの抗原結合領域のみを保有する)、単一特異性、二価抗体(例えば、2つの同一
の抗原結合領域を有する抗体)、又は単一特異性、多価抗体(例えば、3つ以上の同一の
抗原結合領域を有する抗体)であり得る。
【0051】
「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の異なるエピトープに結合する2つ以上の
抗原結合ドメインを有する抗体を指す。「二重特異性抗体」という用語は、異なるエピト
ープに結合する2つの抗原結合ドメイン、例えば、VH及びVL領域の2つの非同一対、
2つの非同一Fabアーム、又は非同一CDR領域を有する2つのFabアームを有する
抗体を指す。本発明の文脈において、二重特異性及び多重特異性抗体は、それぞれ、2つ
以上の異なるエピトープについての特異性を有する。そのようなエピトープは、同じ又は
異なる抗原又は標的上にあり得る。エピトープが異なる抗原上にある場合、そのような抗
原は、細胞外マトリックス又はベシクル及び可溶性タンパク質などの同じ細胞又は異なる
細胞、細胞型、又は構造上にあり得る。よって、多重特異性及び二重特異性抗体は、複数
の抗原、例えば、2つの異なる細胞を架橋することができる場合がある。
【0052】
「二価抗体」という用語は、2つの抗原結合領域を有する抗体を指し、当該抗原結合領
域は、同一であり、同じエピトープに結合し得るか、又はそれらは、非同一であり、同じ
若しくは異なる抗原上にあり得る異なるエピトープに結合し得る。したがって、二価抗体
は、単一特異性抗体又は二重特異性抗体であり得る。
【0053】
本明細書では、「アミノ酸」及び「アミノ酸残基」という用語は、互換的に使用され得
、限定的に理解されるものではない。アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と
ともに、アミン(-NH)及びカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合
物である。本発明の文脈において、アミノ酸は、構造及び化学的特徴分析に基づいて分類
され得る。よって、アミノ酸のクラスは、以下の表の一方又は両方において反映され得る

【表1】
【表2】
【0054】
あるアミノ酸の別のアミノ酸への置換は、保存的置換又は非保存的置換として分類され
得る。本発明の文脈において、「保存的置換」は、1つのアミノ酸の、類似の構造及び/
又は化学的特徴を有する別のアミノ酸での置換であり、1つのアミノ酸残基の、上記2つ
の表のいずれかで定義される同じクラスの別のアミノ酸残基についてのそのような置換:
例えば、保存的置換は、両方とも脂肪族、分岐疎水性であるため、ロイシンのイソロイシ
ンでの置換であり得る。同様に、保存的置換の一例は、両方とも小さい負荷電残基である
ため、アスパラギン酸のグルタミン酸での置換である。
【0055】
本発明の文脈において、抗体における置換は、元のアミノ酸-位置の数-置換アミノ酸
として示される。
【0056】
アミノ酸について周知の命名法を参照すると、任意のアミノ酸残基を示すために、コー
ド「Xaa」又は「X」を含む、3文字コード、又は1文字コードが使用される。よって
、Xaa又はXは、典型的には、20の天然に存在するアミノ酸のいずれかを表し得る。
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、以下のアミノ酸残基:グリシン
、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニ
ン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン
、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、及びシステインのうちの
いずれか1つを指す。
【0057】
したがって、「K409R」又は「Lys409Arg」という表記は、抗体がアミノ
酸位置409にあるリジンのアルギニンでの置換を含むことを意味する。所与の位置にお
けるアミノ酸の、任意の他のアミノ酸への置換は、元のアミノ酸-位置、又は例えば、「
K409」と称される。元のアミノ酸及び/又は置換されたアミノ酸が2つ以上であるが
、全てではないアミノ酸を含み得る修飾について、2つ以上のアミノ酸は、「,」又は「
/」によって分離され得る。例えば、409位のリジンの、アルギニン、アラニン又はフ
ェニルアラニンでの置換は、「Lys409Arg、Ala、Phe」又は「Lys40
9Arg/Ala/Phe」又は「K409R、A、F」又は「K409R/A/F」又
は「K409~R、A、若しくはF」である。そのような呼称は、本発明の文脈において
交換可能に使用され得るが、同じ意味及び目的を有し得る。
【0058】
更に、「置換」という用語は、任意の1個若しくは他の19個の天然アミノ酸への、又
は非天然アミノ酸などの他のアミノ酸への置換を包含する。例えば、409位のアミノ酸
Kの置換は、以下の置換の各々を含む:409A、409C、409D、409E、40
9F、409G、409H、4091、409L、409M、409N、409Q、40
9R、409S、409T、409V、409W、409P、及び409Y。これらの置
換はまた、K409A、K409Cなど、又はK409A、Cなど、又はK409A/C
/などと称され得る。同じことが本明細書で言及される各全ての位置への類推によって当
てはまり、本明細書ではそのような置換のいずれか1つを特異的に含む。
【0059】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、発現ベクターなどの核酸が導入され
た細胞を指すことが意図される。そのような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、
そのような細胞の子孫も含み得ることが意図されることが理解されるべきである。特定の
修飾は、変異又は環境の影響のいずれかによって後続世代で発生し得るため、そのような
子孫は、実際には、親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用され
る「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞(すなわち、組換えタン
パク質の産生に使用される宿主細胞)としては、例えば、トランスフェクトーマ、例えば
、CHO細胞、HEK-293細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞、NS0
細胞、及びリンパ球性細胞、並びにE.coliなどの原核細胞、並びに植物細胞及び真
菌などの他の真核生物宿主が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される「トランスフェクトーマ」という用語は、抗体又は標的抗原を発
現する組換え真核宿主細胞、例えば、CHO細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、HE
K-293細胞、Expi293F細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含む、真菌を含む。
【0061】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、参照配列の長さにかけ
て、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecu
lar Biology Open Software Suite,Rice et
al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedle
プログラム、好ましくはバージョン5.0.0以降で実施されるNeedleman-W
unschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.
Mol.Biol.48:443-453)を使用して決定される。使用されるパラメー
タは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップ延長ペナルティ、及びEB
LOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである
。「最長同一性」(-nobriefオプションを使用して得られる)と標識されたNe
edleの出力は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される:
(同一の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメントのギャップの総数)
【0062】
類似の残基の保持はまた又は代替的に、BLASTプログラム(例えば、標準設定BL
OSUM62、オープンギャップ=11、及び延長ギャップ=1を使用してNCBIを通
して利用可能なBLAST 2.2.8)の使用によって決定されるように、類似性スコ
アによって測定され得る。好適なバリアントは、典型的には、親又は参照配列に対して少
なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少
なくとも約90%、少なくとも約95%以上(例えば、約99%)などの、少なくとも約
45%の類似性を示す。
【表3】
【0063】
本発明の更なる態様及び実施形態
上記のように、第1の態様において、本発明は、
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR
3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載されるC
DR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結合
領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域と、
を含む多重特異性抗体に関する。
【0064】
一実施形態において、配列番号9におけるXは、Hである。別の実施形態において、配
列番号9におけるXはGである。
【0065】
一実施形態において、第1の重鎖可変領域は、ヒト又はヒト化である。別の実施形態に
おいて、第1の軽鎖可変領域は、ヒト又はヒト化である。一実施形態において、第2の重
鎖可変領域は、ヒト又はヒト化である。別の実施形態において、第2の軽鎖可変領域は、
ヒト又はヒト化である。別の実施形態において、第1の重鎖可変領域及び第1の軽鎖可変
領域は、ヒトである。別の実施形態において、第1の重鎖可変領域及び第1の軽鎖可変領
域は、ヒト化である。別の実施形態において、第2の重鎖可変領域及び第2の軽鎖可変領
域は、ヒトである。別の実施形態において、第2の重鎖可変領域及び第2の軽鎖可変領域
は、ヒト化である。別の実施形態において、第1の重鎖可変領域及び第1の軽鎖可変領域
は、ヒトであり、第2の重鎖可変領域及び第2の軽鎖可変領域は、ヒトである。別の実施
形態において、第1の重鎖可変領域及び第1の軽鎖可変領域は、ヒトであり、第2の重鎖
可変領域及び第2の軽鎖可変領域は、ヒト化である。
【0066】
当業者に周知であるように、抗体の各抗原結合領域は、一般に、重鎖可変領域(VH)
及び軽鎖可変領域(VL)を含み、可変領域の各々は、それぞれ、3つのCDR配列、C
DR1、CDR2、及びCDR3を含み、それぞれ、4つのフレームワーク配列、FR1
、FR2、FR3、及びFR4を含み得る。この構造は、好ましくは、本発明による抗体
にも見出される。一実施形態において、当該4つのフレームワーク配列のうちの1つ、2
つ、3つ、又は全ては、ヒトフレームワーク配列である。
【0067】
上記のように、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD30に結合することができる
抗原結合領域を含み、その配列は、配列番号39に記載される。特に、本発明による抗体
は、ヒトCD30に結合することができる当該抗原結合領域が、細胞、より好ましくは腫
瘍細胞に発現されるCD30分子などの、ヒトCD30の細胞外ドメインに結合すること
ができる、抗体である。
【0068】
記載されるように、抗体は、それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1
、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5
、及び6に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域
と、を含む、CD30結合領域を含む。
【0069】
CDR1、CDR2、及びCDR3領域は、当該技術分野で既知の方法を使用して、可
変重鎖及び軽鎖領域から特定することができる。当該可変重鎖及び軽鎖領域からのCDR
領域は、IMGTに従ってアノテーションされている(Lefranc,M.-P.,T
he Immunologist,7,132-136(1999)、Lefranc,
Developmental and Comparative Immunology
,27(1),55-77(2003)を参照されたい)。
【0070】
一実施形態において、CD30に結合する抗原結合領域は、
・配列番号13の配列、又は配列番号13の配列と少なくとも90%、少なくとも95%
、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含
む(第1の)重鎖可変領域(VH)と、
・配列番号14の配列、又は配列番号14の配列と少なくとも90%、少なくとも95%
、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含
む(第1の)軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0071】
更なる実施形態において、本発明による抗体は、本明細書で定義されるCD30に結合
する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域を含み、配列は、配列番号13と比較されると
き、合計で、最大1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を含む。
【0072】
更なる実施形態において、本発明による抗体は、本明細書で定義されるCD30に結合
する抗原結合領域の軽鎖可変(VL)領域を含み、配列は、配列番号14と比較されると
き、合計で、最大1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を含む。
【0073】
更なる実施形態において、第1の重鎖可変領域は、配列番号13に記載される配列を含
み、第1の軽鎖可変領域は、配列番号14に記載される配列を含む。
【0074】
ヒトCD30に結合することができるそのような抗原結合領域は、とりわけ、参照によ
って本明細書に組み込まれる、WO03059282(Medarex)に記載されてい
る。
【0075】
本発明による当該抗体は、ヒトCD30に結合する抗原結合領域間の平衡解離定数KD
で結合し得、ヒトCD30は、0.1~20nMの範囲内、例えば、1.5~2nMの範
囲(一価結合)などの、0.5~5nMの範囲内である。当該結合親和性は、バイオレイ
ヤー干渉法によって決定することができる。
【0076】
一実施形態において、本発明の抗体はまた、カニクイザルCD30(配列番号40)に
結合することができる。
【0077】
上記のように、本発明による多重特異性抗体は、ヒトCD3に結合することができる抗
原結合領域を含む。更に、本発明は、配列番号22に特定されるヒトCD3ε(イプシロ
ン)などの、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる本発明による抗体を提
供する。そのような抗原結合領域は、初代ヒトT細胞などの、T細胞上に提示されるよう
に、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる。
【0078】
記載されるように、抗体は、それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1
、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、
11、及び12に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可
変領域と、を含むCD3結合領域を含む。
【0079】
一実施形態において、CD3に結合する抗原結合領域は、
・配列番号15の配列、又は配列番号15の配列と少なくとも90%、少なくとも95%
、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含
む(第2の)重鎖可変領域(VH)と、
・配列番号16の配列、又は配列番号16の配列と少なくとも90%、少なくとも95%
、少なくとも97%、若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含
む(第2の)軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0080】
更なる実施形態において、本発明による抗体は、本明細書で定義されるCD3に結合す
る抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域を含み、配列は、配列番号15と比較されるとき
、合計で、最大1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を含む。
【0081】
更なる実施形態において、本発明による抗体は、本明細書で定義されるCD3に結合す
る抗原結合領域の軽鎖可変(VL)領域を含み、配列は、配列番号16と比較されるとき
、合計で、最大1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を含む。
【0082】
更なる実施形態において、第2の重鎖可変領域は、配列番号15に記載される配列を含
み、第2の軽鎖可変領域は、配列番号16に記載される配列を含む。一実施形態において
、配列番号15におけるXは、Hである。別の実施形態において、配列番号15における
Xは、Gである。
【0083】
ヒトCD3に結合することができるそのような抗原結合領域は、とりわけ、参照によっ
て本明細書に組み込まれる、WO2015/001085(Genmab)に記載されて
いる。本明細書のバリアント、例えば、XがGである、配列番号9に記載されるVH C
DR3領域を含み、XがHである、親抗体よりも低いヒトCD3結合についての親和性を
有する、バリアントは、参照によって本明細書に組み込まれる、WO2017/0094
42(Genmab)の実施例2に記載されている。
【0084】
本発明による当該抗体は、ヒトCD3に結合する抗原結合領域間の平衡解離定数KDで
結合し得、ヒトCD3は、5~30nM、例えば、10~20nM(一価結合の場合)の
範囲内である。
【0085】
一実施形態において、本発明の抗体はまた、カニクイザルCD3(配列番号43)に結
合することができる。
【0086】
更なる実施形態において、多重特異性抗体は、
(i)配列番号13に記載される配列を含む第1の重鎖可変領域と、配列番号14に記載
される配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結合領域と、
(ii)配列番号15に記載される配列を含む第2の重鎖可変領域と、配列番号16に記
載される配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD3結合領域と、
を含む。
【0087】
抗体フォーマット
本発明の多重特異性抗体は、2つ以上の特異性、例えば、2つ又は3つ以上の特異性を
有し得る。更に、多重特異性抗体は、CD3及び/又はCD30について抗原結合領域の
2つ以上のコピーを有し得る。例えば、一実施形態において、抗体は、CD3に結合する
ことができる2つの抗原結合領域、例えば、CD3に結合する2つの同一の結合領域を有
する。例えば、別の実施形態において、抗体は、CD30に結合する2つの抗原結合領域
、例えば、CD30に結合する2つの同一の結合領域を有する。追加の抗原結合領域は、
例えば、定常領域に共有結合したscFvの形態で存在し得る。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明の多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。二重
特異性抗体の多くの異なるフォーマット及び使用が当該技術分野で既知であり、Kont
ermann;Drug Discov Today,2015 Jul;20(7):
838-47及び;MAbs,2012 Mar-Apr;4(2):182-97によ
って、並びにLabrijn et al.2019 Nat Rev Drug Di
scov 18(8)585-608によって概説された。本発明による二重特異性抗体
は、それを産生する任意の特定の二重特異性フォーマット又は方法に限定されない場合が
ある。
【0089】
本発明で使用され得る二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2
つのアームを有する単一抗体、(ii)例えば、追加のペプチドリンカーによってタンデ
ムに結合した2つのscFvを介して、2つの異なる標的に特異性を有する一本鎖抗体、
(iii)各軽鎖及び重鎖が短いペプチド結合を通してタンデムに2つの可変ドメインを
含む二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al.,Generatio
n and Characterization of a Dual Variabl
e Domain Immunoglobulin(DVD-I(商標))Molecu
le,In:Antibody Engineering,Springer Berl
in Heidelberg(2010))、(iv)化学的に結合した二重特異性(F
ab’)2フラグメント、(v)標的抗原の各々について2つの結合部位を有する四価二
重特異性抗体をもたらす2つの一本鎖ダイアボディの融合体である、Tandab、(v
i)多価分子をもたらすscFvのダイアボディとの組み合わせである、フレキシボディ
、(vii)Fabに適用されるとき、異なるFabフラグメントに結合した2つの同一
のFabフラグメントからなる三価二重特異性結合タンパク質をもたらすことができる、
プロテインキナーゼAにおける「二量体化及びドッキングドメイン」に基づく、いわゆる
「ドックアンドロック」分子、(viii)例えば、ヒトFabアームの両方の末端に融
合した2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子、並びに(ix)ダイアボディ
を含む。
【0090】
異なるクラスの二重特異性抗体の更なる例としては、これらに限定されないが、(i)
ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有するIgG様分子、(ii)分子の
2つ側面が各々、少なくとも2つの異なる抗体のFabフラグメント又はFabフラグメ
ントの一部を含有する、組換えIgG様二重標的化分子、(iii)全長IgG抗体が、
追加のFabフラグメント又はFabフラグメントの一部に融合している、IgG融合分
子、(iv)一本鎖Fv分子又は安定化ダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、
又はその一部に融合している、Fc融合分子、(v)異なるFabフラグメントが、一緒
に融合している、重鎖定常ドメイン、Fc領域、又はその一部に融合している、Fab融
合分子、並びに(vi)異なる一本鎖Fv分子又は異なるダイアボディ又は異なる重鎖抗
体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が、互いに又は重鎖定常ドメイン、Fc領域、
若しくはその一部に融合した別のタンパク質若しくは担体分子に融合している、scFv
及びダイアボディベースの重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が挙げられる
【0091】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、これらに限定されない
が、トリオマブ/クアドローマ分子(Trion Pharma/Fresenius
Biotech、Roche、WO2011/069104)、いわゆるノブ-イントゥ
-ホール分子(Genentech、WO98/50431)、CrossMAbs(R
oche、WO2011/117329)、及び静電適合分子(Amgen、EP187
0459及びWO2009/089004、Chugai、US2010/001551
33、Oncomed、WO2010/129304)、LUZ-Y分子(Genent
ech、Wranik et al.J.Biol.Chem.2012,287(52
):43331-9,doi:10.1074/jbc.M112.397869.Ep
ub 2012 Nov 1)、DIG-ボディ及びPIG-ボディ分子(Pharma
bcine、WO2010/134666、WO2014/081202)、鎖交換操作
ドメインボディ(SEEDbody)分子(EMD Serono、WO2007/11
0205)、Biclonics分子(Merus、WO2013/157953)、F
cΔAdp分子(Regeneron、WO2010/15792)、二重特異性IgG
1及びIgG2分子(Pfizer/Rinat、WO11/143545)、Azym
etric足場分子(Zymeworks/Merck、WO2012/058768)
、mAb-Fv分子(Xencor、WO2011028952)、二価二重特異性抗体
(WO2009/080254)、並びにDuoBody(登録商標)分子(Genma
b A/S、WO2011/131746)が挙げられる。
【0092】
組換えIgG様二重標的化分子の例としては、限定されないが、二重標的化(DT)-
Ig分子(WO2009/058383)、ツーインワン抗体(Genentech、B
ostrom,et al 2009.Science 323,1610-1614.
)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-S
tar、WO2008/003116)、Zybody分子(Zyngenia、LaF
leur et al.MAbs.2013 Mar-Apr;5(2):208-18
)、共通の軽鎖でのアプローチ(Crucell/Merus、US7,262,028
)、カッパ/ラムダボディ(商標)分子(NovImmune、WO2012/0230
53)、及びCovX-ボディ(CovX/Pfizer、Doppalapudi,V
.R.,et al 2007.Bioorg.Med.Chem.Lett.17,5
01-506.)が挙げられる。
【0093】
IgG融合分子の例としては、これらに限定されないが、二重可変ドメイン(DVD)
-Ig分子(Abbott、US7,612,181)、二重ドメインダブルヘッド抗体
(Unilever、Sanofi Aventis、WO2010/0226923)
、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly、Lewis et
al.Nat Biotechnol.2014 Feb;32(2):191-8)、
Ts2Ab(MedImmune/AZ、Dimasi et al.J Mol Bi
ol.2009 Oct 30;393(3):672-92)、及びBsAb分子(Z
ymogenetics、WO2010/111625)、HERCULES分子(Bi
ogen Idec、US00/7951918)、scFv融合分子(Novarti
s)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc、C
N/102250246)、並びにTvAb分子(Roche、WO2012/0255
25、WO2012/025530)が挙げられる。
【0094】
Fc融合分子の例としては、これらに限定されないが、scFv/Fc融合体(Pea
rce et al.,Biochem Mol Biol Int.1997 Sep
;42(6):1179-88)、SCORPION分子(Emergent BioS
olutions/Trubion、Blankenship JW,et al.AA
CR 100th Annual meeting 2009(Abstract #5
465)、Zymogenetics/BMS、WO2010/111625)、二重親
和性再標的化技術(FcベースDART)分子(MacroGenics、WO2008
/157379、WO2010/080538)、及び二重(scFv)2-Fab分子
(National Research Center for Antibody M
edicine-China)が挙げられる。
【0095】
Fab融合二重特異性抗体の例としては、これらに限定されないが、F(ab)2分子
(Medarex/AMGEN、Deo et al J Immunol.1998
Feb 15;160(4):1677-86.)、二重作用又はBis-Fab分子(
Genentech、Bostrom,et al 2009.Science 323
,1610-1614.)、ドック-アンド-ロック(DNL)分子(ImmunoMe
dics、WO2003/074569、WO2005/004809)、二価二重特異
性分子(Biotecnol,Schoonjans,J Immunol.2000
Dec 15;165(12):7050-7.)、及びFab-Fv分子(UCB-C
elltech、WO 2009/040562 Al)が挙げられる。
【0096】
scFv-、ダイアボディ-ベース、及びドメイン抗体の例としては、これらに限定さ
れないが、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子(Micromet、WO
2005/061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affime
d)Le Gall et al.,Protein Eng Des Sel.200
4 Apr;17(4):357-66.)、DART分子(MacroGenics、
WO2008/157379、WO2010/080538)、一本鎖ダイアボディ分子
(Lawrence,FEBS Lett.1998 Apr 3;425(3):47
9-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブ
ミンscFv融合体(Merrimack、WO2010/059315)、及びCOM
BODY分子(Epigen Biotech、Zhu et al.Immunol
Cell Biol.2010 Aug;88(6):667-75.)、二重標的化ナ
ノボディ(Ablynx、Hmila et al.,FASEB J.2010)、並
びに二重標的化重鎖単一ドメイン抗体が挙げられる。
【0097】
一実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、制御されたFab-アーム交換(W
O2011/131746(Genmab)に記載されるなど)を介して得られたダイア
ボディ、クロスボディ、又は二重特異性抗体である。
【0098】
一実施形態において、本発明の抗体は、二重特異性DuoBody(登録商標)分子(
Genmab A/S、WO2011/131746)である。
【0099】
本発明の二重特異性などの、多重特異性抗体は、任意のアイソタイプであり得る。例示
的なアイソタイプとしては、これらに限定されないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG
3、及びIgG4アイソタイプのいずれかが挙げられる。好ましくは、抗体は、例に示さ
れるように、ヒトIgG1アイソタイプであるように選択され得る。ヒト軽鎖定常領域、
カッパ若しくはラムダのいずれか、又は両方、例えば、配列番号53及び54に記載され
る配列が使用され得る。例えば、一実施形態において、CD30結合に関与する軽鎖は、
カッパ定常領域を含み、CD3結合に関与する軽鎖は、ラムダ定常領域を含む。一実施形
態において、本発明の抗体の両方の重鎖は、IgG1アイソタイプである。一実施形態に
おいて、二重特異性抗体の2つの重鎖は、それぞれ、IgG1及びIgG4アイソタイプ
である。好ましくは、二重特異性抗体は、例に示されるように、ヒトIgG1アイソタイ
プであるように選択され得る。任意に、好ましくは、選択されたアイソタイプの重鎖及び
そのFc領域配列は、好ましくはヒンジ、CH2、及び/又はCH3領域において、二重
特異性抗体の生成を可能にするように、かつ/又は不活性を導入するように修飾され得る
【0100】
一実施形態において、本発明の多重特異性抗体は、第1及び第2のFcポリペプチドか
らなるFc領域を含む。
【0101】
一実施形態において、第1のFcポリペプチド及び第1の重鎖可変領域は、同じポリペ
プチド鎖内に含まれ、第2のFcポリペプチド及び第2の重鎖可変領域は、同じポリペプ
チド鎖内に含まれる。
【0102】
第1及び第2のFcポリペプチドは、各々、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4
、IgE、IgD、IgM、若しくはIgAアイソタイプ、又は混合アイソタイプなどの
、任意のヒトアイソタイプを含む、任意のアイソタイプであり得る。好ましくは、Fc領
域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプ、又は混合アイソタイ
プである。一実施形態において、当該Fc領域は、ヒトIgG1 Fc領域である。
【0103】
更なる実施形態において、多重特異性抗体は、本明細書で定義される全長抗体である。
【0104】
本発明による抗体は、抗体を不活性、又は非活性化抗体にするFc領域における修飾を
含み得る。したがって、本明細書に開示される抗体において、一方又は両方の重鎖は、抗
体が、当該修飾を含まないことを除いて、同一である抗体と比較してより低い程度でFc
媒介性エフェクター機能を誘導するように修飾され得る。Fc媒介性エフェクター機能は
、T細胞上でのFc媒介性CD69発現(すなわち、例えば、WO2015/00108
5に記載される、CD3抗体媒介性、Fcγ受容体依存的CD3架橋の結果としてのCD
69発現)を決定することによって、Fcγ受容体に結合することによって、C1qに結
合することによって、又はFcγRのFc媒介性架橋の誘導によって測定され得る。特に
、重鎖定常配列は、Fc媒介性CD69発現が、野生型(非修飾)抗体と比較されるとき
、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なく
とも90%、少なくとも99%、又は100%低減するように修飾され得、当該Fc媒介
性CD69発現は、PBMCベースの機能アッセイにおいて、例えば、WO2015/0
01085の実施例3に記載されるフローサイトメトリーによって決定される。重鎖及び
軽鎖定常配列の修飾はまた、当該抗体へのC1qの低減した結合をもたらし得る。非修飾
抗体と比較して、低減は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、又は100%であり得、C1q結合は、ELISA
によって決定され得る。更に、Fc領域は、当該抗体が、例えば、曲線の線形部分におい
て、非修飾抗体と比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、
少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、又は100%低減したFc媒
介性T細胞増殖を媒介するように修飾され得、当該T細胞増殖は、PBMCベースの機能
アッセイにおいて測定される。
【0105】
Fc媒介性エフェクター機能を排除するために、アミノ酸置換、及びそれらの組み合わ
せが、IgG1アイソタイプ抗体の定常重鎖領域に導入された、広範囲の異なる非活性化
抗体フォーマットが開発されている(例えば、Chiu et al.,Antibod
ies 2019 Dec;8(4):55、Liu et al.,Antibodi
es,2020 Nov 17;9(4):64;29(10):457-66、Shi
elds et al.,J Biol Chem.2001 Mar 2;276(9
):6591-604)。
【0106】
例えば、IgG1アイソタイプ抗体において、修飾され得るアミノ酸位置の例としては
、L234及びL235位が挙げられる。一実施形態において、第1及び/又は第2のF
cポリペプチドは、ヒトIgG1重鎖におけるL234及び/又はL235位のアミノ酸
に対応するアミノ酸の置換を含み、置換は、好ましくは、それぞれ、F及びEへの置換で
あり、アミノ酸位置は、Euナンバリングによって定義されるとおりである。
【0107】
アミノ酸位置L234及びL235の修飾に加えて、更なる位置が修飾され得ることが
理解される。よって、更なる実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドは、そ
れぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F及びEへの置換を
含み、第1及び/又は第2のFcポリペプチドは、ヒトIgG1重鎖におけるG236位
のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換を更に含み、置換は、好ましくはRへの置換である
【0108】
別の実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドは、それぞれ、L234及び
L235位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F及びEへの置換を含み、第1及び第2の
Fcポリペプチドは、ヒトIgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応するアミノ
酸の置換を更に含み、置換は、好ましくはRへの置換である。
【0109】
別の実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドは、それぞれ、L234及び
L235位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F及びEへの置換を含み、第1及び/又は
第2のFcポリペプチドは、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応する
アミノ酸の置換を更に含み、置換は、好ましくはAへの置換である。
【0110】
別の実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドは、それぞれ、L234及び
L235位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F及びEへの置換を含み、第1及び第2の
Fcポリペプチドは、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応するアミノ
酸の置換を更に含み、置換は、好ましくはAへの置換である。
【0111】
別の実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドのうちの一方は、それぞれ、
L234、L235、及びG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、及びR
への置換を含み、他方のFcポリペプチドは、それぞれ、L234、L235E、及びD
265位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含む。
【0112】
更なる実施形態において、第1のFcポリペプチドは、それぞれ、L234、L235
、及びG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、及びRへの置換を含み、第
2のFcポリペプチドは、それぞれ、L234、L235E、及びD265位のアミノ酸
に対応するアミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、アミノ酸位置は、Euナンバリ
ングによって定義されるとおりである。
【0113】
例えば、そのようなFc領域置換を有する定常領域は、とりわけ、そのような置換を有
さない、配列番号44と比較することができる、配列番号45、46、49、50、51
、及び52に提供される。一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号45、46、
49、50、51、及び52からなる群から選択される配列を含む。
【0114】
一実施形態において、本発明の多重特異性又は二重特異性抗体は、異なる第1及び第2
のCH3領域を含むFc領域を含み、ひいては当該第1及び第2のCH3領域間のヘテロ
二量体相互作用は、当該第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強
い。これらの相互作用及びそれらを達成することができる方法についての詳細は、参照に
よって本明細書に組み込まれる、WO2011/131746及びWO2013/060
867(Genmab)に提供される。安定、ヘテロ二量体抗体は、例えば、CH3領域
における少数のみの非対称的な変異を含有する2つのホモ二量体出発抗体に基づいて、W
O2008/119353及びWO2011/131746に提供される、いわゆるFa
b-アーム交換によって高収率で得ることができる。
【0115】
特定の実施形態において、本発明は、当該第1のFcポリペプチドにおいて、ヒトIg
G1重鎖におけるK409に対応する位置にあるアミノ酸が、Rであり、当該第2のFc
ポリペプチドにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置にあるアミノ
酸が、Lであるか、又はその逆も同様である、抗体を提供する。
【0116】
更なる実施形態において、第1のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置
にあるアミノ酸はRであり、第2のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置
にあるアミノ酸はLである。
【0117】
したがって、一実施形態において、第1のFcポリペプチドにおいて、ヒトIgG1重
鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK40
9からなる群から選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つ
は、置換されており、第2のFcポリペプチドにおいて、ヒトIgG1重鎖におけるT3
66、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる群か
ら選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つは、置換されて
おり、第1及び第2のFcポリペプチドにおける当該置換は、同じ位置にはなく、アミノ
酸位置は、Euナンバリングによって定義されるとおりである。例えば、そのようなFc
領域置換を有する定常領域は、とりわけ、そのような置換を有さない、配列番号44と比
較することができる、配列番号47、48、49、50、51、及び52に提供される。
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号47、48、49、50、51、及び5
2からなる群から選択される配列を含む。
【0118】
好ましくは、第1のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置にあるアミノ
酸は、Lであり、第2のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にあるアミ
ノ酸は、Rであるか、又はその逆もまた同様である。
【0119】
よって、一実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドのうちの一方は、それ
ぞれ、L234、L235、G236、及びF405位のアミノ酸に対応するアミノ酸の
、F、E、R、及びLへの置換を含み、他方のFcポリペプチドは、それぞれ、L234
、L235E、D265、及びK409位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、A
、及びRへの置換を含む。
【0120】
別の実施形態において、第1及び第2のFcポリペプチドのうちの一方は、それぞれ、
L234、L235、G236、及びK409位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、
E、R、及びRへの置換を含み、他方のFcポリペプチドは、それぞれ、L234、L2
35E、D265、及びF405位のアミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、A、及び
Lへの置換を含む。
【0121】
更なる実施形態において、本発明は、
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR
3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載されるC
DR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結合
領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域と、を含み、
ここで、多重特異性抗体が、二重特異性抗体であり、第1及び第2のFcポリペプチドか
らなるFc領域を含み、
ここで、第1のFcポリペプチド及び第1の重鎖可変領域が、同じポリペプチド鎖内に含
まれ、そしてここで、第2のFcポリペプチド及び第2の重鎖可変領域が、同じポリペプ
チド鎖内に含まれ、
ここで、第1のFcポリペプチドが、それぞれ、L234、L235、及びG236位の
アミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、及びRへの置換を含み、そして、第2のFcポ
リペプチドが、それぞれ、L234、L235、及びD265位のアミノ酸に対応するア
ミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、ここで、アミノ酸位置が、Euナンバリング
によって定義されるとおりであり、そして
ここで、第1のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にあるアミノ酸はR
であり、そして
ここで、第2のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置にあるアミノ酸はL
である。
【0122】
更なる実施形態において、本発明は、
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCDR
3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載されるC
DR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結合
領域と、
(ii)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域と、を含む多重特異性抗体に関し、
ここで、多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり、そして、第1及び第2のFcポリペ
プチドからなるFc領域を含み、
ここで、第1のFcポリペプチド及び第1の重鎖可変領域は、同じポリペプチド鎖内に含
まれ、そしてここで、第2のFcポリペプチド及び第2の重鎖可変領域は、同じポリペプ
チド鎖内に含まれ、
ここで、第1のFcポリペプチドは、それぞれ、L234、L235、及びD265位の
アミノ酸に対応するアミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、そして、第2のFcポ
リペプチドは、それぞれ、L234、L235、及びD265位のアミノ酸に対応するア
ミノ酸の、F、E、及びAへの置換を含み、ここで、アミノ酸位置は、Euナンバリング
によって定義されるとおりであり、そして、
ここで、第1のFcポリペプチドにおいて、K409に対応する位置にあるアミノ酸はR
であり、そして
ここで、第2のFcポリペプチドにおいて、F405に対応する位置にあるアミノ酸はL
である。
【0123】
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号17及び19に記載される重鎖配列、
並びに配列番号18及び20に記載される軽鎖配列を含むか、又はそれらからなる。
【0124】
更なる実施形態において、本発明の抗体は、配列番号17及び19に記載される重鎖配
列、並びに配列番号18及び20に記載される軽鎖配列を含むか、又はそれらからなり、
当該抗体は、二重特異性抗体である。
【0125】
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号17及び35に記載される重鎖配列、
並びに配列番号18及び20に記載される軽鎖配列を含むか、又はそれらからなる。
【0126】
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号55及び19に記載される重鎖配列、
並びに配列番号18及び20に記載される軽鎖配列を含むか、又はそれらからなる。
【0127】
一実施形態において、本発明の抗体は、配列番号55及び35に記載される重鎖配列、
並びに配列番号18及び20に記載される軽鎖配列を含むか、又はそれらからなる。
【0128】
なお更なる実施形態において、本発明の抗体は、bsG1-huCD3-FEALxC
D30-MDX060-FEAR又はbsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FERRである。より更なる実施形態において、本発明の抗体は、bsG1-
huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRである。
【0129】
配列番号44~52及び55に列挙される定常領域配列は、C末端リジン(K)を含ま
ない。しかしながら、これらのFc領域が由来するヒトにおいて見出される天然に存在す
る配列において、そのようなC末端リジンは、オープンリーディングフレームの一部とし
て存在し得る。組換え抗体の細胞培養物産生中に、この末端リジンは、内因性カルボキシ
ペプチダーゼによるタンパク質分解によって切断され得、同じ配列を有するがC末端リジ
ンを欠く定常領域をもたらす。抗体の製造目的のために、この末端リジンをコードするD
NAは、抗体がリジンなしで産生されるように、配列から省略され得る。抗体をコードす
る配列からのC末端リジンの省略は、C末端リジンの存在に対して抗体の均質性を増加さ
せ得る。末端リジンをコードするか、又はコードしない核酸配列から産生される抗体は、
C末端リジンの処理の程度が、例えば、CHOベースの産生系で産生された抗体を使用す
るときに、典型的には高いため、配列において及び機能において実質的に同一である(D
ick,L.W.et al.Biotechnol.Bioeng.2008;100
:1132-1143)。したがって、本発明による抗体は、本明細書に列挙されるよう
なC末端リジンをコードすることなく又は有することなく生成することができることが理
解される。よって、製造目的のために、C末端リジンを有することなく抗体を生成するこ
とができる。
【0130】
代替の実施形態において、本発明による多重特異性抗体は、Fc領域を含む古典的な全
長抗体ではない。例えば、一実施形態において、
(i)CD30結合領域及び/若しくはCD3結合領域は、Fabであるか、
(ii)CD30結合領域及び/若しくはCD3結合領域は、scFvであるか、
(iii)CD30結合領域は、Fabであり、CD3結合領域は、scFvであるか
、又は
(iv)CD30結合領域は、scFvであり、CD3結合領域は、Fabである。
【0131】
結合、細胞傷害性、及びT細胞活性化
ヒトCD3及びヒトCD30に結合することができる本明細書に記載される、二重特異
性抗体などの、抗体は、ヒトCD30発現がん細胞にT細胞を有利に標的化し、それによ
って当該がん細胞のT細胞媒介性殺滅を誘導することができる。
【0132】
上述のように、好ましくは、本発明による抗体は、不活性であり、更に、抗体は、以下
の特徴のうちの1つ以上を含む:
a)例えば、本明細書における実施例に記載される例について、フローサイトメトリーを
使用して試験されるとき、SU-DHL-1細胞、SUP-M2細胞、DL-40細胞、
KARPAS-299細胞、L-82細胞、SR-786細胞、L-540細胞、KM-
H2細胞、L-1236細胞、JVM-2細胞、HH細胞、NCEB-1細胞、及び/又
はHDLM-2細胞などの、CD30発現ヒト腫瘍細胞に結合することができ、
b)本明細書における実施例に記載されるようにアッセイされるとき、例えば、精製され
たPBMC、ADCCエフェクター細胞、又はT細胞をエフェクター細胞として使用する
とき、CD30発現ヒト腫瘍細胞の濃度依存的細胞傷害性を媒介することができ、
c)本明細書における実施例に記載されるようにアッセイされるとき、例えば、精製され
たPBMC又はT細胞をエフェクター細胞として使用するとき、SU-DHL-1細胞、
L-428細胞、KM-H2細胞、SUP-M2細胞、KI-JK細胞、及びHDLM-
2細胞からなる群から選択される1つ以上のヒトCD30発現腫瘍細胞株の濃度依存的細
胞傷害性を媒介することができ、
d)例えば、本明細書における実施例に記載されるようにアッセイされるとき、CD30
発現ヒト腫瘍細胞の存在下でインビトロでT細胞の増殖を誘導することができ、
e)本明細書における実施例に記載されるようにアッセイされるとき、SU-DHL-1
細胞、L-428細胞、KI-JK細胞、及びHDLM-2細胞からなる群から選択され
る1つ以上のCD30発現ヒト腫瘍細胞株の存在下でインビトロでT細胞を活性化するこ
とができ、
f)本明細書における例に記載されるようにアッセイされるとき、サイトカイン及びグラ
ンザイムBのT細胞によるインビトロでの用量依存的産生を誘導することができ、
g)本明細書における例に記載されるようにアッセイされるとき、CD30が活性化され
たT細胞の亜集団上で発現されても、T細胞のフラトリサイドをもたらさないことができ
、かつ/あるいは
h)本明細書における例に記載されるようにアッセイされるとき、sCD30の存在下で
もT細胞媒介性細胞傷害性を誘導することができる。
【0133】
一実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に記載さ
れるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによって測定
してアッセイされるとき、0.020μg/ml未満のような、0.025μg/ml未
満などの、0.030μg/ml未満のような、0.035μg/ml未満などの、0.
040μg/ml未満のような、0.045μg/ml未満などの、0.050μg/m
l未満のEC50濃度でT細胞媒介性細胞傷害性を誘導する。
【0134】
更なる実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に記
載されるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによって
測定してアッセイされるとき、90%を超えるような、85%を超えるなどの、80%を
超えるT細胞媒介性細胞傷害性を誘導する場合、最大の溶解を有する。
【0135】
一実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に記載さ
れるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによって測定
してアッセイされるとき、0.03μg/ml未満のような、0.035μg/ml未満
などの、0.04μg/ml未満のような、0.045μg/ml未満などの、0.05
μg/ml未満のCD25発現のEC50濃度を有するCD4 T細胞活性化を誘導す
る。更なる実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に
記載されるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによっ
て測定してアッセイされるとき、0.0007μg/ml未満のような、0.0008μ
g/ml未満などの、0.0009μg/ml未満のような、0.001μg/ml未満
などの、0.005μg/ml未満のCD25発現のEC50濃度を有するCD8
細胞活性化を誘導する。
【0136】
一実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に記載さ
れるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによって測定
してアッセイされるとき、0.0009μg/ml未満のような、0.001μg/ml
未満などの、0.002μg/ml未満のような、0.003μg/ml未満などの、0
.004μg/ml未満のCD69発現のEC50濃度を有するCD4 T細胞活性化
を誘導する。更なる実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において
実施例に記載されるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリ
ーによって測定してアッセイされるとき、0.0015μg/ml未満のような、0.0
020μg/ml未満などの、0.0025μg/ml未満のような、0.0030μg
/ml未満などの、0.0035μg/ml未満のCD69発現のEC50濃度を有する
CD8 T細胞活性化を誘導する。
【0137】
一実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施例に記載さ
れるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーによって測定
してアッセイされるとき、0.005μg/ml未満のような、0.006μg/ml未
満などの、0.007μg/ml未満のような、0.008μg/ml未満などの、0.
01μg/ml未満のPD-1発現のEC50濃度を有するCD4 T細胞活性化を誘
導する。更なる実施形態において、本明細書に記載される抗体は、本明細書において実施
例に記載されるように、例えば、L-428腫瘍細胞を使用し、フローサイトメトリーに
よって測定してアッセイされるとき、0.003μg/ml未満のような、0.004μ
g/ml未満などの、0.005μg/ml未満のような、0.006μg/ml未満な
どの、0.007μg/ml未満のPD-1発現のEC50濃度を有するCD8 T細
胞活性化を誘導する。
【0138】
アッセイは、当業者に一般的に知られるように行われ得、任意に、4:1のエフェクタ
ー細胞対標的細胞(E:T)の比、及び/又は任意に、72時間のインキュベーション期
間を含み得る。アッセイは、例えば、腫瘍細胞、好ましくは、標識された腫瘍細胞、例え
ば、L-428腫瘍細胞を提供すること、本明細書に記載される抗体を、好ましくは段階
希釈で添加すること、T細胞、好ましくは標識されたT細胞を、4:1のE:Tであるエ
フェクター対標的の比で提供し、72時間インキュベートすること、任意に、CD4、C
D8、CD25、CD69、及び/又はPD-1などの関連パラメータについて染色する
こと、並びに最終的に、FACSのようなフローサイトメトリーを使用して細胞を分析す
ることによって実施することができる。生きた細胞及び/又はT細胞増殖/活性化%は、
当業者に公知の分析によって得られたデータから計算され得る。
【0139】
本発明の抗体の産生
ハイブリッドハイブリドーマ及び化学的複合化方法(Marvin and Zhu(
2005)Acta Pharmacol Sin 26:649)などの従来の方法は
、本発明の二重特異性抗体などの、多重特異性の調製に使用することができる。異なる重
鎖及び軽鎖からなる、2つの抗体の宿主細胞における共発現は、所望の二重特異性抗体に
加えて、可能な抗体産物の混合物をもたらし、これは次いで、例えば、親和性クロマトグ
ラフィー又は類似の方法によって単離することができる。
【0140】
前述のように、異なる抗体構築物の共発現時に、機能的二重特異性産物の形成を優先す
る戦略、例えば、Lindhofer et al.(1995 J Immunol
155:219)によって記載される方法も使用することができる。異なる抗体を産生す
るラット及びマウスヒドリドーマの融合は、優先的な種制限重鎖/軽鎖対合のために、限
られた数のヘテロ二量体タンパク質をもたらす。ホモ二量体に対してヘテロ二量体の形成
を促進する別の戦略は、第1の重鎖ポリペプチド及び第2の重鎖ポリペプチド中の対応す
る空洞に隆起が導入され、ひいては隆起をこれら2つの重鎖の界面で空洞内に配置して、
ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨げる「ノブ-イントゥ-ホール」戦略
である。「隆起」は、第1のポリペプチドの界面からより大きな側鎖で小さなアミノ酸側
鎖を置き換えることによって構築される。隆起と同一又は類似のサイズの補正的「空洞」
は、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖で置き換えることによって、第2のポリペプチ
ドの界面に作製される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459(Ch
ugai)及びWO2009/089004(Amgen)は、宿主細胞における異なる
抗体ドメインの共発現時にヘテロ二量体形成を優先するための他の戦略を記載する。これ
らの方法では、ホモ二量体形成が静電的に好ましくなく、ヘテロ二量体化が静電的に好ま
しいように、両方のCH3ドメインにおいてCH3-CH3界面を構成する1つ以上の残
基が、荷電アミノ酸で置き換えられる。WO2007/110205(Merck)は、
IgA及びIgG CH3ドメイン間の差異がヘテロ二量体化を促進するために利用され
る、更に別の戦略を記載する。
【0141】
二重特異性抗体を産生するための別のインビトロ方法は、WO2008/119353
(Genmab)に記載されており、二重特異性抗体は、還元条件下でのインキュベーシ
ョン時に、2つの単一特異性IgG4又はIgG4様抗体間での「Fabアーム」又は「
半分子」交換(重鎖及び結合した軽鎖の交換)によって形成される。得られる産物は、異
なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0142】
本発明の二重特異性CD3xCD30抗体を調製するための好ましい方法は、以下のス
テップを含む、WO2011/131746及びWO13/060867(Genmab
)に記載される方法を含む:
a)Fc領域を含む第1の抗体を提供し、当該Fc領域が、第1のCH3領域を含み;
b)第2のFc領域を含む第2の抗体を提供し、当該Fc領域が、第2のCH3領域を含
み、
ここで、第1の抗体が、CD30抗体であり、そして、第2の抗体が、CD3抗体である
か、又はその逆もまた同様であり、
ここで、当該第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひいては当該第1及び第2の
CH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、当該第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相
互作用の各々よりも強く;
c)当該第1の抗体を当該第2の抗体と一緒に還元条件下でインキュベートし;そして
d)当該二重特異性CD×CD30抗体を得る。
【0143】
同様に、本発明は、本発明による多重特異性、例えば、二重特異性抗体を産生するため
の方法に関し、該方法は、
a)本明細書に記載されるCD30結合領域を含む第1のホモ二量体抗体と、本明細書に
記載されるCD3結合領域を含む第2のホモ二量体抗体と、を提供し、ここで、当該抗体
が、Fc領域を含み、任意に本明細書に記載される更なる特徴を含み、
ここで、第1及び第2の抗体の第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひいては第
1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、第1及び第2のCH3領域のホモ
二量体相互作用の各々よりも強く;
b)第1の抗体を第2の抗体と一緒に、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結
合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキュベートし;そして
c)第1の抗体の第1の免疫グロブリン重鎖及び第1の免疫グロブリン軽鎖と、第2の抗
体の第2の免疫グロブリン重鎖及び第2の免疫グロブリン軽鎖と、を含む本発明のヘテロ
二量体多重特異性抗体を得る、
ことを含む。
【0144】
一実施形態において、当該第1の抗体は、当該第2の抗体と一緒に、ヒンジ領域におけ
るシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件
下でインキュベートされ、得られるヘテロ二量体抗体における当該第1及び第2の抗体間
のヘテロ二量体相互作用は、37℃で24時間後に0.5mMのGSHでFabアーム交
換が発生しないようなものである。
【0145】
理論に限定されることなく、ステップc)において、親抗体のヒンジ領域における重鎖
ジスルフィド結合は、低減され、得られるシステインは、次いで、別の親抗体分子のシス
テイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる(元々は異なる特異性を有
する)。この方法の一実施形態において、ステップc)における還元条件は、還元剤、例
えば、以下からなる群から選択される還元剤の添加を含む:2-メルカプトエチルアミン
(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グ
ルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン
、及びβ-メルカプト-エタノール、好ましくは2-メルカプトエチルアミン、ジチオス
レイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される
還元剤。好ましい実施形態において、還元剤は、2-メルカプトエチルアミンである。更
なる実施形態において、ステップc)は、例えば、還元剤の除去によって、例えば、脱塩
によって、非還元性又は低還元性になる条件を復元することを含む。
【0146】
更なる態様において、本発明は、以下を含む単一特異性抗体に関する;
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第1の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載される
CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域と、を含むCD30結
合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、第1及び第2の
Fcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸
の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、第1及び第2のFcポリペプチドが、ヒト
IgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換を更に含み、ここ
で、置換が、好ましくはRへの置換であり、ここで、アミノ酸位置が、Euナンバリング
によって定義されるとおりである、Fc領域。
【0147】
一実施形態において、第1の重鎖可変領域は、配列番号13に記載される配列を含み、
第1の軽鎖可変領域は、配列番号14に記載される配列を含む。
【0148】
更なる態様において、本発明は、以下を含む単一特異性抗体に関する;
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及びCD
R3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に記載
されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含むCD
3結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、第1及び第2の
Fcポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸
の、F及びEへの置換を含み、そしてここで、第1及び第2のFcポリペプチドが、ヒト
IgG1重鎖におけるG236位のアミノ酸に対応するアミノ酸の置換を更に含み、ここ
で、置換が、好ましくはRへの置換であり、ここで、アミノ酸位置が、Euナンバリング
によって定義されるとおりである、Fc領域。
【0149】
一実施形態において、配列番号9におけるXは、Hである。別の実施形態において、配
列番号9におけるXは、Gである。一実施形態において、第2の重鎖可変領域は、配列番
号15に記載される配列を含み、第2の軽鎖可変領域は、配列番号16に記載される配列
を含む。
【0150】
一実施形態において、上記の単一特異性抗体は、全長抗体である。好ましくは、ヒトI
gG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、及
びK409からなる群から選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なく
とも1つは置換されており、好ましくは、F405に対応する位置にあるアミノ酸はLで
あるか、又は、K409に対応する位置にあるアミノ酸はRである。
【0151】
更なる態様において、本発明は、多重特異性抗体を産生するための方法に関し、該方法
は、
a)本明細書における上記のような第1の単一特異性CD30抗体、及び、以下を含む
第2の抗体、を提供するか;
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及び
CDR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に
記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含む
CD3結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、第1及び第
2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸
の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応するア
ミノ酸の、Aへの置換と、を含むFc領域、
又は
本明細書における上記のような第2の単一特異性CD3抗体、及び、以下を含む第1の
抗体、を提供し;
(i)それぞれ、配列番号1、2、及び3に記載されるCDR1、CDR2、及び
CDR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号4、5、及び6に記載さ
れるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含む、CD
30結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、第1及び第
2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸
の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応するア
ミノ酸の、Aへの置換と、を含む、Fc領域;
ここで、第1及び第2の抗体の第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひいては
第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、第1及び第2のCH3領域のホ
モ二量体相互作用の各々よりも強く、ここで、好ましくは、第1のCH3領域において、
F405に対応する位置にあるアミノ酸がLであり、そして、第2のCH3領域において
、K409に対応する位置にあるアミノ酸がRであるか、又はその逆もまた同様であり;
b)第1の抗体を第2の抗体と一緒に、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド
結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキュベートし;そし

c)第1の抗体の第1の免疫グロブリン重鎖及び第1の免疫グロブリン軽鎖と、第2の
抗体の第2の免疫グロブリン重鎖及び第2の免疫グロブリン軽鎖と、を含む多重特異性抗
体を得る、
ことを含む、方法。
【0152】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載される多重特異性抗体を産生するため
の方法に関し、該方法は、
a)本明細書に記載される第1の単一特異性CD30抗体、および、以下を含む第2の
抗体、を提供し;
(i)それぞれ、配列番号7、8、及び9に記載されるCDR1、CDR2、及び
CDR3配列を含む第2の重鎖可変領域と、それぞれ、配列番号10、11、及び12に
記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域と、を含む
、CD3結合領域、および
(ii)第1及び第2のFcポリペプチドからなるFc領域であって、第1及び第
2のポリペプチドが、それぞれ、L234及びL235位のアミノ酸に対応するアミノ酸
の、F及びEへの置換と、ヒトIgG1重鎖におけるD265位のアミノ酸に対応するア
ミノ酸の、Aへの置換と、を含む、Fc領域、
ここで、第1及び第2の抗体の第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひいては
第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、第1及び第2のCH3領域のホ
モ二量体相互作用の各々よりも強く、ここで、好ましくは、第1のCH3領域において、
K409に対応する位置にあるアミノ酸がRであり、そして、第2のCH3領域において
、F405に対応する位置にあるアミノ酸がLである;
b)第1の抗体を第2の抗体と一緒に、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド
結合異性化を受けることを可能にするために十分な還元条件下でインキュベートし;そし

c)第1の抗体の第1の免疫グロブリン重鎖及び第1の免疫グロブリン軽鎖と、第2の
抗体の第2の免疫グロブリン重鎖及び第2の免疫グロブリン軽鎖と、を含む多重特異性抗
体を得る、
ことを含む。
【0153】
本発明は、本明細書に記載される方法によって得られる多重特異性抗体に更に関する。
【0154】
上記の方法において、CD30及び/又はCD3に結合することができる第1又は第2
のホモ二量体抗体を提供するステップは、以下のステップを含み得る;
-1以上の当該抗体を産生するための発現ベクターを含有する細胞を提供するステップ、
-細胞を1以上の当該抗体を産生させるステップ、その後、
-1又は複数の当該抗体を得て、それによって1以上の当該抗体を提供するステップ。
【0155】
この方法の一実施形態において、当該第1及び/又は第2のホモ二量体抗体は、全長抗
体である。
【0156】
第1及び第2のホモ二量体抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はI
gG4を含むが、これらに限定されない、任意のアイソタイプであり得る。この方法の一
実施形態において、当該第1及び当該第2のホモ二量体抗体の両方のFc領域は、IgG
1アイソタイプである。別の実施形態において、当該ホモ二量体抗体のFc領域の一方は
、IgG1アイソタイプであり、他方は、IgG4アイソタイプである。後者の実施形態
において、得られる二重特異性抗体は、IgG1のFc領域及びIgG4のFc領域を含
み、よって、エフェクター機能の活性化に関して興味深い中間体特性を有し得る。
【0157】
更なる実施形態において、ホモ二量体出発抗体のうちの1つは、プロテインAに結合し
ないように操作されており、よって産物をプロテインAカラム上に通すことによってヘテ
ロ二量体抗体をホモ二量体出発抗体から分離することを可能にし、フロースルーを除去し
、ヘテロ二量体抗体をプロテインAカラムから溶出させて、精製されたヘテロ二量体抗体
組成物を得る。
【0158】
上述のように、ホモ二量体出発抗体の第1及び第2のCH3領域の配列は、異なり得、
ひいては当該第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用は、当該第1及び第2
のCH3領域のホモ二量体相互作用の各々よりも強い。これらの相互作用及びそれらを達
成することができる方法についての詳細は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み
込まれる、WO2011/131746及びWO2013/060867(Genmab
)に提供される。
【0159】
特に、安定な二重特異性CD3xCD30抗体は、それぞれ、CD30及びCD3に結
合し、CH3領域に少数のみの、かなり保存的な非対称変異を含有する2つのホモ二量体
出発抗体に基づいて、本発明の上記方法を使用して高収率で得ることができる。非対称変
異は、当該第1及び第2のCH3領域の配列が非同一位置でアミノ酸置換を含有すること
を意味する。
【0160】
本発明の多重特異性、例えば、二重特異性抗体はまた、単一細胞における第1及び第2
のポリペプチドをコードする構築物の共発現によって得られ得る。
【0161】
よって、更なる態様において、本発明は、本発明による多重特異性抗体をコードする核
酸構築物、又は核酸構築物の組み合わせに関し、そのような核酸構築物を含む発現ベクタ
ー、又は発現ベクターの組み合わせに関する。
【0162】
更に、本発明は、本発明による多重特異性抗体を産生することができる組換え宿主細胞
に関し、宿主細胞は、本発明による多重特異性抗体をコードする1つ以上の核酸構築物を
含む。
【0163】
したがって、本発明はまた、本発明による多重特異性抗体を産生するための方法に関し
、該方法は、
(i)抗体が産生される条件下で本発明の組換え宿主細胞を培養することと、
(ii)産生された多重特異性抗体を培養物から単離することと、を含む。
【0164】
一実施形態において、当該方法は、以下のステップを含む:
a)第1の抗体重鎖の第1のFc領域及び第1の抗原結合領域を含む第1のポリペプチド
をコードする第1の核酸構築物を提供し、当該第1のFc領域が、第1のCH3領域を含
み、
b)第2の抗体重鎖の第2のFc領域及び第2の抗原結合領域を含む第2のポリペプチド
をコードする第2の核酸構築物を提供し、当該第2のFc領域が、第2のCH3領域を含
み、
ここで、当該第1及び第2のCH3領域の配列が、異なり、ひいては当該第1及び第2の
CH3領域間のヘテロ二量体相互作用が、当該第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相
互作用の各々よりも強く、ここで、任意に、当該第1及び第2の核酸構築物が、当該第1
及び第2の抗体の軽鎖配列をコードし;
c)当該第1及び第2の核酸構築物を宿主細胞において共発現させ;そして
d)当該ヘテロ二量体タンパク質を細胞培養物から得る。
【0165】
好ましくは、F405に対応する位置にあるコードされたアミノ酸は、第1のCH3領
域にあるLであり、K409に対応する位置にあるコードされたアミノ酸は、第2のCH
3領域にあるRであるか、又はその逆もまた同様である。
【0166】
プロモーター、エンハンサーなどを含む、好適な発現ベクター、及び抗体の産生に好適
な宿主細胞は、当該技術分野で周知である。宿主細胞の例としては、酵母、細菌、及び哺
乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はヒト、例えば、ヒ
ト胚性腎臓(HEK)細胞が挙げられる。
【0167】
本明細書に定義される核酸、又は1つ以上の核酸は、RNA又はDNAであり得る。本
明細書で定義される核酸、又は1つ以上の核酸は、哺乳動物細胞における発現における使
用のためのものであり得る。したがって、更に、本発明は、本明細書で定義される、核酸
又は核酸(複数)を含む、1以上の細胞を提供する。
【0168】
本発明の文脈における核酸は、染色体、非染色体、及び合成核酸ベクター(好適な発現
制御要素のセットを含む核酸配列)を含む、任意の好適なベクターであり得る、発現ベク
ターであり得る。そのようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド
、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミド及びファージDNA
の組み合わせに由来するベクター、並びにウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターが
挙げられる。一実施形態において、CD30又はCD3抗体コード核酸は、例えば、直鎖
発現要素(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech
17,355 59(1997)に記載される)、コンパクト核酸ベクター(例えば、U
S6,077,835及び/又はWO00/70087に記載される)、pBR322、
pUC 19/18、若しくはpUC 118/119などのプラスミドベクター、「ミ
ッジ」最小サイズの核酸ベクター(例えば、Schakowski et al.,Mo
l Ther 3,793 800(2001)に記載される)を含む、裸のDNA若し
くはRNAベクターに、又はCaP04沈澱構築物(例えば、WO2000/46147
、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551
55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)
、及びCoraro and Pearson,Somatic Cell Genet
ics 7,603(1981)に記載される)などの、沈澱核酸ベクター構築物として
含まれる。そのような核酸ベクター及びその使用法は、当該技術分野で周知である(例え
ば、US5,589,466及びUS5,973,972を参照されたい)。
【0169】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞におけるCD30抗体及び/又はCD3抗
体の発現に適している。そのようなベクターの例としては、BlueScript(St
ratagene)、pINベクター(Van Heeke&Schuster,J B
iol Chem 264,5503 5509(1989)、pETベクター(Nov
agen、Madison WI)などのような発現ベクターが挙げられる。
【0170】
発現ベクターはまた、又は代替的に、酵母系における発現に好適なベクターであり得る
。酵母系における発現に好適な任意のベクターが使用され得る。好適なベクターとしては
、例えば、アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGHなどの構成的又は誘導性
プロモーターを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.
Current Protocols in Molecular Biology,G
reene Publishing and Wiley InterScience
New York(1987)、及びGrant et al.,Methods in
Enzymol 153,516 544(1987)において概説される)。
【0171】
核酸及び/又は発現ベクターはまた、分泌/局在化配列をコードする核酸配列を含み得
、これは、新生ポリペプチド鎖などの、ポリペプチドを、細胞周辺腔又は細胞培養培地に
標的化することができる。そのような配列は、当該技術分野で既知であり、分泌リーダー
又はシグナルペプチドを含む。核酸及び/又は発現ベクターは、(二重特異性)抗体の成
分が発現されるように、発現、すなわち、核酸の転写及び/又は翻訳を促進する任意の好
適な要素を含み得る。核酸及び/又はベクターは、任意の好適なプロモーター、エンハン
サー、及び他の発現促進要素と会合する。そのような要素の例としては、強い発現プロモ
ーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、並びにRSV、SV4
0、SL3 3、MMTV、及びHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結
配列、E.coliにおけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗
生物質耐性遺伝子、及び/又は便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げ
られる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモーターとは対照的に、誘導性プロモー
ターも含み得る。
【0172】
組成物及び(医学的)使用
更に、本発明は、本明細書に定義される抗体を含む組成物を提供する。好ましくは、そ
のような組成物は、薬学的組成物であり、すなわち、抗体は、薬学的に許容される担体に
含まれる。
【0173】
薬学的組成物は、Remington:The Science and Pract
ice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.
,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に開示され
るものなどの従来の技法に従って製剤化され得る。本発明の薬学的組成物は、例えば、希
釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗剤(例えば、Tween-20又はTween-80など
の、非イオン性洗剤)、安定剤(例えば、糖又はタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐
剤、組織固定剤、可溶化剤、及び/又は薬学的組成物中の包含に好適な他の材料を含み得
る。
【0174】
薬学的組成物は、任意の好適な経路及びモードによって投与され得る。一実施形態にお
いて、薬学的組成物は、静脈内又は皮下注射又は注入によって投与される。
【0175】
本発明による抗体、組成物、又は薬学的組成物は、好ましくは、医薬としての使用のた
めのものである。
【0176】
本発明による抗体、組成物、又は薬学的組成物は、好ましくは、疾患の治療における使
用のためのものである。
【0177】
特に、本発明の二重特異性抗体は、様々な形態のがんの治療のために使用され得る。
【0178】
一態様において、本発明は、対象においてがんを治療するための方法を提供し、その方
法は、治療有効量の本発明の多重特異性抗体の投与を含む。更なる実施形態において、本
発明は、対象において、CD30を発現する細胞を含む障害を治療するための方法を提供
し、その方法は、治療有効量の本発明の多重特異性抗体の投与を含む。
【0179】
前述のように、本発明による方法及び使用において企図することができる好適な疾患は
、がんである。当該がんは、最も好ましくは、CD30の発現を特徴とする。がんにおけ
るCD30の発現は、PCR、免疫染色、又はFACS分析などの、当該技術分野で既知
の方法を使用して、すなわち、CD30転写物及び/又はタンパク質の発現の検出をして
、容易に決定することができる。ヒトCD30に結合することができる本明細書に記載さ
れる抗体は、例えば、免疫染色及び/又はFACS分析などにおいて使用され得る。
【0180】
一態様において、本発明は、ホジキンリンパ腫又は未分化大細胞リンパ腫の治療におけ
る使用のための、本発明による多重特異性抗体、組成物、又は薬学的組成物に関する。
【0181】
更なる態様において、本発明は、ホジキンリンパ腫(HL)又は非ホジキンリンパ腫(
NHL)の治療における使用のための、本発明による多重特異性抗体、組成物、又は薬学
的組成物に関する。
【0182】
一実施形態において、ホジキンリンパ腫は、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)である
【0183】
一実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、T細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL
)又はB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)である。更なる実施形態において、非ホ
ジキンリンパ腫は、T細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)である。
【0184】
更なる実施形態において、T細胞非ホジキンリンパ腫は、末梢T細胞リンパ腫(PTC
L)又は皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である。なお更なる実施形態において、T細胞
非ホジキンリンパ腫(T-NHL)は、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)である。なお
更なる実施形態において、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、未分化大細胞リンパ腫(
ALCL)である。
【0185】
一実施形態において、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)は、マントル細胞リン
パ腫(MCL)である。
【0186】
より更なる実施形態において、ホジキンリンパ腫(HL)は、再発性及び難治性ホジキ
ンリンパ腫である。更なる実施形態において、ホジキンリンパ腫(HL)は、CD30+
ホジキンリンパ腫である。なお更なる実施形態において、ホジキンリンパ腫(HL)は、
再発性及び難治性CD30+ホジキンリンパ腫である。より更なる実施形態において、ホ
ジキンリンパ腫(HL)は、再発性及び難治性CD30+古典的ホジキンリンパ腫である
【0187】
より更なる実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、再発性及び難治性非
ホジキンリンパ腫である。更なる実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、
CD30+非ホジキンリンパ腫である。なお更なる実施形態において、非ホジキンリンパ
腫(NHL)は、再発性及び難治性CD30+非ホジキンリンパ腫である。
【0188】
更なる実施形態において、ホジキンリンパ腫(HL)又は非ホジキンリンパ腫(NHL
)の治療における使用のための本発明による多重特異性抗体、組成物、又は薬学的組成物
は、静脈内及び/又は皮下、好ましくは皮下投与されているか、又は投与された。
【0189】
更なる実施形態において、がんと診断されている患者は、がん細胞におけるCD30発
現の評価に供され得、CD30が検出されるとき、これは低~高の範囲であり得、そのよ
うな患者は、本発明による抗体での治療に選択され得る。しかしながら、治療について患
者を選択する際にそのような評価を含めることが必ずしも要件ではない場合がある。
【0190】
本発明の多重特異性抗体は、CD30を発現する細胞を含む障害の診断及び治療を含む
多数のインビトロ及びインビボ診断及び治療有用性を有する。例えば、抗体は、様々な障
害を治療、予防、及び/又は診断するために、培養物中の細胞に、例えば、インビトロ若
しくはエクスビボで、又は対象に、例えば、インビボで投与することができる。本明細書
で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト個体を含むことが意図される
【0191】
一態様において、本発明は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の多
重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0192】
一実施形態において、診断用組成物は、多重特異性抗体での治療から利益を得るであろ
う患者をスクリーニングし、選択するために使用されるコンパニオン診断薬である。
【0193】
キット
本発明は、上記に開示される抗体を含むキットオブパーツ、例えば、コンパニオン診断
薬としての/患者の集団内で、本明細書において上記で定義される抗体での治療に応答す
る傾向を有する患者を特定するための、又は患者の治療に使用されるときの当該抗体の有
効性若しくは抗腫瘍活性を予想するための使用のためのキットであって、上記に定義され
る抗体と当該キットの使用説明書とを含む、キットを提供する。
【0194】
一実施形態において、本発明は、多重特異性CD3xCD30抗体を含む容器と、CD
30発現細胞及びCD3発現細胞の架橋を検出するための1つ以上の試薬と、を含む、が
んの診断のためのキットを提供する。試薬は、例えば、蛍光タグ、酵素タグ、又は他の検
出可能なタグを含み得る。試薬はまた、酵素反応のための二次又は三次抗体又は試薬を含
み得、酵素反応は、視覚化され得る産物を産生する。
【0195】
更なる態様において、本発明は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つによる
多重特異性抗体の投与時に、患者に由来する試料においてCD30発現細胞及びCD3発
現細胞間の架橋が生じるかを検出するための方法に関し、該方法は、
(i)試料を、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つによる多重特異性抗体と、
当該二重特異性抗体とCD30発現細胞及びCD3発現細胞との間の複合体の形成を可能
にする条件下で接触させ、そして、
(ii)複合体が形成されたかを分析する、
ことを含む。
【0196】
核酸構築物及び送達ビヒクルの送達
更なる態様において、本発明は、インビボ発現のための本発明の抗体をコードする核酸
構築物の投与に関する。抗体をコードする核酸のインビボ発現のために、当該核酸は、典
型的には、核酸が対象の細胞に入るために好適な形態で投与される。インビボ発現のため
の核酸を送達するための異なる方法が存在し、機械的手段及び化学的手段を含む方法の両
方を含む。例えば、そのような方法は、エレクトロポレーション又は核酸を皮膚上に入れ
墨することを含み得る(Patel et al.,2018,Cell Report
s 25,1982-1993)。対象への核酸の投与に好適な他の方法は、好適な製剤
中の核酸の投与を伴う。
【0197】
よって、本発明はまた、本発明による核酸又は核酸の組み合わせを含む送達ビヒクルに
関する。いくつかの実施形態において、当該送達ビヒクルは、脂質製剤であり得る。製剤
の脂質は、粒子、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)であり得る。本発明の核酸又は核酸の
組み合わせは、当該粒子内、例えば、当該LNP内にカプセル化され得る。インビボ発現
のための対象への核酸の投与に好適な異なる脂質製剤は、当業者に周知である。例えば、
当該脂質製剤は、典型的には、脂質、イオン化可能なアミノ脂質、PEG脂質、コレステ
ロール、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0198】
治療抗体の発現のための対象への核酸の投与に好適な脂質製剤の調製のための様々な形
態及び方法は、当該技術分野で周知である。そのような脂質製剤の例としては、US20
18/0170866(Arcturus)、EP2391343(Arbutus)、
WO2018/006052(Protiva)、WO2014/152774(Shi
re Human Genetics)、EP2972360(Translate B
io)、US10195156(Moderna)、及びUS2019/0022247
(Acuitas)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
したがって、更なる態様において、本発明は、(a)医薬としての使用のための、好ま
しくはホジキンリンパ腫又は未分化大細胞リンパ腫の治療などの、がんの治療における使
用のための、本発明による核酸構築物又は本発明による送達ビヒクルに関する。
【0200】
本発明は、以下の例によって更に例示され、これは、本発明の範囲を限定するものとし
て解釈されるべきではない。
【実施例0201】
実施例1 2-MEA誘導Fab-アーム交換によるCD3×CD30二重特異性抗体の
生成
以下の抗体を実施例に使用した:
【0202】
ヒト化CD3抗体
WO2015/001085(Genmab)の実施例1に記載されるIgG1-hu
CD3-H1L1である。IgG1-huCD3-H1L1は、本明細書において「Ig
G1-huCD3」と称される。
WO2017/009442(Genmab)の実施例2に記載されるIgG1-huC
D3-H1L1-H101Gである。IgG1-huCD3-H1L1-H101Gは、
本明細書において「IgG1-huCD3-H101G」と称される。
【0203】
CD30抗体
HuMab 5F11とも称される、MDX-060は、WO2003/059282
(Medarex)に開示されている。hAC10(又はSGN-30)は、US825
7706及びUS20100239571(Seattle genetics)に開示
されている。HRS-3は、WO2016/0177846(Affimed)に開示さ
れている。HeFi-I、T405、T105、T408、及びT215は、WO200
7/040653(米国政府及び保健)に開示されている。
【0204】
抗体発現
抗体配列を、pcDNA3.3発現ベクター(Invitrogen、US)にクロー
ニングし、FcドメインにおいてFcサイレンシング及び/又はDuoBody(登録商
標)技術アミノ酸置換あり又はなしで、IgG1、κ又はIgG1、λとして発現させた
(下記を参照されたい)。全ての抗体を、本質的に製造業者によって記載されるように、
ExpiFectamine(商標)293(Thermo Fisher Scien
tific、cat.no.A14525)を使用して、Expi293F(商標)細胞
(Thermo Fisher Scientific、US、cat.no.A145
27)において関連する重鎖及び軽鎖発現ベクターを共トランスフェクションすることに
よって、無血清条件下で産生した。
【0205】
二重特異性抗体の生成
二重特異性抗体を、DuoBody(登録商標)プラットフォーム技術、すなわち、W
O2011/147986、WO2011/131746及びWO2013/06086
7(Genmab)並びにLabrijn et al.(Labrijn et al
.,PNAS 2013,110:5145-50、Gramer et al.,MA
bs 2013,5:962-973)に記載される2-MEA誘導された制御されたF
ab-アーム交換(cFAE)を使用してインビトロで生成した。この方法によって二重
特異性抗体の生成を可能にするために、CH3ドメインにおける単一変異を保有するIg
G1分子を生成した:1つの親IgG1抗体においては、F405L変異(すなわち、C
D3抗体又は対照、HIV-1 gp120特異的、抗体)であり、他の親IgG1抗体
においては、K409R変異(すなわち、CD30又は対照抗体)である。これらの変異
に加えて、親IgG1抗体は、IgG Fc受容体(Fcガンマ受容体)及び/又は補体
因子、例えば、C1q:L234F、L235E、D265A(FEA、US2015/
0337049)若しくはL234F、L235E、G236R(FER)と相互作用す
ることができないFcドメインをもたらす置換を含んだ。
【0206】
Fcサイレンシング及びDuoBody(登録商標)技術変異の組み合わせは、以下の
ように称された。
L234F、L235E、D265A、及びF405L:FEAL
L234F、L235E、D265A、及びK409R:FEAR
L234F、L235E、G236R、及びK409R:FERR
【0207】
親抗体の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)配列は、以下の配列番号で記載される:
【表4】
【0208】
二重特異性抗体を生成するために、2つの親抗体を等モル比でPBS緩衝液(リン酸塩
緩衝生理食塩水、8.7mMのHPO 2-、1.8mMのHPO 、163.9m
MのNa、140.3mMのCl、pH7.4)中で混合した。2-メルカプトエチ
ルアミン-HCl(2-MEA)を75mMの最終濃度に加え、反応混合物を31℃で5
時間インキュベートした。2-MEAを、製造業者のプロトコルに従って10kDaの分
子量カットオフSlide-A-Lyzerキャリッジ(Thermo Fisher
Scientific)を使用してPBS緩衝液中への透析によって除去した。試料を4
℃で一晩保存して、ジスルフィド結合の再酸化及び無傷の二重特異性抗体の形成を可能に
した。cFAEの有効性は、Gramer et al.(MAbs.2013 Nov
1;5(6):962-973.)によって記載されるエレクトロスプレーイオン化質
量分析(ESI-MS)によって評価されるように、>95%であった。
【0209】
非結合対照抗体b12
IgG1-b12は、HIV-1 gp120特異的抗体(Barbas,CF.J
Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)であり、それ
は、例のいくつかにおいて陰性、非結合対照抗体として使用される。重鎖の配列及び軽鎖
の配列は、本明細書において、それぞれ、配列番号36及び37(FEAL)又はそれぞ
れ、配列番号38及び37(FERR)として含まれる。
【0210】
実施例2-ヒトホジキンリンパ腫(HL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、及びT
LL細胞株におけるCD30発現
CD30表面発現レベルを、定量的フローサイトメトリー(ヒトIgGキャリブレータ
ーキット、Biocytex、cat no.CP010)を使用して、HL、ALCL
、及びTLL細胞株(表4)のパネルにおいて評価した。細胞(5×10細胞/ウェル
)を、ポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、cat
.no.650180)において50μLの染色緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン[
BSA、画分V、Roche、cat、no.10735086001]及び0.02%
NaN3[Sigma Aldrich、cat no.13412]で補足されたPB
S[Lonza,cat.no.BE17-517Q])中の10μg/mLのIgG1
-CD30-MDX060-FERRと4℃で30分間インキュベートした。並行して、
ヒトIgGキャリブレーターキット(Biocytex、cat.no.CP010)を
、本質的に製造業者の指示に従って使用して標準曲線を生成した。ビーズ当たり十分に定
義された数のヒトIgGモノクローナル抗体を含む較正ビーズを、同じR-PE複合化二
次抗体(Jackson ImmunoResearch,UK、cat.no.109
-116-098、1:500希釈)と4℃で光から保護して30分間インキュベートし
た。細胞及びビーズをFACS緩衝液で洗浄し、FACSCelestaフローサイトメ
ーター(BD Biosciences、USA)でフローサイトメトリーによって分析
した。ヒトIgGキャリブレーターキットを使用して得られた標準曲線を使用して、Gr
aphPad Prism Softwareを使用して、細胞当たりの結合したIgG
1-CD30-MDX060-FERR抗体(ABC)の数を補間し、細胞表面上で発現
したCD30分子の数の推定値を表した。
【0211】
表4及び5は、定量下限(LLOQ)を上回るCD30発現がSUP-T1を除く全て
の細胞株において観察されたことを示す。
【表5】
【0212】
【表6】
【0213】
実施例3-未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞などのヒトホジキンリンパ腫(HL)
及び非ホジキンリンパ腫(NHL)へのCD3×CD30二重特異性抗体の結合
CD3xCD30二重特異性抗体の、2つのCD30発現ヒト腫瘍細胞株SU-DHL
-1(ALCL、ATCC、cat.no.ACC 356)及びHDLM-2(HL、
ATCC、cat.no.CRL-2965)への結合をフローサイトメトリーによって
分析した。
【0214】
細胞(3x10細胞/ウェル)を、ポリスチレン96ウェル丸底プレート(Grei
ner bio-one、cat.no.650180)において50μLの染色緩衝液
中の抗体の段階希釈液(3倍希釈ステップで0.0046~10μg/mLの範囲)と4
℃で30分間インキュベートした。染色緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を50μLの二
次抗体と4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、染色緩衝液中で1:40
0に希釈されたR-PE複合化ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoRes
earch、UK、cat.no.109-116-098)を使用した。次に、細胞を
染色緩衝液中で2回洗浄し、TO-PRO-3ヨウ化物(Thermo Fisher
Scientific、cat.no.T3605、1:8000希釈)で補足された1
00μLの染色緩衝液に再懸濁し、FACSCelestaフローサイトメーター(BD
Biosciences、USA)で分析した。FSC/SSC及びTOPRO-3染
色の不在に基づいて、生きた細胞をゲーティングした。結合曲線を、GraphPad
Prism V7.02ソフトウェア(GraphPad Software、San
Diego、CA、USA)を使用して対数変換データの非線形回帰(可変勾配でのシグ
モイド用量応答、4パラメータ)によって分析した。
【0215】
結果
図1は、CD3xCD30二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxCD30
-MDX060-FEAR(A)、bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC
10-FEAR(B)、bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FE
AR(C)、BsG1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR(D
)、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T405-FEAR(E)、bsG1
-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR(F)、BisIgG1-hu
CD3-FEALxCD30-T408-FEAR(G)、及びbsG1-huCD3-
FEALxCD30-T215-FEAR(H)の、SU-DHL-1(左パネル)及び
HDLM-2(右パネル)腫瘍細胞への用量応答結合曲線を示す。
【0216】
1.11μg/mLの濃度で、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX0
60-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR、
bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR、及びbsG1-h
uCD3-FEALxCD30-T105-FEARは、単一特異性、二価CD30親抗
体IgG1-CD30-MDX060-FEAR、IgG1-CD30-hAC10-F
EAR、IgG1-CD30-HRS-3-FEAR、及びIgG1-CD30-T10
5-FEARの結合を比較したときに同様の結合を示した(図1I)。
【0217】
対照的に、1.11μg/mLの濃度で、bsG1-huCD3-FEALxCD30
-T405-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEA
R、及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEARの結合は、単
一特異性、二価CD30親抗体IgG1-CD30-T405-FEAR、IgG1-C
D30-T408-FEAR、及びIgG1-CD30-T215-FEARの、SU-
DHL-1及びHDLM-2細胞への結合よりも低かった(図1I)。
【0218】
全体的に、1.11μg/mLの濃度でのbsG1-huCD3-FEALxCD30
-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-
FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR、BsG
1-huCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR、及びbsG1-huC
D3-FEALxCD30-T105-FEARの結合は、同じ濃度でのbsG1-hu
CD3-FEALxCD30-T405-FEAR、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-T408-FEAR、及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-T2
15-FEARの結合よりも高かった(図1I)。
【0219】
これらの実験に含まれた陰性対照抗体BsG1-huCD3-FEALxb12-FE
ARは、SU-DHL-1及びHDLM-2細胞への結合を示さず、SU-DHL-1又
はHDLM-2細胞のいずれもCD3を発現しないことを示す。
【0220】
結論として、CD30抗体クローンT405、T408、及びT215は、二価フォー
マットと比較して一価において低減した結合を示し、一方でクローンMDX060、hA
C10、HRS-3、及びT105は、一価及び二価フォーマットの両方で、CD30発
現腫瘍細胞への効率的な結合を示した。
【0221】
図2は、(A)HDLM-2(HL)、(B)L-428(HL)、(C)DEL(A
LCL)、及び(D)KI-JK(ALCL)細胞へのbsG1-huCD3-FEAL
xCD30-MDX060-FERRの用量応答結合曲線を示す。BsG1-huCD3
-FEALxCD30-MDX060-FERRは、単一特異性、二価CD30親抗体I
gG1-CD30-MDX060-FERRと比較されるとき、同様の最大結合を示した
。陰性対照抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FEAR、IgG1-huC
D3-FEAL、及びIgG1-b12-FEALは、これらの細胞株のいずれへの結合
も示さず、これらの細胞が細胞表面上でCD3を発現しないことを示した。これらのデー
タは、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEERのHL及び
ALCL細胞株への効率的な結合を確認した。
【0222】
表6は、2つの独立した実験において評価される、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-MDX060-FEARのHDLM-2、L-428、DEL、及びKI-J
K細胞への結合についてのEC50値を示す。EC50値は、0.05~0.30μg/
mLの範囲であった。
【表7】
【0223】
図8、9、及び10は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-
FERRの、CD30発現HL細胞株(図8)、ALCL細胞株(図9)、及びNHL細
胞株(図10)への用量応答結合曲線を示す。全ての細胞株において、BsG1-huC
D3-FEALxCD30-MDX060-FERRは、一価対照抗体BsG1-b12
-FEALxCD30-MDX060-FERRと比較して同様の最大結合を示した。単
一特異性、二価CD30親抗体IgG1-CD30-MDX060-FERRは、全ての
細胞株への用量依存的結合を示したが、BsG1-huCD3-FEALxCD30-M
DX060-FERRと比較してより低い最大結合を示した。陰性対照抗体bsG1-h
uCD3-FEALxb12-FEAR、IgG1-huCD3-FEAL、及びIgG
1-b12-FEALは、これらの細胞株のいずれへの結合も示さず、これらの細胞が細
胞表面上でCD3を発現しないことを示した。これらのデータは、bsG1-huCD3
-FEALxCD30-MDX060-FERRの、HL細胞株、ALCL及びCTCL
細胞株などのT-NHL、並びにMCL細胞株などのB-NHLへの効率的な結合を確認
した。
【0224】
表7は、2つ又は3つの独立した実験において評価される、bsG1-huCD3-F
EALxCD30-MDX060-FERRの、HL、T-NHL、及びB-NHL細胞
株への結合についてのEC50値を示す。EC50値は、0.12~0.35μg/mL
の範囲であった。
【表8】
【0225】
実施例4-CD3×CD30二重特異性抗体によるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害
性及びT細胞増殖の誘導
CD3×CD30二重特異性抗体を、CD30陽性腫瘍細胞株を標的細胞として、T細
胞をエフェクター細胞として使用して、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した
。T細胞の供給源として、CD3陽性ADCCエフェクター細胞IV型(Clean C
ells、Montaigu、France)又は精製されたT細胞(実施例5に記載さ
れる)を使用して、CD3依存的腫瘍細胞殺滅を評価した。
【0226】
SU-DHL-1(ALCL)、HuT78(ALCL)、HDLM-2(HL)、N
CEB-1(MCL)、又はL540(HL)細胞を、10,000細胞/ウェルの密度
でポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、cat.n
o.650180)に播種した。エフェクター細胞を、0.5μMのCFSE(カルボキ
シフルオレセインスクシンイミジルエステル、Cell Signalling Tec
hnology、Danvers、MA、cat.no.C34554)で37℃で20
分間標識し、腫瘍細胞にE:T比=10:1(ADCCエフェクター細胞)又は7:1(
精製T細胞)で添加した。二重特異性CD3xCD30、b12xCD30、又はCD3
xb12抗体、又は単一特異性二価CD30抗体の段階希釈液を添加し(10~0.04
1μg/mLの範囲の最終濃度、3倍希釈液)、細胞を37℃で72時間インキュベート
した。いくつかの実験では、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060
-FEARのバリアントを、CD3についての親和性が低減した、H101G変異を含有
するCD3結合アームと使用した(WO2017/009442、Genmab)。10
0μLの染色緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を、TO-PRO-3ヨウ化物(Ther
mo Fisher Scientific、cat.no.T3605、1:4000
希釈)を含有する染色緩衝液に再懸濁し、FACSCelestaフローサイトメーター
(BD Biosciences、USA)で分析した。
【0227】
5μMのスタウロスポリン(Sigma-Aldrich、US、cat.no.S6
942)で処理された腫瘍細胞試料の生存率を0%に設定し、未処理の腫瘍細胞試料の生
存率を100%に設定した。
【0228】
「生存細胞パーセンテージ」を次のように計算した:
生存細胞%=([細胞数試料-細胞数スタウロスポリン処理標的細胞]/[細胞数未処理
標的細胞-細胞数スタウロスポリン処理標的細胞])×100。CFSE陽性細胞を、T
細胞増殖を評価するためのT細胞の絶対数の尺度として計数した。
【0229】
用量応答曲線を、GraphPad Prism V8ソフトウェア(GraphPa
d Software、San Diego、CA、USA)を使用して非線形回帰(可
変勾配でのシグモイド用量応答)によって分析した。
【0230】
結果
CD3×CD30二重特異性抗体は、CD30陽性腫瘍細胞株SU-DHL-1細胞又
はHDLM-2細胞を標的細胞として、ADCCエフェクター細胞IV型細胞(Clea
n Cells、Montaigu、France)をエフェクター細胞として使用して
、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。
【0231】
図3は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR(A)
、bsG1-huCD3-FEALxCD30-hAC10-FEAR(B)、bsG1
-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR(C)、BsG1-huCD
3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR(D)、bsG1-huCD3-FE
ALxCD30-T405-FEAR(E)、bsG1-huCD3-FEALxCD3
0-T105-FEAR(F)、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T408
-FEAR(G)、及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEA
R(H)が、SU-DHL-1(左パネル)又はHDLM-2(右パネル)細胞の用量依
存的T細胞媒介性細胞傷害性(生存細胞%の減少として示される)を誘導したことを示す
【0232】
単一特異性、二価CD30抗体IgG1-MDX060-FEAR(A)、IgG1-
CD30-hAC10-FEAR(B)、IgG1-CD30-HRS-3-FEAR(
C)、IgG1-CD30-HeFi-I-FEAR(D)、IgG1-CD30-T4
05-FEAR(E)、IgG1-CD30-T105-FEAR(F)、IgG1-C
D30-T408-FEAR(G)、及びIgG1-CD30-T215-FEAR(H
)は、T細胞媒介性細胞傷害性を誘導しなかった。対照抗体bsG1-huCD3-FE
ALxb12-FEARはまた、SU-DHL-1又はHDLM-2細胞のT細胞媒介性
細胞傷害性を誘導しなかった。
【0233】
加えて、CD3×CD30二重特異性抗体を、異なるMCL、ALCL、及びHL細胞
株を標的細胞として、並びに精製されたT細胞又はADCCエフェクター細胞IV型細胞
をエフェクター細胞として使用するインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて試験した。図
4A~Bは、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEARによ
って誘導されたSU-DHL-1、HuT78、又はNCEB-1細胞のT細胞媒介性細
胞傷害性が、低減した親和性を有するCD3結合アームを有するこの抗体のバリアント(
bsG1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX060-FEAR)と
比較してより強力であることを示す。HDLM-2細胞の同様の最大T細胞媒介性細胞傷
害性は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR及びbs
G1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX060-FEARによって
誘導された(図4B)。対照として含まれた、二価、単一特異性抗体IgG1-huCD
3-FEAL又はIgG1-b12-FEARとのインキュベーションは、これらの細胞
株において細胞傷害性を誘導しなかった。L540細胞の強力な同様のT細胞媒介性細胞
傷害性は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR及びb
sG1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX060-FEARによっ
て試験された最も低い濃度(0.014μg/mL、図4C)で誘導された。対照抗体b
sG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEAR又はIgG1-MDX0
60-FEARは、L540細胞のT細胞媒介性細胞傷害性を誘導しなかった。
【0234】
結論として、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEARは
、様々なCD30発現MCL、ALCL、及びHL腫瘍細胞株の強力な殺滅を誘導した。
CD3アームのVH CDR3の101位にHを含有するBsG1-huCD3-FEA
LxCD30-MDX060-FEARは、101位にGを含有するより低親和性のCD
3アームを有するバリアントと比較して、CD30発現MCL及びALCL腫瘍細胞を殺
滅することにおいてより強力である。
【0235】
標的細胞としてHDLM-2細胞(左パネル)又はNCEB-1細胞(右パネル)を使
用する細胞傷害性アッセイでは、CFSE陽性細胞の数を絶対T細胞数の尺度として評価
した。図4Dは、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR
又はbsG1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX060-FEAR
によって誘導されたHDLM-2及びNCEB-1細胞のT細胞媒介性細胞傷害性(図4
Bを参照されたい)が、T細胞数における用量依存的増加と関連していたことを示す。一
般的には、同様のT細胞数は、このアッセイにおいてbsG1-huCD3-FEALx
CD30-MDX060-FEAR又はbsG1-huCD3-H101G-FEALx
CD30-MDX060-FEARとのインキュベーション後に計数した。1μg/mL
よりも高い濃度でbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEAR
とインキュベートされたNCEB-1細胞との共培養物において、低減したT細胞数が観
察された。対照抗体IgG1-b12-FEALは、これらの実験においてT細胞数に影
響を及ぼさなかった。
【0236】
結論として、BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FEARは
、様々なCD30発現ALCL、HL及びMCL腫瘍細胞株の存在下で、T細胞増殖を誘
導した。
【0237】
実施例5-Expi293F細胞において発現されたヒト、カニクイザル、又はアカゲザ
ルCD30へのCD3xCD30二重特異性抗体の結合
ヒトCD30又はカニクイザルCD30で一過性トランスフェクトされたExpi29
3細胞の形質膜への二重特異性CD3xCD30抗体及び単一特異性、二価CD30抗体
の結合を、フローサイトメトリーによって分析した。
【0238】
HEK-293F又はHEK-293細胞におけるヒト、カニクイザル、又はアカゲザル
CD30の一過性発現
様々な全長CD30バリアントの発現のための以下のコドン最適化された構築物を生成
した:ヒト(Homo sapiens)CD30(huCD30、Uniprotアク
セッション番号P28908)、カニクイザル(Macaca fasciculari
s)CD30(mfCD30、Uniprotアクセッション番号A0A2K5VW07
)(配列番号40)、及びアカゲザル(Macaca mulatta)CD30(mm
CD30、Uniprotアクセッション番号A0A1D5RK03)(配列番号41)
。構築物は、クローニングに好適な制限部位及び最適なKozak(GCCGCCACC
)配列(Kozak,M.,Gene 1999;234(2):187-208)を含
有した。全長ヒトCD30、カニクイザル、及びアカゲザルCD30コドン最適化構築物
を、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.3(Invitrogen)においてクローニ
ングし、本質的に製造業者によって記載されるようにExpi293F発現プラットフォ
ーム(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、U
SA、cat.no.A14527)を使用して発現させた。実験の別のセットでは、全
長ヒトCD30又はカニクイザルCD30構築物をHEK-293細胞において発現させ
た。
【0239】
Expi293細胞において発現されたヒト、カニクイザル、又はアカゲザルCD30へ
のCD3×CD30二重特異性抗体の結合
細胞(3×10細胞/ウェル)をポリスチレン96ウェル丸底プレート(Grein
er bio-one、cat.no.650180)において、100μL染色緩衝液
中の抗体(3倍希釈ステップで0.005~10μg/mLの範囲)と4℃で30分間イ
ンキュベートした。実験は技術的重複で行った。染色緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を
、50μLの二次抗体中で4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、染色緩
衝液中で1:400で希釈されたR-PE複合化ヤギ-抗ヒトIgG(Jackson
ImmunoResearch、UK、cat.no.109-116-098)を使用
した。細胞を、染色緩衝液中で2回洗浄し、0.4%EDTAを含む30μLの染色緩衝
液に再懸濁し、iQue Screener(Intellicyt Corporat
ion、USA)で分析した。結合曲線を、GraphPad Prism V9.0.
0ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA、U
SA)を使用して非線形回帰(可変勾配でのシグモイド用量応答)を使用して分析した。
【0240】
HEK293細胞において発現されたヒト、カニクイザル、又はアカゲザルCD30への
CD3×CD30二重特異性抗体の結合
細胞(3×10細胞/ウェル)をポリスチレン96ウェル丸底プレート(Therm
o Scientific、cat.no.163320)において、50μL染色緩衝
液中の抗体(4倍希釈ステップで0.0002~50μg/mLの範囲)と4℃で30分
間インキュベートした。実験は技術的重複で行った。染色緩衝液中で2回洗浄した後、細
胞を、50μLの二次抗体中で4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、染
色緩衝液中で1:200で希釈されたR-PE複合化ヤギ-抗ヒトIgG(Jackso
n ImmunoResearch、UK、cat.no.109-116-098)を
使用した。細胞を、染色緩衝液中で2回洗浄し、1:10,000に希釈された0.4%
EDTA及びToPro-3生存性マーカー(Invitrogen、cat.no.T
3605)を含む30μLの染色緩衝液に再懸濁した。細胞を、iQue Screen
er(Intellicyt Corporation、USA)上で分析した。結合曲
線を、GraphPad Prism V9.0.0ソフトウェア(GraphPad
Software、San Diego、CA、USA)を使用して非線形回帰(可変勾
配でのシグモイド用量応答)を使用して分析した。
【0241】
ヒトT細胞又はカニクイザルPBMCへのCD3×CD30二重特異性抗体の結合
カニクイザルPBMC(Tebu-Bio、The Netherlands、cat
.no.PBMCMFA-10)又は精製されたヒトT細胞を、ポリスチレン96ウェル
丸底プレートに播種した。T細胞は、ヒトドナーバフィーコート(Sanquin、Am
sterdam、The Netherlands)に由来し、RosetteSepヒ
トT細胞濃縮カクテル(Stemcell Technologies、France、
cat.no.15061)を製造業者の指示に従って使用して単離した。細胞(3×1
細胞/ウェル)を、30分間4℃で50μLの染色緩衝液中の抗体IgG1-CD3
0-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX06
0-FEAR、及びbsG1-huCD3-FEALxb12-FEARの段階希釈(3
倍希釈ステップで0.0001~10μg/mLの範囲)とインキュベートした。染色緩
衝液で2回洗浄した後、細胞を30分間4℃で50μLの二次R-PE複合化ヤギ抗ヒト
IgG抗体中でインキュベートした(1:400希釈)。染色緩衝液中で2回洗浄した後
、T細胞を、T細胞マーカーCD3(1:100、Miltenyi biotec、ク
ローン10D12、APCに複合化)、CD4(1:50、eBioscience、ク
ローンOKT4、APC-Cy7に複合化)、CD8(1:100、Biolegend
、クローンRPA-T8、AF700に複合化)、並びにT細胞活性化マーカーCD69
(1:50、BD Biosciences、クローンAB2439、FITCに複合化
)、CD25(1:50、eBioscience、クローンBC96、PE-Cy7に
複合化)、及びCD279/PD1(1:50、BD Biosciences、クロー
ンAEH12.2H7、BV605に複合化)について染色した。Ultracompビ
ーズ(5μL、Invitrogen、cat.no.01-2222-42)での単一
染色試料を、フローサイトメーターの補正調整に使用した。4℃での30分のインキュベ
ーション後、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、100μLの染色緩衝液中に再懸濁し、F
ACS Fortessa(BD Biosciences)を使用して分析した。Fl
owJo(BD Biosciences)を使用してデータを処理した。
【0242】
結果
CD30標的化二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX0
60-FEAR、bsG1-huCD3-H101G-FEALxCD30-MDX06
0-FEAR、及びbsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FEARは
、野生型Expi293F細胞(図5A)への結合を示さなかったが、huCD30(図
5B)又はmfCD30(図5C)でトランスフェクトされたExpi293F細胞への
用量依存的結合を示した。これらの二重特異性抗体の結合は、単一特異性、二価CD30
抗体IgG1-CD30-MDX060-FEARの結合と同等であった。予想どおり、
陰性対照抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FEARは、野生型又はhuC
D30若しくはmfCD30トランスフェクトされたExpi293F細胞への結合を示
さなかった。同様に、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FE
RRは、huCD30(図11A)又はmfCD30(図11B)でトランスフェクトさ
れたHEK293細胞への用量依存的結合を示し、陰性対照抗体bsG1-huCD3-
FEALxb12-FERRは、huCD30-又はmfCD30-トランスフェクトさ
れたHEK293細胞への結合を示さなかった。これは、CD30標的化抗体MDX06
0が、HEK細胞において発現されるヒト及びカニクイザルCD30の両方に、二価及び
一価フォーマットで効率的に結合することを示す。
【0243】
図5Dは、CD3xCD30二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxCD3
0-MDX060-FEAR及び対照二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALx
b12-FEARが、初代ヒト及びカニクイザルT細胞に効率的に結合したことを示す。
これは、これらのCD3標的化二重特異性抗体が、T細胞上で内因的に発現されるヒト及
びカニクイザルCD3の両方に効率的に結合することを示す。IgG1-CD30-MD
X060二価、親抗体は、ヒト又はカニクイザルT細胞に結合せず、CD30がこれらの
細胞上で発現されなかったことを示した。
【0244】
CD3×CD30二重特異性抗体及び単一特異性親CD30抗体のパネルの、huCD
30又はmmCD30でトランスフェクトされたExpi293F細胞への結合を、フロ
ーサイトメトリーによって評価した。CD3xCD30二重特異性抗体bsG1-huC
D3-FEALxCD30-MDX060-FEAR(図6A)、bsG1-huCD3
-FEALxCD30-hAC10-FEAR(図6B)、bsG1-huCD3-FE
ALxCD30-HRS-3-FEAR(図6C)、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-T405-FEAR(図6E)、bsG1-huCD3-FEALxCD30
-T105-FEAR(図6F)、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T40
8-FEAR(図6G)、及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-T215-
FEAR(図6H)は、huCD30又はmmCD30を発現する細胞への等しい結合を
示した。同様に、親、単一特異性CD30抗体クローンは、huCD30又はmmCD3
0を発現する細胞に等しい結合を示した。対照的に、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-HeFi-I-FEAR及び親、単一特異性CD30抗体IgG1-CD30
-HeFi-I_FEARは、huCD30への結合を示したが、mmCD30への結合
は示さなかった(図6D)。
【0245】
実施例6-DSF分析による単一特異性及び二重特異性非活性化抗体バリアントの立体構
造安定性の評価
定常重鎖領域に非活性化変異を保有する二価単一特異性CD30、CD3、及び二重特
異性CD3xCD30 IgG1抗体バリアントのタンパク質安定性特徴を、示差走査蛍
光定量法(DSF)を使用して評価した。
【0246】
IgG1-CD30-MDX060-FEAR、IgG1-CD30-MDX060-
FERR、IgG1-huCD3-FEAL、及びBsG1-huCD3-FEALxC
D30-MDX060-FERRの試料を、約1mg/mLの濃度でPBS pH7.4
で製剤化した。
【0247】
立体構造安定性を評価するために、DSFを、IgGの展開時に露出した疎水性領域へ
の外因性染料Sypro-Orange(DMSO中の5000倍濃縮物、Cat #
S5692、Sigma-Aldrich)の結合によって引き起こされる蛍光強度の変
化を検出することができるiQ5多色リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad
)において行った。Sypro-Orangeを、pH7.4のPBS(Hyclone
GE Healthcare)中で320倍に希釈した。熱融解曲線は、分析されたI
gGの制御された段階的な熱変性の間に増加する蛍光を測定することから導出することが
できる。したがって、5μLの抗体溶液(PBS中1mg/mL)の重複試料を、iQ
96ウェルPCRプレートにおいてpH7.4のPBS中の20μLの希釈されたSyp
ro-Orangeに添加した。蛍光は、増分当たり0.5℃の段階的増分及び15秒の
持続時間と全てのウェルの蛍光を記録するのに必要な時間で、25℃~95℃の範囲の増
加する温度で記録した。データを、Bio-Rad CFX Manager Soft
ware 3.0を使用して分析し、融点を、ソフトウェアによって蛍光対温度グラフか
ら決定した。
【0248】
結果
図7及び表8は、IgG1-CD30-MDX060-FERRの融解温度(T)が
69.0℃であることを示し、これは、pH7.4(64.5℃)でのIgG1-CD3
0-MDX060-FEARのTよりも高い。これは、IgG1-CD30-MDX0
60-FERRが、IgG1-CD30-MDX060-FEARよりも高い立体構造安
定性を有することを示し、FERバックボーンを含むIgG1-CD30-MDX060
が、FEAバックボーンを含むIgG1-CD30-MDX060よりも高い立体構造安
定性を有することを示す。BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-
FERRの融解温度は、64.5℃であることが決定され、これは、2つの親抗体IgG
1-huCD3-FEAL(62.5℃)及びIgG1-CD30-MDX060-FE
RR(69.0℃)について決定されたTの間である。
【表9】
【0249】
実施例7-bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのT細
胞及び腫瘍細胞への同時結合
bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの腫瘍細胞及び
ナイーブT細胞への同時結合を研究した。
【0250】
健常ドナーから単離された凍結T細胞を解凍し、0.25mMのCelltrace
Violet(Pacific Blue、Invitrogen、cat no.C3
4557A)で37℃で15分間標識した。L-428腫瘍細胞を、Celltrace
FarRed(APC、Invitrogen cat no.C34564A)で3
7℃で15分間標識し、T細胞に1:1のE:T比で添加した。bsG1-huCD3-
FEALxCD30-MDX060-FERR又は対照抗体bsG1-huCD3-FE
ALxb12-FEAR、bsG1b12FEALxCD30MDX060-FERR、
若しくはIgG1-b12-FEALの段階希釈液を添加し(6x10-5~10μg/
mLの範囲の最終濃度、3倍希釈液)、細胞を4℃で2時間インキュベートした。インキ
ュベーション後、生存性マーカー7-AAD(BD Bioscience、cat.n
o 559925)を添加し(100倍最終希釈液)、細胞をFACS Celesta
フローサイトメーター(BD Biosciences)上で分析した。
【0251】
結果
図12は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが、
腫瘍細胞のT細胞へのbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FE
RR媒介性架橋(同時結合)の尺度としてCD3CD30二重陽性事象(フローサイ
トメトリー染色においてCellTrace Far Red及びCellTrace
Violetの両方を発現する細胞)の形成を誘導することを示す。二重陽性事象の増加
は、抗体濃度依存的であり、ベル形状の曲線を示した。対照抗体bsG1-huCD3-
FEALxb12-FEAR、bsG1b12FEALxCD30MDX060-FER
R、若しくはIgG1-b12-FEALとインキュベートされた試料、又は抗体なしで
インキュベートされた試料において、腫瘍細胞及びT細胞の架橋の増加は観察されなかっ
た(A)。図12Bは、CellTrace Far Red及びCellTrace
Violetの両方を発現する細胞のパーセンテージによって検出される、腫瘍細胞及び
ナイーブT細胞へのbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FER
Rの同時結合を示す(B)。
【0252】
これらのデータは、bsGlhuCD3FEALxCD30-MDX060-FERR
が、CD30腫瘍細胞及びCD3T細胞を同時に結合及び架橋することができること
を示す。
【0253】
実施例8-CD3×CD30二重特異性抗体によるインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害
性及びT細胞活性化の誘導
CD3×CD30二重特異性抗体のパネルによるKarpas-299腫瘍細胞のT細
胞媒介性細胞傷害性及び関連するT細胞活性化を評価した。以下の抗体を評価した:bs
G1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、bsG1-huCD
3-FEALxCD30-MDX060-FEAR、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-hAC10-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS
-3-FEAR、bsG1-huCD3-FEALx CD30-HeFi-I-FEA
R、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T105-FEAR、bsG1-hu
CD3-FEALxCD30-T405-FEAR、bsG1-huCD3-FEALx
CD30-T408-FEAR、及びbsG1-huCD3-FEALx CD30-
T215-FEAR。
【0254】
T細胞は、健常なヒトドナーバフィーコート(Sanquin、Amsterdam、
The Netherlands)から得られ、RosetteSep(商標)ヒトT細
胞濃縮カクテル(Stemcell Technologies、France、cat
.no.15061)を製造業者の指示に従って使用して単離した。T細胞を、Cell
trace Violet(Invitrogen、cat.no.C34557A、最
終濃度5μM)で15分間37℃で標識した。並行して、Karpas-299腫瘍細胞
を、Celltrace FarRed(Invitrogen、cat.no.C34
564A、最終濃度2μM)で15分間37℃で標識した。標識後、5倍の体積の氷冷D
BSIを添加し、RTで5分間インキュベートした。細胞をペレット化し、培地に再懸濁
し、腫瘍細胞を50,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Greiner
-bio-one、The Netherlands、cat.no.655180)に
播種した。二重特異性CD3xCD30抗体の段階希釈液(1,000~0.051ng
/mLの範囲の最終濃度、3倍希釈液)を添加し、プレートを室温で15分間インキュベ
ートした。T細胞を、4:1のエフェクター対標的(E:T)比で腫瘍細胞に添加し、プ
レートを72時間37℃でインキュベートした。PBS/0.1%BSA/0.02%ア
ジド(染色緩衝液)で2回洗浄した後、細胞を、T細胞マーカーCD4(1:50、Bi
olegend、cat.no.300521、Pacific Blueに複合化)、
CD8(1:100、BD Biosciences、FITCに複合化)、及びT細胞
活性化マーカーCD69(1:50、Biolegend、cat.no.310934
、BV650に複合化)、CD25(1:100、Invitrogen、cat.no
.25-0259-42、PE-Cy7に複合化)、及びCD279/PD-1(1:5
0、Biolegend、cat.no.329930、BV605に複合化)について
染色した。Ultracompビーズ(5μL、Invitrogen、cat.no.
01-2222-42)での単一染色試料を含め、フローサイトメーターの補正調整に使
用した。4℃での30分のインキュベーション後、プレートを染色緩衝液で2回洗浄し、
細胞を7-AAD(染色緩衝液中で1:100に希釈)で4℃で10分間染色した。FA
CS Celesta(BD Biosciences)を使用して細胞を分析した。F
lowJo(BD Biosciences)を使用してデータを処理した。
【0255】
用量応答曲線を、GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(Grap
hPad Software、San Diego、CA、USA)を使用した非線形回
帰分析(可変勾配でのシグモイド用量応答)を使用して生成した。
【0256】
結果
図13A及びBは、全てのCD3×CD30抗体が、Karpas-299細胞のT細
胞媒介性細胞傷害性を誘導することを示す。CD30クローンMDX060(bsG1-
huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR及びbsG1-huCD3-
FEALxCD30-MDX060-FEAR)を使用して生成されたCD3xCD30
二重特異性抗体は、試験された全ての他のクローンと比較して、Karpas-299細
胞を殺滅することにおいてより効果的であった。実際には、MDX060ベースのCD3
xCD30二重特異性抗体は、CD30クローンHRS-3、HeFi-I、T105、
T405、T408、又はT215を使用して生成されたCD3xCD30二重特異性抗
体(bsG1-huCD3-FEALxCD30-HRS-3-FEAR、bsG1-h
uCD3-FEALxCD30-HeFi-I-FEAR、bsG1-huCD3-FE
ALxCD30-T105-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T
405-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR、
及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR、図13A)より
も有意に低いIC50値を示した。更に、bsG1-huCD3-FEALxCD30-
MDX060-FERR及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060
-FEARは、CD30クローンhAC10、HeFi-I、T405、T408、又は
T215を使用して生成されたCD3xCD30二重特異性抗体(bsG1-huCD3
-FEALxCD30-hAC10-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD
30-HeFi-I-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T405
-FEAR、bsG1-huCD3-FEALxCD30-T408-FEAR、及びb
sG1-huCD3-FEALxCD30-T215-FEAR、図13B)と比較して
より高い最大殺滅を誘導した。図13C及びDは、bsG1-huCD3-FEALxC
D30-MDX060-FERR及びbsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FEARが、CD4T細胞(図13C)又はCD8T細胞(図13D)に
おけるT細胞活性化の尺度として、CD25の発現を誘導することに、他のCD3xCD
30二重特異性抗体のいずれかよりも有効(低いEC50値)であることを示す。PD-
1(図13E及びF)及びCD69(データ図示せず)の発現について同様の結果が観察
された。FEAR又はFERR変異を含む2つのMDX060ベースのCD3×CD30
二重特異性抗体間で、T細胞媒介性殺滅又はT細胞活性化における差は観察されなかった
【0257】
二重特異性抗体bsG1-huCD3xCD30-MX060はまた、試験された他の
パネルCD3xCD30二重特異性抗体と比較して、L-428細胞のT細胞媒介性細胞
傷害性を誘導することにより有効であった(データ図示せず)。
【0258】
これらの実験において使用されたCD3×CD30二重特異性抗体のパネルによって誘
導されたT細胞媒介性細胞傷害性の平均IC50濃度及び最大溶解パーセント、並びにT
細胞活性化(CD25発現)のEC50濃度を表9に要約する。
【0259】
結論として、これらのデータは、bsG1huCD3×CD30-MDX060が、T
細胞媒介性細胞傷害性を誘導することに評価された他のCD3×CD30二重特異性抗体
のいずれかよりも有効であったことを実証した。
【表10】
実施例9-bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる
インビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性、T細胞増殖、及びT細胞活性化の誘導
腫瘍細胞のT細胞媒介性細胞傷害性並びにbsG1-huCD3-FEALxCD30
-MDX060-FERRによる関連するT細胞増殖及び活性化を、HL及びALCL細
胞株において評価した。T細胞は、健常なヒトドナーバフィーコート(Sanquin、
Amsterdam、The Netherlands)から得られ、RosetteS
ep(商標)ヒトT細胞濃縮カクテル(Stemcell Technologies、
France、cat.no.15061)を製造業者の指示に従って使用して単離した
。T細胞を、Celltrace Violet(Invitrogen、cat.no
.C34557A、最終濃度5μM)で15分間37℃で標識した。並行して、腫瘍細胞
L-428、KI-JK、KM-H2、又はSUP-M2を、Celltrace Fa
rRed(Invitrogen、cat.no.C34564A、最終濃度2μM)で
15分間37℃で標識した。標識後、5倍の体積の氷冷DBSIを添加し、RTで5分間
インキュベートした。細胞をペレット化し、培地に再懸濁し、腫瘍細胞を50,000細
胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Greiner-bio-one、The N
etherlands、cat.no.655180)に播種した。bsG1-huCD
3-FEALxCD30-MDX060-FERR又は対照抗体IgG1-huCD3-
FEAL、bsG1-huCD3-FEALxb12-FERR、IgG1-CD30-
MDX060-FERR、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FE
RR、IgG1-b12-FEALの段階希釈液を添加し(1,000~0.051ng
/mLの範囲の最終濃度、3倍希釈液)、プレートをRTで15分間インキュベートした
。T細胞を、4:1のエフェクター対標的(E:T)比で腫瘍細胞に添加し、プレートを
72時間37℃でインキュベートした。PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(染
色緩衝液)で2回洗浄した後、細胞を、T細胞マーカーCD4(1:50、Bioleg
end、cat.no.300521、Pacific Blueに複合化)、CD8(
1:100、BD Biosciences、cat.no.345772、FITCに
複合化)、及びT細胞活性化マーカーCD69(1:50、Biolegend、cat
.no.310934、BV650に複合化)、CD25(1:100、Invitro
gen、cat.no.25-0259-42、PE-Cy7に複合化)、及びCD27
9/PD-1(1:50、Biolegend、cat.no.329930、BV60
5に複合化)について染色した。Ultracompビーズ(5μL、Invitrog
en、cat.no.01-2222-42)での単一染色試料を含め、フローサイトメ
ーターの補正調整に使用した。4℃での30分のインキュベーション後、プレートを染色
緩衝液で2回洗浄し、細胞を7-AAD(染色緩衝液中で1:100に希釈)で4℃で1
0分間染色した。FACS Celesta(BD Biosciences)を使用し
て細胞を分析し、FlowJo(BD Biosciences)を使用してデータを処
理した。
【0260】
生きた標的細胞のパーセンテージを、以下の式を使用して計算した:-生きた標的細胞
%=(各条件における生きた、単一Celltrace FarRed標識細胞の絶対数
/いずれの抗体も加えることなく標的細胞及びT細胞のみを含む条件における生きた、単
一Celltrace FarRed標識細胞の絶対数)×100。
【0261】
T細胞増殖を、CD4又はCD8 T細胞を希釈されたCelltrace Vi
olet染色でゲーティングすることによって評価した。増殖指数を、FlowJoの増
殖モデリングツールを使用して計算した。生成ピークを自動的に適合させ、増殖指数値を
以下の式に従って計算した:
【0262】
増殖指数=細胞の総量/培養の開始時の細胞の量=(G0+G1+G2+G3+G4+
G5+G6)/(G0+G1:2+G2:4+G3:8+G4:16+G5:32+G6
:64)。Gn=生成nピークにおける細胞数(n=0~6)。
【0263】
用量応答曲線を、GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(Grap
hPad Software、San Diego、CA、USA)を使用した非線形回
帰分析(可変勾配でのシグモイド用量応答)を使用して生成した。
【0264】
結果
図14は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが、
インビトロでL-428(HL)、KM-H2(HL)、SUP-M2(ALCL)、及
びKI-JK(ALCL)細胞株において用量依存的T細胞媒介性細胞傷害性を誘導した
ことを示す。L-428及びKI-JK細胞におけるbsG1-huCD3-FEALx
CD30-MDX060-FERRによって誘導されるT細胞媒介性細胞傷害性の平均I
C50濃度を表10に要約する。対照抗体IgG1-huCD3-FEAL、bsG1-
huCD3-FEALxb12-FERR、IgG1-CD30-MDX060-FER
R、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR、IgG1-b1
2-FEALとインキュベートされた細胞において、又は抗体なしでインキュベートされ
た試料において、細胞傷害性は観察されなかった。
【0265】
図15、16、17、及び18は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FERRによって誘導されたL-428及びKI-JK細胞のT細胞媒介性細
胞傷害性が、CD4及びCD8 T細胞増殖(図15)並びにT細胞活性化マーカー
CD69(図16)、CD25(図17)、及びPD-1(図18)の発現と関連してい
たことを示す。これらの実験におけるbsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FERRによって誘導されるT細胞増殖及び活性化の平均EC50濃度を表1
0に要約する。
【0266】
したがって、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRは
、インビトロでHL及びALCL細胞株における用量依存的T細胞媒介性細胞傷害を誘導
し、これは、T細胞増殖及び活性化と関連していた。
【0267】
【表11】
【0268】
実施例10-bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによ
るインビトロでのサイトカイン産生の誘導
bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによって誘導さ
れるサイトカイン及びグランザイムB産生は、実施例9に記載されるように、L-428
標的細胞及び健常なドナーT細胞を用いたインビトロT細胞媒介性細胞傷害性実験中に収
集された上清において評価した。上清は、-20℃で保存し、分析のために解凍した。1
4の異なるサイトカイン(CD40、IFNγ、IL-10、IL-12、IL-13、
IL-1b、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、PD
L-1、TNFα)及びグランザイムBの濃度を、R&Dシステムによってカスタムメイ
ドのビーズベースの多重免疫アッセイ(luminex)を使用して測定した。
【0269】
結果
増加した濃度は、主にbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-F
ERRの存在下でのL-428細胞及びT細胞の共培養物からの上清中のグランザイムB
並びにサイトカインIFNγ、IL-13、及びTNFα(>2000pg/mL)につ
いて観察された。対照抗体IgG1-b12-FEALと比較されるとき、CD40、I
L-10、IL-12、IL-1β、IL-2、IL-4、IL6、及びIP-10サイ
トカイン濃度について中程度の増加が観察された。IL-8、MCP-1、及びPDL1
のレベルは、対照抗体IgG1-b12-FEALと比較して調節されなかった(図19
)。
【0270】
よって、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる
T細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞活性化は、サイトカイン及びグランザイムBの用量依
存的産生と関連していた。
【0271】
実施例11-変動するエフェクター対標的比で精製されたT細胞をエフェクター細胞とし
て使用したbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによる
インビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性の誘導
二重特異性抗体bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR
の存在下でのT細胞媒介性腫瘍細胞殺滅の最適なエフェクター対標的細胞比を決定するた
めに、インビトロ細胞傷害性アッセイを、CD30陽性腫瘍細胞株L-428を標的細胞
として、精製されたT細胞をエフェクター細胞として変動するエフェクター対標的細胞(
E:T)比で使用して行った。
【0272】
T細胞媒介性細胞傷害性を、T細胞が1:1、2:1、4:1、又は8:1の変動する
エフェクター対標的(E:T)細胞比で腫瘍細胞に添加されたことを除いて、本質的に実
施例9に記載されるように評価した。
【0273】
結果
図20Aは、用量依存的T細胞媒介性細胞傷害性が、bsG1-huCD3-FEAL
xCD30-MDX060-FERRによって全てのE:T比で誘導され、最大の腫瘍細
胞殺滅(20%未満の生存腫瘍細胞)が4:1及び8:1のE:T比で観察されたことを
示す。これに沿って、CD4及びCD8 T細胞増殖は、全てのE:T細胞比で、最
も顕著には4:1及び8:1のE:T比で観察された(図20B-C)。試験されたE:
T比のいずれでも、対照抗体bsG1-huCD3-FEALxb12-FERRによっ
て特異的なT細胞媒介性細胞傷害性又はT細胞増殖は誘導されなかった。
【0274】
併せると、これらのデータは、インビトロでのL-428腫瘍細胞のbsG1-huC
D3-FEALxCD30-MDX060-FERR誘導性T細胞媒介性細胞傷害性が、
4:1及び8:1のE:T比で最も効果的であったことを示す。
【0275】
実施例12-bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによ
るインビトロでのT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖の動態
bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの存在下でのT
細胞媒介性腫瘍細胞殺滅の動態を評価するために、CD30陽性腫瘍細胞株L-428を
標的細胞として精製されたT細胞をエフェクター細胞として使用して、変動するインキュ
ベーション期間でインビトロ細胞傷害性アッセイを実施した。
【0276】
T細胞媒介性細胞傷害性は、腫瘍細胞細胞傷害性及びT細胞増殖が24時間、48時間
及び72時間後に評価されたことを除いて、本質的に実施例9に記載されるように評価し
た。
【0277】
結果
図21は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが、
48時間及び72時間後に用量依存的T細胞媒介性細胞傷害性を誘導したが、24時間後
に有意なT細胞媒介性細胞傷害性は観察されなかったことを示す。用量依存的CD4
びCD8 T細胞増殖は、72時間後にbsG1-huCD3-FEALxCD30-
MDX060-FERRによって誘導されたが、24時間又は48時間後にT細胞増殖は
観察されなかった(図21B及びC)。
【0278】
併せると、これらのデータは、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX0
60-FERRが時間依存的な方法で腫瘍細胞のT細胞媒介性細胞傷害性及びT細胞増殖
を誘導したことを示す。
【0279】
実施例13-インビトロでのbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060
-FERR誘導性T細胞媒介性細胞傷害性とのCD30発現レベルの相関
8つのCD30発現腫瘍細胞株のbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERRによるT細胞媒介性殺滅を、実施例9に記載されるインビトロ細胞傷害
性アッセイにおいて、4:1のE:T比を使用して決定した。以下の細胞株を使用した:
L-428、KM-H2、DEL、KI-JK、KARPAS-299、SUP-M2、
NCEB-1及びJVM-2。これらの腫瘍細胞株について、CD30発現レベルを、実
施例2で詳述される定量的フローサイトメトリーによって評価した。
【0280】
結果
図22は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが、
68%~98%の最大標的細胞殺滅でインビトロで全ての細胞株においてT細胞媒介性細
胞傷害性を誘導したことを示す。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX0
60-FERRによる最大T細胞媒介性腫瘍細胞殺滅は、CD30発現のレベルと有意に
相関していた(図22A)。
【0281】
図22Bでは、各細胞株についてbsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERRの存在下でのT細胞媒介性殺滅のEC50を、CD30発現レベルに対
してプロットし、陰性であるが有意ではない傾向を示す。
【0282】
よって、これらのデータは、インビトロでのCD30発現レベルとbsG1-huCD
3-FEALxCD30-MDX060-FERR誘導性最大T細胞媒介性細胞傷害性と
の間の正の相関を示す。
【0283】
実施例14-BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによ
る活性化されたT細胞のフラトリサイド
活性化されたCD30T細胞のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERR誘導性T細胞フラトリサイドをインビトロで評価した。
【0284】
96ウェルプレート(Greiner-bio-one、The Netherlan
ds、cat.no.655180)を、100μLのPBS中1μg/mL抗ヒトCD
3(クローンOKT3、Invitrogen、cat.no.16-0037-85)
の溶液でコーティングした。プレートを37℃で4時間インキュベートした。抗体溶液を
除去した後、100μLのPBSでウェルを洗浄した。T細胞は、健常なヒトドナーバフ
ィーコート(Sanquin、Amsterdam、The Netherlands)
から得られ、RosetteSep(商標)ヒトT細胞濃縮カクテル(Stemcell
Technologies、France、cat.no.15061)を製造業者の
指示に従って使用して単離した。精製されたT細胞を、10%の鉄を含む熱不活性化ドナ
ーウシ血清(DBSI、Gibco、cat.no.20731-030)及びペニシリ
ン/ストレプトマイシン(pen/strep、Lonza、cat.no.DE17-
603E)で補足された、T細胞培地(25mMのHEPES及びL-グルタミン(Lo
nza、cat.no.BE12-115F)を含むRoswell Park Mem
orial Institute[RPMI]-1640培地)に2×10細胞/mL
の濃度で再懸濁し、100μLのT細胞懸濁液(200,000個のT細胞を含有する)
を、抗CD3コーティングされたプレートの各ウェルに添加した。更に、2μg/mLの
抗CD28(クローンCD28.2、Invitrogen、cat.no.16-02
89-85)及び0.05μg/mLのIL-15(ThermoFisher、cat
.no.PHC9151)で補足された100μLのT細胞培養培地を各ウェルに添加し
た。次いで、T細胞を37℃で96時間インキュベートした。
【0285】
96時間後、T細胞を収集し、2×10細胞/mLの濃度でT細胞培地に再懸濁させ
た。フローサイトメトリー分析を行って、CD30及びT細胞活性化マーカーの発現を測
定した。簡潔には、細胞のアリコートをPBS/0.1%BSA/0.02%アジド(染
色緩衝液)で洗浄し、50μLの1000倍希釈FVS510生存性色素(BD Bio
sciences、cat.no.564406)で染色し、15分間室温でインキュベ
ートした。次いで、細胞を染色緩衝液で洗浄し、CD30(1:50、Biolegen
d、cat.no.333906、PEに複合化)、T細胞マーカーCD4(1:50、
Biolegend、cat.no.300506、FITCに複合化)、CD8(1:
100、Biolegend、cat.no.301028、AF700に複合化)、及
びT細胞活性化マーカーCD69(1:50、Biolegend、cat.no.31
0910、APCに複合化)、CD25(1:100、Invitrogen、cat.
no.25-0259-42、PE-Cy7に複合化)、及びCD279/PD1(1:
50、Biolegend、cat.no.329924、BV605に複合化)につい
て染色した。Ultracompビーズ(5μL、Invitrogen、cat.no
.01-2222-42)での単一染色試料を含め、フローサイトメーターの補正調整に
使用した。4℃で30分のインキュベーション後、プレートを染色緩衝液で2回洗浄した
。FACS Celesta(BD Biosciences)を用いて細胞を分析し、
FlowJo(BD Biosciences)を用いてデータを処理した。
【0286】
BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが活性化された
T細胞のフラトリサイドを誘導することができるかを評価するために、刺激されたT細胞
を、200,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。その後、50
μLのBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、又は、対
照抗体、すなわち、bsG1-b12-FEALxCD30-MDX060-FERR、
bsG1-huCD3-FEALxb12-MDX060-FERR、若しくはIgG1
-b12を、各ウェルに添加した(T細胞培地中での3倍希釈ステップにおける0.00
3~3.3μg/mLの範囲の最終濃度)。プレートを37℃で48時間インキュベート
した。
【0287】
染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、FVS510生存性染料で染色し、結果として
T細胞マーカーCD4及びCD8、並びにT細胞活性化マーカーCD69、CD25、及
びCD279/PD1について染色した。FACS Celesta(BD Biosc
iences)を使用してフローサイトメトリー分析を行い、FlowJo(BD Bi
osciences)を使用してデータを処理した。
【0288】
用量応答曲線を、GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(Grap
hPad Software、San Diego、CA、USA)を使用して生成した
【0289】
結果
図23は、細胞マーカーCD25(T細胞活性化)(A)及びCD30(B)が、イン
キュベーションの72時間後にそれぞれ54~63%及び21~27%のT細胞において
発現したことを示す。CD25及びCD30の発現は、96時間のインキュベーション後
に更に誘導された(CD25:80~83%及びCD30:27~33%)。図23C
、BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR、bsG1-b
12-FEALxCD30-MDX060-FERR、bsG1-huCD3-FEAL
xb12-MDX060-FERR、又はIgG1-b12の増加する用量が、活性化さ
れたT細胞の低減した生存率と関連していなかったことを示す。
【0290】
したがって、活性化されたT細胞の亜集団上でのCD30発現は、BsG1-huCD
3-FEALxCD30-MDX060-FERRとのインキュベーション時にT細胞の
フラトリサイドをもたらさなかった。
【0291】
実施例15-BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの抗
腫瘍活性でのsCD30の干渉
細胞表面CD30の脱落及び可溶性CD30(sCD30)の生成を、17の異なる血
液学的CD30腫瘍細胞株において評価した。
【0292】
新鮮な培地中に細胞を播種してから3日後に細胞培養物から収集された25μLの未希
釈上清中のsCD30の濃度を、「ヒトsCD30 ELISAキット」(Invitr
ogen、cat.no.BMS240)を製造業者の指示に従って使用して、ヒトCD
30の定量的検出のためのELISAアッセイによって測定した。
【0293】
結果
図24Aは、細胞培養上清中のsCD30の濃度を示す。示されるように、変動する濃
度のsCD30が異なる細胞株由来の細胞培養上清中で検出された。図24Bは、細胞培
養上清中のsCD30の濃度が実施例2に前述された定量的フローサイトメトリー(ヒト
IgGキャリブレーターキット、Biocytex、cat no.CP010)によっ
て測定される場合、CD30膜発現レベルと有意に相関したことを示す。
【0294】
sCD30が強力なBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FE
RR誘導性T細胞媒介性細胞傷害性をブロックすることができるかを評価するために、B
sG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRによるT細胞媒介性
細胞傷害性を、DEL腫瘍細胞(ALCL)において評価し、これは上清(129ng/
mL)において高レベルのsCD30を示した。T細胞媒介性細胞傷害性アッセイを、前
述のように行った(実施例8)。図24Cは、BsG1-huCD3-FEALxCD3
0-MDX060-FERRがこの細胞株において強力なT細胞媒介性細胞傷害性を誘導
したことを示し、86%の最大腫瘍細胞殺滅は、BsG1-huCD3-FEALxCD
30-MDX060-FERRが、sCD30の存在下でインビトロで強力なT細胞媒介
性細胞傷害性を依然として誘導することができたことを示す。
【0295】
よって、sCD30濃度は、細胞型間で変動し、細胞表面上のCD30発現のレベルと
相関した。更に、BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR
は、sCD30の存在下でインビトロでの強力なT細胞媒介性細胞傷害性を依然として誘
導することができた。
【0296】
実施例16-患者由来の末梢血単核T細胞をエフェクター細胞として使用したbsG1-
huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRのエクスビボ細胞傷害性
CD3×CD30二重特異性抗体を、CD30陽性腫瘍細胞株を標的細胞として、初代
患者由来T細胞をエフェクター細胞として使用してエクスビボ細胞傷害性アッセイにおい
て試験した。T細胞の供給源として、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(
NHL)、及び急性骨髄性白血病(AML)患者由来の末梢血単核細胞(PBMC、Di
scovery Life Sciences、表11)を使用して、CD3依存的腫瘍
細胞殺滅を評価した。
【0297】
L-428腫瘍細胞を、Celltrace FarRed(Invitrogen、
cat.no.C34564A、最終濃度2μM)で15分間37℃で標識した。標識後
、5倍の体積の氷冷DBSIを室温で5分間インキュベートした。細胞をペレット化し、
培地に再懸濁し、腫瘍細胞を50,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(G
reiner-bio-one、The Netherlands、cat.no.65
5180)に播種した。bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-F
ERR及び対照抗体IgG1-b12-FEALの段階希釈液(1,000~0.051
ng/mLの範囲の最終濃度、3倍希釈液)を添加し、プレートを室温で15分間インキ
ュベートした。PBMCを解凍し、計数し、培地(RPMI1640/10%FBS/1
%ペニシリン-ストレプトマイシン/1%グルタミン酸塩)に再懸濁した後、8:1のエ
フェクター対標的(E:T)比で腫瘍細胞に添加し、プレートを37℃で72時間インキ
ュベートした。PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(染色緩衝液)で2回洗浄し
た後、細胞を染色して、CD3(T細胞、Invitrogen、cat.48-003
7)、CD14(単球/マクロファージ、Biolegend、cat.301834)
、CD19(B細胞、Biolegend、cat.302246)、CD16(単球/
マクロファージ、BD Biosciences、cat.no.556618)、CD
56(NK細胞、BD Biosciences、cat.no.564849)、及び
CD66b(顆粒球、Biolegend、cat.no.305116)を使用した異
なる細胞集団を区別した。細胞を、T細胞マーカーCD4(1:50、Biolegen
d、cat.no.300521、Pacific Blueに複合化)、CD8(1:
100、BD Biosciences、cat.no.345772、FITCに複合
化)、及びT細胞活性化マーカーCD69(1:50、Biolegend、cat.n
o.310934、BV650に複合化)、CD25(1:100、Invitroge
n、cat.no.25-0259-42、PE-Cy7に複合化)、及びCD279/
PD1(1:50、Biolegend、cat.no.329930、BV605に複
合化)について更に染色した。Ultracompビーズ(5μL、Invitroge
n、cat.no.01-2222-42)での単一染色試料を含め、フローサイトメー
ターの補正調整に使用した。4℃での30分のインキュベーション後、プレートを染色緩
衝液で2回洗浄し、細胞を7-AAD(染色緩衝液中で1:100に希釈)で4℃で10
分間染色した。FACS Celesta(BD Biosciences)を使用して
細胞を分析し、FlowJo(BD Biosciences)を使用してデータを処理
した。用量応答曲線を、GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(Gr
aphPad Software、San Diego、CA、USA)を使用した非線
形回帰分析(可変勾配でのシグモイド用量応答)を使用して生成した。
【0298】
生きた標的細胞のパーセンテージを、以下の式を使用して計算した:-生きた標的細胞
%=(各条件における生きた、単一Celltrace FarRed標識細胞の絶対数
/いずれの抗体も加えることなく標的細胞及びT細胞のみを含む条件における生きた、単
一Celltrace FarRed標識細胞の絶対数)×100。
【0299】
結果
図25Aは、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRが
、健常な対照ドナー並びに異なるHL及びNHL患者ドナーの両方に由来するT細胞によ
って媒介される72時間後のL-428腫瘍細胞の用量依存的細胞傷害性を誘導したこと
を示す。細胞傷害性は、CD69、CD25、及びPD-1の上方調節によって例示され
るT細胞活性化及び増殖と関連していた(図25B-D)。対照抗体IgG1-b12-
FEALについて、T細胞媒介性細胞傷害性は観察されなかった。ドナーE(AML)に
ついて、L-428腫瘍細胞のT細胞媒介性細胞傷害性は観察されず、これはPBMC試
料内のT細胞の低頻度に起因し得る(表11)。
【0300】
併せて、これらのデータは、HL及びNHL患者からの末梢血T細胞が、bsG1-h
uCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの存在下で腫瘍細胞株のT細胞
媒介性細胞傷害性を誘導することができることを例示する。
【0301】
【表12】
【0302】
実施例17-SCIDマウスにおけるBsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FERRの薬物動態特性の評価
11~12週齢、雌の腫瘍を含まないSCIDマウス(C.B-17/IcrHan(
登録商標)Hsd-Prkdcscidマウス、Envigo)(群当たり3匹のマウス
)に、1μg(0.05mg/kg)、10μg(0.5mg/kg)又は100μg(
5mg/kg)のBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR
の単回用量を静脈内(IV)注射した。BsG1-huCD3-FEALxCD30-M
DX060-FERRがマウスタンパク質と交差反応しないため、実験は、標的媒介性ク
リアランスの不在下で抗体クリアランスを研究するように設定した。
【0303】
40μLの血液試料を、抗体投与の10分、4~6時間、24時間、2日、7日、14
日及び21日後に、経頬静脈穿刺又は伏在静脈穿刺から収集した。血液を、K2-EDT
A含有バイアル(Sarstedt、Microvette CB300、cat.No
.16.444.100)に収集し、10,000gで10分間遠心分離した。血漿上清
を、標識されたエッペンドルフバイアルに移し、血漿IgG濃度決定まで-80℃で保存
した。
【0304】
ヒトIgG濃度は、総ヒトIgG酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して
決定した。2μg/mLの濃度で一晩4℃で96ウェルMicrolon ELISAプ
レート(Greiner、German)にコーティングされた100μLのPBS(B
ioTrading、cat.no.K654F500PP)中のマウス抗ヒトIgG-
カッパクローンMH16(CLB Sanquin、The Netherlands、
cat.no.M1268)を捕捉抗体として使用した。プレートをPBSA(0.2%
ウシ血清アルブミン[BSA]を含むPBS)で室温(RT)で1時間ブロックした後、
試料を添加し、PBSA中で段階希釈し、プレートシェーカー上で1時間RTでインキュ
ベートした。プレートを、300μLのPBST(0.05%のTween20で補足さ
れたPBS)で3回洗浄し、その後ヤギ抗ヒトIgG免疫グロブリン(Jackson、
West Grace、PA、cat.no.109-035-098、0.2%のBS
Aで補足されたPBST中の1:10.000)を用いて室温で1時間インキュベートし
た。光から保護された2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スル
ホン酸)(ABTS、Roche、cat.no.11112422001及び1111
2597001)とのインキュベーション前、プレートを300μLのPBSTで3回洗
浄した。100μLの2%シュウ酸(Sigma-Aldrich、cat.no.33
506)を添加することによって反応を停止させ、室温で10分間インキュベートした。
吸光度は、ELx808吸光度マイクロプレートリーダー(Biotek、Winoos
ki、VT)で405nmで測定した。
【0305】
参照抗体ヒトIgG1λ(純粋なタンパク質30C、cat.No.BP078)から
標準曲線を生成して(濃度範囲:1mg/mL[3μL])、PBSTA中の3倍希釈液
で更に希釈した。注射された材料を用いて第2の標準曲線を生成し、1mg/mL(3.
6μLの抗体)の濃度で5mg/kgの用量から調製し、PBSTA中の3倍希釈液に更
に希釈した。
【0306】
結果
参照標準から、較正曲線を、Microsoft Excelの4パラメータロジステ
ィックフィット曲線を使用して未知の補間によって計算した。血漿試料中のヒトIgG1
濃度を、プロットされた較正曲線の方程式から計算し(図26A)、曲線下面積(AUC
)を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算した。血液サンプリン
グの最終日(21日目)までのIgGクリアランスを、式D*1.000/AUCによっ
て決定し、式中、Dは、注射の用量(1mg/kg)である(図26B)。
【0307】
BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRは、マウスタン
パク質と交差反応せず、薬物動態特性は、よって、他の非結合野生型ヒトIgG1分子と
同等であると予想されるであろう。全ての用量群について予想されたヒトIgG血漿濃度
は、約100μg/mL(約5mg/kg)、10μg/mL(約0.5mg/kg)、
又は1μg/mL(約0.05mg/kg)であると計算された。全ての時点について、
0.05mg/kgで処理された動物からの試料は測定可能ではなかった。BsG1-h
uCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの血漿クリアランス率は、通常
のヒトIgG1の予測された血漿クリアランス率と同等であった。平均最大ヒトIgG血
漿濃度(Cmax)は、通常のヒトIgG1の予測されたCmaxと同等であった。
【0308】
よって、BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRの薬物
動態プロファイルは、標的結合の不在下で非腫瘍保有SCIDマウスにおける通常のヒト
IgG1について予測されるものと同等である。
【0309】
実施例18-BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERRへの
C1q結合の評価
補体タンパク質C1qの、膜結合BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERR、又はBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-F
ERRが生成された親抗体、すなわち、IgG1-huCD3-FEAL及びIgG1-
CD30-MDX060-FERRへの結合を、CD3又はCD30発現細胞のいずれか
を用いて評価した。
【0310】
A.CD3発現細胞に結合したBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX06
0-FERRへのC1q結合
補体タンパク質C1qの、CD3結合BsG1-huCD3-FEALxCD30-M
DX060-FERR及びIgG1-huCD3-FEALへの結合を、刺激されたヒト
CD8T細胞を用いて試験した。IgG1-CD52-E430Gは、CD52抗体C
AMPATH-1Hに基づくVH及びVLドメインを有し、細胞表面に結合したときにC
1qに効率的に結合することが知られているFc増強バックボーンを有する、陽性対照と
して含まれた。非結合陰性対照抗体として、IgG1-b12-FERR及びIgG1-
b12が含まれた。
【0311】
ヒトCD8 T細胞を、健常なボランティアから得られたバフィーコート(Sanq
uin)から陰性選択によってRosetteSep(商標)Human CD8
細胞濃縮カクテル(Stemcell Technologies、cat.No.15
023C.2)を製造業者の指示に従って使用して精製(濃縮)した。精製されたT細胞
を、10%の鉄を含む熱不活性化ドナーウシ血清(DBSI、Gibco、cat.no
.20731-030)及びペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep、L
onza、cat.no.DE17-603E)で補足された、T細胞培地(25mMの
HEPES及びL-グルタミン(Lonza、cat.no.BE12-115F)を含
むRoswell Park Memorial Institute[RPMI]-1
640培地)に再懸濁した。抗CD3/CD28ビーズ(Dynabeads(商標)H
uman T-Activator CD3/CD28、ThermoFisher S
cientific,cat.No.11132D)をPBSで洗浄し、T細胞培地に再
懸濁した。ビーズを、濃縮されたヒトCD8 T細胞に1:1比で添加し、37℃、5
%COで48時間インキュベートした。次に、磁石を使用してビーズを除去し、細胞を
PBS中で2回洗浄し、再度計数した。
【0312】
BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-FERR及びIgG1-
huCD3-FEALの、活性化CD8 T細胞への結合は、BsG1-huCD3-
FEALxCD30-MDX060-FERR及びIgG1-huCD3-FEAL(3
0μg/mL)、並びにR-フィコエリトリン(PE)複合化ヤギ抗ヒトIgG F(a
b’)(GMB FACS緩衝液中で1:200に希釈、Jackson Immun
oResearch、cat.no.109-116-098)を使用して、フローサイ
トメトリーによって確認された。
【0313】
活性化CD8T細胞を、丸底96ウェルプレート(30,000細胞/ウェル)に
おいて播種し、ペレット化し、30μLのアッセイ培地(0.1%[w/v]のウシ血清
アルブミン画分V(BSA、Roche、cat.no.10735086001)及び
ペニシリン/ストレプトマイシンで補足された、25mMのHEPES及びL-グルタミ
ンを含むRPMI-1640)に再懸濁した。その後、50μLのBsG1-huCD3
-FEALxCD30-MDX060-FERR、IgG1-huCD3-FEAL、I
gG1-b12-FERR、IgG1-CD52-E430G、又はIgG1-b12(
アッセイ培地中で3倍希釈ステップでの1.7x10-4-30μg/mLの最終濃度)
を、ウェルの各々に添加し、37℃で15分間インキュベートして、抗体が細胞に結合す
ることを可能にした。
【0314】
C1qの供給源として、ヒト血清(20μL/ウェル、Sanquin、ロット20L
15-02)を20%の最終濃度まで添加した。細胞を、氷上で45分間インキュベート
し、続いて、低温GMB FACS緩衝液で2回洗浄し、50μLのフルオレセインイソ
チオシアネート(FITC)複合化ウサギ抗ヒトC1q(20μg/mLの最終濃度(D
AKO、cat no.F0254)、GMB FACS緩衝液中で1:75に希釈)と
、アロフィコシアニン複合化マウス抗CD8(BD Biosciences、cat.
no.555369、GMB FACS緩衝液中で1:50に希釈)の存在下又は不在下
で、4℃で30分間、暗所でインキュベートした。細胞を、低温GMB FACS緩衝液
で2回洗浄し、2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA、Sigma-Aldric
h、cat.no.03690)、及び4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール
(DAPI)生存性色素(1:5,000、BD Pharmingen、cat.no
.564907)で補足された20μLのGMB FACS緩衝液に再懸濁した。(DA
PI排除によって特定される)生存細胞へのC1q結合を、iQue3スクリーナー(I
ntellicyt Corporation)でフローサイトメトリーによって分析し
た。データを、iQueソフトウェア(Intellicyt Corporation
、ForeCyt(登録商標)Enterprise Client Edition
6.2[R3]、Version 6.2.652)を使用して分析した。結合曲線を、
GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形回帰分析(可変勾配でのシ
グモイド用量応答)を使用して分析した。
【0315】
結果
図27Aは、用量依存的C1q結合が膜結合IgG1-CD52-E430Gに対して
観察されたが、C1q結合が、膜結合BsG1-huCD3-FEALxCD30-MD
X060-FERR若しくはIgG1-huCD3-FEALに対して又は非結合対照抗
体に対して観察されなかったことを示す。
【0316】
B.CD30発現細胞に結合したBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX0
60-FERRへのC1q結合
補体タンパク質C1qのCD30結合BsG1-huCD3-FEALxCD30-M
DX060-FERR及びIgG1-huCD30-MDX060-FERRへの結合を
、NCEB-1マントル細胞リンパ腫細胞を使用して試験した。陽性対照として、IgG
1-7D8-E430G(抗CD20)が含まれ、これは不活性変異を含まず、C1qへ
の結合能力を保持する。非結合陰性対照抗体として、IgG1-b12-FERRが含ま
れた。
【0317】
NCEB-1細胞を、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA、画分V、Roche、
cat,no.10735086001)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(
Gibco、cat.no.15140-122)を含有するアッセイ培地(RPMI-
1640(Lonza、Switzerland、cat.no.BE12-115F)
)中で2x106細胞/mLの濃度で懸濁した。腫瘍細胞(50μL中100,000細
胞)を、96ウェル丸底プレート(Greiner Bio、cat no.65018
0)に添加した。次に、30μLのBsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERR、IgG1-CD30-MDX060-FERR又は対照抗体(アッセ
イ培地中で希釈された3倍希釈ステップでの5.6×10-5-10μg/mLの最終濃
度)を、ウェルの各々に添加し、37℃で15分間インキュベートして、抗体が細胞に結
合することを可能にする。
【0318】
細胞の半分(40μLの抗体を含有する細胞懸濁液)を、抗体結合を確認するために異
なるプレートに播種した。BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060-
FERR及びIgG1-CD30-MDX060-FERRの、NCEB-1細胞への結
合は、R-フィコエリトリン(PE)複合化ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)(FAC
S緩衝液中で1:500に希釈、Jackson ImmunoResearch、ca
t.no.109-116-098)を使用して、フローサイトメトリーによって確認さ
れた。
【0319】
ヒト血清(10μL/ウェル、Sanquin、ロット21K04-01)を、残りの
40μLの細胞懸濁液(最終濃度の20%)に添加し、45分間氷上でインキュベートし
、続いてFACS緩衝液で洗浄し、25μLのFITC複合化ウサギ抗C1q抗体(20
μL/mLの最終濃度(DAKO、cat no.F0254)、FACS緩衝液中で希
釈)と暗所で4℃で30分間インキュベートした。細胞を、低温FACS緩衝液で洗浄し
、TO-PRO(商標)-3生存性染料(1:5000、ThermoFisher、c
at.no.T3605)で補足された30μLのFACS緩衝液中に再懸濁し、iQu
e3 Screener(Intellicyt Corporation)上で測定し
た。データを、iQueソフトウェア(Intellicyt Corporation
、ForeCyt(登録商標)Enterprise Client Edition
6.2[R3]、Version 6.2.652)を使用して分析した。結合曲線を、
GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形回帰分析(可変勾配でのシ
グモイド用量応答)を使用して分析した。
【0320】
結果
図27Bは、用量依存的C1q結合が膜結合IgG1-CD20-E430Gに対して
観察されたが、C1q結合が膜結合BsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX
060-FERR若しくはIgG1-CD30-MDX060-FERRに対して、又は
非結合対照抗体に対して観察されなかったことを示す。
【0321】
よって、これらの結果は、bsG1-huCD3-FEALxCD30-MDX060
-FERRがC1qに結合しないことを実証し、機能的に不活性なバックボーンを確認し
た。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7
図8
図9
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図13-1】
図13-2】
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図19-3】
図20
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図23
図24
図25-1】
図25-2】
図26
図27
【配列表】
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【外国語明細書】