(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116283
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】CLDN18.2及びCD3に結合する二重特異性結合剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240820BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240820BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240820BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240820BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240820BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240820BHJP
A61K 35/66 20150101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240820BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240820BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240820BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K35/12
A61K35/66
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/7088
A61K35/76
A61K39/395 E
C07K16/28
C07K16/46 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】130
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024093451
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2023577405の分割
【原出願日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/066141
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523468172
【氏名又は名称】アステラス・ファーマ・ヨーロッパ・ベスローデン・フェンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】510089100
【氏名又は名称】ゼンコア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ニスタル,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,グレゴリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がん疾患の治療のための新規の薬剤及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも2つの結合ドメインを含む結合剤であって、第1の結合ドメインは、CLDN18.2に対する特異性を有しており、第2の結合ドメインは、CD3に対する特異性を有する、結合剤、及びがんを処置するためにこの結合剤又はそれをコードする核酸を使用する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、
結合剤は、少なくとも3本のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖は、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の重鎖(VH)の可変領域(VH(CLDN18.2))を含み、
(ii)第2のポリペプチド鎖は、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVH(VH(CD3))と、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の軽鎖(VL)の可変領域(VL(CD3))とを含み、
(iii)第3のポリペプチド鎖は、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVL(VL(CLDN18.2))を含む、
結合剤。
【請求項2】
第1のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域1(CH1)又はその機能的バリアントを含む、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域2(CH2)又はその機能的バリアントと、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域3(CH3)又はその機能的バリアントとを含む、請求項1又は2に記載の結合剤。
【請求項4】
第3のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンに由来する軽鎖の定常領域(CL)又はその機能的バリアントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項5】
免疫グロブリンが、IgG1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項6】
IgG1が、ヒトIgG1である、請求項5に記載の結合剤。
【請求項7】
第1のポリペプチド鎖のVH、並びにCH1、CH2、及びCH3が、N末端からC末端へと、下記の順序:
VH(CLDN18.2)-CH1-CH2-CH3
で配置されている、請求項3~6のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項8】
第2のポリペプチド鎖のVH、VL、並びにCH2、及びCH3が、N末端からC末端へと、下記の順序:
VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又は
VL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3
で配置されている、請求項3~7のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項9】
第1のポリペプチド鎖が、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用する、請求項1~8のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項10】
VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)が、相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインを形成し、VH(CD3)及びVL(CD3)が、相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインを形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項11】
第1のポリペプチド鎖のCH2が、第2のポリペプチド鎖のCH2と相互作用し、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH3が、第2のポリペプチド鎖のCH3と相互作用する
、請求項3~10のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項12】
第1のポリペプチド鎖のCH1が、第3のポリペプチド鎖のCLと相互作用する、請求項4~11のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項13】
CLDN18.2に対する特異性を有するさらなる結合ドメインを含み、第2のポリペプチド鎖が、VH(CLDN18.2)をさらに含み、結合剤が、第3のポリペプチド鎖と同一の第4のポリペプチド鎖を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項14】
第2のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンに由来するCH1又はその機能的バリアントをさらに含む、請求項13に記載の結合剤。
【請求項15】
免疫グロブリンが、IgG1である、請求項14に記載の結合剤。
【請求項16】
IgG1が、ヒトIgG1である、請求項15に記載の結合剤。
【請求項17】
第2のポリペプチド鎖のVH、VL、並びにCH1、CH2、及びCH3が、N末端からC末端へと、下記の順序:
VH(CLDN18.2)-CH1-VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又は
VH(CLDN18.2)-CH1-VL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3
で配置されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項18】
第2のポリペプチド鎖が、第4のポリペプチド鎖と相互作用する、請求項13~17のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項19】
第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)が、第4のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)と相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有するさらなる結合ドメインを形成する、請求項13~18のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項20】
第2のポリペプチド鎖のCH1が、第4のポリペプチド鎖のCLと相互作用する、請求項14~19のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項21】
VH(CD3)が、配列番号54、58、及び61からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項22】
VH(CD3)が、
(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKANNYATYYADSVKG(配列番号50)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVSWFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、
(ii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDEYVSWFAY(配列番号51)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、又は
(iii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVS
WFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含む、
請求項1~21のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項23】
VL(CD3)が、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項24】
VL(CD3)が、アミノ酸配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号46)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号47)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列ALWYSNHWV(配列番号48)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項25】
VH(CLDN18.2)が、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項26】
VH(CLDN18.2)が、アミノ酸配列SYWIN(配列番号32)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列NIYPSDSYTNYNQKFQG(配列番号33)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列SWRGNSFDY(配列番号34)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項27】
VL(CLDN18.2)が、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項28】
VL(CLDN18.2)が、アミノ酸配列KSSQSLLNSGNQKNYLT(配列番号35)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列WASTRES(配列番号36)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列QNDYSYPFT(配列番号37)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項29】
(i)VH(CD3)が、配列番号58のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)が、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)が、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)が、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(ii)VH(CD3)が、配列番号61のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)が、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)が、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)が、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、又は
(iii)VH(CD3)が、配列番号54のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)が、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)が、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)が、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項30】
VH(CD3)が、配列番号58で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VL(CD3)が、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VH(CLDN18.2)が、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能
的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又は
VL(CLDN18.2)が、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる、
請求項1~29のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項31】
VH(CD3)が、配列番号61で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VL(CD3)が、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VH(CLDN18.2)が、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又は
VL(CLDN18.2)が、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる、
請求項1~29のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項32】
VH(CD3)が、配列番号54で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VL(CD3)が、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、
VH(CLDN18.2)が、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又は
VL(CLDN18.2)が、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる、
請求項1~29のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項33】
第1のポリペプチド鎖において、CH1が、ペプチドリンカーによりCH2に結合している、請求項3~32のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項34】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号27)又はその機能的バリアントを含む、請求項33に記載の結合剤。
【請求項35】
VH(CD3)又はVL(CD3)が、ペプチドリンカーによりCH2に結合している、請求項3~34のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項36】
VH(CD3)又はVL(CD3)が、ペプチドリンカーによりCH1に結合している、請求項14~35のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項37】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(G4S)x又はその機能的バリアントを含み、式中、Xは、2、3、4、5、又は6である、請求項35又は36に記載の結合剤。
【請求項38】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(G4S)2(配列番号26)又はその機能的バリアントを含む、請求項37に記載の結合剤。
【請求項39】
VH(CD3)又はVL(CD3)とCH2とを結合させるペプチドリンカーが、アミノ酸配列KTHTCPPCP(配列番号21)又はその機能的バリアントを含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項40】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(G4S)2KTHTCPPCP(配列番号23)又はその機能的バリアントを含む、請求項39に記載の結合剤。
【請求項41】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号22)又はその機能的バリアントを含む、請求項39に記載の結合剤。
【請求項42】
VH(CD3)及びVL(CD3)が、ペプチドリンカーにより互いに結合している、請求項1~41のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項43】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアントを含み、式中、xは、2、3、4、5、又は6である、請求項42に記載の結合剤。
【請求項44】
ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GKPGS)4(配列番号11)又はその機能的バリアントを含む、請求項43に記載の結合剤。
【請求項45】
CH1が、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン酸残基を含むアミノ酸配列を含む、請求項2~44のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項46】
第1のポリペプチド鎖のCH1が、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン酸残基を含むアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖のCH1が、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン残基を含むアミノ酸配列を含む、請求項14~45のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項47】
ヒトFcγRI、IIa、IIb、及び/又はIIIaに実質的に結合しない請求項1~46のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項48】
第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH2が、下記:EUナンバリングに従って233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、267位でのリシン残基、及び295位でのグルタミン酸残基の内の1つ又は複数を含むアミノ酸配列を含む、請求項3~47のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項49】
第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖のCH2が、EUナンバリングに従って233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、及び267位でのリシン残基を含むアミノ酸配列を含み、第1のポリペプチド鎖のCH2が、EUナンバリングに従って295位でのグルタミン酸残基をさらに含み、第2のポリペプチド鎖のCH2が、EUナンバリングに従って295位でのグルタミン残基をさらに含む、請求項48に記載の結合剤。
【請求項50】
第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH3が、下記:EUナンバリングに従って357位でのグルタミン残基、364位でのリシン残基、368位でのアスパラギン酸残基、370位でのセリン残基、384位でのアスパラギン酸残基、418位でのグルタミン酸残基、及び421位でのアスパラギン酸残基の内の1つ又は複数を含むアミノ酸配列を含む、請求項3~49のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項51】
第1のポリペプチド鎖のCH3が、EUナンバリングに従って357位でのグルタミン酸残基、364位でのセリン残基、368位でのアスパラギン酸残基、370位でのセリン残基、384位でのアスパラギン酸残基、418位でのグルタミン酸残基、及び421位でのアスパラギン酸残基を含むアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖のCH3が、EUナンバリングに従って357位でのグルタミン残基、364位でのリシン残基、368位でのロイシン残基、370位でのリシン残基、384位でのアスパラギン残基、418位でのグルタミン残基、及び421位でのアスパラギン残基を含むアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の結合剤。
【請求項52】
第1のポリペプチド鎖が、配列番号28で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項53】
第2のポリペプチド鎖が、配列番号30で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項54】
第3のポリペプチド鎖が、配列番号31で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項55】
第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、請求項1~54のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項56】
第2のポリペプチド鎖が、配列番号74、75、76、及び77からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、請求項1~55のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項57】
第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、請求項1~56のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項58】
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号75で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、
請求項1~12、21~29、32~35、39、41~45、及び47~57のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項59】
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号74で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、
請求項1~30、33~40、及び42~57のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項60】
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号76で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、
請求項1~30、33~40、及び42~57のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項61】
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号77で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機
能的バリアントを含むか、又はからなる、
請求項1~29、31、33~39、及び41~57のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項62】
VH(CLDN18.2)、VL(CLDN18.2)、VH(CD3)、及び/又はVL(CD3)が、ヒト化されている、請求項1~61のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項63】
CD3が、T細胞の表面上で発現されている、請求項1~62のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項64】
T細胞上のCD3への結合剤の結合により、T細胞の増殖及び/又は活性化が生じる、請求項63に記載の結合剤。
【請求項65】
CLDN18.2が、がん細胞中で発現されている、請求項1~64のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項66】
CLDN18.2が、がん細胞の表面上で発現されている、請求項65に記載の結合剤。
【請求項67】
結合剤が、CLDN18.2の細胞外部分に結合する、請求項65又は66に記載の結合剤。
【請求項68】
結合剤が、CLDN18.2を発現しているがん細胞に対してT細胞媒介性細胞傷害を誘発する、請求項1~67のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項69】
がん細胞が、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択されるがんに由来する、請求項65~68のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項70】
請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤のポリペプチド鎖をコードする核酸。
【請求項71】
請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤をコードする核酸。
【請求項72】
請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤を一緒にコードする核酸のセット。
【請求項73】
請求項70に記載の核酸を含むベクター。
【請求項74】
請求項71に記載の核酸又は請求項72に記載の核酸のセットを含むベクター。
【請求項75】
請求項72に記載の核酸のセットを含むベクターのセット。
【請求項76】
結合剤を発現することが可能な、請求項74に記載のベクター又は請求項75に記載のベクターのセット。
【請求項77】
請求項71に記載の核酸、請求項72に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、又は請求項75若しくは76に記載のベクターのセットを含む宿主細胞。
【請求項78】
請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤、請求項71に記載の核酸、請求項72
に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、請求項75若しくは76に記載のベクターのセット、又は請求項77に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項79】
治療での使用のための、請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤、請求項71に記載の核酸、請求項72に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、請求項75若しくは76に記載のベクターのセット、請求項77に記載の宿主細胞、又は請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんの処置又は予防での使用のための、請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤、請求項71に記載の核酸、請求項72に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、請求項75若しくは76に記載のベクターのセット、請求項77に記載の宿主細胞、又は請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項81】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項80に記載の使用のための結合剤、核酸、核酸のセット、ベクター、ベクターのセット、宿主細胞、又は医薬組成物。
【請求項82】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんの処置又は予防のための医薬品の調製のための、請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤、請求項71に記載の核酸、請求項72に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、請求項75若しくは76に記載のベクターのセット、請求項77に記載の宿主細胞、又は請求項78に記載の医薬組成物の使用。
【請求項83】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項82に記載の使用。
【請求項84】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんを処置するか又は予防する方法であって、がんを有する対象に、請求項1~69のいずれか一項に記載の結合剤、請求項71に記載の核酸、請求項72に記載の核酸のセット、請求項74若しくは76に記載のベクター、請求項75若しくは76に記載のベクターのセット、請求項77に記載の宿主細胞、又は請求項78に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項85】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の重鎖(VH)の可変領域(VH(CLDN18.2))と、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の軽鎖(VL)の可変領域(VL(CLDN18.2))とを含む、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤であって、
VH(CLDN18.2)が、アミノ酸配列SYWIN(配列番号32)を含むCDR1、アミノ酸配列NIYPSDSYTNYNQKFQG(配列番号33)を含むCDR2、及びアミノ酸配列SWRGNSFDY(配列番号34)を含むCDR3を含み、
VL(CLDN18.2)が、アミノ酸配列KSSQSLLNSGNQKNYLT(配
列番号35)を含むCDR1、アミノ酸配列WASTRES(配列番号36)を含むCDR2、及びアミノ酸配列QNDYSYPFT(配列番号37)を含むCDR3を含む、
結合剤。
【請求項87】
CD3に対する特異性を有する結合ドメインをさらに含む請求項86に記載の結合剤。
【請求項88】
CD3に対する特異性を有する結合ドメインが、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVH(VH(CD3))と、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVL(VL(CD3))とを含み、
VH(CD3)が、配列番号54、58、及び61からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、
VL(CD3)が、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、
請求項87に記載の結合剤。
【請求項89】
VH(CD3)が、
(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKANNYATYYADSVKG(配列番号50)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVSWFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、
(ii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDEYVSWFAY(配列番号51)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、又は
(iii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVSWFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含み、
VL(CD3)が、アミノ酸配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号46)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号47)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列ALWYSNHWV(配列番号48)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含む、
請求項88に記載の結合剤。
【請求項90】
VH(CLDN18.2)が、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又は
VL(CLDN18.2)が、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる、
請求項86~89のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項91】
VH(CD3)が、配列番号54、58、又は61からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
VL(CD3)が、配列番号55で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、
請求項88~90のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項92】
結合剤が、完全長抗体又は抗体断片の形態である、請求項86~91のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項93】
CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、又はscFv断片の形態である、請求項86~92の
いずれか一項に記載の結合剤。
【請求項94】
CD3に対する特異性を有する結合ドメインが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、又はscFv断片の形態である、請求項87~93のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項95】
CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが、Fab断片の形態であり、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが、scFv断片の形態である、請求項87~94のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項96】
結合剤が、二重特異性分子である、請求項86~95のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項97】
二重特異性分子が、二重特異性抗体である、請求項96に記載の結合剤。
【請求項98】
結合剤が、CLDN18.2に1価又は2価で結合可能である、請求項86~97のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項99】
VH(CLDN18.2)、VL(CLDN18.2)、VH(CD3)、及び/又はVL(CD3)が、ヒト化されている、請求項86~98のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項100】
VH(CLDN18.2)が、ペプチドリンカーによりVL(CLDN18.2)に結合しており、及び/又はVH(CD3)が、ペプチドリンカーによりVL(CD3)に結合している、請求項86~99のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項101】
ペプチドリンカーが、配列番号2~20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項100に記載の結合剤。
【請求項102】
CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、
結合剤が、4本のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号74で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iv)第4のポリペプチド鎖が、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
第1のポリペプチド鎖が、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖が、第4のポリペプチド鎖と相互作用する、
結合剤。
【請求項103】
CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、
結合剤が、3本のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号75で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むか、
又はからなり、
第1のポリペプチド鎖が、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用する、
結合剤。
【請求項104】
CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、
結合剤が、4本のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号76で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iv)第4のポリペプチド鎖が、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
第1のポリペプチド鎖が、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖が、第4のポリペプチド鎖と相互作用する、
結合剤。
【請求項105】
CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、
結合剤が、4本のポリペプチド鎖を含み、
(i)第1のポリペプチド鎖が、配列番号73で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖が、配列番号77で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖が、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むか、又はからなり、
(iv)第4のポリペプチド鎖が、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
第1のポリペプチド鎖が、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖が、第4のポリペプチド鎖と相互作用する、
結合剤。
【請求項106】
CD3が、T細胞の表面上で発現されている、請求項87~105のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項107】
T細胞上のCD3への結合剤の結合により、T細胞の増殖及び/又は活性化が生じる、請求項106に記載の結合剤。
【請求項108】
CLDN18.2が、がん細胞中で発現されている、請求項86~107のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項109】
CLDN18.2が、がん細胞の表面上で発現されている、請求項108に記載の結合剤。
【請求項110】
結合剤が、CLDN18.2の細胞外部分に結合する、請求項108又は109に記載の結合剤。
【請求項111】
結合剤が、CLDN18.2を発現しているがん細胞に対してT細胞媒介性細胞傷害を誘発する、請求項86~110のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項112】
がん細胞が、胃がん、食道がん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択されるがんに由来する、請求項108~111のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項113】
請求項102~112のいずれか一項に記載の結合剤のポリペプチド鎖をコードする核酸。
【請求項114】
請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤をコードする核酸。
【請求項115】
請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤を一緒にコードする核酸のセット。
【請求項116】
請求項113に記載の核酸を含むベクター。
【請求項117】
請求項114に記載の核酸又は請求項115に記載の核酸のセットを含むベクター。
【請求項118】
請求項115に記載の核酸のセットを含むベクターのセット。
【請求項119】
結合剤を発現することが可能な、請求項117に記載のベクター又は請求項118に記載のベクターのセット。
【請求項120】
請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、又は請求項118若しくは119に記載のベクターのセットを含む宿主細胞。
【請求項121】
請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤、請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、請求項118若しくは119に記載のベクターのセット、又は請求項120に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項122】
治療での使用のための、請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤、請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、請求項118若しくは119に記載のベクターのセット、請求項120に記載の宿主細胞、又は請求項121に記載の医薬組成物。
【請求項123】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんの処置又は予防での使用のための、請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤、請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、請求項118若しくは119に記載のベクターのセット、請求項120に記載の宿主細胞、又は請求項121に記載の医薬組成物。
【請求項124】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項123に記載の使用のための結合剤、核酸、核酸のセット、ベクター、ベクターのセット、宿主細胞、又は医薬組成物。
【請求項125】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんの処置又は予防のための医薬品の
調製のための、請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤、請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、請求項118若しくは119に記載のベクターのセット、請求項120に記載の宿主細胞、又は請求項121に記載の医薬組成物の使用。
【請求項126】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項125に記載の使用。
【請求項127】
CLDN18.2を発現するがん細胞が関与するがんを処置するか又は予防する方法であって、がんを有する対象に、請求項86~112のいずれか一項に記載の結合剤、請求項114に記載の核酸、請求項115に記載の核酸のセット、請求項117若しくは119に記載のベクター、請求項118若しくは119に記載のベクターのセット、請求項120に記載の宿主細胞、又は請求項121に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項128】
がんが、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
請求項1~69及び86~112のいずれか一項に記載の結合剤を製造する方法。
【請求項130】
請求項71若しくは114に記載の核酸、請求項72若しくは115に記載の核酸のセット、請求項74、76、117、若しくは119のいずれか一項に記載のベクター、又は請求項75、76、118、若しくは119のいずれか一項に記載のベクターのセットで宿主細胞をトランスフェクトする工程を含む請求項129に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
胃及び食道(胃食道;GE)のがんは、満たされていない医療ニーズが最も高い悪性腫瘍の一つである。胃がんは、世界のがん死因の第3位である(Prz Gastroenterol.2019;14(1):26-38)。食道がんの発生率は、ここ数十年で増加しており、このことは、組織型及び原発腫瘍の位置の変化と一致している。食道腺癌は、現在、米国及び西欧では扁平上皮癌よりも蔓延しており、ほとんどの腫瘍は、食道遠位部に位置している。かなりの副作用を伴う確立された標準的処置の積極性にもかかわらず、GEがんの全体的な5年生存率は、20~25%である。
【0002】
患者の大部分は、局所進行性又は転移性の疾患を患っており、第一選択の化学療法を受けなければならない。処置レジメンは、白金及びフルオロピリミジン誘導体を骨格とし、多くは第3の化合物(例えば、タキサン又はアントラサイクリン)を併用することに基づく。それでも、無増悪生存期間中央値5~7ヵ月、及び全生存期間中央値9~11ヵ月が、期待し得る最良である。
【0003】
これらのがんに対する様々な新世代の化学療法併用レジメンで大きな効果が得られないことから、標的薬剤の使用に関する研究が刺激されている。最近、Her2/neu陽性の胃食道がんに対して、トラスツズマブが承認された。しかしながら、この標的を発現し、この処置の適応となる患者はわずか20%程度であることから、医療ニーズは依然として高い。
【0004】
タイトジャンクション分子クローディン18(CLDN18)は、4つの膜貫通疎水性領域と、2つの細胞外ループ(ループ1は、疎水性領域1及び疎水性領域2に囲まれており、ループ2は、疎水性領域3及び4に囲まれている)を有する完全膜貫通タンパク質(テトラスパニン)である。CLDN18は、マウス及びヒトで説明されている2つの異なるスプライスバリアントで存在している(Niimi,Mol.Cell.Biol.21:7380-90,2001)。スプライスバリアント(Genbankアクセッション番号:スプライスバリアント1(CLDN18.1):NP_057453、NM_016369、及びスプライスバリアント2(CLDN18.2):NM_001002026、NP_001002026)は、分子量が約27.9/27.72kDである。スプライスバリアントCLDN18.1及びCLDN18.2は、第1の膜貫通(TM)領域とループ1とを含むN末端部分で異なるが、C末端の主要なタンパク質配列は、同一である。
【0005】
正常組織では、CLDN18.2が短命の分化した胃上皮細胞上でのみ発現されている胃を除いて、CLDN18.2の検出可能な発現は存在していない。CLDN18.2は、悪性化の過程で維持され、そのためヒト胃がん細胞の表面上で頻繁に提示される。さらに、この汎腫瘍性抗原は、食道、膵臓、肺の腺癌において有意なレベルで異所的に活性化される。CLDN18.2タンパク質はまた、胃がん腺癌のリンパ節転移、及び特に卵巣への遠隔転移(いわゆるクルケンベルグ腫瘍)にも局在している。
【0006】
がん細胞と正常細胞の間でのCLDN18.2等のクローディンの異なる発現、これらの膜局在性、及び毒性に関連する正常組織の大部分にはクローディンが存在しないことから、これらの分子は、がん免疫療法にとって魅力的な標的となっており、がん治療においてCLDN18.2を標的とする抗体ベースの治療の使用は、高レベルの治療特異性を約束する。
【0007】
CLDN18.2に対するキメラIgG1抗体IMAB362(Zolbetuximab(旧名Claudiximab))は、Ganymed Pharmaceuticals AGにより開発された。IMAB362は、高い親和性及び特異性で、CLDN18.2の第1の細胞外ドメイン(ECD1)を認識する。IMAB362は、クローディン18の近縁のスプライスバリアント1(CLDN18.1)を含む任意の他のクローディンファミリのメンバーには結合しない。IMAB362は正確な腫瘍細胞特異性を示し、2つの独立した非常に強力な作用機序を束ねる。標的との結合時に、IMAB362は、主にADCC及びCDCによる細胞死滅を媒介する。そのため、IMAB362は、インビトロ及びインビボで、ヒト胃がん細胞株を含むCLDN18.2陽性細胞を効率的に溶解する。CLDN18.2陽性がん細胞株を接種した異種移植腫瘍を持つマウスにおいて、IMAB362の抗腫瘍効果が実証された。
【0008】
IgG1抗体は、典型的には、Fcドメインと、ADCCの主因子であるナチュラルキラー細胞を含む様々な免疫細胞上で発現されるFcγ受容体(FcγR)との相互作用を介して、細胞性免疫系に関与する。しかしながら、ADCCを誘発するIgG1モノクローナル抗体(mAb)は、集団における低親和性Fc受容体バリアントの広範な分布(最大80%)、及びインビボでのIgG1改変によるmAb効力の低下等のいくつかの制限に直面している(Chames et al.,(2009)Br J Pharmacol,157(2):220-233)。治療用抗体はまた、患者のIgGと競合しなければならず、その結果、インビボでは高用量のmAbsが必要となる。さらに、治療用抗体は、FcγRIIb(B細胞、マクロファージ、樹状細胞、及び好中球により発現される抑制性FcγR)と相互作用し得、その結果、有効性を低下させる負のシグナル伝達が生じる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、がん疾患の治療のための新規の薬剤及び方法を提供することである。
【0010】
本発明の基礎となるこの問題の解決策は、CLDN18.2(即ちがん細胞)に特異的な少なくとも1つの結合ドメインを含む結合剤を生成するという概念に基づいている。この結合剤はまた、T細胞に結合してT細胞を複合体中に引き込むことを可能にする、T細胞特異的抗原CD3に特異的な結合ドメインも含み、そのため、T細胞の細胞傷害効果をがん細胞に標的化することが可能となる。この複合体の形成により、細胞傷害性T細胞において、単独で又はアクセサリー細胞との組み合わせでシグナル伝達が誘導され得、細胞傷害性メディエーターが放出される。
【0011】
本発明者らは、CLDN18.2を標的とするFabフォーマットの少なくとも1つの結合ドメインと、CD3等のT細胞特異的抗原を標的とするscFvフォーマットの別の結合ドメインとを含む結合剤が、強力なT細胞媒介性溶解を誘導し得、腫瘍疾患の処置に有効であることを初めて報告する。
【0012】
本発明は、全体として、CLDN18.2に結合する結合剤を提供し、特に、CLDN18.2及びCD3に結合する二重特異性結合剤を提供する。
【0013】
本発明は、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、この結合剤は、少なくとも3本のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の重鎖(VH)の可変領域(VH(CLDN18.2))を含み、第2のポリペプチド鎖は、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVHの可変領域(VH(CD3))と、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリン由来の軽鎖(VL)の可変領域(VL(CD3))とを含み、第3のポリペプチド鎖は、CLDN
18.2に対する特異性を有する免疫グロブリン由来のVL(VL(CLDN18.2))を含む、結合剤を提供する。
【0014】
一実施形態において、本発明の結合剤は、二重特異性三量体結合剤である。
【0015】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域1(CH1)又はその機能的バリアントを含む。
【0016】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域2(CH2)又はその機能的バリアントと、免疫グロブリンに由来する重鎖の定常領域3(CH3)又はその機能的バリアントとを含む。
【0017】
一実施形態において、第3のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンに由来する軽鎖の定常領域(CL)又はその機能的バリアントを含む。
【0018】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のVH、並びにCH1、CH2、及びCH3は、N末端からC末端へと、下記の順序:VH(CLDN18.2)-CH1-CH2-CH3で配置されている。
【0019】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖のVH、VL、並びにCH2、及びCH3は、N末端からC末端へと、下記の順序:VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又はVL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3で配置されている。
【0020】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用する。一実施形態において、VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)は、相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインを形成し、VH(CD3)及びVL(CD3)は、相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインを形成する。
【0021】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH2は、第2のポリペプチド鎖のCH2と相互作用し、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH3は、第2のポリペプチド鎖のCH3と相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH1は、第3のポリペプチド鎖のCLと相互作用する。
【0022】
一実施形態において、本発明の結合剤は、CLDN18.2に対する特異性を有するさらなる結合ドメインを含み、第2のポリペプチド鎖は、VH(CLDN18.2)をさらに含み、結合剤は、第3のポリペプチド鎖と同一の第4のポリペプチド鎖を含む。
【0023】
一実施形態において、本発明の結合剤は、二重特異性三量体結合剤である。
【0024】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンに由来するCH1又はその機能的バリアントをさらに含む。
【0025】
一実施形態において、免疫グロブリンは、IgG1であり、好ましくは、ヒトIgG1である。一実施形態において、本明細書で説明されている結合剤において、VH(CLDN18.2)及び/若しくはVL(CLDN18.2)は、IgG1に由来しており、VH(CD3)及び/若しくはVL(CD3)は、IgG1に由来しており、並びに/又はCH1、CH2、CH3、及び/若しくはCLは、IgG1に由来しており、IgG1は、好ましくは、ヒトIgG1である。
【0026】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖のVH、VL、並びにCH1、CH2、及びCH3は、N末端からC末端へと、下記の順序:VH(CLDN18.2)-CH1-VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又はVH(CLDN18.2)-CH1-VL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3で配置されている。
【0027】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖と相互作用する。
【0028】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)は、第4のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)と相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有するさらなる結合ドメインを形成する。
【0029】
一実施形態において、第2のポリペプチド鎖のCH1は、第4のポリペプチド鎖のCLと相互作用する。
【0030】
一実施形態において、VH(CD3)は、配列番号54、58、及び61からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0031】
一実施形態において、VH(CD3)は、
(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKANNYATYYADSVKG(配列番号50)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVSWFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、
(ii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDEYVSWFAY(配列番号51)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含むか、又は
(iii)アミノ酸配列TYAMN(配列番号43)若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKG(配列番号44)若しくはその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列HGNFGDSYVSWFAY(配列番号45)若しくはその機能的バリアントを含むCDR3を含む。
【0032】
一実施形態において、VL(CD3)は、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0033】
一実施形態において、VL(CD3)は、アミノ酸配列GSSTGAVTTSNYAN(配列番号46)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号47)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列ALWYSNHWV(配列番号48)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む。
【0034】
一実施形態において、VH(CLDN18.2)は、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0035】
一実施形態において、VH(CLDN18.2)は、アミノ酸配列SYWIN(配列番号32)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列NIYPSDSYTNYNQKFQG(配列番号33)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列SWRGNSFDY(配列番号34)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む。
【0036】
一実施形態において、VL(CLDN18.2)は、配列番号42のCDR1、CDR
2、及びCDR3を含む。
【0037】
一実施形態において、VL(CLDN18.2)は、アミノ酸配列KSSQSLLNSGNQKNYLT(配列番号35)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列WASTRES(配列番号36)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列QNDYSYPFT(配列番号37)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む。
【0038】
一実施形態において、
(i)VH(CD3)は、配列番号58のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)は、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(ii)VH(CD3)は、配列番号61のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)は、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、又は
(iii)VH(CD3)は、配列番号54のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VH(CLDN18.2)は、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0039】
一実施形態において、VH(CD3)は、配列番号58で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VL(CD3)は、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VH(CLDN18.2)は、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又はVL(CLDN18.2)は、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる。
【0040】
一実施形態において、VH(CD3)は、配列番号61で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VL(CD3)は、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VH(CLDN18.2)は、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又はVL(CLDN18.2)は、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる。
【0041】
一実施形態において、VH(CD3)は、配列番号54で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VL(CD3)は、配列番号55で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、VH(CLDN18.2)は、配列番号39で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなり、及び/又はVL(CLDN18.2)は、配列番号42で表されるアミノ酸配列若しくはその機能的バリアントを含むか、若しくはからなる。
【0042】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖において、CH1は、ペプチドリンカーによりCH2に結合している。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号27)又はその機能的バリアントを含む。
【0043】
一実施形態において、VH(CD3)又はVL(CD3)は、ペプチドリンカーによりCH2に結合している。一実施形態において、VH(CD3)又はVL(CD3)は、ペプチドリンカーによりCH1に結合している。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(G4S)x又はその機能的バリアントを含み、式中、Xは、2、3、4、5、又は6である。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(G4S)2(配列番号26)又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、VH(CD3)又はVL(CD3)とCH2とを結合させるペプチドリンカーは、アミノ酸配列KTHTCPPCP(配列番号21)又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(G4S)2KTHTCPPCP(配列番号23)又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号22)又はその機能的バリアントを含む。
【0044】
一実施形態において、VH(CD3)及びVL(CD3)は、ペプチドリンカーにより互いに結合している。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアントを含み、式中、xは、2、3、4、5、又は6である。一実施形態において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GKPGS)4(配列番号11)又はその機能的バリアントを含む。
【0045】
ある特定の実施形態において、本発明の結合剤のCH1ドメイン、CH2ドメイン、及び/又はCH3ドメインは、EUナンバリングに従ってヒトIgG1の位置に対応する位置で、1つ又は複数のアミノ酸改変を含み、具体的には、置換及び/又は欠失を含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH1は、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン酸残基を含むアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH1は、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン酸残基を含むアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖のCH1は、EUナンバリングに従って208位でアスパラギン残基を含むアミノ酸配列を含む。
【0046】
さらに、ある特定の実施形態において、本発明の結合剤は、ヒトFcγRI、IIa、IIb、及び/又はIIIaに実質的に結合せず、例えば、検出可能に結合しない。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH2は、下記:EUナンバリングに従って233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、267位でのリシン残基、及び295位でのグルタミン酸残基の内の1つ又は複数を含むアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖のCH2は、EUナンバリングに従って233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、及び267位でのリシン残基を含むアミノ酸配列を含み、第1のポリペプチド鎖のCH2は、EUナンバリングに従って295位でグルタミン鎖残基をさらに含み、第2のポリペプチド鎖のCH2は、EUナンバリングに従って295位でグルタミン残基をさらに含む。
【0047】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH3は、下記:EUナンバリングに従って357位でのグルタミン残基、364位でのリシン残基、368位でのアスパラギン酸残基、370位でのセリン残基、384位でのアスパラギン酸残基、418位でのグルタミン酸残基、及び421位でのアスパラギン酸残基の内の1つ又は複数を含むアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH3は、EUナンバリングに従って357位でのグルタミン酸残基、364位でのセリン残基、368位でのアスパラギン酸残基、370位でのセリン残基、384位でのアスパラギン酸残基、418位でのグルタミン酸残基、及び421位でのアスパラギン酸
残基を含むアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖のCH3は、EUナンバリングに従って357位でのグルタミン残基、364位でのリシン残基、368位でのロイシン残基、370位でのリシン残基、384位でのアスパラギン残基、418位でのグルタミン残基、及び421位でのアスパラギン残基を含むアミノ酸配列を含む。
【0048】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号28で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、配列番号30で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、配列番号29で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。一実施形態において、第3のポリペプチド鎖は、配列番号31で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。
【0049】
一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、配列番号74、75、76、及び77からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。一実施形態において、第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0050】
好ましくは、一実施形態において、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号75で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0051】
好ましくは、一実施形態において、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号74で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0052】
好ましくは、一実施形態において、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号76で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0053】
好ましくは、一実施形態において、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号77で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0054】
本発明はまた、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖(VH)の可変領域(VH(CLDN18.2))と、CLDN18.2に対する特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖(VL)の可変領域(VL(CLDN18.2))とを含む、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤であって、VH(CLDN18.2)は、アミノ酸配列SYWIN(配列番号32)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列NIYPSDSYTNYNQKFQG(配列番号33)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列SWRGNSFDY(配列番号34)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含み、VL(CLDN18.2)は、アミノ酸配列KSSQSLLNSGNQKNYLT(配列番号35)又はその機能的バリアントを含むCDR1、アミノ酸配列WASTRES(配列番号36)又はその機能的バリアントを含むCDR2、及びアミノ酸配列QNDYSYPFT(配列番号37)又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む、結合剤も提供する。一実施形態において、結合剤は、CD3に対する特異性を有する結合ドメインをさらに含む。一実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインは、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリンに由来するVH(VH(CD3))と、CD3に対する特異性を有する免疫グロブリンに由来するVL(VL(CD3))とを含み、VH(CD3)は、配列番号54、58、及び61からなる群から選択されるアミノ酸配列のCDR1、CDR2、及びCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号55のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0055】
一実施形態において、アミノ酸配列NIYPSDSYTNYNQKFQG(配列番号33)の機能的バリアントは、アミノ酸残基QGを含むか、又は保持する。
【0056】
一実施形態において、結合剤は、完全長抗体又は抗体断片の形態である。一実施形態において、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、又はscFv断片の形態である。一実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインは、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、又はscFv断片の形態である。
【0057】
一実施形態において、結合剤は、二重特異性抗体等の二重特異性分子である。一実施形態において、結合剤は、二重特異性一本鎖抗体である。一実施形態において、結合剤は、CLDN18.2に1価又は2価で結合可能である。一実施形態において、結合剤は、CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインを含む。一実施形態において、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、Fab断片の形態であり、CD3に対する特異性を有する結合ドメインは、scFcV断片の形態である。一実施形態において、VH(CLDN18.2)は、ペプチドリンカーによりVL(CLDN18.2)に結合しており、及び/又はVH(CD3)は、配列番号2~20からなる群から選択されるペプチドリンカー等のペプチドリンカーによりVL(CD3)に結合している。
【0058】
本発明はまた、CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、この結合剤は、少なくとも4本のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第2のポリペプチド鎖は、配列番号74で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一である、結合剤も提供する。一実施形態において、結合剤のポリペプチド鎖及び/又は結合剤のポリペプチド鎖のドメインは、本明細書で説明されているように、互いに相互作用
する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖と相互作用する。
【0059】
本発明はまた、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、この結合剤は、少なくとも3本のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第2のポリペプチド鎖は、配列番号75で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる、結合剤も提供する。一実施形態において、結合剤のポリペプチド鎖及び/又は結合剤のポリペプチド鎖のドメインは、本明細書で説明されているように、互いに相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用する。
【0060】
本発明はまた、CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、この結合剤は、少なくとも4本のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第2のポリペプチド鎖は、配列番号76で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一である、結合剤も提供する。一実施形態において、結合剤のポリペプチド鎖及び/又は結合剤のポリペプチド鎖のドメインは、本明細書で説明されているように、互いに相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖と相互作用する。
【0061】
本発明はまた、CLDN18.2に対する特異性を有する2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する結合ドメインとを含む結合剤であって、この結合剤は、少なくとも4本のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖は、配列番号73で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第2のポリペプチド鎖は、配列番号77で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第3のポリペプチド鎖は、配列番号78で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一である、結合剤も提供する。一実施形態において、結合剤のポリペプチド鎖及び/又は結合剤のポリペプチド鎖のドメインは、本明細書で説明されているように、互いに相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖と相互作用し、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖と相互作用する。
【0062】
一実施形態において、VH(CLDN18.2)、VL(CLDN18.2)、VH(CD3)、及び/又はVL(CD3)は、ヒト化されている。
【0063】
一実施形態において、CD3は、T細胞の表面上で発現されている。一実施形態において、本発明の結合剤は、CD3のイプシロン鎖に結合する。一実施形態において、T細胞上のCD3への結合剤の結合により、T細胞の増殖及び/又は活性化が生じる。一実施形態において、T細胞の増殖及び/又は活性化により、CD4 T細胞及び/又はCD8 T細胞(好ましくは、CD107a+ T細胞)の増殖及び/又は活性化が誘発される。一実施形態において、前記増殖した及び/又は活性化されたT細胞は、脱顆粒可能である
。一実施形態において、前記活性化されたT細胞は、細胞傷害性因子(例えば、パーフォリン及びグランザイム)を放出し、がん細胞の細胞溶解及び/又はアポトーシスを開始する。
【0064】
一実施形態において、CLDN18.2は、がん細胞中で発現されている。一実施形態において、CLDN18.2は、がん細胞の表面上で発現されている。一実施形態において、結合剤は、CLDN18.2の細胞外部分に結合する。一実施形態において、結合剤は、CLDN18.2を発現しているがん細胞に対してT細胞媒介性細胞傷害を誘発する。
【0065】
一実施形態において、がん細胞は、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択されるがんに由来する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の結合剤、又は本発明の結合剤のポリペプチド鎖の内の1本又は複数本は、分泌シグナル(例えば、N末端分泌シグナル、特に、IgG分泌シグナル等の免疫グロブリン、例えば、配列MGWSCIILFLVATATGVHS)を含むか、若しくは含まず、及び/又はタグ(特に、C末端タグ、例えば、Hisタグ、特に、配列Gly-Gly-Ser-(His)6若しくは(His)6、又はStrepタグ)を含むか、若しくは含まない。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の結合剤は、1つ又は複数の翻訳後改変を含む。本発明はまた、本明細書で説明されている結合剤の1つ又は複数の翻訳後改変に由来する結合剤も提供する。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、1つ又は複数のVH(CLDN18.2)のN末端でのピログルタミン化、VH(CD3)のN末端でのピログルタミン化、第1のポリペプチド鎖のC末端でのリシンの欠失、及び第2のポリペプチド鎖のC末端でのリシンの欠失から選択される。
【0068】
本発明はまた、本発明の結合剤のポリペプチド鎖をコードする核酸も提供する。本発明はまた、本発明の結合剤をコードする核酸も提供する。本発明はまた、本発明の結合剤を一緒にコードする核酸のセットも提供する。
【0069】
本発明はまた、本発明の核酸又は核酸のセットを含むベクターも提供する。本発明はまた、本発明の核酸のセットを含むベクターのセットも提供する。一実施形態において、核酸のセットの各核酸は、ベクターのセットのベクターに含まれている。一実施形態において、ベクター又はベクターのセットは、本結合剤を発現可能である。
【0070】
一実施形態において、核酸は、任意の数の調節エレメント(プロモーター、複製起点、選択可能マーカー、リボソーム結合部位、誘導因子等)に作動可能に連結されている。ベクターは、発現ベクターであり得、染色体外ベクター又は組込みベクターであり得る。いくつかの実施形態において、本発明の結合剤のポリペプチド鎖をコードする核酸は、それぞれ、単一の発現ベクターに含まれる。これらの核酸は、異なるプロモーター又は同一のプロモーターの制御下であり得る。そのような実施形態において、様々なベクター比を使用して、本発明に結合剤の形成を駆動させ得る。
【0071】
本発明はまた、前記核酸、核酸のセット、ベクター、又はベクターのセットを含む宿主細胞も提供する。一実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、HEK293細胞、HEK293
T細胞、及び同類のものからなる群から選択される哺乳動物細胞である。一実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、又は昆虫細胞である。
【0072】
本発明はまた、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、又は本発明の宿主細胞を含む医薬組成物も提供する。一実施形態において、この医薬組成物は、薬学的に受容される単体及び/又は賦形剤をさらに含む。
【0073】
本発明はまた、治療での使用のための、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、本発明の宿主細胞、又は本発明の医薬組成物も提供する。
【0074】
本発明はまた、がんの処置又は予防での使用のための、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸セット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、本発明の宿主細胞、又は本発明の医薬組成物も提供する。
【0075】
本発明はまた、がんを処置するか又は予防する方法であって、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、本発明の宿主細胞、又は本発明の医薬組成物を、必要な対象に投与する工程を含む方法も提供する。一実施形態において、がんは、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴う。
【0076】
本発明はまた、医薬品の調製のための、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、本発明の宿主細胞、又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。一実施態様において、医薬品は、がんの処置又は予防のためのものである。一実施形態において、がんは、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴う。
【0077】
一実施形態において、前記がんは、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん及びその転移、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、並びに/又はリンパ節転移からなる群から選択される。
【0078】
本発明はまた、本明細書で説明されている処置方法での使用のための、本明細書で説明されている結合剤、核酸、核酸のセット、ベクター、ベクターのセット、宿主細胞、又は医薬組成物も提供する。一実施形態において、提供されるのは、がん等の疾患を処置するか又は予防する方法であって、がんを有する対象等の疾患を有する対象に、本発明の結合剤、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、本発明のベクターのセット、本発明の宿主細胞、又は本発明の医薬組成物を投与する工程を含む方法である。好ましくは、この疾患は、CLDN18.2を発現する疾患細胞等の細胞を伴う。好ましくは、この疾患は、がんであり、このがんは、CLDN18.2を発現するがん細胞を伴う。
【0079】
本発明によれば、CLDN18.2は、好ましくは、配列番号1に係るアミノ酸配列を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、VL(CLDN18.2)を含まない。いくつかの実施形態において、第3のポリペプチド鎖は、VH(CLDN18.2)を含まない。
【0081】
いくつかの実施形態において、CLDN18.2に対する特異性を有する結合剤の結合ドメインは、Fab断片の形態である。いくつかの実施形態において、CD3に対する特
異性を有する本発明の結合剤の結合ドメインは、scFv部分の形態である。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の結合剤は、CLDN18.1に結合しない。好ましくは、この結合剤は、ヒト、マウス、又はカニクイザルのCLDN18.1に結合しない。いくつかの実施形態において、本発明の結合剤は、ヒトCLDN9等のCLDN9に結合しない。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の結合剤は、ヒト、マウス、及びカニクイザルのCLDN18.2等の複数の種のCLDN18.2に結合する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されている結合剤で患者を処置することにより、前記患者の生存期間が延長される。いくつかの実施形態において、本明細書で説明されている結合剤は、1つ又は複数の免疫エフェクター機能を示す。いくつかの実施形態において、前記1つ又は複数の免疫エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、アポトーシスの誘発、及び増殖の阻害からなる群から選択される。本明細書で説明されている結合剤はまた、好ましくは、がん細胞を攻撃するようにT細胞をリダイレクト可能であり、そのため、リダイレクトT細胞細胞傷害(RTCC)を介して作用する。いくつかの実施形態において、結合剤は、ADCCを誘発し得ないか、又は実質的にし得ない。いくつかの実施形態において、結合剤は、CDCを誘発し得ないか、又は実質的にし得ない。いくつかの実施形態において、結合剤は、ADCPを誘発し得ないか、又は実質的にし得ない。いくつかの実施形態において、結合剤は、患者等の対象の腫瘍の増殖及び/又は体積を減少可能であり、好ましくは顕著に減少可能である。
【0085】
本発明はまた、本発明の結合剤を製造する方法も提供する。一実施形態において、本発明の結合剤を製造する方法は、本発明の核酸、本発明の核酸のセット、本発明のベクター、又は本発明のベクターのセットで宿主細胞をトランスフェクトする工程を含む。一実施形態において、宿主細胞は、本発明の結合剤をコードする核酸を発現する。一実施形態において、宿主細胞は、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖をコードする核酸と、本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖をコードする核酸とを共発現する。一実施形態において、宿主細胞は、本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖をコードする核酸をさらに発現する。一実施形態において、宿主細胞は、本発明の結合剤の第4のポリペプチド鎖をコードする核酸をさらに発現する。一実施形態において、前記核酸は、ベクター又はベクターのセットに含まれている。一実施形態において、宿主細胞は、本発明の結合剤の全てのポリペプチド鎖を発現する。一実施形態において、トランスフェクション後の宿主細胞は、好ましくは、本明細書で説明されているか又は当該技術分野で公知のもの等の結合剤産生に適切な条件下で増殖させた場合に、本発明の結合剤を産生する。一実施形態において、本発明の結合剤を、この宿主細胞から得ることができる。
【0086】
そのため、一実施形態において、本発明の結合剤を製造する方法は、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖をコードする核酸、本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖をコードする核酸、本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖をコードする核酸、及び任意選択的な、本発明の結合剤の第4のポリペプチド鎖をコードする核酸で、宿主細胞をトランスフェクトする工程、この宿主細胞中で前記核酸を発現させる工程、並びに本発明の結合剤を得る工程を含む。一実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、HEK293細胞、HEK293
T細胞、及び同類ものからなる群から選択される哺乳動物細胞である。一実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、又は昆虫細胞である。一実施形態において、結合剤は、インビトロで産生される。一実施形態において、結合剤は、インビボで産生され、例えば、疾患(特に、CLDN18.2を発現する細胞と関連す
る疾患、例えば、がん)を有する対象等の処置される対象中で産生される。一実施形態において、本発明の結合剤の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖は、例えば、ある宿主細胞中で産生され、第3のポリペプチド鎖は、例えば、別の宿主細胞中で産生される。一実施形態において、本発明の結合剤の全てのポリペプチド鎖は、同一の宿主細胞中で産生される。
【0087】
一実施形態において、本発明の結合剤のポリペプチド鎖は、互いに連結されており、例えば、共有結合的に連結されている。一実施形態において、結合剤のポリペプチド鎖は、結合剤の全てのポリペプチド鎖を含む1つのポリペプチドとして産生される。一実施形態において、結合剤の少なくとも2本のポリペプチド鎖は、一緒に連結されており、1つのポリペプチドとして産生される。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖は、一緒に連結されており、1つのポリペプチドとして産生され、第3のポリペプチド鎖は、別個のポリペプチドとして産生される。一実施形態において、第3のポリペプチド鎖及び第1のポリペプチド鎖は、一緒に連結されており、1つのポリペプチドとして産生され、第2のポリペプチド鎖は、別個のポリペプチドとして産生される。一実施形態において、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖は、一緒に連結されており、1つのポリペプチドとして産生され、第1のポリペプチド鎖は、別個のポリペプチドとして産生されるか、又は第4のポリペプチド鎖に連結されており、両方とも、1つのポリペプチドとして一緒に産生される。好ましくは、本発明の結合剤のポリペプチド鎖は、別々に産生され、即ち、別個のポリペプチドとして産生され、例えば、同一の又は異なる細胞中で産生され、産生時に又は産生後に相互作用して、例えば細胞内で又は細胞外で結合剤を形成する。好ましくは、ポリペプチド鎖は、別個のポリペプチドとして産生され、即ち、第1のポリペプチド鎖は、1つのポリペプチドとして産生され、第2のポリペプチド鎖は、1つのポリペプチドとして産生され、第3のポリペプチド鎖は、1つのポリペプチドとして産生され、及び任意選択的に、第4のポリペプチド鎖は、1つのポリペプチドとして産生され、本発明のこれらのポリペプチド鎖は、相互作用して、本発明の結合剤を形成する。一実施形態において、本発明の結合剤を投与することは、脂質ナノ粒子、リポソーム、リポプレックス等の担体で製剤化された第1、第2、第3、及び任意選択的な第4のポリペプチド鎖を投与することを含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖が、一緒に投与され、例えば、同一の又は異なる担体で製剤化され、第3のポリペプチド鎖が投与され、例えば担体で別個に製剤化される。一実施形態において、第4のポリペプチド鎖がさらに投与され、例えば担体で別個に製剤化される。一実施形態において、第3のポリペプチド鎖及び第4のポリペプチド鎖が、一緒に投与され、例えば、同一の又は異なる担体で製剤化される。一実施形態において、本発明の結合剤の全てのペプチド鎖は、同一の担体で一緒に製剤化される。一実施形態において、本発明の結合剤の各ポリペプチド鎖は、別個の担体で製剤化されており、ここで、この担体は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0088】
本発明の他の特徴及び利点は、下記で詳述されている説明及び特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1Aは、ヘテロ二量体Fcの一方の側に組換えにより融合したVH(本明細書で説明されている第1のポリペプチド鎖)、ヘテロ二量体Fcの他方の側に組換えにより融合した一本鎖Fv(「scFv」)(本明細書で説明されている第2のポリペプチド鎖)、及び第1のポリペプチド鎖のVHと共にFabドメインを形成するように別々にトランスフェクトされた軽鎖(LC;本明細書で説明されている第3のポリペプチド鎖)を含む「Fab-scFv」フォーマットである。
図1Bは、ヘテロ二量体Fcの一方の側に組換えにより融合したVH(本明細書で説明されている第1のポリペプチド鎖)、ヘテロ二量体Fcの他方の側に融合したscFvに組換えにより融合したVH(本明細書で説明されている第2のポリペプチド鎖)、並びに第1のポリペプチド鎖のVH及び第2のポリペプチド鎖の付加的なVHと共にFabドメインを形成するように別々にトランスフェクトされたLC(本明細書で説明されている第3及び第4のポリペプチド鎖)を含む「Fab2-scFv」フォーマットを示す。
【
図2A】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体のA)KP-4細胞及びB)NUGC-4細胞への結合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3 bsAb、細胞のみ、及び二次抗体のみを含んでいた。このデータから、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、用量依存的にNUGC-4細胞に結合しており、試験した全ての濃度ではKP-4細胞にはほとんど結合しなかったことが分かる。特に、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24647、XENP24648、及びXENP24649)は、「Fab-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24645、及びXENP24646)と比較して、NUGC-4細胞にはるかに強力に結合しており、このことはおそらく、「Fab2-scFv」フォーマットにより伝えられる特別な結合活性に起因している。
【
図2B】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体のA)KP-4細胞及びB)NUGC-4細胞への結合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3 bsAb、細胞のみ、及び二次抗体のみを含んでいた。このデータから、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、用量依存的にNUGC-4細胞に結合しており、試験した全ての濃度ではKP-4細胞にはほとんど結合しなかったことが分かる。特に、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24647、XENP24648、及びXENP24649)は、「Fab-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24645、及びXENP24646)と比較して、NUGC-4細胞にはるかに強力に結合しており、このことはおそらく、「Fab2-scFv」フォーマットにより伝えられる特別な結合活性に起因している。
【
図3A】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbによるA)KP-4細胞及びB)NUGC-4細胞へのRTCCの誘導を示す。このデータから、プロトタイプの抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、NUGC-4に用量依存的にRTCCを誘導したが、KP-4細胞にはRTCCを誘導しなかったことが分かる。
【
図3B】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbによるA)KP-4細胞及びB)NUGC-4細胞へのRTCCの誘導を示す。このデータから、プロトタイプの抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、NUGC-4に用量依存的にRTCCを誘導したが、KP-4細胞にはRTCCを誘導しなかったことが分かる。
【
図4A】フローサイトメトリーにより決定した場合の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞での発現レベルを示す。このデータは、SNU-601がNUGC-4と比べてCLDN18.2を多く発現することを示す。
【
図4B】フローサイトメトリーにより決定した場合の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞での発現レベルを示す。このデータは、SNU-601がNUGC-4と比べてCLDN18.2を多く発現することを示す。
【
図5A】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体のA)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞への結合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、細胞のみ、及び二次抗体のみを含んでいた。このデータから、二重特異性抗体のそれぞれは、NUGC-4及びSNU-601の両方に用量依存的に結合しており、SNU-601細胞への最大結合はNUGC-4と比べて高く、このことは、各細胞株でのそれぞれのCLDN18.2発現レベルと一致していることが分かる。
【
図5B】マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体のA)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞への結合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、細胞のみ、及び二次抗体のみを含んでいた。このデータから、二重特異性抗体のそれぞれは、NUGC-4及びSNU-601の両方に用量依存的に結合しており、SNU-601細胞への最大結合はNUGC-4と比べて高く、このことは、各細胞株でのそれぞれのCLDN18.2発現レベルと一致していることが分かる。
【
図6】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(生きている標的細胞の減少により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、生細胞の減少により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図7A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(死滅した標的細胞の増加により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、死滅した/瀕死の細胞の増加により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図7B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(死滅した標的細胞の増加により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、死滅した/瀕死の細胞の増加により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図8A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(生きている標的細胞の減少により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、生細胞の減少により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図8B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(生きている標的細胞の減少により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、生細胞の減少により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図9A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(死滅した標的細胞の増加により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、死滅した/瀕死の細胞の増加により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図9B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりインキュベートした後の、A)NUGC-4細胞及びB)SNU-601細胞でのRTCCの誘導(死滅した標的細胞の増加により示される)を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、死滅した/瀕死の細胞の増加により示されるように、二重特異性抗体が標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することが分かる。
【
図10A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図10B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図10C】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図11A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図11B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図11C】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりNUGC-4細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図12A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図12B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図12C】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図13A】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図13B】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図13C】ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及びマウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に48時間にわたりSNU-601細胞をインキュベートした後の、A)CD69、B)CD25、及びC)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合を示す。コントロールは、抗RSV×抗CD3二重特異性抗体、標的細胞のみ、並びに標的細胞及びエフェクター細胞のみを含んでいた。このデータから、RTCCと一致する傾向が分かり、即ち、例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【
図14】フローサイトメトリーにより決定した場合での、A)SNU-601細胞及びB)SNU-601(2E4)細胞(CLDN18.2発現集団が富化されている)での発現レベルを示す。このデータから、SNU-601(2E4)は、CLDN18.2+細胞の実質的に高い集団を含むことが分かる。本セクションの実験を、SNU-601(2E4)細胞を使用して実施した。
【
図15】ヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるSNU-601(2E4)細胞への結合を示す。使用したコントロールは、XENP24644(H0L0 CLDN18.2;2価mAb)、XENP29470(H1L1 CLDN18.2;2価mAb)、XENP29471(H2L1 CLDN18.2;2価mAb)、XENP24645(Fab-scFv)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、二次抗体のみであった。このデータから、ヒト化CLDN18.2 ABDを有する二重特異性抗体は、マウスCLDN18.2 ABDを有する二重特異性抗体と同様にSNU-601(2E4)細胞に結合したことが分かり、このことは、ヒト化により抗体の結合効力が維持されたことを示す。特に、「Fab2-scFv」フォーマットの二重特異性抗体は、2価の抗CLDN18.2 mAbと同様の結合を示した。加えて、H1L1ヒト化バリアントに基づく二重特異性抗体(例えば、XENP29472、XENP29474、XENP29476、及びXENP29478)は、H2L1ヒト化バリアントに基づく二重特異性抗体(例えば、XENP29473、XENP29475、XENP29477、及びXENP29479)と比べて結合を良好に維持した。
【
図16A】SNU-601(2E4)細胞への、ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりCFSE標識SNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CFSE+SNU-601(2E4)の数の減少により示される、B)Zombie Aquaで染色されたCFSE+SNU-601(2E4)細胞の割合により示される、及びC)CFSE+SNU-601(2E4)細胞でのZombie Aqua MFIにより示されるSNU-601(2E4)細胞でのRTCCの誘導を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるRTCCの誘導を維持した。
【
図16B】SNU-601(2E4)細胞への、ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりCFSE標識SNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CFSE+SNU-601(2E4)の数の減少により示される、B)Zombie Aquaで染色されたCFSE+SNU-601(2E4)細胞の割合により示される、及びC)CFSE+SNU-601(2E4)細胞でのZombie Aqua MFIにより示されるSNU-601(2E4)細胞でのRTCCの誘導を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるRTCCの誘導を維持した。
【
図16C】SNU-601(2E4)細胞への、ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりCFSE標識SNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CFSE+SNU-601(2E4)の数の減少により示される、B)Zombie Aquaで染色されたCFSE+SNU-601(2E4)細胞の割合により示される、及びC)CFSE+SNU-601(2E4)細胞でのZombie Aqua MFIにより示されるSNU-601(2E4)細胞でのRTCCの誘導を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるRTCCの誘導を維持した。
【
図17A】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD4+ T細胞でのCD69 MFI、及びB)CD69を発現するCD4+ T細胞の割合により示される活性化CD4+ T細胞を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるT細胞の活性化を維持した。
【
図17B】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD4+ T細胞でのCD69 MFI、及びB)CD69を発現するCD4+ T細胞の割合により示される活性化CD4+ T細胞を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるT細胞の活性化を維持した。
【
図18A】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD4+ T細胞でのCD107a MFI、及びB)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合で示されるCD4+ T細胞の脱顆粒を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。
【
図18B】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD4+ T細胞でのCD107a MFI、及びB)CD107aを発現するCD4+ T細胞の割合で示されるCD4+ T細胞の脱顆粒を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。
【
図19A】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD8+ T細胞でのCD69 MFI、及びB)CD69を発現するCD8+ T細胞の割合で示される活性化CD8+ T細胞を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるT細胞の活性化を維持した。
【
図19B】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD8+ T細胞でのCD69 MFI、及びB)CD69を発現するCD8+ T細胞の割合で示される活性化CD8+ T細胞を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるT細胞の活性化を維持した。
【
図20A】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD8+ T細胞でのCD107a MFI、及びB)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合で示されるCD8+ T細胞の脱顆粒を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。
【
図20B】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、A)CD8+ T細胞でのCD107a MFI、及びB)CD107aを発現するCD8+ T細胞の割合で示されるCD8+ T細胞の脱顆粒を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)、XENP24647(Fab2-scFv)、細胞のみ、及び二次抗体のみであった。
【
図21A】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、T細胞によるA)IFNγ及びB)TNFαの分泌を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)及びXENP24647(Fab2-scFv)であった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるサイトカイン分泌の誘導を維持した。
【
図21B】ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体と共に24時間にわたりSNU-601(2E4)をインキュベートした後の、T細胞によるA)IFNγ及びB)TNFαの分泌を示す。使用したコントロールは、XENP24645(Fab-scFv-Fc)及びXENP24647(Fab2-scFv)であった。結合データと一致するように、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるサイトカイン分泌の誘導を維持した。
【
図22】マウス及びヒト化(バリアントH1L1)CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体の、A)ヒトCLDN18.2、B)カニクイザルCLDN18.2、及びC)マウスCLDN18.2を発現するように一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞への結合を示す。このデータから、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体は、ヒトCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2、及びマウスCLDN18.2のそれぞれでトランスフェクトされた細胞に用量依存的に結合したことが分かる。特に、「Fab2-scFv」フォーマットの二重特異性抗体(即ち、XENP24647及びXENP29476)は、「Fab-scFv」フォーマットの二重特異性抗体(即ち、XENP24645及びXENP29472)と比較して、CLDN18.2トランスフェクト細胞にはるかに強力な2価のmAbフォーマット(即ち、XENP24644)と同様の効力で結合する。
【
図23】ヒトCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2、及びマウスCLDN18.2を発現するように一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞への、マウス及びヒト化(バリアントH1L1)CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体の結合のEC50を示す。
【
図24】A)ヒトCLDN18.1、B)カニクイザルCLDN18.1、C)マウスCLDN18.1、及びD)ヒトCLDN9を発現するように一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞への、マウス及びヒト化(バリアントH1L1)CLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体の結合を示す。このデータから、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体のいずれもオフターゲット結合を示さなかったことが分かる。
【
図25】A)第1のドナー及びB)第2のドナーからのPBMCを使用する、二重特異性抗体と比較対象の抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体(AMG 910)によるNUGC-4細胞でのRTCCの誘導を示す。このデータから、XENP32461は、比較対象の二重特異性抗体と同様の効力でRTCCを誘導しており、XENP31726は、比較対象の二重特異性抗体と比較して増強された効力でRTCCを誘導したことが分かる。
【
図26】10:1のE:T比でのBxPC3細胞(600k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD4 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)を示す。
【
図27】10:1のE:T比でのBxPC3細胞(600k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)IFNγ、B)TNFα、及びC)IL2の分泌の誘導を示す。
【
図28】10:1のE:T比でのGSU細胞(70k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD4 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)を示す。
【
図29】10:1のE:T比でのGSU細胞(70k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)IFNγ、B)TNFα、及びC)IL2の分泌の誘導を示す。
【
図30】10:1のE:T比でのNUGC4細胞(50k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD4 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)を示す。
【
図31】10:1のE:T比でのNUGC4細胞(50k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)IFNγ、B)TNFα、及びC)IL2の分泌の誘導を示す。
【
図32】10:1のE:T比でのKatoIII細胞(30k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD4 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)を示す。
【
図33】10:1のE:T比でのKatoIII細胞(30k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)TNFα及びB)IL2の分泌の誘導を示す。
【
図34】3:1のE:T比でのKatoIII細胞(30k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)TNFα分泌の誘導を示す。
【
図35】3:1のE:T比でのHGC27細胞(20k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、B)CD4 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)、及びC)CD8 T細胞活性化の誘導(CD107aを発現する細胞の割合で示される)を示す。
【
図36】3:1のE:T比でのHGC27細胞(20k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)IFNγ、B)TNFα、及びC)IL2の分泌の誘導を示す。
【
図37】1:1のE:T比でのKatoIII細胞(30k個のCLDN18.2結合部位を有する)とエフェクター細胞との存在下での、抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体によるA)RTCCの誘導、及びB)TNFα分泌の誘導を示す。
【
図38A】ASP2138(XENP31726)を投与したNUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍担持ヒトPBMC移植NOGマウスにおける腫瘍体積の変化及び体重の変化を示す。ヒトPBMCを、5×10
6個の細胞で静脈内注射した。ヒトPBMC注射の1週間後、-8日目に、NUGC-4 10cF7_5_3E10細胞を、1×10
6個の細胞でマウスの脇腹に皮下接種した。NOGマウスに、0日目及び7日目にPBS又はASP2138を週1回腹腔内投与した。A)各群の腫瘍体積及びB)体重を、平均±SEMとして各時点でプロットした(n=10)。C)プロット図は、14日目の個々の腫瘍体積を示しており、平均±SEMを、短い横線及びエラーバーで表した。統計解析を、14日目の値で実施した。ns:有意ではない、**:PBS群の値と比較してpは0.01未満(Dunnettの多重比較検定)。
【
図38B】ASP2138(XENP31726)を投与したNUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍担持ヒトPBMC移植NOGマウスにおける腫瘍体積の変化及び体重の変化を示す。ヒトPBMCを、5×10
6個の細胞で静脈内注射した。ヒトPBMC注射の1週間後、-8日目に、NUGC-4 10cF7_5_3E10細胞を、1×10
6個の細胞でマウスの脇腹に皮下接種した。NOGマウスに、0日目及び7日目にPBS又はASP2138を週1回腹腔内投与した。A)各群の腫瘍体積及びB)体重を、平均±SEMとして各時点でプロットした(n=10)。C)プロット図は、14日目の個々の腫瘍体積を示しており、平均±SEMを、短い横線及びエラーバーで表した。統計解析を、14日目の値で実施した。ns:有意ではない、**:PBS群の値と比較してpは0.01未満(Dunnettの多重比較検定)。
【
図38C】ASP2138(XENP31726)を投与したNUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍担持ヒトPBMC移植NOGマウスにおける腫瘍体積の変化及び体重の変化を示す。ヒトPBMCを、5×10
6個の細胞で静脈内注射した。ヒトPBMC注射の1週間後、-8日目に、NUGC-4 10cF7_5_3E10細胞を、1×10
6個の細胞でマウスの脇腹に皮下接種した。NOGマウスに、0日目及び7日目にPBS又はASP2138を週1回腹腔内投与した。A)各群の腫瘍体積及びB)体重を、平均±SEMとして各時点でプロットした(n=10)。C)プロット図は、14日目の個々の腫瘍体積を示しており、平均±SEMを、短い横線及びエラーバーで表した。統計解析を、14日目の値で実施した。ns:有意ではない、**:PBS群の値と比較してpは0.01未満(Dunnettの多重比較検定)。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明を下記で詳細に説明するが、本発明は、本明細書で説明されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されるものではなく、これらは変更され得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明することを目的とするのみであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0091】
下記では、本発明の要素を説明する。この要素は、具体的な実施形態と共に列挙されるが、追加の実施形態を作成するために、任意の方法及び任意の数で組み合わされ得ること
を理解すべきである。様々に説明されている例及び好ましい実施形態は、本発明を、明示的に説明された実施形態にのみに限定すると解釈されるべきではない。本説明は、明示的に説明されている実施形態と、開示された及び/又は好ましい要素の任意の数と組み合わせる実施形態を支持しており、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願で説明されている全ての要素の任意の順列及び組み合わせは、別途文脈が示さない限り、本出願の説明により開示されているとみなされるべきである。
【0092】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,H.G.W.Leuenberger, B. Nagel,and H.Koelbl,Eds.,Helvetica Chimica
Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)で説明されているように定義されている。
【0093】
本発明の実施は、別途示されない限り、当該技術分野の文献で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術の従来の方法を用いる(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989を参照されたい)。
【0094】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、別途文脈が求めない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」等の変形は、述べられたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を含むことを意味しており、あらゆる他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群を排除することを意味しないと理解されるであろうが、いくつかの実施形態において、そのような他のメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群は排除され得、即ち、主題は、述べられたメンバー、整数、若しくは工程、又はメンバー、整数、若しくは工程の群で構成されている。しかしながら、本開示の具体的な実施形態として、「含んでいる」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが企図されており、即ち、この実施形態の目的のために、「含んでいる」は、「からなる」又は「から本質的になる」の意味を有すると理解されるべきである。
【0095】
本発明を説明する文脈(特に特許請求の範囲の文脈で)で使用される「1つの(a)」、及び「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語、並びに同様の参照は、別途本明細書で指示されない限り、又は文脈が明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈される。本明細書における値の範囲の記載は、単に、この範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことが意図されている。別途本明細書で指示されない限り、個々の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で説明されている全ての方法は、別途本明細書で指示されない限り、又は文脈が明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な表現(例えば、「等」)の使用は、単に、本発明をより良く説明することが意図されており、別途特許請求されている本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0096】
「約」という用語は、約又はほぼを意味しており、一実施形態において本明細書に記載されている数値又は範囲との関連では、列挙されているか又は特許請求されている数値又
は範囲の±20%、±10%、±5%、又は±3%を意味する。
【0097】
本明細書の文章全体を通して、いくつかの文書が引用されている。本明細書で引用されている文書(例えば、全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書等を含む)のそれぞれは、上述又は下述にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる部分も、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるものではない。
【0098】
本発明は、二重特異性結合剤に関し、この結合剤は、単一の抗原結合ドメインを介して1価で標的分子に結合するか、又はそれぞれ独立して抗原に結合する2つの抗原結合ドメインを介して2価で標的分子に結合する。
【0099】
本明細書で説明されている結合剤の第1の標的分子は、CLDN18.2である。
【0100】
クローディンは、タイトジャンクションの最も重要な構成要素であるタンパク質のファミリであり、このタイトジャンクションでは、上皮の細胞間の細胞間隙での分子の流れを制御する傍細胞バリアが構築されている。クローディンは膜を4回またぐ膜貫通タンパク質であり、N末端及びC末端は共に、細胞質中に位置している。EC1又はECL1と呼ばれる第1の細胞外ループは、平均53個のアミノ酸からなり、EC2又はECL2と呼ばれる第2の細胞外ループは、約24個のアミノ酸からなる。CLDN18.2等のクローディンファミリの細胞表面タンパク質は、様々な起源の腫瘍中で発現されており、その選択的発現(毒性に関連する正常組織では発現されない)と、細胞膜への局在性とに起因して、抗体媒介性がん免疫療法に関連する標的構造として特に適している。
【0101】
CLDN18.2は、腫瘍組織中で差次的に発現されると特定されており、CLDN18.2を発現している正常組織は、胃のみである。CLDN18.2は、正常組織では胃粘膜の分化した上皮細胞中で選択的に発現されている。CLDN18.2は、膵癌、食道癌、胃がん、気管支癌、乳癌、及びENT腫瘍等の様々な起源の癌で発現されている。CLDN18.2は、胃がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、膵がん、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肝がん、頭頸部がん、胆嚢がん等の原発性腫瘍、並びにこれらの転移、特に、胃がん転移、例えば、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、及びリンパ節転移の予防及び/又は処置のための有用な標的である。「クローディン18」又は「CLDN18」という用語は、クローディン18に関するものであり、クローディン18スプライスバリアント1(クローディン18.1(CLDN18.1))及びクローディン18スプライスバリアント2(クローディン18.2(CLDN18.2))を含むあらゆるバリアントを含む。
【0102】
「クローディン18.2」又は「CLDN18.2」という用語は、好ましくは、ヒトCLDN18.2に関するものであり、具体的には、配列表の配列番号1に係るアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列のバリアントを含み、好ましくはからなるタンパク質に関する。CLDN18.2の第1の細胞外ループは、好ましくは、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸27~81を含み、より好ましくはアミノ酸29~78を含む。CLDN18.2の第2の細胞外ループは、好ましくは、配列番号1で示されるアミノ酸配列のアミノ酸140~180又は144~167を含む。前記第1の細胞外ループ及び第2の細胞外ループは、好ましくは、CLDN18.2の細胞外部分を形成する。
【0103】
本明細書で説明されている結合剤の第2の標的分子は、CD3(表面抗原分類3)である。CD3複合体は、多分子T細胞受容体(TCR)複合体の一部として、成熟ヒトT細胞、胸腺細胞、及びナチュラルキラー細胞のサブセットで発現される抗原を示す。T細胞共受容体は、タンパク質複合体であり、4つの異なる鎖で構成されている。哺乳類では、
この複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及び2本のCD3ε鎖を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)及びζ鎖として公知の分子と会合し、Tリンパ球中で活性化シグナルを生じる。TCR、ζ鎖、及びCD3分子は、一緒に、TCR複合体を構成する。
【0104】
ヒトCD3εは、GenBank Accession No.NM_000733で示される。ヒトCD3γは、GenBank Accession No.NM_000073で示される。ヒトCD3δは、GenBank Accession No.NM_000732で示される。CD3は、TCRのシグナル伝達に関与する。Lin and Weiss,Journal of Cell Science 114,243-244(2001)で説明されているように、MHC提示型特異的抗原エピトープの結合によるTCR複合体の活性化は、Srcファミリキナーゼによる免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化をもたらし、さらなるキナーゼの動員を誘発し、Ca2+放出を含むT細胞の活性化をもたらす。例えば固定化抗CD3抗体によるT細胞上のCD3のクラスター化は、T細胞受容体の関与に類似したT細胞活性化をもたらすが、そのクローンの典型的な特異性とは無関係である。
【0105】
本明細書で使用される場合、「CD3」は、ヒトCD3を含み、多分子T細胞受容体複合体の一部としてヒトT細胞上で発現される抗原を示す。CD3に関して、本発明の結合剤は、好ましくは、CD3のイプシロン鎖を認識する。いくつかの実施形態において、CDイプシロンの最初の27個のN末端アミノ酸に対応するエピトープ又はこの27個のアミノ酸ストレッチの機能的断片を認識する。
【0106】
本発明に係る「バリアント」という用語は、特に、変異体、スプライスバリアント、コンフォメーション、アイソフォーム、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及び種相同体、特に天然に存在するものを指す。対立遺伝子バリアントは、遺伝子の正常な配列の変化に関するものであり、この意義は不明であることが多い。完全な遺伝子配列決定により、所与の遺伝子に関して多数の対立遺伝子バリアントが同定されることが多い。種相同体とは、所与の核酸又はアミノ酸配列の起源とは異なる起源の様々な種を有する核酸又はアミノ酸配列のことである。「バリアント」という用語は、あらゆる翻訳後改変バリアント及びコンフォメーションバリアントを包含するものとする。
【0107】
本発明によれば、「CLDN18.2陽性がん」という用語又は類似の用語は、CLDN18.2を発現するがん細胞(好ましくは表面上で発現するがん細胞)を伴うがんを意味する。
【0108】
「細胞表面」は、当該技術分野における通常の意味に従って使用されており、そのため、タンパク質及び他の分子による結合に利用され得る細胞の外側を含む。
【0109】
CLDN18.2は、細胞の表面に位置しており、細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体による結合が可能な場合には、前記細胞の表面で発現されている。
【0110】
CD3は、細胞の表面に位置しており、細胞に添加されたCD3特異的抗体による結合が可能な場合には、前記細胞の表面で発現されている。
【0111】
本発明に関連する「細胞外部分」という用語は、細胞の細胞外腔に面しており、好ましくは、前記細胞の外部から(例えば、細胞外に位置する抗体等の抗原結合分子により)アクセス可能な、タンパク質等の分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ又は複数の細胞外ループ若しくはドメイン、又はその断片を指す。
【0112】
「部分」又は「断片」という用語は、本明細書で互換的に使用され、連続的な要素を指
す。例えば、アミノ酸配列又はタンパク質等の構造の一部は、前記構造の連続的な要素を指す。構造の一部、部分、又は断片は、好ましくは、前記構造の1つ又は複数の機能特性を含む。例えば、エピトープ又はペプチドの一部、部分、又は断片は、好ましくは、由来するエピトープ又はペプチドと免疫学的に同等である。アミノ酸配列の一部又は断片は、好ましくは、タンパク質配列の少なくとも4個、具体的には、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、又は少なくとも100個の連続したアミノ酸の配列を含む。
【0113】
アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部に関するものであり、即ち、N末端及び/又はC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)を、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠く短縮型オープンリーディングフレームの翻訳により得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)を、例えば、オープンリーディングフレームの5’末端を欠く短縮型オープンリーディングフレームが、翻訳を開始するのに役立つ開始コドンを含む限りにおいて、この短縮型オープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。
【0114】
本明細書におけるアミノ酸配列の「バリアント」又は同様の表現は、少なくとも1つのアミノ酸改変により親アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然に存在するか又は野生型(WT)のアミノ酸配列であってもよいし、野生型アミノ酸配列の改変バージョンであってもよい。好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有しており、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸改変、好ましくは、1~約10個又は1~約5個のアミノ酸改変を有する。
【0115】
本明細書においてアミノ酸配列に関して使用される「野生型」、又は「WT」、又は「ネイティブ」は、対立遺伝子変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型のアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0116】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント、及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。「バリアント」という用語は、全ての変異体、スプライスバリアント、翻訳後改変バリアント、コンフォメーション、アイソフォーム、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及び種相同体、特に天然に存在するものを含む。「バリアント」という用語は、特に、アミノ酸配列の断片を含む。
【0117】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列における1つ、2つ、又はそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合には、1つ又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られた生成物を適切にスクリーニングしつつランダム挿入も可能である。
【0118】
アミノ酸付加バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50個、又はより多くのアミノ酸等の1つ又は複数のアミノ酸のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端融合体を含む。
【0119】
アミノ酸欠失バリアントは、配列からの1つ又は複数のアミノ酸の除去(例えば、1、2、3、5、10、20、30、50個、又はより多くのアミノ酸の除去)を特徴とする
。欠失は、タンパク質の任意の位置であり得る。タンパク質のN末端及び/又はC末端での欠失を含むアミノ酸欠失バリアントはまた、N末端及び/又はC末端短縮バリアントとも呼ばれる。
【0120】
アミノ酸置換バリアントは、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その代わりに別の残基が挿入されることを特徴とする。優先されるのは、相同タンパク質又はペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置で改変されること、及び/又はアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸に置き換えることである。好ましくは、ペプチドバリアント及びタンパク質バリアントにおけるアミノ酸の変化は、保存的なアミノ酸変化であり、即ち、同様に荷電したアミノ酸又は荷電していないアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖が関連しているアミノ酸のファミリの内の1つの置換を伴う。天然に存在するアミノ酸は、一般に、下記の4つのファミリに分類される:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。
【0121】
本発明に関連して、保存的置換は、下記の表で示されるアミノ酸のクラス内の置換により定義され得る。
【0122】
【0123】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性(好ましくは同一性)の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。類似性又は同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%であるアミノ酸領域に関して付与される。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合には、類似性又は同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、又は約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続アミノ酸に関して付与される。いくつかの実施形態において、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に関して付与される。配列類似性(好ましくは配列同一性)を決定するためのアライメントを、当該技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アライメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定を使用
して、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用して、行ない得る。
【0124】
「配列類似性」は、同一であるか又は保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるヌクレオチドの割合を示す。
【0125】
「同一%」、「同一性%」という用語、又は類似の用語は、特に、比較される配列間の最適アラインメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸の割合を指すことが意図されている。前記割合は、純粋に統計的なものであり、2つの配列間の差違は、比較される配列の全長にわたりランダムに分布し得るが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較を、通常、対応する配列の局所領域を特定するために、最適なアラインメントを行った後に、あるセグメント又は「比較の窓」に関して配列を比較することにより実行する。比較に最適なアライメントを、手動で実行してもよいし、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所的相同性アルゴリズムの助けを借りて実行してもよいし、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所的相同性アルゴリズムの助けを借りて実行してもよいし、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムの助けを借りて実行してもよいし、前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)の助けを借りて実行してもよい。いくつかの実施形態において、2つの配列の同一性パーセントは、United States National Center for Biotechnology Information
(NCBI)ウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)上で利用可能なBLASTN又はBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態において、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムで使用されているアルゴリズムパラメータは、下記を含む:(i)10に設定されたExpect Threshold;(ii)28に設定されたWord Size;(iii)0に設定されたMax
matches in a query range;(iv)1、-2に設定されたMatch/Mismatch Scores;(v)Linearに設定されたGap
Costs;及び(vi)Low complexity regionのフィルタの使用。いくつかの実施形態において、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、下記を含む:(i)10に設定されたExpect Threshold;(ii)3に設定されたWord Size;(iii)0に設定されたMax matches in a query range;(iv)BLOSUM62に設定されたMatrix;(v)Existenceに設定されたGap Costs:11 Extension:1;及び(vi)条件付き組成マトリックス調整(conditional compositional score matrix adjustment)。
【0126】
同一性の割合は、比較される配列が対応する同一位置の数を決定し、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列での位置の数)で除算し、この結果に100を乗算することにより得られる。
【0127】
いくつかの実施形態において、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%の領域に関して付与される。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合には、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、又は約200個のヌクレオチド、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドに関して付与される。いくつかの実施形態において、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長に関して付与される。
【0128】
相同アミノ酸配列は、本開示に従って、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。
【0129】
本明細書で説明されているアミノ酸配列バリアントは、例えば組換えDNA操作により、当業者により容易に調製され得る。置換、付加、挿入、又は欠失を有するペプチド又はタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al(1989)で詳述されている。さらに、本明細書で説明されているペプチドバリアント及びアミノ酸バリアントは、公知のペプチド合成技術の助けを借りて、例えば固相合成及び類似の方法により、容易に調製され得る。
【0130】
一実施形態において、アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)の断片又はバリアントは、好ましくは、「機能的断片」又は「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の「機能的断片」又は「機能的バリアント」という用語は、それが由来するアミノ酸配列と同一又は類似の1つ又は複数の機能的特性を示す(即ち、機能的に同等である)あらゆる断片又はバリアントに関する。機能的なVHバリアント及びVLバリアントを構成する抗原結合ドメインに関して、1つの特定の機能は、前記結合ドメインの結合を保持することである。「機能的断片」又は「機能的バリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、特に、親分子又は親配列のアミノ酸配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸が変更されたアミノ酸配列を含み、親分子又は親配列の機能(例えば、特定の抗原に対する特異性を有する結合ドメインを形成する)の内の1つ若しくは複数、又は全てを依然として発揮し得るバリアント分子又はバリアント配列を指す。例えば、機能的なVHバリアント及びVLバリアント、又は機能的CDRバリアント配列を構成する結合ドメインは、親分子と比較して、同一の又は類似の結合特性を有する。一実施形態において、親分子又は親配列のアミノ酸配列での改変は、この分子又は配列の特性に有意な影響を及ぼさないか、又は変化を与えない。別の実施形態において、機能的断片又は機能的バリアントを構成する分子の特性(例えば,結合ドメインの結合強度等の結合特性)は、減少し得るが依然として有意に存在し、例えば、機能的バリアントを構成する結合ドメインの結合強度等の結合特性は、親分子又は親配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%であり得る。例えば、機能的バリアントは、親分子と比較して1、2、3、4、5個、又はより多くのアミノ酸挿入、アミノ酸付加、アミノ酸置換、及び/又はアミノ酸欠失を含み得る。しかしながら、他の実施形態において、機能的バリアント又は機能的断片を構成する分子の特性(例えば、機能的断片又は機能的バリアントを構成する結合ドメインの結合特性)は、親分子と比較して増強され得る。いくつかの実施形態において、「機能的バリアント」は、「機能的断片」であり、例えば、親分子と比較してN末端及び/又はC末端で短縮されているが、上記のように親分子の機能の内の1つ若しくは複数、又は全てを保持しているか又は本質的に保持しており、特に、親分子と機能的に同等であるアミノ酸配列である。
【0131】
アミノ酸配列の「機能的バリアント」という用語は、前記アミノ酸配列の「機能的」断
片を含む。
【0132】
機能的バリアントの特性(例えば、結合特性)を、公知の方法で分析し得、例えば、互いに競合する結合剤に関して本明細書で説明されているELISAアッセイを使用して分析し得る。
【0133】
指定のアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド、例えば、VH、VL、CH1、CH2、又はCH3)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド、例えば、VH、VL、CH1、CH2、又はCH3)とは、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、この特定の配列又はその断片と同一の、本質的に同一の、又は相同なアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、この特定の配列のバリアント又はその断片であり得、好ましくは、本明細書で説明されている機能的バリアント(例えば、機能的断片)であり得る。例えば、本明細書での使用に好適なアミノ酸配列は、ネイティブ配列の望ましい活性を保持するか本質的に保持しつつ、このアミノ酸配列が由来する天然に存在する配列又はネイティブ配列とは配列が異なるように変更(例えば、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、及び/又はアミノ酸置換)され得ることが、当業者には理解されるであろう。例えば、本発明の結合剤のペプチド鎖上のVH、VL、CH1、CH2、及び/又はCH3ドメインのアミノ酸配列は、免疫グロブリンのVH、VL、CH1、CH2、及び/又はCH3ドメインのアミノ酸配列に由来するが、これらが由来するドメインと比較して変更されていてもよい。例えば、本発明によれば、免疫グロブリンに由来するVH又はVLは、それぞれの親VH若しくはVLの配列に由来する、又はそれぞれの親VH若しくはVLの配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸位置において異なっていてもよいそれぞれVH又はVLのアミノ酸配列と同一であってもよいアミノ酸配列を含む。例えば、本発明の結合剤のVHドメインは、これが由来するVHドメインのアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数のアミノ酸挿入、アミノ酸付加、アミノ酸欠失、及び/又はアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み得る。例えば、本発明の結合剤のVLドメインは、これが由来するVLドメインのアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数のアミノ酸挿入、アミノ酸付加、アミノ酸欠失、及び/又はアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、親VH又はVLのアミノ酸配列の機能的バリアントであるアミノ酸配列を有するVH又はVLは、例えば結合特異性、結合強度等に関して、親VH又はVLのアミノ酸配列と同一又は本質的に同一の機能を提供する。しかしながら、当業者が認識するように、いくつかの実施形態において、親分子のアミノ酸配列と比較して特性が変更されているアミノ酸配列(例えば、VH又はVL)の機能的バリアントを提供することが好ましい場合もある。同じ考察が、例えばCDRのアミノ酸配列、及び他のアミノ酸配列(例えば、CH1、CH2、CH3、及び/又はCLドメインのアミノ酸配列)にも当てはまる。
【0134】
二重特異性結合剤が、免疫グロブリンに「由来する」VHと、同一の又は異なる免疫グロブリンに「由来する」VLとを含むと説明されている場合には、「由来する」という用語は、この二重特異性結合剤が、任意の公知の方法により、前記免疫グロブリンからの前記VH及びVLを、結果として得られる二重特異性結合剤に組み換えることにより生成されたことを示す。この文脈において、「組み換える」は、任意の特定の組換え法により限定されることを意図するものではなく、そのため、例えば、核酸レベルでの組換え及び/又は同一細胞内での異なる分子の共発現による組換えを含む、本明細書の下記で説明されている二重特異性結合剤を製造する方法、又は当該技術分野で公知の方法の全てを含む。
「二重特異性抗体」又は「bsAb」という用語は、異なるアミノ酸配列により定義される2つの異なる抗原結合ドメインを有する結合剤を指す。いくつかの実施形態において、前記異なる抗原結合ドメインは、同一抗原上の異なるエピトープと結合する。しかしながら、好ましい実施形態において、前記異なる抗原結合ドメインは、異なる標的抗原に結
合する。二重特異性結合剤は、本明細書で説明されている二重特異性フォーマットの内のいずれかを含む任意のフォーマットであり得る。結合剤は、1、2個、又はより多くの結合ドメインで、異なる抗原又は異なるエピトープのそれぞれと結合し得、即ち、1価、2価(divalently)(又は2価(bivalently))、3価、4価、さらに高次の価数で、異なる抗原又は異なるエピトープのそれぞれに結合し得る。
【0135】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現レベルが胃細胞又は胃組織中での発現と比較して低い場合には、細胞中では実質的に発現されていない。好ましくは、この発現レベルは、胃細胞又は胃組織中での発現の10%未満であり、好ましくは、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、又は0.05%未満であるか、又はさらに低い。好ましくは、CLDN18.2は、発現レベルが、胃以外の非癌組織中での発現レベルを、2倍以下で超えており、好ましくは1.5倍で超えており、好ましくは前記非癌組織中での発現レベルを超えない場合には、細胞中で実質的に発現されていない。好ましくは、CLDN18.2は、発現レベルが検出限界を下回る場合には、及び/又は発現レベルが過剰に低くて細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体が結合し得ない場合には、細胞中で実質的に発現されていない。
【0136】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現レベルが胃以外の非癌組織中での発現レベルを、好ましくは2倍超、好ましくは10倍、100倍、1000倍、又は10000倍で超える場合には、細胞中で発現されている。好ましくは、CLDN18.2は、発現レベルが検出限界を上回る場合には、及び/又は発現レベルが十分に高くて細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体が結合し得る場合には、細胞中で発現されている。好ましくは、細胞中で発現されているCLDN18.2は、前記細胞の表面上で発現されているか、又は露出している。
【0137】
本発明によれば、「疾患」という用語は、がん(特に、本明細書で説明されているがんの形態)を含む、あらゆる病理学的状態を指す。本明細書におけるがん又はがんの特定の形態へのあらゆる言及はまた、この癌の転移も含む。好ましい実施形態では、本教示に従って処置される疾患は、CLDN18.2を発現する細胞を伴う。
【0138】
「CLDN18.2を発現する細胞と関連する疾患」又は同様の表現は、本発明によれば、CLDN18.2が、罹患した組織又は臓器の細胞中で発現されていることを意味する。一実施形態において、罹患した組織又は臓器の細胞中でのCLDN18.2の発現は、健康な組織又は臓器での状態と比較して増加している。増加は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、又はさらに多い増加を指す。一実施形態において、発現は、罹患組織でのみ見出されており、健康な組織での発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN18.2を発現する細胞と関連する疾患として、がん疾患が挙げられる。本発明によれば、がん疾患は、好ましくは、がん細胞がCLDN18.2を発現する疾患である。
【0139】
本明細書で使用される場合、「がん疾患」又は「がん」は、異常に制御された細胞の成長、増殖、分化、接着、及び/又は移動を特徴とする疾患を含む。「がん細胞」は、急激で制御不能な細胞増殖により成長し、新たな成長を開始した刺激が停止した後も成長し続ける異常な細胞を意味する。好ましくは、「がん疾患」は、CLDN18.2を発現する細胞を特徴とし、がん細胞はCLDN18.2を発現する。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくは、がん細胞であり、好ましくは、本明細書で説明されているがんのがん細胞である。
【0140】
本発明に係る「癌」という用語は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神
経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮内膜がん、腎がん、副腎がん、甲状腺がん、血液がん、皮膚がん、脳のがん、子宮頸がん、腸がん(intestinal cancer)、肝がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、胃がん、腸がん(ntestine cancer)、頭頸部がん、消化管がん、リンパ節がん、食道がん、胃食道接合部(GEJ)のがん、結腸直腸がん、膵がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がん、及び肺がん、並びにこれらの転移を含む。この例は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、子宮頸癌、又は上記のがん種若しくは腫瘍の転移である。本発明に係るがんという用語はまた、がん転移も含む。
【0141】
本発明によれば、「癌腫」とは、上皮細胞に由来する悪性腫瘍のことである。このグループは、乳がん、前立腺がん、肺がん、及び結腸がんの一般的な形態を含む最も一般的ながんを代表する。
【0142】
「腺癌」とは、腺組織に発生するがんのことである。この組織はまた、上皮組織として公知のより大きな組織カテゴリの一部でもある。上皮組織として、皮膚、腺、並びに身体の空洞及び器官を裏打ちする様々な他の組織が挙げられる。上皮は、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉に発生学的に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この型の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳類で発生し得る。高分化腺癌は、それが由来する腺組織に類似する傾向があるが、低分化腺癌は類似し得ない。生検からの細胞を染色することにより、病理医は、その腫瘍が腺癌であるか他のタイプのがんであるかを決定する。腺癌は、身体内に腺が偏在していることから、身体の多くの組織で発生する可能性がある。それぞれの腺が同じ物質を分泌し得ないが、細胞に外分泌機能がある限り、それは腺性とみなされ、従って、その悪性型は腺癌と命名される。悪性腺癌は、他の組織に浸潤し、十分な時間があれば転移することが多い。卵巣腺癌は、最も一般的なタイプの卵巣癌である。これには、漿液性腺癌、粘液性腺癌、透明細胞腺癌、及び類内膜腺癌が含まれる。
【0143】
「転移」は、がん細胞の元の部位からの身体の別の部位への広がりを意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外マトリックスへの浸潤、内皮基底膜を貫通して体腔及び血管への侵入、次いで血液により運ばれた後の標的臓器への浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の増殖は、血管新生に依存する。腫瘍転移は原発腫瘍の摘出後であっても起こることが多く、なぜならば、腫瘍の細胞又は構成成分が残存して転移能を発現する場合があるからである。一実施形態において、本発明に係る「転移」という用語は、原発腫瘍及び所属リンパ節系から離れた転移を指す「遠隔転移」に関する。一実施形態において、本発明に係る「転移」という用語は、リンパ節転移に関する。本発明の治療又は処置方法を使用して処置可能な転移の1つの特定の形態は、原発部位として胃がんに由来する転移である。好ましい実施形態において、そのような胃がんの転移は、クルケンベルグ腫瘍、腹膜転移、及び/又はリンパ節転移である。
【0144】
クルケンベルグ腫瘍は、卵巣腫瘍全体の1%~2%を占める珍しい卵巣の転移性腫瘍である。クルケンベルグ腫瘍の予後は依然として非常に悪く、クルケンベルグ腫瘍の確立された処置はない。クルケンベルグ腫瘍は、卵巣の転移性印環細胞腺癌である。ほとんどのクルケンベルグ腫瘍症例(70%)では、胃が原発部位である。結腸、虫垂、及び乳房の癌腫(主に浸潤性小葉癌)が、次に多い原発部位である。胆嚢、胆道、膵臓、小腸、ファーター膨大部、頸部、及び膀胱/尿膜管の癌腫から発生するクルケンベルグ腫瘍のまれな症例が報告されている。
【0145】
「処置する」は、疾患を予防するか若しくは除去するために(例えば、対象における腫瘍のサイズ若しくは腫瘍の数を減少させるために);対象における疾患を停止させるか若
しくは遅延させるために;対象における新たな疾患の発生を阻害するか若しくは遅延させるために;疾患に現在罹患しているか若しくは過去に罹患していた対象における症状及び/若しくは再発の頻度若しくは重症度を減少させるために;並びに/又は対象の寿命を延長させるために、即ち増加させるために、対象に化合物若しくは組成物、又は化合物若しくは組成物の組み合わせを投与することを意味する。
【0146】
具体的には、「疾患の処置」という用語は、疾患又はその症状の治癒、持続期間の短縮、改善、予防、進行若しくは悪化の遅延若しくは阻害、又は発症の予防若しくは遅延を含む。
【0147】
本発明に関連して、「保護する」、「予防する」、「予防的(prophylactic)」、「予防的(preventive)」、又は「保護的」等の用語は、対象における疾患の発生及び/又は伝播の予防若しくは処置、又はその両方に関するものであり、特に、対象が疾患を発症する可能性を最小化すること、又は疾患の発症を遅延させることに関するものである。例えば、がんのリスクがある者は、がんを予防するための治療の候補となるだろう。
【0148】
「リスクがある」とは、一般集団と比較して、ある疾患(特に癌)を発症する機会が通常より高いと特定されている対象を意味する。加えて、疾患(特に癌)に罹患したことがあるか又は現在罹患している対象は、疾患を発症するリスクが高い対象であり、従って、対象は、疾患を発症し続ける場合がある。がんに現在罹患しているか罹患していた対象は、がん転移のリスクも高い。
【0149】
「個体」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、ある疾患又は障害(例えば癌)に罹患し得るか又は罹患しやすいが、この疾患又は障害に罹患していてもよいし罹患していなくてもよいヒト又は別の哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、若しくは霊長類)を指す。多くの実施形態において、個体は、ヒトである。別途述べない限り、「個体」及び「対象」という用語は、特定の年齢を示すものではなく、従って、成人、高齢者、小児、及び新生児を包含する。本開示の実施形態において、「個体」又は「対象」は、「患者」である。
【0150】
「患者」という用語は、本発明によれば、処置の対象(特に罹患対象)を意味しており、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、又は別の動物、特に哺乳類、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又は齧歯類、例えばマウス及びラットを意味する。特に好ましい実施形態において、患者は、ヒトである。
【0151】
「標的細胞」は、がん細胞等のあらゆる望ましくない細胞を意味するとする。好ましい実施形態において、標的細胞は、CLDN18.2を発現する。
【0152】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列等の免疫学的に等価な分子が、例えば免疫学的効果の種類に関して、同一の若しくは本質的に同一の免疫学的特性を示すこと、及び/又は同一の若しくは本質的に同一の免疫学的効果を発揮することを意味する。本開示に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、免疫化に使用される抗原又は抗原バリアントの免疫学的な効果又は特性に関して好ましくは使用される。例えば、あるアミノ酸配列が、対象の免疫系に曝露された際に、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応(特に、T細胞の刺激、プライミング、及び/又は拡張)を誘導する場合には、このアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。そのため、抗原と免疫学的に等価な分子は、T細胞の刺激、プライミング、及び/又は拡大に関して、T細胞が標的とする抗原と同じ若しくは本質的に同じ特性を示しており、並びに/又は同じ若しくは本質的に同じ効果を発揮する。
【0153】
「活性化」又は「刺激」は、本明細書で使用される場合、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されているT細胞等の免疫エフェクター細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、誘導されたサイトカイン産生、及び検出可能なエフェクター機能とも関連付けられ得る。「活性化された免疫エフェクター細胞」という用語は、特に、細胞分裂が進行している免疫エフェクター細胞を指す。
【0154】
「プライミング」という用語は、T細胞等の免疫エフェクター細胞がその特異的抗原と初めて接触し、エフェクターT細胞等のエフェクター細胞へと分化するプロセスを指す。
【0155】
「クローン性増殖」又は「増殖」という用語は、特定の実体が増殖するプロセスを指す。本開示に関連して、この用語は、好ましくは、免疫エフェクター細胞が抗原により刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的免疫エフェクター細胞が増幅される免疫学的反応に関連して使用される。好ましくは、クローン性増殖は、免疫エフェクター細胞の分化につながる。
【0156】
「抗原」という用語は、好ましくは免疫反応を誘導するために、薬剤が指向される及び/又は指向されるべきエピトープを含むタンパク質又はペプチド等の分子に関する。T細胞エピトープ等の抗原又はそのプロセシング産物は、一実施形態において、T細胞受容体若しくはB細胞受容体と結合するか、又は抗体等の免疫グロブリン分子と結合する。従って、抗原又はそのプロセシング産物は、抗体又はTリンパ球(T細胞)と特異的に反応し得る。好ましい実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原、例えばCLDN18.2(即ち、細胞質、細胞表面、及び細胞核に由来し得るがん細胞の構成成分)であり、特に、好ましくは細胞内で又はがん細胞の表面抗原として大量に産生される抗原である。
【0157】
本発明に関連して、「腫瘍関連抗原」又は「がん関連抗原」という用語は、好ましくは、タンパク質であって、正常な条件下では、限られた数の組織及び/若しくは器官において又は特定の発生段階において特異的に発現され、1つ又は複数の腫瘍組織又はがん組織において発現されるか又は異常に発現されるタンパク質に関する。本発明に関連して、腫瘍関連抗原は、好ましくは、がん細胞の細胞表面に関連し、好ましくは、正常組織では発現されないか、又はほとんど発現されない。
【0158】
「エピトープ」という用語は、分子中の抗原決定基を指しており、例えば、免疫系により認識される分子中の部分(例えば、抗体により認識される部分)を指す。例えば、エピトープとは、免疫系により認識される、抗原上の個別の立体的な部位のことである。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖等の化学的に活性な分子の表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。コンフォメーション型エピトープ及び非コンフォメーション型エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。タンパク質のエピトープは、好ましくは、前記タンパク質の連続部分又は不連続部分を含み、好ましくは5~100個、好ましくは5~50個、より好ましくは8~30個、最も好ましくは10~25個のアミノ酸の長さであり、例えば、エピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のアミノ酸の長さであり得る。
【0159】
「結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の抗原に結合可能なあらゆる薬剤を指す。本発明のある特定の実施形態において、結合剤は、抗体、抗体断片、又はこれらの構築物である。結合剤はまた、合成、改変、又は非天然起源の部位、特に非ペプチド部位も含み得る。そのような部位は、例えば、抗体又は抗体断片等の所望の抗原結合官能性又は領域を連結し得る。一実施形態において、結合剤は、抗原結合CDR又は可変
領域を含む合成構築物である。
【0160】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリのタンパク質に関するものであり、好ましくは、抗体又はB細胞受容体(BCR)等の抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン(即ち、免疫グロブリンドメイン)を特徴とする。この用語は、膜結合型免疫グロブリン及び可溶性免疫グロブリンを包含する。可溶性免疫グロブリンは、一般に抗体と呼ばれる。免疫グロブリンは、一般に、数本の鎖(典型的には、ジスルフィド結合を介して結合した2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖)を含む。これらの鎖は、主に、VL(可変軽鎖)ドメイン、CL(定常軽鎖)ドメイン、VH(可変重鎖)ドメイン、及びCH(定常重鎖)ドメインCH1、CH2、CH3、及びCH4等の免疫グロブリンドメインで構成されている。哺乳類の免疫グロブリン重鎖には、α、δ、ε、γ、及びμの5つのタイプが存在しており、様々なクラスの免疫グロブリン(即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)を構成している。免疫グロブリンのクラスはまた、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる免疫グロブリンのクラスを指す「アイソタイプ」(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgM)とも称される。特定のアイソタイプ(例えばIgG1)が本明細書で言及される場合には、この用語は、特定のアイソタイプ配列(例えば、特定のIgG1配列)に限定されるものではなく、抗体が他のアイソタイプよりもこのアイソタイプ(例えばIgG1)に近い配列であることを示すために使用される。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜又は表面免疫グロブリンの重鎖は、カルボキシ末端で膜貫通ドメイン及び短い細胞質ドメインを含む。哺乳類では、2種類の軽鎖(即ち、ラムダ及びカッパ)が存在している。免疫グロブリン鎖は、可変領域及び定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの様々なアイソタイプ内で本質的に保存されており、可変部分は、高度に多様化しており、抗原認識を担っている。
【0161】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン、又はその抗原結合部分を指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びキメラ抗体を含む。各重鎖は、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)並びに重鎖定常領域(EUナンバリングに従ってヒトIgG1のアミノ酸残基118~447)で構成されており、CH1は、典型的には、ペプチドリンカー(「ヒンジ」とも呼ばれる)によりCH2-CH3に連結されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略される)で構成されている。「領域」という用語、及び「ドメイン」という用語は、本明細書では互換的に使用される。VHドメイン及びVLドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存性が高い領域が点在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと下記の順序で配置されている3つのCDRと4つのFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196,901-917(1987)も参照されたい)。別途述べない限り、又は文脈と矛盾しない限り、本明細書におけるCDR配列は、Kabatナンバリングシステムに従って特定され、本発明における定常領域のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリングに従っている(Edelman
et al.,(1969)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edit.1991 NIH Publication No.91-3242)。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織
又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0162】
「...の位置に対応するアミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトIgG1重鎖におけるアミノ酸位置の番号を指す。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントにより見出され得る。そのため、別の配列中のアミノ酸又はセグメントに「対応する」ある配列中のアミノ酸又はセグメントは、典型的にはデフォルト設定でALIGN、ClustalW、又は同様のもの等の標準配列アラインメントプログラムを使用して、他のアミノ酸又はセグメントと整列し、ヒトIgG1重鎖と少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有するものである。配列、又は配列中のセグメントを整列させ、それにより配列中の対応する位置を本発明に係るアミノ酸位置に決定する方法は、当該技術分野で公知であるとみなされる。
【0163】
「IgG Fcリガンド」という用語は、本明細書で使用される場合、IgG免疫グロブリンのFc領域に結合してFc/Fcリガンド複合体を形成する分子(好ましくはポリペプチド)を指す。Fcリガンドとして、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、及びウイルスFcγRが挙げられるが、これらに限定されない。Fcリガンドとして、FcγRに相同なFc受容体のファミリであるFc受容体相同体(FcRH)も挙げられる(Davis et al.,(2002)Immunol.Rev.190:123-136)。特定のIgG Fcリガンドは、FcRn及びFcガンマ受容体である。「Fcリガンド」は、本明細書で使用される場合、マウス、ヒト、及びカニクイザル等の任意の生物由来であり得る。
【0164】
「Fcガンマ受容体」、「FcγR」、又は「FcガンマR」は、IgG Fc領域に結合し、FcγR遺伝子によりコードされるタンパク質のファミリの任意のメンバーを指す。ヒトでは、このファミリとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:FcγRI(CD64)、例えば、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、及びFcγRIc;FcγRII(CD32)、例えば、アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1及びFcγRIIb-2を含む)、並びにFcγRIIc;並びにFcγRIII(CD16)、例えば、アイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びF158を含む)、並びにFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIb-NA1及びFcγRIIb-NA2を含む)(Jefferis et al.,(2002)Immunol.Lett.82:57-65)。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルが挙げられるがこれらに限定されない任意の生物由来であり得る。マウスFcγRとして、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、及びFcγRIII-2(CD16-2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
「FcRn」又は「新生児Fc受容体」は、本明細書で使用される場合、IgG Fc領域に結合し、FcRn遺伝子により少なくとも部分的にコードされるタンパク質に関する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルが挙げられるがこれらに限定されない任意の生物由来であり得る。機能的FcRnタンパク質は、重鎖(FcRn遺伝子によりコードされる)及び軽鎖(ベータ2-ミクログロブリン)と称されることが多い2つのポリペプチドを含む。別途規定しない限り、「FcRn」又は「FcRnタンパク質」は、FcRn重鎖とベータ-2-ミクログロブリンとの複合体を指す。「FcRnバリアント」は、本明細書で使用される場合、FcRn受容体への結合を増加させ、血清中半減期も増加し得るものである。
【0166】
「Fc」、又は「Fc領域」、又は「Fcドメイン」は、本明細書で使用される場合、
IgG分子のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択的にヒンジ等のペプチドリンカーも含むポリペプチドを指す。ヒトIgG1のCH2-CH3ドメインは、EUナンバリングに従って、アミノ酸231~447位を含み、ヒンジは216~230位を含む。そのため、IgGに関して、「Fcドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、EUナンバリングに従ってアミノ酸231~447位(CH2-CH3)及び216~447位(ヒンジ-CH2-CH3)、並びに機能的断片を含むその機能的バリアントを含む。「Fc断片」は、より少ないアミノ酸(例えば、N末端又はC末端切断バリアント)を含み得るが、標準的な方法(例えば、サイズに基づく方法(例えば、非変性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等)を使用して検出され得るように、別のFcドメイン又はFc断片と二量体を形成する能力を依然として保持しており、そのため機能的バリアントである。本発明によれば、IgG Fcドメインは、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、又はIgG4からのFcドメイン等のヒトIgG Fcドメインである。
【0167】
「ヒンジ」、「ヒンジ領域」、「抗体ヒンジ領域」、又は「ヒンジドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン(例えばIgG)のCH1とCH2との間のアミノ酸を含むペプチドリンカーを指す。構造的に、天然に存在するIgG(例えばIgG1)分子では、CH1は、EUナンバリングに従ってアミノ酸215位で終わり、CH2は、EUナンバリングに従ってアミノ酸231位で始まる。そのため、IgGの場合、ヒンジは、EUナンバリングに従ってアミノ酸216~230位を含む。
【0168】
「バリアントFcドメイン」は、親Fcドメインと比較してアミノ酸改変を含む。そのため、「バリアントIgG1 Fcドメイン」(例えばバリアントヒトIgG1 Fcドメイン)は、IgG1 Fcドメイン(例えばヒトIgG1 Fcドメイン)の位置に対応する位置でアミノ酸改変(例えば、アミノ酸の置換及び/又は欠失)を含み、好ましくは、親Fcドメインの機能的バリアントである。そのようなバリアントIgG Fcドメインは、対応する親ヒトIgG Fcドメインに対する少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を保持する。任意選択的に、バリアントFcドメインは、親Fcドメインと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のアミノ酸改変を有し得る。任意選択的に、バリアントFcドメインは、親Fcドメインと比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のアミノ酸改変を有し得る。好ましくは、本明細書で説明されている技術又は当該技術分野で公知の技術(例えば、非変性ゲル電気泳動)を使用して測定した場合に、バリアントFcドメインは、別のFcドメインと二量体を形成する能力を保持する。
【0169】
Fc改変
本明細書で説明されている結合剤は、少なくとも3本の異なるポリペプチド鎖を含み、2本のポリペプチド鎖(例えば、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖)は、好ましくはIgG(例えばIgG1、特にヒトIgG1)に由来するCH2-CH3領域を含む。好ましくは、CH2-CH3領域を含む前記第1及び第2のポリペプチド鎖は、相互作用し得、例えば二量体化し得、それにより、本明細書で説明されている結合剤の前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むヘテロ二量体が形成される。好ましくは、本発明の結合剤のCH2-CH3領域は、IgG1(より好ましくはヒトIgG1)に由来しているが、他の血清型由来のCH2及びCH3も、本明細書で説明されているように使用し得る。さらに、本明細書で論じるように、本発明の結合剤は、例えば産生宿主細胞内で、自己組織化する。例えば、第1のポリペプチド鎖のCH2は、第2のポリペプチド鎖のCH2と相互作用し、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH3は、第2のポリペプチド鎖
のCH3と相互作用し、それによりFc断片が形成されることが想定される。このFc断片は、ヒトIgG1に関して本明細書で論じられている1つ又は複数のアミノ酸改変又は「Fc改変」を含んで、第1及び第2のポリペプチド鎖のCH2間並びに/若しくは第1及び第2のポリペプチド鎖のCH3間の相互作用を促進し得、並びに/又は1種類のポリペプチド鎖のみを含むホモ多量体よりも互いに相互作用する第1及び第2のポリペプチド鎖を含むヘテロ多量体(例えばヘテロ二量体)の精製を容易にし得、並びに/又は本明細書で論じられているさらなる有益な機能性を付与し得る。本明細書で論じられているアミノ酸改変はまた、CH1ドメインにも含まれ得、例えば、本発明の結合剤の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖内にも含まれ得る。加えて、ペプチドリンカー、例えば、scFv部分内のペプチドリンカー、又は結合剤のさらなるドメインを接続するペプチドリンカー、例えば、CH1及びscFv、又はCH2及びscFv、又はCH1及びCH2は、本明細書で説明されている1つ又は複数のアミノ酸改変を含み得る。例えば、CH2-CH3領域を別の領域又はドメイン(例えば、VH(CD3)、VL(CD3)、又はCH1)に連結するペプチドリンカーは、天然に存在するIgG1のEUナンバリングに従って220位(通常、システインが見出され得る)に対応するアミノ酸位置でセリンを有し得る。ヒトIgG1の220位に対応する前記位置でセリンを含むペプチドリンカーを使用することにより、CH2-CH3領域を含む2本の鎖間のジスルフィド形成が減少する。
【0170】
そのため、本発明の結合剤の形成は、好ましくは、ホモ二量体から離れたヘテロ二量体の単純な精製を可能にする「pI改変」と併せて、及び任意選択的に、本明細書で論じられている「アブレーション改変(ablation modification)」及びさらなるFc改変を組み合わせて、本明細書で説明されているホモ二量体よりも前記単量体により形成されるヘテロ二量体の形成を「偏らせる」もの等のCH1、CH2、及び/又はCH3を含むアミノ酸置換を含む様々な単量体(例えば、本明細書で説明されている第1及び第2のポリペプチド鎖)の使用に基づいている。当業者は、CH1、CH2、及び/又はCH3ドメイン、並びにペプチドリンカーに関して本明細書で論じられているアミノ酸改変の内のいずれか(例えばヒンジバリアント)を、本明細書で論じられているか又は当該技術分野で公知のさらなるアミノ酸改変と組み合わせ得ることを理解するだろう。例えば、非対称(skew)改変及びpI改変の内のいずれかを、独立して、アブレーション改変及び他のFc改変と組み合わせ得る。本発明に係るFc改変は、アミノ酸の挿入、付加、欠失、又は置換であり得る。
【0171】
本明細書で論じられているFc改変は、これを構成するアミノ酸改変に従って定義される。例えば、N434Sは、親ヒトIgG1 Fcポリペプチドに対する及びEUナンバリングに従って434位のセリンのアスパラギンへの置換を有するFc改変である。親アミノ酸の同一性は特定され得ず、その場合、前記バリアントは434Sと称され、即ち、前記Fc改変を構成するCH2-CH3領域は、EUナンバリングに従ってヒトIgG1の434位に対応するアミノ酸位置でセリンを含む。
【0172】
pI改変
pI改変により、単量体間の等電点(pI)の差違が増加し、ホモ多量体タンパク質及びヘテロ多量体タンパク質の等電点精製が可能となる。一般に、pI改変により、ポリペプチド鎖のpIが増加するか(塩基性変化)、又はポリペプチド鎖のpIが減少する(酸性変化)。
【0173】
本明細書で論じるように、2本のポリペプチド鎖間の少なくとも0.1、例えば0.2、0.3、0.4、又は0.5のpI差により、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動、又は当該技術分野で公知の等電点に敏感な他の方法による分離が可能となり得る。従って、互いに相互作用するポリペプチド鎖のそれぞれ(例えば、本明細書で
説明されている第1及び第2のポリペプチド鎖)のpIを変更するpI改変の含有により、前記ポリペプチド鎖のそれぞれが異なるpIを有し、前記ポリペプチド鎖により形成されるヘテロ多量体もまた、異なるpIを有し、前記ヘテロ多量体を含む結合剤の等電点精製が容易となる。これらの置換はまた、任意の汚染された不要なホモ多量体又はヘテロ多量体の形成の決定及びモニタリングにも役立つ。
【0174】
pI改変は、重鎖定常領域を含むヘテロ多量体の一方又は両方の鎖(例えば、本発明の結合剤の第1及び第2のポリペプチド鎖)内、並びにCH1、CH2、及び/若しくはCH3内、並びに/又はscFv部分のVHドメイン及びVLドメインを連結するリンカー等のペプチドリンカー内に含まれ得る。例えば、pIバリアントは、ホモ多量体形成を減少させるか又は防止するために、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖に含まれ得る。典型的には、第1及び第2のポリペプチド鎖の両方に含まれる場合には、一方のポリペプチド鎖のpIが増加し、第2のポリペプチド鎖のpIが減少するようなpIバリアントが使用される。このことを、例えば、本明細書で論じるように、中性アミノ酸残基を正又は負に荷電したアミノ酸残基で置き換えることにより若しくはその逆により、又は荷電したアミノ酸残基を正電荷から負電荷に変化させることにより若しくはその逆により、行ない得る。従って、本発明のある特定の実施形態において、本明細書で説明されている結合剤のポリペプチド鎖の少なくとも1つにおけるpIの十分な変化は、例えば第1及び第2のポリペプチド鎖のヘテロ多量体がホモ多量体から離れて精製され得るように提供される。ある特定の実施形態において、本発明では、pH単位でわずか0.1、0.2、0.3、0.4、若しくは0.5、又はより高いpI差が使用される。当業者により理解されるように、良好な分離を得るために本発明の結合剤の内の1つ又は複数のポリペプチド鎖に含まれるpI改変の量は、ポリペプチド鎖の開始pI、CH領域のpI、Fv足場領域等に部分的に依存するであろう。pIの変化を、当該技術分野で公知の任意の方法により算出し得、例えば、Sillero及びMaldonadoにより説明されている方法を使用して(Sillero,Maldonado,(2006)Comput.Biol.Med.36(2):157-166)、例えばCH領域に基づいて算出し得る。或いは、各ポリペプチド鎖のpIを比較し得る。加えて、ヘテロ多量体を、そのサイズに従って分離し得る。
【0175】
ある特定の実施形態において、pI改変、非対称改変、さらなるFc改変、又はアブレーション改変等は、本発明の結合剤の可変領域には含まれない。
【0176】
ある特定の実施形態において、pI改変は、異なるIgGアイソタイプに由来し、そのため、それぞれのポリペプチド鎖のpIは、免疫原性を導入することなく変化する(米国特許出願公開第2014/0370013号明細書を参照されたい)。好ましくは、pI改変は、ヒトIgGアイソタイプに由来し、そのため免疫原性を導入するリスクが低減される。本明細書で論じられている改変は、ヒトIgG1に関連して説明されているが、全てのIgGアイソタイプは、アイソタイプハイブリッドと同様に、このように変更され得る。重鎖定常ドメインがIgG2-4由来である場合には、R133E及びR133Qも使用し得る。
【0177】
IgG1は、高いエフェクター機能等の様々な理由のために、治療用抗体の一般的なアイソタイプである。しかしながら、IgG1のCH領域は、IgG2のCH領域と比べてpIが高い。特定の位置でIgG2由来残基をIgG1骨格に導入することにより、得られる単量体のpIが低下するか又は上昇し、加えて、血清中半減期が増加し得る。例えば、ヒトIgG1は、EUナンバリングに従って137位でグリシン(pI約5.97)を有しており、ヒトIgG2は、対応する位置でグルタミン酸(pI約3.22)を有しており;グルタミン酸残基をグリシン残基に置換することにより、得られるポリペプチドのpIが影響を受ける。抗体定常領域のpIの低下により、インビボでの血清中半減期も増
加し得る(米国特許出願第13/194,904号明細書;Ghetie and Ward,1997,Immunol Today.18(12):592-598を参照されたい)。同様に、pIが低い可変領域は、血清中半減期を延長し得る(Igawa et al.,(2010)PEDS 23(5):385-392を参照されたい)。
【0178】
pI改変の好ましい組み合わせにおいて、あるポリペプチド鎖(例えば、例えばVH(CLDN18.2)、CH1、CH2、及びCH3を含む本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖)は、EUナンバリングに従って208位のアスパラギン酸残基、295位のグルタミン酸残基、384位のアスパラギン酸残基、418位のグルタミン酸残基、及び421位のアスパラギン酸残基(即ち、ヒトIgG1に関するN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D)を含み、並びに別のポリペプチド鎖(例えば、例えばVH(CD3)及びVL(CD3)、CH2及びCH3、並びに任意選択的なVH(CLDN18.2)及びCH1を含む前記結合剤の第2のポリペプチド鎖)は、VH(CD3)及びVL(CD3)を連結する正荷電ペプチドリンカー(「scFvリンカー」)を含み、例えば、アミノ酸配列(GKPGS)4又はその機能的バリアントを含むか又はからなるポリペプチドリンカーを含む。
【0179】
CH1を含まず、そのためEUナンバリングに従って208位に対応するアミノ酸位置を含まないポリペプチド鎖において、下記の負pI改変を使用し得る:EUナンバリングに従って295位のグルタミン酸残基、384位のアスパラギン酸残基、418位のグルタミン酸残基、及び421位のアスパラギン酸残基(ヒトIgG1:Q295E/N384D/Q418E/N421D)。
【0180】
いくつかの実施形態において、あるポリペプチド鎖(例えば第1のポリペプチド鎖)は、本明細書で論じられているバリアントのセットを含み、これと相互作用するポリペプチド鎖(例えば、第2のポリペプチド鎖)は、荷電scFvリンカーを含み、例えば、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12からなる群から選択される正荷電scFvリンカー若しくはその機能的バリアント、又は配列番号13、14、15、16、17、18、19、及び20からなる群から選択される負荷電scFvリンカー若しくはその機能的バリアントを含む。
【0181】
非対称改変
「非対称改変」とは、立体的改変であって、そのような改変を含むポリペプチド鎖の相互作用を促進する立体的改変のことである。立体的改変を使用するする1つの戦略は、当該技術分野では、アミノ酸操作を指す「ノブ及びホール」と称されており、典型的にはFc領域(CH2-CH3)中の第1の重鎖ポリペプチドに突起が導入されており、典型的にはFc領域(CH2-CH3)中の第2の重鎖ポリペプチドに対応する空洞が導入されており、その結果、この突起は、これら2つの重鎖の界面で空洞中に配置されて、ヘテロ二量体形成を促進してホモ二量体形成を妨げ得る(米国特許出願第61/596,846号明細書,Ridgway et al.,(1996)Protein Engineering 9(7):617;Atwell et al.,(1997)J.Mol.Biol.270:26;米国特許第8,216,805号明細書を参照されたい)。「突起」は、第1の重鎖ポリペプチドの界面からの小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖に置き換えることにより構築されている。第2の重鎖ポリペプチドの界面では、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖に置き換えることにより、突起と同一サイズか又は類似サイズの補償的「空洞」が形成される(米国特許第5,731,168号明細書)。「ノブ及びホール」改変をジスルフィド結合と組み合わせて、前記第1及び第2の重鎖ポリペプチドのヘテロ多量体化、例えば、ヘテロ二量体化へ形成を偏らせ得る(Merchant et al.,(1998)Nature Biotech.16:677を参照されたい)。
【0182】
有用な非対称改変として下記の二重改変の対が挙げられるが、これらに限定されず、二重改変の各対の一部は、本発明の結合剤の一方のポリペプチド鎖(例えば、本明細書で説明されている第1のポリペプチド鎖)に存在しており、別の部分は、本発明の結合剤の別のポリペプチド鎖(例えば、本明細書で説明されている第2のポリペプチド鎖)に存在している:EUナンバリングに従い、ヒトIgG1に関するS364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368D/K370S:S364K/E357Q;L368E/K370S:S364K;T411E/K360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L;K370S:S364K/E357Q;T366S/L368A/Y407V:T366W、及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354C。好ましくは、本発明の結合剤では、L368D/K370S:S364K/E357Qが使用される。
【0183】
本明細書で説明されている非対称改変はまた、pIにも影響を及ぼし得(Gunasekaran et al.,(2010)J.Biol.Chem.285(25):19637を参照されたい)、そのため精製にも影響を及ぼし得、従って、pIバリアントとも考えられる可能性がある。
【0184】
アブレーション改変
「アブレーション」は、本明細書では、活性の減少又は除去を意味する。「FcγR結合を消失させる」とは、1つ又は複数のアブレーション改変を含むFc領域が、この特定の改変を含まないFc領域と比較してFcγR結合活性が50%を超えて消失していることを意味する。好ましくは、1つ又は複数のアブレーション改変を含むFc領域は、70%、80%、90%、95%、98%を超えるか又はさらに多いFcγR結合活性の消失を有する。好ましくは、この特定の改変を含まないFc領域と比較して1つ又は複数のアブレーション改変を含むFc領域のFcγR結合活性は、Biacore、SPR、又はBLIアッセイにおいて検出可能な結合のレベルを下回る。
【0185】
公知であるように、ヒトIgG1のFcドメインは、Fcγ受容体と最も高い結合を有しており、そのため、結合剤の定常ドメインがIgG1に由来する場合には、アブレーション改変を使用し得る。或いは、又はアブレーション改変に加えて、グリコシル化位置297の変異(一般にA又はSへの変異)は、例えば、FcγRIIIaへの結合を著しく除去し得る。ヒトIgG2及びIgG4は、Fcγ受容体への結合が当然低く(Parren et al.,1992,J.Clin Invest.90:1537-1546;Bruhns et al.,2009,Blood 113:3716-3725)、そのため、IgG2又はIgG4に由来するCH1、CH2、及びCH3ドメインを、本発明の結合剤におけるアブレーション改変の有無にかかわらず使用し得る。FcγR結合を除去するアミノ酸改変は、例えば、Dall’Acqua WF et al.,J Immunol.177(2):1129-1138(2006)及びHezareh M,J Virol.;75(24):12161-12168(2001)で説明されている。
【0186】
そのため、本発明の結合剤のFc部分は、1つ又は複数の「FcγRアブレーション改変」又は「Fcノックアウト(FcKO若しくはKO)改変」を含み得る。ある特定の実施形態において、Fcγ受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa等)の1つ又は複数又は全てに対するFcドメインの結合を低減させるか又は除去することが望ましい。いくつかの実施形態において、ADCC活性を消失させるか又は著しく低減させるために、本発明の結合剤等のCD3と1価で結合する結合剤のFcγRIIIa結合を除去することが望ましい。そのため、本発明の結合剤において
、本発明の結合剤のポリペプチド鎖(例えば、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖)の内の1つ又は複数は、1つ又は複数のFcγRアブレーションバリアントを構成する。好ましい実施形態において、1つ又は複数のアブレーションバリアントは、EUナンバリングに従い、ヒトIgG1に関するG236R、S239G、S239K、S239Q、S239R、V266D、S267K、S267R、H268K、E269R、299R、299K、K322A、A327G、A327L、A327N、A327Q、L328E、L328R、P329A、P329H、P329K、A330L、A330S/P331S、I332K、I332R、V266D/A327Q、V266D/P329K、S267R/A327Q、S267R/P329K、G236R/L328R、E233P/L234V/L235A/G236_/S267K、E233P/L234V/L235A/G236_/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del、S239K/S267K、267K/P329K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K/A327G、及びE233P/L234V/L235A/G236delからなる群から選択され、「del」は、示された位置でのアミノ酸欠失を表す。好ましくは、本発明の結合剤の第1及び第2のポリペプチド鎖の両方において、EUナンバリングに従い、ヒトIgG1に関する改変E233P/L234V/L235A/G236_/S267Kが使用される。本明細書で開示されているアブレーション改変は、FcγR結合を除去するが、一般にFcRn結合は除去しないことに留意すべきである。しかしながら、結合剤の血清中半減期を減少させるか又は増加させるためにFcRnへの結合を減少させるか又は増加させる技術が公知であり、使用され得る(例えば、Dall’Acqua et al.2006,J.Biol.Chem.,281:23514-24;Hinton et al.2006,J.Immunol.,176:346-56;及びZalevsky et al.2010 Nat.Biotechnol.,28:157-9を参照されたい)。
【0187】
例えば、本発明の結合剤において、第1のポリペプチド鎖は、配列番号28に従うアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号30に従うアミノ酸配列を含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は、L368D/K370S:S364K/E357Qセットの非対称改変を含み、第1のポリペプチド鎖は、N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421DセットのpI改変をさらに含み、第1及び第2のポリペプチド鎖は、両方とも、E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kセットのアブレーション改変をさらに含み、例えば、第1のポリペプチド鎖は、VH(CLDN18.2)及びCH1を含み、第2のポリペプチド鎖は、scFv(CD3)を含み、任意選択的にVH(CLDN18.2)及びCH1を含む。当然のことながら、さらなる改変が、それぞれの結合剤のアミノ酸配列に含まれ得、例えば、結合剤は、上記で論じた改変に加えて、置換等のさらなるアミノ酸改変を含み得る。
【0188】
さらなるFc改変
pI改変、非対称改変、及びアブレーション改変等の、本明細書で説明されている他の改変に加えて、1つ又は複数のFcγR受容体の結合を変化させる、FcRn受容体への結合を変化させる等の多くの有用な改変を使用し得る。
【0189】
従って、本発明の結合剤の1種又は複数種のFcγR受容体への結合を変更するために行なわれ得る多くの有用なアミノ酸置換が存在している。結合を増加させる置換、及び結合を減少させる置換も有用であり得る。例えば、FcγRIIIaへの結合が増加するとADCCが増加することが知られている。同様に、FcγRIIbへの結合の減少も有益であり得る。本発明で使用され得るアミノ酸置換として、米国特許出願第11/124,
620号明細書、同第11/174,287号明細書、同第11/396,495号明細書、同第11/538,406号明細書(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で列挙されているものが挙げられる。本発明の結合剤に組み込まれ得る特に有用なアミノ酸置換として、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D/332E/330L、243A、243L、264A、264V、及び299Tが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
加えて、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/341,769号明細書で開示されているように、FcRnへの結合を増加させ、血清中半減期を増加させるのに有用なさらなる改変が存在しており、これとして、EUナンバリングに従って434S、434A、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I/434S、436V/434S、436V/428L、及び259I/308F/428Lが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
加えて、Fcヘテロ二量体を形成する一方又は両方のポリペプチド鎖(好ましくは、両方のポリペプチド鎖)のCH3は、より長い血清中半減期をもたらす改変M428L/N434Sを含み得る。
【0192】
当業者に理解されるように、本明細書で論じられている改変を、独立して他の改変と組み合わせ得る。一実施形態において、本発明の結合剤のあるポリペプチド鎖(例えば、第1のポリペプチド鎖)は、EUナンバリングに従ってN208D、Q295E、N384D、Q418E、及びN481Dを含み、この結合剤の別のポリペプチド鎖(例えば、第2のポリペプチド鎖)は、本明細書で説明されている正荷電scFvリンカーを含む。好ましくは、結合剤の第1のポリペプチド鎖は、EUナンバリングに従ってK370S及びL368Dをさらに含み、この結合剤の第2のポリペプチド鎖は、EUナンバリングに従ってE357Q及びS364Kをさらに含む。加えて、好ましい実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖は、両方とも、EUナンバリングに従ってE233P、L234V、L235A、G236del、及びS267Kをさらに含む。最も好ましくは、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、N208D、E233P、L234V、L235A、G236del、S267K、Q295E、L368D、K370S、N384D、Q418E、及びN481Dを含み、この結合剤の第2のポリペプチド鎖は、E233P、L234V、L235A、G236del、S267K、E357Q、及びS364Kを含み、任意選択的に、典型的には軽鎖と対形成するシステインを除去するためにC220Sを含む。
【0193】
「モノクローナル結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」を含み、単一分子組成の結合剤分子の調製物を指す。モノクローナル結合剤組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する、単一の結合特異性を示す結合剤を指す。ヒトモノクローナル結合剤を、不死化細胞と融合した、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物又はトランス染色体非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得られたハイブリドーマ(例えばB細胞)により生成し得る。
【0194】
「組換え結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、「組換え抗体」を含み、組換え手段により調製されるか、発現されるか、作製されるか、又は単離された全ての結合剤を含み、例えば、(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるか若しくはトランス染色体である動物(例えば、マウス)又はこれから調製されたハイブリ
ドーマから単離された結合剤、(b)結合剤を発現するように形質転換された宿主細胞(例えば、トランスフェクトーマ)から単離された結合剤、(c)組換え、コンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された結合剤、及び(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段により調製されるか、発現されるか、作製されるか、又は単離された結合剤を含む。
【0195】
「ヒト結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」を含み、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する結合剤を含むことが意図されている。ヒト結合剤は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発により導入された変異、又はインビボでの体細胞変異により導入された変異)を含み得る。
【0196】
「ヒト化結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」を含み、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指しており、この分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づいている。このことは、例えば、抗原結合部位を一緒に形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に移植することで達成され得る(国際公開第92/22653号パンフレット及び欧州特許第0629240号明細書を参照されたい)。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメインを含み得るか、又は可変ドメインの適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)のみを含み得る。親結合剤の結合親和性及び特異性を完全に再構成するために、この親結合剤(即ち、非ヒト結合剤、例えばマウス抗体)のフレームワーク残基のヒトフレームワーク領域への置換(逆変異)が必要な場合がある。構造的に相同なモデリングは、結合剤の結合特性に重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を特定することに役立ち得る。抗原結合部位は、野生型であってもよいし、1つ又は複数のアミノ酸置換により改変されてもよく、例えば、ヒト免疫グロブリンにより密接に似るように改変されてもよい。ヒト化結合剤の一部の形態は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体の6つのCDR全てを含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の結合剤(例えば抗体)に関して変更された1つ又は複数のCDRを有する。そのため、ヒト化結合剤は、非ヒトCDR配列、主として、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ又は複数のアミノ酸逆変異を任意選択的に含むヒトフレームワーク領域、及び完全ヒト定常領域を含み得る。
【0197】
「キメラ結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」を含み、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの一部が、特定の種に由来するか又は特定のクラスに属する結合剤(例えば抗体)の対応する配列と相同であり、この鎖の残りのセグメントが、別のものの対応する配列と相同である結合剤を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳類のある種に由来する抗体の可変領域を模倣しており、定常部分は、別の種に由来する抗体の配列と相同である。そのようなキメラ形態に対する1つの明確な利点は、例えばヒト細胞調製物由来の定常領域と組み合わせて、非ヒト宿主生物由来の容易に入手可能なB細胞又はハイブリドーマを使用して、現在公知の供給源から可変領域を簡便に得ることができることである。可変領域は、調製が容易であり、特異性が供給源による影響を受けないという利点を有しているが、定常領域はヒトであり、非ヒト供給源からの定常領域と比べて、結合剤を注射した場合にヒト対象から免疫反応を誘発する可能性が低い。しかしながら、この定義は、この特定の例には限定されない。
【0198】
結合剤又はその断片、例えば、可変領域及び/又は定常領域は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びヒトが挙げられるがこれらに限定されない様々な種に由来し得る。
【0199】
本明細書で説明されている免疫グロブリンは、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgG1(例えば、EUナンバリングに従ってアミノ酸356位(D又はE)及び358位(L又はM)で多型を有するアロタイプ)、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、並びにIgD抗体を含む。様々な実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1抗体、より具体的には、IgG1、カッパ、又はIgG1、ラムダアイソタイプ(即ち、IgG1、κ、λ)IgG2抗体(例えば、IgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えば、IgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えば、IgG3、κ、λ)、又はIgG4抗体(例えば、IgG4、κ、λ)である。IgG1アロタイプ356D/358Mに関して本明細書で説明されているアミノ酸配列はまた、アロタイプ356E/358Lも含む。
【0200】
「IgGサブクラス改変」又は「アイソタイプ改変」という用語は、あるIgGアイソタイプの1つのアミノ酸を、アラインされた異なるIgGアイソタイプの対応するアミノ酸に変換するアミノ酸改変を意味する。例えば、IgG1はチロシンを含み、IgG2はフェニルアラニンを含むことから、EUナンバリングに従ってアミノ酸296位でのフェニルアラニンであるIgG2でのF296Y置換は、IgGサブクラス改変とみなされる。
【0201】
本明細書で使用される場合、「異種結合剤」は、「異種抗体」を含み、そのような結合剤を産生するトランスジェニック生物に関連して定義される。この用語は、トランスジェニック生物からならない生物で見出されるものに対応するアミノ酸配列又はコードする核酸配列を有し、一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する結合剤を指す。
【0202】
本明細書で使用される場合、「ヘテロハイブリッド結合剤」は、「ヘテロハイブリッド抗体」を含み、様々な生物起源の軽鎖及び重鎖を有する結合剤を指す。例えば、マウス軽鎖と会合したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。
【0203】
本明細書で説明されている抗体等の結合剤は、好ましくは単離されている。「単離されている」は、本明細書で使用される場合、抗原特異性が異なる他の薬剤を実質的に含まない結合剤を指すことが意図されている(例えば、CLDN18.2及びCD3に特異的に結合する単離された結合剤は、CLDN18.2及びCD3以外の抗原に特異的に結合する結合剤を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトCLDN18.2のエピトープ、アイソフォーム、又はバリアントに特異的に結合する単離された結合剤は、他の関連抗原、例えば、他の種由来の関連抗原(例えば、CLDN18.2種の相同体)に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された結合剤は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0204】
抗体等の結合剤の「抗原結合部分」(若しくは単に「結合部分」)、又は抗体等の結合剤の「抗原結合断片」(若しくは単に「結合断片」)という用語、又は類似の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する結合剤の1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片により実施され得ることが分かっている。抗体等の結合剤の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例として、下記が挙げられる:(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCHドメインからなる1価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(iii)F(ab’)2断片に由来し、アルキル化され得るか又は酵素、毒素、若しくは目的の他のタンパク質とのコンジュゲーションで利用され得る遊離スルフヒドリル基を含むFab’断片であって、このFab’は、Fcのごく一部を含み得る、Fab’断片;(iv)VHドメイン及びCHドメインからなるFd断片;(v)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(198
9) Nature 341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、並びに(viii)任意選択的に合成リンカーにより連結され得る2つ以上の単離CDRの組み合わせ。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、これらは、組換え法を使用して、VLドメイン及びVHドメインが対合して1価分子を形成する1本のタンパク質鎖として生成されることを可能にする合成リンカーにより連結され得る(一本鎖Fv(scFv)としても公知である;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体はまた、抗体等の結合剤の「抗原結合断片」という用語に包含されることも意図されている。さらなる例は、下記を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である:(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、さらに、米国特許出願公開第2003/0118592号明細書及び同第2003/0133939号明細書で開示されている。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、これらの断片は、インタクトな抗体と同様の方法で、有用性に関してスクリーニングされる。
【0205】
一本鎖可変フラグメント(scFv)は、例えば配列番号2~20で表されるscFvリンカー等の通常10~約30個のアミノ酸の短いリンカーペプチドで連結された、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。このリンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが富化されており、溶解性のためにセリン又はスレオニンが富化されており、VHのN末端とVLのC末端とを連結し得るか、又はその逆である。2価(divalent)(又は2価(bivalent))の一本鎖可変断片(ジ-scFvs、ビ-scFvs)を、2つのscFvsを連結することにより操作し得る。このことを、2つのVHドメイン及び2つのVLドメインを有する単一ペプチド鎖を作製することにより行ない得、タンデムscFvが得られる。本発明はまた、複数のscFvs結合ドメインを含む多重特異性分子も含む。一般的な一柔軟連結ペプチドは、(G4S)xであり、式中、xは、2、3、4、5、又は6であり得る。好ましくは、scFvのVHドメイン及びVLドメインを連結するリンカーは、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアントを含み、好ましくはからなり、式中、xは、2、3、4、5、又は6であり得る。任意選択的に、VH及びVLの会合を、1つ又は複数の分子間ジスルフィド結合により安定化させ得る。
【0206】
別の可能性は、2つの可変領域が一緒に折り畳むには短すぎる(約5個のアミノ酸)リンカーペプチドを有するscFvの作成であり、scFvは二量体化される。このタイプは、ダイアボディとして公知である。さらに短いリンカー(1又は2個のアミノ酸)は、三量体(いわゆるトリアボディ又はトリボディ)を形成する。テトラボディも、生成されている。これらは、ダイアボディと比べて、標的に対してさらに高い親和性を示す。
【0207】
「特異性」という用語は、本明細書で使用される場合、文脈が矛盾しない限り、下記の意味を有することが意図されている。2種の結合剤が同一の抗原及び同一のエピトープに結合する場合には、これらの結合剤は、「同じ特異性」を有する。
【0208】
本明細書で使用される場合、「結合ドメイン」又は「抗原結合ドメイン」という用語は、例えば抗体等の結合剤の抗原に結合する部位を指しており、結合剤の抗原結合部分を含む。結合ドメインは、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(VH及びVL)で構成され得、これらのそれぞれは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む
。CDRは、配列が異なっており、特定の抗原に対する特異性を決定する。VHドメイン及びVLドメインは、一緒に、特定の抗原に特異的に結合する部位を形成し得る。抗原に対する「特異性を有する結合ドメイン」は、前記結合ドメインを含む結合剤が、例えば、約10-7M以下のKDで、標準的なアッセイにおいて前記結合ドメインを介して前記抗原に結合するが、標準的なアッセイにおいて、前記結合ドメインが特異的である示された抗原とは異なる抗原に対して前記結合ドメインを介して有意に結合しない(特に検出可能に結合しない)場合には、前記抗原に対して特異的である。当然のことながら、結合剤が、特異性が異なる複数の結合ドメインを含む場合には、本明細書で説明されているように、特異性を有する複数の抗原に結合する。抗原に対する結合剤の結合を、例えば、バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry;BLI)を使用して決定し得るか、或いは、例えば、リガンドとして抗原を使用し、分析物として結合剤を使用して、BIAcore 3000装置において表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定し得る。
【0209】
Fab(断片抗原結合)抗体断片は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域1(CH1)部分からなるポリペプチドと、軽鎖可変領域(VL)並びに軽鎖定常領域(CL及びCH1部分が、例えばCys残基間のジスルフィド結合により互いに結合している)からなるポリペプチドとで構成されている抗体の1価抗原結合ドメインを含む免疫反応性ポリペプチドである。好ましくは、本明細書で説明されているFab断片において、CH1及びCLは、ヒト起源のものである。一実施形態において、CLは、カッパ型CLである。一実施形態において、CH1は、IgG1に由来しており、好ましくはヒトIgG1に由来する。
【0210】
本発明の目的のために本明細書で説明されている全ての抗体及び抗体の誘導体(例えば抗体断片)は、「抗体」という用語に包含される。「抗体誘導体」という用語は、抗体の任意の改変形態を指しており、例えば、抗体と別の薬剤若しくは抗体とのコンジュゲート、又は抗体断片を指す。さらに、本明細書で説明されている抗体及び抗体の誘導体は、本発明の結合剤の製造に有用である。
【0211】
天然に存在する抗体は、一般に単一特異的であり、即ち、単一抗原に結合する。本発明は、(CD3受容体に結合することにより)T細胞等の細胞傷害性細胞に結合し、(CLDN18.2に結合することにより)がん細胞等の標的細胞と結合する結合剤を提供する。本発明の結合剤は、少なくとも2つの異なるタイプの抗原に結合し、少なくとも二重特異性であるか、又は三重特異性、四重特異性等の多重特異性である。
【0212】
本発明の結合剤は、少なくとも2価であり得る。一実施形態において、本発明の結合剤は、少なくとも3価である。本明細書で使用される場合、「価」、「価数(valence)」、「価数(valencies)」、又はこれらの他の文法的変形は、結合剤中の抗原結合部位又は結合ドメインの数を意味する。同一の抗原に結合する抗原結合部位は、異なるエピトープを認識してもよいし、好ましくは同一のエピトープを認識してもよい。3価の二重特異性抗体及び4価の二重特異性抗体は、当該技術分野で公知である。本発明の結合剤はまた、4を超える価数も有し得る。
【0213】
本明細書で説明されている結合剤は、好ましくは、少なくとも2つの異なる抗体の断片(少なくとも2つの異なる結合ドメインを形成する前記少なくとも2つの異なる抗体の断片)で構成され得、その結果、少なくとも2つの異なるタイプの抗原に結合する人工タンパク質(タンパク質複合体を含む)である。本発明に係る結合剤は、(例えばCD3に結合することにより)免疫細胞(例えば免疫エフェクター細胞、特に、細胞傷害性細胞等のT細胞)と、(腫瘍関連抗原CLDN18.2に結合することにより)破壊されるがん細胞のような標的細胞とに同時に結合するように操作されている。
【0214】
数種の2価抗体及び3価抗体が開発されており、全てのタイプが、本発明の範囲内である。二重特異性完全長抗体は、2つのモノクローナル抗体を共有結合的に連結させることにより得ることができるか、又は従来のハイブリッドハイブリドーマ技術により得ることができる。2つのモノクローナル抗体の共有結合的連結は、Anderson,Blood 80(1992),2826-34で説明されている。二重特異性抗体断片の別の例は、小さい2価の二重特異性抗体断片であるダイアボディ(Kipriyanov,Int.J.Cancer 77(1998),763-772)である。ダイアボディは、同一鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーにより接続された同一のポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。これにより、別の鎖の相補的ドメインとの対形成が強制され、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子の構築が促進される。
【0215】
2つのFab断片を含む二重特異性分子において、個々のFab断片のそれぞれは、一本鎖で配置され得(好ましくは、VL-CL-CH-VH)、個々の可変ドメイン及び定常ドメインは、本明細書で論じられているペプチドリンカー等のペプチドリンカーで連結され得る。一般に、個々の一本鎖及びFab断片は、ジスルフィド結合、付着ドメイン、化学的連結、及び/又はペプチドリンカーを介して連結され得る。二重特異性分子はまた、2個を超えるFab断片も含み得、特に、この分子は、Fab3、Fab4であってもよいし、2、3、4種、又はより多い異なる抗原に対する特異性を有する多量体Fab複合体であってもよい。本発明はまた、化学的に連結されたFabも含む。
【0216】
三重抗体又は一本鎖三重抗体(sctb)は、リンカー配列により連結された3つの異なるscFv領域で構成されている。同様に、重鎖(CH1)及び軽鎖(CL)の自然なインビボでのヘテロ二量化を使用して、複数のscFvが付加され得る足場を形成し得る。例えば、ある抗原に特異的なscFvは、CH1に連結され得、CH1もまた、別の抗原に特異的なscFvに連結されており、この鎖は、CLに連結されたいずれかの抗原に特異的なscFvを含む別の鎖と相互作用し得る(scFv3-CH1/CL)。3価構造の別の例は、各鎖上に1つずつ、別のエピトープに特異的な2つのscFvにC末端連結された、あるエピトープに特異的なFab断片の使用を含む(Fab-scFv2)。3価構築物のさらに別の例は、ある抗原又はエピトープに特異的な2つのFab断片の使用を含み、ここで、これらのFab断片の内の1つは、別の抗原又はエピトープに特異的な1つのscFvにC末端連結されている(Fab2-scFv)。3価(又は4価)分子のさらに別の例として、抗体のN末端又はC末端に付着したさらなる結合体を含む様々なフォーマットが挙げられる。例えば、1つのフォーマットは、1種の抗原に特異的なインタクトな抗体分子であって、この分子のC末端に一本鎖Fab(scFab)が連結されている、抗体分子からなる(IgG-scFab)。3価抗体(DNL-F(ab)3)の生成には、ドック・アンド・ロック(DNL)アプローチも使用されている(Chang,C.-H.et al.In:Bispecific Antibodies.Kontermann R.E.(ed.),Springer Heidelberg Dordrecht London New York,pp.199-216(2011))。上述の抗体のそれぞれは、本発明の範囲内である。
【0217】
4価抗体も構築されており、全てのタイプが、本発明の範囲内である。4価抗体の例として、scFv2-Fc分子、F(ab’)2-scFv2分子、scFv2-H/L分子、及びscFv-dhlx-scFv分子が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異性scFv2-Fc構築物は、Fc鎖のN末端に連結されたある分子に特異的な2つのscFvと、Fc鎖のC末端に連結された別の分子に特異的な別の2つのscFvとを有するFcドメインを有する。二重特異性F(ab’)2-scFv2構築物は、F(ab’)2断片のC末端に連結されたscFv断片を含む。scFv2-H/L構築物は
、重鎖に連結されたある分子に特異的なscFvを有しており、軽鎖には、別の分子に特異的なscFvが連結されている。最後に、scFv-dhlx-scFv構築物は、らせん状二量体化ドメインに連結されたあるタイプのscFvと、それに続く別のタイプのscFvとを含む。このタイプの2本の鎖は、二量体化し得、4価抗体が生成される。
【0218】
本発明の結合剤は、抗体分子、又は抗体様分子、又は抗体様特性を有するタンパク質足場、又は少なくとも2つの結合特異性を有する環状ペプチドのフォーマットであり得る。そのため、結合剤は、本明細書で説明されている1種若しくは複数種の抗体、又はその機能的断片を含み得る。
【0219】
一実施形態において、本発明の結合剤は、相互作用可能であり、さらなる結合機能又は結合ドメインを組み込み得る、Fab断片の重鎖(Fd断片)及び軽鎖(L)を含む。そのようなさらなる結合ドメインは、独立して、scFv結合ドメイン等の2つの抗体可変領域(即ち、VH-VL又はVL-VH)を含む結合ドメインと、VH結合ドメイン及びVHH結合ドメイン等の1つの抗体可変領域を含む結合ドメインとからなる群から選択され得る。
【0220】
一実施形態において、本発明の結合剤は、Fab-scFv構築物のフォーマットであり、即ち、Fab断片(あるポリペプチド鎖のVHドメイン及びCH1ドメインと、別のポリペプチド鎖の対応するVL及びCLドメインとを含み、抗原結合ドメインが、前記ポリペプチド鎖の相互作用により形成されている)と、scFv部分(同一のポリペプチド鎖のポリペプチドリンカーにより互いに連結されたVH及びVLドメインを含み、VH及びVLが相互作用して抗原結合ドメインが形成される)とを含む構築物の形態である。一実施形態において、本発明の結合剤は、3本のポリペプチド鎖で構成された三量体であり、第1のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVHを含み、第2のポリペプチドは、免疫グロブリン(例えば、第2の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVHを含むscFv部分、及び免疫グロブリン(例えば、第2の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVLを含み、第3のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVLを含む。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCH1をさらに含み、第3のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCLをさらに含む。一実施形態において、第1及び第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCH2及びCH3(CH2-CH3)ドメイン(例えば、それぞれFab断片及びscFv部分に対するC末端)をさらに含む。そのため、一実施形態において、本発明の結合剤は、CH2-CH3に連結されたVH-CH1を含む第1のポリペプチド鎖、CH2-CH3に連結されたscFv部分(VH-VL又はVL-VH)を含む第2のポリペプチド鎖、及びVL-CLを含む第3のポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖と相互作用する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と相互作用する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖が相互作用し、第1のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖とさらに相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH2は、第2のポリペプチド鎖のCH2と相互作用し、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH3は、第2のポリペプチド鎖のCH3と相互作用する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖のVHと第3のポリペプチド鎖のVLとが相互作用して、結合ドメインが形成され、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH1と第3のポリペプチド鎖のCLとが相互作用する。いくつかの実施形態において、CL中のシステイン残基とCH1中のシステイン残基との間に、ジスルフィド架橋が形成されている。CH2-CH3を含む一方又は両方のポリペプチド鎖は、例えば、ポリペプチド鎖の相互作用を促進するために、本明細書で説明されている1つ又は複数のアミノ酸改変(例えばFc改変、例えば、pI改変、非対称改変、さらなるFc改変、及びアブレーション改変)を含み得る。
本発明によれば、scFv部分のVH及びVLは、好ましくは、ペプチドリンカー(「scFvリンカー」)により連結されている。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH1は、ペプチドリンカーにより同一のポリペプチド鎖のCH2に連結されている。いくつかの実施形態において、scFvは、ペプチドリンカーによりCH2に連結されている。
【0221】
一実施形態において、本発明の結合剤は、Fab2-scFv構築物のフォーマットであり、即ち、2つのFab断片(それぞれが、あるポリペプチド鎖のVHドメイン及びCH1ドメインと、別のポリペプチド鎖の対応するVLドメイン及びCLドメインとを含み、抗原結合ドメインが、前記一連のポリペプチド鎖のそれぞれの相互作用により形成されている)と、scFv部分(同一のポリペプチド鎖のポリペプチドリンカーにより互いに連結されたVHドメイン及びVLドメインを含み、VH及びVLが相互作用して抗原結合ドメインが形成される)とを含む構築物の形態である。一実施形態において、本発明の結合剤は、4本のポリペプチド鎖で構成された四量体であり、第1のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVHを含み、第2のポリペプチドは、免疫グロブリン(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVH、及び免疫グロブリン(例えば、第2の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVHを含むscFv部分、及び免疫グロブリン(例えば、第2の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVLを含み、第3のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン)由来のVLを含み、第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一である。一実施形態において、第1及び第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCH1(例えば、第1の特異性を有する免疫グロブリン由来のVHに対するC末端)をさらに含み、第3及び第4のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCLをさらに含む。一実施形態において、第1及び第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン由来のCH2及びCH3(CH2-CH3)ドメイン(例えば、それぞれFab断片及びscFv部分に対するC末端)をさらに含む。そのため、一実施形態において、本発明の結合剤は、CH2-CH3に連結されたVH-CH1を含む第1のポリペプチド鎖、CH2-CH3に連結されたscFv部分(VH-VL又はVL-VH)に連結されたVH-CH1を含む第2のポリペプチド鎖、並びにそれぞれVL-CLを含む第3及び第4のポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖と相互作用する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と相互作用する。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖と相互作用する。一実施形態において、第1及び第2のポリペプチド鎖は相互作用し、第1のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖とさらに相互作用し、第2のポリペプチド鎖は、第4のポリペプチド鎖とさらに相互作用する。一実施形態において、第1のポリペプチド鎖のCH2は、第2のポリペプチド鎖のCH2と相互作用し、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH3は、第2のポリペプチド鎖のCH3と相互作用する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖のVHと第3のポリペプチド鎖のVLとが相互作用して、結合ドメインが形成され、及び/又は第1のポリペプチド鎖のCH1と第3のポリペプチド鎖のCLとが相互作用する。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチド鎖のVH(scFv部分の一部ではない)と、第4のポリペプチド鎖のVLとが相互作用して、結合ドメインが形成され、及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH1と第4のポリペプチド鎖のCLとが相互作用する。いくつかの実施形態において、CL中のシステイン残基とCH1中のシステイン残基との間に、ジスルフィド架橋が形成されている。CH2-CH3を含む一方又は両方のポリペプチド鎖は、例えば、ポリペプチド鎖の相互作用を促進するために、本明細書で説明されている1つ又は複数のアミノ酸改変(例えばFc改変、例えば、pI改変、非対称改変、さらなるFc改変、及びアブレーション改変)を含み得る。本発明によれば、scFv部分のVH及びVLは、好ましくは、ペプチドリンカー(「scFvリンカー」)により連結されている。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH1は、ペプ
チドリンカーにより同一のポリペプチド鎖のCH2に連結されている。いくつかの実施形態において、scFvは、ペプチドリンカーによりCH2に連結されている。
【0222】
好ましい実施形態において、本発明の2価結合剤(Fab-scFvフォーマット)の内、第1のポリペプチド鎖のVHと第3のポリペプチド鎖のVLとが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、第2のポリペプチド鎖のscFvのVHとVLとが相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド鎖のVHと第3のポリペプチド鎖のVLとにより形成された結合ドメインは、CD3に対する特異性を有しており、第2のポリペプチド鎖のscFvのVHとVLとにより形成された結合ドメインは、CLDN18.2に対する特異性を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の3価結合剤(Fab2-scFv形態で)の内、scFvの一部ではない第2のポリペプチド鎖のさらなるVHと、第4のポリペプチド鎖のVLとが好ましくは相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。しかしながら、同様に、結合剤であって、第2のポリペプチド鎖のscFvにより形成された結合ドメイン、並びに第1及び第3のポリペプチド鎖のVH及びVLにより形成された結合ドメインは、CLDN18.2に対する特異性を有しており、scFvの一部ではない第2のポリペプチド鎖のVHにより形成された結合ドメイン、及び第4のポリペプチド鎖のVLにより形成された結合ドメインは、CD3に対する特異性を有する、結合剤も、本出願の範囲内である。
【0223】
「リンカー」という用語は、2つの異なる機能単位(例えば、ポリペプチド鎖のドメイン又は領域)を連結する役割を果たすあらゆる手段を指す。リンカーの種類として、化学的リンカー、ペプチドリンカー、及びポリペプチドリンカーが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドリンカー及びポリペプチドリンカーの配列は、限定されない。ペプチドリンカーは、好ましくは、非免疫原性であり、柔軟性であり、例えば、セリン及びグリシン配列を含むものである。特定の構築物に応じて、リンカーは、長くてもよいし、短くてもよい。
【0224】
好ましい実施形態において、scFvリンカー(即ち、scFv部分を形成するVH及びVLを連結するリンカー)は、本明細書で説明されている柔軟ペプチドリンカー(好ましくは、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアント(式中、xは、2、3、4、5、又は6である))を好ましくは含み、好ましくはからなる。さらにより好ましい実施形態において、scFvリンカーは、アミン酸配列(GKPGS)4(配列番号11)又はその機能的バリアントを含み、好ましくはからなる。好ましくは、scFv部分は、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号27)、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号22)、及び(G4S)2KTHTCPPC(配列番号23)、又はこれらの機能的バリアントからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドリンカーにより、第2のポリペプチド鎖のCH2に連結されている。他の有用なリンカーとして、配列番号24及び25に従うアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0225】
本発明によれば、好ましくはCH1のC末端でscFv及びCH1を連結するリンカーは、アミノ酸配列(G4S)x又はその機能的バリアント(式中、xは、2、3、4、5、又は6である)、好ましくは(G4S)2(配列番号26)又はその機能的バリアントを好ましくは含み、好ましくはからなる。本発明によれば、好ましくはCH2のN末端でCH2及びscFvを連結するリンカーは、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号27)、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号22)、及び(G4S)2KTHTCPPC(配列番号23)、又はこれらのバリアントからなる群から選択されるアミノ酸配列を好ましくは含み、好ましくはからなる。本発明によれば、CH1及びCH2を連結するリンカーは、アミノ酸配列EPKSCDKTHTPPCP又はその機能的バリアント
を好ましくは含み、好ましくはからなる。本発明によれば、例えば第2のポリペプチド鎖のCH1及びscFvは、アミノ酸配列(G4S)2(配列番号26)又はその機能的バリアントを好ましくは含み、好ましくはからなるペプチドリンカーにより連結されている。しかしながら、当該技術分野で公知であるように、他のリンカーを使用し得る。
【0226】
一実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VH(CLDN18.2)-CH1-CH2-CH3
を含み、
ii)第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又はVL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3
を含み、
iii)第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
好ましくは、VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)が相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)及びVL(CD3)が相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、ポリペプチド鎖のドメインは、好ましくは、本明細書で説明されているペプチドリンカーにより互いに連結されている。
【0227】
別の実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2、第3、及び第4のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VH(CLDN18.2)-CH1-CH2-CH3
を含み、
ii)第2のポリエペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VH(CLDN18.2)-CH1-VH(CD3)-VL(CD3)-CH2-CH3、又はVH(CLDN18.2)-CH1-VL(CD3)-VH(CD3)-CH2-CH3
を含み、
iii)第3のポリエペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン:
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
iv)第4のポリエペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
好ましくは、第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第3のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第4のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)及びVL(CD3)が相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、ポリペプチド鎖のドメインは、好ましくは、本明細書で説明されているペプチドリンカーにより互いに連結されている。
【0228】
一実施形態において、本発明の結合剤は、下記を含む:a)VH(CLDN18.2)、並びにEUナンバリングに従って208位でのアスパラギン酸残基、233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、267位でのリシン残基、295位でのグルタミン酸残基、368位でのアスパラギン酸残
基、370位でのセリン残基、384位でのアスパラギン酸残基、418位でのグルタミン酸残基、及び421位でのアスパラギン酸残基を含むCH1、CH2及びCH3を含む第1のポリペプチド鎖;b)アミノ酸配列(GKPGS)4(配列番号11)を有する荷電scFvリンカーを介して互いに連結されたVH(CD3)及びVL(CD3)、並びにEUナンバリングに従って233位でのプロリン残基、234位でのバリン残基、235位でのアラニン残基、236位での欠失、267位でのリシン残基、357位でのグルタミン残基、及び364位でのリシン残基を含むCH2及びCH3を含む第2のポリペプチド鎖;並びにc)VL(CLDN18.2)及びCLを含む第3のポリペプチド鎖。一実施形態において、第2のポリペプチド鎖は、本明細書で説明されているVH(CLDN18.2)及びCH1をさらに含み、結合剤は、第3のポリペプチド鎖と同一の第4のポリペプチド鎖をさらに含む。
【0229】
他の実施形態は、下記を含むFab2-scFvフォーマットを含む:a)VH(CLDN18.2)、並びに非対称改変L368D/K370S、pI改変N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、アブレーション改変E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、さらなるFc改変M428L/N434Sを含むCH1及びCH2及びCH3を含む第1のポリペプチド鎖;b)VH(CD3)及びVL(CD3)、並びに非対称改変S364K/E357Q、アブレーション改変E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、さらなるFc改変M428L/N434Sを含むCH2及びCH3、並びにVH(CLDN18.2)を含む第2のポリペプチド鎖;並びにc)VL(CLDN18.2)及びCLを含む第3のポリペプチド鎖;並びにd)第3のポリペプチド鎖と同一の第4のポリペプチド鎖。
【0230】
一実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー-CH2-CH3
を含み、
ii)第2のポリエペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CD3)-リンカー-VL(CD3)-リンカー-CH2-CH3、又はVL(CD3)-リンカー-VH(CD3)-リンカー-CH2-CH3
を含み、
iii)第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
好ましくは、VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)が相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)及びVL(CD3)が相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。
【0231】
一実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー1-CH2-CH3
を含み、
ii)第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CD3)-リンカー3-VL(CD3)-リンカー4-CH2-CH3、又はVL(CD3)-リンカー3-VH(CD3)-リンカー4-CH2-CH3
を含み、
iii)第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
リンカー1は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP又はその機能的バリアントを含み、リンカー3は、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアント(式中、xは、2、3、4、5、又は6であり、好ましくは、xは、4である)を含み、リンカー4は、EPKSCDKTHTCPPCP、EPKSSDKTHTCPPCP、及び(G4S)2KTHTCPPCPからなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含み、
好ましくは、VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)が相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)及びVL(CD3)が相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。
【0232】
一実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2,第3、及び第4のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー-CH2-CH3,
を含み、
ii)第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー-VH(CD3)-リンカー-VL(CD3)-リンカー-CH2-CH3、又はVH(CLDN18.2)-CH1-リンカー-VL(CD3)-リンカー-VH(CD3)-リンカー-CH2-CH3
を含み、
iii)第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、下記のドメイン
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
iv)第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
好ましくは、第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第3のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第4のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)とVL(CD3)とが相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。
【0233】
一実施形態において、本発明の結合剤は、第1、第2、第3、及び第4のポリペプチド鎖を含み、
i)第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー1-CH2-CH3
を含み、
ii)第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VH(CLDN18.2)-CH1-リンカー2-VH(CD3)-リンカー3-VL(CD3)-リンカー4-CH2-CH3、又はVH(CLDN18.2)-CH1-リンカー2-VL(CD3)-リンカー3-VH(CD3)-リンカー4-CH2-CH3を含み、
iii)第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端へと、
VL(CLDN18.2)-CL
を含み、
iv)第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖と同一であり、
リンカー1は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTPPCP又はその機能的バリアントを含み、リンカー2は、アミノ酸配列(G4S)x又はその機能的バリアント(式中、x
は、2、3、4、5、又は6であり、好ましくは、xは、2である)を含み、リンカー3は、アミノ酸配列(GKPGS)x又はその機能的バリアント(式中、xは、2、3、4、5、又は6であり、好ましくは、xは、4である)を含み、リンカー4は、EPKSCDKTHTCPPCP、EPKSSDKTHTCPPCP、及び(G4S)2KTHTCPPCPからなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含み、
好ましくは、第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第3のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN18.2)と第4のポリペプチド鎖のVL(CLDN18.2)とが相互作用して、CLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインが形成され、VH(CD3)とVL(CD3)とが相互作用して、CD3に対する特異性を有する結合ドメインが形成される。
【0234】
本明細書で説明されている結合剤、及び/又は本明細書で説明されている前記結合剤の第1、第2、及び第3(及び任意選択的な第4)のポリペプチド鎖はまた、この結合剤若しくはポリペプチド鎖の分泌を促進するためのアミノ酸配列(例えばN末端分泌シグナル)、及び/又はこの分子の結合、精製、若しくは検出を促進する1つ又は複数のエピトープタグも含み得る。好ましくは、分泌シグナルは、分泌経路の十分な通過、及び/又は結合剤若しくはそのポリペプチド鎖の細胞外環境への分泌を可能にするシグナル配列(例えばアミノ酸配列MGWSCIILFLVATATGVHS)である。好ましくは、分泌シグナル配列は開裂可能であり、成熟結合剤又はポリペプチド鎖から除去される。分泌シグナル配列は、好ましくは、結合剤又はポリペプチド鎖が産生される細胞又は生物につき選択される。
【0235】
エピトープタグのアミノ酸配列は、結合剤又はポリペプチド鎖のアミノ酸配列内の任意の位置に導入され得、コードされたタンパク質構造内でループの形状を取り得るか、又は結合剤若しくはポリペプチド鎖にN末端若しくはC末端で融合し得る。好ましくは、エピトープタグは、結合剤又はポリペプチド鎖にC末端で融合している。エピトープタグは、結合剤又はポリペプチド鎖からのタグの除去を可能にする開裂部位を含み得る。前記エピトープタグは、天然条件下及び/又は変性条件下で機能する任意の種類のエピトープタグであり得、好ましくはヒスチジンタグであり得、最も好ましくは、6個のヒスチジンを含むタグであり得る。
【0236】
本発明の結合剤は、前記第1、第2、及び任意選択的な第3の結合ドメインに加えて、例えば腫瘍細胞に対する選択性を増強するのに役立つ1つ又は複数のさらなる結合ドメインを含み得る。このことは、例えば、腫瘍細胞上で発現される他の抗原に結合する結合ドメインを設けることにより達成され得る。
【0237】
「翻訳後改変」という用語又は類似の用語は、タンパク質の生合成後に起こるタンパク質の可変(例えば、共有結合的改変及び酵素的改変)を指す。当該技術分野で一般的に公知であるように、細胞内で発現される抗体等の結合剤は、翻訳後に改変されることが多い。例えば、抗体等の結合剤の翻訳後改変は、重鎖又は軽鎖(例えば、本明細書で説明されている第1及び/又は第2のポリペプチド鎖)のアミノ酸側鎖又はN末端若しくはC末端で起こり得る。本明細書で説明されている結合剤中で起こり得る翻訳後改変の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:例えばカルボキシペプチダーゼによる、例えば第1及び/又は第2のポリペプチド鎖の重鎖のC末端でのリシンの開裂;ピログルタミル化による、例えば第1及び/又は第2のポリペプチド鎖の重鎖のN末端でのグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミン酸への改変;ピログルタミル化による、例えば第3及び第4のポリペプチド鎖の軽鎖のN末端でのグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミン酸への改変;グリコシル化;酸化;脱アミド化;並びに糖化。そのような翻訳後改変が様々な結合剤中で起こることが知られている(Liu et al.,2008,J.P
harmacol.Sci.97(7):2426-2447)。N末端でのピログルタミル化及びC末端のリシンの欠失に起因する翻訳後改変は、一般的に、結合剤の活性にはいかなる影響も及ぼさない(Lyubarskaya et al.,2006,Analyt.Biochem.348(1):24-39)。
【0238】
そのため、一実施形態において、本明細書で説明されている結合剤は、1つ又は複数の翻訳後改変を含み得る。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、結合剤の1本又は複数本のポリペプチド鎖のN末端でのピログルタミル化を含む。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、1つ又は複数のVH(CLDN18.2)のN末端でのピログルタミル化を含む。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、VH(CD3)のN末端でのピログルタミル化を含む。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、第1のポリペプチド鎖のC末端でのリシンの欠失を含む。一実施形態において、1つ又は複数の翻訳後改変は、第2のポリペプチド鎖のC末端でのリシンの欠失を含む。
【0239】
本発明に関連して、生成される結合剤は、好ましくは、本明細書で説明されている1つ又は複数の免疫エフェクター機能を惹起し得る。好ましくは、前記免疫エフェクター機能は、表面上でがん関連抗原CLDN18.2を持つ細胞を対象とする。
【0240】
本発明に関連する「免疫エフェクター機能」という用語は、例えば、がん増殖の阻害及び/又はがん発生の阻害(がんの播種及び転移の阻害を含む)をもたらす、免疫系の構成要素により媒介されるあらゆる機能を含む。好ましくは、免疫エフェクター機能は、がん細胞の死滅をもたらす。免疫エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、がん関連抗原を有する細胞におけるアポトーシスの誘導、がん関連抗原を有する細胞の細胞溶解、及び/又はがん関連抗原を有する細胞の増殖の阻害を含む。本明細書で説明されている結合剤は、好ましくは、CD4及び/又はCD8 T細胞(特にCD107a+
【0241】
T細胞)等のT細胞を動員して、がん細胞等の疾患関連細胞へと再指向させ得、そのため、再指向されたT細胞細胞傷害性(RTCC)を介して作用し、即ち、再指向時のT細胞は、好ましくは、疾患関連細胞(例えばがん細胞)を死滅させる。CD107a発現は、CD4及びCD8 T細胞の細胞溶解能と関連していることが知られている。好ましくは、前記CD107a+ T細胞は、脱顆粒し得、即ち、パーフォリン、グランザイム等の細胞傷害性分子を放出し得、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-2(IL2)、インターフェロンγ(IFNγ)等の内の1つ又は複数等のサイトカインも放出し得、それにより、T細胞が本発明の結合剤により再指向される標的細胞(例えばがん細胞)が死滅する。結合剤はまた、がん細胞表面上でがん関連抗原に結合するだけで、効果を発揮する。例えば、結合剤は、がん細胞の表面上のがん関連抗原に結合するだけで、がん関連抗原の機能をブロックし得るか、又はアポトーシスを誘導し得る。
【0242】
本発明に関連する「免疫エフェクター細胞」又は「エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤性T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む。「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用されており、Tヘルパー細胞(CD4+ T細胞)、及び細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+ T細胞)を含む。「MHC依存性T細胞」という用語、又は類似の用語は、MHCに関連して提示される場合に抗原を認識し、好ましくは、T細胞のエフェクター機能(例えば、抗原を発現する標的細胞の死滅)を発揮するT細胞に関する。
【0243】
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の一群に属しており、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。これは、細胞表面にT細胞受容体(TCR)と呼ばれる特殊な受容体が存在することにより、B細胞及びナチュラルキラー細胞等の他のリンパ球タイプと区別され得る。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。T細胞にはいくつかの異なるサブセットが発見されており、それぞれが明確な機能を有する。
【0244】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも、B細胞の形質細胞への成熟、細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化等の免疫学的プロセスにおいて、他の白血球を補助する。この細胞は、表面上でCD4糖タンパク質を発現していることから、CD4+ T細胞としても知られている。ヘルパーT細胞は、通常、抗原提示細胞(APC)の表面上で発現されているMHCクラスII分子によりペプチド抗原を提示された場合に、活性化される。活性化されると、この細胞は急速に分裂し、サイトカインと呼ばれる小さいタンパク質を分泌し、活発な免疫反応を制御するか、又は補助する。
【0245】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞及びがん細胞を破壊し、移植拒絶反応にも関与している。この細胞は、表面上でCD8糖タンパク質を発現することから、CD8+ T細胞としても知られている。この細胞は、通常、身体のほぼ全ての細胞の表面上で存在するMHCクラスIに関連する抗原と結合することにより、標的を認識する。
【0246】
全てのT細胞は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)とも相互作用し得る。TCRの特異的結合は、T細胞内のシグナルカスケードを引き起こし、増殖、及び成熟したエフェクターT細胞への分化を導く。T細胞の大部分では、実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファ及びベータ(TCRα及びTCRβ)遺伝子から産生され、α-TCR鎖及びβ-TCR鎖と呼ばれている2本の別々のペプチド鎖で構成されている。あまり一般的ではない(T細胞全体の2%)グループのT細胞であるγδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面上に、1本のγ鎖及び1本のδ鎖からなる独特なT細胞受容体(TCR)を持つ。
【0247】
全てのT細胞は、骨髄中の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞に由来する造血前駆細胞は、胸腺に存在しており、細胞分裂により増殖して未熟な胸腺細胞を大量に生成する。最初期の胸腺細胞はCD4もCD8も発現せず、従って、二重陰性(CD4-CD8-)細胞と分類される。発育が進むにつれて、二重陽性の胸腺細胞(CD4+CD8+)となり、最終的には、単一陽性(CD4+CD8-又はCD4-CD8+)の胸腺細胞へと成熟し、次いで胸腺から末梢組織へと放出される。
【0248】
本明細書で使用される場合、「NK細胞」又は「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56又はCD16の発現とT細胞受容体の非存在とにより定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。
【0249】
ヒトのMHC分子は、通常、HLA(ヒト白血球抗原)分子と称される。MHC分子には、クラスI及びクラスIIという2つの主要なクラスが存在している。MHCクラスI抗原は、身体内のほぼ全ての有核細胞で見出される。このクラスのMHC分子の主な機能は、細胞内タンパク質のペプチド断片をCTLに表示(又は提示)することである。この表示に基づいて、CTLは、がん抗原等の疾患関連ペプチド(抗原)を含む、MHC結合ペプチドを提示するものを攻撃する。CD8陽性T細胞は、通常、細胞傷害性であり(そのため、細胞傷害性T細胞=CTLと命名されている)、あらゆる細胞内局在のタンパク質から細胞内でプロセシングされ、MHCクラスI分子により細胞表面に提示される9~
10個のアミノ酸のペプチドを認識する。そのため、MHCクラスI分子の表面発現は、標的細胞のCTLに対する感受性の決定で重要な役割を果たす。
【0250】
本明細書で説明されている結合剤を、治療部位又は薬剤(例えば、細胞毒素、薬物(例えば免疫抑制剤)、又は放射性同位元素)に共役させ得る。細胞毒素又は細胞傷害剤には、細胞に対して有害であり、特に細胞を死滅させるあらゆる薬剤を含む。例として、下記が挙げられる:タキソール、シトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又は相同体。コンジュゲートを形成するのに適した治療薬として下記が挙げられるが、これらに限定されない:抗代謝剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、及びロムスチン(CCNU))、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、並びにアントラマイシン(AMC)、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)。好ましい実施形態において、治療薬は、細胞傷害剤又は放射線毒性剤である。別の実施形態において、治療薬は、免疫抑制剤である。さらに別の実施形態において、治療薬は、GM-CSFである。好ましい実施形態において、治療薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、又はリシンAである。
【0251】
結合剤をまた、放射性同位元素(例えば、ヨウ素131、イットリウム90、又はインジウム111)にコンジュゲートさせて、細胞傷害性放射性医薬品も生成し得る。
【0252】
そのような治療用部位を結合剤にコンジュゲートさせるための技術は、公知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”、in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2ndEd.),Robinson et
al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985),及びThorpe et al.,“The Preparation And
Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119-58(1982)を参照されたい。
【0253】
本発明に係る「結合」という用語は、好ましくは、特異的結合に関する。
【0254】
本発明によれば、抗体等の薬剤は、所定の標的に対する有意な親和性を有しおり、標準的なアッセイにおいて前記所定の標的に結合する場合には、前記所定の標的に結合し得る。「親和性」又は「結合親和性」は、平衡解離定数(KD)により測定されることが多い。好ましくは、「有意な親和性」という用語は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、又は10-12M以下の解離定数(KD)での所定の標的への結合を指す。
【0255】
ある薬剤は、この薬剤が標的に対する有意な親和性を有しておらず、標準的なアッセイにおいて前記標的に対して有意に結合しない(特に、検出可能に結合しない)場合には、この薬剤は、前記標的に(実質的に)結合し得ない。好ましくは、この薬剤は、最大2、好ましくは10、より好ましくは20、特に50、又は100μg/ml以上の高い濃度で存在する場合には、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、ある薬剤は、この薬剤が結合し得る所定の標的への結合に関するKDと比べて少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍高いKDで前記標的に結合する場合には、この薬剤は、標的に対する有意な親和性を有しない。例えば、薬剤が結合し得る標的へのこの薬剤の結合に関するKDが、10-7Mである場合には、この薬剤が有意な親和性を有していない標的への結合に関するKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mであることになる。
抗体等の結合剤は、他の標的には結合し得ないが所定の標的には結合し得る場合には、即ち、他の標的に対する有意な親和性を有しておらず、標準的なアッセイにおいて他の標的に有意に結合しない場合には、前記所定の標的に対して特異的である。本発明によれば、結合剤がCLDN18.2に結合し得るが他の標的には(実質的に)結合し得ない場合には、この結合剤は、CLDN18.2に対して特異的である。好ましくは、そのような他の標的に対する親和性及び結合が、CLDN18.2非関連タンパク質(ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA))、又は非クローディン膜貫通タンパク質(例えば、MHC分子若しくはトランスフェリン受容体)、又は任意の他の特定のポリペプチドに対する親和性又は結合を有意に超えない場合には、結合剤は、CLDN18.2に対して特異的である。好ましくは、結合剤は、特異的ではない標的への結合に関するKDと比べて少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍低いKDで所定の標的に結合する場合には、前記標的に対して特異的である。例えば、特異的な標的への結合剤の結合に関するKDが10-7Mである場合には、特異的ではない標的への結合に関するKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、又は10-1Mであることになる。
【0256】
「kd」(秒-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも称される。
【0257】
「KD」(M)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0258】
標的への結合剤の結合を、任意の適切な方法を使用して実験的に決定し得;例えば、Berzofsky et al.,“Antibody-Antigen Interactions” In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,NY(1984),Ku
by,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,NY(1992)、及び本明細書で説明されている方法を参照されたい。親和性を、平衡透析等の従来の技術を使用して;製造業者により概説された一般的手順を使用して、BIAcore 2000機器を使用することにより;放射性標識標的抗原を使用するラジオイムノアッセイにより;又は当業者に公知の別の方法により、容易に決定し得る。親和性データを、例えば、Scatchard et al.,Ann N.Y.Acad. ScL,51:660(1949)の方法により分析し得る。結合剤と抗原との間の特定の相互作用の測定された親和性は、様々な条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に変動し得る。そのため、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、IC50)の測定を、好ましくは、結合剤及び抗原の標準化された溶液と、標準化された緩衝液とで行なう。
【0259】
「競合する」という用語は、標的抗原への結合に関する抗体等の2種の結合剤間の競合を意味する。2種の結合剤が標的抗原への結合を互いにブロックしない場合には、そのような結合剤は、非競合的であり、このことは、前記結合剤が標的抗原の同一部分(即ちエピトープ)に結合しないことを示す。標的抗原への結合に関する結合剤の競合を試験する方法は、当業者には公知である。そのような方法の一例は、いわゆる交差競合アッセイであり、このアッセイを、例えば、ELISAとして実施し得るか、又はフローサイトメトリーで実施し得る。
【0260】
例えば、ELISAに基づくアッセイは、ELISAプレートウェルを各結合剤でコーティングし;競合する結合剤、及び抗原/標的のHisタグ付き細胞外ドメインを添加してインキュベートすることにより実施し得、添加した結合剤がコーティングした結合剤へのHisタグ付きタンパク質の結合を阻害したかどうかを検出することを、ビオチン化抗His抗体を添加し、続いてストレプトアビジン-ポリ-HRPを添加し、ABTSで反応をさらに現像し、405nmでの吸光度を測定することにより実施し得る。例えば、フローサイトメトリーアッセイを、抗原/標的を発現する細胞を過剰の非標識結合剤と共にインキュベートし、この細胞を最適濃度未満のビオチン標識抗体と共にインキュベートし、続いて蛍光標識ストレプトアビジンと共にインキュベートし、フローサイトメトリーで分析することにより実施し得る。
【0261】
抗体等の2種の結合剤は、同一の抗原及び同一のエピトープに結合する場合には、「同一の特異性」を有する。そのような結合剤は、競合結合アッセイにおいて結合に関して競合することとなる。一実施形態において、同一のエピトープに結合している結合剤は、標的分子上の同一のアミノ酸に結合すると考えられる。抗体が標的抗原上の同一のエピトープに結合することを、当業者に公知の標準的なアラニンスキャニング実験又は抗体-抗原結晶化実験により決定し得る。
【0262】
結合剤の抗原への結合に関して競合する能力は、この結合剤が抗原の同一のエピトープ領域に結合してもよいし、別のエピトープに結合する場合には、その特定のエピトープ領域への結合剤の結合を立体的に阻害してもよいことを示す。競合する結合剤を、表面プラズモン共鳴分析、ELISAアッセイ、又はフローサイトメトリー等の標準的な結合アッセイにおいて、1種又は複数種の結合剤と競合する能力に基づいて容易に同定し得る(国際公開第2013/173223号パンフレットを参照されたい)。例えば、結合剤間の競合を、クロスブロッキングアッセイ(cross-blocking assay)により検出し得る。例えば、競合ELISAアッセイを、マイクロタイタープレートのウェルに標的抗原をコーティングし、抗原結合剤と候補の競合試験結合剤とを添加することにより実施し得る。ウェル中の抗原に結合した抗原結合剤の量は、間接的に、例えば同一のエピトープへの結合に関してこれと競合する候補の競合試験結合剤の結合能と相関する。具体的には、同一のエピトープに対する候補の競合試験結合剤の親和性が大きいほど、抗
原でコーティングされたウェルに結合した抗原結合剤の量は少なくなる。ウェルに結合した抗原結合剤の量を、検出可能な又は測定可能な標識物質で結合剤を標識することにより測定し得る。国際公開第2013/173223号パンフレットで説明されているように、当該技術分野で公知であるように、(例えばBiacore機器を使用する)表面プラズモン共鳴分析を使用して、結合剤により認識される重複エピトープ領域と異なるエピトープ領域とを同定し得る。或いは、競合を、生体層干渉法を使用して決定し得る。
【0263】
別の結合剤(例えば、本明細書で説明されている重鎖及び軽鎖の可変領域を含む結合剤)と抗原への結合に関して競合する結合剤、又は別の結合剤(例えば、本明細書で説明されている重鎖及び軽鎖の可変領域を含む結合剤、例えば、抗体)の抗原に対する特異性を有する結合剤は、本明細書で説明されている前記重鎖及び/又は軽鎖の可変領域のバリアント(例えば、本明細書で説明されているCDRの改変及び/又はある程度の同一性)を含む結合剤であり得る。
【0264】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0265】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス又はアイソタイプが、あるIgクラスから他のIgクラスの内の1つへと変化する現象を指す。
【0266】
「天然に存在する」という用語は、物体に適用されるように本明細書で使用される場合には、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、天然の供給源から単離され得る生物(ウイルスを含む)中に存在しており、実験室で人為的に改変されていないポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列は、天然に存在している。
【0267】
「再配列された」という用語は、本明細書で使用される場合、Vセグメントが、それぞれ、本質的に完全なVHドメイン又はVLドメインをコードするコンフォメーションにおいて、D-Jセグメント又はJセグメントのすぐ隣に配置されている、重鎖又は軽鎖の免疫グロブリン遺伝子座の配置を指す。再配列された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座を、生殖細胞系列のDNAとの比較により同定し得、再配列された遺伝子座は、少なくとも1つの組換えヘプタマー/ノナマー相同性エレメントを有する。
【0268】
「未再配列の」又は「生殖系列配置」という用語は、Vセグメントに関して本明細書で使用される場合、VセグメントがDセグメント又はJセグメントにすぐ隣接するように組み換えられていない配置を指す。
【0269】
一実施形態において、本発明の結合剤は、CLDN18.2に結合する能力を有しており、即ち、CLDN18.2に存在するエピトープ(好ましくは、CLDN18.2の細胞外ドメイン(特に、第1の細胞外ループ、好ましくはCLDN18.2のアミノ酸29~78位)内に位置するエピトープ)に結合する能力を有しており、好ましくは結合する。特定の実施形態において、CLDN18.2に結合する能力を有する薬剤は、CLDN18.1に存在していないCLDN18.2のエピトープに結合する。
【0270】
CLDN18.2に結合する能力を有する薬剤は、好ましくは、(好ましくはヒト、マウス、及び/又はカニクイザルの)CLDN18.2に結合するが(好ましくはヒト、マウス、及び/又はカニクイザルの)CLDN18.1には結合しない。好ましくは、CLDN18.2に結合する薬剤は、(好ましくはヒト、マウス、及び/又はカニクイザルの)CLDN9には結合しない。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する薬剤は、CLDN18.2に対して特異的である。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する薬剤は、細胞表面上で発現されるCLDN18.2に結合する。特に好ま
しい実施形態において、CLDN18.2に結合する能力を有する薬剤は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。
【0271】
「断片」という用語は、特に、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の内の1つ又は複数(好ましくは少なくともCDR3可変領域)を指す。一実施形態において、前記相補性決定領域(CDR)の内の1つ又は複数は、相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3のセットから選択される。特に好ましい実施形態において、「断片」という用語は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を指す。
【0272】
一実施形態において、本明細書で説明されている1つ若しくは複数のCDR、CDRのセット、又はCDRのセットの組み合わせを含む結合ドメインは、前記CDR及びこれらに介在するフレームワーク領域を含む。好ましくは、この部分はまた、第1及び第4のフレームワーク領域のいずれか又は両方の少なくとも約50%も含み、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端50%及び第4のフレームワーク領域のN末端50%である。組換えDNA技術により作製された結合剤の構築により、免疫グロブリン重鎖、他の可変領域、又はタンパク質標識を含むさらなるタンパク質配列に本発明の可変領域を結合するためのリンカーの導入を含む、クローニング又は他の操作工程を容易にするために導入されるリンカーによりコードされる可変領域のN末端又はC末端への残基の導入がもたらされ得る。
【0273】
一実施形態において、本明細書で説明されている1つ若しくは複数のCDR、CDRのセット、又はCDRのセットの組み合わせを含む結合ドメインは、ヒト抗体フレームワーク中の前記CDRを含む。
【0274】
CDR領域の正確な同定は、関与するアミノ酸残基を決定するために使用される算出方法に依存する。例えば、Kabat他(上記を参照されたい)によれば、可変領域は、一般に、VL中のアミノ酸残基24~34(CDR1)、50~56(CDR2)、及び89~97(CDR3)と、VH中の31~35(CDR1)、50~65(CDR2)、及び95~102(CDR3)付近とを包含し;可変領域はまた、超可変ループを形成する残基(例えば、VL中の残基26~32(CDR1)、50~52(CDR2)、及び91~96(CDR3)、並びにVH中の26~32(CDR1)、53~55(CDR2)、及び96~101(CDR3)も包含し得る(Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917))。
【0275】
当業者は、下記の表1に示されるように、本明細書で開示されている配列内のCDR位置の正確な特定は、使用されるナンバリングシステムに応じてわずかに異なる場合があることを理解するだろう(Lafranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77(2003)を参照されたい):
【0276】
【0277】
そのため、本明細書で開示されているCDR配列は、様々なナンバリングシステムに従って誘導されるそのバリアントも含む。従って、各VHの開示は、そこから誘導可能なCDR(例えば、CDR1、CDR2、及びCDR3)の開示であり、各VLの開示は、そこから誘導可能なCDR(例えば、CDR1、CDR2、及びCDR3)の開示である。
【0278】
本明細書全体を通して、本明細書で説明されているように、CD3又はCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインの可変領域(おおよそ、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)の残基を指す場合には、Kabatナンバリングシステムが使用されており、CH1及びCH2-CH3(任意選択的にヒンジを含む)領域に関しては、EUナンバリングシステムが使用される。
【0279】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号38、39、及び40からなる群から選択されるアミノ酸配列内で特定される相補性決定領域CDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVHを含む。より好ましくは、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号39で表されるアミノ酸配列内で特定される相補性決定領域CDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVHを含む。
【0280】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号41及び42からなる群から選択されるアミノ酸配列内で特定される相補性決定領域CDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVLを含む。より好ましくは、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号42で表されるアミノ酸配列内で特定される相補性決定領域CDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVLを含む。
【0281】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、下記のセットのCDRを含む:
VHは、配列番号34に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR3を含み、及び
VLは、配列番号37に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む。
【0282】
一実施形態におおいて、VHは、配列番号32に記載されている配列若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、及び/又は配列番号33に記載されている配列若しくはそ
の機能的バリアントを含むCDR2をさらに含み、並びに/又はVLは、配列番号35に記載されている配列若しくはその機能的バリアントを含むCDR1、及び/又は配列番号36に記載されている配列若しくはその機能的バリアントを含むCDR2をさらに含む。
【0283】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、下記のセットのCDRを含む:
VHは、配列番号32に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR1、配列番号33に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR2、及び配列番号34に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR3を含み、VLは、配列番号35に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR1、配列番号36に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR2、及び配列番号37に記載されている配列又はその機能的バリアントを含むCDR3を含む。好ましくは、VHは、配列番号32、33、及び34のCDR1、2、及び3を含み、VLは、配列番号35、36、及び37のCDR1、2、及び3を含む。
【0284】
一実施形態において、前記重鎖及び軽鎖の可変領域は、フレームワーク領域内に散在している前記相補性決定領域を含む。一実施形態において、各可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR1、2、及び3)、並びに4つのフレームワーク領域(FR1、2、3、及び4)を含む。一実施形態において、前記相補性決定領域及び前記フレームワーク領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へと、下記の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0285】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号38、39、40からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むVH(CLDN18.2)を含み、好ましくは配列番号39で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。
【0286】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号41、42からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むVL(CLDN18.2)を含み、好ましくは配列番号42で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。
【0287】
一実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の組み合わせのVH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)を含む:
VH(CLDN18.2)は、配列番号38で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号41で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。
一実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の組み合わせのVH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)を含む:
VH(CLDN18.2)は、配列番号40で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号42で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。
【0288】
特に好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の組み合わせのVH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)を含む:
VH(CLDN18.2)は、配列番号39で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含み、VL(CLDN18.2)は、配列番号42で表されるアミノ酸配列又
はその機能的バリアントを含む。
【0289】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤内に存在するVHドメイン及びVLドメインのフレームワーク領域は、アミノ酸の変化を含み得るが、ヒト生殖細胞系列配列との少なくとも80%、85%、又は90%の同一性を保持する。
【0290】
さらなる実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域であって、(i)上述した重鎖及び軽鎖の可変領域を含む抗体とCLDN18.2結合に関して競合し、並びに/又は(ii)上述した重鎖及び軽鎖の可変領域を含む抗体のCLDN18.2に対する特異性を有する抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を含む。
【0291】
一実施形態において、本発明の結合剤のCLDN18.2に対する特異性を有する結合ドメインは、本明細書で説明されているFab分子のフォーマットを有する。この実施形態において、VH(CLDN18.2)は、第1のポリペプチド鎖等のあるポリペプチド鎖の一部であり、VL(CLDN18.2)は、本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖等の別のポリペプチド鎖の一部である。一実施形態において、VH(CLDN18.2)は、本明細書で説明されている第1及び第2のポリペプチド鎖の一部であり、VL(CLDN18.2)は、第3のポリペプチド鎖、及び本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖と同一の第4のポリペプチド鎖の一部である。
【0292】
Fab2-scFvフォーマットでの本発明の結合剤のCLDN18.2に結合する結合ドメインは、同一であってもよいし、本質的に同一であってもよいし、異なっていてもよく、そのため、CLDN18.2の同一の若しくは本質的に同一のエピトープ、又は異なるエピトープに結合し得ることを理解されたい。そのため、Fab2-scFvフォーマットでの本発明の結合剤のCLDN18.2に結合する両方の結合ドメインは、本明細書で説明されているCLDN18.2に結合する結合ドメインの内の1つに対応していてもよいし、本質的に対応していてもよいか、又はこれらは、本明細書で説明されているCLDN18.2に結合する結合ドメインから独立して選択されてもよい。
【0293】
一般に、当該技術分野で公知の任意のCD3結合ドメイン又はその断片は、本発明の結合剤で使用され得る(例えば、抗CD3抗体のCD3結合ドメイン)。本発明に係る結合剤を提供するのに有用な抗CD3抗体として、UCHT1-HS(ヒト化mAb)、UCHT1-MM(マウスmAb)、CLB-T3、TR66、145-2C11が挙げられるが、これらに限定されない。
【0294】
UCHT1は、ヒト及び霊長類のサンプルタイプ中のCD3を検出するモノクローナルIgG1抗CD3抗体である。CLB-T3は、CD3抗原に対するマウスモノクローナル抗CD3抗体であり、80-90%のヒト末梢Tリンパ球及び髄質胸腺細胞と反応する。TR66は、ヒトCD3のイプシロン鎖を認識するマウスIgG1モノクローナル抗CD3抗体である。145-2C11は、アルメニアンハムスターモノクローナル抗マウスCD3抗体である。
【0295】
好ましくは、CD3に対する特異性を有する結合ドメインのVHドメイン及びVLドメインは、ネイティブな立体配置でTCRを発現する活性化初代ヒトT細胞上に存在する他のTCRサブユニットと関連してヒトCD3を特異的に認識し得る抗体/抗体分子及び抗体様分子に由来する。CD3-イプシロン鎖に特異的な抗体に由来するVHドメイン及びVLドメインが最も好ましく、前記(親)抗体は、TCR複合体と関連して提示されるヒトCD3のネイティブな若しくはネイティブに近い構造又は立体配座のエピトープを反映するエピトープに特異的に結合可能であるべきである。本発明の一実施形態において、C
D3に対する特異性を有する結合ドメインのVHドメイン及びVLドメインは、UCHT1-HS、UCHT1-MM、CLB-T3、及びTR66からなる群から選択されるCD3特異的抗体に由来する。
【0296】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号54、58、61、64、67、及び70からなる群から選択されるアミノ酸配列内で特定されるCDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVHを含む。
【0297】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の実施形態(i)~(vi)から選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3のセットを含むVHを含む:
(i)CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント、
(ii)CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号50又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント、
(iii)CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号51又はその機能的バリアント、
(iv)CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号52又はその機能的バリアント、
(v)CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号53又はその機能的バリアント、及び
(vi)CDR1:配列番号49又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント。
【0298】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号55に従うアミノ酸配列内で特定されるCDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含むVLを含む。
【0299】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、下記のセットのCDR1、CDR2、及びCDR3を含むVLを含む:
CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント。
【0300】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の実施形態(i)~(vi)から選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3のセットをそれぞれ含むVH及びVLの組み合わせを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント、VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント、
(ii)VH:CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号50又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント、VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント、
(iii)VH:CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号51又はその機能的バリアント、VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント、
(iv)VH:CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号52又はその機能的バリアント、
VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント、
(v)VH:CDR1:配列番号43又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号53又はその機能的バリアント、VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント、及び
(vi)VH:CDR1:配列番号49又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号44又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号45又はその機能的バリアント、VL:CDR1:配列番号46又はその機能的バリアント、CDR2:配列番号47又はその機能的バリアント、CDR3:配列番号48又はその機能的バリアント。
【0301】
好ましい実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の実施形態(i)~(vi)から選択されるVH及びVLを含む:
(i)VHは、配列番号54に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)VHは、配列番号58に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iii)VHは、配列番号61に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(iv)VHは、配列番号64に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(v)VHは、配列番号67に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、及び
(vi)VHは、配列番号70に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0302】
一実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、及び72からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。当然のことながら、前記配列に含まれるscFvリンカーは、任意の他のscFvリンカーに置き換えられ得、例えば、配列番号2~20からなる群から選択されるscFvリンカー又はその機能的バリアントに置き換えられ得る。
【0303】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号54、58、及び61からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0304】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、配列番号55に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むVLを含む。
【0305】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤のCD3に対する特異性を有する結合ドメインは、下記の実施形態(i)~(iii)から選択されるVH及びVLを含む:
(i)VHは、配列番号54に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、
又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、
(ii)VHは、配列番号58に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、及び
(iii)VHは、配列番号61に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなり、VLは、配列番号55に従うアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。
【0306】
いくつかの実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤は、CD3に高親和性で結合し、即ち、強力なCD3結合剤である(例えば、配列番号56若しくは57;又は配列番号54、又はそこで特定されるCDR1、2、及び3、並びに55、又はそこで特定されるCDR1、2、及び3を含む結合剤)。いくつかの実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤は、CD3に中程度の親和性で結合し、即ち、中程度のCD3結合剤である。いくつかの実施形態において、CD3に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤は、CD3に低親和性で結合し、即ち、低CD3結合剤である。いくつかの実施形態において、CD3に対する結合親和性が高いほど、RTCCが増強される。一実施形態において、CLDN18.2への2価の結合は、1価の結合と比較してRTCCを増強する。
【0307】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているように、本発明の結合剤の1本又は複数本のポリペプチド鎖は、CH1を含む。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、CH1を含む。別の好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1及び第2のポリペプチド鎖は、CH1を含む。好ましくは、本発明の結合剤の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH1は、IgGに由来しており、好ましくはIgG1に由来しており、より好ましくはヒトIgG1に由来している。ある特定の実施形態において、本発明の結合剤の1本又は複数本のポリペプチド鎖は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。好ましくは、本発明の結合剤の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖のCH2ドメイン及びCH3ドメインは、IgGに由来しており、好ましくはIgG1に由来しており、より好ましくはヒトIgG1に由来している。好ましい実施形態において、VH(CLDN18.2)を含む本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、CH1、CH2、及びCH3を含み、VH(CD3)及びVL(CD3)を含む本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖は、CH2及びCH3を含み、前記ドメインは、好ましくは、IgG(例えばIgG1、例えばヒトIgG1)に由来している。別の好ましい実施形態において、VH(CLDN18.2)を含む本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、CH1、CH2、及びCH3を含み、VH(CLDN18.2)、VH(CD3)、及びVL(CD3)を含む本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖は、CH1、CH2、及びCH3を含み、前記ドメインは、好ましくは、IgG(例えばIgG1、例えばヒトIgG1)に由来している。
【0308】
ある特定の実施形態において、VL(CLDN18.2)を含む第3及び任意選択的な第4のポリペプチド鎖等の本発明の結合剤のポリペプチド鎖は、Igκ又はIgλ(好ましくはIgκ、より好ましくはヒトIgκ)由来のCL等のCLを含む。
【0309】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、配列番号28で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖は、配列番号29若しくは30で表されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含む。好ましい実施形態において、結合剤の第3及び任意選択的な第4のポリペプチド鎖は、配列番号31で表されるアミノ酸配列又はその機
能的バリアントを含む。
【0310】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤は、下記の実施形態:
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号28又はその機能的バリアントを含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号29又はその機能的バリアントを含み、及び第3のポリペプチド鎖は、配列番号31又はその機能的バリアントを含むか、又は
(ii)第1のポリペプチド鎖は、配列番号28又はその機能的バリアントを含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号30又はその機能的バリアントを含み、及び第3のポリペプチド鎖は、配列番号31又はその機能的バリアントを含む
から選択されるアミノ酸配列を含む第1、第2、第3、及び任意選択的な第4のポリペプチド鎖を含み、
第4のポリペプチド鎖は、存在する場合には、第3のポリペプチド鎖と同一である。
【0311】
好ましい実施形態において、本発明の結合剤は、CLDN18.2に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインとを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、配列番号73に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖は、配列番号75に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖は、配列番号78に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、CLDN18.2に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインとを含む本発明の結合剤は、配列番号73、75、及び78の第1、第2、及び第3ポリペプチド鎖のセット、又はその機能的バリアントを含む。
【0312】
別の好ましい実施形態において、本発明の結合体は、CLN18.2に対する特異性を有する少なくとも2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインとを含む。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第1のポリペプチド鎖は、配列番号73に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第2のポリペプチド鎖は、配列番号74、76、及び77からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、本発明の結合剤の第3のポリペプチド鎖は、配列番号78に記載されているアミノ酸配列又はその機能的バリアントを含むか、又はからなる。好ましい実施形態において、CLDN18.2に結合する少なくとも2つの結合ドメインと、CD3に対する特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインとを含む本発明の結合剤は、配列番号(i)73、74、及び78;(ii)73、76、及び78;(iii)73、77、及び78、又はこれらの機能的バリアントからなる群から選択される第1、第2、第3、及び第4のポリペプチド鎖のセットを含み、第4の結合ドメインは、第3の結合ドメインと同一である。
【0313】
本明細書で説明されている結合剤は、この薬剤をコードするRNA等の核酸を投与することにより、及び/又はこの薬剤をコードするRNA等の核酸を含む宿主細胞を投与することにより、患者に送達され得ることを理解されたい。結合剤が複数本のポリペプチド鎖を含む場合には、異なるポリペプチド鎖は、同一の核酸でコードされてもよいし、異なる核酸(例えば、核酸のセット)でコードされてもよい。そのため、投与される核酸は、核酸のセット等の様々な核酸分子の混合物であってもよい。結合剤をコードする核酸又は核酸のセットは、例えば、患者等の対象に投与される場合には、裸の形態で存在していてもよいし、リポソーム、又はナノ粒子、又はウイルス粒子の形態等の適切な送達ビヒクル中に存在していてもよいし、宿主細胞内に存在していてもよい。提供される核酸又は核酸の
セットは、治療用抗体で少なくとも部分的に観察される不安定性を軽減する持続的な方法で、長期にわたり薬剤を産生し得る。患者に送達される核酸又は核酸のセットを、組換え手段により産生し得る。核酸又は核酸のセットは、宿主細胞内に存在することなく患者に投与される場合には、好ましくは、この核酸によりコードされる結合剤の発現のために患者の細胞に取り込まれる。核酸又は核酸のセットは、宿主細胞内に存在しつつ患者に投与される場合には、好ましくは、この核酸によりコードされる結合剤を産生するように、患者内の宿主細胞により発現される。
【0314】
本発明に関連する「組換え」という用語は、「遺伝子操作により作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明に関連する組換え核酸等の「組換え体」は、天然には存在していない。
【0315】
「天然に存在する」という用語は、本明細書で使用される場合、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)内に存在しており、自然界の供給源から単離され得、実験室で人為的に改変されていないペプチド又は核酸は、天然に存在している。
【0316】
「核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、DNA及びRNAを含むことが意図されており、例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換えにより産生された分子、及び化学的に合成された分子を含むことが意図されている。核酸は、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。RNAは、インビトロで転写されたRNA(IVT RNA)又は合成RNAを含む。
【0317】
核酸又は核酸のセットは、ベクターに含まれ得る。核酸のセットはまた、この核酸のセットの各核酸がベクターに含まれるように、ベクターのセットにも含まれ得る。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者に公知のあらゆるベクターを含み、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えば、ラムダファージ、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター若しくはバキュロウイルスベクター、又は人工染色体ベクター、例えば、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、若しくはP1人工染色体(PAC)を含む。前記ベクターとして、発現ベクター及びクローニングベクターが挙げられる。発現ベクターは、プラスミド及びウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列、及び特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、若しくは哺乳類)又はインビトロでの発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般に、ある特定の所望のDNA断片を操作して増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠いている場合がある。
【0318】
本発明に関連して、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全に又は実質的にリボヌクレオチド残基で構成されている分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位で水酸基を有するヌクレオチドに関する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNA等の単離RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより産生されたRNA、及び1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は改変により、天然に存在するRNAとは異なる改変RNAを含む。そのような改変として、例えば、RNAの末端又は内部に、例えばRNAの1つ又は複数のヌクレオチドで、非ヌクレオチド物質の付加が挙げられ得る。RNA分子のヌクレオチドはまた、非標準ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチド、又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドも含み得る。この改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0319】
本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「m
RNA」を含み、好ましくはこれに関し、テンプレートとしてDNAを使用して産生されてよく、ペプチド又はタンパク質をコードする「転写物」に関連する。mRNAは、典型的には、5’非翻訳領域(5’-UTR)、タンパク質又はペプチドをコードする領域、及び3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。mRNAは、細胞内及びインビトロでの半減期が限られている。好ましくは、mRNAは、DNAテンプレートを使用するインビトロでの転写により産生される。本発明の一実施形態において、RNAは、インビトロでの転写又は化学合成により得られる。インビトロでの転写の方法論は、当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0320】
本発明の一実施形態において、RNAは、一本鎖の自己複製RNA等の自己複製RNAである。一実施形態において、自己複製RNAは、プラスセンスの一本鎖RNAである。一実施形態において、自己複製RNAは、ウイルスRNA、又はウイルスRNA由来のRNAである。一実施形態において、自己複製RNAは、アルファウイルスゲノムRNAであるか、又はアルファウイルスゲノムRNAに由来する。アルファウイルスRNAは、当該技術分野で公知であるように、mRNAとして作用し得る。一実施形態において、自己複製RNAは、ウイルス遺伝子発現ベクターである。一実施形態において、ウイルスは、セムリキ森林熱ウイルス(Semliki forest virus)である。一実施形態において、自己複製RNAは、1つ又は複数の導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子の少なくとも1つは、本明細書で説明されている結合剤をコードする。一実施形態において、RNAが、ウイルスRNAであるか、又はウイルスRNAに由来する場合には、導入遺伝子は、構造タンパク質をコードするウイルス配列等のウイルス配列を部分的に又は完全に置き換え得る。一実施形態において、自己複製RNAは、インビトロで転写されたRNAである。
【0321】
本発明に従って使用されるRNAの発現及び/又は安定性を増加させるために、好ましくは、発現されるペプチド又はタンパク質の配列を変更することなく、改変させ得る。
【0322】
本発明に従って使用されるRNAに関連する「改変」という用語は、前記RNAに天然には存在しないRNAのあらゆる改変を含む。
【0323】
本発明の一実施形態において、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5’-三リン酸を有していない。そのようなキャップされていない5’-三リン酸の除去を、RNAをホスファターゼで処理することにより達成し得る。
【0324】
本発明に係るRNAは、その安定性を高め、並びに/又は細胞毒性及び/若しくは免疫原性を低下させるために、天然に存在するか又は合成の改変リボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施形態において、本発明に従って使用されるRNAでは、5-メチルシチジンは、一部が又は完全にシチジンに置換されており、好ましくは完全にシチジンに置換されている。或いは、又は加えて、一実施形態において、本発明に従って使用されるRNAでは、プソイドウリジンは、一部が又は完全にウリジンに置換されており、好ましくは完全にウリジンに置換されている。
【0325】
一実施形態において、「改変」という用語は、RNAに5’-キャップ又は5’-キャップ類似体を付与することに関する。「5-キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端で見出されるキャップ構造を指しており、一般に、独特な5’-5’-三リン酸連結を介してmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態において、このグアノシンは、7位でメチル化されている。「従来の5’-キャップ」という用語は、天然に存在するRNAの5’-キャップを指しており、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明に関連して、「5’-キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に類似しており、好ましくはインビボで及び/又は細胞内で、結合し
た場合にRNAを安定化させる能力を有するように改変されている5’-キャップ類似体を含む。
【0326】
RNAに5’-キャップ又は5’-キャップ類似体を付与することは、前記5’-キャップ又は5’-キャップ類似体の存在下でのDNAテンプレートのインビトロでの転写により達成され得、前記5’-キャップは、生成されたRNA鎖に共転写的に組み込まれるか、又はRNAは、例えば、インビトロでの転写により生成され得、5’-キャップは、キャッピング酵素(例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素)を使用して、転写後にRNAに結合され得る。
【0327】
RNAは、さらなる改変を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる改変は、天然に存在するポリ(A)テイルの伸長若しくは短縮化であり得るか、又は5’-若しくは3’-非翻訳領域(UTR)の変更(例えば、前記RNAのコード領域に関連しないUTRの導入、例えば、グロビン遺伝子(例えば、アルファ2-グロビン、アルファ1-グロビン、ベータ-グロビン、好ましくはベータ-グロブリン、より好ましくはヒトベータ-グロビン)由来の3’-UTRの1つ若しくは複数(好ましくは2つ)のコピーの挿入)であり得る。
【0328】
従って、本発明に従って使用されるRNAの安定性及び/又は発現を増加させるために、このRNAを、好ましくは10~500個、より好ましくは30~300個、さらにより好ましくは65~200個、特に100~150個のアデノシン残基の長さを有するポリA配列と共に存在するように改変し得る。特に好ましい実施形態において、ポリA配列は、約120個のアデノシン残基の長さを有する。加えて、RNA分子の3’-非翻訳領域に2つ以上の3’-非翻訳領域(UTR)を組み込むことにより、翻訳効率が向上し得る。特定の一実施形態において、3’-UTRは、ヒトβ-グロビン遺伝子に由来する。
【0329】
好ましくは、RNAは、細胞(特に、インビボで存在する細胞)に送達される(即ちトランスフェクトされる)場合には、これがコードするタンパク質、ペプチド、又は抗原が発現される。
【0330】
「トランスフェクション」という用語は、核酸(特にRNA)の細胞への導入に関する。本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、核酸の細胞への導入、又はそのような細胞による核酸の取り込みも含み、この細胞は、対象(例えば患者)中に存在し得る。そのため、本発明によれば、本明細書で説明されている核酸のトランスフェクション用の細胞は、インビトロ又はインビボで存在し得、例えば、この細胞は、患者の臓器、組織、及び/又は器官の一部を形成し得る。本発明によれば、トランスフェクションは、一過性であり得るか、又は安定であり得る。トランスフェクションの用途によっては、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性に発現されるだけでも十分である。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないことから、この外来核酸は、有糸分裂により希釈されるか、又は分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が細胞及びその娘細胞のゲノムに実際に残ることが望まれる場合には、安定したトランスフェクションが起こらなければならない。RNAを細胞にトランスフェクトして、コードされたタンパク質を一過性に発現させ得る。
【0331】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を除去するのに必要な期間に関する。本発明に関連して、RNAの半減期は、前記RNAの安定性を示す。RNAの半減期は、RNAの「発現期間」に影響を及ぼす場合がある。半減期が長いRNAは長期間にわたり発現されることが予想され得る。
【0332】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝コードがRNAに転写されるプロセスに関する。その後、RNAは、タンパク質に翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は、「インビトロでの転写」を含み、「インビトロでの転写」という用語は、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてRNA(特にmRNA)がインビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、転写産物の生成には、クローニングベクターが適用される。このクローニングベクターは、一般に、転写ベクターと呼ばれており、本発明に従って、「ベクター」という用語に包含される。
【0333】
本発明に係る「翻訳」という用語は、細胞のリボソームにおける、メッセンジャーRNAの鎖がアミノ酸の配列の構築を指示してペプチド又はタンパク質を作るプロセスに関する。
【0334】
「発現」という用語は、最も一般的な意味で本発明に従って使用され、例えば、転写及び/又は翻訳によるRNA及び/又はペプチド若しくはタンパク質の産生を含む。RNAに関しては、「発現」又は「翻訳」という用語は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。また、この用語は、核酸の部分発現も含む。さらに、発現は、一過性であり得るか、又は安定であり得る。本発明によれば、発現という用語はまた、「異常な(aberrant)発現」又は「異常な(abnormal)発現」も含む。
【0335】
「異常な(aberrant)発現」又は「異常な(abnormal)発現」は、本発明に従って、発現が、基準(例えば、ある特定のタンパク質(例えば腫瘍抗原)の異常な(aberrant)発現又は異常な(abnormal)発現に関連する疾患を有していない対象における状態)と比較して変化しており、好ましくは増加していることを意味する。発現の増加とは、少なくとも10%、特に、少なくとも20%、少なくとも50%、若しくは少なくとも100%、又はより多い増加を指す。一実施形態において、発現は疾患組織でのみ見出されており、健康な組織での発現は抑制されている。
「特異的に発現される」という用語は、タンパク質が本質的に特定の組織又は臓器でのみ発現されることを意味する。例えば、胃粘膜で特異的に発現される腫瘍抗原は、前記タンパク質が主に胃粘膜で発現されて他の組織では発現されないか又は他の組織若しくは他の臓器型では有意な程度まで発現されないことを意味する。そのため、胃粘膜の細胞のみで現され、精巣等のあらゆる他の組織では有意に低い程度まで発現されるタンパク質は、胃粘膜の細胞で特異的に発現される。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はまた、正常な条件下で、複数種の組織型又は臓器(例えば、2又は3種の組織型又は臓器)で特異的に発現され得るが、好ましくは、3種以下の異なる組織型又は臓器型で発現され得る。この場合には、次いで、腫瘍抗原は、これらの臓器で特異的に発現される。例えば、腫瘍抗原が、正常条件下で、好ましくは肺及び胃でほぼ同程度まで発現されている場合には、前記腫瘍抗原は、肺及び胃で特異的に発現されている。
【0336】
本発明によれば、「コードするRNA」という用語は、RNAが、適切な環境(好ましくは細胞内)で存在する場合には、発現されて、このRNAがコードするタンパク質又はペプチドが産生され得ることを意味する。
【0337】
本発明のいくつかの態様は、本明細書で説明されている結合剤をコードするRNA等の核酸によりインビトロでトランスフェクトされ、好ましくは、低い前駆体頻度から臨床的に適切な細胞数までのエクスビボでの拡大後に患者等のレシピエントに移入される宿主細胞の養子移入に依存している。本発明に係る処置に使用される宿主細胞は、処置されるレシピエントに対して自家であってもよいし、同種であってもよいし、同系であってもよい。
【0338】
「自家」という用語は、同一対象に由来するものを説明するために使用される。例えば、「自家移植」は、同一対象に由来する組織又は臓器の移植を指す。そのような手順は、有利であり、なぜならば、他の手段では拒絶反応を引き起こす免疫学的障壁が克服されるからである。
【0339】
「同種」という用語は、同一種の異なる個体に由来するものを説明するために使用される。1つ又は複数の遺伝子座での遺伝子が同一ではない場合には、2つ以上の個体は、互いに同種であると言われる。
【0340】
「同系」という用語は、同一の遺伝子型を有する個体又は組織(即ち、一卵性双生児若しくは同系交配系統の動物、又はこれらの組織)に由来するものを説明するために使用される。
【0341】
「異種」という用語は、複数の異なる要素からなるものを説明するために使用される。例として、ある個体の骨髄の別の個体への移植は、異種移植を構成する。異種遺伝子とは、対象以外の供給源に由来する遺伝子のことである。
【0342】
本発明に係る「ペプチド」という用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合により共有結合的に連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは9個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、及び好ましくは最大8、10、20、30、40、又は50個、特に100個のアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチドを指しており、好ましくは、100個超のアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0343】
特定のアミノ酸配列(例えば、配列表に示されるアミノ酸配列)に関して本明細書で付与される教示は、前記特定の配列と機能的に等価な配列(例えば、特定のアミノ酸配列と同一の又は類似の特性を示すアミノ酸配列)をもたらす、前記特定の配列のバリアントにも関連するように解釈されるべきである。重要な1つの特性は、標的への結合を保持すること、又はエフェクター機能を維持することである。好ましくは、特定の配列に関してバリアントである配列は、抗体中の特定の配列を置き換える場合には、CLDN18.2及び/又はCD3に対する前記抗体の結合を保持しており、好ましくは、本明細書で説明されている前記抗体の機能を保持する。さらに、好ましくは、特定の配列に関してバリアントである配列は、結合剤中の特定の配列を置き換える場合には、CLDN18.2及び/又はCD3への前記結合剤の結合を保持しており、好ましくは、本明細書で説明されている前記結合剤の機能(例えば、細胞傷害性T細胞媒介性溶解)を保持する。
【0344】
例えば、配列表に示されている配列は、特に、システイン残基を、システイン以外のアミノ酸(好ましくは、セリン、アラニン、スレオニン、グリシン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、又はメチオニンに置き換えることにより、1つ又は複数、好ましくは全ての遊離システイン残基を除去するように改変され得る。
【0345】
特に、CDR、超可変領域、及び可変領域の配列は、CLDN18.2及び/又はCD3に結合する能力を失うことなく改変され得ることを、当業者には理解されるだろう。例えば、CDR領域は、本明細書で規定される領域と同一であるか、又は高度に相同である。「高度に相同」とは、CDR中に、1~5個、好ましくは1~4個、例えば1~3個、又は1若しくは2個の置換が行なわれ得ることが企図される。加えて、超可変領域及び可変領域は、本明細書で具体的に開示されている領域と実質的な相同性を示すように改変され得る。一実施形態において、可変領域配列は、本明細書で具体的に開示されている可変
領域配列から、フレームワーク配列においてのみ逸脱している。
【0346】
本発明の結合剤は、細胞内(例えば、細胞質ゾル内、ペリプラズマ内、若しくは封入体内)で産生され、次いで宿主細胞から単離され、任意選択的にさらに精製され得るか;又は細胞外(例えば、宿主細胞が培養されている培地内)で産生され、次いで培養培地から単離され、任意選択的にさらに精製され得る。ポリペプチドの組換え製造に使用される方法及び試薬(例えば、特定の好適な発現ベクター、形質転換又はトランスフェクション方法、選択マーカー、タンパク質発現の誘導方法、培養条件等)は、当該技術分野で公知である。同様に、タンパク質の単離及び精製技術は、当業者に公知である。
【0347】
「細胞」又は「宿主細胞」という用語は、好ましくは、インタクトな細胞に関し、即ち、酵素、オルガネラ、又は遺伝物質等の通常の細胞内成分を放出していないインタクトな膜を有する細胞に関する。インタクトな細胞とは、好ましくは、生細胞のことであり、即ち、通常の代謝機能を実行可能な生細胞のことである。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外来性核酸でトランスフェクトされ得るあらゆる細胞に関する。好ましくは、この細胞は、外来性核酸でトランスフェクトされてレシピエントに移植された場合には、レシピエント中で核酸を発現し得る。「細胞」という用語は、細菌細胞を含み;他の有用な細胞は、酵母細胞、真菌細胞、又は哺乳類細胞である。好適な細菌細胞として、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス属(Proteus)、及びシュードモナス属(Pseudomonas)等のグラム陰性細菌株由来の細胞、並びにバチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、及びラクトコッカス属(Lactococcus)等のグラム陽性細菌株由来の細胞が挙げられる。好適な真菌細胞として、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)、及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種由来の細胞が挙げられる。適切な酵母細胞として、サッカロマイセス属(Saccharomyces)(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びピキア・メタノリカ(Pichia methanolica))、並びにハンゼヌラ属(Hansenula)の種由来の細胞が挙げられる。好適な哺乳類細胞として、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、293HEK細胞等が挙げられる。しかしながら、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び異種タンパク質の発現に当該技術分野で使用される他の細胞も、同様に使用され得る。哺乳類細胞(例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、及び霊長類の細胞)は、養子移入に特に好ましい。細胞は、多くの組織型に由来し得、免疫系の細胞(特に、樹状細胞及びT細胞等の抗原提示細胞、造血幹細胞及び間葉系幹細胞等の幹細胞、並びに他の細胞型)等の初代細胞及び細胞株を含む。抗原提示細胞は、表面で主要組織適合性複合体に関連する抗原を提示する細胞である。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識し得る。
【0348】
「減少」、「低下」、又は「阻害」は、本明細書で使用される場合、全体的な減少、又は細胞のレベル(例えば、発現レベル若しくは増殖レベル)において、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。
【0349】
「増加」又は「増強」等の用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、最も好
ましくは少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%、少なくとも約1000%、少なくとも約10000%の増加若しくは増強、又はさらに大きい増加若しくは増強に関する。
【0350】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
ADCCは、本明細書で説明されているエフェクター細胞(特にリンパ球)細胞死滅能力を説明しており、この能力は、好ましくは、抗体により標識された標的細胞を必要とする。
【0351】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)と結合することで生じる。Fc受容体のいくつかのファミリが同定されており、特定の細胞集団が、定義されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示及び腫瘍指向性T細胞応答の誘導につながる様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導するための機序と見なされ得る。好ましくは、ADCCのインビボでの誘導は、腫瘍指向性T細胞応答及び宿主由来の抗体応答をもたらす。
【0352】
抗体依存性細胞媒介性食作用
ADCPは、多くの抗体療法の1つの作用機序である。これは、抗体は、そのFcドメインを食細胞上の特定の受容体に接続させ、食作用を誘発することにより、結合した標的を除去する、高度に制御されたプロセスとして定義される。ADCPは、マクロファージ上のFcγRIIa(CD32a)が主要な経路を表す、FcγRIIa、FcγRI、及びFcγRIIIaを介して、単球、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞により媒介され得る。
【0353】
ADCPは、好ましくは、FcγRを発現する非特異的食細胞が、腫瘍細胞を含む疾患細胞等の標的細胞に結合した抗体を認識した場合に起こり、その後、腫瘍細胞を含む疾患細胞等の標的細胞の食作用が引き起こされる。ADCPはまた、抗原提示を促進するか又は炎症性メディエータの分泌を刺激することにより、下流の適応免疫応答も刺激する。ADCPは、免疫調節剤との同時処置により、インビボで改善され得る。ADCPのFc受容体依存的な機能は、ウイルス及びウイルス感染細胞のクリアランスのための機序を提供し、さらには、抗原提示を促進するか又は炎症性メディエータの分泌を刺激することにより下流の適応免疫応答を刺激するための機序も提供する。
【0354】
補体依存性細胞傷害
CDCは、抗体により誘導され得るさらに別の細胞死滅方法である。IgMは、補体活性化に最も有効なアイソタイプである。IgG1及びIgG3はまた、古典的補体活性化経路を介したCDCの誘導でも非常に有効である。好ましくは、このカスケードでは、抗原抗体複合体の形成により、IgG分子等の参加抗体分子のCH2ドメイン上の近接した複数のC1q結合部位が暴露される(C1qは、補体C1の3つのサブコンポーネントの内の1つである)。好ましくは、これらの暴露されたC1q結合部位は、それまで低親和性のC1q-IgG相互作用を高親和性に変換し、これにより、一連の他の補体タンパク質が関与する一連の事象が引き起こされ、エフェクター細胞の走化性/活性化因子C3a及びC5aのタンパク質分解放出が引き起こされる。好ましくは、補体カスケードは、膜攻撃複合体の形成で終わり、これにより、細胞膜にポアが形成され、水及び溶質の細胞の内外への自由な通過が促進される。
【0355】
本明細書で説明されている結合剤及び抗体を、従来のモノクローナル抗体方法論(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術)等の様々な技術により製造し得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原理的には、モノクローナル抗体を製
造するための他の技術を利用し得、例えば、Bリンパ球のウイルス形質転換若しくは発がん性形質転換、又は抗体遺伝子のライブラリを使用するファージディスプレイ技術を利用し得る。
【0356】
モノクローナル抗体等のモノクローナル結合剤を分泌するハイブリドーマの調製に好ましい動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。融合のための免疫化脾細胞の単離のための免疫化プロトコル及び技術は、当該技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、ネズミ骨髄腫細胞)及び融合手順も、公知である。モノクローナル抗体等のモノクローナル結合剤を分泌するハイブリドーマの調製に好ましい他の動物系は、ラット及びウサギ系である(例えば、Spieker-Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9348(1995)で説明されており、Rossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照されたい)。
【0357】
さらに別の好ましい実施形態において、ヒト抗体等のヒト結合剤を、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックマウス又はトランス染色体マウスを使用して生成し得る。これらのトランスジェニックマウス及びトランス染色体マウスは、それぞれ、HuMAbマウス及びKMマウスとして公知のマウスを含み、本明細書では総称して「トランスジェニックマウス」と称される。そのようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体等のヒト結合剤の産生を、国際公開第2004035607号パンフレットにおいてCD20に関して詳述されているように実施し得る。
【0358】
モノクローナル抗体等のモノクローナル結合剤を生成するためのさらに別の戦略は、特異性が規定された結合剤を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することである(例えば、Babcock et al.,1996;A novel strategy for generating monoclonal binding
agents such as monoclonal antibodies from single,isolated lymphocytes producing
binding agents of defined specificitiesを参照されたい)。組換え結合剤操作の詳細に関しては、Welschof and Kraus,Recombinant antibodies for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8及びBenny K.C.Lo Antibody Engineering ISBN 1-58829-092-1も参照されたい。
【0359】
抗体を生成するために、マウスを、説明されているように、抗原配列(即ち、抗体に対する配列)に由来するキャリア結合ペプチド、組換え発現抗原若しくはその断片の富化調製物、及び/又は抗原を発現する細胞で免疫化し得る。或いは、抗原又はその断片をコードするDNAでマウスを免疫化し得る。抗原の精製調製物又は富化調製物を使用する免疫化により抗体が得られない場合では、マウスをまた、抗原を発現する細胞(例えば細胞株)で免疫化して、免疫応答を促進し得る。免疫応答を、尾静脈又は後眼窩出血により得られる血漿サンプル及び血清サンプルにより、免疫化プロトコルの経過にわたりモニタリングし得る。免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを、融合に使用し得る。マウスを、屠殺して脾臓を摘出する3日前に、抗原発現細胞を腹腔内又は静脈内にブーストして、特異的抗体分泌ハイブリドーマの割合を増加させ得る。
【0360】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウスから脾細胞及びリンパ節細胞を単離して、マウス骨髄腫細胞株等の適切な不死化細胞株と融合させ得る。次いで、得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生に関してスクリーニングし得る。次いで、個々のウェルを、抗体分泌ハイブリドーマに関してELISAでス
クリーニングし得る。抗原発現細胞を使用する免疫蛍光法及びFACS分析により、抗原に対する特異性を有する抗体を同定し得る。抗体を分泌するハイブリドーマを、再播種し、再度スクリーニングし、それでもモノクローナル抗体に関して陽性である場合には、限界希釈によりサブクローニングし得る。安定したサブクローンを、インビボで培養して、キャラクタリゼーションのために組織培養培地中で抗体を生成し得る。
【0361】
抗体等の結合剤はまた、例えば、当該技術分野で公知の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマでも産生され得る(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0362】
例えば、一実施形態において、目的の遺伝子(例えば抗体遺伝子)を、例えば、国際公開第87/04462号パンフレット、同第89/01036号パンフレット、欧州特許第338841号明細書で開示されているGS遺伝子発現系、又は当該技術分野で公知の他の発現系により使用される真核生物発現プラスミド等の発現ベクターにライゲートさせ得る。クローニングされた抗体遺伝子を有する精製プラスミドを、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞、若しくはHEK293細胞等の真核宿主細胞、或いは植物由来細胞、真菌細胞、若しくは酵母細胞のような他の真核細胞に導入し得る。この遺伝子を導入するために使用される方法は、エレクトロポレーション、リポフェクチン、リポフェクタミン等の当該技術分野で説明されている方法であり得る。この抗体遺伝子の宿主細胞への導入後、この抗体を発現する細胞を同定して選択し得る。この細胞は、発現レベルを増幅し、抗体を産生するためにスケールアップし得るトランスフェクトーマを表す。組換え抗体を、この培養上清及び/又は細胞から単離して精製し得る。
【0363】
或いは、クローン化された結合剤(例えば抗体)遺伝子は、微生物(例えば大腸菌(E.coli))等の原核細胞を含む他の発現系で発現され得る。さらに、結合剤(例えば抗体)は、トランスジェニック非ヒト動物(例えば、ヒツジ及びウサギの乳、若しくはニワトリの卵)、又はトランスジェニック植物で産生され得る(例えば、Verma,R.,et al.(1998)J.Immunol.Meth.216:165-181;Pollock,et al.(1999)J.Immunol.Meth.231:147-157;及びFischer,R.,et al.(1999)Biol.Chem.380:825-839を参照されたい)。
【0364】
キメラ化
非標識マウス抗体は、ヒトでは、繰り返し適用された場合に免疫原性が高く、治療効果の低下につながる。主な免疫原性は、重鎖定数領域によって媒介される。ヒトにおけるマウス抗体由来の結合剤の免疫原性は、それぞれの結合剤がキメラ化されているか又はヒト化されている場合には、低減され得るか、又は完全に回避され得る。キメラ結合剤は、異なる部分が異なる動物種に由来する結合剤(例えば、マウス抗体由来の可変領域と、ヒト免疫グロブリン定常領域とを有する結合剤)である。結合剤のキメラ化は、マウス抗体重鎖及び軽鎖の可変領域と、ヒト重鎖及び軽鎖の定常領域とを結合させることにより達成される(例えば、Kraus et al.,in Methods in Molecular Biology series,Recombinant antibodies for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8により説明されている)。好ましい実施形態において、キメラ結合剤は、ヒトカッパ-軽鎖定数領域と、マウス軽鎖可変領域とを結合させることにより生成される。同様に好ましい実施形態において、キメラ結合剤は、ヒトラムダ-軽鎖定数領域とマウス軽鎖可変領域とを結合させることにより生成され得る。キメラ結合剤の生成に好ましい重鎖定数領域は、IgG1、IgG3、及びIgG4である。キメラ結合剤の生成に好ましい他の重鎖定数領域は、IgG2、IgA、IgD、及びIgMである。
【0365】
ヒト化
抗体等の結合剤は、主に6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由のために、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列と比べて個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与していることから、特性が異なる別の抗体のフレームワーク配列に移植されている特定の天然に存在する抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え結合剤(例えば抗体)を発現させることが可能である(例えば、Riechmann,L.et al.(1998)Nature 332:323-327;Jones,P.et al.(1986)Nature 321:522-525;及びQueen,C.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029-10033を参照されたい)。そのようなフレームワーク配列を、生殖細胞系抗体遺伝子の配列を含む公開DNAデータベースから得ることができる。この生殖細胞系列配列は、成熟抗体遺伝子配列とは異なっており、なぜならば、B細胞の成熟過程中にV(D)J結合によって形成される、完全に構築された可変遺伝子を含まないからである。生殖細胞系列遺伝子の配列はまた、可変領域全体にわたって個々に均一に、高親和性二次レパートリー抗体の配列とも異なる。
【0366】
抗原に結合する抗体及び他の結合剤の能力を、標準的な結合アッセイ(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、免疫蛍光、及びフローサイトメトリー分析)を使用して決定し得る。
【0367】
抗体等の結合剤を精製するために、選択された産生細胞株を、2リットルのスピナーフラスコで増殖させて、組換え抗体を精製し得る。或いは、抗体等の結合剤を、透析ベースのバイオリアクタで生成し得る。上清を濾過し得、必要に応じて、プロテインL-セファロースを使用する親和性クロマトグラフィーの前に濃縮し得る。溶出された結合剤を、ゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィーにより調べて純度を確保し得る。緩衝液をPBSに交換し得、それぞれの吸光係数を使用して、OD280により濃度を決定し得る。組換え結合剤をアリコートして、-65~-85℃で保存し得る。
【0368】
抗原を発現している生細胞へのモノクローナル抗体等のモノクローナル結合剤の結合を実証するために、フローサイトメトリーを使用し得る。抗原を天然に発現しているか又はトランスフェクション後に発現している細胞株、及び抗原発現を欠く陰性コントロール(標準的な増殖条件下で増殖させる)を、ハイブリドーマ上清中での又は1%FBSを含むPBS中での様々な濃度のモノクローナル抗体と混合して、30分にわたり4℃インキュベートし得る。洗浄後、蛍光標識検出試薬(例えば、蛍光がコンジュゲートした抗IgG抗体、抗Fab抗体、又はProtein-L)は、一次結合剤の染色と同一の条件下で抗原結合モノクローナル結合剤に結合し得る。サンプルを、光及び側方散乱特性を使用するFACS装置によるフローサイトメトリーで分析し、単一の生細胞をゲートし得る。抗原特異的モノクローナル結合剤と非特異的結合剤とを一回の測定で区別するために、共トランスフェクション方法を採用し得る。抗原及び蛍光マーカーをコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトした細胞を、上述したように染色し得る。トランスフェクトされた細胞を、結合剤で染色された細胞とは異なる蛍光チャンネルで検出し得る。トランスフェクトされた細胞の大部分は、両方の導入遺伝子を発現することから、抗原特異的モノクローナル結合剤は、蛍光マーカー発現細胞に優先的に結合するが、非特異的結合剤は、トランスフェクトされていない細胞に同等の比率で結合する。フローサイトメトリーアッセイに加えて、又はフローサイトメトリーアッセイの代わりに、蛍光顕微鏡を使用する代替アッセイを使用し得る。細胞を、上述したように正確に染色して、蛍光顕微鏡で調べることができる。
【0369】
抗原を発現している生細胞へのモノクローナル抗体等のモノクローナル結合剤の結合を実証するために、免疫蛍光顕微鏡分析を使用し得る。例えば、自然発生的に又はトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と、抗原発現を欠く陰性コントロールとを、DMEM/F12培地(10% ウシ胎児血清(FCS)、2mM L-グルタミン、100IU/ml ペニシリン、及びl00μg/ml ストレプトマイシンが補充されている)中において、標準増殖条件下にて、チャンバースライドで増殖させる。次いで、細胞を、メタノール又はパラホルムアルデヒドで固定し得るか、又は未処理のままにし得る。次いで、細胞を、25℃で30分にわたり、抗原に対するモノクローナル結合剤と反応させ得る。洗浄後、細胞を、同一条件で、Alexa555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes)と反応させ得る。次いで、細胞を蛍光顕微鏡で調べ得る。
【0370】
抗原を発現している細胞からの細胞抽出物、及び適切な陰性コントロールを調製して、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し得る。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、ブロッキングし、試験するモノクローナル結合剤で調べる。IgG結合を、抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用して検出して、ECL基質で現像し得る。
【0371】
抗体等の結合剤を、日常的な外科手術中に患者から採取した非がん組織サンプル若しくはがん組織サンプル、又は自然発生的に若しくはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株が接種された異種移植腫瘍を有するマウスから採取した非がん組織サンプル若しくはがん組織サンプルからの、パラホルムアルデヒド若しくはアセトンで固定された凍結切片、又はパラホルムアルデヒドで固定されたパラフィン包埋組織切片を使用して、当業者に公知の方法で免疫組織化学的に、抗原との反応性に関してさらに試験し得る。免疫染色のために、抗原に反応する結合剤をインキュベートし、続いて、供給業者の指示に従って、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス又はヤギ抗ウサギ抗体(DAKO)をインキュベートし得る。
【0372】
前臨床試験
本明細書で説明されている結合剤をまた、インビボモデル(例えば、CLDN18.2を発現する細胞株が接種された異種移植腫瘍を有する免疫不全マウス)でも試験して、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の増殖の制御での有効性を決定し得る。
CLDN18.2発現腫瘍細胞を免疫不全マウス又は他の動物に異種移植した後のインビボ研究を、本明細書で説明されている結合剤を使用して実施し得る。結合剤、及びPBMC等の任意選択的なエフェクター細胞を、腫瘍がないマウスに投与し、続いて腫瘍細胞を注射して、腫瘍の形成又は腫瘍に関連する症状を予防する結合剤の効果を測定し得る。結合剤、及びPBMC等の任意選択的なエフェクター細胞を、腫瘍担持マウスに投与して、腫瘍増殖、転移、又は腫瘍に関連する症状を軽減するためのそれぞれの結合剤の治療効果を決定し得る。結合剤及び任意選択的なエフェクター細胞の適用を、細胞分裂阻害薬(cystostatic drugs)、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、血管新生阻害剤、又は抗体等の他の物質の適用と組み合わせて、組合せによる有効性の増大と毒性の可能性を決定し得る。結合剤により媒介される毒性副作用を分析するために、動物に、本明細書で説明されている結合剤又はコントロール試薬を接種し、CLDN18.2-結合剤治療に関連すると考えられる症状について完全に調べ得る。
【0373】
結合剤により認識されるエピトープのマッピングを、“Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)by Glenn E.Morris ISBN-089603-375-9、及び“Epitope Mapping: A Practical Approach”Practical Approach Series,248 by ISBN-0896
03-375-9、及び“Epitope Mapping:A Practical Approach”Practical Approach Series,248 by Olwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayで詳述されているように実施し得る。
【0374】
本明細書で説明されている化合物及び薬剤を、任意の適切な医薬組成物の形態で投与し得る。
【0375】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望の反応又は所望の効果を得るために、本明細書で説明されている結合剤及び任意選択的な本明細書で論じられているさらなる薬剤の有効量を含む。
【0376】
医薬組成物は、通常、均一な剤形で提供され、それ自体が公知の方法で調製され得る。医薬組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の形態であり得る。
【0377】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、保存剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含み得、これらは全て、好ましくは薬学的に許容される。「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0378】
薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために使用され得、本発明に含まれる。この種の薬学的に許容される塩は、非限定的な方法で、下記の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。薬学的に許容される塩をまた、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としても調製し得る。
【0379】
医薬組成物での使用に適した緩衝物質として、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。
【0380】
医薬組成物での使用に適した保存剤として、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールが挙げられる。
【0381】
注射用製剤は、乳酸リンゲル等の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0382】
「担体」という用語は、天然又は合成の性質を有する有機成分又は無機成分を指しており、この担体中に、活性成分が、適用を容易にするか、増強するか、又は可能にするために配合される。本発明によれば、「担体」という用語はまた、患者への投与に適した1種又は複数種の適合性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化物質も含む。
【0383】
非経口投与用の可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性のあるラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0384】
「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合には、医薬組成物中に存在し得、有効成分ではない全ての物質(例えば、担体、結合剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝液、香味剤、又は着色剤等)を示すことが意図されている。
【0385】
本明細書で説明されている薬剤及び組成物を、例えば注射又は注入による非経口投与等の任意の従来の経路で投与し得る。投与は、好ましくは非経口的であり、例えば、静脈内
、動脈内、皮下、皮内、又は筋肉内である。
【0386】
非経口投与に適した組成物は、通常、活性化合物の無菌の水性又は非水性の調製物を含み、この調製物は、好ましくは、レシピエントの血液に対して等張である。適合する担体及び溶媒の例は、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム液である。加えて、通常は無菌の固定油が、溶液又は懸濁液の媒体として使用される。
【0387】
本明細書で説明されている薬剤及び組成物を、有効量で投与する。「有効量」は、単独で又はさらなる用量と共に、所望の反応又は所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の処置の場合には、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅延させることを含み、特に、疾患の進行を妨げるか又は反転させることを含む。疾患又は状態の処置における所望の反応は、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防でもあり得る。
【0388】
本明細書で説明されている薬剤又は組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重症度、患者の個々のパラメータ(例えば、年齢、生理学的状態、体格、及び体重)、処置期間、付随する療法の種類(存在する場合)、具体的な投与経路、並びに同様の要因に依存する。従って、本明細書で説明されている薬剤の投与量は、様々なそのようなパラメータに依存する場合がある。初期用量では患者の反応が不十分な場合には、より高用量(又は、より局所的な別の投与経路により達成される効果的な高用量)を使用し得る。
【0389】
本明細書で説明されている薬剤及び組成物を、本明細書で説明されている障害等の様々な障害を処置するか又は予防するために、例えばインビボで患者に投与し得る。好ましい患者として、本明細書で説明されている薬剤及び組成物を投与することにより矯正され得るか又は改善され得る障害を有するヒト患者が挙げられる。これには、CLDN18.2の発現パターンの変更を特徴とする細胞が関与する障害も含まれる。
【0390】
例えば、一実施形態において、本明細書で説明されている薬剤を使用して、がん疾患(例えば、CLDN18.2を発現するがん細胞の存在を特徴とする本明細書で説明されているがん疾患)を有する患者を処置し得る。
【0391】
本発明に従って説明されている医薬組成物及び処置方法をまた、本明細書で説明されている疾患を予防するための免疫化又はワクチン接種にも使用し得る。
【0392】
本発明の医薬組成物は、1種又は複数種のアジュバント等の補助的な免疫増強物質と共に投与し得、その有効性をさらに高めるために、好ましくは免疫刺激の相加効果を達成するために、1種又は複数種の免疫増強物質を含み得る。「アジュバント」という用語は、免疫反応を延長させるか、増強するか、又は促進する化合物に関する。これに関して、様々な種類のアジュバントに応じて様々な機序が可能である。例えば、DCの成熟を可能にする化合物(例えば、リポ多糖又はCD40リガンド)は、適切なアジュバントの第1のクラスを形成する。一般に、「危険シグナル」のタイプ(LPS、GP96、dsRNA等)又はGM-CSF等のサイトカインの免疫系に影響を及ぼす任意の薬剤を、免疫反応を制御された方法で増強し得る及び/又は影響を及ぼし得るアジュバントとして使用し得る。CpGオリゴデオキシヌクレオチドも、任意選択的にこの文脈で使用され得るが、上述したように、ある特定の状況下で起こるその副作用を考慮しなければならない。特に好ましいアジュバントは、サイトカイン、例えば、モノカイン、リンパカイン、インターロイキン、又はケモカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INFα、INF-γ、GM-CSF、LT-α、又は増殖因子、例えばhGHである。さらに公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、又は油、例えば、Mon
tanide(登録商標)、最も好ましくはMontanide(登録商標)ISA51である。Pam3Cys等のリポペプチドも、本発明の医薬組成物におけるアジュバントとしての使用に適している。
【0393】
本明細書で提供される薬剤及び組成物を、単独で使用してもよいし、手術、放射線照射、化学療法、及び/又は骨髄移植(自家、同系、同種、又は非血縁)等の従来の治療レジメンと組み合わせて使用してもよい。
【0394】
がんの治療は、2、3、4種、又はさらに多い抗がん剤/治療薬の複合作用により、単剤療法アプローチの効果と比べてもかなり強い相乗効果が得られることが多いことから、併用戦略が特に望ましい分野である。そのため、本発明の別の実施形態において、本発明の方法及び医薬組成物等の免疫又はワクチン接種に基づく機序を利用するがん治療は、類似の又は他の特異的機序を標的とする様々な他の薬物及び/又は方法と効果的に併用され得る。これらの中でも、例えば、従来の腫瘍治療、マルチエピトープ戦略、追加の免疫療法、及び血管新生又はアポトーシスを標的とする処置アプローチとの組合せがある(概説に関して、例えば、Andersen et al.2008:Cancer treatment:the combination of vaccination with other therapies.Cancer Immunology Immunotherapy,57(11):1735-1743を参照されたい)。様々な薬剤の連続投与は、様々なチェックポイントでがん細胞の増殖を阻害し得、他の薬剤は、例えば、がんが慢性疾患へと代わる可能性がある新生血管形成、悪性細胞の生存、又は転移を阻害し得る。下記のリストは、本発明と併用され得る抗がん剤及び治療のいくつかの非限定的な例を示す。
【0395】
1.化学療法
化学療法は、複数種のがんに対する標準治療である。最も一般的な化学療法剤は、がん細胞の主な特性の内の1つである急速に分裂する細胞を死滅させることにより作用する。そのため、従来の化学療法薬(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、及び細胞分裂又はDNA合成に影響を及ぼす他の抗腫瘍剤)との併用は、抑制細胞、免疫系の再起動を除去することによるか、腫瘍細胞を免疫媒介性死滅に対してより感受性にすることによるか、又は免疫系の細胞のさらなる活性化により、本発明の治療効果を有意に改善し得る。化学療法薬とワクチン接種に基づく免疫療法薬との相加的な抗がん作用は、複数の研究で実証されている(例えば、Quoix et al.2011:Therapeutic vaccination
with TG4010 and first-line chemotherapy
in advanced non-small-cell lung cancer:a controlled phase 2B trial.Lancet Oncol.12(12):1125-33.を参照されたく;Liseth et al.2010:Combination of intensive chemotherapy and anticancer vaccines in the treatment
of human malignancies:the hematological
experience.J Biomed Biotechnol.2010:6920979も参照されたく;Hirooka et al 2009:A combination therapy of gemcitabine with immunotherapy for patients with inoperable locally advanced pancreatic cancer.Pancreas 38(3):e69-74も参照されたい)。数百種類の利用可能な化学療法薬が存在しており、基本的に併用療法に適している。本発明と組み合わされ得る化学療法薬のいくつかの(非限定的な)例は、下記である:カルボプラチン(Paraplatin)、シスプラチン(Platinol、Platinol-AQ)、シクロホスファミド(Cyt
oxan、Neosar)、ドセタキセル(Taxotere)、ドキソルビシン(Adriamycin)、エルロチニブ(Tarceva)、エトポシド(VePesid)、ゲムシタビン(Gemzar)、メシル酸イマチニブ(Gleevec)、イリノテカン(Camptosar)、メトトレキサート(Folex、Mexate、Amethopterin)、パクリタキセル(Taxol、Abraxane)、ソラフィニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、トポテカン(Hycamtin)、ビンクリスチン(Oncovin、Vincasar PFS)、ビンブラスチン(Velban)。
【0396】
2.手術
癌の手術-腫瘍を取り除く手術-は、依然としてがん処置の基礎である。手術は、あらゆる残存する腫瘍細胞を除去するために、他のがん処置と組み合わされ得る。外科手術とその後の免疫療法処置との併用は、数え切れないほど実証されている有望なアプローチである。
【0397】
3.放射線
放射線療法は、依然としてがん処置の重要な要素であり、全がん患者の約50%は、罹患中に放射線療法を受けている。放射線療法の主な目的は、がん細胞からその増殖(細胞分裂)可能性を奪うことである。がんを処置するために使用される放射線の種類は、光子線(X線及びガンマ線)、並びに粒子線(電子線、陽子線、及び中性子線)である。放射線をがんの位置に照射するには、2つの方法がある。外照射は、高エネルギー線(光子、陽子、又は粒子線)を腫瘍の位置に向けることにより、体外から照射される。内部放射又は小線源治療は、カテーテル又はシードに封入された放射線源により体内から腫瘍部位へと直接照射される。本発明と組み合わせて適用可能な放射線療法技術は、例えば下記である:分割(分割レジメン(例えば、数週間にわたる照射される1.5~3Gyの毎日の分割)で照射される放射線療法)、3D原体放射線療法(3DCRT;全腫瘍体積への放射線の照射)、強度変調放射線療法(IMRT;複数の放射線ビームのコンピュータ制御による強度変調)、画像誘導放射線療法(IGRT;補正を可能にする放射線療法前の画像処理を含む技術)、及び体幹部定位放射線治療(SRBT、わずか数回の処置分割で非常に高い個別線量の放射線を照射する)。放射線治療の概説に関して、Baskar et
al.2012:Cancer and radiation therapy:current advances and future directions.Int.J Med Sci.9(3):193-199を参照されたい。
【0398】
4.抗体
抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、様々な機序を介してがん細胞に対する治療効果を発揮する。抗体は、アポトーシス又はプログラム細胞死の発生に直接的な効果を有し得る。抗体は、例えば増殖因子受容体等のシグナル伝達経路の構成要素をブロックし得、腫瘍細胞の増殖を効果的に停止させる。モノクローナル抗体を発現する細胞では、抗イディオタイプ抗体の形成が引き起こされ得る。間接的な効果として、単球及びマクロファージ等の細胞傷害性を有する細胞の動員が挙げられる。このタイプの抗体媒介性細胞死は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる。抗体はまた、補体とも結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)として公知の直接的な細胞傷害が引き起こされる。さらに、標的細胞に結合した抗体は、非特異的な食細胞により認識され得、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)として公知の標的細胞の食作用が引き起こされる。外科手術と免疫治療薬又は免疫療法とを組み合わせることは、例えばGadri et al.2009:Synergistic effect of dendritic cell vaccination and anti-CD20 antibody treatment in the therapy of murine lymphoma.J Immunother.32(4):333-40で実証されているように、成功したア
プローチである。下記のリストは、本発明と併用され得る抗がん抗体及び潜在的な抗体標的(括弧内)のいくつかの非限定的な例を提供する:アバゴボマブ(Abagovomab)(CA-125)、アブシキシマブ(Abciximab)(CD41)、アデカツムマブ(Adecatumumab)(EpCAM)、アフツズマブ(Afutuzumab)(CD20)、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)(VEGFR2)、アラツモマブペンテタート(Altumomab pentetate)(CEA)、アマツキシマブ(Amatuximab)(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトキス(Anatumomab mafenatox)(TAG-72)、アポリズマブ(Apolizumab)(HLA-DR)、アルシツモマブ(Arcitumomab)(CEA)、バビツキシマブ(Bavituximab)(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(Bectumomab)(CD22)、ベリムマブ(Belimumab)(BAFF)、ベバシズマブ(Bevacizumab)(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)(CD44 v6)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)(CD19)、ブレンツキシマブベドチン(Brentuximab vedotin)(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansin)(ムチンCanAg)、カンツズマブラベタンシン(Cantuzumab ravtansine)(MUC1)、カプロマブペンデチド(Capromab pendetide)(前立腺癌細胞)、カルルマブ(Carlumab)(CNTO888)、カツマキソマブ(Catumaxomab)(EpCAM,CD3)、セツキシマブ(Cetuximab)(EGFR)、シタツズマブボガトキス(Citatuzumab bogatox)(EpCAM)、シキスツムマブ(Cixutumumab)(IGF-1受容体)、クリバツズマブテトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)(MUC1)、コナツムマブ(Conatumumab)(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)(CD40)、ダルツズマブ(Dalotuzumab)(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(Denosumab)(RANKL)、デツモマブ(Detumomab)(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(Drozitumab)(DR5)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(Edrecolomab)(EpCAM)、エロツズマブ(Elotuzumab)(SLAMF7)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)(PDL192)、エンシツキシマブ(Ensituximab)(NPC-1C)、エプラツズマブ(Epratuzumab)(CD22)、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)(HER2/neu,CD3)、エタラシズマブ(Etaracizumab)(インテグリンαvβ3)、ファルレツズマブ(Farletuzumab)(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)(SCH 900105)、フィギツムマブ(Figitumumab)(IGF-1受容体)、フランボツマブ(Flanvotumab)(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(Fresolimumab)(TGF-β)、ガリキシマブ(Galiximab)(CD80)、ガニツマブ(Ganitumab)(IGF-I)、ゲムツズマブオゾガマイシン(Gemtuzumab ozogamicin)(CD33)、ゲボキズマブ(Gevokizumab)(IL-1β)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)(カルボニックアンヒドラーゼ9 (CA-IX))、グレンバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)(CD20)、イクルクマブ(Icrucumab)(VEGFR-1)、イゴボマ(Igovoma)(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(Indatuximab ravtansine)(SDC1)、インテツムマブ(Intetumumab)(CD51)、イノツズマブオゾガミシン(Inotuzumab ozogamicin)(CD22)、イラツムマブ(Iratumumab)(CD30)、ラベツズマブ(Labetuzumab)(CEA)、レキサツムマブ(Lexatumumab)(TRAIL-
R2)、リビビルマブ(Libivirumab)(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(Lintuzumab)(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)(CD56)、ルカツムマブ(Lucatumumab)(CD40)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)(CD23)、マパツムマブ(Mapatumumab)(TRAIL-R1)、マツズマブ(Matuzumab)(EGFR)、メポリズマブ(Mepolizumab)(IL-5)、ミラツズマブ(Milatuzumab)(CD74)、ミツモマブ(Mitumomab)(GD3 ガングリオシド)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(Moxetumomab pasudotox)(CD22)、ナコロマブタフェナトキス(Nacolomab tafenatox)(C242抗原)、ナプツモマベスタフェナトキス(Naptumomab estafenatox)(5T4)、ナルナツマブ(Narnatumab)(RON)、ネシツムマブ(Necitumumab)(EGFR)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)(EGFR)、オファツムマブ(Ofatumumab)(CD20)、オララツマブ(Olaratumab)(PDGF-R α)、オナルツズマブ(Onartuzumab)(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブモナトキス(Oportuzumab monatox)(EpCAM)、オレゴボマブ(Oregovomab)(CA-125)、オキセルマブ(Oxelumab)(OX-40)、パニツムマブ(Panitumumab)(EGFR)、パツリツマブ(Patritumab)(HER3)、ペムツモマ(Pemtumoma)(MUC1)、ペルツズマブ(Pertuzumab)(HER2/neu)、ピンツモマブ(Pintumomab)(腺癌抗原)、プリツムマブ(Pritumumab)(ビメンチン)、ラコツモマブ(Racotumomab)(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(Radretumab)(フィブロネクチン外部ドメインB)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(Ramucirumab)(VEGFR2)、リロツムマブ(Rilotumumab)(HGF)、リツキシマブ(Rituximab)(CD20)、ロバツムマブ(Robatumumab)(IGF-1受容体)、サマリズマブ(Samalizumab)(CD200)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)(FAP)、シルツキシマブ(Siltuximab)(IL-6)、タバルマブ(Tabalumab)(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)(アルファ-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトキス(Taplitumomab paptox)(CD19)、テナツモマブ(Tenatumomab)(テネイシンC)、テプロツムマブ(Teprotumumab)(CD221)、チガツズマブ(Tigatuzumab)(TRAIL-R2)、TNX-650(IL-13)、トシツモマブ(Tositumomab)(CD20)、トラスツズマブ(Trastuzumab)(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)(EpCAM)、ウビリツキシマブ(Ublituximab)(MS4A1)、ウレルマブ(Urelumab)(4-1BB)、ボロシキシマブ(Volociximab)(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(Votumumab)(腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(Zalutumumab)(EGFR)、ザノリムマブ(Zanolimumab)(CD4)。
【0399】
5.サイトカイン、ケモカイン、副刺激分子、融合タンパク質
有益な免疫調節又は腫瘍阻害効果を誘発するための、本発明の医薬組成物と、サイトカイン、ケモカイン、副刺激分子、及び/又はその融合タンパク質との併用は、本発明の別の実施形態である。腫瘍への免疫細胞の浸潤を増加させ、腫瘍から排出されるリンパ節への抗原提示細胞の移動を促進するために、C、CC、CXC、及びCX3C構造を持つ様々なケモカインを使用し得る。最も有望なケモカインの内のいくつかは、例えば、CCR7、及びそのリガンドCCL19及びCCL21であり、さらには、CCL2、CCL3
、CCL5、及びCCL16である。他の例は、CXCR4、CXCR7、及びCXCL12である。さらに、例えばB7リガンド(B7.1及びB7.2)等の副刺激分子又は調節分子が有用である。同様に有用なのは、他のサイトカイン、例えば、特にインターロイキン(例えば、IL-1~IL17)、インターフェロン(例えば、IFNアルファ1~IFNアルファ8、IFNアルファ10、IFNアルファ13、IFNアルファ14、IFNアルファ16、IFNアルファ17、IFNアルファ21、IFNベータ1、IFNW、IFNE1、及びIFNK)、造血因子、TGF(例えば、TGFα、TGFβ、及びTGFファミリの他のメンバー)、最後に、受容体の腫瘍壊死因子ファミリのメンバー及びそのリガンド、並びに下記を含むがこれらに限定されない他の刺激分子:4-1BB、4-1BB-L、CD137、CD137L、CTLA-4GITR、GITRL、Fas、Fas-L、TNFR1、TRAIL-R1、TRAIL-R2、p75NGF-R、DR6、LT.ベータ.R、RANK、EDAR1、XEDAR、Fn114、Troy/Trade、TAJ、TNFRII、HVEM、CD27、CD30、CD40、4-1BB、OX40、GITR、GITRL、TACI、BAFF-R、BCMA、RELT、及びCD95(Fas/APO-1)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質、TNF受容体関連アポトーシス媒介タンパク質(TRAMP)、及び死受容体-6(DR6)。特に、CD40/CD40L及びOX40/OX40Lは、T細胞の生存及び増殖に直接影響を及ぼすことから、複合免疫療法の重要な標的である。概説に関して、Lechner et al.2011:Chemokines,costimulatory molecules and fusion proteins for the immunotherapy of solid tumors.Immunotherapy 3(11),1317-1340を参照されたい。
【0400】
6.細菌処置
研究者らは、クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)等の嫌気性菌を使用して、酸素の乏しい腫瘍の内部を消費している。次いで、これは、腫瘍の酸素化された側面と接触する場合に死滅し、このことは、身体の残りの部分には無害であることを意味する。別の戦略は、無毒のプロドラッグを有毒な薬物へと変換し得る酵素で形質転換された嫌気性菌を使用することである。腫瘍の壊死領域及び低酸素領域での細菌の増殖により、酵素は、腫瘍内でのみ発現される。そのため、全身的に適用されたプロドラッグは、腫瘍内でのみ代謝されて有毒な薬物になる。このことは、非病原性嫌気性生物クロストリジウム・スポロジェネス(Clostridium sporogenes)で有効であることが実証されている。
【0401】
7.キナーゼ阻害剤
がん細胞の増殖及び生存は、キナーゼ活性の調節解除と密接に連動していることから、補完的ながん治療の潜在的な標的の別の大きな群には、キナーゼ阻害剤が含まれる。正常なキナーゼ活性を回復させて腫瘍の増殖を抑えるために、幅広い種類の阻害剤が使用される。標的キナーゼの群には、受容体チロシンキナーゼが含まれており、例えば、BCR-ABL、B-Raf、EGFR、HER-2/ErbB2、IGF-IR、PDGFR-α、PDGFR-β、c-Kit、Flt-4、Flt3-野生型、FGFR1、FGFR3、FGFR4、CSF1R、c-Met、RON、c-Ret、ALK、細胞質チロシンキナーゼ、例えば、c-SRC、c-YES、Abl、JAK-2、セリン/スレオニンキナーゼ、例えば、ATM、Aurora A&B、CDK、mTOR、PKCi、PLK、b-Raf、S6K、STK11/LKB1、及び脂質キナーゼ、例えば、PI3K、SK1が含まれる。小分子キナーゼ阻害剤は、例えば、PHA-739358、ニロチニブ(Nilotinib)、ダサチニブ(Dasatinib)、及びPD166326、NSC 743411、ラパチニブ(Lapatinib)(GW-572016)、カネルチニブ(Canertinib)(CI-1033)、セマキニブ(Semaxinib)(SU5416)、バタラニブ(Vatalanib)(PTK787/
ZK222584)、スーテント(Sutent)(SU11248)、ソラフェニブ(Sorafenib)(BAY 43-9006)、及びレフルノミド(Leflunomide)(SU101)である。さらなる情報に関して、例えば、Zhang et al.2009:Targeting cancer with small molecule kinase inhibitors.Nature Reviews Cancer 9,28-39を参照されたい。
【0402】
8.Toll様受容体
Toll様受容体(TLR)ファミリのメンバーは、自然免疫と適応免疫との間の重要なつながりであり、多くのアジュバントの効果は、TLRの活性化に依存している。がんに対する確立されたワクチンの多くは、ワクチン反応を促進するためにTLRのリガンドを組み込む。TLR2、TLR3、TLR4に加えて、特にTLR7及びTLR8が、受動免疫療法アプローチにおけるがん治療のために検討されている。密接に関連するTLR7及びTLR8は、免疫細胞、腫瘍細胞、及び腫瘍微小環境に影響を及ぼすことにより抗腫瘍反応に寄与し、ヌクレオシド類似体構造により活性化され得る。全てのTLRは、単独の免疫治療薬又はがんワクチンアジュバントとして使用されており、本発明の製剤及び方法と組み合わされ得る。さらなる情報に関して、van Duin et al.2005:Triggering TLR signaling in vaccination.Trends in Immunology,27(1):49-55を参照されたい。
【0403】
9.血管新生阻害剤
腫瘍媒介性回避機序及び免疫抑制による影響を受ける免疫調節受容体を標的とする治療に加えて、腫瘍環境を標的とする治療も存在している。血管新生阻害剤は、腫瘍が生存するために必要とする血管の広範な成長(血管新生)を防止する。例えば、増加する栄養素及び酸素の需要を満たすために腫瘍細胞により促進される血管新生は、様々な分子を標的にすることによりブロックされ得る。本発明と組み合わされ得る血管新生媒介分子又は血管新生阻害剤の非限定的な例は、可溶性VEGF(VEGFアイソフォームVEGF121及びVEGF165、受容体VEGFR1、VEGFR2、及び受容体ニューロピリン-2(NRP-2)、アンジオポエチン2、TSP-1及びTSP-2、アンジオスタチン及び関連分子、エンドスタチン、バソスタチン、カルレティキュリン、血小板因子-4、TIMP及びCDAI、Meth-1及びMeth-2、IFN-α、-β、及び-γ、CXCL10、IL-4、-12、及び-18、プロトロンビン(クリングルドメイン-2)、アンチトロンビンIII断片、プロラクチン、VEGI、SPARC、オステオポンチン、マスピン、カンスタチン、プロリフェリン関連タンパク質、レスチン、並びに例えば、ベバシズマブ、イトラコナゾール、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470、CM101、IFN-α、血小板因子-4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、血管新生抑制ステロイド+ヘパリン、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、テトラチオモリブデン酸、サリドマイド、トロンボスポンジン、プロラクチンVβ3阻害剤、リノミド、タスキニモドであり、概説に関して、例えば、Schoenfeld and Dranoff 2011:Anti-angiogenesis immunotherapy.Hum Vaccin.(9):976-81を参照されたい。
【0404】
10.低分子標的療法薬
低分子標的療法薬は、一般に、がん細胞内の変異タンパク質、過剰発現タンパク質、又はその他の重要なタンパク質の酵素ドメインの阻害剤である。顕著で非限定的な例は、チロシンキナーゼ阻害剤のイマチニブ(Gleevec/Glivec)とゲフィチニブ(Iressa)である。がん療法のためのワクチンと組み合わされた、いくつかのキナー
ゼを標的とするリンゴ酸スニチニブ及び/又はトシル酸ソラフェニブ等の低分子の使用はまた、先の特許出願第2009004213号明細書でも説明されている。
【0405】
11.ウイルスベースのワクチン
本発明の製剤と共に併用治療アプローチに使用され得る入手可能な又は開発中のウイルスベースのがんワクチンが多数存在している。そのようなウイルスベクターの使用の1つの利点は、免疫活性化に必要な危険シグナルを生じるウイルス感染の結果として生じる炎症反応により免疫反応を開始する固有の能力である。理想的なウイルスベクターは、安全であるべきであり、抗腫瘍特異的反応を高め得るように、抗ベクター免疫反応を導入すべきではない。ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、及びアビポックスウイルス等の組換えウイルスが、動物腫瘍モデルで使用されており、その有望な結果に基づいて、ヒトでの臨床試験が開始されている。特に重要なウイルスベースのワクチンは、ウイルスの外被からある特定のタンパク質を含む小さな粒子であるウイルス様粒子(VLP)である。ウイルス様粒子は、ウイルスの遺伝物質を全く含まず、感染を引き起こし得ないが、腫瘍抗原をその被膜上に提示するように構築され得る。VLPは、様々なウイルスに由来し得、例えば、B型肝炎ウイルス、又はパルボウイルス科(Parvoviridae)(例えば、アデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV)、及びフラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、C型肝炎ウイルス)を含む他のウイルスファミリに由来し得る。一般的な概説に関して、Sorensen and Thompsen 2007:Virus-based immunotherapy of cancer:what do we know and where are we going? APMIS 115(11):1177-93;virus-like particles against cancer are reviewed in Buonaguro et al.2011:Developments in virus-like particle-based vaccines for infectious diseases and cancer.Expert Rev Vaccines 10(11):1569-83;及びGuillaen et al.2010:Virus-like particles as vaccine antigens and adjuvants: application to chronic disease,cancer immunotherapy and infectious disease preventive strategies.Procedia in Vaccinology 2(2),128-133を参照されたい。
【0406】
12.マルチエピトープ戦略
マルチエピトープの使用は、ワクチン接種に関する有望な結果を示す。知的アルゴリズムシステムと組み合わされた高速配列決定技術は、腫瘍ムタノームの利用を可能にし、本発明と組み合わされ得る個別化ワクチンのためのマルチエピトープを提供し得る。さらなる情報に関して、2007:Vaccination of metastatic colorectal cancer patients with matured dendritic cells loaded with multiple major histocompatibility complex class I peptides.J Immunother 30:762-772;さらに、Castle
et al.2012:Exploiting the mutanome for tumor vaccination. Cancer Res 72(5):1081-91を参照されたい。
【0407】
13.養子T細胞移植
例えば、腫瘍抗原ワクチン接種とT細胞移植との組合せが、Rapoport et al.2011:Combination immunotherapy using
adoptive T-cell transfer and tumor antigen vaccination on the basis of hTERT and
survivin after ASCT for myeloma.Blood 117(3):788-97で説明されている。
【0408】
14.ペプチドベースの標的療法
ペプチドは、細胞表面の受容体、又は腫瘍を取り囲む影響を受けた細胞外マトリックスに結合し得る。このペプチドに付着した放射性核種(例えばRGD)は、細胞の近くで核種が崩壊した場合には、最終的にはがん細胞を死滅させる。特に、これらの結合モチーフのオリゴマー又はマルチマーは、腫瘍特異性及び結合活性の向上につながり得ることから、非常に興味深いものである。非限定的な例に関して、Yamada 2011:Peptide-based cancer vaccine therapy for prostate cancer,bladder cancer,and malignant glioma.Nihon Rinsho 69(9):1657-61を参照されたい。
【0409】
15.他の治療
相乗効果を生み出すために本発明の製剤及び方法と組み合わされ得る多くの他のがん治療が存在している。非限定的な例は、アポトーシスを標的とする処置、温熱療法、ホルモン療法、テロメラーゼ療法、インスリン増強療法、遺伝子療法、及び光力学療法である。
【0410】
本発明を、下記の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されない。
【実施例0411】
実施例1:CLDN18.2及びCD3に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤の生成
本発明者らは、CLDN18.2及びCD3に対する特異性を有する結合ドメインを含む結合剤(抗CLDN18.2×抗CD3二重特異性抗体、bsAb)を使用してCD3+エフェクターT細胞を再指向させてCLDN18.2発現細胞株を破壊する可能性を検討した。マウス抗CLDN18.2抗体(配列番号38及び41)からの抗原結合ドメイン(ABD)を使用して、いくつかの抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbを生成した(国際公開第2007/059997号パンフレットを参照されたい)。加えて、CD3に対して異なる親和性を有する抗CD3 scFvに関するいくつかの配列を使用した。下記の表2は、マウスCLDN18.2 ABD及びCD3 ABDを保有するbsAbの概要を示す。
【0412】
【0413】
実施例1A:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbの産生
抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbの略図を、
図1に示す。
【0414】
VH(CLDN18.2)及びVL(CLDN18.2)をコードするDNAを、遺伝子合成により生成し、適切な融合パートナー(例えば、定常領域又は抗CD3 scFv-Fc)を含むpTT5発現ベクターにサブクローニングした。抗CD3 scFv-Fc重鎖をコードするDNAを、遺伝子合成により生成した。DNAを、発現のためにHEK293E細胞にトランスフェクトした。抗RSV×抗CD3二重特異性抗体(配列番号93、94、95)も、コントロールとして生成した。
【0415】
実施例1B:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbによるNUGC-4細胞株及びKP-4細胞株への結合及び再指向されたT細胞細胞傷害
NUGC-4は、高レベルのCLDN18.2を発現する胃癌細胞株であり、KP-4は、非常に低レベルのCLDN18.2(CLDN18.2陰性コントロ-ル細胞株に相当)を発現する膵癌細胞株である。従って、本発明者らは、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAb及び抗RSV×抗CD3 bsAbコントロールにより媒介されるNUGC-4細胞株及びKP-4細胞株に対する結合及び再指向されたT細胞細胞傷害性(RTCC)を検討した。
【0416】
200,000個の細胞(NUGC-4又はKP-4)を、氷上で1時間にわたり、指定濃度の抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbと共にインキュベートした。次いで、試料を洗浄し、氷上で1時間にわたり、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPure F(ab’)
2Fragment Goat Anti-Human IgG,Fcγ Fragment Specific二次抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, Penn.)で染色した。試料を再度洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。KP-4細胞及びNUGC-4細胞への結合を示すデータを、
図2に示す。
【0417】
抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbにより媒介されるRTCCを検討するために、37℃で24時間にわたり、NUGC-4又はKP-4を、ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的細胞比)、及び指定濃度の抗CLDN18.2×抗CD3 bsAb
と共にインキュベートした。製造業者の指示に従って乳酸デヒドロゲナーゼレベルを測定するためにCytoTox-ONE(商標)Homogeneous Membrane
Integrity Assay(Promega,Madison,Wis.)を使用して、RTCCを決定し、データを、Wallac Victor2 Microplate Reader(PerkinElmer,Waltham,Mass.)で取得した。
図3を参照されたい。
【0418】
まとめると、データは、試験した全ての濃度で、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbが用量依存的にNUGC-4細胞に結合したが、KP-4細胞への結合はほとんど検出され得なかったことを示す。特に、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24647、XENP24648、及びXENP24649)は、「Fab-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24645及びXENP24646)と比べてはるかに強力にNUGC-4細胞に結合する。このことは、おそらく、「Fab2-scFv」フォーマットにより伝えられる特別な結合活性に起因する。細胞結合と一致して、データは、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbがNUGC-4上で用量依存的にRTCCを誘導したが、KP-4細胞上ではRTCCが誘導されなかったことを示す。
【0419】
実施例1C:NUGC-4細胞及びSNU-601細胞を使用する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbのさらなるキャラクタリゼーション
(a)CLDN18.2発現細胞株としてのSNU-601の同定
本発明の抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbをさらにキャラクタライズするために、本発明者らは、NUGC-4の発現と比較してCLDN18.2の発現レベルが高い細胞株を同定しようとした。本発明者らは、下記のようにフローサイトメトリーを使用して、様々な細胞株へのXENP24647の結合を調べた。様々な細胞株(及び陰性コントロールとしてのRamos細胞)からの200,000個の細胞を、氷上で1時間にわたりXENP24647と共にインキュベートし、続いて氷上で1時間にわたりPE AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的二次抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,Penn.)により染色し、フローサイトメトリーにより分析した。
図4は、NUGC-4及びSNU-601へのXENP24647の結合を示す。このデータは、SNU-601がNUGC-4と比較してCLDN18.2を高レベルで発現することを示す。従って、本発明者らは、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞を使用して、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbをさらにキャラクタライズした。
【0420】
(b)NUGC-4細胞及びSNU-601細胞上での抗CLDN18.2×抗CD3
bsAbの結合
本発明者らは、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞上での抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbの結合を調べた。実験を、上述したように行なった。具体的には、様々な細胞株(及び陰性コントロールとしてのRamos細胞)からの200,000個の細胞を、氷上で1時間にわたり指定の濃度の指定のbsAbと共にインキュベートし、続いて氷上で1時間にわたりPE AffiniPure F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的二次抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,Penn.)により染色し、フローサイトメトリーにより分析した。NUGC-4及びSNU-601へのbsAbの結合を示すPE MFIを、
図5に示す。それぞれのbsAbは、NUGC-4及びSNU-601の両方に用量依存的に結合しており、SNU-601細胞への最大結合量は、NUGC-4と比べて高く、このことは、それぞれの細胞株でのそれぞれのCLDN18.2発現レベルと一致している。上記の実施例1Bの結果と一致して、データは、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAbが「Fab-scFv」フォーマットのbsAbと比べて強力に細胞に結合したこ
とを示す。
【0421】
(c)抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbによるNUGC-4細胞及びSNU-601細胞への再指向されたT細胞細胞傷害性の誘導
次に、本発明者らは、NUGC-4及びSNU-601への抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbにより媒介されるRTCCを調べた。実験を、上述したように行なった。具体的には、NUGC-4細胞又はSNU-601細胞を、37℃で24時間又は48時間にわたり、ヒトPBMC(20:1のエフェクター対標的細胞比)、及び指定の濃度の指定のbsAb、及び抗CD107a-BV421と共にインキュベートした。コントロ-ルとして、標的細胞のみ、又はbsAbを使用しない標的細胞及びエフェクター細胞を使用した。インキュベーション後、試料を、氷上で1時間にわたり、下記の抗体で染色した:抗CD69-PE、抗CD25-APC、抗CD4-APC-Fire750、及び抗CD8-BV605。次いで、細胞を、BUV395 Annexin-V(BD Bioscience,San Jose,Calif.)及び7-AAD Viability Staining Solution(BioLegend, San Diego, Calif.)で染色した。最後に、細胞を、フローサイトメトリーで分析した。
【0422】
AnnexinV及び7AADの結合はアポトーシス誘導の指標である。従って、生細胞は、AnnexinV-7AAD-であり、死細胞は、AnnexinV+細胞、7AAD+細胞、及びAnnexinV+7AAD+細胞の合計であった。エフェクター細胞及び指定のbsAbとのインキュベート後の死滅した/瀕死の標的細胞及び生きている標的細胞の数を示すデータを、
図6-9に示す。このデータは、死滅した/瀕死の細胞の増加、及び生きている細胞の減少により示されるように、bsAbが標的細胞(即ち、NUGC-4細胞及びSNU-601細胞)の死滅を増強することを示す。特に、このデータは、CD3に対する親和性が高い結合ドメインは、RTCCを増強することを示す(例えば、XENP24645とXENP24646との比較、及びXENP24647とXENP24649との比較)。さらに、CD3に特異的な同一の結合ドメインを有するbsAbの場合には、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAbは、「Fab-scFv」フォーマットのbsAbと比べて強力にRTCCを増強する(例えば、XENP24647とXENP24645との比較)。加えて、「Fab-scFv」bsAbを超える「Fab2-scFv」bsAbによるRTCCの増強(例えば、CD3に対して同一の親和性を有するXENP24645(Fab-scFvフォーマット)及びXENP24647(Fab2-scFvフォーマット))は、CLDN18.2を高レベルで発現するSNU-601でより顕著であり、このことは、「Fab2-scFv」フォーマットが、CLDN18.2を高レベルで発現する細胞株に関する選択性を提供することを示唆する。
【0423】
本発明者らはまた、本発明のbsAbによるT細胞の活性化も調べた。CD69は、初期活性化マーカーであり、CD25は、後期活性化マーカーであり、両者とも、TCRシグナル伝達を介したT細胞活性化後に上方制御される。CD107aは、T細胞の脱顆粒及び細胞傷害活性の機能的マーカーである。エフェクター細胞を、CD4+及びCD8+
T細胞を同定するためにゲートした。次いで、T細胞を、CD69、CD25、及びCD107aの発現に関してゲートした。CD4+及びCD8+ T細胞でのマーカーの上方制御を示すデータを、
図10-13に示す。このデータは、RTCCの結果と一致した傾向を示す。例えば、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、T細胞の活性化及び脱顆粒を増強する。
【0424】
実施例2:ヒト化CLDN18.2抗原結合ドメインを有する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbの生成
CLDN18.2に対する特異性を有するヒト化ABDを有するbsAbsを生成した。下記の表3は、生成されたヒト化bsAbの概要を示す。
【0425】
【0426】
実施例2A:CLDN18.2抗原結合ドメインのヒト化
本発明者らは、文字列内容の最適化(string content optimization)(例えば、国際公開第2005/056759号パンフレット及び米国特許第7,657,380号明細書を参照されたい)を使用して、ヒト化可変領域を有する抗CLDN18.2 mAbを操作した(VH:配列番号39、40、VL:配列番号42)。ヒト生殖細胞系列との同一性は、マウスABD(配列番号38、41;「H0L0」)に関する73.2%から、2種のバリアントに関するそれぞれ86.6%(配列番号40、42;「H2L1」)及び88.3%(配列番号39、42;「H1L1」)へと増加した。ヒト化mAbの可変領域を使用して、実施例1Aで説明したように、「Fab-scFv」及び「Fab2-scFv」フォーマットの両方での抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbをさらに生成した。
【0427】
実施例2B:CLDN18.2 ABDのヒト化は、結合、RTCC、T細胞活性化を維持した
次に、本発明者らは、マウスCLDN18.2 ABDを有する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAb、及びヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによる細胞結合、RTCCの誘導、及びT細胞活性化の誘導を比較した。
【0428】
図4で観察されるように、SNU-601細胞株は、NUGC-4細胞株と比べて高レベルのCLDN18.2発現を特徴としていたが、SNU-601細胞集団は、CLDN
18.2発現に関して非常に不均一であった。従って、フローサイトメトリーを使用して、CLDN18.2発現に基づいてSNU-601細胞を選別し、4日にわたりCLDN18.2+集団を拡大した。拡大したCLDN18.2+集団(これ以降、富化SNU-601又はSNU-601(2E4)と称される)を、実施例1Cで説明されているようにCLDN18.2発現に関して再評価し、富化されていないSNU-601細胞と比較した(
図14を参照されたい)。このデータは、SNU-601(2E4)が実質的により多くのCLDN18.2+細胞の集団を含むこと示す。このセクションの実験を、SNU-601(2E4)細胞を使用して実施する。
【0429】
SNU-601(2E4)細胞へのヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbの結合を、実施例1Bで説明されているように評価した。具体的には、200,000個のSNU-601(2E4)細胞を、氷上で1時間にわたり、指定の濃度の指定のbsAbと共にインキュベートした。次いで、試料を、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPure F(ab’)
2 Fragment Goat Anti-Human IgG,Fcγ Fragment Specific二次抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,Penn.)で染色し、フローサイトメトリーで分析した。コントロール試料は、マウスCLDN18.2 ABDを有するbsAb、2価の抗CLDN18.2 mAb、細胞のみ、及び二次抗体のみを含んでいた。bsAbによる結合を示すAlexaF657 MFIを、
図15に示す。このデータは、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbが、マウスCLDN18.2 ABDを有するbsAbと同様にSNU-601(2E4)細胞に結合したことを示しており、このことは、ヒト化はbsAbの結合効果を維持することを示す。特に、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAbは、2価の抗CLDN18.2 mAbと比較して同様の結合を示した。加えて、データは、配列番号39及び42(H1L1)に従うヒト化VH及びVLを含むbsAb(例えば、XENP29472、XENP29474、XENP29476、及びXENP29478)が、配列番号40及び42(H2L1)に従うヒト化VH及びVLを含むbsAb(例えば、XENP29473、XENP29475、XENP29477、及びXENP29479)と比べて良好に結合を維持したことを示す。
【0430】
次に、本発明者らは、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるSNU-601(2E4)細胞へのRTCCの誘導とT細胞活性化とを調べた。SNU-601(2E4)細胞を、CellTrace(商標)CFSE Cell Proliferation Kit(ThermoFisher Scientific,Waltham,Mass.)で標識した。CFSE標識SNU-601(2E4)細胞を、37℃で24時間にわたり、ヒトPBMC(10:1のエフェクター対標的比)及び抗CD107a-BV421と共にインキュベートした。インキュベーション後、上清を回収し、V-PLEX Proinflammatory Panel 1 Human Kit(製造業者のプロトコルに従う;Meso Scale Discovery,Rockville,Md)によりサイトカイン分析を行い、細胞を、室温で15分にわたり、Aqua Zombie染色剤で染色した。次いで、細胞を洗浄し、抗CD4-APC-Cy7、抗CD8-perCP-Cy5.5、及び抗CD69-APC染色抗体で染色し、フローサイトメトリーで分析した。本発明者らは、RTCCの誘導を調査するために、下記の2つの異なるアプローチを使用した:a)CSFE+標的細胞の数の減少(
図15Aを参照されたい)、及びb)CSFE+標的細胞でのZombie Aqua染色(
図15B、Cを参照されたい)。本発明者らはまた、CD69及びCD107aの発現に基づいて、CD4+及びCD8+ T細胞の活性化及び脱顆粒も調べた(
図16~20を参照されたい)。最後に、本発明者らは、T細胞によるIFNγ及びTNFαの分泌を調べた(
図21を参照されたい)。結合データと一致して、ヒト化は、ヒト化CLDN18.2 ABDを有するbsAbによるRTCCの誘導、及びT細胞活性化、及びサイトカイン分泌
を維持した。特に、実施例1Cと一致して、親和性がより高いCD3結合及び/又は2価のCLDN18.2結合は、RTCCの効力、並びにT細胞活性化、脱顆粒、及びサイトカイン分泌を増強する。
【0431】
実施例3:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbのさらなるキャラクタリゼーション
下記の表4は、生成して試験したさらなるbsAbの概要を示す。
【0432】
【0433】
実施例3A:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、カニクイザルCLDN18.2及びマウスCLDN18.2との交差反応性を示す
(例えば、モデル動物で治療薬を調べることにより)臨床開発を容易にするために、bsAbがマウス及び/又はカニクイザルCLDN18.2との交差反応性を示すことは有用である。従って、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbを、ヒトCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2、及びマウスCLDN18.2への結合に関して調べた。ヒトCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2、又はマウスCLDN18.2を発現するように、HEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、指定の濃度のbsAbと混合し、4℃で1時間にわたりインキュベートした。細胞を洗浄し、次いで4℃で1時間にわたり、2次Abで染色した。さらに2回洗浄した後、細胞を、Attuneフローサイトメーターで分析した。
図22及び23に示されるデータは、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbが、ヒト、カニクイザル、及びマウスの各CLDN18.2をトランスフェクトした細胞に用量依存的に結合したことを示す。特に、「Fab2-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24647及びXENP29476)は、「Fab-scFv」フォーマットのbsAb(即ち、XENP24645及びXENP29472)と比較して、CLDN18.2をトランスフェクトした細胞にはるかに強力に結合し、二価のmAbフォーマット(即ち、XENP24644)と同様の効力で結合する。
【0434】
実施例3B:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、オフターゲット反応性を示さない
オフターゲット反応性の欠如を確認するために、ヒトCLDN18.1、カニクイザルCLDN18.1、及びマウスCLDN18.1、並びにヒトCLDN9に対する本発明のbsAbの結合を、ヒトCLDN18.1、カニクイザルCLDN18.1、若しくはマウスCLDN18.1、又はヒトCLDN9を発現するように一過性にトランスフェクトしたHEK293を使用する以外は、全体的には上述したように調べた。
図24に示されるデータは、抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbがオフターゲット反応性を全く示さなかったことを示す。
【0435】
実施例3C:抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbは、様々なRTCC効力を示す
抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbの効力をランク付けするために、bsAb及
び比較対象のbsAb(AMG910;国際公開第2020/025792号パンフレットの配列番号132)によるNUGC4標的細胞の死滅を調べた。NUGC4標的細胞をCSFEで標識し、37℃で一晩回復させた。次いで、NUGC4細胞を、48時間にわたり、10:1のエフェクター:標的比でのエフェクター細胞(各実験で異なるドナー)、及び指定の濃度の抗体と共にインキュベートした。細胞を染色して生細胞/死細胞を区別し、抗CD4-APC-Fire750、抗CD8-PerCP-Cy5.5、抗CD107a-BV421、及び抗CD69-BV785で染色して様々なT細胞集団のT細胞活性化を区別し、Symphonyフローサイトメーターで分析した。
図25に示されるデータは、bsAbがRTCCを効率的に誘導することを示す。bsAbを、そのRTCC効力に従って、下記のようにランク付けし得る:XENP31726(最高の効力)>XENP32461>XENP29478>XENP29472(最低の効力)。特に、XENP32461は、比較対象の二重特異性抗体と同様の効力でRTCCを誘導しており、XENP31726は、比較対象の二重特異性抗体と比較して増強された効力でRTCCを誘導した。
【0436】
実施例3D:様々なCLDN18.2抗原密度を発現する細胞株でのRTCC誘導のインビトロでのキャラクタリゼーション
抗CLDN18.2×抗CD3 bsAbを、CLDN18.2密度が異なる細胞に対する細胞死滅活性に関して調べた。最初のセットの実験では、BxPc3(600k個の、CLDN18.2結合部位)、GSU(70k個のCLDN18.2結合部位)、NUGC4(50k個のCLDN18.2結合部位)、及びKatoIII(30k個のCLDN18.2結合部位)標的細胞を、CSFEで標識し、96ウェル平底培養プレート中の100μlのアッセイ培地(RPMI1640/10%FBS)中に約10K個の細胞/ウェルで播種して、37℃で一晩回復させた。エフェクター細胞を、ヒトPBMCから単離し、10:1のエフェクター:標的比での標的細胞、及び指定の濃度のbsAbと共にインキュベートした。インキュベーションの48時間後、細胞を、30分にわたり室温で、PBS中のLive/Dead固定可能な青色死細胞染色キット(1:1000)で染色した。次いで、試料を、1×FACS緩衝液で洗浄した。細胞を、抗CD4-APC-Fire750、抗CD8-PerCP-Cy5.5、抗CD107a-BV421、及び抗CD69-BV785で染色し、氷冷PBSで再度洗浄し、90μlのFACS緩衝液に再懸濁させた。データを、固定容量(60μl)でFACS Fortessaにより取得した。RTCCの誘導、T細胞活性化、及びサイトカイン分泌を示すデータを、
図26~33に示す。実施例3Cのデータと一致して、このデータは、XENP31726及びXENP32461(並びに追加のbsAbであるXENP31724及びXENP29476)が、XENP29478及びXENP29472(並びに追加のbsAbであるXENP29474)と比較して強力にRTCCを誘導したことを示す。
【0437】
別のセットの実験では、3:1という低いエフェクター:標的比での活性を調べた。KatoIII(30k個のCLDN18.2結合部位)及びHGC27-4H2(20k個のCLDN18.2結合部位)標的細胞を、CSFEで標識し、96ウェル平底培養プレート中の100μlのアッセイ培地(RPMI1640/10%FBS)中に播種して、37℃で一晩回復させた。エフェクター細胞を、ヒトPBMCから単離し、3:1のエフェクター:標的比での標的細胞、及び指定の濃度のbsAbと共にインキュベートした。インキュベーションの24時間後、細胞を、30分にわたり室温で、PBS中のLive/Dead固定可能な青色死細胞染色キット(1:1000)で染色した。次いで、試料を、1×FACS緩衝液で洗浄した。細胞を、抗CD4-APC-Fire750、抗CD8-PerCP-Cy5.5、抗CD107a-BV421、及び抗CD69-BV785で染色し、氷冷PBSで再度洗浄し、90μlのFACS緩衝液に再懸濁させた。データを、固定容量(60μl)でFACS Fortessaにより取得した。RTCCの誘導、T細胞活性化、及びサイトカイン分泌を示すデータを、
図34~36に示す。
最後の実験では、1:1というさらに低いエフェクター:標的比での活性を、KatoIII標的細胞を使用して全体的には上述されているように調べた。データを
図37に示す。このデータは、試験したbsAbが、CLDN18.2を発現するがん細胞に対してRTCC及び標的細胞死滅を効率的に誘導することを示す。
【0438】
実施例4:NUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍担持ヒトPBMC移植NOGマウスモデルにおけるASP2138(XENP31726)の抗腫瘍効果
NUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍担持ヒト末梢血単核球(PBMC)移植NOGマウスモデルにおける腫瘍増殖に対する抗CLDN18.2×抗CD3 bsAb
ASP2138(XENP31726)の効果を調べた。14日にわたるASP2138の週1回の腹腔内投与は、1、3、及び10mg/kgでそれぞれ60%、91%、及び99%のNUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍の顕著な増殖阻害を誘導したが、体重は減少しなかった。加えて、3mg/kg群での10匹のマウス中の1匹は、完全な腫瘍退縮を達成した。
【0439】
この研究は、ASP2138がヒトPBMC移植NOGマウスモデルにおいてヒトのクローディン18.2発現胃がんに対して抗腫瘍効果を示すことを実証した。
【0440】
実施例4A:材料及び方法
(a)抗体
ASP2138(ロット番号DSP20804;アステラス製薬株式会社、東京、日本)を、投与前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた。
【0441】
(b)細胞株
内因的にヒトクローディン18.2を発現する胃がん細胞株NUGC-4のサブクローンであるNUGC-4 10cF7_5_3E10を、Ganymed Pharmaceuticals AG(Mainz,Germany)から入手し、5%CO2中において37℃で、10%熱不活性化ウシ胎児血清及び1%glutamaxが補充されたRPMI 1640培地で培養した。
【0442】
(c)動物
6週齢の雌NOGマウスを、インビボサイエンス株式会社(東京、日本)から購入した。本研究は、AAALAC Internationalの認定を受けたアステラス製薬株式会社つくば研究所のInstitutional Animal Care and
Use Committeeの承認を得た。
【0443】
(d)ヒトPBMC注射及び腫瘍接種
ヒトPBMC(Precision for Medicine、93000-10M)を、2.5×107個の細胞/mLでPBSに懸濁させ、5×106個の細胞/200μL/マウスで7週齢のマウスに静脈内注射した。ヒトPBMC注射の1週間後、NUGC-4 10cF7_5_3E10細胞を、1×107個の細胞/mLでPBSに懸濁させ、1×106個の細胞/100μL/マウスで8週齢のマウスの脇腹に皮下接種して増殖させた。
【0444】
(e)投与及び測定
NUGC-4 10cF7_5_3E10細胞の接種の8日後、マウスを、群間で同様の平均腫瘍体積で割り当てた(n=10)。次いで、ASP2138の投与を開始した。投与の初日を、0日目とした。マウスに、0日目及び7日目にPBS又はASP2138(0.1、1、3、及び10mg/kg)を腹腔内投与した。腫瘍直径及び体重を、それぞれ0、3、7、10、及び14日目に、ノギス及びはかりを使用して測定した。腫瘍体
積[mm3]を、式:
(腫瘍長軸の長さ[mm])×(腫瘍短軸の長さ[mm])2×0.5
で決定した。
【0445】
腫瘍増殖の阻害率(Inh%)を、下記式:
Inh%=100×(1-各群での[14日目の平均腫瘍体積-0日目の平均腫瘍体積]÷PBS群での[14日目の平均腫瘍体積-0日目の平均腫瘍体積])
を使用して算出した。
【0446】
(f)統計解析
値を、腫瘍体積及び体重の平均±平均の標準誤差(SEM)で表す。ASP2138処置群での14日目の平均腫瘍体積及び体重を、Dunnettの多重比較検定を使用してPBS群と比較した。P<0.05を、統計的に有意とみなした。データ処理に、GraphPad Prism(バージョン8.0.2、GraphPad Software、San Diego,CA,USA)及びMicrosoft Excel(バージョン2002、Microsoft Corporation,Redmond,WA,USA)を使用した。
【0447】
実施例4B:結果及び結論
14日にわたるASP2138の週1回の腹腔内投与により、ヒトPBMC移植NOGマウスモデルにおいて、1、3、及び10mg/kgでのNUGC-4 10cF7_5_3E10腫瘍の増殖阻害が、それぞれ60%、91%、及び99%有意に誘導された(
図38)。加えて、3mg/kg群での10匹中のマウスの1匹は、完全な腫瘍退縮を達成した。ASP2138で処置されたマウスの体重は、いずれの試験用量でも影響を受けなかった(
図38)。
【0448】
この研究は、ASP2138が、ヒトPBMC移植NOGマウスモデルにおいてヒト胃がんに対して抗腫瘍効果を示すことを実証した。試験した全てのbsAb濃度に関して、インビボでの優れた抗腫瘍効果が示された。